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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】クーラント透過性を有する電磁コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20240712BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H01F27/28 176
H01F5/00 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022570752
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020052019
(87)【国際公開番号】W WO2021151468
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522301223
【氏名又は名称】マグネボティックス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】522301234
【氏名又は名称】ナノフレックス ロボティクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リトル,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】バウマン,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ジェルバゾーニ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ショーテム,クリストフ
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-026253(JP,A)
【文献】特開2008-108522(JP,A)
【文献】特開2003-017333(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008031746(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00、27/28、41/077
B21F 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ワイヤ(11,21)を用いて巻回されたクーラント透過性を有する電磁コイル(60,70,80)であって、
径方向に配列された複数の層(29)と、前記層(29)毎に軸方向に配列された前記絶縁ワイヤ(11,21)の複数のターン(19)とを含み、
前記絶縁ワイヤ(11,21)は、その長さに沿って複数のセクション(12,13;22,23)を有し、これらのセクションが、2つの隣接するセクション(12-13;22-23)の任意のペアが異なる断面を有しており、軸方向及び径方向に隣接する絶縁ワイヤの断面によって形成された空隙が、集合的に、クーラントチャネル(110,115,116)を形成し、
隣接するセクション(12-13;22-23)の局所的なワイヤの変形が、コイル上の接線位置と調整され、軸方向及び/又は径方向の冷却チャネルが調整されて形成され、
l=2*pi*tであり、lは周期パターンの長さ、tはワイヤ(11,21)の最大厚さ、piはルドルフ数であり、同じ層の巻線間の変形セクションと非変形セクションとが整列するように、lは、ワイヤ(11,21)が巻回されるコア(15)の円周の約数であることを特徴とするコイル。
【請求項2】
前記断面の差異は、高さの変化、幅の変化、又は両方の寸法変化を含む、
請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記コイルは、前記コイルの軸方向(211)及び/又は径方向(213)において、クーラント液のチャネル(110,115)を形成するギャップ(88′,89)に接続された、少なくとも一つの入口(73;83)及び少なくとも一つの出口(74;84)を備えるハウジング(75,76,77;85,86,87)を含み、前記入口(73;83)及び前記出口(74;84)は、クーラント回路に接続されて、前記コイルのチャネルを通してクーラント液をポンプで送り、前記コイルを冷却するように適合されている、請求項1又は2に記載のコイル。
【請求項4】
前記入口(73;83)と前記出口(74;84)との間に、任意で、流体ポンプを用いて、軸方向の圧力勾配を付与することによって、クーラントを、巻線を通って軸方向に移動させ、径方向の冷却チャネル(110)を利用して、径方向の流れ断面の全体に、流れを均一に分散する、請求項3に記載のコイル。
【請求項5】
前記入口(73;83)と前記出口(74;84)との間に、任意で、流体ポンプを用いて、径方向の圧力勾配を付与することによって、クーラントを、巻線を通って径方向(内向き又は外向き)に移動させ、軸方向の冷却チャネル(115)を利用して、軸方向の流れ断面の全体に、流れを均一に分散する、請求項3に記載のコイル。
【請求項6】
クーラントチャネルは、ワイヤの続く層(29)の間の径方向のクーラントチャネル(110)、ワイヤの隣接するターン(19)の間の軸方向のクーラントチャネル(115)、及び2つの隣接するターン(19)の間と2つの続く層の間の断面クーラントチャネル(116)を含む群からなる、請求項1~のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項7】
ワイヤ(140)の断面が、変形していない円形セクション(120)と、前記層の配列方向又は前記ターンの配列方向のいずれかの方向に、長軸を有する長円形又は楕円形のセクションとの間で変化する、請求項1~のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の電磁コイルを構築するために用いる絶縁ワイヤであって、
交互パターンの周期的な長さとワイヤの厚さとの比率により、軸方向及び径方向のクーラントチャネルの規則的なパターンが生成されるように、
ワイヤの幅及び/又は高さに沿って圧縮されたセクションと交互に、円形又は長方形の形状のワイヤのセクション(12-13;22-23)を含む、ワイヤ。
【請求項9】
ワイヤ(11)の高さ及び幅に沿った断面積の減少は、非整列的であり、ワイヤ(11)の全体のワイヤ断面積がほぼ一定となるように、ワイヤ(11)のセクション(12)は、それが扁平なところでは幅広で、ワイヤ(11)のセクション(13)は、それが高いところでは幅狭な、請求項に記載のワイヤ。
【請求項10】
ワイヤの高さ及び幅に沿ったワイヤの変形は、整列的であり、最良の流体透過性を達成するために、ワイヤ(21)のセクション(22)は、それが高いところでは幅広で、ワイヤ(21)のセクション(23)は、それが扁平なところでは幅狭な、請求項に記載のワイヤ。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載のコイルの製造方法であって、
所望のワイヤの厚みに対応する表面形状を有する2つのホイールからなるワイヤフラッタを用いて、ワイヤ(11;21)を圧縮する工程を含む、コイルの製造方法。
【請求項12】
請求項に記載のワイヤを作製する方法であって、
ワイヤが通過するときに、ホイール間の距離を変化させる作動機構を備えた、2つのホイールからなるワイヤフラッタを用いて、ワイヤを圧縮することによって、ワイヤを変形させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント透過性を有する電磁コイル、そのような電磁コイルを構築する絶縁ワイヤ、及びそのようなクーラント透過性を有する電磁コイルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁コイルは、多数の現代技術の基本コンポーネントである。特に、高出力の電磁コイルは、医学、素粒子物理学、マイクロマニピュレーションなどの分野で広く用いられている。そのようなコイルは、巻線が過熱することなく高い電流密度に耐えることができるように、多くの場合、流体で能動的に冷却される電磁コイル巻線を含む。
【0003】
この冷却を最大限に効果的なものとするために、種々の方法がある。一般には、クーラントの流速と、クーラントと接触するワイヤの面積とを増加させると同時に、ワイヤとクーラントとを最大限近接させることが有利であり、すなわち、クーラントに伝わる熱は、可能な限り短い距離でワイヤを通じて移動する必要がある。また、可能であれば、標準のワイヤと巻線技術とを使用することも、当然に好ましい。
【0004】
電磁コイル巻線に関する多くの設計と構成とが文献に提案されており、ここでは、最も関連性の高いものを説明する。
【0005】
特許文献1には、波形の絶縁ストリップが、コイルの構造内に軸方向の冷却チャネルを形成するように、2つの材料ストリップ(第1は非絶縁の導体であり、第2は波形の絶縁体である)が同時に巻回されたコイルが記載されている。
【0006】
特許文献2には、少なくとも1つが、軸方向に延在するクーラントチャネルを形成するために波形にされた、2つの導電性ストリップが巻回された変圧器コイルが記載されている。
【0007】
特許文献3には、空気が流れるための軸方向の通路を形成するスペーサー要素を、巻線の層間に有する空冷変圧器コイルが記載されている。
【0008】
種々のスペーサー要素を巻線内に埋め込むことによって、冷却チャネルを形成する多くのアプローチが種々知られている。一例として、特許文献4には、導電性の巻線の層の間に間隔をあける熱可塑性ダクトが記載されている。
【0009】
特許文献5には、その周囲にコイルワイヤが巻回された、軸方向の冷却ダクトを有する変圧器コイルが記載されている。
【0010】
特許文献6には、軸方向のスペーサー要素によって隔てられて、径方向の冷却チャネルが形成されている巻線セクションを有する変圧器が記載されている。
【0011】
特許文献7には、軸方向の冷却チャネルを形成する浅い溝形状の切り欠きを有するワイヤを以て形成された電磁コイルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第2710947号公報
【文献】欧州特許第2330603号公報
【文献】米国特許第8284006号公報
【文献】米国特許第7023312号公報
【文献】米国特許第3579162号公報
【文献】米国特許第2632041号公報
【文献】米国特許第3056071号公報
【発明の概要】
【0013】
従来技術に記載されている電磁コイルは、複雑なワイヤ形状及び/又は巻線技術を必要とする。
【0014】
上記先行技術及びその限界に照らして、とりわけ、本発明の目的は、クーラント透過性が内因的に発現するコイルを提供することにある。
【0015】
本発明に係るクーラント透過性を有する電磁コイルは、絶縁ワイヤを用いて巻回されており、径方向に配列された複数の層と、層毎に軸方向に配列された絶縁ワイヤの複数のターンとを含み、絶縁ワイヤは、その長さに沿って複数のセクションを有し、これらのセクションが、2つの隣接するセクションの任意のペアが異なる断面を有している。
【0016】
本発明に係るコイルは、ワイヤの変化する断面形状の結果として、クーラント透過性が内因的に発現するコイルを含む。隣接するセクションの断面の差異は、高さの変化、幅の変化、又は両方の寸法変化を含むことができる。そのような本発明に係る実施形態は、軸方向及び径方向の両方におけるクーラント透過性をコイルの巻線に付与する、軸方向及び径方向の冷却チャネルの組み合わせによって特徴づけられる。
【0017】
本発明のさらなる目的は、一般的なコイルの巻線技術を利用して、標準的で、容易に入手可能な絶縁ワイヤから形成することができる、クーラント透過性のコイルを提供することにある。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、コイルは、その長さに沿って周期的に変化する断面形状及び/又は断面積を有するワイヤが巻回される。このワイヤは、ワイヤの複数の部位を、その高さ、幅、又は両方に沿って周期的に圧縮する成形ツールに、均一な断面の標準的な絶縁ワイヤを通して引き抜くことによって形成することができる。ワイヤが、複数の層の上に複数の列で巻回されることにより、変化する断面が、軸方向と径方向の両方に、クーラントチャネルを形成する。断面の形状と周期性は、種々の目的のために最適化することができる。例えば、クーラントの大部分が径方向に流れることが有利である場合には、主として径方向にクーラントチャネルが形成されるように、ワイヤの断面パラメータを調整することができ、その逆も可能である。
【0019】
本発明に係るコイルは、巻線の容積部全体にクーラントが分散された、大きな熱伝導エリアをもたらす。個別のスペーサー要素を必要としないため、巻線プロセスが簡素化され、最大充填密度(銅の体積/総体積)が可能となり、一定の入力電力ごとに最大の磁場生成を実現できる。最適化は、コイル自体とコイルの巻き方との両方に関連する。スペーサーを必要とせず、標準的な方法で巻回できるという事実は、方法に関係するが、最適な充填密度の実現は、実際にどのように達成されるかに関係なく、巻線の構成それ自体の特性である。
【0020】
コイルは、好ましくは、コイルの軸方向及び/又は径方向において、クーラント液のチャネルを形成するギャップに接続された、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を備えるハウジングを含み、入口及び出口は、クーラント回路に接続されて、コイルのチャネルを通してクーラント液をポンプで送り、コイルを冷却するように適合されている。
【0021】
入口と出口は、例えば、コイルのコアから同じ径方向に、コイルのハウジングの長手方向に対向させて設けることができ、軸方向の圧力勾配を付与することによって、クーラントを、巻線を通って軸方向に移動させ、径方向の冷却チャネルを利用して、径方向の流れ断面の全体に、流れを均一に分散する。
【0022】
入口と出口は、コイルのコアからの径方向の距離を異ならせて設けることもでき、径方向の圧力勾配を付与することによって、クーラントを、巻線を通って径方向(内向き又は外向き)に移動させ、軸方向の冷却チャネルを利用して、軸方向の流れ断面の全体に、流れを均一に分散する。
【0023】
本発明のさらなる目的は、クーラント透過性を有する改善されたコイルを構築するための絶縁ワイヤを提供することにある。
【0024】
このような絶縁ワイヤは、原材料価格を最適化するために、変形前の当初の丸い形状をしている。当初は、長方形、特に、正方形の形状であってもよい。変形前には、ほぼ長方形のワイヤを用いると、最適な充填密度が得られる。
【0025】
クーラント透過性の電磁コイルを形成するために用いる絶縁ワイヤは、円形又は長方形の形状のワイヤのセクションと、ワイヤの高さ又は幅に沿って圧縮された変形セクションと交互に含む。ワイヤの高さ及び幅に沿った断面積の減少は、非整列的であり、ワイヤの全体のワイヤ断面積がほぼ一定となるように、ワイヤは、それが扁平なところでは幅広で、ワイヤは、それが高いところでは幅狭である。
【0026】
これに代えて、ワイヤの高さ及び幅に沿ったワイヤの変形を整列的にすることもでき、最良の流体透過性を達成するために、ワイヤは、それが高いところでは幅広で、ワイヤは、それが扁平なところでは幅狭である。
【0027】
本発明のさらなる目的は、クーラント透過性を有するコイルを製造する改善された方法を提供することにある。
【0028】
この目的は、所望のワイヤの厚みに対応する表面形状を有する2つのホイールの一実施形態からなるワイヤ形成ツールを用いてワイヤを圧縮する工程を含むコイルの製造方法によって達成される。
【0029】
この方法では、従来の方法において、単一の連続した絶縁ワイヤからコイルを巻回することができるが、追加のスペース要素は不要である。通常の絶縁ワイヤを変形させる工程は、それを巻回する直前に、ワイヤをプレスして変形させることによって、巻回と同時に実行される。
【0030】
一実施形態によれば、厚さ、変形の周期性、変形セクションの長さ、変形セクションの幅、及び巻線の内径を含む群から付与されるワイヤのパラメータは、ランダムに選択される。これにより、確率論的に形成されるクーラントチャネルを形成できる。結果として得られるチャネルは、依然として非常に効果的ではあるが、最適ではない可能性がある。
【0031】
他の実施形態によれば、ワイヤパラメータと、その結果としてのコイルとの間の関係は、理想的なチャネル構成を実現するために、チャネルが、複数の層にわたって、それら自体と整列し続けることを保証するように予め定義される。そのような関係の1つは、L=2*pi*tを設定する最もシンプルな態様に含まれ、Lは周期パターンの長さ、tはワイヤの最大厚さ(高さ)であり、piはルドルフ数である。加えて、同じ層の巻線間の変形セクションと非変形セクションとが整列するように、ワイヤが巻回されるコアの円周が、長さLの倍数になるように選択される。換言すれば、Lは、ワイヤが巻回されるコアの円周の値の約数である。この整列は、巻回されたワイヤの層の直径を増加させる多数の層に対して、依然として本質的に達成される。
【0032】
クーラントチャネルは、ワイヤの続く層の間の径方向のクーラントチャネル、ワイヤの隣接するターンの間の軸方向のクーラントチャネル、及び2つの隣接するターンの間と2つの続く層の間との断面クーラントチャネルを含む群から形成することができる。
【0033】
ワイヤの断面は、変形していない円形セクションと、2つの異なる変形セクション、すなわち、層の配列方向又はターンの配列方向のいずれかの方向に、長軸を有する長円形又は楕円形のセクションとの間で変化させることができる。
【0034】
本発明に係る電磁コイル巻線は、内因的に発現する径方向及び軸方向のクーラントチャネルを有する。コイルは、種々の断面形状を有するワイヤから巻回され、かかるワイヤは、ワイヤがコアの周囲に巻回される際に、軸方向及び径方向のクーラントチャネルを集合的に形成する、交互の変形セクション及び非変形セクションからなる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して以下に説明される。図面は、本発明の好ましい実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1aは、ワイヤの第1の実施形態の部分平面図であって、ワイヤの変形した部分と変形していない部分とが交互に示されており、図1bは、図1aに係るワイヤの側面図、図1cは、図1aに係るワイヤの斜視図である。
図2図2aは、ワイヤの第2の実施形態の部分平面図であって、ワイヤの変形セクションと非変形セクションとが交互に示されており、図2bは、図2aに係るワイヤの側面図、図2cは、図2aに係るワイヤの斜視図である。
図3図3は、円筒状のコアに巻回された図1のワイヤの1つの層の部分側面図である。
図4図4は、図1に示すワイヤから形成されたコイルの1つの層における4つの隣接する巻線の部分平面図であり、ワイヤパラメータは、隣接する巻線の変形セクションが整列するように選択される。
図5図5は、図4の4つの整列した巻線の斜視図である。
図6図6は、図1に示すワイヤから形成されたコイルの1つの層における4つの隣接する巻線の部分斜視図であり、隣接する変形セクションは整列されていない。
図7a図7aは、図1に示すワイヤから形成された4つの層において、4つの隣接する巻線を備えるコイルの4×4部分の平面図であり、クーラントチャネルの配列は揃えられていない。
図7b図7bは、図7Aの4×4部分の断面図であり、チャネルが確率論的に形成され得ることを示している。
図8図8は、図1に示すワイヤから形成されたコイルの4×4部分の斜視図であり、隣接する巻線が整列して、軸方向と径方向の両方で明確に画成されたクーラントチャネルを形成します。
図9図9は、透過性の巻線を備える電磁コイルの第1の実施形態の概略断面図であり、クーラントは、主に軸方向に流れる。
図10図10は、透過性の巻線を備える電磁コイルのさらなる実施形態の概略断面図であり、クーラントは、主に径方向に流れる。
図11図11は、ワイヤ形成装置の部品の概略斜視図である。
図12図12は、図11の装置の成形ホイールのワイヤを伴った概略側面図である。
図13図13は、図12の概略拡大図である。
図14図14は、ワイヤの第3の実施形態の部分斜視図であり、ワイヤの変形した部分と変形していない部分とが交互に示されている。
図15図15は、図14に示すワイヤから形成された12層の層における5つの隣接する巻線を備えるコイルの5×12部分の断面図であり、クーラントチャネルの配列は、異なる層にわたってのみ揃えられている。
図16図16は、図14に示すワイヤから形成されたコイルの3×5部分の斜視図であり、隣接する巻線が整列され、明確に画成された軸方向のクーラントチャネルと断面クーラントチャネルを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1a、図1b、及び図1cは、断面が変化するワイヤ11の第1の実施形態10を示す、それぞれ平面図、側面図、及び斜視図である。実際のところ、これらの図面は、ワイヤの区切られた一部を示しており、ワイヤの変形セクションと、非変形セクションとが交互に示されている。
【0038】
図1は、同時に、本発明に係る方法の実施形態の結果物を示している。ワイヤ11は、当初は、市販の絶縁ワイヤである。ワイヤ11の断面は、最初は、その長さ全体にわたって一定である。ワイヤと、その絶縁体との断面は、一体に表され、ワイヤ11を以て図1aに示すように正方形とすることができる。断面は丸くすることもでき、特に、円形とすることもできる。ワイヤ11が、コイルを形成するマグネットコアに巻回されるに際し、ワイヤ11を、図11に示すように、成形ツール300を通過させて、元々の断面(例えば、正方形、又は円形、又はわずかに変形した断面)を有する非加工領域12が、新たな断面を有する変形された領域13と交互になるように、ワイヤ11の複数のセクションを周期的に変形させる。成形ツール300は、変形されたワイヤ311を作製する方法の一実施形態を示す図12及び図13に関連して後述する。
【0039】
初期ワイヤ310は、矩形、又は長円形/楕円形とすることができ、特に、絶縁された初期ワイヤとすることができる。図1と同様に、図13の変形セクション13の断面は、オリジナルセクション12よりも扁平で幅広である。セクション12,13の間には、対応する隣接した表面の間に主に傾斜面を含む、変形した上肩部101と横肩部102とが存在する。隣接する肩部101,102は、反対向きに傾斜している。丸みを帯びたワイヤ11(図示せず)の場合には、肩部は、より複雑な三次元に湾曲する。
【0040】
当然ながら、矩形の断面を有するワイヤ11から出発して、実質的に正方形の断面に変形させることが可能である。変形プロセスは、絶縁体が損傷することを予定していない。変形の主要部が、絶縁コーティングの内部に及ぶこともある。
【0041】
図2a、図2b、及び図2cは、断面が変化するワイヤの第2の実施形態20を示す、それぞれ平面図、側面図、及び斜視図である。ワイヤ21は、市販の絶縁ワイヤである。ワイヤ21の断面は、最初は、その長さ全体にわたって一定である。ワイヤ21がマグネットコアに巻回されるに際し、実質的に元々の断面を有する非加工領域22が、新たな断面を有する変形された領域23と交互になるように、ワイヤ21は周期的に変形されている。変形セクション23の断面は、オリジナルセクション22よりも扁平であり、かつ、幅狭になっており、すなわち、より小さな断面エリアに圧縮されている。換言すれば、ワイヤ21を変形するために用いるツールは、その高さと幅の両方に沿ってワイヤ21を変形させる。
【0042】
セクション22,23の間には、対応する隣接した表面の間に主に傾斜面を含む、変形した上肩部201と横肩部202とが存在する。隣接する肩部201,202は、同じ方向に傾斜し、すなわち、セクション22からセクション23へと断面積を減少させ、セクション23からセクション22へと断面積を増加させる。
【0043】
図3は、ワイヤの実施形態10の1つの層の部分側面図であり、円筒状のマグネットコア15の周囲にワイヤ11が巻回されている。軸方向のチャネル16が、ワイヤ11とコア15の表面との間に形成され、同様に、続く巻線層(図3に示さず)との間に形成されることは明らかである。図3に係る実施形態が、図2のワイヤ20を備えている場合にも、同様のチャネルが形成される。
【0044】
図4は、図1に示すワイヤの実施形態10のワイヤ11から形成されたコイルの1つの層29における4つの隣接する巻線又はターン19の部分平面図であり、コア(図示せず)に関連するワイヤパラメータは、隣接する巻線における変形セクション13が整列するように選択される。当然ながら、非変形セクション12も同様に整列される。変形セクション13は、互いに整列されて、明確に画成された径方向のクーラントチャネル110を形成するのに対して、隣接する非変形セクション12の側面は、接触面111で互いに接触している。
【0045】
図4に示す第1の層29上に、第2の巻線層(ここでは、4つのターン19)が整列されている場合に、続く層の変形セクション13が、その断面のより長い部分が底面として、非変形セクション12の上面の上に位置するように、配列が選択されると、非変形セクション12の上面に、さらに接触面111が構築される。
【0046】
図5は、図4の1つの単層29の4つの整列した巻線19の斜視図であり、軸方向のクーラントチャネル115と、径方向のクーラントチャネル110の両方を見ることができる。
【0047】
図6は、図1に示すワイヤから形成されたコイルの1つの層29における4つの隣接する巻線19の部分斜視図であり、隣接する変形セクション13は整列されていない。この場合、当然ながら、非変形セクション12は、同様に、隣接する層において整列されていない。それでも、軸方向のクーラントチャネル115と、径方向のクーラントチャネル110の両方が発現するのは明らかである。
【0048】
図7aは、図1に示すワイヤの実施形態10から形成された4つの層29において、4つの隣接する巻線19を備えるコイルの4×4部分の平面図であり、クーラントチャネル110,115の配列は揃えられていない。図7bは、図7aの4×4部分の断面図であり、ワイヤ11の変形セクション13の配列は完全にランダムであるため、チャネル110,115が確率論的に形成され得ることを示している。4×4アレイは、発現する冷却チャネル110,115を説明するために選択されている。典型的な応用では、層ごとの実際の巻線数と実際の層数の両方が、何倍も大きく、例えば、特に、10~500の巻線又はターン19を備えた、10~100の層29となることもあり得る。4×4アレイの巻線と層を用いることを選んで、適用原理を説明しており、より大きなコイルの詳細を示すことが理解できるであろう。
【0049】
図8は、図1に示すワイヤ実施形態10から形成されたコイルの4×4部分の斜視図であり、4つの隣接する巻線19が整列して、軸方向と径方向の両方で明確に画成されたクーラントチャネルを形成している。隣接する巻線のワイヤのアレイ内の配列は、変形セクション13が、巻線層29全体にわたって整列するように揃えられている。径方向及び軸方向の両方のチャネルは、それぞれ参照符号110,115によって明確にマークされている。ハッチングされた表面は、より小さい寸法の変形した表面を示している。
【0050】
図9は、透過性の巻線72を備える電磁コイル70の第1の実施形態の概略断面図であり、参照符号211が付された矢印によって表されるように、クーラントは、主に軸方向に流れる。第1のマグネットの実施形態70は、マグネットコア71の周囲に巻回された透過性の巻線72を備える。巻線72は、コア71、エンドキャップ75,76、及びアウターチューブ77の間の空間を埋めるものとして示されている。当然ながら、巻線72は、図1又は図2又は同様の実施形態のワイヤ10又はワイヤ20を以て、図8に示すように、複数のワイヤ層の複数の巻線から構築される。
【0051】
エンドキャップ75,76は、巻線の構造上の支持体を形成し、アウターチューブ77とともに、巻線72の周囲に密封された容積部を形成する。クーラントは、エンドキャップ75の入口73を通る入口流200によって表されるようにポンプで送られて、エンドキャップ76の出口74を通って出口流212として流出する。クーラントが巻線に入ると、クーラントは径方向に分散し、軸方向の流れ211として、出口74に向かって軸方向に流動する。入口73と出口74とが、マグネット71の同じ側にある場合には、ワイヤの容積部をセグメント化して、入口側に戻るU字型の流路を形成するか、又は流路を埋め込むことによって、コア71又は巻線の周囲を通過して、エンドキャップ75の入口側に戻るように、クーラントを案内するなどの設計変更が可能である
【0052】
図10は、透過性の巻線を備える電磁コイル80のさらなる実施形態の概略断面図であり、クーラントの流れ213が、主に径方向となっている。第2のマグネットの実施形態80は、マグネットコア81の周囲に巻回された透過性の巻線82を含む。エンドキャップ85,86は、アウターチューブ87とともに、巻線82の周囲に密封された容積部を形成する。要素81,85,86,87の間に、平面として示す巻線82は、図9と同様に、複数の層の複数の巻線から構築されている。クーラントは、ポンプで送られて、入口83を通り、コア81内の径方向の冷却チャネル88'を通る。クーラントが、コア81を出て巻線82に入ると、軸方向に分散するとともに、径方向に流れていって、溝89に流入する。かかる溝89は、アウターチューブ87に刻み込まれており、向きが変えられたクーラントの軸方向の流れ214を、エンドキャップ86の出口84に向けて案内する。
【0053】
図11は、ワイヤ成形装置の部品の概略斜視図であり、図12は、図11の装置の成形ホイール305,306のワイヤを伴った概略側面図であり、図13は、図12の概略拡大図である。一実施形態では、図13の主要部分の概略斜視図に示すように、巻線ツール300は、それらの外面に隆起パターン308を有する2つの成形ホイール305,306のセットを備える。好ましくは絶縁された初期ワイヤ310は、成形ホイール305,306を通して受動的に引き抜くことができ、ホイールは、駆動シャフト301によって能動的に駆動される。ワイヤ310が、成形ホイール305,306を通過するとき、その断面は、ホイール305,306上の隆起308によって周期的に変形される。2つの噛み合う歯車304として、ここに示された同期機構は、成形ホイール305,306が一緒に回転し、同期が損なわれないことを確実にする。噛み合い歯車304の1つは、駆動シャフト301に取り付けられ、第2の噛み合い歯車304は、上軸302に取り付けられる。成形ホイール305,306は、これらの軸301,302に、それぞれ平行に取り付けられている。
【0054】
図14は、ワイヤ140の第3の実施形態の部分斜視図であり、ワイヤ140の変形した部位と、変形していない部位とが交互に示されている。ワイヤ140は、変形していないワイヤ部分120において、丸みを帯びた円形の形態を有する。変形したワイヤ部分130は、図14において、エッジのない徐々に丸みを帯びた窪みを示す線によって区切られている。
【0055】
図15は、図14に示すワイヤ140から形成された、12層の層29における5つの隣接する巻線又はターン19を備えるコイルの5×12部分の断面図であり、クーラントチャネル110,116の配列は、異なる層にわたってのみ揃えられている。図15における参照符号140は、3つの異なるワイヤ140、すなわち、丸みを帯びた円形の断面(十字線で示す)を有する1本のワイヤ140と、互いに直交する二方向に最大径を有する2本の長円形又は楕円形のワイヤ140とを示している。矢印19は、隣接するターンを示し、ここでは、5つのターン19を示している。層29は、12層ある。図15の実施形態では、軸方向のクーラントチャネル115が存在しないように、続く層のすべてが、より内側の層に直接接触している。しかしながら、複数の径方向のクーラントチャネル110が存在する。円形のワイヤ140が、2つの直交する方向で、それらの断面が、円形から長円形又は楕円形に変化しているために、隣接する2つの層29のワイヤ140の2つの隣接するターン19に交差して、クーラントチャネル116の断面が現れる。隣接するターン19の数は、すべての実施形態において、数個~10個以上のうちから選択することができる。隣接する層29の数は、すべての実施形態において、数個~10個又は100個以上のうちから選択することができ、例えば、100本のワイヤ140(又はワイヤ10又はワイヤ20)の10倍の配列を形成する。
【0056】
最後に、図16は、図14に示すワイヤ140から形成されたコイルの3×5部分の斜視図であり、隣接する巻線が整列され、明確に画成された軸方向のクーラントチャネル115と断面クーラントチャネル116を形成する。換言すれば、ここでは、ターン19におけるワイヤ140の隣接する巻線は互いに接触しているが、別の層との間に、軸方向のクーラントチャネル115が現れる。いずれにせよ、丸みを帯びたワイヤ140のために、断面クーラントチャネル116が交差して存在する。
【符号の説明】
【0057】
10 ワイヤ(第1の実施形態)
11 ワイヤ
12 非変形ワイヤセクション
13 変形ワイヤセクション
15 コア
16 軸方向のチャネル
19 ターン
20 ワイヤ(第2の実施形態)
21 ワイヤ
22 非変形ワイヤセクション
23 変形ワイヤセクション
29 層
30 第1の巻線の実施形態
40 第2の巻線の実施形態
50 第3の巻線の実施形態
60 第4の巻線の実施形態
70 第5の巻線の実施形態
71 マグネットコア
72 透過性の巻線
73 クーラント入口
74 クーラント出口
75 第1のエンドキャップ
76 第2のエンドキャップ
77 アウターチューブ
80 第2のマグネットの実施形態
81 マグネットコア
82 透過性の巻線
83 クーラント入口
84 クーラント出口
85 第1のエンドキャップ
86 第2のエンドキャップ
87 アウターチューブ
88 軸方向のコアのクーラントチャネル
88′ 径方向のコアのクーラントチャネル
89 溝状のクーラントチャネル
101 変形した上肩部/下肩部
102 変形した横肩部
110 径方向のクーラントチャネル
111 接触面
115 軸方向のクーラントチャネル
116 断面クーラントチャネル
120 非変形ワイヤセクション
130 変形ワイヤセクション
131 窪み
140 ワイヤ(第3の実施形態)
200 入口流
201 変形した上肩部/下肩部
202 変形した横肩部
211 軸方向のクーラントの流れ
212 出口流
213 径方向のクーラントの流れ
214 軸方向のクーラントの流れ
300 成形装置
301 駆動軸
302 第2の軸
304 駆動歯車
305 下側成形ホイール
306 上側成形ホイール
308 隆起パターン
310 変形していないワイヤ
311 変形したワイヤ
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16