(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】キャパシタに使用するBOPPフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240712BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240712BHJP
C08F 10/06 20060101ALI20240712BHJP
C08F 110/06 20060101ALI20240712BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08L23/10
C08F10/06
C08F110/06
H01G4/32 511L
(21)【出願番号】P 2022572619
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2021063571
(87)【国際公開番号】W WO2021239594
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】レズニチェンコ,アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ウェヘンケル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フェルウィンプ,ヴェルネル
(72)【発明者】
【氏名】グローガー,ディートリヒ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-511640(JP,A)
【文献】特表2016-514759(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159069(WO,A1)
【文献】特開平09-270364(JP,A)
【文献】特表2014-518306(JP,A)
【文献】国際公開第2002/092640(WO,A1)
【文献】特表2014-531480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0298172(US,A1)
【文献】特開2014-231604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H01G 4/00-4/10;4/14-4/224
4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン組成物を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、ここで、前記ポリプロピレン組成物が以下:
93.0~99.6%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量
0.4~10.0g/10分のISO1133に準拠するメルトフローレートMFR
2、
0.0
超~1.50ppmのアルミニウム含有量、および
0.0ppmより多いチタン含有量、ならびに
0.0より多く~50.0ppmの灰分含有量、全てポリプロピレン組成物の総量に基づく、
を有するプロピレンホモポリマー(A)を含み、
前記灰分が、前記灰分含有量の総量に基づいて0.0より多く最大で25.0重量%の、
アルミニウムおよびチタンを含むことを特徴とする、二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前
記アルミニウムおよ
びチタン
は、前記灰分含有量の総量に基づいて(合計)1.0~20.0重量%の範囲内で存在する、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記ポリプロピレンは
、0.30~1.30pp
mの範囲のアルミニウム含有量、および/または0.0超~1.00ppm
の範囲のチタン含有量を有する、請求項1または2に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
前記灰分中のチタンに対するアルミニウムの比率は、0.8~3.
0の範囲内である、および/または、
前記ポリプロピレン組成物は、1.0~40.0pp
mの灰分含有量を有する、
請求項1~3のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
前記ポリプロピレン組成物は、前記プロピレンホモポリマー(A)をポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、95.0~99.9重量%含む、および/または、前記プロピレンホモポリマー(A)は96.0~98.5%のペンタッドアイソタクチシティを有する、請求項1~4のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記フィルムは、
任意で金属層を含む、前記ポリプロピレン組成物からなる層を含む
、
二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
DIN IEC 60243-2に準拠し測定され、厚さ3.8~4.2μmのフィルム上で、250V/sのDC電圧ランプ率を用いて2.84cm
2の活性電極面積で測定された、50の結果に基づいてフィットさせた2パラメータワイブル分布のスケールパラメータαとして得られる、550kV/mmと630kV/mmとの
間の絶縁破壊電界強度E
b63.2を有する、請求項1~6のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの層を含む絶縁フィルムを含むキャパシタ。
【請求項9】
93.0~99.6%のアイソタクチックペンタッド分率、
0.4~10.0g/10分のISO1133に準拠するメルトフローレートMFR
2、
0.0
超~1.50ppmのアルミニウム含有量、および
0.0ppmより多いチタン含有量、ならびに
0.0~50.0ppmの灰分含有量、全
てポリプロピレン
ホモポリマーの総量に基づく、
を有し、
前記灰分は、前記灰分含有量の総量に基づいて0.0超~最大25.0重量
%の、
アルミニウムおよびチタン(合計)を含むことを特徴とする、ポリプロピレンホモポリマー。
【請求項10】
0.30~1.30pp
mの範囲のアルミニウム含有量
を有する、および/または
0.0超~1.00pp
mの範囲のチタン含有量
を有する、および/または
前記灰分中のチタンに対するアルミニウムの比率は、0.8~3.
0の範囲である、請求項9に記載のポリプロピレンホモポリマー。
【請求項11】
以下の工程:
(A)以下を含むポリプロピレン組成物を提供する工程:
93.0~98.0%のアイソタクチックペンタッド分率含有量、および0.4~10.0g/10.0分のメルトフローレートMFR
2を有し、
0.0ppmより多く
、最大1.50ppmのアルミニウム含有量、および
0.0ppmより多く
、最大1.00ppmのチタン含有量、ならびに
0.0~50.0ppmの灰分含有量、全て前記ポリプロピレン組成物の総量に基づく、
を有する、プロピレンホモポリマー(A)であり、
前記灰分は、前記灰分含有量の総量に基づいて0.0超~最大25.0重量%
のアルミニウムおよびチタン(合計)を含むことを特徴とする、プロピレンホモポリマー(A)、
(B)前記ポリプロピレン組成物をフラットフィルムに押出する工程、
(C)前記フラットフィルムをMD方向とTD方向に同時に配向させ
、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る工程、および
(D)厚さ3.8~4.2μmのフィルム上で250V/sのDC電圧ランプ率を用いて活性電極面積2.84cm
2で測定した、50の結果に基づきフィットさせた2パラメータワイブル分布のスケールパラメータαとして得られる、550kV/mmと630kV/mmとの間の絶縁破壊電界強度E
b63.2を有する、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを回収する工程
を含む、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記ポリプロピレン組成物は、前記ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、99.0重量%以上の前記プロピレ
ンホモポリマー、および/または、前記ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、0.01~1.0重量%以下の添加剤をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得るための、前記フラットフィルムのMD方向とTD方向への同時配向が連続的方法で行われる、および/または前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムが請求項1~9のいずれかに記載のフィルムである、請求項11または12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
0.0~3.5重量%の範
囲のデカリン可溶成分量を有する
請求項9または10に記載のポリプロピレンホモポリマーを調製するためのスラリー重合方法であり、ここで触媒系が以下:
a)チーグラー・ナッタ触媒、
b)有機アルミニウム共触媒、
c)式(I):
【化1】
[式中、
R1およびR2は、独立してHまたはC
1-C
3飽和または不飽和ヒドロカルビルであり、場合により共に連結して1つ以上の環状構造を与え;
R3およびR4は、独立してHまたはC
1-C
4ヒドロカルビルであり、場合により共に連結して1つ以上の環状構造を与え;
R5は、HまたはC
1-C
12ヒドロカルビルであり、
ただし、R3~R5の少なくとも1つの基は水素ではない]
で示される外部供与体、
を含む、重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャパシタフィルムに使用する新規BOPPフィルムに関する。
【0002】
ポリプロピレンは多くの用途に使用されており、例えば、その鎖は電界応力下で配向するいかなる種類の極性基も持たないことから、フィルムキャパシタの分野で選択される材料である。近年、様々な種類の電気装置にインバーターが搭載されており、この傾向に伴い、キャパシタの小型化および高容量化の要求が高まっている。このような市場からの需要のため、より薄く、且つ機械的特性および電気的特性の両方を向上させた二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムが、キャパシタ用途分野において好ましくは使用されている。
【0003】
キャパシタフィルムは、高温のような極限状態に耐える必要があり、高い絶縁破壊強度を有する必要がある。加えて、キャパシタフィルムは高い剛性といった良好な機械的特性、および高い操作温度も有することが好まれる。全キャパシタフィルムグレードの上位43%、つまり溶接、電気自動車、列車、オーブン、風車、ソーラーパネルなどといった電力用途は、高アイソタクチックポリプロピレン(HIPP)樹脂を使用している。バランスのとれた収縮率と最適化された表面粗さとは別に、高アイソタクチシティに関連する主な利点は、高い結晶性、高い融解開始温度、および高い融解ピーク温度に関連する、最終フィルムの高い耐熱性である。したがって、この分野における最近の取り組みは、材料の結晶性および耐熱性の向上である。
【0004】
さらには、特に耐破壊性の意味において向上した電気的特性を有する、キャパシタ用途に適したポリマーおよびフィルムが特に望まれる。
【背景技術】
【0005】
欧州特許出願公開第2701165号明細書および欧州特許出願公開第2684676号明細書には、最終のBOPPフィルムの溶融温度および耐熱性を向上するために、直鎖状ポリプロピレンの結晶化方法を高めることが知られる、側鎖を有する鎖骨格を有するポリプロピレンを、ポリプロピレン樹脂に含むことが記載されている。
【0006】
しかしながら、分岐ポリプロピレンの添加に伴うベース樹脂の結晶性および融点の増大は、材料を硬くしすぎ、典型的にはそのような樹脂から調製されるBOPPフィルムの靭性、すなわち破断伸びを低下させる。これは、BOPP製造工程中の重大な欠点、例えば、BOPP製造中のフィルム破断の可能性の増加を引き起こす。
【0007】
したがって、キャパシタに使用するための改善されたBOPPフィルムを提供することに対する技術における要求が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第2701165号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2684676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、耐久性および/または破壊に対する耐久力(レジリエンス)といった改善されたキャパシタ特性を特徴とする、このような改善されたフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、ポリプロピレン組成物を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関し、ここで前記ポリプロピレン組成物が、93.0~98.0%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量、0.4~10.0g/10分のISO1133に準拠するメルトフローレートMFR2、0.0ppmより多いアルミニウム含有量、0.0ppmより多いチタン含有量、および0.0より多く~50.0ppmの灰分含有量、全てポリプロピレン組成物の総量に基づく、を有するプロピレンホモポリマー(A)を含み、前記灰分が、前記灰分含有量の総量に基づいて0.0より多く最大で25.0重量%の周期表のIUPAC第4族から第13族までの元素から選択される金属を含むことを特徴とする。
【0011】
別の側面から見ると、本発明は、本発明のポリプロピレン組成物および二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるようなポリプロピレンを製造するための方法を提供する。
【0012】
別の側面から見ると、本発明はキャパシタフィルムのための、またはキャパシタ用途における、本発明のポリプロピレンの使用を提供する。
【0013】
本発明は、絶縁フィルムを含むキャパシタにも関し、ここで、該フィルムの少なくとも1つの層が本発明による二軸延伸ポリプロピレンを含む。
【0014】
以下において、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるポリプロピレン組成物は、プロピレンホモポリマー(A)を最大100重量%含んでよい。これは、成分Aの最大の合理的な含有量に関し、残りの成分のそれぞれの量は所望の効果を達成するためになお十分に高い。
【0016】
したがって、本発明の好ましいポリプロピレン組成物は、95.0~99.9重量%、好ましくは96.0~99.7重量%、より好ましくは97.0~99.5重量%、例えば98.5~99.0重量%のポリプロピレンホモポリマー(A)を含む。
【0017】
ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、0.01~1.0重量%以下の従来の添加剤をさらに含んでよい。添加剤は、酸化防止剤、安定剤、酸捕捉剤、およびそれらの混合物から選択されてよい。
【0018】
通常通り、1ppmの添加剤は、1kgのポリプロピレン組成物中の1mgの添加剤に相当する。
【0019】
好ましくは、ポリプロピレン組成物は、プロピレンホモポリマー(A)からなる。本発明においては、組成物が「からなる(consisting of)」という表現を用いて閉じた方法で定義される場合であっても、従来の添加剤が存在してよいことが想定される。
【0020】
本発明で使用されるホモポリマーという表現は、実質的に、すなわち少なくとも99.5重量%、より好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態においては、プロピレンホモポリマー(H-PP)中のプロピレン単位のみが検出可能である。コモノマー含有量は、実施例において後述するように、13C NMR分光法を用いて測定され得る。
【0021】
さらに、プロピレンホモポリマー(A)は、直鎖ポリプロピレンであることが好まれる。さらに、本発明のプロピレンホモポリマー(A)は、特定の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有することが好ましい。230℃、2.16kgの荷重(ISO1133)の下で測定したメルトフローレートをMFR2(230℃)と定義する。したがって、本発明において、ポリプロピレンホモポリマー(A)は、少なくとも0.4g/10分、好ましくは少なくとも1.5g/10分、より好ましくは少なくとも2.5g/10分のMFR2(230℃)を有することが好ましい。したがって、ポリプロピレンホモポリマー(A)のISO1133に準拠し測定したMFR2(230℃)は、0.4~10.0g/10分、好ましくは1.5~10.0g/10分の範囲、より好ましくは2.5~6.0g/10分の範囲、例えば2.5~4.5g/10分の範囲であることが好まれる。
【0022】
キャパシタフィルムにおける1つの重要な側面は低い灰分含有量であり、そうでなければ絶縁特性が悪影響を受ける。したがって、ポリプロピレンホモポリマー(A)および/または組成物の灰分含有量、および、従って二軸延伸ポリプロピレンフィルム中の灰分含有量はむしろ低いことが好まれる。
【0023】
そこで、ポリプロピレンホモポリマー(A)および/または組成物、ならびにフィルムは、0.0超~50.0ppm、好ましくは1.0~40.0ppmまたは4.0~30.0ppm、例えば7.0~20ppmの範囲の灰分含有量を有してよい。
【0024】
十分な絶縁破壊電界強度を確保するために、灰分中の金属の総量は少なくてよい。
【0025】
灰分中の金属の総量(合計)は、灰分含有量の総量に基づいて、最大25.0重量%、好ましくは0.0超~25.0重量%の範囲、例えば1.0~20.0重量%または3.0~15.0重量%の範囲である。
【0026】
本発明の関連において、金属は第4族(チタン類)から第13族(ホウ素類)までのIUPAC群から選択される元素であると理解される。好ましくは、金属は第4族および/または第13族のIUPAC群から選択される元素である。好ましい実施形態において、金属はアルミニウムおよび/またはチタンである。好ましくは、アルミニウムとチタンの両方が灰分中に存在する。特に、アルミニウムおよびチタンは、灰分中で測定可能な唯一の金属である。
【0027】
本発明においては、カルシウムおよびマグネシウムのいずれも、金属とはみなされない。
【0028】
好ましい実施形態において、灰分中のアルミニウムおよびチタンの総量(合計)は、灰分含有量の総量に基づいて最大25.0重量%であってよく、好ましくは、0.0超~25.0重量%の範囲、たとえば1.0~20.0重量%または3.0~15.0重量%の範囲であってよい。
【0029】
一実施形態において、ポリプロピレンホモポリマー(A)並びにフィルムは、0.0超~1.50ppm以下の範囲、例えば0.30~1.30ppm以下の範囲、好ましくは0.50~1.25ppm以下の範囲のアルミニウム含有量を有してよい。
【0030】
上記とは別に、プロピレンホモポリマー(A)は、0以上1.00ppm以下の間、好ましくは0.20~0.75ppm以下の範囲、より好ましくは0.30~0.70ppm以下の範囲のチタン含有量を有してよい。
【0031】
本発明のポリプロピレン並びに二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、チタン含有量に対するアルミニウムの特定の重量比を有してよい。理想的には、アルミニウム含有量はチタン含有量よりも多い。
チタンに対するアルミニウムの重量比は、0.8~3.0、好ましくは1.0~2.5または1.2~2.0の範囲であってよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、ポリプロピレンホモポリマー(A)は、高度にアイソタクチックである。したがって、ポリプロピレンホモポリマー(A)は、かなり高いペンタッドアイソタクチシティ<mmmm>を有すること、すなわち93.0%より高い、好ましくは96.0%より高いペンタッドアイソタクチシティを有することが好まれる。好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー(A)のアイソタクチシティ<mmmm>は、93.0~99.6%、より好ましくは96.0~99.5%の範囲、さらにより好ましくは96.0~98.5%の範囲である。
【0033】
ポリプロピレンホモポリマー、組成物、並びにフィルムの融点は、少なくとも163.0℃、例えば163.0~170.0℃の範囲、好ましくは164.0~168.0℃の範囲、または164.0~166.0℃の範囲であってよい。
【0034】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、本発明のポリプロピレンホモポリマー(A)は、むしろ低いキシレン冷溶性(XCS、xylene cold soluble)成分量、すなわち2.0重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下、さらにより好ましくは1.6重量%以下のキシレン冷溶性(XCS)成分量によって特徴付けられてよい。したがって、本発明のポリプロピレンホモポリマー(A)は、0.3~2.0重量%の範囲、より好ましくは0.3~1.8重量%の範囲、さらにより好ましくは0.4~1.6重量%の範囲のキシレン冷溶性(XCS)成分量を有することが特に好まれる。
【0035】
さらに、キシレン冷溶性(XCS)の総量は、ポリプロピレンホモポリマー(A)が、好ましくはエチレンプロピレンゴムのようないかなるエラストマーポリマー成分も含まないことを示す。言い換えると、ポリプロピレン(PP)は、異相ポリプロピレン、すなわち、エラストマー相が分散されたポリプロピレンマトリックスからなる系であってはならない。このような系は、かなり高いキシレン冷溶性成分量によって特徴付けられる。
【0036】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造に使用されるポリプロピレンホモポリマーはまた、そのデカリン可溶成分量によって特徴付けられてもよい。ポリプロピレンホモポリマーのデカリン可溶成分量は、0.0~3.5重量%の範囲、例えば1.0~3.0重量%または1.3~2.5重量%の範囲であってよい。
【0037】
本発明による二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムは、少なくとも80.0重量%の、より好ましくは少なくとも90.0重量%の本発明で定義されるポリプロピレン組成物を含んでよく、さらにより好ましくは本発明で定義されるポリプロピレン組成物からなる。
【0038】
したがって、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが、プロピレン組成物およびプロピレンホモポリマーによってそれぞれ主に形成されることを考慮すると、本発明の範囲内で、ポリマーおよび組成物について開示された特性はフィルムにも適用され、逆もまた同様であることが理解される。
【0039】
絶縁破壊電界強度(Eb63.2)は、DIN IEC 60243-2に準拠し測定され、IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation (2013), Vol.20(3), pp.937-946 に詳細に記載される方法に従って評価される。
絶縁破壊電界強度は、3.8~4.2μmの厚さのフィルム上で250V/sのDC電圧ランプ率を用いて2.84cm2の活性電極面積で測定した、50の結果に基づいてフィットさせた2パラメータワイブル分布のスケールパラメータαとして求められた。
【0040】
一実施形態において、フィルムは、550~630kJ/m2/mm、好ましくは570kV/mmと620kV/mmとの間、好ましくは580kV/mmと610kV/mmとの間の絶縁破壊電界強度Eb63.2を有してよい。
【0041】
さらに、本発明の二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムは、キャパシタフィルムに採用され得る。この場合、キャパシタフィルムは、少なくとも80.0重量%、より好ましくは少なくとも90.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.0重量%のポリプロピレン組成物または二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムを含む。特に好ましい実施形態では、キャパシタフィルムは、本発明によるポリプロピレン組成物または二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムからなる。
【0042】
好ましくは、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムは、MD方向に少なくとも4倍、好ましくは少なくとも5倍、およびTD方向に少なくとも4倍、好ましくは少なくとも5倍の延伸比を有してよく、より好ましくは、MD方向に少なくとも9倍、およびTD方向に少なくとも5倍の延伸比を有する。
フィルムは、MD方向とTD方向に同時に延伸されてよい。
【0043】
キャパシタフィルム、すなわち二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムは、当技術分野で知られる従来の延伸方法によって調製され得る。従って、本発明によるキャパシタフィルム、すなわち二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムの製造方法は、本明細書に定義されるポリプロピレン組成物の使用、および、好ましくは当技術分野で知られるテンター法による、前記ポリプロピレン組成物のフィルムへの成形を含む。
【0044】
テンター法は、特に、本明細書に定義されるポリプロピレン組成物をTダイのようなスリットダイから溶融押出し、冷却ドラム上で冷却し、未延伸シートを得る方法である。前記シートを、例えば加熱金属ロールで予熱した後、周速差を設けた複数のロール間で長さ方向に延伸し、その後両端をグリッパーでグリップし、前記シートをテンターを用いてオーブン内でTD方向に延伸し、二軸延伸フィルムを得る。長さ方向への延伸中の前記延伸シートの温度は、好ましくは本明細書で定義されるポリプロピレンの融点の温度範囲内(MD方向:-30~-10℃、TD方向:-5~+10℃)になるように制御される。
その後、キャパシタフィルム、すなわち二軸延伸フィルム(BOPP)は、表面上で、空気、窒素、炭酸ガスまたはその任意の混合物中でコロナ放電により処理され、金属化され得り、堆積される金属への接着強度が向上され、巻取機に巻き取られ得る。
【0045】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、0.5~15.0μmの範囲、好ましくは1.0~10.0μmまたは3.0~8.0μmの範囲の厚みを有してよい。好ましい実施形態では、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、1.0~5.0μm、例えば2.0~4.0μmの範囲の厚さを有してよい。
同様に好ましい実施形態において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、3.0~10.0μmの範囲、例えば4.0~8.0μmまたは5.0~7.0μmの範囲の厚さを有して良い。
【0046】
一実施形態において、フィルムは、ポリプロピレン組成物からなる層を含んでよい。任意選択で、フィルムは金属層を含んでもよい。
【0047】
本発明はまた、本発明による二軸延伸ポリプロピレンフィルムの層を含む絶縁フィルムを含むキャパシタにも関し、このフィルムは任意に金属層を含んでよい。
【0048】
本発明はさらに、以下の工程を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法に関する:
(1)93.0~98.0%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量、および0.4~10.0g/10.0分のメルトフローレートMFR2を有し、0.0ppmより多く、任意で最大1.50ppmのアルミニウム含有量、および0.0ppmより多く、任意で最大1.00ppmのチタン含有量、ならびに、0.0~50.0ppmの灰分含有量、全てポリプロピレン組成物の総量に基づく、を有するポリプロピレンホモポリマー(A)
を含むポリプロピレン組成物を提供する工程、
ここで、前記灰分は、前記灰分含有量の総量に基づいて、0.0超~最大25.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%または3.0~15.0重量%の、周期表のIUPAC第4族から第13族までの元素から選択される金属(合計)を含み、該金属は好ましくはアルミニウムおよびチタンであることを特徴とする、
(2)前記ポリプロピレン組成物をフラットフィルムまたはシートに押出する工程、
(3)前記フラットフィルムをMD方向とTD方向に同時に配向させ、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る工程、および
(4)前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを回収する工程、該フィルムは、厚さ3.8~4.2μmのフィルム上で250V/sのDC電圧ランプ率を用いて活性電極面積2.84cm2ので測定した50の結果に基づきフィットさせた2パラメータワイブル分布のスケールパラメータαとして得られる、550kV/mmと630kV/mmとの間の絶縁破壊電界強度Eb63.2を任意に有する。
【0049】
前記方法の一実施形態において、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、99.0重量%以上のプロピレンホモポリマーをさらに含む。
【0050】
前記方法のさらなる実施形態において、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、0.01~1.0重量%の添加剤をさらに含んでよい。
【0051】
前記方法のさらなる実施形態では、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得るための、フラットフィルムのMD方向とTD方向への同時配向は、連続的方法で実施される。
【0052】
前記方法のさらなる実施形態において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、本発明によるフィルムである。
【0053】
<重合方法>
本発明はさらに、0.0~3.5重量%の範囲、好ましくは1.0~3.0重量%の範囲、より好ましくは1.3~2.5重量%の範囲のデカリン可溶成分量を有するポリプロピレンホモポリマー(A)を調製するためのスラリー重合方法であり、ここで触媒系が、以下:
a) チーグラー・ナッタ触媒、
b) 有機アルミニウム共触媒、
c) 式(I):
【化1】
[式中、
R1およびR2は、独立してHまたはC
1-C
3飽和または不飽和ヒドロカルビルであり、場合により共に連結して1つ以上の環状構造を与え;
R3およびR4は、独立してHまたはC
1-C
4ヒドロカルビルであり、場合により共に連結して1つ以上の環状構造を与え;
R5は、HまたはC
1-C
12ヒドロカルビルであり、
ただし、R3~R5の少なくとも1つの基は水素ではない]
で示される外部供与体、
を含む、重合方法に関する。
【0054】
本発明の方法において製造されるポリプロピレンホモポリマー(A)は、かなり高い(すなわち93.0%より高い、好ましくは96.0%より高い)ペンタッドアイソタクチシティ<mmmm>を有してよい。好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー(A)のアイソタクチシティ<mmmm>は、93.0~99.6%、好ましくは96.0~99.5%の範囲、好ましくは96.0~98.5%の範囲である。
【0055】
本発明に記載の重合方法は、ポリプロピレンを製造するための単峰形または多峰形のスラリー重合方法であり得る。典型的には、プロピレン(共)重合体は、商業規模においては、多峰形のプロセス構成で製造される。当技術分野で知られているそのような多峰形の重合方法は、少なくとも2つの重合段階を含む。重合段階をカスケードモードで操作することが好ましい。1つの好ましい実施形態において、多峰形の重合構成は、カスケードモードで操作される少なくとも3つのスラリー反応器を含む。
【0056】
スラリーにおける重合は、不活性希釈剤、典型的には、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン等、またはそれらの混合物等の炭化水素希釈剤中で行われてよい。好ましくは、希釈剤は、ドデカンのような10~14個の炭素原子を有する高沸点炭化水素、またはそのような炭化水素の混合物である。プロピレン重合では、モノマーが反応媒体としてよく使用される。
【0057】
スラリー重合における温度は、典型的には40~115℃、好ましくは60~110℃、特に65~90℃である。圧力は、1~150bar、好ましくは5~80barである。
【0058】
スラリー重合は、スラリー重合に使用される任意の既知の反応器で実施されてよい。このような反応器としては、連続撹拌槽反応器およびループ反応器などが挙げられる。重合を撹拌槽反応器で実施することが特に好ましい。当技術分野で知られているように、水素は任意に反応器内に供給され、ポリマーの分子量を制御する。実際の水素供給量は、得られるポリマーに所望されるメルトインデックス(または分子量)によって決まる。
【0059】
本発明で使用される触媒系は、第2族金属の化合物、第4~第10族遷移金属の化合物、またはランタニドもしくはアクチニド、任意に第13族金属の化合物および任意に内部電子供与体を含む、チーグラー・ナッタ触媒に基づく。
【0060】
第2族金属の化合物は、好ましくは、ハロゲン化マグネシウム、特に二塩化マグネシウムのようなマグネシウム化合物である。
【0061】
遷移金属化合物は、好ましくは第4~6族の化合物であり、より好ましくは第4族遷移金属化合物またはバナジウム化合物であり、さらにより好ましくはチタン化合物である。特に好ましくは、チタン化合物は、式XyTi(OR8)4-yで示されるハロゲン含有チタン化合物であり、式中、R8はC1-20アルキル、好ましくはC2-10、より好ましくはC2-8のアルキル基であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、yは1、2、3または4、好ましくは3または4、より好ましくは4である。
【0062】
適当なチタン化合物としては、トリアルコキシチタンモノクロライド、ジアルコキシチタンジクロライド、アルコキシチタントリクロライド、および四塩化チタンが挙げられる。さらにより好ましくは、チタン化合物はTiCl3である。
【0063】
内部電子供与体としては、触媒に含まれる場合、以下の化合物が特に適当である、カルボン(ジ)酸の(ジ)エステル、例えばメタクリレート、フタレート、または、非フタル酸カルボン(ジ)酸の(ジ)エステル、エーテル、ジエーテル、または、酸素もしくは窒素含有ケイ素化合物、またはこれらの混合物である。
【0064】
本発明の重合方法は、上記で定義したチーグラー・ナッタ触媒に加えて、活性化剤としても知られる共触媒、および任意に外部電子供与体を含む。供触媒および外部電子供与体は、重合方法に別々に供給される、すなわち、それらは固体チーグラー・ナッタ触媒の一部ではない。
【0065】
共触媒は、第13族金属の有機金属化合物であり、典型的にはアルミニウム化合物である。これらの化合物には、アルキルアルミニウムおよびアルキルアルミニウムハロゲン化物が含まれる。好ましくは、アルキル基は、C1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基であり、ハロゲン化物は塩化物である。好ましくは、共触媒は、トリ(C1-C4)アルキルアルミニウム、ジ(C1-C4)アルキルアルミニウムクロリドまたは(C1-C4)アルキルアルミニウムジクロリドまたはこれらの混合物である。最も好ましくは、アルキル基はエチルである。1つの具体的な実施形態において、共触媒はジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)である。
【0066】
ad c)外部供与体:
好ましい一実施形態において、R1およびR2ならびにR3の各々は、互いに独立して、Hまたはメチルであってよく、R4およびR5は、互いに独立して、C1-C4ヒドロカルビル、特にC1-C2ヒドロカルビルから選択されてよい。
【0067】
代替的に好ましいのは、外部供与体としての2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)またはイソブチルメタクリレート(iBMA)であり、後者が特に好ましい。
【0068】
一実施形態において、プロピレンホモポリマー(A)は、上記の方法によって得ることができる、場合により得られる。
【0069】
したがって、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン組成物を含み、この組成物は、上記の方法によって得ることができる、場合により得られたプロピレンホモポリマー(A)を含む。
【0070】
次に、以下に示す実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0071】
以下の用語の定義および測定方法は、特に定義しない限り、上記の発明の一般的な説明並びに以下の実施例にも適用される。
【0072】
<測定方法>
<MFR2(230℃)>
メルトフローレートMFR2は、ISO1133(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定される。
【0073】
<キシレン冷溶性成分量(XCS重量%)>
キシレン冷可溶性成分量(XCS)は、ISO6427に準拠し23℃で測定される。
【0074】
<デカリン可溶成分量(DS)>
2gのポリマー試料を100mlの安定化デカヒドロナフタレン(=デカリン)中、160℃に加熱して1時間撹拌して溶解させる。この溶液を室温で1時間冷却した後、25℃のウォーターバスに1時間放置する。この溶液をろ過する。20mlのろ液をタールド(tarred)アルミニウムパンに定量的に移す。該パンを195℃のホットプレート上に置き、窒素のゆるやかなストリームで覆う。該パン中の残渣がほとんど乾燥したら、該パンを140℃の真空オーブンに2時間置く。ろ液の全固形濃度を可溶成分量の量とする。
【数1】
【0075】
<示差走査熱量測定(DSC)>
示差走査熱量測定(DSC)分析、融解温度(Tm)および融解エンタルピー(Hm)、結晶化温度(Tc)、ならびに結晶化熱(Hc、HCR)は、TA Instrument Q200示差走査熱量測定(DSC)を用いて5~7mgの試料で測定する。DSCは、ISO11357/part3/methodC2に準拠し、-30℃~+225℃の温度範囲内において、10℃/分のスキャン速度で、加熱/冷却/加熱サイクルにおいて走査される。結晶化温度(Tc)および結晶化熱(Hc)は冷却工程から測定し、一方融解温度(Tm)および融解エンタルピー(Hm)は第2加熱工程から測定した。
【0076】
<GPC>
分子量平均値(Mw、Mn)、および分子量分布(MWD)、すなわちMw/Mnの比(ここで、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)は、ISO16014-4:2003およびASTM D6474-99に準拠した、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。赤外線(IR)検出器を備えるPolymerChar GPC装置は、Polymer Laboratories社製の3x Olexisおよびlx Olexis Guard カラム、並びに溶媒として1,2,4-トリクロロベンゼン(250mg/Lの2,6-ジtertブチル-4-メチル-フェノールで安定化されたTCB)を160℃、1mL/分の一定流量を用いて使用した。分析ごとに200μLの試料溶液を注入した。カラムセットは、0.5kg/モル~11500kg/モルの範囲内で、少なくとも15の狭いMWDポリスチレン(PS)標準試料を用いて(ISO16014-2:2003に準拠した)国際校正を用いて校正した。使用したPS、PEおよびPPのマークホウウィンク定数は、ASTM D6474-99に記載された通りである。全ての試料は、GPC装置のオートサンプラー内で連続的に穏やかな振とうの下、最大160℃で、PPは2.5時間、またはPEは3時間で、5.0~9.0mgのポリマーを(160℃で)8mLの(移動相と同じ)安定化TCB中に、溶解させることにより調製した。
【0077】
<灰分>
ポリマーの灰分は、元のポリマーの燃焼残分の相対重量百万分の一を測定することにより、重量測定で決定した。
燃焼残分は、白金るつぼ内のポリマー試料の2段階燃焼プロセスで得られた。
まず、空のるつぼをマッフル炉内で15分間1000℃に加熱し、その後、デシケーター内で3時間冷却する。
その後、該るつぼの重量を、検出限界0.0001gの分析秤で測定する(結果A)。
次いで、100gのポリマー試料を、検出限界0.0001gの分析秤を用いて、該るつぼ内に秤量する(結果B)。
試料を入れた該るつぼをブンゼンバーナーの炎で加熱し、ポリマーを灰残分へとゆっくりと酸化させる。
その後、灰残分を含む該るつぼをマッフル炉で15分間1000℃に加熱し、デシケーター内で3時間冷却する。
検出限界0.0001gの分析秤上でるつぼを秤量することにより灰分を測定する(結果C)。
灰分(ppm)は、[(C-A)/B]*1000000であり、即ちポリマー試料の重量で割った残分の重量である。
上記で測定された灰分は繰返し測定し、その平均値を報告する。
測定値間の差が7ppmを超える場合は、3回目の測定を行う。
【0078】
灰の金属含有量は、灰分残分の量に対する金属残分の総和量として理解される。
【0079】
<アルミニウムおよびチタンの定量>
チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)は、ICP-OES、発光分光分析法(Optima 2000DV)を用いる誘導結合プラズマを用い、前記残分の酸分解物と酸標準物質から測定する。Ti含有量およびAl含有量はppmで報告する。酸分解物の調製:硫酸-酢酸混合液(400mlの酢酸中に10mlのH2SO4)10mlで湿潤させた25gのポリマーから残分を得る。湿潤させた試料を石英皿の上で直接点火により燃焼する。その後、得られた残分を、625℃に保持したマッフル炉でさらに30分間加熱する。該残分を冷却後、20mlの塩酸水溶液(500ml 塩酸37%/500脱塩水)に溶解し、Whatmann41フィルターでろ過する。液相を脱塩水で100mlに希釈する。この分解物をICP-OESで分析する。
【0080】
<NMR分光法による微細構造の定量>
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、ポリマーのアイソタクチシティおよびコモノマー含有量を定量した。
定量的13C{1H}NMRスペクトルは、1Hおよび13Cについてそれぞれ400.15MHzおよび100.62MHzで作動させたBruker Advance III 400 NMR spectrometerを用いて、溶液状態で記録した。全てのスペクトルは、13C最適化10mm拡張温度プローブヘッドを用い、全ての空気圧に窒素ガスを用いて125℃で記録した。
ポリプロピレンホモポリマーについては、約200mgの材料を1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)に溶解させた。均質な溶液を確保するために、ヒートブロックでの最初の試料調製の後、NMRチューブを回転式オーブンで少なくとも1時間さらに加熱した。磁石内への挿入後、該チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主にタクチシティ分布の定量に必要な高分解能のために選択された(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.;Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromoleucles30(1997)6251)。NOEおよび2レベルWALTZ16デカップリングスキームを利用した、標準単パルス励起を採用した(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)。1スペクトルあたり合計8192(8k)のトランジェントを取得した。
【0081】
エチレン-プロピレン共重合体については、約200mgの材料を3mlの1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)にクロム-(III)-アセチルアセトナート(Cr(acac)3)とともに溶解させ、溶媒中の緩和剤の65mM溶液とした(Singh,G., Kothari,A.,Gupta,V.,Polymer Testing28 5(2009),475)。均一な溶液を確保するために、ヒートブロックでの最初の試料調製後、NMRチューブを回転式オーブンで少なくとも1時間さらに加熱した。磁石内への挿入後、該チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主に高分解能のために選択され、正確なエチレン含有量の定量のために定量的に必要とされた。最適化されたチップ角度、1秒間のリサイクル遅延、および2レベルWALTZ16デカップリングスキームを用いた、NOEのない標準シングルパルス励起を採用した(Zhou,Z.,Kuemmerle, R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)。1スペクトルあたり合計6144(6k)個のトランジェントを取得した。
【0082】
定量的な13C{1H}NMRスペクトルは、処理、積分し、その積分値から関連する定量的特性を専用のコンピュータプログラムを用いて決定した。
【0083】
エチレン-プロピレン共重合体では、すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを用いて、30.00ppmでのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基に対して間接的に参照した。この手法により、この構造単位が存在しない場合でも比較参照することができた。
【0084】
ポリプロピレンホモポリマーでは、すべての化学シフトは21.85ppmでのメチルイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部標準とする。
レジオ欠陥(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253;;Wang,W-J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157;Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)またはコモノマーに対応する特徴的なシグナルを観察した。
23.6-19.7ppmの間のメチル領域を積分し、目的の立体配列に関連しない任意の部位を補正して、タクチシティ分布を定量した(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.,Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromoleucles 30(1997)6251)。
特に、レジオ欠陥およびコモノマーがタクチシティ分布の定量に与える影響は、立体配置の特定の積分領域から代表的なレジオ欠陥およびコモノマー積分を差し引くことによって補正した。
アイソタクチシティはペンタッドレベルで測定し、全ペンタッド配列に対するアイソタクチックペンタッド(mmmm)配列の割合として報告した。
【数2】
【0085】
ポリマー中のエチレンのモル分率は、Wangらの方法(Wang,W-J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157)を使用して、定められた条件を用いて得られた13C{1H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分により定量した。この方法は、その正確さ、頑健性、そして必要時にレジオ欠陥の存在を考慮できることから選択された。より広い範囲のコモノマー含有量に広く適用できるよう、積分領域をわずかに調整した。
【0086】
ポリマー中のモル%でのコモノマー組込みは、モル分率から以下に従い計算した:
【数3】
ポリマー中の重量割合でのコモノマー組込みは、モル分率から以下に従い計算した:
【数4】
【0087】
トリアッドレベルでのコモノマー配列分布は、Kakugoらの方法(Kakugo, M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules15(1982)1150)を使用し、定められた条件を用いて得られた13C{1H}スペクトルの全スペクトル領域にわたる複数のシグナルの積分により測定した。この方法は、その頑健性から選択された。より広い範囲のコモノマー含有量に広く適用できるよう、積分領域をわずかに調整した。
【0088】
ポリマー中の所定のコモノマートリアッド配列のモルパーセントは、Kakugoらの方法(Kakugo,M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules15 (1982)1150)、によって決定されたモル分率から、以下に従い計算した:
【数5】
【0089】
<絶縁破壊強度>
絶縁破壊試験および電極設計:
絶縁破壊強度は、DIN IEC 60243-2と概して一致して、直流(DC)、250V/sの電圧ランプ速度、および、活性電極面積2.84cm2(これは、円筒形電極直径(2.5cm)が、エッジ半径が0.3cmであるために0.6cm減少したことによる)(IEC 60243-1および-2のシリンダー/プレートセットアップ)を用いて、測定した。
IEC 60243-2の標準電極設計を、上部円筒電極と接地電極上に置かれたアルミナ箔で包まれたパッド発泡エラストマー(例えばマウスパッド)との間にBOPPフィルムを配置する修正をして、使用した。
絶縁破壊電界強度は、IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation(2013),Vol.20(3),pp.937-946に詳細に記載された方法に従い評価した。
絶縁破壊電界強度は、3.8~4.2μmの厚さのフィルムに250V/sの直流電圧ランプ速度を用いて活性電極面積2.84cm2で測定した50の結果に基づいてフィットさせた、2パラメータワイブル分布のスケールパラメータαとして求めた。
【0090】
各BOPPフィルムにおいて、絶縁破壊強度を以下に記載するように50回測定した。50回の絶縁破壊測定は、10×5グリッド(すなわち、TD幅にわたる10個の絶縁破壊の列、およびBOPPフィルムのMDに沿って測定された5個のこのような列)に従い測定することにより、約2.5m2のBOPPフィルム面積にわたり分散された。
この測定計画を達成するために、BOPPフィルム試験片を50個のグリッド位置から切り出し、上記のような電極設計で個別に破壊した。冷却ロールの反対のフィルム面を上部電極に向けた。スパークによる活性電極領域外の破壊は捨てた。破壊発生後、破壊穴の周囲で膜厚を3回測定し平均した。絶縁破壊(電界)強度Eb(kV/mm)は、平均化した試料厚さd(mm)で除された絶縁破壊時の電圧(kV)である。
【0091】
<統計的評価>
破壊分布(DBD)を評価するために、IEC 62539は、2パラメータワイブル分布(2-Weibull)、3パラメータワイブル分布(3-Weibull)、対数正規分布、および第1漸近極値分布(1AEV)などの極値分布を推奨する。一般に、破壊メカニズムが不明な場合、統計分布は主にフィッティングの質によって選択される。しかし、多くの著者はワイブル分布を使用し、その累積密度分布関数は、3パラメータ変形について、式1で示される:
【数6】
式1:3つのパラメータα(スケール)、β(シェイプ)およびδ(ロケーション)を有するワイブル分布の累積密度関数
【数7】
式2:2つのパラメータα(スケール)、β(シェイプ)を有するワイブル分布の累積密度関数
【0092】
ここで、F(Eb)は破壊電界Ebでの累積欠陥確率であり、αは分布平均を表すスケールパラメータであり、βは分散を表すシェイプパラメータであり、δはロケーションパラメータであり、一部では閾値パラメータと称される。ワイブル分布(3-Weibull)のこの形式は、印加電界が閾値より小さい場合に欠陥確率がゼロ(すなわちEb<δの場合、F(Eb)=0)と仮定する。ワイブル分布のこの形式は、ほとんどの著者がδ=0と仮定する、すなわち任意の印加電界で欠陥が起こり得る(Eb>0の場合、F(Eb)>0(式2))と仮定するのでほとんど使われない。ここでは、2パラメータワイブル分布を用い、シェイプパラメータαをBOPPフィルムの(平均)絶縁破壊強度としてEb63.2と報告する。Eb63.2(α)を得るためには、フィッティング手順が必要である、すなわち、2つのパラメータαとβを変化させ、フィットさせたワイブル分布が実験データと最も一致するようにする。この手順は、グラフ作成ソフトウェア(例えばOriginなど)や統計ソフトウェアパッケージ(例えば、Minitabなど)の一般的な機能として実行できる。
【0093】
<材料説明>
原料:
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソブチルメタクリレートおよびtert-ブチルメタクリレートはSigma-Aldrich社から提供され、重合における外部供与体としての使用前にアルゴンで追加的にスパージされた。ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)共触媒は、Chemtura社から提供され、デカン中の10%溶液として使用した。
Lynx900触媒はGrace社から提供され、受入れ時の状態で使用した。
【0094】
<表1のサンプル重合条件>
重合手順は、並列圧力反応器(PPR)を使用して、以下の手順で実施した。ドデカン中の触媒スラリーを、目標量のアルミニウム活性剤(DEAC、デカン中の溶液として)およびデカン中の溶液としての外部ドナーを加えることによって、一晩(~18時間)予備活性化した。このスラリー混合物をよく振り、グローブボックス内で一晩放置した。実際の重合方法は、翌日に、反応器セルをガス状のプロピレンで10回排気およびパージすることにより開始した。これに続いて、溶媒(デカン)および捕捉剤(DEAC)を合計4.1mlの体積となるように添加した。次に、該系を2段階にわたりプロピレンで40psi(2.8bar)に加圧した。これに続いて、H2/N2混合物の形態で、適切な割合の水素を添加した。H2添加後、反応器を70℃まで加熱し、温度および圧力を安定させた。予備活性化された触媒スラリーを1500rpmで振とうしている撹拌プレート上で均一化した。スラリー液を、針を備えたロボットアームで一度にセル内に移した。追加のデカンをチェイサーとして同時に投入し、反応器内の液体の総体積を5mlにした。各触媒の添加に続いて、針洗浄工程を行った。溶媒の追加によりセル内の圧力がわずかに低下した;そのため、圧力を追加のガス状C3で89psiに戻し、重合中はそのレベルを維持した。重合を120分間続け、その後、CO2を用いて200psi(13.8bar)に圧力を上げることによりクエンチした。反応器を放置して冷却し、ゆっくりと排気させ窒素でパージした。48個の全てのバイアルを取り出し、次にGenevac、加熱排気型遠心分離機に移し、そこで溶媒を一晩蒸発させた。翌日、バイアルを秤量し、元の値と比較して収率を求めた。
【0095】
<実施例IE1a-IBMA>
Lynx900触媒を、外部供与体としてイソブチルメタクリレート(iBMA)を用いて重合した、供与体:Tiの比は、0.4モル/モル、DEAC:Tiの比は、6モル/モルであった。6セルからの平均触媒活性は0.27g PP/mg cath、Mw543000g/モルであった。収集されたポリマーは、165℃の融点を特徴とし、NMRペンタッドアイソタクチシティは96.49%mmmmであった。このように、高いMwおよびアイソタクチシティ(C2)とC1のような高い活性との組み合わせは、この本発明の供与体を用いて得られた。
実施例IE1aはラボスケールで製造され、それに従い表2の実施例IE1bはより大きなスケールで製造された。
【0096】
<実施例IE2-EHMA>
Lynx900触媒を、外部供与体として2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)を用いて、供与体:Ti比が0.4モル/モル、DEAC:Ti比が6モル/モルで重合した。
6セルからの平均触媒活性は0.28g PP/mg cath、Mw553000g/モルであった。収集されたポリマーは、164.8℃の融点(Mp)を特徴とした。高いMwおよびアイソタクチシティ(C2)と高い活性(C1)との組み合わせは、この本発明の供与体を用いて再び得られた。
【0097】
<比較例C1>
Lynx900触媒を、外部供与体を用いずに、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC):Tiの比が6モル/モルで重合した。
6セルからの平均触媒活性は、0.20g PP/g cath、Mw403000であった。収集されたポリマーは、161℃の融点(Mp)を特徴とし、NMRペンタッドアイソタクチシティは92.73%であった。
【0098】
<比較例C2a MMA>
Lynx900触媒を、外部供与体としてメチルメタクリレート(MMA)を用いて、供与体:Tiの比が0.4モル/モル、DEAC:Tiの比が6モル/モルで重合した。
6セルからの平均触媒活性は0.135g PP/mg cath、Mw507000g/モルであった。収集されたポリマーは、164.1℃の融点(Mp)を特徴とし、NMRペンタッドアイソタクチシティは96.77%であった。
比較例CE2aはラボスケールで製造され、それに従い表2の比較例CE2bはより大きなスケールで製造された。
【0099】
<比較例C3 EMA>
Lynx900触媒を、外部供与体としてエチルメタクリレート(EMA)を用いて供与体:Tiの比が0.4モル/モル、DEAC:Tiの比が6モル/モルで重合した。
6セルからの平均触媒活性は0.177g PP/mg cath、Mw493000g/モルであった。収集されたポリマーは、163.7℃の融点(Mp)を特徴とした。C3としてEMAを用いて製造されたポリマーは、C2としてMMAを用いて製造されたポリマーと同様の低活性/高Mwバランスを示した。
【0100】
<比較例C4 TBMA>
Lynx900触媒を、外部供与体として、高度に立体障害されたter-ブチルメタクリレート(TBMA)を用いて、供与体:Tiの比が0.4モル/モル、DEAC:Ti比が6モル/モルで重合した。
6セルからの平均触媒活性は0.34g PP/mg cath、Mw430000g/molであった。収集されたポリマーは、161.1 ℃の融点(Mp)を特徴とした。したがって、この結果は、低いMwおよび低いアイソタクチシティ材料が製造された、供与体を用いない比較例C1と同様であった。
【0101】
【0102】
IE1aおよびIE2に例示されるように、本発明の方法は、より高い収率を提供し、高い分子量(Mw)、高いアイソタクチシティと組み合わされたより高い融解温度と、以下の表2に示されるような、より高い収率のためにポリマー中の触媒残留物がより少ない、ポリプロピレンの製造を可能にする。
【0103】
<表2の材料の重合およびフィルムの製造への使用>
参照の樹脂例CE2bは、欧州特許出願公開第2543684号明細書の比較例CE2の記載に従って製造された。
本発明の実施例IE1およびIE2は参照例として製造されたが、触媒調製においてMMAの代わりにイソブチルメタクリレートが使用された。
【0104】
<フィルムの製造>
ポリプロピレン組成物を、Brueckner Maschinenbau GmbHが所有し運営するパイロットスケールの二軸延伸ラインを使用し押し出した。フィルムを、90℃に保持された冷却ロール上に、約30kg/hの速度で、冷却ロール/フィルム速度10m/分で180μmの厚さのシートに押し出した。フィルムを10m/分で12本のロールからなるMDOユニットに供給し、そのうち最初の6本はフィルムを予熱するために95~130℃に加熱し、その後の2本は延伸のために140℃に保持し、最後の4本はアニールのために110~124℃の間に保持した。機械方向(MD)延伸工程を、8番目と9番目のロールの間で達成し、ロール9~12を50m/分で運転し、それによりMDOまたはMD延伸フィルムを製造した。MDOフィルムを、予熱に180~175℃、延伸に175~165℃、弛緩に165~170℃を用いてテンターフレーム内に連続的に供給した。テンター操作では、MDクリップ間距離は一定とし、テンターの分岐延伸ゾーンでは、MDOフィルムを横方向(TD)にのみ延伸した。MDとTDの工学的延伸比は5.0×9.0であった。
製造されたフィルムは3.9±0.1μmの厚さを有した。
【0105】
【0106】
ポリマー並びに二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリマー中、より少量のアルミニウムおよびチタン残留物、並びに灰分中のより低い金属含有量を有し、より優れた絶縁破壊強度を提供することがわかる。本発明の目的は達成される。
本明細書の好ましい態様は、少なくとも下記を包含する。
[1]ポリプロピレン組成物を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、ここで、前記ポリプロピレン組成物が以下:
93.0~99.6%のアイソタクチックペンタッド分率の含有量
0.4~10.0g/10分のISO1133に準拠するメルトフローレートMFR
2
、
0.0ppmより多いアルミニウム含有量、および
0.0ppmより多いチタン含有量、ならびに
0.0より多く~50.0ppmの灰分含有量、全てポリプロピレン組成物の総量に基づく、
を有するプロピレンホモポリマー(A)を含み、
前記灰分が、前記灰分含有量の総量に基づいて0.0より多く最大で25.0重量%の、周期表のIUPAC第4族から第13族までの元素から選択される金属を含むことを特徴とする、二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[2]前記金属は第4族の元素および/または第13族の元素、好ましくはアルミニウムおよび/またはチタンであり、任意に前記灰分含有量の総量に基づいて(合計)1.0~20.0重量%または3.0~15.0重量%の範囲内で存在する、[1]に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[3]前記ポリプロピレンは、0.0超~1.50ppmの間、好ましくは0.30~1.30ppm、または0.50~1.25ppmの範囲のアルミニウム含有量、および/または0.0超~1.00ppmの間、好ましくは0.20~0.75ppmまたは0.30~0.70ppmの範囲のチタン含有量を有する、[1]または[2]に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[4]前記灰分中のチタンに対するアルミニウムの比率は、0.8~3.0、好ましくは1.0~2.5または1.2~2.0の範囲内である、および/または、
前記ポリプロピレン組成物は、1.0~40.0ppmまたは4.0~30.0ppmの灰分含有量を有する、
[1]~[3]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[5]前記ポリプロピレン組成物は、前記プロピレンホモポリマー(A)をポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、95.0~99.9重量%含む、および/または、前記プロピレンホモポリマー(A)は96.0~98.5%のペンタッドアイソタクチシティを有する、[1]~[4]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記フィルムは、
任意で金属層を含む、前記ポリプロピレン組成物からなる層を含む、および/または、
MD方向およびTD方向に同時に延伸される、
二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[7]DIN IEC 60243-2に準拠し測定され、厚さ3.8~4.2μmのフィルム上で、250V/sのDC電圧ランプ率を用いて2.84cm
2
の活性電極面積で測定された、50の結果に基づいてフィットさせた2パラメータワイブル分布のスケールパラメータαとして得られる、550kV/mmと630kV/mmとの間、好ましくは570kV/mmと620kV/mmとの間、または580kV/mmと610kV/mmとの間の絶縁破壊電界強度E
b
63.2を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの層を含む絶縁フィルムを含むキャパシタ。
[9]93.0~99.6%のアイソタクチックペンタッド分率、
0.4~10.0g/10分のISO1133に準拠するメルトフローレートMFR
2
、
0.0ppmより多いアルミニウム含有量、および
0.0ppmより多いチタン含有量、ならびに
0.0~50.0ppmの灰分含有量、全て前記ポリプロピレン組成物の総量に基づく、
を有し、
前記灰分は、前記灰分含有量の総量に基づいて0.0超~最大25.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%または3.0~15.0重量%の、周期表のIUPAC第4族から第13族までの元素から選択される金属(合計)を含み、前記金属は好ましくはアルミニウムおよびチタンであることを特徴とする、ポリプロピレンホモポリマー。
[10]0.0超~1.50ppm、好ましくは0.30~1.30ppm、または0.50~1.25ppmの範囲のアルミニウム含有量、および/または
0.0超~1.00ppmの間、好ましくは0.20~0.75ppmまたは0.30~0.70ppmの範囲のチタン含有量、および/または
前記灰分中のチタンに対するアルミニウムの比率は、0.8~3.0、好ましくは1.0~2.5または1.2~2.0の範囲である、[9]に記載のポリプロピレンホモポリマー。
[11]以下の工程:
(A)以下を含むポリプロピレン組成物を提供する工程:
93.0~98.0%のアイソタクチックペンタッド分率含有量、および0.4~10.0g/10.0分のメルトフローレートMFR
2
を有し、
0.0ppmより多く、任意で最大1.50ppmのアルミニウム含有量、および
0.0ppmより多く、任意で最大1.00ppmのチタン含有量、ならびに
0.0~50.0ppmの灰分含有量、全て前記ポリプロピレン組成物の総量に基づく、
を有する、プロピレンホモポリマー(A)であり、
前記灰分は、前記灰分含有量の総量に基づいて0.0超~最大25.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%または3.0~15.0重量%の、周期表のIUPAC第4族から第13族までの元素から選択される金属(合計)を含み、前記金属は好ましくはアルミニウムおよびチタンであることを特徴とする、プロピレンホモポリマー(A)、
(B)前記ポリプロピレン組成物をフラットフィルムに押出する工程、
(C)前記フラットフィルムをMD方向とTD方向に同時に配向させ、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る工程、および
(D)厚さ3.8~4.2μmのフィルム上で250V/sのDC電圧ランプ率を用いて活性電極面積2.84cm
2
で測定した、50の結果に基づきフィットさせた2パラメータワイブル分布のスケールパラメータαとして得られる、550kV/mmと630kV/mmとの間の絶縁破壊電界強度E
b
63.2を有する、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを回収する工程
を含む、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法。
[12]前記ポリプロピレン組成物は、前記ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、99.0重量%以上の前記プロピレンのホモポリマー、および/または、前記ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、0.01~1.0重量%以下の添加剤をさらに含む、[11]に記載の方法。
[13]前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得るための、前記フラットフィルムのMD方向とTD方向への同時配向が連続的方法で行われる、および/または前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムが請求項1~9のいずれかに記載のフィルムである、[11]または[12]のいずれかに記載の方法。
[14]0.0~3.5重量%の範囲、好ましくは1.0~3.0重量%の範囲、より好ましくは1.3~2.5重量%の範囲のデカリン可溶成分量を有するポリプロピレンホモポリマーを調製するためのスラリー重合方法であり、ここで触媒系が以下:
a)チーグラー・ナッタ触媒、
b)有機アルミニウム共触媒、
c)式(I):
[式中、
R1およびR2は、独立してHまたはC
1
-C
3
飽和または不飽和ヒドロカルビルであり、場合により共に連結して1つ以上の環状構造を与え;
R3およびR4は、独立してHまたはC
1
-C
4
ヒドロカルビルであり、場合により共に連結して1つ以上の環状構造を与え;
R5は、HまたはC
1
-C
12
ヒドロカルビルであり、
ただし、R3~R5の少なくとも1つの基は水素ではない]
で示される外部供与体、
を含む、重合方法。
[15][14]に記載の方法によって得られる、[9]または[10]に記載のポリプロピレンホモポリマー。