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特許7520161ドライブシステム及びドライブシステムの制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ドライブシステム及びドライブシステムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/487 20070101AFI20240712BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H02M7/487
H02P27/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022579297
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004577
(87)【国際公開番号】W WO2022168310
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】高尾 健志
(72)【発明者】
【氏名】戸林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】森藤 力
(72)【発明者】
【氏名】山口 治之
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特許第5952623(JP,B2)
【文献】特開2019-201493(JP,A)
【文献】特開2007-244009(JP,A)
【文献】特開2002-165460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00- 7/98
H02P 21/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻線を有する多相交流モータを駆動するドライブシステムであって、
前記多相交流モータの第1相の巻線に電流を流す第1電力変換部と、
前記多相交流モータの第2相の巻線に電流を流す第2電力変換部と、
前記第1電力変換部の種別に応じて設定される相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかを決定し、前記決定した相電圧波形を前記第1電力変換部から出力させるように前記第1電力変換部を制御する第1変換制御部と、
前記相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて前記第1電力変換部の相電圧波形と同種の相電圧波形を前記第2電力変換部から出力させるように前記第2電力変換部を制御する第2変換制御部と、
を備えるドライブシステム。
【請求項2】
前記第1変換制御部は、
基準タイミングに同期するように調整された第1タイミング信号を生成し、前記第1タイミング信号に同期するように前記3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかの第1の相電圧波形を生成するための所望の第1ゲートパルスを生成し、前記生成した第1ゲートパルスを前記第1電力変換部に供給し、
前記第2変換制御部は、
前記第1変換制御部から受信した信号を用いて前記基準タイミングに同期するように調整された第2タイミング信号を生成し、前記第2タイミング信号に同期するように前記第1の相電圧波形と同じ種類の第2の相電圧波形を生成するための所望の第2ゲートパルスを生成し、前記生成した第2ゲートパルスを、前記第2電力変換部に供給する
請求項1に記載のドライブシステム。
【請求項3】
前記基準タイミングに係る信号と、前記第1変換制御部に対する電圧基準と、前記第2変換制御部に対する電圧基準とを生成する主制御部
を備え、
前記第1変換制御部は、
前記主制御部からの信号を受信して、前記基準タイミングに係る信号を再生し、前記第1変換制御部に対する電圧基準と、前記第2変換制御部に対する電圧基準とを取得して、さらに、
前記第2変換制御部に対する電圧基準を、前記第2変換制御部に対して送信する、
請求項2に記載のドライブシステム。
【請求項4】
前記主制御部と前記第1変換制御部との通信と、前記第1変換制御部と前記第2変換制御部との通信とにおいて、データを多重する所定の多重化構造を利用する通信パスを利用して、
前記主制御部は、
1つの単位多重化構造(単位フレーム)内に、少なくとも前記第1変換制御部に対する電圧基準と、前記第2変換制御部に対する電圧基準と含めて送信し、
前記第1変換制御部は、
1つの単位多重化構造(単位フレーム)内に、少なくとも前記第2変換制御部に対する電圧基準を含めて送信する、
請求項3に記載のドライブシステム。
【請求項5】
前記第1変換制御部は、
前記主制御部から受信した前記基準タイミングに係る信号を再生して、前記再生した信号を用いて、受信した前記第1変換制御部に対する電圧基準に基づいて、所望の相電圧波形を前記基準タイミングに同期するように生成し、
前記第2変換制御部は、
前記第1変換制御部から受信した前記基準タイミングに係る信号を再生して、前記再生した信号を用いて、受信した前記第2変換制御部に対する電圧基準に基づいて、所望の相電圧波形を前記基準タイミングに同期するように生成する、
請求項3に記載のドライブシステム。
【請求項6】
前記第1変換制御部は、
前記主制御部から受信した前記基準タイミングに係る信号を再生して、前記再生した信号の位相を予め定められた値の位相差を用いて調整した後に、これを用いて、受信した前記第1変換制御部に対する電圧基準に基づいて、前記基準タイミングに関連付けられて、前記所望の相電圧波形を前記基準タイミングに同期するように生成する、
請求項3に記載のドライブシステム。
【請求項7】
前記第1変換制御部は、
前記3レベルの相電圧波形と前記5レベルの相電圧波形の何れかを指定する第1選択情報に基づいて前記第1電力変換部を制御し、
前記第2変換制御部は、
前記第1選択情報が指定する相電圧波形と同種の相電圧波形を指定する第2選択情報に基づいて前記第2電力変換部を制御する、
請求項1に記載のドライブシステム。
【請求項8】
前記3レベルの相電圧波形に係る電圧基準と、前記5レベルの相電圧波形に係る電圧基準の何れかの種類が択一的に選択され、前記選択された種類の電圧基準を前記第1変換制御部と、前記第2変換制御部とに対して供給する主制御部
を備える請求項1に記載のドライブシステム。
【請求項9】
前記第1電力変換部と前記第2電力変換部は、
1又は複数のレグを夫々備え、
それぞれ備える前記1又は複数のレグを用いて前記3レベルの相電圧波形と前記5レベルの相電圧波形のうちの何れかの相電圧波形を夫々生成し、
前記第1電力変換部は、
前記生成された第1の相電圧波形を前記第1相の巻線に接続される第1の端子に出力し、
前記第2電力変換部は、
前記生成された第2の相電圧波形を前記第2相の巻線に接続される第2の端子に出力する、
請求項1に記載のドライブシステム。
【請求項10】
多相交流モータの第1相の巻線に電流を流す第1電力変換部と、
前記多相交流モータの第2相の巻線に電流を流す第2電力変換部とを備えるドライブシステムを制御する制御装置であって、
前記第1電力変換部の種別に応じて、3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかを前記第1電力変換部から出力させるように前記第1電力変換部を制御する第1変換制御部と、
前記第1電力変換部の種別と同じ種別に分類される前記第2電力変換部に関し、前記第1電力変換部の相電圧波形と同種の相電圧波形を前記第2電力変換部から出力させるように前記第2電力変換部を制御する第2変換制御部と、
を備えるドライブシステムの制御装置。
【請求項11】
前記第1変換制御部と、前記第2変換制御部とに対して前記3レベルの相電圧波形に係る電圧基準をそれぞれ供給する主制御部
を備え、
前記第1変換制御部と前記第2変換制御部は、
相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて、前記3レベルの相電圧波形に係る電圧基準を、前記5レベルの相電圧波形に係る電圧基準に変換する、
請求項10に記載のドライブシステムの制御装置。
【請求項12】
相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて、前記3レベルの相電圧波形に係る電圧基準を、前記5レベルの相電圧波形に係る電圧基準に変換して、前記第1変換制御部と前記第2変換制御部とに対して前記5レベルの相電圧波形に係る電圧基準をそれぞれ供給する主制御部
を備える請求項10に記載のドライブシステムの制御装置。
【請求項13】
複数の巻線を有する多相交流モータを駆動するドライブシステムであって、
1又は複数のNPC型レグを含み、前記多相交流モータの第1相の巻線に電流を流す第1電力変換部と、
前記第1電力変換部内のNPC型レグの個数以上の複数のNPC型レグを含み、前記多相交流モータの第2相の巻線に電流を流す第2電力変換部と、
前記第1電力変換部の1個のNPC型レグと前記第2電力変換部の1個のNPC型レグとをそれぞれ制御して、前記多相交流モータの対応する相の巻線に第1レベルの相電圧波形を出力する第1モードと、前記第1電力変換部の複数のNPC型レグと前記第2電力変換部の複数のNPC型レグとを制御して、前記多相交流モータの対応する相の巻線に第2レベルの相電圧波形を出力する第2モードとを択一的に選択する制御モードを備えており、前記第1電力変換部の種別に応じた設定によって前記制御モードを選択する制御部と
を備えるドライブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ドライブシステム及びドライブシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブシステムには、多相交流電力を交流電動機(多相交流モータ)に供給して交流電動機を駆動させるものがある。ドライブシステムの種類には、電力変換装置が交流電動機の巻線に掛ける交流電圧の波形の特徴に基づく区分があり、その種類は、交流電圧の波形の量子化レベルの段数によって3レベル型、5レベル型などと呼ばれている。ドライブシステムの種類によって電力変換装置の制御方法が互いに異なるため、電力変換装置を制御する制御装置は、ドライブシステムの種類に合わせて専用に設計される場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5952623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電力変換装置が交流電動機の巻線に掛ける電圧波形の量子化レベルの段数によらずに、電力変換装置を制御する制御装置に係る用品を共用可能にしたドライブシステム及びドライブシステムの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のドライブシステムは、複数の巻線を有する多相交流モータを駆動する。ドライブシステムは、第1電力変換部と、第2電力変換部と、第1変換制御部と、第2変換制御部と、を備える。前記第1電力変換部は、前記多相交流モータの第1相の巻線に電流を流す。前記第2電力変換部は、前記多相交流モータの第2相の巻線に電流を流す。前記第1変換制御部は、相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかを決定し、前記決定した相電圧波形を前記第1電力変換部から出力させるように前記第1電力変換部を制御する。前記第2変換制御部は、前記相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて前記第1電力変換部の相電圧波形と同種の相電圧波形を前記第2電力変換部から出力させるように前記第2電力変換部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態のドライブシステムの構成図。
図2】第1の実施形態の第1実施例の3レベル型変換器の主回路の構成図。
図3】第1の実施形態の第2実施例のNPC型電力変換器の主回路の構成図。
図4A】第1の実施形態の制御部の構成図。
図4B】第1の実施形態のシリアル送受信器の構成図。
図5A】第1の実施形態の電圧基準変換部の5レベル型適用時の処理について説明するための図。
図5B】第1の実施形態の電圧基準変換部の3レベル型適用時の処理について説明するための図。
図6】第1の実施形態の通信に用いるフレームを説明するための図。
図7】第1の実施形態のフレーム内のデータ構造を説明するための図。
図8】第1の実施形態のPWMキャリアについて説明するための図。
図9】第1の実施形態のキャリア同期制御部の構成図。
図10】第1の実施形態のデータの中継について説明するための図。
図11】第1の実施形態の変形例のフレーム内のデータ構造を説明するための図。
図12A】第2の実施形態のドライブシステムの構成図。
図12B】第2の実施形態のシリアル送受信器の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のドライブシステム及びドライブシステムの制御装置を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。
【0008】
明細書で言う「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、実施形態のドライブシステム1について説明する。
図1は、第1の実施形態のドライブシステム1を示す構成図である。
ドライブシステム1は、交流電動機2(図1中の記載はM。)、変換器3(図1中の記載はINV。)、直流電源4(図1中の記載はDCPS。)、電流検出器5、及び制御装置6を備える。ドライブシステム1は、交流電動機2に、変換器3から多相交流電力を供給して、交流電動機2を駆動させる。交流電動機2は、多相交流モータの一例であり、例えば、3つの巻線がY型に結線された3相交流モータである。変換器3は、電力変換装置の一例である。
【0010】
例えば、ドライブシステム1の電源である直流電源4は、その出力側に接続される1組の直流リンクを経由して直流電力を変換器3に供給する。例えば、直流電源4は、一般的に交流電源の交流電圧を入力とするダイオード整流器であったり、PWMコンバータであったりするが、直流電源4の種類は問わない。例えば、直流リンクは、正極、負極、及び中点電位になる極を1組として構成される。
【0011】
変換器3は、複数のスイッチング素子を備える逆変換装置(インバータ)の一例である。変換器3は、パルス指令信号に従って各スイッチング素子をオン/オフさせることにより、直流電源4から供給された直流電圧に基づいた交流電圧を生成して、交流電動機2の巻線に交流を流す。例えば、変換器3は、ゲート制御部20からPWM制御によるパルス指令信号を受け、直流電力から交流電力への変換量を調整する。交流電動機2は、変換器3が出力する交流電圧に従って駆動される。
【0012】
電流検出器5は、変換器3の出力電流を検出し、ゲート制御部20を経由して主制御部10へフィードバックさせる帰還信号を出力する。この帰還信号は、図示されないアナログ/デジタル変換器によって、デジタル信号に変換される。
【0013】
制御装置6は、主制御部10と、ゲート制御部20とを備える。
制御装置6は、主制御部10と、主制御部10よりも変換器3側に設けられるゲート制御部20とに分割される。主制御部10とゲート制御部20は、互いに絶縁されている。例えば、主制御部10とゲート制御部20は、光ファイバOF01などを用いた通信路を介して、通信可能に接続されている。主制御部10は、ドライブシステム1の全体を制御する。ゲート制御部20は、主制御部10からの制御を受けて、各相の状態を夫々制御する。ゲート制御部20は、図1の中では1体のものとして記載しているが、後述するように各相に対応付けて分割されている。主制御部10とゲート制御部20と通信路の詳細については、後述する。
【0014】
ドライブシステム1は、変換器3の構成が異なる幾つかの実施例に適用できる。例えば、3レベル型の電圧波形を出力するドライブシステム1Aと、3レベル型又は5レベル型の電圧波形を出力するドライブシステム1Bとは、その実施例の一例である。以下、これらについて順に説明する。なお、ここで言う、3レベル型の電圧波形と5レベル型の電圧波形は、3相交流の相電圧の波形のことである。3レベル型の電圧波形を相電圧として出力している場合の3相交流の線間電圧は、5レベルになる。上記の線間電圧は、各相に対応する端子間の電圧に相当する。これに対し、本実施形態で言う5レベル型の電圧波形は、上記のとおり3相交流の相電圧の波形のことである。例えば、後述する第1端子TUと、第2端子TVと、第3端子TWとは、上記の各相に対応する端子の一例である。
【0015】
ドライブシステム1は、相電圧波形のレベル値が互いに異なる複数種類の相電圧波形を生成する形態に適用可能である。例えば、ドライブシステム1は、電圧波形の量子化レベルの段数によらずに、変換器3を制御する制御装置6に係る用品を共用可能に構成されている。
【0016】
(3レベル型変換器の主回路)
図2を参照して、第1の実施形態の第1実施例として3レベル型電力変換器3Aの主回路について説明する。図2は、第1の実施形態の第1実施例の3レベル型電力変換器3Aの主回路の構成図である。
【0017】
3レベル型電力変換器3Aは、レグ31からレグ33と、コンデンサ34Pと34Nと、電圧検出器35とを備える。3レベル型電力変換器3Aは、3相交流の出力端子として、第1端子TUと、第2端子TVと、第3端子TWとを備える。
【0018】
レグ31からレグ33は、例えば、3相交流のU相、V相、W相の各相にそれぞれ対応付けられる。レグ31は、交流電動機2のU相(第1相)の巻線に電流を流す。レグ32は、交流電動機2のV相(第2相)の巻線に電流を流す。レグ33は、交流電動機2のW相の巻線に電流を流す。
例えば、レグ31からレグ33は、1個の中性点クランプ(NPC)型レグをそれぞれ備える。レグ31からレグ33を区別することなく纏めて示す場合には、レグ30と呼ぶ。図2に示すレグ30は、NPC型レグの一例であり、これを構成する4つのスイッチング素子とこれに逆並列された還流ダイオードと、レグ30の出力端子の電位を、中点電位を基準にして制限するための1対のダイオードとを含む。3レベル型電力変換器3Aは、計12個のスイッチング素子を含む。図2に示すスイッチング素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるがこれに制限されることなく、他の種類の半導体スイッチング装置あってよい。
【0019】
コンデンサ34Pは、直流リンクの正極と中点電位の極の間に設けられ、コンデンサ34Nは、直流リンクの負極と中点電位の極の間に設けられている。コンデンサ34Pと34Nは、直流リンクに掛かる直流電圧を平滑化する。
【0020】
電圧検出器35は、正極側電圧検出器35Pと負極側電圧検出器35Nとを備える。正極側電圧検出器35Pは、コンデンサ34Pの端子電圧を正極側電圧として検出する。負極側電圧検出器35Nは、コンデンサ34Nの端子電圧を負極側電圧として検出する。
【0021】
電流検出器5は、例えば、変流器5U、5V、5Wを含む。変流器5Uは、交流電動機2のU相巻線に接続される第1端子TUに流れる電流を検出する。変流器5Vは、交流電動機2のV相巻線に接続される第2端子TVに流れる電流を検出する。変流器5Wは、交流電動機2のW相巻線に接続される第3端子TWに流れる電流を検出する。電流検出器5が検出する電流は、各相の巻線に流れる相電流に等しく、第1端子TU、第2端子TV及び第3端子TWのそれぞれに接続される線路の電流(線電流)に等しい。
【0022】
上記のレグ31からレグ33は、1又は複数のレグを夫々備え、それぞれ備える1又は複数のレグを用いて3レベルの相電圧波形の相電圧波形を夫々生成する。レグ31は、生成された第1の相電圧波形を第1相の巻線に接続される第1の端子TUに出力する。レグ32は、生成された第2の相電圧波形を第2相の巻線に接続される第2の端子TVに出力する。レグ33は、生成された第3の相電圧波形を第3相の巻線に接続される第3の端子TWに出力する。
【0023】
(NPC型電力変換器の主回路)
図3を参照して、第1の実施形態の第2実施例としてNPC型電力変換器3Bの主回路について説明する。図3は、第1の実施形態の第2実施例のNPC型電力変換器3Bの主回路の構成図である。
NPC型電力変換器3Bは、各相にそれぞれ対応する単相型電力変換器3U(第1電力変換部)と、単相型電力変換器3V(第2電力変換部)と、単相型電力変換器3W(第3電力変換部)を備える。単相型電力変換器3U、3V、3Wのそれぞれは、互いに独立した直流電源4U、4V、4Wにそれぞれ接続されている。
【0024】
例えば、単相型電力変換器3Uは、レグ31Uとレグ32Xとを備える。レグ31Uとレグ32Xは、それぞれ前述のレグ30と同様に構成されている。レグ31Uとレグ32Xは、それぞれの直流側中点が互いに接続され、U相の直流電源4U(図4A)の中点に接続される。レグ31Uの交流側出力は、第1端子TUに接続されている。レグ32Xの交流側出力は、中性点Nに接続されている。
【0025】
単相型電力変換器3Vは、レグ31Vとレグ32Yとを備える。レグ31Vとレグ32Yは、それぞれ前述のレグ30と同様に構成されている。レグ31Vとレグ32Yは、それぞれの直流側中点が互いに接続され、V相の直流電源4V(図4A)の中点に接続される。レグ31Vの交流側出力は、第2端子TVに接続されている。レグ32Yの交流側出力は、中性点Nに接続されている。
【0026】
単相型電力変換器3Wは、レグ31Wとレグ32Zとを備える。レグ31Wとレグ32Zは、それぞれ前述のレグ30と同様に構成されている。レグ31Wとレグ32Zは、それぞれの直流側中点が互いに接続され、W相の直流電源4W(図4A)の中点に接続される。レグ31Wの交流側出力は、第3端子TWに接続されている。レグ32Zの交流側出力は、中性点Nに接続されている。
【0027】
単相型電力変換器3U、3V、3Wを代表して、単相型電力変換器3Uについて説明する。単相型電力変換器3Uは、レグ31Uとレグ32Xを有することにより、巻線に倍電圧を印加可能な回路を形成する。例えば、レグ31Uの正極側アームとレグ32Xの負極側アームを同時に通電状態にすることにより、3相交流側の中性点Nの電圧(中性点電圧という。)に対する第1端子TUの電圧に、直流リンクの正極側電圧の絶対値と負極側電圧の絶対値の合計値に対応する電圧が発生する。導通させるアームの極性を入れ替えれば、上記とは逆極性の電圧が発生する。この結果、例えば、中性点電圧に対する第1端子TUの電圧(U相の電圧)は、直流リンクの正極側電圧の絶対値の2倍、0倍、-2倍の3レベルになる。
【0028】
さらに、レグ31Uとレグ32Xの何れかの正極側アームと負極側アームの何れかを通電状態にして、その他のアームを直流側の中点電位を出力する状態にすることにより、中性点電圧に対する第1端子TUの電圧に、直流リンクの正極側電圧の絶対値又は負極側電圧の絶対値に対応する電圧が発生する。導通させるアームの極性を入れ替えれば、上記とは逆極性の電圧が発生する。この結果、例えば、中性点電圧に対する第1端子TUの電圧(U相の電圧)は、直流リンクの正極側電圧の絶対値の1倍、-1倍の2レベルをさらに加えることができる。これにより、中性点電圧に対する第1端子TUの電圧(U相の電圧)は、直流リンクの正極側電圧の絶対値の2倍、1倍、0、-1倍、-2倍の5レベルになる。
【0029】
上記のように、単相型電力変換器3Uは、供給されるゲートパルスのパターンによって3レベルの相電圧を発生させたり、5レベルの相電圧を発生させたりすることができる。これについては、単相型電力変換器3Vと3Wの場合についても、単相型電力変換器3Uの場合と同様である。
【0030】
単相型電力変換器3U、3V、3Wは、複数のレグ30を夫々備え、夫々備える複数のレグ30を用いて3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形のうちの何れかの相電圧波形を夫々生成する。
単相型電力変換器3Uは、生成された第1の相電圧波形を第1相の巻線に接続される第1の端子TUに出力し、単相型電力変換器3Vは、生成された第2の相電圧波形を第2相の巻線に接続される第2の端子TVに出力する。単相型電力変換器3Wは、生成された第3の相電圧波形を第3相の巻線に接続される第3の端子TWに出力する。
【0031】
上記は、NPC型電力変換器3Bの単相型電力変換器3U、3V、3Wとしての説明であるが、単相型電力変換器3U、3V、3Wとして、前述の3レベル型電力変換器3Aをそれぞれ適用してもよい。3つの3レベル型電力変換器3Aを用いて、単相型電力変換器3U、3V、3Wをそれぞれ構成する場合には、それぞれに1つのレグ30が余る。この場合、単相型電力変換器3U、3V、3Wは、その中の任意の2つのレグ30をそれぞれ利用するとよい。これにより、変換器3の用品を共用することができる。
【0032】
図4Aを参照して、第1の実施形態の制御装置6について説明する。図4Aは、第1の実施形態の制御装置6の構成図である。制御装置6のうち、先に主制御部10について説明し、ゲート制御部20を後で説明する。
【0033】
(主制御部)
主制御部10は、減算器11と、速度制御部12(図4A中の記載はASR。)と、減算器13(不図示)と、電流制御部14(不図示)と、シリアル送受信器15と、キャリア基準生成部16(図4A中の記載はCREF0。)とを備える。減算器11と、速度制御部12と、シリアル送受信器15と、キャリア基準生成部16は、各相に共通して設けられ、減算器13と電流制御部14は、相毎に対になって設けられている。図4Aの中では、減算器13と電流制御部14を代表して、U相の減算器13Uと電流制御部14U(図4A中の記載はACR。)とを示すが、V相、W相についても同様である。
【0034】
減算器11の入力には、図示されない上位装置から速度指令値ω*と速度帰還値ω_FBKとが供給され、減算器11は、速度指令値ω*と速度帰還値ω_FBKの差分(速度偏差)を算出する。ここで速度帰還値ω_FBKは交流電動機2に接続された図示されない速度検出器SSの出力値、又は交流電動機2の特性から制御装置6が推定する速度推定値のどちらであっても良い。速度検出器SSの出力値を用いる場合は、速度検出器SSの出力値を、ゲート制御部20を経由して主制御部10へ速度帰還信号としてフィードバックするとよい。
【0035】
速度制御部12は、上記の速度偏差が最小となるような制御を行い、電流基準値I*を生成する。速度制御部12は、電流基準値I*を減算器13Uの第1入力に与える。
【0036】
減算器13Uの第2入力には電流帰還値Iu_FBKが供給される。減算器13Uは、電流基準値I*と電流帰還値Iu_FBKの差分(電流偏差)を算出する。ここで電流帰還値Iu_FBKは、変流器5Uが検出した物理量を、ゲート制御部20内部でアナログ/デジタル変換し、後述するシリアル送受信器21U、21V、21Wを経由して主制御部10に転送される信号である。
【0037】
電流制御部14Uは、上記の電流偏差が最小となるような制御を行い、U相制御のための電圧基準値Vu*を生成する。この電圧基準値Vu*は、後述するシリアル送受信器15の送信器15Tからシリアル送受信器21Uのシリアル受信部にシリアル転送される。
【0038】
上記の減算器13Uと電流制御部14Uの組は、U相に適用するものである。図4Aに示す減算器13Uと電流制御部14Uの組の他に、図4Aに示されていないV相に適用される減算器13Vと電流制御部14Vの組と、W相に適用される減算器13Wと電流制御部14Wとの組がある。減算器13Vと電流制御部14Vは、電流基準値I*と電流帰還値Iv_FBKに基づいて電圧基準値Vv*を生成する。減算器13Wと電流制御部14Wは、電流基準値I*と電流帰還値IW_FBKに基づいて電圧基準値Vw*を生成する。
【0039】
これと並行して、キャリア基準生成部16は、速度指令値ω*(速度基準)に基づいて基準キャリア信号θ0を生成する。基準キャリア信号θ0は、基準タイミングを示す信号である。シリアル送受信器15は、光ファイバを用いた双方向通信を可能にする。
【0040】
例えば、シリアル送受信器15は、送信器15T(TXと記載。)と、受信器15R(RXと記載。)と、多重分離ユニット15Fを含む。送信器15Tのネットワーク側は、ゲート制御部20のシリアル送受信器21Uに、光ファイバOF01によって接続される。受信器15Rのネットワーク側は、ゲート制御部20のシリアル送受信器21Wに、光ファイバOF30によって接続される。
【0041】
送信器15Tは、電気-光変換器を含む。多重分離ユニット15Fは、電流制御部14Uが生成した電圧基準値Vu*と、電流制御部14Vが生成した電圧基準値Vv*と、電流制御部14Wが生成した電圧基準値Vw*とを取得して、これらのデータを多重した送信データ(TXD)を生成する。送信器15Tは、電気-光変換器によって送信データTXDに基づく光信号を生成して出力する。送信器15Tは、多重分離ユニット15Fによって多重化された制御コマンドCONTを送信してもよい。
【0042】
例えば、基準キャリア信号θ0が制御サイクルの1周期内の所定の位相になると、送信器15Tは、シリアル送受信器21Uに対して送信データTXDのシリアル転送を開始する。電圧基準値Vu*、電圧基準値Vv*、電圧基準値Vw*は、送信データTXDに含むデータの一例であって、これに制限されない。ゲート制御部20に対する送信データTXDには、上記の電圧基準値Vu*、電圧基準値Vv*、電圧基準値Vw*以外のデータが含まれていてもよく、これらに代わるデータが含まれていてもよい。以下の説明では、これを簡略化して、」送信器15Tは、電圧基準値Vu*と、電圧基準値Vv*と、電圧基準値Vw*とを送信する」、などのように記載することがある。
【0043】
受信器15Rは、光-電気変換器を含む。受信器15Rは、シリアル転送される受信データRXDの光信号を受信して、光-電気変換器によって受信データRXDを電気信号に変換する。例えば、受信データRXDには、電流帰還値Iu_FBKと、電流帰還値Iv_FBKと、電流帰還値Iw_FBKとが含まれる。受信器15Rは、これらの電流帰還値の各データを多重分離ユニット15Fに供給する。多重分離ユニット15Fは、これらの電流帰還値を各データに分離して出力する。以下の説明では、これを簡略化して、「受信器15Rは、電流帰還値Iu_FBKと、電流帰還値Iv_FBKと、電流帰還値Iw_FBKとを受信する」、と記載することがある。
【0044】
例えば、制御装置6が3レベル型電力変換器3Aを駆動する場合も、制御装置6がNPC型電力変換器3Bを駆動する場合も、上記の主制御部10は、電圧基準値Vu*と、電圧基準値Vv*と、電圧基準値Vw*とに基づいて制御してもよい。主制御部10は、電圧基準値Vu*と、電圧基準値Vv*と、電圧基準値Vw*を、3レベル型電力変換器3AとNPC型電力変換器3Bとの双方について、その制御に利用する。さらに、主制御部10は、電圧基準値Vu*と、電圧基準値Vv*と、電圧基準値Vw*を、3レベル型電圧制御と、5レベル型電圧制御との双方に利用する。
【0045】
(ゲート制御部)
ゲート制御部20は、ゲート制御部20U(第1変換制御部)と、ゲート制御部20V(第2変換制御部)と、ゲート制御部20W(第3変換制御部)とを備える。ゲート制御部20U、20V、20Wは、交流の各相に対応付けて設けられている。ゲート制御部20U、20V、20Wは、前述の主制御部10を含めて、互いに光ファイバを介して接続されている。
【0046】
以下、ゲート制御部20Uを例示して説明する。
【0047】
ゲート制御部20Uは、シリアル送受信器21Uと、受信検出部22U(図4A中の記載はCDET。)と、キャリア同期制御部23U(図4A中の記載はCSC。)と、キャリア生成部24U(図4A中の記載はCGEN。)と、キャリア比較器25U(図4A中の記載はCCOMP。)と、キャリア比較器25Xと、ゲート回路部26U(図4A中の記載はGPG。)と、ゲート回路部26Xと、電圧基準変換部27U(図4A中の記載は3L/5L。)とを備える。キャリア比較器25Uと、キャリア比較器25Xと、ゲート回路部26Uと、ゲート回路部26Xと、電圧基準変換部27Uとを纏めて、U相ゲート信号生成部28Uと呼ぶ。
【0048】
図4Bを参照して、シリアル送受信器21Uの構成例について説明する。
図4Bは、実施形態のシリアル送受信器21Uの構成図である。
例えば、シリアル送受信器21Uは、送信器21UT(TXと記載。)と、受信器21UR(RXと記載。)と、多重分離ユニット21UFとを含む。送信器21UTと受信器21URは、送信器15Tと受信器15Rに相当する。
多重分離ユニット21UFは、フレーム分離ユニットFDAと、フレーム組み立てユニットFAとを含む。例えば、多重分離ユニット21UFは、CPUなどのプロセッサを含み、プロセッサが所定のプログラムを実行することによって、フレーム分離ユニットFDAと、フレーム組み立てユニットFAとを実現してもよく、電気回路の組み合わせによって上記を実現してもよい。多重分離ユニット21UFは、図示されない記憶部の記憶領域を利用して各データの転送処理を行う。
【0049】
例えば、受信器21URは、主制御部10からシリアル転送されたフレームの光信号を受信して、光信号を電気信号に変換する。受信器21URは、受信したフレームを多重分離ユニット21UFのフレーム分離ユニットFDAに供給する。フレーム分離ユニットFDAは、受信器21URから供給されたフレーム内の各データを分離して出力する。例えば、フレーム内の各データには、電圧基準値Vu*、電圧基準値Vv*、電圧基準値Vw*などの指令値に関するデータが含まれる。
【0050】
例えば、送信器21UTは、多重分離ユニット21UFのフレーム組み立てユニットFAが生成したフレームの電気信号を、光-電気変換器によって光信号に変換して出力する。
多重分離ユニット21UFのフレーム組み立てユニットFAは、フレーム分離ユニットFDAによって分離されたデータと、ゲート制御部20Uから送信する各データとに基づいて、上記のフレームを生成して、所定のタイミングに後段に対して転送させる。
【0051】
例えば、多重分離ユニット21UFは、受信器21URが出力する電気信号から、一部のデータを抽出して、送信器21UTに供給する。多重分離ユニット21UFは、変流器5Uによって検出された電流帰還値Iu_FBKを取得して、上記の一部のデータと、上記の電流帰還値Iu_FBKとを含むデータを、フレームに割り当てて多重して出力する。送信器21UTは、多重分離ユニット21UFによって多重されたデータを含むフレームを、次段のゲート制御部20Vに対して送信する。
【0052】
なお、通信に利用するフレームは、さらに基準キャリア信号θ0のタイミング情報を転送することに利用される。受信器21URは、上記の電気信号からキャリア信号の位相を調整するためのタイミング情報を抽出して、ゲート制御部20Uの制御に利用する。これの詳細については後述する。
【0053】
図4Aに戻り、電圧基準変換部27Uについて説明する。
受信器21URは、抽出した電圧基準値Vu*を、電圧基準変換部27Uに供給する。電圧基準変換部27Uは、受信器21URから電圧基準値Vu*を受けるが、予め定められた情報又はハードウエア的な設定により決定される選択情報に基づいて、5レベル型適用時と3レベル型適用時の処理を変える。例えば、選択情報として、5レベル型適用時の選択情報を「5L」で示し、3レベル型適用時の選択情報を「3L」で示す。図4Aに示す電圧基準変換部27Uには、5Lの選択信号が供給されていて、5レベル型に適用される状態にある。
【0054】
図5Aは、第1の実施形態の電圧基準変換部27Uの5レベル型適用時の処理について説明するための図である。図5Bは、第1の実施形態の電圧基準変換部27Uの3レベル型適用時の処理について説明するための図である。
【0055】
図5Aに示すように電圧基準変換部27Uは、変換処理部271と、変換処理部272とを備える。電圧基準変換部27Uを5レベル型に適用させるように設定した場合には、変換処理部271と、変換処理部272は、その機能が活性化される。例えば、変換処理部271と、変換処理部272は、電圧基準値Vu*を、電圧基準値V5u*と、電圧基準値V5x*とに夫々変換する。これにより、5レベル型として設定された電圧基準変換部27Uによって、電圧基準値Vu*は、電圧基準値V5u*と、電圧基準値V5x*とに変換させる。
【0056】
電圧基準値V5u*は、電圧基準変換部27Uから、キャリア比較器25Uに供給される電圧基準の一例である。例えば、電圧基準値Vu*が正弦波状である場合には、変換処理部271は、振幅が比較的0に近い位相の振幅を0に変換した電圧基準値V5u*を生成する。電圧基準値V5x*は、電圧基準変換部27Xから、キャリア比較器25Xに供給される電圧基準の一例である。上記の場合には、変換処理部272は、振幅が比較的大きい値をとる範囲の振幅を飽和させた値に変換した電圧基準値V5x*を生成する。
【0057】
これに対して、図5Bに示すように電圧基準変換部27Uに3Lの選択信号が供給されると、3レベル型に適用させる設定になる。この場合には、変換処理部271と、変換処理部272は、その機能が無効化され、電圧基準値Vu*を、電圧基準値V5u*と、電圧基準値V5x*とに夫々変換することなく、電圧基準値Vu*を出力する。
【0058】
ゲート制御部20Uは、3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかを指定する第1選択情報に基づいて単相型電力変換器3Uを制御する。ゲート制御部20Vは、第1選択情報が指定する相電圧波形と同種の相電圧波形を指定する第2選択情報に基づいて単相型電力変換器3Vを制御する。ゲート制御部20Wについても、ゲート制御部20Vと同様である。
【0059】
図4Aに戻り、キャリア比較器25Uについて説明する。
キャリア比較器25Uは、後述する手法によってゲート制御部20U内で生成されたPWMキャリアと、この電圧基準値V5u*とを比較することによって、ゲートパルス指令値GPu*を作成し、ゲートパルス指令値GPu*をゲート回路部26Uに供給する。ゲート回路部26Uは、ゲートパルス指令値GPu*をスイッチング素子駆動用の信号GPuに変換して変換器3のレグ31Uに供給する。レグ31Uの各スイッチング素子のゲートには、信号GPuが直接供給されてもよく、図4Aに示されない駆動回路を介して供給されてもよい。
【0060】
キャリア比較器25Xとゲート回路部26Xは、前述のキャリア比較器25Uとゲート回路部26Uと同様に構成される。例えば、キャリア比較器25Xは、この電圧基準値V5x*とPWMキャリアとを比較することによってゲートパルス指令値GPX*を作成し、ゲートパルス指令値GPx*をゲート回路部26Xに供給する。ゲート回路部26Xは、ゲートパルス指令値GPx*をスイッチング素子駆動用の信号GPxに変換して変換器3のレグ32Xに供給する。
【0061】
基準キャリア信号θ0のタイミング情報は、受信器21URから受信検出部22Uに供給され、受信検出部22Uと、キャリア同期制御部23Uと、キャリア生成部24Uとによって、ゲート制御部20Uにおけるキャリア信号が生成される。キャリア信号の生成についての詳細な説明を後述する。
【0062】
なお、受信器21URが上記の電気信号を検出してから、送信器21UTがこれに対応する信号を送信するまでに掛かるゲート制御部20U内の処理時間(ノード内遅延時間)は、設計的に定められた値になるものとする。
以上が、ゲート制御部20Uに関する概略説明である。
【0063】
ゲート制御部20Vは、シリアル送受信器21Vと、受信検出部22Vと、キャリア同期制御部23Vと、キャリア生成部24Vと、V相ゲート信号生成部28Vとを備える。ゲート制御部20Vにおけるシリアル送受信器21Vと、受信検出部22Vと、キャリア同期制御部23Vと、キャリア生成部24Vと、V相ゲート信号生成部28Vとは、ゲート制御部20Uにおけるシリアル送受信器21Uと、受信検出部22Uと、キャリア同期制御部23Uと、キャリア生成部24Uと、U相ゲート信号生成部28Uと同等に構成される。
【0064】
例えば、シリアル送受信器21Vは、送信器21VT(TXと記載。)と、受信器21VR(RXと記載。)と、多重分離ユニット21VFとを含む。シリアル送受信器21Vは、シリアル送受信器21Uと同等の構成を備える。
【0065】
ゲート制御部20Wは、シリアル送受信器21Wと、受信検出部22Wと、キャリア同期制御部23Wと、キャリア生成部24Wと、W相ゲート信号生成部28Wとを備える。ゲート制御部20Wにおけるシリアル送受信器21Wと、受信検出部22Wと、キャリア同期制御部23Wと、キャリア生成部24Wと、W相ゲート信号生成部28Wとは、ゲート制御部20Uにおけるシリアル送受信器21Uと、受信検出部22Uと、キャリア同期制御部23Uと、キャリア生成部24Uと、U相ゲート信号生成部28Uと同等に構成される。
【0066】
例えば、シリアル送受信器21Wは、送信器21WT(TXと記載。)と、受信器21WR(RXと記載。)と、多重分離ユニット21WFとを含む。シリアル送受信器21Wは、シリアル送受信器21Uと同等の構成を備える。
【0067】
(ネットワーク)
次に、ドライブシステム1内の通信に利用するネットワークについて説明する。
本実施形態のネットワークのトポロジーは、主制御部10と、ゲート制御部20Uと、ゲート制御部20Vと、ゲート制御部20Wとのそれぞれをノードにして、上記の各ノードを順に接続したループ型である。このネットワークは、上記のトポロジーと同じ経路で物理的に接続される。この物理的な接続の媒体として、光ファイバを用いることで、各ノードが互いに絶縁されている。光ファイバは、例えば、各ノード間に1本設ける。ドライブシステム1は、これを用いて片方向に通信する。なお、各ノードは、全二重で通信可能であるとよい。
【0068】
上記の物理的な接続構成の一例として、上記の4個のノードは、4本の光ファイバによって順に接続される事例を比較例と対比して説明する。この事例の場合、スイッチング素子に対して主制御部10から1:1に接続する第1比較例、又は、主制御部10から他の3つのノード間に対して1:1に接続する第2比較例と、本実施形態の接続構成とを比較すると、本実施形態のネットワークを構成するために必要とされる光ファイバの本数及び総延長が、十分に少なくなることがわかる。
【0069】
上記のようにネットワークを構成しても、主制御部10がゲート制御部20に電圧基準を通知することと、主制御部10がゲート制御部20から電流帰還値を収集することとに関する情報の送受信の関係は変わらない。そこで、ドライブシステム1は、このネットワークを、データ多重伝送による伝送路として利用する。ネットワークは、上記の各データを順送りで伝える。データ多重伝送の方式には、既知のプロトコルを利用してもよく、適宜選択してもよい。
【0070】
光ファイバを媒体として利用するネットワークは、シリアル送受信器15と、シリアル送受信器21Uと、シリアル送受信器21Vと、シリアル送受信器21Wとを互いに接続する。
【0071】
例えば、このネットワークにおいて、送信器15Tの出力は、光ファイバOF01によって受信器21URの入力に接続される。送信器21UTの出力は、光ファイバOF12によって受信器21VRの入力に接続される。送信器21VTの出力は、光ファイバOF23によって受信器21WRの入力に接続される。送信器21WTの出力は、光ファイバOF30によって受信器15Rの入力に接続される。
【0072】
(通信方式)
ドライブシステム1は、主制御部10とゲート制御部20Uとの通信と、ゲート制御部20Uとゲート制御部20Vとの通信と、ゲート制御部20Vとゲート制御部20Vとの通信と、ゲート制御部20Wと主制御部10との通信とにおいて、上記のネットワークを利用する。ドライブシステム1は、上記のネットワーク上に、データを多重する所定の多重化構造を利用する通信パスを設けて、これを利用する。この通信パスは、通信の物理層の時分割多重、又はリンク層のフレーム多重を利用して形成される。
【0073】
以下の実施形態に示す通信方式として、バースト転送型の通信方式を例示する。バースト転送型の通信方式の典型的な一例として、1つのフレーム内に複数のデータを含めて通信するデータ多重伝送方式について説明する。なお、このネットワーク内の各ノードは、ノード間の通信に関して独立同期で構成されていてよい。1つのフレームは、単位多重化構造の一例である。
【0074】
図6は、実施形態の通信に用いるフレームを説明するための図である。ここに示すフレームは、シリアル通信の下位層のプロトコルとして例示するイーサネット(R)フレームである。このフレームは、イーサネット(R)に制限されることなく、これに代えてIEEE802.3などの他の標準プロトコル又は非標準のプロトコルなどのフレームを適用してもよく、あるいは無手順の非同期通信であってもよい。この下位層のプロトコルでは、再送処理手順を含まない。
その上位層のプロトコルには、例えばUDP(User Datagram Protocol)のように、通信のセッション確立手順と再送処理手順とを含まないプロトコルを使用するとよい。
【0075】
このイーサネットフレームは、例えば、電圧基準値(電圧基準)、電流帰還値(電流FBK)、制御コマンドCONT(図4A)などを転送することに利用される。より具体的な、イーサネットフレーム内のデータのマッピングについて説明する。
【0076】
規格のイーサネットフレームには、プレアンブル(Pre.)と開始検出用データ(SFD)とに続く領域に、あて先アドレス情報(Dest_addr.)と、送信元アドレス情報(Source_addr.)などが含まれる。
【0077】
これに対して、本実施形態のネットワークは、リンクバイリンクで構成されるため、各ノードでそれぞれフレームを組み立てて形成し、また分解する。このようにリンクバイリンクで接続する場合には、フレームのあて先と送信元を上記のアドレス情報を用いて識別する必要がないため、あて先アドレス情報(Dest_addr.)と、送信元アドレス情報とを省略することができる。同様に、通信に支障がない範囲であれば、イーサネットフレームに規定されているタイプ(Type)、エラー検出(FCS)の各種情報の一部又は全部を省略又は変更してもよい。
【0078】
図7を参照して、上記のフレームにマッピングされるデータのデータ構造について説明する。図7は、実施形態のフレーム内のデータ構造を説明するための図である。
例えば、第1番目の例は、主制御部10からゲート制御部20Uに送信するフレームのマッピング例である。第2番目の例は、ゲート制御部20Uからゲート制御部20Vに送信するフレームのマッピング例である。第3番目の例は、ゲート制御部20Vからゲート制御部20Wに送信するフレームのマッピング例である。第4番目の例は、ゲート制御部20Wから主制御部10に送信するフレームのマッピング例である。
【0079】
この図7に示すフレームは、前述のイーサネットフレームに基づくものであるが、プレアンブル(Pre.)と、開始検出用データ(SFD)とに続くイーサネットフレームの範囲に、管理情報と、第1段から第3段の各ゲート制御部に対する電圧基準と、第1段から第3段の各ゲート制御部からの電流帰還値(電流FBK)とが割り付けられている。ここに示す事例は、送受信する各データの個数(データ数)が固定の場合の一例である。
【0080】
例えば、第1番目の例の場合、管理情報に続いて、第1段から第3段の各ゲート制御部に対する指令値が割り付けられている。この場合の指令値は、第1段から第3段のゲート制御部20に対する電圧基準(図4AのVu*、Vv*、Vw*に相当。)又は第1段から第3段のゲート制御部20に対する制御コマンドCONT(図4A)の何れかになる。
【0081】
例えば、主制御部10は、フレーム内に、少なくともゲート制御部20Uに対する電圧基準と、ゲート制御部20Vに対する電圧基準と、ゲート制御部20Wとに対する電圧基準と含めて送信する。例えば、ゲート制御部20Uは、1つの単位多重化構造(単位フレーム)内に、少なくともゲート制御部20Vとゲート制御部20Wに対する電圧基準を含めて送信する。ゲート制御部20Vと20Wとについても同様である。
【0082】
第2番目の例の場合、第2段と第3段の各ゲート制御部に対する指令値と、第1段のゲート制御部からの電流帰還値(電流FBKと示す。図4AのIu_FBKに相当。)が割り付けられている。この場合の指令値は、第2段と第3段の電圧基準(図4AのVv*、Vw*に相当。)又は第2段と第3段の制御コマンドCONTの何れかである。第3番目の例及び第4番目の例の場合も同様である。なお、ゲート制御部からの電流帰還値は、制御サイクル内で少なくとも1回収集されればよく、制御サイクル内で複数回通信する場合には、電流帰還値を省略してもよい。
【0083】
上記のように、各ゲート制御部20は、受信したデータのうち、次段以降のゲート制御部20で使用するデータ(転送データ)を次段のゲート制御部20へ転送する。
また、当該ゲート制御部20は、次段のゲート制御部20への送信時に、当該ゲート制御部20の電流帰還値も、上記の転送データと合わせて送信する。これが繰り返されて、各ゲート制御部20の電流帰還値が、当該ゲート制御部20よりも後段のゲート制御部20によって転送されて主制御部10に帰還される。なお、この制御のフィードバックは、変換器3の制御サイクル内に収まっているとよい。
【0084】
次に、図8図9を参照して、PWMキャリアの同期について説明する。
図8は、実施形態のPWMキャリアについて説明するための図である。
【0085】
ドライブシステム1における各ゲート制御部20は、PWM制御にPWMキャリアをそれぞれ生成して利用する。各ゲート制御部20でそれぞれ生成されるPWMキャリアは、互いの位相を揃えることが要求される。以下、主制御部10が基準キャリア信号θ0を生成し、各ゲート制御部20が、その基準キャリア信号θ0にそれぞれのPWMキャリアを同期させる手法について説明する。
【0086】
例えば、ドライブシステム1では、各通信ノードが独立同期のプロセッサを含む。各プロセッサが、シリアル通信を利用して互いに通信する。このようなドライブシステム1は、基準キャリア信号θ0のタイミング情報を、上記のシリアル通信を利用して主制御部10から各ゲート制御部20に転送する。
【0087】
前述のとおり、主制御部10の送信器15Tは、基準キャリア信号θ0がその周期内の所定の位相になると、ゲート制御部20Uのシリアル送受信器21Uに対して送信データTXDのシリアル転送を開始する。
【0088】
ゲート制御部20Uは、シリアル通信による所定のデータビットパターンを検出することにより、所望のフレームが到着したことを検出して、基準キャリア信号θ0のタイミング情報を再生する。
【0089】
例えば、受信検出部22Uは、所定のビットパターンが到着したことを、予め定められたデータビットパターンとの比較によって検出して、その際にキャリア同期信号Csyncuを出力し、それをキャリア同期制御部23Uに供給する。この場合の所定のビットパターンは、イーサネットフレームのプリアンブル(Preamble)と、開始検出用データ(SFD)と、フレーム種別の識別情報とを含むものであってよい。受信検出部22Uは、フレームの受信を検出しても、所定のビットパターンが到着したことを検出しなかった場合には、キャリア同期信号Csyncuを出力しなくてよい。キャリア同期制御部23Uは、キャリア位相を生成するPLLを含む。キャリア同期制御部23Uは、例えば、キャリア同期信号Csyncuが供給されたことを検出したタイミングに同期するように、PLLによってキャリア位相の位相を調整して、キャリア位相の位相情報θ0uを出力する。位相情報θ0uは、基準キャリア信号θ0の位相が0の時のPWMキャリアの振幅値に相当する。キャリア生成部24Uは、位相情報θ0uに同期する三角波のPWMキャリアを生成して、それをキャリア比較器25Uと25Xとに対して供給する。
【0090】
ゲート制御部20Uの送信器21UTは、キャリア同期信号Csyncuが出力された後の所定のタイミングになると、受信したフレームの種別と同種のフレームを使ってゲート制御部20Vのシリアル送受信器21Vに対して送信データTXDのシリアル転送を開始する。
【0091】
図9を参照して、キャリア同期制御部23Uの詳細を説明する。図9は、実施形態のキャリア同期制御部23Uの構成図である。
【0092】
キャリア同期制御部23Uは、ゲート制御部キャリア位相器231と、減算器231Aと、減算器232と、制御器233と、キャリア周波数調整器234と、基準キャリア位相検出器235とを備える。
【0093】
ゲート制御部キャリア位相器231は、キャリア同期信号Csyncuが入力されたタイミングの、ゲート制御部20内のキャリア位相の値をラッチする。ゲート制御部キャリア位相器231の出力Pref0_refuには、主制御部10において設定された遅延、伝送による遅延などが含まれる場合がある。例えば、出力Pref0_refuの大きさが0であるときに、位相が揃っている状態を示し、その値が大きくなるほど位相がずれている状態を示す。このようなゲート制御部キャリア位相器231の出力Pref0_refuは、主制御部10のキャリア位相が0であるときに、ゲート制御部20のキャリア位相が幾つであるかを示す信号になる。上記のように出力Pref0_refuの大きさが0でない場合には、出力Pref0_refuは、主制御部10のキャリア位相に対する位相誤差を含むことを示す。キャリア同期制御部23Uは、減算器231Aを用いて、その位相誤差を補償する。
【0094】
本実施形態の減算器231Aは、出力Pref0_refuに生じる遅延時間に合わせて値が調整されたオフセットPoffsetuを用いて、出力Pref0_refuからオフセットPoffsetuを減算して、補償出力Pref1_refuを算出する。
【0095】
減算器232は、ゲート制御部20のキャリア位相を示す信号と、上記の補償出力Pref1_refu(補正された基準キャリア位相)とを比較して、偏差を制御器233に与える。基準キャリア位相検出器235は、キャリア周波数調整器234の出力から上記の基準キャリア位相を検出する。キャリア同期制御部23Uは、キャリア位相の偏差を0にするように調整する。このようにしてキャリア同期制御部23Uは、キャリア生成部24Uが生成するPWMキャリアの生成タイミングを制御する。
【0096】
これにより、ゲート制御部20Uは、主制御部10から受信したフレームから、PWMキャリアを再生する際に、PWMキャリアの位相を予め定められた値の位相差を用いて調整する。ゲート制御部20Uは、位相が調整されたPWMキャリアを用いて、受信したゲート制御部20Uに対する電圧基準に基づいて、所望の相電圧波形を、基準タイミングに同期するように生成する。なお、キャリア同期制御部23Vとキャリア同期制御部23Wもキャリア同期制御部23Uと同様に構成するとよい。
【0097】
(ゲート制御部20のキャリア位相の同期)
キャリア同期制御は、シリアル通信を受信したタイミングから基準キャリア信号θ0の位相を推定し、基準キャリア信号θ0の推定位相と、ゲート制御部20のPWMキャリアとの位相の差分をとり、適切な周波数のPWMキャリアになるように、PWMキャリアの振幅の変化量(傾き)を調整するものである。
【0098】
カスケード接続されたゲート制御部20の場合、各ゲート制御部20がフレームを組み立てまた分解してデータを中継する。そのため、各ゲート制御部20がそれぞれ受信するフレームの受信開始時刻は、後段のゲート制御部20になるほど遅れる。各ゲート制御部20が受信したフレームを基準にキャリア位相を同期させると、主制御部10のキャリア位相よりも後段のゲート制御部20のキャリア位相ほど大きな遅れが生じる。そこで、各ゲート制御部20は、各段の遅れ量に対応する大きさのオフセットを、各段の遅れ量から除くことにより、主制御部10の基準キャリア信号θ0の位相に対する各ゲート制御部20のキャリア位相の遅れを補償することができる。
【0099】
これにより、カスケード接続されたゲート制御部20がそれぞれ制御する各電力変換器のスイッチングタイミングの制御に、上記の遅れ量による時間差がなくなるように補償することが可能になる。
【0100】
(カスケード接続のネットワークを用いたデータの中継)
図10を参照して、カスケード接続のネットワークを用いたデータの中継について説明する。図10は、実施形態のデータの中継について説明するための図である。図10の上から下に時間軸をとり、各時刻の基準キャリア信号θ0の振幅の一例と、各ノード間の通信のシーケンスとの関係を示す。
【0101】
主制御部10は、前述の図8に示したように、三角波状に振幅が変化する基準キャリア信号θ0を生成する。この図10では、その1つの制御サイクル内の基準キャリア信号θ0の振幅の変化を示す。時刻TM1から時刻TM2までが、1つの制御サイクルの1周期に相当する。例えば、基準キャリア信号θ0の振幅が時刻TM1に最小値をとり時刻TM2に最大値をとる。例えば、この時刻TM1と時刻TM2を、各ゲート制御部20がキャリアを同期させる基準タイミングにする。
【0102】
主制御部10は、フレームF11を生成し、「START」と、フレームF11の第1から第3のデータに指令値のデータ(例えば、「DATA1」から「DATA3」。)を割り当てる。時刻TM1に、主制御部10は、ゲート制御部20Uに対してこのフレームF11の送信を開始する(S11)。「START」には、フレームF11の識別と、フレームF11のフレーム種別の識別を可能にする情報とが含まれる。フレーム種別の識別を可能にする情報とは、例えば、図7に示したプレアンブル(Pre.)、開始検出用データ(SFD)、管理情報などを含む情報のことである。「DATA1」から「DATA3」は、ゲート制御部20Uからゲート制御部20Wに対してそれぞれ供給する指令値であり、ゲート制御部20Uからゲート制御部20W内の制御対象を制御するための制御コマンドCONTに相当する。上記の制御対象には、例えば、図示されないリレー、遮断機などが含まれてよい。
【0103】
ゲート制御部20Uは、上記のフレームF11を受信して、そのフレームF11を分解することで、フレームF11から「DATA1」から「DATA3」を抽出する。ゲート制御部20Uは、「DATA1」をゲート制御部20U内の制御のために利用する。ゲート制御部20Uは、上記フレームF11と同じ構成を有しているフレームF12を生成して、フレームF12の第1と第2のデータに、上記の「DATA2」と「DATA3」を割り当てる(C11)。ゲート制御部20Uは、フレームF12の第3のデータに、「電流FBK1」を割り当てて、ゲート制御部20Vに対してこのフレームF12の送信を開始する(S12)。例えば、「電流FBK1」は、当該制御サイクルt1のひとつ前の制御サイクルt0で検出されたU相の電流の平均値である。
【0104】
ゲート制御部20Vは、上記のフレームF12を受信して、そのフレームF12を分解することで、フレームF12から「DATA2」と「DATA3」と、「電流FBK1」とを抽出する。ゲート制御部20Vは、「DATA2」をゲート制御部20V内の制御のために利用する。ゲート制御部20Vは、上記フレームF11と同じ構成を有しているフレームF13を生成して、フレームF13の第1と第2のデータに、上記の「DATA3」と「電流FBK1」とを割り当てる(C12)。ゲート制御部20Vは、フレームF13の第3のデータに、「電流FBK2」を割り当てて、ゲート制御部20Wに対してこのフレームF13の送信を開始する(S13)。例えば、「電流FBK2」は、当該制御サイクルt1のひとつ前の制御サイクルt0で検出されたV相の電流の平均値である。
【0105】
ゲート制御部20Wは、上記のフレームF13を受信して、そのフレームF13を分解することで、フレームF13から「DATA3」と、「電流FBK1」と「電流FBK2」とを抽出する。ゲート制御部20Wは、「DATA3」をゲート制御部20W内の制御のために利用する。ゲート制御部20Wは、上記フレームF11と同じ構成を有しているフレームF14を生成して、フレームF14の第1と第2のデータに、上記の「電流FBK1」と「電流FBK2」とを割り当てる(C13)。ゲート制御部20Wは、フレームF14の第3のデータに、「電流FBK3」を割り当てて、主制御部10に対してこのフレームF14の送信を開始する(S14)。例えば、「電流FBK3」は、当該制御サイクルt1のひとつ前の制御サイクルt0で検出されたW相の電流の平均値である。
【0106】
主制御部10は、上記のフレームF14を受信して、そのフレームF14を分解することで、フレームF14から「電流FBK1」から「電流FBK3」を抽出する。主制御部10は、「電流FBK1」から「電流FBK3」に基づいた電圧基準生成演算処理を実行して、「電圧基準VREF1」から「電圧基準VREF3」を算出する(VREFG)。
【0107】
主制御部10は、上記フレームF11と同じ構成を有しているフレームF21を生成して、フレームF21の第1から第3のデータに、上記の「電圧基準VREF1」から「電圧基準VREF3」を割り当てる(C10)。
【0108】
例えば、本実施形態における「電圧基準VREF1」から「電圧基準VREF3」は、前述の電圧基準Vu*、Vv*、Vw*のことである。
【0109】
ゲート制御部20Wは、ゲート制御部20Wに対してこのフレームF21の送信を開始する(S21)。
【0110】
ゲート制御部20Uは、上記のフレームF21を受信して、そのフレームF21を分解することで、フレームF21から「電圧基準VREF1」から「電圧基準VREF3」を抽出する。ゲート制御部20Uは、「電圧基準VREF1」を単相電力変換器3Uの制御のために利用する。ゲート制御部20Uは、フレームF12を生成して、フレームF12の第1と第2のデータに、上記の「電圧基準VREF2」と「電圧基準VREF3」を割り当てる(C21)。このフレームF22は、第3のデータを割り当てる領域を含まない。ゲート制御部20Uは、ゲート制御部20Vに対してこのフレームF22の送信を開始する(S22)。
【0111】
ゲート制御部20Vは、上記のフレームF22を受信して、そのフレームF22を分解することで、フレームF22から「電圧基準VREF2」と「電圧基準VREF3」とを抽出する。ゲート制御部20Vは、「電圧基準VREF2」を単相電力変換器3Vの制御のために利用する。ゲート制御部20Vは、フレームF13を生成して、フレームF13の第1のデータに、上記の「電圧基準VREF3」を割り当てる(C22)。このフレームF22は、第2と第3のデータを割り当てる領域を含まない。ゲート制御部20Vは、ゲート制御部20Wに対してこのフレームF23の送信を開始する(S23)。
【0112】
ゲート制御部20Wは、上記のフレームF23を受信して、そのフレームF23を分解することで、フレームF23から「電圧基準VREF3」を抽出する。ゲート制御部20Wは、「電圧基準VREF3」を単相電力変換器3Wの制御のために利用する。なお、ゲート制御部20Wは、これに応じて主制御部10に対してフレームを送信しないため、新たなフレーム生成を行わない。
【0113】
ゲート制御部20Uからゲート制御部20Wは、時刻TM2に対応するタイミングになったことを、それぞれのPWMキャリアの位相に基づいて検出して、「電圧基準VREF1」から「電圧基準VREF3」に基づいて、上記のタイミングの検出に応じて次の制御サイクルの電圧基準をそれぞれ更新する。
【0114】
各ゲート制御部20Uは、例えば、上述のタイミングに所定量のオフセットを用いて決定した補正タイミングを基準にして、自ノードのキャリアの位相を調整する。
【0115】
なお、シリアル通信による遅延時間と、データの転送処理に係るノード内の転送処理時間は、設計的に予め定めることができる。例えば、シリアル通信の遅延時間の値と、転送処理に係るノード内の処理時間の値と、カスケード接続の段数との関係を用いて、上記のオフセットの大きさを予め決定するとよい。カスケード接続の段数は、主制御部10を起点にして、ゲート制御部20Uを1段目、ゲート制御部20Vを2段目、及びゲート制御部20Wを3段目として規定するとよい。より具体的には、次の式(1)に示す演算式によって、上記のオフセット時間を定めてもよい。この式(1)は、シリアル通信の遅延時間として代表値を用いたものである。
【0116】
(シリアル通信の遅延時間)×(段数)+(ノード内の処理時間)×(段数-1)
・・・(1)
【0117】
ゲート制御部20Uは、基準タイミング信号θ0に同期するように調整されたPWMキャリア(第1タイミング信号)を生成する。ゲート制御部20Uは、PWMキャリアに同期するようにU相の電圧波形を生成するための所望の第1ゲートパルスを生成し、生成した第1ゲートパルスを単相電力変換器3Uに供給する。ゲート制御部20Vは、ゲート制御部20Uから受信した信号を用いて基準タイミング信号θ0に同期するように調整されたPWMキャリア(第2タイミング信号)を生成する。ゲート制御部20Vは、第2タイミング信号に同期するようにV相の電圧波形を生成するための所望の第2ゲートパルスを生成し、生成した第2ゲートパルスを、単相電力変換器3Vに供給する。ゲート制御部20Wについても、ゲート制御部20Vと同様である。U相の電圧波形と、V相の電圧波形と、W相の電圧波形は、種類が共通する相電圧波形になっている。例えば、上記の相電圧波形は、3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかである。
【0118】
上記のようにカスケード通信の場合には、段数が増えるほど、伝送による遅延により生じる偏差が顕著になるが、上記の方法で補償することができる。
【0119】
上記の実施形態によれば、ゲート制御部20Uは、相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかを決定し、前記決定した相電圧波形を第1電力変換部から出力させるように第1電力変換部を制御する。ゲート制御部20Uは、相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて第1電力変換部の相電圧波形と同種の相電圧波形を第2電力変換部から出力させるように第2電力変換部を制御する。これにより、ドライブシステム1は、変換器3が交流電動機の巻線に掛ける相電圧波形の量子化レベルの段数によらずに、変換器3を制御する制御装置6に係る用品の共用が可能になる。第1電力変換部と第2電力変換部のそれぞれは、変換器3の構成の一例である。
【0120】
上記のドライブシステム1において、ゲート制御部20Uは、主制御部10から受信したフレームから、基準キャリア信号θ0に同期するPWMキャリア(キャリアの情報)を再生する。ゲート制御部20Uは、再生したPWMキャリアと、受信したゲート制御部20Uに対する電圧基準とに基づいて、基準タイミングに関連付けられて、その基準タイミングに互いに同期する所望の相電圧波形を生成する。ゲート制御部20Vは、ゲート制御部20Uから受信したフレームから、PWMキャリアを再生する。ゲート制御部20Vは、再生したPWMキャリアと、受信したゲート制御部20Vに対する電圧基準とに基づいて、基準タイミングに関連付けられて、その所望の相電圧波形を、基準タイミングに同期するように生成する。ゲート制御部20Wの場合も、上記のゲート制御部20Uとゲート制御部20Vの場合と同様である。
【0121】
上記のドライブシステム1の特徴とは異なる観点で、実施形態のドライブシステム1の特徴を整理する。ドライブシステム1の制御装置6は、択一的に選択する複数の制御モードを備えており、設定によって所望の制御モードを選択する。例えば、第1モードは、第1電力変換部の1個のNPC型レグと第2電力変換部の1個のNPC型レグとをそれぞれ制御して、交流電動機2を3レベル型(第1レベル型)の電圧波形の電圧で駆動させるモードである。第2モードは、第1電力変換部の複数のNPC型レグと第2電力変換部の複数のNPC型レグとを制御して、交流電動機2を5レベル型(第2レベル型)の電圧波形の電圧で駆動させるモードである。これによりドライブシステム1は、上記と同様に変換器3が交流電動機2の巻線に掛ける相電圧波形の量子化レベルの段数によらずに、変換器3を制御する制御装置6に係る用品を共用することができる。上記のように各相の変換器3のレグの個数が、各相で揃っていてもよく、互いに異なっていてもよい。
【0122】
実施形態の主制御部10は、ゲート制御部20Uと、ゲート制御部20Vと、ゲート制御部20Wとに対して3レベルの相電圧波形に係る電圧基準をそれぞれ供給する。これにより、ゲート制御部20Uとゲート制御部20Vとゲート制御部20Wとは、相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて、3レベルの相電圧波形に係る電圧基準を、5レベルの相電圧波形に係る電圧基準に変換する。
【0123】
(第1の実施形態の変形例)
図11を参照して、第1の実施形態の変形例について説明する。
第1の実施形態では、ゲート制御部20が送受信するデータ数が固定されている事例について説明した。本変形例では、これに変えて、データ数を変更容易にした事例について説明する。図11は、第1の実施形態の変形例のフレーム内のデータ構造を説明するための図である。
【0124】
主制御部10からゲート制御部20あてに送信するデータ数、又は主制御部10あてにゲート制御部20が送信するデータ数の少なくとも何れかを調整することが要求される場合がある。この場合、主制御部10が何個のデータを送るか、又は主制御部10に何個のデータが戻ってくるかを、シリアル通信の開始時に主制御部10から各ゲート制御部20に通知することで上記の調整が可能になる。例えば、主制御部10からその通知を受けた各ゲート制御部20は、それぞれがフレームの受信を開始した後に、送信データ数、受信データ数を識別して、所望の個数のデータを抽出するとよい。
【0125】
図11に示すように、フレーム内の管理情報の後に、「送信データ個数」と「受信データ個数」の2つの情報を追加する。「送信データ個数」とは、主制御部10が、ゲート制御部20宛てにそれぞれ送信する送信データの大きさ、数量などを示す識別情報のことである。この「送信データ個数」には、例えば、個数を示す整数nが設定される。「受信データ個数」とは、主制御部10が、ゲート制御部20からそれぞれ受信する受信データの大きさ、数量などを示す識別情報のことである。この「受信データ個数」には、例えば、個数を示す整数mが設定される。
【0126】
これに続く、各ゲート制御部20の段数分のデータが割り当てられている。例えば、主制御部10が送信データを3つの段のゲート制御部20にそれぞれ送信する場合には、n個のデータの組が3つフレームに割り当てられる。また、ゲート制御部20Uがゲート制御部20Vに、n個のデータを含む送信データの組を2つと、m個のデータを含む受信データの組を1つとを送信する場合には、上記の個数の送信データと受信データがそれぞれフレームに割り当てられる。
【0127】
このように、フレームに割り当てるデータの個数を、変数を用いて設定できるようにフレームを構成したことにより、送受信する各データの個数(データ数)を、主制御部10側から制御して変化させることが可能になる。
【0128】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のドライブシステム1Cについて説明する。図12Aは、第2の実施形態のドライブシステム1Cの構成図である。図12Bは、第2の実施形態のシリアル送受信器の構成図である。
【0129】
第1の実施形態では、3レベル用の電圧基準から5レベル用の電圧基準に変換する電圧基準変換部27U、27V、27Wが、各ゲート制御部20にそれぞれ設けられている事例を説明した。これに代えて、本実施形態では、上記の電圧基準変換部と同等の変換機能を有する電圧基準変換部を、主制御部10Aに設けた事例について説明する。
【0130】
ドライブシステム1Cは、主制御部10Aと、ゲート制御部20Aとを備える。上記のとおり主制御部10Aは、主制御部10に対して、電圧基準変換部17U、17V、17Wを備える。ゲート制御部20Aは、ゲート制御部20に対して電圧基準変換部27U、27V、27Wを有していない。主制御部10Aとゲート制御部20Aの組の主制御部10とゲート制御部20の組に対する違いは、電圧基準変換部が設けられた位置が互いに異なることである。
【0131】
この電圧基準変換部17U、17V、17Wにおいて、3レベルの相電圧波形に係る電圧基準と、5レベルの相電圧波形に係る電圧基準との何れかの種類の電圧基準が択一的に選択される。主制御部10Aは、選択された種類の電圧基準をゲート制御部20UAと、ゲート制御部20VAと、ゲート制御部20WAとに対して供給する。これに伴い、主制御部10Aから各ゲート制御部20Aに送るデータ量が増えるため、これをフレームに収容するようにフレーム内のデータの割り付けを次のように見直すとよい。
【0132】
例えば、前述の図10における「電圧基準VREF1」から「電圧基準VREF3」について、本実施形態の場合、「電圧基準VREF1」に前述の電圧基準V5u*とV5x*とを割り付けて、「電圧基準VREF2」に前述の電圧基準V5v*とV5y*とを割り付けて、「電圧基準VREF3」に前述の電圧基準V5w*とV5z*とを割り付けるとよい。
【0133】
以上説明したように、主制御部10Aは、相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて、3レベルの相電圧波形に係る電圧基準を、5レベルの相電圧波形に係る電圧基準に変換して、ゲート制御部20Uとゲート制御部20Vとに対して5レベルの相電圧波形に係る電圧基準をそれぞれ供給する。これにより、主制御部10Aが、3レベルの相電圧波形に係る電圧基準と、5レベルの相電圧波形に係る電圧基準との双方を択一的に生成することができることから、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能になる。
【0134】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、実施形態のドライブシステム1は、複数の巻線を有する多相交流モータを駆動する。ドライブシステム1は、第1電力変換部と、第2電力変換部と、第1変換制御部と、第2変換制御部と、を備える。第1電力変換部は、前記多相交流モータの第1相の巻線に電流を流す。第2電力変換部は、多相交流モータの第2相の巻線に電流を流す。第1変換制御部は、相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて3レベルの相電圧波形と5レベルの相電圧波形の何れかを決定し、決定した相電圧波形を第1電力変換部から出力させるように第1電力変換部を制御する。第2変換制御部は、相電圧波形の種類を指定する設定情報に基づいて第1電力変換部の相電圧波形と同種の相電圧波形を第2電力変換部から出力させるように第2電力変換部を制御する。これにより、変換器3が交流電動機2の巻線に掛ける電圧波形の量子化レベルの段数によらずに、変換器3を制御する制御装置6に係る用品を共用可能になる。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0136】
1、1A、1B、1C…ドライブシステム、2…交流電動機、3…変換器、3A…3レベル型電力変換器、3B…NPC型電力変換器、3U、3V、3W…単相型電力変換器、4…直流電源、6…制御装置、10、10A…主制御部、20、20A…ゲート制御部、15、21U、21V、21W…シリアル送受信器、17U、17V、17W、27U、27V、27W…電圧基準変換部、30、31、31、33…レグ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B