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特許7520165精製水供給システム、水処理装置、及び、貯水ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】精製水供給システム、水処理装置、及び、貯水ユニット
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/30 20060101AFI20240712BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20240712BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20240712BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240712BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B01D61/30
B01D61/00
B01D61/08
C02F1/44 J
A61M1/16 161
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023004818
(22)【出願日】2023-01-17
【審査請求日】2023-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年3月28日に、有限会社アクアデザインが商品の販売を実施
(73)【特許権者】
【識別番号】519188592
【氏名又は名称】有限会社アクアデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100100376
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100143199
【弁理士】
【氏名又は名称】磯邉 毅
(72)【発明者】
【氏名】湊 明久
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3191192(JP,U)
【文献】実公昭48-031501(JP,Y1)
【文献】特開昭57-112229(JP,A)
【文献】実開平06-079887(JP,U)
【文献】特開2013-172821(JP,A)
【文献】特開平09-103770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/00- 1/78
A61M 1/00- 1/38
60/00-60/90
F04B 43/00-47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析装置に透析液を供給する透析液供給装置に、精製水を供給する供給システムであって、
逆浸透膜を使用して原水を処理する水処理装置を設けると共に、前記水処理装置が精製するRO水を受けて一時的に貯留可能な貯水ユニットを設けて構成され、
前記貯水ユニットは、両端が開放した筒状に形成された保持体と、前記保持体の一端に設けられたRO水の導入口と、前記保持体の他端に設けられたRO水の導出口と、前記保持体の内部に収容されて、前記導入口から前記導出口までRO水を流通させる防水性の伸縮材と、を有して構成され、
前記伸縮材と前記保持体の間には、所定量の気体を加圧状態で封止可能な密閉空間が設けられ、
前記伸縮材の膨張時には、前記密閉空間を、外部空間に対して密閉する一方、縮小時には、前記外部空間の気体を、前記密閉空間に吸気可能な逆止弁が、前記保持体に設けられていることを特徴とする精製水供給システム。
【請求項2】
前記伸縮材は、シリコーンゴムを主成分とし、チューブ状に加工されたシリコンチューブである請求項に記載の精製水供給システム。
【請求項3】
システム適所に配置されたセンサの出力値に基づいて、前記水処理装置への通水を加圧する加圧ポイプの運転が、自動的に停止又は開始されるか、或いは、前記水処理装置への通水路が自動的に閉鎖又は開放されるよう構成されている請求項1又は2に記載の精製水供給システム。
【請求項4】
前記透析液供給装置の上流側又は下流側には、ガス分離膜を通して、RO水又は透析液に水素を供給する水素供給装置が配置されている請求項に精製水供給システム。
【請求項5】
貯水ユニットの導出口から出力されるRO水は、所定条件下、前記水処理装置の上流側に還流されるよう構成されている請求項4に記載の精製水供給システム。
【請求項6】
システム適所に配置されたセンサ類のデータが取得可能であると共に、前記水処理装置に原水を供給する加圧ポンプ及び/又は制御弁を、ON/OFF制御可能な中央制御装置が、インターネット回線に接続可能に構成されている請求項1又は2に記載の精製水供給システム。
【請求項7】
請求項1に記載の精製水供給システムに使用される、請求項1に記載された貯水ユニット。
【請求項8】
逆浸透膜を使用してRO(reverse osmosis membrane)処理水を出力する水処理装置であって、
請求項に記載の貯水ユニットを内蔵させて構成された水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人用透析装置などの医療機器に対して、精製水を安定的に供給する精製水供給システムに関し、また、同システムを構成する水処理装置や貯水ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
腎不全により腎臓機能が低下又は消失した患者は、一週間に2~3回、病院に通院して、4時間程度の透析治療を受ける必要がある。この透析治療は、患者の生命を維持するために必須であり、透析液の品質を維持するために、RO(Reverse Osmosis )水などの精製水が使用される。そして、出願人は、このRO水を透析装置に安定的に供給する各種の機器構成を提案している(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
先ず、特許文献1に記載の発明では、空気圧タンクを活用することで、1時間に300リットル(=30リットル×10床)程度のRO水を、セントラル透析液供給装置に安定供給している。また、特許文献2に記載の発明では、RO水の精製装置の下流位置に、シリンジ部材を配置することで、個人用透析装置にRO水を安定供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-103770号公報
【文献】実登3191192公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成は、空気タンクがやや大型化し、また、永年使用では、RO水と空気を遮蔽する遮蔽部の気体透過性や機器メンテナンスが問題となる。一方、特許文献2の構成では、ピストンが上昇/降下するシリンジの内壁にRO水が付着するので、窒素などの不活性ガスのシリンジへの充填や、シリンジ内壁の定期的な洗浄が必要となる。
【0006】
また、上記の文献に拘わらず、透析治療の治療効果を高めるための構成や、RO水を精製する水処理装置を遠隔操作できる構成は、知られていない。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、精製水を安定的に供給することができる精製水供給システムを提供することを目的とする。また、透析治療の治療効果を高め、遠隔操作も可能な精製水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、透析装置に透析液を供給する透析液供給装置に、精製水を供給する供給システムであって、逆浸透膜を使用して原水を処理する水処理装置を設けると共に、前記水処理装置が精製するRO水を受けて一時的に貯留可能な貯水ユニットを設けて構成され、前記貯水ユニットは、両端が開放した筒状に形成された保持体と、前記保持体の一端に設けられたRO水の導入口と、前記保持体の他端に設けられたRO水の導出口と、前記保持体の内部に収容されて、前記導入口から前記導出口までRO水を流通させる防水性の伸縮材と、を有して構成され、前記伸縮材と前記保持体の間には、所定量の気体を加圧状態で封止可能な密閉空間が設けられ、前記伸縮材の膨張時には、前記密閉空間を、外部空間に対して密閉する一方、縮小時には、前記外部空間の気体を、前記密閉空間に吸気可能な逆止弁が、前記保持体に設けられている。
【0009】
本発明では、密閉空間には、所定量の気体が加圧状態で封止され(以下この気体を封止ガスと称する)、密閉空間の封止ガスの圧力と、伸縮材内部のRO水の圧力とが自動的に平衡するので、流通するRO水の水圧の増加に対応して、伸縮材が膨張して密閉空間は収縮し、水圧が減少すると元の状態に戻る。すなわち、伸縮材は、RO水の水圧に対応して膨張/収縮するが、水圧が急激に低下したような場合には、この変化に対応して、伸縮材が急激に収縮することで、伸縮材に貯留されていたRO水が一気に出力される。したがって、精製水供給先のRO水の必要量が急変しても、その変動量を伸縮材の貯留水が吸収することで、精製水の安定供給が実現される。
【0010】
本発明の伸縮材は、典型的には、チューブ状に形成されたゴム材で構成され、好適には、硬度40~50(JIS K6253)の材料が使用される。ゴム材としては、ブチルゴム(IIR)、多硫化ゴム、エピクロロヒドリンゴム、高ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)を例示することができる。
【0011】
ここで、ブチルゴム(IIR)、多硫化ゴム、エピクロロヒドリンゴム、高ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴムなどを使用する場合には、ゴム材の気体透過性が低いので、密閉空間内の封止ガスの減少が問題になりにくい。一方、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などを使用する場合は、ゴム材の気体透過性が無視できないので、密閉空間内の封止ガスの減少が問題になる可能性がある。
【0012】
すなわち、封止ガスが伸縮材を通過して、RO水に封止ガスが混入することで、封止ガスが減少し、その結果、封止ガスのガス圧が低下して、水圧の急変に対応できないおそれがある。そこで、本発明では、外部空間から密閉空間に一方向に至る逆止弁を、保持体に配置するのが好適である。逆止弁を設けることで、減少した封止ガスを、外部空間から密閉空間に補充することができる。また、逆止弁であることから、伸縮材の膨張時には、密閉空間のガスを封止することができる。
【0013】
好適な実施態様としては、伸縮材の材料に、硬度40~50程度のブチルゴムを使用し、密閉空間に、窒素などの不活性ガスを封止する構成が例示される。また、簡易的には、硬度40~50程度のシリコーンゴムを使用して伸縮材を構成し、密閉空間に、空気を封止する構成も好適である。なお、何れの構成を採る場合も、保持体に逆止弁を配置するのが好適である。
【0014】
本発明に係る精製水供給システムは、好適には、システム適所に配置されたセンサ類(典型的には圧力センサ)の値に基づいて、水処理装置への通水が制御される。典型的には、水処理装置への通水を加圧する加圧ポイプの運転が、自動的に停止又は開始されるか、或いは、水処理装置への通水路が自動的に閉鎖又は開放される。センサは、水処理装置の上流位置、及び/又は、水処理装置の下流位置に配置するのが好適である。この場合、水処理装置への通水制御は、水処理装置の上流位置又は下流位置に配置した何れか一方のセンサの出力に基づいて実行するか、或いは、水処理装置の上流位置と下流位置に配置した一対のセンサの出力に基づいて実行するのが好適である。
【0015】
本発明に係る水処理装置の下流側に、ガス分離膜を通してRO水に水素を供給する水素供給装置が配置するのも好適であり、この場合には、適切な濃度の水素水が供給されることで、透析治療の治療効果を高めることができる。また、本発明では、水圧調整や、排水量の抑制のため、貯水ユニットの導出口から出力されるRO水を、所定条件下、水処理装置の上流側に還流させるのも好適である。
【0016】
また、本発明に係る精製水供給システムは、システム適所に配置されたセンサ類(圧力計や圧力センサなど)のデータを取得可能であると共に、水処理装置に原水を供給する加圧ポンプON/OFF制御する中央制御装置が、インターネット回線に接続可能に構成されているのも好適である。インターネット回線への接続は、例えば、Wi-Fiルータなどの無線ルータが使用され、インターネット回線を経由して、精製水供給システムの遠隔監視や、遠隔操作が可能となる。
【0017】
監視項目としては、(1)水処理装置が動作中か否かの運転情報、(2)水処理装置動作中の各部の運転圧力、(3)RO水の水質、(4)RO水の流量や水温、(5)逆浸透膜の累積使用時間や実運転時間の累積値、(6)漏水センサの異常検知状況、(7)排水流量の異常の有無、(8)水処理装置の異常履歴ログなどを例示することができる。
【0018】
また、遠隔操作項目としては、(1)ポンプの運転を異常停止させるべき運転停止圧力の設定、(2)送水を異常停止させるべき送水中断圧力の設定、(3)ポンプの運転停止や送水中断後の動作再開を規定する水圧の設定、(4)RO水の水質を異常と判定する判定値の設定、(5)排水流量を異常と判定する判定値の設定、などを例示することができる。
【0019】
なお、本発明には、上記した精製水供給システムに使用される貯水ユニット、及び、このような貯水ユニットを内蔵させた水処理装置も含まれる。ここで、貯水ユニットは、必要な性能(通水量)に対応して大型化する必要は特になく、複数の貯水ユニットを並列接続することで、各貯水ユニットの小型化を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記した本発明によれば、精製水を安定的に供給することができる精製水供給システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例に係る水処理装置と、個人用透析装置との接続状態を示す概略斜視図である。
図2】貯水ユニットの内部構成と、動作状態を示す図面である。
図3】水処理装置の制御条件を設定する設定画面を示す図面である。
図4】本発明を、セントラル透析液供給装置に適用した実施例である。
図5】注気モジュールMOを説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。図1は、実施例に係る水処理装置WATを説明する図面であり、図1(a)は、水処理装置WATの構成図、図1(b)は、水処理装置WATと、個人用透析装置DILとの接続状態を示すブロック図である。
【0023】
個人用透析装置DILは、例えば、図1(b)に示す構成を有しており、患者の老廃血液を導入する一方、透析膜を通過した清浄血液を出力するダイヤライザ51と、ダイヤライザ51に透析液を流通させ、回収した透析廃液を排出しつつ透析治療を監視する装置本体部(透析液供給装置)52と、を有して構成されている。なお、透析液は、水処理装置WATから受けるRO(Reverse Osmosis )水を使用して生成され、必要な情報は、モニター画面SHに表示される。
【0024】
個人用透析装置DILは、その運転開始時に、開閉調整弁V1に通電信号SGを供給してRO水の導入路を解放する一方、運転終了時には、通電信号SGを遮断させてRO水の導入路を閉鎖する。そして、本実施例では、開閉調整弁V1の通電信号SG(直流24V)は、水処理装置WATに伝送されている。
【0025】
図1(a)に示す通り、水処理装置WATは、通電信号SGを受けて原水ラインを開放させる開閉調整弁V1と、活性炭フィルタなどを内蔵して原水の不純物を除去するプレフィルタFiと、プレフィルタFiの上流及び下流に配置された圧力計P1,P2と、プレフィルタFiの下流側に配置された加圧ポンプPUと、加圧ポンプPUの上流側に配置された圧力スイッチSWと、加圧ポンプPUの下流側に配置された圧力計P1と、一対の逆浸透膜モジュールTU1,TU2で構成されたROモジュールROと、ROモジュールROの上流側に配置された運転圧力センサS1と、ROモジュールROの下流側に配置された送水圧力センサS2と、送水圧力センサS2の下流側に配置された貯水ユニットBUFと、RO水の還流量を調整する圧力調整弁V2と、RO水の排水量を調整する流量調整弁V3と、一方向の流路を確保する逆止弁V5~V7と、圧力センサS1,S2などの信号を受けて加圧ポンプPUの運転を制御するコントローラPLC(Programmable Logic Controller)とを有して構成されている。
【0026】
なお、破線で示すように、貯水ユニットBUFから出力されるRO水の一部を、加圧ポンプPUの上流側に還流させる第2還流路を設けても良く、この場合には、圧力調整弁V4が、この第2還流路に配置される。一方、RO水の還流量を調整する圧力調整弁V2を設けた第1流路を省略しても良い。すなわち、圧力調整弁V2,V4を配置する第1と第2の還流路は、必ずしも必須ではなく、必要に応じて選択的に使用される。ここで、第1と第2の還流路は、水圧を一定レベルに維持する機能を果たしており、加圧ポンプPUを省略する場合には、第1と第2の還流路についても、これらを省略することができる。
【0027】
また、図示のROモジュールROは、第1と第2の逆浸透膜モジュールTU1,TU2で構成されているが、逆浸透膜モジュールTUの使用個数や接続方法は、任意である。例えば、図1(a)のROモジュールROは、逆浸透膜モジュールTU1,TU2を並列接続しているが、図1(a)の左側に示すように、逆浸透膜モジュールTU1,TU2を直列接続しても良く、また、逆浸透膜モジュールの使用本数も、二本に限定されず、必要に応じて、適宜に増減される。
【0028】
更に、逆浸透膜モジュールの個数や、特性によっては、加圧ポンプPUを省略することもできる。加圧ポンプPUを省略する構成では、圧力計P1や運転圧力センサS1は省略可能であるが、加圧ポンプPUの運転制御に代えて、開閉調整弁V1が、コントローラPLCによって開閉制御される。
【0029】
以上を踏まえて、加圧ポンプPUを設けた図1(a)に示す実施例について、以下、説明を続ける。コントローラPLCは、運転圧力センサS1や送水圧力センサS2からの信号に基づき、加圧ポンプPUに、ON/OFF制御信号CTLを送ることで、加圧ポンプPUの動作を制御している。
【0030】
この点を更に説明すると、コントローラPLCは、予め係員が設定した設定値と、センサS1,S2の出力に基づく制御信号を出力することで、不必要時には、加圧ポンプPUの回転を停止させ、その後、再開条件が満たされると加圧ポンプPUの回転を再開させている。なお、コントローラPLCには、表示装置DISPが配置されており、係員による設定値(つまり運転停止や運転再開の条件)が、目視確認できるよう構成されている。
【0031】
また、コントローラPLCは、調整弁V2及びV3の動作状態を適宜に開閉調整するが、緊急時には、開閉調整弁V1を閉鎖するよう制御している。すなわち、開閉調整弁V1は、個人用透析装置DILから受ける通電信号SGに基づいて開閉されるが、原水が途絶えたような異常時には、圧力スイッチSWの動作に基づいて、コントローラPLCが閉鎖制御動作を実行することで、開閉調整弁V1が閉鎖される。なお、この異常時には、コントローラPLCが、加圧ポンプPUの回転を異常停止させるので、加圧ポンプPUの空回り動作が未然防止される。
【0032】
図1(b)は、個人用透析装置DILと共に、水処理装置WATの内部構成を図示したものである。逆浸透膜モジュールTU1,TU2は、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜などを、適宜に配置して構成され、塩類や不純物を確実に除去する。
【0033】
図1(b)に示す通り、プレフィルタFiで濾過された原水は、加圧ポンプPUで加圧されて第1逆浸透膜モジュールTU1の逆浸透膜の外周側に導入される。そして、逆浸透膜を通過して清浄化された処理水(RO水)が、ミキサ部MXに出力される一方、濃縮水(RO排水)が、第2逆浸透膜モジュールTU2に導入される。そして、第2逆浸透膜モジュールTU2で再処理された処理水(RO水)は、ミキサ部MXに出力され、第2逆浸透膜モジュールTU2の濃縮水(RO排水)だけが排出される。そして、ミキサ部MXを通過したRO水は、貯水ユニットBUFを経由して、個人用透析装置DILに出力される。
【0034】
図2(a)は、貯水ユニットBUFの構成を示す概略図であり、この貯水ユニットBUFは、円筒状の伸縮材13を気密状態で内包した蓄水蓄圧ユニットとして機能している。伸縮材13の形成材料は、特に限定されないが、この実施例では、硬度40~50程度のシリコーンゴムをチューブ状に形成したシリコンチューブを使用している。但し、硬度40~50程度のブチルゴムを使用するのも好適である。
【0035】
何れにしても、個人用透析装置DILの場合、平均的には、500cc/minのRO水が必要となるが、この必要流量は、時間的に少なからず増減し、最大では、定常時の3倍近い1,400cc/min程度の流量が要求される場合もある。つまり、追加的に、+900cc/minのRO水が必要となるタイミングがある。
【0036】
一般的な機器構成を採る場合には、1,400cc/min程度の突発的な流量要求に備えて、2,200~2,300cc/minの送水能力を確保する必要があり、1床用の水処理装置WATでありながら、3~4床用の規模のROモジュールROを内蔵した大型装置が必要となる無駄がある。
【0037】
そこで、本実施例では、RO水の水圧を、0.1MPa~0.3MPa程度の所定値に維持することで、円筒伸縮材13の内部に余分のRO水を貯水し、その後、RO水の必要流量が増加した減圧タイミングで、円筒伸縮材13の内部の貯留水を吐出するようにしている。
【0038】
なお、図2(b)は、円筒伸縮材の内部にRO水を貯水した蓄水蓄圧状態を概略的に図示したものであり、図2(c)は、貯留水が吐出される減圧タイミングを模式的に示している。なお、蓄水蓄圧状態(図2(b))では、円筒伸縮材の外側密閉空間に封止ガス(空気)が、RO水の水圧に平衡する圧縮状態で封止されており、この圧縮圧に基づいて、図2(c)に示す吐出状態が実現される。
【0039】
図2(a)は、上記の動作を実現する貯水ユニットBUFの構成を図示したものである。図示の通り、貯水ユニットBUFは、両端が開放した円筒形状に形成された保持体10と、保持体10の一端に配置されるRO水の導入部11と、保持体10の他端に配置されるRO水の導出部12と、保持体10の内部に収容されて、導入部11から導出部12までRO水を流通させる防水性の円筒伸縮材13と、導入部11や導出部12を貫通させた状態で、保持体10の左右を閉栓するキャップ部14,15と、保持体10の内周面に接して円筒伸縮材13の両端を保持する保持リング16,17と、保持体10の内外を一方向に連通させる逆止弁18と、を有して構成されている。
【0040】
ここで、保持体10の左右両端の外周面と、キャップ部14,15の内周面には、互いに螺合するネジ溝が形成されている。そして、保持体10にキャップ部14,15が螺合された完成状態では、キャップ部14とキャップ部15は、各々、Oリングを介して、保持体10の開放端面に当接している。そのため、円筒伸縮材13の外周面と、保持体10の内周面との間に、空気を閉じ込めた密閉空間が形成されることになる。
【0041】
逆止弁18は、保持体10の外部から内部への通気のみが許容され、内部から外部に内部ガスが漏れない構成を有している。内部ガスは、典型的には空気であるが、その他、窒素などの不活性ガスを封止する場合には、逆止弁18を通して不活性ガスが吸入できる。
【0042】
なお、逆止弁18の配置位置は、特に限定されず、例えば、キャップ部14,15の一方に配置したのでも良い。また、便宜上、図示の左側を導入部11と称し、右側を導出部12と称したが、貯水ユニットBUFは、逆止弁18を除けば、左右対称形であり、導入部11と導出部12は、逆の位置であっても良いのは勿論である。
【0043】
導入部11と導出部12の露出終端には、不図示の通水チューブが外嵌されるが、導入部11と導出部12は、何れも、全体として円筒軸状に形成され、例えば、直径5mm程度の連通孔が軸方向に貫通することで、RO水の通水路を形成している。また、導入部11及び導出部12において、互いに対面する内側先端部11a,12aは、やや大径の隆起状態に形成されている。そして、この隆起部11a,12aの外周に、円筒伸縮材13の終端部がきつく嵌合されることで、導入部11と導出部12が、円筒伸縮材13を通して液密に連結されている。
【0044】
保持リング16,17は、導入部11と導出部12にとっては、位置決め部材であり、また、円筒伸縮材13にとっては、抜け止め部材である。そして、各保持リング16,17は、円筒伸縮材13に外嵌された状態で、隆起部11a,12aに接している。この保持リング16,17は、保持体10の内周面にほぼ達する外径と、円筒伸縮材13を、無理なく貫通させる内径と、を有して構成されており、図示の位置に限らず、軸方向の左右移動が許容される。
【0045】
ここで、保持リング16,17の内側端面16b,17bは、球面状の凹部となっており、膨張する円筒伸縮材13を、柔らかく受け止める構成となっている。一方、保持リング16,17の外側端面16a,17aは、平坦に形成されており、円筒伸縮材13の膨張量に対応する押圧力で、隆起部11a,12aを押圧することで、伸縮材13が、隆起部11a,12aから抜けることを防止している。
【0046】
伸縮材13の寸法は、特に限定されないが、個人用透析装置DILにRO水を供給する水処理装置WATの場合には、保持リング16の外側端面16aと、保持リング17の外側端面17aとの離間距離Lは、150mm程度に設定される。したがって、円筒伸縮材13として、内径15mm程度のチューブ材を使用する場合には、円筒伸縮材13の内部容積は、RO水の非通水状態において、0.75×π×15=26.5cm=26.5cc程度となる。
【0047】
一方、RO水の通水時には、RO水が、0.1MPa~0.3MPa程度の加圧状態になるので、円筒伸縮材13が膨張し、最大状態では、円筒伸縮材13の内径が2倍程度となる。そのため、円筒伸縮材13には、最大80cc(=26.5×3)程度のRO水を、余分に、蓄水できることになる。そのため、平均的には500cc/minのRO水が必要となる個人用透析装置DILにおいて、仮に、+900cc/min(=15cc/秒)程度の流量が、追加的に要求されても、膨張状態の円筒伸縮材13の蓄水によって、ピーク流量(15cc/秒)を、5秒以上、安定して供給できることになる。
【0048】
なお、円筒伸縮材13の内径は、不図示の通水チューブの内径よりやや大径であるので、円筒伸縮材13内部の水圧は、通水チューブの水圧を常に超える。したがって、水圧0.1MPa~0.3MPaに管理される定常的な通水状態において、円筒伸縮材13内部の水圧は、大気圧(0.1MPa)を常に超えている。
【0049】
次に、図3は、コントローラPLCの表示装置DISPを図示している。本実施例の場合、水処理装置WATの動作条件(つまり、コントローラPLCの制御動作)は、係員によって適宜に設定可能であるが、その設定値は、図3(a)や図3(b)の態様で、表示装置DISPに表示される。なお、設定処理は、タッチパネル式の表示装置DISPへのタッチ操作や、テンキーのボタン操作などによって実行される。
【0050】
先ず、図3(a)は、加圧ポンプPUの動作を、運転圧力センサS1と、送水圧力センサS2のセンサ出力に基づいて制御し、開閉調整弁V1の開閉を、圧力スイッチSWのスイッチ出力に基づいて制御する制御態様を示している。図3(a)の左側は、運転圧力の設定例を示しており、図示例では、運転圧力センサS1の検出値が、0.10MPaを下回る状態が30秒継続すると、所定の警報動作が実行される設定になっている。
【0051】
また、図3(a)の右側は、加圧ポンプPUの運転についての設定例を示しており、センサS1とセンサS2の検出値の差(S1-S2)が、0.10MPa以下となる状態が10秒継続すると、加圧ポンプPUの動作を中断させる設定になっている(図示上段と右側の数値を参照)。そして、運転再開条件としては、送水圧力センサS2の出力値が、中断開始タイミングのレベルからの降下量が、0.03MPaを超えれば、加圧ポンプPUの動作が再開される設定となっている(図示中段の数値0.03を参照)。
【0052】
また、図示の最下段の数値0.00は、圧力スイッチSWの検出値に関する設定であり、0.00MPa以下となれば、開閉調整弁V1を閉鎖させるべきことを設定している。
【0053】
次に、図3(b)は、加圧ポンプPUの動作を、運転圧力センサS1と、送水圧力センサS2のセンサ出力に基づいて制御する別の実施態様を示している。図3(b)の左側は、図3(a)の左側と同じであり、運転圧力センサS1の検出値が、0.10MPaを下回る状態が、30秒継続すると、所定の警報動作が実行される設定になっている。
【0054】
一方、図3(b)の右側は、加圧ポンプPUの運転についての設定例を示しており、送水圧力センサS2の検出値が、0.25MPa以上となる状態が10秒継続すると、加圧ポンプPUの動作を中断させる設定になっている。そして、運転再開条件としては、送水圧力センサS2の検出値が0.05MPa以下になると、加圧ポンプPUの動作が再開される設定となっている。
【0055】
これらの設定値は、タッチパネルやテンキーの操作によって適宜に設定されるが、別の実施形態では、インターネット回線を介して、適宜な数値が設定可能に構成されている。この場合には、コントローラPLCには、WiFiルータと、監視データや設定データの送受信部とが追加的に設けられている。そして、上記のような設定操作が遠隔的に実行可能であること加えて、機器の動作内容を遠隔監視することもできるよう構成されている。
【0056】
ところで、上記の実施例では、加圧ポンプPUの動作をON/OFF制御する構成を説明したが、インバータ制御によって、モータ回転数を可変制御して、水圧を所定レベルに維持するのも好適である。なお、インバータ制御を採用する場合には、圧力調整弁V2を設けた第1流路が不要となる。
【0057】
何れにしても、本実施例では、運転圧力センサS1や送水圧力センサS2のセンサ値に基づいて、加圧ポンプPUを適切に動作させるので、RO排水の無駄や電気代の無駄がない。例えば、特許文献2の水処理装置WATでは、個人用透析装置DILの運転に対応して、RO水の供給が強制的に開始又は停止されるので、不必要なタイミングでもRO水が生成されることになり、RO排水の無駄が生じる。
【0058】
この点は、水処理装置WATの運転を、タイマ制御した場合も同様であり、RO排水の無駄や電力消費の無駄は解消できない。因みに、加圧ポンプをON/OFF制御しない旧来装置と比較して、水道料金が約1/2、電気料金が約1/30に削減されたという本実施例の実績もある。なお、本実施例の水処理装置WATの構成において、タイマ制制御による運転時間制御や、透析装置DILとの連動運転制御が、特に禁止される訳ではないことは勿論である。
【0059】
以上、本実施例について具体的に説明したが、具体的な記載内容は、何ら本発明を限定せず、種々の変更が可能である。例えば、上記の実施例では、個人用透析装置DILを例示したが、特許文献1に記載のセントラル透析液供給装置と、実施例に記載の水処理装置WATを組み合せても本発明を構成することができる。
【0060】
この場合には、通水量(例えば5000cc/min)の増加に対応して、貯水ユニットBUFの貯水量を増加させる必要があるが、むやみに、貯水ユニットBUFを大型化するのではなく、複数の貯水ユニットBUFを並列接続するのが好適である。
【0061】
また、セントラル透析液供給装置の上側又は下流側に、注気モジュールMOを配置して、RO水又は透析液に水素ガスを溶解させるのも好適である。図4は、水処理装置WATとセントラル透析液供給装置との間に、水素ガスの注気モジュールMOを配置した実施例を示している。なお、透析液やRO水に水素ガスを溶解させる実施例は、個人用透析装置DILと水処理装置WATとを含んだ、図1(b)に示す精製水供給システムにも適用可能である。
【0062】
先ず、図5(a)は、水素ガスの注気モジュールMOの概略構成を示す正面図であり、図5(c)は最小構成の注気モジュールMOを示す右側面図である。図5(c)に示す最小構成の注気モジュールMOは、一の基本ユニットUNITと、一の前処理フィルタPFiと、レギュレータ、逆止弁、及び電磁弁を経由して基本ユニットUNITに水素ガスを注入するH2ボンベと、原水の水圧を計測する圧力計P4と、水素ガスのガス圧を計測する圧力計P5と、処理水の水圧を計測する圧力計P6と、を有して構成されている。なお、前記の圧力計P4~P6に代え、或いは、前記の圧力計P4~P6に加えて、前処理フィルタPFiの出力部に、別の圧力計を配置しても良い。
【0063】
何れにしても、図示の実施例は、前処理フィルタPFi及び基本ユニットUNITを、上下方向に必要な個数だけ増設できるよう構成されている。この増設構成に対応して、図5(a)は、最小構成の注気モジュールMOに、前処理フィルタPFi_2と、基本ユニットUNIT_2及び基本ユニットUNIT_3を縦方向に増設した構成を示している。
【0064】
特に限定されないが、各基本ユニットUNITは、直径0.5~1.0mm程度の多数の中空糸膜を内蔵した中空糸膜モジュールを、各二個直列に接続して構成されており、各中空糸膜モジュールの外側空間には、加圧状態の水素ガスが供給されている。また、各基本ユニットUNIT_1~UNIT_3は、並列接続され、各々の内部空間には、前処理フィルタPFi_1~PFi_2を通過した濾過水が並列的に導入されるよう構成されている。
【0065】
図示の注気モジュールMOは、最少構成か否かを問わず、何れの構成も、壁掛けタイプであって、全ての部材PFi,UNITを背面板BDに固定した状態で、背面板BDを壁面に取り付けることで、注気モジュールMOの取付作業が完了する。
【0066】
図5(c)は、図5(a)に示す注気モジュールMOについて、原水と水素ガスの流路を図示したものである。先ず、前処理フィルタPFi_1及びPFi_2の外周部に原水が注入され、前処理フィルタPFi_1,PFi_2の内部に至った濾過水が、前処理フィルタPFi_1の上方から導出される。
【0067】
その後、濾過水は、基本ユニットUNIT_1~UNIT_3の中空糸膜の内部空間に流入される。このとき、各中空糸膜の外部空間には、加圧状態の水素ガスが供給されており、各中空糸膜を通して、濾過水には、水素ガスを任意に溶解させることができる。なお、中空糸膜に限らず、平膜などを含んだ各種のガス分離膜を、ガス注気膜として活用することができる。
【0068】
従来技術としては、固体高分子膜を使用した水の電気分解法により、陽極側に、分子状酸素を含んだ水を生成し、陰極側に、分子状水素を含んだ水を生成する構成が知られている(https://www.nihon-trim.co.jp/product/ew/ew_hd/)。しかし、電気分解法で作成した水素イオンを含む水を、その後、逆浸透膜に供給すると、溶存水素は、RO膜(逆浸透膜)により95%以上除去されることになり、その大半は排水されてしまう。
【0069】
また、RO水タンク内で加温されて、循環されるため、溶存水素は、更に希薄になる。そして、RO水に僅かに残った水素も、その後、透析供給装置内で脱気される為、更に希薄になり、殆ど残らないと思われる。これに対して、図4に示す実施例では、電気分解法を使用しないので、イオンが含まれていないRO水に、水素ガスを高濃度で溶解させることができ、人体への優れた効果が期待できる。
【0070】
なお、図2に示す貯水ユニットBUFは、RO水を一時貯水する用途で使用したが、RO水に限らず、他の流体(液体及び気体)の貯留にも使用できる。すなわち、必要とされる液量が、突発的に変動する流体(液体及び気体)の貯留にも好適に使用できる。
【符号の説明】
【0071】
WAT 水処理装置
BUF 貯水ユニット
10 保持体
11 導入口
12 導出口
13 伸縮材
S1 運転圧力センサ
S2 送水圧力センサ
18 逆止弁
【要約】      (修正有)
【課題】精製水を安定的に供給することができる精製水供給システムを提供する。
【解決手段】逆浸透膜を使用して原水を処理する水処理装置が精製するRO水を受けて一時的に貯留可能な貯水ユニットを設ける。貯水ユニットは、筒状に形成された保持体10と、RO水の導入口11と、RO水の導出口12と、導入口11から導出口12までRO水を流通させる防水性の伸縮材13と、を有して構成され、伸縮材13と保持体10の間には、所定量の気体を加圧状態で封止可能な密閉空間が設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5