(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置およびその操作方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20240712BHJP
A24F 40/50 20200101ALI20240712BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/50
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023069058
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2021532850の分割
【原出願日】2019-12-11
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nicoventures Trading Limited
【住所又は居所原語表記】Globe House, 1 Water Street,WC2R 3LA London,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ジュリアン ダリン
(72)【発明者】
【氏名】ホロッド、マーティン ダニエル
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-511175(JP,A)
【文献】特表2018-515114(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146071(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/192701(US,A1)
【文献】特開2014-232614(JP,A)
【文献】特開2009-289458(JP,A)
【文献】特開2017-094127(JP,A)
【文献】国際公開第2018/178113(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置であって、当該装置は、
使用時にエアロゾル発生材を加熱し、それにより使用時にエアロゾルを発生させるための
複合サセプタであって、当該複合サセプタは、支持部分と、
当該支持部分によって支持されたサセプタ部分とを
含み、及び前記複合サセプタは耐熱性保護部分をさらに含み、前記サセプタ部分は支持部分と耐熱性保護部分との間に位置する複合サセプタと、
使用中のサセプタ部分への誘導エネルギー伝達のために配置された誘導要素と、
使用時に誘導要素を交流で駆動するように配置され、それによって使用時にサセプタ部分への誘導エネルギー伝達を引き起こし、これにより、使用中の複合サセプタがエアロゾル発生材を加熱し、使用中にエアロゾルを発生させるようにする駆動装置と
、
を含み、
前記交流は、第1の周波数を有する基本周波数成分と、第1の周波数より高い周波数をそれぞれ有する1つ以上の高次の周波数成分とを含む波形を有するエアロゾル発生装置。
【請求項2】
サセプタ部分は支持部のコーティングとして形成されていることを特徴とする請求項1記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
サセプタ部分は第1のシート材料を含み、支持部分はサセプタ部分を支持するためにサセプタ部分と当接するよう構成された第2のシート材料を含むことを特徴とする請求項1記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
支持部分はサセプタ部分を囲むように構成されていることを特徴とする請求項3記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
サセプタ部分はほぼ50ミクロン未満の厚さを有することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
サセプタ
部分はほぼ20ミクロン未満の厚さを有することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
サセプタ部分は強磁性材を含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
サセプタ部分はニッケルとコバルトの内の1つ以上を含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
サセプタ部分はアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記1つ以上の高次の周波数成分は基本成分の高調波であることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
第1の周波数は0.5MHz~2.5MHzの範囲の周波数Fであり、1つ以上の高次の周波数成分の各々の周波数はnFであり、nは1より大きい正の整数であることを特徴とする請求項1乃至10いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項12】
波形は、ほぼ三角波形、ほぼのこぎり波、およびほぼ矩形波の内の1つであることを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項13】
波形は双極矩形波形であることを特徴とする請求項1乃至12いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項14】
駆動装置はHブリッジ構成で配置され、双極矩形波形を供するよう制御可能なトランジスタを含むことを特徴とする請求項13記載のエアロゾル発生装置。
【請求項15】
支持部分は金属、金属合金、セラミック材、プラスチック材および紙の内の1つ以上含むことを特徴とする請求項1乃至14いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項16】
耐熱性保護部分はサセプタ部分のコーティングであることを特徴とする請求項
1乃至15いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項17】
耐熱性保護部分はセラミック材、金属窒化物、窒化チタンおよびダイヤモンドの内の1つ以上を含むことを特徴とする請求項
1乃至16いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項18】
複合サセプタは実質的に平面であることを特徴とする請求項1乃至
17いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項19】
複合サセプタは実質的に管状であることを特徴とする請求項1乃至
17いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項20】
エアロゾル発生材を含み、エアロゾル発生材は複合サセプタと熱接触していることを特徴とする請求項1乃至
19いずれか1項記載のエアロゾル発生装置。
【請求項21】
エアロゾル発生材はタバコおよび/または1種以上の湿潤剤を含むことを特徴とする請求項
20記載のエアロゾル発生装置。
【請求項22】
エアロゾル発生装置の操作方法であって、前記装置は、
エアロゾル発生材を加熱し、それによりエアロゾルを発生させるための
複合サセプタであって、当該複合サセプタは支持部分と
当該支持部分によって支持されたサセプタ部分とを含
み、及び前記複合サセプタは耐熱性保護部分をさらに含み、前記サセプタ部分は支持部分と耐熱性保護部分との間に位置する複合サセプタと、
前記サセプタ部分への誘導エネルギー伝達のために配置された誘導要素と
、を含
み、前記方法は、
交流で誘導要素を駆動し、それによって、サセプタ部分への誘導エネルギー伝達を引き起こし、それにより、複合サセプタによるエアロゾル発生材の加熱を引き起こし、それによってエアロゾルを発生させることを含み、
前記交流は、第1の周波数を有する基本周波数成分と、第1の周波数より高い周波数をそれぞれ有する1つ以上の高次の周波数成分とを含む波形を有する方法。
【請求項23】
前記1つ以上の高次の周波数成分は基本成分の高調波であることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
第1の周波数は0.5MHzから2.5MHzの範囲の周波数Fであり、1つ以上の高次の周波数成分の各々の周波数はnFであり、nは1より大きい正の整数であることを特徴とする請求項
22または
23記載の方法。
【請求項25】
波形は、ほぼ三角波形、ほぼのこぎり波、およびほぼ矩形波の内の1つであることを特徴とする請求項
22乃至
24いずれか1項記載の方法。
【請求項26】
波形は双極矩形波形であることを特徴とする請求項
22乃至
25いずれか1項記載の方法。
【請求項27】
エアロゾル発生装置は請求項1乃至
21いずれか1項記載のエアロゾル発生装置であることを特徴とする請求項
22乃至
26いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル発生装置およびその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ、シガーなどの喫煙品は使用時にタバコを燃やし、煙を発生させる。これらの物品に代わるものとして燃焼させずに化合物を放出する製品を作成する試みがなされている。そのような製品の例としては、所謂「非燃焼加熱」製品またはタバコ加熱装置または製品が挙げられ、これらは材料を燃焼させずに加熱することによって化合物を放出する。材料は、例えばタバコまたは他のタバコ製品であってもよく、これはニコチンを含んでも含まなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様では使用時にエアロゾル発生材を加熱し、それにより使用時にエアロゾルを発生させるためのものであり、支持部分と、支持部分によって支持されたサセプタ部分とを含む複合サセプタと、使用中のサセプタ部分への誘導エネルギー伝達のために配置された誘導要素と、使用時に誘導要素を交流で駆動するように配置され、それによって使用時にサセプタ部分への誘導エネルギー伝達を引き起こし、これにより、使用中の複合サセプタがエアロゾル発生材を加熱し、使用中にエアロゾルを発生させるようにする駆動装置とを含むエアロゾル発生装置が提供され、交流は、第1の周波数を有する基本周波数成分と、第1の周波数より高い周波数をそれぞれ有する1つ以上の高次の周波数成分とを含む波形を有する。
【0004】
任意にサセプタ部分は支持部のコーティングとして形成されている。
【0005】
任意にサセプタ部分は第1のシート材料を含み、支持部分はサセプタ部分を支持するためにサセプタ部分と当接するよう構成された第2のシート材料を含む
【0006】
任意に支持部分はサセプタ部分を囲むように構成されている。
【0007】
任意にサセプタ部分はほぼ50ミクロン未満の厚さを有する。
【0008】
任意にサセプタはほぼ20ミクロン未満の厚さを有する。
【0009】
任意にサセプタ部分は強磁性材を含む。
【0010】
任意にサセプタ部分はニッケルとコバルトの内の1つ以上を含む。
【0011】
任意に1つ以上の高次の周波数成分は基本成分の高調波である。
【0012】
任意に第1の周波数は0.5MHz~2.5MHzの範囲の周波数Fであり、1つ以上の高次の周波数成分の各々の周波数はnFであり、nは1より大きい正の整数である。
【0013】
任意に波形は、ほぼ三角波形、ほぼのこぎり波、およびほぼ矩形波の内の1つである。
【0014】
任意に波形は双極矩形波形である。
【0015】
任意に駆動装置はHブリッジ構成で配置され、双極矩形波形を供するよう制御可能なトランジスタを含む。
【0016】
任意に支持部分は金属、金属合金、セラミック材、プラスチック材および紙の内の1つ以上含む。
【0017】
任意に複合サセプタは耐熱性保護部分を含み、サセプタ部分は支持部分と保護部分の間に位置する。
【0018】
任意に耐熱性保護部分はサセプタ部分のコーティングである。
【0019】
任意に耐熱性保護部分はセラミック材、金属窒化物、窒化チタンおよびダイヤモンドの内の1つ以上を含む。
【0020】
任意に複合サセプタは実質的に平面である。
【0021】
任意に複合サセプタは実質的に管状である。
【0022】
任意に装置はエアロゾル発生材を含み、エアロゾル発生材は複合サセプタと熱接触している。
【0023】
任意にエアロゾル発生材はタバコおよび/または1種以上の湿潤剤を含む。
【0024】
本発明の第2の態様ではエアロゾル発生材を加熱し、それによりエアロゾルを発生させるためのものであり、支持部分と、支持部分によって支持されたサセプタ部分とを含む複合サセプタと、さらにサセプタ部分への誘導エネルギー伝達のために配置された誘導要素とを含むエアロゾル発生装置の操作方法が提供され、この方法は、交流で誘導要素を駆動し、それによって、サセプタ部分への誘導エネルギー伝達を引き起こし、それにより、複合サセプタによるエアロゾル発生材の加熱を引き起こし、それによってエアロゾルを発生させることを含み、交流は、第1の周波数を有する基本周波数成分と、第1の周波数より高い周波数をそれぞれ有する1つ以上の高次の周波数成分とを含む波形を有する。
【0025】
任意に1つ以上の高次の周波数成分は基本成分の高調波である。
【0026】
任意に第1の周波数は0.5MHz~2.5MHzの範囲の周波数Fであり、1つ以上の高次の周波数成分の各々の周波数はnFであり、nは1より大きい正の整数である。
【0027】
任意に波形は、ほぼ三角波形、ほぼのこぎり波、およびほぼ矩形波の内の1つ以上である。
【0028】
任意に波形は双極矩形波形である。
【0029】
任意にエアロゾル発生装置は第1の態様によるエアロゾル発生装置である。
【0030】
さらなる特徴および利点を添付図面を参照して単に一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】一例によるエアロゾル発生装置の模式図である。
【
図2】第1の例による複合サセプタの模式図である。
【
図3】第2の例による複合サセプタの模式図である。
【
図4】
図1のエアロゾル発生装置の一部の模式図である。
【
図6a】異なる交流波形の時間に対する電流のプロットをプロットを模式的に示している。
【
図6b】
図6aの交流電流波形の周波数成分の周波数空間でのプロットを模式的に示している。
【
図6c】異なる交流波形の時間に対する電流のプロットをプロットを模式的に示している。
【
図6d】
図6cの交流電流波形の周波数成分の周波数空間でのプロットを模式的に示している。
【
図6e】異なる交流波形の時間に対する電流のプロットをプロットを模式的に示している。
【
図6f】
図6eの交流電流波形の周波数成分の周波数空間でのプロットを模式的に示している。
【
図6g】異なる交流波形の時間に対する電流のプロットをプロットを模式的に示している。
【
図6h】
図6gの交流電流波形の周波数成分の周波数空間でのプロットを模式的に示している。
【
図6i】異なる交流波形の時間に対する電流のプロットをプロットを模式的に示している。
【
図6j】
図6iの交流電流波形の周波数成分の周波数空間でのプロットを模式的に示している。
【
図7】一例によるエアロゾル発生装置の操作方法を略式に示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
誘導加熱は、電磁誘導によって導電性物体(またはサセプタ)を加熱するプロセスである。誘導加熱器は、電磁石などの誘導要素と交流などの可変電流を電磁石に流す回路を含んでもよい。電磁石の電流が変化すると、磁場が変化する。変動磁場は、電磁石に対して適切に配置されたサセプタを貫通し、サセプタ内に渦電流を発生させる。サセプタは渦電流に対する電気抵抗を持ち、この抵抗に抗して渦電流が流れるとジュール熱によりサセプタが加熱される。サセプタが鉄、ニッケルまたはコバルトなどの強磁性材料を含む場合、サセプタ内の磁気ヒステリシス損失により、即ち、可変磁場との整列の結果として磁性材料内の磁気双極子の配向の変化により、熱が発生する可能性がある。誘導加熱は導電性の物(またはサセプタ)を電磁誘導によって加熱する方法である。
【0033】
誘導加熱では、サセプタ内部で熱が発生するため、例えば伝導による加熱に比べ、急速に加熱することができる。さらに、誘導加熱器とサセプタとの間に物理的な接触を設ける必要がないため、構造と応用の自由度が高まる。
【0034】
誘導加熱器は、抵抗器によって提供される抵抗(R)、誘導要素、例えばサセプタを誘導加熱するように配置される電磁石によって提供されるインダクタンス(L)、および、例えば直列または並列に接続されたキャパシタによって提供されるキャパシタンス(C)を含むRLC回路を含む。場合によっては、インダクタとコンデンサを接続する回路の一部のオーム抵抗により抵抗が提供されるため、RLC回路は必ずしもそのような抵抗を含む必要はない。このような回路は、例えばLC回路と呼ばれる場合がある。このような回路は、電気的共振を示すことがある。これは、2つの回路要素のインピーダンスまたはアドミタンスの虚数部分が互いに打ち消し合うときに、特定の共振周波数で発生する。RLCまたはLC回路で共振が発生するのは、インダクタの崩壊する磁場がその巻線に電流を生成してコンデンサを充電し、放電コンデンサが電流を供給してインダクタに磁場を構築するためである。回路が共振周波数で駆動されると、インダクタとコンデンサの直列インピーダンスが最小になり、回路電流が最大になる。従って、RLCまたはLC回路を共振周波数またはその近くで駆動すると、効果的かつ効率的な誘導加熱を提供することができる。
【0035】
図1は、一例によるエアロゾル発生装置100を模式的に示す。本装置100は、エアロゾル発生デバイス100である。このエアロゾル発生デバイス100は手持ち型である。このエアロゾル発生デバイス100は、DC電源104、この例ではバッテリー104、駆動装置106、誘導要素108、複合サセプタ110、およびエアロゾル発生材116を含む。
【0036】
大まかに言えば、複合サセプタ110(支持部分と、支持部分によって支持されたサセプタ部分を含み、以下により詳細に説明する)は、使用中にエアロゾル発生材を加熱して、使用中にエアロゾルを発生させるもので、誘導要素108は使用中の複合サセプタ110の少なくともサセプタ部分への誘導エネルギー伝達のために配置され、駆動装置106は、使用時に誘導要素108を交流で駆動するように配置され、それによってサセプタ部分への誘導エネルギー伝達を引き起こす。これにより、使用中の複合サセプタ110がエアロゾル発生材116を加熱し、使用中にエアロゾルを発生させる。交流は、第1の周波数を有する基本周波数成分と、第1の周波数より高い周波数をそれぞれ有する1つ以上の高次の周波数成分とを含む波形を有する。例えば、波形は実質的に矩形波であってもよい。
【0037】
大まかに言えば、基本周波数成分と、1つ以上のより高い周波数の高次の周波数成分を含む波形を有する電流で誘導要素を駆動すると、誘導要素によって生成される交流磁場は基本周波数成分と1つ以上のより高周波数の高次の周波数成分を含む。表皮深さ(即ち、誘導要素108によって生成される交流磁場がサセプタ部分に浸透して誘導加熱を引き起こす特徴的な深さ)は、交流磁場の周波数の増加とともに減少する。従って、高周波成分の表皮深さは、基本周波数成分の表皮深さよりも小さい。従って、基本周波数成分と1つ以上のより高周波数成分を含む波形を使用すると、例えば基本周波数のみを使用する場合と比べて、誘導要素からサセプタへのより大きな割合の誘導エネルギーの伝達が、サセプタの表面から比較的浅いところで起こる。これにより、所定のエネルギー伝達効率を実質的に維持しながら、サセプタ部分の厚さを減らすことができ、サセプタ部分のコストを削減することができる(および/またはサセプタ部分の製造効率を高めることができる)。その代わりあるいはそれに加えて、これにより、所定のサセプタ部分の厚さ(例えば、表皮の深さがサセプタ部分の厚さよりも大きくなる可能性があるもの)に対してエネルギー伝達効率を高めることができ、これにより加熱効率が改善される。従って、エアロゾルを発生させるための改良されたエアロゾル発生デバイスと方法を提供することができる。
【0038】
図1に示すように、DC電源104は、駆動装置106に電気的に接続されている。DC電源104は、駆動装置106にDC電力を供給するように配置されている。駆動装置106は、誘導要素108に電気的に接続されている。駆動装置106は、DC電源104からの入力DC電流を交流に変換するように配置されている。駆動装置106は、誘導要素108を交流で駆動するように配置されている。つまり、駆動装置106は、誘導要素108を通して交流を駆動する、即ち、誘導要素108を通して交流を流すように配置されている。
【0039】
誘導要素108は、電磁石、例えばコイルまたはソレノイドであってもよく、例えば平面状であってもよく、例えば銅で形成されてもよい。誘導要素108は、使用中の複合サセプタ110(即ち、以下でより詳細に説明する複合サセプタ110の少なくともサセプタ部分)に誘導エネルギーを伝達するために配置される。同様に、複合サセプタ110は、誘導要素108から複合サセプタ110に誘導エネルギーを伝達するために、誘導要素108に対して配置される。
【0040】
交流を通している誘導要素108は、上述のように、ジュール加熱および/または磁気ヒステリシス加熱によって複合サセプタ110を加熱する。例えば、複合サセプタ110は、エアロゾル発生材116と熱接触している(即ち、伝導、対流、および/または輻射加熱などによってエアロゾル発生材116を加熱して、使用中にエアロゾルを発生させるように配置される)。いくつかの例では、複合サセプタ110およびエアロゾル発生材116は一体型ユニットを形成しており、エアロゾル発生デバイス100に挿入および/またはデバイス100から取り外すことができ、かつ使い捨てることができる。いくつかの例では、誘導要素108は、例えば交換のためにデバイス100から取り外すことができる。エアロゾル発生デバイス100は、エアロゾル発生材116を加熱して、ユーザーによる吸入のためにエアロゾルを発生させるように構成されてもよい。
【0041】
注目すべきことは本明細書中では「エアロゾル発生材」なる用語は通常は蒸気またはエアロゾルの形体の、加熱すると揮発成分を供する材料を含む。エアロゾル発生材は非タバコ含有材またはタバコ含有材であってもよい。例えば、エアロゾル発生材はタバコであってもよく、またはタバコを含んでもよい。エアロゾル発生材は、例えばタバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコまたはタバコ代替え品の内の1つ以上を含んでもよい。エアロゾル発生材は、粉タバコ、刻みくずタバコ、押し出しされたタバコ、再生タバコ、再生材料、液体、ゲル、ゲル化シート、粉または凝集物などの形体であってもよい。エアロゾル発生材は製品によってニコチンを含むまたは含まない他の非タバコ製品を含んでもよい。エアロゾル発生材はグリセリンおよび/またはプロピレングリコールなどの1種以上の湿潤剤を含んでもよい。
【0042】
図1に示すように、エアロゾル発生デバイス100は、バッテリー104、駆動装置106、誘導要素108、複合サセプタ110、およびエアロゾル発生材116を収容する外側本体112を含む。外側本体112は、使用中に発生したエアロゾルがデバイス100から出るのを可能にするマウスピース114を含む。ただし、実施例によっては、エアロゾル発生材116とマウスピース114は、デバイス100に挿入される結合構造で提供されてもよい(例えば、一端にフィルタ材料を含む紙巻きタバコまたはタバコを含む材料)。
【0043】
使用時、ユーザーは、例えば、それ自体が既知のボタン(図示せず)またはパフ検出器(図示せず)を介して回路106を作動させて、誘導要素108で交流を駆動し、それにより複合サセプタ116を誘導加熱し、次にエアロゾル発生材116を加熱してエアロゾルを発生させる。エアロゾルは、吸気口(図示せず)からデバイス100に引き込まれた空気中に発生し、それによりマウスピース114に運ばれ、エアロゾルはデバイス100から排出される。
【0044】
駆動装置106、誘導要素108、複合サセプタ110および/またはデバイス100は全体として、エアロゾル発生材116を燃焼せずにエアロゾル発生材の少なくとも1つの成分を揮発させる温度範囲に加熱するように配置される。例えば、温度範囲は、約50℃~約350℃、例えば、約100℃~約250℃、約150℃~約230℃である。いくつかの例では、温度範囲は約170℃と約220℃の間である。いくつかの例では、温度範囲はこの範囲外でもよく、温度範囲の上限は300℃より高くてもよい。
【0045】
図2には、複合サセプタ210の例が示されている。この複合サセプタ210は、
図1を参照して示されたエアロゾル発生デバイス100の複合サセプタ110として使用することができる。複合サセプタ210は、実質的に平面である(
図2に示すように)。他の例では、複合サセプタ210は実質的に管状である。例えば、複合サセプタ210は、エアロゾル発生材を取り囲んでもよい(
図2には示されていないが)。言い換えれば、エアロゾル発生材は、管状の複合サセプタ210の内部に配置されてもよい。別の例として、エアロゾル発生材は、管状の複合サセプタ210が、管状の複合サセプタ210を取り囲むように配置されてもよい。管状の複合サセプタ210は、エアロゾル発生材の加熱効率を改善するのに役立つ。
【0046】
複合サセプタ210は、支持部分222とサセプタ部分224とを含む。サセプタ部分224は、支持部分222によって支持される(言い換えれば、支持部分222はサセプタ部分224を支持する)。サセプタ部分224は、誘導要素(例えば、
図1の106)との誘導エネルギー伝達が可能で、誘導要素によって生成される交番磁場が、サセプタ部分224を、例えばジュール加熱および/または上述の磁気ヒステリシス加熱で誘導加熱する(即ち、サセプタ部分224は、使用時にサセプタとして機能する)。サセプタ部分224は、金属および/または導電性ポリマーなどの導電性材料を含むことができる。サセプタ部分は、強磁性材料、例えばニッケルおよびコバルトの一方または両方を含むことができる。いくつかの例では、支持部分222は、実質的にサセプタとして機能することもできる。他の例では、支持部分222は、実質的に誘導加熱が可能でなくてもよい。支持部分222は、金属、金属合金、セラミック材料、プラスチック材料、および紙の内の1つ以上を含むことができる。例えば、支持部分222は、ステンレス鋼、アルミニウム、鋼、銅、および/または高温(即ち、耐熱性)ポリマー、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および/またはカプトンおよび/またはZytel(登録商標)HTNなどのポリアミド樹脂であるか、またはそれらを含むことができる。
【0047】
サセプタ部分224は、支持部分222のコーティングとして形成することができる。例えば、サセプタ部分224は、強磁性材料、例えば、ニッケルおよび/またはコバルトでコーティングすることができる。例えば、コーティングは、化学メッキ、例えば電気化学メッキ、および/または支持部分222へのサセプタ部分224の材料の真空蒸着によって形成することができる。いくつかの例では、サセプタ部分204の厚さは、実質的に50ミクロン以下、例えば20ミクロン以下、例えば約10~20ミクロン、例えば約15ミクロン、又は例えば数ミクロンである。
【0048】
ニッケルまたはコバルトなどの強磁性材料のサセプタ部分204(例えば、誘導要素108に面する複合サセプタ110の側)を含む複合サセプタ110は、例えば、より厚い軟鋼板と同様の誘導エネルギー吸収効果をもち、かつサセプタ部分204を比較的薄くすることができる。コバルトは透磁率が高く、誘導エネルギーの吸収を改善できるため好ましい。さらに、コバルトはニッケルよりも高いキュリー点温度を持っている(コバルトは約1,120~1,127℃、ニッケルは353~354℃)。キュリー点温度またはそれに近い温度で、サセプタ材料の透磁が低下または停止し、可変磁場による浸透で加熱される材料の能力も低下または停止する。コバルトのキュリー点温度は、エアロゾル発生デバイス100の誘導加熱の通常の動作温度より高い可能性があり、従って、コバルトを使用する場合、ニッケルを使用した場合と比べて通常の動作中に透磁率の低下の影響が目立たない(または識別できない)場合がある。上述のように、複合サセプタ210の支持部分222は、エアロゾル発生材116を加熱するための熱を発生させるために、印加された変動磁場と相互作用する必要はなく、サセプタ部分222を支持するだけでよい。従って、支持体は、任意の適切な耐熱性材料から作ることができる。材料の例としては、アルミニウム、鋼、銅、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カプトンなどの耐熱ポリマー、紙が挙げられる。
【0049】
比較的薄いサセプタ材料、例えばニッケルやコバルトなどの強磁性材料を使用すると、サセプタ材料の使用量が比較的少なくなり、より効率的で低コストのサセプタを製造することができる。比較的薄いサセプタ材料のみを使用すると、例えば数十ミクロンの範囲の厚さのそのような材料は脆く、損傷しやすいサセプタが生成される可能性がある。しかしながら、サセプタ部分224を支持する、例えばコーティングとして形成する、または包み込むことにより、支持部分222は、低コストのサセプタの製造を可能にし、比較的損傷に強い。上述のように、支持部分222は、誘導加熱の影響を受けやすい機能を必ずしも提供する必要はないので、支持部分222は、金属、金属合金、セラミック材料、そして比較的低コストのプラスチック材料など、より多様な耐熱性材料から作られてもよい。従って、複合サセプタ210は、比較的低コストで製造することができる。
【0050】
図3に示すように、例示的な複合サセプタ310が模式的に示されている。例示的な複合サセプタ210は、
図1に示すエアロゾル発生デバイス100における複合サセプタ110として使用される。
図3に示す複合サセプタ310は
図2を参考に示された例示的なサセプタ210と同じであるが、この複合サセプタ310は耐熱性保護部分326を含む点で異なる。複合サセプタ310は、支持部分322(
図2の複合サセプタ210の支持部分222と同一または類似である)と、サセプタ部分324(
図2の複合サセプタ210のサセプタ部分224と同じ又は類似である)を含む。この例では、サセプタ部分324は、支持部分322と保護部分326との間に配置されている。
【0051】
耐熱保護部分326は、サセプタ部分324のコーティングであってもよい。耐熱保護部分326は、セラミック材料、金属窒化物、窒化チタン、およびダイヤモンド状炭素のうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、窒化チタンおよび/またはダイヤモンド状炭素は、物理気相成長法を用いるコーティングとして利用される。保護部分326は、例えば複合サセプタの誘導加熱の結果として発生する傾向がある表面酸化などの化学的腐食からサセプタ部分324を保護することができる。そうしないと、複合サセプタ310の寿命が短くなる可能性がある。保護部分326は、代替的または追加的にサセプタ部分324を機械的摩耗から保護することができる。そうしないと、複合サセプタの寿命を短くする可能性がある。保護部分326は、サセプタ部分324からの熱損失を代替的または追加的に低減することができる。そうしないと環境に失われる可能性があり、これにより保護部分326は、複合サセプタ310の加熱効率を改善することができる。
【0052】
例えば、サセプタ部分324がコバルトまたはニッケルなどの強磁性材料である場合、サセプタ部分324は、温度が上昇するにつれて酸化の影響を受けやすくなる。これは、非酸化金属表面に対する相対輻射率(εr)を増加させることにより、輻射による熱損失を増加させ、輻射によるエネルギー損失率を高める。輻射されたエネルギーが環境に失われることになる場合、そのような輻射はシステムのエネルギー効率を低下させる。酸化はまた、サセプタ部分324の化学的腐食に対する耐性を低下させる可能性があり、その結果、加熱要素の耐用年数が短くなる。耐熱保護部分326は、これらの影響を低減することができる。上で述べたように、いくつかの例では、保護部分326は、物理気相成長によって形成されてもよい。他の例では、保護部分326は、サセプタ部分324を化学的に処理して、サセプタ部分324に保護膜の成長を促進するか、または陽極酸化などのプロセスを用いて保護酸化物層を形成することによって提供されてもよい。いくつかの例では、サセプタ部分を密封することができ、例えば、耐熱保護部分326および支持部分322は一緒にサセプタ部分324を密封することができる。いくつかの例では、耐熱保護部分326は、サセプタ部分324および支持部分322を密封することができる。いくつかの例では、耐熱保護部分326は、電気伝導性が低いか、またはまったくなくてもよく、サセプタ部分324ではなく耐熱保護部分326での電流の誘導を防止することができる。
【0053】
図4は、一例によれば、
図1を参考に示された装置100の構成要素のいくつかをより詳細に模式的に示している。
図1を参考に示された同一または類似の構成要素には同じ参照番号が付されており、再度詳細に説明しない。
【0054】
図4に示すように、駆動装置106は、駆動部432および駆動部制御装置430を含む。駆動部432は、バッテリー104に電気的に接続されている。具体的には、駆動部432は、比較的高い電位+v434を提供するバッテリー104の正極、およびバッテリー104の負極またはアース電極に接続され、比較的低電位、ゼロ電位、または負電位GND436を提供する。従って、電圧は駆動部432の両端に確立される。
【0055】
駆動部432は、誘導要素108に電気的に接続されている。誘導要素は、インダクタンスLを持っていてもよい。駆動部432は、キャパシタンスCを有するコンデンサ(図示せず)および直列接続された誘導要素108を含む回路、即ち直列LC回路を介して誘導要素108に電気的に接続される。
【0056】
駆動部432は、バッテリー104からの入力直流から、使用中の誘導要素108に交流を供給するように配置される。駆動部432は、例えば論理回路を含む駆動部制御装置430に電気的に接続されている。駆動部制御装置430は、駆動部432またはその部品を制御して、入力直流から出力交流を供給するように配置される。一例では、以下でより詳細に説明するように、駆動部制御装置430は、駆動部432に交流を発生させるために、任意の時間に駆動部432のトランジスタへの切替電位の提供を制御するように配置されてもよい。駆動部制御装置430は、切替電位が導出されるバッテリー104に電気的に接続されてもよい。
【0057】
駆動部制御装置430は、誘導要素108を通じて駆動される交流の周波数を制御するように配置されてもよい。上述のように、LC回路は共振を示すことがある。駆動部制御装置208は、誘導要素108を含む直列LC回路を通じて駆動される交流の周波数を、LC回路の共振周波数またはそれに近い周波数に制御することができる。例えば、駆動周波数は、MHz(メガヘルツ)の範囲、例えば0.5~2.5MHzの範囲、例えば2MHzであってもよい。例えば、特定の回路(および/またはその部品)および/または使用されるサセプタ110に応じて、他の周波数が使用されてもよい。例えば、回路の共振周波数は、回路のインダクタンスLおよびキャパシタンスCに依存し、それにより、使用されるインダクタ108、コンデンサ(図示せず)およびサセプタ110に依存する。いくつかの例では、キャパシタンスがゼロまたはゼロに近い場合がある。このような例では、回路の共振動作は無視することができる。
【0058】
駆動装置106は、生成される交流の波形を制御するように配置することができる。一例では、以下でより詳細に説明するように、波形は矩形波形、例えば双極矩形波形である。他の例では、波形は三角波またはのこぎり波、または実際には第1の周波数を有する基本周波数成分を含む任意の波形および、それぞれが第1の周波数より高い周波数を有する1つ以上の高次の周波数成分である。この点で、波形の基本周波数はLC回路の駆動周波数である。
【0059】
使用時、例えばユーザーによって駆動部制御装置430が起動されると、駆動部制御装置430は、誘導要素108を介して交流を駆動するように駆動部432を制御することができる。それにより、サセプタ110を誘導加熱する(サセプタ110は、その後、エアロゾル発生材(
図4には示されていない)を加熱して、例えば、使用者による吸入のためのエアロゾルを発生させる)。
【0060】
図5に示すように、一例では、駆動部432がより詳細に模式的に示されている。
図5に示す駆動部432は、
図4を参照して示した駆動部432として使用することができ、および/または、
図1および/または
図4を参照して示した駆動装置106の一部として使用することができる。この例では、駆動部432はHブリッジ駆動部432である。駆動部432は、Hブリッジ構成で配置された複数のトランジスタ、この例では4個のトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4、を備えている(なお、Hブリッジ構成で配置または接続されたトランジスタは、Hブリッジと呼ばれることがある)。Hブリッジ構成は、高電位側対トランジスタQ1、Q2と低電位側対トランジスタQ3、Q4を含む。高電位側対の第1トランジスタQ1は、低電位側対の第3トランジスタQ3に電気的に隣接し、高電位側対の第2トランジスタQ2は、低電位側対の第4トランジスタに電気的に隣接している。高電位側対は、低電位側対が繋がっている第2電位GND436よりも高い第1電位+v434に接続している。この例では、駆動部432は、トランジスタQ1、Q2の高電位側対304の間の第1の点545と、トランジスタQ3、Q4の低電位側対306の間の第2の点546にまたがる、DC電源104(
図5には示されていない)の接続のために配置される。従って、使用時には、第1の点545と第2の点546との間に電位差が生じる。
【0061】
図5に示す例示的な駆動部432は、誘導要素108に電気的に接続され、それを駆動するように配置される。具体的には、誘導要素108は、高電位側対トランジスタの一方Q2と低電位側対トランジスタの一方Q4の間の第3の点548と、高電位側対トランジスタの他方Q1と低電位側対トランジスタの他方Q3の間の第4の点547をまたがって接続される。
【0062】
この例では、各トランジスタは、それぞれ制御線541、542、543、544を介して、使用時に電流が実質的に通過できるように駆動部制御装置(
図5には示されていない)が提供する切替電位によって制御可能な、電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4である。例えば、各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4は、切替電位が電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4に供給されると、電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4には実質的に電流が通過し、切替電位が電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4に供給されないと、電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4には電流が流れないように配置されている。
【0063】
この例では、駆動部制御装置(
図5には示されていないが、
図4の駆動部制御装置430を参照)は、供給ライン541、542、543、544を個々に介して、各電界効果トランジスタへの切替電位の供給を制御するように構成されている。それによって、各トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4が「オン」モード(即ち、電流が流れる低抵抗モード)または「オフ」モード(即ち、実質的に電流が流れない高抵抗モード)のいずれであるかに関わらず、個別に制御する。
【0064】
それぞれの電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4への切替電位の提供のタイミングを制御することで、駆動部制御装置430は、誘導要素108に交流を供給する。例えば、1回目に、駆動部制御装置430は、切替電位を第1および第4の電界効果トランジスタQ1、Q4に提供し、第2および第3の電界効果トランジスタQ2、Q3には提供しない第1の切替状態にあってもよい。このため、第1および第4の電界効果トランジスタQ1、Q4は低抵抗モードになり、第2および第3の電界効果トランジスタQ2、Q3は高抵抗モードになる。従って、この1回目の時点で、電流は、第1の電界効果トランジスタQ1を通り、誘導要素108を第1の方向(
図5で左から右)に流れ、第4電界効果トランジスタQ4を経て、駆動部432の第1の点545から駆動部432の第2の点546に流れる。しかし、2回目には、駆動部制御装置430は、第2および第3の電界効果トランジスタQ2、Q3に切替電位を提供し、第1および第4の電界効果トランジスタQ1、Q4に提供しない第2の切替状態であってもよい。このため、第2および第3の電界効果トランジスタQ2、Q3は低抵抗モードになり、第1および第4の電界効果トランジスタQ1、Q4は高抵抗モードになる。従って、この2回目の時点で、電流は、第2の電界効果トランジスタQ2を通り、誘導要素108を第1の方向とは反対の第2の方向(即ち、
図5で右から左)に流れ、第3の電界効果トランジスタQ3を経て、駆動部432の第1の点545から駆動部432の第2の点546へ流れる。従って、第1の切替状態と第2の切替状態とを交互にすることで、駆動部制御装置430は、誘導要素108を経て交流を提供(即ち、駆動)するように駆動部432を制御することができる。このようにして、駆動装置106は、誘導要素108を経て交流を駆動することができる。
【0065】
この例では、誘導要素108を通じて駆動される交流は、実質的に矩形波を有する。具体的には、交流は、実質的に双極の矩形波形を有する。即ち、交流の波形は、正の電流値(即ち、1回目に第1の方向に流れる電流)に対する第1の実質的に正方形の部分、および負の電流値(即ち、2回目に第1の方向とは反対の第2の方向に流れる電流)に対する第2の実質的に正方形の部分の両方を有する。ただし、以下でより詳細に説明するように、他の例では、他の駆動装置106を使用して、他の形態を有する交流を発生させることができる。例えば、駆動装置106は、1種以上の波形を発生させることができる関数発生器または任意波形発生器などの信号発生器を含むことができ、それらは、例えば、適切な増幅器を用いて、その波形に従って誘導要素108に交流を駆動させるのに使用することができる。
【0066】
ここで
図6aから6jを参照する。
図6b、6d、6f、6h、および6jは、それぞれ、
図6a、6c、6e、6g、および6iの交流波形の周波数成分の周波数空間におけるプロットを模式的に示している。
【0067】
図6aは、時間tの関数としての交流Iの正弦波形を模式的に示している。正弦波の周波数はFである。つまり、
図6aでは、電流Iは、式I=sin(2πFt)に従って時間tの関数として変化する。
図6bは、
図6aの正弦波形の周波数成分の周波数空間でのプロットを模式的に示している。つまり、
図6bのプロットは、
図6bの波形のフーリエ変換を表していると見なすことができる。具体的には、
図6bは、周波数fに対する波形の振幅Aをプロットしている。
図6bの模式図では、振幅Aは、スペクトルの最大振幅Aが1になるように正規化されている。
図6bのプロットは、
図6の純粋な正弦波形が周波数Fに1つの周波数成分しか持たないことを示している。つまり、
図6aの正弦波の振幅またはエネルギーのすべては、周波数F、つまり波形の基本周波数成分に含まれている。
【0068】
図6cは、時間tの関数としての交流Iの別の例示的な波形のプロットを模式的に示している。この例では、波形は周波数Fの基本正弦成分と、周波数2Fの別の正弦成分を含んでいる。つまり、
図6cでは、電流Iは式I=sin(2πFt)+Bsin(2π2Ft)に従って時間tの関数として変化する。ここではBは任意の定数である。
図6dは、
図6cの波形の周波数成分の周波数空間(即ち、振幅Aに対する周波数f)におけるプロットを模式的に示している。ここでも、振幅Aは、スペクトルの最大振幅Aが1になるように正規化されている。
図6dのプロットは、
図6cの波形が周波数Fを有する基本周波数成分と、2Fの周波数を有する高次の周波数成分とを有することを示している。図示のように、
図6cの波形の振幅またはエネルギーの一部は周波数F、つまり波形の基本周波数成分に含まれ、波形の振幅またはエネルギーの一部は周波数2F(つまり、Fの2倍の周波数)に含まれる。
【0069】
図6eは、時間tの関数としての交流Iの波形の別のプロット例を模式的に示している。この例では、波形は矩形波、具体的には双極形波である(即ち、波形は正の電流の流れの矩形部分とそれに続く負の電流の流れの矩形部分を含む)。この例では、矩形波の基本周波数はFである。周知のように、矩形波のフーリエ展開は、周波数Fの基本周波数成分、さらに周波数成分の相対振幅が1/kで与えられるFの奇数k倍の周波数成分を含む正弦波の和(理想的には無限の和であるが、実際には無限ではない)で構成される。例えば、周波数Fの基本周波数成分の振幅を1とすると、周波数3Fの基本波の次の周波数成分の振幅は1/3になり、周波数5Fの基本波から二番目の周波数成分の振幅は1/5になり、周波数7Fの三番目の周波数成分の振幅は1/7となる。参照しやすいように、この級数は規則に従い(F)+1/3(3F)+1/5(5F)+1/7(7F)+…と表すことができる。
図6fは、
図6eの波形の周波数成分の周波数空間(即ち、振幅Aに対する周波数f)におけるプロットを模式的に示している。ここでも、振幅Aは、スペクトルの最大振幅Aが1になるように正規化されている。
図6fのプロットは、矩形波が周波数Fを有する基本周波数成分と、さらに1(F)、1/3(3F)、1/5(5F)などで表される相対振幅を有する基本周波数Fの奇数倍数(奇数高調波)の周波数成分、即ち3F、5Fなどを含むことを示している。言い換えれば、図に示すように、
図6eの波形の振幅またはエネルギーの一部は、周波数F、即ち波形の基本周波数成分に含まれている。即ち、基本周波数成分の3分の1のエネルギーが周波数3Fの高次の周波数成分に含まれ、基本周波数成分の5分の1のエネルギーが周波数5Fの高次の周波数成分に含まれる(以下同様)。一般的に、矩形波のエネルギーの約80%は基本周波数成分に含まれ、矩形波のエネルギーの約20%はより高周波数の高次の周波数成分に含まれる。
【0070】
図6gは、時間tの関数としての交流I波形の別のプロット例を模式的に示している。この例では、波形は三角波である。この例では、三角波の基本周波数はFである。周知のように、三角波のフーリエ展開は、(上述の規則の形で)(F)-1/9(3F)+1/25(5F)-1/49(7F)+…の配列に従う正弦波の和(理想的には無限の和であるが、実際には無限ではない)で構成される。
図6hは、
図6gの波形の周波数成分の周波数空間(即ち、振幅Aに対する周波数f)におけるプロットを模式的に示している。ここでも、振幅Aは、スペクトルの最大振幅Aが1になるように正規化されている。
図6hのプロットは、三角波形が周波数Fを有する基本周波数成分と、さらに1(F)、1/9(3F)、1/25(5F)などで表される相対振幅を有する基本周波数Fの奇数倍(奇数高調波)の周波数成分、即ち3F、5Fなどを含むことを示している。言い換えれば、図に示すように、
図6gの波形の振幅またはエネルギーの一部は、周波数F、つまり波形の基本周波数成分に含まれている。即ち、基本周波数成分の9分の1のエネルギーが、周波数3Fの高次の周波数成分に含まれ、基本周波数成分の25分の1のエネルギーが、周波数5Fの高次の周波数成分に含まれている(以下同様)。
【0071】
図6iは、時間tの関数としての交流Iの波形の別のプロット例を模式的に示している。この例では、波形はのこぎり波である。この例では、のこぎり波の基本周波数はFである。周知のように、のこぎり波のフーリエ展開は、(上述の規則の形で)(F)-1/2(2F)+1/3(3F)-1/4(4F)+…の配列に従う正弦波の和(理想的には無限の和であるが、実際には無限ではない)で構成される。
図6jは、
図6iの波形の周波数成分の周波数空間(即ち、振幅Aに対する周波数f)におけるプロットを模式的に示している。ここでも、振幅Aは、スペクトルの最大振幅Aが1になるように正規化されている。
図6jのプロットは、のこぎり波が、周波数Fを有する基本周波数成分と、さらに1(F)、1/2(2F)、1/3(3F)などで表される相対振幅を有する基本周波数Fの整数倍数(高調波)の周波数成分、即ち2F、3Fなどを含むことを示している。言い換えれば、図に示すように、
図6iの波形の振幅またはエネルギーの範囲は、周波数F、つまり波形の基本周波数成分に含まれている。即ち、基本周波数成分の半分のエネルギーが、周波数2Fの高次の周波数成分に含まれ、基本周波数成分の3分の1のエネルギーが、周波数3Fの高次の周波数成分に含まれている(以下同様)。
【0072】
従って、
図6c、6e、6g、および6i(例えば、矩形、三角形、のこぎり波)のそれぞれにおいて、交流は、第1の周波数(例えばF)を有する基本周波数成分および1つ以上の高次の周波数成分を含む波形を有するそれぞれが第1の周波数よりも高い周波数を持っている。例えば、第1の周波数は0.5MHz~2.5MHzの範囲の周波数Fであり、1つ以上の高次の周波数成分の各々の周波数はnFであり、nは1より大きい正の整数である。例えば、矩形波(またはその他)の場合、nは1より大きい奇数の正の整数で
ある可能性がある。例えば、第1の周波数Fは2MHzであり、矩形波(またはそれ以外)の場合の第1の次の周波数成分の周波数は3×2MHz、即ち6MHzである。
図6c、6e、6g、および6iに示す例以外にも、第1の周波数(例えばF)を有する基本周波数成分を含む多くの波形例があることがわかる。また、第1の周波数より高い周波数をそれぞれ有する1つ以上の高次の周波数成分が代わりに使用されてもよい。とはいえ、この基準に適合する可能性のある波形の中で矩形波は高次周波数成分のエネルギーの比率が高い(約20%)ため、以下でより詳細に説明するように、サセプタのサセプタ部分における誘導された交流の表皮深さを小さくする効果が高いことに注意する必要がある。
【0073】
上述のように、表皮深さは、誘導要素108によって生成される交流磁場がサセプタ部分に浸透して誘導加熱を引き起こす特徴的な深さとして定義することができる。具体的には、表皮深さは、誘導電流密度がサセプタの表面でその値の1/e(即ち、約0.37)まで低下するサセプタの表面下の深さとして定義することができる。表皮深さは、誘導電流の周波数fに依存し、従って、誘導要素によって生成される交流磁場の周波数に依存する。従って、誘導要素を介して駆動される交流の周波数に依存する。例えば、誘導電流の周波数は、誘導要素を介して駆動される交流の周波数と同じであってもよい。具体的には、表皮深さδは次式で与えられる。
【0074】
【0075】
式中、ρはサセプタの抵抗率、fは誘導電流の周波数(これは、誘導要素を介して駆動される交流の周波数と同じである可能性がある)であり、かつμ=μrμ0(μrはサセプタの比透磁率、μ0は自由空間の透磁率)である。
【0076】
第1の周波数を有する基本周波数成分と、第1の周波数より高い周波数を有する1つ以上の高次の周波数成分とを含む波形を有する電流で誘導要素を駆動すると、誘導要素によって生成された交流磁場に、第1の周波数を有する基本周波数成分と第1の周波数より高い周波数を有する1つ以上の高次の周波数成分を構成し、さらに、サセプタ内に誘導された交流が、第1の周波数を有する基本周波数成分と第1の周波数より高い周波数を有する1つ以上の高次の周波数成分を構成する。誘導電流の高次の周波数成分は、誘導電流の基本周波数成分よりも小さい表皮深さに関連している。従って、基本周波数成分を含む波形を有する交流で誘導素子と1つ以上の高次の周波数成分を駆動することで、例えば、基本周波数単独で用いる場合と比較して、誘導素子の表面から比較的短い距離で、誘導素子からサセプタへの誘導エネルギーの大部分を伝達することができる。このことが有利になる場合がある。
【0077】
例えば、誘導要素からサセプタへのより大きな割合の誘導エネルギー伝達を誘導要素の表面から比較的短い距離で発生させると、与えられた誘導エネルギー伝達効率を実質的に維持しながら、サセプタ部分224、324を薄くすることができる。たとえば、周波数Fの純粋な正弦波形を有する交流は、周波数Fで発生する誘導エネルギーを100%伝達する可能性があり、従って、誘導エネルギー伝達が所定の割合になる表皮深さを有する可能性がある。ただし、同じ基本周波数Fを持つ矩形波交流の場合、誘導エネルギー伝達の約20%は、より高い周波数(従って、より低い関連する表皮深さ)の高次の周波数成分によって提供される。従って、誘導エネルギー移動が所定の割合になる表皮深さは小さくなる。従って、所定の吸収効率を低下させることなく、サセプタ部分224、324を(純粋な正弦波形が使用される場合と比較して)より薄くすることができる。従って、より少ない材料(例えば、ニッケルまたはコバルトなどの強磁性材料)をサセプタ部分に使用することができ、これにより、サセプタ部分のコストを削減することができ、および/またはサセプタ部分224、324の製造効率が高くなる。
【0078】
別の例として、誘導要素からサセプタへのより大きな割合の誘導エネルギー伝達を誘導要素の表面から比較的短い距離で発生することにより、誘導エネルギー伝達効率をサセプタ部分の厚さに対して増加させることができる(たとえば、表皮厚さがサセプタ部分の厚さよりも大きくなる可能性がある場合)。例えば、所与のサセプタ部分224、324は、所与の厚さを有することができる。周波数Fの純粋な正弦波交流が使用される場合、表皮深さはサセプタ部分224、324の厚さよりも大きくなり、従って、比較的低い誘導エネルギー伝達が達成される。ただし、同じ基本周波数Fを持つ矩形波交流の場合、誘導エネルギー伝達の約20%は、より高い周波数(従って、より低い関連する表皮深さ)
の高次の周波数成分によって提供される。従って、所定の厚さを有するサセプタ部分への比較的高い誘導エネルギー伝達があり、従って、サセプタ部分224、324への誘導エネルギー伝達の効率が比較的高くなる。
【0079】
図7では、エアロゾル発生装置を操作する方法の例が示されている。例えば、エアロゾル発生装置は、
図1~5のいずれかを参照して上述したエアロゾル発生装置100であってもよい。例えば、エアロゾル発生装置100は、エアロゾル発生材116を加熱してエアロゾルを発生させるように配置された複合サセプタ110、210、310を含むことができる。上述のように、複合サセプタは、耐熱支持部分222、322と、支持部分222、322によって支持されるサセプタ部分224、324とを含むことができる。例えば、上述のように、支持部分222、322は、ステンレス鋼、アルミニウム、鋼、銅などの金属、合金、セラミック材料、およびプラスチック材料、および/または高温(即ち耐熱性)ポリマー、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および/またはカプトンのうちの1種以上で構成されてもよい。いくつかの例では、支持部分は紙を含んでもよい。例えば上述のように、サセプタ部分224、324は、例えばニッケルまたはコバルトなどの強磁性材料であるか、または強磁性材料を含むことができ、例えば支持構造のコーティングとして形成されてもよく、例えば50ミクロン未満の厚さを有し、例えば20ミクロン未満、例えば10~20ミクロン、または例えば数ミクロンの厚さを有してもよい。装置は、複合サセプタ210の少なくともサセプタ部分224、324に誘導エネルギーを伝達するように構成された誘導要素108をさらに含むことができる。
【0080】
この方法は、工程700において、交流で誘導要素108を駆動し、それによって、サセプタ部分224、324への誘導エネルギー伝達を引き起こすことを含む。それにより、複合サセプタ110、210、310によるエアロゾル発生材116の加熱を引き起こし、それによってエアロゾルを発生させる。ここで、交流は、第1の周波数(F)を有する基本周波数成分と、それぞれが第1の周波数(F)よりも高い周波数を有する1つ以上の高次の周波数成分とを含む波形を有する。例えば、上述のように、1つ以上の高次の周波数成分は、基本周波数成分の高調波(即ち、基本周波数の整数倍の周波数を有する)、例えば、奇数次高調波(即ち、基本周波数の奇数整数倍の周波数を有する)である。例えば、上述のように、波形は、三角波形、のこぎり波、および矩形波の内の1つである。例えば、上述のように、波形は双極矩形波である。交流での誘導要素の駆動は駆動装置によって実行される。例えば、
図1から
図6のいずれか1つを参照する上述の駆動装置106は、例えば上述のように、矩形波を有する駆動電流を発生させるように制御されるHブリッジ構成のトランジスタを含む。
【0081】
上述と同様に、この方法は、所与の誘導エネルギー伝達効率(従ってエアロゾル発生効率)を実質的に維持しながら、サセプタ部分224、324のコストを削減することができ、および/または所与のサセプタ部分224、324の厚さに対して誘導エネルギー伝達効率(従ってエアロゾル発生効率)を改善することができる。
【0082】
従って、上述の例によれば、エアロゾルを発生させるための改良されたエアロゾル発生デバイスおよび方法を提供することができる。
【0083】
上述の例では、誘導素子108は、基本周波数成分および1つ以上のより高い周波数成分(例えば、高調波)を含む波形(例えば、矩形波)を有する交流で駆動し、複合サセプタ110、210、310のサセプタ部分223、324への誘導エネルギー伝達を引き起こす。その複合サセプタ110、210、310は、サセプタ部分224、324とサセプタ部分224、324を支持する支持部分とを含む。この配置のいくつかの利点は上述のとおりだが、次のことも注目すべきである。
【0084】
支持部分222はサセプタ部分224、324を支持するので、サセプタ部分224は薄くてもよい(例えば50ミクロン、例えば20ミクロン以下、例えば約10~20ミクロン、例えば約15ミクロン、または例えば数ミクロン)。これは、サセプタ部分224、324はそれ自体を支持する必要がないからである。サセプタ部分224、324を薄くすることで多くの利点が得られる。例えば、サセプタ部分224、324の質量は比較的小さく、従って、サセプタ部分224、324は、所与の誘導エネルギー伝達で比較的急速に加熱する。従って、エアロゾル発生材の加熱速度を増加させることができ、これにより、加熱性能はより応答性が高くなり、かつ/あるいは全体的なエネルギー効率が改善される。別の例として、サセプタ部分224の材料の量は比較的少量でよく、それによりサセプタ材料のコストを節約できる。別の例として、サセプタ部分224、324の厚さは比較的薄くてもよく、これにより、サセプタ部分224、324の製造、例えば、堆積、化学メッキおよび/または電気化学メッキ、および/または真空蒸着に関連する時間短縮とコスト削減が可能になる。別の例として、例えば、堆積または蒸着によるサセプタ部分の製造の場合、堆積されたサセプタ部分層の形態は、層の厚さが増すにつれて悪化する可能性がある。従って、サセプタ部分224、324が薄いと、層の全体的な品質が比較的高くなり、これにより、例えば、性能の向上が図れる。
【0085】
従って、複合サセプタ110、210、310により、比較的薄いサセプタ部分224、324が使用でき、上述のような利点が得られる。ただし、サセプタ部分224、324が薄いと、本質的に、誘導要素108から比較的薄いサセプタ部分224、324への誘導エネルギー伝達の効率が比較的小さいという欠点を有する可能性がある。例えば、上述のように、表皮深さ(誘導要素108によって生成された交番磁界がサセプタ部分を貫通して誘導加熱を引き起こす特徴的な深さ)がサセプタ部分224、324の厚さよりも大きくなる可能性があるためであり、これは、誘導要素108からサセプタ部分224、324への誘導エネルギー伝達の結合効率が比較的低い可能性があることを意味する。しかしながら、複合サセプタ110、210、310のこの潜在的な欠点に対しては、本明細書に記載の例に従って、基本周波数成分および1つ以上のより高い周波数(例えば、高調波)成分を含む波形を有する交流で誘導要素108を駆動することによって対処することができる。表皮深さは周波数の増加とともに減少するので、より高い周波数成分を使用すると、複合サセプタ110、210、310の比較的薄いサセプタ部分224、324に関しては、誘導要素108からサセプタ部分224、324への誘導エネルギー伝達の比較的高い結合効率が確実に達成される。これは、例えば、駆動交流の基本周波数を大きくしなくても達成することができる。上述のように、そのような波形のうち、双極矩形波形などの矩形波は、高周波成分がエネルギーの中で特に高い比率を占め、従って、複合サセプタ110、210、310のサセプタ部分224、324への結合効率が特に高くなる。さらに、説明したように、矩形波、例えば双極矩形波は、比較的安価で単純な駆動装置432を用いて発生させることができる。
【0086】
従って、複合サセプタ110、210、310と基本周波数成分および1つ以上のより高い周波数成分を含む波形(例えば、矩形波形)を有する有する電流で誘導要素を駆動することの組み合わせによって例えば比較的高い伝達効率を確実にし、コストを下げることができ、従って改良されたエアロゾル発生装置およびエアロゾル発生方法を可能にする。
【0087】
上述の特定の例では複合サセプタのサセプタ部分は支持部分にコーティングを含むが、他の例では、サセプタ部分と支持部分はそれぞれシート材を含んでもよい。支持部分はサセプタ部分から分離可能であってもよい。次に支持部分は、サセプタ部分を支持するためにサセプタ部分と当接、例えば支持部分はサセプタ部分を囲んでもよい。例えば、サセプタ部分はエアロゾル発生材に巻かれるように構成された第1のシート材料を含んでもよく、支持部分は第1のシートを支持するために第1のシートに巻かれるように構成された第2のシート含む。1つのそのような例では支持部分は紙で形成されている。サセプタ部分は、交流磁場によって熱を発するためにあらゆる好適な材料で形成してもよい。例えば、サセプタ部分はアルミニウムを含んでもよい。
【0088】
上記の例は本発明の説明に役立つ実例である。当然のことながら任意の1つの実例について説明したあらゆる特徴は単独または説明された他の特徴と組み合わせて使用してもよく、他の実例のいずれかの1つ以上の特徴または他の実例のいずれかのあらゆる組み合わせと組み合わせて使用してもよい。さらに上記で説明されていない同等物および修飾物も添付の特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲を逸脱することなく採用することも可能である。