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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20240712BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240712BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240712BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240712BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240712BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240712BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240712BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P1/18
A61P15/00
A61P1/00
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110949
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2019558725の分割
【原出願日】2018-04-30
(65)【公開番号】P2023145467
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】62/500,108
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/656,423
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】クーク,ベッセリーナ
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517417(JP,A)
【文献】History of Changes for Study: NCT02974725,Clinical Trials.gov archive [online],2018年04月16日,retrieved on 16 May 2022<URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02974725?V_10=View#StudyPag
【文献】Molecular Cancer Therapeutics,2015年,Vol.14, No,12,pp.2700-2711, Supplementary Figures
【文献】Combination of pan-RAF and MEK inhibitors in NRAS mutant melanoma,Molecular Cancer,2015年,Vol.14,27 (Page 1-12)
【文献】Cancer cell.,2014年,Vol.25, No.5,pp.697-710
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と
を含む、癌の治療で使用するための組み合わせ医薬であって、
前記癌はQ61X変異によって特徴付けられ、任意選択で、前記トラメチニブがジメチルスルホキシド溶媒和物の形態である、組み合わせ医薬。
【請求項2】
前記癌はQ61H、Q61K、Q61LおよびQ61Rから選択される少なくとも1つの変異を有する、請求項1に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項3】
前記癌は、NRAS変異癌又はKRAS変異癌である、請求項1又は2に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項4】
前記癌は、肺癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌又は大腸癌(CRC)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項5】
前記癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵管腺癌(PDAC)又は大腸癌(CRC)である、請求項4に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項6】
前記癌はNSCLCであり、任意選択的で、前記NSCLCがKRAS変異NSCLC、BRAF変異NSCLC、又はKRAS変異NSCLCとBRAF変異NSCLCとの両方である、請求項5に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項7】
前記癌は、ダブラフェニブとトラメチニブとの組み合わせでの治療に対して耐性であるBRAF V600変異NSCLCである、請求項6に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)本明細書で定義される通りの式(I)の化合物若しくはその薬学的に
許容し得る塩又は本明細書で定義される通りの式(II)の化合物若しくはその薬学的に
許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤と、(b)MEK阻害剤、特にトラ
メチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物とを含む医薬的組み合わせに関
する。本発明は、(a)本明細書で定義される通りの式(I)の化合物若しくはその薬学
的に許容し得る塩又は本明細書で定義される通りの式(II)の化合物若しくはその薬学
的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤と、トラメチニブ又はその薬学
的に許容し得る塩若しくは溶媒和物とを含む医薬的組み合わせにも関する。
【0002】
本発明は、増殖性疾患、特に癌の治療で使用するためのこうした組み合わせ、増殖性疾
患、特に癌の治療のための医薬品の調製のためのこうした組み合わせの使用、増殖性疾患
、特に癌の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、共同で治療有効量
の前記組み合わせを前記対象に投与することを含む方法、増殖性疾患、特に癌の治療のた
めのこうした組み合わせの使用、こうした組み合わせを含む医薬組成物及びそれに対する
市販用包装品にも関する。
【0003】
本発明は、MEK阻害剤、特にトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶
媒和物との組み合わせ療法で使用するための、本明細書で定義される通りの式(I)の化
合物若しくはその薬学的に許容し得る塩又は本明細書で定義される通りの式(II)の化
合物若しくはその薬学的に許容し得る塩にも関する。本明細書で定義される通りの式(I
)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩との組み合わせ療法で使用するための、又
は本明細書で定義される通りの式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩と
の組み合わせ療法で使用するための、MEK阻害剤、特にトラメチニブ又はその薬学的に
許容し得る塩若しくは溶媒和物も本明細書で提供される。
【背景技術】
【0004】
RAS/RAF/MEK/ERK又はMAPK経路は、細胞の増殖、分化及び生存を誘
導する重要なシグナル伝達カスケードである。この経路の調節不全は、多くの場合の腫瘍
形成の根底にある。この経路は、低分子のGタンパク質RASがGDPをGTPと交換す
るのを続いて誘発する細胞外シグナルによって活性化される。活性化されたRAS低分子
グアニジントリホスファターゼ(GTPアーゼ)は、RAF(本明細書では「Raf」と
も呼ばれる)ファミリータンパク質(RAF1としても公知であるARAF、BRAF及
びCRAF)の活性化を促進する。活性化されたRAFタンパク質は、MEK1/2タン
パク質のリン酸化及び活性化をもたらし、続いて、これが細胞外シグナル制御キナーゼ(
ERK)をリン酸化及び活性化する。ERK1/2タンパク質は、複数の転写因子を含む
様々な基質をリン酸化し、増殖、分化、遊走、生存及び血管新生を含む重要な細胞活性を
調節する。
【0005】
MAPK経路の異常なシグナル伝達又は不適切な活性化は、メラノーマ、肺及び膵臓の
癌を含む複数の腫瘍型において示されており、RAS及びBRAF(v-Rafマウス肉
腫ウイルス癌遺伝子ホモログB1の活性化変異を含むいくつかの異なる機構を通して起こ
る可能性がある。GTPアーゼのスーパーファミリーであるRASには、機能獲得型変異
として公知である種々の単一点突然変異によってオンになる(活性化される)可能性があ
る調節されるシグナル伝達タンパク質であるKRAS(v-Ki-ras2カーステンラ
ット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ)が含まれる。RAS変異、特に機能獲得型(GOF
)変異は、すべての癌の9~30%において検出されており、KRAS変異は、有病率が
最も高く(86%)、NRAS(11%)がそれに続き、HRAS(3%)は、稀である
(Cox AD,et al,Nat Rev Drug Discov 2014;1
3(11):828-51)。活性化KRAS変異は、メラノーマ(Fedorenko
IV,et al,Br J Cancer 2015;112(2):217-26
)、膵癌(di Magliano MP&Logsdon CD,Gastroent
erology 2013;144(6):1220-9)、大腸癌(Knickelb
ein K&Zhang L,Genes Dis 2015;2(1):4-12)及
び卵巣癌(Nakayama N,et al,Br J Cancer 2008;9
9(12):2020-8)にも多くの場合に見られる。
【0006】
RAF、MEK及びERKキナーゼなど、RASの下流エフェクターを標的にする阻害
剤は、RAS誘導性の腫瘍における有意な臨床活性を示していない。例えば、BRAF
600変異メラノーマにおいて効果的であるベムラフェニブなどのRAF阻害剤は、RA
S変異癌では無効である。したがって、現在、KRAS変異腫瘍及びNRAS変異腫瘍の
ための有効な治療法は存在しない。特に、BRAF変異メラノーマと異なり、NRAS変
異メラノーマ患者のための承認された標的療法は存在しない。MEK1/2阻害剤の治験
からの最近のデータは、無増悪生存期間のわずかな増加を示したが、これらの患者におけ
る全生存期間の向上を示さなかった(Dummer et al.,Lancet On
col,18,435-445,2017)。
【0007】
MAPK阻害剤のいくつかの垂直的組み合わせが有益であると証明されているが、可能
な組み合わせの様々な置換のいずれか1つが臨床上の利益であるかどうかは、必ずしも予
測可能であると限らない。例えば、ERK1/2阻害剤GDC-0994と組み合わせた
MEK阻害剤コビメチニブの組み合わせが重複毒性及び蓄積毒性をもたらすことが最近報
告され、これは、その著者らによれば、この特定の組み合わせのさらなる開発を制限する
であろう。(Weekes et al 2017,Abstract CT107:A
ACR Annual Meeting 2017;April 1-5, 2017
Combinations)
【0008】
肺癌は、世界中の男女が罹患する一般的な型の癌である。NSCLCは、肺癌の最も一
般的な型(大体85%)であり、これらの患者のおよそ70%は、診断時、進行した疾患
(ステージIIIB又はステージIV)を呈する。NSCLC腫瘍の約30%は、活性化
KRAS変異を含有し、これらの変異は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(
EGFR TKI)に対する耐性と関連する(Pao W,et al,PLoS Me
d 2005;2(1):e17)。これまで、KRAS変異を有するNSCLC及びV
600EではないBRAF変異を有するNSCLCを患う患者に利用可能である承認され
た標的療法はない。
【0009】
メラノーマは、世界中の男女が罹患する一般的な型の癌である。転移性皮膚メラノーマ
患者の50%は、BRAF活性化変異を内在し、これらの患者の20%は、NRAS活性
化変異を有する(Zhang et al,Pigment Cell Melanom
a Res 2016;29:266-283。NRAS変異は、ステージIVメラノー
マの診断後のより短い生存の独立予測因子と特定された(Jakob JA et al
(2012),Cancer,Volume 118, Issue 16,Pages
4014-4023)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、KRAS及びNRASの直接的阻害は、依然として困難であることが判明
しており、これまで、KRAS変異NSCLCなどのKRAS変異癌及びNRAS変異メ
ラノーマなどのNRAS変異癌を有する患者に利用可能である承認された標的療法はない
。したがって、安全であり、良好な耐容性を示し、且つ/又は伴われる発疹などの有害な
副作用が少ない標的療法の必要性が存在する。臨床現場における持続的且つ維持される反
応をもたらす治療法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
MEK阻害剤と、CRAFとBRAFとの両方の活性を強力に阻害する本明細書で定義
される通りの式(I)の化合物などの選択的Raf阻害剤との組み合わせは、BRAF変
異腫瘍及びRAS変異誘導性の腫瘍形成を阻止するのに有効である可能性があることがこ
こで判明した。式(I)の化合物とトラメチニブとを組み合わせることは、NRAS変異
及びKRAS変異細胞株などのMAPK変異癌細胞株において相乗的であると判明した。
本明細書に記載した発見に基づくと、Raf阻害剤、特に式(I)の化合物などのCRA
F及びBRAF阻害剤と、トラメチニブなどのMEK阻害剤との組み合わせは、RAS変
異腫瘍を患う患者において特に効果的且つ耐性を起こしにくい可能性がある。
【0012】
式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせは、ヒトKRAS変異NSCLC、C
RC及びPDAC異種移植モデル並びにヒトNRAS変異メラノーマ異種移植モデルにお
けるいずれかの単剤療法と比較して増大した抗腫瘍反応も示した。式(II)の化合物と
トラメチニブとの組み合わせは、ヒトHPAFII膵臓異種移植マウスモデルにおけるい
ずれかの単剤療法と比較して腫瘍反応の効力の増大を示した。したがって、式(I)の化
合物又は式(II)の化合物は、単独で及びMEK阻害剤と組み合わせて、MAPK経路
変化を内在する癌を有する患者の治療において有用である可能性がある。こうした癌には
、KRAS変異NSCLC(非小細胞肺癌)、KRAS変異膵癌(例えば、KRAS変異
膵管腺癌(PDAC)、KRAS変異CRC(大腸癌)及びNRAS変異メラノーマ)が
含まれる。
【0013】
したがって、本発明は、(a)(i)本明細書で定義される通りの式(I)の化合物若
しくはその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通りの式(II)
の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤と、
(b)MEK阻害剤、特にトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物
とを含む医薬的組み合わせを提供する。本発明は、増殖性疾患の治療で使用するためのこ
うした組み合わせも提供する。
【0014】
さらに、本発明は、
(a)MEK阻害剤、特にトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物
との組み合わせ療法で使用するための、(i)本明細書で定義される通りの式(I)の化
合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通りの式(
II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害
剤、及び
(b)(i)本明細書で定義される通りの式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し
得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通りの式(II)の化合物若しくはその薬学
的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤との組み合わせ療法で使用する
ための、MEK阻害剤、特にトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和

を提供する。
【0015】
式(I)の化合物は、次の構造:
【化1】

を有する化合物である。
【0016】
式(II)の化合物は、次の構造:
【化2】

を有する化合物である。
【0017】
本発明は、特に増殖性疾患の治療における同時、個別又は連続使用のための、本明細書
で定義される通りのRaf阻害剤化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤
、好ましくはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒とを含む医薬的組
み合わせをさらに提供する。
【0018】
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬的組み合わせは、(a)Raf阻害剤、式(
I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、(b)トラメチニブ又はその薬学的に許
容し得る塩若しくは溶媒和物、特にその溶媒和物とを含む。
【0019】
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬的組み合わせは、(a)Raf阻害剤、式(
II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、(b)トラメチニブ又はその薬学的に
許容し得る塩若しくは溶媒和物、特にその溶媒和物とを含む。
【0020】
本発明は、特に、MAPK経路における活性化変異によって特徴付けられる、特にRA
S(例えば、KRAS若しくはNRAS)及び/又はBRAFにおける1つ又は複数の変
異によって特徴付けられる癌の治療で使用するための本発明の組み合わせに関する。
【0021】
本発明は、増殖性疾患、特に癌の治療のための本発明の組み合わせの使用も提供する。
特に、本発明の組み合わせは、非小細胞肺癌(NSCLC)、メラノーマ、膵管腺癌(P
DAC)、子宮頸癌、卵巣癌又は大腸癌(CRC)の治療に有用である可能性がある。
【0022】
本発明は、増殖性疾患、特に癌の治療のための医薬品の調製のための本発明の組み合わ
せの使用も提供する。
【0023】
本発明は、増殖性疾患を治療する方法であって、前記増殖性疾患に対して共同で治療的
に有効である量の本発明の組み合わせを、それを必要とする対象に同時に、別々に又は連
続して投与することを含む方法も提供する。
【0024】
本発明は、増殖性疾患に対して共同で治療的に有効である、ある量の本発明の組み合わ
せと、任意選択で少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物又は組み
合わせ調製物も提供する。
【0025】
本発明は、増殖性疾患の治療で使用するための、(a)(i)式(I)の化合物又はそ
の薬学的に許容し得る塩、及び(ii)式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る
塩からなる群から選択されるRaf阻害剤の1つ又は複数の投薬単位と、(b)MEK阻
害剤、好ましくはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物の1つ又
は複数の投薬単位とを含む組み合わせ調製物も提供する。
【0026】
本発明は、増殖性疾患、好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)、メラノーマ、膵管腺
癌(PDAC)、子宮頸癌、卵巣癌又は大腸癌(CRC)の治療で使用するための、それ
を必要とする患者への本発明の組み合わせの同時、個別又は連続投与のための、活性成分
としての本発明の組み合わせと説明書とを含む市販用包装品も提供する。
【0027】
本発明は、増殖性疾患の治療における、MEK阻害剤、好ましくはトラメチニブ又はそ
の薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物との同時、個別又は連続使用のための、(i)
式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)式(ii)の化合物又は
その薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤と説明書とを含む市販
用包装品も提供する。
【0028】
本発明の種々の態様を以下でさらに詳細に記載する。追加の定義は、本明細書全体を通
して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】マウスにおける、図1)Calu-6(KRAS(Q61K)変異)、図2)NCI-H358(KRAS(G12C)変異)、図3)HLUX1156(KRAS(G12C)変異)、及び図4)NCI-H727(KRAS(G12V)変異)異種移植肺癌腫瘍モデルにおける式(I)の化合物。皮下異種移植片を有する動物は、示された通りに式(I)の化合物での治療を受けた。化合物は、示された通りに毎日(qd若しくはQD)、1日2回(bid若しくはBID)又は1日おきに(q2d若しくはQ2D)、経口的に(PO)投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は腫瘍退縮の割合(すなわち開始体積と比較した治療後の腫瘍の体積(退縮(%)(図1~4では「% Reg」又は「~% Reg」と示す)を評価することによって決定した。SEM=平均値の標準誤差、PBS=リン酸緩衝生理食塩水。
図2】(上記の通り。)
図3】(上記の通り。)
図4】(上記の通り。)
図5】マウスにおけるCalu-6異種移植腫瘍モデルにおいて組み合わせて使用される式(I)の化合物及びMEK阻害剤トラメチニブの効力を描写する。Calu-6の皮下異種移植片を有する動物は、示された通りに式(I)の化合物及び/又はトラメチニブでの治療を受けた。深さ(図5)と反応の持続性(図6)との両方を示した。化合物は、示された通りに毎日(qd)又は1日おきに(q2d)、経口的に投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図2A~2Bでは「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図6】(上記の通り。)
図7】異なるBRAF又はRAS変異を内在する細胞株を、示された濃度のDMSO、ダブラフェニブ又は式(II)の化合物で2時間処理した。MEK又はERKリン酸化の阻害をウエスタンブロット分析によって測定した。式(II)の化合物は、最小限の逆説的活性化を伴って、BRAF、NRAS又はKRAS変異を有する腫瘍細胞における発癌性シグナル伝達及び増殖を阻害する。
図8】ダブラフェニブ(上のパネル)又は式(II)の化合物(下のパネル)での治療の5日後の細胞株の成長阻害を決定した。
図9】阻害剤処理の3日後の、式(II)の化合物又はダブラフェニブによる357種のヒト癌細胞株における成長阻害のIC50値のドットプロット。点線は、阻害剤に対する細胞株感受性についてのカットオフとして使用した5μMのIC50を表す。BRAF変異、KRAS変異、NRAS変異又は野生型(WT)細胞中における各阻害剤に対する感受性及び耐性の細胞株の数をグラフの下に示す。フィッシャーの直接確率検定を実施して、WT細胞株に対するBRAF又はRAS変異細胞株における阻害剤活性の統計的有意性を決定した。
図10】腫瘍試料を、Calu-6腫瘍を有する動物におけるビヒクルの単回投与又は式(II)の化合物の漸増投与後、示された時点で収集し、リン酸化されたMEK(pMEK)レベルを決定した。pMEKレベルは、各時点でのビヒクル対照と比較した治療群におけるpMEK/総MEKの比として表す。
図11】Calu-6腫瘍異種移植片の成長阻害を4つの用量レベルにわたるビヒクル又は式(II)の化合物での治療後に測定した。腫瘍体積は、治療群あたり6匹の動物の平均腫瘍体積±平均値の標準誤差(SEM)として表す。Calu-6の皮下異種移植片を有する動物は、示された通りに式(II)の化合物での治療を受けた。式(II)の化合物は、毎日(qd)投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図11では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図12】式(II)の化合物のインビボ抗腫瘍活性を23人のNSCLC患者由来の異種移植(PDX)モデルのパネルにおいて評価し、最初の腫瘍体積と比較した測定時の腫瘍体積の変化の%として提示した。正の値は、腫瘍成長を示し、負の値は、腫瘍退縮を示す。式(II)の化合物は、60mg/kg又は200mg/kg(▼によって示す)で1日1回、経口的に投与した。各腫瘍には、BRAF又はRAS変異状態について注釈を付けた。比較のため、NSCLC PDXモデルのパネルにおけるパクリタキセルに対する腫瘍反応を含めた。GOF=機能獲得型、WT=野生型。
図13】HPAF-II(KRAS(G12D変異)膵臓由来の細胞における、式(II)の化合物とトラメチニブとの抗増殖性の組み合わせ活性を評価した。左上のパネル:処理の5日後の、式(II)の化合物、トラメチニブ及び組み合わせによる、DMSOに対する成長阻害の割合を表す用量行列。右上のパネル:Loeweモデルを使用する、組み合わせ効果と、2つの単一の薬剤の算出された相加的効果との間の偏差を表す超過阻害値。算出されたLoewe相乗作用スコアを示す。下のパネル:用量行列データのアイソボログラム分析、濃い灰色の線は、データ点を表し、薄い灰色の線は、相加性を示す。50%成長阻害での算出されたLoewe組み合わせ指数(CI)を示す。
図14】HPAF-II異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(II)の化合物及びトラメチニブのインビボ活性。DUSP6(二重特異性ホスファターゼ6)mRNAレベルによって測定される単一用量の治療後のシグナル伝達阻害。さらに、効果的な投薬量は、MAPキナーゼ経路阻害を示すバイオマーカーをモニタリングすることによって決定することができる。具体的には、DUSP6は、この経路の公知のバイオマーカーであり、DUSP6のインビボレベルは、効果的な血漿中濃度を伴う式(II)の化合物に応答して下がることが示されている。DUSP6レベルは、対照遺伝子RPLPOに対する正規化後にビヒクル群と比較した変化の割合として表す。
図15】HPAF-II異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(II)の化合物及びトラメチニブのインビボ活性。10日間の示された通りの治療後のインビボ腫瘍成長。化合物は、毎日(qd)投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図15では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図16】HCT116異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(I)の化合物(図における化合物I)及びトラメチニブのインビボ活性。17日間の示された通りの治療後のインビボ腫瘍成長。化合物は、毎日(qd)又は1日おきに(q2d)投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図16では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図17】2043異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(I)の化合物(図における化合物I)及びトラメチニブのインビボ活性。21日間の示された通りの治療後のインビボ腫瘍成長。化合物は、毎日(qd)又は1日おきに(q2d)投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図17では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図18】SKMEL30異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(I)の化合物(図における化合物I)及びトラメチニブのインビボ活性。22日間の示された通りの治療後のインビボ腫瘍成長。化合物は、毎日(qd)又は1日2回(bid)投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図18では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図19】20667異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(I)の化合物(図における化合物I)及びトラメチニブのインビボ活性。示された通りの17日間の治療(単剤)及び31日間の組み合わせ治療後のインビボ腫瘍成長。化合物は、毎日(qd)又は1日2回(bid)投与した。抗腫瘍活性は、単剤について第34日での、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は組み合わせについて第48日での、開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図19では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図20】21124異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(I)の化合物(図における化合物I)及びトラメチニブのインビボ活性。21日間の示された通りの治療後のインビボ腫瘍成長。化合物は、毎日(qd)又は1日2回(bid)投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図20では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
図21】20864異種移植モデルにおける、単剤としての又は組み合わせた式(I)の化合物(図における化合物I)及びトラメチニブのインビボ活性。示された通りの14日間の治療(単剤)及び36日間の組み合わせ治療後のインビボ腫瘍成長。化合物は、毎日(qd)又は1日2回(bid)投与した。抗腫瘍活性は、単剤について第33日での、ビヒクルで処置した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積の割合(% T/C)又は組み合わせについて第55日での、開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%)、図21では「% Reg」と示す)を評価することによって決定した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、(a)(i)本明細書で定義される通りの式(I)の化合物若しくはその薬
学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通りの式(II)の化合物若し
くはその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤と、(b)特に増
殖性疾患の治療で使用するためのMEK阻害剤とを含む医薬的組み合わせに関する。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「Raf阻害剤」は、セリン/トレオニン-プロテイン
キナーゼB-Raf又はC-Rafの少なくとも1つの活性を選択的に標的にするか、低
下させるか又は阻害する、B-Rafプロテインキナーゼ(本明細書ではb-RAF、B
RAF又はb-Rafとも呼ばれる)及びC-Rafプロテインキナーゼ(本明細書では
c-RAF、CRAF又はc-Rafとも呼ばれる)のアデノシン三リン酸(ATP)競
合的阻害剤を指す。Raf阻害剤は、Raf単量体とRaf二量体との両方を優先的に阻
害する。
【0032】
本明細書で使用する場合、Raf阻害剤は、(i)本明細書で定義される通りの式(I
)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通り
の式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択される。
【0033】
式(I)の化合物は、次の構造:
【化3】

を有する。
【0034】
便宜上、この化合物及びその塩の群は、集合的に、「式(I)の化合物」又は「化合物
(I)」と呼ばれ、これは、「式(I)の化合物」又は「化合物(I)」への言及が交互
に化合物又はその薬学的に許容し得る塩のいずれかを指すこととなることを意味する。
【0035】
Raf阻害剤、式(I)の化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、その全体が参照に
より本明細書に組み込まれる国際公開第2014/151616号パンフレットに記載さ
れており、その調製の方法は、例えば、その中の実施例1156に記載されている。
【0036】
式(II)の化合物は、次の構造:
【化4】

を有する。
【0037】
便宜上、この化合物及びその塩の群は、集合的に、「式(II)の化合物」又は「化合
物(II)」と呼ばれ、これは、「式(II)の化合物」又は「化合物(II)」への言
及が交互に化合物又はその薬学的に許容し得る塩のいずれかを指すこととなることを意味
する。
【0038】
Raf阻害剤、式(II)の化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、その全体が参照
により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/151616号パンフレットに記載
されており、その調製の方法は、例えば、その中の実施例131に記載されている。
【0039】
細胞に基づくアッセイでは、Raf阻害剤、式(I)の化合物及び式(II)の化合物
は、MAPKシグナル伝達を活性化する様々な変異を含有する細胞株における抗増殖活性
を示した。インビボにおいて、式(I)の化合物又は式(II)の化合物での治療は、N
SCLC由来のCalu-6(KRAS Q61K)及びNCI-H358(KRAS
G12C)を含むいくつかのKRAS変異モデルにおいて腫瘍退縮をもたらした。まとめ
ると、良好な耐容性を示す用量の式(I)の化合物又は式(II)の化合物について観察
されるインビトロ及びインビボのMAPK経路抑制及び抗増殖活性は、式(I)の化合物
又は式(II)の化合物が、MAPK経路における活性化損傷を内在する腫瘍を有する患
者において抗腫瘍活性を有する可能性があることを示唆する。さらに、式(I)の化合物
及び式(II)の化合物は、キナーゼポケットを不活性な立体構造に保ち、それによって
多くのB-Raf阻害剤で見られる逆説的活性化を低下させ、変異Ras誘導性のシグナ
ル伝達及び細胞増殖を阻止する、B-RafとC-Rafとの両方の2型のATP競合性
阻害剤である。式(I)の化合物及び式(II)の化合物は、多数のMAPK誘導性のヒ
ト癌細胞株において、またKRAS、NRAS及びBRAF癌遺伝子におけるヒト損傷を
内在するモデル腫瘍を代表する異種移植腫瘍において効力を呈した。
【0040】
本発明の医薬的組み合わせは、MEK阻害剤をさらに含む。用語「MEK阻害剤」は、
本明細書では、MAP/ERKキナーゼ1及び2(MEK1/2)の少なくとも1つの活
性を標的にするか、低下させるか又は阻害する化合物を指すように定義される。
【0041】
本発明の組み合わせにおける使用に適したMEK阻害剤には、限定されないが、
a)トラメチニブ(N-(3-{3-シクロプロピル-5-[(2-フルオロ-4-ヨー
ドフェニル)アミノ]-6,8-ジメチル-2,4,7-トリオキソ-3,4,6,7-
テトラヒドロピリド[4,3-d]ピリミジン-1(2H)-イル}フェニル)アセトア
ミド)(JPT-74057若しくはGSK1120212とも呼ばれる)又はその薬学
的に許容し得る塩若しくは溶媒和物。トラメチニブは、その全体が参照により本明細書に
組み込まれる国際公開第2005/121142号パンフレット内の実施例4-1に開示
されている。単剤療法として、トラメチニブは、B-Raf V600E又はV600K
変異を有する切除不能又は転移性の悪性黒色腫の治療のために承認されており、また、こ
の化合物は、Novartis AGから商品名Mekinist(登録商標)で市販品
として入手可能である。
b)PD0325901(Pfizer)(国際公開第02/06213号パンフレット
に開示されている);PD184352(Pfizer);レファメチニブ(RDEA1
19若しくはBay 86-9766とも呼ばれる);コビメチニブ(XL518とも呼
ばれ、Rocheから商品名Cotellic(登録商標)で市販品として入手可能であ
る);AS-701255(Merck Serono);AS-701173(Mer
ck Serono);ピマセルチブ(Pimasertib)(AS-703026若
しくはMSC1936369Bとも呼ばれる)(Merck Serono);RDEA
436(Ardea Biosciences);RO4987655(RG7167と
も呼ばれる)(Roche)及び/又はRG7420(GDC-0623とも呼ばれる)
(Roche)又はその薬学的に許容し得る塩
が含まれる。
【0042】
好ましくは、MEK阻害剤は、トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶
媒和物である。いくつかの好ましい実施形態では、トラメチニブは、ジメチルスルホキシ
ド溶媒和物の形態である。いくつかの実施形態では、トラメチニブは、ナトリウム塩の形
態である。適切には、トラメチニブは、水和物、酢酸、エタノール、ニトロメタン、クロ
ロベンゼン、1-ペンタンコール(pentancol)、イソプロピルアルコール、エ
チレングリコール及び3-メチル-1-ブタノールから選択される溶媒和物の形態である
。これらの溶媒和物及び塩の形態は、国際公開第2005/121142号パンフレット
における説明から当業者によって調製され得る。
【0043】
本発明は、特に増殖性疾患の治療における同時、個別又は連続使用のための、(a)(
i)本明細書で定義される通りの式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、
及び(ii)本明細書で定義される通りの式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容
し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤と、(b)MEK阻害剤とを含む医薬的
組み合わせにさらに関する。
【0044】
選択された用語は、以下において且つ本出願全体を通して定義される。本発明の化合物
は、標準の命名法を使用して記載する。そうでないと定義されない限り、本明細書で使用
されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理
解されるのと同じ意味を有する。そうでないと指定されない限り、本明細書では、以下の
一般的な定義を適用するものとする。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「本発明の組み合わせ」は、(a)(i)本明細書で定
義される通りの式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明
細書で定義される通りの式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩からなる
群から選択されるRaf阻害剤と、(b)MEK阻害剤、特にトラメチニブ又はその薬学
的に許容し得る塩若しくは溶媒和物から構成される組み合わせ投与を指す。Raf阻害剤
、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、好ましくはトラメ
チニブ、又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物、又はRaf阻害剤、式(II
)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、好ましくはトラメチニブ又
はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物とは、両方の化合物を含む単位医薬組成物
中での同時の投与により、本発明に従って組み合わせて用いることができる。或いは、こ
の組み合わせは、それぞれがRaf阻害剤及びMEK阻害剤の一方を含む別の医薬組成物
中において、連続的な方式で(ここで、例えば、Raf阻害剤又はMEK阻害剤が最初に
、他方が2番目に投与される)別々に投与することができる。こうした連続投与は、時間
が接近している(例えば、同時)か又は離れていることができる。
【0046】
本明細書で使用する場合、本発明を説明する文脈における用語「1つの(a)」及び「
1つの(an)」並びに「その(the)」及び同様の言及は、本明細書内でそうでない
と示されるか又は文脈によって明確に否定されるのではない限り、単数と複数との両方を
包含すると解釈されるべきである。化合物、塩などについて、複数形が使用される場合、
これは、単一の化合物、塩なども意味すると解釈される。
【0047】
用語「又は」は、本明細書では、文脈によってそうでないと明確に指示されない限り、
用語「及び/又は」を意味するために使用され、また用語「及び/又は」と互換的に使用
される。
【0048】
「約」及び「およそ」は、概して、測定の性質又は精度を考慮した、測定された量につ
いての許容し得る程度の誤差を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、所与の値又
は値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以
内である。本明細書での投薬量を「約」指定された量として記載する場合、実際の投薬量
は、記述した量から最大10%変動する可能性があり、「約」のこの使用法から、所与の
剤形内の厳密な量が、投与された化合物のインビボの効果に実質的に影響を与えずに、様
々な理由で、意図される量とわずかに異なる可能性があることが理解される。
【0049】
本明細書での投薬量を指定された量として、すなわち用語「約」を伴わずに記載する場
合、実際の投薬量は、記述した量から最大10%(好ましくは最大5%)変動する可能性
があり、この使用法から、所与の剤形内の厳密な量が、投与された化合物のインビボの効
果に実質的に影響を与えずに、様々な理由で、意図される量とわずかに異なる可能性があ
ることが理解される。
【0050】
用語「含むこと」及び「含まれること」は、本明細書では、そうでないと記述されない
限り、そのオープンエンド及び非限定的な意味で使用される。
【0051】
「組み合わせ」又は「と組み合わせた」は、治療法又は治療薬が物理的に混合されなけ
ればならないか、又は同時に投与され且つ/又は一緒に送達されるために製剤化されなけ
ればならないことを意味するものではないが、これらの送達の方法は、本明細書に記載し
た範囲の範囲内である。これらの組み合わせにおける治療薬は、1つ又は複数の他の追加
の治療法又は治療薬と並行して、又はこれの前又はこれの後に投与することができる。治
療薬は、あらゆる順序で投与することができる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決
定された用量及び/又はタイムスケジュールで投与されることとなる。この組み合わせに
おいて利用される追加の治療薬を単一の組成物中で一緒に投与し得るか、又は異なる組成
物中で別々に投与し得ることがさらに理解されるであろう。一般に、組み合わせて利用さ
れる追加の治療薬は、これらが個々に利用されるレベルを超えないレベルで利用されるこ
とが予想される。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、単剤治療
法として利用されるレベルよりも低いであろう。
【0052】
本発明の組み合わせは、治療的若しくは防御的機能又はその両方を有する。例えば、こ
れらの分子は、本明細書に記載した通りの癌などの様々な障害を治療及び/又は予防する
ためにヒト対象に投与することができる。
【0053】
本明細書で使用する場合の用語「組み合わせ」、「治療的組み合わせ」又は「医薬的組
み合わせ」は、1つの投薬単位形態での固定された組み合わせ、又は固定されていない組
み合わせ、又は組み合わせ投与のための要素一式を指し、ここで、2種以上の治療薬は、
一緒に、同時に独立して又は時間間隔内に(特にこれらの時間間隔により、組み合わせの
相手が共同的な、例えば相乗的な効果を示すことが可能になる場合に)別々に投与される
可能性がある。
【0054】
用語「組み合わせ療法」は、本開示に記載した治療的状態又は障害を治療するための2
種以上の治療薬の投与を指す。こうした投与は、各活性成分について、実質的に同時の方
式、例えば固定された比率の活性成分を有する単一の製剤での又は別の製剤(例えば、カ
プセル及び/又は静脈内製剤)でのこれらの治療薬の同時投与を包含する。さらに、こう
した投与は、ほぼ同時の又は異なる時点での、連続又は個別方式でのそれぞれの種類の治
療薬の使用も包含する。活性成分が単一の製剤として投与されるか又は別の製剤で投与さ
れるかにかかわらず、薬物は、同じクールの治療法一部として同じ患者に投与される。い
ずれの場合でも、その治療レジメンは、本明細書に記載した状態又は障害を治療すること
における有益な効果を提供することとなる。
【0055】
同時の治療的使用は、本発明の意味の範囲内では、同じ経路による且つ同じ時点又は実
質的に同じ時点での少なくとも2種の活性成分の投与を意味する。
【0056】
個別使用は、本発明の意味の範囲内では、特に異なる経路による同じ時点又は実質的に
同じ時点での少なくとも2種の活性成分の投与を意味する。
【0057】
連続的な治療的使用は、投与経路が同じ又は異なる、異なる時点での少なくとも2種の
活性成分の投与を意味する。より具体的には、投与方法は、活性成分の1種の投与全体が
、他のものの投与が開始する前に行われる方法を意味する。
【0058】
本明細書で使用する場合の用語「固定された組み合わせ」、「固定された用量」及び「
単一の製剤」は、癌の治療のために共同で治療的に有効である量の両方の治療薬を患者に
送達するために製剤化される単一の担体又はビヒクル又は剤形を指す。単一のビヒクルは
、ある量のそれぞれの薬剤を任意の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤と共に送達するよ
うに設計される。いくつかの実施形態では、ビヒクルは、錠剤、カプセル、丸剤又はパッ
チである。他の実施形態では、ビヒクルは、溶液又は懸濁液である。
【0059】
用語「固定されていない組み合わせ」又は「要素一式」は、本発明の組み合わせの治療
薬が両方とも別の実体として、同時に、並行して又は特定の時間制限を伴わずに連続して
患者に投与される(ここで、こうした投与は、それを必要とする対象の体内において、治
療的に有効なレベルの2種の化合物を提供する)ことを意味する。後者は、カクテル療法
、例えば3種以上の活性成分の投与にも適用する。
【0060】
本明細書で使用する場合の用語「薬学的に許容し得る」は、妥当なベネフィット/リス
ク比に相応する、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴
わない、対象、例えば哺乳類又はヒトの組織との接触に適した、適切な医学的判断の範囲
内である化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容し得る賦形剤」又は「薬学的に許容し得
る担体」には、当業者に公知であろうあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤
、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤
、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着香料、染料など、及
びその組み合わせが含まれる。いずれかの従来の担体は、活性成分と適合しない場合を除
いて、治療法又は医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0062】
用語「医薬組成物」は、本明細書では、対象に影響を与える特定の疾患又は状態を治療
するために対象、例えば哺乳類又はヒトに投与されることとなる少なくとも1種の治療薬
を含有する混合物又は溶液を指すと定義される。本発明の医薬的組み合わせは、糖衣錠、
錠剤、カプセル、又は座剤、又はアンプルなど、経腸又は非経口投与に適した医薬組成物
に製剤化することができる。そうでないと示されなければ、これらは、それ自体が公知で
ある方式において、例えば当業者に容易に明らかな種々の従来の混合、粉砕、直接圧縮、
造粒、糖衣がけ、溶解、凍結乾燥プロセス又は製造技術によって調製される。複数の投薬
単位の投与により、必要な有効量に到達する可能性があるため、個々の用量の各剤形中に
含有される組み合わせパートナーの単位含有量は、それ自体で有効量をなす必要がないこ
とが理解されるであろう。医薬組成物は、約0.1%~約99.9%、好ましくは約1%
~約60%の治療薬を含有することができる。当業者は、通常の実験法により、あらゆる
過度の負担を伴わずに、剤形の特定の所望される特性に関して1種又は複数の前述の担体
を選択することができる。使用される各担体の量は、当技術分野の通常の範囲内で変動し
得る。次の参考文献は、経口剤形を製剤化するために使用される技術及び賦形剤を開示し
ている:The Handbook of Pharmaceutical Excip
ients,4th edition,Rowe et al.,Eds.,Ameri
can Pharmaceuticals Association(2003);及び
Remington:the Science and Practice of Ph
armacy,20th edition,Gennaro, Ed.,Lippinc
ott Williams&Wilkins(2003)。これらの任意選択の追加の従
来の担体は、造粒前又は造粒中に1種又は複数の従来の担体を最初の混合物に組み込むこ
とにより、又は1種又は複数の従来の担体を、経口剤形中の薬剤の組み合わせ又は薬剤の
組み合わせの個々の薬剤を含む顆粒と組み合わせることにより、経口剤形に組み込むこと
ができる。後者の実施形態では、組み合わせられた混合物を、例えばV-混合器を通して
さらにブレンドし、続いて錠剤、例えばモノリシック錠剤に圧縮又は成型するか、カプセ
ルに封入するか又は小袋に充填することができる。
【0063】
医薬組成物は、単位用量あたりであらかじめ決められた量の活性成分を含有する単位用
量形態で提供することができる。ある種の実施形態では、単位用量は、各ビヒクルが、薬
学的に許容し得る担体及び賦形剤と共に有効量の治療薬の少なくとも1種を含むように1
種又は複数のビヒクルを含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、患者に同時に投与
される1種又は複数の錠剤、カプセル、丸剤、注射液、注入液、パッチなどである。当業
者に公知である通り、用量あたりの活性成分の量は、治療される状態、投与経路並びに患
者の年齢、体重及び状態に依存することとなる。好ましい単位投薬量組成物は、1日用量
若しくは副用量又はその適切な分数分の活性成分を含有するものである。さらに、こうし
た医薬組成物は、薬学の技術分野において周知である方法のいずれかによって調製するこ
とができる。
【0064】
本発明の医薬組成物は、「治療有効量」又は「有効量」の本発明の化合物を含むことが
できる。用語「薬学的に有効な量」、「治療有効量」又は「臨床的に有効な量」の治療薬
の組み合わせは、組み合わせで治療される障害の臨床的に観察可能な徴候及び症状の、ベ
ースラインに対する観察可能又は臨床的に有意な向上を提供するための、必要な投薬量及
び期間での十分な量である。治療有効量は、個人の病態、年齢、性別及び体重などの因子
によって変動し得る。治療有効量は、治療薬のあらゆる毒性又は有害な効果に対し、治療
的に有益な効果が上回る量でもある。「治療的に有効な投薬量」は、腫瘍成長速度又は疾
患進行などの測定可能なパラメータを所望の方式で調節することが好ましい。化合物が測
定可能なパラメータを調節する能力は、好適な投薬レベル及びスケジュールを確立するこ
とを促進するために、ヒト腫瘍における効力を予測する動物モデル系において評価するこ
とができる。或いは、組成物のこの特性は、当業者に公知のインビトロアッセイを使用す
ることにより、化合物が望ましくないパラメータを調節する能力を調べることによって評
価することができる。
【0065】
本明細書で使用する場合の用語「共同で治療的に活性な」又は「共同治療効果」は、治
療されることとなる対象、特にヒトが依然として(好ましくは相乗的な)相互作用(共同
治療効果)を示すような時間間隔で治療薬を共同で、別々に又は連続して与え得ることを
意味する。特に、これが該当するかどうかは、化合物の血中濃度を追跡することによって
決定することができ、少なくともある一定の時間間隔中、治療されるヒトの血液中にいず
れの化合物も存在することが示される。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」は、組織、系、動物、哺乳類、ヒト又は他の対
象における所望される効果を生じる物質を意味することが理解される。「薬剤」は、単一
の化合物又は2種以上の化合物の組み合わせ若しくは組成物であり得ることも理解される
べきである。
【0067】
用語「増殖性疾患」は、好ましくは、癌である。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「癌」は、異常な細胞の望ましくない制御されない成長
を特徴とする疾患を指す。癌細胞は、局所的に又は血流及びリンパ系を介して体の他の部
分に広がることができる。本明細書で使用する場合、用語「癌」又は「腫瘍」には、前悪
性の並びに悪性の癌及び腫瘍が含まれる。用語「癌」は、本明細書では、すべての固形及
び血液の悪性腫瘍を含む広範な腫瘍を意味するために使用される。
【0069】
「経口剤形」には、経口投与のために処方される又は経口投与を目的とする単位剤形が
含まれる。
【0070】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」、「治療」及び「治療すること」は、障害
、例えば増殖性障害の進行、重症度及び/又は期間の低減又は改善又は1つ又は複数の治
療の施与に起因する障害の1つ又は複数の症状、適切には1つ又は複数の認識可能な症状
の改善を指す。具体的実施形態では、用語「治療する」、「治療」及び「治療すること」
は、患者によって必ずしも認識可能でない、腫瘍の成長などの増殖性障害の少なくとも1
つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。他の実施形態では、用語「治療する」、
「治療」及び「治療すること」は、例えば、認識可能な症状の安定化による物理的な、又
は例えば物理的パラメータの安定化による生理学的な、又はその両方による増殖性障害の
進行の阻害を指す。他の実施形態では、用語「治療する」、「治療」及び「治療すること
」は、腫瘍サイズ又は癌細胞数の低減又は安定化を指す。
【0071】
本開示の意味の範囲内では、用語「治療する」は、疾患を阻止し、開始(すなわち疾患
の臨床的顕在化までの期間)を遅らせ、且つ/又は疾患を発症又は悪化させるリスクを低
下させることも表す。用語「防御する」は、本明細書では、対象、例えば哺乳類又はヒト
における疾患の発症、存続又は増悪を予防するか、遅らせるか若しくは治療するか又は必
要に応じてこれらすべてを意味するために使用される。
【0072】
本明細書で使用する場合の用語「対象」又は「患者」には、癌又はあらゆる障害(直接
的又は間接的に癌に関与する)を患っているか又は悩まされている可能性がある動物が含
まれることが意図される。対象の例としては、哺乳類、例えばヒト、類人猿、サル、イヌ
、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット及びトランスジェニ
ック非ヒト動物が挙げられる。好ましい実施形態では、対象は、ヒト、例えば癌などの増
殖性疾患を患っているか、患うリスクがあるか又は潜在的に患う可能性があるヒトである
【0073】
用語「阻害」、「阻害剤」又は「アンタゴニスト」には、ある種のパラメータ、例えば
所与の分子又は経路の活性の低下が含まれる。例えば、標的にされるキナーゼ(Raf又
はMEK)の活性の5%、10%、20%、30%、40%又はそれ以上の阻害がこの用
語に含まれる。このように、阻害は、100%であり得るが、100%である必要はない
【0074】
本明細書で使用する場合、「塩」(「又はその複数の塩」又は「又はその塩」が意味す
るもの)は、単独で又は本発明の組み合わせの遊離の化合物(例えば、式(I)を有する
Raf阻害剤化合物、又は式(II)を有するRaf阻害剤化合物、又はMEK阻害剤、
好ましくはトラメチニブとの混合物で存在することができ、また好ましくは薬学的に許容
し得る塩である。こうした塩は、例えば、塩基性窒素原子を有する本発明の組み合わせの
化合物から、好ましくは有機又は無機酸との酸付加塩、特に薬学的に許容し得る塩として
形成される。用語「薬学的に許容し得る塩」は、化合物の生物学的有効性及び特性を保持
し、一般的には生物学的に又は他の点で望ましくないものではない塩を指す。化合物は、
アミノ基の存在のため、酸付加塩を形成することが可能である可能性がある。
【0075】
好適な塩のリストは、例えば、“Remington’s Pharmaceutic
al Sciences”,20th ed.,Mack Publishing Co
mpany,Easton,Pa.,(1985)において、また“Handbook
of Pharmaceutical Salts:Properties,Selec
tion,and Use”by Stahl and Wermuth(Wiley-
VCH,Weinheim,Germany,2002)において参照することができる
【0076】
単離又は精製目的では、薬学的に許容し難い塩、例えばピクリン酸塩又は過塩素酸塩を
使用することも可能である。治療的使用のため、薬学的に許容し得る塩又は遊離の化合物
のみが用いられ(医薬調製物の形態で適用可能な場合)、したがってこれらが好ましい。
遊離の形態の新規化合物と、その塩の形態の新規化合物(例えば、その新規化合物の精製
及び同定における中間体として使用することができる塩が含まれる)との間の密接な関係
を考慮すると、遊離の化合物へのあらゆる言及は、適宜、対応する塩への言及でもあるこ
とを理解するべきである。本発明の組み合わせにおいて使用される化合物の塩は、薬学的
に許容し得る塩であることが好ましく、好適な対イオンを形成する薬学的に許容し得る塩
が当分野で公知である。そうでないと指定されない限り又は本文によって明確に指示され
ない限り、本明細書で提供する医薬的組み合わせにおいて有用な治療薬への言及には、化
合物の遊離の塩基と、化合物のすべての薬学的に許容し得る塩との両方が含まれる。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「溶媒和物」は、溶質によって形成される可変の化学量
(本発明ではトラメチニブ)又はその塩と溶媒との複合体を指す。本発明の目的のこうし
た溶媒は、溶質の生物活性を妨げない可能性がある。好適な溶媒の例としては、限定され
ないが、水、メタノール、ジメチルスルホリド(dimethylsulforide)
、エタノール及び酢酸が挙げられる。好適な薬学的に許容し得る溶媒の例としては、限定
されないが、水、エタノール及び酢酸が挙げられる。
【0078】
本明細書で使用する場合の用語「相乗効果」は、それ自体で投与される各薬物の効果を
単純に足したものよりも大きい、例えば癌又はその症状の症候的進行を遅らせる効果をも
たらす、例えば式(I)を有するRaf阻害剤化合物又はその薬学的に許容し得る塩、M
EK阻害剤、好ましくはトラメチニブ若しくはその薬学的に許容し得る塩又は式(II)
を有するRaf阻害剤化合物又はその薬学的に許容し得る塩、及びMEK阻害剤、好まし
くはトラメチニブ若しくはその薬学的に許容し得る塩などの2種の薬剤の作用を指す。
【0079】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)(i)式(I)
【化5】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤化合物、
及び
(ii)式(II)
【化6】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)MEK阻害剤と
を含む。
【0080】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)Raf阻害剤、式(I)
【化7】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)MEK阻害剤と
を含む。
【0081】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)Raf阻害剤、式(II)
【化8】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)MEK阻害剤と
を含む。
【0082】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)Raf阻害剤、式(I)
【化9】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)トラメチニブ、PD0325901、PD184352、レファメチニブ、コビメ
チニブ、AS-701255、AS-701173、ピマセルチブ、RDEA436、R
O4987655、RG7167及びRG7420を含む群から選択されるMEK阻害剤
又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と
を含む。
【0083】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)Raf阻害剤、式(II)
【化10】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)トラメチニブ、PD0325901、PD184352、レファメチニブ、コビメ
チニブ、AS-701255、AS-701173、ピマセルチブ、RDEA436、R
O4987655、RG7167及びRG7420を含む群から選択されるMEK阻害剤
又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と
を含む。
【0084】
好ましい実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)Raf阻害剤、
(i)式(I)
【化11】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択される化合物、及び
(ii)式(II)
【化12】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)MEK阻害剤若しくはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和
物と
を含む。
【0085】
非常に好ましい実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)Raf阻害剤、式(I)
【化13】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)MEK阻害剤若しくはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和
物(例えば、ジメチルスルホキシド溶媒和物)
を含む。
【0086】
別の好ましい実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)Raf阻害剤、式(II)
【化14】

の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、
(b)MEK阻害剤若しくはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和
物と
を含む。
【0087】
本発明の組み合わせは、細胞株及びヒト異種移植モデル、Calu-6において、いず
れかの単剤療法と比較して腫瘍反応の深さ及び持続性の向上を示し(実施例参照)、した
がって増殖性疾患、特に癌の治療に有効である可能性がある。したがって、本発明は、固
形腫瘍、特に1つ又は複数のMAPK経路変化を内在する腫瘍、例えばBRAF変異、K
RAS変異及びNRAS変異癌を治療するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許
容し得る塩、及び式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択
されるRaf阻害剤を、MEK阻害剤、特にトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩
若しくは溶媒和物と組み合わせて使用する組成物及び方法を提供する。
【0088】
好ましくは、これらの治療薬は、組み合わせられた場合に有益な効果を提供する治療的
に有効な投薬量で投与される。本発明は、特に、増殖性疾患を治療するための、それを必
要とする対象への個別、同時又は連続投与に有用な本発明の組み合わせに関連する。換言
すると、本発明は、特に、増殖性疾患の治療で使用するための本発明の組み合わせに関連
する。
【0089】
増殖性疾患の性質は、多因子性である。ある種の状況では、作用の異なる機構を有する
治療薬を組み合わせることができる。しかし、異なる作用様式を有する治療薬の任意の組
み合わせのみを考えることが、好都合な効果を有する組み合わせを必ずしももたらすとは
限らない。
【0090】
本発明では、本発明の組み合わせの投与は、いずれかの単剤療法と比較して、例えば増
殖性疾患又はその症状の進行遅延又は阻害に関してより有益な効果、例えば相乗的又は向
上された抗増殖効果及び場合によりさらなる有益な効果、例えばより少ない副作用、例え
ば生活の質の向上又は例えば病的状態の減少をもたらすことが期待される。
【0091】
本発明の組み合わせの治療薬を、それを必要とする対象に別々に、同時に又は連続して
投与することができる。好ましくは、これらの治療薬は、組み合わせられた場合に有益な
効果を提供する治療的に有効な投薬量で投与される。したがって、本発明の一実施形態で
は、本発明の組み合わせは、増殖性疾患、特に癌の治療で使用するためのものである。
【0092】
一実施形態では、増殖性疾患は、癌である。用語「癌」は、本明細書では、すべての固
形及び血液の悪性腫瘍を含む広範な腫瘍を意味するために使用される。癌は、初期、中間
期又は末期であり得る。癌は、局所進行性又は転移性であり得る。
【0093】
本明細書に記載した組み合わせ療法によって治療されることとなる癌は、標準治療後に
おいて又は有効な標準の治療法が存在しない人について進行している可能性がある。
【0094】
本明細書に記載した組み合わせによって治療されることとなる癌は、ベムラフェニブ、
ダブラフェニブなどのBRAF阻害剤及び/又はコビメチニブ及びトラメチニブなどのM
EK阻害剤での治療にもはや応答していない可能性がある。例えば、癌は、メラノーマ、
例えばダブラフェニブとトラメチニブとの組み合わせでの治療に対して抵抗性であるか、
又はコビメチンブとベムラフェニブとの組み合わせでの治療に対して抵抗性であるBRA
FV600変異(BRAFV600E変異が含まれる)メラノーマであり得る。本明細書
に記載した組み合わせによって治療されることとなるNSCLC、例えばBRAFV60
0変異(BRAFV600E変異が含まれる)NSCLCは、ダブラフェニブなどのBR
AF阻害剤とトラメチニブなどのMEK阻害剤との組み合わせでの治療に対して抵抗性で
あり得る。
【0095】
一実施形態では、癌は、メラノーマ、非小細胞肺癌(NSCLC)、MUTYH関連ポ
リポーシス(MAP)を含む大腸癌(CRC)、膵管腺癌(PADC)、子宮頸癌及び卵
巣癌を含む群から選択される。
【0096】
一実施形態では、増殖性疾患は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0097】
一実施形態では、増殖性疾患は、メラノーマである。
【0098】
一実施形態では、増殖性疾患は、MUTYH関連ポリポーシス(MAP)を含む大腸癌
(CRC)である。
【0099】
一実施形態では、増殖性疾患は、膵管腺癌(PADC)である。
【0100】
一実施形態では、増殖性疾患は、子宮頸癌である。
【0101】
一実施形態では、増殖性疾患は、卵巣癌である。
【0102】
本発明の組み合わせは、特に、KRAS変異腫瘍及びNRAS変異腫瘍などの1つ又は
複数のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路変化を内在する癌並びに
特に本明細書に記載した通りのRasの少なくとも1つの機能獲得型変異及び/又は本明
細書に記載した通りのRafの少なくとも1つの機能獲得型変異を発現する腫瘍などの増
殖性疾患の治療に有用である。
【0103】
含まれるのは、典型的であるか又は典型的でないか、すなわちBRAFV600E変異
NSCLCであるか又はBRAF 非V600E変異NSCLCであるかにかかわらず、
V600D、V600E、V600Kなどを含むBRAF変異を有する癌又は腫瘍、例え
ば少なくとも1つのV600E又は他のBRAF変異を有するNSCLCである。大抵の
BRAF変異は、2つの領域:NローブのグリシンリッチPループ並びに活性化セグメン
ト及び隣接領域にクラスター化される。V600E変異は、様々な癌において検出されて
おり、ヌクレオチド1799位でのチミンのアデニンでの置換が原因である。これは、コ
ドン600でグルタミン酸(E)によって置換されているバリン(V)(現在、V600
Eと呼ばれる)をもたらす。BRAF変異メラノーマには、BRAFV600E変異及び
BRAFV600D変異メラノーマが含まれる。
【0104】
含まれるのは、KRAS変異癌又は腫瘍である。用語「KRAS変異」腫瘍又は癌には
、変異したKRASタンパク質、特に機能獲得型KRAS変異;特にあらゆるG12X、
G13X、Q61X又はA146X KRAS変異(ここで、Xは、その位置に天然に存
在するアミノ酸以外のいずれかのアミノ酸である)を呈するあらゆる腫瘍が含まれる。例
えば、G12V変異は、グリシンがコドン12においてバリンで置換されることを意味す
る。腫瘍におけるKRAS変異の例としては、Q61H、Q61K、G12V、G12C
、G12D、G12R、G12S、G13D及びA146Tが挙げられる。したがって、
KRAS変異NSCLCには、G12X、G13X、Q61X又はA146Xに対応する
少なくとも1つのKRAS変異、特にQ61K、G12V、G12C及びA146T N
SCLCから選択される少なくとも1つのKRAS変異を有する腫瘍が含まれる。癌は、
初期、中間期又は末期であり得る。
【0105】
KRAS変異癌には、KRAS G12D変異卵巣癌;KRAS G12V変異又はG
13D変異大腸癌;KRAS Q61H変異、KRAS Q61K変異、KRAS G1
2C変異、KRAS G12S変異又はKRAS G12V変異NSCLC;KRAS
G12D変異、G12V変異又はKRAS G12R変異膵癌が含まれる。
【0106】
含まれるのは、NRAS変異癌又は腫瘍である。用語「NRAS変異」腫瘍又は癌には
、変異したNRASタンパク質、特に機能獲得型NRAS変異を呈するあらゆる腫瘍;特
にあらゆるG13R、Q61K、Q61L、Q61R、NRAS変異腫瘍が含まれる。し
たがって、NRAS変異メラノーマには、Q61K、Q61L又はQ61Rに対応する少
なくとも1つのNRAS変異を有するメラノーマが含まれる。癌は、NRAS QG13
R変異メラノーマであり得る。癌は、初期、中間期又は末期であり得る。癌は、局所進行
性又は転移性であり得る。
【0107】
本発明の一実施形態では、癌は、B-Rafの1つ又は複数の変異によって特徴付けら
れる。
【0108】
別の実施形態では、癌は、標準治療に対して耐性又は抵抗性である。
【0109】
別の実施形態では、癌は、B-Raf阻害剤、例えばダブラフェニブでの治療に対して
耐性又は抵抗性である。
【0110】
別の実施形態では、癌は、MEK阻害剤、例えばトラメチニブでの治療に対して耐性又
は抵抗性である。
【0111】
別の実施形態では、癌は、B-Raf阻害剤、例えばダブラフェニブ及びMEK阻害剤
、例えばトラメチニブでの治療に対して耐性又は抵抗性である。
【0112】
一実施形態では、癌は、BRAF及びKRASタンパク質を含む群から選択される少な
くとも1つの変異によって特徴付けられる。
【0113】
一実施形態では、癌は、BRAF、NRAS、KRAS変異及びその組み合わせからな
る群から選択される変異によって特徴付けられる。
【0114】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、増殖性疾患、特に癌を治療するための方法に
関する。
【0115】
本発明の組み合わせは、KRAS変異NSCLC、KRAS変異膵癌、KRAS変異大
腸癌又はNRAS変異メラノーマを治療するのに特に有用である可能性がある。好ましい
実施形態では、治療されることとなる増殖性疾患又は癌は、KRAS変異NSCLCであ
る。別の好ましい実施形態では、治療されることとなる増殖性疾患又は癌は、NRAS変
異メラノーマである。
【0116】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、癌の治療を、それを必要とする対象にお
いて行うための方法であって、(a)(i)本明細書で定義される通りの式(I)の化合
物若しくはその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通りの式(I
I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤
と、(b)MEK阻害剤とを含む、治療有効量の本発明の医薬的組み合わせを投与するこ
とを含む方法である。好ましい実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ又はその薬
学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物である。
【0117】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、癌の治療を、それを必要とする対象にお
いて行うための方法であって、(a)(i)本明細書で定義される通りの式(I)の化合
物若しくはその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通りの式(I
I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤
と、(b)MEK阻害剤とを含む、前記増殖性疾患に対して共同で治療的に有効である量
の本発明の組み合わせを、それを必要とする対象に同時に、別々に又は連続して投与する
ことを含む方法である。好ましい実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ又はその
薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物である。
【0118】
さらなる実施形態では、本発明は、特に、1つ又は複数のマイトジェン活性化プロテイ
ンキナーゼ(MAPK)経路変化を内在する癌を治療する方法に関連する。一実施形態で
は、本発明は、BRAS、NRAS及びKRASタンパク質を含む群から選択される少な
くとも1つの変異によって特徴付けられる癌を治療する方法に関連する。一実施形態では
、本発明は、増殖性疾患、特に癌の治療のための医薬品の調製のための本発明の組み合わ
せの使用に関する。一実施形態では、本発明の組み合わせは、癌の治療のための医薬品の
調製に使用するためのものである。
【0119】
さらなる実施形態では、本発明は、MAPK経路における機能獲得型変異によって特徴
付けられる癌の治療のための医薬品の調製のための本発明の組み合わせの使用に関する。
【0120】
一実施形態では、本明細書で提供される組み合わせ又は組成物又はその両方は、相乗効
果を呈する。
【0121】
したがって、一態様では、本発明は、抗癌化物を別の抗癌化合物と組み合わせて使用す
ることにより、抗癌化合物の効力を高める方法、特に(i)本明細書で定義される通りの
式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義され
る通りの式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択され
るRaf阻害剤を、MEK阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩
若しくは溶媒和物と共に使用して、同様の用量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に
許容し得る塩、又は化合物(II)若しくはその薬学的に許容し得る塩、又はMEK阻害
剤を単剤(単剤療法)として投与することでは安全に達成することができない、高められ
た効力を提供する方法を提供することができる。
【0122】
さらなる利益は、本発明の組み合わせの、より低い用量の治療薬を使用することができ
(例えば、その結果、多くの場合に投薬量をより少なくすることができるだけでなく、適
用の頻度を低くすることができ)、又は組み合わせパートナー単独の1つで認められる副
作用の発生率を減じるために使用し得ることである可能性がある。これは、治療されるこ
ととなる患者の願望及び要求と一致する。
【0123】
いくつかの実施形態では、(i)本明細書で定義される通りの式(I)の化合物若しく
はその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)本明細書で定義される通りの式(II)の化
合物若しくはその薬学的に許容し得る塩又はその薬学的に許容し得る塩からなる群から選
択されるRaf阻害剤化合物及び/又はMEK阻害剤、好ましくはトラメチニブ又はその
薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物を、治療用量で又は単剤投与レベルよりも低い治
療用量で投与することができる。ある種の実施形態では、阻害、例えば成長阻害又は腫瘍
収縮を達成するために必要とされるある治療薬の濃度又は投薬量は、各治療薬が個々に投
与される場合よりも、第1の治療薬と組み合わせて他の治療薬が使用又は投与される場合
により低い。ある種の実施形態では、組み合わせ療法において、阻害、例えば成長阻害を
達成するために必要とされるある治療薬の濃度又は投薬量は、単剤療法としての治療用量
よりも低く、例えば10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~
60%、60~70%、70~80%又は80~90%低い。
【0124】
1種又は複数の構成成分間の相乗的相互作用を決定することにおいて、効果に対する最
適な範囲及び効果に対する各構成成分の絶対的な用量範囲を、治療を必要とする患者への
異なるw/w比率範囲及び用量にわたる構成成分の投与により、確実に測定することがで
きる。ヒトについて、患者に対する臨床試験を実施することの複雑性及び費用により、相
乗作用についての一次モデルとしてのこの形態の試験の使用が実現不可能になる可能性が
ある。しかし、ある種の実験における相乗作用の観察(例えば、実施例2及び実施例6を
参照されたい)は、他の種における効果を予測するものであり得、存在する動物モデルを
使用して相乗効果をさらに定量化することができる。ある種における相乗作用の観察は、
他の種における効果を予測するものであり得、本明細書に記載した通りに動物モデルを使
用して相乗効果を測定することができ、こうした研究の結果をまた、薬物動態/薬力学的
(PK/PD)方法の適用により、他の種において必要とされる有効な用量比率範囲及び
絶対的な用量及び血漿中濃度を予測するために使用することができる。腫瘍モデルと、ヒ
トにおいて見られる効果との間の確立された相関は、動物における相乗作用を例えば異種
移植モデルによって又は適切な細胞株において実証し得ることを示唆する。本発明の組み
合わせが本明細書に記載した有益な効果をもたらすことは、確立された試験モデルによっ
て示すことができる。当業者は、こうした有益な効果を証明するために妥当な試験モデル
を選択することが十分に可能である。本発明の組み合わせの薬理活性は、例えば、本質的
に本明細書に記載した通りの臨床試験において又はインビボ又はインビトロの試験手順に
おいて実証することができる。
【0125】
組み合わせの投与には、あらゆる好適な経路による単一の製剤又は単位剤形での組み合
わせの投与、組み合わせの個々の薬剤の並行してではあるが、別々の投与又は組み合わせ
の個々の薬剤の連続した投与が含まれる。本発明の組み合わせの個々の組み合わせパート
ナーは、治療法のクール中の異なる時点で別々に、又は任意の順序で連続して、又は分割
された若しくは単一の組み合わせ形態で並行して、例えば同時に又は共同で治療有効量、
好ましくは相乗的に有効な量、例えば本明細書に記載した量に対応する毎日の若しくは断
続的な(すなわち毎日ではない)投薬量で投与することができる。
【0126】
本明細書に開示した方法、治療、組み合わせ及び組成物に使用するための、式(I)の
化合物又はその薬学的に許容し得る塩、及び式(II)の化合物又はその薬学的に許容し
得る塩は、BRAF及びCRAFの強力な阻害剤である。いくつかの実施形態では、式(
I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩又は式(II)の化合物又はその薬学的に許
容し得る塩は、経口的に投与される。一実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的
に許容し得る塩又は式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、約50~12
00mg(例えば、1日あたり)の用量で投与される。式(I)の化合物又はその薬学的
に許容し得る塩又は式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、約50mg、
約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350m
g、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約65
0mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約
950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg又は約
1200mgの単位投薬量で投与することができる。単位投薬量の式(I)の化合物若し
くはその薬学的に許容し得る塩、又は式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得
る塩は、1日1回、又は1日2回、又は1日3回、又は1日4回投与することができ、実
際の投薬量及び投与のタイミングは、患者の年齢、体重及び性別;治療されることとなる
癌の程度及び重症度;及び治療を行う医師の判断などの判断基準によって決定される。好
ましくは、単位投薬量の式(I)の化合物又は式(II)の化合物は、1日1回投与され
る。別の好ましい実施形態では、単位投薬量の式(I)の化合物又は式(II)の化合物
は、1日2回投与される。
【0127】
本発明による組み合わせの一部としてのMEK阻害剤は、治療有効量でそれを必要とす
る対象に投与されることとなる。
【0128】
好ましい実施形態では、それを必要とする対象における、本発明による組み合わせの一
部として投与される、MEK阻害剤トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは
溶媒和物は、1日あたり約0.125mgから約10mgから選択される量となり;適切
には、この量は、1日あたり約0.25mg~約9mgから選択されることとなり;適切
には、この量は、約0.25mg~約8mgから選択されることとなり;適切には、この
量は、1日あたり約0.5mg~約8mgから選択されることとなり;適切には、この量
は、1日あたり約0.5mg~約7mgから選択されることとなり;適切には、この量は
、1日あたり約1mg~約5mgから選択されることとなり;適切には、この量は、1日
あたり約1mg又は2mgとなる。好ましい実施形態では、トラメチニブ、トラメチニブ
又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物は、1日あたり0.5mg、1mg又は
2mgの1日用量で投与される。
【0129】
本明細書において用量又は投薬量が言及される場合、言及される量は、治療薬の量を指
す。例えば、2mg投薬量のトラメチニブが投与される場合、トラメチニブは、トラメチ
ニブジメチルスルホキシドを含有する錠剤で投与され、この錠剤は、2mgトラメチニブ
と均等なトラメチニブジメチルスルホキシドを含有することとなる。
【0130】
いくつかの実施形態では、トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和
物は、経口的に投与される。一実施形態では、トラメチニブは、経口送達を介する投与の
ために調製され、ジメチルスルホキシド中の溶媒和形態で使用することができる。いくつ
かの実施形態では、化合物は、経口投与のための錠剤形態で調製される。錠剤は、柔軟性
のある投与のための様々な投薬量で製造することができる。
【0131】
単位投薬量のトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物は、1日1
回、又は1日2回、又は1日3回、又は1日4回投与することができる。総1日用量のト
ラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物、例えばジメチルスルホキシ
ド溶媒和物は、1日1回又は1日2回投与することができる。
【0132】
例えば、組み合わせ療法の一部として、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る
塩を約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500
mg、約600mg又は約800mgの総1日用量で投与することができ、トラメチニブ
を例えばジメチルスルホキシド溶媒和物形態において約1.0又は2.0mgの総1日用
量で投与することができる。1日用量の式(1)の化合物を1日につき1回又は2回投与
することができる。したがって、約200mgの式(I)の化合物の1回投与を1日につ
き2回(総1日用量は約400mg)投与することができ、約1.0mg又は約2.0m
gのトラメチニブの1回投与を1日につき1回投与することができる。或いは、約200
mgの式(I)の化合物の1回投与を1日につき2回(総1日用量は約400mg)投与
することができ、約1.0mg又は約2.0mgのトラメチニブの1回投与を1日につき
2回投与することができる。
【0133】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、好ましくはトラメ
チニブ、又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物、又は式(II)の化合物若し
くはその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、好ましくはトラメチニブ又はその薬学
的に許容し得る塩若しくは溶媒和物とは、本明細書に開示した方法に従って一緒に使用す
ることができる。本発明の治療は、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、
4週又は4週より長い間、継続できることが企図されるため、これらの2種の化合物は、
治療を行う医師に適切であると判断される通りに、またさらに好適な投薬量及び投与頻度
を決定するための本明細書に記載した方法を使用して案内される通りに、意図される投薬
量及び投与頻度に応じて一緒に又は別々に投与することができる。投薬の頻度は、使用さ
れる化合物及び治療されることとなる特定の状態に応じて変動する可能性がある。一般に
、有効な治療法を提供するのに十分である最小の投薬量の使用が好ましく、患者の年齢、
体重及び性別;治療されることとなる癌の程度及び重症度;及び治療を行う医師の判断な
どの判断基準によって決定することができる。患者を、一般に、当業者が熟知しているで
あろう治療される状態に適したアッセイを使用して治療有効性について観察することがで
きる。
【0134】
本発明の組み合わせ(すなわち式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、M
EK阻害剤、適切にはトラメチニブ、又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物、
又は式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラ
メチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物との、毒性を伴わずに効力をも
たらす最適な比率、個々の及び組み合わせられる投薬量及び組み合わせパートナーの濃度
は、標的部位に対する治療薬の利用可能性の動態及び限定されないが、疾患の進行の程度
;個人の年齢、体重、全身的健康、性別及び食事;投与の時間及び経路;並びに個人が受
けている他の薬物療法を含む様々な因子に基づく。最適な投薬量は、当技術分野で周知で
ある通常の試験及び手順を使用して設定することができる。例えば、単一のボーラスを投
与するか、いくつかの分割用量を、時間をかけて投与するか、又は用量を、治療状況の緊
急性により、示された通りに比例的に低下若しくは増大させることができる。
【0135】
本発明の組み合わせの治療薬は、あらゆる適切な経路によって投与することができる。
好ましい経路は、例えば、組み合わせのレシピエントの状態及び治療されることとなる癌
によって変動し得ることが理解されるであろう。治療薬のそれぞれを同じ又は異なる経路
によって投与し得ること、また治療薬、例えば式(I)の化合物又はその薬学的に許容し
得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラメチニブ、又はその薬学的に許容し得る塩若しく
は溶媒和物、又は式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、
適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物とを医薬組成物中
で一緒に組み合わせ得ることも理解されるであろう。
【0136】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラメチ
ニブ、又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物、又は式(II)の化合物又はそ
の薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容
し得る塩若しくは溶媒和物とは、本明細書に開示した通りに一緒に使用することができる
。本発明の組み合わせの2種の治療薬は、一緒に(同時に)、連続して又は別々に投与す
ることができる。
【0137】
さらに、化合物が同じ剤形中で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば一方の化合
物を局所的に投与することができ、他方の化合物を経口的に投与することができる。適切
には、両方の治療薬は、経口的に投与される。
【0138】
したがって、一実施形態では、1つ又は複数の用量の式(I)の化合物若しくはその薬
学的に許容し得る塩、又は1つ又は複数の用量の式(II)の化合物若しくはその薬学的
に許容し得る塩は、1つ又は複数の用量のMEK阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその
薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と同時に、連続して又は別々に投与される。
【0139】
一実施形態では、反復用量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、又
は反復用量の式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩は、反復用量のME
K阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と同時
に、連続して又は別々に投与される。
【0140】
一実施形態では、反復用量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、又
は反復用量の式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩は、単一用量のME
K阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と同時
に、連続して又は別々に投与される。
【0141】
一実施形態では、単一用量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、又
は単一用量の式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩は、反復用量のME
K阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と同時
に、連続して又は別々に投与される。
【0142】
一実施形態では、単一用量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、又
は単一用量の式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩は、単一用量のME
K阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物と同時
に、連続して又は別々に投与される。
【0143】
上記のすべての実施形態では、式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩、
又は式(II)の化合物若しくはその薬学的に許容し得る塩を最初に投与するか、又はM
EK阻害剤、適切にはトラメチニブ若しくはその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物
を最初に投与することができる。
【0144】
(i)式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩、及び(ii)式(II)の化
合物又はその薬学的に許容し得る塩を含む群から選択されるRaf阻害剤及び/又はME
K阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物を、治
療法に使用するために未加工の化学物質として投与することも可能であるが、医薬組成物
としての活性成分を提供することも可能である。したがって、一実施形態では、本明細書
で提供されるのは、(a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩、及び式(I
I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩からなる群から選択されるRaf阻害剤化合
物と、(b)MEK阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しく
は溶媒和物とを含む医薬組成物である。一実施形態では、この医薬組成物は、1種又は複
数の薬学的に許容し得る希釈剤、賦形剤又は担体をさらに含む。担体、希釈剤又は賦形剤
は、医薬製剤を可能にする製剤の他の成分と適合性があり、且つそのレシピエントに対し
て有害でないという意味で許容し得るものでなければならない。利用される医薬組成物の
こうした要素は、別の医薬的組み合わせ中に提供するか、又は1つの医薬組成物に一緒に
製剤化することができる。本明細書で開示した組み合わせは、単一の組成物中で一緒に投
与するか、又は2種以上の異なる組成物、例えば記載した通りの組成物又は剤形中で別々
に投与することができ、構成成分は、同じ製剤として又は例えば上で示した通りに別の製
剤として単独で又は1種又は複数の薬学的に許容し得る担体と組み合わせて、あらゆる好
適な経路によって投与することができる。
【0145】
本明細書で使用する場合の投薬単位形態は、治療されることとなる対象に対する単位投
薬量として適合された物理的に不連続の単位を指し;各単位は、所望される治療効果をも
たらすように算出された、あらかじめ決定された量の活性な化合物(例えば、式(I)の
化合物又はその薬学的に許容し得る塩、式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る
塩又はMEK阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒
和物を、必要とされる薬剤用担体と共に含有する。単位剤形は、固定された組み合わせで
もあり得る。
【0146】
有効な投薬量の組み合わせパートナーのそれぞれは、組み合わせ内の他の治療薬と比較
して、治療薬の1つのより高頻度の投与を必要とする可能性がある。したがって、適切な
投薬を可能にするために、包装された医薬生成物は、化合物の組み合わせを含有する1種
又は複数の剤形及び本発明の組み合わせの治療薬の1つを含有するが、本発明の組み合わ
せの他の治療薬を含有しない1種又は複数の剤形を含有することができる。
【0147】
本発明の組み合わせ内で用いられる組み合わせパートナーが、単一の薬物として販売さ
れる形態で適用される場合、その投薬量及び投与の方式は、そうでないと言及されなけれ
ば、それぞれの販売される薬物の添付文書上に提供される情報に従うものであり得る。
【0148】
したがって、適切な投薬を可能にするために、包装された医薬生成物は、薬剤の組み合
わせを含有する1種又は複数の剤形及び組み合わせの治療薬の1つを含有するが、組み合
わせの他の治療薬を含有しない1種又は複数の剤形を含有することができる。
【0149】
また、本発明の範囲内であるのは、1種又は複数の他の要素を伴う、治療薬としての、
本明細書に記載した通りの同時、個別又は連続投与のための本発明の組み合わせ:使用の
ための説明書;本発明の組み合わせと共に使用するための他の試薬;投与のための化合物
を調製するための装置又は他の材料、例えば混合容器;薬学的に許容し得る担体;及び対
象への投与のための装置又は他の材料、例えば注射器を含む組み合わせキットである。
【0150】
本明細書で使用する場合の用語「組み合わせキット」又は「要素一式」は、本発明に従
って使用される医薬組成物又は組成物を意味する。両方の化合物が同時に投与される場合
、組み合わせキットは、錠剤などの単一の医薬組成物中又は別の医薬組成物中において、
式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラメチニ
ブ、又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物、又は式(II)の化合物又はその
薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し
得る塩若しくは溶媒和物とを含有することができる。式(I)の化合物又はその薬学的に
許容し得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラメチニブ、又はその薬学的に許容し得る塩
若しくは溶媒和物、又は式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻
害剤、適切にはトラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物が同時には
投与されない場合、組み合わせキットは、単一の包装品内の別の医薬組成物中又は別の包
装品内の別の医薬組成物中において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩、
式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、MEK阻害剤、適切にはトラメチ
ニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物とを含有することとなる。
【0151】
本発明の一実施形態では、要素一式は、次の構成成分を含む:(a)(i)式(I)の
化合物又はその薬学的に許容し得る塩(薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤及び/又は担
体と共に)、及び(ii)式(II)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩(薬学的に
許容し得る賦形剤、希釈剤及び/又は担体と共に)からなる群から選択されるRaf阻害
剤化合物;並びに(b)MEK阻害剤、好ましくはトラメチニブ又はその薬学的に許容し
得る塩若しくは溶媒和物(薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤又は担体と共に)。ここで
、これらの構成成分は、連続、個別及び/又は同時投与に適した形態で提供される。組み
合わせキットは、投薬及び投与の説明書などの説明書と共に提供することもできる。こう
した投薬及び投与の説明書は、例えば、薬物製品ラベルによる、医師に対して提供される
種類のものであり得るか、又は患者に対する説明書などの医師によって提供される種類の
ものであり得る。
【0152】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、また特許請求の範囲から明ら
かであろう。
【0153】
以下の実施例は、上記に記載した本発明を例示する。しかし、これらの実施例は、決し
て本発明の範囲を限定することを意図しない。本発明の医薬的組み合わせの有益な効果は
、それ自体が当業者に公知である他の試験モデルによって決定することもできる。
【実施例
【0154】
以下の実施例は、限定されないが、本発明の理解を促進するために記載し、決してその
範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0155】
実施例1:N-(3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-6-モルホリノピリジン-4
-イル)-4-メチルフェニル)-2-(トリフルオロメチル)イソニコチンアミド
式(I)の化合物は、次の構造のモルホリン置換ビアリール化合物である。
【化15】
【0156】
式(I)の化合物は、その内容が参照によって組み込まれる国際公開第2014/15
1616号パンフレット中の実施例1156である。
【0157】
実施例1A
式(I)の化合物は、b-Rafとc-Rafとの両方のII型の阻害剤である。
【0158】
【表1】
【0159】
実施例1B
式(I)の化合物は、次の表に示す通りの、MAPK経路における変異を発現する多数
のヒト癌細胞株に対する活性を呈する。活性は、BRAF又はRASにおける少なくとも
1つの変異を内在する細胞株に対して特に強力である。
【0160】
【表2】
【0161】
実施例1C
B-Raf及び/又はMEK阻害剤に対して抵抗性のB-Raf V600変異メラノ
ーマ細胞における式(I)の化合物の活性を調べるために、MEK1/2、NRASの変
異又はBRAFのスプライスバリアントを発現するB-Raf V600メラノーマ細胞
株A375由来の機構的モデルにおける式(I)の化合物の抗増殖活性を評価した。これ
らの変異は、B-Raf及び/又はMEK阻害剤耐性を与えることが前臨床研究と臨床試
料との両方で実証されている。親のA375細胞株及び様々な変異誘発遺伝子を発現する
その誘導体における、B-Raf阻害剤ベムラフェニブ及びMEK阻害剤セルメチニブの
効力と比較した式(I)の化合物の成長阻害効果を下にまとめて示す。これらの変異は、
50倍を超えるIC50値の増大をもたらす、B-RafとMEK阻害剤との両方に対す
る耐性を与えた。対照的に、耐性のモデルは、式(I)の化合物に対してやはり感受性で
あり、IC50は、わずか2~3倍の増大であった。これらのデータは、B-Raf及び
/又はMEK阻害剤に対して抵抗性となっているB-Raf V600メラノーマ患者に
おける式(I)の化合物の使用を裏付ける。
【0162】
【表3】
【0163】
実施例1D
式(I)の化合物を、経口投薬のために、当技術分野で周知の原理に従い、約50mg
の式(I)の化合物を含有する錠剤に製剤化した。所望の投薬量を提供するのに十分な数
の錠剤を絶食時の対象に1日1回投与した。対象を100mgの用量で1日につき1回又
は200mgの用量で1日につき1回治療した。薬物動態(PK)評価のための連続的血
液試料を式(I)の化合物の初回投与(第1サイクル第1日)の48時間後まで及び反復
投与(第1サイクル第15日)の24時間後まで収集した。暫定的な利用可能なデータは
、次の通りである。単一の100mg用量及び単一の200mg用量の投与後4時間以内
にそれぞれ447ng/ml及び889ng/mlの最大血漿中濃度(Cmax)が得ら
れた。投薬の第1日の24時間の投与間隔にわたる平均血漿中曝露(AUCtau)は、
式(I)の化合物の100mg及び200mg投与後、それぞれ5679hr.ng/m
l及び10019hr.ng/mlであった。半減期は、患者においておよそ23~24
時間であると算出される。100mgの1日1回の投薬は、1.8という蓄積の割合で血
漿中の式(I)の化合物のわずかな蓄積をもたらした。これらのデータに基づいて、1日
につき1回の投薬スケジュールを確立した。
【0164】
実施例2:KRAS変異NSCLCモデルにおける式(I)の化合物の抗腫瘍活性
細胞に基づくアッセイにおいて、式(I)の化合物は、MAPKシグナル伝達を活性化
する様々な変異を含有する細胞株における抗増殖活性を示した。例えば、式(I)の化合
物は、0.2~1.2μMの範囲のIC50値で非小細胞肺癌細胞株Calu-6(KR
AS Q61K)及び大腸細胞株HCT116(KRAS G13D)の増殖を阻害した
【0165】
式(I)の化合物の活性をいくつかの異種移植モデルにおいてインビボで試験した。図
1~4に示す通り、式(I)の化合物は、KRAS変異肺癌モデルにおける単剤活性を示
した。
【0166】
Calu6モデル(KRAS(Q61K)変異NSCLC):
腫瘍を有する雌のCalu6ヌードマウス(n=8/群)を、平均腫瘍体積が324m
m3であるときに治療群に無作為に分けた。異種移植片移植後第15日目に式(I)の化
合物での治療を開始した。動物には、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投
薬体積において、連続する13日間、15mg/kg 1日2回(bid)、30mg/
kg 1日1回(qd)、50mg/kg bid、100mg/kg bid、200
mg/kg qd又は300mg/kg 1日おき(q2d)で経口用量のビヒクル、式
(I)の化合物を投与した。腫瘍体積は、デジタルノギスを使用して、無作為化の時点で
、またその後、研究期間中に週2回収集した(図1)。わずかな体重減少が200mg/
kg qd(4%体重減少)及び300mg/kg q2d(9%体重減少)治療群にお
いて認められた。
【0167】
H358モデル(KRAS(G12C)変異NSCLC):
腫瘍を有する雌のSCIDベージュNCI-H358マウス(n=8/群)を、平均腫
瘍体積範囲が261mmであった腫瘍細胞接種の14日後に3つの群に無作為に分けた
【0168】
動物には、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、連続す
る14日間、30mg/kg又は200mg/kg(毎日)で経口用量のビヒクル、式(
I)の化合物を投与した。腫瘍体積は、デジタルノギスによって週3回測定し、治療のク
ールを通してすべての動物の体重を記録した(図2)。わずかな体重減少が30mg/k
g(4%体重減少)及び200mg/kg(6%体重減少)治療群において認められた。
【0169】
PTXモデルHLUX1156-KRAS(G12C)変異NSCLC:
雌のヌードマウス腫瘍を有する患者由来の第1の肺癌異種移植HLUX1156(n=
6/群)を、平均腫瘍体積範囲が262mm3である2つの群に無作為に分けた。異種移
植片移植後第38日目に治療を開始した。動物には、治療のクール中、10ml/kg(
動物体重)の投薬体積において、連続する14日間、100mg/kg(毎日)で経口用
量のビヒクル又は式(I)の化合物を投与した。腫瘍体積は、デジタルノギスによって週
2回測定し、治療のクールを通してすべての動物の体重を記録した(図3)。治療は、有
意な体重減少がないことによって判断される通り、良好な耐容性を示した。
【0170】
H727モデル-KRAS(G12V)変異NSCLC:
腫瘍を有するFoxn1雌のヌードマウスNCI-H727(n=8/群)を、平均腫
瘍体積範囲が275mm3である2つの群に無作為に分けた。異種移植片移植後第21日
目に治療を開始した。動物には、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体
積において、連続する14日間、100mg/kg(毎日)で経口用量のビヒクル又は式
(I)の化合物を投与した。腫瘍体積は、デジタルノギスによって週3回測定し、治療の
クールを通してすべての動物の体重を記録した(図4)。わずかな体重減少が100mg
/kg(4.5%体重減少)治療群において認められた。
【0171】
抗腫瘍活性は、ビヒクル治療した群における腫瘍体積に対する治療群における腫瘍体積
の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(%))を評価する
ことによって決定した。インビボで、式(I)の化合物での治療は、NSCLC由来のC
alu-6(KRAS Q61K)及びNCI-H358(KRAS G12C)を含む
いくつかのKRAS変異モデルにおいて腫瘍退縮をもたらした。すべての場合において、
抗腫瘍効果は、用量依存性であった。Calu-6モデルは、式(I)の化合物に対して
感受性であり、マウスにおいて50mg/kg及び100mg/kg 1日2回(BID
)、並びに100及び200mg/kg 1日1回(QD)、並びに300mg/kg
1日おきに1回(Q2D)の用量で腫瘍退縮が観察された。退縮は、200mg/kg
QD用量において第2のヒトNSCLCモデル、NCI-H358でも実現した。さらに
、Calu-6異種移植における用量分割効力研究からのデータは、QD投与される及び
1日2回(BID)分割される式(I)の化合物が、様々な投薬レベルにわたって同様の
レベルの抗腫瘍活性を示すことを実証した。これらの結果は、診療所におけるQD又はB
ID投与レジメンの審査を促進する。
【0172】
まとめると、良好な耐容性を示す用量の式(I)の化合物について観察されるインビト
ロ及びインビボのMAPK経路抑制及び抗増殖活性は、式(I)の化合物が、MAPK経
路における活性化損傷を内在する腫瘍を有する患者において抗腫瘍活性を有する可能性が
あり、したがって特に単剤として又はMAPK経路の別のステップに影響を与える阻害剤
などの第2の薬剤と組み合わせて、KRAS変異を内在するNSCLC患者の治療のため
に有用であり得ることを示唆する。式(I)の化合物は、卵巣癌、膵癌及びメラノーマを
含めた、MAPK経路、例えばRAS又はRAFにおける、機能獲得型変異を発現する様
々な他の癌に対する単剤としての活性を有することが示されている。
【0173】
実施例2:式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせの細胞成長に対する相乗効果
NRAS変異メラノーマ、KRAS変異NSCLC、KRAS変異PDAC及びKRA
S変異CRCにおける増殖及びシグナル伝達に対する、式(I)の化合物とMEK1/2
阻害剤トラメチニブとを組み合わせることの効果を次の通りに試験した。
【0174】
CellTiter-Glo(登録商標)(CTG)発光細胞生存アッセイキット(P
romega,Madison,WI,USA)は、細胞の溶解後にウェル内に存在する
ATPの量を測定する。溶解時に放出されるATPがルシフェラーゼ及びその基質ルシフ
ェリンを含む酵素反応において測定される。発せられる光の量は、ATPの量に比例し、
これは、さらにウェル内の生細胞の数に比例する。このアッセイを使用して、薬物処理後
の生存細胞の割合が決定される。
【0175】
NRAS変異メラノーマ細胞株及びKRAS変異NSCLC細胞株を適切な培地内に維
持した。
【0176】
【表4】
【0177】
NRAS変異メラノーマ系統について、0.002~10μMの範囲の式(I)の化合
物濃度と、1.52E-4~1μMの範囲のトラメチニブ濃度とを使用して、全グリッド
行列において組み合わせを評価した。KRAS変異NSCLC系統について、0.014
~10μMの範囲の式(I)の化合物濃度と、0.004~2.7μMの範囲のトラメチ
ニブ濃度とを使用して、全グリッド行列において又はチェッカー盤型の行列において組み
合わせを評価した。特定の細胞株において組み合わせが相乗的であるかどうかを、相乗作
用スコア(SS)と、50パーセント阻害(CI50)効果の大きさでの組み合わせ指数
(CI)とを使用して決定した(Lehar et al.,2009)。各細胞株につ
いてのこれらの値の概要を下の表に示す。
【0178】
【表5】
【0179】
この研究を、KRAS変異PDAC及びCRCモデルを使用して繰り返し、以下の結果
を得た。
【0180】
【表6】
【0181】
スコア/値の解釈のための一般的ガイドラインを下の表に提供する。
【0182】
【表7】
【0183】
上記の表から示される通り、式(I)の化合物とトラメチニブとは、KRAS及びNR
AS変異細胞株における細胞成長に対する相乗効果を有する。式(I)の化合物とトラメ
チニブとを組み合わせることは、1つを除くすべての試験された細胞株において中程度乃
至強度に相乗的であった。非相乗作用/相加的が認められた1つのNSCLC細胞株、N
CI-H2030では、式(I)の化合物又はトラメチニブのいずれか一方に対する単剤
反応が観察されないことは、このモデルがMAPK依存性ではないという事実に起因する
可能性が非常に高い。
【0184】
式(I)の化合物とトラメチニブとを組み合わせることは、試験されたすべてのNRA
S変異メラノーマ細胞、KRAS変異PDAC、KRAS変異CRC系統において中程度
乃至強度に相乗的であった。式(I)の化合物とトラメチニブとを組み合わせることは、
試験された15種のKRAS変異NSCLC細胞株の14種において中程度乃至強度に相
乗的であった。
【0185】
試験されたKRAS変異NSCLC系統のうちで最も強力な相乗作用を示したNCI-
H2122の例では、Loewe超過グリッドは、Loewe用量相加的モデルと、低用
量の式(I)の化合物及びトラメチニブ(0.041~0.37μM 式(I)の化合物
及び0.11μM トラメチニブ)で観察される値との間の>40%の差を呈する。実際
、単剤の式(I)の化合物は、これらの低用量では、1μM用量未満の最大阻害値<30
%でほとんど又はまったく活性を有しないが、同じ式(I)の化合物の用量でのトラメチ
ニブとの組み合わせは、有意な相乗作用(>40%のLoewe超過)を有する。
【0186】
試験されたすべてのNRASメラノーマ細胞株のうちで最も強力な相乗作用を有してい
たSK-MEL-2では、いずれも低用量のトラメチニブと式(I))の化合物(0.0
02~0.371μM 式(I)の化合物と0.000152~0.001μMのトラメ
チニブ)で有意な相乗作用が存在する。2つの最も低い用量のトラメチニブ(0.000
152~0.000457μMのトラメチニブ)では、0.014~0.124μMの範
囲の式(I)の化合物用量との強力な相乗作用が存在し、単剤活性がほとんど又は全く認
められない濃度での抗増殖効果がもたらされる。
【0187】
式(I)の化合物とトラメチニブとは、KRAS及びNRAS変異細胞株における薬力学
的バイオマーカーを阻害する
式(I)の化合物とトラメチニブとを組み合わせることの相乗的抗増殖効果の原因とな
る機構を探るために、この組み合わせのMAPKシグナル伝達に対する効果を、ウエスタ
ンブロット分析を介して調べた。細胞を単剤及び式(I)の化合物(300nM)とトラ
メチニブ(3nM)との組み合わせ投与で、4又は24時間処理した。組み合わせ投与に
対するさらなる比較として、細胞をまた10倍高い単剤用量の式(I)の化合物及びトラ
メチニブについてそれぞれ3000nM及び30nMで処理した。
【0188】
試験されたNRAS変異メラノーマ(IPC-298及びMM415)細胞株とKRA
S変異NSCLC(NCI-H23及びNCI-H358)細胞株との両方において、式
(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせでの細胞の処理は、組み合わせにおけるp
MEK1/2及びpERK1/2レベルのいずれかの単剤処理よりも強力な抑制によって
判断される通り、経路を抑制する点でいずれかの単剤単独よりも優れていた。さらに、低
用量の組み合わせによってもたらされる抑制は、10倍高いレベルの式(I)の化合物で
得ることができるものよりも優れており、より高いトラメチニブレベルで観察されるのと
、やや低いが同様の頑強性であった。このように、式(I)の化合物とトラメチニブとの
組み合わせ治療は、MAPKシグナル伝達の高度に相乗的な抑制をもたらした。
【0189】
実施例3:式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせのインビボ抗腫瘍活性。
下に記載する通り、式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせ治療は、ヒトKR
AS変異NSCLC、CRC、PDAC及びNRAS変異メラノーマ異種移植モデルにお
いて、いずれかの単剤と比較して腫瘍反応の深さ及び持続性の向上をもたらすことが判明
した。したがって、式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせ活性は、その癌が、
活性化されたMAPK経路を内在する患者において、より大きくより持続的な反応を達成
する可能性が高いであろう。
【0190】
KRAS変異NSCLC癌モデルにおける式(I)の化合物とMEK阻害剤との組み合わ
せの抗腫瘍活性
KRAS変異NSCLCモデルのCalu-6 NSCLC腫瘍における式(I)の化
合物とMEK阻害剤との組み合わせの抗腫瘍活性を雌のヌードマウスにおいて確立した。
腫瘍がおよそ250mmに到達したら、マウスを腫瘍体積に従って無作為に治療群(n
=7)に分けた。異種移植片移植後第10日目に治療を開始した。抗腫瘍活性は、腫瘍細
胞移植後第27日;治療開始後17日目に決定した。
【0191】
試験薬剤は、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、図5
及び6に示された用量レベルで1日1回(qd)又は1日おきに1回(q2d)経口的に
投与した。単剤は、28日間投与し、式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせは
、56日間投与した。腫瘍体積は、デジタルノギスによって週2回測定し、治療のクール
全体を通してすべての動物の体重を記録した。
【0192】
抗腫瘍活性、腫瘍体積の変化の平均、体重の変化(パーセント)の平均及び治療開始の
17日後(移植の27日後)の生存を下の表に報告する。
【0193】
【表8】
【0194】
投薬の17日後、30mg/kg qdで投与した式(I)の化合物は、26% T/
Cを達成したのに対して、0.3mg/kg qd又は0.3mg/kg q2dで投与
したトラメチニブは、それぞれ36% T/C及び53% T/Cを達成した。投薬の1
7日後、30mg/kg qdで投与される式(I)の化合物を、0.3mg/kg q
d又は0.3mg/kg q2dで投与されるトラメチニブと組み合わせることは、それ
ぞれ41%及び13%退縮を達成した(図5)。
【0195】
群間の腫瘍無増悪期間を量的に評価するために、腫瘍の体積が700mmという任意
のカットオフを超えた日を記録した。やはり、式(I)の化合物といずれかの用量のトラ
メチニブとの組み合わせは、単剤と比較した場合、増大した統計的に有意な抗腫瘍活性を
達成した。単剤として式(I)の化合物及びトラメチニブを投与したマウスにおける腫瘍
が治療中に進行したのに対し、式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせは、共に
単剤療法よりも長く腫瘍退縮を維持し - 単剤と比較した場合、投薬の28日後(腫瘍
移植の38日後)、有意な抗腫瘍活性を有していた。
【0196】
すべての治療群はまた、研究期間中の体重減少が最小限であり、良好な耐容性を示した
。式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせはまた、反応の深さの増大に加えて反
応の持続性の増大をもたらした(下の表及び図6)。
【0197】
【表9】
【0198】
KRAS変異大腸癌モデルにおける式(I)の化合物とMEK阻害剤との組み合わせの抗
腫瘍活性
HCT116(KRAS G13D)大腸癌(CRC)腫瘍を雌のヌードマウスにおい
て確立した。腫瘍がおよそ230mmに到達したら、マウスを腫瘍体積に従って無作為
に治療群(n=6)に分けた。異種移植片移植後第14日目に治療を開始した。抗腫瘍活
性は、腫瘍細胞移植後第31日目(ビヒクル治療したマウスの最終日)に決定した。
【0199】
試験薬剤は、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、図1
6(A)に示された用量レベルで1日1回(qd)又は1日おきに1回(q2d)経口的
に投与した。腫瘍体積は、デジタルノギスによって週2回測定し、治療のクール全体を通
してすべての動物の体重を記録した。投薬の17日後、100mg/kg qdで投与し
た式(I)の化合物は、30% T/Cを達成したのに対して、0.3mg/kg qd
で投与したトラメチニブは、44% T/Cを達成した。投薬の17日後、100mg/
kg qdで投与される式(I)の化合物を、0.3mg/kg q2dで投与されるト
ラメチニブと組み合わせることは、26%退縮を達成した(図16)。腫瘍移植後の第2
4日目に1匹のマウスを体重減少の増大により屠殺した。第31日、ビヒクル治療の最終
日に、式(I)の化合物で治療したマウスは、4%の合わせた体重減少を有し;トラメチ
ニブで治療したマウスは、3.5%の体重減少を呈し、式(I)の化合物とトラメチニブ
との組み合わせで治療したマウスは、9%の体重減少を示した。
【0200】
PDAC癌モデルにおける式(I)の化合物とMEK阻害剤との組み合わせの抗腫瘍活性
患者由来の2043 PDAC(KRASG12D)腫瘍を雌のヌードマウスにおいて
確立した。腫瘍がおよそ230mmに到達したら、マウスを腫瘍体積に従って無作為に
治療群(n=6)に分けた。異種移植片移植後第52日目に治療を開始した。抗腫瘍活性
は、腫瘍細胞移植後第73日目に決定した。
【0201】
試験薬剤は、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、図1
7Aに示された用量レベルで1日1回(qd)又は1日おきに1回(q2d)経口的に投
与した。腫瘍体積は、デジタルノギスによって週2回測定し、治療のクール全体を通して
すべての動物の体重を記録した。投薬の21日後、100mg/kg qdで投与した式
(I)の化合物は、55% T/Cを達成したのに対して、0.3mg/kg qdで投
与したトラメチニブは、32% T/Cを達成した。投薬の21日後、100mg/kg
qdで投与される式(I)の化合物を、0.3mg/kg q2dで投与されるトラメ
チニブと組み合わせることは、35%退縮を達成した(図17)。腫瘍移植後の第66日
目に1匹のマウスを体重減少の増大により屠殺した。第73日、組み合わせ治療の最終日
に、式Iの化合物で治療したマウスは、0.6%の合わせた体重減少を有し;トラメンチ
ニブで治療したマウスは、0.3%の体重減少を呈し、式Iの化合物とトラメチニブとの
組み合わせで治療したマウスは、9.6%の体重減少を示した。
【0202】
メラノーマ癌モデルにおける式(I)の化合物とMEK阻害剤との組み合わせの抗腫瘍活

いくつかのヒトNRAS変異メラノーマ異種移植片における式(I)の化合物とMEK
阻害剤との組み合わせの抗腫瘍活性を次の通りに研究した。
【0203】
(i)SKMEL30メラノーマモデル
SKMEL30(NRASQ61K)メラノーマ腫瘍を雌のヌードマウスにおいて確立
した。治療は、10mL/kgの用量体積で施した。腫瘍移植後第12日目、平均腫瘍体
積が190mm3になったとき、マウスを無作為に治療群(n=9)に分けた。抗腫瘍活
性は、腫瘍細胞移植後第34日;治療の開始の22日後に決定した。
【0204】
試験薬剤は、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、図1
8に示された用量レベルで1日1回(qd)又は1日2回(bid)経口的に投与した。
腫瘍体積は、デジタルノギスによって週2回測定し、治療のクール全体を通してすべての
動物の体重を記録した。第34日、ビヒクル治療した群が研究される最終日に、式(I)
の化合物の治療は、5%腫瘍退縮をもたらしたのに対して、0.3mg/kg qdのト
ラメチニブは、8% T/Cをもたらした。式(I)の化合物と、0.15mg/kg
qdでのトラメチニブとの組み合わせは、ビヒクル治療した群と比較した場合、48%腫
瘍退縮という抗腫瘍活性のさらなる増大をもたらした(図18)。すべての治療群は、研
究期間中の体重減少が最小限であり、良好な耐容性を示した。単剤群は、研究期間中、継
続的に投与され;式Iの化合物とトラメチニブの組み合わせ群において、トラメチニブの
みの短い休薬日(第28日から第31日)が与えられ、その後、研究の最後まで完全な組
み合わせを再び続けた。
【0205】
(ii)NRAS変異メラノーマモデル20667
患者由来の「20667」(NRASQ61R)メラノーマ腫瘍を雌のヌードマウスに
おいて確立した。腫瘍がおよそ300mmに到達したら、マウスを腫瘍体積に従って無
作為に治療群(n=7)に分けた。異種移植片移植後第17日目に治療を開始した。単剤
の抗腫瘍活性は、腫瘍細胞移植後第34日目に決定したのに対して、式(I)の化合物と
トラメチニブとの組み合わせの抗腫瘍活性は、腫瘍細胞移植後第48日目に決定した。
【0206】
試験薬剤は、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、図1
9に示された用量レベルで1日1回(qd)又は1日2回(bid)経口的に投与した。
腫瘍体積は、デジタルノギスによって週2回測定し、治療のクール全体を通してすべての
動物の体重を記録した。投薬の17日後、100mg/kg qdで投与した式(I)の
化合物は、87% T/Cを達成したのに対して、0.3mg/kg qdで投与したト
ラメチニブは、82% T/Cを達成した。投薬の31日後、50mg/kg bidで
投与される式(I)の化合物を、0.3mg/kg qdで投与されるトラメチニブと組
み合わせることは、68%退縮を達成した(図19)。すべての治療群は、研究期間中の
体重減少が最小限であり、良好な耐容性を示した。
【0207】
(iii)NRAS変異メラノーマモデル21124
患者由来の「21124」(NRASQ61H)メラノーマ腫瘍を雌のヌードマウスに
おいて確立した。腫瘍がおよそ300mmに到達したら、マウスを腫瘍体積に従って無
作為に治療群(n=5)に分けた。異種移植片移植後第45日目に治療を開始した。抗腫
瘍活性は、腫瘍細胞移植後第66日目に決定した。
【0208】
試験薬剤は、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、図2
0に示された用量レベルで1日1回(qd)又は1日2回(bid)経口的に投与した。
腫瘍体積は、デジタルノギスによって週2回測定し、治療のクール全体を通してすべての
動物の体重を記録した。投薬の17日後、100mg/kg qdで投与した式(I)の
化合物は、10% T/Cを達成したのに対して、0.3mg/kg qdで投与したト
ラメチニブは、54% T/Cを達成した。投薬の21日後、50mg/kg bidで
投与される式(I)の化合物を、0.0375mg/kg qdで投与されるトラメチニ
ブと組み合わせることは、40%退縮を達成した(図20)。すべての治療群は、研究期
間中の体重減少がなく、良好な耐容性を示した。)
【0209】
(iv)NRAS変異メラノーマモデル「20864」
患者由来の「21124」(NRASQ61H)メラノーマ腫瘍を雌のヌードマウスに
おいて確立した。腫瘍がおよそ300mmに到達したら、マウスを腫瘍体積に従って無
作為に治療群(n=5)に分けた。異種移植片移植後第19日目に治療を開始した。単剤
の抗腫瘍活性は、腫瘍細胞移植後第33日目に決定したのに対して、式(I)の化合物と
トラメチニブとの組み合わせの抗腫瘍活性は、腫瘍細胞移植後第55日目に決定した。
【0210】
試験薬剤は、治療のクール中、10ml/kg(動物体重)の投薬体積において、図2
1に示された用量レベルで1日1回(qd)又は1日2回(bid)経口的に投与した。
腫瘍体積は、デジタルノギスによって週2回測定し、治療のクール全体を通してすべての
動物の体重を記録した。投薬の14日後、50mg/kg bidで投与した式(I)の
化合物は、30% T/Cを達成したのに対して、0.3mg/kg qdで投与したト
ラメチニブは、84% T/Cを達成した。投薬の36日後、50mg/kg bidで
投与される式(I)の化合物を、0.0375mg/kg qdで投与されるトラメチニ
ブと組み合わせることは、12%退縮を達成した(図21)。第33日目に組み合わせ群
の2匹のマウスを薬力学的研究のために屠殺した。残りの研究について、n=3で効力が
続けられた。すべての治療群は、研究期間中の体重減少が最小限であり、良好な耐容性を
示した。
【0211】
まとめると、データは、式(I)の化合物とトラメチニブとの組み合わせ治療が、MA
PK経路における機能獲得型変異に起因する活性化されたMAPK経路を有する患者にお
ける、より大きく且つより持続的な反応を達成できることを示唆する。試験された組み合
わせ投与のいくつかは、わずかな体重減少(最大10%)を示したが、試験された組み合
わせ投与の大部分は、最小限の体重減少によって判断される通り、良好な耐容性を示した
【0212】
実施例3:MAPK経路変化を内在する進行した固形腫瘍を有する成人の患者における単
独及びトラメチニブと組み合わせた式(I)の化合物の第I相試験
この試験における単剤としての式(I)の化合物の推奨される開始用量及びレジメンは
、前臨床試験における前臨床安全性、忍容性データ、薬物動態(PK)及び/又は薬力学
的(PD)データ並びに不活性な用量を受ける可能性がある患者の数を制限しながら、潜
在的に毒性の薬物レベルへの曝露を最小限にするための予備的なヒトの効果的な用量範囲
予測に基づき、経口的に100mg 1日1回(QD)である。
【0213】
100mg、200mg、250mg、300mg又は400mgの開始用量が想定さ
れ;250mg 1日1回(QD)という開始用量を示す暫定的なデータが固形腫瘍に対
して有効であり得る。投薬の最大限の汎用性のために、式(I)の化合物は、経口投与の
ための50mg及び/又は100mg錠剤として調製することができる。前臨床試験では
、QDレジメンが効果的であり且つ耐容性を示すことが実証されている。Calu6異種
移植では、QD又は分割される1日2回(BID)レジメンを用いて同様のレベルの効力
が得られ、これは、効力が全体の曝露に関連することを示唆している。予測されるヒトP
K及び予測される半減期(約9h)も、効果的な曝露がQD投薬で達成できることを示唆
する。
【0214】
MEK阻害剤、例えばトラメチニブと組み合わせた式(I)の化合物の用量漸増を、式
(I)の化合物が単剤と識別される投薬レジメンから開始することとなる。式(I)の化
合物の開始用量は、単剤用量よりも低い可能性がある。このように、この用量の選択は、
優れた効力を提供するには低すぎる用量を受ける可能性がある患者の数を制限しながら、
潜在的に毒性の薬物レベルへの曝露を最小限にするべきである。MEK阻害剤、例えばト
ラメチニブは、単剤の推奨される投薬量である2mgの一定用量で投与されることとなる
【0215】
用量拡大パートでは、組み合わせアームの患者は、用量漸増データに基づく、その薬物
組み合わせについて推奨される用量及びレジメンで治療されることとなる。
【0216】
組み合わせ研究では、1日用量の400mgの式(I)の化合物(QD)と、1日用量
の1mgのトラメチニブ又は1日用量の400mgの式(I)の化合物と、1日用量の2
mgトラメチニブとが想定される。1日用量の式(I)の化合物は、1日1回投与される
1日用量のトラメチニブに対して優先的に1日2回投与することができる。他の用量、例
えば下の表中の用量も投与することができる。
【0217】
【表10】
【0218】
さらに、効果的な投薬量は、MAPキナーゼ経路阻害を示すバイオマーカーをモニタリ
ングすることによって決定することができる。具体的には、DUSP6(二重特異性ホス
ファターゼ6)は、この経路の公知のバイオマーカーであり、DUSP6のインビボレベ
ルは、式(I)の化合物の効果的な血漿中濃度を伴う式(I)の化合物の投薬量を受ける
対象において下がることが示されている。したがって、DUSP6は、単剤としてか又は
MEK阻害剤と組み合わせてかにかかわらず、式(I)の化合物で治療される対象におけ
る薬力学的バイオマーカーとして使用することができる。
【0219】
実施例4:N-(2-メチル-5’-モルホリノ-6’-((テトラヒドロ-2H-ピラ
ン-4-イル)オキシ)-[3,3’-ビピリジン]-5-イル)-3-(トリフルオロ
メチル)ベンズアミド
式(II)の化合物は、次の構造のモルホリン置換ビアリール化合物である。
【化16】
【0220】
式(II)の化合物は、B-Raf及びC-Rafの阻害剤である。この化合物は、開
示されており、その調製は、PCT特許出願国際公開第2014/151616号パンフ
レット中の実施例131に記載されている。
【0221】
実施例4A
式(II)の化合物は、変異型及び野生型B-RafとC-Rafとの両方のII型の
阻害剤である。
【0222】
【表11】
【0223】
実施例4B
式(II)の化合物は、次の表に示す通りの、MAPK経路における変異を発現する多
数のヒト癌細胞株に対する活性を呈する。活性は、BRAF又はRASにおける少なくと
も1つの変異を内在する細胞株に対して特に強力である。
【0224】
【表12】
【0225】
実施例4C
BRAFV600、NRAS又はKRAS変異を内在する細胞株における式(II)の
化合物及びダブラフェニブの活性を比較した(図7)。A375細胞では、ダブラフェニ
ブと式(II)の化合物との両方は、それぞれ0.05及び0.5μMでほぼ完全にME
K及びERKリン酸化を阻害した。対照的に、NRAS又はKRAS変異を内在する3つ
の細胞株では、0.05及び0.5μMでのダブラフェニブ処理は、MEK及びERKリ
ン酸化の増大をもたらし、5μMのみ控えめな阻害を示した。比較すると、式(II)の
化合物は、3つすべてのRAS変異モデルにおいて、明らかな経路活性化を伴わずに、M
EK及びERKリン酸化の用量依存性阻害(IPC-298及びHCT116におけるp
MEKの最小限の活性化)を示した(図7)。式(II)の化合物が経路シグナル伝達を
阻害する能力は、様々なRAS変異を内在する細胞及びBRAF V600変異を有する
ものにおいて比較可能であり、0.5μMでpMEK及びpERKのほぼ完全な阻害に到
達した。
【0226】
これらの細胞株における式(II)の化合物及びダブラフェニブの抗増殖活性も調べた
図8)。シグナル伝達データと一致して、ダブラフェニブは、BRAFV600EA3
75細胞において最も強力な抗増殖活性(IC50=0.003μM)、NRASmut
IPC-298細胞においておよそ100×弱い(IC50=0.27μM)、また2つ
のKRASmut細胞株(Calu-6 IC50=23μM、HCT116 IC50
=17μM)において非常にわずかな活性を示した。対照的に、式(II)の化合物は、
BRAFmutモデルと比較して、RASmutモデルにおいてより小さいIC50用量
変化を示し、試験されたすべての細胞株において用量依存性の成長阻害を呈し、IC50
値は、A375、IPC-298、Calu-6及びHCT116においてそれぞれ0.
13μM、0.07μM、1.4μM及び0.98μMであった。
【0227】
式(I)の化合物を用いる同様の実験は、式(I)の化合物が同様の結果をもたらすこ
とも実証した(下の表を参照されたい)。
【0228】
【表13】
【0229】
これらのデータは、式(I)の化合物及び式(II)の化合物がRAF単量体阻害剤の
クラスと異なる阻害の様式を呈することを実証する。RAF単量体と二量体とを両方とも
阻害するその活性は、これがRAS変異腫瘍において有効である可能性が低いダブラフェ
ニブとは対照的に、BRAF又はRAS変異を内在する腫瘍を治療するのに有効であるは
ずであることを示唆している。
【0230】
実施例4D
式(II)の化合物の抗増殖活性を、遺伝的に特徴付けられたヒト癌細胞株モデルの広
いパネルにおいて分析した。BRAF、KRAS若しくはNRASにおける変異を有する
357種の細胞株又はBRAFとRASとの両方についての野生型において、式(II)
の化合物の活性をダブラフェニブの活性と比較した(図9)。各データ点は、3日の処理
の後の細胞株における阻害剤IC50値を表す。5μMという阻害剤IC50をカットオ
フとして使用して、感受性(IC50<5μM)及び非感受性(IC50>5μM)系統
の数を式(II)の化合物及びダブラフェニブについて各遺伝的グループ内に示した。例
えば、式(II)の化合物は、同時に存在するKRAS変異の有無にかかわらず、非V6
00変異を内在する癌細胞株(卵巣癌細胞株Hey-A8(KRASG12D/BRAF
G464E、IC50=0.63μM)、乳癌細胞株MDA-MB-231(KRAS
13D/BRAFG464V、IC50=3.4μM)及び肺癌細胞株NCI-H166
6(BRAFG466V、IC50=3.97μM)が含まれる)において抗増殖活性を
示す。比較すると、BRAF単量体阻害剤ダブラフェニブは、3つすべての細胞株モデル
においてIC50>30μMを有していた。データをフィッシャーの直接確率検定を用い
て解析して、変異群における阻害剤処理に対する細胞株の感受性が野生型細胞株と比較し
た場合に有意に増大したかどうかを評価した。式(II)の化合物について、B-Raf
、KRAS又はN-Ras変異を内在する細胞株は、野生型であるものと比較すると、有
意に増大した感受性を呈し、p値は、それぞれ3.09×10-17、1.19×10
及び1.26×10-6であった。オッズ比は、それぞれ28.9、4.6及び10.
6である。比較すると、ダブラフェニブに対するより高い感受性は、KRAS又はN-R
as変異を伴わずにB-Raf変異を内在する細胞株においてのみ有意であり、p値は、
それぞれ1.9×10-15、0.11及び0.25であった。
【0231】
実施例5:KRAS変異NSCLCモデルにおける式(II)の化合物の抗腫瘍活性
式(II)の化合物のシグナル伝達阻害と抗腫瘍効力との両方をKRAS変異Calu
-6モデルにおいてインビボで調べた。Calu-6腫瘍異種移植片は、50% Mat
rigel(商標)に入れた細胞を雌のヌードマウス(6~8週齢)の右側腹部の皮下に
移植することによってもたらした。腫瘍を有するマウスを治療群に無作為に分け、広い用
量範囲(10~200mg/kg)にわたる式(II)の化合物の単一の経口投与で治療
した。次いで、腫瘍組織を、MesoScale Discovery(MSD)プラッ
トフォーム又は定量的PCR(qPCR)によるDUSP6 mRNAを使用するリン酸
化及び総MEK1/2のレベルまで投与後の複数の時点で収集した。図10に示す通り、
式(II)の化合物での治療は、程度と期間との両方において用量依存性の方式でMEK
リン酸化の阻害をもたらした。式(II)の化合物は、100mg/kgと200mg/
kgとの両方において、リン酸化されたMEK(pMEK)を50%超まで16時間より
も長く抑制することができた。続いて、同じ腫瘍異種移植モデルにおいて式(II)の化
合物の抗腫瘍効力を評価した(図11)。腫瘍を有する動物に10、30、100又は2
00mg/kgで19日間、毎日(qd)、経口的に投与されるビヒクル、式(II)の
化合物を投与した。抗腫瘍活性は、ビヒクル治療した群における腫瘍体積に対する治療群
における腫瘍体積の割合(% T/C)又は開始体積と比較した腫瘍退縮の割合(退縮(
%))を評価することによって決定した。腫瘍体積及び体重は、無作為化の時点で、また
研究期間中に週2回収集した。腫瘍体積は、ノギスでの測定によって求め、変形楕円体式
(ここで、腫瘍体積(TV)(mm)=[((l×w2)×3.14159))/6]
であり、式中、lは、腫瘍の最も長い軸であり、wは、lに対して垂直である)を使用し
て計算した。pMEK阻害と一致して、式(II)の化合物での治療は、30mg/kg
から開始する、用量依存性の抗腫瘍活性をもたらした(図11)。30mg/kgの式(
II)の化合物での治療は、52% T/Cをもたらしたのに対して、100mg/kg
及び200mg/kgでの治療は、2つのより高い用量レベルでのより持続的な経路阻害
と一致して、それぞれ47%及び88%の腫瘍退縮をもたらした。
【0232】
式(II)の化合物の抗腫瘍活性をさらに評価するために、非小細胞肺癌(NSCLC
)を有する患者由来の23人の患者由来の異種移植(PDX)モデルにおける式(II)
の化合物の効力の大規模インビボスクリーンを実施した(図12)。腫瘍反応は、式(I
I)の化合物治療での、最も良い腫瘍体積の変化の割合の平均のウォーターフォールプロ
ットとして与え、各腫瘍には、RAS又はBRAFのその変異状態について注釈を付けた
。60mg/kg又は200mg/kg(▼)で毎日投与された式(II)の化合物は、
NSCLC PDX腫瘍(ここで、B-Raf、N-Ras又はKRASの変異を内在す
る腫瘍がより良い応答者の中から濃縮された)のサブセットにおいて腫瘍成長阻害をもた
らした。B-Raf変異腫瘍の1つ、HLUX1323は、Raf二量体化によって媒介
されるシグナル伝達を活性化することが示されているD594N変異を内在し、式(II
)の化合物は、このモデルにおいて26%の腫瘍収縮をもたらした。これらのデータは、
Raf単量体又は二量体及び発癌性MEK/ERKシグナル伝達を阻害することにおける
その選択的活性の結果としての、Ras変異癌細胞とB-Raf変異癌細胞との両方にお
ける式(II)の化合物の抗癌効力をさらに裏付ける。
【0233】
実施例6:式(II)の化合物とMEK阻害剤との相乗効果
広い用量範囲にわたる、単剤としての又は2つを組み合わせて用いる式(II)の化合
物又はトラメチニブでの治療後、HPAF-II細胞(KRAS変異)の成長阻害を測定
した。アイソボログラム及び相乗作用スコアを作成して組み合わせ活性を評価した。図1
3に示す通り、トラメチニブと組み合わせた式(II)の化合物は、11.1のLoew
e相乗作用スコアを伴い、HPAF-II細胞成長を阻害することに対する相乗効果を有
していた。
【0234】
いずれかの薬剤単独に対する、組み合わせ治療のシグナル伝達阻害に対する効果を評価
するために、HPAF-II異種移植腫瘍を有するヌードマウスを100mg/kgの単
一用量の式(II)の化合物、0.3mg/kgのトラメチニブ又は組み合わせられた2
つの阻害剤で治療した。経路活性の測定値としてのDUSP6 mRNAレベルを、投与
後の複数の時点で収集された腫瘍試料において決定した。図14に示す通り、式(II)
の化合物の治療は、投与後4時間(hr)でビヒクル対照と比較してDUSP6の83%
阻害をもたらしたが、この阻害は、投与後16及び24hrでのDUSP6のレベルの増
大によって示される通り、持続的ではなかった。同様に、トラメチニブ治療は、DUSP
6の部分的及び一過性の阻害をもたらした。対照的に、式(II)の化合物とトラメチニ
ブとの組み合わせは、より維持されるDUSP6阻害をもたらし、投与後16時間でも8
0%超の阻害を示した。同じ腫瘍異種移植モデルにおける異なる治療の抗腫瘍効力を評価
した。腫瘍を有する動物には、ビヒクル、100mg/kg qdの式(II)の化合物
、0.3mg/kg qdのトラメチニブ又は両方の組み合わせを10日間投与した(図
15)。DUSP6阻害と一致して、式(II)の化合物とトラメチニブとの組み合わせ
の治療は、単剤単独のいずれかよりも大きい抗腫瘍活性をもたらし、式(II)の化合物
又はトラメチニブによるそれぞれ40% T/C又は54% T/Cと比較すると33%
退縮がもたらされた(図15)。まとめると、これらのデータは、式(II)の化合物と
トラメチニブとの組み合わせ治療は、MAPK経路における機能獲得型変異に起因する活
性化されたMAPK経路を有する患者における、より大きく且つより持続的な反応を達成
することを示唆する。トラメチニブと組み合わせた式(I)の化合物は、いずれかの治療
単独よりも大きく且つ持続的な反応を達成し、MAPK経路における機能獲得型変異に起
因する活性化されたMAPK経路を有する患者における抗腫瘍活性の向上をもたらすこと
も予想される。
【0235】
参照による組み込み
本明細書で言及したすべての刊行物、特許及び受託番号は、それぞれ個々の刊行物又は
特許があたかも具体的且つ個々に参照によって組み込まれることが示されるように、その
全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0236】
均等物
対象発明の具体的な実施形態を論述してきたが、上記の本明細書は、例示的であり、限定的ではない。本発明の多くの変形形態は、本明細書及び下の特許請求の範囲を見直す際に当業者に明らかとなるであろう。本発明の完全な範囲は、均等物のその完全な範囲を伴う特許請求の範囲及びその変形形態を伴う本明細書を参照することによって決定されるべきである。

本発明は、以下の態様を含む。
[1]
式(I)
【化17】
の化合物又はその薬学的に許容し得る塩であるRaf阻害剤と、
(b)MEK阻害剤と
を含む医薬的組み合わせ。
[2]
前記MEK阻害剤は、トラメチニブ、PD0325901、PD184352、レファメチニブ、コビメチニブ、AS-701255、AS-701173、ピマセルチブ、RDEA436、RO4987655、RG7167及びRG7420又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物を含む群から選択される、[1]に記載の医薬的組み合わせ。
[3]
前記MEK阻害剤は、トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物である、[1]又は[2]に記載の医薬的組み合わせ。
[4]
トラメチニブは、ジメチルスルホキシド溶媒和物の形態である、[3]に記載の医薬的組み合わせ。
[5]
同時、連続又は個別投与のためのものである、[1]~[4]のいずれかに記載の医薬的組み合わせ。
[6]
固定された組み合わせである、[1]~[5]のいずれかに記載の医薬的組み合わせ。
[7]
固定されていない組み合わせである、[1]~[5]のいずれかに記載の医薬的組み合わせ。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の医薬的組み合わせと、少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
[9]
癌の治療で使用するための、[1]~[7]のいずれかに記載の医薬的組み合わせ又は[8に記載の医薬組成物。
[10]
前記癌は、MAPK変異を発現するか、又は前記癌は、NRAS変異若しくはK-RAS変異である、[9]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は[9]に記載の使用のための医薬組成物。
[11]
前記癌は、メラノーマ、非小細胞肺癌(NSCLC)、大腸癌(CRC)、卵巣癌、子宮頸癌又は膵管腺癌(PADC)である、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[12]
前記癌は、大腸癌(CRC)である、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[13]
前記癌は、メラノーマである、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[14]
前記癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[15]
前記癌は、MUTYH関連ポリポーシス(MAP)である大腸癌(CRC)である、[9]又は10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[16]
前記癌は、子宮頸癌である、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[17]
前記癌は、卵巣癌である、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[18]
前記癌は、膵管腺癌(PADC)である、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[19]
前記癌は、BRAF、NRAS、KRAS変異及びその組み合わせからなる群から選択される変異によって特徴付けられる、[9]~[18]のいずれかに記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[20]
前記癌は、KRAS変異NSCLC(非小細胞肺癌)、NRAS変異メラノーマ、KRAS変異卵巣癌及びKRAS変異膵癌(例えば、KRAS変異膵管腺癌(PDAC))からなる群から選択される、[9]又は[10]に記載の使用のための医薬的組み合わせ又は使用のための医薬組成物。
[21]
癌の治療で使用するための、式(I)
【化18】
の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物とを含む医薬的組み合わせ。
[22]
前記癌は、N-RAS変異メラノーマである、[21]に記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[23]
前記癌は、NSCLCである、[21]に記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[24]
前記NSCLCは、KRAS変異NSCLC、BRAF変異NSCLC又はKRAS変異NSCLCとBRAF変異NSCLCとの両方である、[23]に記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[25]
前記NSCLCは、BRAF V600E変異又はBRAF 非V600E変異によって特徴付けられる、[23]に記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[26]
前記癌は、進行した又は転移性の癌である、[21]~[25]のいずれかに記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[27]
前記癌は、BRAF V600変異メラノーマ又はBRAF V600変異NSCLCであり、任意選択で、前記メラノーマは、BRAF阻害剤、例えばダブラフェニブ若しくはベムラフェニブ及び/又はMEK阻害剤、例えばトラメチニブ若しくはコビメチニブでの治療にもはや応答していない、[21]に記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[28]
前記癌は、ダブラフェニブとトラメチニブとの組み合わせでの治療に対して又はベムラフェニブとコビメチニブとの組み合わせでの治療に対して耐性であるBRAF V600変異メラノーマである、[27]に記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[29]
前記癌は、ダブラフェニブとトラメチニブとの組み合わせでの治療に対して耐性であるBRAF V600変異NSCLCである、[27]に記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[30]
前記癌、例えばNSCLC又はメラノーマは、標準治療後において又は有効な標準の治療法が存在しない人について進行している、[21]~[27]のいずれかに記載の使用のための医薬的組み合わせ。
[31]
トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物との組み合わせ療法で使用するための、式(I)
【化19】
の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
[32]
式(I)
【化20】
の化合物又はその薬学的に許容し得る塩との組み合わせ療法で使用するための、トラメチニブ又はその薬学的に許容し得る塩若しくは溶媒和物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
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