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特許7520202セグメント用止水部材及びセグメント用止水構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】セグメント用止水部材及びセグメント用止水構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20240712BHJP
   E21D 11/08 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
E21D11/38 Z
E21D11/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023145395
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2020042106の分割
【原出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2023158151
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019052942
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】萩原 孝志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 惇
(72)【発明者】
【氏名】佐山 公秀
(72)【発明者】
【氏名】岸田 功
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303941(JP,A)
【文献】特開2016-215376(JP,A)
【文献】特開平01-300000(JP,A)
【文献】実開平01-147043(JP,U)
【文献】特開2000-054793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/38
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントの内面に開口して地山と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部の縁に沿って連続配置される無端形状のシール部材と、
前記シール部材より外側に張り出す周縁部を有し、前記シール部材と密着し密閉空間を形成する閉塞部材と、
前記閉塞部材の前記周縁部に周方向の複数箇所で配置されて一端側が前記セグメントに固着し、他端側が前記周縁部を貫通する固定部材と、
を備えることを特徴とするセグメント用止水部材。
【請求項2】
セグメントの内面に開口して地山と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部を包囲するシール部材と、
前記シール部材より外側に張り出す周縁部を有し、前記シール部材と密着し密閉空間を形成する閉塞部材と、
前記閉塞部材の前記周縁部に周方向の複数箇所で配置されて一端側が前記セグメントに固着し、他端側が前記周縁部を貫通する固定部材と、
を備えることを特徴とするセグメント用止水部材。
【請求項3】
セグメントの内面に開口して地山と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部を包囲し該開口部側に密着するシール部材と、
前記止水構造を構成するモルタル等と離間配置され前記シール部材に密着し、前記シール部材より外側に張り出す周縁部を有して前記開口部を覆う閉塞部材と、
前記閉塞部材の前記周縁部に周方向の複数箇所で配置されて一端側が前記セグメントに固着し、他端側が前記周縁部を貫通する固定部材と、
を備えることを特徴とするセグメント用止水部材。
【請求項4】
前記シール部材が、少なくとも水膨張性材料を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のセグメント用止水部材。
【請求項5】
前記閉塞部材の前記周縁部と前記セグメントの内面との間がコーキングにより封止されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のセグメント用止水部材。
【請求項6】
シールドトンネルの内壁面を構成するセグメントと、
前記セグメントの内面に開口して地山と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部と、
前記開口部の縁に沿って連続配置される無端形状のシール部材と、
前記シール部材よりもトンネル坑内側に位置し、前記開口部とは離間配置され、前記シール部材より外側に張り出す周縁部を有して前記開口部を覆う閉塞部材と、
前記閉塞部材の前記周縁部に周方向の複数箇所で配置され一端側が前記セグメントに固着し他端側が前記周縁部を貫通して前記閉塞部材と前記内面とで前記シール部材を挟持して前記閉塞部材を前記内面に固定する固定部材と、
を備えることを特徴とするセグメント用止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント用止水部材及びセグメント用止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルでは、掘削した地山と、その内側に組み立てられるセグメントとの間に、セメントミルク等からなるグラウトを注入する。セグメントには、地山と坑内とに通じ、グラウトを注入するためのグラウト孔が穿設されている。グラウト孔は、グラウトの注入後、グラウトプラグを螺合する等の止水工が施される。
【0003】
止水工の施されたグラウト孔は、竣工後、長期経過すると、グラウトプラグの抜け落ちや欠け等の劣化の虞がある。このような止水工の劣化は、坑内への漏水や土砂の侵入を発生させる虞がある。
【0004】
特許文献1には、地中に形成されたコンクリート構造体の壁面等に発生したクラック等漏水部を補修するための地中コンクリート構造体の漏水部止水構造が開示されている。コンクリート構造体の表面には、表面に発生した漏水部を塞ぐパッキンが設けられ、かつパッキンの背面側には、少なくともパッキンと同等以上の寸法を有し、コンクリート構造体に先端部を埋設される複数本のアンカーボルトによって押圧される加圧板が設けられる。
【0005】
この地中コンクリート構造体の漏水部止水構造によれば、アンカーボルトに係止・押圧される加圧板によってパッキンがコンクリート構成体の表面に発生した漏水部に圧接・密着されることにより、漏水が確実に止水される。その場合、施工後、コンクリート構造体が種々の外力を受けてクラック(漏水部)の間隙が開くような状態となっても、パッキンがクラックの両側に強く密着されているものであるから、構造体内部への漏水を発生させることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2605104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した地中コンクリート構造体の漏水部止水構造は、グラウト孔に適用すると、加圧板によってパッキンがグラウトプラグやグラウトプラグを覆うモルタル等に圧接・密着する。このため、グラウトプラグやグラウトプラグを覆うモルタル等の止水工が圧接力・密着力により割れる場合がある。このような不具合は、グラウトプラグが樹脂製であったり、パッキンが平板状の水膨張性材料であったりする場合に特に顕著となる。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、従来構造に比べさらに高い止水性能を得ることができるセグメント用止水部材及びセグメント用止水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のセグメント用止水部材141は、セグメント13の内面33に開口して地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部35の縁に沿って連続配置される無端形状のシール部材17と、
前記シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有し、前記シール部材17と密着し密閉空間49を形成する閉塞部材145と、
前記閉塞部材145の前記周縁部43に周方向の複数箇所で配置されて一端側が前記セグメント13に固着し、他端側が前記周縁部43を貫通する固定部材21と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
このセグメント用止水部材141では、セグメント13の内面33に形成される開口の縁部の内側にシール部材17が配置される。この開口は開口部35であり、セグメント13の内面33に開口する。この開口部35は、地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる。セグメント13の内面33に開口するグラウト孔15の開口部35の周囲を囲むように、規制部材としての規制部143が畦状に形成される。規制部143は、無端環状に形成されており、開口部35の周囲において、開口部35の縁部より外側に位置してセグメント内面33から突出するように設けられる。開口部35の縁部に近接する周囲は、シール部材17が密着する面とされ、シール部材17の外径よりも大きい内径となるように規制部143が形成され、規制部143の内側にシール部材17が収容状態となる。
シール部材17を挟んで内面33の反対側には、閉塞部材145がシール部材17に密着して設けられる。閉塞部材145は、シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有して開口部35を覆う。閉塞部材145の周縁部43には、周方向の複数箇所で固定部材21が配置される。固定部材21は、一端側がセグメント13に固着される。固定部材21の他端側は、周縁部43を貫通して、閉塞部材145をセグメント13の内面33に固定する。つまり、シール部材17は、閉塞部材145と内面33とで挟持される。シール部材17は、閉塞部材145に密着することで、内側に密閉空間49を形成する。セグメント13の内面33に設けられた開口部35は、この密閉空間49に臨んで配置される。
開口部35は、グラウト孔15等とすることができる。また、地山29と通じる経路を水密シールする止水構造は、グラウト孔15に螺合されるグラウトプラグ31等とすることができる。この場合、グラウトプラグ31は、シール部材17により包囲された密閉空間49に臨んで配置されるので、シール部材17の厚み分、閉塞部材145から離間して配置される。これにより、グラウトプラグ31や止水工等は、閉塞部材145により押圧されなくなる。すなわち、既存の水密シール構造を損ねる(圧壊等する)ことがない。これに加え、新たな密閉空間49を形成し、既存のシール構造にクラック等が発生した場合に生じる漏水を二重の水密シール構造より止水する作用を得ることができる。その結果、漏水をより効果的に抑制することができるようになる。
また、上記規制部143が連続した環状でシール部材17の外周を取り囲むように位置し、その内側に位置するシール部材17を取り囲み、閉塞部材145とセグメント内面33との間でシール部材17とともに挟持状態となり、すなわち規制部143の内側にシール部材17が位置する。これにより、シール部材17が漏水によって膨張変形しても、規制部143によってシール部材17の外方向への膨張を規制し、規制部143の内側方向で膨張することになるとともに、この規制部143の内側面に密着し、閉塞部材105とセグメント内面33側への密着度が向上し、シール部材17より外方への漏水の発生を抑制する。すなわちシール部材17は三方向を囲まれて密着して、より効果的に漏水を抑制する。
【0011】
本発明の請求項2記載のセグメント用止水部材11は、セグメント13の内面33に開口して地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部35を包囲するシール部材17と、
前記シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有し、前記シール部材17と密着し密閉空間49を形成する閉塞部材19と、
前記閉塞部材19の前記周縁部43に周方向の複数箇所で配置されて一端側が前記セグメント13に固着し、他端側が前記周縁部43を貫通する固定部材21と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
このセグメント用止水部材11では、シール部材17により、セグメント13の開口部35が包囲される。開口部35は、セグメント13の内面33に開口する。この開口部35は、地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる。
シール部材17を挟んで内面33の反対側には、閉塞部材19がシール部材17に密着して設けられる。閉塞部材19は、シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有して開口部35を覆う。閉塞部材19の周縁部43には、周方向の複数箇所で固定部材21が配置される。固定部材21は、一端側がセグメント13に固着される。固定部材21の他端側は、周縁部43を貫通して、閉塞部材19をセグメント13の内面33に固定する。シール部材17は、閉塞部材19と内面33側とに密着することで、内側に密閉空間49を形成する。セグメント13の内面33に設けられた開口部35は、この密閉空間49に臨んで配置される。
開口部35は、グラウト孔15等とすることができる。また、地山29と通じる経路を水密シールする止水構造は、グラウト孔15に螺合されるグラウトプラグ31等とすることができる。この場合、グラウトプラグ31は、シール部材17により包囲された密閉空間49に臨んで配置されるので、シール部材17の厚み分、閉塞部材19から離間して配置される。これにより、グラウトプラグ31や止水工等は、閉塞部材19により押圧されなくなる。すなわち、既存の水密シール構造を損ねる(圧壊等する)ことがない。これに加え、新たな密閉空間49を形成し、既存のシール構造にクラック等が発生した場合に生じる漏水を二重の水密シール構造より止水する作用を得ることができる。その結果、漏水をより効果的に抑制することができるようになる。
【0013】
本発明の請求項3記載のセグメント用止水部材11は、セグメント13の内面33に開口して地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部35を包囲し該開口部35側に密着するシール部材17と、
前記止水構造を構成するモルタル等と離間配置され前記シール部材17に密着し、前記シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有して前記開口部35を覆う閉塞部材19と、
前記閉塞部材19の前記周縁部43に周方向の複数箇所で配置されて一端側が前記セグメント13に固着し、他端側が前記周縁部43を貫通する固定部材21と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
このセグメント用止水部材11では、シール部材17が、セグメント13の開口部35を包囲し、この開口部35側に密着する。開口部35は、セグメント13の内面33に開口する。この開口部35は、地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる。
シール部材17を挟んで内面33の反対側には、閉塞部材19がシール部材17に密着して設けられる。閉塞部材19は、シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有して開口部35を覆う。閉塞部材19の周縁部43には、周方向の複数箇所で固定部材21が配置される。固定部材21は、一端側がセグメント13に固着される。固定部材21の他端側は、周縁部43を貫通して、閉塞部材19をセグメント13の内面33に固定する。シール部材17は、閉塞部材19と開口部35側とに密着することで、内側に密閉空間49を形成する。セグメント13の内面33に設けられた開口部35は、この密閉空間49に臨んで配置される。
開口部35は、グラウト孔15等とすることができる。また、地山29と通じる経路を水密シールする止水構造は、モルタル23、グラウト孔15に螺合されるグラウトプラグ31等とすることができる。この場合、モルタル23は、シール部材17により包囲された密閉空間49に臨んで配置されるので、シール部材17の厚み分、閉塞部材19から離間して配置される。これにより、モルタル23や止水工等は、閉塞部材19により押圧されなくなる。すなわち、既存の水密シール構造を損ねる(圧壊等する)ことがない。これに加え、新たな密閉空間49を形成し、既存のシール構造にクラック等が発生した場合に生じる漏水を二重の水密シール構造より止水する作用を得ることができる。その結果、漏水をより効果的に抑制することができるようになる。
【0015】
本発明の請求項4記載のセグメント用止水部材は、請求項1~3のいずれか1つに記載のセグメント用止水部材であって、
前記シール部材17が、少なくとも水膨張性材料を含むことを特徴とする
【0016】
このセグメント用止水部材では、シール部材17が、少なくとも水膨張性材料を含む線状部材により無端環状となって形成される。線状部材は、長手方向に直交方向の断面形状が、中実や中空の円形状、中実の四角形状、台形状、六角形状、蒲鉾形状などとすることができる。ここで、線状部材は、断面形状の外側を水膨張性材料で形成し、断面形状の内側を非水膨張部77で形成することができる。このような二重構造の線状部材で形成したシール部材17は、外側の水膨張性材料により止水性能が得られるとともに、内側の非水膨張部77により長手方向の膨張が規制される。これにより、シール部材17は、位置ずれを抑制して、断面形における周方向に膨張することが可能となり、セグメント13の内面33及び閉塞部材19に確実に密着し、良好な止水性能を得ることができる。
【0017】
本発明の請求項5記載のセグメント用止水部材11は、請求項1~4のいずれか1つに記載のセグメント用止水部材であって、
前記閉塞部材19の前記周縁部43と前記セグメント13の内面33との間がコーキング47により封止されていることを特徴とする
【0018】
このセグメント用止水部材11では、閉塞部材19の周縁部43とセグメント13の内面33との間が、コーキング47によりさらに封止される。コーキング47は、固定部材21を挟んでシール部材17の反対側の周縁部43と、内面33との間に充填、若しくは間隙を塞ぎ表出させないように配置形成される。
【0019】
本発明の請求項6記載のセグメント用止水構造は、シールドトンネル25の内壁面を構成するセグメント13と、
前記セグメント13の内面33に開口して地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部35と、
前記開口部35の縁に沿って連続配置される無端形状のシール部材17と、
前記シール部材17よりもトンネル坑内27側に位置し、前記開口部35とは離間配置され、前記シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有して前記開口部35を覆う閉塞部材19と、
前記閉塞部材19の前記周縁部43に周方向の複数箇所で配置され一端側が前記セグメント13に固着し他端側が前記周縁部43を貫通して前記閉塞部材19と前記内面33とで前記シール部材17を挟持して前記閉塞部材19を前記内面33に固定する固定部材21と、
を備えることを特徴とする。
【0020】
このセグメント用止水構造では、セグメント13の内面33の開口部35に、シール部材17が配置される。開口部35は、セグメント13の内面33に開口する。この開口部35は、地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる。
開口部35としては、例えばグラウトプラグ31が螺合したグラウト孔15や、セグメント同士を連結するめのボルトを収容し、モルタル23で覆われたボルトボックス51等が挙げられる。地山29と通じる経路を水密シールする止水構造とは、例えばグラウト孔15を塞ぐグラウトプラグ31等が挙げられる。
シール部材17よりもトンネル坑内27側には、閉塞部材19が、開口部35とは離間配置して設けられる。閉塞部材19は、シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有して開口部35を覆う。閉塞部材19の周縁部43には、周方向の複数箇所で固定部材21が配置される。固定部材21は、一端側がセグメント13に固着される。固定部材21の他端側は、周縁部43を貫通して、閉塞部材19をセグメント13の内面33に固定する。つまり、シール部材17は、閉塞部材19と開口部35側とで挟持される。シール部材17は、閉塞部材19と開口部35側に密着することで、内側に密閉空間49を形成する。セグメント13の内面33に設けられた開口部35は、この密閉空間49に臨んで配置される。
開口部35は、グラウト孔15等とすることができる。また、地山29と通じる経路を水密シールする止水構造は、グラウト孔15に螺合されるグラウトプラグ31等とすることができる。この場合、グラウトプラグ31は、シール部材17により包囲することができ、その内側である密閉空間49に臨んで配置されるので、シール部材17の厚み分、閉塞部材19から離間して配置される。これにより、グラウトプラグ31や止水工等は、閉塞部材19により押圧されなくなる。すなわち、既存の水密シール構造を損ねる(圧壊等する)ことがない。これに加え、新たな密閉空間49を形成し、既存のシール構造にクラック等が発生した場合に生じる漏水を二重の水密シール構造より止水する作用を得ることができる。その結果、漏水をより効果的に抑制することができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る請求項1記載のセグメント用止水部材によれば、開口部の縁に沿って連続配置される無端形状のシール部材により、従来構造に比べさらに高い止水性能を得ることができる。
【0022】
本発明に係る請求項2記載のセグメント用止水部材によれば、開口部を包囲するシール部材により、従来構造に比べさらに高い止水性能を得ることができる。
【0023】
本発明に係る請求項3記載のセグメント用止水部材によれば、開口部を包囲し開口部側に密着するシール部材と、モルタル等に対し離間配置される閉塞部材とで、従来構造に比べさらに高い止水性能を得ることができる。
【0024】
本発明に係る請求項4記載のセグメント用止水部材によれば、高い止水性能を得ることができる。
【0025】
本発明に係る請求項5記載のセグメント用止水部材によれば、シール部材の外側でさらに止水性能を向上できる。
【0026】
本発明に係る請求項6記載のセグメント用止水構造によれば、従来構造に比べさらに高い止水性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係るセグメント用止水構造に用いられるセグメント用止水部材をセグメントと共に表した分解斜視図である。
図2図1に示したセグメント用止水部材の組付けられた状態の側断面図である。
図3図1に示したセグメント用止水構造が適用されるシールドトンネルの断面図である。
図4】閉塞部材がセグメントの内面に沿って湾曲した変形例1に係るセグメント用止水部材の側断面図である。
図5】閉塞部材に溝部が形成された変形例2に係るセグメント用止水部材の側断面図である。
図6】閉塞部材が二重プレート構造となる変形例3に係るセグメント用止水部材の側断面図である。
図7】ボルトボックスに取り付けられる変形例4に係るセグメント用止水部材の斜視図である。
図8】変形例4に係るセグメント用止水部材の組付けられた状態の平断面図である。
図9】規制部材を具備する変形例5に係るセグメント用止水部材をセグメントと共に表した分解斜視図である。
図10図9に示したセグメント用止水部材の組付けられた状態の側断面図である。
図11】閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例6に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
図12】閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例7に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
図13】閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例8に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
図14】閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例9に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
図15】規制部材をセグメント内面に構成した変形例10を(a)に変形例11を(b)に示した側断面図である。
図16】シール部材のバリエーションを(a)(b)(c)に表した模式図である。
図17】シール部材の他のバリエーションを(a)(b)(c)(d)(e)に表した模式図である。
図18】セグメント用止水部材の加圧試験に用いた加圧装置の縦断面図である。
図19図18に示した加圧装置を平断面として見た模式図である。
図20】(a)は図19のA-A断面図、(b)は図19のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係るセグメント用止水構造に用いられるセグメント用止水部材11をセグメント13と共に表した分解斜視図である。
本実施形態に係るセグメント用止水部材11を用いたセグメント用止水構造は、シールドトンネル用のセグメント13のグラウト孔15に適用した場合の一例を説明する。セグメント用止水部材11を用いたセグメント用止水構造は、この他、セグメント13において止水性能を維持したい部分、例えば、セグメント同士を連結固定するためのボルトが貫通するボルトボックス等にも好適に用いることができる。
【0029】
図2図1に示したセグメント用止水部材11の組付けられた状態の側断面図である。
本実施形態に係るセグメント用止水部材11は、シール部材17と、閉塞部材19と、固定部材21と、を主要な構成として有する。
【0030】
セグメント用止水部材11は、施工時(トンネル覆工時)に、モルタル23等の止水工が完了したグラウト孔15に対して二重に止水を行うために設けられる。なお、セグメント用止水部材11は、既設のグラウト孔15に対する追加の止水構造や、経年劣化などを起こした際の修復のための構造としても使用可能である。
【0031】
図3図1に示したセグメント用止水構造が適用されるシールドトンネル25の断面図である。
シールドトンネル25は、構築する際に、掘削後にセグメント13を組み込み、セグメント同士を連結させて組み立て、その後、トンネル坑内27からセグメント13に形成されているグラウト孔15を通じてグラウトの注入作業を行う。これにより、地山29とセグメント外周面との隙間を塞ぐ。その後、グラウト孔15に、グラウトプラグ31が螺合される。グラウト孔15には、グラウトプラグ31を覆うモルタル23がさらに充填される。セグメント用止水部材11は、このモルタル23を覆って設けられる。
【0032】
シール部材17は、セグメント13の内面33に開口して地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる開口部35を包囲して環状に形成され、内面33に密着する。ここで、「地山29と通じる経路」とは、グラウト注入口を構成する注入管37の注入路等を言う。注入管37は、内面33でグラウト孔15となって開口する。「止水構造」とは、注入管37のグラウト孔15に螺合されるグラウトプラグ31、Oリング39、モルタル23等からなる構造を言う。厳密には、グラウト孔15は、内面33で拡径するテーパー穴41を有する。テーパー穴41には、内面33と略面一となるようにモルタル23が充填される。開口部35とは、「セグメント13を貫通し地山29から坑内27へと通ずる漏水発生可能箇所」と言うことができる。従って、本実施形態において、開口部35は、モルタル23が充填された後のテーパー穴41の拡径側となる。シール部材17は、このテーパー穴41の拡径側を包囲する。シール部材17は、防水リングとも称すことができる。
【0033】
シール部材17は、水膨張性ゴムからなる。水膨張性ゴムの材質としては、例えばクロロプレンゴムを用いることができる。シール部材17は、リング状に加工し、閉塞部材19に貼り付けてもよい。
【0034】
閉塞部材19は、シール部材17を挟んで、セグメント13の内面33の反対側で、シール部材17に密着する。閉塞部材19は、シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有する。従って、閉塞部材19は、シール部材17を挟んで開口部35を覆う。本実施形態において、閉塞部材19は、セグメント13の内面33に沿う平板で形成される。
【0035】
固定部材21は、閉塞部材19の周縁部43に周方向の複数箇所で配置される。本実施形態において、固定部材21には、アンカーボルトが用いられる。固定部材21は、一端側がセグメント13に設けられた下孔に固着する。固定部材21は、他端側が周縁部43を貫通する。この固定部材21の他端側には、雄ねじ部が形成される。周縁部43を貫通した雄ねじ部には、ナット45が螺合される。これにより、固定部材21は、閉塞部材19と内面33とでシール部材17を挟持して閉塞部材19をセグメント13の内面33に固定する。
【0036】
閉塞部材19は、周縁部43と内面33との間が、コーキング47によりさらに封止されてもよい。図2に示すように、コーキング47は、固定部材21を挟んでシール部材17の反対側の周縁部43と、内面33との間に充填、若しくは間隙を塞ぎ表出させないように配置形成される。
【0037】
以上のように構成されるセグメント用止水部材11及びセグメント用止水構造は、固定部材21が、閉塞部材19を介してシール部材17を所定の圧力で内面33に押し付ける。本実施形態では、固定部材21がアンカーボルトであるから、ナット45を締め付けることにより、閉塞部材19を介してシール部材17を所定の圧力で内面33に押し付けることができる。
【0038】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0039】
本実施形態に係るセグメント用止水部材11では、環状に形成されて内面33に密着するシール部材17により、開口部35が包囲される。開口部35は、セグメント13の内面33に開口する。この開口部35は、地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされている。
【0040】
シール部材17を挟んで内面33の反対側には、閉塞部材19がシール部材17に密着して設けられる。閉塞部材19は、シール部材17より外側に張り出す周縁部43を有して開口部35を覆う。閉塞部材19の周縁部43には、周方向の複数箇所で固定部材21が配置される。固定部材21は、一端側がセグメント13に固着される。固定部材21の他端側は、周縁部43を貫通して、閉塞部材19をセグメント13の内面33に固定する。つまり、シール部材17は、閉塞部材19と内面33とで挟持される。シール部材17は、閉塞部材19と内面33に密着することで、環状の内側に密閉空間49を形成する。セグメント13の内面33に設けられた開口部35は、この密閉空間49に臨んで配置される。
【0041】
開口部35は、グラウト孔15等とすることができる。また、地山29と通じる経路を水密シールする止水構造は、グラウト孔15に螺合されるグラウトプラグ31等とすることができる。この場合、グラウトプラグ31は、シール部材17により包囲された密閉空間49に臨んで配置されるので、シール部材17の厚み分、閉塞部材19から離間して配置される。これにより、グラウトプラグ31や止水工等は、閉塞部材19により直接押圧されなくなる。すなわち、既存の水密シール構造を損ねる、或いは圧壊等することがない。これに加え、新たな密閉空間49を形成し、既存のシール構造にクラック等が発生した場合に生じる漏水を二重の水密シール構造より止水する作用を得ることができる。その結果、漏水をより効果的に抑制することができるようになる。
【0042】
また、このセグメント用止水部材11では、シール部材17が、密着している状態よりも大きな所定の加圧力により、セグメント13の内面33及び閉塞部材19のセグメント対向面に押圧される。このシール部材17に対する所定の加圧力は、閉塞部材19を固定部材21によりセグメント13へ締結固定することにより得られる。シール部材17は、この所定の圧力により、弾性限度の範囲で弾性変形する。従って、シール部材17は、変形されることによって生じた内部応力(弾性復元力)により、より確実にセグメント13の内面33、及び閉塞部材19のセグメント対向面に水密に密着する。その結果、セグメント13の内面33等に生じている凹凸を吸収して高い止水性能を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態に係るセグメント用止水構造では、環状に形成されて内面33に密着するシール部材17により、開口部35が包囲される。開口部35は、セグメント13の内面33に開口する。この開口部35は、地山29と通じる経路が止水構造で水密シールされる。
【0044】
開口部35としては、例えばグラウトプラグ31が螺合したグラウト孔15や、セグメント同士を連結するための連結ボルトを収容し、モルタル23で覆われたボルトボックス51等が挙げられる。地山29と通じる経路を水密シールする止水構造とは、例えばグラウト孔15を塞ぐグラウトプラグ31や、ボルトボックス51とセグメント13本体との異素材によって発生の虞がある僅かな間隙等が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係るセグメント用止水構造では、上記したセグメント用止水部材11の作用と同様に、既存の水密シール構造を損ねる、或いは圧壊等することがない。これに加え、新たな密閉空間49を形成し、既存のシール構造にクラック等が発生した場合に生じる漏水を二重の水密シール構造より止水する作用を得ることができる。その結果、漏水をより効果的に抑制することができるようになる。
【0046】
次に、上記したセグメント用止水部材11の変形例を説明する。
【0047】
図4は閉塞部材19がセグメント13の内面33に沿って湾曲した変形例1に係るセグメント用止水部材55の側断面図である。
変形例1に係るセグメント用止水部材55は、閉塞部材57が、内面33に沿う板状部材である。
【0048】
このセグメント用止水部材55では、閉塞部材57が、セグメント13の内面33に沿って湾曲した板状部材となる。「内面33に沿う」とは、平坦な内面33に対して平行となる場合、凹曲面である内面33に対して湾曲面となって沿う場合の双方を含む。いずれの場合においても、閉塞部材57は、板状部材となることにより、開口部35を覆う止水構造を構成した際に、セグメント13の内面33からの突出距離を、ブロック状の部材で形成した場合に比べ小さくすることができる。その結果、水密シール構造を薄厚にでき、見栄えを損ねることがない。
【0049】
また、セグメント用止水部材55は、閉塞部材57が、内面33に沿う形状に塑性変形可能な成形材料であってもよい。
【0050】
セグメント用止水部材55では、成形材料が取り付けられる面、すなわち、セグメント13の内面33に合わせ、成形材料からなる閉塞部材57を、施工現場にて曲げ加工して使用することができる。例えば、セグメント13の内面33の曲率は様々なものがあり、施工現場にて、対応させる内面33の曲率に応じた曲率となる湾曲面で形成させる。
【0051】
成形材料としては、例えば剛性の高い金属板が挙げられる。金属板の素材としては、例えば防錆性、防食性の高いSUSが挙げられる。曲げ加工は、例えばローラーを用いた冷間曲げ加工とすることができる。その結果、シール部材17の変形量を全周囲で均等にでき、安定した止水性能を得ることができる。
【0052】
また、セグメント用止水部材55は、閉塞部材57の少なくともセグメント対向面が、内面33に沿う形状に予め成形されていてもよい。なお、閉塞部材57は、セグメント対向面と反対側の表面が、平坦面であってもよい。
【0053】
このセグメント用止水部材55では、シール部材17を挟持するセグメント13の内面33と、閉塞部材57のセグメント対向面との距離が、シール部材17の全周囲においてほぼ同一となる。これにより、閉塞部材57と内面33との間でシール部材17を変形させる際の圧縮率をシール部材17の全周囲でほぼ均等にすることができる。その結果、安定した止水性能を得ることができるとともに、予め内面33に沿う形状に成形されているので、現場での施工性を高めることができる。
【0054】
図5は閉塞部材59に溝部61が形成された変形例2に係るセグメント用止水部材63の側断面図である。
変形例2に係るセグメント用止水部材63は、閉塞部材59が、シール部材17の挟持方向における一部分を受け入れる溝部61を有する。
【0055】
このセグメント用止水部材63では、閉塞部材59のセグメント対向面に、環状のシール部材17の挟持方向における一部分を受け入れる溝部61が形成される。従って、溝部61も環状に形成される。挟持方向における一部分とは、シール部材17を形成している線状部材の断面形状における一部分である。つまり、溝部61に受け入れられたシール部材17は、一部分を除く他部分が、閉塞部材59のセグメント対向面から内面33に向かって突出する。この突出部分が、弾性変形可能な部分となる。弾性変形したシール部材17は、弾性復元力が、溝部61や内面33への密着力となる。
【0056】
シール部材17は、溝部61に接着等して固定しておくことが好ましい。セグメント用止水部材11は、シール部材17を予め溝部61に固定しておくことにより、シール部材17に位置ずれが生じにくくなる。また、搬送や設置時の作業性を良好にできる。その結果、シール部材17が位置ずれすることによる止水性能の低下を防止できる。
【0057】
図6は閉塞部材19が二重プレート構造となる変形例3に係るセグメント用止水部材65の側断面図である。
変形例3に係るセグメント用止水部材65は、実施形態で用いた平坦な閉塞部材19と、変形例1で用いた閉塞部材57とを、重ねた二重プレート構造としてもよい。この場合、閉塞部材57を挟んで内面33の反対側に、閉塞部材19が配置される。二重プレート構造では、閉塞部材19を締結用プレートとし、閉塞部材57をシール用プレートとすることができる。この場合、シール用プレートとして使用する閉塞部材57は、樹脂製としてもよい。
【0058】
この変形例3に係る二重プレート構造によれば、湾曲する閉塞部材57を用いることにより、シール部材17を変形させる際の圧縮率をシール部材17の全周囲でほぼ均等にすることができる。また、二重プレート構造によれば、曲率の異なる湾曲板を、セグメント13の内面33に合わせ、予め複数種用意することもできる。
【0059】
図7はボルトボックス51に取り付けられる変形例4に係るセグメント用止水部材67の斜視図である。
変形例4に係るセグメント用止水部材67は、開口部35が、ボルトボックス51の坑内側開口部となる。この場合、「地山29と通じる経路を水密シールする止水構造」とは、セグメント13の連結対向面に設けられて、セグメント同士の間に挟まれるパッキン53となる。隣接するセグメント13では、連結部でそれぞれのボルトボックス51が連続して、矩形状や長円形状の開口部35となる。シール部材17は、これら矩形状や長円形状の開口部35を包囲する長円形状で形成される。また、閉塞部材69もこれら矩形状や長円形状の開口部35よりも大きい矩形状で形成される。
【0060】
図8は変形例4に係るセグメント用止水部材67の組付けられた状態の平断面図である。
隣接するセグメント13は、それぞれのボルトボックス51の一方から他方へ挿通された連結用ボルト71の先端に、連結用ナット73が締結されて連結されて行く。締結の完了したボルトボックス51には、モルタル23が充填される。セグメント用止水部材67は、このモルタル23が充填されたボルトボックス51の開口部35を包囲してシール部材17及び閉塞部材69が、固定部材21により内面33に固定される。
【0061】
図9は規制部材を具備する変形例5に係るセグメント用止水部材をセグメントと共に表した分解斜視図、図10図9に示したセグメント用止水部材の組付けられた状態の側断面図である。
変形例5に係るセグメント用止水部材101は、規制部材103を具備する。
【0062】
このセグメント用止水部材101では、閉塞部材105が平板よりなり、閉塞部材105とセグメント13の内面33との間に規制部材103を介設する。 規制部材103は、円形の平板材に円形の貫通部分をくり抜き形成した無端環状に形成されており、貫通部分の内径が、シール部材17を内装する径、或いはシール部材17の外径とほぼ同じになるよう設定され、また、厚みをシール部材17の直径よりも小さく設定し、且つこのシール部材17を圧縮した際、すなわち止水性能を得られる状態での圧縮方向の径よりも小さい値として形成され、図10に示すように断面矩形状で、この断面形状が連続する環状の部材とされる。
【0063】
このセグメント用止水部材101によれば、規制部材103がシール部材17の外周にシール部材17を取り囲むように位置し、閉塞部材105とセグメント13の内面33との間でシール部材17とともに挟持状態となる。すなわち、シール部材17は、環状の規制部材103の内側に位置する。
【0064】
この状態でシール部材17は閉塞部材105とセグメント13の内面33とに密着し、漏水を抑制することとなり、この漏水によってシール部材17が膨張した際には、径の外方への膨張変形が起こっても、規制部材103により閉塞部材105と内面33との間を面に沿って膨張変形してしまうことを抑え、すなわち、閉塞部材105の面とセグメント内面33と規制部材103の内径側とで三方向をシール部材17が囲まれていることとなり、規制部材103の内側、つまり密閉空間49内方向での膨張となって三方向の各面に対して確実に密着してシール性を向上でき、漏水をより効果的に抑制することができることとなる。
【0065】
なお、上記した閉塞部材105は、セグメント13の内面33に沿う湾曲した板状部材よりなることとしてもよい。その場合、規制部材103も閉塞部材105及び内面33に沿って湾曲した形状、或いは可撓性を備えることで閉塞部材105と内面33とに沿って湾曲変形可能とすることが好ましい。また、図10に示すように、ナット45を覆う樹脂キャップ46が設けられることで、金属製のナット45の防錆効果を得られる。
【0066】
図11は閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例6に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
変形例6に係るセグメント用止水部材107は、規制部材109が閉塞部材111と一体に構成されている。
【0067】
図11(a)に示すように、閉塞部材111のセグメント内面33に対向する面には、規制部材としての規制部109が突設される。規制部109は、板面に対して畦状に突出し、無端環状に形成される。規制部109の内径は、シール部材17の外径より大きく、或いは同等に設定されて形成され、規制部109の内側にシール部材17が収容状態となる。また、規制部109の高さ(厚み)は、シール部材17が圧縮された状態での厚みよりも小さく設定され、シール部材17のセグメント内面33への密着を妨げないようになっている。
【0068】
このセグメント用止水部材107によれば、上記変形例5と同様に、シール部材17は閉塞部材111とセグメント13の内面33とに密着し、漏水を抑制することとなり、この漏水によってシール部材17が膨張した際には、径の外方への膨張変形が起こっても、規制部109により閉塞部材111と内面33との間を面に沿って膨張変形してしまうことを抑え、すなわち、閉塞部材111の面とセグメント内面33と規制部109の内径側とで三方向をシール部材17が囲まれていることとなり、規制部109の内側、つまり密閉空間49内(図10参照)での膨張となって三方向の各面に対して確実に密着してシール性を向上でき、漏水をより効果的に抑制することができることとなる。
【0069】
また、このセグメント用止水部材107によれば、閉塞部材111と規制部109とが一体構造であることで、取り扱いが容易となり、さらには、規制部109の内側に予めシール部材17を取り付けておくこと、例えば規制部109の内側における閉塞部材板面に接着剤などでシール部材17を固定することが可能となる。このように予め固定させておくことで、さらに取り扱いが容易となるもので、セグメント13への装着時にシール部材17を脱落させてしまうことなく、作業を簡便にすることが可能となる。
【0070】
図12は閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例7に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
変形例7に係るセグメント用止水部材113は、図12(a)に示すように、閉塞部材115を厚みのある板材で構成し、セグメント内面33に対向する面に円形の凹部を形成して、この凹部の内周面部分を規制部材としての規制部117として構成している。
【0071】
規制部117は、内径がシール部材17の外径より大きく、或いは同等に設定されて形成され、規制部117の内側にシール部材17が収容状態となる。また、規制部117の高さは、シール部材17が圧縮された状態での厚みよりも小さく設定され、シール部材17のセグメント内面33への密着を妨げないようになっている。
【0072】
このセグメント用止水部材113によれば、上記変形例6と同様に、シール部材17は閉塞部材115とセグメント13の内面33とに密着し、漏水を抑制することとなり、この漏水によってシール部材17が径の外方への膨張変形が起こっても、閉塞部材115の板面とセグメント内面33と規制部117の内径側とで三方向をシール部材17が囲まれていることとなり、規制部117の内側、つまり密閉空間49内(図10参照)での膨張となって三方向の各面に対して確実に密着してシール性を向上でき、漏水をより効果的に抑制することができることとなる。
【0073】
また、このセグメント用止水部材113によれば、閉塞部材115と規制部117とが一体構造であることで、取り扱いが容易となり、さらには、規制部117の内側に予めシール部材17を取り付けておくことが可能となる。また、閉塞部材115が全体に厚みを持った構成であり、剛性が向上し、固定部材21の貫通状態が増し、安定して支持される。このように予め固定させておくことで、さらに取り扱いが容易となるもので、セグメント13への装着時にシール部材17を脱落させてしまうことなく、作業を簡便にすることが可能となる。
【0074】
図13は閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例8に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
変形例8に係るセグメント用止水部材119は、図13(a)に示すように、閉塞部材121のセグメント内面33に対向する面に無端環状の突条を形成し、この突条を規制部材としての規制部123として構成するとともに、規制部123の内側に規制部123に沿って溝部125が形成されている。
【0075】
このセグメント用止水部材119では、閉塞部材121のセグメント対向面に、環状のシール部材17の挟持方向における一部分を受け入れる環状の溝部125が形成される。溝部125の外周には規制部123が突条状に形成され、規制部123も環状とされて、この規制部123の内側面と溝部125の内面が連続して形成される。図13(b)に示すように、溝部125を形成するために、この溝部125よりも内側となる閉塞部材121としての厚みを周縁部127よりも厚く設定しており、溝部125の深さはシール部材17の一部分が受け入れられ、また、溝部125の周囲に規制部123が突出するように形成される。規制部123は、内径がシール部材17の外径より大きく、或いは同等に設定されて形成され、規制部123の内側にシール部材17が収容状態となる。また、規制部123の高さは、シール部材17が圧縮された状態での厚みよりも小さく設定され、シール部材17のセグメント内面33への密着を妨げないようになっている。
【0076】
このセグメント用止水部材119によれば、上記変形例6,7と同様に、シール部材17は閉塞部材121とセグメント13の内面33とに密着し、漏水を抑制することとなり、この漏水によってシール部材17が径の外方への膨張変形が起こっても、閉塞部材121の溝部125とセグメント内面33と規制部123の内径側とで三方向をシール部材17が囲まれていることとなり、規制部123の内側、つまり密閉空間49内(図10参照)での膨張となって三方向の各面に対して確実に密着してシール性を向上でき、漏水をより効果的に抑制することができることとなる。
【0077】
また、このセグメント用止水部材119によれば、閉塞部材121と規制部123とが一体構造であることで、取り扱いが容易となり、さらには、規制部123の内側において、溝部125内に予めシール部材17を取り付けておくことが可能となる。シール部材17は、溝部125に接着等して固定することとしてもよい。このように予め固定させておくことで、さらに取り扱いが容易となるもので、セグメント13への装着時にシール部材17の位置ズレの防止や脱落させてしまうことなく、作業の煩雑さを低減させることが可能となる。また、シール部材17の位置ズレを防ぐことで止水性能の低下を防止できる。
【0078】
図14は閉塞部材と規制部材とが一体構造となる変形例9に係るセグメント用止水部材の一部斜視図を(a)に側断面図を(b)に示した図である。
変形例9に係るセグメント用止水部材129は、上述した変形例7のセグメント用止水部材113と変形例8のセグメント用止水部材119とを合わせた構成とされ、閉塞部材131を厚みのある板材で構成し、セグメント内面33に対向する面に円形の凹部を形成して、この凹部の内周面部分を規制部材としての規制部133として構成し、凹部内となる規制部133の内側に規制部133に沿って溝部135が形成された構成となっている。
【0079】
このセグメント用止水部材129では、規制部133が、内径がシール部材17の外径より大きく、或いは同等に設定されて形成され、規制部133の内側にシール部材17が収容状態となる。規制部133の高さは、シール部材17が圧縮された状態での厚みよりも小さく設定され、シール部材17のセグメント内面33への密着を妨げないようになっている。また、規制部133の内側となる閉塞部材131のセグメント対向面には、環状のシール部材17の挟持方向における一部分を受け入れる環状の溝部135が形成される。溝部135の外周に位置する規制部133は、その内側面と溝部135の内面が連続して形成される。図14(b)に示すように、溝部135を形成するために、この溝部135よりも内側となる閉塞部材131の厚みをやや厚く設定しており、溝部135の深さはシール部材17の一部分が受け入れられ、また、溝部135の周囲に規制部133が囲むように形成される。規制部133は、内径がシール部材17の外径より大きく、或いは同等に設定されて形成され、規制部133の内側にシール部材17が収容状態となり、また、規制部133の溝部135からの高さは、シール部材17が圧縮された状態での厚みよりも小さく設定され、シール部材17のセグメント内面33への密着を妨げないようになっている。
【0080】
このセグメント用止水部材129によれば、上記変形例8と同様に、シール部材17は閉塞部材131とセグメント13の内面33とに密着し、漏水を抑制することとなり、この漏水によってシール部材17が径の外方への膨張変形が起こっても、閉塞部材131の溝部135とセグメント内面33と規制部133の内径側とで三方向をシール部材17が囲まれていることとなり、規制部133の内側、つまり密閉空間49内(図10参照)での膨張となって三方向の各面に対して確実に密着してシール性を向上でき、漏水をより効果的に抑制することができることとなる。
【0081】
また、このセグメント用止水部材129によれば、閉塞部材131と規制部133とが一体構造であることで、取り扱いが容易となり、さらには、規制部133の内側において、溝部135内に予めシール部材17を取り付けておくことが可能となる。シール部材17は、溝部135に接着等して固定することとしてもよい。このように予め固定させておくことで、さらに取り扱いが容易となるもので、セグメント13への装着時にシール部材17の位置ズレの防止や脱落させてしまうことなく、作業の煩雑さを低減させることが可能となる。また、シール部材17の位置ズレを防ぐことで止水性能の低下を防止できる。また、閉塞部材131の周縁部137を厚みのある構成としたことで、剛性が向上し、固定部材21の貫通状態が増し、安定して支持される。
【0082】
図15は規制部材をセグメント内面に構成した変形例10を(a)に変形例11を(b)に示した側断面図である。
上述した変形例5~9においては、規制部材(103,109,117,123,133)を閉塞部材(105,111,115,121,131)と一体に構成した例として示したが、規制部材をセグメント13の内面33に構成させ、すなわちセグメント13と一体構造としてもよい。
【0083】
変形例10に係るセグメント用止水部材141では、図15(a)に示すように、セグメント13の内面33に開口するグラウト孔15の開口部35の周囲を囲むように、規制部材としての規制部143が畦状に形成される。規制部143は、無端環状に形成されており、開口部35の周囲において、開口部35の縁部より外側に位置してセグメント内面33から突出するように設けられる。開口部35の縁部に近接する周囲は、シール部材17が密着する面とされ、シール部材17の内径が開口部35の直径と同等、若しくは開口部35の直径よりもシール部材17の内径が大きく設定され、開口部35を囲むようにシール部材17が配置され、シール部材17の外径よりも大きい内径となるように規制部143が形成され、規制部143の内側にシール部材17が収容状態となる。規制部143の高さ(厚み)は、シール部材17が圧縮された状態での厚みよりも小さく設定される。また、この変形例10においては、閉塞部材145は平板状に形成される。
【0084】
このセグメント用止水部材141によれば、上記変形例6と同様に、シール部材17は閉塞部材145とセグメント13の内面33とに密着し、漏水を抑制することとなり、この漏水によってシール部材17が膨張した際には、径の外方への膨張変形が起こっても、規制部143により閉塞部材145と内面33との間を面に沿って膨張変形してしまうことを抑え、すなわち、閉塞部材145の面とセグメント内面33と規制部143の内径側とで三方向をシール部材17が囲まれていることとなり、規制部143の内側、つまり密閉空間49内(図10参照)での膨張となって三方向の各面に対して確実に密着してシール性を向上でき、漏水をより効果的に抑制することができることとなる。
【0085】
また、このセグメント用止水部材141によれば、セグメント13と規制部143とが一体構造であることで、規制部143の内側に予めシール部材17を取り付けておくこと、例えば規制部143の内側におけるセグメント内面33に接着剤などでシール部材17を固定することが可能となる。このように予め固定させておくことで、シール部材17の脱落を防ぎ、作業性を低下させることがなく、また、シール部材17の位置ズレを防ぐことが可能となる。
【0086】
変形例11に係るセグメント用止水部材149では、図15(b)に示すように、変形例10と同様、セグメント13の内面33に開口するグラウト孔15の開口部35の周囲を囲むように、規制部材としての規制部151が畦状に形成される。この変形例11においては、上述した変形例8と同様に、規制部151の内側に規制部151に沿って溝部153が形成されている。
【0087】
溝部153は、セグメント内面33の開口部35の周囲に形成されており、シール部材17の挟持方向における一部分を受け入れるように形成される。溝部153の外周には規制部151が突条状に形成され、規制部151も環状とされて、この規制部151の内側面と溝部153の内面が連続して形成される。この溝部153内にてシール部材17が密着する面とされ、開口部35を囲むようにシール部材17が配置され、シール部材17の外径よりも大きい内径となるように規制部151が形成され、規制部151の内側にシール部材17が収容状態となる。規制部151の高さ(厚み)は、シール部材17が圧縮された状態での厚みよりも小さく設定される。また、この変形例11においては、閉塞部材155は平板状に形成される。
【0088】
このセグメント用止水部材149によれば、シール部材17は閉塞部材155とセグメント13の内面33とに密着し、漏水を抑制することとなり、この漏水によってシール部材17が径の外方への膨張変形が起こっても、閉塞部材155の面とセグメント内面33の溝部153と規制部151の内径側とで三方向をシール部材17が囲まれていることとなり、規制部151の内側、つまり密閉空間49内(図10参照)での膨張となって三方向の各面に対して確実に密着してシール性を向上でき、漏水をより効果的に抑制することができることとなる。
【0089】
また、このセグメント用止水部材149によれば、セグメント13と規制部151とが一体構造であることで、規制部151の内側における溝部153に予めシール部材17を取り付けておくこと、例えば溝部153に接着剤などでシール部材17を固定することが可能となる。このように予め固定させておくことで、シール部材17の脱落を防ぎ、作業性を低下させることがなく、また、シール部材17の位置ズレを防ぐことが可能となる。
【0090】
このように構成された変形例10と変形例11においては、セグメント13の内面33に規制部143,151が形成されることで、閉塞部材145,155は平板で構成でき、部材としての加工が少なく、セグメント用止水部材141,149として簡素な構成とすることが可能となる。
【0091】
なお、上述した変形例5~11における規制部材(規制部)は、それぞれ環状に形成されシール部材17を囲むように連続した構成とされた例を述べたが、この規制部材(規制部)は、シール部材17を囲み、周方向に断続して形成される構成としてもよい。すなわち、規制部材或いは規制部の形状として、閉塞部材とセグメントの内面との間において駒状に断続して配置される、或いは断続して形成されるような構成としてもよく、シール部材17の外方向への膨張を規制するように、閉塞部材とセグメント内面との間隙部分に設けられることとする。このような構成であっても、上記同様に、シール部材17が膨張変形した際に、径の外方への変形を抑え、漏水を抑制することができる。
【0092】
次に、シール部材17のバリエーションを説明する。
【0093】
図16はシール部材17のバリエーションを(a)(b)(c)に表した模式図である。
シール部材17は、図16(a)に示すように、水膨張性材料からなる線状部材を、断面円形状の中実の水膨張部75で形成することができる。この場合、シール部材17を安価に製造できる。
【0094】
また、図16(b)に示すシール部材17は、水膨張性材料からなる水膨張部75と、水膨張性材料を含まない非水膨張部77と、から形成する。
【0095】
図16(b)に示すシール部材17は、線状部材における断面形状の外側を水膨張性材料で形成し、断面形状の内側を非水膨張部77で形成する。このような二重構造の線状部材で形成したシール部材17は、外側の水膨張性材料により止水性能が得られるとともに、内側の非水膨張部77により長手方向の膨張が規制される。これにより、シール部材17は、位置ずれを抑制して、周方向に膨張することが可能となり、セグメント13の内面33及び閉塞部材19に確実に密着し、良好な止水性能を得ることができる。その結果、シール部材17の位置ずれを規制しながら、高い止水性能を得ることができる。
【0096】
図16(c)に示すように、線状部材は、図16(b)に示した非水膨張部77に中空部79を設けてもよい。
【0097】
図17はシール部材17の他のバリエーションを(a)(b)(c)(d)(e)に表した模式図である。
また、シール部材17は、図17(a)に示すように、線状部材における断面形状の外側を水膨張部75で形成し、断面形状の内側を非水膨張部77で形成する。非水膨張部77には、中空部79を設ける。中空部79の内周面には、スプライン状の複数の凹凸部81を形成する。また、外側の水膨張部75には、線状部材の延在方向に沿う凸条83(リップ)を、線状部材の円周方向に複数等間隔で設けてもよい。
【0098】
図17(a)に示すシール部材17によれば、閉塞部材19と内面33とで挟まれ、線状部材が半径方向内側に圧縮された際、中空部79の凹凸部81が噛み合い、線状部材の捩れを抑制できる。また、凸条83が閉塞部材19や内面33に密着し、リップとして作用するので、複数段の止水構造を形成することができる。これにより、より高い止水性能を得ることができる。
【0099】
この他、シール部材17は、図17(b)(c)(d)(e)に示すように、線状部材の断面形状を四角形、台形、六角形、蒲鉾形とすることができる。これらの形状では、特に閉塞部材19との接着面を大きく確保することが容易となる。
【0100】
従って、本実施形態に係るセグメント用止水部材11及びセグメント用止水構造によれば、従来構造に比べさらに高い止水性能を得ることができる。
【実施例
【0101】
次に、上記した実施形態のセグメント用止水部材11を用いたセグメント用止水構造に対して加圧試験を行った試験結果を説明する。
【0102】
図18はセグメント用止水部材11の加圧試験に用いた加圧装置85の縦断面図、図19図18に示した加圧装置85を平断面として見た模式図、図20(a)は図19のA-A断面図、(b)は図19のB-B断面図である。
[試験方法]
試験方法は、2枚の金属板87,89に、上記のシール部材17に相当する止水リング試料91を挟み込み、中央の密閉空間49に一定水圧をかけ、漏水するか否かを確認した。
【0103】
2枚の金属板87,89は、トンネル壁面に取り付けることを想定した治具とした。すなわち、一方の金属板87は、平板とした。他方の金属板89は、R2500mmの曲面とした。金属板89は、図19の左右方向を周方向、図19の上下方向をトンネル坑内奥行き方向とした。すなわち、図19はセグメント13の内面33を見上げた天面または見下げた底面を表している。金属板87と金属板89とは、周縁を複数の締結ボルト93で固定した。金属板89には、止水リング試料91の内周側となる密閉空間49に通じる圧力計95を取り付けた。また、金属板89には、試験において水圧を正しくかけるために密閉空間49の空気を抜くためのエアー抜き栓97を設けた。
【0104】
止水リング試料91の圧縮率は、場所によって異なった。曲面の凹部頂点に近い個所は圧縮率が低く、曲面の凹部頂点から遠ざかるほど圧縮率は高くなった。すなわち、止水リング試料91は、図19のA-A断面とB-B断面において、図20に示すように、曲面の凹部頂点から遠ざかる位置の線径aが、曲面の凹部頂点に近い位置の線径bよりも小さく圧縮された(a>b)。
【0105】
[止水リング試料]
止水リング試料91は、サンプル品番:No.1、No.2、No.3の3種類を使用した。
No.1は、図16(a)に示した中実の水膨張部75を有する構造、
No.2は、図16(b)に示した中実の内側に非水膨張部77、外側に水膨張部75を有する構造、
No.3は、図16(c)に示した中空の内側に非水膨張部77、外側に水膨張部75を有する構造、とした。
【0106】
止水リング試料91の諸寸法は、
ストリップの径:16mm、
非膨張部の径(No.2、No.3):10mm、
リング径:(内径)180mm、(外径)212mm、
圧縮率:(端部)5mm圧縮、(中央部)3mm圧縮、
水圧:0.5MPa、とした。
【0107】
[試験結果]
No.1は、漏水せず、
No.2は、漏水せず、
No.3は、密閉空間49の内部圧力が0.2MPaまで止水できることで知見できた。
なお、No.2においては、非膨張部を中実状態で内側に備えることで、周長方向で膨張することが無く、試験の前後におけるリング状態を保ち、断面積が増大する方向にのみ膨張、すなわち金属板87,89間に対して密着面が増えて止水することとなることが知見できた。
【0108】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。例えば上記の構成例では、閉塞部材が板状部材である例を説明したが、閉塞部材は、ブロック状のものであってもよい。また、セグメントの形状においても、通常は内面が湾曲形成されたものであり、グラウト孔の周囲においても凹面であるが、このグラウト孔の周囲のみ平滑な形状に形成して、閉塞部材を上記した平板として組み合わせるものでもよい。
【符号の説明】
【0109】
11…セグメント用止水部材
13…セグメント
17…シール部材
19,57,59,69…閉塞部材
21…固定部材
25…シールドトンネル
29…地山
33…内面
35…開口部
43…周縁部
61…溝部
55,63,65,67…セグメント用止水部材
75…水膨張部
77…非水膨張部
101,107,113,119,129,141,149…セグメント用止水部材
103…規制部材
105,111,115,121,131,145,155…閉塞部材
109,117,123,133,143,151…規制部(規制部材)
125,135,153…溝部
図1
図2
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