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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240712BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240712BHJP
【FI】
F21S2/00 431
F21S2/00 433
F21S2/00 435
F21Y115:10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023505142
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2022000194
(87)【国際公開番号】W WO2022190602
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021039071
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真文
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 延幸
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-348515(JP,A)
【文献】特開2009-158468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、複数のLEDと、前記導光板の上面側にプリズムシートを配置し、前記導光板の下面側に反射シートを配置した照明装置であって、
前記複数のLEDは、前記導光板の第1の辺に対応する側面に、第1の辺に沿って第1の方向に配列し、
前記プリズムシートの第1のプリズムアレイは前記導光板に対向する面に形成され、前記第1のプリズムアレイのプリズムは、前記第1の方向に延在し、前記第1の方向と直角方向の第2の方向に配列し、
前記導光板の前記上面と前記プリズムシートとの間に拡散シートが存在し、
前記拡散シートのヘイズ値は、JIS K7361で測定したときに、30%乃至65%であり、
前記第1のプリズムアレイの前記プリズムの頂角は、55度乃至66度であり、
前記導光板の前記上面には、前記第2の方向に延在し、前記第1の方向に配列する第2のプリズムアレイが形成され、
前記導光板の前記下面には、前記第1の方向に延在し、前記第2の方向に配列する第3のプリズムアレイが形成され、
前記第1のプリズムアレイに形成された前記プリズムのピッチは、前記第2のプリズムアレイに形成されたプリズムのピッチ及び前記第3のプリズムアレイに形成されたプリズムのピッチよりも大きいことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記拡散シートのヘイズ値は、JIS K7361で測定したときに、30%乃至55%であり、
前記第1のプリズムアレイの前記プリズムの頂角は、59度乃至66度であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記拡散シートのヘイズ値は、JIS K7361で測定したときに、35%乃至55%であり、
前記第1のプリズムアレイの前記プリズムの頂角は、60度乃至64度であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記導光板の前記上面から出射する光の主光線の方向は、前記導光板の前記上面の法線に対して傾いた方向であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向と、前記プリズムシートの法線方向とのなす角度は、前記導光板の前記上面から出射する光の主光線の方向の、前記導光板の前記上面の法線とのなす角度よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向は、前記プリズムシートの法線方向であることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項7】
導光板と、複数のLEDと、前記導光板の上面側にプリズムシートを配置し、前記導光板の下面側に反射シートを配置した照明装置であって、
前記複数のLEDは、前記導光板の第1の辺に対応する側面に、第1の辺に沿って第1の方向に配列し、
前記プリズムシートの第1のプリズムアレイは前記導光板に対向する面に形成され、前記第1のプリズムアレイのプリズムは、前記第1の方向に延在し、前記第1の方向と直角方向の第2の方向に配列し、
前記導光板の前記上面と前記プリズムシートとの間に拡散シートが存在し、
前記拡散シートのヘイズ値は、JIS K7361で測定したときに、30%乃至65%であり、
前記第1のプリズムアレイの前記プリズムの頂角は、55度乃至66度であり、
前記導光板の前記上面には、前記第2の方向に延在し、前記第1の方向に配列する第2のプリズムアレイが形成され、
前記導光板の前記下面には、前記第1の方向に延在し、前記第2の方向に配列する第3のプリズムアレイが形成され、
前記第1のプリズムアレイに形成された前記プリズムの頂角は、前記第2のプリズムアレイに形成されたプリズムの頂角及び前記第3のプリズムアレイに形成されたプリズムの頂角よりも小さいことを特徴とする照明装置。
【請求項8】
前記導光板の前記上面から出射する光の主光線の方向は、前記導光板の前記上面の法線に対して傾いた方向であることを特徴とする請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向と、前記プリズムシートの法線方向とのなす角度は、前記導光板の前記上面から出射する光の主光線の方向の、前記導光板の前記上面の法線とのなす角度よりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向は、前記プリズムシートの法線方向であることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項11】
導光板と、複数のLEDと、前記導光板の上面側にプリズムシートを配置し、前記導光板の下面側に反射シートを配置した照明装置であって、
前記複数のLEDは、前記導光板の第1の辺に対応する側面に、第1の辺に沿って第1の方向に配列し、
前記プリズムシートの第1のプリズムアレイは前記導光板に対向する面に形成され、前記第1のプリズムアレイのプリズムは、前記第1の方向に延在し、前記第1の方向と直角方向の第2の方向に配列し、
前記導光板の前記上面と前記プリズムシートとの間に拡散シートが存在し、
前記拡散シートのヘイズ値は、JIS K7361で測定したときに、30%乃至65%であり、
前記第1のプリズムアレイの前記プリズムの頂角は、55度乃至66度であり、
前記導光板の前記上面には、前記第2の方向に延在し、前記第1の方向に配列する第2のプリズムアレイが形成され、
前記導光板の前記下面には、前記第1の方向に延在し、前記第2の方向に配列する第3のプリズムアレイが形成され、
前記第1のプリズムアレイに形成された前記プリズムの高さは、前記第2のプリズムアレイに形成されたプリズムの高さ及び前記第2のプリズムアレイに形成されたプリズムの高さよりも大きいことを特徴とする照明装置。
【請求項12】
前記導光板の前記上面から出射する光の主光線の方向は、前記導光板の前記上面の法線に対して傾いた方向であることを特徴とする請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向と、前記プリズムシートの法線方向とのなす角度は、前記導光板の前記上面から出射する光の主光線の方向の、前記導光板の前記上面の法線とのなす角度よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向は、前記プリズムシートの法線方向であることを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型で、配光角度が小さい照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機や電車の各座席にコリメートされた光を投射する需要がある。このようなコリメート光を小型で薄型の照明装置によって実現したいという需要もある。一方、照明装置から出射する光を整形したい場合、あるいは、出射光の向きを変えたい場合、例えば、照明装置の光の出射面にレンズ、液晶レンズ、その他の屈折手段を配置して出射光の角度を変えることが出来る。このような場合でも、照明装置からの出射光が均一でコリメートされていれば、正確に光の制御をすることが出来る。
【0003】
特許文献1には、直下型の光源の上に出射光の配光角を変えるためのレンズあるいは反射板を配置し、その上に光の向きを変えるための屈折手段を配置した構成が記載されている。これらの屈折手段として、レンズ、プリズム、液体レンズ、液晶レンズ等を用いることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、液晶レンズを、出射光の整形手段、あるいは、出射光の向きを変える手段として、種々の光学装置に用いる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-69409
【文献】WO2012/099127 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
照明装置でも、例えば、スポットライトとして使用したい場合等では、高い指向性を持った光、すなわち、配光角の小さい照明装置が要求される。このような照明装置には、従来は、放物面鏡を用いて平行光を形成する構成が用いられてきた。しかし、このような光源は、奥行きが必要であり光源自体を小型化、あるいは、薄型化することが難しい。
【0007】
一方、薄型の照明装置を用いた場合、配光角を小さくすることが困難である。このような薄型の照明装置として、導光板の側面に光源としてのLEDを配置し、導光板の主面にプリズムシートを配置して光の向きを制御する方式がある。しかし、この方式は、プリズムにおいて光を全反射させることに関連して照射光にぎらつきが生ずるという問題ある。また、導光板の主面等に異物が存在すると、これが欠陥として目立ちやすいという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、薄型で、配光角が小さく、かつ、ぎらつきがなく、出射光に欠陥が目立ちにくい照明装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)導光板と、複数のLEDと、前記導光板の上面側にプリズムシートを配置し、前記導光板の下面側に反射シートを配置した照明装置であって、前記複数のLEDは、前記導光板の第1の辺に対応する側面に、第1の辺に沿って第1の方向に配列し、前記プリズムシートの第1のプリズムアレイは前記導光板に対向する面に形成され、前記第1のプリズムアレイのプリズムは、前記第1の方向に延在し、前記第1の方向と直角方向の第2の方向に配列し、前記導光板の前記上面と前記プリズムシートとの間に拡散シートが存在し、前記拡散シートのヘイズ値は、JIS K7361で測定したときに、30%乃至65%であり、前記第1のプリズムアレイの前記プリズムの頂角は、55度乃至66度であることを特徴とする照明装置。
【0011】
(2)前記導光板の前記上面から出射する光の主光線の方向は、前記導光板の上面の法線に対して傾いた方向であることを特徴とする(1)に記載の照明装置。
【0012】
(3)前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向と、前記プリズムシートの法線方向とのなす角度は、前記導光板の上面から出射する光の主光線の方向の、前記導光板の上面の法線とのなす角度よりも小さいことを特徴とする(2)に記載の照明装置。
【0013】
(4)前記プリズムシートから出射する光の主光線の方向は、前記プリズムシートの法線方向であることを特徴とする(2)に記載の照明装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】比較例1の照明装置の分解斜視図である。
図2図1のA部詳細図である。
図3】プリズムシートの平面図及び断面図である。
図4】導光板の上にプリズムシートを配置した断面図である。
図5】プリズムシートに入射した光の挙動を示す断面図である。
図6】極角を定義する図である。
図7図4の構成の配光角特性の例を示すグラフである。
図8】プリズムシートの上に拡散シートを配置した断面図である。
図9図8の構成の配光角特性の例を示すグラフである。
図10】導光板とプリズムシートの間に拡散シートを配置した断面図である。
図11図10による配光角特性の例を示すグラフである。
図12】本発明の実施例1による構成を示す断面図である。
図13図12の構成による配光角特性の例を示すグラフである。
図14】導光板からの出射光の向きを示す断面図である。
図15】実施形態1による拡散シートからの出射光の向きを示す断面図である。
図16】実施形態1によるプリズムシートからの出射光の向きを示す断面図である。
図17図16の構成による配光角特性の例を示すグラフである。
図18】実施形態2による拡散シートからの出射光の向きを示す断面図である。
図19】実施形態2によるプリズムシートからの出射光の向きを示す断面図である。
図20図19の構成による配光角特性の例を示すグラフである。
図21】本発明による拡散シートのヘイズ値とプリズムシートのプリズムの頂角の関係を示すグラフである。
図22】実施例1の照明装置の分解斜視図である。
図23】比較例2の照明装置の分解斜視図である。
図24】実施例2の照明装置の分解斜視図である。
図25】実施例2における導光板からの出射光を示す断面図である。
図26】実施例2における第1の例による拡散シートからの出射光を示す断面図である。
図27】実施例2における第2の例による拡散シートからの出射光を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に実施例によって本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、薄型照明装置の基本的な構成を示す分解斜視図である。本明細書では、図1の構成を比較例1と呼ぶこともある。図1の構成は、導光板10の側面にLED40を配置した、いわゆるサイドライト方式の照明装置であり、照明装置を薄くすることが出来る。
【0017】
図1において、導光板10の側面にLED40が等間隔で配置している。LED40はLED基板41に搭載されている。導光板10の下面に反射シート20が配置している。反射シート20は、導光板10から下方に向かう光を反射して出射面側である上側に向ける。反射シート20は、例えば、3M製のESR(Enhanced Specular Reflector)を用いることが出来る。厚さは例えば70μm程度である。
【0018】
図1において、反射シート20の上に導光板10が配置している。導光板10の厚さは2mm程度である。導光板10は、側面から入射したLED40からの光を出射面である上方向に向ける役割を有する。導光板10の下面方向に向かう光は、反射シート20によって、出射面がある、上方向に反射される。
【0019】
導光板10は、サイドから入射した光を効率よく、主面から出射させて面光源とするために、上面及び下面にプリズムアレイが形成されている。導光板10の上面及び下面に形成されたプリズムアレイは、プリズムシート30に形成されたプリズムアレイとは非常に異なっている。
【0020】
導光板10の上面あるいは下面に形成されるプリズムアレイは導光板10からの光の出射角を規定する。導光板10、LED40、反射シート20、プリズムシート30等は外枠100内に収容される。
【0021】
図2は、図1の丸で囲った領域Aの詳細斜視図である。図2では、外枠100は省略されている。導光板10は、側面から入射した光を効率よく、主面から出射させて面光源とするために、上面及び下面にプリズムアレイが形成されている。導光板10の上面及び下面に形成されたプリズムアレイは、プリズムシート30に形成されたプリズムアレイとは非常に異なっている。
【0022】
導光板10の上面にはy方向に延在するプリズムアレイが形成されている。このプリズムアレイの突起はy方向に延在し、x方向に配列している。突起の高さhtは例えば、0.05mm、ピッチpxは例えば0.1mmである。プリズムの頂角θtは、例えば90度である。
【0023】
導光板10の下面のプリズムアレイはx方向に延在し、y方向に配列している。導光板10の下面のプリズムアレイの突起の高さhbは例えば、0.0043mm、ピッチpyは例えば0.1mmである。プリズムの頂角θbは、例えば170度である。なお、導光板10の上面及び下面に形成されるプリズムアレイは、突起ではなく、導光板10の表面にV溝を形成することによって形成することも出来る。
【0024】
図3は、プリズムシート30にプリズムアレイをV溝によって形成した場合のプリズムシート30の図である。図3のプリズムシート30はプリズムアレイの突起が下側に向いたいわゆる逆プリズムシートである。図3において、プリズムアレイはx方向に延在し、y方向に配列している。プリズムシート30の寸法例は次のとおりである。プリズムシート30の厚さtpは例えば0.125mm、V溝の深さVdは例えば0.075mm、頂角θpは例えば68度、ピッチppは、例えば0.1mmである。図9のプリズムシート30は、一般的には、y方向に広がろうとする光を出射面方向、すなわち、z方向に集める作用をする。
【0025】
しかし、本発明においては、プリズムシート30は、導光板10から、導光板10の主面に対してある角度をもって出射した光をプリズムシート30の法線方向に向ける役割を有している。そのために、プリズムシート30に形成されているプリズム31のピッチ、高さ、頂角等を導光板10からの光の出射角度に応じて変化させている。
【0026】
図4は、図1の構成において、導光板10とプリズムシート30のみを取り出した断面図である。導光板10の上にプリズムアレイが下面に形成されたプリズムシート30が配置している。プリズムシート30は、導光板10から所定の方向に所定の配向角をもって出射してきた光を、導光板10あるいはプリズムシート30の法線方向に向ける役割を有する。なお、導光板10の上面及び下面には図2で説明したようなプリズムアレイが形成されているが、図4では省略されている。
【0027】
図5はプリズムシート30におけるプリズムアレイの動作を示す断面図である。導光板10からは、導光板10の主面に対して所定の角度をもって、光が出射する。導光板10からの光の出射角度によって、プリズムアレイの作用が異なる。図5において、光L1は導光板10の主面の法線方向に出射した場合である。この光は、プリズム31の第1面311において屈折したのち、プリズムシート30から出射する。
【0028】
L2は光が導光板10の主面の法線方向に対してθ11で出射した場合であり、この光L2はプリズム31の第1面311において屈折して入射し、第2面312において全反射してプリズムシート30から出射する。
【0029】
L3は光が導光板10の主面の法線方向に対してθ12で出射した場合であり、この光L3はプリズム31の第1面311にほぼ垂直に入射するので、プリズムの第1面311ではほとんど屈折せず、第2面312において全反射してプリズムシート30から出射する。
【0030】
図5に示すように、導光板10からの出射光が、導光板10の主面の法線方向に対して大きな角度で出射するほど、プリズム31の第2面312で全反射する割合が大きくなる。この全反射する光の割合が大きくなるにしたがって、照射光のぎらつきが大きくなる。
【0031】
図4において、導光板10からの光は、導光板10の主面に対して所定の角度をもって出射する。この角度は、導光板10の下面及び上面(主面)に形成されたプリズムアレイによって規定される。そして、導光板10から出射した光は、プリズムシート30によって方向を変えられ、プリズムシート30、あるいは、導光板10の法線方向に出射していく。図6において、導光板10の1辺に沿ってx方向に配列したLEDで構成される光源45が配置している。
【0032】
光は所定の方向に向けられても、分布を有している。これを配光角特性という。図6は極角の定義である。図6において、極角は、導光板10あるいはプリズムシート30の法線方向に対する角度で定義される。
【0033】
図7は、図4に示す構成における配光角特性である。図7の横軸は極角(度)であり、図6において定義される。図7において、極角が20度までは、x方向もy方向もほぼ同じ特性を有しているが、極角が20度を超えるとx方向とy方向とで、配光角特性が異なってくる。
【0034】
配光角特性は、光がどの程度コリメートされているかを示すものであるが、このコリメートの度合いは、配光角特性の半値幅で評価される。すなわち、半値幅が小さいほど、光はよくコリメートされているといえる。図7において、点線で示した部分が半値幅を表しており、配光角特性の半値幅は、x方向もy方向もほぼ同じで、約26度である。
【0035】
光源装置からの出射光は図7のように分布を有しているが、図7では、極角がゼロの場合に光の強度が大きい。以後、出射光が最も強い方向の光線を主光線という。すなわち、図7では、主光線の向きは、プリズムシート30あるいは導光板10の主面の法線方向である。しかし、照明装置あるいは、照明装置の部品である導光板10、プリズムシート30等を出射する光の主光線の向きは、極角がゼロの場合のみでなく、必要に応じて種々の角度に設定される。
【0036】
ところで、図4の構成は、次のような問題を有している。すなわち、図5等で説明したように、プリズムシート30のプリズムアレイにおける全反射機能を用いて光をプリズムシート30の法線方向に向けると、照射光のぎらつき、あるいは、光源近傍における輝線の発生等の問題が生ずる。言い換えると照射光の不均一が目立ちやすい。図4の構成の他の問題は、導光板10やプリズムシート30に異物が存在すると、この影響が照射面に欠陥として現れるということである。
【0037】
この対策として、図8に示すように、プリズムシート30の上に拡散シート50を配置することが考えられる。拡散シート50は入射した光を拡散する作用をもっているので、照射光のぎらつきを抑制する。また、プリズムシート30あるいは導光板10に存在する異物等の、照射光に対する影響を軽減することが出来る。
【0038】
しかしながら、プリズムシート30の上に拡散シート50を配置すると配光角特性が問題になる。図9図8の構成における配光角特性である。拡散シート50を用いたことによって、図9に示す配光角特性は、x方法もy方向もほぼ均一となり、分布も正規分布のようななめらかな分布になっている。
【0039】
しかし、この図8に示す構成は、十分なコリメート光を得られない。図9に示すように、配光角特性における半値幅は38度になっており、図7に比べて大幅に大きくなっている。つまり、図8の構成では、シャープなスポットを得ることは難しい。
【0040】
図10はこの問題を対策するための構成であり、導光板10の上に拡散シート50を配置し、その上にプリズムシート30を配置したものである。図10では、プリズムシート30のプリズムアレイの構成、すなわち、プリズム31のピッチ、頂角等は、図8におけるプリズムシートと同じである。なお、図8におけるプリズムの頂角はθ1である。また、拡散シート50の仕様、すなわち、厚さ、ヘイズ値等も図8における拡散シートと同じである。拡散シートの厚さは例えば、0.1mmである。
【0041】
図11図10の構成における配光角特性である。図11に示すように、図10の構成では、y方向の配光角特性が極端に悪くなっており、この光は、コリメート光として使用することは困難である。この理由は、導光板10から出射した光は、導光板10の主面の法線方向に対して所定の角度をもっており、プリズムシート30に形成されたプリズムアレイの仕様は、プリズムシート30が導光板10の上面に直接配置された場合において、この光に対して、適切な配光角をもって、プリズムシート30の法線方向に向けるように設定されているからである。
【0042】
すなわち、導光板10とプリズムシート30との間に拡散シート50を配置したことによって、拡散シート50を透過した出射光の向きが実質的に変化し、その結果、特にy方向において、導光板10からの光と、プリズムシートに形成されたプリズムアレイとでミスマッチを生じたためと考えられる。発明者は、このミスマッチは、プリズムシート30のプリズム31の頂角を変えることによって解消できることを見出した。
【0043】
図12は、本発明による導光板10、プリズムシート30、拡散シート50の組み合わせの断面図である。図12の構成は、図10の構成と同様、導光板10とプリズムシート30の間に拡散シート50を配置した構成である。図12図10と異なる点は、プリズムシート30のプリズムの頂角を小さくした点である。図10におけるプリズムの頂角θ1は68度であるのに対し、図12におけるプリズムシートの頂角θ2は56度である。図12における導光板10及び拡散シート50の仕様は図10と同じである。
【0044】
図13は、図12の構成における配光角特性である。図13に示すように、配光角特性は大幅に改善されている。特にy方向の配光角特性が劇的に改善されている。図13における配光角特性は、拡散シート50を使用しない場合の、図7に示す配光角特性に近い値になっている。すなわち、半値幅は、x方向もy方向も同じで、26度であり、図7の場合と同じである。一方、図12の構成は、拡散シート50が存在しているので、出射光のぎらつきや光源付近の輝線等は軽減される。また、導光板10やプリズムシート30等に異物が存在しても、拡散シート50の影響によって、照射光への影響を軽減することが出来る。
【0045】
図14乃至図17は実施形態1の作用を示す図である。図14は、導光板10から出射する光の方向を示している。図14では、矢印で示す、導光板10からの主光線は、導光板10の主面の法線方向に対してψ1だけ傾いている。但し、導光板10からの出射光は分布を有している。
【0046】
図15は、導光板10の上に拡散シート50を配置した場合の断面図である。図15における拡散シート50のヘイズ値は比較的小さい、30%である。ヘイズ値(%)は散乱透過率/全光線透過率で定義することが出来るが、測定方法は、JIS K7361に準拠すればよい。
【0047】
拡散シート50を通過することによって、矢印で示す出射光の主光線の、導光板10あるいは拡散シート50の法線方向に対する角度φ2は小さくなる。この角度の変化は、拡散シート50のヘイズ値が大きいほど大きくなる。図15における拡散シート50のヘイズ値は小さいので、出射光の角度の変化(ψ1-ψ2)も比較的小さい。
【0048】
図16図15の拡散シート50の上にプリズムシート30を配置した状態の断面図である。プリズムシート30のプリズムの頂角θp1は、図15に示す、拡散シート50を出射する光の主光線の、拡散シート50の法線方向とのなす角度とマッチングをとるように、選定している。すなわち、図16に示すように、プリズム31の頂角θp1を、プリズムシート30から出射する光がプリズムシート30の法線方向になるように設定している。
【0049】
図17は、図16の仕様、すなわち、拡散シート50のヘイズが30%、プリズムシート30のプリズム31の頂角が66度の時の配光角特性である。図17に示すように、配光角特性は、拡散シート50が存在しない場合の配光角特性とほぼ同じである。半値幅も26度であり、図7の場合と同じである。このように、拡散シート50を用いて、光スポットのぎらつきや輝線を対策し、また、異物の影響を軽減しているにも関わらず、配光角特性は、拡散シート50を使用しない場合と同程度とすることが出来る。
【0050】
図14図18及び図19は実施形態2を示す図である。図14は導光板10の特性であり、実施形態1で説明したとおりである。図18の構成は、外観は図15と同じであるが、拡散シート50のヘイズ値が異なっている。図18における拡散シート50のヘイズ値は64%であり、図15のヘイズ値よりも大きい。この場合、導光板10を出射する光の主光線の向きは、拡散シート30によって、より大きく変化する。図18における拡散シート50を出射する光の主光線の向きψ3と、導光板10を出射する光の主光線の光の向きψ1との差(ψ1-ψ3)は、実施形態1の(ψ1-ψ2)よりも大きい。すなわち、拡散シート50を出射した光の主光線の向きは、実施形態2の場合のほうが実施例1の場合よりも法線方向に近くなっている。
【0051】
図19は、図18の構成に対して、プリズムシート30を配置した状態を示す断面図である。プリズムシート30のプリズムの頂角θ2は、図18に示す、拡散シート50を出射する光の、法線方向との角度とマッチングをとるように、選定している。すなわち、図19に示すように、プリズム31の頂角を、プリズムシート30から出射する光がプリズムシート30の法線方向になるように設定している。図19におけるプリズムシート30のプリズム31の頂角θp2は、図16におけるプリズムシート30のプリズム31の頂角θp1よりも小さい。すなわち、使用する拡散シート50のヘイズ値が大きいほど、プリズムシート30のプリズム31の頂角を小さくすることになる。
【0052】
図20は、図19の仕様、すなわち、拡散シート50のヘイズが64%、プリズムシート30のプリズム31の頂角が56度の時の配光角特性である。図20に示すように、配光角特性は、拡散シート50が存在しない場合の、図7に示す配光角特性とほぼ同じである。半値幅も26度であり、図7の場合と同じである。つまり、拡散シート50のヘイズ値を変えても、プリズムシート30のプリズム31の頂角を適正に設定することによって、拡散シート50を用いて、光スポットのぎらつきや輝線を対策し、また、異物の影響を軽減しているにも関わらず、配光角特性は、拡散シート50を使用しない場合と同程度とすることが出来る。
【0053】
図21は、以上で説明した図16あるいは図19の構成において、拡散シート50のヘイズ値とプリズムシート30のプリズム31の頂角の最適関係を示す図である。図21において、横軸は拡散シート50のヘイズ値である。縦軸は、プリズムシート30のプリズム31の頂角である。
【0054】
図21において、拡散シート50のヘイズ値が30%よりも小さいと、拡散シート50による、光スポットのぎらつき、輝線、あるいは、異物対策等に十分な効果が期待できないので、拡散シート50のヘイズ値は30%以上がよい。一方、拡散シート50のヘイズ値を65%よりも大きくすると、プリズムシート30のプリズム31の頂角だけでは、配光角の制御は困難になる。そこで、拡散シート50のヘイズ値は、30%乃至65%とする。この範囲において、対応するプリズムシート30のプリズム31の頂角の角度は、66度乃至55度である。
【0055】
配光角特性と出射光の均一性を両立させるための、より好ましい範囲は、拡散シート50のヘイズ値は30%乃至55%であり、この場合のプリズムシート30のプリズム31の頂角は、66度乃至59度である。さらに、好ましくは拡散シート50のヘイズ値は35%乃至50%であり、この場合のプリズムシート30のプリズム31の頂角は、64度乃至60度である。
【0056】
図22は、図16あるいは図19に対応する、実施例1における照明装置の分解斜視図である。図21図1と異なる点は、導光板10とプリズムシート30の間に拡散シート50が配置していることである。図21において、拡散シート50のヘイズ値とプリズムシート30のプリズム31の頂角の関係は、図21で説明したとおりである。図22のその他の構成は、図1で説明したとおりである。
【実施例2】
【0057】
実施例1は、図22に示すように、LED40が導光板10の1辺にのみ配置されている。本発明は、LED40が導光板10の2辺に配置されている場合にも同様に適用することが出来る。図23は、比較例2としての、薄型照明装置の分解斜視図である。図23の特徴は、導光板10の2辺に沿ってLED40が配置していることである。その他の構成は、図1と同じである。
【0058】
図24は、実施例2による照明装置の分解斜視図である。図24図23と異なる点は、導光板10とプリズムシート30の間に拡散シート50が配置している点である。拡散シート50のヘイズとプリズムシート30のプリズム31の頂角は、実施例1の図21で説明したのと同じ関係である。
【0059】
図25の矢印はLED40が導光板10の2辺に配置している場合における導光板10からの出射光の主光線の向きである。図25は、実施例1の図14に比べ、出射光が左右の2方向に存在している。出射光の、導光板10の法線との角度ψ1は図14の場合と同一である。
【0060】
図26は、導光板10の上にヘイズ値が29%の拡散シート50を配置した場合である。拡散シート50によって、拡散シート50の主面の法線方向に対する出射光の主光線の向きは、ψ2となる。この角度は図15におけるψ2と同じである。異なる点は図26では、出射光が左右の2方向に存在していることである。
【0061】
図26の構成に対して、プリズム31の頂角がθ1(例えば66度)であるプリズムシート30を、拡散シート50の上に配置すると、図16に示すように、プリズムシート30からは、プリズムシート30の主面に対する法線方向に主光線が出射する。つまり、図16のプリズムシート30のプリズム31は左右対称なので、図26に示すいずれの方向の出射光に対しても同様に作用するからである。
【0062】
図27は、導光板10の上にヘイズ値が64%の拡散シート50を配置した場合である。拡散シート50によって、拡散シート50の主面の法線方向に対する出射光の主光線の向きは、ψ3となる。この角度は実施例1の図18におけるψ3と同じである。異なる点は図27では、出射光が左右の2方向に存在していることである。
【0063】
図27の構成に対して、プリズム31の頂角がθ2(例えば56度)であるプリズムシート30を配置すると、図19に示すように、プリズムシート30からは、プリズムシート30の主面に対する法線方向に主光線が出射する。つまり、図19のプリズムシート30のプリズム31は左右対称なので、図27に示すいずれの方向の出射光に対しても同様に作用するからである。
【0064】
このように、導光板10の両側に光源であるLED40が配置している場合も実施例1と同様に本発明を適用することが出来る。
【0065】
以上の説明では、プリズムシート30のプリズムアレイの延在方向は、導光板10の1辺の方向、例えば、図22あるいは図24のx方向であるとして説明した。しかし、モアレを防止するためにプリズムアレイの延在方向を導光板10の1辺の方向に対して所定の角度を持たせる必要がある場合もある。本発明は、このような構成においても、配光角特性を大きく劣化させない角度である5度以下で適用することが出来る。
【符号の説明】
【0066】
10…導光板、 20…反射シート、 30…プリズムシート、 31…プリズム、 311…第1面、 312…第2面、 40…LED、 41…LED基板、 50…拡散シート
図1
図2
図3
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図6
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