(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ/金属複合体膜およびそこから電界放出カソードを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
H01J 9/02 20060101AFI20240712BHJP
H01J 1/304 20060101ALI20240712BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240712BHJP
【FI】
H01J9/02 B
H01J1/304
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2023520014
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2021058938
(87)【国際公開番号】W WO2022070095
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523115368
【氏名又は名称】エヌシーエックス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チャン
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103346051(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111298519(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0078914(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103545158(CN,A)
【文献】Aldo R. Boccaccini et al.,Electrophoretic deposition of carbon nanotubes,Carbon,Volume 44, Issue 15,2006年07月26日,Pages 3149-3160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/30 - 1/316
9/00 - 9/18
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界放出カソードを形成する方法であって、
液体媒体中で
、少なくとも1つのカーボンナノチューブ、
ガラス粒子を含んだ少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体を分散させ
、それらの懸濁液を形成することにより、電界放出材料を形成する
ステップaであって、前記少なくとも1つの金属塩は銀塩、銅塩、白金塩、ビスマス塩、タングステン塩、アンチモン塩、金塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、且つ、前記少なくとも1つの荷電体は、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、アンモニウム塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、ステップaと、
電気泳動堆積を介して基板の少なくとも一部に前記電界放出材料の層を堆積させて前記電界放出カソードを形成する
ステップbと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップaの前記少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることは、前記液体媒体中で
100nm~
3マイクロメートルの直径を有する前記少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップaの前記少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて前記液体媒体中で前記少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップaの前記少なくとも1つの金属塩を分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて前記液体媒体中で前記少なくとも1つの金属塩を分散させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップaの前記少なくとも1つの荷電体を分散させることは、総液体媒体の最大で1wt%にて前記液体媒体中で前記少なくとも1つの荷電体を分散させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップaの前記電界放出材料を形成することは、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される前記液体媒体中で、前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ、前記少なくとも1つのマトリックス粒子、前記少なくとも1つの金属塩、および前記少なくとも1つの荷電体を分散させることにより前記電界放出材料を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップbの前記電界放出材料の前記層を堆積させることは、金属、合金、ガラス、またはセラミックを含む前記基板の少なくとも一部に前記電界放出材料の前記層を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップaの前記電界放出材料を形成することは、前記液体媒体中で同時に前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ、前記少なくとも1つのマトリックス粒子、前記少なくとも1つの金属塩、および前記少なくとも1つの荷電体を分散させることにより前記電界放出材料を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
液体媒体中に少なくとも1つのカーボンナノチューブを導入する
ステップAと、
前記液体媒体中に
、ガラス粒子を含んだ少なくとも1つのマトリックス粒子を導入する
ステップBと、
前記液体媒体中に少なくとも1つの金属塩を導入する
ステップCであって、前記少なくとも1つの金属塩は銀塩、銅塩、白金塩、ビスマス塩、タングステン塩、アンチモン塩、金塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、ステップCと、
前記液体媒体中に少なくとも1つの荷電体を導入する
ステップDであって、前記少なくとも1つの荷電体はリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、アンモニウム塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、ステップDと、、
前記液体媒体中に同時に前記少なくとも1つのカーボンナノチューブ、前記少なくとも1つのマトリックス粒子、前記少なくとも1つの金属塩、および前記少なくとも1つの荷電体を分散させてそれらの懸濁液を形成する
ステップE
を含む、電界放出複合体を形成する方法。
【請求項10】
電気泳動堆積を介して基板上に前記懸濁液を堆積させる
ステップを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップEの前記少なくとも1つのカーボンナノチューブを分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて前記液体媒体中で前記少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップEの前記少なくとも1つのカーボンナノチューブを分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて前記液体媒体中で前記少なくとも1つの金属塩を分散させることを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップEの前記少なくとも1つのカーボンナノチューブを分散させることは、総液体媒体の最大で1wt%にて前記液体媒体中で前記少なくとも1つの荷電体を分散させることを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップAの前記少なくとも1つのカーボンナノチューブを導入することは、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される前記液体媒体中に前記少なくとも1つのカーボンナノチューブを導入することを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
電界放出カソードを形成する方法であって、電気泳動堆積を介して基板の少なくとも一部に請求項
9に記載の電界放出複合体の層を堆積させて前記電界放出カソードを形成することを含む、方法。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか一項に従い作製されたカソードを含む電界放出カソード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本出願は、電界放出カソード装置を作製する方法、より具体的には、材料と基板の間の接着を改善するためにかつカソードおよびそのようなカソードを実装する電界放出カソード装置の電界放出特性を改善するために電界放出マトリックス材料としてカーボンナノチューブと金属の複合体膜を組み込む電界放出カソードを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
電界放出カソード装置は概して、カソード基板(通常、合金、導電性ガラス、金属化セラミック、ドープシリコンなどの金属または他の導電性材料で構成される)、その基板上に配置される電界放出材料(例えば、ナノチューブ、ナノワイヤ、グラフェン)の層、および必要に応じて、基板と電界放出材料の間に配置される接着材料の追加の層を含む。電界放出カソード装置のいくつかの典型的な用途としては、例えば、真空環境で動作可能な電子装置、電界放出ディスプレイ、およびX線管が挙げられる。
【0003】
カーボンナノチューブは、冷電界放出カソードの作製において使用され得る。しかしながら、カソード表面へのカーボンナノチューブの効果的な組み込みは、カーボンナノチューブ複合体膜の処理において遭遇する困難により妨げられている。カソード表面上で生成される現在のカーボンナノチューブ複合体膜は、特に接着強度、導電性、清浄度、およびカーボンナノチューブの欠陥に関して、所望の特性を下回る。
【0004】
したがって、マトリックス材料と基板表面の間で、マトリックス材料内のカーボンナノチューブの接着を改善するためのプロセス、およびそのようなカーボンナノチューブ複合体膜の堆積を改善するプロセスの必要性が存在し、これは、低い放出閾値電界、大きな放出電流密度、および長い放出寿命などの改善された電界放出特性をもたらす。さらに、そのようなプロセスは、カーボンナノチューブ内の欠陥を低減または排除し、カーボンナノチューブの仕事関数の改善をもたらし得る。
【発明の概要】
【0005】
上記のおよび他の必要性は、本開示の態様によって満たされ、それは、非限定的に、以下の例示的実施形態、および1つの特定の態様では電界放出カソードを形成する方法を含み、方法は、液体媒体中で少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体(charger)を分散させてそれらの懸濁液を形成することにより電界放出材料を形成することと、電気泳動堆積を介して基板の少なくとも一部に電界放出材料の層を堆積させてカソードを形成することを含む。
【0006】
別の例示的態様は、電界放出複合体膜を形成する方法を提供し、方法は、液体媒体中に少なくとも1つのカーボンナノチューブを導入することと、液体媒体中に少なくとも1つのマトリックス粒子を導入することと、液体媒体中に少なくとも1つの金属塩を導入することと、液体媒体中に少なくとも1つの荷電体を導入することと、液体媒体中に同時に少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体を分散させてそれらの懸濁液を形成することを含む。
【0007】
別の例示的態様は、電界放出カソードを形成する別の方法を提供し、方法は、電気泳動堆積を介して基板の少なくとも一部に前述の電界放出複合体膜の層を堆積させることを含む。
【0008】
さらに別の例示的態様は、電界放出カソード装置を提供し、カソードは、前述の態様のいずれか1つに従って作製されて、カソード表面での電界の改善された均一性、イオン衝撃および酸化からの低減された影響、増大された導電性、カーボンナノチューブの改善された仕事関数、および改善されたカソード寿命を有するカソード装置を得る。
【0009】
本開示は、したがって、以下の例示的実施形態を、非限定的に含む:
【0010】
例示的実施形態1:電界放出カソードを形成する方法であって、液体媒体中で少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体を分散させてそれらの懸濁液を形成することにより電界放出材料を形成することと、電気泳動堆積を介して基板の少なくとも一部に電界放出材料の層を堆積させて、電界放出カソードを形成することを含む、方法。
【0011】
例示的実施形態2:電界放出材料を形成することは、液体媒体中でガラス粒子を含む少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることによって電界放出材料を形成することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0012】
例示的実施形態3:少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることは、液体媒体中で約100nm~約3マイクロメートルの直径を有する少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0013】
例示的実施形態4:少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0014】
例示的実施形態5:電界放出材料を形成することは、液体媒体中で銀塩、銅塩、白金塩、ビスマス塩、タングステン塩、アンチモン塩、金塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属塩を分散させることにより電界放出材料を形成することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0015】
例示的実施形態6:少なくとも1つの金属塩を分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で少なくとも1つの金属塩を分散させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0016】
例示的実施形態7:電界放出材料を形成することは、液体媒体中でリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、アンモニウム塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの荷電体を分散させることにより電界放出材料を形成することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0017】
例示的実施形態8:少なくとも1つの荷電体を分散させることは、総液体媒体の最大で1wt%にて液体媒体中で少なくとも1つの荷電体を分散させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0018】
例示的実施形態9:電界放出材料を形成することは、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される液体媒体中で少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体を分散させることにより電界放出材料を形成することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0019】
例示的実施形態10:電界放出材料の層を堆積させることは、金属、合金、ガラス、またはセラミックを含む基板の少なくとも一部に電界放出材料の層を堆積させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0020】
例示的実施形態11:電界放出材料を形成することは、液体媒体中で同時に少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体を分散させることにより電界放出材料を形成することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0021】
例示的実施形態12:液体媒体中に少なくとも1つのカーボンナノチューブを導入することと、液体媒体中に少なくとも1つのマトリックス粒子を導入することと、液体媒体中に少なくとも1つの金属塩を導入することと、液体媒体中に少なくとも1つの荷電体を導入することと、液体媒体中に同時に少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体を分散させてそれらの懸濁液を形成することを含む、電界放出複合体を形成する方法。
【0022】
例示的実施形態13:電気泳動堆積を介して基板上に懸濁液を堆積させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0023】
例示的実施形態14:少なくとも1つのマトリックス粒子を導入することは、液体媒体中にガラス粒子を含む少なくとも1つのマトリックス粒子を導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0024】
例示的実施形態15:少なくとも1つのカーボンナノチューブを分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で少なくとも1つのマトリックス粒子を分散させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0025】
例示的実施形態16:少なくとも1つの金属塩を導入することは、液体媒体中に銀塩、銅塩、白金塩、ビスマス塩、タングステン塩、アンチモン塩、金塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属塩を導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0026】
例示的実施形態17:少なくとも1つのカーボンナノチューブを分散させることは、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で少なくとも1つの金属塩を分散させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0027】
例示的実施形態18:少なくとも1つの金属塩を導入することは、液体媒体中にリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、アンモニウム塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの荷電体を導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0028】
例示的実施形態19:少なくとも1つのカーボンナノチューブを分散させることは、総液体媒体の最大で1wt%にて液体媒体中で少なくとも1つの荷電体を分散させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0029】
例示的実施形態20:少なくとも1つのカーボンナノチューブを導入することは、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される液体媒体中に少なくとも1つのカーボンナノチューブを導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0030】
例示的実施形態21:電界放出カソードを形成する方法であって、電気泳動堆積を介して基板の少なくとも一部に、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法の電界放出複合体の層を堆積させて、電界放出カソードを形成することを含む、方法。
【0031】
例示的実施形態22:いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法に従って作製されたカソードを含む、電界放出カソード装置。
【0032】
本開示のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下で簡単に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことで明らかとなろう。本開示は、本開示に記載される2つ、3つ、4つのまたはそれより多い特徴または要素の任意の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされるか、またはその他の方法で記載されるかに関係なく含む。本開示は、総合的に読まれることを意図され、それにより本開示のいずれかの別個の特徴または要素は、その態様および実施形態のいずれかにおいて、本開示の文脈上明白に別段の指示がない限り、意図される通りに、すなわち組み合わせ可能であると見なされるべきである。
【0033】
本明細書の概要は、本開示の基本的な理解を提供するために、単にいくつかの例示的態様を要約する目的で提供されることが理解されるであろう。したがって、上記の例示的態様は、単なる例であり、本開示の範囲または趣旨を狭めるものと決して解釈されるべきではないことが理解されるであろう。本開示の範囲は多くの潜在的態様を包含し、その一部は、本明細書で要約されたものに加えて、以下にさらに記載されることが理解されるであろう。さらに、他の態様、および本明細書に開示されるそのような態様の利点は、記載される態様の原理を例として示す添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0034】
このように、本開示を一般的な用語で記載してきたが、ここで、必ずしも正確な縮尺率ではない、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示の1つ以上の態様に係る、電界放出カソードおよびカソード基板と係合された電界放出材料堆積層の性質の例を概略的に示す。
【
図2】本開示の1つ以上の態様に係る、電界放出複合体膜を形成する方法の一例を示す。
【
図3】本開示の1つ以上の態様に係る、電界放出カソードを形成する方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
開示の詳細な説明
本開示がここで、添付の図面を参照しながら以下により完全に記載され、本開示の全てではないが一部の態様が示される。実際に、本開示は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載される態様に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの態様は、本開示が適用される法的要件を満たすように提供される。同様の符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0037】
図1は、基板102、および基板102上に配置される電界放出材料104の層、および必要に応じて、基板102と電界放出材料104の間に配置される接着材料の追加の層(図示せず)を含む、電界放出カソード100の一例を示す。基板102は、固体金属もしくは合金(例えば、ステンレス鋼、ドープシリコン)などの金属材料、導電性ガラス(例えば、酸化インジウムスズ(ITO)コーティングガラスもしくは表面上に導電性コーティングを有する他の溶融ガラス)、または導電性セラミック(例えば、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、および窒化アルミニウムなどの金属化セラミック)などの、導電性材料で作られ得る。電界放出材料104は、マトリックス材料内に配置される複数のカーボンナノチューブである。電界放出材料104の層は、例えば、電気泳動堆積、または安定なコロイド懸濁液中の荷電粒子の導電性基板上への堆積を使用する類似の材料処理技術、例えば電気塗装、カチオン電着、アニオン電着、および電気泳動塗装による、基板102上への電界放出材料の堆積を介して形成される。
【0038】
図2は、電界放出複合体前駆体または複合体膜前駆体を形成する方法200を示す。方法の一態様では、その中にいくつかの成分が分散される液体媒体が提供される(ステップ210)。液体媒体は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ステップ220、230、240、および250は、少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、少なくとも1つの荷電体、またはそれらの組み合わせなどの、様々な成分を液体媒体に導入することに向けられる。ステップ260に示されるように、前述の成分の全ては、それらの懸濁液を形成するように同時に液体媒体内で分散される。成分は、例えば、超音波処理またはマグネチックスターラなどの、既知の方法により液体媒体中で分散され得る。
【0039】
具体的な組成および成分の量は、特定の用途に適するように変化し得る。例えば、少なくとも1つのマトリックス粒子は、約100nm~約3マイクロメートルの直径を有するガラス粒子を生成するように遊星ボールミルによって処理される市販のガラス粒子から形成され得、少なくとも1つのマトリックス粒子は、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で分散される。さらに、少なくとも1つの金属塩は、銀塩、銅塩、白金塩、ビスマス塩、タングステン塩、アンチモン塩、金塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得、少なくとも1つの金属塩は、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で分散される。少なくとも1つの荷電体は、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、アンモニウム塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得、少なくとも1つの荷電体は、総液体媒体の最大で1wt%にて液体媒体中で分散される。
【0040】
電界放出複合体前駆体または複合体膜前駆体が懸濁液の形態で作り出されたら、前駆体は、電気泳動堆積プロセス(ステップ270)を介して基板上に堆積されて、基板上で固体形態の膜として電界放出複合体を提供し得る。膜は、基板上への堆積後に、乾燥、アニール、および活性化プロセスなどの1つ以上の他のプロセスを受けてよい。基板は、金属、合金、導電性ガラス、または金属化セラミックで作られ得る。基板は、例えば、ロボット材料ハンドリングシステムによりまたはユーザにより手動で、適切な設備に提供され得る。基板は、その上に電界放出複合体前駆体または複合体膜前駆体の層を受け取るように構成される。
【0041】
図3は、カーボンナノチューブと金属の複合体または複合体膜を使用して電界放出カソードを形成する方法300を示す。方法の一態様では、上に記載されたものなどの基板が、堆積プロセスを行うために構成された設備に提供される(ステップ310)。方法は、電界放出複合体前駆体または複合体膜前駆体などの電界放出材料を形成することをさらに含む(ステップ320)。場合によっては、電界放出材料は、基板が提供される前に作り出される。電界放出材料の層が、電気泳動堆積プロセスを介して基板の少なくとも一部に堆積され(ステップ330)て、基板上にカーボンナノチューブ/金属複合体または複合体膜を形成する。膜は、基板上の堆積後に1つ以上の他のプロセス(乾燥、アニール、および活性化など)に供されてよく、その後完成される製品が、電界放出カソードである。基板は、金属、合金、導電性ガラス、または金属化セラミックで作られ得る。基板は、例えば、ロボット材料ハンドリングシステムを介してまたはユーザにより手動で、適切な設備に提供され得る。
【0042】
ステップ340は、液体媒体中に少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体を分散させてそれらの懸濁液を形成することにより電界放出材料を形成する一例を示す。液体媒体中への少なくとも1つのカーボンナノチューブ、少なくとも1つのマトリックス粒子、少なくとも1つの金属塩、および少なくとも1つの荷電体の分散は、例えば、超音波処理、マグネチックスターラ、または類似のものにより同時に起こる。
【0043】
具体的な組成および成分の量は、特定の用途に適するように変化し得る。例えば、少なくとも1つのマトリックス粒子は、約100nm~約3マイクロメートルの直径を有するガラス粒子を生成するように遊星ボールミルによって処理される市販のガラス粒子から形成され得、少なくとも1つのマトリックス粒子は、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で分散される。さらに、少なくとも1つの金属塩は、銀塩、銅塩、白金塩、ビスマス塩、タングステン塩、アンチモン塩、金塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得、少なくとも1つの金属塩は、総液体媒体の最大で10wt%にて液体媒体中で分散される。少なくとも1つの荷電体は、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、アンモニウム塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得、少なくとも1つの荷電体は、総液体媒体の最大で1wt%にて液体媒体中で分散される。カーボンナノチューブは、化学蒸着プロセス、レーザーアブレーションプロセス、および/またはアーク放電法によって製造され得る。
【0044】
前述の方法は、電気泳動堆積プロセスにより基板上へカーボンナノチューブと金属を共堆積することにより、カーボンナノチューブと金属の複合体膜の均質な堆積を提供する。方法は、基板へのカーボンナノチューブの接着だけでなく、カーボンナノチューブ/金属複合体膜およびそれで作られた電界放出カソードの導電性も改善する。方法は、作製プロセスにおけるカーボンナノチューブの表面修飾により、カーボンナノチューブの仕事関数も改善する。
【0045】
これらのプロセスによって作製された、カーボンナノチューブ/金属複合体膜、電界放出カソード、および真空装置などの電界放出カソード装置は、電界放出材料の層の増大された導電性、およびカソード表面での電界の改善された均一性などの、強化された電界放出特性を示す。
【0046】
本明細書に記載された本発明の多くの修正および他の実施形態が、前述の説明および関連する図面に提示された技術の利益を得る、これらの開示された実施形態が関係する当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明の実施形態は開示された特定の実施形態に限定されず、修正および他の実施形態が本発明の範囲内に含まれるよう意図されることを理解すべきである。さらに、前述の説明および関連する図面は、要素および/または機能の特定の例示的組み合わせに関連する例示的実施形態を記載しているが、要素および/または機能の異なる組み合わせが、本開示の範囲を逸脱することなく代替の実施形態によって提供され得ることを理解すべきである。この点で、例えば、上に明示的に記載されたものと異なる要素および/または機能の組み合わせも、本開示の範囲内であるように企図される。特定の用語が本明細書で採用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味のみで使用され、限定を目的とするものではない。
【0047】
第1、第2などの用語が、様々なステップまたは計算を記載するために本明細書で使用され得るが、これらのステップまたは計算は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語は、ある操作または計算を別のものと区別するためにのみ使用される。例えば、第1の計算は第2の計算と呼ばれ得、同様に、本開示の範囲を逸脱することなく、第2のステップは第1のステップと呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語および「/」記号は、関連して記載された項目の1つ以上のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明白に別段の指示がない限り、複数形も含むよう意図される。「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。したがって、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載するためのものであり、限定することを意図するものではない。