IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラプリントサーキットの特許一覧

<>
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図1
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図2
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図3
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図4
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図5
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図6
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図7
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図8
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図9
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図10
  • 特許-フレキシブルプリント配線板の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240712BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H05K3/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023525660
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2022018563
(87)【国際公開番号】W WO2022254997
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2021093839
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522185818
【氏名又は名称】株式会社フジクラプリントサーキット
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩村 俊哉
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-308004(JP,A)
【文献】国際公開第2003/042759(WO,A2)
【文献】特開2011-44465(JP,A)
【文献】特開2018-92966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジストを用いてフレキシブルプリント配線板を製造するフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
第1の領域と第2の領域を有するフォトレジストを基板上に配置する第1の工程と、
第1の光透過部を有する第1のフォトマスクを前記第1の光透過部が前記第1の領域に対向するように配置し、前記第1の光透過部を介して前記フォトレジストを露光する第2の工程と、
第2の光透過部を有する第2のフォトマスクを前記第2の光透過部が前記第2の領域に対向するように配置し、前記第2の光透過部を介して前記フォトレジストを露光する第3の工程と、を備え、
前記第1及び第2の領域は、前記第1の領域の端部と前記第2の領域の端部が相互に重なるように隣り合い、
前記第1の光透過部は、先細形状を有する第1の先端部を含む線状の形状を有し、
前記第2の光透過部は、前記第1の先端部とは反対側を向いた先細形状を有する第2の先端部を含む線状の形状を有し、
前記第3の工程は、前記第2の先端部に含まれる第2の位置合わせ目標点を第1の位置に重ねるように、前記第2のフォトマスクを配置することを含み、
前記第1の位置は、前記第2の工程において前記第1の先端部に含まれる第1の位置合わせ目標点が配置されていた位置であり、
前記第1の先端部は、
第1の端部と、
前記第1の端部と接続されている曲線状の第1の辺と、
前記第1の端部と接続されていると共に前記第1の辺と対向する曲線状の第2の辺と、を含み、
前記第1の位置合わせ目標点は、前記第1の光透過部の略中心を第1の長手方向に延在する第1の中心線上において前記第1の端部から距離Aだけ離れた点であり、
前記第1及び第2の辺は、第1の仮想三角形の外側に位置し、
前記第1の仮想三角形は、前記第1の中心線と前記第1の端部との第1の交点と、第1の仮想直線と前記第1の辺との第2の交点と、前記第1の仮想直線と第2の辺との第3の交点と、を結ぶ仮想上の三角形であり、
前記第1の仮想直線は、前記第1の光透過部の第1の幅方向に沿って延在すると共に前記第1の位置合わせ目標点を通る仮想上の直線であり、
前記第2の交点は、前記第3の交点から距離Dだけ離れており、
前記第2の先端部は、
第2の端部と、
前記第2の端部と接続する曲線状の第3の辺と、
前記第2の端部と接続すると共に前記第2の辺と対向する曲線状の第4の辺と、を含み、
前記第2の位置合わせ目標点は、前記第2の光透過部の略中心を第2の長手方向に延在する第2の中心線上において前記第2の端部から距離Aだけ離れた点であり、
前記第3及び第4の辺は、第2の仮想三角形の外側に位置し、
前記第2の仮想三角形は、前記第2の中心線と前記第2の端部との第4の交点と、第2の仮想直線と前記第3の辺との第5の交点と、前記第2の仮想直線と第4の辺との第6の交点と、を結ぶ仮想上の三角形であり、
前記第2の仮想直線は、前記第2の光透過部の第2の幅方向に沿って延在すると共に前記第2の位置合わせ目標点を通る仮想上の直線であり、
前記第5の交点は、前記第6の交点から距離Dだけ離れており、
下記(1)式を満たすフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【数1】
但し、上記(1)式において、Δxは、前記第1の長手方向における前記第1の位置に対する前記第2の位置合わせ目標点のずれ量であり、Δyは、前記第1の幅方向における前記第1の位置に対する前記第2の位置合わせ目標点のずれ量であり、θは、第1の法線回りの回転方向における前記第1の位置に対する前記第2の位置合わせ目標点のずれ量であり、前記第1の法線は、前記第1の位置を通ると共に前記第1のフォトマスクに対して垂直な法線である。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
前記第1の光透過部は、前記第1の先端部と接続された第1の主線部をさらに有し、
前記第1の位置合わせ目標点は、前記第1の先端部において、前記第1の主線部と接続する第1の接続部よりも前記第1の端部側に位置し、
前記第2の光透過部は、前記第2の先端部と接続された第2の主線部をさらに有し、
前記第2の位置合わせ目標点は、前記第2の先端部において、前記第2の主線部と接続する第2の接続部よりも前記第2の端部側に位置し、
前記第1及び第2の主線部の幅はWであり、
下記(2)式を満たすフレキシブルプリント配線板の製造方法。
D≦W ・・・(2)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
前記第1のフォトマスクは、相互に並列するように配置された複数の前記第1の光透過部を有し、
複数の前記第1の先端部は、第1の方向に向かうに従って、隣り合う他の前記第1の先端部に対して突出するように順次ずれており、
前記第2のフォトマスクは、相互に並列するように配置された複数の前記第2の光透過部を有し、
複数の前記第2の先端部は、第2の方向に向かうに従って、隣り合う他の前記第2の先端部に対して突出するように順次ずれており、
前記第2の方向は、前記第1の位置から前記第2の位置合わせ目標点への前記第1の幅方向に沿ったずれの方向であり、
前記第1の方向は、前記第2の方向とは反対の方向であるフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板の製造方法に関するものである。
文献の参照による組み込みが認められる指定国については、2021年6月3日に日本国に出願された特願2021-093839に記載された内容を参照により本明細書に組み込み、本明細書の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
長尺のフレキシブル配線回路基板の製造方法は、絶縁層の表面に金属薄膜を形成する工程と、金属薄膜の表面にフォトレジストを形成する工程と、フォトマスクをフォトレジストに対して長尺方向にずらしながらフォトレジストを複数回露光する工程と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
フォトマスクは、配線に対応する形状を有する光透過部分を含んでおり、この光透過部分は、直線状に延びる矩形形状の複数の光透過領域から構成されている。露光工程では、先の露光時のフォトマスクの光透過領域の後端が、後の露光時のフォトマスクの光透過領域の前端と重複するようにフォトマスクを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-092966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような露光工程では、先の露光時のフォトマスクの光透過領域の後端に対して、後の露光時のフォトマスクの光透過領域の前端を完全に一致させることは困難であり、光透過領域の後端から前端がはみ出してしまう。このため、後端からはみ出した前端によって、配線の連結部において幅方向に向かって角張って突出する角部が形成されてしまうことで、急激な線幅の変化を伴う段差が配線の側部に生じてしまう(例えば、特許文献1(第2-4図)参照)。フレキシブル配線回路基板を折り曲げた時には、この段差に応力が集中し易いため、段差を起点として配線が破損してしまう場合がある、という問題がある。
【0006】
本発明の目的は、配線の側部に段差が生じないフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、フォトレジストを用いてフレキシブルプリント配線板を製造するフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、第1の領域と第2の領域を有するフォトレジストを基板上に配置する第1の工程と、第1の光透過部を有する第1のフォトマスクを前記第1の光透過部が前記第1の領域に対向するように配置し、前記第1の光透過部を介して前記フォトレジストを露光する第2の工程と、第2の光透過部を有する第2のフォトマスクを前記第2の光透過部が前記第2の領域に対向するように配置し、前記第2の光透過部を介して前記フォトレジストを露光する第3の工程と、を備え、前記第1及び第2の領域は、前記第1の領域の端部と前記第2の領域の端部が相互に重なるように隣り合い、前記第1の光透過部は、先細形状を有する第1の先端部を含む線状の形状を有し、前記第2の光透過部は、前記第1の先端部とは反対側を向いた先細形状を有する第2の先端部を含む線状の形状を有し、前記第3の工程は、前記第2の先端部に含まれる第2の位置合わせ目標点を第1の位置に重ねるように、前記第2のフォトマスクを配置することを含み、前記第1の位置は、前記第2の工程において前記第1の先端部に含まれる第1の位置合わせ目標点が配置されていた位置であり、前記第1の先端部は、第1の端部と、前記第1の端部と接続されている曲線状の第1の辺と、前記第1の端部と接続されていると共に前記第1の辺と対向する曲線状の第2の辺と、を含み、前記第1の位置合わせ目標点は、前記第1の光透過部の略中心を第1の長手方向に延在する第1の中心線上において前記第1の端部から距離Aだけ離れた点であり、前記第1及び第2の辺は、第1の仮想三角形の外側に位置し、前記第1の仮想三角形は、第1の仮想直線と前記第1の辺との第1の交点と、前記第1の仮想直線と第2の辺との第2の交点と、前記第1の中心線と前記第1の端部との第3の交点と、を結ぶ仮想上の三角形であり、前記第1の仮想直線は、前記第1の光透過部の第1の幅方向に沿って延在すると共に前記第1の位置合わせ目標点を通る仮想上の直線であり、前記第1の交点は、前記第2の交点から距離Dだけ離れており、前記第2の先端部は、第2の端部と、前記第2の端部と接続する曲線状の第3の辺と、前記第2の端部と接続すると共に前記第2の辺と対向する曲線状の第4の辺と、を含み、前記第2の位置合わせ目標点は、前記第2の光透過部の略中心を第2の長手方向に延在する第2の中心線上において前記第2の端部から距離Aだけ離れた点であり、前記第3及び第4の辺は、第2の仮想三角形の外側に位置し、前記第2の仮想三角形は、第2の仮想直線と前記第3の辺との第4の交点と、前記第2の仮想直線と第4の辺との第5の交点と、前記第2の中心線と前記第2の端部との第6の交点と、を結ぶ仮想上の三角形であり、前記第2の仮想直線は、前記第2の光透過部の第2の幅方向に沿って延在すると共に前記第2の位置合わせ目標点を通る仮想上の直線であり、前記第4の交点は、前記第5の交点から距離Dだけ離れており、下記(1)式を満たすフレキシブルプリント配線板の製造方法である。
【数1】
但し、上記(1)式において、Δxは、前記第1の長手方向における前記第1の位置に対する前記第2の位置合わせ目標点のずれ量であり、Δyは、前記第1の幅方向における前記第1の位置に対する前記第2の位置合わせ目標点のずれ量であり、θは、第1の法線回りの回転方向における前記第1の位置に対する前記第2の位置合わせ目標点のずれ量であり、前記第1の法線は、前記第1の位置を通ると共に前記第1のフォトマスクに対して垂直な法線である。
【0008】
[2]上記発明において、前記第1の光透過部は、前記第1の先端部と接続された第1の主線部をさらに有し、前記第1の位置合わせ目標点は、前記第1の先端部において、前記第1の主線部と接続する第1の接続部よりも前記第1の端部側に位置し、前記第2の光透過部は、前記第2の先端部と接続された第2の主線部をさらに有し、前記第2の位置合わせ目標点は、前記第2の先端部において、前記第2の主線部と接続する第2の接続部よりも前記第2の端部側に位置し、前記第1及び第2の主線部の幅はWであり、下記(2)式を満たしていてもよい。
D≦W ・・・(2)
【0009】
[3]上記発明において、前記第1のフォトマスクは、相互に並列するように配置された複数の前記第1の光透過部を有し、複数の前記第1の先端部は、第1の方向に向かうに従って、隣り合う他の前記第1の先端部に対して突出するように順次ずれており、前記第2のフォトマスクは、相互に並列するように配置された複数の前記第2の光透過部を有し、複数の前記第2の先端部は、第2の方向に向かうに従って、隣り合う他の前記第2の先端部に対して突出するように順次ずれており、前記第2の方向は、前記第1の位置から前記第2の位置合わせ目標点への前記第1の幅方向に沿ったずれの方向であり、前記第1の方向は、前記第2の方向とは反対の方向であってもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記第2の領域は、前記第1の長手方向において前記第1の領域と隣接していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法では、第1及び第2の光透過部において、第1及び第2の先端部が先細形状を有しており、第1及び第2の辺が第1の仮想三角形の外側に位置する曲線であり、第3及び第4の辺が第2の仮想三角形の外側に位置する曲線であり、第1及び第2の位置合わせ目標点の位置が上記(1)式の範囲内を満たしている。そのため、第1の光透過部を介して露光された露光部と第2の光透過部を介して露光された露光部とが重複している多重露光部から、第1及び第2の端部に対応する露光部がはみ出すことがなく、多重露光部の外形に段差が生じない。従って、露光後のフォトレジストを現像したレジストパターンにおいても段差が生じることがないため、配線の側部に段差が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態におけるフレキシブルプリント配線板の一例を示す平面図である。
図2図2(a)~図2(f)は、本発明の実施形態におけるフレキシブルプリント配線板の製造方法の一例を示す断面図である。
図3図3は、図2(b)に示す露光工程において露光されたフォトレジスト層の一例を示す平面図である。
図4図4(a)は、図2(b)に示す露光工程における第1の露光処理の一例を示す平面図であり、図4(b)は、図2(b)に示す露光工程における第2の露光処理の一例を示す平面図である。
図5図5は、図2(b)に示す露光工程において使用されるフォトマスクの一例を示す平面図である。
図6図6(a)は、本発明の実施形態における光透過部の第1の先端部の一例を示す拡大平面図であり、図6(b)は、本発明の実施形態における光透過部の第2の先端部の一例を示す拡大平面図である。
図7図7は、第1の露光処理時の第1の先端部と、第2の露光処理時の第2の先端部と、の位置関係を説明する平面図である。
図8図8は、本発明の実施形態における(3)式を説明する説明図である。
図9図9は、本発明の実施形態における(6)式を説明する説明図である。
図10図10は、第1の先端部と第2の先端部とが重複しない比較例を説明する平面図である。
図11図11は、図4のXI部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板の一例を示す平面図である。図2(a)~図2(f)は、本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板1の製造方法の一例を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板1は、可撓性を有する配線板であり、長尺の帯状の平面形状を有している。このフレキシブルプリント配線板1の延在方向の長さは、特に限定されないが、600mm以上である。このような長尺のフレキシブルプリント配線板1は、図1及び図2(f)に示しように、例えば、ベースフィルム10と、複数(本例では5本)の配線20と、カバーレイ30と、を有している。
【0015】
ベースフィルム10は、可撓性を有すると共に長尺の帯形状を有するフィルムである。このベースフィルム10は、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。特に限定されないが、このベースフィルム10を構成する材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、アラミド等を例示することができる。
【0016】
ベースフィルム10上に複数の配線20が形成されている。本実施形態では、複数の配線20がベースフィルム10上にx方向に沿って線状に延在している。本実施形態における配線20は、フレキシブルプリント配線板1の一方端部から他方端部まで連続的に延在しているため、長尺の線状形状を有している。また、複数の配線20は、略等間隔で相互に略平行に配置されている。
【0017】
なお、配線20の数、形状、及び配置等は、特にこれに限定されず、任意に設定することができる。例えば、本実施形態では、略直線形状の配線20を例示しているが、配線20が屈曲部分を有していてもよい。また、配線20は、バイアホール等を含んでいてもよい。この配線20は、銅から構成されている。なお、この配線20を構成する材料は銅以外の金属材料であってもよく、例えば、銀又は金であってもよい。なお、特に図示しないが、各々の配線20の端部には、他のフレキシブルプリント配線板や電子部品と接続されるパッドが形成されていてもよい。
【0018】
カバーレイ30は、配線20を保護するための層である。カバーレイ30は、配線20のパッドを除く部分を覆うようにベースフィルム10上に形成されている。このカバーレイ30は、可撓性を有すると共に長尺の帯形状を有するフィルムから構成されている。カバーレイ30は、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。
【0019】
カバーレイ30は、図2(f)に示すように、保護層31と接着層32からなる二層構造を有している。保護層31は、配線20を保護するための層である。保護層31は、可撓性を有すると共に長尺の帯形状を有するフィルムから構成されている。この保護層31は、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。特に限定されないが、この保護層31を構成する材料としては、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、アラミド等を例示することができる。
【0020】
接着層32は、保護層31をベースフィルム10の上面に接着するための層である。接着層32は、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤から構成されている。
【0021】
次に、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1の製造方法について説明する。図2に示すように、本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板1の製造方法は、金属層上に形成されたフォトレジストを露光及び現像してレジストパターンを形成し、エッチングにより当該レジストパターンのパターン形状を金属層に転写するサブトラクティブ法である。
【0022】
このサブトラクティブ法では、まず、図2(a)に示すように、金属層200が主面に形成されたベースフィルム10を準備する。この金属層200が形成されたベースフィルム10としては、例えば、銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)等を使用することができる。また、このベースフィルム10の延在方向における長さは、特に限定されないが、600mm以上である。なお、本実施形態における金属層200が形成されたベースフィルム10が、本発明における「基板」の一例に相当する。
【0023】
次に、図2(a)に示すように、金属層200上にフォトレジスト層40を形成する(第1の工程)。フォトレジスト層40は、金属層200の表面において、少なくとも上記の配線20が形成される領域の近傍に形成されていればよい。
【0024】
本実施形態におけるフォトレジスト層40は、ネガ型のフォトレジストにより構成されている。このネガ型フォトレジストにおいて、光が照射されて感光した部分は現像液に溶解することがない一方で、光が照射されずに感光しなかった部分は現像液に溶解する。特に限定されないが、フォトレジスト層40は、ネガ型のドライフィルムレジストを金属層200に貼り付けることで形成できる。なお、本実施形態におけるフォトレジスト層40の形成工程が、本発明における「第1の工程」の一例に相当する。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、フォトマスク50を介してフォトレジスト層40を露光する。なお、本実施形態におけるフォトマスク50が、本発明における「第1のフォトマスク」及び「第2のフォトマスク」の一例に相当する。
【0026】
図3は、図2(b)に示す露光工程において露光されたフォトレジスト層40の一例を示す平面図であり、図4は、図2(b)に示す露光工程における第1及び第2の露光処理の一例を示す平面図である。この露光工程では、図3に示すように、配線20に対応する形状を有する露光パターン41をフォトレジスト層40に形成するが、フォトマスク50の幅は配線20の長さよりも小さいため、露光処理を複数回に分けて実施する必要がある。
【0027】
このため、図4(a)に示すように、まず、フォトレジスト層40の第1の領域Rに対してフォトマスク50を対向配置して第1の露光処理を行い、その後、図4(b)に示すように、第1の領域Rと隣り合う第2の領域Rに対してフォトマスク50を対向配置して第2の露光処理を行う。
【0028】
また、複数の露光部を相互に接続するために、平面視において、第1の領域Rの端部と第2の領域Rの端部とが重なっている。つまり、フォトレジスト層40は、第1の領域Rの+x方向側の端部と第2の領域Rの-x方向側の端部とが相互に重なる重複領域Rm1を有している。図4(b)に示すように、第2の露光処理では、重複領域Rm1において、第1の露光処理における光透過部53の第1の先端部55の位置に、第2の先端部56が重複するようにフォトマスク50をフォトレジスト層40に対向配置する。
【0029】
その結果、図3に示すように、露光パターン41は、第1の露光処理により露光された第1の露光部42と、第2の露光処理により露光された第2の露光部43と、第1及び第2の露光処理の両方で二重に露光された多重露光部44と、を有しており、第1の露光部42と第2の露光部43とが多重露光部44により接続されている。このように、本実施形態の露光工程では、フォトレジスト層40の露光を複数回に分けて行い複数の露光部を相互に接続することで、露光パターン41を形成する。
【0030】
なお、本実施形態における第1の露光処理が本発明における「第2の工程」の一例に相当し、本実施形態における第2の露光処理が本発明における「第3の工程」の一例に相当する。
【0031】
本実施形態では、配線20を2回の露光処理により形成する場合を例示しているがこれに限定されない。例えば、露光処理を3回以上行うことで配線20を形成してもよい。このとき、長手方向に沿って隣り合う領域を、長手方向に沿って順番に露光する必要はなく、長手方向に沿って間欠的に露光を行った後に、露光済みの領域の間に介在する間欠領域を露光してもよい。
【0032】
図5は、図2(b)に示す露光工程において使用されるフォトマスク50の一例を示す平面図であり、図6は、本実施形態における光透過部53の第1及び第2の先端部55,56の一例を示す拡大平面図である。
【0033】
図5及び図2(b)に示すように、このフォトマスク50は、透明基板51と、遮光膜52と、を有している。透明基板51は、光を透過可能な透明の板状部材である。この透明基板51は、例えば、ガラス等の透明な材料から構成されている。
【0034】
遮光膜52は、光を透過させない不透明な膜であり、透明基板51の一方の主面上に形成されている。この遮光膜52を構成する材料としては、例えば、酸化クロム等の金属酸化物を使用することができる。遮光膜52は、例えば、透明基板51の表面に金属酸化物膜を蒸着することにより形成できる。
【0035】
この遮光膜52は、図5に示すように、配線20の本数と同じ5本の線状の開口52aを有しており、当該開口52aから透明基板51が露出している。光透過部53は、開口52aによって透明基板51が露出している部分である。なお、本実施形態における光透過部53が、本発明における「第1の光透過部」及び「第2の光透過部」の一例に相当する。
【0036】
光透過部53は、開口52aの平面形状と同一の線状の平面形状を有している。また、複数の光透過部53は、光透過部53の幅方向(図中のy方向)に沿って、略等間隔で相互に並列するように配置されている。また、光透過部53は、主線部54と、主線部54の一端に配置された第1の先端部55と、主線部54の他端に配置された第2の先端部56と、を有している。
【0037】
主線部54は、略一定の幅Wを有する直線状の部分であり、光透過部53の長手方向(図中のx方向)に沿って延在している。この主線部は54、図6(a)に示すように、光透過部53の長手方向に延在する直線状の第1の側辺54aと、当該第1の側辺54aに略平行に延在すると共に第1の側辺54aと対向する第2の側辺54bと、を有している。本実施形態では、第1及び第2の側辺54a,54bは、光透過部53の中心線CLに対して線対称となっている。なお、中心線CLは、光透過部53の幅方向における中心を通ると共に、光透過部53の長手方向に沿って延在する直線である。
【0038】
なお、本実施形態における光透過部53の幅方向が、本発明における「第1の幅方向」及び「第2の幅方向」の一例に相当する。また、本実施形態における光透過部53の長手方向が、本発明における「第1の長手方向」及び「第2の長手方向」の一例に相当する。
【0039】
図6(a)に示すように、第1の先端部55は、+x方向に向かって徐々に幅が細くなる先細形状を有する先端部であり、第1の接続部57において主線部54と接続している。この第1の先端部55は、第1の端部55aと、第1の辺55bと、第2の辺55cと、第1の接続辺55dと、第2の接続辺55eと、を含んでいる。
【0040】
第1の端部55aは、光透過部53の中心線CL上に位置する端部である。本実施形態では、この第1の端部55aは、第1及び第2の辺55b、55cが交差する点である。
【0041】
第1の辺55bは、図中の+y方向に向かって凸の曲線であり、第1の端部55aと第1の接続辺55dとの間に介在して、交点Pと交点Pを結んでいる。一方で、第2の辺55cは、図中の-y方向に向かって凸の曲線であり、第1の端部55aと第2の接続辺55eとの間に介在して、交点Pと交点Pを結んでいる。第1及び第2の辺55b、55cは、第1の端部55aに近づくに従って相互に接近するように湾曲しており、第1の端部55aにおいて相互に交わっている。本実施形態では、第1及び第2の辺55b,55cは、中心線CLに対して互いに線対称となっている。第1及び第2の辺55b、55cは、いずれも、第1の仮想三角形TRの外側に位置している。つまり、第1の先端部55において、第1の辺55bは第1の仮想三角形TRの辺Pよりも外側に位置し、第2の辺55cは第1の仮想三角形TRの辺Pよりも外側に位置している。
【0042】
なお、上記の交点Pは、中心線CLと第1の端部55aとの交点である。交点Pは、第1の仮想直線VLと第1の辺55bとの交点であり、交点Pは、第1の仮想直線VLと第2の辺55cとの交点である。なお、交点Pは、第1の辺55bと第1の接続辺55dとの交点でもあり、交点Pは、第2の辺55cと第2の接続辺55eとの交点でもある。本実施形態における交点Pが本発明における「第1の交点」の一例であり、本実施形態における交点Pが本発明における「第2の交点」の一例であり、本実施形態における交点Pが本発明における「第3の交点」の一例である。
【0043】
第1の仮想直線VLは、光透過部53の幅方向(図中のy方向)に沿って延在すると共に第1の位置合わせ目標点Sを通る仮想上の直線である。交点Pは、交点Pから距離Dだけ離れている。この距離Dは、上記の幅W以下となっている(D≦W)。
【0044】
この第1の位置合わせ目標点Sは、第2の露光処理(図4(b)参照)において、第2の先端部56の位置合わせに用いられる仮想上の点である。この第1の位置合わせ目標点Sは、中心線CL上において、第1の端部55aから距離Aだけ離れている。第1の位置合わせ目標点Sは、第1の先端部55の内側において、第1の接続部57よりも第1の端部55a側に位置している。第2の露光処理では、第1の露光処理時に第1の位置合わせ目標点Sが位置していた第1の位置に、第2の先端部56の第2の位置合わせ目標点S(後述)が配置されるようにフォトマスク50を位置合わせする。
【0045】
特に限定されないが、位置合わせは、カメラを用いた画像処理等によって行うことができる。例えば、ベースフィルム10に複数のアライメントマーク(不図示)を形成しておき、フォトマスク50に設けられた複数の貫通孔(不図示)を介してベースフィルム10を撮像する。そして、貫通孔を介した撮像範囲にアライメントマークが写る位置にフォトマスク50を固定することにより、位置合わせを行うことができる。
【0046】
図6(a)に示すように、第1の接続辺55dは、図中の+y方向に向かって凸であり、かつ、第1の辺55bよりも曲率が小さい曲線である。この第1の接続辺55dは、第1の辺55bと第1の側辺54aとの間に介在して、交点Pと交点Pを結んでいる。なお、交点Pは、第1の接続辺55dと第1の側辺54aとの交点である。
【0047】
第2の接続辺55eは、図中の-y方向に向かって凸であり、かつ、第2の辺55cよりも曲率が小さい曲線である。この第2の接続辺55eは、第2の辺55cと第2の側辺54bとの間に介在して、交点Pと交点Pを結んでいる。第3及び第4の接続辺56d,56eは、中心線CLに対して互いに線対称となっている。なお、交点Pは、第2の接続辺55eと第2の側辺54bとの交点である。
【0048】
第1及び第2の接続辺55d,55eは、いずれも、仮想長方形REの外側に位置している。仮想長方形REとは、図5に示すように、交点Pと、交点Pと、交点P(後述)と、交点P(後述)と、を結んだ仮想上の長方形である。この仮想長方形REは、図5に示すように、第1の仮想三角形TRと第2の仮想三角形TRとの間に介在している。つまり、主線部54において、第1の接続辺55dは仮想長方形の長辺Pよりも外側に位置し、第2の接続辺55eは仮想長方形の長辺Pよりも外側に位置している。
【0049】
図6(b)に示すように、第2の先端部56は、第1の先端部55とは反対方向を向いた先細形状を有する先端部であり、第2の接続部58において主線部54と接続している。この第2の先端部56は、第2の端部56aと、第3の辺56bと、第4の辺56cと、第3の接続辺56dと、第4の接続辺56eと、を含んでいる。
【0050】
第2の端部56aは、光透過部53の中心線CL上に位置する端部である。本実施形態では、この第1の端部55aは、第1及び第2の辺55b、55cが交差する点である。
【0051】
第3の辺56bは、第1の先端部55の第1の辺55bを左右反転させた曲線である。この第3の辺56bは、第2の端部56aと第3の接続辺56dとの間に介在して、交点Pと交点Pとを結んでいる。一方で、第4の辺56cは、第1の先端部55の第2の辺55cを左右反転させた曲線であり、第2の端部56aと第4の接続辺56eとの間に介在して、交点Pと交点Pとを結んでいる。第3及び第4の辺56b、56cは、第2の端部56aに近づくに従って相互に接近するように湾曲しており、第2の端部56aにおいて相互に交わっている。本実施形態では、第3及び第4の辺56b,56cは、中心線CLに対して互いに線対称となっている。第3及び第4の辺56b、56cは、いずれも、第2の仮想三角形TRの外側に位置している。つまり、第2の先端部56において、第3の辺56bは第2の仮想三角形TRの辺Pよりも外側に位置し、第4の辺56cは第2の仮想三角形TRの辺Pよりも外側に位置している。
【0052】
なお、第2の仮想三角形TRは、第1の仮想三角形TRを左右反転させた形状を有している。この第2の仮想三角形TRは、第2の先端部56における交点P~Pを結んだ仮想上の三角形である。交点Pは、中心線CLと第2の端部56aとの交点である。交点Pは、第2の仮想直線VLと第3の辺56bとの交点であり、交点Pは、第2の仮想直線VLと第4の辺56cとの交点である。また、交点Pは、第3の辺56bと第3の接続辺56dとの交点でもあり、交点Pは、第4の辺56cと第4の接続辺56eとの交点でもある。本実施形態における交点Pが本発明における「第4の交点」の一例であり、本実施形態における交点Pが本発明における「第5の交点」の一例であり、本実施形態における交点Pが本発明における「第6の交点」の一例である。
【0053】
第2の仮想直線VLは、光透過部53の幅方向(図中のy方向)に沿って延在すると共に第1の位置合わせ目標点Sを通る仮想上の直線である。交点Pは、交点Pから距離Dだけ離れている。この距離Dは、上記の幅W以下となっている(D≦W)。
【0054】
この第2の位置合わせ目標点Sは、中心線CL上において、第2の端部56aから距離Aだけ離れている。この第2の位置合わせ目標点Sは、第2の先端部56の内側において、第2の接続部58よりも第2の端部56a側に位置している。
【0055】
図6(b)に示すように、第3の接続辺56dは、第1の接続辺55dを左右反転させた曲線である。この第3の接続辺56dは、第3の辺55bと第1の側辺54aとの間に介在して、交点Pと交点Pを結んでいる。なお、交点Pは、第3の接続辺56dと第1の側辺54aとの交点である。
【0056】
第4の接続辺56eは、第2の接続辺55eを左右反転させた曲線である。この第4の接続辺56eは、第4の辺56cと第2の側辺54bとの間に介在して、交点Pと交点P10を結んでいる。第3及び第4の接続辺56d,56eは、中心線CLに対して互いに線対称となっている。なお、交点P10は、第4の接続辺56eと第2の側辺54bとの交点である。第3及び第4の接続辺56d,56eは、いずれも、仮想長方形REの外側に位置している。つまり、主線部54において、第3の接続辺56dは仮想長方形の長辺Pよりも外側に位置し、第4の接続辺56eは仮想長方形の長辺Pよりも外側に位置している。
【0057】
図7は、第1の露光処理時の第1の先端部55と、第2の露光処理時の第2の先端部56と、の位置関係を説明する拡大平面図であり、図4(b)のVII部の拡大平面図に相当する。上記の通り、第2の露光処理では、第2の先端部56を第1の露光処理時の第1の先端部55と重ねる。この際、第1の露光処理時の第1の位置合わせ目標点Sが位置していた第1の位置FPに、第2の位置合わせ目標点Sが位置するようにフォトマスク50を位置合わせする。
【0058】
しかしながら、第1の位置FPに第2の位置合わせ目標点Sを完全に一致させることは難しく、ずれ(Δx,Δy,θ)が生じてしまう。ここで、Δxは、光透過部53の長手方向(x方向)における第1の位置FPに対する第2の位置合わせ目標点Sのずれ量である。Δyは、光透過部53の幅方向(y方向)における第1の位置FPに対する第2の位置合わせ目標点Sのずれ量である。θは、第1の法線NL周りの回転方向における第1の位置FPに対する第2の位置合わせ目標点Sのずれ量である。第1の法線NLは、第1の位置FPを通ると共にフォトマスク50の主面に対して垂直な方向(図中のz方向)に延在する直線である。θの値は、第1の露光処理時の光透過部53と第2の露光処理時の光透過部53とのなす角であり、例えば、第1の露光処理時の中心線CLと第2の露光処理時の中心線CLとのなす角と等しくなる。
【0059】
ずれ(Δx,Δy,θ)が発生した場合、第1の露光処理時における第1の端部が、第2の露光処理時における第2の先端部及び主線部からはみ出したり、第2の露光処理時における第2の端部が、第1の露光処理時における第1の先端部及び主線部からはみ出したりすることがあり、その結果、配線に段差や突起が生じてしまうことがある。
【0060】
これに対して、本実施形態では、ずれ(Δx,Δy,θ)の発生を想定して、第1及び第2の端部のはみ出しが発生しないように、第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sの位置を下記(3)式を満たすように設定している。
【0061】
【数2】
【0062】
図8は、本実施形態における上記(3)式を説明する説明図である。なお、この図8では、第1の露光処理時の第1の仮想三角形TR及び仮想長方形の右端部を破線で示し、第2の露光処理時の第2の仮想三角形TR及び仮想長方形の左端部を実線で示している。
【0063】
また、この図8では、ずれ(Δx,Δy,θ)の値が、いずれも正の値である場合を例示している。ここで、Δxの符号は、第1の露光処理時の中心線CLをx軸とし、第1の仮想直線VLをy軸とし、第1の位置合わせ目標点Sを原点とした場合に、第2の位置合わせ目標点Sがy軸より右側(+x方向側)に位置する場合を正とし、第2の位置合わせ目標点Sがy軸より左側(-x方向側)に位置する場合を負としている。同様に、Δy及びθの符号は、第2の位置合わせ目標点Sがx軸より上側(+y方向側)に位置する場合を正とし、第2の位置合わせ目標点Sがx軸より下側(-y方向側)に位置する場合を負としている。
【0064】
この図8において、第1の端部55aのはみ出しを防止するためには、第1の端部55a(交点P)が仮想長方形REの内部に位置していればよい。つまり、下記(4)式のように、図8中の長さLが、D/2未満であればよい。この長さLは、交点Pから交点Pまでの距離である。交点Pは、交点Pから-y方向に延在する垂線と、第2の露光処理時における仮想長方形REと、の交点であり、交点Pは、当該垂線と、第1の露光処理時における仮想長方形REの下辺の延長線と、の交点である。図8に示すように、このLの値は、下記(5)式の通り表すことができる。
【0065】
【数3】
【0066】
【数4】
【0067】
上記(5)式中のrは、下記(6)式のように表すことができる。図9は、本実施形態における(6)式を説明する説明図である。図9における交点P11は、第2の位置合わせ目標点Sから-y方向に向かって延在する直線と、仮想円Cの弧との交点である。なお、仮想円Cの中心は、図8に示すように、第2の位置合わせ目標点Sであり、半径はD/2である。また、仮想円Cの弧の中心角はθである。また、交点P12は、図9に示すように、上記の交点Pから-x方向に向かって延在する直線と、第2の位置合わせ目標点Sと交点11とを結ぶ垂線と、の交点である。
【0068】
【数5】
【0069】
図9に示すように、rは、半径D/2から、仮想直角三角形TRの辺S12の長さBを減算することで算出できる(r=D/2-B)。なお、直角三角形TRは、点P,P12,Sを結ぶ仮想上の直角三角形である。この直角三角形TRの∠P12は90°であり(∠P12=90°)、∠P12はθ°である(∠P12=θ°)。よって、辺S12の長さBは、D/2×cosθとなり(B=D/2×cosθ)、rは上記(6)式のように表すことができる。
【0070】
また、上記(5)式中のRは、下記(7)式のように表すことができる。すなわち、図8に示すように、Rは、AからΔxとHとを減算することで算出できる。ここで、Hは、図9に示すように、直角三角形TRの辺P12の長さであるため、D/2×sinθとなる(H=D/2×sinθ)。よって、Rは下記(7)式のように表すことができる。
【0071】
【数6】
【0072】
このようにして得られた上記(5)~(7)式を、上記(4)式に代入すると、下記(8)式を得ることができる。この(8)式は、上記(3)式の右辺である。すなわち、第1の位置合わせ目標点Sと第1の端部55aとの間の距離Aが下記(8)式を満たすことで、第2の仮想三角形TRからの第1の端部55aのはみ出しを防止することができる。また、第2の仮想三角形TRは、第1の仮想三角形TRを左右反転させた形状を有していることから、第2の位置合わせ目標点Sと第2の端部56aとの間の距離Aが下記(8)式を満たすことで、第1の仮想三角形TRからの第2の端部56aのはみ出しも防止することができる。
【0073】
【数7】
【0074】
また、第1及び第2の辺55b、55cは第1の仮想三角形TRの外側に位置しており、第3及び第4の辺56b、56cは第2の仮想三角形TRの外側に位置している。このため、第1の端部55aは、第3及び第4の辺56b、56cの間に位置すると共に、第2の端部56aは、第1及び第2の辺55b、55cの間に位置することとなるので、第1及び第2の端部55a,56aは、第2及び第1の先端部56,55からはみ出さない。よって、第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sの位置が上記(8)を満たしていることで、配線20の側面に段差や突起が発生することがない。
【0075】
図10は、第1の先端部と第2の先端部とが重複しない比較例を説明する平面図である。図10に示すように、Δxの値が、第1の位置合わせ目標点Sから第1の端部55aまでの距離Aと、第2の位置合わせ目標点Sから第2の端部56aまでの距離Aと、の合計距離2Aよりも大きくなる場合(Δx>2A)、多重露光部が形成されず、配線が不連続になってしまう。よって、距離Aは、少なくともΔx/2よりも大きい必要がある(Δx/2<A)。さらに、後工程である金属層200のエッチング工程における回路幅の仕上がりのばらつきを考慮すると、距離AがΔx/2付近の値であるときには配線が不連続になる可能性があるため、下記(9)式のように、距離AはΔxよりも大きい値とすることが必要となる。この(9)式は、上記(3)式の左辺である。よって、第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sの位置が下記(9)を満たしていることで、配線20に断線が発生することがない。
【0076】
【数8】
【0077】
なお、Δx,Δy,θの値は、特に限定されず、露光装置の種類や位置合わせ装置の精度等に応じた値であり、予め、試験露光等において取得された値である。一例を挙げれば、Δxは-50μm~+50μm以下であり(-50μm≦Δx≦+50μm)、Δyは-50μm~+50μmであり(-50μm≦Δy≦+50μm)、θは-1°~+1°であってもよい(-1°≦θ≦+1°)。
【0078】
また、図4に示すように、複数の光透過部53は、幅方向(図中のy方向)において、長手方向(図中のx方向)に向かうに従って、隣り合う他の光透過部53に対して突出するように順次ずれている。このため、複数の第1の先端部55は、図中の-y方向に向かうに従って、隣り合う他の第1の先端部55に対して突出するように順次ずれており、複数の第2の先端部56は、図中の+y方向に向かうに従って、隣り合う他の第2の先端部56に対して突出するように順次ずれている。
【0079】
第2の露光処理において、光透過部53がΔy及びθの影響によりy方向にずれる場合、多重露光部において露光パターン間の距離(ピッチ)が狭くなり、配線間の距離(ピッチ)が狭くなる部分が形成されてしまう。これに対して、本実施形態に示すように、複数の光透過部53が長手方向に向かって順次ずれていることで、露光パターン41間の距離(ピッチ)が狭くなることを抑制することができ、配線20間の距離(ピッチ)が狭くなることを抑制できる。
【0080】
図11は、図5のXI部の拡大平面図である。この図11では、一例として、第2の露光処理における光透過部53の幅方向に沿ったずれΔyの方向が+y方向である場合を示している。この場合、本実施例における-y方向が本発明における「第1の方向」の一例に相当し、本実施例における+y方向が本発明における「第2の方向」の一例に相当する。
【0081】
この例では、第1の先端部55が、+y方向とは反対方向の-y方向に向かうに従って、隣り合う他の第1の先端部55に対して突出するように順次ずれていると共に、第2の先端部56が、+y方向に向かうに従って、隣り合う他の第2の先端部56に対して突出するように順次ずれている。このため、第1の先端部55が、第1の先端部55と第2の先端部56との重複部分において、光透過部53間のピッチが狭くなっていない。よって、配線20間のピッチが狭くなることを抑制することができる。
【0082】
なお、特に図示しないが、第2の露光処理における光透過部53のy方向に沿ったずれの方向が-y方向である場合、第1の先端部55が、+y方向に向かうに従って、隣り合う他の第1の先端部55に対して突出するように順次ずれていると共に、第2の先端部56が、-y方向に向かうに従って、隣り合う他の第2の先端部56に対して突出するように順次ずれていれば、上記同様に配線20間のピッチが狭くなることを抑制することができる。
【0083】
露光工程を完了した後、図2(c)に示すように、現像工程を行う。この現像工程では、フォトレジスト層40の感光していない部分を現像液により溶解する。これにより、露光パターン41(図3参照)と略同一形状のレジストパターン45が金属層200の上面に形成される。このレジストパターン45が、次工程においてエッチングマスクとして機能する。
【0084】
現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ溶液を用いることができる。
【0085】
次に、図2(d)に示すように、エッチング工程を行う。このエッチング工程では、レジストパターン45から露出している部分をエッチングにより除去する。これにより、レジストパターン45の形状が金属層200に転写され、配線20が形成される。
【0086】
エッチングを施す方法としては、特に限定されないが、スプレーノズル(不図示)からエッチング液を金属箔に噴霧してエッチングを行うスプレーエッチング法を用いることができる。また、エッチング液としては、例えば、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液等を使用することができる。なお、エッチングを施す方法としては、スプレーエッチング法のみに限定されず、例えば、エッチング液に金属箔を浸漬する浸漬エッチング法等を用いてもよい。また、ウェットエッチング法ではなく、エッチングガスを用いるドライエッチング法を用いてもよい。
【0087】
次に、図2(e)に示すように、レジストパターン45の剥離工程を行う。レジストパターン45は、剥離液により剥離できる。これにより配線20が露出する。剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を使用することができる。
【0088】
次に、図2(f)に示すように、カバーレイ30を形成するカバーレイ形成工程を行う。カバーレイ30は、上述のようなカバーレイ30の接着層32を配線20側からベースフィルム10に貼り付けることで形成できる。
【0089】
なお、カバーレイ30を形成する方法は、特に上記に限定されない。例えば、カバーレイ30を、上述の樹脂フィルムに代えて、感光性カバーレイ材料からなるドライフィルムを用いて形成してもよいし、或いは、液状の感光性カバーレイ材料をベースフィルム10上に塗布した後に露光及び現像することで、カバーレイ30を形成してもよい。或いは、液状のカバーレイインクをベースフィルム10上に印刷することで、カバーレイ30を形成してもよい。
【0090】
或いは、カバーレイ30を所謂ソルダレジストで構成してもよい。具体的には、感光性レジスト材料からなるドライフィルムを用いてカバーレイ30を形成してもよい。或いは、液状の感光性レジスト材料をベースフィルム10上に塗布した後に露光及び現像することで、カバーレイ30を形成してもよい。或いは、液状のソルダレジストインクをベースフィルム10上に印刷することで、カバーレイ30を形成してもよい。
【0091】
上記の感光性カバーレイ材料や感光性レジスト材料の具体例としては、例えば、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン等を用いたものを例示することができる。また、上記のカバーレイインクやソルダレジストインクの具体例としては、ポリイミドやエポキシをベースとしたものを例示することができる。
【0092】
以上のようにして、フレキシブルプリント配線板1を製造することができる。本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板1の製造方法では、光透過部53において、第1及び第2の先端部55,56が先細形状を有しており、第1及び第2の辺55b、55cが第1の仮想三角形TRの外側に位置する曲線であり、第3及び第4の辺56b、56cが第2の仮想三角形TRの外側に位置する曲線であり、第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sの位置が上記(3)式の範囲内を満たしている。このため、多重露光部44から、第1及び第2の端部55a,56aに対応する露光部がはみ出すことがないので、多重露光部44の外形に段差が生じない。
【0093】
また、第1~第4の辺55b,55c,56b,56cが曲線であるため、多重露光部44のこれらの辺の交差部において段差が生じることがない。
【0094】
以上より、露光後のフォトレジスト40を現像したレジストパターン45においても段差が生じることがないため、配線の側面に段差が生じることを防止することができる。
【0095】
また、第1及び第2の先端部55,56は、いずれも先細形状を有しているため、多重露光部44の幅が太くなり過ぎない。このため、レジストパターン45においても幅が過剰に太い部分が形成され難くなるため、配線20に過剰に太くなる部分が生じ難くなる。
【0096】
また、従来の製造方法では、多重露光部は、同一幅の第1及び第2の先端部を介して2回露光されるため、この多重露光部において過露光が生じ、結果的に、配線において多重露光部に対応する部分の幅が太くなってしまうことがある。
【0097】
これに対して、本実施形態では、先細形状の第1の先端部55において、第1の位置合わせ目標点Sが、第1の接続部57に対して第1の端部55a側に位置していると共に、第1の先端部55と反対方向を向いた先細形状の第1の先端部55において、第2の位置合わせ目標点Sが、第2の接続部58に対して第2の端部56a側に位置している。すなわち、第1の先端部55において、第1の位置合わせ目標点Sよりも第1の接続部57側から先細りが始まっていると共に、第2の先端部56において、第2の位置合わせ目標点Sよりも第2の接続部58側から先細りが始まっている。
【0098】
このため、多重露光部44において、第1の先端部55の比較的幅の太い部分と第2の先端部56の比較的幅の細い部分とが重なり、逆に、第1の先端部55の比較的幅の細い部分と第2の先端部56の比較的幅の太い部分とが重なることとなるため、多重露光部44における露光量を均一化することができる。このため、多重露光部44に対応する部分の配線20の幅が過剰に太くなることが無い。
【0099】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0100】
例えば、上記の露光工程では、第1及び第2の露光処理において同一のフォトマスク50を用いて露光処理を行う例を説明したがこれに限定されない。第1の露光処理において用いる第1のフォトマスクと、第2の露光処理において用いる第2のフォトマスクと、が異なる種類のフォトマスクであってよい。この場合であっても、上記(3)式を満たす第1及び第2の先端部を有する光透過部が形成されたフォトマスクを使用する。
【0101】
また、上記の実施形態において、第1~第4の辺55b、55c,56b、56cは、いずれも一方向に突出する凸部を一か所のみ有する曲線であるがこれに限定されない。第1~第4の辺55b、55c,56b、56cは、第1及び第2の仮想三角形TR,TRの外側に位置していればどのような形状の曲線であってもよく、例えば、上記の凸部を複数有する蛇行した曲線であってもよい。第1~第4の接続辺55d、55e,56d、56eについても同様に、凸部を複数有する蛇行した曲線であってもよい。
【0102】
なお、上記の実施形態では、サブトラクティブ法を用いる製造方法を例示したがこれに限定されず、所謂セミアディティブ法によりフレキシブルプリント配線板を製造してもよい。このセミアディティブ法では、感光した部分が現像液に溶解するポジ型のレジストから構成されたフォトレジスト層40をベースフィルム10上に形成する。そして、上記のようなフォトマスク50により複数回露光処理を行った後に、レジストパターンを現像する。この場合、露光パターンの形状に沿ってフォトレジスト層が除去される。そして、フォトレジスト層が除去されることで露出したベースフィルム10の主面に、めっき等で配線20を形成する。
【0103】
また、上記実施形態の第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sは、中心線CL上に位置しているが、これに限定されない。距離Dの値が、第2の露光処理時の光透過部53のずれΔyよりも十分に大きい場合、第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sは、中心線CLからy方向に若干ずれていてもよい。ただし、第1及び第2の端部55a,56aがはみ出さないように、中心線CLから第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sまでのy方向に沿った距離と、ずれΔyとの合計値が、D/2以下となるように第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sを設定する。
【0104】
また、上記実施形態の第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sは、第1及び第2の先端部55,56の長手方向における略中央に配置されているが、これに限定されない。第1及び第2の位置合わせ目標点S,Sは、長手方向において、中央よりも第1及び第2の端部55a,56a側に配置されていてもよいし、中央よりも第1及び第2の接続部57,58側に配置されていてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、第1及び第2の端部55a,56aは、点であったがこれに限定されず、幅方向(図中のy方向)における長さがD以下の直線又は曲線であってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…フレキシブルプリント配線板
10…ベースフィルム
20…配線
30…カバーレイ
31…保護層
32…接着層
40…フォトレジスト層
41…露光パターン
42…第1の露光部
43…第2の露光部
44…多重露光部
45…レジストパターン
50…フォトマスク
51…透明基板
52…遮光膜
53…光透過部
54…主線部
54a,54b…第1及び第2の側辺
55…第1の先端部
55a…第1の端部
55b,55c…第1及び第2の辺
55d,55e…第1及び第2の接続辺
56…第2の先端部
56a…第2の端部
56b,56c…第3及び第4の辺
56d,56e…第3及び第4の接続辺
57,58…第1及び第2の接続部
,S…第1及び第2の位置合わせ目標点
,R…第1及び第2の領域
m1…重複領域
TR,TR…第1及び第2の仮想三角形
RE…仮想長方形
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11