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特許7520235初段静翼セグメント、静止ユニット、初段静翼セグメントユニット、及び蒸気タービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】初段静翼セグメント、静止ユニット、初段静翼セグメントユニット、及び蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/04 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
F01D9/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023530381
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2022024011
(87)【国際公開番号】W WO2022270387
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2021104776
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】古賀 康彦
(72)【発明者】
【氏名】檀野 将平
(72)【発明者】
【氏名】関口 友貴
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋一
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-146896(JP,A)
【文献】特開2008-69776(JP,A)
【文献】特開平1-301902(JP,A)
【文献】特開2012-112380(JP,A)
【文献】米国特許第5056989(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に対する周方向に延びる外輪と、
前記外輪の前記軸線に対する径方向内側に、前記周方向に並んで取り付けられている複数の初段静翼と、
を備え、
前記軸線が延びる軸線方向における第一側と第二側とのうち、前記第二側が軸線上流側を成し、前記第一側が軸線下流側を成し、
前記複数の初段静翼は、それぞれ、前記軸線に対する径方向に延びる翼体と、前記翼体の前記径方向内側に形成されている内側シュラウドと、前記翼体の前記軸線に対する径方向外側に形成されている外側シュラウドと、を有し、
前記翼体は、前記軸線上流側の縁を形成する前縁と、前記軸線下流側の縁を形成する後縁と、を有し、
前記内側シュラウドは、前記径方向外側を向き、前記翼体が接続されている内側ガスパス面を有し、
前記外側シュラウドは、前記径方向内側を向き、前記翼体が接続されている外側ガスパス面を有するシュラウド本体と、前記シュラウド本体の前記径方向外側に接続されている埋め込み部と、を有し、
前記埋め込み部は、前記軸線上流側を向く埋込前端面と、前記軸線下流側を向き前記埋込前端面と背合わせの関係にある埋込後端面と、前記径方向外側を向き前記埋込前端面と前記埋込後端面とを接続する埋込底面と、を有し、
前記外輪は、前記複数の初段静翼毎の前記外側シュラウドが入り込む外輪溝と、外輪ガスパス面と、外輪後端面と、外輪外周面と、を有し、
前記外輪溝は、前記外輪ガスパス面の前記軸線下流側の端から前記径方向外側に向かって凹み、前記周方向に延び、
前記外輪溝は、前記軸線下流側を向いて前記埋込前端面と対向する溝前側面と、前記軸線上流側を向いて前記埋込後端面と対向する溝後側面と、前記径方向内側を向いて前記埋込底面と対向する溝底面と、を有し、
前記外輪ガスパス面は、前記溝前側面よりも前記軸線上流側で且つ前記外側ガスパス面よりも前記径方向外側の位置から、前記径方向内側に向かうに連れて次第に前記軸線下流側に向かって延び、前記外側ガスパス面に連なるように、湾曲した面を有し、
前記外輪後端面は、前記外輪溝より前記軸線下流側に位置し、前記軸線下流側を向き、
前記外輪外周面は、前記径方向外側を向き、前記外輪ガスパス面の前記径方向外側の縁と前記外輪後端面の前記径方向外側の縁とを接続し、
前記埋込前端面は、前記前縁よりも前記軸線上流側に位置し、
前記埋込後端面は、前記後縁よりも前記軸線上流側に位置する、
初段静翼セグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の初段静翼セグメントにおいて、
前記溝後側面と前記外輪後端面との間の前記軸線方向における最大距離は、前記埋込前端面と前記埋込後端面との間の前記軸線方向における最小距離より小さい、
初段静翼セグメント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の初段静翼セグメントにおいて、
さらに、前記外輪に対する複数の前記初段静翼の相対移動を拘束するコーキング部材を備え、
前記外輪は、さらに、収納空間形成部を有し、
前記収納空間形成部は、複数の前記初段静翼における前記外側シュラウドと共同して、前記コーキング部材が入り込み、前記径方向内側が開口している収納空間を形成する面を有し、
前記埋め込み部は、さらに、前記埋込後端面から前記軸線上流側に凹み、前記周方向に延びる係合溝を有し、
前記外輪溝は、さらに、前記溝後側面から前記軸線上流側に突出し、前記周方向に延びて、複数の前記初段静翼における前記埋め込み部の前記係合溝のそれぞれに嵌まり込む凸部を有し、
前記収納空間形成部は、前記溝前側面の前記径方向内側の端に接続され、
前記コーキング部材は、前記周方向に延び、前記収納空間に収まり、前記収納空間形成部が有する前記面に接すると共に、複数の前記初段静翼における前記外側シュラウドのそれぞれに接し、前記収納空間の開口から露出している、
初段静翼セグメント。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の初段静翼セグメントにおいて、
前記シュラウド本体は、前記軸線下流側を向き、前記外側ガスパス面の前記軸線下流側の端から前記径方向外側に延びるシュラウド後端面を有し、
前記外輪後端面は、前記シュラウド後端面と面一である、
初段静翼セグメント。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の初段静翼セグメントと、
前記初段静翼セグメント及び初段シールリングが取り付けられる翼環と、
を備え、
前記翼環は、前記径方向内側を向く翼環ガスパス面と、前記外輪が取り付けられる外輪取付部と、前記初段シールリングが取り付けられる初段シールリング取付部と、を有し、
前記初段シールリング取付部は、前記翼環ガスパス面から前記径方向外側に向かって凹み、前記周方向に延び、
前記外輪取付部の全体は、前記初段シールリング取付部よりも前記軸線上流側に位置する、
静止ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の静止ユニットにおいて、
前記翼環の前記外輪取付部は、取付側面と、取付内周面と、を有し、
前記取付側面は、前記翼環ガスパス面中で前記初段シールリング取付部よりも前記軸線上流側の位置から前記径方向外側に延び、且つ前記周方向に延びて、前記外輪後端面と対向し、
前記取付内周面は、前記取付側面の前記径方向外側の縁から前記軸線上流側に延び、且つ前記周方向に延びて、前記外輪外周面と対向する、
静止ユニット。
【請求項7】
請求項5に記載の静止ユニットにおいて、
さらに、前記軸線方向に並ぶ複数の後段静翼列を備え、
前記複数の後段静翼列は、それぞれ、前記周方向に並ぶ複数の静翼を有し、
前記翼環は、前記初段シールリング取付部よりも前記軸線下流側の領域内で、前記軸線方向に並ぶ複数の翼環溝を有し、
前記複数の翼環溝は、いずれも、前記翼環ガスパス面から前記径方向外側に凹み且つ前記周方向に延び、
前記複数の翼環溝のそれぞれには、前記複数の後段静翼列のうちのいずれか一の静翼列を構成する前記複数の静翼が嵌まり込んでいる、
静止ユニット。
【請求項8】
請求項5に記載の静止ユニットと、
蒸気流入管と、
前記軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの外周を覆うケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記翼環を有し、
前記蒸気流入管は、前記ロータの外周側と前記ケーシングの内周側との間に、前記軸線上流側から蒸気が流入するよう配置されている、
蒸気タービン。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の初段静翼セグメントである第一初段静翼セグメントと、
前記第一初段静翼セグメントに対して前記第二側に間隔をあけて配置されている第二初段静翼セグメントと、
前記周方向に延び、前記第一初段静翼セグメントと前記第二初段静翼セグメントとを接続する分流部材と、を備え、
前記第二初段静翼セグメントは、
前記周方向に延び、前記第一初段静翼セグメントの前記外輪である第一外輪と同じ形状で、前記第一側を軸線上流側とし前記第二側を軸線下流側とする第二外輪と、
前記第二外輪の前記径方向内側に、前記周方向に並んで取り付けられ、前記第一初段静翼セグメントの前記複数の初段静翼である複数の第一初段静翼と同じ形状で、前記第一側を軸線上流側とし前記第二側を軸線下流側とする複数の第二初段静翼と、
を備え、
前記分流部材は、前記複数の第一初段静翼毎の前記内側シュラウドに接続される第一接続部と、前記複数の第二初段静翼毎の前記内側シュラウドに接続される第二接続部と、前記第一接続部と前記第二接続部とを接続する本体と、を有し、
前記本体は、前記径方向外側を向いて、前記軸線方向に延び、前記複数の第一初段静翼毎の前記内側ガスパス面及び前記複数の第二初段静翼毎の前記内側ガスパス面に連なるガスパス面を有する、
初段静翼セグメントユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の初段静翼セグメントユニットにおいて、
前記内側シュラウドは、前記径方向内側を向き前記内側ガスパス面と背合わせの関係にある反ガスパス面と、前記反ガスパス面から前記径方向外側に凹み且つ前記周方向に延びる接続溝と、を有し、
前記第一接続部は、前記複数の第一初段静翼毎の前記内側シュラウドにおける前記接続溝に嵌まり込んでいる凸部を有し、
前記第二接続部は、前記複数の第二初段静翼毎の前記内側シュラウドにおける前記接続溝に嵌まり込んでいる凸部を有し、
前記接続溝は、前記径方向外側に向かうに連れて次第に前記軸線方向における溝幅が大きくなるよう形成され、
前記凸部は、径方向外側に向かうに連れて次第に前記軸線方向における凸幅が大きくなよう形成されている、
初段静翼セグメントユニット。
【請求項11】
請求項9に記載の初段静翼セグメントユニットにおいて、
前記分流部材は、第一分流部材と、第二分流部材と、連結具と、を有し、
前記第一分流部材は、前記第一接続部と、前記第一接続部から前記第二側に向かって延び前記本体の一部を形成する第一本体と、を有し、
前記第二分流部材は、前記第二接続部と、前記第二接続部から前記第一側に向かって延び前記本体の残りの一部を形成する第二本体と、を有し、
前記連結具は、前記第一本体と前記第二本体とを連結する、
初段静翼セグメントユニット。
【請求項12】
請求項9に記載の初段静翼セグメントユニットと、
蒸気流入管と、
前記軸線を中心として回転可能な第一ロータと、
前記第一ロータの外周側で、前記軸線方向に並ぶ複数の第一後段静翼列と、
前記第一ロータの外周側を覆うと共に、前記第一初段静翼セグメント及び前記複数の第一後段静翼列が取り付けられている第一ケーシングと、
前記軸線を中心として回転可能な第二ロータと、
前記第二ロータの外周側で、前記軸線方向に並ぶ複数の第二後段静翼列と、
前記第二ロータの外周側を覆うと共に、前記第二初段静翼セグメント及び前記複数の第二後段静翼列が取り付けられている第二ケーシングと、
を備え、
前記第一ロータと前記第二ロータとは、同一の前記軸線上に位置し、互に連結されており、
前記蒸気流入管は、前記分流部材の前記ガスパス面から前記径方向外側に離れた位置に配置され、前記第一ケーシングと前記第二ケーシングとを接続する、
蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の初段静翼を有する初段静翼セグメント、初段静翼セグメントを備える初段静翼セグメントユニット、初段静翼セグメントを備える静止ユニット、初段静翼セグメントを備える蒸気タービンに関する。
本願は、2021年6月24日に、日本国に出願された特願2021-104776号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンの種類として、例えば、以下の特許文献1に記載の二分流型蒸気タービンがある。この二分流型蒸気タービンは、第一蒸気タービン部と第二蒸気タービン部とを備える。第一蒸気タービン部及び第二蒸気タービン部は、いずれも、軸線を中心として回転するロータと、ロータを覆うケーシングと、ケーシングに固定されている複数の静翼セグメントと、蒸気流入管と、分流部材と、を備える。なお、以下の説明の都合上、軸線が延びる方向を軸線方向とする。また、軸線方向における両側のうち、一方側を第一側、他方側を第二側とする。
【0003】
第一蒸気タービン部と第二蒸気タービン部とは、蒸気流入管及び分流部材を共有する。第一蒸気タービン部で、この蒸気流入管及び分流部材を除く部品は、蒸気流入管を基準にして軸線方向における第一側に配置されている。この第一蒸気タービン部では、第二側が軸線上流側を成し、第一側が軸線下流側を成す。また、第二蒸気タービン部で、この蒸気流入管を除く部品は、この蒸気流入管を基準にして第二側に配置されている。第二蒸気タービン部では、第一側が軸線上流側を成し、第二側が軸線下流側を成す。
【0004】
第一蒸気タービン部と第二蒸気タービン部における各ロータは、軸線を中心として軸線方向に延びるロータ軸と、このロータ軸の外周に固定され軸線方向に並んでいる複数の動翼列と、を有している。各動翼列は、軸線に対する周方向に並ぶ複数の動翼を有する。各動翼列の軸線上流側の位置には、複数の静翼列のうち、いずれか一の静翼列が配置されている。各静翼列は、周方向に並ぶ複数の静翼を有する。静翼セグメントは、周方向に延びる外輪と、外輪の径方向内側に配置されている複数の静翼と、を有する。外輪には、軸線に対する径方向内側から径方向外側に向かって凹み、周方向の延びる外輪溝が形成されている。複数の静翼の外側シュラウドは、この外輪の外輪溝に嵌り込んでいる。この外輪は、ケーシング(又は翼環)の径方向内側の部分に固定されている。第一蒸気タービン部のロータと第二蒸気タービン部のロータとは、同一の軸線上に位置し、互に連結されている。
【0005】
静翼は、軸線に対する径方向に垂直な断面の形状が翼形を成して径方向に延びる翼体と、翼体の径方向内側に形成されている内側シュラウドと、翼体の径方向外側に形成されている外側シュラウドと、を有する。
【0006】
分流部材は、第一蒸気タービン部における複数の初段静翼の内側シュラウドと、第二蒸気タービン部における初段静翼の内側シュラウドとを接続する。この分流部材により、蒸気流入管から流入した蒸気の一部を第一蒸気タービン部における初段静翼に導くことができると共に、蒸気流入管から流入した蒸気の残りの一部を第二蒸気タービン部における初段静翼に導くことができる。
【0007】
初段静翼の外側シュラウドは、シュラウド本体と、埋め込み部と、下流側張出部と、を有する。シュラウド本体は、径方向内側を向き、翼体が接続されている外側ガスパス面を有する。埋め込み部は、シュラウド本体から径方向外側に向かって突出している。外側シュラウドにおける埋め込み部は、初段外輪の外輪溝に嵌まり込んでいる。下流側張出部は、シュラウド本体から軸線下流側に突出している。下流側張出部は、初段動翼と径方向で対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭60-082502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蒸気タービンでは、タービン効率等の観点から、静翼セグメント、ケーシング、及びロータが相互に設計上の制約を受ける。しかしながら、これらの部品は、タービン効率等の要求を満たしつつも、設計自由度が高いことが望ましい。
【0010】
そこで、本開示は、タービン効率等の要求を満たしつつも、ケーシングの設計自由度を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本開示の一態様としての初段静翼セグメントは、
軸線に対する周方向に延びる外輪と、前記外輪の前記軸線に対する径方向内側に、前記周方向に並んで取り付けられている複数の初段静翼と、を備える。前記軸線が延びる軸線方向における第一側と第二側とのうち、前記第二側が軸線上流側を成し、前記第一側が軸線下流側を成す。前記複数の初段静翼は、それぞれ、前記軸線に対する径方向に延びる翼体と、前記翼体の前記径方向内側に形成されている内側シュラウドと、前記翼体の前記軸線に対する径方向外側に形成されている外側シュラウドと、を有する。前記翼体は、前記軸線上流側の縁を形成する前縁と、前記軸線下流側の縁を形成する後縁と、を有する。前記内側シュラウドは、前記径方向外側を向き、前記翼体が接続されている内側ガスパス面を有する。前記外側シュラウドは、前記径方向内側を向き、前記翼体が接続されている外側ガスパス面を有するシュラウド本体と、前記シュラウド本体の前記径方向外側に接続されている埋め込み部と、を有する。前記埋め込み部は、前記軸線上流側を向く埋込前端面と、前記軸線下流側を向き前記埋込前端面と背合わせの関係にある埋込後端面と、前記径方向外側を向き前記埋込前端面と前記埋込後端面とを接続する埋込底面と、を有する。前記外輪は、前記複数の初段静翼毎の前記外側シュラウドが入り込む外輪溝と、外輪ガスパス面と、外輪後端面と、外輪外周面と、を有する。前記外輪溝は、前記外輪ガスパス面の前記軸線下流側の端から前記径方向外側に向かって凹み、前記周方向に延びる。前記外輪溝は、前記軸線下流側を向いて前記埋込前端面と対向する溝前側面と、前記軸線上流側を向いて前記埋込後端面と対向する溝後側面と、前記径方向内側を向いて前記埋込底面と対向する溝底面と、を有する。前記外輪ガスパス面は、前記溝前側面よりも前記軸線上流側で且つ前記外側ガスパス面よりも前記径方向外側の位置から、前記径方向内側に向かうに連れて次第に前記軸線下流側に向かって延び、前記外側ガスパス面に連なるように、湾曲した面を有する。前記外輪後端面は、前記外輪溝より前記軸線下流側に位置し、前記軸線下流側を向く。前記外輪外周面は、前記径方向外側を向き、前記外輪ガスパス面の前記径方向外側の縁と前記外輪後端面の前記径方向外側の縁とを接続する。前記埋込前端面は、前記前縁よりも前記軸線上流側に位置する。前記埋込後端面は、前記後縁よりも前記軸線上流側に位置する。
【0012】
本態様の初段静翼セグメントでは、初段静翼における埋め込み部の埋込前端面が、この初段静翼における翼体の前縁よりも、軸線上流側に位置し、この埋め込み部の埋込後端面が、この翼体の後縁よりも、軸線上流側に位置する。よって、本態様の初段静翼セグメントにおける初段静翼は、翼体に対して埋め込み部が軸線上流側にシフトしている。このため、初段静翼の埋め込み部が入り込む外輪溝における溝後側面が、翼体の後縁よりも軸線上流側に位置し、外輪後端面が初段静翼に対して軸線下流側に位置することを抑制できる。言い換えると、本態様では、外輪中で、初段静翼よりも軸線下流側に突出部分を少なくすることができる、又は、外輪中で、初段静翼よりも軸線下流側に突出部分を無くすことができる。
【0013】
従って、本態様では、この外輪が取り付けられるケーシングの設計自由度を高めることができる。このように、ケーシングの設計自由度を高めることができることで、初段動翼が存在する軸線方向の領域と外輪が存在する径方向の領域との共通領域内にも、ケーシングの一部を存在させることができる。この共通領域内にケーシングの一部を存在させることができると、初段静翼と初段動翼との軸線方向の間隔を広げずに、このケーシングの一部に、ケーシングと初段動翼との隙間をシールする初段シールリングを取り付けることができる。
【0014】
初段静翼と初段動翼との軸線方向の間隔を広げると、タービン効率を低下させる可能性が大きい。しかしながら、本態様では、前述したように、初段静翼と初段動翼との軸線方向の間隔を広げずに、このケーシングの一部に初段シールリングを取り付けることができる。よって、本態様では、タービン効率等の要求を満たしつつも、ケーシングの設計自由度を高めることができる。
【0015】
上記目的を達成するための本開示の一態様としての静止ユニットは、
前記一態様としての初段静翼セグメントと、前記初段静翼セグメント及び初段シールリングが取り付けられる翼環と、を備える。前記翼環は、前記径方向内側を向く翼環ガスパス面と、前記外輪が取り付けられる外輪取付部と、前記初段シールリングが取り付けられる初段シールリング取付部と、を有する。前記初段シールリング取付部は、前記翼環ガスパス面から前記径方向外側に向かって凹み、前記周方向に延びる。前記外輪取付部の全体は、前記初段シールリング取付部よりも前記軸線上流側に位置する。
【0016】
上記目的を達成するための本開示の一態様としての蒸気タービンは、
前記一態様としての静止ユニットと、蒸気流入管と、前記軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータの外周を覆うケーシングと、を備える。前記ケーシングは、前記翼環を有する。前記蒸気流入管は、前記ロータの外周側と前記ケーシングの内周側との間に、前記軸線上流側から蒸気が流入するよう配置されている。
【0017】
上記目的を達成するための本開示の一態様としての初段静翼セグメントユニットは、
前記一態様としての初段静翼セグメントである第一初段静翼セグメントと、前記第一初段静翼セグメントに対して前記第二側に間隔をあけて配置されている第二初段静翼セグメントと、前記周方向に延び、前記第一初段静翼セグメントと前記第二初段静翼セグメントとを接続する分流部材と、を備える。前記第二初段静翼セグメントは、前記周方向に延び、前記第一初段静翼セグメントの前記外輪である第一外輪と同じ形状で、前記第一側を軸線上流側とし前記第二側を軸線下流側とする第二外輪と、前記第二外輪の前記径方向内側に、前記周方向に並んで取り付けられ、前記第一初段静翼セグメントの前記複数の初段静翼である複数の第一初段静翼と同じ形状で、前記第一側を軸線上流側とし前記第二側を軸線下流側とする複数の第二初段静翼と、を備える。前記分流部材は、前記複数の第一初段静翼毎の前記内側シュラウドに接続される第一接続部と、前記複数の第二初段静翼毎の前記内側シュラウドに接続される第二接続部と、前記第一接続部と前記第二接続部とを接続する本体と、を有する。前記本体は、前記径方向外側を向いて、前記軸線方向に延び、前記複数の第一初段静翼毎の前記内側ガスパス面及び前記複数の第二初段静翼毎の前記内側ガスパス面に連なるガスパス面を有する。
【0018】
上記目的を達成するための本開示の他の一態様としての蒸気タービンは、
前記一態様としての前記初段静翼セグメントユニットと、蒸気流入管と、前記軸線を中心として回転可能な第一ロータと、前記第一ロータの外周側で、前記軸線方向に並ぶ複数の第一後段静翼列と、前記第一ロータの外周側を覆うと共に、前記第一初段静翼セグメント及び前記複数の第一後段静翼列が取り付けられている第一ケーシングと、前記軸線を中心として回転可能な第二ロータと、前記第二ロータの外周側で、前記軸線方向に並ぶ複数の第二後段静翼列と、前記第二ロータの外周側を覆うと共に、前記第二初段静翼セグメント及び前記複数の第二後段静翼列が取り付けられている第二ケーシングと、を備える。前記第一ロータと前記第二ロータとは、同一の前記軸線上に位置し、互に連結されている。前記蒸気流入管は、前記分流部材の前記ガスパス面から前記径方向外側に離れた位置に配置され、前記第一ケーシングと前記第二ケーシングとを接続する。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一態様によれば、タービン効率等の要求を満たしつつも、ケーシングの設計自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示に係る一実施形態における蒸気タービンの断面図である。
図2図1におけるII部の拡大図である。
図3図1におけるIII部の拡大図である。
図4図2におけるIV部の拡大図である。
図5】本開示に係る一実施形態における初段静翼セグメントユニットの斜視図である。
図6図5におけるVI部の拡大図である。
図7図5におけるVII部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示に係る蒸気タービンの実施形態について、図1図8を参照して詳細に説明する。
【0022】
本実施形態における蒸気タービンは、図1に示すように、二分流型蒸気タービンがある。この蒸気タービンは、第一蒸気タービン部ST1と第二蒸気タービン部ST2とを備える。第一蒸気タービン部ST1及び第二蒸気タービン部ST2は、いずれも、軸線Arを中心として回転するロータ10と、ロータ10を覆うケーシング20と、ケーシング20に取り付けられている複数の静翼列50と、軸受15と、蒸気流入管16と、分流部材71と、を備える。第一蒸気タービン部ST1のロータ10と第二蒸気タービン部ST2のロータ10とは、互に同一の軸線Ar上に位置し、一体回転可能に連結されている。なお、以下の説明の都合上、軸線Arが延びる方向を軸線方向Daとする。また、軸線方向Daにおける両側のうち、一方側を第一側Da1、他方側を第二側Da2とする。
【0023】
第一蒸気タービン部ST1と第二蒸気タービン部ST2とは、蒸気流入管16及び分流部材71を共有する。第一蒸気タービン部ST1で、この蒸気流入管16及び分流部材71を除く部品は、蒸気流入管16を基準にして軸線方向Daにおける第一側Da1に配置されている。この第一蒸気タービン部ST1では、第二側Da2が軸線上流側Dauを成し、第一側Da1が軸線下流側Dadを成す。また、第二蒸気タービン部ST2で、この蒸気流入管16及び分流部材71を除く部品は、この蒸気流入管16を基準にして第二側Da2に配置されている。第二蒸気タービン部ST2では、第一側Da1が軸線上流側Dauを成し、第二側Da2が軸線下流側Dadを成す。第一蒸気タービン部ST1と第二蒸気タービン部ST2とは、形状及び構造が同一である。但し、第二蒸気タービン部ST2における軸線上流側Dauは、第一蒸気タービン部ST1における軸線上流側Dauとは軸線方向Daで逆側である。
【0024】
第一蒸気タービン部ST1と第二蒸気タービン部ST2における各ロータ10は、図2に示すように、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸11と、このロータ軸11の外周に固定され軸線方向Daに並んでいる複数の動翼列12と、を有する。ロータ軸11の軸線下流側Dadの部分には、ロータ軸11を回転可能に支持する軸受15(図1参照)が設けられている。各動翼列12は、軸線Arに対する周方向Dcに並ぶ複数の動翼13を有する。動翼13は、軸線Arに対する径方向Drに垂直な断面形状が翼形を成し、径方向Drに延びる翼体を有する。複数の静翼列50は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列12の軸線上流側Dauの位置には、複数の静翼列50のうち、いずれか一の静翼列50が配置されている。各静翼列50は、周方向Dcに並ぶ複数の静翼51を有する。
【0025】
静翼51は、翼体52と、内側シュラウド53と、外側シュラウド55と、を有する。翼体52は、径方向Drに垂直な断面形状が翼形を成し、径方向Drに延びている。内側シュラウド53は、翼体52の径方向内側Driの端に設けられている。外側シュラウド55は、翼体52の径方向外側Droの端に設けられている。内側シュラウド53と外側シュラウド55との間は、蒸気Sが流れる蒸気流路17の一部を形成する。よって、翼体52は、この蒸気流路17内に配置されていることになる。
【0026】
ここで、軸線方向Daに並ぶ複数の静翼列50のうち、最も軸線上流側Dauの静翼列50を初段静翼列50aとする。さらに、軸線方向Daに並ぶ複数の静翼列50のうち、初段静翼列50aを除く複数の静翼列50を後段静翼列50rとする。本実施形態において、複数の後段静翼列50rは、第二段静翼列50b、第三段静翼列50c、第四段静翼列50d、第五段静翼列50e、第六段静翼列50f(図3参照)、第七段静翼列50g(図3参照)を有する。
【0027】
また、図1に示すように、第一蒸気タービン部ST1のロータ10を第一ロータ10fとし、第二蒸気タービン部ST2のロータ10を第二ロータ10sとする。図2に示すように、第一蒸気タービン部ST1の初段静翼列50aを第一初段静翼列50afとし、第二蒸気タービン部ST2の初段静翼列50aを第二初段静翼列50asとする。第一蒸気タービン部ST1の複数の後段静翼列50rを複数の第一後段静翼列50rfとし、第二蒸気タービン部ST2の複数の後段静翼列50rを複数の第二後段静翼列50rsとする。また、第一蒸気タービン部ST1のケーシング20を第一ケーシング20fとし、第二蒸気タービン部ST2のケーシング20を第二ケーシング20sとする。前述したように、第一蒸気タービン部ST1と第二蒸気タービン部ST2とは、形状及び構造が同一である。このため、以下では、主として第一蒸気タービン部ST1について説明する。また、以下では、「第一」と「第二」とを区別していない場合には、第一蒸気タービン部ST1及び第二蒸気タービン部ST2のそれぞれの構成要素を示すものとする。
【0028】
第一蒸気タービン部ST1と第二蒸気タービン部ST2における各ケーシング20は、内側ケーシング21と、排気ケーシング22と、三つの翼環30と、を有する。三つの翼環30は、いずれも、軸線Arを中心として筒状を成している。また、三つの翼環30は、軸線方向Daに並んでいる。図2に示すように、三つの翼環30のうち、最も軸線上流側Dauの翼環30である第一翼環30aには、初段静翼列50a、第二段静翼列50b、第三段静翼列50c、第四段静翼列50d、第五段静翼列50eが取り付けられている。図3に示すように、三つの翼環30のうち、第一翼環30aの軸線下流側Dadに隣接する第二翼環30bには、第六段静翼列50fが取り付けられている。三つの翼環30のうち、第二翼環30bの軸線下流側Dadに隣接する第三翼環30cには、第七段静翼列50gが取り付けられている。三つの翼環30は、いずれも、軸線Arより上側の部分を構成する半円弧状の上半翼環と、軸線Arよりも下側の部分を構成する半円弧状の下半翼環と、を有する。
【0029】
内側ケーシング21は、図1に示すように、軸線Arを中心として、筒状を成す。この内側ケーシング21の内周側には、複数の翼環30が取り付けられている。排気ケーシング22は、ディフューザ23と、下流側端板24、上流側端板25、側周板26と、を有する。
【0030】
ディフューザ23は、軸線Arに対して環状を成し、軸線下流側Dadに向うに連れて次第に径方向外側Droに広がるディフューザ空間23sを形成する。ディフューザ空間23s内には、ロータ10の最終段動翼列12gを通過した蒸気Sが流入する。なお、最終段動翼列12gとは、複数の動翼列12のうち、最も軸線下流側Dadに配置されている動翼列である。
【0031】
排気ケーシング22は、排気口27を有する。この排気口27は、内部から径方向外側Droであって鉛直下方向に向かって開口している。この排気口27には、蒸気Sを水に戻す復水器Cが接続されている。排気ケーシング22の下流側端板24、上流側端板25、及び側周板26は、ディフューザ空間23sを通過した蒸気Sが流れる排気空間22sを形成する。この排気空間22sは、ディフューザ23の外周を軸線Arに対する周方向Dcに広がって、ディフューザ空間23sから流入した蒸気Sを排気口27に導く。
【0032】
下流側端板24は、排気空間22sの軸線下流側Dadの縁を画定する。この下流側端板24は、実質的に軸線Arに対して垂直である。下流側端板24で、軸線Arより上側の部分は、軸線方向Daから見た形状がほぼ半円形を成している。一方、下流側端板24で、軸線Arより下側部分は、軸線方向Daから見た形状がほぼ長方形を成している。この下流側端板24の下縁は、排気口27の縁の一部を形成する。
【0033】
上流側端板25は、ディフューザ23よりも軸線上流側Dauに配置されている。この上流側端板25は、排気空間22sの軸線上流側Dauの縁を画定する。この上流側端板25は、実質的に軸線Arに対して垂直である。よって、この上流側端板25は、軸線方向Daで間隔をあけて下流側端板24と対向している。上流側端板25の径方向内側Driの縁には、内側ケーシング21が接続されている。上流側端板25の下縁は、排気口27の縁の一部を形成する。
【0034】
側周板26は、下流側端板24の径方向外側Droの縁、及び上流側端板25の径方向外側Droの縁に接続され、軸線方向Daに広がり且つ軸線Arを中心として周方向Dcに広がって、排気空間22sの径方向外側Droの縁の部分を画定する。この側周板26は、上側が半円筒を成すかまぼこ型(semi-cylindrical shape)である。この側周板26の下縁は、排気口27の縁の一部を形成する。
【0035】
第一蒸気タービン部ST1の排気ケーシング22と第二蒸気タービン部ST2の排気ケーシング22とは、互いに接続されて一体化している。
【0036】
蒸気流入管16は、管軸線Apを中心として筒状を成している。管軸線Apは、軸線方向Daにおける第一初段静翼列50afと第二初段静翼列50asとの中間位置を通り、鉛直方向に延びている。蒸気流入管16は、軸線Arよりも上側に配置されている。この蒸気流入管16の第一側Da1には、第一蒸気タービン部ST1の内側ケーシング21及び側周板26が接続されている。また、この蒸気流入管16の第二側Da2には、第二蒸気タービン部ST2の内側ケーシング21及び側周板26が接続されている。
【0037】
第一翼環30aは、図2及び図4に示すように、径方向内側Driを向く翼環ガスパス面32と、外輪取付部33aと、初段シールリング取付部36aと、第二段静翼列取付部33bと、第二段シールリング取付部36bと、第三段静翼列取付部33cと、第三段シールリング取付部36cと、第四段静翼列取付部33dと、第四段シールリング取付部36dと、第五段静翼列取付部33eと、第五段シールリング取付部36eと、を有する。外輪取付部33a、初段シールリング取付部36a、第二段静翼列取付部33b、第二段シールリング取付部36b、第三段静翼列取付部33c、第三段シールリング取付部36c、第四段静翼列取付部33d、第四段シールリング取付部36d、第五段静翼列取付部33e、及び第五段シールリング取付部36eは、以上の順序で、軸線上流側Dauから軸線下流側Dadに向かって並んでいる。また、外輪取付部33a、初段シールリング取付部36a、第二段静翼列取付部33b、第二段シールリング取付部36b、第三段静翼列取付部33c、第三段シールリング取付部36c、第四段静翼列取付部33d、第四段シールリング取付部36d、第五段静翼列取付部33e、及び第五段シールリング取付部36eは、いずれも、翼環ガスパス面32から径方向外側Droに凹んでいる。
【0038】
第一翼環30aは、前述したように、軸線Arよりも上側の部分を構成する半円弧状の第一上半翼環30auと、軸線Arよりも下側の部分を構成する半円弧状の第一下半翼環と、を有する。第一上半翼環30auの周方向Dcの端部と第一下半翼環の周方向Dcの端部とが、翼環連結ボルト32bにより連結されている。この翼環連結ボルト32bが挿通されるボルト孔31は、第一上半翼環30auと第一下半翼環のそれぞれの周方向Dcの両端領域で、初段シールリング取付部36aが配置されている軸線方向Daの領域で、且つ、初段シールリング取付部36aよりも径方向外側Droの領域に、形成されている。
【0039】
外輪取付部33aは、図4に示すように、取付側面34と、取付内周面35とを有する。取付側面34は、翼環ガスパス面32中で初段シールリング取付部36aよりも軸線上流側Dauの位置から径方向外側Droに延び、且つ周方向Dcに延びている。取付内周面35は、取付側面34の径方向外側Droの縁から軸線上流側Dauに延び、且つ周方向Dcに延びている。この外輪取付部33aには、初段静翼セグメント60の外輪61が取り付けられる。
【0040】
初段静翼セグメント60は、軸線Arを中心として周方向Dcに延びる前述の外輪61と、この外輪61の径方向内側Driに取り付けられている初段静翼列50aと、コーキング部材63と、複数の止めネジ64と、を有する。静止ユニット80は、この初段静翼セグメント60と、第一翼環30aとを有して構成される。
【0041】
初段静翼セグメント60の外輪61も、図5に示すように、軸線Arよりも上側の部分を構成する半円弧状の上半外輪61uと、軸線Arよりも下側の部分を構成する半円弧状の下半外輪61dと、を有する。上半外輪61uにおける周方向Dcの端部と下半外輪61dにおける周方向Dcの端部とは、図5及び図7に示すように、外輪連結ボルト62により連結されている。前述の初段静翼列50aは、上半外輪61uに取り付けられている複数の初段静翼51aと、下半外輪61dに取り付けられている複数の初段静翼51aと、で構成される。また、上半外輪61uは、第一上半翼環30auにおける外輪取付部33aに取り付けられ、下半外輪61dは、第一下半翼環における外輪取付部33aに取り付けられる。下半外輪61dにおける周方向Dcの両端部には、下半外輪61dから径方向外側Droに突出する支持プレート69が設けられている。外輪連結ボルト62により上半外輪61uが連結されている下半外輪61dは、この支持プレート69を介して、第一下半翼環に支持されている。
【0042】
初段静翼51aは、前述したように、翼体52と、内側シュラウド53と、外側シュラウド55と、を有する。図4に示すように、翼体52は、軸線上流側Dauの縁を形成する前縁52fと、軸線下流側Dadの縁を形成する後縁52rと、を有する。
【0043】
初段静翼51aの内側シュラウド53は、内側ガスパス面53pと、反ガスパス面53qと、接続溝53gと、を有する。内側ガスパス面53pは、径方向外側Droを向き、翼体52が接続されている。この内側ガスパス面53pは、蒸気流路17の一部を画定する面である。反ガスパス面53qは、径方向内側Driを向き、内側ガスパス面53pと背合わせの関係にある。接続溝53gは、反ガスパス面53qから径方向外側Droに凹み且つ周方向Dcに延びている。接続溝53gは、径方向外側Droに向かうに連れて次第に軸線方向Daにおける溝幅が大きくなるよう形成されている。すなわち、この接続溝53gは、蟻溝である。
【0044】
初段静翼51aの外側シュラウド55は、シュラウド本体56と、シュラウド本体56の径方向外側Droに接続されている埋め込み部57と、を有する。シュラウド本体56は、外側ガスパス面56pと、シュラウド前端面56fと、シュラウド後端面56rと、を有する。外側ガスパス面56pは、径方向内側Driを向き、翼体52が接続されている。この外側ガスパス面56pは、蒸気流路17の一部を画定する面である。シュラウド前端面56fは、軸線上流側Dauを向き、外側ガスパス面56pの軸線上流側Dauの縁から径方向外側Droに延びている。シュラウド後端面56rは、軸線下流側Dadを向き、外側ガスパス面56pの軸線下流側Dadの縁から径方向外側Droに延びている。埋め込み部57は、埋込前端面57fと、埋込後端面57rと、埋込底面57bと、係合溝57gと、を有する。埋込前端面57fは、軸線上流側Dauを向き、翼体52の前縁52fよりも軸線上流側Dauに位置する。埋込後端面57rは、軸線下流側Dadを向き埋込前端面57fと背合わせの関係にあり、翼体52の後縁52rよりも軸線上流側Dauに位置する。埋込底面57bは、径方向外側Droを向き埋込前端面57fと埋込後端面57rとを接続する。係合溝57gは、埋込後端面57rから軸線上流側Dauに凹み、周方向Dcに延びる。
【0045】
外輪61は、複数の初段静翼51a毎の外側シュラウド55が入り込む外輪溝65と、外輪ガスパス面61pと、外輪後端面61rと、外輪外周面61oと、を有する。外輪溝65は、軸線下流側Dadを向いて埋込前端面57fと対向する溝前側面65fと、軸線上流側Dauを向いて埋込後端面57rと対向する溝後側面65rと、径方向内側Driを向いて埋込底面57bと対向する溝底面65bと、凸部65cと、を有する。凸部65cは、溝後側面65rから軸線上流側Dauに突出し、周方向Dcに延びている。この凸部65cは、複数の初段静翼51aにおける埋め込み部57の係合溝57gのそれぞれに嵌まり込む。外輪ガスパス面61pは、溝前側面65fよりも軸線上流側Dauで且つ溝底面65bよりも径方向外側Droの位置から、径方向内側Driに向かうに連れて次第に軸線下流側Dadに向かって延び、外側ガスパス面56pに連なるように、湾曲した面を有する。外輪ガスパス面61pは、溝前側面65fよりも軸線上流側Dauで且つ外側ガスパス面56pよりも径方向外側Droの位置から、径方向内側Driに向かうに連れて次第に軸線下流側Dadに向かって延び、外側ガスパス面56pに連なるように、湾曲した面を有する。なお、外輪ガスパス面61pは、溝前側面65fよりも軸線上流側Dauで且つ溝底面65bよりも径方向外側Droの位置から、径方向内側Driに向かうに連れて次第に軸線下流側Dadに向かって延びてもよい。前述の外輪溝65は、この外輪ガスパス面61pの軸線下流側Dadの端から径方向外側Droに向かって凹み、周方向Dcに延びている。外輪後端面61rは、軸線下流側Dadを向き、外輪溝65より軸線下流側Dadに位置している。この外輪後端面61rは、第一翼環30aの取付側面34と、軸線方向Daで対向する。外輪外周面61oは、径方向外側Droを向き、外輪ガスパス面61pの径方向外側Droの縁と外輪後端面61rの径方向外側Droの縁とを接続する。この外輪外周面61oは、第一翼環30aの取付内周面35と、径方向Drで対向する。
【0046】
外輪61における溝後側面65rと外輪後端面61rとの間の軸線方向Daにおける最大距離doは、外側シュラウド55における埋込前端面57fと埋込後端面57rとの間の軸線方向Daにおける最小距離dsより小さい。また、外輪後端面61rは、シュラウド後端面56rと面一である。なお、この面一には、外輪後端面61rとシュラウド後端面56rとが同一仮想平面上に位置する場合のみならず、外輪後端面61rを含む第一仮想平面とシュラウド後端面56rを含む第二仮想平面とが互いに平行で、且つ第一仮想平面と第二仮想平面との間の距離が例えば2mm以内である場合も含む。
【0047】
外輪61は、さらに、収納空間形成部67を有する。収納空間形成部67は、溝前側面65fの径方向内側Driの端に接続されている。この収納空間形成部67は、複数の初段静翼51aの外側シュラウド55と共同して、コーキング部材63が入り込む収納空間67sを形成する。この収納空間67sは、径方向内側Driが開口している。
【0048】
収納空間形成部67は、空間底面67bと、空間奥面67rと、空間底対向面67oと、空間側面67pと、を有する。空間底面67bは、径方向内側Driを向き、周方向Dcに延び、且つ溝前側面65fの径方向内側Driの端から軸線上流側Dauに延びている。空間奥面67rは、軸線下流側Dadを向き、周方向Dcに延び、且つ空間底面67bの軸線上流側Dauの端から径方向内側Driに延びている。空間底対向面67oは、径方向外側Droを向き、周方向Dcに延び、且つ空間奥面67rの径方向内側Driの端から軸線下流側Dadに延びている。この空間底対向面67oは、径方向Drで空間底面67bと対向している。空間側面67pは、軸線下流側Dadを向き、周方向Dcに延び、且つ空間底対向面67oの軸線下流側Dadの端から径方向内側Driに延びている。この空間側面67pの径方向内側Driの端は、収納空間67sの開口68の縁の一部を形成する。
【0049】
収納空間67sは、収納空間形成部67の各面67b,67o,67p,67rと、外輪溝65に入り込んだ外側シュラウド55とで画定される。この収納空間67sの周方向Dcに垂直な断面形状は、L型を成す。コーキング部材63は、静翼51を形成する金属よりも柔らかい金属で形成されている。このコーキング部材63は、外輪溝65内に複数の初段静翼51aの外側シュラウド55を入れた後、収納空間67sの開口68から収納空間67s内に差し込まれる。この際、コーキング部材63をハンマー等で叩いて、このコーキング部材63を収納空間67s内に入れる。収納空間67s内にコーキング部材63が収まると、このコーキング部材63は、収納空間形成部67の各面67b,67o,67p,67rに接すると共に、外側シュラウド55に接する。このため、コーキング部材63の周方向Dcに垂直な断面形状は、L型の収納空間67sに収まるよう、L型を成している。なお、このコーキング部材63の一部は、収納空間67sの開口68から露出している。このコーキング部材63は、外輪溝65に対して、複数の初段静翼51aの軸線方向Da及び径方向Drへの相対移動を拘束する役目を担っている。
【0050】
前述の止めネジ64は、上半外輪61uに取り付けられている複数の初段静翼51aのうち、周方向Dcの端に位置している初段静翼51aと上半外輪61uとに跨って捩じ込まれている。さらに、他の止めネジ64は、下半外輪61dに取り付けられている複数の初段静翼51aのうち、周方向Dcの端に位置している初段静翼51aと下半外輪61dとに跨って捩じ込まれている。これら止めネジ64は、外輪溝65に対して、複数の初段静翼51aの周方向Dcへの相対移動を拘束する役目を担っている。
【0051】
図2に示すように、初段シールリング取付部36aには、初段シールリング40aが取り付けられている。第二段シールリング取付部36bには、第二段シールリング40bが取り付けられている。第三段シールリング取付部36cには、第三段シールリング40cが取り付けられている。第四段シールリング取付部36dには、第四段シールリング40dが取り付けられている。第五段シールリング取付部36eには、第五段シールリング40eが取り付けられている。初段シールリング40aには、ロータ10が有する複数の動翼列12のうち、初段動翼列12aが径方向Drで対向する。第二段シールリング40bには、ロータ10が有する複数の動翼列12のうち、第二段動翼列12bが径方向Drで対向する。第三段シールリング40cには、ロータ10が有する複数の動翼列12のうち、第三段動翼列12cが径方向Drで対向する。第四段シールリング40dには、ロータ10が有する複数の動翼列12のうち、第四段動翼列12dが径方向Drで対向する。第五段シールリング40eには、ロータ10が有する複数の動翼列12のうち、第五段動翼列12eが径方向Drで対向する。
【0052】
各シールリングは、いずれも、図4に示すように、軸線Arを中心として筒状のシールリングベース41と、シールリングベース41の内周面から径方向内側Driに突出して周方向Dcに延びている複数のフィン42と、シールリングベース41の外周面から径方向外側Droに突出して周方向Dcに延びている一対のベース支持脚43と、を有する。各シールリング取付部36a~36bは、翼環ガスパス面32から径方向外側Droに向かって凹み周方向Dcに延びるベース収納溝37と、ベース収納溝37の溝底面から径方向外側Droに向かって凹み周方向Dcに延びる脚収納溝38と、を有する。ベース収納溝37には、シールリングベース41が径方向Drに移動可能に収納されている。脚収納溝38には、一対のベース支持脚43が径方向Drに移動可能に収納されている。
【0053】
前述の外輪取付部33aの全体は、以上で説明した初段シールリング取付部36aよりも軸線上流側Dauに位置する。
【0054】
第二段静翼列取付部33bには、第二段静翼列50bが取り付けられている。第三段静翼列取付部33cには、第三段静翼列50cが取り付けられている。第四段静翼列取付部33dには、第四段静翼列50dが取り付けられている。第五段静翼列取付部33eには、第五段静翼列50eが取り付けられている。各静翼列取付部33b~33eは、いずれも、静翼51における外側シュラウド55が嵌まり込む翼環溝39を有する。なお、翼環溝39に対する外側シュラウド55の拘束構造は、外輪溝65に対する初段静翼51aの外側シュラウド55の拘束構造と実質的に同一である。すなわち、コーキング部材と連結ボルトとを用いて、外側シュラウド55を翼環溝39に対して相対移動不能に拘束している。
【0055】
ここで、図2及び図5に示すように、第一蒸気タービン部ST1の初段静翼セグメント60を第一初段静翼セグメント60fとし、第二蒸気タービン部ST2の初段静翼セグメント60を第二初段静翼セグメント60sとする。第二初段静翼セグメント60sは、第一初段静翼セグメント60fに対して、第二側Da2に間隔をあけて配置されている。この第二初段静翼セグメント60sは、第一初段静翼セグメント60fと同一形状及び同一構造である。よって、第二初段静翼セグメント60sは、第一初段静翼セグメント60fにおける外輪61である第一外輪61fと同一形状及び同一構造の第二外輪61sと、第一初段静翼セグメント60fにおける複数の初段静翼51aである複数の第一初段静翼51afと同一形状及び同一構造の複数の第二初段静翼51asと、第一初段静翼セグメント60fにおけるコーキング部材63と同一形状及び同一構造のコーキング部材63と、複数の止めネジ64と、を有する。但し、この第二初段静翼セグメント60sにおける軸線上流側Dauは、軸線方向Daにおける第一側Da1であり、この第二初段静翼セグメント60sにおける軸線下流側Dadは、軸線方向Daにおける第二側Da2である。
【0056】
初段静翼セグメントユニット70は、前述の分流部材71と、以上で説明した第一初段静翼セグメント60f及び第二初段静翼セグメント60sとを有する。分流部材71は、軸線Arを中心として筒状を成し、第一初段静翼セグメント60fと第二初段静翼セグメント60sとを接続する。この分流部材71は、図5に示すように、軸線Arよりも上側の部分を構成する上半分流部材71uと、軸線Arよりも下側の部分を構成する下半分流部材71dと、を有する。上半分流部材71uは、第一初段静翼セグメント60fの上半外輪61uに取り付けられている複数の第一初段静翼51afと、第二初段静翼セグメント60sの上半外輪61uに取り付けられている複数の第二初段静翼51asと、を接続する。また、下半分流部材71dは、第一初段静翼セグメント60fの下半外輪61dに取り付けられている複数の第一初段静翼51afと、第二初段静翼セグメント60sの下半外輪61dに取り付けられている複数の第二初段静翼51asと、を接続する。上半分流部材71u及び下半分流部材71dは、いずれも、第一分流部材71fと、第二分流部材71sと、連結具76と、を有する。
【0057】
図2図4及び図6に示すように、第一分流部材71fは、複数の第一初段静翼51af毎の内側シュラウド53に接続される第一接続部72fと、第一接続部72fから第二側Da2に延びる第一本体73fと、を有する。第一本体73fは、第一ガスパス面74fと、第一フランジ75fと、を有する。第一ガスパス面74fは、径方向外側Droを向いて第一接続部72fから軸線方向Daにおける第二側Da2に延びる。この第一ガスパス面74fは、複数の第一初段静翼51af毎の内側ガスパス面53pと連なる。第一フランジ75fは、第一ガスパス面74fの第二側Da2の端から径方向内側Driに突出する。第一接続部72fは、複数の第一初段静翼51af毎の内側シュラウド53における接続溝53gに嵌まり込める凸部72fcを有する。この凸部72fcは、接続溝53gの形状と同様、径方向外側Droに向かうに連れて次第に軸線方向Daにおける凸幅が大きくなるように形成されている。
【0058】
第二分流部材71sは、複数の第二初段静翼51as毎の内側シュラウド53に接続される第二接続部72sと、第二接続部72sから第一側Da1に延びる第二本体73sと、を有する。第二本体73sは、第二ガスパス面74sと、第二フランジ75sと、を有する。第二ガスパス面74sは、径方向外側Droを向いて第二接続部72sから軸線方向Daにおける第一側Da1に延びる。この第二ガスパス面74sは、複数の第二初段静翼51as毎の内側ガスパス面53pと連なる。第二フランジ75sは、第二ガスパス面74sの第一側Da1の端から径方向内側Driに突出する。第二接続部72sは、複数の第二初段静翼51as毎の内側シュラウド53における接続溝53gに嵌まり込める凸部72scを有する。この凸部72scは、接続溝53gの形状と同様、径方向外側Droに向かうに連れて次第に軸線方向Daにおける凸幅が大きくなるように形成されている。なお、第一本体73fと第二本体73sとで、分流部材71の本体73を構成する。
【0059】
第一分流部材71fの第一フランジ75fと、第二分流部材71sの第二フランジ75sとは、スペーサ77を介して、連結具76であるボルトにより連結されている。
【0060】
分流部材71における軸線方向Daの中央位置は、前述の管軸線Apにおける軸線方向Daの位置にほぼ一致している。また、分流部材71は、蒸気流入管16から径方向内側Driに離れた位置に配置されている。言い換えると、蒸気流入管16は、分流部材71のガスパス面74f,74sから径方向外側Droに離れた位置に配置されている。
【0061】
蒸気流入管16を通った蒸気Sは、分流部材71のガスパス面74f,74sにより、軸線方向Daにおける第一側Da1と第二側Da2とに分流される。第一側Da1に向かった蒸気Sは、第一蒸気タービン部ST1の蒸気流路17内に流入する。また、第二側Da2に向かった蒸気Sは、第二蒸気タービン部ST2の蒸気流路17内に流入する。
【0062】
以上のように、本実施形態における初段静翼セグメント60では、初段静翼51aにおける埋め込み部57の埋込前端面57fが、この初段静翼51aにおける翼体52の前縁52fよりも、軸線上流側Dauに位置し、この埋め込み部57の埋込後端面57rが、この翼体52の後縁52rよりも、軸線上流側Dauに位置する。よって、本実施形態における初段静翼セグメント60における初段静翼51aは、翼体52に対して埋め込み部57が軸線上流側Dauにシフトしている。このため、初段静翼51aの埋め込み部57が入り込む外輪溝65における溝後側面65rが、翼体52の後縁52rよりも軸線上流側Dauに位置し、外輪後端面61rが初段静翼51aに対して軸線下流側Dadに位置することを抑制できる。言い換えると、本実施形態では、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分を少なくすることができる、又は、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分を無くすことができる。なお、本実施形態では、外輪後端面61rがシュラウド後端面56rと面一であるため、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分は、無い。
【0063】
従って、本実施形態では、この外輪61が取り付けられる第一翼環30a(ケーシング20の一部)の設計自由度を高めることができる。このように、第一翼環30aの設計自由度を高めることができることで、初段動翼列12aが存在する軸線方向Daの領域と外輪61が存在する径方向Drの領域との共通領域内にも、第一翼環30aの一部を存在させることができる。そこで、本実施形態では、この共通領域内に第一翼環30aの一部を存在させて、初段静翼51aと初段動翼13との軸線方向Daの間隔を広げずに、この第一翼環30aの一部に、翼環30と初段動翼13との隙間をシールする初段シールリング40aを取り付けている。
【0064】
初段静翼51aと初段動翼13との軸線方向Daの間隔を広げると、タービン効率を低下させる可能性が大きい。しかしながら、本実施形態では、前述したように、初段静翼51aと初段動翼13との軸線方向Daの間隔を広げずに、第一翼環30aの一部に初段シールリング40aを取り付けることができる。よって、本実施形態では、タービン効率等の要求を満たしつつも、ケーシング20の一部である第一翼環30aの設計自由度を高めることができる。
【0065】
外輪61の一部ではなく、第一翼環30aの一部に初段シールリング40aを取り付けることができれば、翼環30における初段シールリング取付部36aの径方向Drの幅を大きくすることができ、翼環30に対して、初段シールリング40aを径方向Drに移動可能に取り付けることができる。しかも、初段シールリング取付部36aの径方向Drの幅を大きくしても、翼環連結ボルト32bが挿通されるボルト孔31を、第一翼環30a中で、初段シールリング取付部36aの径方向外側Droの領域に形成することができる。
【0066】
本実施形態では、複数の第一初段静翼51af毎の外側シュラウド55と第一外輪61fとを溶接接続しなくても、コーキング部材63と止めネジ64とにより、複数の第一初段静翼51af毎の外側シュラウド55を第一外輪61fにしっかりと取り付けることができる。また、複数の第二初段静翼51as毎の外側シュラウド55と第二外輪61sとを溶接接続しなくても、コーキング部材63と止めネジ64とにより、複数の第二初段静翼51as毎の外側シュラウド55を第二外輪61sにしっかりと取り付けることができる。さらに、本実施形態では、複数の第一初段静翼51af毎の内側シュラウド53と分流部材71とを溶接接続しなくても、複数の第一初段静翼51af毎の内側シュラウド53と分流部材71としっかりと接続することができる。また、本実施形態では、複数の第二初段静翼51as毎の内側シュラウド53と分流部材71とを溶接接続しなくても、複数の第二初段静翼51as毎の内側シュラウド53と分流部材71としっかりと接続することができる。
【0067】
よって、本実施形態では、初段静翼セグメントユニット70を構成する部品相互を溶接接続しなくても、しっかりと接続することができる。
【0068】
また、本実施形態では、分流部材71が第一分流部材71fと第二分流部材71sとに分かれているので、第一分流部材71fにおける第一接続部72fの凸部72fcを複数の第一初段静翼51af毎の接続溝53gに挿入する作業と、第二分流部材71sにおける第二接続部72sの凸部72scを複数の第二初段静翼51as毎の接続溝53gに挿入する作業と、を並行して実施する必要がなくなる。このため、本実施形態では、分流部材71の第一接続部72fを複数の第一初段静翼51afに容易に接続することができると共に、分流部材71の第二接続部72sを複数の第二初段静翼51asに容易に接続することができる。
【0069】
分流部材71の軸線方向Daの中間部分には、第一分流部材71fの第一フランジ75fと第二分流部材71sの第二フランジ75sとが存在する。このため、分流部材71における本体73の軸線方向Daの中間部に、これらフランジ75f,75sが本体73のリブとして機能する。よって、本実施形態では、分流部材71の剛性を高めることができる。
【0070】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0071】
「付記」
以上の実施形態における初段静翼セグメントは、例えば、以下のように把握される。
【0072】
(1)第一態様における初段静翼セグメントは、
軸線Arに対する周方向Dcに延びる外輪61と、前記外輪61の前記軸線Arに対する径方向内側Driに、前記周方向Dcに並んで取り付けられている複数の初段静翼51aと、を備える。前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける第一側Da1と第二側Da2とのうち、前記第二側Da2が軸線上流側Dauを成し、前記第一側Da1が軸線下流側Dadを成す。前記複数の初段静翼51aは、それぞれ、前記軸線Arに対する径方向Drに延びる翼体52と、前記翼体52の前記径方向内側Driに形成されている内側シュラウド53と、前記翼体52の前記軸線Arに対する径方向外側Droに形成されている外側シュラウド55と、を有する。前記翼体52は、前記軸線上流側Dauの縁を形成する前縁52fと、前記軸線下流側Dadの縁を形成する後縁52rと、を有する。前記内側シュラウド53は、前記径方向外側Droを向き、前記翼体52が接続されている内側ガスパス面53pを有する。前記外側シュラウド55は、前記径方向内側Driを向き、前記翼体52が接続されている外側ガスパス面56pを有するシュラウド本体56と、前記シュラウド本体56の前記径方向外側Droに接続されている埋め込み部57と、を有する。前記埋め込み部57は、前記軸線上流側Dauを向く埋込前端面57fと、前記軸線下流側Dadを向き前記埋込前端面57fと背合わせの関係にある埋込後端面57rと、前記径方向外側Droを向き前記埋込前端面57fと前記埋込後端面57rとを接続する埋込底面57bと、を有する。前記外輪61は、前記複数の初段静翼51a毎の前記外側シュラウド55が入り込む外輪溝65と、外輪ガスパス面61pと、外輪後端面61rと、外輪外周面61oと、を有する。前記外輪溝65は、前記外輪ガスパス面61pの前記軸線下流側Dadの端から前記径方向外側Droに向かって凹み、前記周方向Dcに延びる。前記外輪溝65は、前記軸線下流側Dadを向いて前記埋込前端面57fと対向する溝前側面65fと、前記軸線上流側Dauを向いて前記埋込後端面57rと対向する溝後側面65rと、前記径方向内側Driを向いて前記埋込底面57bと対向する溝底面65bと、を有する。前記外輪ガスパス面61pは、前記溝前側面65fよりも前記軸線上流側Dauで且つ前記外側ガスパス面56pよりも前記径方向外側Droの位置から、前記径方向内側Driに向かうに連れて次第に前記軸線下流側Dadに向かって延び、前記外側ガスパス面56pに連なるように、湾曲した面を有する。前記外輪後端面61rは、前記外輪溝65より前記軸線下流側Dadに位置し、前記軸線下流側Dadを向く。前記外輪外周面61oは、前記径方向外側Droを向き、前記外輪ガスパス面61pの前記径方向外側Droの縁と前記外輪後端面61rの前記径方向外側Droの縁とを接続する。前記埋込前端面57fは、前記前縁52fよりも前記軸線上流側Dauに位置する。前記埋込後端面57rは、前記後縁52rよりも前記軸線上流側Dauに位置する。
【0073】
本態様の初段静翼セグメント60では、初段静翼51aにおける埋め込み部57の埋込前端面57fが、この初段静翼51aにおける翼体52の前縁52fよりも、軸線上流側Dauに位置し、この埋め込み部57の埋込後端面57rが、この翼体52の後縁52rよりも、軸線上流側Dauに位置する。よって、本態様の初段静翼セグメント60における初段静翼51aは、翼体52に対して埋め込み部57が軸線上流側Dauにシフトしている。このため、初段静翼51aの埋め込み部57が入り込む外輪溝65における溝後側面65rが、翼体52の後縁52rよりも軸線上流側Dauに位置し、外輪後端面61rが初段静翼51aに対して軸線下流側Dadに位置することを抑制できる。言い換えると、本態様では、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分を少なくすることができる、又は、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分を無くすことができる。
【0074】
従って、本態様では、この外輪61が取り付けられるケーシング20の設計自由度を高めることができる。このように、ケーシング20の設計自由度を高めることができることで、初段動翼13が存在する軸線方向Daの領域と外輪61が存在する径方向Drの領域との共通領域内にも、ケーシンの一部を存在させることができる。この共通領域内にケーシング20の一部を存在させることができると、初段静翼51aと初段動翼13との軸線方向Daの間隔を広げずに、このケーシング20の一部に、ケーシング20と初段動翼13との隙間をシールする初段シールリング40aを取り付けることができる。
【0075】
初段静翼51aと初段動翼13との軸線方向Daの間隔を広げると、タービン効率を低下させる可能性が大きい。しかしながら、本態様では、前述したように、初段静翼51aと初段動翼13との軸線方向Daの間隔を広げずに、このケーシング20の一部に初段シールリング40aを取り付けることができる。よって、本態様では、タービン効率等の要求を満たしつつも、ケーシング20の設計自由度を高めることができる。
【0076】
(2)第二態様における初段静翼セグメントは、
前記第一態様における初段静翼セグメント60において、前記溝後側面65rと前記外輪後端面61rとの間の前記軸線方向Daにおける最大距離doは、前記埋込前端面57fと前記埋込後端面57rとの間の前記軸線方向Daにおける最小距離dsより小さい。
【0077】
本態様では、第一態様よりも、確実に、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分を少なくすることができる、又は、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分を無くすことができる。
【0078】
(3)第三態様における初段静翼セグメントは、
前記第一態様又は前記第二態様における初段静翼セグメント60において、さらに、前記外輪61に対する複数の前記初段静翼51aの相対移動を拘束するコーキング部材63を備える。前記外輪61は、さらに、収納空間形成部67を有する。前記収納空間形成部67は、複数の前記初段静翼51aにおける前記外側シュラウド55と共同して、前記コーキング部材63が入り込み、前記径方向内側Driが開口している収納空間67sを形成する面を有する。前記埋め込み部57は、さらに、前記埋込後端面57rから前記軸線上流側Dauに凹み、前記周方向Dcに延びる係合溝57gを有する。前記外輪溝65は、さらに、前記溝後側面65rから前記軸線上流側Dauに突出し、前記周方向Dcに延びて、複数の前記初段静翼51aにおける前記埋め込み部57の前記係合溝57gのそれぞれに嵌まり込む凸部65cを有する。前記収納空間形成部67は、前記溝前側面65fの前記径方向内側Driの端に接続されている。前記コーキング部材63は、前記周方向Dcに延び、前記収納空間67sに収まり、前記収納空間形成部67が有する前記面に接すると共に、複数の前記初段静翼51aにおける前記外側シュラウド55のそれぞれに接し、前記収納空間67sの開口68から露出している。
【0079】
本態様では、コーキング部材63により、外輪61に対する初段静翼51aの相対移動を拘束することができる。
【0080】
(4)第四態様における初段静翼セグメントは、
前記第一態様から前記第三態様のいずれか一態様における初段静翼セグメント60において、前記シュラウド本体56は、前記軸線下流側Dadを向き、前記外側ガスパス面56pの前記軸線下流側Dadの端から前記径方向外側Droに延びるシュラウド後端面56rを有する。前記外輪後端面61rは、前記シュラウド後端面56rと面一である。
【0081】
本態様では、外輪61中で、初段静翼51aよりも軸線下流側Dadに突出部分を無くすことができる。
【0082】
以上の実施形態における静止ユニットは、例えば、以下のように把握される。
(5)第五態様における静止ユニットは、
前記第一態様から前記第四態様のいずれか一態様における初段静翼セグメント60と、前記初段静翼セグメント60及び初段シールリング40aが取り付けられる翼環30aと、を備える。前記翼環30aは、前記径方向内側Driを向く翼環ガスパス面32と、前記外輪61が取り付けられる外輪取付部33aと、前記初段シールリング40aが取り付けられる初段シールリング取付部36aと、を有する。前記初段シールリング取付部36aは、前記翼環ガスパス面32から前記径方向外側Droに向かって凹み、前記周方向Dcに延びる。前記外輪取付部33aの全体は、前記初段シールリング取付部36aよりも前記軸線上流側Dauに位置する。
【0083】
本態様では、このケーシング20の一部を構成する翼環30aに、初段静翼51aと初段動翼13との軸線方向Daの間隔を広げずに、翼環30aと初段動翼13との隙間をシールする初段シールリング40aを取り付けることができる。
【0084】
(6)第六態様における静止ユニットは、
前記第五態様における静止ユニット80において、前記翼環30aの前記外輪取付部33aは、取付側面34と、取付内周面35と、を有する。前記取付側面34は、前記翼環ガスパス面32中で前記初段シールリング取付部36aよりも前記軸線上流側Dauの位置から前記径方向外側Droに延び、且つ前記周方向Dcに延びて、前記外輪後端面61rと対向する。前記取付内周面35は、前記取付側面34の前記径方向外側Droの縁から前記軸線上流側Dauに延び、且つ前記周方向Dcに延びて、前記外輪外周面61oと対向する。
【0085】
本態様では、翼環30aの取付側面34を外輪後端面61rに近接対向させることができる。
【0086】
(7)第七態様における静止ユニットは、
前記第五態様又は前記第六態様における静止ユニット80において、さらに、前記軸線方向Daに並ぶ複数の後段静翼列50rを備える。前記複数の後段静翼列50rは、それぞれ、前記周方向Dcに並ぶ複数の静翼51を有する。前記翼環30aは、前記初段シールリング取付部36aよりも前記軸線下流側Dadの領域内で、前記軸線方向Daに並ぶ複数の翼環溝39を有する。前記複数の翼環溝39は、いずれも、前記翼環ガスパス面32から前記径方向外側Droに凹み且つ前記周方向Dcに延びる。前記複数の翼環溝39のそれぞれには、前記複数の後段静翼列50rのうちのいずれか一の静翼列50を構成する前記複数の静翼51が嵌まり込んでいる。
【0087】
以上の実施形態における蒸気タービンは、例えば、以下のように把握される。
【0088】
(8)第八態様における蒸気タービンは、
前記第五態様から前記第七態様のいずれか一態様における静止ユニット80と、蒸気流入管16と、前記軸線Arを中心として回転可能なロータ10と、前記ロータ10の外周を覆うケーシング20と、を備える。前記ケーシング20は、前記翼環30aを有する。前記蒸気流入管16は、前記ロータ10の外周側と前記ケーシング20の内周側との間に、前記軸線上流側Dauから蒸気Sが流入するよう配置されている。
【0089】
以上の実施形態における初段静翼セグメントユニットは、例えば、以下のように把握される。
(9)第九態様における初段静翼セグメントユニットは、
前記第一態様から前記第四態様のいずれか一態様における初段静翼セグメント60である第一初段静翼セグメント60fと、前記第一初段静翼セグメント60fに対して前記第二側Da2に間隔をあけて配置されている第二初段静翼セグメント60sと、前記周方向Dcに延び、前記第一初段静翼セグメント60fと前記第二初段静翼セグメント60sとを接続する分流部材71と、を備える。前記第二初段静翼セグメント60sは、前記周方向Dcに延び、前記第一初段静翼セグメント60fの前記外輪61である第一外輪61fと同じ形状で、前記第一側Da1を軸線上流側Dauとし前記第二側Da2を軸線下流側Dadとする第二外輪61sと、前記第二外輪61sの前記径方向内側Driに、前記周方向Dcに並んで取り付けられ、前記第一初段静翼セグメント60fの前記複数の初段静翼51aである複数の第一初段静翼51afと同じ形状で、前記第一側Da1を軸線上流側Dauとし前記第二側Da2を軸線下流側Dadとする複数の第二初段静翼51asと、を備える。前記分流部材71は、前記複数の第一初段静翼51af毎の前記内側シュラウド53に接続される第一接続部72fと、前記複数の第二初段静翼51as毎の前記内側シュラウド53に接続される第二接続部72sと、前記第一接続部72fと前記第二接続部72sとを接続する本体73と、を有する。前記本体73は、前記径方向外側Droを向いて、前記軸線方向Daに延び、前記複数の第一初段静翼51af毎の前記内側ガスパス面53p及び前記複数の第二初段静翼51as毎の前記内側ガスパス面53pに連なるガスパス面74f,74sを有する。
【0090】
本態様では、分流部材71の径方向外側Droから径方向内側Driに向かって流れてきた蒸気Sの一部を、第一初段静翼51afに導くと共に、この蒸気Sの残りの一部を第二初段静翼51asに導くことができる。
【0091】
(10)第十態様における初段静翼セグメントユニットは、
前記第九態様における初段静翼セグメントユニット70において、前記内側シュラウド53は、前記径方向内側Driを向き前記内側ガスパス面53pと背合わせの関係にある反ガスパス面53qと、前記反ガスパス面53qから前記径方向外側Droに凹み且つ前記周方向Dcに延びる接続溝53gと、を有する。前記第一接続部72fは、前記複数の第一初段静翼51af毎の前記内側シュラウド53における前記接続溝53gに嵌まり込んでいる凸部72fcを有する。前記第二接続部72sは、前記複数の第二初段静翼51as毎の前記内側シュラウド53における前記接続溝53gに嵌まり込んでいる凸部72scを有する。 前記接続溝53gは、前記径方向外側Droに向かうに連れて次第に前記軸線方向Daにおける溝幅が大きくなるよう形成されている。前記凸部72fc,72scは、径方向外側Droに向かうに連れて次第に前記軸線方向Daにおける凸幅が大きくなよう形成されている。
【0092】
本態様では、複数の第一初段静翼51af毎の内側シュラウド53と分流部材71とを溶接接続しなくても、複数の第一初段静翼51af毎の内側シュラウド53と分流部材71としっかりと接続することができる。また、本態様では、複数の第二初段静翼51as毎の内側シュラウド53と分流部材71とを溶接接続しなくても、複数の第二初段静翼51as毎の内側シュラウド53と分流部材71としっかりと接続することができる。
【0093】
(11)第十一態様における初段静翼セグメントユニットは、
前記第九態様又は前記第十態様における初段静翼セグメントユニット70において、前記分流部材71は、第一分流部材71fと、第二分流部材71sと、連結具76と、を有する。前記第一分流部材71fは、前記第一接続部72fと、前記第一接続部72fから前記第二側Da2に向かって延び前記本体の一部を形成する第一本体73fと、を有する。前記第二分流部材71sは、前記第二接続部72sと、前記第二接続部72sから前記第一側Da1に向かって延び前記本体の残りの一部を形成する第二本体73sと、を有する。前記連結具76は、前記第一本体73fと前記第二本体73sとを連結する。
【0094】
本態様では、分流部材71が第一分流部材71fと第二分流部材71sとに分かれているので、第一分流部材71fにおける第一接続部72fの凸部72fcを複数の第一初段静翼51af毎の接続溝53gに挿入する作業と、第二分流部材71sにおける第二接続部72sの凸部72scを複数の第二初段静翼51as毎の接続溝53gに挿入する作業と、を並行して実施する必要がなくなる。このため、本態様では、分流部材71の第一接続部72fを複数の第一初段静翼51afに容易に接続することができると共に、分流部材71の第二接続部72sを複数の第二初段静翼51asに容易に接続することができる。
【0095】
以上の実施形態における蒸気タービンは、例えば、以下のように把握される。
(12)第十二態様における蒸気タービンは、
前記第九態様から前記第十一態様のいずれか一態様における初段静翼セグメントユニット70と、蒸気流入管16と、前記軸線Arを中心として回転可能な第一ロータ10fと、前記第一ロータ10fの外周側で、前記軸線方向Daに並ぶ複数の第一後段静翼列50rfと、前記第一ロータ10fの外周側を覆うと共に、前記第一初段静翼セグメント60f及び前記複数の第一後段静翼列50rfが取り付けられている第一ケーシング20fと、前記軸線Arを中心として回転可能な第二ロータ10sと、前記第二ロータ10sの外周側で、前記軸線方向Daに並ぶ複数の第二後段静翼列50rsと、前記第二ロータ10sの外周側を覆うと共に、前記第二初段静翼セグメント60s及び前記複数の第二後段静翼列50rsが取り付けられている第二ケーシング20sと、を備える。前記第一ロータ10fと前記第二ロータ10sとは、同一の前記軸線Ar上に位置し、互に連結されている。前記蒸気流入管16は、前記分流部材71の前記ガスパス面から前記径方向外側Droに離れた位置に配置され、前記第一ケーシング20fと前記第二ケーシング20sとを接続する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示の一態様によれば、タービン効率等の要求を満たしつつも、ケーシングの設計自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0097】
10:ロータ
10f:第一ロータ
10s:第二ロータ
11:ロータ軸
12:動翼列
12a:初段動翼列
12b:第二段動翼列
12c:第三段動翼列
12d:第四段動翼列
12e:第五段動翼列
12g:最終段動翼列
13:動翼
15:軸受
16:蒸気流入管
17:蒸気流路
20:ケーシング
20f:第一ケーシング
20s:第二ケーシング
21:内側ケーシング
22:排気ケーシング
22s:排気空間
23:ディフューザ
23s:ディフューザ空間
24:下流側端板
25:上流側端板
26:側周板
27:排気口
30:翼環
30a:第一翼環
30au:第一上半翼環
30b:第二翼環
30c:第三翼環
31:ボルト孔
32b:翼環連結ボルト
32:翼環ガスパス面
33a:外輪取付部
33b:第二段静翼列取付部
33c:第三段静翼列取付部
33d:第四段静翼列取付部
33e:第五段静翼列取付部
34:取付側面
35:取付内周面
36a:初段シールリング取付部
36b:第二段シールリング取付部
36c:第三段シールリング取付部
36d:第四段シールリング取付部
36e:第五段シールリング取付部
37:ベース収納溝
38:脚収納溝
39:翼環溝
40a:初段シールリング
40b:第二段シールリング
40c:第三段シールリング
40d:第四段シールリング
40e:第五段シールリング
41:シールリングベース
42:フィン
43:ベース支持脚
50:静翼列
50a:初段静翼列
50af:第一初段静翼列
50as:第二初段静翼列
50r:後段静翼列
50rf:第一後段静翼列
50rs:第二後段静翼列
50b:第二段静翼列
50c:第三段静翼列
50d:第四段静翼列
50e:第五段静翼列
50f:第六段静翼列
50g:第七段静翼列
51:静翼
51a:初段静翼
51af:第一初段静翼
51as:第二初段静翼
52:翼体
52f:前縁
52r:後縁
53:内側シュラウド
53p:内側ガスパス面
53q:反ガスパス面
53g:接続溝
55:外側シュラウド
56:シュラウド本体
56p:外側ガスパス面
56f:シュラウド前端面
56r:シュラウド後端面
57:埋め込み部
57f:埋込前端面
57r:埋込後端面
57b:埋込底面
57g:係合溝
60:初段静翼セグメント
60f:第一初段静翼セグメント
60s:第二初段静翼セグメント
61:外輪
61f:第一外輪
61s:第二外輪
61u:上半外輪
61d:下半外輪
61p:外輪ガスパス面
61r:外輪後端面
61o:外輪外周面
62:外輪連結ボルト
63:コーキング部材
64:止めネジ
65:外輪溝
65f:溝前側面
65r:溝後側面
65b:溝底面
65c:凸部
67:収納空間形成部
67s:収納空間
67b:空間底面
67r:空間奥面
67o:空間底対向面
67p:空間側面
68:開口
69:支持プレート
70:初段静翼セグメントユニット
71:分流部材
71u:上半分流部材
71d:下半分流部材
71f:第一分流部材
71s:第二分流部材
72f:第一接続部
72s:第二接続部
72fc,72sc:凸部
73:本体
73f:第一本体
73s:第二本体
74f:第一ガスパス面
74s:第二ガスパス面
75f:第一フランジ
75s:第二フランジ
76:連結具
77:スペーサ
80:静止ユニット
Ar:軸線
Ap:管軸線
Da:軸線方向
Da1:第一側
Da2:第二側
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
C:復水器
S:蒸気
ST1:第一蒸気タービン部
ST2:第二蒸気タービン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7