(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】水素航空機、予冷用設備、並びに、水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム及び予冷方法
(51)【国際特許分類】
B64D 37/30 20060101AFI20240712BHJP
B64D 33/10 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B64D37/30
B64D33/10
(21)【出願番号】P 2023556627
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2022040123
(87)【国際公開番号】W WO2023074787
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2021175929
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代航空機の開発/水素航空機向けコア技術開発」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 正人
(72)【発明者】
【氏名】大島 遼祐
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/079419(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017223803(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 37/30
B64D 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料とするエンジン、前記燃料を貯蔵する燃料タンク、及び、前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインを備え、前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインが冷媒供給口を有し、前記燃料供給ラインが前記冷媒供給口より前記燃料の流れの下流に配置された冷媒回収口を有する水素航空機の前記燃料供給ラインの予冷システムであって、
前記冷媒供給口へ冷媒を供給する冷媒供給ラインと、
前記冷媒回収口から前記冷媒を回収する冷媒回収ラインと、を備え、
前記冷媒供給ラインから前記冷媒供給口を通じて前記燃料供給ラインに前記冷媒を供給するとともに、前記冷媒回収ラインから前記冷媒回収口を通じて前記燃料供給ラインに供給した前記冷媒を回収することによって、前記燃料供給ラインを予冷する、
水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム。
【請求項2】
前記冷媒を供給する冷媒ポンプを更に備える、
請求項1に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム。
【請求項3】
前記燃料供給ラインから着脱可能である前記冷媒供給ライン及び前記冷媒回収ラインが配置されている予冷用設備を備える、
請求項1又は2に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム。
【請求項4】
前記冷媒供給ラインに前記冷媒を供給する冷媒供給源と、
前記冷媒回収ラインにより回収した前記冷媒を冷却、貯蔵又は廃棄する冷媒処理系統と、を有する予冷用設備を更に備える、
請求項1又は2に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム。
【請求項5】
前記燃料タンクに貯蔵された前記燃料が液体水素であって、前記冷媒が前記液体水素の気化により生じた気体水素であり、
前記冷媒供給口は、前記燃料供給ラインに配置されており、
前記燃料タンクは、前記冷媒供給ラインと接続し、前記冷媒供給口を通じて、前記気体水素を前記燃料供給ラインに供給する、
請求項1又は2に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム。
【請求項6】
前記冷媒は、液体、気体、又は超臨界状態の水素である、
請求項1又は2に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム。
【請求項7】
水素を燃料とするエンジン、前記燃料を貯蔵する燃料タンク、及び、前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインを備える水素航空機の燃料供給ラインの予冷方法であって、
冷媒供給ラインと前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインに配置された冷媒供給口とを接続すること、
冷媒回収ラインと前記燃料供給ラインに配置され、前記冷媒供給口より前記燃料の流れの下流に配置された冷媒回収口とを接続すること、及び、
前記冷媒供給ラインから前記冷媒供給口を通じて前記燃料供給ラインに冷媒を供給するとともに、前記冷媒回収ラインから前記冷媒回収口を通じて前記燃料供給ラインに供給した前記冷媒を回収することによって、前記燃料供給ラインを予冷すること、を含む、
水素航空機の燃料供給ラインの予冷方法。
【請求項8】
前記冷媒回収ラインを接続した後に、前記冷媒供給ラインを接続する、
請求項7に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷方法。
【請求項9】
前記燃料タンクに貯蔵された前記燃料が液体水素であり、前記冷媒が前記液体水素の気化により生じた気体水素であり、
前記冷媒供給口は、前記燃料供給ラインに配置されており、
前記燃料タンクは、前記冷媒供給ラインと接続され、前記冷媒供給口を通じて前記気体水素を前記燃料供給ラインに供給する、
請求項7又は8に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷方法。
【請求項10】
前記冷媒は、液体、気体、又は超臨界状態の水素である、
請求項7又は8に記載の水素航空機の燃料供給ラインの予冷方法。
【請求項11】
水素を燃料とするエンジンと、
前記燃料を貯蔵する燃料タンクと、
前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインと、を備え、
前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインは、冷媒が供給される冷媒供給口を有し、
前記燃料供給ラインは、前記冷媒供給口より前記燃料の流れの下流に配置されて前記冷媒を回収する冷媒回収口を有し、
前記冷媒供給口から供給され、前記燃料供給ラインを流れて前記冷媒回収口から回収される前記冷媒によって前記燃料供給ラインが予冷される、
水素航空機。
【請求項12】
前記燃料供給ラインは前記燃料を昇圧するエンジンポンプを有し、
前記冷媒供給口は前記エンジンポンプよりも上流に配置され、前記冷媒回収口は前記エンジンポンプよりも下流に配置されている、
請求項11に記載の水素航空機。
【請求項13】
前記燃料供給ラインは前記燃料を気化する熱交換器を有し、
前記冷媒回収口が前記燃料供給ラインのうち前記熱交換器よりも上流に配置されている、
請求項11又は12に記載の水素航空機。
【請求項14】
水素を燃料とするエンジン、前記燃料を貯蔵する燃料タンク、及び、前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインを備え、前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインが冷媒供給口を有し、前記燃料供給ラインが前記冷媒供給口より下流に配置された冷媒回収口を有する水素航空機の前記燃料供給ラインを予冷する予冷用設備であって、
前記冷媒供給口と接続される冷媒供給ラインと、
前記冷媒回収口と接続される冷媒回収ラインと、を備え、
前記冷媒供給ラインから前記冷媒供給口を通じて前記燃料供給ラインに冷媒を供給するとともに、前記冷媒回収ラインから前記冷媒回収口を通じて前記燃料供給ラインに供給した前記冷媒を回収することによって、前記燃料供給ラインを予冷する、
予冷用設備。
【請求項15】
前記冷媒供給ラインに前記冷媒を供給する冷媒供給源と、
前記冷媒回収ラインにより回収した前記冷媒を冷却、貯蔵又は廃棄する冷媒処理系統と、を更に備える、
請求項14に記載の予冷用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素航空機の燃料供給ラインの予冷システム及び予冷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素航空機の開発が進められている。水素航空機は、燃料の一部又は全部が水素であるエンジンを搭載した航空機である(例えば、特許文献1)。
【0003】
水素航空機には、水素燃料を貯蔵した燃料タンクと、水素燃焼向けのエンジンと、燃料タンクからエンジンの燃焼器へ燃料を送る燃料供給ラインとが搭載される。燃料供給ラインには、例えば、燃料を昇圧するエンジンポンプ、フィルタ、流量制御弁、及び熱交換器等が設けられている。燃料タンクに貯蔵された燃料は、例えば、液体水素である。燃料タンクの液体水素は、航空機内に敷設された燃料供給ラインを通り、エンジンの燃焼器へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0336680号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素航空機の燃料供給ラインにおいて、燃料タンクに貯蔵された水素燃料と燃料供給ラインに温度差がある場合(例えば、水素航空機のエンジンの始動前)、燃料タンクから燃料供給ラインへ流入した水素燃料は、燃料供給ラインを通過する間に温度が上昇し、エンジンでの使用に適さない温度になるおそれがある。水素燃料と燃料供給ラインとの温度差は、小さいことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る水素航空機の燃料供給ラインの予冷システムは、
水素を燃料とするエンジン、前記燃料を貯蔵する燃料タンク、及び、前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインを備え、前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインが冷媒供給口を有し、前記燃料供給ラインが前記冷媒供給口より前記燃料の流れの下流に配置された冷媒回収口を有する水素航空機の前記燃料供給ラインの予冷システムであって、
前記冷媒供給口へ冷媒を供給する冷媒供給ラインと、
前記冷媒回収口から前記冷媒を回収する冷媒回収ラインと、を備え、
前記冷媒供給ラインから前記冷媒供給口を通じて前記燃料供給ラインに前記冷媒を供給するとともに、前記冷媒回収ラインから前記冷媒回収口を通じて前記燃料供給ラインに供給した前記冷媒を回収することによって、前記燃料供給ラインを予冷するものである。
【0007】
本開示の一態様に係る水素航空機の燃料供給ラインの予冷方法は、
水素を燃料とするエンジン、前記燃料を貯蔵する燃料タンク、及び、前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインを備える水素航空機の燃料供給ラインの予冷方法であって、
冷媒供給ラインと前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインに配置された冷媒供給口とを接続すること、
冷媒回収ラインと前記燃料供給ラインに配置され、前記冷媒供給口より前記燃料の流れの下流に配置された冷媒回収口とを接続すること、及び、
前記冷媒供給ラインから前記冷媒供給口を通じて前記燃料供給ラインに冷媒を供給するとともに、前記冷媒回収ラインから前記冷媒回収口を通じて前記燃料供給ラインに供給した前記冷媒を回収することによって、前記燃料供給ラインを予冷すること、を含むものである。
【0008】
本開示の一態様に係る水素航空機は、
水素を燃料とするエンジンと、
前記燃料を貯蔵する燃料タンクと、
前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインと、を備え、
前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインは、冷媒が供給される冷媒供給口を有し、
前記燃料供給ラインは、前記冷媒供給口より前記燃料の流れの下流に配置されて前記冷媒を回収する冷媒回収口を有し、
前記冷媒供給口から供給され、前記燃料供給ラインを流れて前記冷媒回収口から回収される前記冷媒によって前記燃料供給ラインが予冷されるものである。
【0009】
本開示の一態様に係る予冷用設備は、
水素を燃料とするエンジン、前記燃料を貯蔵する燃料タンク、及び、前記燃料タンクから前記エンジンへ前記燃料を供給する燃料供給ラインを備え、前記燃料タンク又は前記燃料供給ラインが冷媒供給口を有し、前記燃料供給ラインが前記冷媒供給口より下流に配置された冷媒回収口を有する水素航空機の前記燃料供給ラインを予冷する予冷用設備であって、
前記冷媒供給口と接続される冷媒供給ラインと、
前記冷媒回収口と接続される冷媒回収ラインと、を備え、
前記冷媒供給ラインから前記冷媒供給口を通じて前記燃料供給ラインに冷媒を供給するとともに、前記冷媒回収ラインから前記冷媒回収口を通じて前記燃料供給ラインに供給した前記冷媒を回収することによって、前記燃料供給ラインを予冷するものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、水素燃料と燃料供給ラインとの温度差を抑制し、燃料供給ラインを通じてエンジンへ安定して水素燃料を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る水素航空機の燃料供給ラインとその予冷システムの系統図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態の変形例1に係る水素航空機の燃料供給ラインとその予冷システムの系統図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態の変形例2に係る水素航空機の燃料供給ラインとその予冷システムの系統図である。
【
図4】
図4は、本開示の第2実施形態に係る水素航空機の燃料供給ラインとその予冷システムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2の系統図である。本開示に係る予冷システム2は、例えば、水素航空機1のエンジン6の始動前に、燃料タンク5とエンジン6とを接続する燃料供給ライン3を予冷するために利用される。
【0013】
〔水素航空機1の構成例〕
水素航空機1は、水素を燃料Fとするエンジン6と、燃料Fを貯蔵した燃料タンク5と、燃料タンク5からエンジン6へ燃料Fを送る燃料供給ライン3とを備える。燃料タンク5に貯蔵されている燃料Fは、液体、気体、又は超臨界状態の水素である。エンジン6は燃料Fとして水素を燃焼する燃焼器61を備え、燃料タンク5の燃料Fは燃料供給ライン3を通じてエンジン6へ供給される。
【0014】
燃料供給ライン3は、燃料タンク5の出口51からエンジン6の入口62までの燃料Fの流路を形成している。エンジン6の入口62は、例えば、エンジン6内の燃焼器61へ繋がる配管の入口である。燃料供給ライン3には、第1シャットオフバルブ31、ブースタポンプ32、チェックバルブ33、第2シャットオフバルブ34、エンジンポンプ35、燃料フィルタ36、流量計37、流量制御バルブ38、第3シャットオフバルブ39、及び熱交換器40が、上流から下流へ向かって配置されている。燃料供給ライン3のこれらの要素は、適宜、順序を入れ替えることができる。燃料供給ライン3のこれらの要素の間は配管等で接続されている。なお、本明細書において「上流」及び「下流」は、燃料Fの流れ方向を基準としている。エンジンポンプ35は、エンジン6で燃料Fに対し要求される所定の圧力まで、燃料Fを昇圧する。第3シャットオフバルブ39を通過する燃料Fが気体である場合には、燃料供給ライン3から熱交換器40が省略されてもよい。
【0015】
燃料供給ライン3には、冷媒供給口41と、冷媒供給口41よりも下流に配置された冷媒回収口42とが設けられている。好ましくは、冷媒供給口41は燃料供給ライン3のエンジンポンプ35よりも上流に配置され、冷媒回収口42は燃料供給ライン3のエンジンポンプ35より下流に配置される。冷媒供給口41は、燃料供給ライン3のうち、より上流側に配置されることが更に好ましい。本実施形態において冷媒供給口41は、燃料供給ライン3のうち燃料タンク5の出口51と第1シャットオフバルブ31の間に配置されている。
【0016】
冷媒回収口42は、燃料供給ライン3のうち、より下流側に配置されることが好ましい。燃料供給ライン3が熱交換器40を含む場合には、冷媒回収口42は熱交換器40よりも上流に配置される。本実施形態において冷媒回収口42は、燃料供給ライン3のうち第3シャットオフバルブ39と熱交換器40の間に配置されている。
【0017】
〔予冷システム2の構成例〕
予冷システム2は、冷媒ポンプ22、冷媒供給ライン23、及び、冷媒回収ライン24を備える。
【0018】
冷媒ポンプ22、冷媒供給ライン23、及び冷媒回収ライン24は、予冷用設備21に設けられている。予冷用設備21は、冷媒供給ライン23に冷媒を供給する設備である。予冷用設備21は、例えば、地上又は地中に固定されていてもよいし、可動であってもよい。また、予冷用設備21を構成する複数の機器は互いに離間して配置されていてもよい。冷媒ポンプ22は、水素航空機1のエンジンポンプ35と兼ねてもよい。
【0019】
予冷用設備21には、冷媒供給源211が設けられており、冷媒供給源211は、冷媒供給ライン23に冷媒Mを供給する。冷媒供給源211は、冷媒Mが収容された容器であってもよいし、外部から冷媒Mを導入する配管等であってもよい。冷媒Mは、例えば、液体、気体、又は超臨界状態の水素である。冷媒Mは、燃料タンク5に収容されている燃料Fと状態が異なっていてもよい。冷媒Mは燃料Fと異なる物質であってもよい。なお、燃料供給ライン3と燃料タンク5に収容されている燃料Fとの温度差をより小さくする観点から、冷媒Mと燃料Fは同じ物質であることが好ましい。
【0020】
予冷用設備21には、冷媒処理系統212が設けられており、冷媒回収ライン24から冷媒処理系統212へ冷媒Mが送られる。冷媒処理系統212は、燃料供給ライン3を流れた後、冷媒回収ライン24を通じて予冷用設備21へ戻ってきた冷媒Mを処理する。燃料供給ライン3を流れた後の冷媒Mは、温度が上昇し、膨張していることがある。冷媒処理系統212は、例えば、冷媒回収ライン24より戻ってきた冷媒Mを冷却して、冷媒供給源211へ還すように構成されている。冷媒処理系統212は、冷媒回収ライン24より戻ってきた冷媒Mを貯蔵又は廃棄するように構成されていてもよいし、戻ってきた冷媒Mを燃料供給ライン3の冷却とは別の用途のために処理するように構成されていてもよい。
【0021】
予冷用設備21の冷媒供給源211と冷媒供給口41は、冷媒供給ライン23よって接続される。冷媒供給ライン23は、冷媒供給口41に対し着脱可能である。冷媒回収口42と予冷用設備21の冷媒処理系統212とは、冷媒回収ライン24によって接続される。冷媒回収ライン24は、冷媒回収口42に対し着脱可能である。冷媒ポンプ22は、本実施形態においては冷媒供給ライン23又は冷媒回収ライン24に配置されたポンプである。冷媒ポンプ22は、燃料供給ライン3のエンジンポンプ35と兼ねてもよい。或いは、冷媒ポンプ22として、燃料供給ライン3のエンジンポンプ35と、冷媒供給ライン23又は冷媒回収ライン24に配置されたポンプとの両方が用いられてもよい。
【0022】
予冷システム2は、例えば、水素航空機1のエンジン6の始動前に、燃料タンク5とエンジン6とを接続する燃料供給ライン3を予冷することで、水素燃料と燃料供給ライン3との温度差を抑制できる。よって、燃料供給ライン3を通じてエンジン6へ安定して水素燃料を供給できる。また、燃料供給ライン3を通過した冷媒Mは燃料タンク5へそのまま戻されたり、エンジン6へ送られたりせずに冷媒回収ライン24によって回収されるので、温度が上昇した冷媒Mが燃料タンク5やエンジン6に流入することを防止できる。
【0023】
また、予冷システム2は、水素航空機1から着脱可能であるため、燃料供給ライン3を予冷する際に燃料供給ライン3に接続することができる。よって、水素航空機1から燃料供給ライン3の予冷のための機器が省略可能であり、水素航空機1を軽量化できる。
【0024】
〔燃料供給ライン3の予冷方法〕
第1実施形態の予冷システム2を用いた、水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷方法を説明する。燃料供給ライン3の予冷は、例えば、エンジン6の始動前に行われる。燃料供給ライン3の予冷方法は、次の工程を含む。
(i)冷媒供給口41に冷媒供給ライン23が接続され、冷媒回収口42に冷媒回収ライン24が接続される。ここで、冷媒回収ライン24が接続された後に、冷媒供給ライン23が接続されることが好ましい。
(ii)冷媒ポンプ22が起動される。ここで、燃料タンク5の出口51及び熱交換器40の入口は閉止されており、第1シャットオフバルブ31、第2シャットオフバルブ34、及び第3シャットオフバルブ39は開放されている。
(iii)燃料供給ライン3が所定温度になった場合、又は、所定の予冷時間が経過した場合、冷媒ポンプ22が停止される。
(iv)冷媒供給口41と冷媒供給ライン23の接続が解除され、冷媒回収口42と冷媒回収ライン24の接続が解除される。ここで、第1シャットオフバルブ31、第2シャットオフバルブ34、及び第3シャットオフバルブ39は閉止されている。
【0025】
上記の工程(ii)において、冷媒ポンプ22の稼働によって、予冷用設備21の冷媒供給源211の冷媒Mが、冷媒供給ライン23、燃料供給ライン3、及び、冷媒回収ライン24を順に流れて、予冷用設備21の冷媒処理系統212へ戻される。冷媒Mが燃料供給ライン3を流れることによって、燃料供給ライン3が予冷される。
【0026】
燃料供給ライン3が予冷された後、エンジンポンプ35が起動される。ここで、熱交換器40の入口、第1シャットオフバルブ31、第2シャットオフバルブ34、及び第3シャットオフバルブ39は開放されている。これにより、燃料タンク5の燃料Fが燃料供給ライン3を通じてエンジン6へ供給される。このように、予冷システム2で燃料供給ライン3が予冷されることによって、水素航空機1のエンジン6の始動時において、燃料供給ライン3は燃料Fの温度の上昇を抑制できる。その結果、水素航空機1では、エンジン6の始動時より、燃料タンク5から燃料供給ライン3を通じエンジン6へ、エンジン6での使用に適した温度で、燃料Fを安定して供給できる。
【0027】
図1に示す水素航空機1では、燃料供給ライン3に冷媒供給口41が設けられており、冷媒Mは燃料タンク5を通らない。このように、燃料タンク5内が冷媒Mの流路から除外されることによって、燃料Fと冷媒Mが燃料タンク5内で混ざらない。これにより、燃料タンク5内の燃料Fを低温に保持しつつ、燃料供給ライン3を予冷できる。なお、燃料タンク5内は燃料Fの流れにおいて燃料供給ライン3のエンジンポンプ35の上流と見做すことができ、燃料タンク5が冷媒Mの流路の一部として利用されてもよい。
【0028】
〔変形例1〕
図2は、第1実施形態の変形例1に係る水素航空機1の燃料供給ライン3とその予冷システム2の系統図である。
図2に示す変形例1では、燃料タンク5には、冷媒供給口41が設けられている。冷媒供給口41は、燃料タンク5の燃料入口と共用されてもよい。なお、変形例1及び変形例2の説明において、前述の第1実施形態と実質的に同一の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0029】
図2に示す変形例1では、燃料供給ライン3の予冷時には、燃料タンク5の出口51は開放され、熱交換器40の入口は閉止され、第1シャットオフバルブ31、第2シャットオフバルブ34、及び第3シャットオフバルブ39は開放された状態で、冷媒ポンプ22が起動される。これにより、冷媒供給源211の冷媒Mは、冷媒供給ライン23、燃料タンク5内、燃料供給ライン3、及び冷媒回収ライン24を順に流れて、冷媒処理系統212へ回収される。
【0030】
〔変形例2〕
図3は、第1実施形態の変形例2に係る水素航空機1の燃料供給ライン3とその予冷システム2の系統図である。
図3に示す変形例2では、冷媒回収口42が燃料供給ライン3の熱交換器40よりも下流に配置されている。
【0031】
図3に示す変形例2では、燃料供給ライン3に熱交換器40を回避して、熱交換器40の上流から下流へ冷媒Mを流すバイパスライン43が接続されている。バイパスライン43は、エンジン6の作動中、燃料Fが通過してもよい。そして、燃料供給ライン3において、バイパスライン43より下流に冷媒回収口42が配置されている。
【0032】
変形例2において、燃料供給ライン3の予冷時には、冷媒Mが熱交換器40を通らずにバイパスライン43を通るように燃料供給ライン3の流路が切り替えられ、且つ、第1シャットオフバルブ31、第2シャットオフバルブ34、及び第3シャットオフバルブ39が開放された状態で、冷媒ポンプ22が起動される。これにより、冷媒供給源211の冷媒Mは、冷媒供給ライン23、燃料タンク5、燃料供給ライン3、及び冷媒回収ライン24を順に流れて、冷媒処理系統212へ回収される。燃料供給ライン3を流れる冷媒Mは、バイパスライン43を流れて、熱交換器40には流れない。このように、燃料供給ライン3が熱交換器40などの予冷を要しない機器を有する場合に、予冷を要しない機器をバイパスするように流路を形成し、冷媒Mを流すことによって、燃料供給ライン3のうち、予冷が必要な部分を予冷することができる。
【0033】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る水素航空機1の燃料供給ライン3とその予冷システム2Aの系統図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と実質的に同一の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0034】
図4に示す水素航空機1の燃料タンク5には、燃料Fとして液体水素が収容されている。燃料タンク5内の上部には、液体水素の気化によって生じた気体水素(ボイルオフガスと称し得る)が滞留している。燃料タンク5には、燃料タンク5内から燃料Fの気化によって生じた気体水素を燃料供給ライン3に排出する冷媒供給ライン23が接続されている。燃料タンク5は、冷媒供給ライン23を通じて冷媒回収口42と接続されている。なお、燃料タンク5にボイルオフガスラインが接続され、ボイルオフガスラインと冷媒供給ライン23とが接続され、燃料タンク5は、ボイルオフガスライン及び冷媒供給ライン23を通じて冷媒回収口42と接続されてもよい。第2実施形態に係る予冷システム2Aでは、冷媒Mとして燃料タンク5で燃料Fの気化によって生じた気体水素を利用する。
【0035】
予冷システム2Aは、冷媒ポンプ22と、冷媒供給ライン23、及び、冷媒回収ライン24を備える。冷媒ポンプ22は、エンジンポンプ35と共用されてもよいし、予冷用設備21に配置されてもよい。冷媒ポンプ22は、省略されてもよい。冷媒供給ライン23は、水素航空機1に配置されてもよいし、予冷用設備21に配置されてもよい。冷媒回収ライン24は、予冷用設備21に配置される。冷媒回収口42は、燃料供給ライン3のエンジンポンプ35よりも下流に配置されている。
【0036】
燃料供給ライン3の予冷を開始するにあたり、冷媒供給ライン23と冷媒供給口41とが接続される。冷媒供給ライン23が水素航空機1に設けられている場合は、冷媒供給ライン23は予め冷媒供給口41と接続されており、冷媒供給ライン23と冷媒供給口41とが連通されるように弁などが操作されてもよい。そして、燃料供給ライン3の予冷時には、燃料タンク5の出口51及び熱交換器40の入口は閉止され、第1シャットオフバルブ31、第2シャットオフバルブ34、及び第3シャットオフバルブ39は開放される。冷媒ポンプ22により、燃料タンク5内で生じた気体水素が冷媒Mとして、冷媒供給ライン23、冷媒供給口41、燃料供給ライン3、冷媒回収口42、及び冷媒回収ライン24を順に流れて、冷媒処理系統212へ回収される。このように、燃料Fの気化によって生じた気体水素が冷媒Mとして燃料供給ライン3を流れるので、燃料タンク5内の燃料Fを低温に保持しつつ、燃料供給ライン3を予冷できる。
【0037】
なお、第2実施形態に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2Aは、第1実施形態に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2と同時に適用できる。即ち、燃料タンク5に貯蔵された燃料Fのボイルオフガスを冷媒Mとして燃料供給ライン3へ供給するとともに、冷媒供給源211に貯蔵された冷媒Mを燃料供給ライン3へ供給して、燃料供給ライン3を流れたのち、冷媒回収ライン24を通じて、冷媒Mを冷媒処理系統212へ回収してもよい。これにより、燃料供給ライン3、燃料タンク5に貯留された燃料F、予冷用設備21などの状況に応じて、予冷システム2及び2Aの一方又は両方を使用し、燃料供給ライン3を予冷できる。
【0038】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2,2Aは、
水素を燃料Fとするエンジン6、燃料Fを貯蔵する燃料タンク5、及び、燃料タンク5からエンジン6へ燃料Fを供給する燃料供給ライン3を備え、燃料タンク5又は燃料供給ライン3が冷媒供給口41を有し、燃料供給ライン3が冷媒供給口41より燃料Fの流れの下流に配置された冷媒回収口42を有する水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2であって、
冷媒供給口41へ冷媒Mを供給する冷媒供給ライン23と、
冷媒回収口42から冷媒Mを回収する冷媒回収ライン24と、を備え、
冷媒供給ライン23から冷媒供給口41を通じて燃料供給ライン3に冷媒Mを供給するとともに、冷媒回収ライン24から冷媒回収口42を通じて燃料供給ライン3に供給した冷媒Mを回収することによって、燃料供給ライン3を予冷するものである。
【0039】
上記の予冷システム2によれば、例えば、水素航空機1のエンジン6の始動前に、当該エンジン6へ燃料Fを送る燃料供給ライン3が冷媒Mによって予冷されるので、燃料Fと燃料供給ライン3との温度差を抑制できる。よって、燃料供給ライン3を通じて、燃料Fである水素をエンジン6へ安定して供給できる。また、燃料供給ライン3を通過した冷媒Mは燃料タンク5へそのまま戻されたり、エンジン6へ送られたりせずに冷媒回収ライン24によって回収されるので、温度が上昇した冷媒Mが燃料タンク5やエンジン6に流入することを防止できる。
【0040】
本開示の第2の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2,2Aは、第1の項目に係る予冷システム2において、冷媒Mを供給する冷媒ポンプ22を更に備えるものである。
【0041】
冷媒ポンプ22が冷媒Mを供給することで、燃料供給ライン3を速やかに冷却できる。
【0042】
本開示の第3の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2,2Aは、第1又は2の項目に係る予冷システム2において、燃料供給ライン3から着脱可能である冷媒供給ライン23及び冷媒回収ライン24が配置されている予冷用設備21を備えるものである。
【0043】
水素航空機1から冷媒供給ライン23及び冷媒回収ライン24を省略して、水素航空機1を軽量化できる。
【0044】
本開示の第4の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2,2Aは、第1乃至3のいずれかの項目に係る予冷システム2において、冷媒供給ライン23に冷媒Mを供給する冷媒供給源211と、冷媒回収ライン24により回収した冷媒Mを冷却、貯蔵又は廃棄する冷媒処理系統212と、を有する予冷用設備21を更に備えるものである。
【0045】
水素航空機1から冷媒供給源211及び冷媒処理系統212を省略して、水素航空機1を軽量化できる。
【0046】
本開示の第5の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2,2Aは、第1乃至4のいずれかの項目に係る予冷システム2において、燃料タンク5に貯蔵された燃料Fが液体水素であって、冷媒Mが液体水素の気化により生じた気体水素であり、冷媒供給口41は、燃料供給ライン3に配置されており、燃料タンク5は、冷媒供給ライン23と接続し、冷媒供給口41を通じて、気体水素を燃料供給ライン3に供給するものである。
【0047】
燃料タンク5内の燃料Fの気化によって生じた気体水素が冷媒Mとして燃料供給ライン3を流れるので、燃料タンク5で生じた燃料Fの気体水素を有効に利用できる。また、冷媒Mは燃料タンク5を通らないので、燃料タンク5内の燃料Fを低温に保持しつつ、燃料供給ライン3を予冷できる。
【0048】
本開示の第6の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷システム2は、第1乃至4のいずれかの項目に係る予冷システム2において、冷媒Mは、液体、気体、又は超臨界状態の水素であるものである。
【0049】
冷媒Mとして燃料Fと同じ物質が用いられることによって、燃料供給ライン3と燃料タンク5に収容されている燃料Fとの温度差をより小さくできる。また、燃料供給ライン3の汚染を低減できる。
【0050】
本開示の第7の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷方法は、
水素を燃料Fとするエンジン6、燃料Fを貯蔵する燃料タンク5、及び、燃料タンク5からエンジン6へ燃料Fを供給する燃料供給ライン3を備える水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷方法であって、
冷媒供給ライン23と燃料タンク5又は燃料供給ライン3に配置された冷媒供給口41とを接続すること、
冷媒回収ライン24と燃料供給ライン3に配置され、冷媒供給口41より燃料Fの流れの下流に配置された冷媒回収口42とを接続すること、及び、
冷媒供給ライン23から冷媒供給口41を通じて燃料供給ライン3に冷媒Mを供給するとともに、冷媒回収口42を通じて冷媒回収ライン24より冷媒Mを回収することによって、燃料供給ライン3を予冷すること、を含むものである。
【0051】
上記の予冷方法によれば、例えば、水素航空機1のエンジン6の始動前に、当該エンジン6へ燃料Fを送る燃料供給ライン3が冷媒Mによって予冷されるので、燃料Fと燃料供給ライン3との温度差を抑制できる。よって、燃料供給ライン3を通じて、燃料Fである水素をエンジン6へ安定して供給できる。また、燃料供給ライン3を通過した冷媒Mは燃料タンク5へそのまま戻されたり、エンジン6へ送られたりせずに冷媒回収ライン24によって回収されるので、温度が上昇した冷媒Mが燃料タンク5やエンジン6に流入することを防止できる。
【0052】
本開示の第8の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷方法は、第7の項目に係る予冷方法において、冷媒回収ライン24を接続した後に、冷媒供給ライン23を接続するものである。
【0053】
冷媒回収ライン24を接続し、冷媒を回収する経路を確保した後に、冷媒供給ライン23を接続することで、燃料供給ライン3を安全に予冷できる。
【0054】
本開示の第9の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷方法は、第7又は8の項目に係る予冷方法において、燃料タンク5に貯蔵された燃料Fが液体水素であり、冷媒Mが液体水素の気化により生じた気体水素であり、冷媒供給口41は、燃料供給ライン3に配置されており、燃料タンク5は、冷媒供給ライン23と接続され、冷媒供給口41を通じて気体水素を燃料供給ライン3に供給するものである。
【0055】
燃料タンク5内の燃料Fの気化によって生じた気体水素が冷媒Mとして燃料供給ライン3を流れるので、燃料タンク5で生じた燃料Fの気体水素を有効に利用できる。冷媒Mは燃料タンク5を通らないので、燃料タンク5内の燃料Fを低温に保持しつつ、燃料供給ライン3を予冷できる。
【0056】
本開示の第10の項目に係る水素航空機1の燃料供給ライン3の予冷方法は、第7又は8の項目に係る予冷方法において、冷媒Mは、液体、気体、又は超臨界状態の水素であるものである。
【0057】
冷媒Mとして燃料Fと同じ物質が用いられることによって、燃料供給ライン3と燃料タンク5に収容されている燃料Fとの温度差をより小さくできる。また、燃料供給ライン3の汚染を低減できる。
【0058】
本開示の第11の項目に係る水素航空機1は、
水素を燃料Fとするエンジン6と、
燃料Fを貯蔵する燃料タンク5と、
燃料タンク5からエンジン6へ燃料Fを供給する燃料供給ライン3と、を備え、
燃料タンク5又は燃料供給ライン3は、冷媒Mが供給される冷媒供給口41を有し、
燃料供給ライン3は、冷媒供給口41より燃料Fの流れの下流に配置されて冷媒Mを回収する冷媒回収口42を有し、
冷媒供給口41から供給され、燃料供給ライン3を流れて冷媒回収口42から回収される冷媒Mによって燃料供給ライン3が予冷されるものである。
【0059】
上記の水素航空機1によれば、例えば、水素航空機1のエンジン6の始動前に、当該エンジン6へ燃料Fを送る燃料供給ライン3が冷媒Mによって予冷されるので、燃料Fと燃料供給ライン3との温度差を抑制できる。よって、燃料供給ライン3を通じて、燃料Fである水素をエンジン6へ安定して供給できる。また、燃料供給ライン3を通過した冷媒Mは燃料タンク5へそのまま戻されたり、エンジン6へ送られたりせずに冷媒回収ライン24によって回収されるので、温度が上昇した冷媒Mが燃料タンク5やエンジン6に流入することを防止できる。
【0060】
本開示の第12の項目に係る水素航空機1は、第11の項目に係る水素航空機1において燃料供給ライン3は燃料Fを昇圧するエンジンポンプ35を有し、冷媒供給口41はエンジンポンプ35よりも上流に配置され、冷媒回収口42はエンジンポンプ35よりも下流に配置されているものである。
【0061】
上記水素航空機1では、燃料供給ライン3が予冷されるので、例えば、エンジン6の始動時に、燃料供給ライン3へ流入した燃料Fの温度が抑制され、エンジンポンプ35によって燃料Fは所定の圧力まで安定して昇圧される。よって、例えば、水素航空機1のエンジン6の始動時において、燃料供給ライン3を通じて、燃料Fである水素をエンジン6へ安定して供給できる。
【0062】
本開示の第13の項目に係る水素航空機1は、第11又は12の項目に係る水素航空機1において、燃料供給ライン3は燃料Fを気化する熱交換器40を有し、冷媒回収口42が燃料供給ライン3のうち熱交換器40よりも上流に配置されているものである。
【0063】
燃料供給ライン3のうち予冷を要しない要素については、冷媒Mを流さないようにして冷却を回避しつつ、燃料供給ライン3を予冷できる。
【0064】
本開示の第14の項目に係る予冷用設備21は、
水素を燃料Fとするエンジン6、燃料Fを貯蔵する燃料タンク5、及び、燃料タンク5からエンジン6へ燃料Fを供給する燃料供給ライン3を備え、燃料タンク5又は燃料供給ライン3が冷媒供給口41を有し、燃料供給ライン3が冷媒供給口41より下流に配置された冷媒回収口42を有する水素航空機1の燃料供給ライン3を予冷する予冷用設備21であって、
冷媒供給口41と接続される冷媒供給ライン23と、
冷媒回収口42と接続される冷媒回収ライン24と、を備え、
冷媒供給ライン23から冷媒供給口41を通じて燃料供給ライン3に冷媒Mを供給するとともに、冷媒回収口42を通じて冷媒回収ライン24より冷媒Mを回収することによって、燃料供給ライン3を予冷するものである。
【0065】
本開示の第15の項目に係る予冷用設備21は、第14の項目に係る予冷用設備21において、冷媒供給ライン23に冷媒Mを供給する冷媒供給源211と、冷媒回収ライン24により回収した冷媒Mを冷却、貯蔵又は廃棄する冷媒処理系統212と、を更に備えるものである。
【0066】
上記第14及び上記第15の項目に係る予冷用設備21によれば、例えば、水素航空機1のエンジン6の始動前に、当該エンジン6へ燃料Fを送る燃料供給ライン3が冷媒Mによって予冷されるので、燃料Fと燃料供給ライン3との温度差を抑制できる。よって、燃料供給ライン3を通じて、燃料Fである水素をエンジン6へ安定して供給できる。また、燃料供給ライン3を通過した冷媒Mは燃料タンク5へそのまま戻されたり、エンジン6へ送られたりせずに冷媒回収ライン24によって回収されるので、温度が上昇した冷媒Mが燃料タンク5やエンジン6に流入することを防止できる。更に、予冷用設備21が水素航空機1から独立して構成されることによって、水素航空機1から燃料供給ライン3の予冷に必要な機器を省略し、水素航空機1を軽量化できる。
【0067】
本開示は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で2つの実施形態に纏められているが、複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。