(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】タイミングアドバンスとしての値を決定し、ソースセルからターゲットセルへのハンドオーバーを実行する方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20240712BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20240712BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20240712BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20240712BHJP
【FI】
H04B7/185
H04W84/06
H04W36/08
H04W56/00 130
(21)【出願番号】P 2023568759
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2021041816
(87)【国際公開番号】W WO2022234686
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-07-20
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】チョチーナ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-548782(JP,A)
【文献】特表2020-515202(JP,A)
【文献】特表2021-524192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
H04W 84/06
H04W 36/08
H04W 56/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星通信ネットワークを含むネットワークのターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するよう、ユーザ機器により実行される方法であって、前記ユーザ機器は、ソースセルに対応するソース基地局に接続され、前記ターゲットセルは、ターゲット基地局に対応し、前記ソースセル及び前記ターゲットセルは、前記衛星通信ネットワークの1つ以上の衛星によってサポートされ、少なくとも前記ソースセルが、前記衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、前記方法は、
前記ユーザ機器が第1の信号を前記ターゲット基地局に送信する前に、前記ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を、
前記ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータと、
前記ユーザ機器によって決定される第1のパラメータと、
前記ユーザ機器によって受信される、前記ソースセル及び前記ターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる第2のパラメータと、
に基づいて、決定することを含む、方法。
【請求項2】
前記第1のパラメータは、前記ユーザ機器における、
前記ソース基地局から、前記ソースセルを通じて受信された第1の信号と、
前記ターゲット基地局から、前記ターゲットセルを通じて受信された第2の信号と、
の到着時刻に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパラメータを、
前記第1の信号の到着時刻に基づいて決定され、或る時間間隔内にある、第1の時刻と、
前記第2の信号の到着時刻に基づいて決定され、前記時間間隔内にある、第2の時刻と、
に基づいて決定することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のパラメータは、前記ソース基地局と前記ターゲット基地局との間の非同期オフセットに関連する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を、前記ソース基地局に送信することを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ソースセルにおけるタイミングアドバンスと前記ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値とのギャップが閾値を上回る場合、前記ユーザ機器は、前記ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を送信する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ソース基地局から、
前記ユーザ機器が前記ターゲット基地局に信号を送信しない遅延に関連するデータ、及び/又は、
前記ユーザ機器が前記ターゲットセルへのハンドオーバーを行うまでの最大時間、
を受信することを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
衛星通信ネットワークを含むネットワークのターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するように構成されたユーザ機器であって、前記ユーザ機器は、ソースセルに対応するソース基地局に接続され、前記ターゲットセルは、ターゲット基地局に対応し、前記ソースセル及び前記ターゲットセルは、前記衛星通信ネットワークの1つ以上の衛星によってサポートされ、少なくとも前記ソースセルが、前記衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、
前記ユーザ機器は、
プロセッサと、
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、前記ターゲット基地局に接続する前に、前記ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を、
前記ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータと、
前記ユーザ機器によって決定される第1のパラメータと、
前記ソースセル及び前記ターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる第2のパラメータと、
に基づいて前記ユーザ機器が決定するよう構成されている、非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備える、ユーザ機器。
【請求項9】
ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実施するためにネットワークにより実行される方法であって、前記ネットワークは、衛星通信ネットワークを含み、前記ソースセルはソース基地局に対応し、前記ターゲットセルはターゲット基地局に対応し、少なくとも前記ソースセルが、前記衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、前記方法は、
パラメータを決定することであって、前記パラメータは、前記ソースセル及び前記ターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる値に関連することと、
前記パラメータを少なくとも前記ユーザ機器に送信することと、
前記ソースセルから前記ターゲットセルへの前記ユーザ機器の前記ハンドオーバーを実行することと、
を含み、
前記ユーザ機器により前記ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、前記パラメータ及び前記ユーザ機器の前記ソースセルにおけるタイミングアドバンスに依存する、方法。
【請求項10】
前記パラメータは、少なくとも、
前記ターゲットセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータと、
前記第2のユーザ機器の前記ソースセルにおけるタイミングアドバンスと、
に基づいて決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
値を前記第2のユーザ機器から受信することを更に含み、前記値は、前記第2のユーザ機器における、
前記ソース基地局から、前記ソースセルを通じて受信された第1の信号と、
前記ターゲット基地局から、前記ターゲットセルを通じて受信された第2の信号と、
の到着時刻に依存し、
前記パラメータは、前記値に基づいて決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のユーザ機器から受信された前記値が閾値を下回る場合、前記第2のユーザ機器を選択することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のユーザ機器を、
前記ターゲットセルにおける前記第2のユーザ機器のタイミングアドバンスと前記ソースセルにおける前記第2のユーザ機器のタイミングアドバンスとの間のギャップが閾値を下回る場合、及び/又は、
前記第2のユーザ機器が所定の地理的ゾーンに存在する場合に、
選択することを更に含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ソース基地局から前記ユーザ機器へとメッセージを送信することを更に含み、前記メッセージは、
前記ソースセルにおける前記ユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータ、及び/又は、
時間間隔に関連するデータ、及び/又は、
指示値、及び/又は、
前記ユーザ機器が前記ターゲット基地局に信号を送信しない遅延に関連するデータ、及び/又は、
前記ユーザ機器が前記ターゲットセルへの前記ハンドオーバーを行うまでの最大時間、
を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行するように構成されたネットワークであって、前記ネットワークは、ソース基地局及びターゲット基地局を含み、前記ネットワークは、衛星通信ネットワークを含み、前記ソースセルは前記ソース基地局に対応し、前記ターゲットセルは前記ターゲット基地局に対応し、少なくとも前記ソースセルが、前記衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、
前記ネットワークは、
パラメータを決定することであって、前記パラメータは、前記ソースセル及び前記ターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる値に関連することと、
前記パラメータを少なくとも前記ユーザ機器に送信することと、
前記ソースセルから前記ターゲットセルへの前記ユーザ機器の前記ハンドオーバーを実行することと、
を実行するよう構成され、
前記ユーザ機器により前記ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、前記パラメータ及び前記ユーザ機器の前記ソースセルにおけるタイミングアドバンスに依存する、ネットワーク。
【請求項16】
コンピュータ可読媒体に記憶されたプログラム命令コードを含む、コンピュータプログラム製品であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法、及び/又は
請求項9~14のいずれか一項に記載の方法、
を実行する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非地上系ネットワークを利用した電気通信の分野に関し、より具体的には、衛星通信ネットワークへのアクセスに関する。
【背景技術】
【0002】
非静止軌道衛星を使用する衛星通信ネットワークでは、衛星が地表に対して常に移動しているので、地表の衛星セルが、時間とともに、スライドするか、又はセルの形状変化が発生する。このような衛星通信ネットワーク内にあり、地表の所定の地理的領域に位置するユーザ機器(UE)は、通常、自らの地理的領域をカバーする衛星セルを介してネットワークに接続し続けるために、ハンドオーバーを実行する。このようなハンドオーバーでは、膨大な量のシグナリングを必要とし、膨大な量の無線リソースが消費される。
【0003】
ステアラブル衛星ビームを使用する衛星アーキテクチャ等、衛星通信ネットワークのある特性では、地表のカバレッジが突然変化することがある。この場合には、多数のUEについて、非常に限られた時間内に或るセルから別のセルへと同時に切り替える必要がある。そのため、このような場合において、従来の方法でハンドオーバーを行うと、UEが競合したり、アクセス手順に失敗したりするリスクが高まる。固定衛星ビームを使用する衛星アーキテクチャ(地表の移動セル)等、衛星通信ネットワークの別の特定の特性では、或るセルから次のセルへのUEのハンドオーバーが継続的に進行する可能性があり、現行のハンドオーバー手順を適用した場合、大量のシグナリングが発生することとなる。
【発明の概要】
【0004】
本発明では、このような問題を解決する。
【0005】
本発明の第1の態様においては、衛星通信ネットワークを含むネットワークのターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するよう、ユーザ機器により実行される方法であって、ユーザ機器は、ソースセルに対応するソース基地局に接続され、ターゲットセルは、ターゲット基地局に対応し、ソースセル及びターゲットセルは、衛星通信ネットワークの1つ以上の衛星によってサポートされ、少なくともソースセルは、衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、本方法は、
ユーザ機器がターゲット基地局に第1の信号を送信する前に、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を、
ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータと、
ユーザ機器によって決定される第1のパラメータと、
ユーザ機器によって受信される、ソースセル及びターゲットセルによって形成されるセルの対に固有である第2パラメータと、
に基づいて、決定することを含む、方法が提案されている。
【0006】
したがって、ユーザ機器と、ターゲット基地局、すなわち、ハンドオーバー手順の実行後にユーザ機器が接続する基地局との間でアップリンク送信を実行するために、ユーザ機器がターゲット基地局からタイミングアドバンスを受信する必要性はなくなる(通常、ターゲット基地局は、タイミングアドバンスを推定し、ハンドオーバー中にこれをUEに送信する)。それゆえ、ハンドオーバー中に必要とされるシグナリングと計算量が少なくなる。さらに、かかる手順では、自身の位置を(例えば、全地球的航法衛星システム又はGNSSを使用して)特定可能とするユーザ機器又は高い計算能力を備えたユーザ機器は必要ない。
【0007】
ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される独自の値を決定することにより、ユーザ機器は、従来のハンドオーバー手順よりも、必要とされる計算量と時間を抑えて、さらに、少なくともシグナリングを少なくして、ターゲットセルへのハンドオーバーを実行できる。実際、従来のハンドオーバー手順の間、(ターゲットセルを管理する)ターゲット基地局は、ユーザ機器がターゲット基地局に送信する信号に基づいて、ターゲットセル内のユーザ機器のタイミングアドバンスとして使用される値を推定する。例えば、LTE、Advanced LTE、又はNew Radio(NR)等の無線通信規格では、基地局がユーザ機器から受信したRACH手順の第1のメッセージ(RACH手順のMsg1)に基づき、所定の基地局において、ユーザ機器のタイミングアドバンスを推定する既存の手順が実行される。その後、同じRACH手順で、基地局におけるユーザ機器のタイミングアドバンスの値が基地局により推定されて、UEに送信される(RACH手順のMsg2)、UEはこれを使用して、ターゲットセルを通じて信号を発信する際、時間遅延を導入する。
【0008】
それゆえ、本発明では、ハンドオーバー中の計算量とシグナリングを削減できる。例えば、大抵の無線規格(例えば、LTE、LTE-Advanced、又はNew Radio)の状況において、ハンドオーバー手順中、例えば、RACHプリアンブル、及び/又は、RACH手順中にターゲット基地局から送られる第2のメッセージ(Msg2)を削除できる、及び/又は、場合によっては、RACH手順を完全にスキップすることによって、メッセージの一部を削除できる。これらのメッセージを削除することで、ハンドオーバーの待ち時間を短縮し、ハンドオーバー手順中に交換されるシグナリングの量を減らすことができる。さらに、ユーザ機器(最終的には、ターゲット基地局)が(信号が伝搬するのに必要な時間を補償するために)タイミングアドバンス値に基づく時間オフセットをまだ実装していない場合、ハンドオーバー手順中のターゲット基地局とユーザ機器との間で実行される交換において、ターゲット基地局が従来式のシグナリングよりもはるかに多くの無線リソースを確保する必要があるので、これらのメッセージを削除したり又は少なくともこれらのメッセージの送信中にタイミングアドバンスオフセットを適用したりすると、無線リソースを大量に解放することもできる。実際、ターゲット基地局は、これらの交換の受信時刻を予測できない(できたとしても、予測は不十分である)ため、他の送信との干渉を避けるために(ひいては、失敗したアクセス手順の数を減らすために)、ターゲット基地局は、大きな衛星セルにおいて信号伝搬が原因で起こり得る遅延差を考慮して、大量の無線リソースを確保する必要がある。したがって、事前にターゲット基地局との交換を必要とせずに、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定することにより、ネットワークは、ハンドオーバー中のRACH手順用に確保される無線リソースの量と、ハンドオーバーに関連するアクセス手順中に消費される時間とを削減することができる。
【0009】
かくして、ユーザ機器は、ハンドオーバー手順中にターゲット基地局との間で行われるアップリンク送信(例えば、4ステップRACH手順のMsg1若しくはMsg3、又は、改良型RACH手順中のアップリンクメッセージ)、若しくはハンドオーバー手順後にターゲット基地局との間で行われるアップリンク送信(例えば、ハンドオーバー後に実行される第1のアップリンク送信)、又は更には、例えば、ハンドオーバー中、RACH手順が必要とされない場合にターゲット基地局との間で行われる第1のアップリンク送信においても、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用されるかかる決定後の値を、適用することができる。つまり、ターゲットセル自体でタイミングアドバンスとして使用される値を事前に決定することにより、ユーザ機器は、ターゲット基地局への最初のアップリンク送信において、関連する時間遅延を直接導入することができるので、RACH手順を通じた既存のアクセス手順が簡素化され、場合によっては、スキップすることができる。
【0010】
こうした方法は、衛星通信ネットワークのアーキテクチャ、衛星の動きに関する何かしらの特定条件なしに、全体的且つ汎用的な方法として適用することが可能である。デフォルトでは、ユーザ機器には、その知識はない(本明細書において、デフォルトとは、例えば、サービング基地局を経由して、ネットワークから、かかる情報を受信しないものとして理解する)。
【0011】
衛星通信ネットワークを含むネットワークとは、衛星を利用して、ユーザ機器(又はUE)を含む様々なデバイスとの間で無線周波数信号を発信及び受信することで、無線通信を可能にする非地上系ネットワーク(NTN)を指す。
【0012】
ユーザ機器(又はUE)とは、エンドユーザが通信するために使用するあらゆるデバイスを指す。本明細書では、少なくとも衛星通信ネットワークを介して通信するために使用されるあらゆる無線デバイスを指すために使用される他の用語(例えば、モバイル端末、移動局、パーソナルデジタルアシスタント、無線モデム、携帯型デバイス等)も、ユーザ機器という用語に含まれる。
【0013】
非静止軌道衛星とは、地表に対して移動する衛星通信ネットワークの衛星を指し、かかる移動は、衛星通信ネットワークのコアエンティティ内で算出される予め定められた衛星コンステレーション動学及び/又は衛星エフェメリスに従う。
【0014】
衛星通信ネットワークの各衛星は、1つ又は幾つかの衛星ビーム(又はスポットビーム)を通じて、地表に衛星フットプリント(又は衛星のカバレッジゾーン)を投影し、かかるフットプリントが衛星がカバーする地理的領域を画定する。衛星フットプリントは、衛星の様々な衛星ビームのビームフットプリントによって構成される。
【0015】
衛星の1つ又は幾つかのビームフットプリントは、セルと呼ぶ特定のカバレッジゾーンを形成する。
【0016】
このようなセルは、衛星の1つ又は幾つかの衛星ビームによってサポートされる。セル内の無線リソースとシグナリングは、基地局によって管理される。
【0017】
本明細書では、特定の規格に限定されるものではないが、説明をしやすくするため、以下ではNew Radio(NR)規格で詳述する。NR規格では、セルを管理する基地局を、gNodeB又はgNBと称する。
【0018】
したがって、基地局に対応するセルとは、1つ又は幾つかの衛星ビームによって形成される所定のセルが、所定の基地局又はgNBによって管理されることを指す。こうした基地局は、所定のセルに割り当てられた無線周波数リソースを管理し、さらに、所定のセルを通じて交換される信号は、少なくとも、所定の基地局によって管理される。各基地局はセルに対応し、各セルは基地局に対応する。セルは1つ又は幾つかの衛星ビームによって形成され、これにより、衛星は1つ又は幾つかのセルをサポートする。
【0019】
セルへの接続又はこれに対応する基地局への接続は、同じ意味で使用されるものとする。しかし、理解を容易にする上で、基地局とは、対応するセル内で信号の受信、処理及び発信が可能なネットワークのハードウェア/ソフトウェアエンティティを指し、セルとは、地表における基地局の地理的なカバレッジゾーンを指す。
【0020】
各衛星は、例えば、衛星とコアネットワークとの間でデータを送信するための仲介として機能する地上局に対応する、ゲートウェイにリンクされる。衛星とゲートウェイとの間の無線リンクを、フィーダーリンクと呼ぶ。
【0021】
非静止軌道衛星に関するこの状況において、衛星通信ネットワークの衛星は、予測可能なエフェメリスに従い、予め定められたネットワークトポロジに従って、地表に対して移動する。その結果、経時的な地表のセルの位置の変化と連続性も、ネットワークによって予測可能である。現時点においてセルによりカバーされている地表上の固定地理的領域について考慮すると、現在時刻より前のかかる地理的領域をカバーするセルを、上流セルと呼び、現在時刻より後のかかる地理的領域をカバーするセルを、下流セルと呼ぶ。
【0022】
上流セル、セル、下流セルが順次、固定地理的領域をカバーし、時には、互いに重なり合うことで、このような固定地理的領域のカバレッジ状況は、時間に伴って規則的に変化することになる。或る特定のネットワークアーキテクチャでは、衛星は、衛星に対して固定された(地表に対しては移動できる)ビームを展開し、下流セルが現セルを徐々に置き換える。他のネットワークアーキテクチャでは、衛星は、地表の固定点に向けたステアラブルビームを展開する。このような場合では、サービングセルが下流セルに置き換えられることで、固定地理的領域では、カバレッジの変化又はセルの切り替えが発生する。このようなカバレッジの変化は、ソフトな切り替えシナリオとして、つまり、サービングセルが固定地理的領域からスイッチオフする前に、下流セルが固定地理的領域上でスイッチオンする場合(ひいては、サービングセルと下流セルとが重なる)、又は、ハードな切り替えシナリオとして、つまり、下流セルが固定地理的領域にスイッチオンする前に、サービングセルが固定地理的領域からスイッチオフされた場合に、発生する。
【0023】
固定地理的領域にあるユーザ機器(又はUE)の場合、カバレッジが逐次変化すると、このようなUEは、衛星通信ネットワークへの接続を維持するためにハンドオーバーを実行する必要がでてくる。このようなハンドオーバーは、上記の全てのシナリオで発生する可能性があり、原因としては、以下の状況があり得る。
衛星間切り替え、つまり、或る衛星からのサービングセルが、他の衛星からの下流セルに置き換えられる場合、
衛星内切り替え、つまり、或る衛星からのサービングセルが、同じ衛星からの下流セルに置き換えられる場合、
ゲートウェイ切り替え、つまり、サービングセルの衛星がそのフィーダーリンクを或るゲートウェイから別のゲートウェイに切り替え、これにより、サービングセルが異なる接続特性を有する下流セルに置き換えられることになる場合。
【0024】
地表上の固定地理的領域におけるカバレッジの変化に関するこのような様々な性質によって、多数のUEが実行する必要のあるハンドオーバーの様々なシナリオが、多かれ少なかれ突然に発生する。衛星エフェメリス及びソフト/ハードな切り替えシナリオ等のネットワークの動的特性とは別に、衛星アーキテクチャに関する幾つかの特性もまた、UEのハンドオーバー条件に影響を与える。
【0025】
衛星のビームは、固定ビームでも、ステアラブルビームでもよい。固定ビームを使用する衛星の場合、衛星とそのスポットビームが地表に対して移動すると、地表に投影される衛星ビームフットプリント(ひいては、セル)が移動する。ステアラブルビームを使用する衛星の場合、衛星ビームフットプリント(ひいては、セル)が、既知の持続時間にわたって、地表の地理的領域の少なくとも一部に固定されるよう、衛星のスポットビームが移動する。このようなシナリオでは、衛星の連続的な移動を「補償」するために、衛星ビームの移動を調整する。かかる既知の持続時間は、所定の地理的領域に対する衛星の視認期間に依存し、この間、固定地理的領域内のUEは、衛星によってカバーされるのに十分な仰角を得る。UE、サービングセルの周辺に位置するUEの仰角が不十分となる、例えば、所定の閾値を下回る場合、現在の地理的領域をカバーしているサービングセルが、(ネットワークの同じ衛星又は異なる衛星の)下流セルに置き換えられ、この地理的領域においてカバレッジの変化が生じたとみなされる。
【0026】
少なくともUEをカバーするソースセルが、ステアラブルビーム(ひいては、固定衛星ビームフットプリント)を使用する衛星によって展開される場合、セルが地表を移動しても、カバレッジが徐々に変化することはないので、かかるUEは、固定ビーム衛星を使用するシナリオと比較して、比較的短時間且つより大規模に、下流セル(ひいては、UEのターゲットセルに対応する)にハンドオーバーされる必要がある。このような大規模且つ比較的同時に起こるハンドオーバーは、例えば、ゲートウェイ切り替えの場合にも発生する。それゆえ、こうした多様なハンドオーバーのシナリオでは、全体的なハンドオーバー及びアクセス手順の効率を高めることが必要となる。これについては、本開示で扱う。
【0027】
ソースセルとは、ハンドオーバーを実行する前にユーザ機器が接続しているセルを指す。それゆえ、かかるソースセルは、ユーザ機器のサービングセルであり、ユーザ機器は、ソースセルに対応する基地局との間の信号の送信と受信(例えば、アップリンク通信とダウンリンク通信に相当する)の双方が可能であり、このような基地局をソース基地局と称す。
【0028】
ターゲットセルとは、ユーザ機器がハンドオーバー手順を通じてソースセルから接続するセルを指し、ターゲットセルはターゲット基地局と称する基地局によって管理されている。ターゲットセルは、ソースセルの下流セルであり、ソースセルに代わって、ユーザ機器が存在する固定地理的領域をカバーする。所定のユーザ機器について、2つのセルがソースセルとターゲットセルとして識別される。
【0029】
本開示において、ターゲットセルに接続する前に、ユーザ機器は、ソース基地局に接続されているとみなされる(ひいては、対応するソースセルでカバーされている)。例えば、ユーザ機器は、RRC接続モードにあり、初期アクセス手順又は以前のハンドオーバー手順のいずれかを実行することにより、ソース基地局への接続に成功している。
【0030】
セルにおけるタイミングアドバンスとは、ユーザ機器から見て、セルを通じたユーザ機器からのアップリンク通信の送信時間と、同じセルを通じたダウンリンク通信の受信時間との時間差を指す。タイミングアドバンスは可変であり、ユーザ機器と、例えば、セルを管理する基地局又はセルをサポートする衛星等、予め定められたネットワークの基準点、若しくは、これら2点間の任意の基準点との間の伝搬遅延に依存する。さらに、地表上のユーザ機器の位置に応じて、各ユーザ機器に適している。タイミングアドバンスは、かかる伝搬遅延を補償することを目的とするものであり、例えば、ユーザ機器は、かかるタイミングアドバンスを取得した後、このタイミングアドバンスに対応する時間だけ、セルを通じたアップリンク送信の時間を進める。所定のセルのカバレッジ下にある各ユーザ機器が、そのセルを通じた自身のアップリンク送信の時間を、自身のタイミングアドバンスに対応する時間だけ進める場合、これらの送信が割り当てられた無線リソースに対応する時間において、全てのアップリンク送信がネットワーク側(すなわち、定義されたネットワーク基準点)にそれぞれ到達することを保証する。さらに、かかる基準点において、アップリンクとダウンリンクの双方の送信が同期している。
【0031】
基準点は、ネットワークのパラメータとして設定される。例えば、ネットワーク基準点は基地局に設定されるが、地上通信ネットワークの場合にも当てはまる。この場合、各ユーザ機器においてUE固有のタイミングアドバンスを実装することにより、かかるUEからの全てのアップリンク送信が基地局に関して同期された方法で基地局に到達し、さらに、アップリンク送信とダウンリンク送信が基地局において時間整列されることが保証される。別の例では、ネットワーク基準点は、衛星に配置されてもよい。この場合、各ユーザ機器においてUE固有のタイミングアドバンスを実装することにより、かかるUEからの全てのアップリンク送信が基地局に関して同期された方法で衛星に到達し、さらに、アップリンク送信とダウンリンク送信が衛星において時間整列されることが保証される。別の例では、ネットワーク基準点は、衛星とそのゲートウェイとをリンクするフィーダーリンク上の任意の場所に配置することができる。
【0032】
かかるネットワーク基準点は、所定のセルについて予め定められ、対応する基地局、セル、及びゲートウェイまでの距離(一部は、ヌルであり得る)に対して、固定される。
【0033】
ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値とは、ターゲットセルを通じて、その値に対応する時間だけアップリンク送信の時間を進めるために、ユーザ機器によって決定される時間関連値を指す。かかる値は、例えば、計算、実装、及び/又は推定によって、ユーザ機器によって決定される。
【0034】
ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ユーザ機器がターゲット基地局に第1の信号を送信する前に、ユーザ機器によって決定可能である。「ユーザ機器がターゲット基地局に第1の信号を送信する前」とは、ユーザ機器がターゲット基地局に向けて第1のアップリンク送信を開始して、ターゲットセルにアクセスするためのハンドオーバー手順を実行する瞬間より前の時間を指す。つまり、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ユーザ機器がターゲット基地局からの信号を受信する必要なく、ユーザ機器によって決定される。
【0035】
ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ソース基地局からターゲット基地局までのハンドオーバーを実行するために、ユーザ機器によって決定することが可能であり、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用されるかかる値は、例えば、(既存のRACH手順、改良型RACH手順、又は異なるアクセス手順に対応し得る)ターゲット基地局へのアクセス手順を開始するためにユーザ機器からターゲット基地局に送信される第1のアップリンク送信又はメッセージに最初に適用される。
【0036】
ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータとは、ユーザ機器が取得し、ソースセルにおけるタイミングアドバンスをユーザ機器により推論可能とするデータを指す。ソース基地局に接続されている間、ユーザ機器はソースセルにおけるタイミングアドバンスに関する知識を得る。実際には、ソースセルにおけるかかるタイミングアドバンスは、ユーザ機器が、例えば、物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)、物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)、及び/又はサウンディング参照信号(SRS)等のアップリンク送信をソース基地局に送る限り、ソース基地局によって定期的に更新される。ソース基地局は、ユーザ機器からのアップリンク送信到着時刻を推定することができるので、必要とされるタイミングアドバンスを算出することができる。したがって、ソースセルにおけるタイミングアドバンスの更新後の値は、ソース基地局からユーザ機器へ定期的に送信される。
【0037】
例えば、ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータとは、このデータがソース基地局によってユーザ機器に送信されるので、使用されるタイミングアドバンスの明示的な値、又はユーザ機器がソースセルにおいて使用されるタイミングアドバンスを計算可能にするデータを指す場合がある。ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定する際のベースとなるタイミングアドバンス(又はより正確には、ソースセルのタイミングアドバンスに関連するデータ)は、ソースセルにおける最後のタイミングアドバンス、又はソース基地局によって更新され、ソースセル内で使用される最後のタイミングアドバンスをユーザ機器が計算可能とするデータ、又は、ソース基地局によって推定されたソースセルにおける任意のタイミングアドバンスであってもよい。
【0038】
別の例において、ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータとは、ソース基地局によりユーザ機器に送信されるソースセルにおけるタイミングアドバンスの時間変動関数を指す場合がある。ソースセルにおけるタイミングアドバンスの時間変動関数に基づいて、ユーザ機器は、ソースセルにおけるタイミングアドバンスを更新することができるので、所定の時刻、ユーザ機器がターゲットセルにアクセスするためのハンドオーバー手順を実行する瞬間にできるだけ近い時刻において、ソースセルにおけるタイミングアドバンスの値を推定することができる。
【0039】
第1のパラメータとは、ユーザ機器によって決定される値を指す。例えば、第1のパラメータは、ユーザ機器によって実施された1つ又は幾つかの測定、及び/又は1つ又は幾つかの推定から生じる。
【0040】
別の例において、第1のパラメータは、ソース基地局等のネットワークエンティティから発信される命令又はコマンドに基づいて、ユーザ機器によって決定される。本明細書において、ネットワークエンティティは、ソース基地局、ターゲット基地局、又はユーザ機器以外の他のエンティティのうち、衛星通信ネットワークの任意のエンティティを指す。
【0041】
第2のパラメータは、セルの対(ひいては、基地局の対)に固有とされる値を指す。「セルの対に固有とされる」とは、第2のパラメータが、セルの対(つまり、セルのペア)の両セルに依存することを意味する。第2のパラメータは、ソースセルからターゲットセルへのハンドオーバーが必要とされるソースセル内の全てのUEに共通とすることができる。例えば、同じソース基地局に接続し、当該ソースセルから同じターゲットセルへのハンドオーバーを実行するUEは全て、第2のパラメータの同じ値を実装することができる。
【0042】
第2のパラメータは、衛星通信ネットワークによって決定される。したがって、第2のパラメータは、ソース基地局等のネットワークエンティティによって決定される。第2のパラメータは、ネットワークエンティティによって、測定、推定、及び/又は計算することができる。第2のパラメータは、ユーザ機器により決定可能である。
【0043】
第2のパラメータは、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するために、ソース基地局からユーザ機器に送信されてもよい。第2のパラメータは、デバイス間(D2D)通信を通じて、ユーザ機器により得ることができる。
【0044】
本発明の一実施の形態において、第1のパラメータは、ユーザ機器における、
ソース基地局から、ソースセルを通じて受信された第1の信号と、
ターゲット基地局から、ターゲットセルを通じて受信された第2の信号と、
の到着時刻に基づいて決定される。
【0045】
これにより、ユーザ機器は、ソース基地局及びターゲット基地局からそれぞれ受信した2つの信号の到着時刻に基づいて、第1のパラメータを継続時間として決定することができる。
【0046】
本明細書において、ユーザ機器への信号の到着時刻は、ユーザ機器が信号を受信する時刻を指し、したがって、かかる時刻は、ユーザ機器の観点から考慮される。
【0047】
ソース基地局から受信した第1の信号とは、ソース基地局から発信され、ユーザ機器によって受信されるあらゆる種類の信号を指す。
【0048】
ターゲット基地局から受信した第2の信号とは、ターゲット基地局から発信され、ユーザ機器に到達するあらゆる種類の信号を指す。
【0049】
ソースセルとターゲットセルとが少なくとも部分的に重なる場合、ユーザ機器は、これらのセルのこの重なり部分に存在する間、第1の信号及び第2の信号を受信することができる。その場合、この2つの信号は、時間間隔と称される十分狭い時間範囲で受信することができる。その場合、第1のパラメータは、ユーザ機器によって測定された第1の信号と第2の信号の到着時刻の時間差として、ユーザ機器によって決定されてもよい。
【0050】
ソース基地局とターゲット基地局からそれぞれ2つの信号が同時にユーザ機器に到着した場合、ユーザ機器は両方の到着時刻を測定できないことがある。それゆえ、ユーザ機器は、第1のパラメータを決定するためにこれらの信号の一方しか使用できないため、ユーザ機器は、第1の基地局及び第2の基地局からそれぞれ2つの信号を、第1のパラメータを決定するために使用可能な時間間隔内で受信しない。これは、2つのセルが重ならない場合にも当てはまり、この場合では、第1の基地局及び第2の基地局からそれぞれ受信した2つの信号が、時間間隔内で受信されない場合がある。したがって、ユーザ機器が、第1の基地局及び第2の基地局からそれぞれ2つの信号を、ユーザ機器が第1のパラメータをかかる信号の到着時刻間の直接的な時間差として決定することができるような十分狭い時間範囲内で受信しない場合、この方法は、第1のパラメータを、時間間隔と、
第1の信号の到着時刻に基づいて決定され、上記時間間隔内にある、第1の時刻、及び/又は、
第2の信号の到着時刻に基づいて決定され、上記時間間隔内にある、第2の時刻と、
に基づいて決定することを更に含むことができる。
【0051】
同様に、この実施の形態は、ユーザ機器が時間間隔内に第1の基地局及び第2の基地局からそれぞれ2つの信号を受信する場合であっても、実施することができる。
【0052】
例えば、ユーザ機器は、第1の時刻と第2の時刻との時間差として、第1のパラメータを決定可能であり、かかる第1の時刻及び第2の時刻は、時間範囲基準に準拠する、つまり、時間間隔内に存在する。第1のパラメータを決定するために使用される第1の時刻及び第2の時刻が共に、或る時間間隔内にあることを保証することで、第1のパラメータの計算は、ソース基地局及びターゲット基地局によって発信され、同時に又はほとんど同時に送信されていない信号に基づいていないことが保証される。したがって、第1のパラメータは、例えば、1フレーム未満の間隔であるので、実際に比較可能な信号間の実際の時間差を正確に反映している、つまり、実際には、信号が多かれ少なかれ同時に送信されている。例えば、サブフレーム#4に対応するソース基地局が送信した信号、及びサブフレーム#6に対応するターゲット基地局が送信した別の信号の、ユーザ機器へのそれぞれの到着時刻を比較した場合、それぞれの2つの基地局と、ユーザ機器との間の伝搬時間差とは別に、ソース基地局のサブフレーム#4とターゲット基地局のサブフレーム#6との時間差による位相差によって、得られる第1のパラメータに偏りが生じるはずである。この例では、第1のパラメータは、ソース基地局及びターゲット基地局のそれぞれのサブフレーム#4(又はそれぞれのサブフレーム#6)間の時間差を反映することが好ましい。
【0053】
「時間間隔に関連するデータ」について、これはネットワークによって予め決定された時間範囲に関連し、且つ、ユーザ機器に送信されたデータであると理解される。かかる時間間隔は、推定が必要な第1の時刻と第2の時刻とをユーザ機器に通知する。時間間隔に関連するデータは、ソース基地局によって指示された時間窓に対応するか、又は、ユーザ機器が時間間隔を推論可能となる上でベースとなるデータ(例えば、ソースセルとターゲットセルとの切り替え時間、開始時間、及び終了時間等)に対応することができる。かかる時間間隔は、例えば、それぞれのサブフレーム、スロット持続時間、又は送信の周期性等、ソース基地局及びターゲット基地局のそれぞれの無線リソース管理に関するネットワークが知る情報に関連する。
【0054】
「第1の信号の到着時刻に基づいて決定される第1の時刻」について、これは、第1の信号に関連し、且つ、時間間隔内の或る時刻に対応する時間であると理解される。例えば、ユーザ機器は、第1の信号の到着時刻を測定し、この到着時刻に基づいて、第1の時刻を推定することができる。この第1の時刻は、別の第1の信号のユーザ機器への実質的な到着時刻に対応することができる。かかる別の第1の信号は、ソース基地局によって発信されるが、ユーザ機器は、それを受信及び/又は復号化することもあれば、しないこともある。第1の信号及び別の第1の信号は、(例えば、ターゲット基地局により発信される信号の時間パターンを介して)時間的に関連しており、すなわち、ユーザ機器は、ソース基地局における第1の信号及び別の第1の信号の発信の間の時間遅延を知る又は推論することができる。したがって、ユーザ機器は、同じ時差を測定後の到着時刻に適用して、実質的な到着時刻、つまり、時間を推論することができる。例えば、ユーザ機器が第1のパラメータを決定するために追跡する(ソース基地局から発信される)信号が周期的である場合、この周期性に基づいて、ユーザ機器は、第1の時刻を、測定後の第1の信号の到着時刻からの周期数に対応する時間間隔内の時刻であると決定することができる。
【0055】
「第2の信号の到着時刻に基づいて決定される第2の時刻」について、これは、第2の信号に関連し、且つ、時間間隔内の或る時刻に対応する時間であると理解される。例えば、ユーザ機器は、第2の信号の到着時刻を測定し、この到着時刻に基づいて、第2の時刻を推定することができる。この第2の時刻は、別の第2の信号のユーザ機器への実質的な到着時刻に対応することができる。かかる別の第2の信号は、ターゲット基地局によって発信されるが、ユーザ機器は、それを受信及び/又は復号化することもあれば、しないこともある。第2の信号及び別の第2の信号は、(例えば、ターゲット基地局により発信される信号の時間パターンを介して)時間的に関連しており、すなわち、ユーザ機器は、ターゲット基地局における第2の信号及び別の第2の信号の発信の間の時間遅延を知る又は推論することができる。したがって、ユーザ機器は、同じ時間差を測定後の到着時刻に適用して、実質的な到着時刻、つまり、時間を推論することができる。例えば、ユーザ機器が第1のパラメータを決定するために追跡する(ターゲット基地局から発信される)信号が周期的である場合、この周期性に基づいて、ユーザ機器は、第1の時刻を、測定後の第2の信号の到着時刻からの周期数に対応する時間間隔内の時刻であると決定することができる。
【0056】
第1の時刻及び第2の時刻の少なくとも一方は、それぞれ第1の信号及び第2の信号の到着時刻に対応しない場合がある。しかし、第1の時刻及び第2の時刻の一方が、第1の信号及び第2の信号の到着時刻にそれぞれ対応していてもよい。
【0057】
本発明の別の実施の形態において、第1のパラメータは、ソース基地局からソースセルを通じて受信された指示値に基づいて決定される。
【0058】
それゆえ、第1のパラメータは、ソース基地局及びターゲット基地局によって発信される信号の到着時刻を測定することなく、ユーザ機器によって決定することができる。実際には、ユーザ機器は、ユーザ機器がソース基地局に接続した時刻にソース基地局から指示値を受信し、この指示値に基づいて第1のパラメータを決定することができる。
【0059】
特に、このことは、ゲートウェイ切り替えのシナリオの場合に関連する。実際には、衛星がそのフィーダーリンクを或るゲートウェイから別のゲートウェイに変更する場合、かかる衛星によって展開される全てのセルのカバレッジ下にあるUEは全て、それぞれのタイミングアドバンスの共通の時間切り替えを受ける。この場合、ソース基地局は、衛星のカバレッジ下にある全てのユーザ機器によって適用されるタイミングアドバンスのそれぞれの値の共通時間シフト値を決定することができる。したがって、各UEは、共通時間シフト値を示す指示値を受信できる。このように、この指示値によって、ユーザ機器は、固定された所定値として、第1のパラメータを直接推論することができる。
【0060】
ソース基地局から受信した指示値は、ソース基地局により発信されるユニキャスト、グループキャスト、又はブロードキャスト送信として、ユーザ機器により受信され、例えば、ソース基地局からの命令メッセージ又はハンドオーバーコマンドに埋め込まれてもよい。かかる指示値によって、例えば、使用される明示的な時間関連値を提供することによって、又は(ユーザ機器内で事前構成することができる)固定された所定値として第1のパラメータを決定するようにユーザ機器を誘導することによって、第1のパラメータを決定する方法に関する直接的指示が得られる。
【0061】
本発明の一実施の形態において、この方法は、ソース基地局からソースセルを通じて値を受信することであって、値は第2のパラメータに対応することを更に含む。
【0062】
第2のパラメータは、衛星通信ネットワーク、つまり、ソース基地局等の衛星通信ネットワークのネットワークエンティティによって決定される。
【0063】
第2のパラメータは、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するために、ソース基地局からユーザ機器に送信される。
【0064】
さらに、第2のパラメータは、デバイス間(D2D)通信を通じて、ユーザ機器によって得られてもよい。この場合、ソース基地局は、第2のパラメータを少なくとも所定のユーザ機器に送信することが可能であり、次いで、このユーザ機器は、ネットワークのUEがD2D対応機器であることを前提として、例えば、D2D通信に基づいて、第2のパラメータを近接エリアに位置する他のUEに送信することができる。
【0065】
この方法は、第2のパラメータに対応し、ソース基地局からソースセルを通じて又は直接通信を使用して他のユーザ機器を介して受信される値を受信することを更に含むことができる。
【0066】
本発明の一実施の形態において、第2のパラメータは、ソース基地局とターゲット基地局との間の非同期オフセットに関連する。
【0067】
ソース基地局によって決定される第2のパラメータは、ソース基地局とターゲット基地局との間の同期レベルに関連するので、ソース基地局及びターゲット基地局によって形成される基地局の対に固有である。したがって、本明細書において、基地局の対とは基地局のペアを指す。より正確には、これは、2つの基地局の同期における時間オフセットに関連し、かかる時間オフセットは、ソース基地局とターゲット基地局が同期している場合は、時間ドリフトに対応し、又は、ソース基地局とターゲット基地局が非同期である場合は、検討対象の同じサブフレームの位相差に対応する。それゆえ、ソース基地局とターゲット基地局との間の非同期オフセットとは、時間関連値を指し、かかる非同期オフセットは、ソース基地局とターゲット基地局との間の同期のレベルに関連する。
【0068】
さらに、ソースセルのネットワーク基準点がターゲットセルの基準点と異なる場合、第2のパラメータは、ソース基地局と(ソースセルの)基準点との間の時間伝搬と、ターゲット基地局と(ターゲットセルの)基準点との間の時間伝搬との差を統合することもできる。
【0069】
第2のパラメータは、所定のユーザ機器に固有とされるものではない。同じソースセルと同じターゲットセルとを有するユーザ機器は全て、第2のパラメータの値が同じとなる。
【0070】
本発明の一実施の形態において、この方法は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を、ソース基地局に送信することを更に含む。
【0071】
ユーザ機器が、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値をネットワークに通知することにより、ネットワーク(具体的には、ターゲット基地局)は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスを計算する必要がなくなる。それゆえ、ユーザ機器がターゲットセルにアクセスするための幅広い無線リソースを割り当てることで、より多くの無線リソースを消費することを回避することができる。タイミングアドバンスとして使用される値をソース基地局に送信することにより、ユーザ機器は、ターゲットセルにアクセスするためのRACH手順からのメッセージをスキップすることが可能であり、場合によっては、RACH手順全体をスキップすることも可能になる。
【0072】
したがって、実際に、ユーザ機器がターゲット基地局へのハンドオーバーを行う前、より詳細には、ユーザ機器がタイミングアドバンスとして使用される値を使用して、第1のメッセージをターゲットセルに送信する前に、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値をユーザ機器により送信する。
【0073】
あるいは、ユーザ機器は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を送信せず、ネットワークは、例えば、ソース基地局によって、第2のパラメータに対応する値が送信されたUEに基づいて、既存のアクセス手順を実行するUE(ターゲットセルにおいて使用されるタイミングアドバンスが、ターゲット基地局によって推定される)から、タイミングアドバンスとして使用される独自の値を決定するUEを識別するように構成される。
【0074】
本発明の一実施の形態において、ソースセルにおけるタイミングアドバンスとターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値とのギャップが閾値を上回る場合、ユーザ機器は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を送信する。
【0075】
それゆえ、ユーザ機器は、値がソースセルにおけるタイミングアドバンスに近いと考えられる場合に、ターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとして使用される上記値を通知する補足信号をネットワークに送信するためのリソース(無線リソース、エネルギー)を消費することが回避され、ソースセルで使用されるタイミングアドバンスは、ユーザ機器及びソース基地局によって知られている。
【0076】
ネットワークは、ユーザ機器からターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を受信しなくても、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値が、ソースセルにおける最後に更新されたタイミングアドバンスと同じであるとみなすことができる。
【0077】
「ソースセルのタイミングアドバンスとターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値とのギャップ」について、これは、ソースセルにおけるタイミングアドバンスの最終更新値と、ユーザ機器によって決定されたターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値との時間の絶対差分として理解される。
【0078】
「閾値」に関して、これは、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値とソースセルにおけるタイミングアドバンスの最終更新値との間で許容される時間の差分に対応する所定値として理解され、かかる閾値は、ネットワークによって予め決定されている。かかる閾値は、ユーザ機器が第1の信号をターゲット基地局に送信する前に、ソース基地局又はユーザ機器がソース基地局の前に接続していた他の基地局によって、ユーザ機器に送信することができる。かかる閾値は、固定であるか、又は、例えば、ユーザ機器が受けるカバレッジの変化の特性、又は、各衛星及び/又は基地局の特性に応じて変化してもよい。
【0079】
例えば、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定した後、上記値をソース基地局に送信する前、及び、第1の信号をターゲット基地局に送信する前に、ユーザ機器は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値と、ソースセルにおけるタイミングアドバンスの最終更新値とのギャップを決定する。かかるギャップは、ユーザ機器によって、ネットワークから受信した閾値と比較することができる。ギャップが閾値を上回る場合、ユーザ機器はネットワークに通知するために、決定されたターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値をソース基地局へ送信する。ギャップが閾値を下回る場合、ユーザ機器は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値をネットワークへ送信しない。かかる場合、ユーザ機器は、決定されたターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を使用可能であり、ネットワークは、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値として、ソースセルにおける最後に更新されたタイミングアドバンスを使用してもよい。
【0080】
本発明の一実施の形態において、この方法は、ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータとして使用されるソースセルにおけるタイミングアドバンスの推定値を、ソース基地局から受信することを更に含む。
【0081】
ユーザ機器は、ソース基地局から受信したソースセルにおけるタイミングアドバンスの推定値を使用して、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定することが可能であり、ソースセルにおけるタイミングアドバンスのかかる推定値は、時間間隔又はユーザ機器のターゲットセルへのハンドオーバー時刻と関連する。
【0082】
ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータは、ソース基地局によって、ユーザがターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定する必要のある瞬間に近い時刻に推定することが可能であり、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用されるかかる値は、ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータを含む様々なパラメータよりも正確であり、第1のパラメータ及び第2のパラメータは、時間間隔内に得られた値に基づいている。
【0083】
「ソースセルにおけるタイミングアドバンスの推定値」について、これは、後でソース基地局によって推定されたソースセルにおける最後に更新されたタイミングアドバンスと理解される。セルにおけるタイミングアドバンスは時間とともに更新されるので、ソース基地局は、例えば、ユーザ機器がアップリンク送信をソース基地局に送信する度に(つまり、ユーザ機器がソース基地局に接続し、ソースセルを通じてアップリンク送信を送信している間)、ソースセルにおけるユーザ機器の更新されたタイミングアドバンスを継続的に測定する。ソースセルにおける更新後のタイミングアドバンスを受信すると、ユーザ機器は、ソースセルにおける更新後のタイミングアドバンスに対応するよう、アップリンク送信の時間遅延を調整する。ソースセルにおけるタイミングアドバンスの推定値は、ユーザ機器によって送信された最後のアップリンク送信に基づく、ソースセルにおけるかかる更新後のタイミングアドバンスに対応する。ソースセルにおけるタイミングアドバンスの推定値は、ユーザ機器によってまだアップリンク送信が送信されていない、時間が更に経過した瞬間の推定値にも対応する。ソースセルにおけるタイミングアドバンスのかかる推定値は、例えば、ネットワークによって予め定められた時間間隔に属する時間及び/又はユーザ機器がターゲットセルへのハンドオーバーを実行する必要のある時間について、適用することができる。このように、ソースセルにおけるタイミングアドバンスのかかる推定値は、ソースセルにおけるタイミングアドバンスの変動関数を特定するよう、ソースセルにおける以前に更新されたタイミングアドバンスに基づいてもよい。ソースセルにおけるタイミングアドバンスの推定値は、ソース基地局と実際に通信する際、ユーザ機器によって使用されない場合がある。
【0084】
本発明の一実施の形態において、この方法は、ソース基地局から、
ユーザ機器がターゲット基地局に信号を送信しない遅延に関連するデータ及び/又は、
ユーザ機器がターゲットセルに信号を送信するまでの最大時間に関連するデータ、
を受信することを更に含む。
【0085】
それゆえ、ユーザ機器は、決定されたターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を使用して、ターゲット基地局にアクセスするためのハンドオーバー手順を開始するタイミングをユーザ機器が特定できるようにする、様々な時間関連情報を受信する。かかる時間関連情報により、ネットワークは、同じタイムスロット内で同じターゲットセルにアクセスすることを試みる様々なUE同士の競合による輻輳、干渉、及びアクセス手順失敗を回避するよう、ネットワーク内の送信フローを最適化しながら、ネットワークへのユーザ機器の残存接続性を保証することができる。
【0086】
「ユーザ機器がターゲット基地局へ信号を送信しない遅延」について、これは、ユーザ機器がターゲットセルのカバレッジゾーンに位置し、ターゲット基地局に信号を送信しない継続時間であると理解される。したがって、かかる遅延は、ターゲット基地局にアクセスするためのハンドオーバー手順を開始する前に(つまり、ユーザ機器が第1の信号をターゲット基地局に送信する前に)、ユーザ機器によって適用されるサービス一時停止タイマーを指す。かかる遅延に関連するデータは、遅延の実際の継続時間に対応してもよく、かかる継続時間は、ユーザ機器がターゲットセルのカバレッジ下に入り始めた時(これは発生した際に、例えば、RSRP閾値を超える基準信号受信電力又はRSRPの測定値に基づいて、ユーザ機器によって知られる)から開始する。また、かかる遅延に関連するデータは、例えば、遅延の開始時刻と終了時刻に対応することができる。
【0087】
かかる遅延は、例えば、ターゲットセルへのハンドオーバー手順を実行しようとしているが、ユーザ機器のアクセス手順に支障をきたすことなく、既存の方法によりターゲットセルにおけるタイミングアドバンスを実際に取得するために、(例えば、開示の方法を通じて)ターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとして使用される独自の値を決定していない他のユーザ機器への時間を提供する。したがって、遅延は、UEグループがターゲットセルにアクセスするための時間トリガーとしても機能してもよく、かかるグループには、開示の方法又は既存の方法によって、ターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとして使用される値を決定したUEが含まれる。
【0088】
「ユーザ機器がターゲットセルへのハンドオーバーを実行する必要のある最大時間」について、これは、衛星通信ネットワークとの通信を図ることで、ユーザ機器と衛星通信ネットワークとの間の送信が中断されないよう、ユーザ機器が、ターゲット基地局にアクセスするためのハンドオーバー手順を開始する必要があるタイミングを示す時間関連値であると理解される。かかる最大時間に関連するデータは、ターゲットセルへのハンドオーバーを実行する必要があるまでのユーザ機器の実際の最大継続時間に対応してもよく、かかる継続時間は、ソース基地局からかかる最大時間を提供するメッセージのユーザ機器への到着時刻から開始する。あるいは、最大時間に関連するデータは、ハンドオーバー時刻(すなわち、ユーザ機器がターゲットセルへのハンドオーバーを実行する必要があるタイミングを示す絶対時間)に対応してもよく、したがって、ユーザ機器は、そのクロックを使用して、ハンドオーバー時刻から最大時間を推論する。
【0089】
かかるデータは、衛星通信ネットワークの衛星によってカバーされる地表上の全地理的領域における、衛星コンステレーション動学及び予め定められたカバレッジの逐次的変化に基づき、ネットワークによって予測可能である。
【0090】
本発明の第2の態様は、衛星通信ネットワークを含むネットワークのターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するように構成されたユーザ機器に関し、ユーザ機器は、ソースセルに対応するソース基地局に接続され、ターゲットセルは、ターゲット基地局に対応し、ソースセル及びターゲットセルは、衛星通信ネットワークの1つ以上の衛星によってサポートされ、少なくともソースセルが、衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、
ユーザ機器は、
プロセッサと、
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、命令は、プロセッサにより実行されると、ターゲット基地局に接続する前に、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を、
ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータと、
ユーザ機器によって決定される第1のパラメータと、
ソースセル及びターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる、第2のパラメータと、
に基づいて決定するよう、ユーザ機器を構成する、非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備える。
【0091】
本発明の第3の態様は、ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実施するためにネットワークにより実行される方法に関し、ネットワークは、衛星通信ネットワークを含み、ソースセルはソース基地局に対応し、ターゲットセルはターゲット基地局に対応し、少なくともソースセルが、衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、本方法は、
パラメータを決定することであって、パラメータは、前ソースセル及びターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる値に関連することと、
パラメータを少なくともユーザ機器に送信することと、
ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行することと、
を含み、
ユーザ機器によりターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、パラメータ及びユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスに依存する。
【0092】
それゆえ、受信されたパラメータ及びユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスに基づいて、ユーザ機器は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定できる。
【0093】
ユーザ機器にパラメータを提供することで、ユーザ機器はターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定することが可能であり、これにより、ネットワークは、(前述のように)ハンドオーバーを実行するために、ネットワークによって(より正確には、ターゲット基地局、つまり、ハンドオーバー後にユーザ機器が接続する基地局によって)、ターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとして使用されるかかる値を決定する必要がない場合があるので、ユーザ機器のハンドオーバー手順の実行に必要なシグナリング、計算、及び無線リソースの量が削減される。
【0094】
例えば、本発明によって、ハンドオーバー中の計算量とシグナリングを削減できる、例えば、大抵の無線規格(例えば、LTE、Advanced LTE、又はNew Radio)の状況において、ハンドオーバー手順中に1つのメッセージを削除すること(例えば、RACHプリアンブル、又はRACH手順中にターゲット基地局によって送られる第2のメッセージ(Msg2)、及び/又は、ただし、場合によっては、RACH手順を完全にスキップすること)が可能となる。これらのメッセージを削除することで、ハンドオーバーの待ち時間を短縮できる。さらに、ユーザ機器(最終的には、ターゲット基地局)が(信号が伝搬するのに必要な時間を補償するために)タイミングアドバンス値に基づく時間オフセットをまだ実装していない場合、ハンドオーバー手順中のターゲット基地局とユーザ機器との間で実行される交換において、ターゲット基地局が従来式のシグナリングよりもはるかに多くの無線リソースを確保する必要があるので、これらのメッセージを削除すると(又は少なくともこれらのメッセージの送信中にタイミングアドバンスオフセットを適用すると)、無線リソースを大量に解放することもできる。実際、ターゲット基地局は、これらの交換の受信時刻を予測できない(又はできたとしても、予測は不十分である)ため、他の送信との干渉を避けるために(ひいては、失敗したアクセス手順の数を減らすために)、ターゲット基地局は信号伝搬で起こり得る遅延を考慮して、大量の無線リソースを確保する必要がある。それゆえ、ユーザ機器がターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される独自の値を決定することを可能にするパラメータをユーザ機器に送信することにより、ネットワークは、ターゲット基地局による無線リソースの消費を抑えることができる。
【0095】
「ソースセル及びターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされるパラメータを決定すること」について、これは、ネットワークが、ソースセルとターゲットセルの双方に応じて、パラメータを決定するものと理解される。「セルの対」について、これはセルのペアとして理解される。
【0096】
また、ソース基地局は、衛星間リンク(ISL)に依存し、及び/又はターゲット基地局等の別のネットワークエンティティと通信、及び/又はユーザ機器と通信を行い、パラメータを決定することができる。ネットワークエンティティとは、基地局又は衛星を指す。
【0097】
このパラメータは、セルの対に応じて変化する。
【0098】
パラメータは、ネットワークによって、例えば、ソース基地局によってソースセルを通して、又は、ソースセルに接続する前にユーザ機器が以前に接続されていたセルを通して、ユーザ機器に送信される。そして、かかる送信は、ブロードキャスト、マルチキャスト又はグループキャスト送信に対応してもよく、ソース基地局に対応するソースセルによってカバーされる幾つかのUEが、パラメータの値を受信する。さらに、パラメータは、別のユーザ機器がD2D通信を使用して、ユーザ機器へと送信されてもよい。
【0099】
パラメータはセルの対に応じており、ソース基地局によってカバーされ、同じターゲット基地局を有するUEは、パラメータの値が同じになる。ソース基地局によるパラメータのグループキャスト又はマルチキャスト送信は、例えば、UEの地理的位置又は測定された受信電力に関する基準に基づく。
【0100】
「ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーの実行」について、これは、ターゲット基地局にアクセスするためのユーザ機器のハンドオーバー手順を開始するために、ユーザ機器とターゲット局との間のアップリンク送信を可能にするよう、ネットワークのターゲット基地局によって無線リソースが割り当てられることとして理解される。かかるユーザ機器は、ソース基地局に接続され、ユーザ機器がソース基地局に依然として接続している間、ソース基地局とターゲット基地局との間でダウンリンク及びアップリンク送信の交換を行うために、かかるソース基地局から無線リソースが割り当てられている。
【0101】
「ユーザ機器によりターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値」について、これは、ユーザ機器がターゲットセルを通じて、当該値に対応する時間だけアップリンク送信の時間を進めるために、ユーザ機器によって得られる時間関連値として理解される。かかる値は、ネットワークから受信したパラメータ及びソースセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンスを使用して、ユーザ機器によって決定可能である。
【0102】
ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ターゲット基地局がユーザ機器から信号を受信する前の時点において、ユーザ機器によって決定できる。本明細書において、「ターゲット基地局がユーザ機器から信号を受信する前」とは、ユーザ機器がターゲット基地局に向けて第1のアップリンク送信を開始して、ターゲットセルにアクセスするためのハンドオーバー手順を実行する瞬間より前の時間として理解される。つまり、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ユーザ機器を識別するか、又は、RACH手順に進むか、若しくは、より一般的には、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を推定するよう、ユーザ機器から第1の信号を受信するかのいずれかをターゲット基地局に要求することなく、ユーザ機器によって決定可能である。
【0103】
ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、例えば、(既存のRACH手順、改良型RACH手順、又は他のアクセス手順に対応し得る)ターゲット基地局へのアクセス手順を開始するユーザ機器からターゲット基地局によって受信される第1のアップリンク送信又はメッセージに適用可能である。
【0104】
「ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値が、パラメータ及びユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスに依存する」とは、この値が、少なくともパラメータ及びタイミングアドバンスの関数であることを意味する。それゆえ、ネットワークによって決定されたパラメータ及びソースセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンスの双方が分かれば、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定することができる。本明細書において、「依存する」とは、ユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスの値とパラメータが、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を計算するために明示的に使用されてもよいということとして理解される。
【0105】
本発明の一実施の形態において、ユーザ機器によりターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ターゲット基地局によって決定されない。
【0106】
それゆえ、ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行するために、ターゲット基地局が、ターゲットセルにおいて使用されるタイミングアドバンスを推定し、さらに、これをハンドオーバー中にユーザ機器に(例えば、ユーザ機器から第1のアップリンク送信を受信した後のメッセージMsg2として)、又は他のネットワークエンティティ(ソース基地局等)に送信して、ユーザ機器に送信する必要はもはやない。したがって、ハンドオーバー中に必要とされるシグナリングと計算量が、少なくなる。
【0107】
「ユーザ機器によりターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ターゲット基地局によって決定されないこと」について、これは、ターゲット基地局が、既存のハンドオーバー手順とは異なり、ユーザ機器の意図でターゲットセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンスを決定するために、何かしらの測定又は推定を開始しないということとして理解される。一実施の形態において、ターゲット基地局は、タ―ゲット基地局によるターゲットセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンスとして使用される値を推定可能とする上でベースとなる、アップリンク送信等の信号をユーザ機器から受信しない。
【0108】
結果として、ユーザ機器のターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を使用して、ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行する場合、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用されるかかる値が、ターゲットセルへのハンドオーバー手順を開始するために、ユーザ機器とターゲット基地局との間の第1のアップリンク送信を開始する前に決定されていることについて理解される。したがって、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用されるかかる値は、ユーザ機器側で決定される。しかし、ターゲット基地局は、依然として、ユーザ機器からの実際の第1のアップリンク送信を受信する前に、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を取得することができる。これは、例えば、ユーザ機器がかかる値をソース基地局に送信し、このソース基地局がそれを、例えば、ISLを使用してターゲット基地局に送信する場合に相当する。ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、ユーザ機器のハンドオーバー前に、ネットワークによってユーザ機器から受信することができるので、ターゲット基地局がユーザ機器のハンドオーバー手順を始動するために大量の無線リソースを割り当てる必要はない(ここでいう大量とは、ユーザ機器によって、ターゲットセルにおけるタイミングアドバンスが事前に決定されていない場合、既存のハンドオーバー手順において、ユーザ機器に従来方式で割り当てられる無線リソースの量であるものと理解される)。
【0109】
本発明の一実施の形態において、パラメータは、ソース基地局とターゲット基地局との間の非同期オフセットである。
【0110】
本発明の一実施の形態において、パラメータは、少なくとも、
ターゲットセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータと、
第2のユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスと、
に基づいて決定される。
【0111】
それゆえ、一方では、第2のユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスの知識を使用し、もう一方では、ターゲットセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータの知識を使用することで、ソースセルからターゲットセルへの接続を切り替える際、第2のユーザ機器によって適用されるタイミングアドバンスの時間シフトを決定することが可能である。タイミングアドバンスのこの時間シフトは、ターゲットセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンスに関する少なくとも関連情報を提供する。例えば、ゲートウェイ切り替えの場合、ゲートウェイを受ける衛星がカバーする全てのUEのタイミングアドバンスの時間シフトが同じであることにより、若しくは、第2のユーザ機器とユーザ機器が地理的に近い場合、この時間シフトは、第2のユーザ機器とユーザ機器に共通することもある。ソースセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンス、及びかかる時間シフト値に基づいて、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するか、又は、少なくとも近似することが可能であるので、この近似値とターゲット基地局によって決定されるはずの値との間のタイミングアドバンス誤差を低減させることができる。
【0112】
「第2のユーザ機器」について、これは、ソース基地局に接続されている、又は接続されていた、さらに、ソースセルとターゲットセルとの間でハンドオーバーをこれから実行する、又はこれまでに実行したユーザ機器(第2のユーザ機器は、ユーザ機器と同じターゲットセルを有する)であると理解される。かかるハンドオーバーは、本開示の方法に従って又は任意の既存の方法に従って実行することができる。第2のユーザ機器は、ユーザ機器との類似性(同じターゲット基地局、ユーザ機器に近い等)に従って、ソース基地局によって選択されてもよい。結果として、ソース基地局によって選択された時点のユーザ機器及び第2のユーザ機器は、ソースセル及びターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる値であるため、パラメータの同じ値を共有するか、又は、パラメータの推定値がユーザ機器ごとに異なる場合があるため、少なくともパラメータの近傍値を共有する。
【0113】
前述したように、第2のユーザ機器は、ネットワークが、ユーザ機器のターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとして使用される値を使用して、ソースセルからターゲットセルへのハンドオーバーを実行するユーザ機器と異なる。
【0114】
ターゲットセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータは、本開示の方法に従って決定されてもよく、又は、任意の既存の方法に従って測定されてもよい。
【0115】
ターゲットセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータは、例えば、ターゲットセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンス、又は、第2のユーザ機器がターゲットセルで使用するテスト用タイミングアドバンスに基づいて、ターゲット基地局によって測定されるタイミング誤差に対応してもよい。
【0116】
ターゲットセルにおけるこれらの第2のユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータを取得するために、ネットワークによって幾つかの第2のユーザ機器を選択することができる。ソース基地局は、パラメータを、各第2のユーザ機器に基づいて推定されたパラメータの平均として又は各第2のユーザ機器について決定された各タイミングアドバンスの時間シフト間の平均として決定してもよい。各第2のユーザ機器は、ユーザ機器との類似性(同じターゲット基地局、ユーザ機器に近い等)に従って、ソース基地局によって選択されてもよい。
【0117】
本発明の一実施の形態において、この方法は、
値を第2のユーザ機器から受信することを更に含み、値は、第2のユーザ機器における、
ソース基地局から、ソースセルを通じて受信された第1の信号と、
ターゲット基地局から、ターゲットセルを通じて受信された第2の信号と、
の到着時刻に依存し、
パラメータは、値に基づいて決定される。
【0118】
それゆえ、このパラメータは、同様に、第2のユーザ機器に固有とされる値に基づいて決定されてもよい。かかる値は、第2のユーザ機器によって測定及び/又は推定された到着時刻間の時間差に関連する。したがって、パラメータの推定は、第2のユーザ機器の位置への依存度が少なく、その推定はより正確である。かかる値を取得する処理は、例えば、本開示の主な第1の実施の形態に係る到着時刻に基づいて第1のパラメータを取得するためのユーザ機器による処理と同様である。
【0119】
パラメータは、第2のユーザ機器から値を受信した際に、ソース基地局によって決定されてもよい。
【0120】
本明細書において、第2のユーザ機器への信号の到着時刻とは、第2のユーザ機器が信号を受信する時間を指し、したがって、かかる時間は、第2のユーザ機器の観点で考慮される。
【0121】
本発明のかかる実施の形態において、この方法は、第2のユーザ機器から受信された値が閾値を下回る場合、第2のユーザ機器を選択することを更に含む。
【0122】
第2のユーザ機器は、パラメータの決定を最大限に簡素化するようにネットワークによって選択することが可能であり、したがって、パラメータを決定する際の計算量、最終的には、かかる値を送信するために必要なリソースが削減される。この場合、第2のユーザ機器から送信された値が無視できるとみなされる場合、ユーザ機器に送信されるパラメータを決定するために、ソース基地局によって第2のユーザ機器が選択される。したがって、パラメータの決定は、選択されたかかる第2のユーザ機器の値にもはや依存しなくなる。これは、かかる値が閾値未満であることが保証されているので、ソース基地局によってヌルであるか又は小さい値に固定されていると見なされているからである。
【0123】
閾値は、ソース基地局によって予め定められてもよい。第2のユーザ機器から送信された値が閾値を超える場合、ソース基地局は、ユーザ機器に送信されるパラメータの決定において、当該第2のユーザ機器の測定値及びデータを考慮しない。あるいは、値が閾値を下回る第2のユーザ機器のみが、その値をソース基地局に報告するので、無線リソースの消費が削減される。
【0124】
本発明の一実施の形態において、この方法は、
ソースセルとターゲットセルが同じ衛星によってサポートされている場合、ユーザ機器に命令を送信することを更に含み、上記命令は、ユーザ機器に対して、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を、
ユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンス、及びパラメータ、又は
ユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンス、パラメータ、及び所定の固定値、
のみに基づいて、決定させるよう命令する。
【0125】
それゆえ、ソースセルとターゲットセルが同じ衛星によってサポートされているシナリオにおいて、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値の決定を、簡素化することができる。
【0126】
また、この命令は、所定の固定値又はユーザ機器が所定の固定値を推論可能にする情報を含んでもよく、ユーザ機器によりターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、かかる所定の固定値に基づいて決定される。
【0127】
例えば、ゲートウェイ切り替えによってカバレッジが変化する場合、ソース基地局は、以下をユーザ機器に送信することができる:
ソースセルとターゲットとの間のタイミングアドバンスの時間シフトに対応するパラメータであって、第2のユーザ機器を使用して決定される、パラメータ、
ユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連する更新されたデータ、
ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するために、かかるパラメータを時間シフトとして、ソースセルにおいて最後に更新されたタイミングアドバンスに適用する命令。
【0128】
本発明の一実施の形態において、この方法は、第2のユーザ機器を、ターゲットセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスとソースセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスとの間のギャップが閾値を下回る場合に選択することを更に含む。
【0129】
それゆえ、第2のユーザ機器は、パラメータの決定をできるだけ簡素化するように、ネットワークによって選択することができる。この場合、第2のユーザ機器のソースセル、及びターゲットセルにおけるタイミングアドバンス間の時間シフトを無視できるとみなされる場合、ユーザ機器に送信されるパラメータを決定するために、ソース基地局によって第2のユーザ機器が選択される。したがって、パラメータの決定は、第2のユーザ機器によって送信された値にのみ依存する。
【0130】
「ギャップ」について、これは、第2のユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスと、前述した第2のユーザ機器のターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとの間の時間差を指す。
【0131】
第2のユーザ機器のターゲットセルにおけるタイミングアドバンス(第2のユーザ機器から受信されるか又はターゲット基地局から報告されたタイミング誤差を使用して推論されるかのいずれか)と、ソースセルにおける第2のユーザ機器のタイミングアドバンスとの間のギャップが閾値を超えている場合、ソース基地局は、ユーザ機器に送信されるパラメータの決定に際して、第2のユーザ機器の測定値及びデータを考慮しない。
【0132】
本発明の一実施の形態において、この方法は更に、第2のユーザ機器が地理的ゾーンにあるか否かに基づいて、第2のユーザ機器を選択することを更に含む。
【0133】
それゆえ、ソース基地局は、同様に、地理的基準に基づいて、ユーザ機器に送信されるパラメータを決定するために、データ及び測定値が使用される第2のユーザ機器を選択することもできる。かかる地理的基準により、選択された第2のユーザ機器がかかる測定を行う上でとりわけ都合の良い地理的位置にあることを保証することができるので、第2のユーザ機器を使用して決定されたパラメータは、ユーザ機器によるターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するために、ユーザ機器に関連して送信することができる。
【0134】
「地理的ゾーン」について、これは、ネットワークによって画定又は予め画定された地表の一部として理解される。地表のカバレッジの変化が、衛星コンステレーション動学及びビームトポロジに依存するので、ネットワーク、場合によっては、ソース基地局は、地表の一部をカバーするサービングセルに隣接する下流セルによってカバーされる地表のこのような一部を予測することができる。ソースセルの場合では、1つ又は幾つかの下流セルがソースセルの置き換えとなることが可能であり、場合によっては、UEが全て同じソース基地局に現在接続することになるが、ソースセル内の各ユーザ機器の位置に応じて、様々な下流セルでカバーされることになる。結果として、ソース基地局等のネットワークエンティティは、ユーザ機器の位置を含み、下流セル(ひいては、ユーザ機器のターゲットセルとなる)のカバレッジ領域に対応する地理的ゾーンを画定することが可能である。したがって、かかる地理的ゾーンに属する他の全てのUEは、パラメータを決定するためにソース基地局によって選択可能な潜在的な第2のユーザ機器である。かかる場合、第2のユーザ機器は、地理的ゾーン内でソース基地局から発信されるグループキャスト送信を受信することにより、ソース基地局によって直接識別される。さらに、ソース基地局は、ソース基地局によって検討される関連する地理的ゾーンを送信し、さらに、GNSSシステムを使用して自身の位置を特定可能とする第2のユーザ機器は、自身がかかる地理的ゾーン内にあるかどうかを識別し、結果としてソース基地局に報告することができる。
【0135】
ソース基地局は、ターゲットセルから潜在的な第2のユーザ機器が受信する送信電力のレベル等、潜在的な第2のユーザ機器の位置以外の基準に基づいて、地理的ゾーンを画定することができる。
【0136】
本発明の一実施の形態において、この方法は、ソース基地局からユーザ機器へとメッセージを送信することを更に含み、メッセージは、
ソースセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンスに関連するデータ、及び/又は、
時間間隔に関連するデータ、及び/又は、
指示値、及び/又は、
ユーザ機器がターゲット基地局に信号を送信しない遅延に関連するデータ、及び/又は、
ユーザ機器がターゲットセルへのハンドオーバーを行うまでの最大時間、
を含む。
【0137】
本発明のかかる実施の形態において、メッセージが、ソースセル内のユーザ機器のグループにマルチキャストされるか、又はソースセルを介してブロードキャストされ、上記ユーザ機器のグループは、以下に基づいて決定される、
グループ内のユーザ機器のソースセルのビーム中心からの距離、又は
グループ内のユーザ機器の基準信号受信電力のレベル、又は
地理的ゾーン。
【0138】
それゆえ、ソース基地局は、例えば、各ユーザ機器に1つの特定のハンドオーバーコマンドを送信する代わりに、かかるメッセージによって含まれる情報の性質に応じて、幾つかのUEにマルチキャスト、グループキャスト、又はブロードキャストメッセージを送信することによって、無線リソースを節約できる。
【0139】
「ソースセル内のユーザ機器のグループにマルチキャストすること」について、これは、ソース基地局により送信されるメッセージが、例えば、第2のユーザ機器及び/又はユーザ機器により形成されるUEグループに送信される少なくとも1つの信号を含むこととして理解される。かかるグループの決定は、例えば、ソースセルのビーム中心からのグループのユーザ機器の距離又は地理的ゾーンに属しているグループのユーザ機器等の地理的基準に基づいて行うことができる。また、かかるグループの決定は、グループのユーザ機器がターゲットセルから受信する送信電力のレベルに基づいてもよく、かかる送信電力は、例えば、基準信号受信電力(RSRP)、若しくは信号対雑音比(SNR)、あるいはターゲットセルから受信した信号の品質を反映する送信電力の他のレベルに関する。したがって、所定閾値を超える送信電力レベルを検知するユーザ機器は、ソース基地局によって、ターゲット基地局にアクセスできるとみなされるので、ソース基地局によって送信されたグループキャストメッセージを受信するUEのグループの一部となる。
【0140】
「ソースセルを介してブロードキャストされること」について、これは、ソース基地局によって送信されたメッセージが、ソースセルによってカバーされる全てのUEに送信される少なくとも1つの信号を含むこととして理解される。したがって、かかるブロードキャストされたメッセージは、含まれる情報がソースセルのカバレッジ下にある全てのUEに共通であるため、ユーザ機器について意図されるものではない。かかるブロードキャストメッセージは、例えば、ソースセルの全カバレッジエリアが、地表の1つのみのターゲットセルのカバレッジエリアに置き換えられる場合における、パラメータを含む信号に対応する(つまり、現在ソースセルによってカバーされているUEは全て、同じターゲットセルによってカバーされ、かくして、パラメータの同じ値を共有する)。
【0141】
本発明の第4の態様は、ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行するように構成されたネットワークに関し、このネットワークは、衛星通信ネットワークを含み、上記ネットワークは、ソース基地局及びターゲット基地局を含み、ソースセルはソース基地局に対応し、ターゲットセルはターゲット基地局に対応し、少なくともソースセルが、衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされており、
上記ネットワークは、
パラメータを決定することであって、パラメータは、ソースセル及びターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる値に関連することと、
パラメータを少なくともユーザ機器に送信することと、
ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行することと、
を実行するよう構成され、
ユーザ機器によりターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値は、パラメータ及びユーザ機器のソースセルにおけるタイミングアドバンスに依存する。
【0142】
ネットワークは、ネットワークエンティティを含むことができ、ネットワークエンティティは、プロセッサと、命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体とを備える。命令は、プロセッサに実行されると、パラメータを決定し、ソース基地局に対して、パラメータをユーザ機器に送信することを、ネットワークエンティティに実行させる。
【0143】
本発明の第5の態様は、コンピュータ可読媒体に記憶されたプログラム命令コードを含む、コンピュータプログラム製品であって、
本発明の第1の態様に係る方法、及び/又は
本発明の第3の態様に係る方法、
を実行する、コンピュータプログラム製品に関する。
【0144】
本発明の第6の態様は、衛星通信ネットワークを含むネットワークのターゲットセルにおいてユーザ機器によりタイミングアドバンスとして使用される値を決定するシステムにより実行される方法に関し、システムは、少なくとも、
ユーザ機器であって、ユーザ機器は、ソースセルに対応するソース基地局に接続され、ターゲットセルは、ターゲット基地局に対応し、ソースセル及びターゲットセルは、衛星通信ネットワークの1つ以上の衛星によってサポートされ、少なくともソースセルが、衛星通信ネットワークの非静止軌道衛星によってサポートされている、ユーザ機器と、
ネットワークと、
を備え、
方法は、
第2のパラメータを決定することであって、第2のパラメータは、ソースセル及びターゲットセルによって形成されるセルの対に固有とされる値に関連すること、
ネットワークにより、第2のパラメータを少なくともユーザ機器に送信すること、
第1のパラメータを決定すること、
ユーザ機器が第1の信号をターゲット基地局に送信する前に、ユーザ機器によって、ターゲットセルにおいてユーザ機器によりタイミングアドバンスとして使用される値を、
ソースセルにおけるタイミングアドバンスに関連するデータ、
第1のパラメータ、及び
第2のパラメータ、
に基づいて決定すること、
を含む。
【0145】
本発明の第7の態様は、衛星通信ネットワークを含むネットワークのターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するように構成されたシステムに関し、システムは、少なくとも、
本発明の第2の態様に係るユーザ機器と、
本発明の第4の態様に係るネットワークと、
を備える。
【0146】
その他の特徴、詳細、及び利点は、限定的な意味ではなく、以下の詳細な説明及び図面によって示す。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、衛星通信ネットワークの一部を表す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、衛星通信ネットワークの一部を表す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、衛星通信ネットワークの一部を表す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、第1のパラメータを決定するために、衛星通信ネットワークの一部のユーザ機器によって実施される方法を表す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行するために、衛星通信ネットワークの一部のネットワークによって実施される方法を表す図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る、ソースセルからターゲットセルへのユーザ機器のハンドオーバーを実行するために、衛星通信ネットワークの一部のネットワークによって実施される方法を表す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定するために、ユーザ機器により実行される方法のステップについて説明するフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、ハンドオーバーを実行するために、衛星ネットワークにより実行される方法のステップについて説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0148】
図1~
図3を参照する。
図1~
図3は、衛星通信ネットワークの同じ部分を表している。本発明は、特定の規格に限定されないが、説明をしやすくするため、New Radio(NR)規格によって本発明を説明する。
【0149】
図1~
図3は、2つの異なる衛星SAT1、SAT2、2つの異なるゲートウェイGW1、GW2、9つの異なる基地局BS1’~BS3’及びBS1~BS6、並びに、2つの異なるユーザ機器UE0、UE1を含む衛星通信ネットワークを示す。
【0150】
図1は、時刻T1における衛星通信ネットワークの一部を示す。
図2は、時刻T1より後の時刻T2における衛星通信ネットワークの同じ部分を示す。
図3は、時刻T2より後の時刻T3における衛星通信ネットワークの同じ部分を示す。
【0151】
衛星SAT1、SAT2は、低周回軌道(LEO)の状況で展開され、地表に対する高度が約300キロメートル~1500キロメートルである。ユーザ機器UE0、UE1は、地表にある。各衛星SAT1、SAT2は、ゲートウェイノード又は地上局とも称される、少なくとも1つのゲートウェイGW1、GW2にリンクされている。時刻T1における
図1では、衛星SAT1及びSAT2は、共に、それぞれフィーダーリンクFL1及びFL2を通じてゲートウェイGW1にリンクされている。かかるゲートウェイGW1は、一方では衛星SAT1、SAT2と通信し、他方ではコアネットワーク(ここでは、図示せず)と通信する。時刻T2とT3とにそれぞれ対応する
図2及び
図3では、衛星SAT1は、フィーダーリンクFL1を通じてゲートウェイGW2にリンクされ、衛星SAT2は、依然として、フィーダーリンクFL2を通じてゲートウェイGW1にリンクされている。
【0152】
各衛星SAT1、SAT2は、1つ又は幾つかの衛星ビームB1’~B3’、B1~B6を展開する。
図1において、衛星SAT1は3本の衛星ビームB1’~B3’を展開し、衛星SAT2は3本のビームB4~B6を展開する。
図2及び
図3において、衛星SAT1は3本の衛星ビームB1~B3を展開し、一方、衛星SAT2は、依然として同じビームB4~B6を展開する。各衛星ビームB1’~B3’、B1~B6は、特定周波数帯内で構成されている。各衛星ビームB1’~B3’、B1~B6を通じて、対応する衛星(すなわち、ビームを展開する衛星)は、ビーム用に構成された周波数帯に割り当てられた無線リソースに従って、データを送信及び受信することができる。これらの無線リソースは、周波数分割方式(例えば、周波数分割多重(FDM)又は直交周波数分割多重(OFDM))に従って、又は時間分割方式(例えば、時分割多重化(TDM))又は符号分割方式(符号分割多重(CDM))、偏波多重波、又はこれらの組み合わせによって、共有可能である。
【0153】
衛星ビームB1’~B3’、B1~B6の無線リソースの割り当ては、gNodeB、又はgNBとも称される、基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6によって実現される。各基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6は、1つ又は幾つかの衛星ビームの無線リソースを管理する。例えば、
図1~
図3に示すように、
時刻T1において、基地局BS1’~BS3’は、衛星ビームB1’~B3’によってそれぞれ展開される無線リソースを管理し、
時刻T2とT3において、基地局BS1~BS3は、衛星ビームB1~B3によってそれぞれ展開される無線リソースを管理し、
時刻T1からT3までにおいて、基地局BS4~BS6は、衛星ビームB4~B6によってそれぞれ展開される無線リソースを管理する。
【0154】
図1~
図3において、1つの基地局が1つの衛星ビームの無線リソースを管理している。各基地局は、複数の衛星ビームの無線リソースを管理してもよい。
【0155】
基地局は、衛星SAT1、SAT2に搭載されていてもよいし、又は、例えば、ゲートウェイGW1、GW2によって地表に設置されてもよい。一例として
図1~
図3を参照すると、基地局BS1’~BS3’はゲートウェイGW1により地表に配置され、基地局BS1~BS3はゲートウェイGW2により地表に配置される。基地局BS4~BS6は、衛星SAT2上で同位置に搭載されている。本明細書において、「同位置にある」という用語は、2つのネットワークエンティティが同じ地理的位置にあることを指す。ネットワークエンティティは、基地局BS1’~BS3’若しくはBS1~BS6、ゲートウェイGW1、GW2、衛星SAT1、SAT2、又はコアネットワークの他の任意のエンティティを指す場合がある。通常、ユーザ機器UE0、UE1を指すことはない。
【0156】
衛星ビームB1’~B3’、B1~B6を介して、各衛星SAT1、SAT2は、衛星SAT1、SAT2のサービスエリア又はカバレッジゾーンとも称される、フットプリントを地表に投影する。衛星のフットプリントは、1つ又は幾つかのセルC1’~C3’、C1~C6を展開する。各セルC1’~C3’、C1~C6は、1つ又は幾つかの衛星ビームB1’~B3’、B1~B6のフットプリント内に存在するUEにサービスを提供し、1つの基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6にのみ対応している。つまり、各基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6は、地表に1つのセルC1’~C3’、C1~C6を画定する。したがって、ユーザ機器UE0、UE1がかかる基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6に接続されていることを条件として、ユーザ機器UE0、UE1は、その地表上の位置に応じて、1つ又は幾つかのセルC1’~C3’、C1~C6のカバレッジゾーンに位置しているので、かかる基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6が管理する対応する衛星ビームを通じて、対応する基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6のいずれかによって無線リソースを割り当てることができる。
【0157】
例えば、時刻T1における
図1を参照すると、ユーザ機器UE0は、衛星SAT1の基地局BS1’が管理するセルC1’に存在する。したがって、ユーザ機器UE0は、衛星ビームB1’を通じて、基地局BS1’によって割り当てられた無線リソースを受信できる。ユーザ機器UE1は、衛星SAT1の基地局BS3’が管理するセルC3’に存在する。したがって、ユーザ機器UE1は、衛星ビームB3’を通じて、基地局BS3’によって割り当てられた無線リソースを受信できる。
【0158】
各基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6は、少なくとも処理モジュールPROC-BS、メモリユニットMEM-BS、及び通信モジュールCOMM-BSを含む。通信モジュールCOMM-BSによって、基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6は、ユーザ機器UE0、UE1、及び任意のネットワークエンティティとの間で信号を受信及び/又は発信することができる。通信モジュールCOMM-BSを通じて、基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6は、コアネットワークと情報を受信及び送信することができる。
【0159】
ユーザ機器UE0、UE1は、少なくとも処理モジュールPROC-UE、メモリユニットMEM-UE、及び通信モジュールCOMM-UEを含む。かかる通信モジュールCOMM-UEによって、ユーザ機器UE0、UE1は、別のユーザ機器との間で直接(これを直接通信と称する)、さらに、衛星通信ネットワークの1つ又は幾つかの基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6との間で、信号を受信及び/又は発信することができる。
【0160】
基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6によって無線リソースの割り当てを受けるために、ユーザ機器UE0、UE1は、少なくとも、当該基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6によって管理される少なくとも1つの衛星ビームB1’~B3’、B1~B6から十分な無線電力を受信する必要がある。つまり、ユーザ機器UE0、UE1は、対応する基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6との通信用の無線リソースが割り当てられるよう、少なくともセルC1’~C3’、C1~C6のカバレッジゾーンに存在している必要がある。ユーザ機器UE0、UE1は、さらに、初期アクセス又はハンドオーバーアクセスのいずれかを通じて、当該基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6に接続されている必要があり、この場合、ユーザ機器UE0、UE1は、別の基地局に接続されており、ハンドオーバー手順を通じて基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6にアクセスする。
【0161】
図1を参照すると、例えば、時刻T1において、ユーザ機器UE0、UE1は、ユーザ機器UE0、UE1のソース基地局と称する基地局(初期アクセス手順については、ここでは説明しない)に接続されているものとする。ユーザ機器UE0、UE1の固定位置は、ユーザ機器UE0、UE1のソースセルと称されるソース基地局に対応するセル内にある。時刻T1において、ユーザ機器UE0は、そのソースセルC1’を通じてソース基地局BS1’に接続されており、さらに、ユーザ機器UE1は、そのソースセルC3’を通じてソース基地局BS3’に接続されている。
【0162】
本説明の状況において、衛星通信ネットワークの衛星SAT1、SAT2は、非静止軌道衛星とみなされる。こうして、衛星SAT1、SAT2は、予め定められたエフェメリスに従って、さらに、予め定められた衛星コンステレーション動学及びネットワークトポロジに合わせて、地表に対して移動する。かかるエフェメリスは、例えば、コアネットワーク内で予め構成されている。その結果、時間に伴う衛星SAT1、SAT2の移動及び逐次位置は、コアネットワークによって知られ、ひいては、例えば、衛星間リンク(ISL)通信を使用して、衛星SAT1、SAT2、基地局BS1’~BS3’、BS1~BS6等のネットワークエンティティにアクセス可能である。衛星SAT1、SAT2の移動は、
図1~
図5で表される衛星通信ネットワークの一部において、衛星SAT1、SAT2が右側から左側へと移動することを示す矢印SAT MOVとして、
図1~
図5で表される。地表上のUEの動きは、衛星SAT1、SAT2の動きに比べると無視できるものであるので、ユーザ機器UE0、UE1の地表での地理的位置は、固定されているものとみなされる。
【0163】
予測可能な衛星コンステレーション動学に従って、衛星SAT1、SAT2が移動することで、セルC1’~C3’、C1~C6も予測可能な方法で地表上で変化する。この結果、地表上の固定地理的領域(例えば、
図1~
図3で示される、ユーザ機器UE0及びUE1を含む地理的領域)を考慮すると、かかる固定地理的領域は、時間に沿って様々なセルC1’~C3’、C1~C6によって順次カバーされる。所定の時刻において、現セルと、この現セルよりも下流のセルとの間のカバレッジが変化することを、セル切り替えと称する。2つのセル同士のセル切り替えは、衛星及びその衛星ビームのアーキテクチャに依存する、予め定められたタイムラインに関して発生する。
【0164】
衛星SAT1、SAT2は、固定又はステアラブルのいずれかの衛星ビームB1’~B3’、B1~B6を備えることができる。固定衛星ビームB1’~B3’、B1~B6の場合、衛星ビームB1’~B3’、B1~B6は、衛星SAT1、SAT2に対して移動しない。したがって、衛星のフットプリント及びセルC1’~C3’、C1~C6が地表上を漸進的に移動する。かかるシナリオは、固定ビーム/移動フットプリントシナリオと称される。衛星SAT1、SAT2に対してステアラブルな(又は移動可能な)衛星ビームB1’~B3’、B1~B6の場合、衛星ビームB1’~B3’、B1~B6は、それぞれの衛星SAT1、SAT2がそれぞれの軌道に沿って移動する際にステアリングされ、かかるビームステアリングは、セルC1’~C3’、C1~C6が、所定時間の間、地表上のほぼ同じ地理的領域をカバーするよう、衛星SAT1、SAT2の動きに合わせて調整される。その結果、セルC1’~C3’、C1~C6(又は少なくともセルC1’~C3’、C1~C6の中心部)は、所定時間の間、地表上で不動であるとみなされる。かかる時間は、例えば、衛星ビームB1’~B3’、B1~B6と地表との間の所定の仰角に到達し、この角度より上では、衛星ビームB1’~B3’、B1~B6がスイッチオフされて、異なる衛星ビームB1’~B3’、B1~B6に置き換えられるまで、衛星ビームB1’~B3’、B1~B6が衛星SAT1、SAT2の移動を補償可能とする範囲に依存する。かかるシナリオは、ステアラブルビーム/固定フットプリントシナリオと称される。例えば、
図1~
図5は、衛星通信ネットワークの一部を表しており、衛星SAT1、SAT2は、ステアラブル衛星ビームB1’~B3’、B1~B6を有する。
【0165】
結果として、所定の時刻に地表の固定地理的領域に位置するユーザ機器UE0、UE1をカバーする現セルは、予測可能な継続時間内で、且つ予測可能なセル切り替え条件に従って、現セルの下流にある1つ又は幾つかのセルに置き換えられる。
【0166】
かかるセル切り替え条件は、地理的領域をカバーする現セルと現セルの下流にあるセルとのセル切り替えの多かれ少なかれ漸進的な特性に依存する。例えば、固定ビーム/移動フットプリントシナリオは、ステアラブルビーム/固定フットプリントシナリオと比較して、より漸進的なセル切り替えになることが多く、固定地理的領域をカバーする現セルに対応するビームステアリングが、所定範囲に達して、スイッチオフされるのとほぼ同時に、セル切り替えが発生する。
【0167】
かかるセル切り替え条件は、現セルが固定地理的領域からスイッチオフされる前に、下流セルが当該固定地理的領域にスイッチオンされるということにも依存する。このように、2つのセルは、重複する所定継続時間中に重なり、セル切り替えは、ソフトセル切り替えシナリオにある(つまり、固定地理的領域を考慮して、現セルがスイッチオフされる前に、下流セルがスイッチオンする)。一方、下流セルが固定地理的領域にスイッチオンされる前に、現セルが固定地理的領域からスイッチオフされた場合、セル切り替えは、ハードセル切り替えシナリオにある(つまり、固定地理的領域を考慮して、現セルがスイッチオフされた後に、下流セルがスイッチオンする)。
【0168】
かかるセル切り替え条件は、セル切り替えの性質にも依存する場合があり、これは以下を指すことができる、
衛星間切り替え、つまり、或る衛星に属する現セルが、他の衛星からの下流セルに置き換えられる場合、又は、
衛星内切り替え、つまり、或る衛星に属する現セルが、同じ衛星からの下流セルに置き換えられる場合、又は
ゲートウェイ切り替え、つまり、現セルの衛星がそのフィーダーリンクを現ゲートウェイから別のゲートウェイに切り替え、これにより、現ゲートウェイに位置する基地局に対応する現セルが、異なる接続特性を有する下流セルに置き換えられることになる場合。
【0169】
結果として、地表の固定地理的領域が、その固定地理的領域をカバーする現セルと1つ又は幾つかの下流セルとの間でカバレッジの変化を受けた場合、固定地理的領域内のセル切り替えの条件は、セル切り替えの性質、速度、及びハードシナリオ又はソフトシナリオに応じて、様々に変わる。この結果、地表上の固定位置が固定地理的領域に属するユーザ機器(又はUE)の場合、カバレッジが変化すると、かかるUEは、衛星通信ネットワークへの接続を維持するためにハンドオーバーを実行する必要がでてくる。地表上の固定地理的領域で想定される様々なセル切り替えによって、UEのハンドオーバーに関する起こり得る様々なシナリオがもたらされる。
【0170】
固定地理的領域におけるカバレッジの逐次的変化は、予測可能な衛星コンステレーション動学に起因することにより、ネットワーク、より具体的には、現時刻において固定地理的領域をカバーする現セルに対応する現ソース基地局が、これから現セルの置き換えとなる下流セル、そして、かかるセル切り替えがいつ、どのように起こるかを予測することができる。現基地局に接続している各ユーザ機器UE0、UE1について、現基地局は、例えば、現セル、つまり、現基地局に対応する現セルがスイッチオフされると、衛星通信ネットワークを通じて、その通信を図るために、ユーザ機器UE0、UE1が(例えば、ハンドオーバーを実行することにより)接続する必要のある下流セル内の各ユーザ機器UE0、UE1の位置に基づいて、特定することが可能である。現基地局に対応する現セルがスイッチオフされると、ユーザ機器UE0、UE1が衛星通信ネットワークを通じて通信を図るために接続する必要のある、かかる下流セルを、ユーザ機器UE0、UE1のターゲットセルと称し、さらに、このターゲットセルに対応する基地局は、ユーザ機器UE0、UE1のターゲット基地局と称する。
【0171】
ターゲット基地局にアクセスするために、ソース基地局に現在接続されているユーザ機器UE0、UE1は、ソース基地局からターゲット基地局へのハンドオーバー手順を実行する。セルは基地局に対応し、その逆も同様であるため、ソース基地局とターゲット基地局との間のハンドオーバー又はソースセルとターゲットセルとの間のハンドオーバーは、同じ意味で使用するものとする。説明をしやすくするため、セルは、基地局がサービスを提供する地理的領域を指し、基地局は、ユーザ機器UE0、UE1及び他のネットワークエンティティによって信号を受信及び発信するために使用されるハードウェアとソフトウェアを含むネットワークモジュールを指す。
【0172】
ユーザ機器UE0、UE1がソース基地局に最初に接続され、すぐにターゲット基地局に置き換えられるという状況において、ユーザ機器UE0、UE1は、ターゲット基地局に接続し、ターゲット基地局との通信を図るために、ソース基地局からターゲット基地局へのハンドオーバーを実行することが必要である。かかる通信の信頼性を確保する上で、ユーザ機器UE0、UE1によりターゲット基地局において使用されるタイミングアドバンスの取得が必要である。ターゲット基地局において使用されるかかるタイミングアドバンスは、ターゲット基地局と他のUEとの間の他の送信との送信干渉を避けるために、ユーザ機器UE0、UE1がターゲット基地局へのアップリンク送信を進める必要のある特定の継続時間のことである。
【0173】
NR規格の既存手順において、ユーザ機器UE0、UE1によるターゲット基地局において使用される、かかるタイミングアドバンスの取得は、ユーザ機器UE0、UE1が、例えば、RACH手順を実行することにより、ターゲット基地局へのアクセス手順を開始する際に発生する。かかるRACH手順は、ユーザ機器UE0、UE1がターゲット基地局にアップリンク送信を送信することにあり、これに基づいて、ターゲット基地局は、ユーザ機器UE0、UE1によりターゲットセルにおいて使用されるタイミングアドバンスを測定し、その後、かかるタイミングアドバンスをユーザ機器UE0、UE1に送信することができる。
【0174】
結果として、既存の手順では、ユーザ機器UE0、UE1は、ターゲット基地局とメッセージ(例えば、RACH手順における第1のメッセージ及び第2のメッセージ)を交換することなく、ターゲットセルにおけるユーザ機器のタイミングアドバンスを決定することができない。かかるメッセージは、ネットワークとユーザ機器UE0、UE1の双方にとって、時間とリソースを消費することとなる。
【0175】
図1~
図3では、地表上の固定地理的領域をカバーする衛星通信ネットワークの同じ部分を示しており、ユーザ機器UE0及びユーザ機器UE1は、表記されたかかる固定地理的領域に配置されている。かかる固定領域では、時間T1、T2、及びT3の間にカバレッジが逐次的に変化する。
【0176】
図1及び
図2を参照すると、時刻T1と時刻T2との間に、衛星SAT1のフィーダーリンクFL1がゲートウェイGW1(
図1上の時刻T1)からゲートウェイGW2(
図2上の時刻T2)に切り替わるので、ゲートウェイ切り替えが発生する。衛星SAT1のかかるゲートウェイ切り替えは、時刻T1と時刻T2との間の衛星SAT1の移動に起因する。セルC1’~C3’を管理する基地局BS1’~BS3’がゲートウェイGW1によって配置され、さらに、フィーダーリンクが衛星SAT1とゲートウェイGW1との間のシグナリングをサポートしなくなったため、時刻T1において衛星SAT1の衛星ビームB1’~B3’によって展開されたセルC1’~C3’はスイッチオフされる。
図2の時刻T2で表されるように、時刻T2において、衛星SAT1がゲートウェイGW2と新たなフィーダーリンクFL1を確立するので、ゲートウェイGW2によって配置された基地局BS1~BS3は、衛星SAT1の新たな衛星ビームB1~B3を管理することができ、これにより、衛星SAT1は、衛星ビームB1~B3を介して新しいセルC1~C3を展開することとなる。
【0177】
ゲートウェイ切り替え前(時刻T1)の衛星SAT1のカバレッジゾーンにいるユーザ機器UE0、UE1の視点より、ソース基地局BS1’及びBS3’により管理されるソースセルC1’及びC3’がそれぞれスイッチオフされ、さらに、基地局BS1及びBS3によって管理されるセルC1及びC3に置き換えられるため、セル切り替えが発生する。したがって、時刻T2において、ユーザ機器UE0はセルC1によってカバーされ、ユーザ機器UE1はセルC3によってカバーされる。このため、かかるセル切り替えは、衛星SAT1によってカバーされる全てのUE(ひいては、時刻T1においてセルC1’~C3’によって最初にカバーされるUE)に影響を与える。結果として、無線通信ネットワークとの通信を維持するために、基地局BS1’により管理されるソースセルC1’のカバレッジ下にあるユーザ機器UE0は、対応するセルC1がソースセルC1’の置き換えとなる基地局BS1を通じて、衛星SAT1との接続を維持するよう、ハンドオーバーを実行する必要がある。より正確には、衛星SAT1のゲートウェイGW1とGW2とのゲートウェイ切り替えによって、ユーザ機器UE0は、時刻T1とT2との間に、ソースセルC1’からそのターゲットセルC1へのハンドオーバーを実行する必要がある。同様に、ユーザ機器UE1は、時刻T1と時刻T2との間に、ソースセルC3’からターゲットセルC3へのハンドオーバーを実行する必要がある。かかるハンドオーバーシナリオは、大規模な方法で実行される。すなわち、衛星SAT1のフットプリント(つまり、セルC1’~C3’)によってカバーされているUEは全て、ゲートウェイ切り替え後に衛星が展開する新しいセルC1~C3へのハンドオーバーを実行する必要がある。
【0178】
図2及び
図3を参照すると、衛星通信ネットワークの衛星SAT1及びSAT2が地表の固定地理的領域に対して移動することにより、ユーザ機器UE0、UE1の位置を含む、固定地理的領域のカバレッジが新たに変わる。衛星SAT1、SAT2は、ステアラブル衛星ビームB1~B6を有するとみなされる。より正確には、以下の通りである、
図2と
図3によって表されるように、時刻T2とT3との間で、衛星SAT1が移動することにより、セルC3が現カバレッジゾーンからスイッチオフされ、新しいカバレージゾーン(セルC3の太い楕円で示される)で再配置される。
図2と
図3によって表されるように、時刻T2とT3との間で、衛星SAT2が移動することにより、セルC6が現カバレッジゾーンからスイッチオフされ、新しいカバレージゾーン(セルC6の太い楕円で示される)で再配置される。セルC6の新しいカバレッジゾーンは、時刻T2における衛星SAT1のセルC3の現カバレッジゾーンに対応し、セルC6が時刻T2とT3との間にセルC3の置き換えとなる。
【0179】
その結果、時刻T2と時刻T3との間に、ユーザ機器UE0、UE1が新しいセルによってカバーされる。
例えば、時刻T2において、ユーザ機器UE0は、衛星SAT1のソースセルC1に対応するそのソース基地局BS1(例えば、以前に詳述したような、時刻T1とT2との間のセルC1’からセルC1へのハンドオーバー手順の後)に最初に接続される。
図3によって示されるように、時刻T2と時刻T3との間にカバレッジが変化することにより、セルC3がユーザ機器UE0の位置をカバーするように、衛星SAT1のセルC3が再展開される。セルC3においてより良好な及び/又はより持続的な接続状態が得られることで、例えば、ユーザ機器UE0は、ユーザ機器のソースセルC1から、セルC3であるユーザ機器のターゲットセルへのハンドオーバーを実行できる。かかる場合、ユーザ機器のソースセルC1及びユーザ機器のターゲットセルC3が共に、同じ衛星SAT1に属しているので、ユーザ機器UE0は、時刻T2と時刻T3との間で、衛星内ハンドオーバーを実行することができる。
例えば、時刻T2において、ユーザ機器UE1は、衛星SAT1によって展開されたソースセルC3に対応する、ユーザ機器のソース基地局BS3に最初に接続されている。時刻T2と時刻T3との間でカバレッジが変化すると、
図3によって表されるように、ソース基地局BS3に対応するユーザ機器UE1をカバーするソースセルC3が、衛星SAT2の基地局BS6に対応するセルC6に置き換えられる状況となる。したがって、ユーザ機器UE1は、このユーザ機器のソースセルC3から、セルC6であるターゲットセルへのハンドオーバーを実行する必要がある。それゆえ、ソースセルC3及びターゲットセルC6が、異なる衛星(それぞれ衛星SAT1とSAT2)に属しているので、時刻T2と時刻T3との間で、ユーザ機器UE1は、衛星間ハンドオーバーを実行することができる。
【0180】
結果として、固定地理的領域のカバレッジが変化する度に、対象の各ユーザ機器UE0、UE1は、ターゲット基地局に接続し、ネットワークとの通信を図るために、ユーザ機器独自のターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される独自の値を取得する必要がある。従来型RACH手順を始動することによりターゲットセルにおいてかかるタイミングアドバンスを取得する既存の方法では、例えば、大量の無線リソースと時間を消費し、多くのUEが同じターゲットセルへのハンドオーバーを非常に短い時間で実行する必要がある場合、アクセス障害にさらされる。
【0181】
本説明では、ユーザ機器が、何かしらのセル切り替え条件でのソースセルとターゲットセルとの間のカバレッジの変化により、ソースセルとターゲットセルとの間のハンドオーバーを実行する必要がある場合、かかるユーザ機器がネットワークのターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとして使用される値を決定可能とする方法に関する幾つかの実施形態について、詳述する。
【0182】
かかる方法は、ユーザ機器UE0、UE1が、様々なパラメータTA1、P1、P2に基づいて、それぞれのターゲットセルにおいてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定することに依存する。ユーザ機器UE0、UE1がターゲット基地局へ信号を送信する前、さらに、ターゲット基地局が、ユーザ機器UE0、UE1から任意の信号を受信する、及び/又はユーザ機器がターゲット基地局に接続しようとしている、接続中、又は接続されているものとして、ユーザ機器UE0、UE1を識別する前に、かかる値は、ユーザ機器UE0、UE1によって決定される。本発明の目的は、ターゲット基地局に対して、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される値を決定すること及び/又はユーザ機器UE0、UE1の意図でそれをシグナリングすることを必要とせずに、ユーザ機器UE0、UE1が、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスとして使用される、かかる値を決定できるようにすることである。
【0183】
図2を参照すると、時刻T2において、ユーザ機器UE1は、地表のセルC3内に位置し、衛星SAT1のソース基地局BS3に接続されている。つまり、T2より前の時点で(
図2では示さず)、ユーザ機器UE1は、初期アクセス又はハンドオーバー手順のいずれかによって、ソース基地局BS3に接続するアクセス手順を開始した。時刻T2において、衛星SAT1、SAT2の所定の移動及びセルC1~C6の所定の逐次的なカバレッジゾーンによって、コアネットワーク、場合によっては、任意のネットワークエンティティは、衛星SAT1のソース基地局BS3(本明細書において、ビームB3の衛星ビームフットプリントにも相当する)に対応するソースセルC3が、予測可能な時間内で衛星の(ユーザ機器UE1の位置を含む)現カバレッジゾーンからスイッチオフされ、さらに、異なる衛星SAT2の基地局BS6(本明細書において、ビームB6の衛星ビームフットプリントにも相当する)に対応するセルC6に置き換えられることを予測できる。ユーザ機器UE1のソース基地局BS3には、この保留中のセル及び衛星の切り替え、並びに、かかる切り替えが発生するまでの時間に関する知識がある。
【0184】
ユーザ機器UE1がソース基地局BS3に接続した時刻、例えば、時刻T2において、ソース基地局BS3は、セルC3及びC6間のかかる差し迫った切り替えをユーザ機器UE1に通知するためのメッセージをユーザ機器UE1に発信することができる。したがって、ユーザ機器UE1は、本明細書で開示される方法に従って、衛星SAT2によって展開されるセルC6をユーザ機器のターゲットセルとして識別し、そのターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定するプロセスをトリガーする。ソース基地局BS3がユーザ機器UE1に発信したかかるメッセージは、ソース基地局BS3がユーザ機器UE1に送信したハンドオーバーコマンドを指す場合がある。ソース基地局BS3によってユーザ機器UE1に発信されたかかるメッセージは、以下を含むことができる。
例えば、本明細書のターゲットセルC6の識別子に対応する、ユーザ機器UE1に関する潜在的ターゲットセルの識別情報、及び
ユーザ機器UE1が、ハンドオーバーを実行し、ターゲットセルC6に接続する必要がある時間を指す、ハンドオーバー時刻THO。あるいは、ハンドオーバーコマンドは、ユーザ機器UE1がハンドオーバーを実行し、ユーザ機器のターゲットセルC6に接続するまでの最大時間を示す別の時間関連値を含むことができる。
【0185】
ユーザ機器UE1は、時刻T2とT3との間の時刻にソースセルC3を通じてソース基地局BS3からかかるメッセージを受信すると、ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用されるその値を決定するプロセスをトリガーする。その目的のために、ユーザ機器UE1は、少なくとも3つの以下のパラメータに依存する。
ソースセルC3においてユーザ機器UE1によって使用されるタイミングアドバンスTA1、
第1のパラメータP1、及び
第2のパラメータP2。
【0186】
その目的のために、ユーザ機器UE1は、以下の式に基づいて計算することにより、ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定することができる。
TA2=2P1-2P2+TA1 (1)
【0187】
かかる式(1)は、ユーザ機器UE1がターゲットセルC6において使用されるタイミングアドバンスTA2の値を決定することを可能にする一般的な計算可能式を提案する。他の実施形態において、式(1)は、例えば、対応する衛星間の周波数帯又はスペクトル共存シナリオ等、ソースセルとターゲットセルとの間の予め構成された特異性に関連する予め構成されたオフセット等の1つ又は幾つかの追加の項を含めてもよい。例えば、第1のパラメータP1及び第2のパラメータP2の符号規約に応じて、式(1)におけるパラメータP1、P2及びTA1の係数及び符号も適合させることができる。
【0188】
ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定するプロセスをトリガーする際、ユーザ機器UE1がソース基地局BS3に接続されているので、ソースセルC3においてユーザ機器UE1によって使用されるタイミングアドバンスTA1は、ユーザ機器UE1によって定期的に知られている。実際、ユーザ機器UE1がソース基地局BS3とのRRC接続モードにあるので、ユーザ機器UE1は、かかるUL送信を進めるのに必要な時間を定期的に調整することにより、ソース基地局BS3へのアップリンク(UL)送信を実行する。かかる時間は、ソースセルC3においてユーザ機器UE1によって使用されるタイミングアドバンスTA1に対応しており、ソースセルC3において使用されるかかるタイミングアドバンスTA1が、衛星が常時移動することで定期的に変化するので、ソース基地局BS3によって定期的に決定され、さらに、MAC制御要素(MAC-CE)シグナリングを介したタイミングアドバンスコマンド(TAC)を通じて、ユーザ機器UE1に通信される。
【0189】
結果として、ソースセルC3におけるユーザ機器UE1によって使用されるタイミングアドバンスTA1は、定期的に更新され、既存の方法に従って、ユーザ機器UE1により取得される。また、ソース基地局BS3は、ユーザ機器UE1がソースセルC3において使用されるタイミングアドバンスTA1の更新値を推論することを可能にする時間関数又は時間パターンを送信することもできる。結果として、ユーザ機器UE1は、経時にわたって、ソースセルC3において使用されるタイミングアドバンスTA1の複数の値を取得することができる。式(1)において使用されるタイミングアドバンスTA1は、ハンドオーバー時刻THOに関してソースセルC3におけるタイミングアドバンスTA1の最新の更新値に対応する。つまり、ソースセルC3のタイミングアドバンスTA1は、ハンドオーバー時刻THOにできるだけ近い時刻において、ソースセルC3において使用されるタイミングアドバンスTA1に対応する必要がある。また、ソース基地局BS3は、ソースセルC3におけるタイミングアドバンスTA1の推定値をユーザ機器UE1へ送信してもよく、タイミングアドバンスTA1のかかる推定値TA1は、ソース基地局BS3によって、ハンドオーバー時刻THOにできるだけ近い時刻に推定される。
【0190】
第2のパラメータP2は、ユーザ機器UE1が依然としてソース基地局BS3に接続している際、すなわち、時刻T2とT3との間の所定の時刻において、ソース基地局BS3からユーザ機器UE1によって受信される。第2のパラメータP2は、ソース基地局BS3によってユーザ機器UE1に送信されるメッセージに埋め込まれてもよい。
【0191】
かかる第2のパラメータP2は、ユーザ機器UE1のソースセルC3及びターゲットセルC6に対応するセルの対に固有とされる(ひいては、ソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6に対応する基地局のペアに固有とされる)。結果として、第2のパラメータP2は、同じソースセルに接続され、且つ、同じターゲットセルへのハンドオーバーを実行しようとしている所定の地理的領域内の全てのUE等、複数のUEに共通するパラメータである。かかる所定の地理的領域は、ソースセル自体全体(かかるソースセルに接続したユーザ機器が全て、同じターゲットセルを有する場合)、又はソースセル内で区切られた地理的ゾーン(ソースセルに接続されたユーザ機器の様々なグループが、例えば、地理的基準に応じて、様々なターゲットセルへのハンドオーバーを実行する場合)に対応してもよい。いずれの場合も、コアネットワーク、より具体的には、ソース基地局BS3は、ソースセルC3によってカバーされる全てのユーザ機器の第2のパラメータP2を決定すること、及び、どのユーザ機器が第2のパラメータP2の共通値を共有し得るかを特定することが可能である。かかるソース基地局BS3の能力については、本説明の中で更に詳述することとする。
【0192】
第2のパラメータP2は、ソース基地局BS3とターゲット基地局BS6との間の非同期オフセットに対応する。結果として、ソース基地局BS3とターゲット基地局BS6が、例えば、同じ衛星又は同じゲートウェイに搭載されて、同位置にある場合、ソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6は同期し、ソース基地局BS3は第2のパラメータP2をヌルと決定する。ソース基地局BS3による第2のパラメータP2の確立については、本説明の中で更に詳述することとする。
【0193】
第1のパラメータP1は、ユーザ機器UE1によって決定される。一実施形態において、第1のパラメータP1は、(ソースセルC3を通じて)ソース基地局BS3及び(ターゲットセルC6を通じて)ターゲット基地局BS6からそれぞれ受信した2つの信号のユーザ機器UE1への到着時刻に基づいて決定される継続時間である。かかる第1のパラメータP1の決定については、次に
図4の説明で詳述する。
【0194】
図4を参照する。
図4は、衛星通信ネットワークの一部、及び時刻T2と時刻T3との間の中間時刻にあたる、時刻T2’においてユーザ機器UE1が位置する固定地理的領域の一部を示す。衛星通信ネットワークの一部は、
図1~
図3に表したものと同じであるが、理解を容易にするために、
図4では、関連するセルC3とC6、衛星ビームB3とB6、並びに、基地局BS3とBS6のみを表している。この状況において、衛星SAT1のセルC3はスイッチオフされ、衛星SAT2のセルC6に置き換えられる。衛星SAT1、SAT2は、ステアラブル衛星ビームB3とB6を備えるとみなされる。
図4によると、ソースセルC3とターゲットセルC6との間のセル切り替えは、ソフトなセル切り替えシナリオで発生するものとみなされる。つまり、衛星SAT2のターゲット基地局BS6によって管理されるターゲットセルC6は、衛星SAT1のソース基地局BS3によって管理されるソースセルC3が現在カバーしている地表の固定地理的領域の一部上で、スイッチオンされてから、かかるソースセルC3が、地表の他の位置に配置されるよう、実際にスイッチオフされる。
図4に示すように、かかるシナリオは、衛星SAT1及びSAT2がステアラブルビーム/固定ビームフットプリントを有し、さらに、ソースセルC3が依然としてその固定地理的領域にスイッチオンされている間に(つまり、地表の別の場所に再展開するためにソースセルC3をスイッチオフする前)、衛星SAT2のターゲットセルC6が、地表の固定地理的領域のこの部分においてスイッチオンされる場合に、起こる。同様に、
図4で示されていない、(セル名のラベルが異なり得る)同様の状況は、衛星SAT1、SAT2が固定衛星ビーム/移動ビームフットプリントを有する場合、さらに、衛星SAT1とSAT2、ひいては、衛星のフットプリントが地表に対して漸進的に移動することにより、衛星SAT1及びSAT2が追従する所定の衛星エフェメリスが異なるセル間で重複する領域を含む場合にも、起こり得る。結果として、ソフトなセル切り替えシナリオによって、
図4において示す状況となる場合があり、この場合、所定の時間T2’において、且つ、予測可能な重複する継続時間(かかる重複する継続時間は、最大限T3-T2’に等しい)の間、ソースセルC3とターゲットセルC6は、固定地理的領域の少なくとも一部で地表上で重なり合う。重複する継続時間の後、ソースセルC3は、スイッチオフされ、他の場所に再展開され(
図2と
図3によって表される)、ターゲットセルC6のみが固定地理的領域の一部にとどまる。ソースセルC3及びターゲットセルC6のカバレッジゾーンは、セルC3とC6のそれぞれの形状、並びに衛星SAT1、SAT2、及びそれぞれのセルC3とC6を投影するこれら衛星の衛星ビームB3とB6の方向及び位置を含む、種々のパラメータに応じて、完全に重ならない場合がある。結果として、
図4において表されるように、ソースセルC3とターゲットセルC6のカバレッジゾーンは若干異なり得るが、広く重なる部分(例えば、セルC3とC6の中央部が共通である)がある。
【0195】
重複する継続時間が存在するソフトなセル切り替えシナリオの場合、
図4において表されるように、ソースセルC3によって最初にカバーされるユーザ機器UE1は、予測可能な重複する継続時間中に、ユーザ機器のソースセルC3及びそのターゲットセルC6によって同時にカバーされる。結果として、かかる重複する継続時間中、ユーザ機器UE1は、一方では、ソース基地局BS3に接続されたままとすることができ、ソース基地局BS3から少なくとも1つの第1の信号を受信することができる。もう一方では、かかる重複する継続時間中、ユーザ機器UE1は、ターゲット基地局BS6から少なくとも第2の信号を受信することもでき、かかる第2の信号は、ターゲットセルC6においてターゲット基地局BS6によって発信される信号である。
【0196】
ユーザ機器UE1が、かかる重複する継続時間中に、ソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6からそれぞれ受信した少なくとも第1の信号及び第2の信号の到着時刻を測定するよう、ソース基地局BS3は、任意選択で、重複する継続時間をユーザ機器UE1に送信することができる。重複する継続時間は、ソースセルC3とターゲットセルC6との間のかかる重複が始まる瞬間より前の時刻(すなわち、
図4を参照して、時刻T2’より前の時刻)に、ソース基地局BS3によって、ユーザ機器UE1へと送信可能である。かかる重複する継続時間は、ソース基地局BS3によってユーザ機器UE1へ送信されるメッセージ内に埋め込むことができる。あるいは、ユーザ機器UE1が、重複する継続時間中を含めて、第1の信号及び第2の信号の到着時刻を含む信号の到着時刻を、連続的に測定することができるので、ソース基地局BS3は、重複する継続時間をユーザ機器UE1に送信しなくてもよい。
【0197】
したがって、重複する継続時間中、ユーザ機器UE1は、ソース基地局BS3からソースセルC3を通じて、及び、ターゲット基地局BS6からターゲットセルC6を通じてそれぞれ受信された少なくとも第1の信号及び第2の信号の測定値を得ることが可能であり、この測定値に基づいて、ユーザ機器UE1は、第1のパラメータP1を決定することができる。より正確には、第1のパラメータP1は、ユーザ機器UE1によって、以下の時間差として決定された時間である。
少なくともソース基地局BS3からの第1の信号の到着時刻に基づいて決定される第1の時刻、及び
少なくともターゲット基地局BS6からの第2の信号の到着時刻、
に基づいて決定される第2の時刻。
【0198】
ソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6のそれぞれからの第1の信号及び第2の信号のかかる到着時刻は、T2’の後及び重複する継続時間内に、ユーザ機器UE1によって効果的に測定される。つまり、重複する継続時間中、ユーザ機器UE1は、ソース基地局BS3からの第1の信号を所定の到着時刻に受信し、さらに、ターゲット基地局BS6からの第2の信号を所定の到着時刻に受信することができる。その目的のため、ユーザ機器UE1がネットワークからユーザ機器UE1に到着する第1の信号及び第2の信号の到着時刻を測定することを可能にするクロック又は他の任意の時間測定モジュールが、ユーザ機器UE1に備えられている。それゆえ、この場合、第1の時刻は第1の信号の到着時刻に対応し、第2の時刻は第2の信号の到着時刻に対応する。
【0199】
時間差が直接的に第1のパラメータP1となる第1の時刻と第2の時刻は、いずれもネットワークによって予め定められた時間間隔内である。第1のパラメータP1を決定するために使用される第1の時刻と第2の時刻が共に、この時間間隔に属することを確保することにより、対応する信号が互いに間隔が広すぎるサブフレームに含まれないことが保証される。したがって、第1のパラメータP1は、例えば、信号が1フレーム未満の間隔であるため、実際に比較可能な信号同士の実際の時間差を正確に反映している、つまり、信号は、実際には多かれ少なかれ同時に送信され、さらに、第1のパラメータP1は、実際にはユーザ機器UE1に到達する2つの信号間の伝搬遅延差を反映している。例えば、サブフレーム#4に対応するソース基地局BS3が送信した信号、及びサブフレーム#6に対応するターゲット基地局BS6が送信した別の信号の、ユーザ機器UE1へのそれぞれの到着時刻を比較した場合、それぞれの2つの基地局BS3、BS6と、ユーザ機器UE1との間の伝搬時間差とは別に、ソース基地局BS3のサブフレーム#4とターゲット基地局BS6のサブフレーム#6との時間差、及びフレーム持続時間(又はそれぞれのフレーム持続時間)について、得られた第1のパラメータP1を考慮する必要がある。
【0200】
したがって、かかる時間間隔は、一方では、第1のパラメータP1を決定するために使用される第1の時刻と第2の時刻との間の最大時間ギャップを定義し、他方では、第1のパラメータP1の瞬間範囲を定義する。実際、時間間隔は、ハンドオーバー時刻THOに近くてもよく、これにより、第1のパラメータP1は、ユーザ機器UE1がソースセルC3からターゲットセルC6へのハンドオーバーを実行する必要のある瞬間に近い時刻におけるソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6からの信号の到着時間差を反映するよう、関連的に考慮される。時間間隔は、例えば、ソース基地局BS3によりユーザ機器UE1に送信されるメッセージ内で、ソース基地局BS3によってユーザ機器UE1に送信されてもよい。
【0201】
ソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6からそれぞれ受信した第1の信号と第2の信号の到着時刻が共に時間間隔に属する場合、ユーザ機器UE1は、第1の時刻が第1の信号の到着時刻に対応し、第2の時刻が第2の信号の到着時刻に対応すると判定することが可能であり、第1のパラメータP1は、ユーザ機器UE1によって、重複する継続時間中及び時間間隔内にユーザ機器UE1によって実際に測定された2つの到着時刻同士の時間差として決定される。
【0202】
しかしながら、ソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6からそれぞれ受信した第1の信号及び第2の信号の到着時刻の少なくとも一方の到着時刻が時間間隔にない場合、かかる到着時刻は、第1のパラメータP1の決定のために直接使用することができない。これは、ユーザ機器UE1が、時間間隔内に異なる基地局BS3、BS6からの2つの信号の2つの到着時刻を実際に測定することができない場合に相当する。この結果、第1の信号及び第2の信号のそれぞれの到着時刻に基づいて、第1の時刻及び第2の時刻の少なくとも一方の時刻をユーザ機器UE1によって推定する必要がある。第1の時刻及び/又は第2の時刻それぞれのかかる推定は、以下に依存することができる。
ソース基地局BS3から直近で実際に受信された第1の信号の測定された到着時刻、及び/又は、
ターゲット基地局BS6から最初に実際に受信された第2の信号の測定された到着時刻、及び/又は、
BS3及び/又はBS6からの信号発信の時間変動又は時間パターン、及び/又は、
ソース基地局BS3(及び/又は、ターゲット基地局BS6)のフレーム又はスロット持続時間等のネットワークの特定の特性、かかる特性は、例えば、ユーザ機器UE1によってソース基地局BS3から受信され、ソース基地局BS3から送信されたメッセージに埋め込まれる。
【0203】
結果として、第1のパラメータP1は、以下に対応する第1の時刻と第2の時刻との間の時間差に対応する。
第1の信号及び第2の信号の測定された到着時刻(オプション1)、又は、
基地局BS3、BS6によって発信されたが、UE1によって効果的に受信又は復号化できなかった信号のUE1における時間間隔(例えば、フレームサイズの時間間隔)に含まれる到着時刻を推論するために、測定された第1の信号及び第2の信号の到着時刻、並びに信号発信の時間変動又は時間パターンに基づく、ユーザ機器UE1による推定(オプション2)、又は、
基地局BS3、BS6によって発信されたが、UE1によって効果的に受信あるいは復号化できなかった信号のUE1における時間間隔(例えば、フレームサイズの時間間隔)に含まれる到着時刻を推論するために、他の測定された信号発信の到着時刻、並びに時間変動又は時間パターンに基づく、第1の時刻及び第2の時刻のうち一方の時刻が、測定された到着時刻であること、さらに、第1の時刻及び第2の時刻のうちの他方の時刻は、ユーザ機器UE1による推定値であることの組み合わせ(オプション3)。
【0204】
図4において表されない状況において、ソースセルC3とターゲットセルC6とのセル切り替えは、ハードなセル切り替えシナリオにおいて発生する。この場合、衛星SAT1のソース基地局BS3によって管理されるソースセルC3が、地表の他の場所に配置されるよう、実際にスイッチオフされた後、衛星SAT2のターゲット基地局BS6によって管理されるターゲットセルC6は、地表上の固定地理的領域の少なくとも一部上でスイッチオンされる。かかるハードなセル切り替えシナリオは、例えば、衛星SAT1及びSAT2がステアラブルビーム/固定ビームフットプリントを有し、さらに、ソースセルC3が固定地理的領域においてターゲットセルC6に置き換えられる前にスイッチオフされるように構成されている場合に起こり得る。この結果、ハードなセル切り替えシナリオによって、現在ソースセルC3によってカバーされ、対応するソース基地局BS3に接続されているユーザ機器UE1が、一度に1つのセルによってのみカバーされ、さらに、ソースセルC3とターゲットセルC6によって逐次的に(ただし、同時にではなく)カバーされるという状況となる。かかるハードなセル切り替えのシナリオは、例えば、
図2及び3によって示されるように、時刻T2’、及び
図4において表される状況が発生することなく、時刻T2から、
図2において表される衛星通信ネットワークの一部が、
図3における時刻T3で表される状況へと直接進展する場合に起こり得る。
【0205】
ハードなセル切り替えのシナリオの場合において、ユーザ機器UE1は、例えば、
図2の時刻T2において、ユーザ機器UE1が依然としてソース基地局BS3に接続されている瞬間に、ソース基地局BS3からハードなセル切り替えに関連するデータを受信することができる。ハードなセル切り替えに関連するデータは、以下を含むことができる。
切り替え時間に関連する値、この切り替え時間は、ソースセルC3とターゲットセルC6との間のハードなセル切り替えが発生する時間に対応する。ユーザ機器UE1が(例えば、ソース基地局BS3がユーザ機器UE1に要求する)一時停止タイマーを適用できるので、かかる切り替え時間は、ハンドオーバー時刻T
HOと異なる場合があり、この切り替え時間は、ユーザ機器UE1がターゲットセルC6へのアクセス手順をまだ開始していない(つまり、ハンドオーバー時刻T
HOにおける)、ターゲットセルC6のカバレッジ下にある継続時間(つまり、切り替え時間における)を指す、及び/又は
ユーザ機器UE1が、ソース基地局BS3から実際に受信した逐次的な第1の信号の到着時刻を測定し、場合によっては、処理及び/又は保存する必要があることを、このユーザ機器に示す時間トリガー。かかる時間トリガーは、指示信号自体の受信に対応するか、又は、ソース基地局BS3から実際に受信した逐次的な第1の信号の到着時刻を測定及び処理/保存するよう、ユーザ機器UE1が始動する作動式時間トリガーを設定し得る(例えば、セル切り替えが発生し、ユーザ機器UE1がソース基地局BS3から信号をもはや受信しなくなるまで)。
【0206】
ユーザ機器UE1は、依然として、例えば、ソース基地局BS3によってユーザ機器UE1に送信されるメッセージ内で、ソース基地局BS3から時間間隔(つまり、ハードなセル切り替えの前に)を受信してもよい。
【0207】
切り替え時刻においてハードなセル切り替えが発生した後、ユーザ機器UE1は、もはやソースセルC3によってカバーされることはなく、ターゲットセルC6によってカバーされる(かかる状況は、例えば、時刻T3において
図3で示される)。ハードなセル切り替え後、ユーザ機器UE1は、ターゲット基地局BS6から少なくとも1つの第2の信号を受信し、ターゲット基地局BS6から実際に受信した少なくとも第2の信号の到着時刻を測定することができる。ユーザ機器UE1は、時間間隔にある第2の信号の到着時刻を測定することができる。
【0208】
しかし、ハードセル切り替え前にソース基地局BS3から受信され、ユーザ機器UE1によって測定された第1の信号の到着時刻は、この時間間隔にない場合がある。かかる場合において、ユーザ機器UE1は、以下に基づいて、第1のパラメータを決定するために使用される第1の時刻を推定することができる。
ソース基地局BS3から直近で実際に受信された第1の信号の測定された到着時刻、及び/又は、
ターゲット基地局BS6から最初に実際に受信された第2の信号の測定された到着時刻、及び/又は、
BS3からの信号発信の時間変動又は時間パターン、及び/又は、
ソース基地局BS3のフレーム又はスロット持続時間等のネットワークの特定の特性、かかる特性は、例えば、ハードなセル切り替え前に、ユーザ機器UE1によってソース基地局BS3から受信され、ソース基地局BS3から送信されたメッセージに埋め込まれる。また、かかるネットワークに関する特定の特性は、ユーザ機器UE1によって予め(例えば、ユーザ機器UE1がソースセルC3に最初にアクセスする際に)知られていてもよい。
【0209】
結果として、第1のパラメータP1は、オプション2又はオプション3のいずれかに対応する第1の時刻と第2の時刻との間の時間差に対応する。例えば、第1の時刻は、測定された第1の信号の到着時刻と、BS3の信号放出の時間変動又は時間パターンとに基づくユーザ機器UE1による推定値であり、第2の時刻は、測定された第2の信号(BS6から受信した信号に相当する)の到着時刻となる。
【0210】
ユーザ機器UE1は、ユーザ機器UE1が第1のパラメータP1を決定する際のベースとなる指示値を、ソース基地局BS3から受信できる。この指示値は、例えば、ユーザ機器UE1がソースセルC3のカバレッジ下にある時(例えば、時刻T2又は時刻T3)にソース基地局BS3によって発信されるメッセージに埋め込まれるか、又は、事前構成から、又はソース基地局BS3、若しくは以前に接続された別の基地局より以前に受信された別のメッセージから、UEによって知ることができる。かかる指示値には、ユーザ機器UE1が、例えば、この指示値のみに基づいて又は指示値及びユーザ機器によって予め定められた固定値のみに基づいて、第1のパラメータP1を直接決定するための命令を含んでいてもよい。
【0211】
ソース基地局BS3から受信した指示値に基づいて第1のパラメータP1を決定するための基準については、本明細書において更に説明する。
【0212】
図5を参照する。
図5は、
図4と同様の時刻T2’におけるユーザ機器UE1を含む、衛星通信ネットワークの一部及び固定地理的領域を表している。衛星SAT1、SAT2、衛星ビームB3とB6、基地局BS3とBS6、それらの対応セルC3とC6、及びユーザ機器UE1は、
図4に対して変わらないままである。
図5の衛星通信ネットワークでは、第2のユーザ機器UE2が追加されている。
【0213】
図4と同様、
図5は、衛星SAT1が展開するセルC3と衛星SAT2が展開するセルC6とのセル切り替えの中間段階を表している。
図5の状況において、衛星SAT1とSAT2は、ステアラブル衛星ビームB3とB6を備えるものとみなされている。ソフトなシナリオでは、セルC3とセルC6とのセル切り替えが発生するとみなされており、つまり、時刻T2’において、セルC6は、セルC3が地表の衛星SAT1によって他の場所に展開されるようスイッチオフされる前に、セルC3によって現在カバーされている固定地理的領域の一部に展開される。
【0214】
時刻T2’における
図5を参照すると、ユーザ機器UE1及び第2のユーザ機器UE2は、ソースセルC3によってカバーされている。
図4の説明で詳述したように、衛星SAT2の基地局BS6に対応するセルC6は、ソースセルC3の下流にあるセルであり、予測可能な継続時間内にソースセルC3の置き換えとなることになる。ソース基地局BS3は、セルC6がソースセルC3の置き換えとなることを識別可能であり、したがって、セルC6をユーザ機器UE1、UE2のターゲットセルC6として識別する。つまり、ユーザ機器UE1及び第2のユーザ機器UE2は共に、所定のハンドオーバー時刻T
HOにおいてターゲットセルC6にアクセスするためにハンドオーバー手順を実行する必要があり、かかるハンドオーバー時刻T
HOは各ユーザ機器UE1、UE2について、異なる。
【0215】
時刻T2’において、ユーザ機器UE1及び第2のユーザ機器UE2は共に、それらの共通のソースセルC3及び共通のターゲットセルC6によって同時にカバーされる。
【0216】
ネットワークは、ユーザ機器UE1によって決定されたターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2として使用される値を使用して、ソースセルC3からターゲットセルC6へのユーザ機器UE1のハンドオーバーを行うことを検討する。このため、ネットワークは、ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定するために、ユーザ機器UE1によって使用される第2のパラメータP2を決定することを目的とする。第2のパラメータP2を決定するネットワークは、例えば、ソース基地局BS3等の任意のネットワークエンティティを指す。
【0217】
ユーザ機器UE1に送信される第2のパラメータP2を決定するために、ソース基地局BS3は、第2のユーザ機器UE2等、ユーザ機器UE1とは異なる少なくとも他のユーザ機器の選択から開始する。ソース基地局BS3は、別の又は幾つかの他のユーザ機器を選択することもできる(これらは
図5には表されていない)。第2のパラメータP2を決定するために、別のユーザ機器を選択する基準について、更に詳述する。ソース基地局BS3は、第2のパラメータP2を得るために、少なくともターゲットセルC6における第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスTA2*、及びソースセルC3における第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスTA1*に依存する。
【0218】
以下のタイミングで、ターゲットセルC6における第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスTA2*を取得することができる。
第2のユーザ機器UE2がターゲット基地局BS6に接続されている時(
図5では該当しない)及び/又は
第2のユーザ機器UE2が、少なくともターゲットセルC6のカバレッジゾーンにある時(
図5に表される場合である)。
【0219】
ターゲットセルC6における第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスTA2*は、既存の方法を通じて又は開示されている方法によって(すなわち、第2のユーザ機器UE2が、ターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*として使用される値を決定する)、得られてもよい。また、第2のユーザ機器UE2は、第2のパラメータP2を決定するために以下のプロセスを始動するよう、ソース基地局BS3によって命令されることもある。
【0220】
第2のパラメータP2を決定するために、第2のユーザ機器UE2がソース基地局BS3により命令されたプロセスを始動する場合において、第2のユーザ機器は、選択された第2のユーザ機器がソースセルC3のカバレッジゾーンにあるか、又は、これまでこのカバレッジゾーンにあったように、選択され得る。また、第2のユーザ機器は、この第2のユーザ機器がユーザ機器UE1と同じターゲットセルC6を有するということに基づいて、ソース基地局BS3によって選択され、第2のパラメータP2を決定するためにソース基地局BS3によって命令されたプロセスを始動する際、第2のユーザ機器はさらにターゲットセルC6によってカバーされている(
図5の第2のユーザ機器UE2等)。
【0221】
実際、第2のユーザ機器をユーザ機器UE1と同じソースセルC3及び同じターゲットセルC6を有する(又はこれまで有していた)ものとして選択することにより、第2のパラメータP2がソースセル及びターゲットセルにより形成されるセルの対に固有とされる値であるので、ユーザ機器UE1と第2のユーザ機器は、理論上、第2のパラメータP2の同じ値を共有する。したがって、第2のユーザ機器は、第2のユーザ機器が類似のソースセルC3及びターゲットセルC6等のユーザ機器UE1と共有する共通の特徴、又は、ターゲットセルC6によってカバーされる前に、第2のユーザ機器が以前の時刻に入った状況に近い状況にユーザ機器UE1があることに基づいて、選択されてもよい。
【0222】
他の補足的な基準は、第2のユーザ機器を選択するためにソース基地局BS3によって検討されてもよく、本説明において更に詳述される。
【0223】
例えば、
図5のユーザ機器UE2に対応するように、ソース基地局BS3によって、第2のユーザ機器が選択されると、ソース基地局BS3は、時刻T2’において、第2のユーザ機器UE2が始動するプロセスを命令するための命令メッセージを第2のユーザ機器UE2に送信することが可能であり、かかるプロセスは、以下の説明に従って、ターゲットセルC6における第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスTA2*を決定することにある。
【0224】
第2のユーザ機器UE2は、時刻T2’に対応する時刻又は時刻T2’よりも遅い時刻において、ターゲット基地局BS6に信号を送信することが可能である。かかる時刻は、特に、第2のユーザ機器UE2がターゲットセルC6によってカバーされる時間に対応する(
図5を参照すると、かかる時刻は時間T2’であり得る)。第2のユーザ機器UE2によってターゲット基地局BS6に送信されるかかる信号は、例えば、アップリンクプリアンブルRACH(PRACH)信号の場合のように、かかる信号によってハンドオーバー手順が開始されないことを示すためのシーケンスを含むことができる。第2のユーザ機器UE2がターゲット基地局BS6に送信する信号は、タイミングアドバンスのテスト値を使用する。かかるタイミングアドバンスのテスト値は、例えば、予め決定され、ソース基地局BS3によって第2のユーザ機器UE2へ送信される。また、タイミングアドバンスのテスト値は、ソースセルC3における第2のユーザ機器UE2の最新のタイミングアドバンスTA1*に対応してもよい。この値は、時刻T2’より前の時刻において、ソース基地局BS3によって更新され、ソース基地局BS3及び第2のユーザ機器UE2の双方によって知られている先験値である。また、第2のユーザ機器UE2は、タイミングアドバンスのテスト値として任意の他の値を使用してもよく、かかる値は、ソース基地局BS3に報告されてもよい。
【0225】
タイミングアドバンスのテスト値を使用して第2のユーザ機器UE2から信号を受信すると、ターゲット基地局BS6は、第2のユーザ機器UE2から受信した時点の信号のタイミングアドバンス誤差を測定し、かかるタイミングアドバンス誤差をフィードバックとして、ソース基地局BS3又は第2のユーザ機器UE2のいずれかに送信することができる。第2のユーザ機器UE2が使用するタイミングアドバンスのテスト値及びターゲット基地局BS6が測定したタイミングアドバンス誤差に基づいて、ソース基地局BS3は、第2のユーザ機器UE2のターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*を決定することができる。ソース基地局BS3が、第2のユーザ機器UE2のターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*を決定することの代替として、ターゲット基地局BS6は、ターゲット基地局BS6から受信したタイミングアドバンス誤差及び使用されたタイミングアドバンスのテスト値に基づいて、ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2*を決定可能とするタイミングアドバンス誤差を第2のユーザ機器UE2にフィードバックし、さらに、かかるタイミングアドバンスTA2*、若しくはタイミングアドバンスTA2*を表す値、又は、パラメータP2を表す値のいずれかをソース基地局BS3に送信することができる。
【0226】
ターゲットセルC6における第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスTA2*を決定することに関する記載のプロセスの代替として、ソース基地局BS3及び/又は第2のユーザ機器UE2は、任意の既存の方法を使用して計算して、第2のユーザ機器UE2のターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*を取得できる。
【0227】
例えば、第2のユーザ機器UE2によって使用されるタイミングアドバンスのテスト値が、ソースセルC3における第2のユーザ機器UE2の最新のタイミングアドバンスに対応する場合、ターゲット基地局BS6によりフィードバックされたタイミングアドバンス誤差によって、ソース基地局BS3は、ソースセルC3からターゲットセルC6への第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスの時間シフト値TA1*-TA2*(場合によっては、絶対時間シフト値)を直接取得することができる。第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスに関するかかる直接的な時間シフト値TA1*-TA2*の使用については、
図6の説明で詳述する。
【0228】
この段階で
図5を参照すると、ソース基地局BS3は、以下を取得する。
第2のユーザ機器UE2のターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*、及び
第2のユーザ機器UE2のソースセルC3における最新のタイミングアドバンスTA1*。
【0229】
また、第2のユーザ機器UE2は、ソース基地局BS3及びターゲット基地局BS6からそれぞれ第2のユーザ機器UE2が受信した信号の到着時刻に基づいて、値VALを決定することが可能であり、
図4の説明で詳述したように、かかる値及びその決定は、ユーザ機器UE1によって決定される第1のパラメータP1に類似している。その後、例えば、ソース基地局BS3によって第2のユーザ機器UE2に命令された命令メッセージによる結果として、かかる値は第2のユーザ機器UE2によってソース基地局BS3へ送信されてもよい。
【0230】
以下、
第2のユーザ機器UE2のターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*、及び
第2のユーザ機器UE2のソースセルC3における最新のタイミングアドバンスTA1*、及び
第2のユーザ機器UE2から受信した値VALに基づいて、
ソース基地局BS3は、例えば、第2のユーザ機器UE2の値に適用される式(1)を使用して、セルC3及びセルC6によって形成されるセルの対に固有とされる値である第2のパラメータP2を決定してもよい。また、第2のユーザ機器UE2は、これがターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*を決定した場合(例えば、ターゲット基地局BS6からタイミングアドバンス誤差のフィードバックを受けた後)、その側で第2のパラメータP2を決定し、さらに、決定時の第2のパラメータP2をソース基地局BS3へ送ってもよい。
【0231】
かかる第2のパラメータP2は、セルC3及びセルC6によって形成されるセルの対に固有とされる値であり、同じソースセルC3から同じターゲットセルC6へのタイミングアドバンスとして使用される値を決定するユーザ機器全てに共通である。
図5を参照すると、決定時の第2のパラメータP2は、ユーザ機器UE1及び第2のユーザ機器UE2の両方に適用される。したがって、かかるパラメータP2は、ソース基地局BS3から、ソースセルC3によってカバーされ、(ユーザ機器UE1を含む)ターゲットセルC6へのハンドオーバーを実行するユーザ機器へのグループキャストメッセージとして、又はソースセルC3のブロードキャストメッセージとして、送信されてもよい。さらに、かかるパラメータP2は、例えば、ユーザ機器UE1がターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用されるその値の決定をトリガーするためにユーザ機器UE1に送信されたメッセージとして、とりわけユーザ機器UE1に送信できる。
【0232】
ソース基地局BS3が第2のユーザ機器を選択するための補足基準には、以下の要素の1つ又は組み合わせを含むことができる。
ソースセルC3とターゲットセルC6との間に空白のない重複ゾーンがある場合(例えば、
図5に示されるセルC3及びC6の間のソフトなセル切り替えシナリオの場合、又は、固定ビーム/移動フットプリントを使用する衛星の場合)、時刻T2’において、セルC3及びC6の重複ゾーンに位置する場合に、第2のユーザ機器が選択されてもよい。これにより、かかる第2のユーザ機器は、接続されて、ソース基地局BS3に直接報告することができる間、命令メッセージにおいてソース基地局BS3によって命令されるように、ターゲット基地局BS6によってプロセスを始動することができる。これは、例えば、
図5に示された第2のユーザ機器UE2の場合である。ソースセルC3とターゲットセルC6とが重ならない場合(例えば、セルC3とC6との間のハードなセル切り替えシナリオの場合)、第2のユーザ機器UE2は、ソースセルC3及びターゲットセルC6によって、逐次的に(ただし、同時ではなく)カバーされることになる。そして、セルC3とセルC6とのセル切り替え後に、ソース基地局BS3により命令メッセージ内で命令されたプロセスを、第2のユーザ機器UE2によって始動できる。次に、第2のユーザ機器UE2は、例えば、衛星間リンク(ISL)を使用してソース基地局BS3にかかる報告を送信可能とするターゲット基地局BS6に、報告(例えば、値VALを報告する)を実行できる。
第2のユーザ機器のそれぞれによって決定された値VALが閾値を下回る場合、第2のユーザ機器は、ソース基地局BS3によって選択可能である。かかる閾値は、例えば、ソース基地局BS3によって決定される。これにより、第2のユーザ機器のそれぞれのターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*と、第2のユーザ機器のそれぞれのソースセルC3における最新のタイミングアドバンスTA1とのみの関数(第2のパラメータP2は平均であリ得る)として、第2のパラメータP2を決定できる。かかる閾値は、ソースセルにおける潜在的な全ての第2のユーザ機器(すなわち、例えば、ユーザ機器UE1と同じソースセルC3及び同じターゲットセルC6を有するユーザ機器)に対して、グループキャストされた又はブロードキャストされたメッセージとして送信されてもよい。各潜在的な第2のユーザ機器は、その値VALを決定すると、かかる値VALを、事前に定義されるか又はソース基地局BS3によって指示されるかのいずれかにより、閾値と比較し、かかる値VALが閾値未満である場合にのみ、この値をソース基地局BS3に送信する。さらに、各潜在的な第2のユーザ機器によって決定された各値VALは、ソース基地局BS3によって受信されてもよく、閾値と比較されて、対応する第2のユーザ機器UE2が選択される。
第2のユーザ機器UE2のそれぞれのターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*と、第2のユーザ機器のそれぞれのソースセルC3における最新のタイミングアドバンスTA1との差がギャップ未満である場合、第2のユーザ機器は、ソース基地局BS3によって選択されてもよい。かかるギャップは、ソース基地局BS3によって予め定められている。これにより、第2のパラメータP2を、第2のユーザ機器のそれぞれによって決定された値VAL(又は値VALの平均値)に対応するものとして決定することができる。かかるギャップは、ソースセルにおける全ての潜在的な第2のユーザ機器(すなわち、ユーザ機器UE1と同じソースセルC3及び同じターゲットセルC6を有するユーザ機器)に対して、グループキャストされた又はブロードキャストされたメッセージとして送信されてもよい。各潜在的な第2のユーザ機器は、ターゲットセルC6におけるこれらユーザ機器のタイミングアドバンスTA2*を取得すると、かかるタイミングアドバンスTA2*と、ソースセルC3におけるユーザ機器の最新のタイミングアドバンスTA1*との差をソース基地局BS3によって示されるギャップと比較し、かかる差がギャップ以下の場合にのみ、報告をソース基地局BS3に送信する。また、潜在的な第2のユーザ機器のターゲットセルC6における各タイミングアドバンスTA2*は、これを潜在的な第2のユーザ機器のソースセルC3における最新のタイミングアドバンスTA1*と比較するソース基地局BS3によって、決定されるか又は受信されてもよく、各第2のユーザ機器は、かかるタイミングアドバンスTA2*と、ソースセルC3におけるこれらユーザ機器の最新のタイミングアドバンスTA1*との差がギャップ以下である場合に選択される。
第2のユーザ機器は、例えば、第2のユーザ機器のそれぞれの位置が予め定義された距離閾値内でユーザ機器UE1の位置の近くにあるか、又は、例えば、第2のユーザ機器の位置がソースセルC3内で予め定められた選択ゾーンにある等の、地理的基準に基づいてソース基地局BS3によって選択されてもよい。
さらに、第2のユーザ機器は、以前の時刻にユーザ機器UE1と共通のハンドオーバー状況にあったということに基づいて、選択されてもよい(かかる共通のハンドオーバー状況は、ソースセルC3内の以前の位置、又は、ソースセルC3内の現在位置に近いかかる第2のユーザ機器のソースセルC3における逐次的タイミングアドバンス、又は、ユーザ機器UE1のソースセルC3における逐次的タイミングアドバンスに基づいて、ソース基地局BS3により、特徴付けられ得る)。
【0233】
また、ソース基地局BS3は、以下に基づいて第2のパラメータP2を得るために、複数の第2のユーザ機器を選択することができる。
複数の第2のユーザ機器の各第2のユーザ機器UE2のターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2*の平均値、及び
複数の第2のユーザ機器の各第2のユーザ機器UE2のソースセルC3における最新のタイミングアドバンスTA1*の平均値、及び
複数の第2のユーザ機器の各第2のユーザ機器UE2から受信された値VALの平均値。
【0234】
図6を参照する。
図6は、ソフトな切り替えシナリオで発生するゲートウェイ切り替えの特定の実施形態における衛星通信ネットワークの一部を示す。
図6は、
図1と
図2の中間状況に対応する時刻T1とT2の中間時刻に相当する時刻T1’における状況を表しており、衛星SAT1は、ゲートウェイGW1とゲートウェイGW2との間のゲートウェイ切り替えを受ける。理解を容易にするために、
図6は、衛星SAT1のみを表す(SAT2は、図示せず)。
図1の時刻T1において、衛星SAT1とゲートウェイGW1との間にフィーダーリンクFL1が確立されている。衛星SAT1によって展開された初期セルC1’~C3’は、ゲートウェイGW1に配置された初期基地局BS1’~BS3’によって管理される。
図6の時刻T1’において、衛星SAT1が移動すると、ゲートウェイGW1からゲートウェイGW2へとフィーダーリンクFL1が遷移する。かかる遷移によって、衛星SAT1が、ゲートウェイGW2に位置する新しい基地局BS1~BS3によって管理される新しいセルC1~C3を展開する、
図2の時間T2となる。
図6の状況において、かかる遷移はソフトな方法で行われ、時刻T1’において、衛星SAT1はゲートウェイGW1及びゲートウェイGW2の双方からサービスを受ける。結果として、初期基地局BS1’~BS3’によって管理される初期セルC1’~C3’が依然スイッチオンされている間、衛星SAT1は、新しい基地局BS1~BS3によって管理される新しいセルC1~C3を展開する。
【0235】
図6は、以前に
図1及び
図2において表したように、ユーザ機器UE0及びUE1を表している。また、
図6では、第2のユーザ機器UE2も追加されている。UE0、UE1及びUE2というUEは全て、最初は衛星SAT1によってカバーされている。すなわち、ユーザ機器UE0はそのソースセルC1’によってカバーされ、ユーザ機器UE1及び第2のユーザ機器UE2は、それらの共通のソースセルC3’によってカバーされている。ゲートウェイGW1とGW2との間の衛星SAT1のゲートウェイ切り替えにより、全てのUEは、衛星SAT1を通じてネットワークへの接続を維持するために、衛星SAT1によって展開された新しいセルC1~C3へのハンドオーバーを実行する必要がある。したがって、ユーザ機器UE0は、このユーザ機器のソースセルC1’からそのターゲットセルC1へのハンドオーバーを実行する必要があり、ユーザ機器UE1及び第2のユーザ機器UE2は、ソースセルC3’からターゲットセルC3へのハンドオーバーを実行する必要がある。
【0236】
図6は、衛星SAT1によってカバーされるUE0、UE1、UE2というUEが、時間T1’において、それぞれのソースセルC1’、C3’、及びそれぞれのターゲットセルC1、C3の双方によって同時にカバーされている実施形態を表している。これは、ユーザ機器UE0とユーザ機器UE1のハンドオーバーと考えられており、かかるUEであるUE0、UE1は、それぞれのターゲットセルC1、C3において、タイミングアドバンスTA2として使用されるユーザ機器独自の値を決定する。そのために、ネットワークは、UEであるUE0及びUE1に送信される第2のパラメータP2を決定することを目指す。かかる第2のパラメータP2の決定は、本明細書において、例えば、ユーザ機器UE0のソース基地局BS1’及びユーザ機器UE1のソース基地局BS3’等の基地局によって行われてもよい。
【0237】
ソース基地局(例えば、BS3’)は、
図5の説明で以前に詳述したように、第2のユーザ機器UE2等、UEであるUE0、UE1とは異なる少なくとも別のユーザ機器を選択する。詳述するように、ソース基地局BS3’は、ソースセルC3’からターゲットセルC3への第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスの時間シフト値TA1*~TA2*を取得することができる。一般的な状況では、かかる時間シフト値TA1*~TA2*は、第2のユーザ機器UE2に固有とされる先験的な値である。しかし、
図6のような、ゲートウェイ切り替えの状況では、かかる時間シフト値TA1*~TA2*を、それぞれのソースセルC1’、C3’からそれぞれのターゲットセルC1、C3へのUEであるUE0、UE1のタイミングアドバンスに関する正確且つ共通の時間シフト値として適用可能である。
【0238】
衛星SAT1のゲートウェイ切り替えの場合、ゲートウェイ切り替えが衛星SAT1の規模で接続条件を変えるので、衛星SAT1によってカバーされる全てのUEであるUE0、UE1、UE2は、それぞれのソースセルC1’、C3’内で全く同じセル切り替え条件を受ける。ユーザ機器UE0とUE1には共に、(先験的に異なる地理的位置がユーザ機器にあるので)それぞれのソースセルC1’とC3’において先験的に異なるタイミングアドバンスがあり、ゲートウェイ切り替えによって、それぞれのソースセルC1’、C3’においてそれぞれのタイミングアドバンスの共通の時間シフト値が得られる。結果として、かかる共通の時間シフトをソースセルC1’、C3’における独自のタイミングアドバンスに適用することにより、各ユーザ機器UE0、UE1は、ゲートウェイ後のターゲットセルC1、C3においてタイミングアドバンスとして使用されるユーザ機器の値を直接取得することになる。かかる共通の時間シフトは、特に、第2のユーザ機器UE2の時間シフトTA2*-TA1*に対応する。それゆえ、衛星SAT1に関するゲートウェイ切り替えシナリオの場合、ソースセルC3’からターゲットセルC3への第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスの時間シフト値TA1*~TA2*は、ユーザ機器UE0及びUE1に共通する値である。かかる時間シフト値TA1*-TA2*は、基地局BS1’~BS3’によって管理されるセルC1’~C3’内の衛星SAT1によってカバーされる全てのUEにも共通のはずである。それゆえ、
図6において表すゲートウェイ切り替えシナリオの場合、共通の時間シフト値TA1*-TA2*をそのソースセルC1’、C3’のタイミングアドバンスTA1に適用することにより、衛星SAT1によってカバーされる各ユーザ機器UE0、UE1、UE2は、そのターゲットセルC1、C3においてタイミングアドバンスとして使用される値を得ることができる。
【0239】
したがって、ゲートウェイ切り替えシナリオに関するかかる状況では、第2のパラメータP2は、ソースセルC3’からターゲットセルC3への第2のユーザ機器UE2のタイミングアドバンスの時間シフト値TA1*-TA2*に対応し得る。TA2*-TA1*に等しいかかる第2のパラメータP2を取得すると、ソース基地局BS3’は、かかる第2のパラメータP2をユーザ機器UE1へ送信することができる。さらに、他のソースセルC1’~C3’内で、第2のパラメータP2の共通値を、衛星SAT1によってカバーされる他のUE(典型的には、ユーザ機器UE0)に送信できるよう、ソース基地局BS3’は、セルC3’内でグループキャストされるか又はブロードキャストされるメッセージとして、かかる第2のパラメータP2を送信してもよく、又は、他の基地局BS2’、BS3’にかかる第2のパラメータを送信してもよい。また、衛星SAT1によってカバーされるUEは、例えば、デバイス間通信によって、第2のパラメータP2の共通値を互いに通信し合うこともできる。
【0240】
また、ソース基地局BS3’は、(第2のパラメータP2を含む、同じメッセージに埋め込まれているか否かにかかわらず)指示値を送信することができる。セル切り替え条件によって、ユーザ機器UE1が、第2のパラメータP2及び指示値、並びに任意選択で、ユーザ機器UE1によって予め定義された固定値のみに基づいて、ターゲットセルC3においてタイミングアドバンスとして使用される値を決定することを可能にする、ネットワークにより予め定められ及び/又はユーザ機器UE1に命令する固定値を、かかる指示値は含むことができる。かかる指示値を受信すると、ユーザ機器UE1は、指示値に基づいて、第1のパラメータP1を固定値として設定してもよい。
【0241】
図7を参照する。
図7は、ターゲットセルにおいてタイミングアドバンスTA2として使用される値をユーザ機器UE1によって決定するために、このユーザ機器UE1により実行される主なステップについて説明するフローチャートを表す。
【0242】
かかるユーザ機器UE1は、
図7のステップを実施する前に、現在、衛星SAT1のソース基地局BS3に接続されているとみなされる。
【0243】
ステップS0において、ユーザ機器UE1は、ソース基地局BS3からメッセージを受信する。かかるメッセージは、ユーザ機器UE1が、ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定する際のベースとなる、ユーザ機器UE1により受信されるハンドオーバーコマンドを指し得る。かかるメッセージは、以下の要素の1つ又は組み合わせを含んでもよい。
ユーザ機器UE1がターゲットセルC6を特定可能とする、ソースセルC3の下流にある1つ又は幾つかのセルの識別情報。また、ユーザ機器UE1は、そのターゲットセルC6を特定するために、ソースセルC3の下流にある複数のセルから受信した送信電力(例えば、基準信号受信電力又はRSRP)の測定を行うこともできる。
ソースセルC3におけるユーザ機器UE1のタイミングアドバンスTA1に関連するデータ、かかるデータは、現在又は将来の時間について、ソース基地局BS3により推定及び/又は測定されたものである。
ソースセルC3とターゲットセルC6との間のセル切り替え時間に関連するデータ、
ソフトなセル切り替えシナリオにおいてセル切り替えが発生した場合、ソースセルC3とターゲットセルC6との重複する継続時間、
時間間隔に関連するデータ、
ソース基地局BS3のスロット持続時間又はフレーム持続時間等、ソース基地局BS3によって送信される第1の信号の送信パターンに関連するデータ、
ターゲット基地局BS6のスロット持続時間又はフレーム持続時間等、ターゲット基地局BS6によって送信される第2の信号の送信パターンに関連するデータ、
指示値、かかる指示値は、ユーザ機器UE1に対して、第2のパラメータP2、指示値、及び場合によっては、ユーザ機器UE1によって予め定められた他の固定値のみに基づいて、ターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスとして使用される値を決定するよう、命令する。かかる指示値は、衛星SAT1のゲートウェイ切り替えの場合、ソース基地局BS3が送信するメッセージに埋め込むことができる。
ユーザ機器UE1がターゲット基地局BS6に信号を送信しない遅延に関連するデータ、
ユーザ機器がターゲットセルC6へのハンドオーバーを行うまでの最大時間又はハンドオーバー時刻THO。
ソースセルC3を通じてソース基地局BS3からメッセージを受信すると、ユーザ機器UE1は、識別されたターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用されるその値を決定する手順をトリガーする。
【0244】
ステップS1において、ユーザ機器UE1は、ソース基地局BS3から、第2のパラメータP2の値を受信する。また、ステップS0においてソース基地局BS3が送信したメッセージに第2のパラメータP2が埋め込まれている場合があるので、かかるステップはステップS0と統合されてもよい。
【0245】
ステップS2において、ユーザ機器UE1は、場合によっては、ステップS0においてソース基地局BS3から受信したメッセージの内容に基づいて、第1のパラメータP1を決定する。ユーザ機器UE1によって決定される第1のパラメータP1は、以下に依存してもよい。
ソースセルC3とターゲットセルC6との間のセル切り替え時間に関連するデータ、及び/又は、
ソフトなセル切り替えシナリオにおいてセル切り替えが発生した場合、ソースセルC3とターゲットセルC6との重複する継続時間、
時間間隔に関連するデータ、かかる時間間隔は、第1のパラメータP1を決定するために、ユーザ機器UE1が使用する到着時刻が存在する必要のある時間窓をユーザ機器UE1に示している、及び/又は、
ソース基地局BS3のスロット持続時間又はフレーム持続時間等、ソース基地局BS3によって送信される第1の信号の送信パターンに関連するデータ、及び/又は、
ターゲット基地局BS6のスロット持続時間又はフレーム持続時間等、ターゲット基地局BS6によって送信される第2の信号の送信パターンに関連するデータ、
第1のパラメータP1をもたらす時間差として使用される第1の時刻と第2の時刻を決定するためのものである。
【0246】
また、ユーザ機器UE1は、ステップS0において受信したメッセージに指示値が埋め込まれている場合、かかる指示値に基づいて、ステップS2において第1のパラメータを決定してもよい。
【0247】
ステップS3において、ユーザ機器UE1は、ユーザ機器UE1のソースセルC3におけるタイミングアドバンスTA1の更新値を取得する。ソースセルC3におけるタイミングアドバンスTA1のかかる更新値は、ソースセルC3におけるユーザ機器UE1のタイミングアドバンスTA1に関連するデータに直接対応し得る。また、ソースセルC3におけるタイミングアドバンスTA1のかかる更新値は、例えば、将来時刻においてソースセルのタイミングアドバンスTA1を推定するために、ソースセルC3におけるユーザ機器UE1のタイミングアドバンスTA1に関連するデータに基づいて、ユーザ機器UE1によって決定されてもよい。ユーザ機器UE1のソースセルC3におけるタイミングアドバンスTA1のかかる更新値は、ステップS0及びS1において受信されたメッセージ及び信号とは別個の信号として受信可能であるか、又は、前述のように他のデータと一緒に受信されてもよい。このステップは任意選択であり、つまり、ユーザ機器UE1から知られているソースセルC3におけるタイミングアドバンスTA1の更新値は、TA1に関する利用可能な最新値(例えば、ステップS0の前に受信され得る)であるとみなされてもよい。
【0248】
ステップS4において、ユーザ機器UE1は、第2のパラメータP2、第1のパラメータP1、並びに、ステップS1、S2、及びS3においてそれぞれ取得された(場合によっては、統合された)ソースセルC3内のタイミングアドバンスTA1に基づいて、例えば、式(1)を計算することにより、ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定することができる。
【0249】
ステップS5において、ユーザ機器UE1がターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を、ユーザ機器UE1のソースセルにおける最新の更新後のタイミングアドバンスTA1と比較することができる。2つの値TA1、TA2の時間差が閾値を上回る場合、かかる閾値は、例えば、ネットワークによって予め決定され、且つ、ステップS0においてユーザ機器UE1によって受信されており、ユーザ機器UE1は、ステップS4の後、ユーザ機器UE1によって決定されたターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスTA2として使用される値をネットワークに送信する。
【0250】
図8を参照する。
図8は、ソースセルC3からターゲットセルC6へのユーザ機器UE1のハンドオーバーを実行するためにネットワークによって実施される一般的なステップを示すフローチャートを表している。
図5において表されるように、地表の固定地理的領域及びかかる固定地理的領域をカバーする衛星通信ネットワークの一部について、検討している。ネットワークは、セルC3及びC6をそれぞれ投影し、それぞれの基地局BS3及びBS6に対応する衛星SAT1及びSAT2を含む。
【0251】
ネットワークの衛星SAT1の基地局BS3は、ユーザ機器UE1、UE2、及びUE3を含む固定地理的領域をカバーする時刻で考慮される。かかる時間は、
図5において表されるような時刻T2’に対応することができるが、時刻T2’よりも早い時間又は遅い時間に対応してもよい。かかる時間は、
図3に表される時間T3よりも早い時間である。
【0252】
予め定められた衛星コンステレーション動学並びにネットワークトポロジによって、任意の潜在的ネットワークエンティティ、衛星SAT1の基地局BS3が、ステップS100において、セルC3によって現在カバーされている固定地理的領域が、別の衛星SAT2によって展開されているセルC3とセルC6との間のセル切り替えにより、カバレッジの変化を受けることを、予測することができる。また、セル切り替え条件は、基地局BS3によって予測可能であり、以下の要素の少なくとも1つ又は組み合わせを含むことができる。
固定地理的領域においてセルC3の置き換えとなるセル、すなわちセルC6の識別情報に関する情報、
セル切り替えの性質、すなわち、衛星間セル切り替えが発生することに関する情報、
セル切り替えの多かれ少なかれ漸進的な性質に関連する情報、例えば、ステアラブル又は固定である衛星ビームB3及びB6に関連する情報、
セルC3とセルC6との切り替え時間に関連する情報、
経時にわたって下流セルC6によりカバーされる地理的ゾーンに関する情報、
セルC3とセルC6との間のセル切り替えのハード又はソフトなセル切り替えの性質に関する情報、
ソフトなセル切り替えシナリオの場合における、セルC3とC6との間の重複ゾーンに関する情報(例えば、経時にわたる位置、重複する継続時間等)。
【0253】
セルC3とC6との間のセル切り替えに関連するかかる情報は、時間T2’より前の時間において、ステップS100で基地局BS3により予測することができ、更には、ネットワークトポロジ特性の一部として、場合によっては、セルC3が固定地理的領域をカバーする前に、ソース基地局BS3のハードウェア内に予め構成されてもよい。
【0254】
ステップS10において、ネットワークは、セルC3及び下流セルC6に固有とされる第2のパラメータP2を決定する。かかる第2のパラメータP2は、以下を得るために、セルC3のカバレッジゾーン内で少なくとも第2のユーザ機器UE2を選択することにより、決定され得る。
第2のユーザ機器UE2のソースセルとターゲットセルとの間のこのユーザ機器のタイミングアドバンスの時間シフトTA2*-TA1*、及び/又は
第2のユーザ機器UE2に固有とされる値VAL。
図5の説明で詳述したように、第2のユーザ機器UE2によって始動されるプロセスは、ネットワークの基地局BS3によって送信される指示メッセージによってトリガーされる。
【0255】
したがって、ステップS10は、少なくとも第2のユーザ機器UE2(又は、第2のユーザ機器UE2として選択される、潜在的な候補ユーザ機器)に指示メッセージを送信することと、ステップS10の終了時に、基地局BS3が第2のパラメータP2を取得する際のベースとなる第2のユーザ機器UE2を選択することを含むことができる。
【0256】
ステップS20において、基地局BS3は、そのセルC3内でメッセージを発信する。かかるメッセージは、以下を含むことができる。
ステップS100において基地局BS3により取得された情報、及び
ステップS10において基地局BS3により取得された第2のパラメータP2。
【0257】
図6において表されるように、ステップS100において取得されたセル切り替え条件により、基地局BS3がゲートウェイ切り替えシナリオを特定できる場合、
図6の説明で詳述したように、メッセージは、指示値も更に含むことができ、このメッセージに含まれる第2のパラメータP2は、第2のユーザ機器UE2のソースセルとターゲットセルとの間のこのユーザ機器のタイミングアドアンスの時間シフトTA2*-TA1*に対応してもよい(この時間シフトTA2*-TA1*は、ユーザ機器UE2のソースセルC3’とターゲットセルC3との間のこのユーザ機器のタイミングアドバンスの時間シフトに対応し、かかる時間シフトTA2*-TA1*は、衛星SAT1によってカバーされる全てのUEに共通である)。
【0258】
ステップS20において、基地局BS3は、そのセルC3内でかかるメッセージを発信する。
【0259】
かかるメッセージは、セルC3の基地局BS3が発信するステップS20におけるブロードキャストされたメッセージとして、ユーザ機器UE1に到達できる。したがって、ユーザ機器UE1は、セルC3によってカバーされているが、かかるメッセージを受信した際、まだ基地局BS3に接続されていない場合がある。
【0260】
かかるメッセージは、セルC3の基地局BS3が発信するステップS20におけるグループキャストされたメッセージとして、ユーザ機器UE1に到達できる。かかるグループキャストされたメッセージは、重複ゾーンのみ内におけるセルC3とC6との間(かかる重複ゾーンが空白でないことを条件とする)で、地理的基準、例えば、この重複ゾーンに関するグループキャスト情報(重複する継続時間等)に基づいて、セルC3内で送信可能である。重複ゾーンに基づくグループキャストされたメッセージに関するかかる場合において、一方ではユーザ機器UE2、そして、ユーザ機器UE1及びUE3は、基地局BS3から一部が異なるメッセージを受信することになる。また、異なる下流セルがセルC3の置き換えとなる場合、例えば、地理的基準又は受信した送信電力のレベルに応じて、かかるメッセージはグループキャスト方式で送信されてもよく、セルC3内の異なるゾーン内のUEは、異なるターゲットセルに接続する必要がある。したがって、ユーザ機器UE1は、セルC3によってカバーされているが、かかるグループキャストされたメッセージを受信した際、まだ基地局BS3に接続されていない場合がある。
【0261】
また、グループキャストされたメッセージは、ユーザ機器UE1がセルC3によってカバーされ、基地局BS3に接続した時刻に送信されてもよい。そして、かかるグループキャストされたメッセージは、以下のような様々な基準に基づいてもよい。
ソースセルC3のビームB3の中心からのユーザ機器UE1の距離、又は
ユーザ機器UE1の基準信号受信電力のレベル、又は
地理的ゾーン。
【0262】
かかるメッセージは、基地局BS3によりステップS20において送信されるユニキャストされたメッセージとして、専用の方法でユーザ機器UE1に到達し得る。したがって、ユーザ機器UE1は、セルC3によってカバーされ、基地局BS3に接続され、この基地局は、ユーザ機器UE1のソース基地局BS3である。ソース基地局BS3によってユーザ機器UE1へと送信されたユニキャストされたメッセージは、以下の要素の1つ又は組み合わせを更に含んでもよい。
ソースセルC3におけるユーザ機器UE1のタイミングアドバンスTA1に関連するデータ、
時間間隔に関連するデータ、
ユーザ機器UE1がターゲット基地局BS6に信号を送信しない遅延に関連するデータ。かかる遅延は、例えば、ターゲット基地局BS6にアクセスする他のユーザ機器との送信干渉を避けるために、ユーザ機器UE1のサービス一時停止タイマーを指すことがある。
ユーザ機器UE1がターゲットセルC6へのハンドオーバーを行うまでの最大時間。ユーザ機器UE1がターゲットセルC6へのハンドオーバーを行うまでの最大時間によって、ネットワークは、接続性が失われる前に、ターゲットセルC6へのハンドオーバーを実行することにより、ユーザ機器UE1が実際にネットワークとの通信を図ることを保証することができる。
【0263】
ユニキャストメッセージに含まれる、かかる更なるデータは、ステップS20とは異なるステップS30において送信されてもよい。したがって、ソース基地局BS3は、一方では、例えば、ステップS100において得られた情報、第2のパラメータP2、及び任意選択の指示値を含む、グループキャストされた又はブロードキャストされたメッセージを、ステップS20において送信できる。ステップS20において送信されたかかるグループキャストされた又はブロードキャストされたメッセージは、ユーザ機器UE1がソース基地局BS3にまだ接続されていない時刻に送信できる。一方、ユーザ機器UE1がソース基地局BS3に接続されている時刻において、ソース基地局BS3は同様に、ユーザ機器UE1に固有とされるデータを含む専用メッセージを、ステップS30において送信することもできる。さらに、ユーザ機器UE1がソース基地局BS3に接続されている時刻において、ソース基地局BS3は、例えば、ハンドオーバーコマンドを参照する固有の専用メッセージをユーザ機器UE1へ送信してもよく、したがって、ステップS20とステップS30は統合される。
【0264】
この段階において、ユーザ機器UE1が、例えば、式(1)を計算することによってターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を決定可能とするデータを、ネットワーク(ソース基地局BS3)がユーザ機器UE1に提供し、かかる決定は、ソース基地局BS3によって送信されたメッセージの内容に依存する。ステップS20及びS30において(場合によっては、統合された方法で)ソース基地局によって送信されたかかるメッセージは、セルC3とC6との間のカバレッジが実際に変化する前に、ユーザ機器UE1に送信されており、これにより、ユーザ機器UE1は、ターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値の決定をトリガーするのに十分な時間を得る。
【0265】
ステップS40において、ソース基地局BS3は、ユーザ機器UE1がターゲット基地局BS6へのアクセス手順を開始する前に、ユーザ機器UE1のターゲットセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を受信する。かかる値は、(例えば、ユーザ機器UE1がソースセルC3によって依然としてカバーされている場合)ソース基地局BS3によってユーザ機器UE1から直接受信されてもよく、又は、(例えば、セル切り替え後にユーザ機器UE1が値を決定し、ユーザ機器UE1がソースセルC3によって、もはやカバーされていない場合)ターゲット基地局BS6によってユーザ機器UE1から受信されてもよい。これにより、ターゲット基地局BS6は、かかる値をソース基地局BS3に送信し得る。
【0266】
ターゲットセルC6におけるタイミングアドバンスとして使用される値を、ユーザ機器UE1が予め(即ち、ステップS50におけるハンドオーバーの前に)受信することにより、ネットワークは、ターゲットセルC6へのユーザ機器UE1のハンドオーバーを実行するために、合理的な量の無線リソースを割り当てることができ、これにより、既存のハンドオーバー手順と比較して、消費する無線リソースを少なくすることができる。
【0267】
ステップS50において、例えば、ハンドオーバー時刻THOに近い時間で、場合によっては、ユーザ機器UE1がサービス一時停止タイマー等の信号をターゲット基地局BS6に送信しない間の遅延を考慮に入れて、ネットワークは、セルC3からセルC6へのユーザ機器UE1のハンドオーバーを実行する。ステップS50において実行されるユーザ機器UE1のハンドオーバーは、ユーザ機器のセルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用され、且つステップS40においてネットワークによって受信される値を使用する。例えば、ハンドオーバー時刻THOに対応する時刻の前に、場合によっては、ユーザ機器UE1が、サービス一時停止タイマー等の信号をターゲット基地局BS6に送信しない間の遅延に関連するデータを考慮に入れて、ネットワークが、ユーザ機器UE1から、セルC6においてタイミングアドバンスTA2として使用される値を受信しない場合、ネットワークは、セルC3におけるユーザ機器UE1の最新の更新後のタイミングアドバンスTA1を使用して、ステップS50におけるユーザ機器UE1のハンドオーバーを実行するように計算されてもよい。
【0268】
これらの図は、衛星SAT1、SAT2がステアラブル衛星ビームB1’~B3’、B1~B6を備えている場合を示している。しかし、本開示は同様に、固定ビームを備える衛星にも適用される。かかる場合において、現セルと下流セルとの間の重複ゾーンだけでなく、ハンドオーバー条件も異なる場合があり、さらに、セルが地表上を漸進的に移動するにつれて、経時にわたり変化し得る。しかし、本方法に係るユーザ機器によるターゲットセルにおけるタイミングアドバンスとして使用される値の決定は、依然として関連性があり、様々なハンドオーバーシナリオにおいて、衛星通信ネットワーク内のUEのハンドオーバーを最適化することを可能にする。