(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】熱処理設備
(51)【国際特許分類】
F27B 9/39 20060101AFI20240712BHJP
F27D 3/06 20060101ALI20240712BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
F27B9/39
F27D3/06 B
F27D3/12 E
(21)【出願番号】P 2024020189
(22)【出願日】2024-02-14
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄太
(72)【発明者】
【氏名】吉金 隆宏
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085367(JP,A)
【文献】特開2020-085436(JP,A)
【文献】特開昭63-125821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00-3/18
F27B 9/00-9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口から出口まで延びる加熱室を有し、被焼成物が収容されたサヤを前記入口から前記出口まで前記加熱室内で移動させつつ、前記被焼成物を前記サヤとともに加熱する熱処理炉と、
前記被焼成物が収容された前記サヤから前記被焼成物を回収する回収装置と、
前記熱処理炉と前記回収装置とを接続し、前記出口から排出された前記被焼成物が収容された前記サヤを前記回収装置まで移動させる移動装置と、を備え、
前記回収装置は、前記サヤを挟持するクランプ機構と、
前記クランプ機構で挟持した前記サヤを上下逆にする反転機構と、を有する熱処理設備において、
前記サヤは、略水平に延びる底板と、前記底板と一体をなし、前記底板から上方に延びて前記底板とともに前記被焼成物を収容する収容空間を形成する側壁とからなり、
前記回収装置は、前記クランプ機構を作動させるクランプアクチュエータと、
前記反転機構を作動させる反転アクチュエータとを有し、
前記クランプ機構は、水平な第1軸心方向に延び、前記反転アクチュエータの作動によって前記第1軸心回りで回動する反転軸と、
前記反転軸の先端に固定され、上下方向に延びる反転部材と、
前記反転部材の一端部に固定されて前記第1軸心方向と平行に延び、前記サヤの一端部と当接する固定爪部をもつ一対の固定爪と、
前記反転部材の他端部に固定され、前記上下方向及び前記第1軸心方向と直交する第2軸心方向に延びる軸孔を有する一対の軸受部材と、
両前記軸孔内に摺動可能に設けられ、前記第2軸心方向に延びる回動軸と、
前記回動軸に固定され、前記回動軸の摺動によって前記固定爪に近づけば前記サヤの他端部と当接する可動爪部をもつ一対の可動爪と、
両前記可動爪部がそれぞれ前記固定爪部に近づくように前記可動爪を付勢する付勢力をもつコイルばねと、
両前記可動爪を接続する被押圧軸と、
前記クランプアクチュエータの作動によって前記付勢力に抗して前記被押圧軸を押圧して前記可動爪部を前記固定爪部から離隔する押圧片と、を有し、
前記被押圧軸及び前記押圧片の少なくとも一方は、相手材に対して耐熱樹脂製の中間材で接触することを特徴とする熱処理設備。
【請求項2】
前記押圧片は金属製であり、
前記被押圧軸は、金属製の被押圧軸本体と、前記被押圧軸に固定された前記中間材である被押圧部とからなる請求項1記載の熱処理設備。
【請求項3】
前記被押圧軸は金属製であり、
前記押圧片は、前記クランプアクチュエータの作動によって動作する金属製の押圧片本体と、前記押圧片本体に固定された前記中間材である押圧部とからなる請求項1記載の熱処理設備。
【請求項4】
前記回収装置は、前記サヤを内部に位置させ、前記クランプアクチュエータ及び前記反転アクチュエータを外部に位置させる隔壁を有している請求項1乃至3のいずれか1項記載の熱処理設備。
【請求項5】
前記押圧部は超高純度ポリイミド製である請求項
3記載の熱処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の熱処理設備が開示されている。この熱処理設備は、ローラーハースキルン(RHK)からなる熱処理炉と、解砕装置と、回収装置と、清掃装置と、充填装置と、移動装置とをそれぞれ2基ずつ備えている。
【0003】
熱処理炉は入口から出口まで延びる加熱室を有している。加熱室内は図示しない発熱体によって加熱されるようになっている。加熱室内では、複数のサヤが入口から出口まで搬送されるようになっている。サヤは、略水平に延びる底板と、底板と一体をなす側壁とからなる。側壁は、底板から上方に延びて底板とともに被焼成物を収容する収容空間を形成する。収容空間内に収容される被焼成物は、リチウムイオン電池の電極とされる粉体等である。熱処理炉は、被焼成物が収容されたサヤを入口から出口まで加熱室内で移動させつつ、被焼成物をサヤとともに加熱する。
【0004】
移動装置は、一方の熱処理炉、解砕装置、回収装置、清掃装置、充填装置及び他方の熱処理炉を順次接続している。移動装置は、一方の熱処理炉の出口から排出された被焼成物が収容されたサヤを解砕装置、回収装置、清掃装置、充填装置及び他方の熱処理炉まで移動させるようになっている。
【0005】
解砕装置は、サヤ内の加熱処理後の被焼成物を砕くようになっている。回収装置は、被焼成物が収容されたサヤを挟持し、サヤから被焼成物を回収するようになっている。清掃装置は、被焼成物を回収した後のサヤ内を清掃するようになっている。清掃後のサヤは、破損等によって再利用不能なものを除き、充填装置によって新たな被焼成物が充填され、再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の熱処理設備では、熱処理炉の出口から排出されたサヤ及びその内部の被焼成物を移動装置によって長い距離移動させ、サヤ及び被焼成物が常温程度まで冷えた後で回収装置によって被焼成物の回収を行っていた。このため、被焼成物の熱処理サイクルが長時間となり、生産効率が十分でない。また、この熱処理設備では、移動装置が長く、大型化が免れない。
【0008】
しかしながら、発明者らの確認によれば、回収装置によってサヤ及び被焼成物が高温の状態で被焼成物の回収を行おうとすれば、被焼成物の品質低下を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、被焼成物の品質低下を生じることなく、高い生産効率と小型化とを実現可能な熱処理設備を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして、回収装置によってサヤ及び被焼成物が高温の状態で被焼成物の回収を行った場合に被焼成物の品質低下が生じる原因が以下にあることを発見し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、回収装置は、サヤを挟持するクランプ機構と、クランプ機構で挟持したサヤを上下逆にする反転機構とを有している。また、回収装置は、クランプ機構を作動させるクランプアクチュエータと、反転機構を作動させる反転アクチュエータとを有し、クランプ機構は、両可動爪を接続する被押圧軸と、可動爪部を固定爪部から離隔する押圧片とを有している。押圧片は、クランプアクチュエータの作動によってコイルばねの付勢力に抗して被押圧軸を押圧する。被押圧軸及び押圧片は一般的にはともに鋼材等の金属製である。金属製の部材同士が高温下で干渉すれば、常温下で干渉する場合よりも、より摩耗を生じやすい。このため、その摩耗粉が金属異物となって被焼成物に混入し、被焼成物の品質低下が生じるのである。例えば、被焼成物がリチウムイオン電池の電極等の電子部品を構成する場合には、この問題が顕著となる。
【0012】
本発明の熱処理設備は、入口から出口まで延びる加熱室を有し、被焼成物が収容されたサヤを前記入口から前記出口まで前記加熱室内で移動させつつ、前記被焼成物を前記サヤとともに加熱する熱処理炉と、
前記被焼成物が収容された前記サヤから前記被焼成物を回収する回収装置と、
前記熱処理炉と前記回収装置とを接続し、前記出口から排出された前記被焼成物が収容された前記サヤを前記回収装置まで移動させる移動装置と、を備え、
前記回収装置は、前記サヤを挟持するクランプ機構と、
前記クランプ機構で挟持した前記サヤを上下逆にする反転機構と、を有する熱処理設備において、
前記サヤは、略水平に延びる底板と、前記底板と一体をなし、前記底板から上方に延びて前記底板とともに前記被焼成物を収容する収容空間を形成する側壁とからなり、
前記回収装置は、前記クランプ機構を作動させるクランプアクチュエータと、
前記反転機構を作動させる反転アクチュエータとを有し、
前記クランプ機構は、水平な第1軸心方向に延び、前記反転アクチュエータの作動によって前記第1軸心回りで回動する反転軸と、
前記反転軸の先端に固定され、上下方向に延びる反転部材と、
前記反転部材の一端部に固定されて前記第1軸心方向と平行に延び、前記サヤの一端部と当接する固定爪部をもつ一対の固定爪と、
前記反転部材の他端部に固定され、前記上下方向及び前記第1軸心方向と直交する第2軸心方向に延びる軸孔を有する一対の軸受部材と、
両前記軸孔内に摺動可能に設けられ、前記第2軸心方向に延びる回動軸と、
前記回動軸に固定され、前記回動軸の摺動によって前記固定爪に近づけば前記サヤの他端部と当接する可動爪部をもつ一対の可動爪と、
両前記可動爪部がそれぞれ前記固定爪部に近づくように前記可動爪を付勢する付勢力をもつコイルばねと、
両前記可動爪を接続する被押圧軸と、
前記クランプアクチュエータの作動によって前記付勢力に抗して前記被押圧軸を押圧して前記可動爪部を前記固定爪部から離隔する押圧片と、を有し、
前記被押圧軸及び前記押圧片の少なくとも一方は、相手材に対して耐熱樹脂製の中間材で接触することを特徴とする。
【0013】
本発明の熱処理設備では、固定爪、軸受部材及び可動爪が対をなしている。そして、コイルばねの付勢力によって固定爪と可動爪とでサヤを挟持した後、反転アクチュエータの作動によって反転軸を反転部材とともに第1軸心回りで回動させて上下を逆にし、サヤ内の被焼成物を落下させて回収することができる。一方、反転アクチュエータの反作動によって反転軸を反転部材とともに第1軸心回りで逆方向に回動させて上下を戻した後、押圧片がクランプアクチュエータの作動によってコイルばねの付勢力に抗して被押圧軸を押圧すれば、両可動爪部がそれぞれ固定爪部から離隔する。これによって固定爪と可動爪とによるサヤの挟持を外し、サヤの再利用等を実現できる。
【0014】
ここで、被押圧軸及び押圧片の少なくとも一方は、相手材に対して中間材で接触する。すなわち、被押圧軸が中間材で押圧片と接触するか、押圧片が中間材で被押圧軸と接触するか、被押圧軸及び押圧片が中間材で相手材と接触する。この中間材は耐熱樹脂製である。このため、押圧片が被押圧軸を高温下で押圧しても、摩耗粉を生じ難い。このため、金属製の摩耗粉が金属異物となって被焼成物に混入し難く、被焼成物が品質低下を生じ難い。
【0015】
また、この熱処理設備では、上記のように、金属製の部材同士が高温下で干渉したりしないことから、熱処理炉と回収装置とを近づけることが可能である。このため、熱処理設備の生産効率と、小型化とを実現できる。
【0016】
したがって、本発明の熱処理設備によれば、被焼成物の品質低下を生じることなく、高い生産効率と小型化とを実現できる。
【0017】
押圧片が金属製である場合、被押圧軸は、金属製の被押圧軸本体と、被押圧軸に固定された中間材である被押圧部とからなり得る。この場合、被押圧部が中間材として機能する。
【0018】
また、被押圧軸が金属製である場合、押圧片は、クランプアクチュエータの作動によって動作する金属製の押圧片本体と、押圧片本体に固定された中間材である押圧部とからなり得る。この場合、押圧部が中間材として機能する。
【0019】
回収装置は、サヤを内部に位置させ、クランプアクチュエータ及び反転アクチュエータを外部に位置させる隔壁を有していることが好ましい。
【0020】
この場合、隔壁によって被焼成物に異物が混入することを防止できる。この一方、隔壁内はより高温に維持され易く、本発明の作用効果が顕著になる。また、クランプアクチュエータ及び反転アクチュエータが隔壁の外部に位置されるため、クランプアクチュエータ及び反転アクチュエータを高温から隔離し、これらの故障を抑制できる。
【0021】
発明者らの確認によれば、耐熱樹脂としては、超高純度ポリイミド、PEEK(Poly Ether Ether Ketone(ポリエーテルエーテルケトン))等を採用できる。発明者らの試験によれば、耐熱樹脂として、超高純度ポリイミドを採用することが最も好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の熱処理設備によれば、被焼成物の品質低下を生じることなく、高い生産効率と小型化とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例1の熱処理設備の模式の平面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の熱処理設備に係り、移動装置及び回収装置の平面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の熱処理設備における回収装置の一部を示す一部断面の平面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の熱処理設備における回収装置の一部を示す一部断面の正面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の熱処理設備における回収装置の要部斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例1の熱処理設備に係り、回収装置の作動を示す一部断面の正面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の熱処理設備に係り、回収装置の作動を示す一部断面の正面図である。
【
図8】
図8は、実施例1の熱処理設備に係り、回収装置の作動を示す一部断面の正面図である。
【
図9】
図9は、実施例1の熱処理設備における回収装置の押圧片等を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施例2の熱処理設備における回収装置の押圧部材を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0025】
実施例1の熱処理設備は、
図1に示すように、それぞれ2基ずつの熱処理炉1A、1Bと、解砕装置3A、3Bと、回収装置5A、5Bと、清掃装置7A、7Bと、充填装置9A、9Bと、移動装置11A、11Bとを備えている。
【0026】
熱処理炉1A、1Bは同じ大きさのRHKである。熱処理炉1A、1Bは入口13aから出口13bまで直線状に長く延びる加熱室13cを有している。熱処理炉1Bの入口13aは熱処理炉1Aの出口13b側に位置し、熱処理炉1Bの出口13bは熱処理炉1Aの入口13a側に位置している。両加熱室13c内は図示しない発熱体によって所定の温度で加熱されるようになっている。また、両加熱室13b内では、複数のセラミック製のサヤ15が列をなして入口13aから出口13bまで搬送されるようになっている。
【0027】
サヤ15は、
図5に示すように、略水平に延びる底板15aと、底板15aと一体をなす側壁15bとからなる。底板15aは略水平に延びる正方形の板状であり、側壁15bは平面視で四角形の筒体である。側壁15bは、底板15aの周縁から上方に延びて底板15aとともに被焼成物Wを収容する収容空間Sを形成している。収容空間S内に収容される被焼成物Wは、リチウムイオン電池の電極とされる粉体である。
図1に示すように、熱処理炉1A、1Bは、被焼成物Wが収容されたサヤ15を入口13aから出口13bまで加熱室13c内で移動させつつ、被焼成物Wをサヤ15とともに加熱する。
【0028】
移動装置11A、11Bは、
図2に示すように、図示しないモータによって自転する複数個のローラ17等によって構成されている。
図1に示すように、移動装置11Aは、一方の熱処理炉1A、解砕装置3A、回収装置5A、清掃装置7A、充填装置9A及び他方の熱処理炉1Bを順次接続し、熱処理炉1Aの出口13bから排出された被焼成物Wが収容されたサヤ15を解砕装置3A、回収装置5A、清掃装置7A、充填装置9A及び他方の熱処理炉1Bまで移動させるようになっている。
【0029】
移動装置11Bは、他方の熱処理炉1B、解砕装置3B、回収装置5B、清掃装置7B、充填装置9B及び一方の熱処理炉1Aを順次接続し、熱処理炉1Bの出口13bから排出された被焼成物Wが収容されたサヤ15を解砕装置3B、回収装置5B、清掃装置7B、充填装置9B及び一方の熱処理炉1Aまで移動させるようになっている。
【0030】
移動装置11A、11Bでは、複数のサヤ15が列をなして熱処理炉1A、1Bの出口13bから排出されるが、一つずつのサヤ15が解砕装置3A、3B、回収装置5A、5B、清掃装置7A、7B及び充填装置9A、9Bに搬送された後、再び複数のサヤ15が列をなして熱処理炉1A、1Bの入口13aから搬入されるようになっている。
【0031】
解砕装置3A、3Bは、各サヤ15内の加熱処理後の被焼成物Wを砕くようになっている。回収装置5A、5Bは、各サヤ15を挟持し、各サヤ15から被焼成物Wを回収するようになっている。清掃装置7A、7Bは、被焼成物Wを回収した後の各サヤ15内を清掃するようになっている。清掃後の各サヤ15は、破損等によって再利用不能なものを除き、充填装置9A、9Bによって新たな被焼成物Wが充填され、再利用される。
【0032】
図2~4に示すように、回収装置5A、5Bは隔壁21を有している。隔壁21は上下に延びる4つの側板21a~21dと、側板21a~21dの上端を接続する天板21eとを有している。隔壁21の下端は狭められており、その下にはホッパに接続する開口21fが形成されている。
【0033】
図2に示すように、移動装置11A、11Bは、自己の上を移動するサヤ15が回収装置5A、5Bの前まで移動すると、そこでサヤ15を一旦停止させ、そのサヤ15をエアシリンダ19によって隔壁21内に搬送するようになっている。隔壁21の側板21bには、サヤ15が搬送される時に開き、サヤ15が搬送されれば閉じる図示しない開閉扉が設けられている。隔壁21及び開閉扉によって被焼成物Wに異物が混入することを防止している。
【0034】
隔壁21の背後には上下に延びるフレーム23が設けられており、フレーム23には反転アクチュエータ25が固定されている。反転アクチュエータ25は回転軸を水平にして突出させており、回転軸の一端には継手27aを介して反転駆動軸29aが固定され、回転軸の他端には継手27bを介して反転駆動軸29bが固定されている。反転駆動軸29a、29bはフレーム23に回転可能に支持されている。
【0035】
隔壁21の側板21aには支持装置30aによって反転軸31aが水平に設けられており、隔壁21の側板21cにも支持装置30bによって反転軸31bが水平に設けられている。反転軸31a、31bは第1軸心X1方向に延びている。側板21aと反転軸31aとの間及び側板21cと反転軸31bとの間には隙間が設けられており、これらは摺動関係を生じないようになっている。反転駆動軸29aと反転軸31aとの間には伝動ベルト33aが巻き掛けられ、反転駆動軸29bと反転軸31bとの間には伝動ベルト33bが巻き掛けられている。反転アクチュエータ25、フレーム23、継手27a、27b、反転駆動軸19a、29b、支持装置30a、30b及び伝動ベルト33a、33bは反転機構Tを構成している。フレーム23、継手27a、27b、反転駆動軸19a、29b、支持装置30a、30b及び伝動ベルト33a、33bは、反転アクチュエータ25の作動によって反転軸31a、31bを第1軸心X1回りで回動させる回動部T1を構成している。
【0036】
図3及び
図4に示すように、隔壁21内に位置する反転軸31aの先端には上下に延びる薄い板状の反転部材35aが固定されている。隔壁21内に位置する反転軸31bの先端にも上下に延びる薄い板状の反転部材35bが固定されている。
【0037】
図5に示すように、反転部材35aの下部の手前側には固定爪37aが固定され、反転部材35aの下部の奥側にも固定爪37bが固定されている。固定爪37a、37bは対をなしている。
図3に示すように、反転部材35bの下部の手前側にも固定爪37cが固定され、反転部材35bの下部の奥側にも固定爪37dが固定されている。固定爪37c、37dも対をなしている。
【0038】
固定爪37a、37bは、
図6~8に示すように、隔壁21内に向かって水平方向に延びる鋼製の固定爪本体39と、固定爪本体39の先端に固定されたセラミック製の固定爪部41とからなる。セラミックはアルミナである。固定爪部41はサヤ15の底板15aの底面と当接する。固定爪37c、37dも同様である。
【0039】
図5に示すように、反転部材35aの上部の手前側には軸受部材43aが固定され、反転部材35aの上部の奥側にも軸受部材43bが固定されている。軸受部材43a、43bは対をなしている。
図3に示すように、反転部材35bの上部の手前側にも軸受部材43cが固定され、反転部材35bの上部の奥側にも軸受部材43dが固定されている。軸受部材43c、43dも対をなしている。
【0040】
回動軸47a、47bは鋼製である。一方、軸受部材43a~43dは、耐熱樹脂製、より詳細にはビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)をベースとした超高純度ポリイミド製(新日産ダイヤモンド工業(株)製「セプラ(登録商標)SA201」)である。
【0041】
軸受部材43a~43dには、反転部材35aや反転部材35bに図示しないボルトによって固定されるための固定穴431、432が貫設されている。また、軸受部材43a~43dには、上下方向及び第1軸心X1方向と直交する第2軸心Y1方向に延びる軸孔433が貫設されている。
【0042】
図5に示すように、反転部材35aには、軸受部材43aの奥側と、軸受部材43bの手前側とにおいて、上下に延びる案内穴351(
図5では、軸受部材43bの手前側のみを図示)が貫設されている。両案内穴351には可動爪45a、45bが挿入されている。可動爪45a、45bは、対をなしており、第2軸心Y1方向に延びる回動軸47aによって連結されている。回動軸47aは軸受部材43a、43bの両軸孔433内で摺動回転する。
【0043】
図3に示すように、反転部材35bにも、軸受部材43cの奥側と、軸受部材43dの手前側とにおいて、上下に延びる案内穴351が貫設されている。両案内穴351には可動爪45c、45dが挿入されている。可動爪45c、45dは、対をなしており、第2軸心Y1方向に延びる回動軸47bによって連結されている。回動軸47bは軸受部材43c、43dの両軸孔433内に摺動回転する。
【0044】
図5に示すように、可動爪45a、45bの後端は第2軸心Y2方向に延びる被押圧軸本体49aによって連結されている。
図4に示すように、被押圧軸本体49aの中間位置にはセットカラー51aが固定されている。被押圧軸本体49a及びセットカラー51aが被押圧軸に相当する。
図3に示すように、可動爪45c、45dの後端も第2軸心Y2方向に延びる被押圧軸本体49bによって連結されている。
図4に示すように、被押圧軸本体49bの中間位置にもセットカラー51bが固定されている。被押圧軸本体49b及びセットカラー51bが被押圧軸に相当する。第2軸心Y2は第2軸心Y1と平行である。
【0045】
可動爪45a、45bは、
図6~8に示すように、隔壁21内に向かって水平方向に延びる鋼製の可動爪本体40と、可動爪本体40の先端に固定されたセラミック製の可動爪部42とからなる。セラミックはアルミナである。可動爪部42はサヤ15の側壁15bの上面と当接する。可動爪45c、45dも同様である。
【0046】
図5に示すように、固定爪37aの後端と可動爪45aの後端との間にはじゃばら53aに収納された状態でコイルばね55aが設けられている。固定爪37bの後端と可動爪45bの後端との間にもじゃばら53bに収納された状態でコイルばね55bが設けられている。
図3及び
図4に示すように、固定爪37cの後端と可動爪45cの後端との間にもじゃばら53cに収納された状態でコイルばね55cが設けられ、固定爪37dの後端と可動爪45dの後端との間にもじゃばら53dに収納された状態でコイルばね55dが設けられている。
【0047】
隔壁21内には第2軸心Y3方向に延びる開放軸57a、57bが第2軸心Y3周りに揺動可能に設けられている。第2軸心Y3は第2軸心Y1、Y2と平行である。開放軸57aは被押圧軸本体49aと側板21aとの間に配置されており、開放軸57bは被押圧軸本体49bと側板21cとの間に配置されている。
【0048】
開放軸57aの中間位置には押圧片59aが固定されており、開放軸57bの中間位置にも押圧片59bが固定されている。
図3に示すように、側壁21dの外面には、開放軸57aを揺動させるクランプアクチュエータ61aと、開放軸57bを揺動させるクランプアクチュエータ61bとが設けられている。
【0049】
図9に示すように、押圧片59a、59bは鋼製である。一方、セットカラー51a、51bも、耐熱樹脂製、より詳細にはビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)をベースとした超高純度ポリイミド製(新日産ダイヤモンド工業(株)製「セプラ(登録商標)SA201」)である。セットカラー51a、51bが中間材に相当する。
【0050】
反転軸31a、31b、反転部材35a、35b、固定爪37a~37d、軸受部材43a~43d、回動軸47a、47b、可動爪45a~45d、コイルばね55a~55d、被押圧軸本体49a、セットカラー51a、51b、開放軸57a、57b及び押圧片59a、59bがクランプ機構Cを構成している。
【0051】
回収装置5A、5Bにおいて、隔壁21内に被焼成物Wが収容されたサヤ15が搬送されれば、クランプアクチュエータ61aが作動する。このため、
図6に示すように、開放軸57aが第2軸心Y3周りに回動し、押圧片59aがセットカラー51aを介して被押圧軸本体49aを押圧する。このため、可動爪45a、45bがコイルばね55a、55bの付勢力に抗して可動爪部42を開く。クランプアクチュエータ61b、開放軸57b、押圧片59b、セットカラー51b、被押圧軸本体49b、可動爪45c、45d、コイルばね55c、55d及び可動爪部42も同様である。
【0052】
この後、クランプアクチュエータ61aが反作動し、
図7に示すように、開放軸57aが第2軸心Y3周りに逆方向に回動し、押圧片59aがセットカラー51aから離隔し、被押圧軸本体49aを押圧しなくなる。このため、可動爪45a、45bがコイルばね55a、55bの付勢力に屈して可動爪部42を閉じる。クランプアクチュエータ61b、開放軸57b、押圧片59b、セットカラー51b、被押圧軸本体49b、可動爪45c、45d、コイルばね55c、55d及び可動爪部42も同様である。このため、回収装置5A、5Bは、被焼成物Wが収容されたサヤ15をサヤ15の4隅で挟持する。
【0053】
次いで、反転機構Tにおいて、反転アクチュエータ25が作動して反転駆動軸29a、29bが回動し、伝動ベルト33a、33bによって反転軸31a、31bが第1軸心X1周りに回動する。このため、
図8に示すように、被焼成物Wが収容されたサヤ15は、反転部材35a等とともに上下が逆になり、サヤ15内の被焼成物Wをホッパ内に落下させて回収することができる。
【0054】
この後、反転アクチュエータ25が反作動して反転駆動軸29a、29bが逆方向に回動し、伝動ベルト33a、33bによって反転軸31a、31bが第1軸心X1周りに逆方向に回動する。このため、被焼成物Wを落下させたサヤ15は、反転部材35a等とともに上下が元に戻る。
【0055】
次いで、クランプアクチュエータ61a、61bが作動し、開放軸57a、57bが第2軸心Y3周りに回動し、押圧片59a、59bがセットカラー51a、51bを介して被押圧軸本体49aを押圧する。このため、可動爪45a~45dがコイルばね55a~55dの付勢力に抗して可動爪部42を開く。クランプ機構Cによるサヤ15の挟持が外れれば、
図2に示すように、そのサヤ15はエアシリンダ19によって隔壁21から搬出され、移動装置11A、11Bに戻される。
【0056】
この後、清掃装置7A、7Bがサヤ15内を清掃する。清掃後のサヤ15は、破損等によって再利用不能なものを除き、充填装置9A、9Bによって新たな被焼成物Wが充填され、再利用される。
【0057】
これらの間、この熱処理設備では、回収装置5A、5Bがクランプアクチュエータ61A、61Bと、反転アクチュエータ25と、隔壁21とを有し、隔壁21は、サヤ15を内部に位置させ、クランプアクチュエータ61A、61B及び反転アクチュエータ25を外部に位置させている。このため、隔壁21によって被焼成物Wに異物が混入することを防止できる。また、クランプアクチュエータ61A、61B及び反転アクチュエータ25が隔壁21の外部に位置されるため、クランプアクチュエータ61A、61B及び反転アクチュエータ25を高温から隔離し、これらの故障を抑制できる。
【0058】
しかしながら、隔壁21内はより高温に維持され易い。実施例1では、隔壁21内は約400°Cであった。そして、セットカラー51a、51bと押圧片59a、59bとは互いに摺動及び干渉関係となる。また、軸受部材43a~43dと回動軸47a、47bとは互いに摺動関係となる。
【0059】
この点、この熱処理設備では、押圧片59a、59bが鋼製であり、セットカラー51a、51bが耐熱樹脂製であるため、セットカラー51a、51bと押圧片59a、59bとが高温下で摺動及び干渉しても、摩耗粉を生じ難い。このため、金属製の摩耗粉が金属異物となって被焼成物Wに混入し難く、被焼成物Wが品質低下を生じ難い。
【0060】
また、回動軸47a、47bが鋼製であり、軸受部材43a~43dが耐熱樹脂製であるため、軸受部材43a~43dと回動軸47a、47bとが高温下で摺動しても、摩耗粉を生じ難い。このため、金属製の摩耗粉が金属異物となって被焼成物Wに混入し難く、被焼成物Wが品質低下を生じ難い。
【0061】
さらに、この熱処理設備では、固定爪37a~37dが金属製の固定爪本体39とセラミック製の固定爪部41とからなり、可動爪45a~45dが金属製の可動爪本体40とセラミック製の可動爪部42とからなる。このため、サヤ15とはセラミック製の固定爪部41及び可動爪部42が干渉するだけである。このため、金属製の固定爪部及び可動爪部がサヤと干渉する場合と比べ、金属異物を生じ難く、被焼成物Wが品質低下を生じ難い。
【0062】
したがって、実施例1の熱処理設備によれば、被焼成物Wの品質低下を生じることなく、高い生産効率と小型化とを実現できる。
【0063】
また、この熱処理設備では、上記のように、金属製の部材同士が高温下で摺動したり、干渉したりしないことから、熱処理炉1A、1Bと回収装置5A、5Bとを近づけることが可能である。このため、熱処理設備の生産効率と、小型化とを実現できる。特に、実施例1の熱処理設備は2基ずつの熱処理炉1A、1B及び回収装置5A、5Bを備えているため、熱処理炉1A、1Bと回収装置5A、5Bとを近づけることによる生産効率及び小型化の効果は顕著である。
【0064】
また、この熱処理設備では、軸受部材43a~43dが耐熱樹脂製であり、回動軸47a、47bが金属製であるため、耐久性が優れている。
【実施例2】
【0065】
実施例2の熱処理設備は、実施例1のセットカラー51a、51bに代え、
図10に示す2つの押圧部44を採用している。押圧部44は耐熱樹脂製、より詳細にはビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)をベースとした超高純度ポリイミド製(新日産ダイヤモンド工業(株)製「セプラ(登録商標)SA201」)である。
【0066】
押圧部44には鋼製の被押圧軸49a、49bと当接する当接面44aが形成されている。また、押圧部44にはボルト穴44b、44cが形成されており、押圧部44はボルト穴44b、44cに挿通されるボルト46、48によって鋼製の押圧片本体59aに固定されるようになっている。押圧片本体59a及び押圧部44が押圧片に相当する。
【0067】
この熱処理設備における他の構成は実施例1と同様である。この熱処理設備では、押圧部44が中間材に相当する。被押圧軸49a、49bが鋼製であり、押圧部44が耐熱樹脂製であるため、押圧部44と被押圧軸49a、49bとが高温下で摺動及び干渉しても、摩耗粉を生じ難い。このため、金属製の摩耗粉が金属異物となって被焼成物Wに混入し難く、被焼成物Wが品質低下を生じ難い。
【0068】
また、この熱処理設備では、押圧片全体を耐熱樹脂製にせず、押圧部44だけを耐熱樹脂製にしているため、高い耐久性を発揮する。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0069】
(試験)
発明者らは、本発明の熱処理設備にどの耐熱樹脂を用いることが好ましいか、選定を行った。耐熱樹脂としては、MCナイロン(登録商標)(モノマーキャストナイロン)、PEEK及びセプラ(登録商標)SA201」を用意した。これらの耐熱樹脂の文献上における耐熱温度、引張強度、耐摩耗性及び延性(伸び率)は以下の表1記載のとおりである。
【0070】
【0071】
表1より、耐熱樹脂としては超高純度ポリイミドやPEEKが好ましく、特にセプラ(登録商標)SA201」を採用することが最も好ましいことがわかる。発明者らが実機で行った種々の試験においても、耐熱樹脂としてセプラ(登録商標)SA201」を採用することが最も好ましかった。
【0072】
以上において、本発明を実施例1、2及び試験に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2及び試験に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0073】
例えば、クランプ機構が対をなす固定爪、軸受部材及び可動爪を有しておれば、種々のクランプ機構の回収装置を備えた熱処理設備において、本発明の作用効果を享受し得る。
【0074】
また、実施例1、2では、固定爪部41がサヤ15の底板15aの底面と当接し、可動爪部42がサヤ15の側壁15bの上面と当接してサヤ15を挟持したが、固定爪部41がサヤ15の側壁15bの一端と当接し、可動爪部42がサヤ15の側壁15bの他端と当接してサヤ15を挟持してもよい。
【0075】
さらに、実施例1、2では、被焼成物Wをリチウムイオン電池の電極とされる粉末としたが、本発明では被焼成物はこれに限定されない。被焼成物Wがリチウムイオン電池の電極等、電子部品を構成するものであればより顕著な効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、高機能部品、電子部品等の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
13a…入口
13b…出口
13c…加熱室
W…被焼成物
15…サヤ
1A、1B…熱処理炉
5A、5B…回収装置
11A、11B…移動装置
C…クランプ機構
T…反転機構
15a…底板
S…収容空間
15b…側壁
61a、61b…クランプアクチュエータ
25…反転アクチュエータ
X1…第1軸心
31a、31b…反転軸
35a、35b…反転部材
41…固定爪部
37a~37d…固定爪
Y1…第2軸心
433…軸孔
43a~43d…軸受部材
47a、47b…回動軸
42…可動爪部
45a~45d…可動爪
55a~55d…コイルばね
49a、49b…被押圧軸、被押圧軸本体
59a…押圧片、押圧片本体
21…隔壁
【要約】
【課題】被焼成物の品質低下を生じることなく、高い生産効率と小型化とを実現可能な熱処理設備を提供する。
【解決手段】本発明の熱処理設備は、熱処理炉1A、1Bと、回収装置5A、5Bと、移動装置11A、11Bとを備えている。回収装置5A、5Bはクランプ機構Cを有する。クランプ機構Cは、固定爪37a~37bと、軸受部材43a~43dと、可動爪45a~45dと、被押圧軸49a、49bと、押圧片59a、59bとを有する。被押圧軸49a、49b及び押圧片59a、59bの少なくとも一方は、相手材に対して耐熱樹脂製の中間材51a、51b、44で接触する。
【選択図】
図9