(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】エレクトロルミネッセンスデバイスのための無機配位子を有するナノ構造
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20240716BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20240716BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20240716BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20240716BHJP
C01B 25/08 20060101ALI20240716BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240716BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240716BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20240716BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C09K11/70
C09K11/88
C09K11/56
C09K11/08 A
C01B25/08 A ZNM
H05B33/14 Z
B82Y40/00
B82Y20/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020046304
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-03-17
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】イッペン,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】カーリー,ジョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チェンダー,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン,ディラン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ニューメイヤー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】マ,ルイシン
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0083969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0220844(US,A1)
【文献】国際公開第2016/186251(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0335187(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0250322(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106701059(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0315600(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0183511(US,A1)
【文献】特表2018-524820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
G02B 5/20-5/28
H05B 33/00-45/60
H10K 50/00-99/00
C01B 25/00-25/46
H01L 33/00-33/64
B82Y 5/00-99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造組成物であって、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と、
(b)前記ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子
と、
を含み、
前記フッ化物含有配位子は、フルオロジンケートおよびジクロロフルオロジンケートのうちの少なくとも1つを含み、
前記ナノ構造は、InPを含むコアと、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルと、を含み、
前記ナノ構造組成物は、600nm~650nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示し、かつ、70%~90%のフォトルミネッセンス量子収率を示す、
ナノ構造組成物。
【請求項2】
前記フッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと、金属イオンを含むカチオンとを含む、
請求項1に記載のナノ構造組成物。
【請求項3】
前記フッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと、テトラアルキルアンモニウム
を含むカチオンとを含む、
請求項1または2に記載のナノ構造組成物。
【請求項4】
前記フッ化物含有配位子は、テトラフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウム又はジクロロジフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウムである、
請求項1~3のいずれか一項に記載のナノ構造組成物。
【請求項5】
ナノ構造組成物であって、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と、
(b)前記ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子と、
を含み、
前記フッ化物含有配位子は、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)を含み、
前記ナノ構造は、InPを含むコアと、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルと、を含み、
前記ナノ構造組成物は、600nm~650nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示し、かつ、70%~90%のフォトルミネッセンス量子収率を示す、
ナノ構造組成物。
【請求項6】
前記ナノ構造組成物に結合された前記フッ化物含有配位
子中のフッ素原子の、前記ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、0.32である、
請求項1
~5のいずれか一項に記載のナノ構造組成物。
【請求項7】
界面活性剤をさらに含む、
請求項1
~6のいずれか一項に記載のナノ構造組成物。
【請求項8】
ナノ構造組成物を製造する方法であって、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団を提供することと、
(b)少なくとも1つのフッ化物含有配位子を(a)の前記ナノ構造と混合するこ
と、
を行って、ナノ構造組成物を製造することと
を含み、
前記フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、ジクロロフルオロジンケート、およびフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)からなる群から選択されるいずれか一種以上を含み、
前記ナノ構造は、InPを含むコアと、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルと、を含み、
前記ナノ構造組成物は、
600nm~650nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示し、かつ、70%~90%のフォトルミネッセンス量子収率を示す、
方法。
【請求項9】
ナノ構造の少なくとも1つの集団を含む膜であって、
前記ナノ構造は、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団であって、前記ナノ構造は、
InPを含むコア
と、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルと、を含む、ナノ構造の少なくとも1つの集団と、
(b)前記ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子であって、フルオロジンケート、
ジクロロフルオロジンケート、およびフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)からなる群から選択される、少なくとも1つのフッ化物含有配位子
と、
を含み、
前記ナノ構造の集団は、
600nm~650nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示し、かつ、70%~90%のフォトルミネッセンス量子収率を示す、
膜。
【請求項10】
請求項
9に記載の膜を含む成形物品。
【請求項11】
エレクトロルミネッセンスデバイスである、請求項
10に記載の成形物品。
【請求項12】
前記エレクトロルミネッセンスデバイスは、6時間~11時間後に初期輝度の50%に到達する、請求項
11に記載の成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、ナノテクノロジーの分野に関する。特に、本発明は、エレクトロルミネッセンスデバイスのための無機配位子を有する非常に安定なナノ構造に関し、特にナノ構造の少なくとも1つの集団と;ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子とを含むナノ構造組成物であって、フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、ナノ構造組成物に関する。本発明は、ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンを含むナノ構造の少なくとも1つの集団を含む非常に安定なナノ構造にも関する。本発明は、そのようなナノ構造を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 半導体ナノ構造は、種々の電子デバイス及び光学デバイスに組み込むことができる。このようなナノ構造の電気的性質及び光学的性質は、例えば、それらの組成、形状及びサイズによって変動する。例えば、半導体ナノ構造のサイズ調節可能な性質は、エレクトロルミネッセンスデバイス、レーザー及び生物医学的標識などの用途で高い関心が持たれている。エレクトロルミネッセンスデバイス用途には高発光性ナノ構造が特に望ましい。
【0003】
[0003] エレクトロルミネッセンスデバイス中のナノ構造は、動作下で比較的高い電圧(例えば、典型的な寿命試験における赤色ナノ構造の場合には約4V)にさらされ、これによって不可逆的電気化学反応が誘発されることがある。有機配位子は、電気化学的酸化が起こりやすい場合がある。例えば、チオレートは、酸化されてチイルラジカル又はジスルフィドになり得る。同様に、カルボキシレートは、不可逆的に酸化されて二酸化炭素になり得る。これらの配位子が減少することでルミネッセンスが低下し、したがってデバイスが劣化する。したがって、広い電気化学窓を有するか又は可逆的な電気化学を示す配位子を有するナノ構造を不動態化することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本発明は、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と;(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子;又は(b’)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンとを含むナノ構造組成物を提供する。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される。
【0005】
[0005] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む。
【0006】
[0006] 幾つかの実施形態では、コアは、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si3N4、Ge3N4、Al2O3、Al2OC又はそれらの組合せを含む。
【0007】
[0007] 幾つかの実施形態では、コアは、InPを含む。
【0008】
[0008] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、2つのシェルを含む。
【0009】
[0009] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、CdS、CdSe、CdO、CdTe、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgTe、GaAs、GaSb、GaN、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InSb、InN、AlAs、AlN、AlSb、AlS、PbS、PbO、PbSe、PbTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、Ge、Si又はそれらの合金を含む。
【0010】
[0010] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む。
【0011】
[0011] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSを含む。
【0012】
[0012] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルとを含む。
【0013】
[0013] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと、金属イオンを含むカチオンとを含む。幾つかの実施形態では、カチオンは、カリウムイオンを含む。
【0014】
[0014] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと、テトラアルキルアンモニウム、アルキルホスホニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム及びピリジニウムからなる群から選択されるカチオンとを含む。
【0015】
[0015] 幾つかの実施形態では、カチオンは、テトラアルキルアンモニウムであり、且つジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。
【0016】
[0016] 幾つかの実施形態では、カチオンは、アルキルホスホニウムであり、且つテトラフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、メチルトリフェノキシホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、オクチルトリブチルホスホニウム、テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム及びテトラメチルホスホニウムからなる群から選択される。
【0017】
[0017] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子又はフッ化物アニオン中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.1~約0.5である。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子又はフッ化物アニオン中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.32である。
【0018】
[0018] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、溶媒をさらに含む。
【0019】
[0019] 幾つかの実施形態では、溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、クロロホルム及びN-メチルホルムアミドからなる群から選択される。
【0020】
[0020] 幾つかの実施形態では、溶媒は、非極性溶媒である。
【0021】
[0021] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、界面活性剤をさらに含む。
【0022】
[0022] 幾つかの実施形態では、界面活性剤は、酢酸テトラメチルアンモニウム、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、臭化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、臭化ジテトラデシルジメチルアンモニウム、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム、臭化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ジオクチルジメチルアンモニウム、臭化ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化オレイルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化フェニルエチルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化ジイソプロピルジメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化ジメチルジフェニルホスホニウム、臭化メチルトリフェノキシホスホニウム、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、臭化オクチルトリブチルホスホニウム、臭化テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、臭化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、臭化テトラオクチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラメチルホスホニウム、臭化ドデシルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ジテトラデシルジメチルアンモニウム、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化オレイルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化フェニルエチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化ジイソプロピルジメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、塩化ジメチルジフェニルホスホニウム、塩化メチルトリフェノキシホスホニウム、塩化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、塩化オクチルトリブチルホスホニウム、塩化テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、塩化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、塩化テトラオクチルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラメチルホスホニウム及び塩化ドデシルアンモニウムからなる群から選択される。
【0023】
[0023] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約60%~約99%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約70%~約90%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。
【0024】
[0024] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約600nm~約650nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。
【0025】
[0025] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約510nm~約560nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。
【0026】
[0026] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約420nm~約470nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。
【0027】
[0027] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロジンケートの塩である。
【0028】
[0028] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウム又はジクロロジフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウムである。
【0029】
[0029] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、InPを含むコアと、ZnSeを含む少なくとも1つのシェルと、ZnSを含む少なくとも1つのシェルと、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロジンケートを含む少なくとも1つのフッ化物含有配位子とを含む。
【0030】
[0030] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。
【0031】
[0031] 本発明は、ナノ構造組成物を製造する方法であって、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団を提供することと;(b)少なくとも1つのフッ化物含有配位子をナノ構造と混合すること;又は(b’)フッ化テトラアルキルアンモニウムを(a)のナノ構造と混合することを行って、ナノ構造組成物を製造することとを含む方法も提供する。
【0032】
[0032] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される。
【0033】
[0033] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと、金属イオンを含む無機カチオンとを含む。幾つかの実施形態では、無機カチオンは、カリウムイオンを含む。
【0034】
[0034] 幾つかの実施形態では、方法は、(c)少なくとも1つの有機カチオンを(b)又は(b’)のナノ構造と混合して、ナノ構造組成物を製造することをさらに含む。
【0035】
[0035] 幾つかの実施形態では、(b’)における混合は、フッ化テトラアルキルアンモニウムとのものであり、ここで、テトラアルキルアンモニウムは、ジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。
【0036】
[0036] 幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウム、アルキルホスホニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム及びピリジニウムからなる群から選択される。
【0037】
[0037] 幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウムであり、且つジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。
【0038】
[0038] 幾つかの実施形態では、有機カチオンは、アルキルホスホニウムであり、且つテトラフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、メチルトリフェノキシホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、オクチルトリブチルホスホニウム、テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム及びテトラメチルホスホニウムからなる群から選択される。
【0039】
[0039] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む。
【0040】
[0040] 幾つかの実施形態では、コアは、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si3N4、Ge3N4、Al2O3、Al2OC又はそれらの組合せを含む。
【0041】
[0041] 幾つかの実施形態では、コアは、InPを含む。
【0042】
[0042] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、2つのシェルを含む。
【0043】
[0043] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、CdS、CdSe、CdO、CdTe、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgTe、GaAs、GaSb、GaN、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InSb、InN、AlAs、AlN、AlSb、AlS、PbS、PbO、PbSe、PbTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、Ge、Si又はそれらの合金を含む。
【0044】
[0044] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む。
【0045】
[0045] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSを含む。
【0046】
[0046] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルとを含む。
【0047】
[0047] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子又はフッ化物アニオン中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.1~約0.5である。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子又はフッ化物アニオン中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.32である。
【0048】
[0048] 幾つかの実施形態では、方法は、(d)(c)のナノ構造を非極性溶媒中に分散させることをさらに含む。幾つかの実施形態では、非極性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン及びクロロホルムからなる群から選択される。
【0049】
[0049] 幾つかの実施形態では、(b)又は(b’)における混合は、約10℃~約100℃の温度におけるものである。
【0050】
[0050] 幾つかの実施形態では、(c)における混合は、約10℃~約100℃の温度におけるものである。
【0051】
[0051] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロジンケートの塩である。
【0052】
[0052] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウム又はジクロロジフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウムである。
【0053】
[0053] 本発明は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含む膜であって、ナノ構造は、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団であって、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む、ナノ構造の少なくとも1つの集団と;(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子;又は(b’)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンとを含む、膜も提供する。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される。
【0054】
[0054] 幾つかの実施形態では、膜は、少なくとも1つの有機樹脂をさらに含む。
【0055】
[0055] 幾つかの実施形態では、膜は、ナノ構造の1~5つの集団を含む。幾つかの実施形態では、膜は、ナノ構造の1つの集団を含む。
【0056】
[0056] 幾つかの実施形態では、ナノ構造の少なくとも1つの集団は、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si3N4、Ge3N4、Al2O3、Al2OC又はそれらの組合せを含む。
【0057】
[0057] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、InPのコアを含む。
【0058】
[0058] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、少なくとも2つのシェルを含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、2つのシェルを含む。
【0059】
[0059] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、CdS、CdSe、CdO、CdTe、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgTe、GaAs、GaSb、GaN、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InSb、InN、AlAs、AlN、AlSb、AlS、PbS、PbO、PbSe、PbTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、Ge、Si又はそれらの合金を含む。
【0060】
[0060] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む。
【0061】
[0061] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSを含む。
【0062】
[0062] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルとを含む。
【0063】
[0063] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと、金属イオンを含むカチオンとを含む。幾つかの実施形態では、カチオンは、カリウムイオンを含む。
【0064】
[0064] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロジンケートの塩である。
【0065】
[0065] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウムである。
【0066】
[0066] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと、テトラアルキルアンモニウム、アルキルホスホニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム及びピリジニウムからなる群から選択されるカチオンとを含む。
【0067】
[0067] 幾つかの実施形態では、カチオンは、テトラアルキルアンモニウムであり、且つジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。
【0068】
[0068] 幾つかの実施形態では、カチオンは、アルキルホスホニウムであり、且つテトラフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、メチルトリフェノキシホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、オクチルトリブチルホスホニウム、テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム及びテトラメチルホスホニウムからなる群から選択される。
【0069】
[0069] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜における、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子又はフッ化物アニオン中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.1~約0.5である。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜における、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子又はフッ化物アニオン中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.32である。
【0070】
[0070] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。
【0071】
[0071] 幾つかの実施形態では、膜は、1~5つの有機樹脂を含む。幾つかの実施形態では、膜は、1つの有機樹脂を含む。
【0072】
[0072] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つの有機樹脂は、熱硬化性樹脂又はUV硬化性樹脂である。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの有機樹脂は、UV硬化性樹脂である。
【0073】
[0073] 本発明は、前述のいずれか1つの実施形態による膜を含む成形物品も提供する。
【0074】
[0074] 幾つかの実施形態では、成形物品は、エレクトロルミネッセンスデバイスである。
【0075】
[0075] 幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、発光ダイオード又は液晶ディスプレイである。
【0076】
[0076] 幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスの最大外部量子効率(EQE)は、約1.5%~約15%である。幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスの最大外部量子効率(EQE)は、約5%である。
【0077】
[0077] 幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、約100秒~約700秒後に初期輝度の80%に到達する。幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、600秒後に初期輝度の80%に到達する。
【0078】
[0078] 幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、約6時間~約11時間後に初期輝度の50%に到達する。幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、約10時間後に初期輝度の50%に到達する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】[0079]カルボキシレートでキャップされたナノ構造から、テトラアルキルアンモニウム対イオンを有するテトラフルオロジンケートでキャップされたナノ構造への配位子交換手順を示すフローチャートである(NMF:N-メチルホルムアミド;OA:オレイン酸;DDA
+:ジドデシルジメチルアンモニウム;TBA
+:テトラブチルアンモニウム)。
【
図2】[0080]単座及び多座配位モードによるテトラフルオロジンケートのナノ構造表面への配位結合の概略図である。
【
図3】[0081]オレエートでキャップされたナノ構造;テトラクロロジンケート及びカリウム対イオンでキャップされたナノ構造;並びにテトラクロロジンケート及びジドデシルジメチルアンモニウム対イオンでキャップされたナノ構造の赤外スペクトルを示す。
【
図4】[0082]オレエートでキャップされたナノ構造;並びにフルオロジンケート配位子及びジドデシルジメチルアンモニウム対イオンでキャップされたナノ構造の
1H NMRスペクトルを示す。挿入図は、アルキレン領域の拡大図を示す。
【
図5】[0083]交換されていないナノ構造と比較した、TBA
2ZnF
4で交換された青色ZnSe/ZnSナノ構造のXPSスペクトル(F 1s領域)を示す。
【
図6】[0084]カルボキシレートでキャップされたナノ構造からフッ化物でキャップされたナノ構造への配位子交換手順を示すフローチャートである(TBAF:フッ化テトラブチルアンモニウム;OA:オレイン酸;DDA
+:ジドデシルジメチルアンモニウム;TBA
+:テトラブチルアンモニウム;THF:テトラヒドロフラン)。
【
図7】[0085]有機(交換前)配位子を有する量子ドット並びにカルボキシレート(オレエート)の多くが除去されたことが示される無機(ZnF
2配位子で交換後及びTBAF配位子で交換後の)配位子を有する量子ドット、特に320℃~480℃の温度範囲における分解による無機配位子を有する量子ドットの熱重量分析を示す。
【
図8】[0086]ZnF
2配位子交換及びTBAF配位子交換後の配位子交換された量子ドットの薄膜の高さプロファイル及び平均厚さを示す。ZnF
2配位子交換後の量子ドットは、量子ドットの凝集体が形成されるため、はるかに多くのスパイクを示し、粗さが増加している。
【
図9】[0087]ZnF
2配位子交換及びTBAF配位子交換後の量子ドットを用いて作製したエレクトロルミネッセンスデバイスの輝度に対する効率を示すグラフである。
図9中に示されるように、TBAF配位子交換後の量子ドットは、改善された輝度及び効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
定義
[0088] 他に定義されているのでなければ、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。以下の定義は、当技術分野における定義を補うものであり、本出願が対象とされ、あらゆる関連又は非関連の場合、例えばあらゆる共同所有される特許又は出願に帰属するものではない。本明細書に記載のものと類似又は同等のあらゆる方法及び材料を本発明の試験の実施に使用できるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。したがって、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態について記述することのみを目的としており、限定を意図するものではない。
【0081】
[0089] 本明細書及び添付の請求項において使用される場合、文脈が明確に他のことを示すのでなければ、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つのナノ構造」への言及は、複数のそのようなナノ構造を含むなどである。
【0082】
[0090] 本明細書において使用される場合、「約」という用語は、特定の量の値がその値の±10%だけ変動することを示す。例えば、「約100nm」は、90nm~110nm(両端の値を含む)のサイズの範囲を含む。
【0083】
[0091] 「ナノ構造」は、約500nm未満の寸法の少なくとも1つの領域又は特性寸法を有する構造である。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満又は約10nm未満の寸法を有する。典型的には、この領域又は特性寸法は、その構造の最短軸に沿って存在する。このような構造の例としては、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ構造、ナノテトラポッド、トリポッド、バイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子などが挙げられる。ナノ構造は、例えば、実質的に結晶、実質的に単結晶、多結晶、非晶質又はそれらの組合せであり得る。幾つかの実施形態では、ナノ構造の3つの寸法のそれぞれは、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満又は約10nm未満の寸法を有する。
【0084】
[0092] ナノ構造に関連して使用される場合、「ヘテロ構造」という用語は、少なくとも2つの異なる及び/又は区別可能な材料の種類を特徴とするナノ構造を意味する。典型的には、ナノ構造の1つの領域が第1の材料の種類を含む一方、ナノ構造の第2の領域が第2の材料の種類を含む。ある実施形態では、ナノ構造は、第1の材料のコアと、第2(又は第3など)の材料の少なくとも1つのシェルとを含み、異なる材料の種類は、例えば、ナノワイヤの長軸、分岐ナノワイヤのアームの長軸又はナノ結晶の中央の周囲に半径方向に分布する。シェルは、隣接する材料を、完全である必要はないが覆うことができることでシェルと見なすことができるか、又はナノ構造に関してヘテロ構造と見なすことができ;例えば、ある材料のコアが第2の材料の小さい島で覆われることを特徴とするナノ結晶は、ヘテロ構造である。別の実施形態では、異なる材料の種類は、ナノ構造中の異なる領域に分布し;例えば、ナノワイヤの主(長)軸に沿って又は分岐ナノワイヤのアームの長軸に沿って分布する。ヘテロ構造中の異なる領域は、完全に異なる材料を含むことができるか、又は異なる領域は、異なるドーパント若しくは異なる濃度の同じドーパントを有するベース材料(例えば、シリコン)を含むことができる。
【0085】
[0093] 本明細書において使用される場合、ナノ構造の「直径」は、ナノ構造の第1の軸に対して垂直の断面の直径を意味し、ここで、第1の軸は、第2及び第3の軸(第2及び第3の軸は、長さが互いにほぼ同じの2つの軸である)に対して長さの差が最大となる。第1の軸は、必ずしもナノ構造の最長軸ではなく;例えば、ディスク型のナノ構造の場合、断面は、ディスクの短い長手方向軸に対して垂直の実質的に円形の断面である。断面が円形でない場合、直径は、その断面の主軸と短軸との平均である。ナノワイヤなどの細長い、すなわち高アスペクト比のナノ構造の場合、直径は、ナノワイヤの最長軸に対して垂直の断面にわたって測定される。球形のナノ構造の場合、直径は、球の中心を通って一方の側から他方の側まで測定される。
【0086】
[0094] ナノ構造に関して使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、ナノ構造が典型的にはその構造の1つ以上の寸法にわたって長距離秩序を示すことを意味する。単結晶の秩序は、結晶の境界を超えて延在することができないため、「長距離秩序」という用語は、特定のナノ構造の絶対サイズによって決定されることを当業者は理解するであろう。この場合、「長距離秩序」は、ナノ構造の寸法の少なくとも大部分にわたる実質的な秩序を意味する。幾つかの場合、ナノ構造は、酸化物若しくは他のコーティングを有することができるか、又はコア及び少なくとも1つのシェルから構成され得る。このような場合、酸化物、シェル又は他のコーティングは、このような秩序を示す必要はない(例えば、非晶質、多結晶又はその他であり得る)ことが理解されるであろう。このような場合、「結晶性」、「実質的に結晶性」、「実質的に単結晶性」又は「単結晶性」という語句は、ナノ構造の中心コアを意味する(コーティング層又はシェルは除外される)。構造が実質的な長距離秩序(例えば、ナノ構造又はそのコアの少なくとも1つの軸の長さの少なくとも約80%にわたる秩序)を示すのであれば、本明細書において使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、種々の瑕疵、積層欠陥、原子置換などを含む構造も含むことが意図される。さらに、コアとナノ構造の外部との間、又はコアと隣接シェルとの間、又はシェルと第2の隣接シェルとの間の界面は、非結晶領域を含むことができ、さらに非晶質であり得ることが理解されるであろう。これは、ナノ構造が本明細書における定義の結晶性又は実質的に結晶性であることを妨げるものではない。
【0087】
[0095] ナノ構造に関して使用される場合、「単結晶性」という用語は、ナノ構造が実質的に結晶性であり、実質的に単結晶を含むことを示す。コアと1つ以上のシェルとを含むナノ構造ヘテロ構造に関して使用される場合、「単結晶」は、コアが実質的に結晶性であり、実質的に単結晶を含むことを示す。
【0088】
[0096] 「ナノ結晶」は、実質的に単結晶性のナノ構造である。したがって、ナノ結晶は、約500nm未満の寸法の少なくとも1つの領域又は特性寸法を有する。幾つかの実施形態では、ナノ結晶は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満又は約10nm未満の寸法を有する。「ナノ結晶」という用語は、種々の瑕疵、積層欠陥、原子置換などを含む実質的に単結晶性のナノ構造並びにそのような瑕疵、欠陥及び置換を有さない実質的に単結晶性のナノ構造を含むことが意図される。コア及び1つ以上のシェルを含むナノ結晶ヘテロ構造の場合、ナノ結晶のコアは、典型的には、実質的に単結晶性であるが、シェルは、そうである必要はない。幾つかの実施形態では、ナノ結晶の3つの寸法のそれぞれは、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満又は約10nm未満の寸法を有する。
【0089】
[0097] 「量子ドット」(又は「ドット」)という用語は、量子閉じ込め又は励起子閉じ込めを示すナノ結晶を意味する。量子ドットは、材料特性が実質的に均一であり得るか、又はある実施形態では不均一であり得、例えばコア及び少なくとも1つのシェルを含み得る。量子ドットの光学的性質は、それらの粒度、化学組成及び/又は表面組成の影響を受けることがあり、当技術分野において利用可能である適切な光学的試験によって決定することができる。ナノ結晶のサイズを例えば約1nm~約15nmの範囲内に調節できると、全光学スペクトルの光電子放出範囲が可能となり、演色の自由度を高めることができる。
【0090】
[0098] 本明細書において使用される場合、用語「単層」は、関連の格子面間の最短距離として、シェル材料のバルク結晶構造から誘導されるシェル厚さの測定単位である。例として、立方格子構造の場合、1つの単層の厚さは、[111]方向の隣接格子面間の距離として求められる。例として、立方晶ZnSeの1つの単層は、0.328nmに対応し、立方晶ZnSの1つの単層は、0.31nmの厚さに対応する。合金材料の単層の厚さは、ベガードの法則によって合金組成から求めることができる。
【0091】
[0099] 本明細書において使用される場合、「シェル」という用語は、コア上又は以前に堆積された同じ若しくは異なる組成のシェル上に堆積される材料であって、シェル材料の1回の堆積行為によって得られる材料を意味する。厳密なシェル厚さは、材料並びに前駆体投入量及び変換率によって左右され、ナノメートル又は単層の単位で報告することができる。本明細書において使用される場合、「目標シェル厚さ」は、必要な前駆体量の計算のために使用される意図されるシェル厚さを意味する。本明細書において使用される場合、「実際のシェル厚さ」は、合成後にシェル材料の実際に堆積された量を意味し、当技術分野において周知の方法によって測定することができる。例として、実際のシェル厚さは、シェル合成の前後のナノ結晶の透過型電子顕微鏡(TEM)画像から求められる粒径を比較することによって測定することができる。
【0092】
[0100] 本明細書において使用される場合、用語「層」は、コア上又は以前に堆積された層上に堆積される材料であって、コア又はシェル材料の1回の堆積行為から得られる材料を意味する。層の厳密な厚さは、材料によって左右される。例えば、ZnSe層は、約0.328nmの厚さを有することができ、ZnS層は、約0.31nmの厚さを有することができる。
【0093】
[0101] 「配位子」は、例えば、ナノ構造の表面との共有結合性相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用又は他の分子相互作用により、ナノ構造の1つ以上の面と(弱く又は強くのいずれかで)相互作用可能な分子である。
【0094】
[0102] 「フォトルミネッセンス量子収率」は、例えば、ナノ構造又はナノ構造の集団による、放出されるフォトンの吸収されるフォトンに対する比である。当技術分野において周知のように、量子収率は、典型的には、量子収率値が既知の十分に特性決定された標準試料を用いる比較方法によって求められる。
【0095】
[0103] 「ピーク発光波長」(PWL)は、光源の放射発光スペクトルがその最大に到達する波長である。
【0096】
[0104] 本明細書において使用される場合、「半値全幅」(FWHM)という用語は、量子ドットのサイズ分布の尺度の1つである。量子ドットの発光スペクトルは、一般にガウス曲線の形状を有する。ガウス曲線の幅は、FWHMとして定義され、これによって粒子のサイズ分布の見解が得られる。より小さいFWHMは、より狭い量子ドットナノ結晶サイズ分布に対応する。FWHMは、発光波長極大にも依存する。
【0097】
[0105] 本明細書において使用される場合、「外部量子効率」(EQE)という用語は、発光ダイオードから放出されるフォトン数の、デバイスを通過する電子数に対する比である。EQEにより、どの程度効率的に発光ダイオードが電子をフォトンに変換し、それらを放出できるかが評価される。EQEは、式:
EQE=[注入効率]×[固体量子収率]×[抽出効率]
を用いて測定することができ、式中、
注入効率=デバイスを通過して活性領域中に注入される電子の比率であり;
固体量子収率=放射性であり、したがってフォトンを生成する、活性領域中の全電子-正孔再結合の比率であり;
抽出効率=活性領域中で生成されデバイスから放出されるフォトンの比率である。
【0098】
[0106] 本明細書において使用される場合、「安定」という用語は、内部反応によるか又は空気、熱、光、圧力、他の自然条件、電圧、電流、輝度若しくは他の動作条件の作用による変化又は分解に対して抵抗性である混合物又は組成物を意味する。ナノ構造組成物のコロイド安定性は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を少なくとも1つの溶媒と混合した後にピーク吸収波長を測定することによって求めることができる。ピーク吸収波長は、ナノ構造組成物にUV又は青色(450nm)光を照射し、分光計で出力を測定することによって測定することができる。この吸収スペクトルを元のナノ構造組成物の吸収と比較する。ピーク吸収波長の5nmを超えるシフトがなければ、コロイドナノ構造組成物は、安定である。
【0099】
[0107] 他に明確に示されるのでなければ、本明細書で列挙される範囲は、両端の値を含む。
【0100】
[0108] 多数のさらなる用語が本明細書において定義されるか又は他の方法で特徴付けられる。
【0101】
[0109] 前述のように、幅広い電気化学窓を有するか又は可逆的な電気化学を示すナノ構造組成物の製造が必要とされている。無機配位子を用いてナノ構造を不動態化する方法が本明細書に開示される。この方法は、合成後の配位子交換手順により、量子ドット上の本来の有機配位子を無機ハロメタレート配位子と交換することを含む。これにより、ナノ構造-配位子複合体の電気化学的安定性が改善されるため、エレクトロルミネッセンスデバイスの稼働寿命が長くなる。
【0102】
ナノ構造組成物
[0110] 幾つかの実施形態では、本開示は、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と;
(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子であって、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、少なくとも1つのフッ化物含有配位子と
を含むナノ構造組成物を提供する。
【0103】
[0111] 幾つかの実施形態では、本開示は、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と;
(b)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンと
を含むナノ構造組成物を提供する。
【0104】
[0112] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む。
【0105】
[0113] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。
【0106】
ナノ構造膜
[0114] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造膜であって、ナノ構造は、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団であって、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む、ナノ構造の少なくとも1つの集団と;
(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子であって、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、少なくとも1つのフッ化物含有配位子と
を含む、ナノ構造膜を提供する。
【0107】
[0115] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造膜であって、ナノ構造は、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団であって、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む、ナノ構造の少なくとも1つの集団と;
(b)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンと
を含む、ナノ構造膜を提供する。
【0108】
[0116] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つの有機樹脂をさらに含むナノ構造膜である。
【0109】
[0117] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。
【0110】
ナノ構造成形物品
[0118] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造膜を含む成形物品を提供する。
【0111】
[0119] 幾つかの実施形態では、
(a)第1の障壁層と;
(b)第2の障壁層と;
(c)第1の障壁層と第2の障壁層との間の発光層と
を含む成形物品であって、発光層は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造の集団と;ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子とを含み;フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、成形物品である。
【0112】
[0120] 幾つかの実施形態では、
(a)第1の障壁層と;
(b)第2の障壁層と;
(c)第1の障壁層と第2の障壁層との間の発光層と
を含む成形物品であって、発光層は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造の集団と、ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンとを含む、成形物品である。
【0113】
[0121] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。
【0114】
[0122] 幾つかの実施形態では、成形物品は、エレクトロルミネッセンスデバイスである。幾つかの実施形態では、成形物品は、発光ダイオードである。幾つかの実施形態では、成形物品は、液晶ディスプレイである。
【0115】
コアナノ構造
[0123] 種々のナノ構造のコロイド合成方法は、当技術分野において周知である。このような方法としては、ナノ構造成長、例えば結果として得られるナノ構造のサイズ及び/又は形状の分布を制御するためにナノ構造の成長を制御する技術が挙げられる。
【0116】
[0124] 典型的なコロイド合成では、半導体ナノ構造は、熱分解させる前駆体を熱溶液(例えば、熱溶媒及び/又は界面活性剤)中に迅速に注入することによって形成される。複数の前駆体は、同時に又は逐次的に注入することができる。これらの前駆体は、急速に反応して核を形成する。典型的には、注入/核形成温度よりも低い成長温度において核にモノマーを添加することにより、ナノ構造の成長が起こる。
【0117】
[0125] 配位子は、ナノ構造の表面と相互作用する。成長温度において、ナノ構造表面からの配位子の急速な吸着及び脱着が起こることでナノ構造の原子の添加及び/又は除去を行うことができ、同時に、成長するナノ構造の凝集が抑制される。一般に、ナノ構造表面に弱く配位する配位子により、ナノ構造の迅速な成長が可能となる一方、ナノ構造表面により強く結合する配位子では、ナノ構造の成長がより遅くなる。配位子は、1つ(又はそれを超える)前駆体と相互作用して、ナノ構造の成長を減速させることもある。
【0118】
[0126] 1つの配位子の存在下でのナノ構造の成長では、典型的には球形のナノ構造が得られる。しかし、2つ以上の配位子の混合物を使用すると、例えば2つの(又はそれを超える)配位子が成長するナノ構造の別々の結晶面に別々に吸着する場合、非球形のナノ構造を形成できるように成長を制御することができる。
【0119】
[0127] このように多数の要因がナノ構造の成長に影響を与えることが知られており、これらを独立して又は組み合わせて操作することにより、結果として得られるナノ構造のサイズ及び/又は形状の分布を制御することができる。このようなものとしては、例えば、温度(核形成及び/又は成長)、前駆体の組成、時間に依存する前駆体濃度、互いの前駆体の比率、界面活性剤の組成、界面活性剤の数並びに互いの界面活性剤の比率及び/又は界面活性剤と前駆体との比率が挙げられる。
【0120】
[0128] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、カドミウムフリーである。本明細書において使用される場合、「カドミウムフリー」という用語は、ナノ構造が100重量ppm未満のカドミウムを含むことが意図される。有害物質使用制限(RoHS)遵守の規定では、均一な前駆体原材料中のカドミウムが0.01重量%(100重量ppm)以下となるべきことが要求される。本発明のCdフリーナノ構造中のカドミウムレベルは、前駆体材料中の微量金属濃度によって制限される。Cdフリーナノ構造の前駆体材料中の微量金属(カドミウムを含む)濃度は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)分析によって測定することができ、十億分率(ppb)レベルで存在する。幾つかの実施形態では、「カドミウムフリー」であるナノ構造は、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約1ppm未満のカドミウムを含む。
【0121】
[0129] 幾つかの実施形態では、コアは、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si3N4、Ge3N4、Al2O3、Al2OC又はそれらの組合せを含む。
【0122】
[0130] 幾つかの実施形態では、コアは、III-V族ナノ構造である。幾つかの実施形態では、コアは、BN、BP、BAs、BSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs及びInSbからなる群から選択されるIII-V族ナノ結晶である。幾つかの実施形態では、コアは、InPナノ結晶である。
【0123】
[0131] III-V族ナノ構造の合成は、米国特許第5,505,928号、米国特許第6,306,736号、米国特許第6,576,291号、米国特許第6,788,453号、米国特許第6,821,337号、米国特許第7,138,098号、米国特許第7,557,028号、米国特許第8,062,967号、米国特許第7,645,397号及び米国特許第8,282,412号並びに米国特許出願公開第2015/236195号に記載されている。III-V族ナノ構造の合成は、Wells, R.L., et al.,“The use of tris(trimethylsilyl)arsine to prepare gallium arsenide and indium arsenide,”Chem. Mater. 1:4-6 (1989)及びGuzelian, A.A., et al.,“Colloidal chemical synthesis and characterization of InAs nanocrystal quantum dots,”Appl. Phys. Lett. 69: 1432-1434 (1996)にも記載されている
【0124】
[0132] InP系ナノ構造の合成は、例えば、Xie, R., et al.,“Colloidal InP nanocrystals as efficient emitters covering blue to near-infrared,”J. Am. Chem. Soc. 129:15432-15433 (2007);Micic, O.I., et al.,“Core-shell quantum dots of lattice-matched ZnCdSe2 shells on InP cores: Experiment and theory,”J. Phys. Chem. B 104:12149-12156 (2000);Liu, Z., et al.,“Coreduction colloidal synthesis of III-V nanocrystals: The case of InP,”Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 47:3540-3542 (2008);Li, L. et al.,“Economic synthesis of high quality InP nanocrystals using calcium phosphide as the phosphorus precursor,”Chem. Mater. 20:2621-2623 (2008);D. Battaglia and X. Peng,“Formation of high quality InP and InAs nanocrystals in a noncoordinating solvent,”Nano Letters 2:1027-1030 (2002);Kim, S., et al.,“Highly luminescent InP/GaP/ZnS nanocrystals and their application to white light-emitting diodes,”J. Am. Chem. Soc. 134:3804-3809 (2012);Nann, T., et al.,“Water splitting by visible light: A nanophotocathode for hydrogen production,”Angew. Chem. Int. Ed. 49:1574-1577 (2010);Borchert, H., et al.,“Investigation of ZnS passivated InP nanocrystals by XPS,”Nano Letters 2:151-154 (2002);L. Li and P. Reiss,“One-pot synthesis of highly luminescent InP/ZnS nanocrystals without precursor injection,”J. Am. Chem. Soc. 130:11588-11589 (2008);Hussain, S., et al.“One-pot fabrication of high-quality InP/ZnS (core/shell) quantum dots and their application to cellular imaging,”Chemphyschem. 10:1466-1470 (2009);Xu, S., et al.,“Rapid synthesis of high-quality InP nanocrystals,”J. Am. Chem. Soc. 128:1054-1055 (2006);Micic, O.I., et al.,“Size-dependent spectroscopy of InP quantum dots,”J. Phys. Chem. B 101:4904-4912 (1997);Haubold, S., et al.,“Strongly luminescent InP/ZnS core-shell nanoparticles,”Chemphyschem. 5:331-334 (2001);CrosGagneux, A., et al.,“Surface chemistry of InP quantum dots: A comprehensive study,”J. Am. Chem. Soc. 132:18147-18157 (2010);Micic, O.I., et al.,“Synthesis and characterization of InP, GaP, and GaInP2 quantum dots,”J. Phys. Chem. 99:7754-7759 (1995);Guzelian, A.A., et al.,“Synthesis of size-selected, surface-passivated InP nanocrystals,”J. Phys. Chem. 100:7212-7219 (1996);Lucey, D.W., et al.,“Monodispersed InP quantum dots prepared by colloidal chemistry in a non-coordinating solvent,”Chem. Mater. 17:3754-3762 (2005);Lim, J., et al.,“InP@ZnSeS, core@composition gradient shell quantum dots with enhanced stability,”Chem. Mater. 23:4459-4463 (2011);及びZan, F., et al.,“Experimental studies on blinking behavior of single InP/ZnS quantum dots: Effects of synthetic conditions and UV irradiation,”J. Phys. Chem. C 116:394-3950 (2012)に記載されている。しかし、このような努力による高い量子収率のInPナノ構造の製造における成功は、ごく限定的であった。
【0125】
[0133] 幾つかの実施形態では、コアは、ドープされる。幾つかの実施形態では、ナノ結晶コアのドーパントは、1つ以上の遷移金属などの金属を含む。幾つかの実施形態では、ドーパントは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au及びそれらの組合せからなる群から選択される遷移金属である。幾つかの実施形態では、ドーパントは、非金属を含む。幾つかの実施形態では、ドーパントは、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdS、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、CuInS2、CuInSe2、AlN、AlP、AlAs、GaN、GaP又はGaAsである。
【0126】
[0134] 幾つかの実施形態では、コアは、ZnO、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdO、CdSe、CdS、CdTe、HgO、HgSe、HgS及びHgTeからなる群から選択されるII-VI族ナノ結晶である。幾つかの実施形態では、コアは、ZnSe、ZnS、CdSe及びCdSからなる群から選択されるナノ結晶である。II-VI族ナノ構造の合成は、米国特許第6,225,198号、米国特許第6,322,901号、米国特許第6,207,229号、米国特許第6,607,829号、米国特許第7,060,243号、米国特許第7,374,824号、米国特許第6,861,155号、米国特許第7,125,605号、米国特許第7,566,476号、米国特許第8,158,193号及び米国特許第8,101,234号並びに米国特許出願公開第2011/0262752号及び米国特許出願公開第2011/0263062号に記載されている。
【0127】
[0135] CdSe及びCdS量子ドットなどのII-VI族ナノ構造は、望ましいルミネッセンス挙動を示すことができるが、カドミウムの毒性等の問題のため、そのようなナノ構造を使用できる用途が限定される。したがって、好都合なルミネッセンス特性を示す毒性のより低い代替物が非常に望ましい。一般に、III-V族ナノ構造、特にInP系ナノ構造は、それらの適合性の発光範囲のため、カドミウム系材料の最もよく知られた代替品である。
【0128】
[0136] 幾つかの実施形態では、コアは、シェルを堆積する前に精製される。幾つかの実施形態では、コア溶液から沈殿物を除去するためにコアの濾過が行われる。
【0129】
[0137] 幾つかの実施形態では、シェルを堆積する前にコアの酸エッチングステップが行われる。
【0130】
[0138] 幾つかの実施形態では、コアの直径は、量子閉じ込めを用いて決定される。量子ドットなどのゼロ次元のナノ微結晶における量子閉じ込めは、微結晶境界内の電子の空間的閉じ込めによって生じる。材料の直径が波動関数のドブロイ波長と同じ大きさになると、量子閉じ込めを観察することができる。ナノ粒子の電子的及び光学的性質は、バルク材料のそれらの性質から実質的に逸脱している。閉じ込め寸法が粒子の波長よりも大きい場合、粒子は、自由であるかのように振る舞う。この状態中、バンドギャップは、連続エネルギー状態のため、元のエネルギーのままとなる。しかし、閉じ込め寸法が短くなり、典型的にはナノスケールのある限度に到達すると、エネルギースペクトルが離散的になる。結果として、バンドギャップは、サイズ依存性になる。サイズは、当技術分野において周知のように、例えば透過型電子顕微鏡法及び/又は物理的モデル化を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、コアナノ構造の直径は、約1nm~約9nm、約1nm~約8nm、約1nm~約7nm、約1nm~約6nm、約1nm~約5nm、約1nm~約4nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2nm、約2nm~約9nm、約2nm~約8nm、約2nm~約7nm、約2nm~約6nm、約2nm~約5nm、約2nm~約4nm、約2nm~約3nm、約3nm~約9nm、約3nm~約8nm、約3nm~約7nm、約3nm~約6nm、約3nm~約5nm、約3nm~約4nm、約4nm~約9nm、約4nm~約8nm、約4nm~約7nm、約4nm~約6nm、約4nm~約5nm、約5nm~約9nm、約5nm~約8nm、約5nm~約7nm、約5nm~約6nm、約6nm~約9nm、約6nm~約8nm、約6nm~約7nm、約7nm~約9nm、約7nm~約8nm又は約8nm~約9nmである。幾つかの実施形態では、コアナノ構造の直径は、約7nmである。
【0131】
シェル層
[0139] 幾つかの実施形態では、本開示のナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コア及び少なくとも2つシェルを含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コア及び2つのシェルを含む。
【0132】
[0140] シェルは、例えば、ナノ構造の量子収率及び/又は安定性を高めることができる。幾つかの実施形態では、コア及びシェルは、異なる材料を含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、異なるシェル材料のシェルを含む。
【0133】
[0141] 幾つかの実施形態では、II族及びVI族の元素の混合物を含むシェルがコア又はコア/シェル構造上に堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源及びカドミウム源からの少なくとも2つの混合物によって堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源及びカドミウム源からの2つの混合物によって堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源及びカドミウム源からの3つの混合物によって堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛及び硫黄;亜鉛及びセレン;亜鉛、硫黄及びセレン;亜鉛及びテルル;亜鉛、テルル及び硫黄;亜鉛、テルル及びセレン;亜鉛、カドミウム及び硫黄;亜鉛、カドミウム及びセレン;カドミウム及び硫黄;カドミウム及びセレン;カドミウム、セレン及び硫黄;カドミウム、亜鉛及び硫黄;カドミウム、亜鉛及びセレン;又はカドミウム、亜鉛、硫黄及びセレンから構成される。
【0134】
[0142] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、CdS、CdSe、CdO、CdTe、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgTe、GaAs、GaSb、GaN、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InSb、InN、AlAs、AlN、AlSb、AlS、PbS、PbO、PbSe、PbTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、Ge、Si又はそれらの合金を含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルとを含む。
【0135】
[0143] 幾つかの実施形態では、シェルは、シェル材料の2つ以上の単層を含む。この単層の数は、すべてのナノ構造の平均であり;したがって、シェル中の単層の数は、分数になり得る。幾つかの実施形態では、シェル中の単層の数は、0.25~10、0.25~8、0.25~7、0.25~6、0.25~5、0.25~4、0.25~3、0.25~2、2~10、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~8、5~7、5~6、6~10、6~8、6~7、7~10、7~8又は8~10である。幾つかの実施形態では、シェルは、3~5つの単層を含む。
【0136】
[0144] シェルの厚さは、供給する前駆体の量を変化させることによって制御できる。特定のシェル厚さの場合、成長反応が実質的に完了したときに、あらかじめ決定された厚さのシェルが得られる量で任意選択的に少なくとも1つの前駆体が供給される。2つ以上の異なる前駆体が供給される場合、それぞれの前駆体の量を制限することができるか、又は1つの前駆体を制限された量で供給することができ、他の前駆体は、過剰に供給される。
【0137】
[0145] 各シェルの厚さは、当業者に周知の技術を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、各シェルの厚さは、各シェルを加える前後のナノ構造の平均直径を比較することによって求められる。幾つかの実施形態では、各シェルを加える前後のナノ構造の平均直径は、TEMによって求められる。幾つかの実施形態では、各シェルは、約0.05nm~約3.5nm、約0.05nm~約2nm、約0.05nm~約0.9nm、約0.05nm~約0.7nm、約0.05nm~約0.5nm、約0.05nm~約0.3nm、約0.05nm~約0.1nm、約0.1nm~約3.5nm、約0.1nm~約2nm、約0.1nm~約0.9nm、約0.1nm~約0.7nm、約0.1nm~約0.5nm、約0.1nm~約0.3nm、約0.3nm~約3.5nm、約0.3nm~約2nm、約0.3nm~約0.9nm、約0.3nm~約0.7nm、約0.3nm~約0.5nm、約0.5nm~約3.5nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約0.9nm、約0.5nm~約0.7nm、約0.7nm~約3.5nm、約0.7nm~約2nm、約0.7nm~約0.9nm、約0.9nm~約3.5nm、約0.9nm~約2nm又は約2nm~約3.5nmの厚さを有する。
【0138】
[0146] 幾つかの実施形態では、各シェルは、少なくとも1つのナノ構造配位子の存在下で合成される。配位子により、例えば溶媒又はポリマーに対するナノ構造の混和性を向上させることができ(ナノ構造が互いに凝集しないように組成物全体にナノ構造が分散することができ)、ナノ構造の量子収率を増加させることができ、及び/又はナノ構造ルミネッセンスを維持することができる(例えば、ナノ構造がマトリックス中に組み込まれたとき)。幾つかの実施形態では、コアの合成のための配位子及びシェルの合成のための配位子は、同じである。幾つかの実施形態では、コアの合成のための配位子と、シェルの合成のための配位子とは、異なる。合成後、ナノ構造の表面上の任意の配位子は、他の望ましい性質を有する異なる配位子と交換することができる。配位子の例は、米国特許第7,572,395号、米国特許第8,143,703号、米国特許第8,425,803号、米国特許第8,563,133号、米国特許第8,916,064号、米国特許第9,005,480号、米国特許第9,139,770号及び米国特許第9,169,435号並びに米国特許出願公開第2008/0118755号に開示されている。
【0139】
[0147] シェルの合成に適切な配位子は、当業者に周知である。幾つかの実施形態では、配位子は、ラウリン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸である。幾つかの実施形態では、配位子は、トリオクチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド及びトリブチルホスフィンオキシドから選択される有機ホスフィン又は有機ホスフィンオキシドである。幾つかの実施形態では、配位子は、ドデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクチルアミン及びオクタデシルアミンからなる群から選択されるアミンである。幾つかの実施形態では、配位子は、トリブチルホスフィン、オレイン酸又はオレイン酸亜鉛である。
【0140】
[0148] 幾つかの実施形態では、各シェルは、配位子の混合物の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、各シェルは、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの異なる配位子を含む混合物の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、各シェルは、3つの異なる配位子を含む混合物の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、配位子の混合物は、トリブチルホスフィン、オレイン酸及びオレイン酸亜鉛を含む。
【0141】
[0149] 幾つかの実施形態では、各シェルは、溶媒の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、溶媒は、1-オクタデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、エイコサン、オクタデカン、ヘキサデカン、テトラデカン、スクアレン、スクアラン、トリオクチルホスフィンオキシド及びジオクチルエーテルからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、溶媒は、1-オクタデセンである。
【0142】
[0150] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを約20℃~約310℃、約20℃~約280℃、約20℃~約250℃、約20℃~約200℃、約20℃~約150℃、約20℃~約100℃、約20℃~約50℃、約50℃~約310℃、約50℃~約280℃、約50℃~約250℃、約50℃~約200℃、約50℃~約150℃、約50℃~約100℃、約100℃~約310℃、約100℃~約280℃、約100℃~約250℃、約100℃~約200℃、約100℃~約150℃、約150℃~約310℃、約150℃~約280℃、約150℃~約250℃、約150℃~約200℃、約200℃~約310℃、約200℃~約280℃、約200℃~約250℃、約250℃~約310℃、約250℃~約280℃又は約280℃~約310℃の添加温度で接触させる。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを約20℃~約100℃の添加温度で接触させる。
【0143】
[0151] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、その反応混合物の温度は、約200℃~約310℃、約200℃~約280℃、約200℃~約250℃、約200℃~約220℃、約220℃~約310℃、約220℃~約280℃、約220℃~約250℃、約250℃~約310℃、約250℃~約280℃又は約280℃~約310℃の高温に上昇する。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、反応混合物の温度は、約250℃~約310℃に上昇する。
【0144】
[0152] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、その温度が高温に到達する時間は、約2~約240分、約2~約200分、約2~約100分、約2~約60分、約2~約40分、約5~約240分、約5~約200分、約5~約100分、約5~約60分、約5~約40分、約10~約240分、約10~約200分、約10~約100分、約10~約60分、約10~約40分、約40~約240分、約40~約200分、約40~約100分、約40~約60分、約60~約240分、約60~約200分、約60~約100分、約100~約240分、約100~約200分又は約200~約240分である。
【0145】
[0153] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、反応混合物の温度は、約2~約240分、約2~約200分、約2~約100分、約2~約60分、約2~約40分、約5~約240分、約5~約200分、約5~約100分、約5~約60分約5~約40分、約10~約240分、約10~約200分、約10~約100分、約10~約60分、約10~約40分、約40~約240分、約40~約200分、約40~約100分、約40~約60分、約60~約240分、約60~約200分、約60~約100分、約100~約240分、約100~約200分又は約200~約240分にわたって高温に維持される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、反応混合物の温度は、約30~約120分にわたって高温に維持される。
【0146】
[0154] 幾つかの実施形態では、反応混合物に加えられ、続いて高温で維持されるシェル材料前駆体のさらなる添加により、さらなるシェルが形成される。典型的には、前のシェルの反応が実質的に完了した後(例えば、前の前駆体の少なくとも1つがなくなったとき若しくは反応から除去されたとき又はさらなる成長が検出できないとき)にさらなるシェル前駆体が供給される。前駆体のさらなる添加により、さらなるシェルが形成される。
【0147】
[0155] 幾つかの実施形態では、さらなるシェルを得るためのさらなるシェル材料前駆体を加える前にナノ構造が冷却される。幾つかの実施形態では、さらなるシェルを得るためのシェル材料前駆体を加える前にナノ構造が高温で維持される。
【0148】
[0156] シェルの十分な層がナノ構造に加えられて所望の厚さ及び直径に到達した後、ナノ構造を冷却することができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、室温まで冷却される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造を含む反応混合物を希釈するために有機溶媒が加えられる。
【0149】
[0157] 幾つかの実施形態では、反応混合物を希釈するために使用される有機溶媒は、エタノール、ヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、ジメチルホルムアミド又はN-メチルピロリジノンである。幾つかの実施形態では、有機溶媒は、トルエンである。
【0150】
[0158] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、単離される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、有機溶媒を用いる沈殿によって単離される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、エタノールで凝集させることによって単離される。
【0151】
[0159] 単層の数により、コア/シェルナノ構造のサイズが決定される。コア/シェルナノ構造のサイズは、当業者に周知の技術を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のサイズは、TEMを用いて求められる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造の平均直径は、約1nm~約15nm、約1nm~約10nm、約1nm~約9nm、約1nm~約8nm、約1nm~約7nm、約1nm~約6nm、約1nm~約5nm、約5nm~約15nm、約5nm~約10nm、約5nm~約9nm、約5nm~約8nm、約5nm~約7nm、約5nm~約6nm、約6nm~約15nm、約6nm~約10nm、約6nm~約9nm、約6nm~約8nm、約6nm~約7nm、約7nm~約15nm、約7nm~約10nm、約7nm~約9nm、約7nm~約8nm、約8nm~約15nm、約8nm~約10nm、約8nm~約9nm、約9nm~約15nm、約9nm~約10nm又は約10nm~約15nmである。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造の平均直径は、約6nm~約7nmである。
【0152】
ナノ構造組成物
[0160] 幾つかの実施形態では、本開示は、
(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と;
(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子;又は
(b’)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンと
を含むナノ構造組成物であって、フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、ナノ構造組成物を提供する。
【0153】
[0161] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む。
【0154】
[0162] 幾つかの実施形態では、コアは、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si3N4、Ge3N4、Al2O3、Al2OC又はそれらの組合せを含む。幾つかの実施形態では、コアは、InPを含む。
【0155】
[0163] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、2つのシェルを含む。
【0156】
[0164] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、CdS、CdSe、CdO、CdTe、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgTe、GaAs、GaSb、GaN、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InSb、InN、AlAs、AlN、AlSb、AlS、PbS、PbO、PbSe、PbTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、Ge、Si又はそれらの合金を含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、ZnSeを含む第1のシェルと、ZnSを含む第2のシェルとを含む。
【0157】
[0165] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、その全体が参照により援用される米国特許出願公開第2017/0306227号の方法を使用して形成される。
【0158】
[0166] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、コア/ZnSe/ZnSナノ構造である。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、InP/ZnSe/ZnSナノ構造である。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、InPを含むコアと、ZnSeを含む少なくとも1つのシェルと、ZnSを含む少なくとも1つのシェルと、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロジンケートを含む少なくとも1つのフッ化物含有配位子とを含む。
【0159】
[0167] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。
【0160】
フッ化物含有配位子
[0168] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子を含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、ナノ構造の表面に結合された1つのフッ化物含有配位子を含む。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、無機配位子である。
【0161】
[0169] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと無機カチオンとを含む。幾つかの実施形態では、無機カチオンは、金属イオンを含む。幾つかの実施形態では、カチオンは、カリウムイオンを含む。
【0162】
[0170] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと有機カチオンとを含む。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウム、アルキルホスホニウム、イミダゾリウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム及びピリジニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウムであり、且つジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、アルキルホスホニウムであり、且つテトラフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、メチルトリフェノキシホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、オクチルトリブチルホスホニウム、テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム及びテトラメチルホスホニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロジンケートの塩である。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウム又はジクロロジフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウムである。
【0163】
[0171] ナノ構造組成物中のフッ化物含有配位子の濃度は、光学濃度(OD)測定によって求めることができる。ODは、経路長が1cmのキュベットを用いて450nmにおいて測定することができる。OD450=1.5である100μLのナノ構造組成物の場合、フッ化物含有配位子の濃度は、約0.01mM~約40mM、約0.01mM~約20mM、約0.01mM~約10mM、約0.01mM~約5mM、約0.01mM~約2.5mM、約0.01mM~約1.5mM、約0.01mM~約1mM、約0.01mM~約0.5mM、約0.01mM~約0.25mM、約0.25mM~約40mM、約0.25mM~約20mM、約0.25mM~約10mM、約0.25mM~約5mM、約0.25mM~約2.5mM、約0.25mM~約1.5mM、約0.25mM~約1.5mM、約0.25mM~約1mM、約0.25mM~約0.5mM、約0.25mM~約0.25mM、約0.5mM~約40mM、約0.5mM~約20mM、約0.5mM~約10mM、約0.5mM~約5mM、約0.5mM~約2.5mM、約0.5mM~約1.5mM、約0.5mM~約1mM、約mM~約40mM、約1mM~約20mM、約1mM~約10mM、約1mM~約5mM、約1mM~約2.5mM、約1mM~約1.5mM、約1.5mM~約40mM、約1.5mM~約20mM、約1.5mM~約10mM、約1.5mM~約5mM、約1.5mM~約2.5mM、約2.5mM~約40mM、約2.5mM~約20mM、約2.5mM~約10mM、約2.5mM~約5mM、約5mM~約40mM、約5mM~約20mM、約5mM~約10mM、約10mM~約40mM、約10mM~約20mM又は約20mM~約40mMである。幾つかの実施形態では、OD450=1.5である100μLのナノ構造組成物の場合、フッ化物含有配位子の濃度は、約1mM~約12mMである。幾つかの実施形態では、OD450=1.5である100μLのナノ構造組成物の場合、フッ化物含有配位子の濃度は、約6mMである。
【0164】
[0172] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.1~約0.5、約0.1~約0.4、約0.1~約0.3、約0.1~約0.2、約0.2~約0.5、約0.2~約0.4、約0.2~約0.3、約0.3~約0.5、約0.3~約0.4又は約0.4~約0.5である。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物に結合されたフッ化物含有配位子中のフッ素原子の、ナノ構造組成物中の亜鉛原子に対するモル比は、約0.32である。
【0165】
溶媒及び界面活性剤
[0173] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、溶媒をさらに含む。
【0166】
[0174] 幾つかの実施形態では、溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、クロロホルム、N-メチルホルムアミド、ブタノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、1,4-ブタンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリルトリアセテート、酢酸ヘプチル、酢酸ヘキシル、酢酸ペンチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、モノメチルエーテルグリコールエステル、γ-ブチロラクトン、メチル酢酸-3-エチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、プロパンジオールモノメチルエーテル、プロパンジオールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール及びそれらの組合せからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、クロロホルム及びN-メチルホルムアミドからなる群から選択される。
【0167】
[0175] 幾つかの実施形態では、溶媒は、非極性溶媒である。
【0168】
[0176] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、界面活性剤をさらに含む。
【0169】
[0177] 幾つかの実施形態では、界面活性剤は、臭化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、臭化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、臭化ジテトラデシルジメチルアンモニウム、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム、臭化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ジオクチルジメチルアンモニウム、臭化ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化オレイルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化フェニルエチルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルデシルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化ジイソプロピルジメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化ジメチルジフェニルホスホニウム、臭化メチルトリフェノキシホスホニウム、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、臭化オクチルトリブチルホスホニウム、臭化テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、臭化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、臭化テトラオクチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラメチルホスホニウム、臭化ドデシルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ジテトラデシルジメチルアンモニウム、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化オレイルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化フェニルエチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化ジイソプロピルジメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、塩化ジメチルジフェニルホスホニウム、塩化メチルトリフェノキシホスホニウム、塩化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、塩化オクチルトリブチルホスホニウム、塩化テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、塩化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、塩化テトラオクチルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラメチルホスホニウム及び塩化ドデシルアンモニウムからなる群から選択される。
【0170】
ナノ構造組成物の製造方法及び配位子交換
[0178] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造上の第1の配位子を第2の配位子と交換する配位子交換方法を対象とする。
【0171】
[0179] 幾つかの実施形態では、第1の配位子は、ラウリン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸である。幾つかの実施形態では、第1の配位子は、トリオクチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド及びトリブチルホスフィンオキシドから選択される有機ホスフィン又は有機ホスフィンオキシドである。幾つかの実施形態では、第1の配位子は、ドデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクチルアミン及びオクタデシルアミンからなる群から選択されるアミンである。幾つかの実施形態では、第1の配位子は、トリブチルホスフィン、オレイン酸又はオレイン酸亜鉛である。
【0172】
[0180] 幾つかの実施形態では、第2の配位子は、フッ化物含有配位子である。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと無機カチオンとを含む。幾つかの実施形態では、無機カチオンは、金属イオンを含む。幾つかの実施形態では、カチオンは、カリウムイオンを含む。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと有機カチオンとを含む。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウム、アルキルホスホニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム及びピリジニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウムであり、且つジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、アルキルホスホニウムであり、且つテトラフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、メチルトリフェノキシホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、オクチルトリブチルホスホニウム、テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム及びテトラメチルホスホニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロジンケート又はジクロロジフルオロジンケートの塩である。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子は、テトラフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウム又はジクロロジフルオロ亜鉛酸テトラブチルアンモニウムである。
【0173】
[0181] 幾つかの実施形態では、第2の配位子は、フッ化物アニオンである。
【0174】
[0182] 幾つかの実施形態では、第1の配位子対フッ化物含有配位子のモル比は、約1:1~約1:8、約1:1~約1:7、1:1~約1:6、約1:1~約1:5、約1:1~約1:4、約1:1~約1:3、約1:1~約1:2、約1:2~約1:8、約1:2~約1:7、約1:2~約1:6、約1:2~約1:5、約1:2~約1:4、約1:2~約1:3、約1:3~約1:8、約1:3~約1:7、約1:3~約1:6、約1:3~約1:5、約1:3~約1:4、約1:4~約1:8、約1:4~約1:7、約1:4~約1:6、約1:4~約1:5、約1:5~約1:8、約1:5~約1:7、約1:5~約1:6、約1:6~約1:8、約1:6~約1:7又は約1:7~約1:8である。幾つかの実施形態では、第1の配位子対フッ化物含有配位子のモル比は、約1:1~約1:3である。
【0175】
[0183] 幾つかの実施形態では、第1の配位子対フッ化物アニオンのモル比は、約1:1~約1:8、約1:1~約1:7、1:1~約1:6、約1:1~約1:5、約1:1~約1:4、約1:1~約1:3、約1:1~約1:2、約1:2~約1:8、約1:2~約1:7、約1:2~約1:6、約1:2~約1:5、約1:2~約1:4、約1:2~約1:3、約1:3~約1:8、約1:3~約1:7、約1:3~約1:6、約1:3~約1:5、約1:3~約1:4、約1:4~約1:8、約1:4~約1:7、約1:4~約1:6、約1:4~約1:5、約1:5~約1:8、約1:5~約1:7、約1:5~約1:6、約1:6~約1:8、約1:6~約1:7又は約1:7~約1:8である。幾つかの実施形態では、第1の配位子対フッ化物アニオンのモル比は、約1:1~約1:3である。
【0176】
[0184] フッ化物含有配位子で置換される第1の配位子のパーセント値は、1H NMRによって測定することができる。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子で置換される第1の配位子のモルパーセント値は、約20%~約100%、約20%~約80%、約20%~約60%、約20%~約40%、約25%~約100%、約25%~約80%、約25%~約60%、約25%~約40%、約30%~約100%、約30%~約80%、約30%~約60%、約30%~約40%、約40%~約100%、約40%~約80%、約40%~約60%、約60%~約100%、約60%~約80%又は約80%~約100%である。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子で置換される第1の配位子のモルパーセント値は、約90%である。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子で置換される第1の配位子のモルパーセント値は、約100%である。
【0177】
[0185] フッ化物アニオンで置換される第1の配位子のパーセント値は、1H NMRによって測定することができる。幾つかの実施形態では、フッ化物アニオンで置換される第1の配位子のモルパーセント値は、約20%~約100%、約20%~約80%、約20%~約60%、約20%~約40%、約25%~約100%、約25%~約80%、約25%~約60%、約25%~約40%、約30%~約100%、約30%~約80%、約30%~約60%、約30%~約40%、約40%~約100%、約40%~約80%、約40%~約60%、約60%~約100%、約60%~約80%又は約80%~約100%である。幾つかの実施形態では、フッ化物アニオンで置換される第1の配位子のモルパーセント値は、約90%である。幾つかの実施形態では、フッ化物アニオンで置換される第1の配位子のモルパーセント値は、約100%である。
【0178】
[0186] ナノ構造の集団中のナノ構造に結合されたフッ化物含有配位子のパーセント値は、19F NMRによって測定することができ、ここで、結合された配位子は、
(結合されたフッ化物含有配位子)/(結合+遊離のフッ化物含有配位子)
を用いて計算される。
【0179】
[0187] 幾つかの実施形態では、ナノ構造に結合されたフッ化物含有配位子のモルパーセント値は、約20%~約100%であり、約20%~約100%、約20%~約80%、約20%~約60%、約20%~約40%、約25%~約100%、約25%~約80%、約25%~約60%、約25%~約40%、約30%~約100%、約30%~約80%、約30%~約60%、約30%~約40%、約40%~約100%、約40%~約80%、約40%~約60%、約60%~約100%、約60%~約80%又は約80%~約100%である。
【0180】
[0188] 幾つかの実施形態では、ナノ構造に結合されたフッ化物アニオンのモルパーセント値は、約20%~約100%であり、約20%~約100%、約20%~約80%、約20%~約60%、約20%~約40%、約25%~約100%、約25%~約80%、約25%~約60%、約25%~約40%、約30%~約100%、約30%~約80%、約30%~約60%、約30%~約40%、約40%~約100%、約40%~約80%、約40%~約60%、約60%~約100%、約60%~約80%又は約80%~約100%である。
【0181】
[0189] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造組成物を製造する方法であって、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団を提供することと;(b)少なくとも1つのフッ化物含有配位子を(a)のナノ構造と混合すること;又は(b’)フッ化テトラアルキルアンモニウムを(a)のナノ構造と混合することを行って、ナノ構造組成物を製造することとを含む方法を対象とする。幾つかの実施形態では、(b)におけるフッ化物含有配位子は、フルオロジンケートを含むアニオンと無機カチオンとを含む。幾つかの実施形態では、無機カチオンは、金属イオンを含む。幾つかの実施形態では、カチオンは、カリウムイオンを含む。幾つかの実施形態では、(b)におけるフッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される。
【0182】
[0190] 幾つかの実施形態では、(b’)における混合は、フッ化テトラアルキルアンモニウムとのものであり、ここで、テトラアルキルアンモニウムは、ジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。
【0183】
[0191] 幾つかの実施形態では、フッ化テトラアルキルアンモニウムは、C1-6フッ化テトラアルキルアンモニウムである。幾つかの実施形態では、フッ化テトラアルキルアンモニウムは、フッ化テトラブチルアンモニウムである。幾つかの実施形態では、(b)又は(b’)における混合は、約10℃~約100℃、約10℃~約80℃、約10℃~約60℃、約10℃~約40℃、約10℃~約20℃、約20℃~約100℃、約20℃~約80℃、約20℃~約60℃、約20℃~約40℃、約40℃~約100℃、約40℃~約80℃、約40℃~約60℃、約60℃~約100℃、約60℃~約80℃又は約80℃~約100℃の温度におけるものである。
【0184】
[0192] 幾つかの実施形態では、方法は、(c)少なくとも1つの有機カチオンを(b)又は(b’)のナノ構造と接触させてナノ構造組成物を製造することをさらに含む。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウム、アルキルホスホニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム及びピリジニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、テトラアルキルアンモニウムであり、且つジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ビス(エチルヘキシル)ジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、フェニルエチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクチルジメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ジイソプロピルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラメチルアンモニウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、有機カチオンは、アルキルホスホニウムであり、且つテトラフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、メチルトリフェノキシホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、オクチルトリブチルホスホニウム、テトラデシルトリヘキシルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム及びテトラメチルホスホニウムからなる群から選択される。
【0185】
[0193] 幾つかの実施形態では、(c)における混合は、約10℃~約100℃、約10℃~約80℃、約10℃~約60℃、約10℃~約40℃、約10℃~約20℃、約20℃~約100℃、約20℃~約80℃、約20℃~約60℃、約20℃~約40℃、約40℃~約100℃、約40℃~約80℃、約40℃~約60℃、約60℃~約100℃、約60℃~約80℃又は約80℃~約100℃の温度におけるものである。
【0186】
[0194] 幾つかの実施形態では、方法は、(d)(c)のナノ構造を非極性溶媒中に分散させることをさらに含む。幾つかの実施形態では、非極性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン及びクロロホルムからなる群から選択される。
【0187】
フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したナノ構造の光学的性質
[0195] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したコア/シェルナノ構造は、高いフォトルミネッセンス量子収率を示すことができる。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したコア/シェルナノ構造は、約60%~約99%、約60%~約95%、約60%~約90%、約60%~約85%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約99%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約85%、約70%~約80%、約80%~約99%、約80%~約95%、約80%~90%、約80%~約85%、約85%~約99%、約85%~約95%、約80%~約85%、約85%~約99%、約85%~約90%、約90%~約99%、約90%~約95%又は約95%~約99%のフォトルミネッセンス量子収率を示すことができる。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したコア/シェルナノ構造は、約60%~約99%のフォトルミネッセンス量子収率を示すことができる。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したコア/シェルナノ構造は、約70%~約90%のフォトルミネッセンス量子収率を示すことができる。
【0188】
[0196] フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したコア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、スペクトルの実質的にあらゆる所望の部分に及ぶことができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、約300nm~約750nm、約300nm~約650nm、約300nm~約550nm、約300nm~約450nm、約450nm~約750nm、約450nm~約650nm、約450nm~約550nm、約450nm~約750nm、約450nm~約650nm、約450nm~約550nm、約550nm~約750nm、約550nm~約650nm又は約650nm~約750nmの発光極大を有することができる。
【0189】
[0197] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、赤色範囲内で発光する。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約600nm~約650nm、約600nm~約640nm、約600nm~約630nm、約600nm~約620nm、約600nm~約610nm、約610nm~約650nm、約610nm~約640nm、約610nm~約630nm、約610nm~約620nm、約620nm~約650nm、約620nm~約640nm、約620nm~約630nm、約630nm~約650nm、約630nm~約640nm又は約640nm~約650nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、インジウムを含むコアを含む。
【0190】
[0198] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、緑色範囲内で発光する。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約510nm~約560nm、約510nm~約550nm、約510nm~約540nm、約510nm~約530nm、約510nm~約520nm、約520nm~約560nm、約520nm~約550nm、約520nm~約540nm、約520nm~約530nm、約530nm~約560nm、約530nm~約550nm、約530nm~約540nm、約540nm~約560nm、約540nm~約550nm又は約550nm~約560nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、赤色範囲内で発光する。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約525nm~約535nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、亜鉛を含むコアを含む。
【0191】
[0199] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、青色、インジゴ、紫色及び/又は紫外の範囲内で発光する。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約420nm~約470nm、約420nm~約460nm、約420nm~約450nm、約420nm~約440nm、約420nm~約430nm、約430nm~約470nm、約430nm~約460nm、約430nm~約450nm、約430nm~約440nm、約440nm~約470nm、約440nm~約460nm、約440nm~約450nm、約450nm~約470nm、約450nm~約460nm又は約460nm~約470nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、約450nm~約460nmのフォトルミネッセンスピーク波長を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、亜鉛を含むコアを含む。
【0192】
[0200] フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したコア/シェルナノ構造のサイズ分布は、比較的狭いことができる。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化した集団又はコア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、約10nm~約60nm、約10nm~約40nm、約10nm~約30nm、約10nm~約20nm、約20nm~約60nm、約20nm~約40nm、約20nm~約30nm、約30nm~約60nm、約30nm~約40nm又は約40nm~約60nmの半値全幅を有することができる。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化した集団又はコア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、約35nm~約45nmの半値全幅を有することができる。
【0193】
フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したナノ構造のコロイド安定性の増加
[0201] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、溶媒中のコロイド懸濁液として保管される。コロイドは、微視的に分散した不溶性粒子のある物質が別の物質全体に懸濁する混合物である。コロイド安定性は、平衡状態で懸濁したままとなる不溶性粒子の数を測定することによって求めることができる。コロイド安定性は、不溶性粒子の凝集又は沈降によって妨害されることがある。
【0194】
[0202] フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンを有するナノ構造を不動態化することでコロイド安定性が増加し、長期間のナノ粒子の保管が可能となる。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したナノ構造は、約10℃~約90℃の温度において、約1分~約3年、約1分~約12か月、約1分~約6か月、約1分~約3か月、約1分~約1か月、約1分~約15日、約1分~約1日、約1日~約3年、約1日~約12か月、約1日~約6か月、約1日~約3か月、約1日~約1か月、約1日~約7日、約1日~約15日、約1日~約7日、約1日~約2日、約2日~約3年、約2日~約12か月、約2日~約6か月、約2日~約3か月、約2日~約1か月、約2日~約15日、約2日~約7日、約7日~約3年、約7日~約12か月、約7日~約6か月、約7日~約3か月、約7日~約1か月、約7日~約15日、約15日~約3年、約15日~約12か月、約15日~約6か月、約15日~約3か月、約15日~約1か月、約1か月~約3年、約1か月~約12か月、約1か月~約6か月、約1か月~約3か月、約3か月~約3年、約3か月~約12か月、約3か月~約6か月、約6か月~約3年、約6か月~約12か月又は約12か月~約3年にわたって保管することができる。
【0195】
[0203] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したナノ構造は、約30℃~約90℃の温度において、約1分~約3年、約1分~約12か月、約1分~約6か月、約1分~約3か月、約1分~約1か月、約1分~約15日、約1分~約1日、約1日~約3年、約1日~約12か月、約1日~約6か月、約1日~約3か月、約1日~約1か月、約1日~約7日、約1日~約15日、約1日~約7日、約1日~約2日、約2日~約3年、約2日~約12か月、約2日~約6か月、約2日~約3か月、約2日~約1か月、約2日~約15日、約2日~約7日、約7日~約3年、約7日~約12か月、約7日~約6か月、約7日~約3か月、約7日~約1か月、約7日~約15日、約15日~約3年、約15日~約12か月、約15日~約6か月、約15日~約3か月、約15日~約1か月、約1か月~約3年、約1か月~約12か月、約1か月~約6か月、約1か月~約3か月、約3か月~約3年、約3か月~約12か月、約3か月~約6か月、約6か月~約3年、約6か月~約12か月又は約12か月~約3年にわたって保管することができる。
【0196】
ナノ構造膜
[0204] 幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフロウリドアニオンで官能化したコア/シェルナノ構造がナノ構造膜中に組み込まれる。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含み、ナノ構造は、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団であって、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む、ナノ構造の少なくとも1つの集団と;(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子;又は(b’)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンとを含み;フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ナノ構造の1~5つの集団を含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ナノ構造の1つの集団を含む。
【0197】
[0205] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、少なくとも1つの有機樹脂をさらに含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は1つの有機樹脂をさらに含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、1つ~5つの有機樹脂をさらに含む。幾つかの実施形態では、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したコア/シェルナノ構造は、少なくとも1つの有機樹脂を含むマトリックス中に埋め込まれる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの有機樹脂は、熱硬化性樹脂又はUV硬化性樹脂である。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの有機樹脂は、UV硬化性樹脂である。本明細書において使用される場合、「埋め込まれる」という用語は、ナノ構造が、マトリックスの主要成分を構成するマトリックス材料中に囲い込まれるか又は包み込まれることを示すために使用される。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、マトリックス材料全体に均一に分布する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、用途に特有の均一分布関数に従って分布する。
【0198】
[0206] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、青色可視波長スペクトル、緑色可視波長スペクトル又は赤色可視波長スペクトルで発光するサイズを有する均一集団を含むことができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、青色可視波長スペクトルで発光するサイズを有するナノ構造の第1の集団、緑色可視波長スペクトルで発光するサイズを有するナノ構造の第2の集団及び赤色可視波長スペクトルで発光するサイズを有するナノ構造の第3の集団を含むことができる。
【0199】
[0207] マトリックス材料は、ナノ構造を収容可能なあらゆる適切なホストマトリックス材料であり得る。適切なマトリックス材料は、ナノ構造と、ナノ構造膜をデバイスに取り付けるために使用される任意の周囲のパッケージング材料又は層とに対して化学的及び光学的に適合性であり得る。適切なマトリックス材料は、一次光及び二次光の両方に対して透明である非黄変光学材料を含むことができ、それによって一次光及び二次光の両方がマトリックス材料を透過することができる。マトリックス材料は、ポリマーと、有機及び無機酸化物とを含むことができる。マトリックス材料中での使用に適切なポリマーは、そのような目的に使用できることが当業者に知られているあらゆるポリマーであり得る。ポリマーは、実質的に半透明又は実質的に透明であり得る。マトリックス材料としては、エポキシ、アクリレート、ノルボルネン、ポリエチレン、ポリ(ビニルブチラール):ポリ(酢酸ビニル)、ポリ尿素、ポリウレタン;シリコーン及びシリコーン誘導体、例えば、限定するものではないが、アミノシリコーン(AMS)、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリフェニルアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリジアルキルシロキサン、シルセスキオキサン、フッ素化シリコーン並びにビニル及び水素化物で置換されたシリコーン;限定するものではないが、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びラウリルメタクリレートなどのモノマーから形成されるアクリルポリマー及びコポリマー;スチレン系ポリマー、例えばポリスチレン、アミノポリスチレン(APS)及びポリ(アクリロニトリルエチレンスチレン)(AES);ジビニルベンゼンなどの二官能性モノマーと架橋するポリマー;配位子材料の架橋に適切な架橋剤、配位子アミン(例えば、APS又はポリエチレンイミン配位子アミン)と結合してエポキシを形成するエポキシドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0200】
[0208] 幾つかの実施形態では、マトリックス材料は、ナノ構造膜の光変換効率を改善できるTiO2マイクロビーズ、ZnSマイクロビーズ又はガラスマイクロビーズなどの散乱性マイクロビーズを含む。幾つかの実施形態では、マトリックス材料は、遮光要素を含むことができる。
【0201】
[0209] 幾つかの実施形態では、マトリックス材料は、低い酸素透過性及び透湿性を有することができ、高い光及び化学安定性を示すことができ、好都合な屈折率を示すことができ、ナノ構造の外面に接着することができ、そのため、ナノ構造を保護するための気密シールを提供することができる。別の一実施形態では、ロールツーロール加工を容易にするために、マトリックス材料はUV又は熱硬化方法を用いて硬化させることができる。
【0202】
[0210] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ナノ構造をポリマー(例えば、フォトレジスト)中に混合し、そのナノ構造-ポリマー混合物を基板上にキャストすること、ナノ構造をモノマーと混合してそれらを互いに重合させること、ナノ構造をゾルゲル中で混合して酸化物を形成すること又は当業者に周知のあらゆる他の方法によって形成することができる。
【0203】
[0211] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜の形成は、フィルム押出成形法を含むことができる。フィルム押出成形法は、マトリックス材料と、フッ化物含有配位子又はフッ化物アニオンで官能化したナノ構造などの障壁層でコーティングされたコアシェルナノ構造との均一混合物を形成することと、均一混合物を押出機中に供給する上部搭載ホッパー中に導入することとを含むことができる。幾つかの実施形態では、均一混合物は、ペレットの形態であり得る。フィルム押出成形法は、ナノ構造膜をスロットダイから押出成形することと、押出成形されたナノ構造膜を冷却ロールに通すこととをさらに含むことができる。幾つかの実施形態では、押出成形されたナノ構造膜は、約75μm未満、例えば、約70μm~約40μm、約65μm~約40μm、約60μm~約40μm又は約50μm~約40μmの範囲内の厚さを有することができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、約10μm未満の厚さを有する。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜の形成は、フィルム押出成形法後に二次的方法を任意選択的に含むことができる。二次的方法は、共押出、熱成形、真空成形、プラズマ成形、成形及び/又はナノ構造膜層の上面にテクスチャーを形成するためのエンボス加工などの方法を含むことができる。テクスチャー加工された上面のナノ構造膜は、例えば、ナノ構造膜の画定された光拡散特性及び/又は画定された角度の光学発光特性の改善に役立つ場合がある。
【0204】
成形物品
[0212] 幾つかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるいずれかのナノ構造を含む成形物品を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるいずれかのナノ構造膜を含む成形物品を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造を含む成形物品であって、ナノ構造は、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団であって、ナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む、ナノ構造の少なくとも1つの集団と;(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子;又は(b’)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンとを含み;フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、成形物品を提供する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。
【0205】
[0213] 幾つかの実施形態では、成形物品は、膜、ディスプレイデバイスの基板又は発光ダイオードである。幾つかの実施形態では、成形物品は、エレクトロルミネッセンスデバイスである。
【0206】
[0214] 幾つかの実施形態では、成形物品は、量子ドット層を含む。幾つかの実施形態では、量子ドット層は、パターン化された量子ドット層を含む。
【0207】
[0215] 幾つかの実施形態では、量子ドット層は、約1μm~約25μmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、量子ドット層は、約5μm~約25μmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、量子ドット層は、約10μm~約12μmの厚さを有する。
【0208】
ナノ構造層の製造
[0216] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層は、ポリマーマトリックス中に埋め込むことができる。本明細書において使用される場合、「埋め込まれる」という用語は、ナノ構造集団が、マトリックスの成分の大部分を構成するポリマーで囲い込まれるか又は包み込まれることを示すために使用される。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのナノ構造集団は、マトリックス全体にわたって適宜均一に分布する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのナノ構造集団は、用途に特有の分布に従って分布する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、ポリマー中に混合され、基板の表面に塗布される。
【0209】
[0217] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、堆積されてナノ構造層を形成する。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、限定するものではないが、塗装、スプレーコーティング、溶媒噴霧、湿式コーティング、接着剤コーティング、スピンコーティング、テープコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、インクジェット蒸気噴射、ドロップキャスティング、ブレードコーティング、ミスト堆積又はそれらの組合せなどの当技術分野において周知のあらゆる適切な方法によって堆積することができる。ナノ構造組成物は、基板の所望の層上に直接コーティングすることができる。代わりに、ナノ構造組成物から固体層を独立した要素として形成し、続いて基板に取り付けることができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、1つ以上の障壁層上に堆積することができる。
【0210】
[0218] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層は、堆積後に硬化される。適切な硬化方法としては、UV硬化などの光硬化及び熱硬化が挙げられる。従来の積層膜加工方法、テープコーティング方法及び/又はロールツーロール製造方法をナノ構造層の形成に使用することができる。
【0211】
スピンコーティング
[0219] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、スピンコーティングを用いて基板上に堆積される。スピンコーティングでは、真空によって固定される、スピナーと呼ばれる機械上に搭載された基板の中央に少量の材料が典型的には堆積される。スピナーによって基板に高速回転が生じ、それによって向心力が生じて、材料が基板の中央から端部まで広がる。材料の大部分は、振り落とされるが、ある量は基、板に残り、回転を続けると、表面上に材料の薄膜が形成される。膜の最終厚さは、回転速度、加速及び回転時間などのスピンプロセスで選択されるパラメーターに加えて、堆積される材料及び基板の性質によって決定される。制御された厚さを実現するために必要なスピンコーティング条件は、堆積される材料の粘度及び温度に大きく依存する。幾つかの実施形態では、約1500rpm~約6000rpmの回転速度が約10~60秒の回転時間とともに使用される。
【0212】
ミスト堆積
[0220] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、ミスト堆積を用いて基板上に堆積される。ミスト堆積は、室温及び大気圧で行われ、プロセス条件を変化させることによって膜厚を正確に制御することができる。ミスト堆積中、窒素ガスにより、液体原料物質は非常に微細なミストにされて堆積チャンバーまで送られる。次に、このミストは、フィールドスクリーンとウエハホルダーとの間の高電圧電位によってウエハ表面に引き寄せられる。液滴がウエハ表面上で凝集した後、ウエハをチャンバーから取り出し、熱硬化させることで溶媒を蒸発させることができる。液体前駆体は、溶媒と、堆積される材料との混合物である。これが加圧窒素ガスによって噴霧器に送られる。Price, S.C., et al.,“Formation of Ultra-Thin Quantum Dot Films by Mist Deposition,”ESC Transactions 11:89-94 (2007)。
【0213】
スプレーコーティング
[0221] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、スプレーコーティングを用いて基板上に堆積される。スプレーコーティングの典型的な設備は、スプレーノズル、噴霧器、前駆体溶液及びキャリアガスを含む。スプレー堆積プロセスでは、前駆体溶液は、キャリアガスにより、又は霧化(例えば、超音波、エアブラスト又は静電気による)によりマイクロサイズの液滴に微細化される。噴霧器から出た液滴は、必要に応じて制御及び調節されるキャリアガスを用いてノズルを介して基板表面によって加速される。スプレーノズルと基板との間の相対運動は、基板上を完全に覆う目的のための設計によって規定される。
【0214】
[0222] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物の塗布は、溶媒をさらに含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物を塗布するための溶媒は、水、有機溶媒、無機溶媒、ハロゲン化有機溶媒又はそれらの混合物である。実例となる溶媒としては、水、D2O、アセトン、エタノール、ジオキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、アニソール、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、トルエン、ジメチルスルホキシド、シクロペンタノン、テトラメチレンスルホキシド、キシレン、ε-カプロラクトン、テトラヒドロフラン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0215】
[0223] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物を熱硬化させてナノ構造層が形成される。幾つかの実施形態では、組成物は、UV光を用いて硬化される。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物がナノ構造膜の障壁層上に直接コーティングされ、続いて追加の障壁層がナノ構造層上に堆積されて、ナノ構造膜が形成される。強度、安定性及びコーティング均一性を高めるため、且つ料の不整合性、気泡形成及び障壁層材料又は他の材料のしわ若しくは折れ曲がりを防止するため、障壁膜の下に支持基板を使用することができる。さらに、上部及び底部の障壁層間に材料を封入するために、好ましくは1つ以上の障壁層がナノ構造層上に堆積される。適切には、障壁層は、積層フィルムとして堆積して、任意選択的に封止又はさらなる処理を行うことができ、続いてナノ構造膜を個別の発光デバイス中に組み込むことができる。ナノ構造組成物の堆積方法は、当業者によって理解されるように、さらなる成分又は異なる成分を含むことができる。このような実施形態は、明るさ及び色などのナノ構造発光特性(例えば、量子ドット膜の白色点を調節するため)並びにナノ構造膜厚及び他の特性のインラインプロセス調整が可能である。さらに、これらの実施形態により、製造中のナノ構造膜特性の定期的検査及び正確なナノ構造膜特性を実現するためのあらゆる必要なトグリングが可能となる。コンピュータープログラムを使用して、ナノ構造膜の形成に使用される混合物のそれぞれの量を電子的に変更できるため、このような試験及び調整は、加工ラインの機械的構成を変更せずに実現することもできる。
【0216】
障壁層
[0224] 幾つかの実施形態では、成形物品は、ナノ構造層の一方又は両方の側に配置される1つ以上の障壁層を含む。適切な障壁層により、ナノ構造層及び成形物品が高温、酸素及び水分などの環境条件から保護される。適切な障壁材料としては、疎水性であり、成形物品と化学的及び機械的に適合性であり、光安定性及び化学安定性を示し、高温に耐えることができる非黄変透明光学材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、1つ以上の障壁層は、成形物品と屈折率整合される。幾つかの実施形態では、成形物品のマトリックス材料と1つ以上の隣接障壁層とは、ほぼ同等の屈折率を有するように屈折率整合され、それによって障壁層を透過して成形物品に向かう光の大部分が障壁層からナノ構造層中まで透過する。この屈折率整合により、障壁とマトリックス材料との間の界面における光学的損失が低減される。
【0217】
[0225] 障壁層は、適切には固体材料であり、硬化した液体、ゲル又はポリマーであり得る。障壁層は、個別の用途により、可撓性又は非可撓性の材料を含むことができる。障壁層は、好ましくは、平面層であり、個別の発光用途により、あらゆる適切な形状及び表面形態を含むことができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の障壁層は、積層膜加工技術に適合可能であり、それによってナノ構造層が少なくとも1つの第1の障壁層上に配置され、少なくとも1つの第2の障壁層がナノ構造層の反対側のナノ構造層上に配置されて、一実施形態による成形物品が形成される。適切な障壁材料としては、当技術分野において周知のあらゆる適切な障壁材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、適切な障壁材料としては、ガラス、ポリマー及び酸化物が挙げられる。適切な障壁層材料としては、ポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート(PET);酸化物、例えば酸化ケイ素、酸化チタン又は酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2又はAl2O3);並びに適切なそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、成形物品の各障壁層は、異なる材料又は組成物を含む少なくとも2つの層を含み、それにより、その多層障壁によって障壁層中のピンホール欠陥配列が解消又は低減され、ナノ構造層中に透過する酸素及び水分に対する有効な障壁が得られる。ナノ構造層は、あらゆる適切な材料又は材料の組合せを含むことができ、ナノ構造層のいずれか又は両方の側にあらゆる適切な数の障壁層を含むことができる。障壁層の材料、厚さ及び数は、個別の用途によって決定され、ナノ構造層の障壁保護及び明るさが最大化され、同時に成形物品の厚さが最小限となるように適宜選択される。好ましい実施形態では、各障壁層は、積層膜、好ましくは二重積層膜を含み、各障壁層の厚さは、ロールツーロール又は積層体製造プロセスにおけるしわをなくすのに十分な厚さである。障壁の数又は厚さは、ナノ構造が重金属又は他の毒性材料を含む実施形態では法的な毒性指針によりさらに左右されることがあり、この指針により、より多い又はより厚い障壁層が必要となり得る。障壁に関するさらなる考慮事項としては、コスト、利用可能性及び機械的強度が挙げられる。
【0218】
[0226] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ナノ構造層のそれぞれの側に隣接して2つ以上の障壁層を含み、例えばそれぞれの側に2つ若しくは3つの層又はナノ構造層のそれぞれの側に2つの障壁層を含む。幾つかの実施形態では、各障壁層は、薄いガラス板、例えば約100μm、100μm以下又は50μm以下の厚さを有するガラス板を含む。
【0219】
[0227] 成形物品のそれぞれの障壁層は、あらゆる適切な厚さを有することができる。これは、当業者によって理解されるように、発光デバイス及び用途並びに障壁層及びナノ構造層などの個別の膜構成要素の個別の要求及び特性によって決定される。幾つかの実施形態では、各障壁層は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下又は15μm以下の厚さを有することができる。ある実施形態では、障壁層は、酸化ケイ素、酸化チタン及び酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2又はAl2O3)などの材料を含むことができる酸化物コーティングを含む。酸化物コーティングは、約10μm以下、5μm以下、1μm以下又は100nm以下の厚さを有することができる。ある実施形態では、障壁は、約100nm以下、10nm以下、5nm以下又は3nm以下の厚さの薄い酸化物コーティングを含む。上部及び/又は底部の障壁は、薄い酸化物コーティングからなることができるか、又は薄い酸化物コーティングと1つ以上の追加の材料層とを含むことができる。
【0220】
ナノ構造層の特徴及び実施形態
[0228] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層は、ディスプレイデバイスの形成に使用される。本明細書において使用される場合、ディスプレイデバイスは、発光型ディスプレイを有するあらゆるシステムを意味する。このようなデバイスとしては、液晶ディスプレイを含むデバイス、有機発光ダイオード(OLED)又はマイクロLEDなどの発光ディスプレイ、テレビ、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、ゲーム用デバイス、電子書籍リーダー、デジタルカメラなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0221】
[0229] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、「オンチップ」配置によってディスプレイデバイス中に組み込まれる。本明細書において使用される場合、「オンチップ」は、発光ダイオードカップ中にナノ構造を配置することを意味する。幾つかの実施形態では、ナノ構造を樹脂又は流体中に溶解させて、発光ダイオードカップ中に充填する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、「ニアチップ」配置によってディスプレイデバイス中に組み込まれる。本明細書において使用される場合、「ニアチップ」は、ナノ構造膜を通過して光が放出されるように、発光ダイオード組立体の上面にナノ構造をコーティングすることを意味する。
【0222】
エレクトロルミネッセンスデバイス
[0230] 幾つかの実施形態では、成形物品は、エレクトロルミネッセンスデバイスである。幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は、液晶ディスプレイ又は発光ダイオードである。
【0223】
[0231] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、照明デバイスの発光層の形成に使用される。照明デバイスは、フレキシブルエレクトロニクス、タッチスクリーン、モニター、テレビ、携帯電話及びあらゆる他の高解像度ディスプレイなどの多様な用途に使用することができる。幾つかの実施形態では、照明デバイスは、発光ダイオード又は液晶ディスプレイである。幾つかの実施形態では、照明デバイスは、量子ドット発光ダイオード(QLED)である。QLEDの一例は、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第15/824,701号に開示されている。
【0224】
[0232] 幾つかの実施形態では、本開示は、
(a)第1の伝導層と;
(b)第2の伝導層と;
(c)第1の伝導層と第2の伝導層との間の発光層と
を含む発光ダイオードであって、発光層は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含み、ナノ構造は、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と;(b)ナノ構造の表面に結合された少なくとも1つのフッ化物含有配位子とを含み;フッ化物含有配位子は、フルオロジンケート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、発光ダイオードを提供する。
【0225】
[0233] 幾つかの実施形態では、本開示は、
(a)第1の伝導層と;
(b)第2の伝導層と;
(c)第1の伝導層と第2の伝導層との間の発光層と
を含む発光ダイオードであって、発光層は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含み、ナノ構造は、(a)ナノ構造の少なくとも1つの集団と;(b)ナノ構造の表面に結合されたフッ化物アニオンとを含む、発光ダイオードを提供する。
【0226】
[0234] 幾つかの実施形態では、発光層は、ナノ構造膜である。
【0227】
[0235] 幾つかの実施形態では、発光ダイオードは、第1の伝導層と、第2の伝導層と、発光層とを含み、発光層は、第1の伝導層と第2の伝導層との間に配置される。幾つかの実施形態では、発光層は、薄膜である。
【0228】
[0236] 幾つかの実施形態では、発光ダイオードは、第1の伝導層と第2の伝導層との間に正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送層などのさらなる層を含む。幾つかの実施形態では、正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送層は、薄膜である。幾つかの実施形態では、これらの層は、基板上に積層される。
【0229】
[0237] 第1の伝導層及び第2の伝導層に電圧が印加されると、第1の伝導層で注入された正孔は、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を介して発光層まで移動し、第2の伝導層から注入された電子は、電子輸送層を介して発光層まで移動する。発光層中で正孔と電子とが再結合して励起子を生成する。
【0230】
基板
[0238] 基板は、発光ダイオードの製造に一般に使用されるあらゆる基板であり得る。幾つかの実施形態では、基板は、ガラスなどの透明基板である。幾つかの実施形態では、基板は、ポリイミドなどの可撓性材料又はポリエチレンテレフタレートなどの可撓性で透明の材料である。幾つかの実施形態では、基板は、約0.1mm~2mmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、基板は、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板又はシリコン基板である。
【0231】
第1の伝導層
[0239] 幾つかの実施形態では、第1の伝導層は、基板上に堆積される。幾つかの実施形態では、第1の伝導層は、伝導層のスタックである。幾つかの実施形態では、第1の伝導層は、約50nm~約250nmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、第1の伝導層は、例えば、スパッタリング又は電子ビーム蒸着などのあらゆる周知の堆積技術を用いて薄膜として堆積される。幾つかの実施形態では、第1の伝導層は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物、二酸化スズ、酸化亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、アルミニウム-リチウム、カルシウム、マグネシウム-インジウム、マグネシウム-銀、銀、金又はそれらの混合物を含む。幾つかの実施形態では、第1の伝導層は、アノードである。
【0232】
第2の伝導層
[0240] 幾つかの実施形態では、全層構造を第1の伝導層と第2の伝導層との間に挟むことができる。幾つかの実施形態では、第1の伝導層は、デバイスのアノードとして機能する一方、第2の伝導層は、デバイスのカソードとして機能する。幾つかの実施形態では、第2の伝導層は、アルミニウムなどの金属である。幾つかの実施形態では、第2の伝導層は、約100nm~約150nmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、第2の伝導層は、伝導層のスタックである。例えば、第2の伝導層は、ITOの2つの層間に挟まれた銀の層(ITO/Ag/ITO)を含むことができる。
【0233】
[0241] 幾つかの実施形態では、第2の伝導層は、インジウムスズ酸化物、酸化インジウムと亜鉛との合金、二酸化チタン、酸化スズ、硫化亜鉛、銀又はそれらの混合物を含む。
【0234】
半導体ポリマー層
[0242] 幾つかの実施形態では、発光ダイオードは、半導体ポリマー層をさらに含む。幾つかの実施形態では、半導体ポリマー層は、正孔注入層として機能する。幾つかの実施形態では、導体ポリマー層は、第1の伝導層上に堆積される。幾つかの実施形態では、半導体ポリマー層は、真空蒸着、スピンコーティング、印刷、キャスティング、スロットダイコーティング又はラングミュア-ブロジェット(LB)堆積によって堆積される。幾つかの実施形態では、半導体ポリマー層は、約20nm~約60nmの厚さを有する。
【0235】
[0243] 幾つかの実施形態では、半導体ポリマー層は、銅フタロシアニン、4,4’,4’’-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4’,4’’-トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4’’-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(2T-NATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ショウノウスルホン酸又はポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)を含む。
【0236】
第1の輸送層
[0244] 幾つかの実施形態では、発光ダイオードは、第1の伝導層と第2の伝導層との間に発生した電界によって生じる電子及び正孔の輸送を促進するための輸送層をさらに含む。幾つかの実施形態では、発光ダイオードは、第1の伝導層に関連する第1の輸送層をさらに含む。幾つかの実施形態では、第1の輸送層は、正孔輸送層(及び電子及び/又は励起子阻止層)として機能する。幾つかの実施形態では、第1の輸送層は、第1の伝導層上に堆積される。幾つかの実施形態では、第1の輸送層は、半導体ポリマー層上に堆積される。幾つかの実施形態では、第1の輸送層は、約20nm~約50nmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、第1の輸送層は、可視光に対して実質的に透明である。
【0237】
[0245] 幾つかの実施形態では、第1の輸送層は、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリン又はそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。幾つかの実施形態では、第1の輸送層は、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(4-ビニルフェニル)-4,4’-ジアミン、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]又はポリ(9-ビニルカルバゾール)を含む。
【0238】
第2の輸送層
[0246] 幾つかの実施形態では、発光ダイオードは、第2の輸送層をさらに含む。幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、電子輸送層(及び正孔及び/又は励起子阻止層)として機能する。幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、発光層に接触する。幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、発光層と第2の伝導層との間に配置される。幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、約20nm~約50nmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、可視光に対して実質的に透明である。
【0239】
[0247] 幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラキシン(pyraxine)、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンズアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリン、トリアリールボラン、金属酸化物及びそれらの組合せからなる群から選択される材料を含む。幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、1,3-ビス(3,5-ジピリド-3-イルフェニル)ベンゼン(B3PyPB)、バソクプロイン、バソフェナントロリン、3-(ビフェニル-4-イル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール、2-(4-ビフェニリル)-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール、3,5-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール、ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ)アルミニウム、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、3,5-ジフェニル-4-(1-ナフチル)-1H-1,2,4-トリアゾール、1,3,5-トリ(m-ピリジン-3-イルフェニル)ベンゼン(TmPyPB)、2,2’,2”-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンゾイミダゾール)(TPBi)、トリス-(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム、TiO2、ZnO、SnO2、SiO2、ZrO2又はZnMgOを含む。幾つかの実施形態では、第2の輸送層は、ZnMgOを含む。
【0240】
[0248] 第1の伝導層及び第2の伝導層の極性が逆になる場合、第1の輸送層及び第2の輸送層の役割が逆になる。
【0241】
ガラス液晶ディスプレイデバイス上の量子ドット
[0249] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ガラス液晶ディスプレイデバイス上の量子ドット中に組み込まれる。液晶ディスプレイデバイスは、中間の基板又は障壁層を必要とせずに、導光板(LGP)上に直接形成されたナノ構造膜を含むことができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、薄膜であり得る。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、500μm以下、100μm以下又は50μm以下の厚さを有することができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、約15μm以下の厚さを有する薄膜である。
【0242】
[0250] LGPは、ガラスを含む少なくとも1つの上面を含む1つ以上の側面を有する光キャビティを含むことができる。ガラスにより、水分及び空気などの不純物に対する優れた耐性が得られる。さらに、ガラスは、構造的剛性を維持しながら薄い基板として成形することができる。したがって、LGPは、十分な障壁及び構造特性を有する基板を得るために、少なくとも部分的にガラス表面に形成することができる。
【0243】
[0251] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜をLGP上に形成することができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、樹脂などのマトリックス材料中に埋め込まれたナノ構造の集団を含む。湿式コーティング、塗装、スピンコーティング又はスクリーン印刷などの当技術分野において周知のあらゆる方法により、LGP上にナノ構造膜を形成することができる。堆積後、ナノ構造膜の樹脂を硬化させることができる。幾つかの実施形態では、1つ以上のナノ構造膜の樹脂を部分的に硬化させ、さらに処理し、次に最終的に硬化させることができる。ナノ構造膜は、1つの層として、すなわち別個の層として堆積することができ、別個の層は種々の性質を含むことができる。ナノ構造膜の幅及び高さは、あらゆる所望の寸法であり得、ディスプレイデバイスの表示パネルのサイズによって左右される。例えば、腕時計及び電話などの小型のディスプレイデバイスの実施形態では、ナノ構造膜は、比較的小さい表面積を有することができるか、又はTV及びコンピューターのモニターなどの大型ディスプレイデバイスの実施形態の場合、ナノ構造膜は、大きい表面積を有することができる。
【0244】
[0252] 幾つかの実施形態では、真空蒸着、蒸着などの当技術分野において周知のあらゆる方法により、ナノ構造膜上に光学的に透明な基板が形成される。光学的に透明な基板は、下にあるナノ構造膜の層及び/又は構造に対して環境的に封止するために構成することができる。幾つかの実施形態では、光学的に透明な基板中に遮光要素を含めることができる。幾つかの実施形態では、遮光要素は、基板とナノ構造膜との間に配置することができる第2の偏光フィルター中に含めることができる。幾つかの実施形態では、遮光要素は、例えば、一次光(例えば、青色光、UV光又はUV光と青色光との組合せ)を反射しながら、二次光を透過させることができるダイクロイックフィルターであり得る。遮光要素は、変換されていないUV光を赤色及び緑色のサブピクセルから除去するため、及び/又はUV光を青色サブピクセルから除去するための特殊なUV光フィルター部品を含むことができる。
【0245】
改善された性質を有する成形物品
[0253] 幾つかの実施形態では、ナノ構造を用いて作製した成形物品は、約1.5%~約20%、約1.5%~約15%、約1.5%~約12%、約1.5%~約10%、約1.5%~約8%、約1.5%~約4%、約1.5%~約3%、約3%~約20%、約3%~約15%、約3%~約12%、約3%~約10%、約3%~約8%、約8%~約20%、約8%~約15%、約8%~約12%、約8%~約10%、約10%~約20%、約10%~約15%、約10%~約12%、約12%~約20%、約12%~約15%又は約15%~約20%のEQEを示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造を用いて作製した成形物品は、約1.5%~約15%.%のEQEを示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造を用いて作製した成形物品は、約5%のEQEを示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、量子ドットである。幾つかの実施形態では、成形物品は、発光ダイオードである。
【0246】
[0254] エレクトロルミネッセンスデバイスである成形物品は、動作下で初期輝度(500ニト)の80%に到達する時間によって測定すると、改善された安定性を示す。幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、約100秒~約700秒、約100秒~約600秒、約100秒~約500秒、約100秒~約400秒、約100秒~約300秒、約100秒~約200秒、約200秒~約700秒、約200秒~約600秒、約200秒~約500秒、約200秒~約400秒、約200秒~約300秒、約300秒~約700秒、約300秒~約600秒、約300秒~約500秒、約300秒~約400秒、約400秒~約700秒、約400秒~約600秒、約400秒~約500秒、約500秒~約700秒、約500秒~約600秒又は約600秒~約700秒後に初期輝度の80%に到達する。幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、約600秒後に初期輝度の80%に到達する。幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、約6時間~約11時間、約6時間~約10時間、約6時間~約9時間、約6時間~約8時間、約6時間~約7時間、約7時間~約11時間、約7時間~約10時間、約7時間~約9時間、約7時間~約8時間、約8時間~約11時間、約8時間~約10時間、約8時間~約9時間、約9時間~約11時間、約9時間~約10時間又は約10時間~約11時間後に初期輝度の50%に到達する。幾つかの実施形態では、エレクトロルミネッセンスデバイスは、約10時間後に初期輝度の50%に到達する。
【0247】
[0255] 以下の例は、本明細書に記載の製造物及び方法の説明的で非限定的な例である。当分野において通常直面し、本開示を考慮すれば当業者に明らかである種々の条件、配合及び他のパラメーターの適切な修正及び適合は、本発明の意図及び範囲内にある。
【実施例】
【0248】
実施例1
配位子交換及びナノ構造の性質
[0256] カルボキシレート配位子を、カルボキシレート配位子よりも高い電圧で電気化学的酸化が起こると予想されるハロジンケート配位子(例えば、テトラクロロジンケート、テトラフルオロジンケート、ジクロロジフルオロジンケート)と交換した。引き続くステップでは、テトラフルオロジンケートでキャップされたナノ構造のカリウム対イオンをテトラアルキルアンモニウムカチオンと交換し、これによって非極性溶媒に溶解性となり、交換されたナノ構造は、エレクトロルミネッセンスQD-LEDの典型的な製造方法及び構造に適合させることができた。
図1は、カルボキシレートでキャップされたナノ構造から、テトラアルキルアンモニウム対イオンを有し、テトラフルオロジンケートでキャップされたナノ構造への配位子交換手順を示すフローチャートを示す。
【0249】
[0257]
図2は、単座及び多座の配位モードによるテトラフルオロジンケートのナノ構造表面への配位結合を概略的に示し、ナノ構造、フルオロメタレート配位子及びアンモニウムカチオン間の相互作用を示す。アンモニウム塩界面活性剤は、配位子と見なしておらず、その理由は、ナノ構造表面に対して共有結合しなかったからである。無機ハロメタレート配位子によって表面不動態化が得られる。全方向性の静電相互作用により、アンモニウムカチオンは、帯電したナノ構造表面と会合した。
【0250】
[0258] 赤色InPナノ構造に対して行った交換手順を赤外分光法によって追跡した(
図3)。
図3は、オレエートでキャップされたナノ構造(表1中の試料3);テトラクロロジンケート及びカリウム対イオンでキャップされたナノ構造;並びにテトラクロロジンケート及びジドデシルジメチルアンモニウム対イオンでキャップされたナノ構造の赤外スペクトルを示す。テトラクロロジンケート及びカリウム対イオンでキャップされたナノ構造では、アルキルシグナル(約2900cm
-1)がほとんど示されず、元のオレエート配位子がほぼ完全に置換されたことが分かる。カリウムからジドデシルジメチルアンモニウムへのカチオン交換後、アンモニウムイオン及びそのアルキル鎖に対応するシグナルが観察された。結果として得られた材料は、アンモニウム塩からの有機含有量が少なかった(例えば、熱重量分析で600℃まで加熱すると15重量%の減少であった)。
【0251】
[0259] 本来のオレエート配位子が除去されたことのさらなる証拠は、
1H NMR分光法により、交換後に5.4~5.8ppmのアルキレン領域に示された残留シグナルがわずかであることから得られた(
図4)。
図4は、オレエートでキャップされたナノ構造;並びにフルオロジンケート配位子及びジドデシルジメチルアンモニウム対イオン(表1中の試料7)でキャップされたナノ構造の
1H NMRスペクトルを示す。
1H NMRスペクトルは、内部フェロセン標準物質を有するトルエン-d8中の20mg/mLのナノ構造溶液に対して得た。挿入図は、アルキレン領域の拡大図を示した。本来の配位子の試料の場合、この領域中の広いシグナル及び鋭いシグナルは、結合されたオレエート配位子及び遊離のオレエート配位子中の二重結合をそれぞれ示す。最後に、無機配位子の存在は、X線光電子分光法によって確認され、これによるとTBA
2ZnF
4で交換された青色ナノ構造の顕著なF 1sシグナルが示されている(
図5)。
図5は、TBA
2ZnF
4で交換された青色ZnSe/ZnSナノ構造(試料8)のXPSスペクトル(F 1s領域)の、交換されていないナノ構造(比較試料2)との比較を示す。測定されたF/Zn比は、0.32であった。
【0252】
[0260] 表1は、前述の手順によって得られたナノ構造/配位子/界面活性剤/溶媒の組合せの例及び対応する溶液フォトルミネッセンス特性を示す。発光ピーク波長は、最大5nmのごくわずかなレッドシフトを示した。量子収率は、配位子交換によって2~27パーセントの減少を示した。フルオロジンケート配位子は、最良の量子収率の保存を示し、そのため、エレクトロルミネッセンスデバイス中で調べた。
【0253】
【0254】
[0261] 表2は、このようなデバイスの外部量子効率がより低いが、動作下で初期輝度(500ニト)の50%に到達する時間で測定される安定性が予期せぬことに1桁の大きさで改善されたことを示す。
【0255】
【0256】
実施例2
TBAFを用いた配位子交換及びナノ構造の性質
[0262] フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)を用いることにより、カルボキシレート配位子をフッ化物配位子と交換した。対イオンとしての高溶解性のテトラブチルアンモニウムカチオンの存在は、交換された量子ドットが依然として溶液中にあることから確認される。対照的に、実施例1に記載の従来のフッ化亜鉛交換は、沈殿を伴い、交換された量子ドットがごく一部のみ脱凝集するハロゲン化長鎖アルキルアンモニウムを用いることで後の再分散が行われる。
図6は、カルボキシレートでキャップされたナノ構造からフッ化物でキャップされたナノ構造への配位子交換手順を示すフローチャートである。
【0257】
[0263] TBAFを用いた配位子交換において、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDAC)を用いる再分散ステップが依然として使用され、その理由は、TBA+単独では、オクタン溶解性の交換された量子ドットが得られなかったからである。量子ドットが堆積されるとき、オクタンは、下にある層を損傷しないため、オクタンは、デバイス製造に好ましい溶媒である。
【0258】
[0264]
図7中に示される熱重量分析は、ZnF
2又はTBAFを用いる両方の配位子交換手順により、大部分のカルボキシレート配位子(オレイン酸亜鉛)が除去されることを示す。オレイン酸亜鉛に帰属される320℃~480℃の温度範囲における重量減は、配位子交換前の11%(重量基準)から、配位子交換後の5~6%(重量基準)まで減少している。ZnF
2の場合のより低温での重量減は、再分散のために加えたアルキルアンモニウム界面活性剤と関連している。
【0259】
[0265]
図8中に示されるように、ZnF
2で交換された量子ドットを用いて作製した薄膜と比較すると、TBAFで交換された量子ドットのスピンコーティングされた膜は、凝集によるスパイクがより少なく、スタイラスプロフィロメトリーにおいてより小さい平均粗さを示す。
【0260】
[0266] さらに、
図9中に示されるように、TBAFで交換された量子ドットから作製したエレクトロルミネッセンスデバイスは、ZnF
2で交換された量子ドットを用いて作製したデバイスよりも高い輝度及び高い効率を示す。さらに、
図3中に示されるように、ZnF
2で交換されたInP量子ドットと比較すると、TBAFで交換された赤色InP量子を用いて作製したデバイスは、デバイス寿命が約4倍に増加する。全体的に、エレクトロルミネッセンスデバイス中に使用される場合、ZnF
2で交換された量子ドットと比較すると、TBAFで交換された量子ドットは、優れた性質を示す。
【0261】
【0262】
[0267] これまで本発明を十分に説明してきたが、本発明又はそのいずれかの実施形態の範囲に影響を与えることなく、条件、配合及び他のパラメーターの広い同等の範囲内で同じことを行い得ることが当業者に理解されるであろう。本明細書に引用されるすべての特許、特許出願及び刊行物は、それら全体が参照により本明細書に完全に援用される。