(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】プッシャ、及び仕分装置
(51)【国際特許分類】
B07C 5/36 20060101AFI20240716BHJP
B65G 47/82 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B07C5/36
B65G47/82 C
(21)【出願番号】P 2020146441
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000163501
【氏名又は名称】近江度量衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】アシェナフィ テセマ アベベ
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-163443(JP,A)
【文献】特開平10-137410(JP,A)
【文献】特開2003-034425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 1/00-99/00
B65G 47/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物を載置するトレイを押し出すプッシャであって、
前記トレイに当接するヘッド部を有し、
前記トレイは、その外形が平面視において円環状に形成されており、
前記ヘッド部は、前記トレイを押し出す際に、弾性変形しながら経時的に力を該トレイに加える
吸盤で構成されることを特徴とする、プッシャ。
【請求項2】
青果物が載置されるトレイを搬送するコンベヤと、
前記コンベアによって搬送される前記トレイを、前記青果物の品質ごとに仕分ける複数のプッシャと、
を備え、
前記プッシャの各々は、前記トレイに当接するヘッド部を有し、
前記トレイは、その外形が平面視において円環状に形成されており、
前記ヘッド部は、前記トレイを押し出す際に、弾性変形しながら経時的に力を該トレイに加える
吸盤で構成されることを特徴とする、青果物の仕分装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物を載せたトレイを押し出すプッシャ、及び青果物の仕分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫後の青果物を搬送しながら選別して箱詰めする青果物選別箱詰装置では、搬送経路において生ずる振動や衝撃等によって青果物に傷や痛みが生じないようにトレイに青果物を載置した状態で搬送する。具体的には、例えばトマトや苺等の青果物であれば、ヘタ部分が略中央に配置するようにトレイに載置されて搬送される。ここで、トレイに載置された青果物を等級や階級毎に仕分けする青果物選別装置として例えば特許文献1記載の装置がある。
【0003】
特許文献1では、青果物をトレイに載置した状態で搬送するコンベアを備え、コンベアの搬送方向に沿って青果物の仕分け区分毎に複数のプールコンベアが配列されている。各プールコンベアは、コンベアの搬送方向に対して略直交する横方向に延びており、コンベアを挟んでプールコンベアの反対側に、コンベアからプールコンベアに対してフリートレイを排出するフリートレイ排出装置がそれぞれ配置されている。このフリートレイ排出装置は、アクチュエータと、アクチュエータによって水平方向に直進往復運動を行う押し出し棒と、押し出し棒のヘッド部に取り付けられた円盤状の押し出し板とを備える。処理装置から仕分排出信号がアクチュエータに入力されると、アクチュエータが押し出し棒を高速度で前方に向けて押し出す。これにより、押し出し棒の先端に取り付けられた押し出し板がコンベアを流れるトレイをプールコンベアに向かって押し出して青果物を仕分けする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の選別装置では、押し出し板による外力がそのままトレイに伝わるとともに、該外力がインパルス的(瞬間的)にトレイに加わることで、衝撃でトレイに載置された青果物が回転してしまい、例えば上述したトマトや苺等のヘタが付いた青果物であれば略中央部に配置されていたヘタ部分が側方にずれてしまうことがある。
【0006】
ここで、青果物を出荷するための箱詰工程においては、例えば青果物を吸着させてピックアップするアーム等が用いられるが、トレイに載置された青果物の姿勢(向き)、例えばヘタ部分がずれていると、青果物と吸着部との間に隙間が生じてしまい、吸着できずにアームが青果物をピックアップすることができない。また、ピックアップしたとしても青果物の方向が他の青果物とは異なるので、整然と青果物を箱に収容することが出来なくなる。そのため、ヘタ部分を略中央部に戻したり、箱詰めされた青果物を並べたりする人員がさらに必要となるという問題が生じる。
【0007】
また、この問題はトレイの搬送方向を変更する際に、プッシャでトレイを押し出して方向変換する場合にも起こりうるものである。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、トレイに載置された青果物に対する衝撃を緩和するプッシャおよび仕分装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、青果物を載置するトレイの搬送方向を変更させるプッシャであって、前記トレイを押し出す際に、当該トレイに当接するヘッド部を有し、前記ヘッド部は、前記トレイを押し出す際に、弾性変形しながら経時的に力をトレイに加えることを特徴とする。
【0010】
また、上記の目的を達成するために、本発明は、前記青果物が載置されるトレイを搬送するコンベヤと、前記コンベアによって搬送されるトレイを、前記青果物の品質ごとに仕分ける複数のプッシャと、を備え、前記プッシャの各々は、前記トレイに当接するヘッド部を有し、前記ヘッド部は、前記トレイを押し出す際に、弾性変形しながら経時的に力をトレイに加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トレイに載置された青果物に対する衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る青果物の仕分装置を示す概略図。
【
図3】上記仕分装置が有するプッシャを示す概略図。
【
図4】(a)従来のプッシャにおいてトレイにかかる外力を縦軸に、トレイに外力がかかる時間を横軸に表したグラフ。(b)本実施形態のプッシャにおいてトレイにかかる外力を縦軸に、トレイに外力がかかる時間を横軸に表したグラフ。
【
図5】他の実施形態におけるヘッド部を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
トマトの選別装置を例にして、本発明に係る実施形態を、以下、図面を用いながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の選別装置1は、トマト100が載置されたトレイ3を搬送しながら、トマト100を、その等階級に応じて仕分ける装置であって、トマト100が載置される複数のトレイ3と、トレイ3が搬送される搬送経路4が設けられた搬送機構2と、を備える。なお、本実施形態では説明のため、トマト100を想定しているが、トレイ3に載置して搬送可能な青果物であればよい。
【0015】
トレイ3は、農家より搬入されたトマト100を載置するためのものであって、本実施形態では、円環形状をなし略中央部にトマト100を載置するための孔部が設けられている。当該孔部はすり鉢形状に形成されており、孔部にトマト100が載置される。またトレイ3の底面や側面にはタグ(不図示)が埋め込まれている。このタグには、ICタグやRFタグ、バーコード等を用いることができ、トレイ3各々を識別するための識別情報を含むタグデータが入力されている。このようなトレイ3は、搬送機構2には連結されていない、いわゆるフリートレイであって、搬送機構2を構成している各コンベアの搬送面に置かれた状態で搬送される。
【0016】
搬送機構2は複数のコンベアで構成されている。複数のコンベアは、トマト100をトレイ3に載置して搬送経路4に配置する搬入エリアAに配置された搬入コンベア6と、搬送経路4を流れるトマト100を個々に検査する検査エリアBに配置された検査コンベア(不図示)と、検査結果に基づいてトマト100を仕分けする仕分けエリアCに配置された仕分けコンベア7と、トマト100を箱詰めして搬出する搬出エリア(不図示)に配置された搬出コンベア(不図示)とを備える。搬入コンベア6と検査コンベア、検査コンベアと仕分けコンベア7、仕分けコンベア7と搬出コンベアとはそれぞれ連続するように設けられている。
【0017】
搬送経路4は、トマト100を載置するトレイ3が一定方向に流れる経路であって、搬入エリアAの搬入コンベア6、検査エリアBの検査コンベア、仕分けエリアCの仕分けコンベア7及び搬出エリアの搬出コンベアにそれぞれ設けられる。
【0018】
搬入エリアAでは、搬入コンベア6の搬送経路4上にトマト100が載置されたトレイ3が配置される。搬送経路4に配置されたトレイ3は、搬入コンベア6と連続して設けられた検査コンベアに搬送される。
【0019】
検査エリアBには、外観検査装置(不図示)と内部検査装置(不図示)が設けられている。外観検査装置は、搬送経路4を流れるトマト100の大きさ(階級)および傷の有無や形状などの外観品質(外観等級)を検査する装置であって、搬送経路4を流れるトレイ3のタグから識別情報を読み取るリーダ(RFIDリーダやバーコードリーダ)と、トマト100の外観を撮像するカメラ(不図示)と、カメラから送信される画像に基づいてトマト100の階級や外観等級を判定するコンピュータと、を備える。当該コンピュータは、メインコンピュータと通信可能に接続されており、判定した階級および外観等級とリーダから取得した識別情報をメインコンピュータへと送信する。メインコンピュータは、受信した識別情報と階級および外観等級を紐づけて記憶する。
【0020】
内部検査装置は、搬送経路4を流れるトマト100の糖度や熟度などの内部品質(内部等級)を検査する装置であって、搬送経路4を流れるトレイ3のタグから識別情報を読み取るリーダ(RFIDリーダやバーコードリーダ)と、搬送経路4の上方に配置され、搬送されてきたトマト100に光を照射する光照射部(不図示)と、搬送経路4の下方に配置され、トマト100を透過した透過光を受光する受光部と、受光した光の周波数スペクトルに基づいてトマト100の内部等級を判定するコンピュータと、を備えている。当該コンピュータは、メインコンピュータと通信可能に接続されており、判定した内部等級をとリーダから取得した識別情報をメインコンピュータへと送信する。メインコンピュータは、受信した識別情報と内部等級を紐づけて記憶する。
【0021】
仕分けエリアCでは、外観検査装置において判定された階級および外部等級並びに内部検査装置において判定された内部等級に基づいて、トレイ3に載置されたトマト100を仕分けする。ここで、
図2に示すように、仕分けコンベア7は、第1仕分けコンベア7aと第2仕分けコンベア7bを備える。第1仕分けコンベア7aは検査コンベアに連続して配置される。第2仕分けコンベア7bは、第1仕分けコンベア7aと略直角をなすように隣接して配置されるものであって、これにより、第2仕分けコンベア7bのトレイ3の第2搬送方向2dが、第1仕分けコンベア7aのトレイ3の第1搬送方向1dに対して略直角をなす。この第2仕分けコンベア7bは搬出コンベアに連続して配置される。また、第2仕分けコンベア7bには第2搬送方向2dに対して平行に複数の仕切り板が配置されており、複数のレーン9(9a、9b)が設けられる。
【0022】
第1仕分けコンベア7aの搬送経路4に沿って複数のプッシャ5が配置されている。プッシャ5は、搬送経路4を流れるトレイ3の搬送方向を変えるための機器である。プッシャ5の各々は、搬送経路4に対して直角を成すようにトレイ3の搬送方向を変更するものであり、第1仕分けコンベア7aを挟んで各プッシャ5は第2仕分けコンベア7bに設けられたレーン9(9a、9b)にそれぞれ対向して配置されている。
図3に示すように、プッシャ5は、トレイ3に当接するヘッド部10及びヘッド部10を搬送経路4に向かって押し出す動力部11を備える。
【0023】
動力部11は、例えば油圧アクチュエータを用いたものであって、一方端部が閉塞する円筒形状をなすシリンダ12と、シリンダ12から高速で往復直線移動するピストン13と、ピストン13の移動を制御する制御部(不図示)と、シリンダ12及びピストン13を載置する載置台14とを備える。
【0024】
シリンダ12は、一方端部及び他方端部にはそれぞれ作動油をシリンダ12内部に流入/流出するための孔部(不図示)が設けられており、該孔部には作動油を流入/流出するためのチューブ15が接続されている。ここで、載置台14には、シリンダ12の外径と同じ内径を有する孔部が形成された板状体17が所定間隔を隔てて2つ直立して配置されており、この板状体17の孔部にシリンダ12が挿通されてシリンダ12が載置台14に固定される。
【0025】
ピストン13は、シリンダ12内部に配置されるピストン本体(不図示)と、ピストン本体の略中央部から延伸してシリンダ12の他方端部から突出するピストンロッド16と、ピストンロッド16の先端に配置されるヘッド部10とを備える。
【0026】
ヘッド部10は、搬送経路4を流れるトレイ3を押圧するものであって、ピストン13がシリンダ12の内部から押し出されることによって、搬送経路4を流れるトレイ3に当接してこれを押圧する。ここで、ヘッド部10は弾性変形するものであって、本実施形態では、ヘッド部10を吸盤で構成している。当該吸盤は、ゴムや合成樹脂製のものであり、くぼんだ外形、すなわち先端に向かって開口が広がる碗状(円錐形状)に形成されている。
【0027】
制御部は、メインコンピュータと通信可能に接続されており、メインコンピュータからの排出命令に従って、作動油を一方端部から他方端部へと流動させることによって、ピストン13をシリンダ12から高速で押し出し移動させるとともに、作動油を他方端部から一方端部へと流動させることによって、ピストン13をシリンダ12に高速で引き戻し移動させる。ここで、ピストン13のストローク方向は、第1仕分けコンベア7aの第1搬送方向1dに対して略直角となるように構成されている。なお、メインコンピュータは、仕分エリアCの入り口付近に配置されているリーダと通信可能となっており、当該リーダから受信したトレイ3の識別情報を検索キーとして、当該識別情報に対応する等階級をメモリから検索し、検索した等階級に対応するプッシャ5に対して上記排出命令を出力する。
【0028】
搬出エリアでは、搬出コンベアの搬送経路4を流れるトレイ3に載置されたトマト100を箱詰めにして出荷準備を行う箱詰装置が配置される。箱詰装置は、搬出コンベアの搬送経路4に向かって反復移動するアーム及びアームを制御するアーム制御部を備える。
【0029】
上述の構成を備える本実施形態の選別装置1では、トレイ3の搬送方向を変更するためにヘッド部10によってトレイ3を押し出す際に、ヘッド部10が弾性変形する。ここで、従来のヘッド部では、
図4の(a)のグラフに示すように、トレイ3にインパルス的に外力Faが加わり、また動力部11からヘッド部10に加わる外力Faがそのままトレイ3に加わっていた。これに対し、本実施形態では、弾性変形する吸盤をヘッド部10に用い、吸盤の周縁がトレイ3に当接するように設けられているので、
図4(b)のグラフに示されるように、トレイ3がプッシャ5にさしかかると、プッシャ5の吸盤がトレイ3の側面に接触するが、吸盤が変形することにより動力部11からの力が吸収され、徐々にトレイ3に外力が加えられる。そして、トレイ3がプッシャ5の正面に位置するときに外力Fbが加えられる。すなわち、プッシャ5は、吸盤の周縁から徐々に変形することで、動力部11からの力を吸収しながら、トレイ3に外力を加えるので、トレイ3には経時的に外力Fbが加えられる。その結果、トレイ3に加えられる外力Fbは外力Faよりも減少することとなり、トレイ3に生じる衝撃が緩和され、トレイ3上のトマト100の位置ずれを防止することができる。
【0030】
これにより、箱詰装置のアームがトマト100を掴む際にトマト100をのピックアップミスを防止したり、トマト100が煩雑に収容されたりすることを防止して、トマト100の向きや姿勢を揃えた状態で整然と箱詰めすることができる。そのため、余計な人員が発生することを防止できる。
【0031】
また、本実施形態ではヘッド部10を吸盤で構成することにより、より効率的にトレイ3にかかる外力を吸収してトレイ3に載置されたトマト100の位置がずれることを防止できる。
【0032】
本発明は上述の実施形態に限られたものではない。
【0033】
ヘッド部は弾性変形するものであればよく、例えば、バネを用いたものであってもよい。例えば、ヘッド部は、押し出し方向に伸縮可能に形成された筒状体と、当該筒状体の内側に設けられ、押し出し方向に伸縮するバネと、筒状体およびバネの先端部に設けられた当接板と、を備える構成であっても構わない。当該ヘッド部の筒状体は、ゴム製であり、例えば
図5、6に示すように、その側面が蛇腹状に形成された構成を採用することができる。また、当該ヘッド部のバネは、圧縮コイルバネを用いることができる。当該、ヘッド部を用いたプッシャも、上記実施形態と同様に、
図4(b)に示されるように、当接板がトレイ3に当接するときには、筒状体とバネが徐々に縮むことで、動力部11からの力を吸収しながら、トレイ3に外力を加えるので、トレイ3には経時的に外力Fbが加えられる。その結果、トレイ3に加えられる外力Fbは外力Faよりも減少することとなり、トレイ3に生じる衝撃が緩和され、トレイ3上のトマト100の位置ずれを防止することができる。
【0034】
動力部は、油圧アクチュエータに限られず、電動アクチュエータや空気圧アクチュエータ等を用いることができる。
【0035】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用または効果が生じる範囲内で何れかの発明事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0036】
1・・・選別装置
2・・・搬送機構
3・・・トレイ
4・・・搬送経路
5・・・プッシャ
10・・ヘッド部
11・・動力部
100・トマト(青果物)