(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置
(51)【国際特許分類】
B03B 5/20 20060101AFI20240716BHJP
B65G 33/14 20060101ALI20240716BHJP
B65G 65/46 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B03B5/20
B65G33/14
B65G65/46 D
(21)【出願番号】P 2020083664
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505406464
【氏名又は名称】株式会社アール・アンド・イー
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】村上 孝志
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-227819(JP,A)
【文献】実開昭60-100331(JP,U)
【文献】特開2007-314186(JP,A)
【文献】特開2003-038981(JP,A)
【文献】特公昭35-000604(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 5/20
B65G 33/14
B65G 65/46
B01J 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別物質が投入される選別槽、選別媒体が充填される脈動槽、及び前記選別槽と前記脈動槽との間に位置する網目を有する網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置であって、
前記選別機の
前記選別槽の
側壁の1つに配置された排出開口を備え、前記排出開口が、前記側壁のほぼ幅全体にわたって延び、かつ、前記排出開口の下端が、前記網目の上縁の高さと実質的に同等の高さに位置しており、
前記排出開口のほぼ全幅と連通するように配置された第1回収路
をさらに備え、
前記第1回収路が、ほぼ円筒形のケーシングと、前記ケーシング内に配置されたスクリューコンベアと、前記ケーシングの出口側に設けられた排出口とを有し、
前記第1回収路の前記排出口と連通し、斜め上方に延びた第2回収路と、
前記排出開口の上端の位置を、前記第1回収路の前記スクリューコンベアの搬送方向に向かって徐々に高くなるように調整するゲートとをさらに備え、
前記第2回収路が、ほぼ円筒形のケーシングと、前記ケーシング内に配置されたスクリューコンベアと、前記ケーシングの上端付近に設けられた排出口とを有することを特徴とする被回収物質搬出装置。
【請求項2】
前記ゲートが、垂直方向に摺動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載された装置。
【請求項3】
前記第2回収路の前記排出口が、前記選別槽内の水位よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、網下気室型湿式比重選別機の分野に関する。より詳細には、本発明は、網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主として原炭から良質の石炭を選択的に回収する機械として、網下気室型湿式比重選別機が知られている。
図6を参照して、網下気室型湿式比重選別機の動作原理について簡単に説明する。網下気室型湿式比重選別機は、選別しようとする物質(以下「被選別物質」という)が入れられる選別槽が上方に、水が充填される脈動槽が下方に位置し、選別槽と脈動槽との間に網目が配置されている。脈動槽内には、空気を入/出させる空気室が配置されており、空気室内の水位を空気の入/出によって昇降させることにより、選別槽内の水位を昇降させることができるようになっている。そして、選別槽に入れた物質に適切な水の脈動を与えることによって、選別槽内に比重別の物質の層が形成されることとなる。
【0003】
網下気室型湿式比重選別機において、回収しようとする物質(以下「被回収物質」という)を選別機外に排出する装置として、フラット板方式と、スクリューコンベア方式とが知られている。前者のフラット板方式では、回転駆動シャフトに複数枚のフラット板を取り付けたエジェクタが、選別槽の側壁に設けられた排出口に設置され、エジェクタを回転駆動させることによって、被回収物質を選別機外に排出するように構成されている(
図7(a)参照)。これに対し、後者のスクリューコンベア方式では、スクリューコンベアが収容されたケーシングが、選別槽の側壁に設けられた排出口に設置され、スクリューコンベアを回転駆動させることによって、被回収物質を選別機外に排出するように構成されている(
図7(b)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フラット板方式では、被回収物質を大量かつ連続的に回収しにくいという課題がある。すなわち、フラット板式エジェクタは、その構造上、回転駆動の際、断面の全ての部分が同時に被回収物質の搬出に寄与しているわけではなく、S1、S2の部分は搬出に寄与しているが、S3、S4の部分は搬出に寄与していない(
図8(a)参照)。
【0005】
一方、スクリューコンベア方式では、フラット板方式とは異なり、回転駆動時に断面の全ての部分が同時に被回収物質の搬出に寄与するので、フラット板方式におけるような課題はないものの、選別槽が一定の横幅を有しているため、選別槽とスクリューコンベアとの接続開口において、被回収物質の均一な搬出が困難であり、これにより選別槽内での被回収物質の堆積層に乱れが生じるという課題がある。より詳細に説明すると、選別槽側から接続開口を見た
図8(b)に示されるように、接続開口が選別槽の一端E1から他端E2まで水平方向に延びており、回転駆動するスクリューコンベアによって被回収物質がE1側から排出され、スクリューコンベア内が満杯になってしまうため、E2側に位置する被回収物質がスクリューコンベア内に円滑に侵入しにくくなる。これにより、選別槽内の被回収物質の堆積層がE1側で低くなるのに対して、E2側では相対的に高いままであり、その結果、所要の被回収物質を効率的に回収しにくくなる事態が招来する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて開発されたものであって、所望の被回収物質を効率的に回収することができる網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の、被選別物質が投入される選別槽、選別媒体が充填される脈動槽、及び前記選別槽と前記脈動槽との間に位置する網目を有する網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置は、前記選別機の前記選別槽の側壁の1つに配置された排出開口を備え、前記排出開口が、前記側壁のほぼ幅全体にわたって延び、かつ、前記排出開口の下端が、前記網目の上縁の高さと実質的に同等の高さに位置しており、前記排出開口のほぼ全幅と連通するように配置された第1回収路をさらに備え、前記第1回収路が、ほぼ円筒形のケーシングと、前記ケーシング内に配置されたスクリューコンベアと、前記ケーシングの出口側に設けられた排出口とを有し、前記第1回収路の前記排出口と連通し、斜め上方に延びた第2回収路と、前記排出開口の上端の位置を、前記第1回収路の前記スクリューコンベアの搬送方向に向かって徐々に高くなるように調整するゲートとをさらに備え、前記第2回収路が、ほぼ円筒形のケーシングと、前記ケーシング内に配置されたスクリューコンベアと、前記ケーシングの上端付近に設けられた排出口とを有することを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項2に記載の網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置は、前記請求項1の装置において、前記ゲートが、垂直方向に摺動可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項3に記載の網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置は、前記請求項1又は2の装置において、前記第2回収路の前記排出口が、前記選別槽内の水位よりも上方に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被回収物質の排出開口の面積を搬送方向に向かって徐々に大きくなるように調整するゲートを設けたことにより、選別槽内の被回収物質の層が乱されるのを回避し、被回収物質を効率的に取り出すことが可能になる。また、ゲートを垂直方向に摺動可能に構成することにより、被回収物質を状況に応じて円滑に取り出すことが可能になる。さらに、第2回収路の排出口を選別槽内の水位よりも上方に配置することにより、被回収物質の水切りを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】被回収物質搬出装置が設置される網下気室型湿式比重選別機の全体を模式的に示した斜視図である。
【
図3】
図2において矢視3‐3から見た断面図である。
【
図4】
図2において矢視4‐4から見た断面図である。
【
図5】被回収物質搬出装置の作動を説明するための一連の図である。
【
図6】網下気室型湿式比重選別機の動作原理を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)は、従来のフラット板方式を示した図、
図7(b)は、従来のスクリューコンベア方式を示した図である。
【
図8】
図8(a)は、フラット板方式の課題を説明するための図、
図8(b)は、スクリューコンベア方式の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る網下気室型湿式比重選別機に設置される被回収物質搬出装置について詳細に説明する。
図1は、被回収物質搬出装置が設置される網下気室型湿式比重選別機の全体を模式的に示した斜視図、
図2は、
図1の上部分を示した拡大斜視図である。
図1において参照符号A、B、C、Dは、被選別物質が投入される選別槽、選別媒体(例えば水)が充填される脈動槽、空気室、網目をそれぞれ示している。
【0013】
図1及び
図2において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係る被回収物質搬出装置は、選別槽Aの側壁の1つに水平方向に延びるように配置された排出開口12を備えている(
図3参照)。好ましくは、排出開口12は、
図3で見て右端12aと左端12bがそれぞれ選別槽Aのほぼ幅全体にわたって延びており、下端12cが網目Dの上縁の高さと実質的に同等の高さに位置している。
【0014】
被回収物質搬出装置10は、排出開口12のほぼ全幅と連通するように配置された第1回収路14を備えている。第1回収路14は、ほぼ円筒形のケーシング14aと、ケーシング14a内に配置されたスクリューコンベア14bと、スクリューコンベア14bを回転駆動させるモータ14cとを有している。ケーシング14aは、排出開口12の側が切り欠かれ、排出開口12の全幅と連通し、水平方向に延びるように、被回収物質搬出装置10の側壁に耐水性パッキンp等を用いて水密状態に取り付けられている。ケーシング14aには、スクリューコンベア14bの搬送方向の終点側(
図3では左側)に、排出口14dが設けられている。
【0015】
被回収物質搬出装置10はまた、第1回収路14の排出口14dと連通するように配置された第2回収路16を備えている。第2回収路16は、ほぼ円筒形のケーシング16aと、ケーシング16a内に配置されたスクリューコンベア16bと、スクリューコンベア16bを回転駆動させるモータ16cとを有している。ケーシング16aは、その下端付近に設けられた開口が第1回収路14の排出口14dと連通し、全体として斜め上方に延びるように、耐水性パッキンp等を用いて第1回収路14と水密状態に連結されている。ケーシング16aの上端には、排出口16dが設けられている。好ましくは、排出口16dは、被回収物質の水切りを行うため、選別槽A内の水位Hよりも上方に配置されている(
図4参照)。
【0016】
被回収物質搬出装置10はさらに、排出開口12の上端12dの位置を調整するためのゲート18を備えている。ゲート18は、下端がスクリューコンベア14bの始点側18a1から終点側18a2に向けて上方に傾斜したゲート板18aを有している。これにより、排出開口12は、
図3で見て右端12aの側よりも左端12bの側の方が大きくなっている。
【0017】
好ましくは、ゲート18は、垂直方向に摺動可能に構成されている。
図3に示される形態では、ゲート18は、ゲート板18aに取り付けられたハンドル18bを操作することによって、選別槽Aの側壁内面の両側に設けられたガイドレール18cに沿って上下動できるように設置されており、ゲート板18aを所望の高さのところで固定できるようになっているが、摺動可能な構成として他の適当な形態を採用してもよい。
【0018】
以上のように構成された被回収物質搬出装置10の作動について、廃棄物がペットボトルである場合を例として説明する。廃棄しようとするペットボトルは予め、比重差のある3種類のプラスチック片(比重の大きい方から順に、ペットボトル本体片〇、ラベル片△、キャップ片□)に粉砕される。選別作業によって、ペットボトルから、ペットボトル本体片〇を取り出して、再利用に供することとする。
【0019】
網下気室型湿式比重選別機により選別作業が行われると、選別槽A内は、3種類のプラスチック片がランダムに混在している状態(
図5(a)参照)から、比重差によりペットボトル本体片〇、ラベル片△、キャップ片□の3層が形成される状態(
図5(b)参照)になる。そして、最下層のペットボトル本体片〇は、選別槽Aの上部から供給される水により、排出開口12を介して、第1回収路12のケーシング14a内に流入する。モータ14cを作動させて、スクリューコンベア14bを回転駆動させると、ケーシング14a内に流入したペットボトル本体片〇は、
図5(b)の線5c‐5cに沿って見た
図5(c)の矢印の方向に搬送されるが、ゲート板18aにより排出開口12の面積が始点側18a1から終点側18a2に向かって徐々に大きくなっているので、スクリューコンベア14bの始点(
図5(c)の右側)の近傍に位置するペットボトル本体片〇のみが搬送されることはなく、選別槽Aの幅全体にわたってほぼ均等に搬送されることになる。これにより、選別作業により形成された選別槽A内のペットボトル本体片〇の層が乱されることはなくなり、ペットボトル本体片〇を効率的に取り出すことが可能になる。
【0020】
ケーシング14a内のペットボトル本体片〇は、排出口14dに到達すると、第2回収路18のケーシング18a内に流入し、スクリューコンベア18bにより上方に搬送されて排出口18dから排出され(
図5(d)参照)、再利用に供される。一方、ラベル片△とキャップ片□は、比重が軽く水に浮くので、選別槽A内に水を大量に流入させることにより、水とともにオーバフローして選別槽A外に排出される(
図5(e)参照)。
【0021】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0022】
例えば、添付図面において図示されている網下気室型湿式比重選別機の各構成要素A、B、C、Dの寸法や細部、並びに、被回収物質搬出装置10の排出開口12、第1回収路14、第2回収路16、及びゲート18の寸法や細部等は、単なる例示的なものであり、図示されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
10 被回収物質搬出装置
12 排出開口
12a 右端
12b 左端
12c 下端
12d 上端
14 第1回収路
14a ケーシング
14b スクリューコンベア
14c モータ
14d 排出口
16 第2回収路
16a ケーシング
16b スクリューコンベア
16c モータ
16d 排出口
18 ゲート
18a ゲート板
18a1 始点側
18a2 終点側
18b ハンドル
18c ガイドレール
A 選別槽
B 脈動槽
C 空気室
D 網目
p 耐水性パッキン