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特許7520345送受信装置、端末装置および送受信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】送受信装置、端末装置および送受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/564 20130101AFI20240716BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20240716BHJP
【FI】
H04B10/564
H04B10/077 190
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020111680
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010899
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠介
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-093199(JP,A)
【文献】特開2009-212812(JP,A)
【文献】特開2001-244888(JP,A)
【文献】特開2004-032476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方送受信装置の側との間で双方向に信号の送受信を行う送受信装置であって、
前記相手方送受信装置の側へ送信すべき信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに入力させて、前記レーザダイオードから光信号を前記相手方送受信装置の側の相手方フォトダイオードへ出力させる駆動部と、
前記相手方送受信装置の側の相手方レーザダイオードから到達した光信号を受光するフォトダイオードから出力される電流信号を入力し、この電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を出力する増幅部と、
前記フォトダイオードから出力される電流信号の平均値を検出する平均電流検出部と、
前記駆動部から前記レーザダイオードへの電流信号の入力を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記相手方送受信装置の側との間で送受信すべき信号がない無信号期間に、
前記駆動部から前記レーザダイオードに電流信号を入力させて前記レーザダイオードから光信号を出力させ、この光信号を受光した前記相手方フォトダイオードから出力された電流信号の平均値に応じた長さの期間に亘って前記相手方レーザダイオードから出力された特定パターンの光信号が前記フォトダイオードに到達すると、この特定パターンの光信号の期間の長さに基づいて前記駆動部から前記レーザダイオードに入力される電流信号の大きさを調整し、
前記平均電流検出部により検出された電流信号の平均値に応じた長さの期間に亘って前記駆動部から前記レーザダイオードに特定パターンの電流信号を入力させて前記レーザダイオードから特定パターンの光信号を出力させる、
送受信装置。
【請求項2】
前記特定パターンの光信号は、その特定パターンの期間の前後におけるパワーを中心にパワーが増減を繰り返す、
請求項1に記載の送受信装置。
【請求項3】
前記特定パターンの光信号は、その特定パターンの期間の前後におけるパワーと異なるパワーを有する、
請求項1に記載の送受信装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の送受信装置と、
前記送受信装置の駆動部から電流信号が入力されて光信号を出力する前記レーザダイオードと、
光信号を受光して前記送受信装置の増幅部へ電流信号を出力する前記フォトダイオードと、
を備える端末装置。
【請求項5】
請求項4に記載の端末装置である第1端末装置および第2端末装置を備え、
前記第1端末装置の前記レーザダイオードから出力された光信号を前記第2端末装置の前記フォトダイオードが受光し、
前記第2端末装置の前記レーザダイオードから出力された光信号を前記第1端末装置の前記フォトダイオードが受光する、
送受信システム。
【請求項6】
前記第1端末装置の前記レーザダイオードから出力された光信号を前記第2端末装置の前記フォトダイオードへ導光する第1光ファイバと、
前記第2端末装置の前記レーザダイオードから出力された光信号を前記第1端末装置の前記フォトダイオードへ導光する第2光ファイバと、
を更に備える請求項5に記載の送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信装置、端末装置および送受信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光信号を伝送することにより通信を行う送受信システムでは、送信側の端末装置において電気信号に基づいてレーザダイオードから出力された光信号は、受信側の端末装置のフォトダイオードにより受光されて電気信号に変換される。光信号の強度変調パターンは、送信すべき電気信号の強度変調パターンに応じたものとなる。逆方向にも光信号を伝送することにより双方向の通信が可能である。レーザダイオードからフォトダイオードへ光信号を伝送する伝送路として光ファイバが用いられ、この場合には低損失で長距離の光伝送が可能である。
【0003】
レーザダイオードを駆動する駆動部は、送信すべき電気信号(電圧信号)に基づいて電流信号を生成し、この電流信号をレーザダイオードに供給して、この電流信号に応じた光信号をレーザダイオードから出力させる。光信号を受光するフォトダイオードは、受光量に応じて電流信号を出力する。フォトダイオードから出力される電流は微小である。増幅部は、フォトダイオードから出力される微小な電流信号を十分な振幅の電圧信号に変換して、その電圧信号を出力する。電流信号を電圧信号に変換する増幅部はトランスインピーダンスアンプリファイア(TIA: Transimpedance Amplifier)と呼ばれる。
【0004】
駆動部および増幅部は、シリコンチップ上に安価で高速動作可能な回路として作製され得る。レーザダイオードは、シリコンで作製され得ず、化合物半導体チップ上に作製される。フォトダイオードは、シリコンで作製され得るが、駆動部および増幅部とは最適プロセスが異なる等の理由により、駆動部および増幅部とは別のチップ上に作製される。したがって、駆動部および増幅部は共通のシリコンチップ上に作製され得るが、レーザダイオードおよびフォトダイオードそれぞれは別チップとなる。
【0005】
図1および図2は、レーザダイオードにおける出力光パワーPと供給電流値Iとの間の関係を示す図である。これらの図に示されるように、供給電流値Iが閾値電流ITHより小さい範囲では、レーザダイオードは殆ど発光しない。これに対して、供給電流値Iが閾値電流ITHより大きい範囲では、レーザダイオードの出力光パワーPは供給電流値Iに応じたものとなる。図1は、レーザダイオードに入力される電流信号が常に閾値電流ITHより大きい場合を示している。図2は、レーザダイオードに入力される電流信号のLレベルが閾値電流ITHより小さい場合を示している。
【0006】
レーザダイオードへの供給電流値IがLレベルからHレベルへ遷移した時刻をTとし、この遷移に応じてレーザダイオードの出力光パワーPがLレベルからHレベルへ遷移する時刻をTとすると、図2に示されるようにレーザダイオードに入力される電流信号のLレベルが閾値電流ITHより小さい場合、時刻Tから時刻Tまでの時間(T-T)で定義されるターンオン遅延はランダムに変動してジッタが生じる。また、図2に示されるようにレーザダイオードに入力される電流信号のLレベルが閾値電流ITHより小さい場合、電流信号がLレベルからHレベルに転じた後のレーザダイオードの出力光パワーPは、緩和振動が原因となってリンギング(時間的な変動)が生じ、これもジッタとなる。ターンオン遅延のランダム変動およびリンギングを抑制して、ジッタ発生を抑制するために、図1に示されるようにレーザダイオードに入力される電流信号のLレベルは閾値電流ITHより大きいことが要求される。
【0007】
レーザダイオードの出力光パワーPのHレベル時の値をPとし、レーザダイオードの出力光パワーPのLレベル時の値をP(=αP)とすると、両者の比(P/P)で定義される消光比は1/αとなる。フォトダイオードにより光信号のレベルを確実に識別することを考慮すると、この消光比は大きいことが望ましい。
【0008】
出力光パワーPのジッタを十分に抑制するには、レーザダイオードに入力される電流信号のLレベルが閾値電流と比べて十分に大きいことが望ましい。一方、出力光パワーPの消光比を大きくするには、レーザダイオードに入力される電流信号のLレベルが閾値電流以上の範囲で小さいことが望ましい。すなわち、ジッタ抑制と消光比確保とはトレードオフの関係にある。したがって、ジッタ抑制および消光比確保の双方を考慮した上で、レーザダイオードに入力される電流信号のLレベルおよびHレベルは適正値に設定されることが望まれる。
【0009】
ところが、レーザダイオードの閾値電流は、温度変化および経年劣化により大きく変化する。例えば、温度が1℃上昇すると、閾値電流は1~2%大きくなる。したがって、レーザダイオードに入力される電流信号のLレベルおよびHレベルが適正値に設定されていたとしても、その設定のままでは、温度変化または経年劣化により閾値電流が変化したときに、ジッタ抑制が不十分になり又は消光比が悪化することになる。また、閾値電流の上昇に備えて、レーザダイオードに入力される電流信号のLレベルおよびHレベルを適正値より大きく設定すると、消費電力が大きくなる。
【0010】
閾値電流の変動の問題に対処することを意図した発明が特許文献1~3に開示されている。特許文献1に開示された発明は、送信側の端末装置において駆動部からレーザダイオードに供給される電流信号の大きさを温度に応じて調整する。すなわち、この発明では、温度が高くなると閾値電流が大きくなるので電流信号を大きくし、温度が低くなると閾値電流が小さくなるので電流信号を小さくする。
【0011】
特許文献2に開示された発明は、送信側の端末装置においてレーザダイオードの近傍にモニタ用フォトダイオードを配置し、レーザダイオードから出力される光のパワーをモニタ用フォトダイオードにより検出する。そして、この発明では、検出された出力光パワーの平均値が一定となるように、駆動部からレーザダイオードに供給される電流信号の大きさを調整する。
【0012】
特許文献3に開示された発明は、受信側の端末装置において光信号を受信したフォトダイオードの平均出力電流を検出し、この検出値に応じた電気信号を受信側の端末装置から送信側の端末装置へ送る。そして、この発明では、送信側の端末装置において、受信側の端末装置から送られて来た電気信号に基づいて、駆動部からレーザダイオードに供給される電流信号の大きさを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第5043992号明細書
【文献】米国特許第8989227号明細書
【文献】米国特許第8521019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に開示された発明は、駆動部からレーザダイオードに供給される電流信号の大きさを調整する際に、レーザダイオードの出力光パワーに基づくフィードバック制御を行うものではなく、温度に基づくフィードフォワード制御を行うものであるから、電流信号の大きさの調整を高精度に行うことが困難である。また、この発明は、レーザダイオードの経年劣化による閾値電流の変動の問題には対処することができない。
【0015】
特許文献2に開示された発明は、駆動部からレーザダイオードに供給される電流信号の大きさを調整する際に、レーザダイオードの出力光パワーに基づくフィードバック制御を行うことから、電流信号の大きさの調整を高精度に行うことが可能であり、また、レーザダイオードの経年劣化による閾値電流の変動の問題にも対処することができる。しかし、この発明は、モニタ用フォトダイオードが近傍に配置された高価なレーザダイオードを用いることが必要であるから、システムのコストが高くなる。
【0016】
特許文献3に開示された発明は、受信側の端末装置において光信号を受信したフォトダイオードの平均出力電流の検出値に応じた電気信号を送信側の端末装置へ送るために銅線を設けることが必要であるから、システムのコストが高くなる。
【0017】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、レーザダイオードから出力される光信号の伝送により双方向に通信を行うことができ、レーザダイオードに供給される電流信号の大きさを安価な構成で高精度に調整することができる送受信システムを提供することを目的とする。また、このような送受信システムで用いられる端末装置、および、この端末装置に含まれる送受信装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の送受信装置は、相手方送受信装置の側との間で双方向に信号の送受信を行う送受信装置であって、(1) 相手方送受信装置の側へ送信すべき信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに入力させて、レーザダイオードから光信号を相手方送受信装置の側の相手方フォトダイオードへ出力させる駆動部と、(2) 相手方送受信装置の側の相手方レーザダイオードから到達した光信号を受光するフォトダイオードから出力される電流信号を入力し、この電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を出力する増幅部と、(3) フォトダイオードから出力される電流信号の平均値を検出する平均電流検出部と、(4)駆動部からレーザダイオードへの電流信号の入力を制御する制御部と、を備える。
なお、相手方送受信装置は、本発明の送受信装置と同じ構成を有することができる。
【0019】
制御部は、相手方送受信装置の側との間で送受信すべき信号がない無信号期間に、(a) 駆動部からレーザダイオードに電流信号を入力させてレーザダイオードから光信号を出力させ、この光信号を受光した相手方フォトダイオードから出力された電流信号の平均値に応じた長さの期間に亘って相手方レーザダイオードから出力された特定パターンの光信号がフォトダイオードに到達すると、この特定パターンの光信号の期間の長さに基づいて駆動部からレーザダイオードに入力される電流信号の大きさを調整し、(b) 平均電流検出部により検出された電流信号の平均値に応じた長さの期間に亘って駆動部からレーザダイオードに特定パターンの電流信号を入力させてレーザダイオードから特定パターンの光信号を出力させる。
【0020】
特定パターンの光信号は、その特定パターンの期間の前後におけるパワーを中心にパワーが増減を繰り返すのが好適であり、また、その特定パターンの期間の前後におけるパワーと異なるパワーを有するのも好適である。
【0021】
本発明の端末装置は、上記の本発明の送受信装置と、送受信装置の駆動部から電流信号が入力されて光信号を出力するレーザダイオードと、光信号を受光して送受信装置の増幅部へ電流信号を出力するフォトダイオードと、を備える。
【0022】
本発明の送受信システムは、上記の本発明の端末装置である第1端末装置および第2端末装置を備え、第1端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を第2端末装置のフォトダイオードが受光し、第2端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を第1端末装置のフォトダイオードが受光する。本発明の送受信システムは、第1端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を第2端末装置のフォトダイオードへ導光する第1光ファイバと、第2端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を第1端末装置のフォトダイオードへ導光する第2光ファイバと、を更に備えるのが好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レーザダイオードから出力される光信号の伝送により双方向に通信を行うことができ、レーザダイオードに供給される電流信号の大きさを安価な構成で高精度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、レーザダイオードにおける出力光パワーPと供給電流値Iとの間の関係を示す図である。
図2図2は、レーザダイオードにおける出力光パワーPと供給電流値Iとの間の関係を示す図である。
図3図3は、送受信システム1の構成を示す図である。
図4図4は、送受信装置11および送受信装置21の構成を示す図である。
図5図5は、送受信装置11の平均電流検出部57の回路例を示す図である。
図6図6は、レーザダイオードにおける出力光パワーPと供給電流値Iとの間の関係を示す図である。
図7図7は、無信号期間において特定パターンとして第1パターンを用いて個別調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。
図8図8は、無信号期間において特定パターンとして第2パターンを用いて個別調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。
図9図9は、無信号期間において特定パターンとして第1パターンを用いて同時調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。
図10図10は、無信号期間において特定パターンとして第2パターンを用いて同時調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
図3は、送受信システム1の構成を示す図である。送受信システム1は、端末装置10および端末装置20を備える。端末装置10は、送受信装置11、レーザダイオード12およびフォトダイオード13を備える。端末装置20は、送受信装置21、レーザダイオード22およびフォトダイオード23を備える。端末装置10と端末装置20とは互いに同じ構成を有することができる。
【0027】
端末装置10のレーザダイオード12から出力される光信号は、端末装置20のフォトダイオード23により受光される。端末装置20のレーザダイオード22から出力される光信号は、端末装置10のフォトダイオード13により受光される。レーザダイオード12から出力される光信号は、空間を伝搬してフォトダイオード23に到達する構成であってもよいが、光ファイバ30により導光されてフォトダイオード23に到達する構成であるのが好適である。同様に、レーザダイオード22から出力される光信号は、空間を伝搬してフォトダイオード13に到達する構成であってもよいが、光ファイバ40により導光されてフォトダイオード13に到達する構成であるのが好適である。光ファイバにより光信号を導光することにより、低損失で長距離の光伝送が可能である。
【0028】
また、端末装置10はコネクタ14を備え、端末装置20はコネクタ24を備える。端末装置10の送受信装置11は、コネクタ14に入力された電圧信号に基づいて電流信号をレーザダイオード12に供給してレーザダイオード12から光信号を出力させ、光信号を受光したフォトダイオード13から出力される電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号をコネクタ14から出力させる。同様に、端末装置20の送受信装置21は、コネクタ24に入力された電圧信号に基づいて電流信号をレーザダイオード22に供給してレーザダイオード22から光信号を出力させ、光信号を受光したフォトダイオード23から出力される電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号をコネクタ24から出力させる。
【0029】
アクティブ光ケーブル(AOC: Active Optical Cable)は、このような構成を有する。AOCでは、パドルカード(Paddle Card)と呼ばれる基板の上に送受信装置、レーザダイオードおよびフォトダイオードが実装されている。そして、送受信装置とコネクタとが互いに電気的に接続され、レーザダイオードと一方の光ファイバの光入射端とが光学的に接続され、フォトダイオードと他方の光ファイバの光出射端とが光学的に接続されている。
【0030】
図4は、送受信装置11および送受信装置21の構成を示す図である。この図には、送受信装置11の側にあるレーザダイオード12およびフォトダイオード13も示され、また、送受信装置21の側にあるレーザダイオード22およびフォトダイオード23も示されている。
【0031】
送受信装置11は、制御部51、駆動部52、特定パターン生成部53、送信信号検出部54、増幅部55、差動増幅部56、平均電流検出部57および受信信号検出部58を備える。送受信装置21は、制御部61、駆動部62、特定パターン生成部63、送信信号検出部64、増幅部65、差動増幅部66、平均電流検出部67および受信信号検出部68を備える。送受信装置11と送受信装置21とは互いに同じ構成を有しており、送受信装置11と送受信装置21との間で同じ名称の構成要素は同じ機能を有する。
【0032】
以下では送受信装置11および送受信装置21の構成のうち一方の送受信装置11の構成について主に説明する。送受信装置11は、相手方の送受信装置21の側との間で双方向に信号の送受信を行う。制御部51は、送信信号検出部54、平均電流検出部57および受信信号検出部58それぞれによる検出の結果を受けて、駆動部52および差動増幅部56それぞれの動作を制御する。
【0033】
駆動部52は、相手方の送受信装置21の側へ送信すべき信号があるとき、その信号に基づいて電流信号をレーザダイオード12に入力させて、レーザダイオード12から光信号を相手方のフォトダイオード23へ出力させる。駆動部52に入力される信号(電圧信号)は差動信号であってもよい。また、駆動部52は、相手方の送受信装置21の側との間で送受信すべき信号がない無信号期間に、特定パターン生成部53により生成された特定パターンの電流信号をレーザダイオード12に入力させて、レーザダイオード12から特定パターンの光信号を相手方のフォトダイオード23へ出力させる。
【0034】
特定パターン生成部53は、無信号期間に駆動部52がレーザダイオード12に供給する電流信号の特定パターンを生成する。送信信号検出部54は、相手方の送受信装置21の側へ送信すべき信号の有無を検出し、その検出結果を制御部51に通知する。送信信号検出部54は、駆動部52に入力される信号(電圧信号)のレベルの時間的変動の大きさに基づいて、送信すべき信号の有無を検出することができる。
【0035】
増幅部55は、相手方のレーザダイオード22から到達した光信号を受光するフォトダイオード13から出力される電流信号を入力し、この電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を出力する。この増幅部55は、電流信号を電圧信号に変換するTIAである。増幅部55から出力される電圧信号は差動信号であってもよい。差動増幅部56は、増幅部55から出力される信号を増幅して出力する。差動増幅部56は、相手方の送受信装置21の側から信号が送られてきていない無信号期間は、制御部51による制御により、出力端をハイインピーダンス状態とすることができる。
【0036】
平均電流検出部57は、フォトダイオード13から出力される電流信号の平均値を検出し、その検出結果を制御部51に通知する。フォトダイオード13から出力される電流信号の値が時間的に変化する場合、平均電流検出部57は、その時間的に変化する電流信号を平滑化することで移動平均(低周波成分)を求める。受信信号検出部58は、増幅部55から出力される電圧信号をモニタし、その電圧信号のレベルを検出して、その検出結果を制御部51に通知する。
【0037】
制御部51は、送信信号検出部54、平均電流検出部57および受信信号検出部58それぞれによる検出の結果を受ける。制御部51は、これらの検出結果に基づいて、送受信装置11の側から相手方の送受信装置21の側へ送信すべき信号の有無を判断するとともに、相手方の送受信装置21の側から送受信装置11の側へ送られて来る信号の有無を判断する。これにより、制御部51は、相手方の送受信装置21の側との間で送受信すべき信号がない無信号期間を検知することができる。この検知した無信号期間に、制御部51は、差動増幅部56の出力をハイインピーダンス状態とする。
【0038】
無信号期間に、制御部51は、駆動部52からレーザダイオード12に電流信号を入力させてレーザダイオード12から光信号を出力させ、この光信号を受光した相手方のフォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(平均電流検出部67による検出結果)に応じた長さの期間に亘って相手方のレーザダイオード22から出力された特定パターンの光信号がフォトダイオード13に到達すると、この特定パターンの光信号の期間の長さに基づいて駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさを調整する。
【0039】
無信号期間に、制御部51は、平均電流検出部57により検出された電流信号の平均値に応じた長さの期間に亘って駆動部52からレーザダイオード12に特定パターンの電流信号を入力させてレーザダイオード12から特定パターンの光信号を出力させる。
【0040】
特定パターンの期間の長さは、多段階の何れかに設定されてもよいが、平均電流検出部57,67により検出された電流信号の平均値と閾値(目標値)との比較に基づいて2段階の何れかに設定されるのが好適である。
【0041】
図5は、送受信装置11の平均電流検出部57の回路例を示す図である。この図には、フォトダイオード13および増幅部55も示されている。平均電流検出部57は、差動アンプ71、PMOSトランジスタ72、コンデンサ73、PMOSトランジスタ74、抵抗器75および比較器76を含む。
【0042】
フォトダイオード13のアノードは、増幅部55の入力端子に接続されている。フォトダイオード13のカソードは、差動アンプ71の非反転入力端子に接続されている。差動アンプ71の反転入力端子は、一定の参照電圧Vrefが入力される。差動アンプ71の出力端子は、PMOSトランジスタ72,74それぞれのゲートに接続されている。PMOSトランジスタ72,74それぞれのソースは、電源電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタ72のドレインは、差動アンプ71の非反転入力端子に接続され、また、コンデンサ73を介して接地電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタ74のドレインは、比較器76の一方の入力端子に接続され、また、抵抗器75を介して接地電位供給端に接続されている。比較器76の他方の入力端子は、一定の閾値電圧Vthが入力される。比較器76は、二つの入力端子それぞれに入力される電圧値を比較して、その比較結果を表す信号を出力端子から制御部51へ出力する。
【0043】
PMOSトランジスタ72は電流源として作用する。差動アンプ71、PMOSトランジスタ72およびコンデンサ73はLDO(Low Dropout)レギュレータを構成している。差動アンプ71の非反転入力端子の電圧値Vbiasは、差動アンプ71の反転入力端子に入力される一定の参照電圧Vrefと等しい。この一定の電圧値Vbiasがフォトダイオード13のカソードに与えられる。フォトダイオード13から出力される電流信号のうち、AC成分(高周波成分)はコンデンサ73に流れ、平均電流(低周波成分)はPMOSトランジスタ72のソースとドレインとの間に流れる。
【0044】
PMOSトランジスタ72,74はカレントミラー回路を構成している。PMOSトランジスタ74のソースとドレインとの間に流れる電流(すなわち、抵抗器75に流れる電流)の大きさは、PMOSトランジスタ72のソースとドレインとの間に流れる電流の大きさと等しい。比較器76の一方の入力端子に入力される電圧値は、抵抗器75に流れる電流の大きさと抵抗器75の抵抗値との積であるVaveとなる。比較器76は、電圧値Vaveと閾値電圧Vthとを大小比較して、これら二つの電圧値のうち何れが大きいかを表す信号を出力端子から出力する。比較器76の出力端子から出力される信号は、フォトダイオード13から出力される電流信号の平均値(低周波成分)が目標値と比べて大きいか否かを表している。
【0045】
本実施形態では、送受信装置11は、無信号期間における制御部51による制御により、レーザダイオード12に供給される電流信号の大きさを調整することができる。同様にして、送受信装置21は、無信号期間における制御部61による制御により、レーザダイオード22に供給される電流信号の大きさを調整することができる。
【0046】
図6は、レーザダイオードにおける出力光パワーPと供給電流値Iとの間の関係を示す図である。この図は、駆動部からレーザダイオードに供給される電流信号の大きさの調整を説明するものである。温度変化または経年劣化により、レーザダイオードにおける出力光パワーPと供給電流値Iとの間の特性が、実線で示されるものから、破線で示されるものへ変化したとする。このような特性の変化が生じたときに、レーザダイオードから出力される光信号の大きさの変化が抑制されるように、駆動部からレーザダイオードに供給される電流信号の大きさを、実線で示されるものから、破線で示されるものへ変更する。
【0047】
本実施形態では、フィードバック制御によるものであるので、レーザダイオードに供給される電流信号の大きさを高精度に調整することができる。また、本実施形態では、特許文献2に開示された発明のようにモニタ用フォトダイオードが近傍に配置された高価なレーザダイオードを用いる必要はなく、また、特許文献3に開示された発明のように光ファイバとは別に銅線を設ける必要もないので、安価な構成とすることができる。
【0048】
次に、送受信システム1の動作例について説明する。送受信装置11の側から相手方の送受信装置21の側へ送信すべき信号があるときには、その信号(電圧信号)に応じた電流信号が駆動部52からレーザダイオード12に与えられ、その電流信号に応じた光信号がレーザダイオード12から出力される。レーザダイオード12から出力された光信号が相手方のフォトダイオード23に到達すると、その光信号に応じた電流信号がフォトダイオード23から出力され、その電流信号は増幅部65により電圧信号に変換され、その電圧信号は差動増幅部66により増幅されて出力される。送受信装置21の側から送受信装置11の側へ送信すべき信号があるときも同様である。
【0049】
送受信装置11および送受信装置21の何れの側からも送信すべき信号がない無信号期間は、次のようにして検知することができる。送受信装置11の側から送受信装置21の側へ送信すべき信号がない場合、そのことは送信信号検出部54により検出され、その検出結果は制御部51に通知される。そして、制御部51による制御により、駆動部52からレーザダイオード12へ電流が供給されず、レーザダイオード12から光が出力されない。送受信装置21では、レーザダイオード12からフォトダイオード23に到達する光が無いことが平均電流検出部67により検出され、その検出結果は制御部61に通知される。同様に、送受信装置21の側から送受信装置11の側へ送信すべき信号がない場合、そのことは送信信号検出部64により検出され、その検出結果は制御部61に通知される。そして、制御部61による制御により、駆動部62からレーザダイオード22へ電流が供給されず、レーザダイオード22から光が出力されない。送受信装置11では、レーザダイオード22からフォトダイオード13に到達する光が無いことが平均電流検出部57により検出され、その検出結果は制御部51に通知される。このようにして、送受信装置11の制御部51および送受信装置21の制御部61は、送受信装置11と送受信装置21との間で送受信すべき信号がない無信号期間を検知することができる。
【0050】
無信号期間は、通常通信期間(本来の信号を送信すべき期間)と次の通常通信期間との間に存在するだけでなく、スタートアップ時にも存在する。何れにおいても駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさの調整が可能である。スタートアップ時の無信号期間に調整を行えば、その時点で経年劣化によりレーザダイオード12の特性が変化していても、レーザダイオード12に入力される電流信号の大きさを最適化することができる。通常通信期間と通常通信期間との間の無信号期間に調整を行えば、動作中に温度変化によりレーザダイオード12の特性が変化しても、レーザダイオード12に入力される電流信号の大きさを最適に維持することができる。
【0051】
無信号期間において、送受信装置11の側において駆動部52からレーザダイオード12に供給される電流信号の大きさと、送受信装置21の側において駆動部62からレーザダイオード22に供給される電流信号の大きさとは、個別に調整されてもよいし、実質的に同時に調整されてもよい。
【0052】
特定パターンは様々な態様が可能である。特定パターンは、無信号期間のうち特定パターンの期間を他の期間と区別することができればよい。特定パターンの光信号は、その特定パターンの期間の前後におけるパワーを中心にパワーが増減を繰り返すもの(以下「第1パターン」という。)であってもよい。また、特定パターンの光信号は、その特定パターンの期間の前後におけるパワーと異なるパワーを有するもの(以下「第2パターン」という。)であってもよい。
【0053】
次に、図7図10を用いて、無信号期間における送受信システム1の動作例を説明する。この動作は、制御部51,61による制御の下に行われる。個別調整の場合、送受信装置11の側における駆動部52からレーザダイオード12に供給される電流信号の大きさの調整と、送受信装置21の側における駆動部62からレーザダイオード22に供給される電流信号の大きさの調整とは、同様にして行うことができる。したがって、個別調整の動作例の以下の説明では、送受信装置11の側における駆動部52からレーザダイオード12に供給される電流信号の大きさの調整について主に説明する。
【0054】
図7は、無信号期間において特定パターンとして第1パターンを用いて個別調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。この図には、(a) 送受信装置11の側においてレーザダイオード12から出力される光信号、(b) 送受信装置21の側においてフォトダイオード23から出力される電流信号の平均、(c) 送受信装置21の側においてレーザダイオード22から出力される光信号、および、(d)送受信装置11の側において増幅部55から出力される電圧信号、それぞれの波形が模式的に示されている。
【0055】
サイクル1では、送受信装置11の側において、駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号に応じて、一定の振幅を有しパワーが増減を繰り返す光信号がレーザダイオード12から出力される(図7(a))。
【0056】
送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号はフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図7(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図7(b))は目標値より大きく、この結果に応じて期間T1に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図7(c))。期間T1以外の期間における光信号のパワーは、期間T1における光信号の平均パワーに等しくされる。
【0057】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号がフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号は増幅部55により電圧信号に変換される(図7(d))。増幅部55から出力される電圧信号が差動信号である場合、その差動信号の振幅の有無が受信信号検出部58により検出されることで、特定パターンの期間T1の長さが検知される。増幅部55から出力される電圧信号(図7(d))の特定パターンの期間T1の長さに基づいて、次のサイクル2で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさが変更される。この図に示された例では、サイクル1でフォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図7(b))が目標値より大きいと判断されたので、次のサイクル2で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさはサイクル1より小さくされる。
【0058】
サイクル2では、送受信装置11の側において、駆動部52からレーザダイオード12に入力される変更後の(前のサイクル1より小さい)電流信号に応じて、一定の振幅を有しパワーが増減を繰り返す光信号がレーザダイオード12から出力される(図7(a))。
【0059】
送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号がフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図7(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図7(b))は目標値より小さく、この結果に応じて期間T2に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図7(c))。期間T2以外の期間における光信号のパワーは、期間T2における光信号の平均パワーに等しくされる。
【0060】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号はフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号は増幅部55により電圧信号に変換される(図7(d))。増幅部55から出力される電圧信号が差動信号である場合、その差動信号の振幅の有無が受信信号検出部58により検出されることで、特定パターンの期間T2の長さが検知される。増幅部55から出力される電圧信号(図7(d))の特定パターンの期間T2の長さに基づいて、次のサイクル3で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさが変更される。この図に示された例では、サイクル2でフォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図7(b))が目標値より小さいと判断されたので、次のサイクル3で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさはサイクル2より大きくされる。
【0061】
図8は、無信号期間において特定パターンとして第2パターンを用いて個別調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。この図には、(a) 送受信装置11の側においてレーザダイオード12から出力される光信号、(b) 送受信装置21の側においてフォトダイオード23から出力される電流信号の平均、(c) 送受信装置21の側においてレーザダイオード22から出力される光信号、および、(d)送受信装置11の側においてフォトダイオード13から出力される電流信号の平均、それぞれの波形が模式的に示されている。
【0062】
サイクル1では、送受信装置11の側において、駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号に応じて、一定の振幅を有しパワーが増減を繰り返す光信号がレーザダイオード12から出力される(図8(a))。
【0063】
送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号はフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図8(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図8(b))は目標値より大きく、この結果に応じて期間T1に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図8(c))。期間T1以外の期間における光信号のパワーは、期間T1における光信号の平均パワーと異なる値(例えば小さい値またはオフ状態)とされる。
【0064】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号がフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号の平均値(図8(d))が平均電流検出部57により検出されることで、特定パターンの期間T1の長さが検知される。この特定パターンの期間T1の長さに基づいて、次のサイクル2で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさが変更される。この図に示された例では、サイクル1でフォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図8(b))が目標値より大きいと判断されたので、次のサイクル2で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさはサイクル1より小さくされる。
【0065】
サイクル2では、送受信装置11の側において、駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号に応じて、一定の振幅を有しパワーが増減を繰り返す光信号がレーザダイオード12から出力される(図8(a))。
【0066】
送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号はフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図8(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図8(b))は目標値より小さく、この結果に応じて期間T2に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図8(c))。期間T2以外の期間における光信号のパワーは、期間T2における光信号の平均パワーと異なる値(例えば小さい値またはオフ状態)とされる。
【0067】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号がフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号の平均値(図8(d))が平均電流検出部57により検出されることで、特定パターンの期間T2の長さが検知される。この特定パターンの期間T2の長さに基づいて、次のサイクル3で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさが変更される。この図に示された例では、サイクル2でフォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図8(b))が目標値より小さいと判断されたので、次のサイクル3で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさはサイクル2より大きくされる。
【0068】
図9は、無信号期間において特定パターンとして第1パターンを用いて同時調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。この図には、(a) 送受信装置11の側においてレーザダイオード12から出力される光信号、(b) 送受信装置21の側においてフォトダイオード23から出力される電流信号の平均、(c) 送受信装置21の側においてレーザダイオード22から出力される光信号、および、(d)送受信装置11の側においてフォトダイオード13から出力される電流信号の平均、それぞれの波形が模式的に示されている。
【0069】
サイクル1では、送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号(図9(a))がフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図9(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図9(b))は目標値より大きく、この結果に応じて期間T1に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図9(c))。
【0070】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号(図9(c))がフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号の平均値(図9(d))が平均電流検出部57により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード13から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図9(d))は目標値より小さく、この結果に応じて期間T2に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部52からレーザダイオード12に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード12から出力される(図9(a))。
【0071】
サイクル1でフォトダイオード13により受光された光信号(図9(c))の特定パターンの期間T1の長さに基づいて、次のサイクル2で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさがサイクル1より小さくされる。また、サイクル1でフォトダイオード23により受光された光信号(図9(a))の特定パターンの期間T2の長さに基づいて、次のサイクル2で駆動部62からレーザダイオード22に入力される電流信号の大きさがサイクル1より大きくされる。
【0072】
サイクル2では、送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号(図9(a))がフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図9(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図9(b))は目標値より小さく、この結果に応じて期間T2に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図9(c))。
【0073】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号(図9(c))がフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号の平均値(図9(d))が平均電流検出部57により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード13から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図9(d))は目標値より大きく、この結果に応じて期間T1に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部52からレーザダイオード12に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード12から出力される(図9(a))。
【0074】
サイクル2でフォトダイオード13により受光された光信号(図9(c))の特定パターンの期間T2の長さに基づいて、次のサイクル3で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさがサイクル2より大きくされる。また、サイクル2でフォトダイオード23により受光された光信号(図9(a))の特定パターンの期間T1の長さに基づいて、次のサイクル3で駆動部62からレーザダイオード22に入力される電流信号の大きさがサイクル2より小さくされる。
【0075】
図10は、無信号期間において特定パターンとして第2パターンを用いて同時調整を行う場合の送受信システム1の動作例を示すタイミングチャートである。この図には、(a) 送受信装置11の側においてレーザダイオード12から出力される光信号、(b) 送受信装置21の側においてフォトダイオード23から出力される電流信号の平均、(c) 送受信装置21の側においてレーザダイオード22から出力される光信号、および、(d)送受信装置11の側においてフォトダイオード13から出力される電流信号の平均、それぞれの波形が模式的に示されている。
【0076】
サイクル1では、送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号(図10(a))がフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図10(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図10(b))は目標値より大きく、この結果に応じて期間T1に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図10(c))。
【0077】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号(図10(c))がフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号の平均値(図10(d))が平均電流検出部57により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード13から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図10(d))は目標値より小さく、この結果に応じて次のサイクル2の期間T2に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部52からレーザダイオード12に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード12から出力される(図10(a))。
【0078】
サイクル1でフォトダイオード13により受光された光信号(図10(c))の特定パターンの期間T1の長さに基づいて、次のサイクル2で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさがサイクル1より小さくされる。また、サイクル1でフォトダイオード23により受光された光信号(図10(a))の特定パターンの期間T2の長さに基づいて、次のサイクル2で駆動部62からレーザダイオード22に入力される電流信号の大きさがサイクル1より大きくされる。
【0079】
サイクル2では、送受信装置21の側において、レーザダイオード12から出力された光信号(図10(a))がフォトダイオード23により受光され、フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値(図10(b))が平均電流検出部67により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード23から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図10(b))は目標値より小さく、この結果に応じて期間T2に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部62からレーザダイオード22に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード22から出力される(図10(c))。
【0080】
送受信装置11の側において、レーザダイオード22から出力された光信号(図10(c))がフォトダイオード13により受光され、フォトダイオード13から出力された電流信号の平均値(図10(d))が平均電流検出部57により目標値と比較される。図に示された例では、フォトダイオード13から特定パターン期間中に出力された電流信号の平均値(図10(d))は目標値より大きく、この結果に応じて次のサイクル3の期間T1に亘って、特定パターンの電流信号が駆動部52からレーザダイオード12に入力されて、特定パターンの光信号がレーザダイオード12から出力される。
【0081】
サイクル2でフォトダイオード13により受光された光信号(図10(c))の特定パターンの期間T2の長さに基づいて、次のサイクル3で駆動部52からレーザダイオード12に入力される電流信号の大きさがサイクル2より大きくされる。また、サイクル2でフォトダイオード23により受光された光信号(図10(a))の特定パターンの期間T2の長さに基づいて、次のサイクル3で駆動部62からレーザダイオード22に入力される電流信号の大きさがサイクル2より大きくされる。
【0082】
図7図10の何れに示された動作例においても、サイクル3以降の動作も同様に行われる。フォトダイオード23から出力された電流信号の平均値が目標値より大きい場合にレーザダイオード22から出力される光信号における特定パターンの期間T1の長さと、この電流信号の平均値が目標値より小さい場合の特定パターンの期間T2の長さとは、互いに異なる。すなわち、レーザダイオード22から出力される光信号における特定パターンの期間の長さは、フォトダイオード23から出力される電流信号の平均値に応じたものであり、レーザダイオード12から出力される光信号の平均パワーに応じたものである。期間T1,T2それぞれの長さは、2倍以上異ならせるのが好ましく、10倍以上異ならせるのが更に好ましい。
【0083】
レーザダイオード12からフォトダイオード23に至るまでの光信号の光路における光損失は一定としてよい。したがって、フォトダイオード23から出力される電流信号の平均値と対比される目標値は、レーザダイオード12から出力される光信号の平均パワーの目標値に応じたものとすることができる。上記のような調整をすることで、レーザダイオード12から出力される光信号の平均パワーを目標値に近づけることができ、本来送信すべき信号(電圧信号)に基づいて駆動部52からレーザダイオード12に与える電流信号の大きさを適切に設定することができる。
【0084】
駆動部52からレーザダイオード12に供給される電流信号の大きさの調整は、所定数のサイクルの後に終了してもよいし、フォトダイオード23から出力される電流信号の平均値と目標値との大小比較の結果が変化した時点で終了してもよい。同様にして、駆動部62からレーザダイオード22に与える電流信号の大きさも適切に設定することができる。
【0085】
図7および図9に示された動作例では、特定パターンの光信号は、その特定パターンの期間の前後におけるパワーを中心にパワーが増減を繰り返す第1パターンであった。この場合、無信号期間においてフォトダイオード13,23から出力される電流信号の大きさの時間的変動が小さいので、増幅部55,65は、常にDCオフセットキャンセルを行うことができ、無信号期間から通常通信期間に遷移した際の起動を迅速に行うことができる。
【0086】
図8および図10に示された動作例では、特定パターンの光信号は、そその特定パターンの期間の前後におけるパワーと異なるパワーを有する第2パターンであった。この場合、無信号期間のうち特定パターン期間以外の期間において、消費電力を低減することができる。
【0087】
無信号期間においてレーザダイオード12,22に供給される電流信号の大きさを調整する際に、平均電流検出部57,67は、フォトダイオード13,23から出力される電流信号の平均の大きさを検出すればよく、また、受信信号検出部58,68は、増幅部55,65から出力される差動信号の平均振幅の大きさを検出すればよい。何れも、高速性を要求されることはない。したがって、無信号期間においてレーザダイオード12,22に供給される電流信号の大きさを調整する際には、通常通信期間において高速通信を行う際に生じるジッタが問題になることはない。
【符号の説明】
【0088】
1…送受信システム、10…端末装置(第1端末装置)、11…送受信装置、12…レーザダイオード、13…フォトダイオード、14…コネクタ、20…端末装置(第2端末装置)、21…送受信装置、22…レーザダイオード、23…フォトダイオード、24…コネクタ、30…光ファイバ(第1光ファイバ)、40…光ファイバ(第2光ファイバ)、51…制御部、52…駆動部、53…特定パターン生成部、54…送信信号検出部、55…増幅部、56…差動増幅部、57…平均電流検出部、58…受信信号検出部、61…制御部、62…駆動部、63…特定パターン生成部、64…送信信号検出部、65…増幅部、66…差動増幅部、67…平均電流検出部、68…受信信号検出部、71…差動アンプ、72…PMOSトランジスタ、73…コンデンサ、74…PMOSトランジスタ、75…抵抗器、76…比較器。
図1
図2
図3
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図10