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特許7520348抵抗溶接機のC形フレーム構造体及びC形フレーム構造体の設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】抵抗溶接機のC形フレーム構造体及びC形フレーム構造体の設計方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B23K11/11 550A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020115239
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022013002
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000151070
【氏名又は名称】電元社トーア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 善昭
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 修平
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-236980(JP,A)
【文献】特開2000-167674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びつつ下端が固定される第一フレーム部と、前記第一フレーム部の上端から前方に延びる第二フレーム部と、前記第二フレーム部の前端から下方に延びる第三フレーム部と、前記第三フレーム部の下端に設けられた固定電極と、前記第一フレーム部の下端に設けられ駆動手段によって前記固定電極に対して進退する移動電極と、を備えてC字形状を成す抵抗溶接機のC形フレーム構造体であって、
前記第一フレーム部は、下端部が固定されるとともに、左右方向に貫通する四角形状の開口部を備え、
前記第三フレーム部は、その下端部に、前記第一フレーム部から離れる方向の荷重が作用する荷重作用部を備え、
前記四角形状の開口部は、下辺部よりも上辺部が長い
ことを特徴とする抵抗溶接機のC形フレーム構造体。
【請求項2】
前記第三フレーム部に、下辺部よりも上辺部が長い四角形状の開口部を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接機のC形フレーム構造体。
【請求項3】
前記第一フレーム部の四角形状の開口部は、下辺部と上辺部が平行で、当該下辺部に対して、第3フレーム部側の前辺部の角度θ4が、当該前辺部と対向する後辺部の角度θ5よりも大きい角度の形状を成す
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗溶接機のC形フレーム構造体。
【請求項4】
前記上辺部の前後方向の中点は、前記下辺部の前後方向の中点よりも前方に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接機のC形フレーム構造体。
【請求項5】
前記上辺部の前後方向の中点は、前記下辺部の前後方向の中点よりも後方に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接機のC形フレーム構造体。
【請求項6】
上下方向に延びつつ下端が固定される第一フレーム部と、前記第一フレーム部の上端から前方に延びる第二フレーム部と、前記第二フレーム部の前端から下方に延びる第三フレーム部と、前記第三フレーム部の下端に設けられた固定電極と、前記第一フレーム部の下端に設けられ駆動手段によって前記固定電極に対して進退する移動電極と、を備えてC字形状を成す抵抗溶接機のC形フレーム構造体であって、
前記第一フレーム部は、下端部が固定されるとともに、左右方向に貫通する開口部と、前記開口部の前後両側に上下方向にそれぞれ延設された前辺部及び後辺部と、を有し、
前記第三フレーム部は、その下端部に、前記第一フレームから離れる方向の荷重が作用する荷重作用部を備え、
前記前辺部及び後辺部は、上側に向かうほど互いの間隔が広がる
ことを特徴とする抵抗溶接機のC形フレーム構造体。
【請求項7】
上下方向に延びる第一フレーム部と、前記第一フレーム部の上端から前方に延びる第二フレーム部と、前記第二フレーム部の前端から下方に延びる第三フレーム部とを備え、前記第一フレーム部は、下端部が固定されるとともに、左右方向に貫通する四角形状の開口部を備え、前記第三フレーム部は、その下端部に、前記第一フレーム部から離れる方向の荷重が作用する荷重作用部を備え、前記四角形状の開口部は下辺部よりも上辺部が長い、C字形状を成すC形フレーム構造体の設計方法であって、
前記C形フレーム構造体に対してCAE解析によって、前記第三フレーム部の先端の固定電極の傾きと、上下方向の位置ズレとを求めるステップと、
前記固定電極の軸線の傾きが大きくなる程、前記開口部の上辺部と下辺部の比率を大きくする設定を行って、その傾きを水平に近づけるステップと、
前記固定電極の軸線が水平に近づいた結果、前記軸線が上方に軸ずれしている場合は、前記開口部の上辺部の中点を前方側にずらす設定を行うステップと、
前記固定電極の軸線が水平に近づいた結果、前記軸線が下方に軸ずれしている場合は、前記開口部の上辺部の中点を後方側にずらす設定を行うステップと
を実行することを特徴とするC形フレーム構造体の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C形フレーム形状を成し、抵抗溶接機に適用されるC形フレーム構造体及びC形フレーム構造体の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図16は、従来のC形フレーム構造体の側面図である。図16に示すC形フレーム構造体(C形フレームともいう)50は、主に金属製であり、上下方向に延びる第一フレーム部51と、第一フレーム部51の上端から前方に延びる第二フレーム部52と、第二フレーム部52の前端から下方に延びる第三フレーム部53とを備えて略C字形状を成している。第一フレーム部51の基端(固定端)51tは、架台等に固定されている。第三フレーム部53の先端53tは中空に浮いており、この先端53tと基端51tとは図示せぬ水平線上に位置している。
【0003】
このような構成のC形フレーム50は、例えば抵抗溶接機に用いられる。抵抗溶接機では、第三フレーム部53の先端53tに電極が固定され、第一フレーム部51の固定端に移動電極が取り付けられる。移動電極は、矢印Y1で示すように、水平線に沿って固定電極側へ移動し、固定電極との間に被溶接物を所定荷重で加圧して挟み、この状態で溶接を行うようになっている。この種の従来技術として、特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-179318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図16に示すC形フレーム50において、上述した固定電極を移動電極で加圧するように、固定端側から第三フレーム部53の先端53tを、矢印Y1で示すように、水平に加圧したとする。この場合、図17に示すように、第三フレーム部53の先端53tに水平荷重が掛かると、第三フレーム部53及び第二フレーム部52がC形状を逆方向に折り曲げる状態に僅かに反って撓み、第一フレーム部51も同様に反って僅かに撓む。この結果、第三フレーム部53の先端53tが、符号53aで示す第三フレーム部の先端53tのように、水平線Hに対して撓み角θ1で浮き上がる(上に移動する)。
【0006】
このようにC形フレーム50がモーメントで反って撓む場合、抵抗溶接機への適用時には固定電極と移動電極間に滑りや、双方の電極の軸がずれる軸ズレが発生する。抵抗溶接では、滑りや軸ズレは電極と被溶接物の接触不良の原因となり、溶接品質の低下を招いてしまう。
【0007】
ところで、C形フレーム50を抵抗溶接機に適用した場合、第三フレーム部53の先端53t側の固定電極の軸が、第一フレーム部51の基端51t側の移動電極の水平な軸に対して、下方側にずれる場合と、上方側にずれる場合とがある。
【0008】
図18に示すように、第三フレーム部53の先端53t側に寸法の長い固定電極55が、C形状の内側に、第三フレーム部53の内壁に対して垂直に突き出て固定されているとする。第一フレーム部51の基端51t側には、移動電極57が組付けられている。移動電極57は、駆動ユニット56によって、移動電極57の水平な軸線H1に沿って固定電極55側又はこの反対側に移動する。
【0009】
この構成において、移動電極57が固定電極55を軸線H1に沿って所定荷重で加圧すると、上述したようにC形フレーム50が反って撓み、このため、第三フレーム部53の先端53tが、軸線H1に対して前方上方側に斜めに浮き上がり撓み角θ1で軸ズレを起こす。この際、固定電極55の軸線H2は、水平な軸線H1よりも下方側にずれる。つまり、固定電極55の軸線H2が、水平な軸線H1と交差し、固定電極55の端面における軸線H2位置が水平な軸線H1よりも下方側にずれる。この場合も上記同様に、滑りや軸ズレによる溶接品質の低下を招く。
【0010】
一方、図19に示すように、第三フレーム部53の先端53t側に上記固定電極55よりも大幅に短い固定電極58が、C形状の内側に、第三フレーム部53の内壁に対して垂直に突き出て固定されているとする。第一フレーム部51には上記同様に移動電極57が設けられている。
【0011】
この構成において、移動電極57が上記固定電極55の場合と同様に固定電極58を加圧すると、同様に第三フレーム部53の先端53tが軸線H1に対して前方上方側に斜めに浮き上がり撓み角θ1で軸ズレを起こす。この際、固定電極58の軸線H2は、水平な軸線H1よりも上方側にずれる。つまり、固定電極58の端面における軸線H2位置が水平な軸線H1よりも上方側にずれる。この場合も上記同様に、滑りや軸ズレによる溶接品質の低下を招く。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、C形フレームの先端部を、先端部に対向する固定された基端部から移動手段で水平に加圧した際に、双方の電極の滑りや軸ズレを抑制できる抵抗溶接機のC形フレーム構造体及びC形フレーム構造体の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に係る抵抗溶接機のC形フレーム構造体は、上下方向に延びつつ下端が固定される第一フレーム部と、前記第一フレーム部の上端から前方に延びる第二フレーム部と、前記第二フレーム部の前端から下方に延びる第三フレーム部と、前記第三フレーム部の下端に設けられた固定電極と、前記第一フレーム部の下端に設けられ駆動手段によって前記固定電極に対して進退する移動電極と、を備えてC字形状を成す抵抗溶接機のC形フレーム構造体であって、前記第一フレーム部は、下端部が固定されるとともに、左右方向に貫通する四角形状の開口部を備え、前記第三フレーム部は、その下端部に、前記第一フレーム部から離れる方向の荷重が作用する荷重作用部を備え、前記四角形状の開口部は、下辺部よりも上辺部が長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、C形フレームの先端部を、先端部に対向する固定された基端部から移動手段で水平に加圧した際に、双方の電極の滑りや軸ズレを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の原理を説明するためのC形フレーム構造体の側面図である。
図2】本原理のC形フレーム構造体の第一フレーム部に設けられた四角開口部の構成を示す側面図である。
図3】本原理のC形フレーム構造体の第一フレーム部に設けられ、長さL1の上辺部を有する四角開口部を示す図である。
図4】本原理のC形フレーム構造体の第一フレーム部に設けられ、長さL2の上辺部を有する四角開口部を示す図である。
図5】本原理のC形フレーム構造体において、第三フレーム部の先端側の固定電極の軸線H2が、第一フレーム部の移動電極の軸線H1よりも上方側に平行にずれた状態を示す側面図である。
図6】本原理のC形フレーム構造体において、第三フレーム部の先端側の固定電極の軸線H2が、第一フレーム部の移動電極の軸線H1よりも下方側に平行にずれた状態を示す側面図である。
図7】本原理のC形フレーム構造体において固定電極の上方側への平行な軸ズレを補正するための四角開口部を示す図である。
図8】本原理のC形フレーム構造体において固定電極の下方側への平行な軸ズレを補正するための四角開口部を示す図である。
図9】本原理のC形フレーム構造体において水平線に垂直な軸線に対して左右対称な逆台形状の四角開口部と、四角開口部が前方側にずれた様態を示す図である。
図10】本原理のC形フレーム構造体において左右対称な逆台形状の四角開口部が、水平線に垂直な軸線よりも前方側にずれて構成された様態を示す図である。
図11】本原理のC形フレーム構造体においてC形フレーム構造体の第三フレーム部先端側の水平方向への加圧時に軸ズレが無い状態を示す側面図である。
図12】本発明の実施形態に係るC形フレーム構造体を適用した抵抗溶接機の構成を示す斜視図である。
図13】本発明の実施形態に係るC形フレーム構造体を適用した抵抗溶接機の構成を示す側面図である。
図14】本発明の実施形態に係るC形フレーム構造体において移動電極で加圧された固定電極が軸ズレ無く、C形フレームが僅かに前進する様態を示す側面図である。
図15】本発明の実施形態に係るC形フレーム構造体を適用した抵抗溶接機において、C形フレーム構造体の第一フレーム部にハートマーク上側の形状の上辺部を有する四角開口部を設けた場合の構成を示す斜視図である。
図16】従来のC形フレーム構造体の側面図である。
図17】従来のC形フレーム構造体の固定電極を移動電極で矢印Y1で示す方向に水平に加圧した際の状態を示す側面図である。
図18】従来のC形フレーム構造体において第三フレーム部の先端の固定電極の端面における軸線H2位置が水平な軸線H1よりも下方側にずれた状態を示す側面図である。
図19】従来のC形フレーム構造体において第三フレーム部の先端の固定電極の端面における軸線H2位置が水平な軸線H1よりも上方側にずれた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<発明の原理>
図1は本発明の原理を説明するためのC形フレーム構造体の側面図である。但し、図1に示す各部において、図16に示した各部と同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。また、説明の便宜上、方向については、図1に矢印で示す方向を「前後」、「上下」として説明する。また、図1の紙面手前から奥側に向かう方向を「右」、図1の紙面奥側から手前に向かう方向を「左」として説明する。なお、本実施形態及び請求項記載のC形フレーム構造体の上下方向は鉛直方向に限定されない。
【0017】
図1に示すC形フレーム構造体(C形フレーム)50Aが、従来のC形フレーム構造体50(図16)と異なる点は、第一フレーム部51Aに、C形フレーム50Aの左右方向に貫通する四角形状の開口部(四角開口部ともいう)61を備え、第三フレーム部53Aに、上記左右方向に貫通する四角開口部63を備えたことにある。
【0018】
但し、第三フレーム部53Aに四角開口部63を備えず、第一フレーム部51Aのみに四角開口部61を備える構成であってもよい。
【0019】
C形フレーム構造体50Aは、主に金属製であり、上下方向に延びる第一フレーム部51Aと、第一フレーム部51Aの上端から前方に延びる第二フレーム部52と、第二フレーム部52の前端から下方に延びる第三フレーム部53Aとを備えて略C字形状を成している。第一フレーム部51Aの基端(固定端)51tは、架台等に固定されている。第三フレーム部53Aの先端53tは中空に浮いており、この先端53tと基端51tとは図示せぬ水平線上に位置している。
【0020】
但し、第三フレーム部53Aの下端部である先端53t側は、請求項に記載のように、第一フレーム部51Aから離れる方向の荷重が作用する荷重作用部である。
【0021】
第一フレーム部51Aの固定端51tには移動電極57が取り付けられ、第三フレーム部53Aの先端53t側には固定電極59が固定されている。移動電極57と固定電極59とは、互いの軸線H1,H2が一致するように対向状態で配設されている。各軸線H1,H2は、水平状態であるとする。移動電極57は、図示せぬ駆動ユニットによって、軸線H1に沿って固定電極59に向かう方向又はこの逆方向に移動可能となっている。この移動電極57により固定電極59を任意の荷重で加圧可能となっている。
【0022】
第一フレーム部51Aに四角開口部61を設け、第三フレーム部53Aに四角開口部63を設けることにより、第一フレーム部51A及び第三フレーム部53Aが四節リンク機構のように変形し易くしてある。これにより、移動電極57で固定電極59を所定荷重で加圧した際に、第三フレーム部53Aの先端53t側の前述した滑りや軸ズレを抑制可能となっている。
【0023】
但し、第三フレーム部53Aに四角開口部63を備えず、第一フレーム部51Aのみに四角開口部61を備える構成であっても、滑りや軸ズレを抑制可能となっている。
【0024】
図2に第一フレーム部51Aに設けられた四角開口部61を代表して示し、その説明を行う。
四角開口部61は、下辺部61a、上辺部61b、前辺部61c及び、後辺部61dを備え、下辺部61aよりも上辺部61bが長くなっている。前辺部61cは、水平な基端51tに対して垂直に立設している。後辺部61dは、基端51tから後斜め上方に傾斜して立設している。前辺部61cと後辺部61dとの間隔は、下辺部61aが最も短く、上に行くほど長くなり、上辺部61bが最も長くなっている。
【0025】
第三フレーム部53Aの先端53t側の上述した撓みや滑りを抑制するためには、四角開口部61のサイズ及び形状を可変して調整する必要がある。この場合、上辺部61bを下辺部61aで割った場合の上下辺比率と、固定側の下辺部61aに対する上辺部61bの前後位置とを調整する必要がある。この調整は、C形フレーム50Aの設計段階で行うようになっている。
【0026】
次に、上記の上下辺比率について図3及び図4を参照して説明する。
図3は長さL1の上辺部61b1を有する四角開口部61Aを模式的に示す図である。この四角開口部61Aは、上辺部61b1と下辺部61aとを接続する前辺部61c1が、前方斜め上方側に水平線に対して角度θ4で傾斜し、この傾斜角度θ4より小さい角度θ5で、後辺部61dが前方斜め上方側に傾斜している。
【0027】
図4は、図3の長さL1よりも短い長さL2の上辺部61b2を有する四角開口部61Bを模式的に示す図である。この四角開口部61Bは、上辺部61b2と下辺部61aとを接続する前辺部61c2が前方斜め上方側に水平線に対して角度θ4aで傾斜し、この傾斜角度θ4aより小さい角度θ5で後辺部61dが前方斜め上方側に傾斜している。但し、その前辺部61c2の傾斜角度θ4aは、図3の前辺部61c1の角度θ4よりも小さく急である。後辺部61dの傾斜角度θ5及び長さ、並びに下辺部61aの長さは、四角開口部61A,61Bの双方で同じである。
【0028】
なお、C形フレームに、異なる形状の四角開口部61A,61Bが形成されていることを区別するため、四角開口部61Aが形成された方をC形フレーム50A1、四角開口部61Bが形成された方をC形フレーム50A2とする。
【0029】
各C形フレーム50A1,50A2は、各々の固定電極59(図1)が移動電極57(図1)により同じ負荷で加圧されたとする。言い換えれば、各C形フレーム50A1,50A2の第三フレーム部53A(図1)の先端53t側(荷重作用部)に、第一フレーム部51Aから離れる方向の同じ荷重が作用したとする。
【0030】
この場合、各C形フレーム50A1,50A2の第一フレーム部51Aの上辺部61bを有する上端部には、上端部を上向き且つ後向きに回転させようとするモーメントと、上端部を前方に移動させようとする剪断力が作用する。
【0031】
各C形フレーム50A1,50A2の第一フレーム部51Aは、四角開口部61A,61Bが形成されているので、4節リンク機構のような挙動をする。何れの四角開口部61A,61Bも、上辺部61bが下辺部61aよりも長いので、上辺部61bに前方下側に向かう剪断力が作用すると、当該上辺部61bは、矢印Y2で示すように前側に移動すると共に、前側が下を向くように傾動する。
【0032】
この傾動時に、図3に示す四角開口部61Aでは、実線で示す水平な上辺部61bが、破線で示す上辺部61bのように角度θ2で前方下方側に傾く。一方、図4に示す四角開口部61Bでは、上辺部61bの長さが四角開口部61Aのものよりも短いので、角度θ2よりも小さい角度θ3で前方下方側に傾く。つまり、上辺部61b1の長さが長い程に、言い換えれば、上下辺比率が大きい程に、前方下方側への傾き角度が大きくなる。
【0033】
このような四角開口部61A,61Bの前方下方側への傾きにより、モーメントによる上向きの歪と、剪断力による下向きの歪とが相殺される。
【0034】
そのモーメントによる上向きの歪とは、図18又は図19に示したように、第三フレーム部53の先端53tが、軸線H1に対して前方上方側に斜めに浮き上がり撓み角θ1で軸ズレを起こすことである。また、剪断力による下向きの歪とは、上述したように、剪断力により上辺部61bが前方に傾動し、角度θ2又はθ3で前方下方側に傾くことである。
【0035】
つまり、先端53tの前方斜め上方傾斜の撓み角θ1の軸ズレが、上辺部61bの前方下方側への傾動により相殺(補正)される。このため、先端53tの撓み角θ1の軸ズレを水平に補正できる。
【0036】
この際、上辺部61b1の長さが長い程に(上下辺比率が大きい程に)、前方下側への傾き角度が大きくなるので、大きな撓み角θ1の軸ズレを補正できる。つまり、図18又は図19に示した固定電極55,58の撓み角θ1が大きい場合でも補正できる。これらのことから、四角開口部61(図1)の上辺部61bの長さは、上記軸ズレを相殺可能な長さとするのが良い。
【0037】
上記の撓み角θ1の軸ズレの補正は、第一フレーム部51Aのみに四角開口部61を備える構成よりも、第三フレーム部53Aにも四角開口部63を備える構成の方が、後述のように、より効果的に補正できる。
【0038】
ところで、上述したように、第三フレーム部53Aの先端53tの前方斜め上方傾斜の撓み角θ1の軸ズレを水平に補正した際に、図5に示すように、先端53t側の固定電極59の軸線H2が、移動電極57の軸線H1よりも上方側に平行にずれる軸ズレが生じる場合がある。或いは、図6に示すように、先端53t側の固定電極59の軸線H2が、移動電極57の軸線H1よりも下方側に平行にずれる軸ズレが生じる場合がある。
【0039】
この上下の平行な軸ズレを補正する設計方法を、図7及び図8を参照して説明する。図7は固定電極の上方側への平行な軸ズレを補正するための四角開口部を示す図である。図8は固定電極の下方側への平行な軸ズレを補正するための四角開口部を示す図である。
【0040】
図7に示す四角開口部61Cは、下辺部61a、上辺部61b3、前辺部61c3及び後辺部61d3を備え、下辺部61aよりも上辺部61b3が長く、上辺部61b3が下辺部61aよりも前方寄りに位置する構成となっている。前辺部61c3は、下辺部61aの前端から前方斜め上方に傾斜し、後辺部61d3は、下辺部61aの後端から前方斜め上方に傾斜している。つまり、前辺部61c3及び後辺部61d3共に前方側に傾いている。但し、後辺部61d3の方が前辺部61c3よりも傾斜角度が急になっている。
【0041】
C形フレーム50A(図1)の固定電極59が移動電極57により加圧されると、上辺部61b3に、矢印Y3で示すように後方側から前方側に力が加わる。この際、下辺部61aが固定され、前辺部61c3及び後辺部61d3が共に前方側に傾いているので、前辺部61c3と後辺部61d3には、前方斜め下側に傾く力が動く。この力により、上辺部61b3は、前方に動きながら、矢印Y4で示すように下方側へ沈むように変形する。
【0042】
上辺部61b3が下方側に沈む動きによって、図5に示した先端53t側の固定電極59の軸線H2が下方側に移動するので、移動電極57の軸線H1よりも上側にずれる軸ズレを相殺(補正)できる。このため、固定電極59の軸線H2を移動電極57の軸線H1に一致させることができる。
【0043】
図8に示す四角開口部61Dは、下辺部61a、上辺部61b4、前辺部61c4及び後辺部61d4を備え、下辺部61aよりも上辺部61b4が長く、上辺部61b4が下辺部61aよりも後方寄りに位置する特徴構成となっている。前辺部61c4は、下辺部61aの前端から後方斜め上方に傾斜し、後辺部61d4は、下辺部61aの後端から後方斜め上方に傾斜している。つまり、前辺部61c4及び後辺部61d4共に後方側に傾いている。但し、前辺部61c4の方が後辺部61d4よりも傾斜角度が急になっている。
【0044】
C形フレーム50A(図1)の固定電極59が移動電極57により加圧されると、上辺部61b4に、矢印Y5で示すように後方側から前方側に力が加わる。この際、下辺部61aが固定され、前辺部61c4及び後辺部61d4が共に後方側に傾いているので、前辺部61c4と後辺部61d4には、前方斜め上方に傾く力が動く。この力により、上辺部61b4には、前方に動きながら、矢印Y6で示すように上方側へ持ち上がる力が働く。
【0045】
この上方側へ持ち上がる力によって、図6に示した先端53t側の固定電極59の軸線H2が上方側に移動するので、移動電極57の軸線H1よりも下方にずれる軸ズレを相殺(補正)できる。このため、固定電極59の軸線H2を移動電極57の軸線H1に一致させることができる。
【0046】
このような上下にずれる固定電極59の軸線H2の軸ズレの補正は、第一フレーム部51Aのみに四角開口部61を備える構成よりも、第三フレーム部53Aにも四角開口部63を備える構成の方がより効率良く補正できる。
【0047】
この他の四角開口部61の形状を図9及び図10を参照して説明する。図9に示す四角開口部61Gは、下辺部61a、上辺部61b5、前辺部61c5及び後辺部61d5を備え、下辺部61aよりも上辺部61b5が長く、下辺部61aに対して垂直な軸線L10に対して左右対称な逆台形状の構成となっている。
【0048】
つまり、軸線L10と上辺部61b5とが交差する中点P11の左右の辺部5a,5bは等しい長さとなっている。軸線L10と下辺部61aとが交差する中点P10の左右の辺部も等しい長さとなっている。また、前辺部61c5は、下辺部61aの前端から前方斜め上方に傾斜し、後辺部61d5は、下辺部61aの後端から後方斜め上方に傾斜している。
【0049】
C形フレーム50A(図1)の固定電極59が移動電極57により加圧されると、上辺部61b5に、矢印Y7で示すように後方側から前方側に力が加わる。この際、下辺部61aが固定され、前辺部61c5及び後辺部61d5が共に前方側に傾いているので、前辺部61c5には、前方斜め下側に傾く力が動き、後辺部61d5には、前方斜め上側に傾く力が動く。
【0050】
この力により、上辺部61b5の前方側は、前方に動きながら、矢印Y8で示すように下方側へ沈むように変形し、上辺部61b5の後方側は、前方に動きながら、矢印Y9で示すように上方側へ浮き上がるように変形する。このため、上辺部61b5は、前方側が下がり、後方側が上がる状態で傾斜する。
【0051】
上辺部61b5の傾斜によって、図5に示した先端53t側の固定電極59の軸線H2が下方側に移動するので、移動電極57の軸線H1よりも上側にずれる軸ズレを相殺(補正)できる。このため、固定電極59の軸線H2を移動電極57の軸線H1に一致させることができる。
【0052】
次に、図10に示す四角開口部61Hは、下辺部61a、上辺部61b6、前辺部61c6及び後辺部61d6を備え、下辺部61aよりも上辺部61b6が長い逆台形状の構成となっている。この逆台形状は、下辺部61aの軸線L10と交差する中点P10の左右の辺部は等しい長さとなっている。しかし、上辺部61b6の左右の辺部5a,5bを等しく分ける中点P11は、軸線L10から前方側に離間した位置に片寄っている。このため、下辺部61aの前端から前方斜め上方に傾斜する前辺部61c6の長さが、下辺部61aの後端から後方斜め上方に傾斜する後辺部61d6の長さよりも長くなっている。
【0053】
C形フレーム60A(図1)の固定電極69が移動電極67により加圧されると、上辺部61b6に、矢印Y10で示すように後方側から前方側に力が加わる。この際、下辺部61aが固定され、前辺部61c6及び後辺部61d6が共に前方側に傾いているので、前辺部61c6には、前方斜め下側に傾く力が動き、後辺部61d6には、前方斜め上側に傾く力が動く。
【0054】
この力により、上辺部61b6の前方側は、前方に動きながら、矢印Y11で示すように下方側へ沈むように変形し、上辺部61b6の後方側は、前方に動きながら、矢印Y12で示すように上方側へ浮き上がるように変形する。この場合、矢印Y11で示す下方側へ沈む長さが、矢印Y12で示す上方側へ浮き上がる長さよりも長い。このため、上辺部61b6は、前方側が大きく下がり、後方側が小さく上がる状態で傾斜する。
【0055】
上辺部61b6の傾斜によって、図6に示した先端63t側の固定電極69の軸線H2が下方側に移動するので、移動電極67の軸線H1よりも上側にずれる軸ズレを相殺(補正)できる。このため、固定電極69の軸線H2を移動電極67の軸線H1に一致させることができる。
【0056】
このように中点P11が、軸線L10から前方側に離間した位置に片寄っている場合に、前辺部61c6及び後辺部61d6の双方が、図7に示したように、下辺部61aの前端から前方斜め上方に傾斜している場合もある。
【0057】
一方、図10に示す四角開口部61Hの上辺部61bの中点P11が、図示はしないが、軸線L10から後方側に離間した位置に片寄っているとする。この場合に、前辺部61c6が下辺部61aの前端から前方斜め上方に傾斜し、後辺部61d6が下辺部61aの後端から後方斜め上方に傾斜しているとする。このため、下辺部61aの後端から後方斜め上方に傾斜する後辺部61d6の長さが、下辺部61aの前端から前方斜め上方に傾斜する前辺部61c6の長さよりも長くなっている。
【0058】
この場合、四角開口部61Hと同様に、上辺部61b6の前方側は、下方側へ沈むように変形し、上辺部61b6の後方側は、上方側へ浮き上がるように変形する。この場合、後方側の上方側へ浮き上がる長さが、前方側の下方側へ沈む長さよりも長い。このため、上辺部61b6は、前方側が小さく下がり、後方側が大きく上がる状態で傾斜する。この傾斜によって、図5に示した先端53t側の固定電極59の軸線H2が上方側に移動する。このため、移動電極57の軸線H1よりも下側にずれる軸ズレを相殺(補正)できる。
【0059】
このように中点P11が、軸線L10から後方側に離間した位置に片寄っている場合に、前辺部61c6及び後辺部61d6の双方が、図8に示したように、下辺部61aの前端から後方斜め上方に傾斜している場合もある。
【0060】
次に、C形フレーム構造体50A(図1)の設計方法によれば、次のように軸ズレを補正できる。この設計方法の手順の要点を(1)~(4)において説明する。
【0061】
(1)CAE(Computer Aided Engineering)解析によって、次の解析を行う。即ち、上述したC形フレーム構造体50A(図1)の第三フレーム部53Aの先端53tの固定電極59に、ある大きさの荷重を、第一フレーム部51Aの移動電極57と反対側に水平に加える。この際の水平な軸線H1に対する固定電極59の軸線H2の傾きと、上下方向のずれを求める。
【0062】
言い換えれば、C形フレーム構造体50Aに対してCAE解析によって、第三フレーム部53Aの先端53tの固定電極59の傾きと、上下方向の位置ズレとを求める。
【0063】
(2)固定電極59の軸線H2の傾きが大きくなる程、四角開口部61の上辺部61bと下辺部61aの比率(上辺/下辺)を大きくする設定を行って、その傾きを水平に近づける。
【0064】
(3)水平に近づいた結果、上方に軸ずれしている場合は、四角開口部61の上辺部61bの中点P11(図10)を前方側にずらす設定を行う。
【0065】
(4)水平に近づいた結果、下方に軸ずれしている場合は、四角開口部61の上辺部61bの中点P11を後方側にずらす設定を行う。
【0066】
更に詳細に設計方法について説明する。まず、第三フレーム部53Aの先端53t(又は固定電極59)の前方斜め上方傾斜の撓み角θ1の軸ズレを、第一フレーム部51Aの四角開口部61における上辺部61bの前方下方側への傾動により水平に補正する。つまり、設計時に、前方斜め上方傾斜の撓み角θ1の軸ズレが水平に補正されるように、四角開口部61における下辺部61aに対する上辺部61bの長さを決める。言い換えれば、上下辺比率を決める。
【0067】
次に、移動電極57の水平な軸線H1に対して上下にずれる第三フレーム部53Aの先端53t(又は固定電極59)の軸線H2の軸ズレを、第一フレーム部51Aの四角開口部61における上辺部61bの下方側へ沈む力又は上方側へ持ち上がる力によって、軸線H1に一致するように補正する。つまり、設計時に、先端53tの固定電極59の上下に(又は上下に平行に)ずれる軸線H2の軸ズレを、水平な移動電極57の軸線H1に一致するように、四角開口部61の下辺部61aに対する上辺部61bの前後位置を決める。
【0068】
このようにC形フレーム50Aを設計すれば、図11に示すC形フレーム50Aのように、第三フレーム部53Aの先端53t側を、矢印Y1で示す水平方向に加圧した際に軸ズレを無くすことができる。このため、先端53t側の固定電極59と、基端51t側の移動電極57との滑りを無くすことができる。
【0069】
即ち、図11に示すC形フレーム50Aは、加圧の無い初期時に、第一フレーム部51Aの基端51tが位置P1に固定され、第三フレーム部53Aが位置P1に配置されているとする。この状態で、先端53t側を水平に加圧すると、上述したように軸ズレが補正されながら、四角開口部63が設けられた第三フレーム部53Aの加圧端63eが位置P1からP3まで水平に移動する。同時に、第一フレーム部51Aの前辺部61cの上端部が位置P1からP2まで移動する。このように軸ズレ無く、先端53t側を基端51tから離れる方向に加圧できる。但し、P1とP2間隔は、P1とP3間隔よりも短い。
【0070】
また、第三フレーム部53Aにも、下辺部よりも上辺部が長い四角開口部63を形成した場合、次のような作用効果が得られる。
【0071】
即ち、第三フレーム部53Aの下端の先端53t部分に、第一フレーム部51Aから離れる方向の荷重が作用した場合、第三フレーム部53Aの四角開口部63により、第三フレーム部53Aが荷重の作用方向へ傾倒し易い。このため、モーメントによる上向きの歪と、剪断力による下向きの歪とが、より相殺される。これにより、第三フレーム部53Aの下端側の先端53tの上移動を、より減少できる。
【0072】
更に、第一フレーム部51Aの四角開口部61は、図3(又は図4)に示すように、下辺部61aと上辺部61b1が平行で、下辺部61aに対して、前方側の前辺部61c1の水平線に対する角度θ4が、前辺部61c1と対向する後辺部61の角度θ5よりも大きい角度の形状を成す。この構成の場合、次のような作用効果が得られる。
【0073】
即ち、四角開口部61が、下辺部61aと上辺部61b1とが平行で前方側に傾倒する四辺形状を成しているので、4節リンク機構のような挙動において、上辺部61b1が前側に移動すると共に、前側が下を向くように傾動する動作が、より顕著となる。このため、前述のモーメントによる上向きの歪と、剪断力による下向きの歪とが、より適正に相殺される。このため、第三フレーム部53Aの下端側の先端53tの上移動を、より減少できる。
【0074】
<実施形態>
次に、C形フレーム構造体50Aを抵抗溶接機に適用した構成について、図12及び図13を参照して説明する。図12は本発明の実施形態に係るC形フレーム構造体を適用した抵抗溶接機の構成を示す斜視図、図13は抵抗溶接機の構成を示す側面図である。但し、図12及び図13に示す抵抗溶接機の各部において、図1及び図2に示したC形フレーム構造体50Aの各部に対応する部分には同一符号を付した。
【0075】
図12に示す抵抗溶接機20は、移動電極57と固定電極59との間に金属材を挟んで溶接を行うものである。
【0076】
抵抗溶接機20は、駆動用サーボモータ(モータ)21と、駆動ユニット22と、電極押圧部23と、移動電極57と、トランス部25と、整流部26と、取付部31と、第一フレーム部51A、第二フレーム部52及び第三フレーム部53Aと、フレームホルダ53Bと、固定電極59と、両側の固定板36,36とを備えて構成されている。
【0077】
但し、第一フレーム部51A、第二フレーム部52及び第三フレーム部53Aは、C形フレーム構造体(C形フレーム)50Aを成す。第二フレーム部52及び第三フレーム部53Aは、L字の一体形状を成す。
【0078】
モータ21は、概略円柱形状を成し、回転軸(軸)が例えば水平となる状態で駆動ユニット22に組付けられている。駆動ユニット22は、モータ21の軸方向に沿って延びる概略直方体形状を成す。本実施形態では、抵抗溶接機20のモータ21の軸及び軸方向に延びる駆動ユニット22が、水平に配置されている状態を前提とする。
【0079】
駆動ユニット22は、ユニット内部から固定電極59へ向かう前方に進んで伸びると共に、後方に後退して縮むロッド22aを備え、ロッド22aの先端には電極押圧部23が組付けられている。また、電極押圧部23の前方側には、移動電極57が組付けられている。この駆動ユニット22の上方のトランス部25は、図示せぬ電源から1次側に供給される交流電圧を降圧するものである。トランス部25の2次側には、交流電流を直流電流に整流する整流部26が電気的に接続されており、整流部26の出力側は2次導体26p,26mを介して移動電極57に電気的に接続されている。なお、トランス部25及び整流部26を備えて電源手段が構成されるが、この電源手段には接合用電源等を用いてもよい。
【0080】
駆動ユニット22と、この上方に配置されるトランス部25及び整流部26とは、開口を有する長方形状の固定板36,36で両側から挟まれ、複数のネジで固定されている。固定板36には複数の貫通孔(又はネジ穴)が形成され、駆動ユニット22、トランス部25及び整流部26には、それらの貫通孔に対向する位置にネジ穴が形成されている。駆動ユニット22、トランス部25及び整流部26の両側に、各ネジ穴に各貫通孔を合わせて固定板36,36を配置し、各固定板36,36の表面側からネジを貫通孔に挿通して更にネジ穴に螺合して固定する。これによって、駆動ユニット22の上にトランス部25及び整流部26が配置された状態で両側から固定板36,36で挟まれた一体構成となる。
【0081】
各固定板36,36の間のトランス部25の上方には、取付部31(図13参照)がネジで固定されている。取付部31は、各固定板36,36の間に嵌合される板状部31aと、板状部31aの上面中央に低く突き出た柱状部31bと、柱状部31bの上に位置する円板部31cとを備える。円板部31cの上面の周辺部分には、所定間隔で周回状に貫通孔(又はネジ穴)31dが形成されている。
【0082】
この貫通孔31dを介して取付部31を、図示せぬロボットや支柱等の被固定部に取り付ける場合、各貫通孔31dに表側から被固定部のボルトを挿通し、裏側からナット締めして取り付けるようになっている。なお、貫通孔31dがネジ穴31dの場合は被固定部のネジを螺合する。また、取付部31は、トランス部25の上方に限らず、抵抗溶接機20の横側や後側等に目的に応じて自在に配置することができる。
【0083】
各固定板36,36の間の取付部31の前方側には、第一フレーム部51A、第二フレーム部52及び第三フレーム部53Aから成るC形フレーム50Aが固定されている。これは、板状の第一フレーム部51Aの下端部が、両側から駆動ユニット22を挟んでネジで固定されている。
【0084】
第一フレーム部51Aは、駆動ユニット22への固定部分から斜め上方に傾斜する傾斜形状を成し、中央部分に台形の四角開口部61が形成されている。四角開口部61は、本例では、上述の図3に示した四角開口部61Aと同じものであるとする。この他、四角開口部61は、前述の原理で説明した他の四角開口部61B(図4),61C(図7),61D(図8)であってもよい。
【0085】
第一フレーム部51Aの四角開口部61の上端部は、両側から板状の基部32a(図1)を介して第二フレーム部52の後端部を挟みネジで固定されている。
【0086】
第二フレーム部52は、前方側に水平に延在し、この先端側に一体に連接された第三フレーム部53Aが下方側に延在している。第二フレーム部52及び第三フレーム部53AのL字形状の両面には、L字周回状にエッジ52eを残して肉抜き凹部52fが形成されている。肉抜き凹部52fは軽量化等を図るために形成されている。第三フレーム部53Aの先端側には、フレームホルダ53Bがネジで固定されている。フレームホルダ53Bは、第三フレーム部53Aの下端部を構成する部材である。
【0087】
フレームホルダ53Bの先端側には、円柱形状の固定電極59が、円柱形状の移動電極57の先端側と所定間隔離間して対向状態に固定されている。この状態では、図1に示したように、移動電極57の軸線H1と、固定電極59の軸線H2とが水平に一致している。
【0088】
このような抵抗溶接機20において、モータ21は、回転軸が駆動ユニット22内のボールネジ(図示せず)に組付けられている。ボールネジは、ネジ軸(図示せず)がモータ21の回転軸に直線状に取り付けられており、ネジ軸に組付けられたボールナット(図示せず)に、ロッド22aの基端側が組付けられている。モータ21の正転に応じてボールナットが前方(固定電極59方向)に移動し、この移動に応じてロッド22aが前方に伸びる。一方、モータ21の逆転に応じてボールナットが後方に移動し、この移動に応じてロッド22aが後方に縮退して縮むようになっている。このロッド22aの伸縮に応じて電極押圧部23が前後退し、これに応じて移動電極57も前後退する。
【0089】
図14に示すように、モータ21の正転に応じてボールナットが前方に移動し、この移動に応じてロッド22aが前方に伸びて移動電極57が前方に移動する。更に、移動電極57が矢印Y1で示すように前進し、第三フレーム部53Aの下端側の固定電極59を図示せぬ被溶接物を介して所定の負荷で加圧したとする。このとき、四角開口部61の周縁部が四節リンク機構のように機能して、四角開口部61の上辺が前側が下がるように傾斜すると共に全体的に下方に移動するように変形するので、移動電極57で加圧された固定電極59の軸ずれが抑制される。
【0090】
このため、抵抗溶接機20が片持ち構造であるにも関わらず、C形フレーム50Aの基端と先端である移動電極57と固定電極59とを、軸ズレすることなく対向状態に当接できる。
【0091】
従来の四角開口部61の無いC形フレームでは、第三フレーム部53Aの下端側の固定電極59が、後方側に下がるように斜め上方にずれる等の軸ズレが生じる。
【0092】
<四角開口部の変形例>
図13に示すように、第一フレーム部51Aに、ハートマーク上側の形状の上辺部61bEを有する四角開口部61Eを設けてもよい。この上辺部61bEの形状は一例であり、前辺部61cと後辺部61dとの間隔が、下辺部61aから上辺部61bE側に向かうに従って長くなる条件を満たしていれば、上辺部61bEは直線以外の形状であってもよい。その条件を満たせば、下辺部61aも直線以外の形状であってもよい。
【0093】
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。上述したC形フレーム構造体50Aは、抵抗溶接機20への適用例を示したが、プレス機、リベットを打つガン{打込リベット(セルフピアシングリベットのガン}、FSJ(Friction Spot Joining:摩擦攪拌点接合)装置等の各種の対向押圧する機器に使用可能である。
【符号の説明】
【0094】
50A C形フレーム構造体
51A 第一フレーム部
52 第二フレーム部
53A 第三フレーム部
51t 第一フレーム部の基端
53t 第三フレーム部の先端
61,63 四角開口部(四角形状の開口部)
61a 下辺部
61b 上辺部
61c 前辺部
61d 後辺部
57 移動電極
59 固定電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19