IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人首都大学東京の特許一覧

特許7520352スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法
<>
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図1
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図2
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図3
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図4
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図5
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図6
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図7
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図8
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図9
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図10
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図11
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図12
  • 特許-スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/56 20060101AFI20240716BHJP
   B64G 1/68 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B64G1/56
B64G1/68
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020137015
(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公開番号】P2022032802
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】武市 昇
(72)【発明者】
【氏名】橘 直輝
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-76053(JP,A)
【文献】特開2012-71721(JP,A)
【文献】特開2015-214247(JP,A)
【文献】米国特許第5082211(US,A)
【文献】国際公開第90/001447(WO,A1)
【文献】Satomi KAWAMOTO, Yasushi OHKAWA, Shoji KITAMURA and Shin-ichiro NISHIDA,“Strategy for Active Debris Removal Using Electrodynamic Tether”,Trans. JSASS Space Tech. Japan,日本,THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES,2009年,Vol. 7, No. ists26,pp. Pr_2_7-Pr_2_12,DOI: 10.2322/tstj.7.Pr_2_7,ISSN 1347-3840
【文献】Yoshiki YAMAGIWA, Koki TAO, Shoji SATO, Kiyotoshi OTSUKA, and Yoji ISHIKAWA,“Cable Dynamics and Control at the Simultaneous Deployment of the Cables from GEO Station during Space Elevator Construction”,Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan,日本,THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES,2018年,Vol.16, No.2,pp.165-171,DOI: 10.2322/tastj.16.165,ISSN 1884-0485
【文献】武市昇,“宇宙エレベータ建設初期ケーブルの軌道力学とその伸展システム”,日本航空宇宙学会誌,日本,一般社団法人日本航空宇宙学会,2015年04月,第63巻第4号,pp.8-14,DOI: 10.14822/kjsass.63.4_110,ISSN 10021-4663
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/56, 1/64, 1/68, 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主衛星と、前記主衛星とテザーを介して接続される除去衛星とを備えるスペースデブリ除去システムであって、
前記主衛星は、
前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリを判定する判定部によって前記スペースデブリ除去システムに接近すると判定された前記スペースデブリの軌道に基づいて、前記主衛星の軌道を制御する制御部
を備え
前記制御部は、取得した一又は複数のスペースデブリの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、前記除去衛星に一又は複数のスペースデブリのうちのいずれかのスペースデブリが衝突するようにスラスタを制御することによって前記主衛星の速度ベクトルを変化させる、スペースデブリ除去システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記スペースデブリ除去システムに地球周回軌道を周回させる、請求項1に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項3】
前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリの判定後に、前記主衛星にテザーを取り付けている機構に前記テザーの長さを調節させる調節部
をさらに備え、
前記調節部は、前記機構に前記テザーの長さを調節させることによって、前記除去衛星の高度を変更させる、請求項1又は請求項2に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項4】
前記スペースデブリを観測する第1観測部
を備え、
前記判定部は、前記第1観測部による前記スペースデブリの観測結果に基づいて前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリを判定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項5】
前記第1観測部は、前記スペースデブリの観測結果に基づいて、スペースデブリの軌道を導出し、
前記判定部は、前記第1観測部による前記スペースデブリの軌道の導出結果に基づいて前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリを判定する、請求項4に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項6】
前記除去衛星の周囲を観測する第2観測部
を備え、
前記判定部は、前記第2観測部による前記除去衛星の周囲の観測結果に基づいて前記除去衛星に接近するスペースデブリを判定する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項7】
前記除去衛星を進行方向に対して横方向に移動させる除去衛星制御部
を備え、
前記除去衛星制御部は、前記除去衛星を軌道面外方向に移動させることによって、前記除去衛星をスペースデブリに接近させる、請求項6に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記第2観測部による前記除去衛星の周囲の観測結果に基づいて、前記除去衛星と前記スペースデブリとが衝突するか否かを判定し、
前記除去衛星制御部は、前記判定部が前記除去衛星と前記スペースデブリとが衝突しないと判定した場合に、前記除去衛星を進行方向に対して横方向に移動させることによって、前記除去衛星をスペースデブリに衝突させる、請求項7に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項9】
主衛星と、前記主衛星とテザーを介して接続される除去衛星とを備えるスペースデブリ除去システムが実行するスペースデブリ除去方法であって、
前記主衛星が、前記スペースデブリ除去システムに接近すると判定された前記スペースデブリの軌道に基づいて、前記主衛星の軌道を制御するステップ
を有し、
前記制御するステップでは、取得した一又は複数のスペースデブリの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、前記除去衛星に一又は複数のスペースデブリのうちのいずれかのスペースデブリが衝突するようにスラスタを制御することによって前記主衛星の速度ベクトルを変化させる、スペースデブリ除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、宇宙開発の進展に伴って使用済みロケット、故障した人工衛星、耐用年数切れの人工衛星、スペースデブリ同士の衝突等で発生した微細デブリ等のスペースデブリの総数は増加している。さらに、気象観測衛星FENGYUN1-Cの破壊実験、Iridium33とCosmos2251との衝突などによってスペースデブリが増加し、深刻な問題になっている。
観測可能なスペースデブリの物体数は約19000個であり、このうち約80%が地球低軌道(low Earth orbit、LEO)に密集し、約7km/sで軌道を周回している。このため、運用中の衛星にとって大きな脅威となっている。
【0003】
スペースデブリを除去する技術に関して、捕獲および軌道変更によってスペースデブリを除去する技術が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。この技術は、特定のスペースデブリに向けて能動的に接近し、捕獲し、除去する。主な研究開発の課題として、導電性テザー(Electrodynamic Tether,EDT)による軌道変更、ロボットアーム・テザーネットによる捕獲が挙げられている。
また、レーザー照射によってスペースデブリを除去する技術が知られている(例えば、非特許文献3参照)。主な研究開発の課題として、監視、照射精度の向上と、小型・高効率・高出力レーザーの開発が挙げられている。
【0004】
また、商用の通信衛星コンステレーションを構築することが計画されている。ここで、衛星コンステレーションとは、特定の方式に基づく多数個の人工衛星の一群・システムをいう。個々の衛星はシステム設計された軌道に投入され、協調して動作を行わせ、システムの目的を果たす。商用の通信衛星コンステレーションが構築される場合に、高度2000キロメートル以下を飛行する低軌道衛星が大量に打ち上げられることが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6173922号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kawamoto, S., et. al, “Strategy for Active Debris Removal Using Electrodynamic Tether”, Trans. JSASS Space Tech. Japan, Vol. 7, No. ists26, pp. Pr_2_7-Pr_2_12, 2009
【0007】
【文献】Riccardo Benvenuto, et. al, “Dynamics analysis and GNC design of flexible systems for space debris active removal”, Acta Astronautica 110, pp. 247-265, 2015
【0008】
【文献】Toshikazu Ebisuzaki , et. al, “Demonstration designs for the remediation of space debris from the International Space Station”, Acta Astronautica 112, pp. 102-113, 2015
【0009】
【文献】DONALD J. KESSLER AND BURTON G. COUR-PALAIS, “Collision Frequency of Artificial Satellites: The Creation of a Debris Belt,” JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESERCH, Vol. 83, No. A6, 1978, pp. 2637-2646.
【0010】
【文献】Frederick D. Gregory, Guidelines and Assessment Procedures for Limiting Orbital Debris. NASA Safety Standard 1740.14, NASA Headquarters, Washington, DC, August 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
捕獲によってスペースデブリを除去する技術では、1機につき1個~数個のスペースデブリしか落とせない。捕獲によってスペースデブリを除去する技術では、捕獲できないデブリは除去できず、非協力物体と小さいデブリとの捕獲は困難である。軌道変更によってスペースデブリを除去する技術では、軌道変更に要する燃料が必要になる。また、軌道変更によってスペースデブリを除去する技術では、デブリの軌道を制御する機器をデブリに取り付けることが必要になる。
レーザー照射によってスペースデブリを除去する技術では、軌道変更に時間を要する。レーザー照射によってスペースデブリを除去する技術では、大きな電力が必要である。レーザー照射によってスペースデブリを除去する技術では、大きなデブリの除去には長時間を要し、デブリの材質によっては軌道変更が不可能である。レーザー照射によってスペースデブリを除去する技術では、レーザー照射によって加熱されることで蒸発する材質のデブリの除去となる。
スペースデブリが脅威となっている。また、デブリ同士が衝突することによってさらに多くのデブリを生じる現象(ケスラーシンドローム)が生じている(例えば、非特許文献4参照)。スペースデブリを減少させるために、ロケット、人工衛星などに、寿命が経過した後に、デブリにならないことを保証する必要がある。例えば、寿命が経過した後に、再突入の機能を持たせることが想定される。しかし、一部のロケット、人工衛星などは故障することが想定されるため、スペースデブリが生じることに変わりはない。
【0012】
本発明は、現時点ですでに存在する既存のデブリがもたらす問題と、今後打ち上げられる人工衛星に起因するスペースデブリがもたらすであろう問題とを解決すべくなされたもので、スペースデブリを除去できるスペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は、主衛星と、前記主衛星とテザーを介して接続される除去衛星とを備えるスペースデブリ除去システムであって、前記主衛星は、前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリを判定する判定部によって前記スペースデブリ除去システムに接近すると判定された前記スペースデブリの軌道に基づいて、前記主衛星の軌道を制御する制御部を備え、前記制御部は、取得した一又は複数のスペースデブリの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、前記除去衛星に一又は複数のスペースデブリのうちのいずれかのスペースデブリが衝突するようにスラスタを制御することによって前記主衛星の速度ベクトルを変化させる、スペースデブリ除去システムである。
本発明の一実施形態は、前述のスペースデブリ除去システムにおいて、前記制御部は、前記除去衛星にスペースデブリ除去システムに地球周回軌道を周回させる。
本発明の一実施形態は、前述のスペースデブリ除去システムにおいて、前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリの判定後に、前記主衛星にテザーを取り付けている機構に前記テザーの長さを調節させる調節部をさらに備え、前記調節部は、前記機構に前記テザーの長さを調節させることによって、前記除去衛星の高度を変更させる。
本発明の一実施形態は、前述のスペースデブリ除去システムにおいて、前記スペースデブリを観測する第1観測部を備え、前記判定部は、前記第1観測部による前記スペースデブリの観測結果に基づいて前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリを判定する。
本発明の一実施形態は、前述のスペースデブリ除去システムにおいて、前記第1観測部は、前記スペースデブリの観測結果に基づいて、スペースデブリの軌道を導出し、前記判定部は、前記第1観測部による前記スペースデブリの軌道の導出結果に基づいて前記スペースデブリ除去システムに接近するスペースデブリを判定する。
本発明の一実施形態は、前述のスペースデブリ除去システムにおいて、前記除去衛星の周囲を観測する第2観測部を備え、前記判定部は、前記第2観測部による前記除去衛星の周囲の観測結果に基づいて前記除去衛星に接近するスペースデブリを判定する。
本発明の一実施形態は、前述のスペースデブリ除去システムにおいて、前記除去衛星を進行方向に対して横方向に移動させる除去衛星制御部を備え、前記除去衛星制御部は、前記除去衛星を軌道面外方向に移動させることによって、前記除去衛星をスペースデブリに接近させる。
本発明の一実施形態は、前述のスペースデブリ除去システムにおいて、前記判定部は、前記第2観測部による前記除去衛星の周囲の観測結果に基づいて、前記除去衛星と前記スペースデブリとが衝突するか否かを判定し、前記除去衛星制御部は、前記判定部が前記除去衛星と前記スペースデブリとが衝突しないと判定した場合に、前記除去衛星を進行方向に対して横方向に移動させることによって、前記除去衛星をスペースデブリに衝突させる。
本発明の一実施形態は、主衛星と、前記主衛星とテザーを介して接続される除去衛星とを備えるスペースデブリ除去システムが実行するスペースデブリ除去方法であって、前記主衛星が、前記スペースデブリ除去システムに接近すると判定された前記スペースデブリの軌道に基づいて、前記主衛星の軌道を制御するステップを有し、前記制御するステップでは、取得した一又は複数のスペースデブリの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、前記除去衛星に一又は複数のスペースデブリのうちのいずれかのスペースデブリが衝突するようにスラスタを制御することによって前記主衛星の速度ベクトルを変化させる、スペースデブリ除去方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、スペースデブリを除去できるスペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るスペースデブリ除去システムの一例を示す図である。
図2】実施形態に係るスペースデブリ除去システムを説明するための図である。
図3】実施形態に係るスペースデブリ除去システムの一例を示すブロック図である。
図4】軌道寿命の一例を示す図である。
図5】デブリの高度の分布を示す図である。
図6】衝突速度の解析結果の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係るスペースデブリ除去システムのテザーの一例を示す図である。
図8】本実施形態に係るスペースデブリ除去システムの動作の一例を示す図である。
図9】実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの一例を示すブロック図である。
図10】実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例1を示す図である。
図11】実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例2を示す図である。
図12】実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例1を示す図である。
図13】実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係るスペースデブリ除去システム及びスペースデブリ除去方法を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0017】
(実施形態)
(スペースデブリ除去システム)
本発明の実施形態に係るスペースデブリ除去システムを、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るスペースデブリ除去システムの一例を示す図である。実施形態に係るスペースデブリ除去システム100は、主衛星10と、テザー20と、除去衛星30と、観測装置40とを備える。除去衛星30は、テザー20を介して主衛星10と接続される。主衛星10と除去衛星30との一例は、人工衛星である。
【0018】
図2は、実施形態に係るスペースデブリ除去システムを説明するための図である。図2には、地球に対して、第1高度の第1軌道を周回する物体Aと物体Bと、第1高度よりも低い第2高度の第2軌道を周回する物体Cと物体Dとが示される。物体Aと物体Bと物体Cと物体Dとの一例は、人工衛星である。
第1軌道がケプラー軌道である場合には物体Aと物体Bとは重力の影響を受け、第2軌道がケプラー軌道である場合には物体Cと物体Dとは重力の影響を受ける。
第1軌道と第2軌道とは、地球周回軌道である。この場合、同じ高度にある全ての物体の速度は等しくなる。つまり、物体Aの速度と物体Bの速度とは等しくなり、物体Cの速度と物体Dの速度とは等しくなる。
また、高度が高いほど重力が弱くなるため、遅い速度でも物体は周回できる。換言すれば、軌道の高度が高いほど物体の速度及び角速度は低くなり、軌道の高度が低いほど物体の速度及び角速度は高くなる。図2に示される例では、第1軌道の第1高度は第2軌道の第2高度よりも高いため、第1軌道を周回する物体Aの速度及び角速度と物体Bの速度及び角速度は、第2軌道を周回する物体Cの速度及び角速度と物体Dの速度及び角速度よりも低くなる。
また、物体は減速することによって、高度が下がる性質がある。
本実施形態では、以上の性質を利用する。図1に戻り説明を続ける。
【0019】
スペースデブリ除去システム100の一例は、地球低軌道を周回する。この場合には、スペースデブリ除去システム100は、矢印の方向に移動することによって、地球低軌道を周回する。以下、スペースデブリ除去システム100の進行方向をX軸とし、水平方向をY軸とし、X軸とY軸と垂直である鉛直方向をZ軸として説明を続ける。
主衛星10は、スペースデブリ除去システム100の重心よりも低い高度に除去衛星30の高度を制御する。
観測装置40は、全天のスペースデブリDBを観測する。観測装置40は、スペースデブリDBの観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を観測する。観測装置40は、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。観測装置40は、判定部45と、算出部47とを備える。判定部45は、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果とスペースデブリ除去システム100の軌道とに基づいて、スペースデブリ除去システム100に接近する一又は複数のスペースデブリDBを判定する。ここで、判定部45は、地球を何周もしてからスペースデブリ除去システム100に衝突する可能性が高いスペースデブリDBを軌道情報から判定できる。その場合、判定部45が判定する時点では、スペースデブリDBはスペースデブリ除去システム100から見て地球の反対側にいるような場合もあり得る。判定部45は、スペースデブリ除去システム100に接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。
算出部47は、判定部45がスペースデブリ除去システム100に接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御を算出する。ここで、所要の軌道制御とは、スペースデブリ除去システム100に与えるべき速度ベクトルの変化をいう。観測装置40は、一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果を地球局などの無線局からスペースデブリ除去システム100へ送信する。観測装置40の一例は、地球上に設置される。
【0020】
スペースデブリ除去システム100は、観測装置40が送信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果を受信する。スペースデブリ除去システム100は、受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30に一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突するようにスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。
観測装置40は、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したかを判定する。観測装置40は、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したと判定した場合に、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻の経過の判定結果を、スペースデブリ除去システム100へ送信する。
スペースデブリ除去システム100は、観測装置40が送信した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻の経過の判定結果を受信する。スペースデブリ除去システム100は、受信した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻の経過の判定結果に基づいて、スペースデブリ除去システム100に接近すると判定された一又は複数のスペースデブリDBのうち、残りのスペースデブリDBのいずれかの軌道に基づいて、除去衛星30にいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。例えば、スペースデブリ除去システム100は、減速することによって、除去衛星30にいずれかのスペースデブリDBが衝突するようにしてもよい。
除去衛星30にスペースデブリDBが衝突することによって、スペースデブリDBは減速する。スペースデブリDBが減速することによって、スペースデブリDBの高度が低下する。スペースデブリDBの高度が低下することによって、スペースデブリDBは大気圏に再突入する。スペースデブリDBが大気圏に再突入することによって、燃え尽きるため、除去される。
【0021】
図3は、実施形態に係るスペースデブリ除去システムの一例を示すブロック図である。図3に示すように、主衛星10は、通信部11と、制御部13とを備える。
通信部11は、宇宙局などの無線局によって実現される。通信部11は、地球局などの無線局が送信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果を受信する。また、通信部11は、無線局が送信した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻の経過の判定結果を受信する。
制御部13は、通信部11が受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果を取得する。制御部13は、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30に一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突するようにスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。ただし、ここでの軌道の制御は、わずかな微調整程度の制御であると想定される。制御部13の一例は、スラスタを含んで構成される。
観測装置40において、判定部45は、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したか否かを判定する。例えば、判定部45は、主衛星10において、制御部13がスペースデブリ除去システム100の軌道を制御することによって、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したか否かを判定する。
観測装置40は、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したか否かの判定結果を地球局などの無線局からスペースデブリ除去システム100へ送信する。
スペースデブリ除去システム100において、通信部11は、観測装置40が送信した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したか否かの判定結果を受信する。
制御部13は、通信部11が受信した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を取得する。制御部13は、取得した判定結果と、残りのスペースデブリDBのいずれかのスペースデブリDBの軌道とに基づいて、除去衛星30にいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。
【0022】
図4は、軌道寿命の一例を示す図である(例えば、非特許文献5参照)。図4には、遠地点高度と近地点高度別の軌道寿命が示される。一般的な面積重量比(0.01m/kg)の物体の場合には、軌道寿命は、遠地点高度と近地点高度とによって決まる。図4によれば、近地点高度である200kmである場合に寿命は約0.1年であることが分かる。
図5は、デブリの高度の分布を示す。図5において、横軸は平均高度を示し、縦軸はデブリの割合を示す。ここで、平均高度は、遠地点高度と近地点高度との平均値で表される。図5によれば、高度が850kmの近傍に多くのスペースデブリDBが存在していることが分かる。
一例として、除去する対象のスペースデブリDBの高度が850kmの場合について説明を続ける。スペースデブリ除去システム100の重心の高度を850kmから1100kmと仮定する。また、スペースデブリ除去システム100の重心からのテザー20の長さを0から250kmとする。以上の条件で解析を行った。
図6は、衝突速度の解析結果の一例を示す図である。図6において、横軸はスペースデブリ除去システム100の重心の高度であり、縦軸は衝突速度である。
図6によれば、衝突速度は0から370m/sまでの値をとることが分かる。仮に目標とする近地点高度を200kmとすると、所要のΔVは約0.177km/sとなるので、重心の高度が967.1km以上であれば、衝突によりスペースデブリの近地点高度を200km以下にすることができる。なお、ここでは、近地点高度を200kmにするための所要のΔVが約0.177km/sとなる計算については、既知の計算で求めることができるためその説明を省略する。また、ここでは、一例として、反発係数が0の場合の最悪ケースの場合について示した。実際には反発係数は0~1の間の値になるため、より大きなΔVが得られる。また、ここでは、一例として、高度850kmのスペースデブリDBについて示したが、高度850km以外のスペースデブリDBについても、図6に示すような衝突速度の解析結果を用意でき、衝突によりスペースデブリの近地点高度を200km以下にできる重心の高度を導出できる。
【0023】
テザー20は、主衛星10と除去衛星30とを接続するためのものである。テザー20によって、主衛星10に除去衛星30が吊るされる。テザー20の一例は、スペースデブリ除去システム100の重心の高度が1000km以下であり、且つ主衛星10と除去衛星30との質量比を1:1と仮定した場合に、所要長は300km以下となる。
図7は、本実施形態に係るスペースデブリ除去システムのテザーの一例を示す図である。図7は、テザー20の一例として、Hoytetherの構造を示す。テザー20には、スペースデブリDBを除去する際に、観測できるスペースデブリDBに加えて、観測できない微小なスペースデブリDBが衝突する可能性がある。Hoytether(例えば、特許文献1参照)は、縒り糸が切れたときに周りの縒り糸にそれがまとわり付いて強度を保とうとする性質を有する。Hoytetherなどの冗長構造を有するものを使用することによって、スペースデブリDBが衝突した場合でも切れにくいテザー20を実現できる。図3に戻り説明を続ける。
除去衛星30には、スペースデブリDBが衝突する。仮に、スペースデブリDBが除去衛星30に衝突する速度を200m/s程度とした場合に、銃から発射された弾丸の速度の半分程度であると想定される。したがって、除去衛星30の材料としては、アラミド繊維などの防弾チョッキに使用されている素材(複合材)を使用できる。除去衛星30の形状は、図1に示されるように板状(直方体)であってもよく、円形状であってもよい。
【0024】
(スペースデブリ除去システムの動作)
図8は、本実施形態に係るスペースデブリ除去システムの動作の一例を示す図である。
(ステップS1-1)
観測装置40は、全天のスペースデブリDBを観測する。観測装置40は、スペースデブリDBの観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を観測する。
(ステップS2-1)
観測装置40は、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を観測した結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。
(ステップS3-1)
観測装置40において、判定部45は、導出した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果とスペースデブリ除去システム100の軌道とに基づいて、スペースデブリ除去システム100に接近する一又は複数のスペースデブリDBを判定する。
(ステップS4-1)
観測装置40において、判定部45は、スペースデブリ除去システム100に接近する一又は複数のスペースデブリDBを判定結果に基づいて、スペースデブリ除去システム100に接近する一又は複数のスペースデブリDBの軌道を導出する。
(ステップS5-1)
観測装置40において、算出部47は、判定部45がスペースデブリ除去システム100に接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御を算出する。
(ステップS6-1)
観測装置40は、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果を無線局からスペースデブリ除去システム100へ送信する。
【0025】
(ステップS7-1)
主衛星10において、通信部11は、無線局が送信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果を受信する。
(ステップS8-1)
主衛星10において、制御部13は、通信部11が受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果を取得する。制御部13は、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30に一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。
(ステップS9-1)
観測装置40において、判定部45は、主衛星10がスペースデブリ除去システム100の軌道を制御することによって、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したと判定する。
(ステップS10-1)
観測装置40は、除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を無線局からスペースデブリ除去システム100へ送信する。
(ステップS11-1)
主衛星10において、通信部11は、無線局が送信した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を受信する。
(ステップS12-1)
主衛星10において、制御部13は、通信部11が受信した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を取得する。制御部13は、取得した除去衛星30にスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果と、残りのスペースデブリDBのいずれかのスペースデブリDBの軌道とに基づいて、除去衛星30にいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。
【0026】
前述した実施形態では、観測装置40が地球上に設置される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、スペースデブリ除去システム100が観測装置40を備えてもよい。観測装置40が地球上に設置されるとともにスペースデブリ除去システム100に備えられてもよい。スペースデブリ除去システム100が観測装置40を備える場合に、主衛星10が観測装置40を備えるようにしてもよいし、除去衛星30が観測装置40を備えるようにしてもよい。また、主衛星10と除去衛星30とは異なる他の衛星が観測装置40を備えるようにしてもよいし、宇宙ステーションが観測装置40を備えるようにしてもよい。
前述した実施形態では、観測装置40が判定部45を備える場合につい説明したが、この例に限られない。例えば、判定部45が主衛星10に設置されてもよいし、除去衛星30が判定部45を備えてもよい。判定部45が、地球上と主衛星10と除去衛星30との少なくとも一つに備えらえてもよい。
判定部45が主衛星10に設置される場合、判定部45は、観測装置40が主衛星10へ送信した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果を取得する。また、判定部45は、スペースデブリ除去システム100の軌道を示す情報を取得する。判定部45は、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果とスペースデブリ除去システム100の軌道とに基づいて、スペースデブリ除去システム100に接近する一又は複数のスペースデブリDBを判定する。制御部13は、スペースデブリ除去システム100に接近する一又は複数のスペースデブリDBの判定結果を取得する。
前述した実施形態では、観測装置40が算出部47を備える場合につい説明したが、この例に限られない。例えば、算出部47が主衛星10に設置されてもよいし、除去衛星30が算出部47を備えてもよい。算出部47が、地球上と主衛星10と除去衛星30との少なくとも一つに備えらえてもよい。
算出部47が主衛星10に設置される場合、算出部47は、観測装置40が主衛星10へ送信したスペースデブリ除去システム100に接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果を取得する。算出部47は、取得したスペースデブリ除去システム100に接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100を衝突させるための所要の軌道制御を算出する。
前述した実施形態では、主衛星10が制御部13を備える場合につい説明したが、この例に限られない。例えば、除去衛星30が制御部13を備えてもよい。制御部13が、主衛星10と除去衛星30との少なくとも一つに備えらえてもよい。
前述した実施形態では、スペースデブリ除去システム100が、地球低軌道を周回する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、テザー20の長さを長くして、静止軌道よりも高い高度の軌道にスペースデブリ除去システム100を配置してもよい。この場合においても、スペースデブリ除去システム100は、静止軌道にあるデブリを短期間で再突入させることができる。
【0027】
本実施形態に係るスペースデブリ除去システムによれば、スペースデブリ除去システム100は、主衛星10と、主衛星10とテザー20を介して接続される除去衛星30とを備える。スペースデブリ除去システム100は、スペースデブリ除去システム100に接近するスペースデブリDBを判定する判定部45によってスペースデブリ除去システム100に接近すると判定されたスペースデブリDBの軌道に基づいて、スペースデブリ除去システム100の軌道を制御する制御部13を備える。
このように構成することによって、スペースデブリ除去システム100は、スペースデブリ除去システム100に接近すると判定されたスペースデブリDBの軌道に基づいて、スペースデブリ除去システム100の軌道を制御できるため、除去衛星30にスペースデブリDBを衝突させることができる。除去衛星30にスペースデブリDBが衝突した場合に、スペースデブリDBの高度を低下させることができるため、スペースデブリDBを再突入させることによって、除去できる。つまり、除去衛星30をスペースデブリDBに衝突させることによりスペースデブリDBを減速させ再突入させることができるので、より多くのデブリを除去できる。
また、0.4km/s程度以下の低速で、除去衛星30にスペースデブリDBを衝突させることができるため、除去衛星30の破損を防止できる又は破損があっても軽微にできる。除去衛星30の破損を軽微にできるため、スペースデブリDBの除去に除去衛星30を複数回使用できる。
また、除去衛星30において、スペースデブリDBが衝突する面の面積を広くすることによって、多くのスペースデブリDBを衝突させることができるため、多くのスペースデブリDBの除去が可能になる。また、捕獲できないデブリ、および、小さくて地上から観測できないため軌道を決定できないデブリも落とすことができる。
【0028】
また、除去衛星30にスペースデブリDBを衝突させることによって、スペースデブリDBに再突入させることができるため、スペースデブリDBの軌道を変更する手段を不要にできるだけでなく、多くのスペースデブリDBの除去が可能になる。
また、スペースデブリDBを捕獲することなく、スペースデブリDBの除去が可能になる。除去衛星30にスペースデブリDBを衝突させるだけでよいため、捕獲が困難な小さなデブリも除去できる。
また、同じ軌道傾斜角でも重心高度が違うため、スペースデブリDBと昇交点赤経の変化率を異ならせることができる。除去衛星30にスペースデブリDBが接近する機会が自然に訪れるため、スペースデブリ除去システム100の大きな軌道変更を不要にできる。これによって、スペースデブリ除去システム100の燃料消費量を少なくできる。
また、制御部13は、スペースデブリ除去システム100に地球周回軌道を周回させる。このように構成することによって、スペースデブリ除去システム100は、物体を減速させた場合に高度が下がる性質を利用できるため、除去衛星にスペースデブリが衝突した場合に、スペースデブリDBの高度を低下させることができる。このため、スペースデブリDBを再突入させることで、除去できる。また、スペースデブリ除去システム100をさらに有効に使うための一例では、スペースデブリ除去システム100は、遠地点では、除去衛星30の速度をスペースデブリDBよりも低速にできるため、除去衛星にスペースデブリが衝突した場合に、スペースデブリDBの高度を低下させることができるため、スペースデブリDBを再突入させることで、除去できる。
【0029】
また、スペースデブリDBを観測する観測装置40としての第1観測部を備え、判定部45は、第1観測部によるスペースデブリDBの観測結果に基づいてスペースデブリ除去システム100に接近するスペースデブリDBを判定する。
このように構成することによって、判定部45は、観測装置40から、スペースデブリDBの観測結果を取得できるため、取得したスペースデブリDBの観測結果に基づいてスペースデブリ除去システム100に接近するスペースデブリDBを判定できる。
また、第1観測部は、スペースデブリDBの観測結果に基づいて、スペースデブリの軌道を導出し、判定部45は、第1観測部によるスペースデブリDBの軌道の導出結果に基づいてスペースデブリ除去システム100に接近するスペースデブリDBを判定する。このように構成することによって、第1観測部は、スペースデブリDBの観測結果に基づいて、スペースデブリの軌道を導出できるため、判定部45は、第1観測部によるスペースデブリDBの軌道の導出結果に基づいてスペースデブリ除去システム100に接近するスペースデブリDBを判定できる。
【0030】
(実施形態の変形例)
(スペースデブリ除去システム)
実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システム100aは、図1を適用できる。ただし、主衛星10の代わりに主衛星10aを備え、除去衛星30の代わりに除去衛星30aを備える。
スペースデブリ除去システム100aの一例は、地球低軌道を周回する。観測装置40aは、スペースデブリDBを観測する。観測装置40aは、スペースデブリDBの観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を観測する。観測装置40aは、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。観測装置40aは、判定部45aと算出部47aとを備える。判定部45aは、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果とスペースデブリ除去システム100aの軌道とに基づいて、スペースデブリ除去システム100aに接近する一又は複数のスペースデブリDBを判定する。ここで、判定部45aは、地球を何周もしてからスペースデブリ除去システム100aに衝突する可能性が高いスペースデブリDBを軌道情報から判定できる。その場合、判定部45aが判定する時点では、スペースデブリDBはスペースデブリ除去システム100aから見て地球の反対側にいるような場合もあり得る。 判定部45aは、スペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々が除去衛星30aに衝突した場合に除去衛星30aが破損するか否かを判定する。例えば、判定部45aは、除去衛星30aに衝突しようとしているスペースデブリDBの質量と衝突速度とのいずれか一方又は両方を推定する。判定部45aは、除去衛星30aに衝突しようとしているスペースデブリDBの質量と衝突速度とのいずれか一方又は両方の推定結果に基づいて、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損するか否かを判定する。
具体的には、判定部45aは、スペースデブリDBの質量の推定結果が質量閾値以上と衝突速度が速度閾値以上とのいずれか一方又は両方である場合に除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損すると判定する。判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突することによって除去衛星30aが破損すると判定した場合に、除去衛星30aの位置を変更することによって、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突することを回避させる。
【0031】
判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突しても除去衛星30aが破損しないと判定した場合にはスペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。算出部47aは、判定部45aがスペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御を算出する。
判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突することによって除去衛星30aが破損すると判定した場合にはスペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々が除去衛星30aに衝突することを回避する軌道を導出する。算出部47aは、判定部45aがスペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々が除去衛星30aに衝突することを回避する軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御を算出する。観測装置40aは、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御の導出結果又は一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の導出結果を無線局からスペースデブリ除去システム100aへ送信する。
スペースデブリ除去システム100aは、観測装置40aが送信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御の導出結果又は一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の導出結果を受信する。スペースデブリ除去システム100aは、受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御の導出結果に基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突するようにスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する。スペースデブリ除去システム100aは、除去衛星30aに衝突するスペースデブリDBの数が十分でない場合に、除去衛星30aに接近しているスペースデブリDBを除去衛星30aの位置を微調整することによって衝突させる。
スペースデブリ除去システム100aは、受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の導出結果に基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突することを回避するようにスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する。
【0032】
スペースデブリ除去システム100aにおいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突するようにスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する場合に、例えば、主衛星10aは、テザー20によって除去衛星30aの位置を制御する。具体的には、主衛星10aは、テザー20の長さを調節することによって、除去衛星30aの高度を変更する。このように構成することによって、主衛星10aは、除去衛星30aの高度とスペースデブリDBの高度との差を解消する。
スペースデブリ除去システム100aにおいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突するようにスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する場合に、例えば、除去衛星30aは、スペースデブリ除去システム100aの進行方向に対して、横方向(軌道面外方向)に移動することによって、除去衛星30aのX軸とY軸とによって表される水平面における位置を変更する。このように構成することによって、除去衛星30aは、除去衛星30aの水平面における位置とスペースデブリDBの水平面における位置との差を解消する。
除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突することによって、スペースデブリDBは減速する。スペースデブリDBが減速することによって、スペースデブリDBの高度が低下する。スペースデブリDBの高度が低下することによって、スペースデブリDBは再突入することで、除去される。
観測装置40aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したかを判定する。判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したと判定した場合に、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻の経過の判定結果を、スペースデブリ除去システム100aへ送信する。
スペースデブリ除去システム100aは、観測装置40aが送信した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻の経過の判定結果を受信する。スペースデブリ除去システム100aは、受信した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻の経過の判定結果に基づいて、スペースデブリ除去システム100aに接近すると判定された一又は複数のスペースデブリDBのうち、残りのスペースデブリDBのいずれかの軌道に基づいて、除去衛星30aにいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する。例えば、スペースデブリ除去システム100aは、減速することによって、除去衛星30にいずれかのスペースデブリDBが衝突するようにしてもよい。
【0033】
図9は、実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの一例を示すブロック図である。
主衛星10aは、実施形態に係る主衛星10と比較して、調節部14を備え、制御部13の代わりに制御部13aを備える点で異なる。
観測装置40aは、実施形態に係る観測装置40と比較して、判定部45の代わりに判定部45aを備える点で異なる。
判定部45aは、判定部45を適用できる。ただし、判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損するか否かを判定する。例えば、判定部45aは、除去衛星30aに衝突しようとしている一又は複数のスペースデブリDBの各々の質量と衝突速度とのいずれか一方又は両方を推定する。
判定部45aは、除去衛星30aに衝突しようとしている一又は複数のスペースデブリDBの各々の質量と衝突速度とのいずれか一方又は両方の推定結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々について、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損するか否かを判定する。具体的には、判定部45aは、スペースデブリDBの質量の推定結果が質量閾値以上と衝突速度が速度閾値以上とのいずれか一方又は両方である場合に除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損すると判定する。
判定部45aは、スペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBのうち、除去衛星30aが破損しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。判定部45aは、スペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBのうち、除去衛星30aと除去衛星30aが破損すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々とが衝突することを回避する軌道を導出する。
算出部47aは、判定部45aがスペースデブリ除去システム100に接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御を算出する。算出部47aは、判定部45aがスペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々が除去衛星30aに衝突することを回避する軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御を算出する。
観測装置40aは、除去衛星30aが破損しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果又は除去衛星30aと除去衛星30aが破損すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々とが衝突することを回避する軌道の導出結果を無線局からスペースデブリ除去システム100aへ送信する。
【0034】
通信部11は、観測装置40aが送信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御の算出結果又は一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の算出結果を受信する。
調節部14は、主衛星10aと除去衛星30aとを接続するテザー20の長さを調節する。例えば、調節部14は、通信部11が受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果を取得する。調節部14は、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御した後に、テザー20の長さを調節することによって、除去衛星30aにZ軸のプラス方向とマイナス方向とのうち、スペースデブリDBを衝突させる方向に除去衛星30aの高度を変更する。
調節部14は、通信部11が受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の算出結果を取得する。調節部14は、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、テザー20の長さを調節することによって、除去衛星30aにZ軸のプラス方向とマイナス方向とのうち、スペースデブリDBが衝突することを回避させる方向に除去衛星30aの高度を変更する。
【0035】
図10は、実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例1を示す図である。調節部14は、テザー20を主衛星10aに取り付けている機構(図示なし)にテザー20を巻き取らせることによって、除去衛星30aを主衛星10aに近づける方向(Z軸のマイナス方向)に移動させる。調節部14は、テザー20を主衛星10aに取り付けている機構にテザー20を送り出させることによって、除去衛星30aを主衛星10aから遠ざける方向(Z軸のプラス方向)に移動させる。
図10に示される例は、調節部14が、テザー20を主衛星10aに取り付けている機構にテザー20を送り出させることによって破線で示される除去衛星30aを主衛星10aから遠ざける方向(Z軸のプラス方向)に移動させることによって破線で示される除去衛星30aが実線で示される除去衛星30aへ移動する場合を示している。図9に戻り説明を続ける。
【0036】
制御部13aは、制御部13を適用できる。ただし、制御部13aは、通信部11が受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果又は一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突することを回避するための所要の軌道制御の算出結果を取得する。制御部13aは、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBの各々が衝突するようにスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。制御部13aは、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突することを回避するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBの各々が衝突することを回避するようにスペースデブリ除去システム100の軌道を制御する。
【0037】
除去衛星30aは、観測部31と、制御部33とを備える。
観測部31は、除去衛星30aの周囲を観測する。観測部31は、除去衛星30aの周囲の観測結果を、主衛星10を経由して観測装置40へ送信する。
観測装置40aにおいて、判定部45aは、除去衛星30aが送信した除去衛星30aの観測結果を取得する。判定部45aは、取得した除去衛星30aの観測結果に基づいて、除去衛星30aの周囲の一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を観測する。判定部45aは、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。
判定部45aは、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果とスペースデブリ除去システム100aの軌道とに基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々について、除去衛星30aに衝突するか否かを判定する。判定部45aは、除去衛星30aに衝突しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々について、除去衛星30aに衝突させるための移動方向と移動量とを導出し、導出した移動量が移動量閾値以下であるか否かを判定する。
判定部45aは、除去衛星30aに衝突しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々のうち、除去衛星30aに衝突させるための移動量が移動量閾値以下である一又は複数のスペースデブリDBの各々について、除去衛星30aの移動方向と移動量とを導出する。判定部45aは、除去衛星30aの移動方向を示す情報と移動量を示す情報とを含む、制御情報を作成する。判定部45aは、作成した制御情報を、主衛星10aを経由して除去衛星30aへ送信する。
【0038】
除去衛星30aにおいて、制御部33は、判定部45aが送信した制御情報を取得する。制御部33は、取得した制御情報に含まれる除去衛星30aの移動方向を示す情報と移動量を示す情報とを取得する。制御部33は、取得した除去衛星30aの移動方向を示す情報と移動量を示す情報とに基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBの各々が衝突するように除去衛星30aを移動させる。
図11は、実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例2を示す図である。制御部33は、除去衛星30aを軌道面外に移動させることによって、除去衛星30aをスペースデブリDBに近づける方向に移動させる。図11の左図は、スペースデブリ除去システム100aをX軸のプラス方向から見た図である。図11の右図は、スペースデブリ除去システム100aを斜め方向から見た図である。
図11の左図と11の右図とによれば、制御部33が除去衛星30aをY軸のプラス方向に移動させることによって、破線で示される除去衛星30aが実線で示される除去衛星30aへY軸のプラス方向に移動する場合を示している。
【0039】
(スペースデブリ除去システムの動作)
図12は、実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例1を示す図である。
(ステップS1-2)
観測装置40aは、全天のスペースデブリDBを観測する。観測装置40aは、スペースデブリDBの観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を観測する。
(ステップS2-2)
観測装置40aは、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を観測した結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。
(ステップS3-2)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、導出した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果とスペースデブリ除去システム100aの軌道とに基づいて、スペースデブリ除去システム100aに接近する一又は複数のスペースデブリDBを判定する。
(ステップS4-2)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損するか否かを判定する。
(ステップS5-2)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損しないと判定した場合には除去衛星30aが破損しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。また、判定部45aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突した場合に除去衛星30aが破損すると判定した場合には除去衛星30aと除去衛星30aが破損すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々とが衝突することを回避する軌道を導出する。
(ステップS6-2)
観測装置40aにおいて、算出部47aは、判定部45aがスペースデブリ除去システム100に接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御を算出する。算出部47aは、判定部45aがスペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々が除去衛星30aに衝突することを回避する軌道の導出結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御を算出する。
(ステップS7-2)
観測装置40aは、一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御の算出結果又は一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の算出結果を、主衛星10aへ送信する。
(ステップS8-2)
主衛星10aにおいて、通信部11は、無線局が送信した一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させるための所要の軌道制御の算出結果又は一又は複数のスペースデブリDBの各々にスペースデブリ除去システム100aを衝突させることを回避させるための所要の軌道制御の算出結果を受信する。
【0040】
(ステップS9-2)
主衛星10aにおいて、制御部13aは、通信部11が受信した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果又は一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突することを回避するための所要の軌道制御の算出結果を取得する。制御部13aは、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する。制御部13aは、取得した一又は複数のスペースデブリDBの各々に衝突することを回避するための所要の軌道制御の算出結果に基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBのうちのいずれかのスペースデブリDBが衝突することを回避する軌道にスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する。
(ステップS10-2)
主衛星10aにおいて、調節部14は、通信部11が受信した除去衛星30aが破損しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果又は除去衛星30aと除去衛星30aが破損すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々とが衝突することを回避する軌道の導出結果を取得する。調節部14は、取得した除去衛星30aが破損しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて、テザー20の長さを調節することによって、除去衛星30aにZ軸のプラス方向とマイナス方向とのうち、スペースデブリDBを衝突させる方向に除去衛星30aの高度を変更する。調節部14は、取得した除去衛星30aと除去衛星30aが破損すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々とが衝突することを回避する軌道の導出結果に基づいて、テザー20の長さを調節することによって、除去衛星30aにZ軸のプラス方向とマイナス方向とのうち、スペースデブリDBが衝突することを開始させる方向に除去衛星30aの高度を変更する。
【0041】
(ステップS11-2)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、主衛星10aがスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御することによって、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したと判定する。
(ステップS12-2)
観測装置40aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を無線局からスペースデブリ除去システム100aへ送信する。
(ステップS13-2)
主衛星10aにおいて、通信部11は、無線局が送信した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を受信する。
(ステップS14-2)
主衛星10aにおいて、制御部13aは、通信部11が受信した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を取得する。制御部13aは、取得した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果と、残りのスペースデブリDBのいずれかのスペースデブリDBの軌道とに基づいて、除去衛星30aにいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する。
【0042】
図13は、実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システムの動作の例2を示す図である。図13を参照して、除去衛星30aが破損しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果に基づいて処理を行っている場合に、除去衛星30aの位置を制御することによって、一又は複数のスペースデブリDBの各々を除去衛星30aに衝突させる処理について説明する。
(ステップS1-3)
除去衛星30aにおいて、観測部31は、除去衛星30aの周囲を観測する。
(ステップS2-3)
除去衛星30aにおいて、観測部31は、除去衛星30aの周囲の観測結果を、主衛星10aを経由して観測装置40aへ送信する。
(ステップS3-3)
観測装置40aは、除去衛星30aが送信した除去衛星30aの周囲の観測結果を受信する。観測装置40aは、受信した除去衛星30aの周囲の観測結果に基づいて、一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道を導出する。
(ステップS4-3)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、導出した一又は複数のスペースデブリDBの各々の軌道の導出結果とスペースデブリ除去システム100aの軌道とに基づいて、スペースデブリ除去システム100aに接近する一又は複数のスペースデブリDBを判定する。
(ステップS5-3)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、スペースデブリ除去システム100aに接近すると判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々が除去衛星30aに衝突するか否かを判定する。
【0043】
(ステップS6-3)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、除去衛星30aに衝突しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々について、除去衛星30aに衝突させるために除去衛星30aの移動方向と移動量とを導出し、導出した移動量が移動量閾値以下であるか否かを判定する。判定部45aは、除去衛星30aに衝突しないと判定した一又は複数のスペースデブリDBの各々のうち、除去衛星30aに衝突させるために除去衛星30aの移動量が移動量閾値以下である一又は複数のスペースデブリDBの各々について、除去衛星30aの移動方向と移動量とを導出する。
(ステップS7-3)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、除去衛星30aの移動方向を示す情報と移動量を示す情報とを含む、制御情報を作成する。
(ステップS8-3)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、作成した制御情報を、主衛星10aを経由して除去衛星30aへ送信する。
(ステップS9-3)
除去衛星30aにおいて、制御部33は、判定部45aが送信した制御情報を取得する。制御部33は、取得した制御情報に含まれる除去衛星30aの移動方向を示す情報と移動量を示す情報とを取得する。制御部33は、取得した除去衛星30aの移動方向を示す情報と移動量を示す情報とに基づいて、除去衛星30aに一又は複数のスペースデブリDBの各々が衝突するように除去衛星30aを移動させる。
(ステップS10-3)
観測装置40aにおいて、判定部45aは、主衛星10aがスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御することによって、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したと判定する。
【0044】
(ステップS11-3)
観測装置40aは、除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を無線局からスペースデブリ除去システム100aへ送信する。
(ステップS12-3)
主衛星10aにおいて、通信部11は、無線局が送信した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を受信する。
(ステップS13-3)
主衛星10aにおいて、制御部13aは、通信部11が受信した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果を取得する。制御部13aは、取得した除去衛星30aにスペースデブリDBが衝突するはずの時刻が経過したことの判定結果と、残りのスペースデブリDBのいずれかのスペースデブリDBの軌道とに基づいて、除去衛星30aにいずれかのスペースデブリDBが衝突する軌道にスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御する。
【0045】
前述した実施形態の変形例では、主衛星10aが除去衛星30aをZ軸方向へ移動させ、除去衛星30aが進行方向に対して横方向(軌道面外方向)に移動する場合について説明したが、この例に限られない。
例えば、スペースデブリ除去システム100aは、除去衛星30aをZ軸周りに回転させてもよい。具体的には、スペースデブリ除去システム100aは、除去衛星30aをZ軸周りに回転させる機構と、その機構に除去衛星30aをZ軸周りに回転させる回転制御部とを備える。ここで、回転制御部は、主衛星10aが備えるようにしてもよいし、除去衛星30aが備えるようにしてもよい。
このように構成することによって、回転制御部が、除去衛星30aをZ軸周りに回転させることができるため、除去衛星30aの第1面とは反対の第2面にスペースデブリDBを衝突させることができる。このため、除去衛星30aの寿命を長くできる。
前述した実施形態の変形例では、主衛星10aが調節部14を備える場合について説明したが、この例に限られない。例えば、除去衛星30aが調節部14を備えるようにしてもよい。調節部14が、主衛星10aと除去衛星30aとの少なくとも一つに備えられてもよい。
また、判定部45aを備える一又は複数の衛星を用意し、スペースデブリ除去システム100aを制御するようにしてもよい。また、スペースデブリ除去システム100aを制御するための制御信号を他の衛星から送信し、スペースデブリ除去システム100aを制御するようにしてもよい。
【0046】
実施形態の変形例に係るスペースデブリ除去システム100aによれば、スペースデブリ除去システム100aにおいて、スペースデブリ除去システム100aに接近するスペースデブリDBの判定後に、主衛星10aにテザー20を取り付けている機構にテザー20の長さを調節させる調節部14をさらに備える。調節部14は、機構にテザー20の長さを調節させることによって、除去衛星30aの高度を変更させる。このように構成することによって、スペースデブリ除去システム100aは、調節部14が、主衛星10aにテザー20を取り付けている機構にテザー20の長さを調節させることによって、スペースデブリ除去システム100aの軌道を変えることなく、除去衛星30aの高度を変更できる。
また、除去衛星30aの周囲を観測する観測部31としての第2観測部を備える。判定部45aは、第2観測部による除去衛星30aの周囲の観測結果に基づいて除去衛星30aに接近するスペースデブリDBを判定する。このように構成することによって、判定部45aは、第2観測部から、除去衛星30aの周囲の観測結果を取得できるため、取得した除去衛星30aの周囲の観測結果に基づいて除去衛星30aに接近するスペースデブリDBを判定できる。
また、除去衛星30aにおいて、スペースデブリDBが衝突する面の面積を広くすることによって、多くのスペースデブリDBを衝突させることができるため、多くのスペースデブリDBの除去が可能になる。また、既存のデブリのうち、捕獲できないデブリ、および、小さくて地上から観測できないため軌道を決定できないデブリも落とすことができる。衝突するようにスペースデブリ除去システム100aの軌道を制御することに加えて、除去衛星30aを軌道面外へ移動させることができることにより、より多くのスペースデブリDBと衝突させることが可能になる。
【0047】
また、除去衛星30aを進行方向に対して横方向に移動させる制御部33としての除去衛星制御部を備える。除去衛星制御部は、除去衛星30aを進行方向に対して横方向に移動させることによって、除去衛星30aをスペースデブリに接近させる。このように構成することによって、スペースデブリ除去システム100aは、除去衛星30aをスペースデブリDBに接近させることができるため、除去衛星30aに衝突するスペースデブリDBの数を増加させることができる。このため、除去衛星30aをスペースデブリに意図的に接近させない場合よりも除去できるスペースデブリDBを増加させることができる。
また、判定部45aは、第2観測部による除去衛星30aの周囲の観測結果に基づいて、除去衛星30aとスペースデブリDBとが衝突するか否かを判定する。除去衛星制御部は、判定部45aが除去衛星30aとスペースデブリDBとが衝突しないと判定した場合に、除去衛星30aを進行方向に対して横方向に移動させることによって、除去衛星30aをスペースデブリDBに衝突させる。除去衛星制御部が、除去衛星30aを進行方向に対して横方向に移動させることによって、除去衛星30aをスペースデブリDBに衝突させることができるため、除去できるスペースデブリDBを増加させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合わせを行うことができる。これら実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
なお、前述の主衛星10、主衛星10a、観測装置40、観測装置40a、判定部45、判定部45a、算出部47、算出部47aは内部にコンピュータを有している。そして、前述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10、10a…主衛星、 11…通信部、 13、13a…制御部、 14…調節部、 20…テザー、 30、30a…除去衛星、 31…観測部、33…制御部、 40、40a…観測装置、 45、45a…判定部、 47、47a…算出部、 100、100a…スペースデブリ除去システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13