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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20240716BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G01R31/26 J
H03H3/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020174636
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065875
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000146009
【氏名又は名称】株式会社昭和真空
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100100860
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】塩野 忠久
(72)【発明者】
【氏名】森 広宣
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250938(JP,A)
【文献】特開2009-222693(JP,A)
【文献】特開2020-094954(JP,A)
【文献】国際公開第2007/125756(WO,A1)
【文献】特開2011-107003(JP,A)
【文献】特開2016-194468(JP,A)
【文献】特開2002-181887(JP,A)
【文献】特開平09-033567(JP,A)
【文献】特開2010-223643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 31/28
G01M 3/32
H03H 3/02
G01C 19/00
G01P 21/00
G01P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品が配置された測定室と、
前記測定室の内部の圧力を変更する圧力変更手段と、
前記複数の電子部品の電極に、同時に接触する複数のコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを介して前記電子部品に電圧を印加する電源部と、
電圧が印加された前記電子部品から発信される出力に基づき前記電子部品の電気特性を測定する測定部と、
前記複数の電子部品と前記複数のコンタクトプローブの電気的接続を、各前記電子部品毎に切り替えて前記出力を前記測定部に送信する切替部と、
前記圧力変更手段により、前記測定室内の圧力が加圧されたときに、前記測定室内の圧力を維持する第1の圧力維持手段と、
前記圧力変更手段により、前記測定室内の圧力が減圧されたときに、前記測定室内の圧力を維持する第2の圧力維持手段と、を備え、
前記圧力変更手段により前記測定室の内部の圧力を変更する前と変更した後において、前記複数のコンタクトプローブを前記複数の電子部品に接触させたまま、前記測定部により各前記電子部品の電気特性を測定し
前記測定室は、トレイに搭載された前記電子部品を挿入する開口を備え、前記開口は前記電子部品が挿入されることにより前記トレイにより閉塞され、
前記第1の圧力維持手段は、前記測定室の内部が前記圧力変更手段により加圧されたとき、前記トレイを前記測定室の外部から押圧して前記測定室の密閉状態を維持して内部の加圧状態を維持する
定装置。
【請求項2】
前記コンタクトプローブは、バネ部と、前記バネ部の一端から突出するピンとを備え、前記ピンが前記電子部品の電極に接触する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第2の圧力維持手段は、前記測定室の内部が前記圧力変更手段により減圧されたとき、前記測定室を内部から外部に向けて押圧して前記測定室の密閉状態を維持して内部の減圧状態を維持する、
請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第2の圧力維持手段は、前記測定室が開放された状態で、前記測定室が減圧室に配置され、前記減圧室の内部が減圧されることで、前記測定室の減圧状態を維持する、
請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記圧力変更手段は、前記測定室を減圧する減圧手段と、前記測定室を加圧する加圧手段を備える、
請求項1から4の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
複数の電子部品が配置された測定室と、
前記測定室の内部の圧力を変更する圧力変更手段と、
前記複数の電子部品の電極に、同時に接触する複数のコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを介して前記電子部品に電圧を印加する電源部と、
電圧が印加された前記電子部品から発信される出力に基づき前記電子部品の電気特性を測定する測定部と、
前記複数の電子部品と前記複数のコンタクトプローブの電気的接続を、各前記電子部品毎に切り替えて前記出力を前記測定部に送信する切替部と、
前記圧力変更手段により前記測定室の内部の圧力が変更されたとき、当該圧力を変更することにより生じる前記測定室を変形させる力を分散するための圧力分散機構と、を備え、
前記圧力変更手段により前記測定室の内部の圧力を変更する前と変更した後において、前記複数のコンタクトプローブを前記複数の電子部品に接触させたまま、前記測定部により各前記電子部品の電気特性を測定する、
定装置。
【請求項7】
前記測定室は、前記コンタクトプローブが取り付けられたコンタクトブロックを更に備え、前記切替部は前記コンタクトブロックの上に配置される、
請求項1から6の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
複数の電子部品が配置された測定室と、
前記測定室の内部の環境を変更する環境変更手段と、
前記複数の電子部品の電極に、同時に接触する複数のコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを介して前記電子部品に電圧を印加する電源部と、
電圧が印加された前記電子部品から発信される出力に基づき前記電子部品の電気特性を測定する測定部と、
前記複数の電子部品と前記複数のコンタクトプローブの電気的接続を、各前記電子部品毎に切り替えて前記出力を前記測定部に送信する切替部と、
前記電子部品を搭載するトレイと、
前記トレイを搬送する搬送手段と、
前記トレイを昇降させる昇降手段と、を備え、
前記環境変更手段により前記測定室の内部の環境を変更する前と変更した後において、前記複数のコンタクトプローブを前記複数の電子部品に接触させたまま、前記測定部により各前記電子部品の電気特性を測定し、
前記測定室は、前記トレイにより閉塞される開口を備え、
前記トレイは、前記搬送手段により前記測定室直下まで搬送された後、前記昇降手段により上昇されて前記開口を閉塞する
定装置。
【請求項9】
前記昇降手段は、前記トレイを載置するステージを備え、
前記測定室の開口は、前記ステージが上昇することにより前記トレイにより閉塞される、
請求項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記トレイは、ガス抜き用の貫通孔を有し、
前記測定室の開口は、前記ステージが上昇することにより、前記トレイと前記ステージにより閉塞される、
請求項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記電子部品は、内部に圧電素子が封入された、
請求項1から10の何れか1項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の電気特性を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の電気特性を測定する方法として、例えば、引用文献1に開示されたように、圧電素子である水晶振動子のインピーダンスの変化を大気圧時と真空時に測定して、水晶振動子のパッケージにリークが発生しているか否かを検査する方法がある。具体的には、測定治具3の電極端子5a,5bを、水晶振動子のパッケージ6の外部電極11a、11bに接触させて、水晶振動子のインピーダンスを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-51802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された測定方法は、1つの水晶振動子のインピーダンスの測定を1つの気密検査装置で実行するので、多数の水晶振動子の測定が必要な場合には効率が悪いという問題点がある。また、複数の圧電素子のインピーダンスを測定する場合、例えば、複数の圧電素子をトレイ上にマトリクス状に配列し、配列された圧電素子のインピーダンスをプローブピンにより一列ずつ測定するという方法が適用されている。すなわち、任意の列の圧電素子のインピーダンスを測定したのち、次の列の圧電素子のインピーダンスの測定をする。次の列の圧電素子のインピーダンスを測定する場合には、プローブピンを任意の列から離間させ、次の列の圧電素子の位置まで移動させて、プローブピンを次の列の圧電素子に接触させてインピーダンスを測定する。しかし、次の列の圧電素子にプローブピンが接触するとき、圧電素子の電極とプローブピンの接触位置がずれる等により、接触抵抗が変化し正確な測定ができないことがある。
【0005】
また、測定方法によっては、測定室の圧力や温度等の測定室内部の環境を変更する必要がある。真空装置の場合、大気圧と真空との圧力差を利用して密閉を保持する方法がよくとられる。真空槽と扉やゲート弁の間にはパッキンを設けて、密閉を保持するが、これに押し付ける力として、真空と大気圧との圧力差を利用する。また、外部の駆動源から真空槽内部に動力を伝達するために、直線導入端子、回転導入端子が使用される。リップシールやウイルソンシールのような回転導入端子では、回転軸とシール部の密閉を維持するために大気圧と真空との圧力差を利用して押し付ける構造となっている。このため、低圧側と高圧側とが指定されており、逆圧をかけることができない。よってこのような回転導入端子では、容器内を大気圧に対して減圧と加圧の両方の圧力状態にすることはできない。そこで測定室の圧力や温度等の測定室内部の環境を変更する場合には、環境が変更された別の測定室に圧電素子を移動させることがある。別の測定室で、再度、圧電素子とプローブピンとを位置決めする必要があり、作業が繁雑であるとともに、圧電素子を列ごとに測定する場合と同様に、接触抵抗が変化して正確な測定ができないことがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電子部品の電気特性を効率的に測定できるとともに、誤差の少ない測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る測定装置は、
複数の電子部品が配置された測定室と、
前記測定室の内部の圧力を変更する圧力変更手段と、
前記複数の電子部品の電極に、同時に接触する複数のコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを介して前記電子部品に電圧を印加する電源部と、
電圧が印加された前記電子部品から発信される出力に基づき前記電子部品の電気特性を測定する測定部と、
前記複数の電子部品と前記複数のコンタクトプローブの電気的接続を、各前記電子部品毎に切り替えて前記出力を前記測定部に送信する切替部と、
前記圧力変更手段により、前記測定室内の圧力が加圧されたときに、前記測定室内の圧力を維持する第1の圧力維持手段と、
前記圧力変更手段により、前記測定室内の圧力が減圧されたときに、前記測定室内の圧力を維持する第2の圧力維持手段と、を備え、
前記圧力変更手段により前記測定室の内部の圧力を変更する前と変更した後において、前記複数のコンタクトプローブを前記複数の電子部品に接触させたまま、前記測定部により各前記電子部品の電気特性を測定し、
前記測定室は、トレイに搭載された前記電子部品を挿入する開口を備え、前記開口は前記電子部品が挿入されることにより前記トレイにより閉塞され、
前記第1の圧力維持手段は、前記測定室の内部が前記圧力変更手段により加圧されたとき、前記トレイを前記測定室の外部から押圧して前記測定室の密閉状態を維持して内部の加圧状態を維持する。
【0008】
前記コンタクトプローブは、バネ部と、前記バネ部の一端から突出するピンとを備え、前記ピンが前記電子部品の電極に接触してもよい。
【0012】
前記第2の圧力維持手段は、前記測定室の内部が前記圧力変更手段により減圧されたとき、前記測定室を内部から外部に向けて押圧して前記測定室の密閉状態を維持して内部の減圧状態を維持してもよい。
【0013】
前記第2の圧力維持手段は、前記測定室が開放された状態で、前記測定室が減圧室に配置され、前記減圧室の内部が減圧されることで、前記測定室の減圧状態を維持してもよい。
【0014】
前記圧力変更手段は、前記測定室を減圧する減圧手段と、前記測定室を加圧する加圧手段を備えてもよい。
【0015】
本発明の第2の観点に係る測定装置は、
複数の電子部品が配置された測定室と、
前記測定室の内部の圧力を変更する圧力変更手段と、
前記複数の電子部品の電極に、同時に接触する複数のコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを介して前記電子部品に電圧を印加する電源部と、
電圧が印加された前記電子部品から発信される出力に基づき前記電子部品の電気特性を測定する測定部と、
前記複数の電子部品と前記複数のコンタクトプローブの電気的接続を、各前記電子部品毎に切り替えて前記出力を前記測定部に送信する切替部と、
前記圧力変更手段により前記測定室の内部の圧力が変更されたとき、当該圧力を変更することにより生じる前記測定室を変形させる力を分散するための圧力分散機構と、を備え、
前記圧力変更手段により前記測定室の内部の圧力を変更する前と変更した後において、前記複数のコンタクトプローブを前記複数の電子部品に接触させたまま、前記測定部により各前記電子部品の電気特性を測定する。
【0016】
前記測定室は、前記コンタクトプローブが取り付けられたコンタクトブロックを更に備え、前記切替部は前記コンタクトブロックの上に配置されてもよい。
【0017】
本発明の第3の観点に係る測定装置は、
複数の電子部品が配置された測定室と、
前記測定室の内部の環境を変更する環境変更手段と、
前記複数の電子部品の電極に、同時に接触する複数のコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを介して前記電子部品に電圧を印加する電源部と、
電圧が印加された前記電子部品から発信される出力に基づき前記電子部品の電気特性を測定する測定部と、
前記複数の電子部品と前記複数のコンタクトプローブの電気的接続を、各前記電子部品毎に切り替えて前記出力を前記測定部に送信する切替部と、
前記電子部品を搭載するトレイと、
前記トレイを搬送する搬送手段と、
前記トレイを昇降させる昇降手段と、を備え、
前記環境変更手段により前記測定室の内部の環境を変更する前と変更した後において、前記複数のコンタクトプローブを前記複数の電子部品に接触させたまま、前記測定部により各前記電子部品の電気特性を測定し、
前記測定室は、前記トレイにより閉塞される開口を備え、
前記トレイは、前記搬送手段により前記測定室直下まで搬送された後、前記昇降手段により上昇されて前記開口を閉塞する
【0018】
前記昇降手段は、前記トレイを載置するステージを備え、
前記測定室の開口は、前記ステージが上昇することにより前記トレイにより閉塞されてもよい。
【0019】
前記トレイは、ガス抜き用の貫通孔を有し、
前記測定室の開口は、前記ステージが上昇することにより、前記トレイと前記ステージにより閉塞されてもよい。
【0020】
前記電子部品は、内部に圧電素子が封入されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電子部品の電気特性を効率的に測定できるとともに、誤差の少ない測定装置を提供することができる。


【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る測定装置の概念図を示す図である。
図2】測定装置で使用されるトレイに水晶振動子を搭載した状態を示す図であり、(a)~(c)は、水晶振動子からの出力を切り替えて測定する手順を示す図である。
図3】測定部の回路図を示す図である。
図4】本実施の形態に係る測定装置の基本的な構造を示す図である。
図5】コンタクトプローブの構造を示す図である。
図6】内部圧力が増加したときの測定装置の変形の程度を示す図であり、(a)は、本実施の形態に係る測定装置の変形の程度を示し、(b)は、比較例の測定装置の変形の程度を示す図である。
図7】本実施の形態に係る測定装置の外観図を示す図である。
図8図7の測定装置の分解斜視図である。
図9】トレイを搬送する搬送路と密閉室を示す図であり、(a)は搬送路の上を搬送されるトレイが密閉室まで搬送される前の状態を示す図であり、(b)はトレイが密閉室の直下まで搬送された状態を示す図である。
図10】密閉構造を形成する手順を示す図であり、(a)はステージが密閉容器の直下に移動した状態を示し、(b)はステージが上昇する過程を示し、(c)はステージが上昇して密閉容器の底部を閉塞した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る測定装置及び測定方法の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であるが、これらの実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0026】
(測定装置の概要)
本発明の一実施の形態である測定装置について、図1を参照して説明する。図面において上下左右方向を定めるが、これらの用語は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、本発明の実施の形態が実際に使用されるときの方向を限定するものではない。また、これらの用語によって特許請求の範囲に記載された技術的範囲を限定的に解釈させるべきでない。他の図でも同様である。
【0027】
図1に示すように、測定装置1は、測定室10と、圧力変更手段20と、コンタクトプローブ40と、切替部50と、測定部60と、を備える。
【0028】
測定室10は、測定対象である水晶振動子30を内部に配置して、水晶振動子30の電気特性を測定する部屋である。測定室10の具体的な構造については、後に詳説する。
【0029】
圧力変更手段20は、測定室10の内部環境である圧力を変更する手段である。圧力変更手段20は、後述するように、測定室10の内部を減圧する減圧手段21と、測定室10の内部を加圧する加圧手段22とを備える(図4参照)。
【0030】
水晶振動子30は、水晶片を封入したパッケージ30aと、パッケージ30aに形成された金属膜である外部電極30b,30cを備える。水晶振動子30は、測定室10内において、トレイ31にマトリクス状に並べて配置される。トレイ31は、例えば図2に示すように、複数の水晶振動子30を収容する複数の孔31aがマトリクス状に形成された樹脂性の収容容器である。形成された複数の孔31aのそれぞれに水晶振動子30が収容される。なお、トレイ31には、ガス抜き用の貫通孔を設けてもよい。
【0031】
コンタクトプローブ40は、図1、4及び図5に示すように一端に一対のプローブピン40a、40bを備え、複数のコンタクトプローブ40がコンタクトブロック41に取り付けられている。一対のプローブピン40a、40bは、それぞれ水晶振動子30の外部電極30b,30cに接触する。一対のプローブピン40a、40bを介して、後述する電源部61(図3参照)からの電圧が水晶振動子30に印加され、水晶振動子30からの出力は測定部60に送信される。コンタクトプローブ40は、トレイ31にマトリクス状に並べられた水晶振動子30と同数設けられる。すなわち、複数のコンタクトプローブ40は、図2に示すトレイ31に形成された複数の孔31aの数と同数設けられる。そして、複数のコンタクトプローブ40は、複数の孔31aに収容された複数の水晶振動子30のそれぞれに接触する位置に配置されて、コンタクトブロック41に取り付けられている。複数のコンタクトプローブ40の他端からは信号線43が延び、切替部50に接続されている。
【0032】
切替部50は、測定部60からの電圧を、複数のコンタクトプローブ40と複数の水晶振動子30との電気的接続を切り替えて、信号線43を介して各水晶振動子30に送信する。また、切替部50は、各水晶振動子30からの出力を、電気的接続を切り替えて、信号線43を介して測定部60へ送信する。切替部50として、例えば、同軸リレーやリードリレー等のスイッチを用いる。切替部50は、板状部材の上に複数のリレー部材を配置して構成される。切替部50により水晶振動子30毎に出力を切り替える方法は、例えば、図2(a)に示すように、水晶振動子30を収容するトレイ31の第1列の一端部から他端部に向けて、切替部50により水晶振動子30とコンタクトプローブ40の電気的接続を切り替える。図中で黒く表示された水晶振動子30が、電気特性であるインピーダンスが測定されている水晶振動子である。切替部50は、矢印に沿って水晶振動子30とコンタクトプローブ40の電気的接続を切り替えて、水晶振動子30毎の出力を測定部60に送る。図2(a)に示すように、第1列の水晶振動子30のインピーダンスの測定が終了したら、図2(b)に示すように、切替部50は、第2列の水晶振動子30からの出力を送信できるように電気的接続を切り替える。切替部50は、この切替の処理を、図2(c)に示すように、第n列目まで連続して行い、トレイ31に収容された全ての水晶振動子30からの出力を、測定部60に送信する。
【0033】
測定部60は、水晶振動子30の電気特性を測定する。本実施の形態ではインピーダンスを測定するが、周波数を測定してもよい。測定部60としてネットワークアナライザが用いられる。以下、測定部60の例としてネットワークアナライザを用いた場合の測定部60(以下、ネットワークアナライザも同一の符号60で示す。)の回路図を、図3を参照して説明する。ネットワークアナライザ60は、測定対象物に高周波信号を入力したときに、被測定物からの反射信号、通過信号を測定して、被測定物の高周波特性の測定をするものである。ネットワークアナライザ60は、電源部61と、パワースプリッタ62と、アッテネータ63と、ミキサ64と、フィルタ65と、DSP(Digital Signal Processing)66と、CPU67と、表示部68、π回路69と備える。
【0034】
電源部61は、コンタクトプローブ40、信号線43、及び切替部50を介して、水晶振動子30に所定の周波数の掃引信号を発信する電源装置である。
【0035】
パワースプリッタ62は、電源部61から発信された出力信号を、2つの出力信号に分岐して、レベル特性と位相特定の揃った信号を出力する。パワースプリッタ62により分岐された一方の信号は、水晶振動子30を組み込んだπ回路69に入力されて水晶振動子30を発振させる。水晶振動子30からの出力信号はネットワークアナライザ60の入力部Aに入力される。パワースプリッタ62により分岐された他方の出力信号は、基準信号としてネットワークアナライザ60の入力部Rに入力される。
【0036】
アッテネータ63は、入力部R及び入力部Aのからの受信信号のレベルが高いときに、所望の減衰量で信号を減衰させる。ミキサ64は、電源部61の周波数と同期したローカル信号で入力周波数を混合してIF周波数の信号を出力する。入力部A、入力部Rから入力された信号は、ミキサ64によりミキシングダウンされてフィルタ65を介してDSP66に入力される。DSP66は、入力された信号に基づき、所望の分解能帯域幅による振幅や位相のデータを演算により求める。
【0037】
CPU67は、各ブロックの制御やデータの記憶を行う。表示部68は、得られたデータから周波数特性である振幅や位相等の特性をディスプレイに表示する。
【0038】
(測定装置)
測定装置1について、図4,5,7,8を参照しながら、さらに詳細に説明する。図4に示す測定装置1は、測定装置1の概念図であり、実際の装置の寸法とは相違する。図4図8に示すように、測定装置1は、基台11と、ステージ12と、可動ブロック13と、切替部50と、測定部60と、圧力変更手段20と、制御部70と、圧力分散機構80と、を備える。可動ブロック13は、コンタクトプローブ40と、コンタクトブロック41と、可動プレート42とを備える。図8では、コンタクトプローブ40、コンタクトブロック41は、省略されている。
【0039】
基台11は、ステンレス鋼材等で形成され、上面に、可動プレート42、コンタクトブロック41、切替部50、及び圧力分散機構80がこの順に載置される。基台11には、図7、8に示すように、下部に複数の支柱11aが取り付けられ、支柱11aの下端を床等に接触させて、測定装置1が設置される。また、図8に示すように、トレイ31内で水晶振動子30が移動しないように、トレイ31の上面には、水晶振動子30を押さえるための板状のワーク押さえ32が、配置されてもよい。
【0040】
基台11には、図8に示すように、ステージ12が昇降することで搬入搬出されるトレイ31を受け入れるための開口11bが形成されている。また、基台11の上面には、可動ブロック13を受け入れるための凹部11cが形成されている。凹部11cの外形は、可動ブロック13より一回り大きい形状で形成され、測定装置1が組み立てられたときに、可動ブロック13の横方向の移動を規制して可動ブロック13の位置決めをする。
【0041】
ステージ12は、トレイ31を上面に搭載する搭載面を有し、アルミ合金等により形成される。ステージ12は、図示しない昇降装置により昇降する。ステージ12は、下降することにより、開口11bを介して水晶振動子30を測定装置1から搬出し、上昇することにより、開口11bを介して水晶振動子30を測定装置1に搬入する。
【0042】
可動プレート42は、ステンレス鋼材等で形成され、コンタクトブロック41を挿入するための開口13aが形成されている。可動ブロック13は、基台11の凹部11cに配置され、圧力分散機構80と協働して可動し、圧力を分散させる機能を備える。
【0043】
コンタクトブロック41は、図4に示すように、複数のコンタクトプローブ40を取り付ける部材であり、可動プレート42に固定される。トレイ31がステージ12の昇降装置により昇降されることにより、水晶振動子30とコンタクトプローブ40が接触する。本実施の形態では、ステージ12が図面において上昇することで水晶振動子30がコンタクトプローブ40に接触し、下降することでコンタクトプローブ40から水晶振動子30が離れる。
【0044】
コンタクトプローブ40とコンタクトブロック41の構造を図5に示す。図5は、コンタクトプローブ40を挿入した状態のコンタクトブロック41の一部を、上下方向に切断した断面図である。
【0045】
コンタクトプローブ40は、図5に示すように、一対のバネ部40cと、各バネ部40cの一端部から延びるプローブピン40a,40bと、を備える。バネ部40cはコイルばねであり、炭素鋼又はステンレス鋼からなる線材を、螺旋状に等間隔に巻いて製造される。バネ部40cは、バネ部40cの中心線に沿って伸縮する。プローブピン40a,40bの先端は、水晶振動子30の外部電極30b,30cと接触する。ステージ12が上昇して、プローブピン40a,40bがバネ部40cの弾性力で伸縮してプローブピン40a,40bは水晶振動子30の外部電極30b,30cに加圧しながら接触される。また、ステージ12が下降すると、プローブピン40a,40bは、外部電極30b,30cから離接される。
【0046】
コンタクトブロック41には、コンタクトプローブ40を挿入する貫通孔41aが、上下方向に貫通して形成されている。貫通孔41aは、バネ部40cが配置される部分とプローブピン40a,40bが配置される部分とでは、それぞれ異なる内径で形成されている。貫通孔41aの内径は、バネ部40cとプローブピン40a,40bの動きを規制するように、それぞれの外形より少し大きい内径で形成されている。プローブピン40a,40bは、その一部が貫通孔41aの中に配置され、プローブピン40a,40bの先端は、コンタクトブロック41の底面から突出している。
【0047】
ステージ12が上昇して、プローブピン40a、40bが、水晶振動子30の外部電極30b、30cに接触した状態で、ステージ12、トレイ31、可動ブロック13、切替部50により空間が形成され、この空間が測定空間である測定室10となる。
【0048】
また、図4図8に示すように、ステージ12とトレイ31との間、トレイ31と可動ブロック13との間には、測定室10の気密性を保持するためのパッキン14、15が挟まれる。パッキン14、15は、合成樹脂部材又はゴム部材で形成される。コンタクトブロック41の上方には、切替部50が配置され、コンタクトブロック41と切替部50との間は、機密性を保持するために、パッキン16が挟まれる。
【0049】
測定部60は、外部電極30b,30cから発信された信号を受信し、水晶振動子30のインピーダンスを測定する。測定部60は、測定したインピーダンスの値を制御部70に送信する。
【0050】
制御部70は、測定部60から送信されたインピーダンスの値に基づき、水晶振動子30のリークが否かを判断する。制御部70は、CPU、記憶装置等を有し、CPUが記憶装置に記憶されたプログラムを実行し、記憶装置に記憶されたデータに基づき各種の処理を行い、測定装置1の全体の動作を制御する。なお、制御部70は、測定部60の中に組み込まれてもよい。
【0051】
圧力変更手段20は、図4に示すように、減圧手段21と加圧手段22とから構成される。減圧手段21は、具体的には真空ポンプであり、真空ポンプの流路に設置されるゲート弁(図示せず)を開閉することにより、測定室10内を減圧する。加圧手段22は、所定の気圧の気体を測定室10内に送る装置である。本実施の形態では、例えば、圧縮された窒素ガスを加圧手段22から測定室10に導入する。
【0052】
(圧力分散機構)
本実施の形態の測定装置1において、測定室10内の圧力を変更したとき、例えば、測定室10内を加圧手段22により加圧したとき、測定室10内部が高圧になり、その圧力により、測定装置1を変形させる力が生じて、測定空間の密閉性を保つことが難しくなることがある。具体的には、密閉空間の上部を閉塞する切替部50は、内部からの圧力を受けて変形することにより、図6(a)に示す状態から図6(b)に示すように、切替部50とパッキン16との間に隙間が生じることがある。
【0053】
このような現象を軽減するために、図7,8に示す圧力分散機構80を、切替部50の上部に設けた。圧力分散機構80は、保持部材81と、圧力分散部材82と、圧力分散板83とを備え、切替部50の上部に、圧力分散板83、圧力分散部材82、保持部材81の順に上に積み重ねられて組み立てられている。
【0054】
保持部材81は、圧力分散部材82と圧力分散板83の上部に配置され、圧力分散部材82と圧力分散板83の基台11上での動きを規制するための部材である。保持部材81は、図8に示すように、左右方向に延びる長尺な第1板部81aと、第1板部81aの長手方向の両端部から下方に折曲して延びる柱部81bとを備える。第1板部81aの下面と柱部81bの上部はボルト等の締結部材により固定されている。柱部81bの下端部には、下方に突出する複数の第1突起部81cが形成されている。複数の第1突起部81cは、基台11の上面に接触する。
【0055】
圧力分散部材82は、左右方向に延びる第2板部82aと、第2板部82aの下方に取り付けられ、第2板部82aの延びる方向に直交して延びる複数の板状の支持部82bと、各支持部82bの下方に支持部82bと同一方向に延びる一対の接触部82cとを備える。圧力分散部材82の各要素は、ステンレス鋼材等により形成されている。
【0056】
各接触部82cの両端部の下部には、下方に突出する複数の第2突起部82dが形成されている。第2突起部82dは、圧力分散板83に接触して、切替部50及び可動ブロック13に加わる圧力を分散させる。
【0057】
圧力分散板83は、圧力分散部材82と切替部50との間に配置され、切替部50の複数のリレー部材に対応する位置に、複数の開口83aが形成されている。切替部50は、複数の開口83aを介して測定装置1の外側に露出される。切替部50は、ヒートシンク等の冷却部材を備え、切替部50から発生する熱を外部に放出する構成としてもよい。圧力分散板83の上面には、圧力分散部材82が圧力分散板83の上に載置されたときに、圧力分散部材82の複数の第2突起部82dと接触する複数の第3突起部83bが設けられている。
【0058】
このような圧力分散機構80を用いることにより、測定室10内の圧力が変化した場合に、複数の第2突起部82dと複数の第3突起部83bが接触することにより、圧力が分散される。具体的には、16点の第3突起部83bから同数の第2突起部82dに伝達された圧力は、それぞれの中点の8点に連結された圧力分散部材82に伝達される。この繰り返しにより保持部材81の1点に集約されることで均等に圧力が分散される。また、基台11の上部に配置される、可動プレート42、切替部50、及びコンタクトブロック41は、基台11から浮いた状態となり、ステージ12の上面に追随する動きをとることができる。このような圧力分散機構80を用いた場合、測定室10内が加圧されても、パッキン14,15,16と他部材との間に隙間が生ずることを防止することができる。例えば、測定室10内部が加圧された場合、図6(a)に示すように、パッキンと他部材との間に隙間が生じることはない。したがって、測定室10の密閉状態を保つことができる。また、パッキン14、15,16が他部材に貼り付いて、密封状態が解除しづらくなることを防止することができる。
【0059】
また、測定室10内の密閉性を保つために設けたトレイ31とステージ12との間のパッキン14、可動ブロック13とトレイ31との間のパッキン15、又は切替部50と可動ブロック13との間のパッキン16が貼りついて、密閉状態を解除しづらい、又はパッキンが破損することが起きることがある。このような状態を解除するために、機械的にパッキンを剥がず手段を設けてもよい。
【0060】
(圧力維持手段)
圧力変更手段20により、測定室10内の圧力が変更されると、測定室10の内部圧力と測定室10の外部圧力との差により、測定室10の良好な密閉状態を維持することが困難になることがある。密閉状態を維持できない場合、圧力を維持できないため、本実施の形態では、測定室10の密閉状態を維持して圧力を維持するための第1の圧力維持手段と第2の圧力維持手段を設けてもよい。
【0061】
第1の圧力維持手段は、測定室10の内部が加圧されたときに、測定室10の加圧状態を維持し、第2の圧力維持手段は、測定室10の内部が減圧されたときに、測定室10の減圧状態を維持する。第2の圧力維持手段は、測定室10が大気圧下に配置されるのか、減圧下に配置されるのかに応じて、異なる手段が適用される。
【0062】
測定室10の内部が加圧手段22により加圧された場合、測定室10の外部から可動ブロック13を上下方向に押圧する手段が第1の圧力維持手段である。本実施の形態では、図示しない昇降装置によりステージ12を介してトレイ31を下方から押圧することにより、基台11に固定された保持部材81を介して、圧力分散板83が切替部50を上方から押圧する。図4及び図7に示すように、圧力分散機構80を介して切替部50が、上方から押圧力G1で、ステージ12を介してトレイ31が、下方から押圧力G1で押圧されることにより、測定室10の密閉状態は維持される。具体的には、切替部50と可動ブロック13の間、可動ブロック13とトレイ31との間、トレイ31とステージ12との間が、確実に密閉され、加圧状態が維持される。測定室10が基台11から切り離され、基台11に固定された圧力分散機構80により測定室10を押圧する構成にすることにより、ステージ12の昇降装置ひとつで、測定室10を上下方向から押圧することができる。第1の圧力維持手段は、大気圧下においても減圧下においても使用することができる。
【0063】
測定室10が大気圧下に配置され、測定室10の内部が減圧手段21により減圧された場合、測定室10の内部から切替部50及びトレイ31を上下方向に押圧する手段が第2の圧力維持手段である。図4に示すように、コンタクトプローブ40のバネ部40cの付勢力により、減圧により測定室10が外部から押圧される力に抗して切替部50及びトレイ31を押圧力G2で押圧することで測定室10が密閉され、減圧状態が維持される。第2の圧力維持手段は、切替部50又はトレイ31の変形を抑制するものであればよく、測定室10内部に上下方向に伸延する部材を設けて、切替部50とトレイ31とを測定室10の内側から押し付ける構成であってもよい。又はコンタクトブロックの一部を上下方向に伸延させて、切替部50又はトレイ31が内側に変形しないように規制する構成であってもよい。
【0064】
このように、測定室10の内部が加圧されたときには、大気圧下又は減圧下にかかわらず、第1の圧力維持手段により測定室10の膨張する力に抗して測定室10を確実に密閉することができる。大気圧下において測定室10の内部が減圧されたときには、第2の圧力維持手段により測定室10の収縮する力に抗して測定室10を確実に密閉することができる。減圧状態における測定室10内外の圧力差は、加圧状態における測定室10内外の圧力差よりも小さいため、第2の圧力維持手段は、第1の圧力維持手段よりも小さな力で密閉状態を維持することができる。
【0065】
測定室10を減圧下に配置して測定室10の内部を減圧する場合には、測定室10を開放した状態で、測定室10が配置された環境を例えば真空ポンプを作動させて減圧する。測定室10が配置された環境が減圧されることにより、測定室10の内部は減圧状態となる。測定室10の内部が減圧状態となると、測定室10は開放状態で、測定室10の圧力が維持される。測定室10が減圧下に配置されたときは、減圧手段21を用いて測定室10内部を減圧することが第2の圧力維持手段に相当する。
【0066】
このように、測定室10が減圧下に配置された場合において、測定室10内部が加圧手段22により加圧されたときには、第1の圧力維持手段を適用した。また、測定室10の内部を減圧するときには、真空ポンプを用いて測定室10が配置された環境を減圧する第2の圧力維持手段を適用した。
【0067】
(密封構造の形成方法)
更に、本実施の形態では、搬送ラインにおいて、回転導入等の駆動機構と切り離して、測定装置1の密封構造を形成することができる。水晶振動子30を収納するトレイ31は、測定室10内に搬入搬出する必要があり、測定室10内に搬送のための動力伝達機構を導入する場合、大気圧に対して減圧と加圧の双方の状態において、測定室10の密閉構造を形成することは難しい。本実施の形態では、搬送ラインとは別に密閉構造を形成できる方法を用いることにより、大気圧に対して減圧と加圧の双方の状態において、容易に密閉構造を形成することができる。以下に、密閉構造を形成する方法を具体的に説明する。
【0068】
図9に、搬送路90と密閉室100を上方から見た図を示す。ここで、密閉室100とは、可動ブロック13と、切替部50と、トレイ31と、ステージ12とを合わせた総称である。密閉室100は、基台11とは分離されている。図8に示したように、基台11の下部には開口11bが形成され、開口11bからトレイ31が挿入される。また、密閉室100の下部には、図示しない昇降装置により昇降するステージ12が配置される。ステージ12は、ステージ12まで搬送されたトレイ31を上昇させて、開口11bを通過し、密閉室100の可動ブロック13に接触する。トレイ31と可動ブロック13が密接することで、密閉室100が形成される。
【0069】
搬送路90は、図9に示すように複数の搬送ローラ90aを直線状に並べて形成された搬送ライン91が、2本間隔を隔てて並べられることで形成される。水晶振動子を収容したトレイ31は、この一対の搬送ライン91で形成された搬送路90上を、図示しない搬送装置により搬送される。
【0070】
トレイ31及びステージ12を密閉室100の蓋として機能させるためには、次のような手順で行われる。まず、搬送路90上のトレイ31を、図9の矢印方向に向けて、搬送装置により搬送させる。トレイ31は、図10(a)に示すように、密閉室100の一部である可動ブロック13の直下で停止される。そして、可動ブロック13の直下で停止されたトレイ31は、図10(b)に示すように、ステージ12が上昇することで、ステージ12上に移載される。そして、図10(c)に示すように、ステージ12が更に上昇することで、トレイ31及びステージ12が密閉室100の一部となり、密閉室100は密閉される。なお、ここで説明した密閉方法は、トレイ31にガス抜き用の貫通孔が形成されている場合を前提とし、トレイ31にガス抜き用の貫通孔が形成されていない場合には、トレイ31のみで密閉室100の蓋として機能させることができる。
【0071】
このように、トレイ31をステージ12上に載せて密閉室100を密閉する構成としたことにより、密閉構造を形成する手段と搬送手段を切り離すことができる。密閉構造を形成する手段と搬送手段を切り離すことにより、密閉室100の内部に駆動部が存在しないため、動力伝達のための導入端子を使用する必要がなく、大気圧に対して減圧と加圧の双方の状態において、密閉構造を容易に作り出すことができる。
【0072】
また、密閉構造を形成する手段と搬送手段を切り離すことができるので、測定装置1の内部に搬送手段を設ける必要はなくなり、測定装置1の小型化を達成することができる。
【0073】
(測定方法)
測定装置1を使用して、水晶振動子30の電気特性を測定する方法を、図4、8を参照して説明する。本実施の形態では、水晶振動子30の電気特性の一つであるインピーダンスを測定して、水晶振動子30のリークの有無を判別する検査を行う。水晶振動子30のインピーダンスは、圧力変化にともない変化するので、インピーダンスの変化を測定することにより、水晶振動子30のパッケージ内の圧力変化を検出し、リークの有無を判断する。
【0074】
図4、8に示すように、基台11上に、可動プレート42、コンタクトブロック41、切替部50、及び圧力分散機構80を設置する。コンタクトブロック41には、コンタクトプローブ40が取り付けられている。
【0075】
ステージ12に、測定対象となる複数の水晶振動子30を収容したトレイ31を載置して図示しない昇降装置により上昇させ、基台11の開口11bを介して、トレイ31を測定室10内に搬入する。トレイ31と、可動プレート42と、コンタクトブロック41と、切替部50とで検査空間を形成する。この状態で、測定室10は密封される。
【0076】
ステージ12を上昇させて測定室10を密封させると同時に、トレイ31に収容された水晶振動子30の外部電極30b、30cと、プローブピン40a、40bと、が接触する。このとき、トレイ31に収容された水晶振動子30の数と、コンタクトプローブ40の数は同一であり、全ての水晶振動子30とコンタクトプローブ40の一対のプローブピン40a、40bは接触する。
【0077】
測定室10内は、大気圧であり、この状態でネットワークアナライザ60により、水晶振動子30のインピーダンスを測定する。ネットワークアナライザ60の電源部61からプローブピン40a、40bを介して水晶振動子30に電圧を加え、水晶振動子30のインピーダンスを測定する。測定する際には、切替部50により、水晶振動子30毎に水晶振動子30とコンタクトプローブ40との電気的接続を切り替えて、ネットワークアナライザ60から出力信号を送信する。そして、水晶振動子30毎に、水晶振動子30からの出力をネットワークアナライザ60に送信する。切替部50による切替処理により、全ての水晶振動子30とコンタクトプローブ40を接触させたままで、全ての水晶振動子30のインピーダンスの測定を実行する。大気圧下で測定されたインピーダンスの値は、一端、制御部70の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0078】
次に、減圧手段21により、測定室10の内部を減圧し、減圧した状態で所定期間、水晶振動子30を検査空間に置き、その後ネットワークアナライザ60の電源部61からプローブピン40a、40bを介して水晶振動子30に電圧を加え、水晶振動子30の周波数特性であるインピーダンスを測定する。測定する際には、大気圧時と同様に、切替部50により、水晶振動子30とコンタクトプローブ40との電気的接続を切り替えながら、水晶振動子30毎にインピーダンスを測定する。減圧時のインピーダンスは、一端、制御部70の記憶部に記憶される。
【0079】
そして、制御部70は、大気圧時のインピーダンスの値と減圧時のインピーダンスの値を比較して、インピーダンスの変化があれば、水晶振動子30からリークが生じていると判断する。
【0080】
大気圧時のインピーダンスの測定と減圧時のインピーダンスの測定は、コンタクトプローブ40と水晶振動子30の外部電極30b、30cとを接触したままの状態で実行され、コンタクトプローブ40と水晶振動子30とは相互移動しない。したがって、コンタクトプローブ40のバネ部40cは、中心線に沿って移動せず、プローブピン40a,40bの位置も変化しない。したがって、接触抵抗が変更されることなく、適切なインピーダンスの値を測定することができる。
【0081】
(変形例)
上述の測定方法は、大気圧時から減圧時に圧力が変更された場合の、変更前(大気圧時)と変更後(減圧時)の水晶振動子30のインピーダンスを測定して、水晶振動子30のリーク検査を行った。本実施の形態は、このような変化に限定されず、減圧から加圧、又は加圧から減圧するという圧力変更にも適用することができる。
【0082】
例えば、水晶振動子30を減圧下に所定期間置いてから加圧する、又は水晶振動子30を加圧下に所定期間置いてから減圧し、減圧時の圧力変化と加圧時の圧力変化の相違から水晶振動子30の内部圧力を求め、内部圧力からリーク量を導くリーク検査方法にも適用できる。
【0083】
水晶振動子30を減圧下に所定期間置いてから加圧する場合、まず、減圧手段21により、測定室10の内部を減圧し、減圧した状態で所定期間、水晶振動子30を検査空間に置き、その後ネットワークアナライザ60の電源部61からプローブピン40a、40bを介して水晶振動子30に電圧を加え、水晶振動子30の周波数特性であるインピーダンスを測定する。測定する際には、切替部50により、水晶振動子30とコンタクトプローブ40との電気的接続を切り替えて、水晶振動子30毎にインピーダンスを測定する。
【0084】
全ての水晶振動子30とコンタクトプローブ40とを接触させたまま、全ての水晶振動子30のインピーダンスの測定が実行され、測定値は、制御部70に送信される。そして、加圧手段22により、測定室10内部を加圧し、加圧した状態で所定期間、水晶振動子30を測定室10に置き、その後水晶振動子30のインピーダンスを測定する。測定する際には、減圧したときと同様に、水晶振動子30とコンタクトプローブ40との電気的接続を切り替えて、水晶振動子毎にインピーダンスを測定する。
【0085】
制御部70は、減圧時のインピーダンスの変化と、加圧時のインピーダンスの変化から、水晶振動子30のパッケージから気体がリークしているか否か及びリーク量を算出する。
【0086】
変形例においては、圧力変更手段20は、減圧手段21と加圧手段22との2つの手段を備え、測定室10内の圧力変更にバリエーションを持たせながら、全ての測定対象である水晶振動子30の周波数特性の測定を、コンタクトプローブ40を水晶振動子30に接触したまま実行することができる。
【0087】
本実施の形態によれば、圧力の変化する測定室10内で、コンタクトプローブ40を全ての測定対象である水晶振動子30に接触させたまま、インピーダンスの測定をすることができる。したがって、コンタクトプローブ40と水晶振動子30の外部電極30b,30cとの接触抵抗の変化を防止でき、水晶振動子30のインピーダンスを安定して測定できる。
【0088】
本実施の形態によれば、全ての測定対象である水晶振動子30に同時に複数のコンタクトプローブ40を接触させて周波数特性を測定することができるので、作業タクトが減少し、効率的に測定をすることができる。
【0089】
本実施の形態によれば、水晶振動子30に接触させたまま、インピーダンスの測定をすることができるので、コンタクトプローブをトレイ31上で移動させる駆動装置を備える必要がなく、装置をコンパクトにすることができる。
【0090】
本実施の形態によれば、バネ部40cを備えるコンタクトプローブ40を使用しても、測定時に移動されないので、バネ部40cのストロークが変更して、CI値が変動することもない。
【0091】
本実施の形態によれば、測定室10内の圧力を維持する第1の圧力維持手段と第2の圧力維持手段を設けたので、測定室10内の圧力を変化させて電気特性を測定する場合にも、正確な測定をすることができる。
【0092】
本実施の形態によれば、測定室10に減圧手段21と加圧手段22を取り付けたので、測定室10の内部の環境変化を、ひとつの測定室10で行い検査をすることができるので、装置をコンパクトにでき、装置の設置スペースを縮小することができる。
【0093】
本実施の形態によれば、測定室10の圧力変化をさせる検査に利用することができ、特に、水晶振動子30のパッケージのリーク検査に有効である。
【0094】
本実施の形態によれば、圧力分散機構80を備えるので、測定室10内の圧力が加圧されて、加圧によりパッキンが外れ、測定室10の密閉状態が解除されることを防止することができる。
【0095】
本実施の形態によれば、圧力分散機構80を備えるので、測定室10内の圧力が減圧されて、パッキンが貼り付き、密封状態を解除することが困難になることを防止することができる。
【0096】
本実施の形態によれば、トレイ31を搬送する搬送手段と昇降させる昇降手段を備え、密閉構造を形成する手段と搬送手段を切り離すことができる。したがって、測定室10の内部に駆動部が存在せず、減圧と加圧の双方の状態において、密閉構造を容易に作り出すことができる。
【0097】
本実施の形態では、水晶振動子30の電気特定の測定は、切替部50により水晶振動子30を1つずつ切り替えて実行すると説明したが、複数ずつ切り替えてもよい。ネットワークアナライザのポート数を増やせば、例えば、図2において、トレイ31に搭載された水晶振動子30を一列毎にまとめて測定してもよい。このような測定をすれば、測定時間を短縮することができる。
【0098】
本実施の形態では、環境変更手段として、圧力変更手段20について説明したが、他の環境変更手段にも適用できる。例えば、温度が変更する環境変更にも適用できる。圧電素子は、環境温度が変化するとインピーダンスが変化するために、環境温度が変化する場合のインピーダンス変化を測定する場合にも使用することができる。温度変更手段としては、例えば、測定室に配置された水晶振動子を窒素ガス等で冷却する手段、ぺルチェ素子等で水晶振動子を加熱する手段を使用する。
【0099】
本実施の形態では、減圧手段21及び加圧手段22という二つの環境変更手段を備えると説明したが、これに加えて他の環境変更手段を備えてもよい。例えば、減圧手段21及び加圧手段22に加えて、温度変更手段を、測定装置1に取り付けてもよい。このように、測定方法に応じて、複数の環境変更手段を取り付けることができ、複数の環境変更手段により変更される測定室10内の環境で、測定対象の全ての水晶振動子30を、一括して検査することができる。
【0100】
本実施の形態では、減圧手段21及び加圧手段22という二つの環境変更手段を備えると説明したが、このうちの一つを外したり、他の環境変更手段に取り替えたりすることも可能であり、汎用性のある測定装置を提供することができる。
【0101】
本実施の形態では、保持部材81は、第1板部81aと柱部81bにより形成されると説明したが、圧力分散部材82と圧力分散板83を基台11に規制できる形状であればよく、例えば、一対の棒状部材を交差させて棒状部材の下部から柱部材を突出させて規制させてもよい。
【0102】
本実施の形態では、切替部50は、同軸リレーやリードリレーを用いると説明したが、他の切替手段を使用してもよい。例えば、コンタクトプローブ40にマルチプレクサを接続して、水晶振動子30とコンタクトプローブ40との電気的接続を切り替えてもよい。
【0103】
本実施の形態では、トレイ31に搭載された複数の水晶振動子30の全てに接触する数のコンタクトプローブ40を備えると説明した。測定される水晶振動子30とコンタクトプローブ40との数が一致していればよく、トレイ31の孔31aの全てに水晶振動子30が収容される必要はない。また、トレイ31に既に測定済みの水晶振動子30が収容されていれば、測定済みの水晶振動子30には、コンタクトプローブ40を接触させる必要はない。
【0104】
本実施の形態では、トレイ31とステージ12の間にパッキン14を使用したが、トレイ31の下面に貫通孔が存在しない場合は、パッキン14を省略してトレイ31のみで測定室10を密閉してもよい。
【0105】
本実施の形態では圧電素子を使用したが、ICパッケージや回路基板等、他の電子部品の抵抗値測定や導通検査装置としても使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、電子部品の電気特性を測定する測定装置及び測定方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 測定装置
10 測定室
11 基台
11a 支柱
11b 開口
11c 凹部
12 ステージ
13 可動ブロック
13a 開口
14,15,16 パッキン
20 圧力変更手段
21 減圧手段
22 加圧手段
30 水晶振動子
30a パッケージ
30b,30c 外部電極
31 トレイ
31a 孔
32 ワーク押さえ
40 コンタクトプローブ
40a,40b プローブピン
40c バネ部
41 コンタクトブロック
41a 貫通孔
42 可動プレート
43 信号線
50 切替部
60 測定部(ネットワークアナライザ)
61 電源部
62 パワースプリッタ
63 アッテネータ
64 ミキサ
65 フィルタ
66 DSP
67 CPU
68 表示部
69 π回路
70 制御部
80 圧力分散機構
81 保持部材
81a 第1板部
81b 柱部
81c 第1突起部
82 圧力分散部材
82a 第2板部
82b 支持部
82c 接触部
82d 第2突起部
83 圧力分散板
83a 開口
83b 第3突起部
90 搬送路
90a 搬送ローラ
91 搬送ライン
100 密閉室
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10