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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B23K20/00 340
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020175446
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066868
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000151070
【氏名又は名称】電元社トーア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久田 康一
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0078411(KR,A)
【文献】国際公開第2019/098305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数重ねられた被接合材を挟持可能に対向状態に配置され、通電によって昇温する第1昇温体及び第2昇温体と、
前記第1昇温体及び第2昇温体の各々に互いの対向方向に沿って形成された挿通孔に挿通されている第1ロッド及び第2ロッドと、
前記第1ロッドを含む前記第1昇温体を、前記第2ロッドを含む前記第2昇温体へ近接又は離間する方向に移動させる昇温体移動手段と、
前記第1昇温体及び第2昇温体に対して前記第1ロッド及び第2ロッドを出没させるロッド移動手段と
前記第1及び第2昇温体の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサで計測された前記第1及び第2昇温体の温度に応じて前記昇温体移動手段及び前記ロッド移動手段を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記温度センサでの計測温度が予め定められた温度となった際に、前記ロッド移動手段に前記第1ロッドの被接合材への押圧を行なわせ、当該押圧が所定時間経過後に、当該押圧と反対方向へ前記第2ロッドで被接合材を押圧させる制御を行う
ことを特徴とする接合装置。
【請求項2】
前記ロッド移動手段は、前記第1ロッド及び第2ロッドで前記被接合材を挟持した状態で、前記第1ロッド及び第2ロッドを同方向へ移動する
ことを特徴とする請求項に記載の接合装置。
【請求項3】
前記第1ロッド及び第2ロッドの対向端面は、当該第2ロッドが当該第1ロッドよりも大きい面積を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記第1及び第2ロッドは、前記第1及び第2昇温体の熱で軟化しない硬質な絶縁体により形成されている
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の接合装置。
【請求項5】
前記第1及び第2昇温体は、タングステンで形成されている
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の接合装置。
【請求項6】
前記第1及び第2昇温体は、同一材料又は各々異なる材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の接合装置。
【請求項7】
複数重ねられた被接合材を挟持可能に対向状態に配置され、通電によって昇温する第1昇温体及び第2昇温体と、
前記第1昇温体及び第2昇温体の各々に互いの対向方向に沿って形成された挿通孔に挿通されている第1ロッド及び第2ロッドとを備え、
離間した前記第1及び第2昇温体間に複数重ねた被接合材を配置し、
前記第1昇温体を移動させ、前記被接合材を前記第2昇温体とで挟持し、
前記第1及び第2昇温体に通電し、
前記第1及び第2昇温体の温度を温度センサで計測し、
計測温度が予め定められた温度となった際に、前記第1ロッドの被接合材への押圧を行なわせ、当該押圧が所定時間経過後に、当該押圧と反対方向へ前記第2ロッドで被接合材を押圧させるように、前記第1昇温体及び第2昇温体に対して前記第1ロッド及び第2ロッドを出没させる
ことを特徴とする接合方法。
【請求項8】
前記第1ロッドの前記被接合材の押圧と、前記第2ロッドの前記被接合材の押圧とを、交互に複数回繰り返す
ことを特徴とする請求項に記載の接合方法。
【請求項9】
複数重ねられた被接合材を挟持可能に対向状態に配置された第1挟持体及び第2挟持体と、
前記第1挟持体及び第2挟持体の各々に互いの対向方向に沿って形成された挿通孔に挿通され、通電によって昇温する第1ロッド及び第2ロッドと、
前記第1ロッドを含む前記第1挟持体を、前記第2ロッドを含む前記第2挟持体へ近接又は離間する方向に移動させる挟持体移動手段と、
前記第1挟持体及び第2挟持体に対して前記第1ロッド及び第2ロッドを出没させると共に、当該第1ロッド及び第2ロッドへの通電を行うロッド移動昇温手段と
前記第1及び第2ロッドの温度を計測する温度センサと、
前記温度センサで計測された前記第1及び第2ロッドの温度に応じて前記挟持体移動手段及び前記ロッド移動昇温手段を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記温度センサでの計測温度が予め定められた温度となった際に、前記ロッド移動昇温手段に前記第1ロッドの被接合材への押圧を行なわせ、当該押圧が所定時間経過後に、当該押圧と反対方向へ前記第2ロッドで被接合材を押圧させる制御を行う
ことを特徴とする接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板や樹脂板等の被接合材同士を固相接合により接合する接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固相接合は、被接合材同士を溶融することなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、この軟化状態で加圧して塑性変形を与えて接合する方法である。この固相接合について図10及び図11を参照して説明する。図10はアルミ(アルミニュウム)板同士を固相接合した様態を示す斜視図、図11図10のA-A断面図である。
【0003】
図10又は図11に示すように、2枚のアルミ板1a,1b同士を重ね、この重ねたアルミ板1a,1bの接合部位1cに図示せぬ丸棒状の昇温体を上下から挟んで当接する。当接した昇温体を昇温機構によって、アルミ板1a,1bが溶融しない温度(例えば、アルミの融点の半分程度以上の温度)で加熱されるように昇温する。更に、昇温体を所定の加圧力で上から加圧し、この後、冷却すると、2枚のアルミ板1a,1bが符号2で示すように固相接合される。この種の接合装置として特許文献1に記載の固相接合装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-122171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したようにアルミ板1a,1b同士を固相接合2した場合、この接合部分2が凹凸状に大きく変形し、アルミ板1a,1bの平面から食み出してしまう。このような変形が残った接合アルミ板1a,1bは、適用製品によっては製品スペックに適合せず適用できなくなっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、接合部分の変形を抑制して固相接合できる接合装置及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に係る接合装置は、複数重ねられた被接合材を挟持可能に対向状態に配置され、通電によって昇温する第1昇温体及び第2昇温体と、前記第1昇温体及び第2昇温体の各々に互いの対向方向に沿って形成された挿通孔に挿通されている第1ロッド及び第2ロッドと、前記第1ロッドを含む前記第1昇温体を、前記第2ロッドを含む前記第2昇温体へ近接又は離間する方向に移動させる昇温体移動手段と、前記第1昇温体及び第2昇温体に対して前記第1ロッド及び第2ロッドを出没させるロッド移動手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数重ねられた被接合材を、接合部分に変形が残存しないように固相接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る接合装置の構成を示す斜視図である。
図2】接合装置の上部側接合ユニット及び下部側接合ユニットの正面構成を示す縦断面図である。
図3】接合装置の電気配線を示すブロック図である。
図4】接合装置の上下昇温体間に2枚のアルミ板を配置した際の正面矢視の縦断面図である。
図5】接合装置の上下昇温体を2枚のアルミ板に当接した際の正面矢視の縦断面図である。
図6】接合装置の上昇温体を下方に加圧して2枚のアルミ板を固相接合した際の正面矢視の縦断面図である。
図7】接合装置の下昇温体を上方に加圧して2枚のアルミ板の固相接合部分を平面に戻した際の正面矢視の縦断面図である。
図8】接合装置の上下昇温体を接合アルミ板から上下に離間した際の正面矢視の縦断面図である。
図9】本実施形態の変形例に係る接合装置の構成及び配線を示す図である。
図10】従来技術においてアルミ板同士を固相接合した様態を示す斜視図である。
図11図10のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<実施形態の構成>
図1は本発明の実施形態に係る接合装置の構成を示す斜視図である。
【0011】
図1に示す接合装置10は、アルミ板等の金属板や樹脂板等の非金属板による被接合材同士を、通電加熱及び加圧により固相接合するものである。例えば、金属板同士、樹脂板同士、金属板と樹脂板等の接合が可能である。この他、熱カシメの用途にも適用できる。なお、金属板や樹脂板は、接合部分が通電加熱及び加圧により固相接合可能な所定の厚み(薄い厚み)であれば、板形状以外の形状であってもよい。
【0012】
接合装置10は、接合本体装置11と、接合本体装置11に1次側通電ケーブル(1次ケーブル)12a,12bで接続された通電制御装置13a,13bとを備えて構成されている。1次ケーブル12a,12bは、接合本体装置11に内蔵されたトランス15a,15bの1次側に接続されている。
【0013】
接合本体装置11は、床に立設された箱状部分の上部から正面側に水平に突き出た上部側接合ユニット(上ユニット)14aと、この上ユニット14aの下方側に平行に突き出た下部側接合ユニット(下ユニット)14bとを備える。
【0014】
上ユニット14aの昇温体ホルダ21a(図2参照)は、トランス15aの2次側に接続された2次側通電ケーブル(2次ケーブル)16aに接続されている。下ユニット14bの昇温体ホルダ21b(図2参照)は、トランス15bの2次側に接続された2次ケーブル16bに接続されている。
【0015】
上ユニット14a及び下ユニット14bの構成を、図2を参照して説明する。
上ユニット14aは、後述する昇温体移動機構と、第1のロッド移動機構と、第1の昇温機構とを備えて成る。なお、昇温体移動機構は、請求項記載の昇温体移動手段を構成する。
【0016】
昇温体移動機構は、上ユニット14aのモータ31、ネジ軸28、ナット部27及びガイドシャフト29を備えて構成されている。第1のロッド移動機構は、移動機構にナット部27を介して取り付けられるエアシリンダ26aと、このシリンダロッド6a2の下端に取り付けられる棒状のロッド24aとを備えて構成されている。第1の昇温機構は、昇温体ホルダ21a及び昇温体22aを備えて構成されている。
【0017】
第1のロッド移動機構及び第1の昇温機構は、昇温体移動機構により昇降される。この昇降により第1の昇温機構が、被接合材の保持を行った後に被接合材の昇温を行い、更に第1のロッド移動機構が、押し引きによる被接合材の加圧によって固相接合を行うようになっている。
【0018】
下ユニット14bは、エアシリンダ26bと、このシリンダロッド6b2の上端に取り付けられるロッド24bとを備えて構成される第2のロッド移動機構と、昇温体ホルダ21b及び昇温体22bを備えて構成される第2の昇温機構とを備えて成る。第2の昇温機構が被接合材の昇温を行い、更に第2のロッド移動機構が、押し引きによる被接合材の加圧によって固相接合を行うようになっている。なお、第1のロッド移動機構及び第2のロッド移動機構は、請求項記載のロッド移動手段を構成する。
【0019】
このような接合装置10の構成について更に詳細に説明する。
上ユニット14aにおいて、昇温体ホルダ21a(上昇温体ホルダ21aともいう)は、縦部1a1と横部1a2とが逆L字形状に一体となった2つの逆L字形状部21a1,21a2が、縦線を対象軸として線対象に配設された構造を成す。逆L字形状部21a1,21a2は、導電体である。離間した2つの逆L字形状部21a1,21a2の間は、後述する棒状のシリンダロッド6a2が挿通される挿通間隙となっている。
【0020】
下ユニット14bにおいて、昇温体ホルダ21b(下昇温体ホルダ21bともいう)は、縦部1b1と横部1b2とがL字形状に一体となった2つのL字形状部21b1,21b2が、縦線を対象軸として線対象に配設された構造を成す。離間した2つのL字形状部21b1,21b2の間は、後述する棒状のシリンダロッド6b2が挿通される挿通間隙となっている。
【0021】
昇温体ホルダ21a,21bは、消費電力を抑制するために、昇温体22a,22bよりも導電率の高い銅等の金属材料により形成されている。つまり、昇温体ホルダ21a,21bを昇温体22a,22bと同材料にすると消費電力が多くなるので、この無駄を解消している。
【0022】
上昇温体ホルダ21aにおいて、逆L字形状部21a1,21a2の横部1a2の外側には、各電極端子1a3を介して2次ケーブル16aが電気的に接続されている。各電極端子1a3に接続される2次ケーブル16aは、一方がプラス側で他方がマイナス側となっている。
【0023】
逆L字形状部21a1,21a2の下側は、挿通間隙が横方向に広くなっており、この広い挿通間隙分に、昇温体22a(上昇温体22aともいう)が嵌合固定されている。下方側のL字形状部21b1,21b2の上側においても、同様に昇温体22b(下昇温体22bともいう)が嵌合固定されている。
【0024】
昇温体22a,22bは、中央を上下に貫通する貫通孔(挿通孔)を有する直方体の下面に、短い円筒部が下方側に突き出て一体に固定され、円筒部と直方体との双方の貫通孔が連通する形状を成す。この昇温体22a,22bは、通電時の消費電力を抑制するため、極力小型に形成してある。
【0025】
昇温体22a,22bは、通電時に必要温度に自己発熱する電気抵抗を有し、且つ必要温度に上昇しても軟化しない強度の金属材料により形成されている。昇温体22,22bは、通電すると自己発熱により昇温する。即ち、通電加熱を行う。この昇温した高温で昇温体22a,22bに当接した被接合材(例えば、図5に示すアルミ板1a,1b)を加熱する。
【0026】
この昇温体22a,22bは、高温に強く電気抵抗の高いタングステン等の金属材料により形成されている。昇温体22a,22bは、タングステンの他、ステンレス及び鉄等の金属により形成されている。本例では、昇温体22a,22bがタングステンにより形成されているとする。
【0027】
昇温体22a,22bは、上述のように、電気抵抗の高い金属材料で形成されている。このため、昇温体22a,22bを短時間で通電により昇温させることができる。従って、アルミ板1a,1b(図5参照)の昇温体22a,22bの当接部分が短時間で高温となる。
【0028】
上下の昇温体22a,22bは、上下で異なる材質であってもよい。接合対象の被接合材は、上下とも金属板又は樹脂板のみならず、上下が異なる材質である例えば金属板と樹脂板等がある。このため、上下で被接合材の材質が異なる場合、各被接合材を適正に加熱可能な昇温体22a,22bとするようにしてもよい。
【0029】
昇温体22a,22bには、昇温体22a,22bの発熱温度を計測するための熱電対(温度センサ)23a,23bが埋め込まれている。
【0030】
昇温体22a,22bの貫通孔には、細長い円柱形状のロッド24a,24b(上ロッド24a,下ロッド24bともいう)が上下動可能に挿通されている。なお、ロッド24a,24bは、円柱形状以外に、三角柱や四角柱等の多角柱や星形柱等の柱形状であってもよい。
【0031】
ロッド24a,24bは、昇温体22a,22bの熱で軟化しない硬質な絶縁体により形成されている。本例ではセラミクスにより形成されているとする。なお、ロッド24a,24bは、昇温体22a,22bと同材料で形成してもよい。
【0032】
上昇温体ホルダ21aの横部1a2の上面には、中央に貫通孔(挿通孔)が形成された絶縁体による取付座25aを介してエアシリンダ26aが取り付けられている。取付座25aは、この貫通孔が、上昇温体ホルダ21aの挿通間隙と連通するように横部1a2に固定されている。
【0033】
エアシリンダ26aは、空気を給気又は排気するエア給排部6a1と、エア給排部6a1の内部に挿入された基部から下方側へ突き出し、取付座25aの貫通孔及び上昇温体ホルダ21aの挿通間隙に挿通された棒状のシリンダロッド6a2とを備えて構成されている。シリンダロッド6a2の下端は、上ロッド24aの上端に固定されている。
【0034】
エアシリンダ26aは、エア給排部6a1に空気が給気されるとシリンダロッド6a2が上ロッド24aを所定圧力で押し下げる。エア給排部6a1から空気が排気されるとシリンダロッド6a2が上ロッド24aを引き上げるようになっている。
【0035】
エアシリンダ26aのエア給排部6a1の上面には、断面コ字形状のナット部27が載置されている。ナット部27は、上側にネジ穴7aを備え、このネジ穴7aにネジ軸28が螺合されている。
【0036】
ネジ軸28の上側部分は、取付座30の貫通孔に挿通されて上方へ突き出ている。その取付座30並びに下方に離間した取付座25aは、ガイドシャフト29(図1参照)で固定されている。ガイドシャフト29は、ナット部27及びエア給排部6a1の両側に位置する状態で上下の取付座25a,30に固定されている。
【0037】
取付座30の貫通孔から上方に突き出たネジ軸28の上端は、モータ31(図1参照)の回転軸に固定されている。取付座30の貫通孔の周壁には、ベアリング30aが配置されており、このベアリング30aにネジ軸28が挿通されて、ロッド24aの押込み反力、上ユニット14aの把持反力を取付座30がベアリング30aを介して保持するようになっている。
【0038】
この構成により、モータ31が右回転するとネジ軸28がナット部27内で右回転し、エアシリンダ26aを含む下方側の上昇温体22aが下方へ移動する。モータ31が左回転するとネジ軸28がナット部27内で左回転し、エアシリンダ26aを含む下方側の上昇温体22aが上方へ移動するようになっている。
【0039】
次に、下ユニット14bの下昇温体ホルダ21bにおいて、導電体のL字形状部21b1,21b2の横部1b2の外側には、各電極端子1b3を介して2次ケーブル16bが電気的に接続されている。各電極端子1b3に接続される2次ケーブル16bは、一方がプラス側で他方がマイナス側となっている。
【0040】
下昇温体22bの貫通孔には、下ロッド24bが上下動可能に挿通されている。下昇温体22bの貫通孔は上昇温体22aの貫通孔よりも孔径が大きく、この大径の貫通孔に挿通される下ロッド24bは、上ロッド24aよりも径が大きく端面の面積が広くなっている。なお、上ロッド24aと下ロッド24bは同径で端面の面積も同じであってもよい。
【0041】
下昇温体ホルダ21bの横部1b2の下面には、中央に貫通孔が形成された絶縁体による取付座25bを介してエアシリンダ26bが取り付けられている。取付座25bは、この貫通孔が、下昇温体ホルダ21bの挿通間隙と連通するように横部1b2に固定されている。
【0042】
エアシリンダ26bは、エア給排部6b1と、シリンダロッド6b2とを備え、シリンダロッド6b2の上端が、下ロッド24bの下端に固定されている。エア給排部6b1に空気が給気されるとシリンダロッド6b2が下ロッド24bを所定圧力で押し上げる。エア給排部6b1から空気が排気されると、シリンダロッド6b2が下ロッド24bを引き下げるようになっている。
【0043】
次に、図3を参照して接合装置10の電気配線について説明する。接合装置10は、電気系の構成要素として、通電制御装置13a,13bと、トランス15a,15bと、制御部32と、電磁バルブ33a,33bとを備える。
【0044】
制御部32は、モータ31を右回転又は左回転させる制御を行う。この制御部32は、上下で対向する昇温体22a,22bがアルミ板1a,1b(図4参照)を介して離間している場合、上昇温体22aを矢印Y1aで示す下方向へ下降させるために、モータ31を右回転させてネジ軸28をナット部27内で右回転させる。この右回転により、上ユニット14aの下方部分が下降するので、上昇温体22aが下降するようになっている。
【0045】
一方、制御部32は、上下の昇温体22a,22bがアルミ板1a,1bを介して当接又は挟持(図5参照)している場合、上昇温体22aを矢印Y2aで示す上方向へ上昇させるために、モータ31を左回転させてネジ軸28をナット部27内で左回転させる。この左回転により、上ユニット14aの下方部分が上昇するので、上昇温体22aが上昇するようになっている。
【0046】
この制御は、図4又は図5に示すように、上下の昇温体22a,22bのアルミ板1a,1bを介した離間、又は当接(挟持)状態を検出する図示せぬセンサを備えて行うようにしてもよい。但し、センサは、アルミ板1a,1bの接合部分の凹凸状態及び平面状態も検出する。センサが離間(図4)を検出している場合、操作者の接合装置10の図示せぬ操作部の操作等に応じて、図3に示す制御部32がモータ31を右回転させ、上昇温体22aがアルミ板1a,1bを介して下昇温体22bに当接(図5)するまで下降させる制御を行う。
【0047】
センサが挟持又は当接状態(図5)を検出している場合、制御部32がモータ31を左回転させ、上昇温体22aがアルミ板1a,1b及び下昇温体22bから離間(図4)するまで上昇させる制御を行う。この上昇の制御は、後述の熱電対23a,23bでの計測温度に応じたシリンダロッド6a2,6b2の上下動の制御後に行われる。
【0048】
また、図3に示す制御部32は、上記昇温体22a,22bのアルミ板1a,1bへの当接後に、上ユニット14a用の通電制御装置13aに、所要温度にするために必要な電流値、通電時間を送る。通電制御装置13aは、1次ケーブル12aを介してトランス15aに所定の電流及び通電時間を通電させる制御を行う。トランス15aは、供給される1次ケーブル側電圧を変換して所定の電流を出力する。この電流をプラス側及びマイナス側の2次ケーブル16aを介して昇温体ホルダ21aに印加する。これによって昇温体ホルダ21aに固定された昇温体22aに電流が流れ、昇温体22aが溶融しない温度に発熱するようになっている。この発熱は、昇温体22aで加熱される被接合材の融点の半分位の温度となるのが好ましい。例えば、被接合材がアルミ板であれば、アルミ板が約300℃となるように昇温体22aが発熱するのが好ましい。
【0049】
この制御部32による通電加熱の制御は、下ユニット14b用の通電制御装置13bにも同様に行われ、下昇温体22bが所定温度に発熱するようになっている。
【0050】
上下の昇温体22a,22bに埋め込まれた熱電対23a,23bは、昇温体22a,22bの発熱温度を計測し、この計測温度を示す温度信号を制御部32へ出力する。
【0051】
制御部32は、温度信号の温度に応じて電磁バルブ33a,33bの図示せぬ給気弁及び排気弁の開閉度合いを制御する。この開閉度合いに応じて、エアシリンダ26a,26bの空気の給気及び排気が制御される。この制御により上側のシリンダロッド6a2の矢印Y1aで示す下降と、矢印Y2aで示す上昇とが制御されると共に、下側のシリンダロッド6b2の矢印Y1bで示す下降と、矢印Y2bで示す上昇とが制御される。
【0052】
<実施形態の動作>
次に、実施形態の溶接装置10によって、複数枚重ねた金属板1a,1bを固相接合する際の動作について説明する。
【0053】
まず、図4に示すように、上下に離間した昇温体22a,22bの間に、2枚のアルミ板1a,1bの重ねられた結合部分が配置されているとする。この場合、図3に示す制御部32は、モータ31を右回転させて、図5に矢印で示すように、上昇温体22aを下降させる。この下降によって、上下の昇温体22a,22bがアルミ板1a,1bを挟持する。
【0054】
この挟持状態を図示せぬセンサが検知すると、図3に示す制御部32は、通電制御装置13a,13b及びトランス15a,15bを介して上下の昇温体22a,22bに通電を行う。
【0055】
この通電により上下の昇温体22a,22bが発熱し、この発熱の温度が熱電対23a,23bで計測される。この計測温度は温度信号として制御部32へ出力される。
【0056】
制御部32は、温度信号が予め定められた温度を示すと、上側の電磁バルブ33aの排気弁を閉、給気弁を所定開度で開として、上側のエアシリンダ26aへの空気の給気を行う。この給気によって、エアシリンダ26aのシリンダロッド6a2が下降して上ロッド24aが下降し、アルミ板1a,1bを下方側へ押圧する。この際、制御部32は、下側の電磁バルブ33bの排気弁を所定開度で開、給気弁を閉として、下側のエアシリンダ26bへの空気の排気を可能とする。これによって、上ロッド24aによる押圧に応じて下ロッド24bが下降可能となる。
【0057】
この際、アルミ板1a,1bを挟持して共に下降する上ロッド24aと下ロッド24bとの間には、所定の加圧力が掛るように下側の電磁バルブ33bの排気弁の開度合いが制御される。但し、上ロッド24aと下ロッド24bとの双方が上昇する場合は、双方の間に、所定の加圧力が掛るように上側の電磁バルブ33aの排気弁の開度合いが制御される。このように双方に所定の加圧力が掛るようにする手段として、エアシリンダ26a,26bの上端側又は下端側にバネを設けてもよい。
【0058】
上記の下方への押圧制御によって、図6に矢印で示す方向に、上ロッド24aがアルミ板1a,1bを下方側に押圧(加圧)し、アルミ板1a,1bが下ロッド24b側へ凸状に突き出て固相接合される。この際、下ロッド24bは僅かに下がる。
【0059】
次に、制御部32は、上記下方への押圧が予め定められた時間行われると、上側の電磁バルブ33aの排気弁を所定開度で開、給気弁を閉として、上側のエアシリンダ26aから空気を排気可能とする。これによって、下ロッド24bによる上側への押圧に応じて上ロッド24aが上方へ移動可能となる。
【0060】
同時に、制御部32は、下側の電磁バルブ33bの排気弁を閉、給気弁を所定開度で開として、下側のエアシリンダ26bへの空気の給気を行い、シリンダロッド6b2を上昇させる。この上昇に応じて、図7に矢印で示す方向に、下ロッド24bがアルミ板1a,1bを上方側へ押圧する。この際、下ロッド24bをアルミ板1a,1bよりも上ロッド24a側に突出するように押圧させてもよい。
【0061】
この下ロッド24bによる上方への押圧は、アルミ板1a,1bの押圧部分が図6に示す下への凸状から図7に示す平面状となるように行われる。下ロッド24bが平面位置に戻ったことをセンサが検知すると、制御部32は、モータ31を左回転させて、上昇温体22aを上昇させる。この上昇によって、図8に示すように、上下の昇温体22a,22bが、アルミ板1a,1bを介して離間した状態となる。
【0062】
但し、制御部32は、上下のロッド24a,24bによるアルミ板1a,1bの上下への押圧を、交互に複数回繰り返すように制御してもよい。
【0063】
<実施形態の効果>
以上説明した実施形態の接合装置10の効果について説明する。
【0064】
(1)接合装置10は、第1及び第2昇温体22a,22bと、第1及び第2ロッド24a,24bと、昇温体移動機構(移動手段)と、ロッド移動機構(ロッド移動手段)とを備える構成とした。
【0065】
第1及び第2昇温体22a,22bは、複数重ねられたアルミ板1a,1bを挟持可能に対向状態に配置され、通電により昇温するものである。第1及び第2ロッド24a,24bは、第1及び第2昇温体22a,22bの各々に互いの対向方向に沿って形成された挿通孔に挿通されているものである。昇温体移動機構は、第1昇温体22aを第2昇温体22bへの近接方向又は離間方向に移動させる機構である。ロッド移動機構は、第1及び第2昇温体22a,22bに対して第1及び第2ロッド24a,24bを出没させる機構である。
【0066】
この構成によれば、次のような作用効果がある。離間した第1及び第2昇温体22a,22b間に複数重ねられたアルミ板1a,1bが配置されている場合に、移動機構で第1昇温体11aを移動してアルミ板1a,1bを介して第2昇温体22bと当接する。これら昇温体22a,22bに通電すると各昇温体22a,22bが発熱する。この発熱によってアルミ板1a,1bが加熱されて軟化した際に、ロッド移動機構により第1ロッドでアルミ板1a,1bを押圧する。この押圧に応じて、複数のアルミ板1a,1bが固相接合される。この第1ロッド24aの押圧によりアルミ板1a,1bの接合部分が第2ロッド24b側に凸状に突き出している。次に、ロッド移動機構によって、第2ロッド24bを第1ロッド側に押圧し、アルミ板1a,1bの凸状の接合部分を逆方向に加圧して凸状部分が平坦となるようにする。これによって、複数のアルミ板1a,1bが平坦な状態に固相接合される。つまり、複数重ねられたアルミ板1a,1bを、接合部分に変形が残存しないように固相接合できる。
【0067】
(2)第1及び第2昇温体22a,22bの温度を計測する熱電対23a,23bと、熱電対23a,23bで計測された第1及び第2昇温体22a,22bの温度に応じて昇温体移動機構及びロッド移動機構を制御する制御部32とを備える。制御部32は、熱電対23a,23bでの計測温度が予め定められた温度となった際に、ロッド移動機構に第1ロッドのアルミ板1a,1bへの押圧を行なわせ、当該押圧が所定時間経過後に、当該押圧と反対方向へ第2ロッド24bでアルミ板1a,1bを押圧させる制御を行う構成とした。
【0068】
この構成によれば、熱電対23a,23bによる第1及び第2昇温体22a,22bの計測温度が予め定められた温度となった際に、制御部32の制御によって、第1ロッドでアルミ板1a,1bを押圧させ、当該押圧が所定時間経過後に、当該押圧と反対方向へ第2ロッド24bでアルミ板1a,1bを押圧させる。このため、複数重ねられたアルミ板1a,1bの接合部分を平面に出来るので、接合部分に変形が残存しない固相接合を自動で行うことができる。
【0069】
(3)ロッド移動手段は、第1及び第2ロッド24a,24bでアルミ板1a,1bを挟持した状態で、第1及び第2ロッド24a,24bを同方向へ移動する構成とした。
【0070】
この構成によれば、ロッド移動機構により第1ロッド24aでアルミ板1a,1bを押圧すると、アルミ板1a,1bが固相接合され、この際、第2ロッド24bは若干、アルミ板1a,1bから離間方向へ移動する。
【0071】
(4)第1及び第2ロッド24a,24bの対向端面は、第2ロッド24bが第1ロッド24aよりも大きい面積を有する構成とした。
【0072】
この構成によれば、第1ロッド24aでアルミ板1a,1bを押圧した場合、アルミ板1a,1bの押圧部分が第2ロッド24b側に凸状に突き出す。ここで第1及び第2ロッド24a,24bの対向端面が同面積の場合、凸状に突き出た部分が、第2ロッド24bの端面から外側に食み出す。しかし、本発明では例えば第2ロッド24bの端面が第1ロッド24aの端面よりも大きい面積となっている。このため、凸状に突き出た部分が第2ロッド24bの端面が食み出さず、当該端面上に収めることができる。この状態で、第2ロッド24bで凸状部分を第1ロッド24a側へ押圧すれば、凸状の接合部分を平坦な状態に戻すことができる。
【0073】
(5)第1及び第2ロッド24a,24bは、第1及び第2昇温体22a,22bの熱で軟化しない硬質な絶縁体により形成されている構成とした。
【0074】
この構成によれば、第1及び第2昇温体22a,22bの発熱で第1及び第2ロッド24a,24bが軟化しない。このため、第1及び第2ロッド24a,24bで、複数のアルミ板1a,1bを強く押圧して固相接合できる。
【0075】
(6)第1及び第2昇温体22a,22bは、タングステンで形成されている構成とした。
【0076】
この構成によれば、次のような効果がある。タングステンは、金属の中で最も高温に強い材料である。従って、本方式により接合を行う場合被接合材を被接合材の融点の半分程度まで昇温させるが、タングステンを用いることにより融点の高い被接合材であっても昇温体の形状及び硬さを維持したまま被接合材を昇温して固相接合ができる。
【0077】
(7)第1及び第2昇温体22a,22bは、同一材料又は各々異なる材料で形成されている構成とした。
【0078】
この構成によれば、次のような作用効果がある。複数の被接合材が異なる場合、例えば、第1昇温体11aが当接する被接合材がアルミ板であり、第2昇温体22bが当接する被接合材が樹脂板であるとする。この場合、アルミ板と樹脂板との適正な加熱温度が異なり、アルミ板側は温度が高くても形状を保つ昇温体が必要である、一方、樹脂板はアルミ板より融点が低いため樹脂側の昇温体をアルミ側と同じものにする必要はない。従って、アルミ側をタングステンの昇温体、樹脂側を鉄製の昇温体とすることができる。これには、昇温体の電気抵抗の違いにより所要電流を節約する効果がある。また、昇温体の製作費を安価にすることができる。
【0079】
(8)複数重ねられたアルミ板1a,1bを挟持可能に対向状態に配置され、通電により昇温する第1及び第2昇温体22a,22bと、第1及び第2昇温体22a,22bの各々に互いの対向方向に沿って形成された挿通孔に挿通された第1及び第2ロッド24a,24bとを備える。離間した第1及び第2昇温体22a,22b間に複数重ねたアルミ板1a,1bを配置し、第1昇温体を移動させ、移動する第1昇温体をアルミ板1a,1bを介して第2昇温体に当接後に、当該第1及び第2昇温体22a,22bに通電し、第1及び第2昇温体22a,22bに対して第1及び第2ロッド24a,24bを出没させる方法とした。
【0080】
この方法によれば、第1ロッド24aでアルミ板1a,1bの接合部分を第2ロッド24b側に押圧して凸状に突き出させているので、次に、第2ロッド24bをアルミ板1a,1bの凸状の接合部分が平坦となるように第1ロッド24a側に押圧する。これによって、複数のアルミ板1a,1bを平坦な状態に固相接合することができる。つまり、複数重ねられたアルミ板1a,1bを、接合部分に変形が残存しないように固相接合できる。
【0081】
(9)第1及び第2昇温体22a,22bの温度を熱電対23a,23bで計測し、計測温度が予め定められた温度となった際に、第1ロッド24aのアルミ板1a,1bへの押圧を行なわせ、当該押圧が所定時間経過後に、当該押圧と反対方向へ第2ロッド24bでアルミ板1a,1bを押圧させる方法とした。
【0082】
この方法によれば、第1ロッドでアルミ板1a,1bを押圧させ、当該押圧と反対方向へ第2ロッド24bでアルミ板1a,1bを押圧させるので、複数重ねられたアルミ板1a,1bの接合部分を平面に出来る。このため、接合部分に変形が残存しない固相接合を自動で行うことができる。
【0083】
(10)第1ロッド24aのアルミ板1a,1bの押圧と、第2ロッド24bのアルミ板1a,1bの押圧とを、交互に複数回繰り返す方法とした。
【0084】
この方法によれば、第1及び第2ロッド24a,24bにより互いに逆方向のアルミ板1a,1bへの押圧が繰り返されるので、アルミ板1a,1bの固相接合を、より強固にできる。
【0085】
<実施形態の変形例>
図9は本発明の実施形態の変形例に係る接合装置の構成及び配線を示す図である。
【0086】
図9に示す変形例の接合装置10Aが、上記実施形態の接合装置10(図3)と異なる点について説明する。上ユニット14aにおいて、昇温体22a(図3)を、絶縁体による挟持体42aに代えた。また、導電体の逆L字形状部21a1と導電体としたロッド24aの一側面との間に導電体41aを当接し、導電体の逆L字形状部21a2とロッド24aの他側面との間に導電体41aを当接させた。更に、熱電対23aを、昇温体22a(図3)に代え、ロッド24aに埋め込む構成とした。なお、逆L字形状部21a1,21a2でホルダ21aが構成されている。
【0087】
更に、下ユニット14bにおいて、昇温体22b(図3)を、絶縁体による挟持体42bに代えた。また、導電体の逆L字形状部21b1と、導電体としたロッド24bの一側面との間に導電体41bを当接し、導電体の逆L字形状部21b2とロッド24bの他側面との間に導電体41bを当接させた。更に、熱電対23bを、昇温体22b(図3)に代え、ロッド24bに埋め込む構成とした。L字形状部21b1,21b2でホルダ21bが構成されている。
【0088】
挟持体42a,42bは、被接合材であるアルミ板1a,1bを挟持する。
【0089】
ロッド24a,24bは、前述したアルミ板1a,1bの上下からの押圧と、アルミ板1a,1bの加熱とを行う。このロッド24a,24bは、導電体41a,41bを介した通電時に必要温度に自己発熱する電気抵抗を有し、且つ必要温度に上昇しても軟化しない強度の金属材料により形成されている。ロッド24a,24bは、通電すると自己発熱により昇温する。即ち、通電加熱を行う。この昇温した高温でロッド24a,24bに当接した被接合材(例えば、図5に示すアルミ板1a,1b)を加熱する。
【0090】
この構成による上ユニット14aは、後述する挟持体移動機構と、第1のロッド移動昇温機構とを備える。なお、挟持体移動機構は、請求項記載の挟持体移動手段を構成する。
【0091】
挟持体移動機構は、上ユニット14aのモータ31(図2)、ネジ軸28、ナット部27及びガイドシャフト29を備えて構成されている。
【0092】
第1のロッド移動昇温機構は、挟持体移動機構にナット部27を介して取り付けられるエアシリンダ26aと、このシリンダロッド6a2の下端に取り付けられるロッド24aと、逆L字形状部21a1,21a2とを備えて構成されている。
【0093】
挟持体42a及び第1のロッド移動昇温機構は、挟持体移動機構により昇降される。この昇降により挟持体42aで被接合材の保持を行った後に、第1のロッド移動昇温機構がロッド24aに通電を行って被接合材の昇温を行う。更に、第1のロッド移動昇温機構が、ロッド24aでの押し引きによる被接合材の加圧によって固相接合を行うようになっている。
【0094】
下ユニット14bは、エアシリンダ26bと、このシリンダロッド6b2の上端に取り付けられるロッド24bと、L字形状部21b1,21b2とを備えて構成される第2のロッド移動昇温機構を備えて成る。第2のロッド移動昇温機構のロッド24bが被接合材の昇温を行い、更にロッド24bでの押し引きによる被接合材の加圧によって固相接合を行うようになっている。なお、第1のロッド移動昇温機構及び第2のロッド移動昇温機構は、請求項記載のロッド移動昇温手段を構成する。
【0095】
制御部32は、センサが上挟持体42aのアルミ板1a,1bの離間(図4)を検出している場合、モータ31を右回転させ、上挟持体42aがアルミ板1a,1bを介して下挟持体42bに当接(図5)するまで下降させる制御を行う。
【0096】
制御部32は、センサが挟持又は当接状態(図5)を検出している場合、モータ31を左回転させ、上挟持体42aがアルミ板1a,1b及び下挟持体42bから離間(図4)するまで上昇させる制御を行う。
【0097】
また、図9に示す制御部32は、上記挟持体42a,42bのアルミ板1a,1bへの当接後に、上ユニット14a用の通電制御装置13aから1次ケーブル12aを介してトランス15aに所定の電流及び通電時間を通電させる制御を行う。この制御に応じて、トランス15aが、電流をプラス側及びマイナス側の2次ケーブル16aを介して挟持ホルダ42aに供給する。これによって導電体41aを介してロッド24aに電流が流れ、ロッド24aが溶融しない温度に発熱する。この発熱は、下ユニット14bにおいても同様に行われる。
【0098】
上下のロッド24a,24bに埋め込まれた熱電対23a,23bは、ロッド24a,24bの発熱温度を計測し、この計測温度を示す温度信号を制御部32へ出力する。
【0099】
制御部32は、上記実施形態で記載したように、温度信号の温度に応じて電磁バルブ33a,33bの図示せぬ給気弁及び排気弁の開閉度合いを制御して、上側のシリンダロッド6a2の下降及び上昇を制御すると共に、下側のシリンダロッド6b2の下降及び上昇を制御する。
【0100】
<変形例の動作>
次に、変形例の溶接装置10Aによって、複数枚重ねた金属板1a,1bを固相接合する際の動作について説明する。
【0101】
まず、図4に示すように、上下に離間した挟持体42a,42bの間に、2枚のアルミ板1a,1bの重ねられた結合部分が配置されている場合に、図9に示す制御部32で、モータ31を右回転させて、図5に矢印で示すように、上挟持体42aを下降させる。この下降によって、上下の挟持体42aがアルミ板1a,1bを挟持する。
【0102】
この挟持状態を図示せぬセンサが検知すると、制御部32は、通電制御装置13a,13b及びトランス15a,15bを介して上下のロッド24a,24bに通電を行う。
【0103】
この通電により上下のロッド24a,24bが発熱し、この発熱の温度が熱電対23a,23bで計測される。この計測温度は温度信号として制御部32へ出力される。
【0104】
制御部32は、温度信号が予め定められた温度を示すと、上側の電磁バルブ33aの排気弁を閉、給気弁を所定開度で開として、上側のエアシリンダ26aへの給気を行い、シリンダロッド6a2の下降に応じた上ロッド24aの下降で、アルミ板1a,1bを下方側へ押圧する。この際、制御部32は、下側の電磁バルブ33bの排気弁を所定開度で開、給気弁を閉として、下側のエアシリンダ26bへの排気を可能とし、上ロッド24aの押圧に応じて下ロッド24bの下降を可能とする。
【0105】
この下方への押圧制御によって、図6に矢印で示す方向に、上ロッド24aがアルミ板1a,1bを下方側に押圧(加圧)し、アルミ板1a,1bが下ロッド24b側へ凸状に突き出て固相接合される。この際、下ロッド24bは僅かに下がる。
【0106】
次に、制御部32は、上記下方への押圧が予め定められた時間行われると、上側の電磁バルブ33aの排気弁を所定開度で開、給気弁を閉として、エアシリンダ26aから空気を排気可能とする。
【0107】
同時に、制御部32は、下側の電磁バルブ33bの排気弁を閉、給気弁を所定開度で開として、下側のエアシリンダ26bへの給気を行い、シリンダロッド6b2を上昇させる。この上昇に応じて、図7に矢印で示す方向に、下ロッド24bがアルミ板1a,1bを上方側へ押圧する。
【0108】
この下ロッド24bによる上方への押圧は、アルミ板1a,1bの押圧部分が図6に示す下への凸状から図7に示す平面状となるように行われる。下ロッド24bが平面位置に戻ったことをセンサが検知すると、制御部32の制御に応じて、上挟持体42aが上昇され、図8に示すように、上下の挟持体42a,42bが、アルミ板1a,1bを介して離間した状態となる。
【0109】
<変形例の効果>
以上説明した変形例の接合装置10Aの効果について説明する。
(1)接合装置10A(図9)は、挟持体42a,42bと、第1及び第2ロッド24a,24bと、挟持体移動機構(挟持体移動手段)と、ロッド移動昇温機構(ロッド移動昇温手段)とを備える構成とした。
【0110】
(11)上下の挟持体42a,42bは、複数重ねられた被接合材としてのアルミ板1a,1bを挟持可能に対向状態に配置されている。上下のロッド24a,24bは、挟持体42a,42bの各々に互いの対向方向に沿って形成された挿通孔に挿通され、通電によって昇温する。挟持体移動機構は、上のロッド24aを含む挟持体42aを、下のロッド24bを含む挟持体42bへ近接又は離間する方向に移動させる。ロッド移動昇温機構は、挟持体42a,42bに対してロッド24a,24bを出没させると共に、ロッド24a,24bへの通電を行う構成とした。
【0111】
この構成によれば、次のような作用効果がある。離間した上下の挟持体42a,42b間に複数重ねられたアルミ板1a,1bが配置されている場合に、挟持体移動機構で、上の挟持体42aを移動してアルミ板1a,1bを介して下の挟持体42bと当接する。次に、ロッド移動昇温機構で、上下のロッド24a,24bに通電すると各ロッド24a,24bが発熱する。この発熱によってアルミ板1a,1bが加熱されて軟化した際に、ロッド移動昇温機構により上ロッド24aでアルミ板1a,1bを押圧する。この押圧に応じて、複数のアルミ板1a,1bが固相接合される。この上ロッド24aの押圧によりアルミ板1a,1bの接合部分が下2ロッド24b側に凸状に突き出している。次に、ロッド移動昇温機構によって、下ロッド24bを上ロッド24a側に押圧し、アルミ板1a,1bの凸状の接合部分を逆方向に加圧して凸状部分が平坦となるようにする。これによって、複数のアルミ板1a,1bが平坦な状態に固相接合される。つまり、複数重ねられたアルミ板1a,1bを、接合部分に変形が残存しないように固相接合できる。
【0112】
(12)接合装置10Aは、上下のロッド24a,24bの温度を計測する温度センサである熱電対23a,23bと、熱電対23a,23bで計測されたロッド24a,24bの温度に応じて挟持体移動機構及びロッド移動昇温機構を制御する制御部32とを備える。更に、制御部32は、熱電対23a,23bでの計測温度が予め定められた温度となった際に、ロッド移動昇温手段に上ロッド24aのアルミ板1a,1bへの押圧を行なわせ、この押圧が所定時間経過後に、押圧と反対方向へ下ロッド24bでアルミ板1a,1bを押圧させる制御を行う構成とした。
【0113】
この構成によれば、熱電対23a,23bによるロッド24a,24bの計測温度が予め定められた温度となった際に、制御部32の制御によって、上ロッド24aでアルミ板1a,1bを押圧させ、当該押圧が所定時間経過後に、押圧と反対方向へ下ロッド24bでアルミ板1a,1bを押圧させる。このため、複数重ねられたアルミ板1a,1bの接合部分を平面に出来るので、接合部分に変形が残存しない固相接合を自動で行うことができる。
【0114】
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。実施形態の上ユニット14aの昇降動作及び第1及び第2ロッド24a,24bの押し引き動作を、上述したエアシリンダ26a,26bによる空圧式以外に、油圧式、モータ駆動式で行ってもよい。また、第1及び第2昇温体22a,22bを、上述した通電加熱以外に、電熱線式、高周波誘導加熱式で行ってもよい。また、接合装置10は、ロボットに搭載し、上ユニット14a及び下ユニット14bをロボットのアームに搭載してもよい。
【符号の説明】
【0115】
10,10A 接合装置
11 接合本体装置
12a,12b 1次側通電ケーブル
13a,13b 通電制御装置
14a 上部側接合ユニット
14b 下部側接合ユニット
15a,15b トランス
21a,21b 昇温体ホルダ
22a,22b 昇温体
23a,23b 熱電対
24a,24b ロッド
26a,26b エアシリンダ
6a2,6b2 シリンダロッド
27 ナット部
7a ネジ穴
28 ネジ軸
29 ガイドシャフト
31 モータ
32 制御部
33a,33b 電磁バルブ
41a,41b 導電体
42a,42b 挟持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11