(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】シーラー
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20240716BHJP
B65B 51/14 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B65B51/10 Z
B65B51/14
B65B51/10 114
(21)【出願番号】P 2020185604
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236964
【氏名又は名称】富士インパルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅弘
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-061006(JP,U)
【文献】国際公開第2017/033964(WO,A1)
【文献】特開2004-068197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
B65B 51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被シール物を挟持するための、長尺状の一対の圧着部と受部からなる挟持構造と、
一対の挟持構造のうち前記圧着部に設けられる加熱部と、
前記受部に設けられる弾性体と、を有し、
前記受部に変形アリ溝が設けられ、前記弾性体が前記変形アリ溝に対応した形状を有し、
前記弾性体は、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、凸形状で形成される底面部と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記底面部の両方の端辺から変形アリ溝に合わせた形状となるように形成される第一、第二側面部と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記第一、第二側面部の端辺から伸びて、
前記変形アリ溝に収納されずそれより外に配置される第一、第二接触面部と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記第一、第二接触面部の両方の端辺から延びる第三、第四側面部と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記第三、第四側面部のそれぞれの端辺同士を、平面または凸面で結んで形成される圧着面と、を有し、
前記変形アリ溝は、
前記底面部の前記凸形状に対応した凹形状である溝底部と、
前記溝底部からアリ溝となるような角度に立設する第一、第二溝側部と、を有し、
前記受部は、
前記第一、第二溝側部の間隔よりも拡幅となるように延び、前記第一、第二接触面部と当接するように傾斜面を形成している第一、第二上面部と、を有し、
前記受部は、
前記変形アリ溝の前記第一溝側部または第二溝側部にまで至るように形成される、1以上の螺合孔を有し、
前記螺合孔からネジを挿入し、弾性体の第一側面部または第二側面部にネジ先端を当接し係止し、または、第一側面部または第二側面部に、螺合孔の位置に対応して、ネジが挿入可能な孔または凹部が形成される、
シーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材をシールするシーラー、例えば、ヒート式、インパルス式のシーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、足踏み式のインパルスシーラーの一例を示す。シーラーの下部受部に、包装材を圧着するための弾性体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、特許文献1では、弾性体が下部受部に両面テープなどを介して設けられる。
しかしながら、両面テープの場合は、長時間使用、使用環境(液体との接触)に応じて、粘着力が低下することが懸念される。また、ゴムの耐用年数に応じて交換する必要があり、交換時に粘着剤を綺麗に剥がす必要があり、その作業は煩雑であった。
【0005】
本発明は、従来よりも剥がれ難く、交換も簡便な圧着用の弾性体およびその嵌め込み構造を有するシーラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
通常のアリ溝構造は、
図4(A)(B)に示すように、長手方向に対し直交する方向の断面視で下部受部92の上面922に台形状のアリ溝921が形成され、圧着用の弾性体91の下部911は、このアリ溝921に対応した該断面視で台形状であり、上部912は該断面視で矩形状であり、その底面が下部受部92の上面922に接するように作製される。
しかしながら、
図4のような通常のアリ溝構造では、下部受部と上部圧着部とを挟持する際の圧着応力および上部圧着部を原位置復帰した際に、圧着用の弾性体91が断面視で逆U字状あるいは凸状に変形し(
図4(C)参照)、圧着用の弾性体91がアリ溝921から外れやすくなる。また、横ずれすることも懸念される。また、弾性体91の両端部が捲れることも懸念される(
図4D参照)。
そこで、本発明者は、鋭意研究し、通常のアリ溝構造をさらに改良した改良型アリ溝構造を新規に創作した。改良型アリ溝構造は、両面テープを使用することもなく、圧着用の弾性体が、使用環境および圧着ゴムの耐用設定年数内において、取付側の下部受部または上部圧着部から想定以上に横ずれ、両端部の捲れ、外れなどが生じることを低減できる。
【0007】
本発明に係るシーラー(1)は、
被シール物を挟持するための、長尺状の一対の圧着部と受部からなる挟持構造と、
一対の挟持構造のうち前記圧着部に設けられる加熱部(21)と、
前記受部に設けられる弾性体(6)と、を有し、
前記受部に変形アリ溝が設けられ、前記弾性体(6)が前記変形アリ溝に対応した形状を有する。
【0008】
前記圧着部は、上方または下方に設けられて、それに対向するように、受部が下方または上方に配置される。上部圧着部と下部受部、または、上部受部と下部圧着部の組み合わせである。
【0009】
前記弾性体(6)は、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、凸形状(180°未満の夾角(α°)の2直線または凸曲線(曲率半径R))で形成される底面部(61)と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記底面部(61)の両方の端辺(61a、61b)から変形アリ溝(51)に合わせた形状となるように形成される第一、第二側面部(62、63)と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記第一、第二側面部(62、63)の端辺(62a、63a)から伸びて、前記変形アリ溝(51)に収納されずそれより外に配置され、前記(下部)受部(5)の上面(53、52)に当接する第一、第二接触面部(64、65)と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記第一、第二接触面部(64、65)の両方の端辺(64a、65a)から延びる第三、第四側面部(66、67)と、
長手方向に対し直交する方向の断面視で、前記第三、第四側面部(66、67)のそれぞれの端辺(66a、67a)同士を、平面または凸面(曲率半径Rの曲面)で結んで形成される(下部)圧着面(68、681)と、を有する。
前記変形アリ溝(51)は、
前記底面部(61)の前記凸形状(180°未満の夾角(α°)の2直線または凸曲線(曲率半径R))に対応した凹形状である溝底部(511)と、
前記溝底部(511)からアリ溝となるような角度(例えば、鋭角)に立設する第一、第二溝側部(512、513)と、を有する。
前記下部受部(5)は、
前記第一、第二溝側部(512、513)の間隔よりも拡幅となるように延び、前記第一、第二接触面部(64、65)と当接するように傾斜面(180°未満の夾角(θ°))を形成している第一、第二上面部(52、53)と、を有する。
【0010】
前記下部受部(5)は、
変形アリ溝(51)の両端部において、弾性体(6)が横ずれを抑制するように変形アリ溝の溝部を変形させた凸形状(例えば、ポンチ打ちなどで塑性変形させる)または別部材で構成された抜け止め部を有してもいてもよい。
別部材は、例えば、ネジ、針状物などでもよい。前記変形アリ溝(51)の両端部において、前記第一溝側部(512)または第二溝側部(513)にまで至るように形成され、前記別部材が挿入可能な挿入孔または螺合孔を有していてもよい。
前記下部受部(5)は、
前記変形アリ溝(51)の前記第一溝側部(512)または第二溝側部(513)にまで至るように形成される、1以上の螺合孔を有していてもよい。
螺合孔(53)からネジを挿入し、弾性体(6)の第一側面部(62)または第二側面部(63)にネジ先端を当接し係止できる。
第一側面部(62)または第二側面部(63)に、螺合孔の位置に対応して、ネジが挿入可能な孔または凹部が形成されていてもよい。
【0011】
本発明によれば、通常のアリ溝とは異なり、アリ溝底面を単一の平坦面ではなく凹形状(テーパ状、夾角α)にして第一段差(
図2参照)を形成することで、弾性体(6)がU字に変形することを低減できる。
通常のアリ溝の場合は、テーパ状に傾斜していないために弾性体(6)がU字状に変形し、弾性体(6)が応力に耐え切れず横ずれやアリ溝から外れやすかったが、本発明によれば、横ずれや捲れなどを良好に低減できる。
また、下部受部(5)の第一、第二上面部(52、53)を傾斜(テーパ状、夾角θ)させて第二段差(
図2参照)を形成したことにより、弾性体(6)の両耳端(第一、第二接触面部(64、65))が捲れ難くなった。
【0012】
前記底面部の傾斜面の高低差である第一段差(D1)は、前記弾性体の圧着面の幅(W1)の長さが10mmから28mmの範囲において、0.5mmから1.0mmの範囲から選択されてもよい。
前記第一、第二接触面部の傾斜の高低差である第二段差(D2)は、前記弾性体の圧着面の幅(W1)の長さが10mmから28mmの範囲において、0.5mmから1.0mmの範囲から選択されてもよい。
前記弾性体の前記底面部の幅(W2)は、前記圧着面の幅(W1)の長さより小さい。
前記弾性体の前記第一、第二側面部の端辺の間の幅(W3)は、前記底面部の幅(W2)より小さい。
【0013】
前記弾性体(6)は、例えば、シリコンゴム、フッ素系ゴムであってもよい。
【0014】
前記加熱部(21)は、例えば、厚み0.1mm程度で、その断面形状は長方形の帯状の電熱線を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1のシーラー1の外観および上部圧着部2および下部受部5の側面視の一例を示す図である。
【
図2】実施形態1の弾性体6および変形アリ溝51の断面形状を示す図である。
【
図3】実施形態2の弾性体6および変形アリ溝51の断面形状を示す図である。
【
図4】従来のアリ溝構造の断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
実施形態1に係るシーラー1を
図1~2を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るシーラー1の外観図である。シーラー1は足踏み式であるが、本発明は足踏み式に限定されない。
【0017】
シーラー1は、上部圧着部2の両端に設けられるアーム3と、上部圧着部2に対向するように配置される下部受部5と、被シール物または操作者の動作の案内または支えとなって下部受部5に設けられるプレート4を有する。被シール物は、上部圧着部2と下部受部5とによって挟持される。
上部圧着部2は、絶縁シート(不図示)、加熱部21、フローガラスシート22がこの順に設けられている。加熱部21は長尺の電熱線で構成される。フローガラスシートは、下部受部5の弾性体6の上にも設けられていてもよい。
【0018】
下部受部5は、その長手方向に沿って、変形アリ溝51が設けられる。また、下部受部5は、第一、第二溝側部512、513の間隔よりも拡幅となるように延び、第一、第二接触面部64、65と当接するように傾斜面(180°未満の夾角(θ°))を形成している第一、第二上面部52、53とを有する。
【0019】
変形アリ溝51は、溝底部511と、溝底部511からアリ溝となるような角度(例えば、鋭角)に立設する第一、第二溝側部512、513を有する。
溝底部511は、底面部61の凸形状(180°未満の夾角(α°)の2直線)に対応した凹形状である。
この変形アリ溝51に弾性体6が嵌め込まれる。
【0020】
弾性体6は、変形アリ溝51の形状に合わせて作製される。実施形態では、弾性体6の底面部61は、長手方向に対し直交する方向の断面視で、凸形状(180°未満の夾角(α°)の2直線)で形成される。第一、第二側面部62、63は、長手方向に対し直交する方向の断面視で、底面部61の両方の端辺61a、61bから変形アリ溝51に合わせた形状となるように形成される。第一、第二接触面部64、65は、長手方向に対し直交する方向の断面視で、第一、第二側面部62、63の端辺62a、63aから伸びて、変形アリ溝51に収納されずそれより外に配置され、下部受部5の第一、第二上面53、52に当接するように形成される。
第三、第四側面部66、67は、長手方向に対し直交する方向の断面視で、第一、第二接触面部64、65の両方の端辺64a、65aから延設される。下部圧着面68は、長手方向に対し直交する方向の断面視で、第三、第四側面部66、67のそれぞれの端辺66a、67a同士を平面で結んで形成される。
このように、底面部61の傾斜面の高低差であって、最も深い辺511aと端辺511bとの間で第一段差D1が形成される。また、第一、第二接触面部64、65の傾斜の高低差であって、端辺62aと端辺64aとの間および端辺63aと端辺65aとの間で第二段差D2が形成される。
【0021】
本実施形態において、第一段差D1は、弾性体6の下部圧着面68の幅W1の長さが10mmから28mmの範囲において、0.5mmから1.0mmの範囲から選択されてもよい。
本実施形態において、第二段差D2は、弾性体6の幅W1の長さが10mmから28mmの範囲において、0.5mmから1.0mmの範囲から選択されてもよい。
第一段差D1と第二段差D2は、同じ値でもよく、異なっていてもよく、電熱線幅に対応して設定されてもよい。
本実施形態において、弾性体6の底面部61の幅W2は、下部圧着面68の幅W1の長さより小さい。
本実施形態において、弾性体6の第一、第二側面部62、63の端辺62a、63aの間の幅W3は、幅W2より小さい。
なお、取付のため、弾性体の幅寸法より、変形アリ溝の対応する幅寸法の方がわずかに大きい。
例えば、実施例1として以下が例示される。
下部圧着面68の幅W1:18mm
底面部61の幅W2 :14mm
幅W3 :12.4mm
第一段差D1 :0.5mm
第二段差D2 :0.5mm
例えば、実施例2として以下が例示される。
下部圧着面68の幅W1:10mm
底面部61の幅W2 :6mm
幅W3 :4.4mm
第一段差D1 :0.5mm
第二段差D2 :0.5mm
例えば、実施例3として以下が例示される。
下部圧着面68の幅W1:12mm
底面部61の幅W2 :8mm
幅W3 :6.4mm
第一段差D1 :0.5mm
第二段差D2 :0.5mm
例えば、実施例4として以下が例示される。
下部圧着面68の幅W1:28mm
底面部61の幅W2 :24mm
幅W3 :22.4mm
第一段差D1 :0.5mm
第二段差D2 :0.5mm
【0022】
本実施形態において、底面部61および溝底部511の夾角αは、例えば、150°から180°未満である。
また、第一、第二接触面部64、65および第一、第二上面部52、53のそれぞれで形成される夾角θは、例えば、150°から180°未満である。
【0023】
(弾性体の変形アリ溝への取付方法)
弾性体6と変形アリ溝51に取り付ける場合に、以下のステップを含む。
(1)弾性体6の片側のエッジ(例えば、辺61a)を変形アリ溝51の辺511b側に入れて、次いで反対側のエッジ(例えば、辺61b)を上から押さえながら変形アリ溝51の溝内に嵌め込む。両面テープや接着剤を使用しない。
(2)なお、弾性体6の長手方向の両端部において、横ずれや横からの抜け落ち防止のための抜け止め部が変形アリ溝51に設けられていてもよい。
【0024】
(実施形態2)
実施形態2に係る弾性体6について
図3を用いて説明する。
実施形態1と異なるのは、下部圧着面681が、実施形態1のような平坦面ではなく、曲率半径Rの曲面で構成されている点である。
曲率半径Rは、例えば、80°から120°である。
曲面にしたことで、加熱部との接触位置を凸面にすることで、シール面(電熱線幅)の面圧を上げることができる。
【0025】
(別実施形態)
(1)シーラーは、上記足部み式のシーラー1に制限されず、小型シール機、卓上型の電動シーラー、大型のシール機などに適用できる。
(2)実施形態1、2では、弾性体6が下部受部5に設けられている構成であったが、これに制限されず、上部受部に弾性体が設けられ、それと対向する位置の下部に加熱部が設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 シーラー
2 上部圧着部
3 アーム
5 下部受部
51 変形アリ溝
6 弾性体