(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ロッドハンドリング装置
(51)【国際特許分類】
E21B 19/18 20060101AFI20240716BHJP
E21B 19/14 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
E21B19/18
E21B19/14
(21)【出願番号】P 2020188597
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦志
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 宏児
(72)【発明者】
【氏名】平田 義彦
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-296388(JP,A)
【文献】特開2017-048639(JP,A)
【文献】特表2013-517401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングロッドを着脱可能に把持するロッドチャックと、
ボーリング時のボーリングロッドを位置決めするドリリングセンタが設けられたセットプレートと、
前記ロッドチャックを前記ドリリングセンタを中心としてドリリングセンタ回りに旋回させる第1旋回機構と、
前記第1旋回機構に支持された状態で前記ドリリングセンタに対し前記ロッドチャックを起倒方向に旋回させる第2旋回機構と、
前記ドリリングセンタの中心線と直交した方向を回転中心として回動するように前記第2旋回機構に取り付けられ、前記ドリリングセンタの中心線に対する前記ロッドチャックの中心線の位置ずれを前記回動によって修正するずれ修正機構と、
前記ロッドチャックが軸方向に移動可能に取り付けられたガイドロッドと、前記ガイドロッドの軸方向に沿って2段で設けられて前記ガイドロッドを弾性的に支持するばね部材とを備え、前記ドリリングセンタに対するロッドチャックの軸方向の位置を弾性的に支持する間隔調整機構と、を備えていることを特徴とするロッドハンドリング装置。
【請求項2】
前記ずれ修正機構は、前記第2旋回機構の軸方向と直交する方向に回転可能な修正ピンと、前記修正ピンを支持する球面軸受と、前記
間隔調整機構を弾性的に支持する修正ばねとによって形成されていることを特徴とする請求項1記載のロッドハンドリング装置。
【請求項3】
前記第2旋回機構に回動アクチュエータが取り付けられ、前記ずれ修正機構が前記アクチュエータに取り付けられており、前記ロッドチャックが360°の範囲で旋回可能となっていることを特徴とする請求項1記載のロッドハンドリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリングロッドを掘削機に供給したり、回収するために用いるロッドハンドリング装置に関し、特に掘削機の多様な掘削姿勢に対してもボーリングロッドを供給することが可能なロッドハンドリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来のロッドハンドリング装置は、水平状態のボーリングロッドをロッド把持部材が把持した後、ボーリングロッドを立てた状態として掘削機のドリルヘッドに供給する構造となっている。特許文献2に記載されたロッドハンドリング装置は、ロッドコンテナがボーリングロッドを立設させた状態で周回し、ロッドコンテナ上のボーリングロッドをロッド把持部材が取り出し、掘削機に供給する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6641129号公報
【文献】特許第6501811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロッドハンドリング装置は、ボーリングロッドを立てた状態で掘削機に供給する構造であり、斜めの掘削姿勢や水平の掘削姿勢に対してはボーリングロッドの供給が困難となる問題を有している。このため、多様な掘削姿勢に対してもボーリングロッドを供給できるロッドハンドリング装置の開発が望まれている。
【0005】
また、ボーリングロッドを接続する場合には、ロッドのねじ接続に際にロッドのセンタリングが必要なため、従来のロッド供給装置においてもセンタリング機構が組み込まれている。しかしながら、従来においては正確なセンタリングが難しく、ずれが生じた場合には、作業者による手作業でのセンタリングがなされており、作業性が悪い問題を有している。さらに、ボーリングロッドのねじ接続、切り離しの際にボーリングロッドのねじが損傷し易く、ねじの損傷を抑制する必要が生じている。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたものであり、掘削機の多様な掘削姿勢に対応してボーリングロッドの供給が可能であり、供給に際しボーリングロッドの正確なセンタリングが可能で作業者によるセンタリングを不要とすることができ、さらにはねじの損傷を抑制できるハンドリングを可能としたロッドハンドリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロッドハンドリング装置は、ボーリングロッドを着脱可能に把持するロッドチャックと、ボーリング時のボーリングロッドを位置決めするドリリングセンタが設けられたセットプレートと、前記ロッドチャックを前記ドリリングセンタを中心としてドリリングセンタ回りに旋回させる第1旋回機構と、前記第1旋回機構に支持された状態で前記ドリリングセンタに対し前記ロッドチャックを起倒方向に旋回させる第2旋回機構と、前記ドリリングセンタの中心線と直交した方向を回転中心として回動するように前記第2旋回機構に取り付けられ、前記ドリリングセンタの中心線に対する前記ロッドチャックの中心線の位置ずれを前記回動によって修正するずれ修正機構と、前記ドリリングセンタの方向に移動するように前記ロッドチャックを弾性的に支持してドリリングセンタとロッドチャックとの間隔を調整する間隔調整機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記ずれ修正機構は、前記第2旋回機構の軸方向と直交する方向に回転可能な修正ピンと、前記修正ピンを支持する球面軸受と、前記位置調整機構を弾性的に支持する修正ばねとによって形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記間隔調整機構は、前記ロッドチャックが軸方向に移動可能に取り付けられるガイドロッドを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、前記間隔調整機構は、前記ガイドロッドの軸方向に沿って配置された少なくとも2段のばね部材を備え、前記ガイドロッドが前記ばね部材に弾性的に支持されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記第2旋回機構に回動アクチュエータが取り付けられ、前記ずれ修正機構が前記アクチュエータに取り付けられており、前記ロッドチャックが360°の範囲で旋回可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロッドチャックをドリリングセンタ回りに旋回させる第1旋回機構及びロッドチャックを起倒方向に旋回させる第2旋回機構を設けているため、ロッドチャックに把持されているボーリングロッドの姿勢の変更の自由度が増大して、多様な掘削姿勢に対応したボーリングロッドの供給が可能となる。
また、ずれ修正機構を設けることにより、ボーリングロッドを把持するロッドチャックの中心線をドリリングセンタの中心線に位置合わせすることができるため、ボーリングロッドのねじ接続時のセンタリングを正確に行うことができ、作業者によるセンタリング作業が不要となる。
また、間隔調整機構を設けているため、ボーリングロッドのねじ接続や切り離しの際にボーリングロッドのねじが噛み込んだりすることを防止することができ、ねじの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のロッドハンドリング装置の一実施形態の斜視図である。
【
図2】ロッドハンドリング装置を下から示す斜視図である。
【
図9】ロッドハンドリング装置を掘削機に組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図10】発明の別の実施形態のロッドハンドリング装置を掘削機に組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図11】本発明のさらに別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態のロッドハンドリング装置1の斜視図、
図2は下方からの斜視図、
図3は側面図、
図4は平面図、
図5は正面図、
図6は
図3のC-C線断面図、
図7は
図3のB-B線断面図、
図8は
図5のA-A線断面図、
図9は掘削機2に組み付けた状態を示す斜視図、
図10はロッドハンドリング装置1を斜め状態としたときの斜視図である。
【0015】
ロッドハンドリング装置1は、ボーリングロッド3のドリリングセンタ4と、ボーリングロッド3を着脱可能に把持するロッドチャック5と、第1旋回機構6と、第2旋回機構7と、ずれ修正機構8と、間隔調整機構9とを備えている。
【0016】
ドリリングセンタ4は掘削機2によってボーリングを行うとき、ボーリング時の地盤に対するボーリングロッド3の位置決めを行うものであり、セットプレート10に一体に設けられている(
図1、
図5)。セットプレート10は第1旋回機構6上で地盤に臨むように位置し、ボーリングロッド3はこのセットプレート10のドリリングセンタ4を貫通する。ロッドチャック5はボーリングロッド3を把持する部材であり、第1旋回機構6、第2旋回機構7、ずれ修正機構8、間隔調整機構9はこのロッドチャック5をドリリングセンタ4に対して移動させる。
【0017】
ロッドチャック5は
図6に示すように、チャックシリンダ13と、チャックシリンダ13のピストン先端に取り付けられたチャックピース14とを備えている。ロッドチャック5はボーリングロッド3が挿入されるチャックロッド15(
図1、
図2)を有しており、チャックピース14がチャックロッド15内に進出することによりボーリングロッド3をチャックロッド15と共に把持する。また、チャックロッド15に対してチャックピース14が退避することによりボーリングロッド3の把持を解放する。かかるロッドチャック5の全体は後述する間隔調整機構9に設けられたガイドロッド16に取り付けられてガイドロッド16の軸方向に沿って移動可能となっている(
図2、
図7、
図8)。
【0018】
第1旋回機構6はセットプレート10の板厚方向と平行な方向に旋回可能となっている。この旋回はセットプレート10の下側に設けた第1旋回アクチュエータ11によって行われる。第1旋回機構6は
図4の矢印Mで示すように、ロッドチャック5をドリリングセンタ4の回りに旋回させるものであり、旋回はドリリングセンタ4を中心として行われる。第1旋回機構6によるロッドチャック5の旋回は、360°(好ましくは270°)の範囲で行うことができる。
なお、第1旋回機構6の第1旋回アクチュエータ11に代えて、軸受とシリンダとの組み合わせ、旋回ギヤとモータとの組み合わせを用いることができる。
【0019】
第2旋回機構7は第1旋回機構6の端部に立設された状態で支持されている。第2旋回機構7は第2旋回アクチュエータ12(
図7)を備えており、第2旋回アクチュエータ12の駆動によってロッドチャック5が矢印N(
図5)で示すようにドリリングセンタ4に対して起倒するように旋回する。旋回は360°の範囲で行われるが、
図5に示すように少なくとも180°の角度で旋回することによりドリリングセンタ4に対する起倒が可能となる。そして、第2旋回機構7が第1旋回機構6から起立動作することによりロッドチャック5がドリリングセンタ4の軸線上に移動する。
第2旋回機構7の第2旋回アクチュエータ12には、旋回シャフト17が取り付けられており、この旋回シャフト17にずれ修正機構8が取り付けられ、ずれ修正機構8に間隔調整機構9が取り付けられている。
なお、第2旋回機構7の第2旋回アクチュエータ12に代えて、油圧モータ、油圧シリンダ、電動モータ等を用いることができる。
【0020】
このようにロッドチャック5をドリリングセンタ4回りに旋回させる第1旋回機構6及びロッドチャック5を起倒方向に旋回させる第2旋回機構7を設けた構造とすることにより、ロッドチャック5に把持されているボーリングロッド3の姿勢の変更の自由度が増大するため、多様な掘削姿勢に対応したボーリングロッド3の供給が可能となる。
【0021】
ずれ修正機構8は、旋回シャフト17に取り付けられた修正ピン18と、修正ピン18を支持する球面軸受19と、修正ピン18(旋回シャフト17)を両側から挟んで弾性的に支持する修正ばね20とによって形成されている(
図7、
図4)。修正ピン18は第2旋回機構7の旋回シャフト17と直交する方向に回転可能に設けられ、球面軸受19は修正ピン18を挟んだ状態で支持している。修正ばね20は旋回シャフト17に取り付けられた状態で間隔調整機構9を弾性的に支持しており、これにより修正ばね20は間隔調整機構9に取り付けられたロッドチャック5を弾性的に支持する。
【0022】
修正ピン18はロッドチャック5が
図1の矢印Sの方向へ移動する自由度を付与し、球面軸受19はロッドチャック5が矢印Tの方向へ移動する自由度を付与する。修正ばね20はロッドチャック5を前後左右方向(
図7、
図8の矢印P方向)に数度程度移動させ、この移動によりドリリングセンタ4の中心線21に対するロッドチャック5の中心線22の位置ずれを修正する(
図7)。位置ずれの修正の後は、修正ばね20の弾性力によってロッドチャック5が元に位置に復帰する。
ずれ修正機構8においては、球面軸受19に代えてユニバーサルジョイントを用いても良い。修正ばね20としては、ゴムばねはコイルばね或いは油圧シリンダを用いることができる。
【0023】
このようなずれ修正機構8を設けた構造では、ボーリングロッドを把持するロッドチャック5の中心線22をドリリングセンタ4の中心線21に位置合わせすることができるため、ボーリングロッド接続時のセンタリングを確実に行うことが可能となる。
【0024】
間隔調整機構9は第2旋回機構7の旋回シャフト17に取り付けられた支持シャフト25と、支持シャフト25に取り付けられたガイドロッド16と、ガイドロッド16の軸方向に沿って2段で設けられたばね部材23とを備えている(
図1、
図8)。ロッドチャック5はガイドロッド16の軸方向へ移動可能に取り付けられる。ガイドロッド16の左右両側にはガイドロッド16に連結された2本の軸体24が設けられ、この軸体24のそれぞれにばね部材23が2段となって取り付けられている(
図8)。すなわち、この実施形態では、2段のばね部材23がガイドロッド16の左右に設けられるものである。
【0025】
このような構造の間隔調整機構9は、ドリリングセンタ4に対するロッドチャック5の軸方向の位置(
図7、
図8の矢印Q方向の位置)をガイドロッド16と、2段のばね部材23とによって確保することができる。すなわちロッドチャック5は2段のばね部材23によって中立位置に支持された状態でガイドロッド16の軸方向に移動するが、ロッドチャック5が把持しているボーリングロッド3が軸方向上側に引っ張られると、上側のばね部材23が圧縮し、下側に引っ張られると下側のばね部材23が圧縮する。これによりボーリングロッド3のねじ接続や切り離しの際にボーリングロッド3のねじが噛み込んだりすることを防止することができ、ねじの破損を防止することができる。間隔調整機構9においては、ロッドチャック5がボーリングロッド3の把持を解除すると、ばね部材23の弾性力によりロッドチャック5は中立位置に復帰する。
ばね部材23としては、ゴムばねやコイルばね或いは油圧シリンダを用いることができる。
【0026】
図9は、この実施形態のロッドハンドリング装置1を掘削機2に組み込んだ状態を示している。掘削機2は動力部分を備えた本体部31と、本体部31に立ち上がり状に設けたサブリーダー32とを有している。サブリーダー32には、ガイドセル34が連結され、ドリルヘッド33がガイドセル34に沿って移動することにより掘削が行われる。ロッドハンドリング装置1はドリリングセンタ4がドリルヘッド33に対応した位置となるように掘削機2に組み付けられる。
【0027】
図10は、本発明の別の実施形態のロッドハンドリング装置1Aを掘削機2に組み付けた状態を示す。ロッドハンドリング装置1Aにおいては、第2旋回機構7とずれ修正機構8との間に回動アクチュエータ40が配置されている。回動アクチュエータ40は第2旋回機構7に取り付けられた状態でずれ修正機構8を支持している。ボーリングロッド3を把持するロッドチャック5はずれ修正機構8及び間隔調整機構9を介して回動アクチュエータ40に取り付けられる。
回動アクチュエータ40は矢印Wで示すように、360°の範囲で回動するアクチュエータであり、回動アクチュエータ40が回動することによりロッドチャック5が360°の範囲で旋回して姿勢が変更される。このため、ロッドチャック5が把持しているボーリングロッド3の姿勢変更が可能となる。これによりロッドチャック5によるボーリングロッド3の補給も可能となる。
【0028】
図11は、本発明の更に別の実施形態のロッドハンドリング装置1Bを示す。間隔調整機構9のガイドロッド16にロッドチャック5が移動可能に取り付けられるが、この実施形態においては、ロッドチャック5が2つのチャックシリンダ(第1チャックシリンダ42及び第2チャックシリンダ43)を備えるものである。それぞれのチャックシリンダ42、43にはチャックピース44、45が取り付けられており、チャックピース44、45によってボーリングロッドの把持が行われる。
2つのチャックシリンダ42、43を設けることによりボーリングロッドがアウターロッド及びインナーロッドからなる2重管の場合であっても、一方のチャックシリンダ42がアウターロッドを把持し、他方のチャックシリンダがインナーロッドを把持することができる。これによりボーリングロッドが2重管の場合にも対応できるメリットがある。
【符号の説明】
【0029】
1 1A 1B ロッドハンドリング装置
2 掘削機
3 ボーリングロッド
4 ドリリングセンタ
5 ロッドチャック
6 第1旋回機構
7 第2旋回機構
8 ずれ修正機構
9 間隔調整機構
10 セットプレート
11 第1旋回アクチュエータ
12 第2旋回アクチュエータ
13 チャックシリンダ
14 チャックピース
15 チャックロッド
16 ガイドロッド
17 旋回シャフト
18 修正ピン
19 球面軸受
20 修正ばね
21 ドリリングセンタの中心線
22 ロッドチャックの中心線
23 ばね部材
24 軸体
25 支持シャフト
40 可動アクチュエータ