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特許7520365神経変性または神経炎症の治療または予防のための新規のIL-4-/IL-13-由来ペプチド化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】神経変性または神経炎症の治療または予防のための新規のIL-4-/IL-13-由来ペプチド化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240716BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240716BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240716BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61K38/10
A61K38/20
A61P25/00
C07K7/08
C07K14/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020544600
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019054532
(87)【国際公開番号】W WO2019166355
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】18158758.5
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518339489
【氏名又は名称】ウニベルズィテーツメディチン デア ヨハネス グーテンベルク ウニベルズィテート マインツ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヴォゲラー,クリスティーナ フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ジップ,フラウケ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】Thomas D. Mueller et al.,Biochimica et Biophysica Acta,2002年,vol.1592,pp.237-250
【文献】Franklin J. Moy et al.,J. Mol. Biol.,2001年,vol.310,pp.219-230
【文献】ZUEGG J; ET AL,STRUCTURAL MODEL OF HUMAN IL-13 DEFINES THE SPATIAL INTERACTIONS WITH THE IL-13R[ALPHA]/IL-4R[ALPHA] RECEPTOR,IMMUNOLOGY AND CELL BIOLOGY,AU,CARLTON,2001年08月,VOL:79, NR:4,PAGE(S):332 - 339,http://dx.doi.org/10.1046/j.1440-1711.2001.01035.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般構造を含むペプチドからなる化合物であって、
A-L1-B-L2-C
式中、
Aは、ヒトIL-4またはIL-13のαAまたはαCアルファヘリックス領域から誘導された第1のアミノ酸配列に対応し、
Bは、ヒトIL-4またはIL-13のαAまたはαCアルファヘリックス領域から誘導された第2のアミノ酸配列に対応し、
Cは、ヒトIL-4のαDもしくはαBアルファヘリックス領域、またはヒトIL-13のαDアルファヘリックス領域から誘導される第3のアミノ酸配列に対応し、
L1およびL2はS、GS、SGS、P、GPまたはPGPに対応し、
前記ペプチドが、アミノ酸配列WNRSEIIKTGSKTIMREKY(配列番号:1)を含むヒトIL-4誘導体、アミノ酸配列LMRSELIEELVNITGSFVKDLLLHLKK(配列番号:2)を含むヒトIL-13誘導体、アミノ酸配列RARSEIIGIGSKSIMQMDY(配列番号:4)を含むマウスIL-4誘導体、またはアミノ酸配列LIRSELIEELSNITGSFITKLLSYTKQ(配列番号:5)を含むマウスIL-13誘導体である、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物の少なくとも1つと、医薬的に好適な単体、ビヒクルまたは薬品とを含む医薬組成物。
【請求項3】
神経炎症または神経変性疾患の治療または予防で使用するための、請求項2に記載の医薬組成物
【請求項4】
神経障害または外傷性神経系損傷の治療または予防で使用するための、請求項2に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物インターロイキン-4(IL-4)またはインターロイキン-13(IL-13)由来の新規ペプチド化合物および神経炎症性または神経変性疾患、神経障害または外傷性神経系損傷の治療または予防における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
進行しかつ蓄積される軸索病理は、特に神経変性疾患の進行期中における潜在的障害の主な特徴と考えられている(V.Siffrin,H.Radbruch,R.Glumm,R.Niesner,M.Paterka,J.Herz,T.Leuenberger,S.M.Lehmann,S.Luenstedt,J.L.Rinnenthal,G.Laube,H.Luche,S.Lehnhardt,H.J.Fehling,O.Griesbeck,F.Zipp,“In vivo imaging of partially reversible th17 cell-induced neuronal dysfunction in the course of encephalomyelitis”,Immunity,2010,Vol.33,p.424-436;I.Nikic,D.Merkler,C.Sorbara,M.Brinkoetter,M.Kreutzfeld,F.M.Bareyre,W.Bruck,D.Bishop,T.Misgeld,M.Kerschensteiner,“A reversible form of axon damage in experimental autoimmune encephalomyelitis and multiple sclerosis”,Nat.Med.,2011,Vol.17,p.495-499)。炎症の攻撃を受けて、軸索膨張およびカルシウムの持続的アップレギュレーションは最終的にビーディングおよび変質となる。これらの炎症性神経細胞障害は少なくとも部分的に逆戻りする。現在まで、軸索コンパートメントはMSの治療戦略による対象に十分になっていない。(C.Larochelle,T.Uphaus,A.Prat,F.Zipp,“Secondary Progression in Multiple Sclerosis:Neuronal Exhaustion or Distinct Pathology?”,Trends Neurosci,2016,Vol.39,p.325-339;R.J.M.Franklin,C.ffrench-Constant,J.M.Edgar,K.J.Smith,“Neuroprotection and repair in multiple sclerosis”,Nat.Rev.Neurol,2012,Vol.8,p.624-634,F.Zipp,R.Gold,H.Wiendl,“Identification of inflammatory neuronal injury and prevention of neuronal damage in multiple sclerosis:hope for novel therapies?”,JAMA Neurol,2013,Vol.70,p.1569-1574)。
【0003】
インターロイキン-4(IL-4)およびインターロイキン-13(IL-13)は、代替活性化マクロファージおよびTh2細胞分化の生成である、高親和性IgE抗体の生成を刺激することによる細胞外寄生体に対する哺乳類の免疫反応において重複するが明確な役割を担う標準的な2型サイトカインである。IL-4は、中枢神経系(CNS)における効果に関する抗炎症性サイトカインであるが、全身性のIL-4は、過敏症、特に喘息において役割を果たしている。IL-4は外傷性CNS傷害の神経細胞にいて有益作用を有すると報告されている(J.T.Walsh,S.Hendrix,F.Boato,I.Smirnov,J.Zheng,J.R.Lukens,S.Gadani,D.Hechler,G.Golz,K.Rosenberger,T.Kammertons,J.Vogt,C.Vogelaar,V.Siffrin,A.Radjavi,A.Fernandez-Castaneda,A.Gaultier,R.Gold,T.D.Kanneganti,R.Nitsch,F.Zipp,J.Kipnis,“MHCII-independent CD4+ T cells protect injured CNS neurons via IL-4”,J.Clin.Invest.,2015,Vol.125,p.699-714)。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)にて体系的に適用されたIL-4の免疫調節機能、多発性硬化症(MS)のマウスモデル、および喘息モデルでの破壊的な役割が報告されている(N.L.Payne,A.Dantanarayana,G.Sun,L.Moussa,S.Caine,C.McDonald,D.Herszfeld,C.C.Bernard,C.Siatskas,“Early intervention with gene-modified mesenchymal stem cells overexpressing interleukin-4 enhances anti-inflammatory responses and functional recovery in experimental autoimmune demyelination”,Cell Adh.Migr.,2012,Vol.6,p.179-189;M.K.Racke,A.Bonomo,D.E.Scott,B.Cannella,A.Levine,C.S.Raine,E.M.Shevach,M.Rocken,“Cytokine-induced immune deviation as a therapy for inflammatory autoimmune disease”,J.Exp.Med.,1994,Vol.180,p.1961-1966;J.I.Inobe,Y.Chen,H.L.Weiner,“In vivo administration of IL-4 induces TGF-beta-producing cells and protects animals from experimental autoimmune encephalomyelitis”,Ann.N.Y. Acad.Sci.,1996,Vol.778,p.390-392;S.T.Holgate,“Innate and adaptive immune responses in asthma” ,Nat.Med.,2012,Vol.18,p.673-683;C.M.Lloyd,E.M.Hessel,“Functions of T cells in asthma:more than just T(H)2 cells” ,Nat.Rev.Immunol.,2010,Vol.10,p.838-848)。
【0004】
IL-4が免疫系におけるその効果によって潜在的に副作用を有することが知られている(S.T.Holgate,“Innate and adaptive immune responses in asthma” ,Nat.Med.,2012,Vol.18,p.673-683;C.M.Lloyd,E.M.Hessel,“Functions of T cells in asthma:more than just T(H)2 cells” ,Nat.Rev.Immunol.,2010,Vol.10,p.838-848)。さらに、ヒトへの臨床目的での大量の組み換えIL-4を生産するには非常に高価である。さらに、IL-4の血漿中の半減期が非常に短い((S.Gea-Sorli,and D.Closa,“In vitro,but not in vivo,reversibility of peritoneal macrophages activation during experimental acute pancreatitis”,BMC Immunol,2009,Vol.10,p.42;M.Khodoun,C.C.Lewis,J.Q.Yang,T.Orekov,C.Potter,T.Wynn,M.Mentink-Kane,G.K.Hershey,M.Wills-Karp,and F.D.Finkelman,“Differences in expression,affinity,and function of soluble(s)IL-4Rα and slL-13Ra2 suggest opposite effects on allergic responses” ,J Immunol,2007,Vol.179,p.6429-6438)。したがって、大量に生産する際に費用効果のある方法で生産することができ、かつ組み換え全長IL-4よりも安定である化合物を所有することが望ましい。
【0005】
IL-4およびIL-13のアミノ酸同一性が低い(23%)一方で、IL-4RαおよびIL-13Rα1サブユニット(2型IL-4R)から構成される共通受容体に結合することができ、受容体鎖IL-4Rαに結合することが知られている唯一のサイトカインである。さらに、IL-4は、IL-4Rαおよび共通y鎖で構成されるIL-4R1型に結合することができる(T.Wang,and C.J.Secombes,“The evolution of IL-4 and IL-13 and their receptor subunits”,Cytokine,2015,Vol.75,p.8-13)。シグナル伝達について、IL-4およびIL-13の両方が同じ受容体サブユニットを必要とする(T.D.Mueller,J.L.Zhang,W.Sebald,A.Duschl,“Structure,binding and antagonists in the IL-4/IL-13 receptor system”,Biochimica Biophysics Acta,2002,Vol.1592,p.237-250)。IL-4Rαは、官能性ヘテロ二量体受容体錯体両方の一部である。IL-4Rαは、シグナル伝達を、シグナル伝達分子の大きい細胞内ドメインに関連したシグナル伝達分子を介して組織する。IL-4およびIL-13は、逆並行並列螺旋αA、αC、αB、αDおよび螺旋BおよびDに対して詰まった短いβ-シートによって結合された2つの長いエンドツーエンドループ、ループABおよびCDを特徴とする同一の二量体サブユニットアセンブリを有する。螺旋A、ABループ、螺旋BCヘアピンおよびループCDプラス螺旋Dは4つの異なる軸索によってコードされる。複数の選択されたIL-4、IL-13およびIL-4/13たんぱく質のaa配列のアライメントは、概して4つのシステイン残留物が各たんぱく質に存在するが、システイン残留物のパターンは系統に特異的、すなわち哺乳類のIL-4およびIL-13、硬骨魚類IL-4/13、ならびに他の脊椎動物のIL-4/13であることを示している(T.Wang,and C.J.Secombes,“The evolution of IL-4 and IL-13 and their receptor subunits”,Cytokine,2015,Vol.75,p.8-13;F.J.Moy et al.,“Solution structure of human IL-13 and implication for receptor binding”,Journal of Molecular Bio,2001,Vol.310,p.219-230;J.Zuegg et al.,“Structural model of human IL-13 defines the spatial interactions with the IL-13Ralpha/IL-4Rαlpha receptor”,Immunoiogy and ceii biology,2001,Vol.79,p.332-339)。
【0006】
IL-4およびIL-13サイトカインは、左撚りの4αヘリックスバンドルによって支配されている(M.L.Walter,W.J.Cook,B.G.Zhao,R.P.Cameron Jr,S.E.Ealick,R.L.Walter Jr,P.Reichert,T.L.Nagabhushan,P.P Trotta,C.E.Bugg,“Crystal structure of recombinant human interleukin-4”,J Biol Chem,1992,Vol.267,p.20371-6)。IL-13の第二の構造の特徴はIL-4のものと類似している。同様に、IL-13は4αヘリックスバンドルを有する(E.L.Rael,R.F.Lockey,“Interleukin-13 signaling and its role in asthma”,World Allergy Organ J,2011,Vol.4,Vol.54-64)。
【0007】
IL-4およびIL-13サイトカインの両者が共通のヘテロ二量体受容体を共有する。両者ともTヘルパー1型炎症誘発性サイトカインをダウンレギュレートすることができる。神経保護または神経毒性効果の両方が、インターロイキン13および4が、M2ミクログリア表現型を促進させ、ミクログリアM1表現型を死滅させることに貢献することによって、または神経炎症中の神経細胞上の酸化ストレスの効果を増強することによって、炎症を低減することができるという証拠に基づき提案されている。(S.Mori et al.,“Neuroimmunology of the Interleukins 13 and 4”,Brain sciences,2016,Vol.6,p.18)。
【0008】
国際公開第2006/036878号は、細胞のIL-4、IL-9IL-13への反応性を低減するまたは阻害するための、IL-9変異タンパク質に連結したインターロイキン-4変異タンパク質を含むキメラポリペプチドアンタゴニストを開示している。
【0009】
免疫反応および神経炎症および神経変性疾患におけるIL-4/IL-13の役割を考慮すると、IL-4R1型および/または2型に結合することができ、かつ臨床症状を改善することができる薬剤を所有することが非常に望ましい。米国特許第5017691号明細書は、B-細胞およびT-細胞の成長におけるIL-4の活性について試験される、IL-4ポリペプチドを記載している。天然ヒト並びにマウスのIL-4たんぱく質並びにその変異タンパク質、および哺乳類のIL-4並びにその変異タンパク質をコードするcDNAが記載される。しかしながら、これらのL-4ポリペプチドは、神経変性疾患の治療には歓迎されない、望まない免疫反応を引き起こす。
【0010】
欧州特許出願公開第2365983号明細書では、慢性的な炎症反応および自己免疫性の疾患の変調のためのIL-4-誘導ペプチドを記載している。ペプチドが最大35個のIL-4のαヘリックスから誘導される連続するアミノ酸を含み、各ペプチドはアミノ酸AQFHRHKQLIRFLKRA(配列番号:27)である。
【0011】
さらには、IL-4受容体(IL-4Rα)と相互作用するIL-4のα-ヘリックスCから誘導される、Ph8と呼ばれる新規の合成ペプチドが記載されており、Ph-結合IL-4Rαは、インビトロのマクロファージによってTNF-αの生成を阻害することによって抗炎症作用を模倣することがわかった。Ph8はTh1/2細胞の増殖分化を阻害し、刺激したTh1細胞の生成をダウンレギュレートする。Ph8は、一般的にさらなるIL-4シグナリングに関連する副作用を誘発することなく、一般的なT-細胞の活性および炎症反応を誘発しないことが分かった(B.Klementiev,M.N.Enevoldsen,S.Li, R.Carlsson,Y.Liu,S.ssazadeh-Navikas,E.Bock,V.Berezin,“Antiinflammatory properties of a peptide derived from interleukin-4”,Cytokine,2013,Vol.64,p.112-121)。しかしながら、Ph8ペプチドは、ペプチドがリンパ球および骨髄由来マクロファージに対する作用があるため神経保護または神経再生の目的には適していない。
【0012】
発明者らは驚くことにIL-4は、多発性硬化症(MS)のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に供されたマウスの臨床症状を、病気の慢性期中に髄腔内に適用した場合に改善することができることを発見した。IL-4および本発明のIL-4の誘導体の作用は、改善された軸索形態および増加した再生発芽を伴っていた。インビトロモデルを使用して、IL-4が阻害基質の神経保護、軸索再生および成長への役割を果たしていることが観察されている。特に、神経特異的IL-4受容体(IL-4R)ノックアウトマウスにてIL-4作用が消滅することが発見された。早い直接的なIL-4Rシグナル経路が特定されている。さらには、鼻腔内塗布IL-4がおなじ程度に有効であり、神経細胞の治療のためのより臨床的に適切な投薬ルートとなる(C.F.Vogelaar,S.Mandal,S.Lerch,K.Birkner,J.Birkenstock,U.BGhler,A.Schnatz,C.S.Raine,S.Bittner,J.Vogt,J.Kipnis,R.Nitsch,F.Zipp,“Fast direct neuronal signaling via the IL-4 receptor as therapeutic target in neuroinflammation”,Sci Transl Med,2018,doi:10.1126/scitranslmed.aao2304)。
【0013】
外傷性傷害における神経保護の役割および特定された神経細胞のシグナル経路と併せたIL-4の神経炎症における役割は、IL-4およびそのIL-4誘導体並びにIL-13誘導体が、神経炎症および神経変性の治療または予防、特に多発性硬化症(MS)の治療または予防に好適であることを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2006/036878号
【文献】米国特許第5017691号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2365983号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】V.Siffrin,H.Radbruch,R.Glumm,R.Niesner,M.Paterka,J.Herz,T.Leuenberger,S.M.Lehmann,S.Luenstedt,J.L.Rinnenthal,G.Laube,H.Luche,S.Lehnhardt,H.J.Fehling,O.Griesbeck,F.Zipp,“In vivo imaging of partially reversible th17 cell-induced neuronal dysfunction in the course of encephalomyelitis”,Immunity,2010,Vol.33,p.424-436
【文献】I.Nikic,D.Merkler,C.Sorbara,M.Brinkoetter,M.Kreutzfeld,F.M.Bareyre,W.Bruck,D.Bishop,T.Misgeld,M.Kerschensteiner,“A reversible form of axon damage in experimental autoimmune encephalomyelitis and multiple sclerosis”,Nat.Med.,2011,Vol.17,p.495-499
【文献】C.Larochelle,T.Uphaus,A.Prat,F.Zipp,“Secondary Progression in Multiple Sclerosis:Neuronal Exhaustion or Distinct Pathology?”,Trends Neurosci,2016,Vol.39,p.325-339
【文献】R.J.M.Franklin,C.ffrench-Constant,J.M.Edgar,K.J.Smith,“Neuroprotection and repair in multiple sclerosis”,Nat.Rev.Neurol,2012,Vol.8,p.624-634
【文献】F.Zipp,R.Gold,H.Wiendl,“Identification of inflammatory neuronal injury and prevention of neuronal damage in multiple sclerosis:hope for novel therapies?”,JAMA Neurol,2013,Vol.70,p.1569-1574
【文献】J.T.Walsh,S.Hendrix,F.Boato,I.Smirnov,J.Zheng,J.R.Lukens,S.Gadani,D.Hechler,G.Golz,K.Rosenberger,T.Kammertons,J.Vogt,C.Vogelaar,V.Siffrin,A.Radjavi,A.Fernandez-Castaneda,A.Gaultier,R.Gold,T.D.Kanneganti,R.Nitsch,F.Zipp,J.Kipnis,“MHCII-independent CD4+ T cells protect injured CNS neurons via IL-4”,J.Clin.Invest.,2015,Vol.125,p.699-714
【文献】N.L.Payne,A.Dantanarayana,G.Sun,L.Moussa,S.Caine,C.McDonald,D.Herszfeld,C.C.Bernard,C.Siatskas,“Early intervention with gene-modified mesenchymal stem cells overexpressing interleukin-4 enhances anti-inflammatory responses and functional recovery in experimental autoimmune demyelination”,Cell Adh.Migr.,2012,Vol.6,p.179-189
【文献】M.K.Racke,A.Bonomo,D.E.Scott,B.Cannella,A.Levine,C.S.Raine,E.M.Shevach,M.Rocken,“Cytokine-induced immune deviation as a therapy for inflammatory autoimmune disease”,J.Exp.Med.,1994,Vol.180,p.1961-1966
【文献】J.I.Inobe,Y.Chen,H.L.Weiner,“In vivo administration of IL-4 induces TGF-beta-producing cells and protects animals from experimental autoimmune encephalomyelitis”,Ann.N.Y. Acad.Sci.,1996,Vol.778,p.390-392
【文献】S.T.Holgate,“Innate and adaptive immune responses in asthma” ,Nat.Med.,2012,Vol.18,p.673-683
【文献】C.M.Lloyd,E.M.Hessel,“Functions of T cells in asthma:more than just T(H)2 cells” ,Nat.Rev.Immunol.,2010,Vol.10,p.838-848
【文献】S.Gea-Sorli,and D.Closa,“In vitro,but not in vivo,reversibility of peritoneal macrophages activation during experimental acute pancreatitis”,BMC Immunol,2009,Vol.10,p.42
【文献】M.Khodoun,C.C.Lewis,J.Q.Yang,T.Orekov,C.Potter,T.Wynn,M.Mentink-Kane,G.K.Hershey,M.Wills-Karp,and F.D.Finkelman,“Differences in expression,affinity,and function of soluble(s)IL-4Rα and slL-13Ra2 suggest opposite effects on allergic responses” ,J Immunol,2007,Vol.179,p.6429-6438
【文献】T.Wang,and C.J.Secombes,“The evolution of IL-4 and IL-13 and their receptor subunits”,Cytokine,2015,Vol.75,p.8-13
【文献】T.D.Mueller,J.L.Zhang,W.Sebald,A.Duschl,“Structure,binding and antagonists in the IL-4/IL-13 receptor system”,Biochimica Biophysics Acta,2002,Vol.1592,p.237-250
【文献】F.J.Moy et al.,“Solution structure of human IL-13 and implication for receptor binding”,Journal of Molecular Bio,2001,Vol.310,p.219-230
【文献】J.Zuegg et al.,“Structural model of human IL-13 defines the spatial interactions with the IL-13Ralpha/IL-4Rαlpha receptor”,Immunoiogy and ceii biology,2001,Vol.79,p.332-339
【文献】M.L.Walter,W.J.Cook,B.G.Zhao,R.P.Cameron Jr,S.E.Ealick,R.L.Walter Jr,P.Reichert,T.L.Nagabhushan,P.P Trotta,C.E.Bugg,“Crystal structure of recombinant human interleukin-4”,J Biol Chem,1992,Vol.267,p.20371-6
【文献】E.L.Rael,R.F.Lockey,“Interleukin-13 signaling and its role in asthma”,World Allergy Organ J,2011,Vol.4,Vol.54-64
【文献】S.Mori et al.,“Neuroimmunology of the Interleukins 13 and 4”,Brain sciences,2016,Vol.6,p.18
【文献】B.Klementiev,M.N.Enevoldsen,S.Li, R.Carlsson,Y.Liu,S.ssazadeh-Navikas,E.Bock,V.Berezin,“Antiinflammatory properties of a peptide derived from interleukin-4”,Cytokine,2013,Vol.64,p.112-121
【文献】C.F.Vogelaar,S.Mandal,S.Lerch,K.Birkner,J.Birkenstock,U.BGhler,A.Schnatz,C.S.Raine,S.Bittner,J.Vogt,J.Kipnis,R.Nitsch,F.Zipp,“Fast direct neuronal signaling via the IL-4 receptor as therapeutic target in neuroinflammation”,Sci Transl Med,2018,doi:10.1126/scitranslmed.aao2304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この背景に反し、神経細胞に有効的作用し、リンパ球、または骨髄由来マクロファージに副作用が無く、神経細胞の疾患の予防または治療に好適である代替的化合物を提供するのが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本目的は、特許請求される化合物および神経炎症、または神経変性疾患、神経障害もしくは外傷性神経系損傷の予防または治療におけるその使用によって解決される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項にて特許請求される。
【0018】
特許請求される本化合物は、IL-4および/またはIL-13のそれぞれの全長たんぱく質から誘導される。これはIL-4およびIL-13のアルファヘリックス領域の一部のみがそれぞれ本発明のIL-4誘導体、またはIL-13誘導体をそれぞれ構成することを意味する。
【0019】
IL-4およびIL-13の二次構造的特徴の構造的類似性が高く、両者のサイトカインが4つのα-ヘリックス束を含んでいることから、本発明書においてαA,αD,αC,αDの文字で示され、重要なアミノ酸は、IL-4およびIL-13のαA~αDアルファヘリックス領域からそれぞれ誘導されることが本発明の化合物で共通している。
【0020】
本発明の文脈において使用される「IL-4誘導体」という用語は、化合物を示し、好ましくは、天然IL-4に基づくペプチド化合物である。好ましくは、本発明のIL-4誘導体は、関連するIL-4のαA~αDアルファヘリックス結合領域から少なくとも3つの選択されたドメインと同一または類似性が高いアミノ酸配列および/または構造を有する。
【0021】
本発明の文脈において使用される「IL-13誘導体」という用語は、化合物を示し、好ましくは、天然IL-13に基づくペプチド化合物である。好ましくは、本発明のIL-13誘導体は、関連するIL-13のαA~αDアルファヘリックス結合領域から少なくとも3つの選択されたドメインと同一または類似性が高いアミノ酸配列および/または構造を有する。
【0022】
本発明の文脈において使用される「αA・・・αDアルファヘリックス領域から誘導される」という用語は、IL-4、またはIL-13のαA・・・αDアルファヘリックス結合領域の一部であるアミノ酸配列を示す。
【0023】
本発明の化合物は、以下の順番の一般構造からなるIL-4、またはIL-13のαA~αDアルファヘリックス領域から誘導される1つ以上のペプチドからなる:
A-L1-B-L2-C
式中、
Aは、ヒトまたは動物IL-4またはIL-13のαAまたはαCアルファヘリックス領域から誘導される第1のアミノ酸配列に対応し、
Bは、ヒトまたは動物IL-4またはIL-13のαAまたはαCアルファヘリックス領域から誘導される第2のアミノ酸配列に対応し、
Cは、ヒトもしくは動物IL-4のαDもしくはαBアルファヘリックス領域、またはヒトもしくは動物IL-13のαDアルファヘリックス領域から誘導される第3のアミノ酸配列に対応する。
L1およびL2は1つ以上の連結アミノ酸に対応する。
【0024】
本発明の化合物は、好ましくは、神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。
【0025】
「アルファ-ヘリックス」(α-ヘリックス)という用語は、ペプチドの二次構造における共通モチーフを示す。α-ヘリックスは、右巻きまたは左巻きの螺旋状の構造であり得、各骨格N-H基は、4残基離れたアミノ酸の骨格C=0基に結合する水素を供与する。
【0026】
従って、IL-4またはIL-13のαA~αDアルファヘリックス領域の1つ以上のアミノ酸配列が、本発明のペプチドのA、BおよびCの部を形成するのに選択され得る。好ましくは、選択されたアミノ酸は、対応するヒトもしくは動物IL-4もしくはIL-13または与えられたアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸が削除、追加、置換または改変されたその変異体のα-ヘリックス領域で見られる連続するアミノ酸である。好適な本発明のペプチドは、IL-4のαA-αC-αDヘリックス領域から誘導され、示される通りに互いに連結しているアミノ酸配列を含む。代替的な好適な本発明のペプチドは、IL-4またはIL-13のαC-αA-αDヘリックス領域から誘導され、示される通りに互いに連結しているアミノ酸配列から構成される。
【0027】
ペプチド残留物A、BまたはC中の1つ以上のアミノ酸は修飾または非修飾の代替的アミノ酸によって変化すること、または結合能力および/または生物活性を大きく変えることなく1つ以上のアミノ酸により置換することができることは明らかである。従って、上記の構造を有するが、1つ以上の位置に異なるアミノ酸を有し、神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能であるあらゆるペプチドまたはその変異体が、本発明に包含される。本明細書で定義される神経細胞の軸索伸展は皮質の成長アッセイ、または本明細書に記載されるH9細胞の成長アッセイによって測定することができる。
【0028】
本発明の文脈において、アミノ酸残留物の標準1文字コードおよび標準3文字コードが適用される。アミノ酸の略語は、生化学命名法Eur.J.Biochem,1984,vol.184,pp9-37に記載されるIUPAC-IUB Joint Commission にて推奨されるものに従っている。明細書および特許請求の範囲全体を通じて、天然アミノ酸の3文字コードまたは1文字コードのいずれかが使用される。L体またはD体の明示がされていない場合、論議されているアミノ酸は天然L体(Pure&Appl.Chem.Vol.(56(5)pp595-624(1984)参照))、またはD体を有していると理解される。そのため、形成されたペプチドは、L体、D体またはL体とD体との混合の配列から構成され得る。
【0029】
ペプチドのC-末端アミノ酸は通常遊離カルボン酸として存在しており、「-OH」としても示される。しかしながら本発明による使用するためのペプチドのC末端アミノ酸はアミド化誘導体でもあり得、「-NH-2」として示される。特に記載のない場合、ポリペプチドのN-末端アミノ酸は、遊離アミノ基を含み、時に「H-」とも示される。本発明によるペプチド、その断片または変異体は、また1つまたは複数の非天然または修飾天然アミノ酸を含むことができる。
【0030】
本発明の好ましい化合物は、IL-4誘導体、またはIL-13誘導体であるペプチドであり、当該ペプチドは、双対鎖IL-13Ra1または共通y鎖に結合するために必要なアミノ酸と合わさったIL-4Rαに結合するために必要であるα-ヘリックスαA、αB、αCおよびαD内にアミノ酸を含むことによって特にIL-4受容体1型および2型に特異的に結合することができる。
【0031】
本発明の化合物を得るために、本発明者らは最も重要な受容体結合アミノ酸を結合し、共受容体鎖をお互いに連結させた。アミノ酸伸長物は、そのIL-4Rα鎖およびIL-13Ra1または共通y鎖のどちらかへの結合に基づいて選択され、それによって鎖を連結しIL-4R1型または2型のどちらかを形成する。全ての化合物は同じ原理の受容体鎖連結に基づいており、全てのIL-4およびIL-13誘導体は同様の機構を有する。ヒトまたは動物IL-4またはIL-13のαA、αB、αCaDヘリックス領域から誘導された選択されたアミノ酸は、本発明の化合物をIL-4RαまたはIL-13Rαに結合するために必要となる最も必須なアミノ酸である。
【0032】
本発明は、共に修飾または非修飾の形態であるペプチド、またはポリペプチドを包含し、哺乳類の(例えばヒト、またはマウス)IL-4、またはIL-13の1つ以上のαA、αB、αC、αDヘリックス領域の哺乳類のアミノ酸配列の一部であるが、哺乳類のIL-4、またはIL-13の全長αA、αB、αC、αDヘリックス領域は除く。本発明の化合物は1つ以上の前記ペプチドを含むことができ、任意選択的に構造的中性アミノ酸によって架橋される。特に、本発明は、哺乳動物におけるIL-4、またはIL-13のαA、αB、αC、αDヘリックス領域内にみることができるアミノ酸伸長物の組合せを包含し、これはIL-4RαおよびIL-13Rα1、または共通y鎖に結合するために必要なものである。本発明は、本明細書においてヒトおよびマウスのIL-4およびIL-13を使用して例証しているが、本発明は、IL-4/IL-4RαおよびIL-13/IL-13Rα相互作用の同じ原理が適用される、他の種に見ることができる同族のアミノ酸およびアミノ酸伸長物もまた包含している。
【0033】
神経細胞の軸索伸展を刺激する能力は、例えば本明細書に記載される皮質の成長アッセイ、またはヒトH9細胞の成長アッセイによって過度の負担なく、容易に測定することができる。
【0034】
本発明で示されるように、他の種からのαA~αDアルファヘリックスもまた互いに組み合わせることができ、本発明の誘導体は複数の種に渡って使用することができる。例えば、αA~αDアルファヘリックスで発生するアミノ酸は、全長IL-4、またはIL-13の同族関係よりも高次に種のなかで保たれる。本明細書に記載される、αA~αDアルファヘリックスに関する構造的特徴は、神経細胞上で確実に活発となるのに十分なものである。
【0035】
好ましくは、αA、αB、αCおよびαDヘリックス領域のアミノ酸配列は、哺乳類のIL-4から誘導される。4つのαA~αDアルファヘリックスを含包するヒトおよびマウスのIL-4のアミノ酸配列が図1Aに示される。代替的実施形態において、本発明のペプチドは、哺乳類のIL-13の選択されたαA、αB、αCおよびαDヘリックス領域から誘導される。4つのaA~aDアルファヘリックスを含包するヒトおよびマウスのIL-13のアミノ酸配列が図1Dに示される。
【0036】
本発明の化合物を生成するための異なるヘリックスセクションの構成が示される。A-L1-B-L2-Cである本発明のIL-4またはIL-13誘導ペプチドの一般構造を考慮すると、Aは、IL-4、またはIL-13のαCヘリックスに対応していることが望ましく、その次にIL-4、またはIL-13のαAヘリックスの選択されたアミノ酸配列に結合する第1のリンカー配列、その次にIL-4、またはIL-13のαDヘリックスから誘導される選択されたアミノ酸配列に結合する第2のリンカー配列が続く。リンカー配列は本発明のペプチドの3-D構造において必要である。
【0037】
代替的実施形態において、Aは、IL-4のαAヘリックスから誘導される選択されたアミノ酸に対応し、その次にIL-4のαCヘリックスの選択されたアミノ酸配列に結合される第1のリンカー配列、その次にIL-4のαBヘリックスの選択されたアミノ酸配列に結合される第2のリンカー配列が続く。好ましくは、1つ以上の、好ましくは、αA,αB,αCおよびαDヘリックス領域に伸長する少なくとも3つのアミノ酸から誘導された選択されたアミノ酸は、好ましくは、ヒトまたは他の哺乳類の種のIL-4またはIL-13である選択された種の前記領域に見つけることができる連続するアミノ酸である。
【0038】
本発明の好ましい化合物はペプチドであって、
Aが、アミノ酸WNR(配列番号:7)、RAR(配列番号:8)、LMR(配列番号:9)、LIR(配列番号:10)、EIIKT(配列番号:11)、またはEIIGI(配列番号:12)に対応し、
Bが、アミノ酸EIIKT(配列番号:11)、EIIGI(配列番号:12)、ELIEELVNIT(配列番号:13)、ELIEELSNIT(配列番号:14)、RLDRNLWG(配列番号:15)、またはRLFRAFRC(配列番号:16)に対応し、
Cが、アミノ酸KTIMREKY(配列番号:17)、FVKDLLLHLKK(配列番号:18)、RAATVLRQFYS(配列番号:19)、KSIMQMDY(配列番号:20)、FITKLISYTKQ(配列番号:21)、またはRASKVLRIFYL(配列番号:22)に対応するペプチドまたは1つの位置において異なるアミノ酸を有するその変異体であり、当該ペプチドまたはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することができる。
【0039】
本発明による変異体は、αA、αB、αCおよびαDヘリックス領域の選択された配列と少なくとも70%のポジティブアミノ酸一致、71~80%のポジティブアミノ酸一致、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%ポジティブアミノ酸一致、例えば、αA、αB、αCおよびαDヘリックス領域の選択された配列と91~99%のポジティブアミノ酸一致を有するアミノ酸配列を含み得る。ポジティブアミノ酸一致は、2つの比較された同一の物理的、生物学的および/または化学的特性を有するアミノ酸残留物の配列にて同ジ位置に存在することと定義される。置換として使用することのできる好適なポジティブアミノ酸一致は、KからR、EからD、LからM、QからE、IからV、IからL、AからS、YからW、KからQ、SからT、NからSおよびQからRである。本発明のペプチド、または変異体は、本明細書に記載される軸索伸展アッセイによって測定することのできる軸索伸展する能力を有することが必要である。
【0040】
本発明によるペプチドまたは変異体は、ホスホリル、硫黄、アセチルまたはグリコシル部分など他の化学部分も含み得る。従って、示されたペプチド配列は、例えば、1つ以上のアミノ酸残留物の追加、削除、置換または化学修飾によって修飾され得る。そのような修飾には、L-アミノ酸およびD-アミノ酸の両方が使用され得る。可能な化学修飾には糖類または例えば、メチル、またはアセチルエステルエステルなどの誘導体またはポリエチレングリコール修飾を含み得る。さらに、ペプチドのアミン基は、脂肪酸を含むアミドに転化され得る。本発明のペプチドまたは変異体はまた、ビオチンのC末端でビオチンによって、またはHisタグのN末端でHisタグによっても修飾することがでる。
【0041】
本発明によると、アミノ酸配列の変異体は、お互いに独立している、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含み得、ここで、(i)前記変異体の少なくとも1つのグリシン(Gly)は、Ala、Val、Leuおよびlieからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(ii)前記変異体の少なくとも1つのアラニン(Ala)は、Gly、Val、Leuからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(iii)前記変異体の少なくとも1つのバリン(Val)は、Gly,Ala,Leuおよびlieからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(iv)前記変異体の少なくとも1つのロイシン(Leu)は、Gly,Ala,Valおよびlieからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(v)前記変異体の少なくとも1つのイソロイシン(lie)は、Gly,Ala,ValおよびLeuからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(vi)前記変異体の少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)は、Glu、AsnおよびGinからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(vii)前記変異体の少なくとも1つのアスパラギン(Asn)は、Asp、GluおよびGinからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(viii)前記変異体の少なくとも1つのグルタミン(Gin)は、Asp、GluおよびAsnからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(ix)前記変異体の少なくとも1つのフェニルアラニン(Phe)は、Tyr、Trp、His、Proからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸、好ましくは、TyrおよびTrpからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(ix)前記変異体の少なくとも1つのチロシン(Tyr)は、Phe,Trp,His,Proからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸、好ましくは、PheおよびTrpからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(xi)前記変異体の少なくとも1つのアルギニン(Arg)は、LysおよびHisからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(xii)前記変異体の少なくとも1つのリジン(Lys)は、ArgおよびHisからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(xiii)前記変異体の少なくとも1つのプロリン(Pro)は、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gin、Ser、ThrおよびTyrからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される、
(xiv)前記変異体の少なくとも1つのシステイン(Cys)は、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gin、Ser、ThrおよびTyrからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸と置換される。
【0042】
上記に従って、ペプチドの同じ変異体、またはその断片は、本明細書の上述で定義される1つ超の保存的アミノ酸類から1つ超の保存的、または相同アミノ酸置換を含む。
【0043】
保存的アミノ酸置換は、本発明のペプチドまたは変異体の任意の位置に導入され得る。しかし非保存的置換を導入すること、特に1つ以上の位置での非保存的置換も所望され得るが、これに限定されない。アミノ酸の置換は、疎水性および親水性値ならびにサイズおよび電荷などのアミノ酸側鎖の相対的類似性に基づいてなされ得る。
保存的アミノ酸類は、好ましくは、以下のそれらの既知の化学特性によるものである:
(i)A、G;(ii)Q、N、S、T;(iii)E、D;(iv)Q、N、S、T;(v)H、K、R;(vi)L、P、I、V、M、F、Y、W
【0044】
本発明の好ましいペプチドは、ヒトIL-4から誘導され、
Aが、アミノ酸WNR(配列番号:7)に対応し、
Bが、アミノ酸EIIKT(配列番号:11)に対応し、
Cが、アミノ酸KTIMREKY(配列番号:17)に対応するペプチド、または1つの位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチドは神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。
【0045】
本発明の好ましいペプチドは、ヒトIL-13から誘導され、
Aが、アミノ酸LMR(配列番号:9)に対応し、
Bが、アミノ酸ELIEELVNIT(配列番号:13)に対応し、
Cが、アミノ酸FVKDLLLHLKK(配列番号:18)に対応するペプチド、または、1つの位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチド、またはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。
【0046】
本発明の好ましいペプチドは、IL-4誘導体であり、
Aが、アミノ酸EIIKT(配列番号:11)に対応し、
Bが、アミノ酸RLDRNLWG(配列番号:15)に対応し、
Cが、アミノ酸RAATVLRQFYS(配列番号:19)に対応するペプチド、または1つの位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチドまたはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。
【0047】
本発明のペプチドの生物活性は、IL-4R1型または2型に結合するペプチドの能力によって定義され、本発明のペプチド、または変異体の結合は所望の神経保護のおよび神経再生効果をもたらす。これらの生物効果は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)などインビトロもしくはインビボモデルシステムまたは多発性硬化症(MS)の他のマウスモデルによって測定することができる。さらに、本発明のペプチド、または変異体の生物活性は皮質の成長アッセイ、または本明細書に記載されるH9細胞の成長アッセイによって測定することができる。
【0048】
上記の式を含む化合物のアミノ酸伸長物A、B、Cを結合するために、リンカー配列が使用され、好ましくは、1つ以上のアミノ酸からなる、好ましくは、1~10、より好ましくは、1~5のアミノ酸からなるリンカーである。上記の式にて第1のリンカー配列がAおよびBのアミノ酸を結合し、第2のリンカー配列がBおよびCのアミノ酸を結合する。好ましくは、第1のリンカー配列(L1)および/または第2のリンカー配列(L2)はS、GS、SGS、P、GPまたはPGPに対応する。当業者にとっては他のアミノ酸、またはリンカーもIL-4およびIL-13のヘリックス領域から誘導されるアミノ酸伸長物を結合するために使用することができることが明らかである。本目的に好適なあらゆるリンカーが本発明の定義の範囲内となる。リンカーは、選択されたアルファヘリックス領域を互いに結合するのに、かつ受容体結合領域の3-D構造を模倣するのに必要である。
【0049】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、アミノ酸配列WNRSEIIKTGSKTIMREKY(配列番号:1)を有するヒトIL-4誘導体、または1つ以上の位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチド、またはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。このペプチドは1つ以上のアミノ酸からなる第1のおよび第2のリンカー酸配列によって一緒にリンクされた、αC、αAおよびαDヘリックス領域から構成される。
【0050】
代替的実施形態において、本発明のペプチドは、アミノ酸配列LMRSELIEELVNITGSFVKDLLLHLKK(配列番号:2)を有するヒトIL-13誘導体、または1つ以上の位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチド、またはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。このペプチドは1つ以上のアミノ酸からなる第1のおよび第2のリンカー酸配列によって一緒にリンクされた、αC、αAおよびαDヘリックス領域から構成される。
【0051】
代替的実施形態において、本発明のペプチドは、アミノ酸配列EIIKTGSRLDRNLWGSGSRAATVLRQFYS(配列番号:3)を有するヒトIL-4誘導体、または1つ以上の位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチド、またはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。このペプチドは1つ以上のアミノ酸からなる第1のおよび第2のリンカー酸配列によって一緒にリンクされた、αA、αCおよびαBヘリックス領域から構成される。
【0052】
代替的実施形態において、本発明のペプチドは、アミノ酸配列RARSEIIGIGSKSIMQMDY(配列番号:4)を有するマウスIL-4誘導体、または1つ以上の位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチド、またはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。このペプチドは1つ以上のアミノ酸からなる第1のおよび第2のリンカー酸配列によって一緒にリンクされた、αC、αAおよびαDヘリックス領域から構成される。
【0053】
代替的実施形態において、本発明のペプチドはアミノ酸配列LIRSELIEELSNITGSFITKLLSYTKQ(配列番号:5)を有するマウスIL-13誘導体、または1つ以上の位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチド、またはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。このペプチドは1つ以上のアミノ酸からなる第1のおよび第2のリンカー酸配列によって一緒にリンクされた、αC、αAおよびαDヘリックス領域から構成される。
【0054】
代替的実施形態において、本発明のペプチドはアミノ酸配列EIIGIGPRLFRAFRCSGSRASKVLRIFYL(配列番号:6)を有するマウスIL-4誘導体、または1つ以上の位置で異なるアミノ酸を有するその変異体であり、前記ペプチド、またはその変異体は神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能である。このペプチドは1つ以上のアミノ酸からなる第1のおよび第2のリンカー酸配列によって一緒にリンクされた、αA、αCおよびαBヘリックス領域から構成される。
【0055】
本発明のIL-4およびIL-13誘導体はIL-4と同様に神経細胞上で作用することができるが、リンパ球集団、または骨髄系細胞に影響する副作用がない(図4)。特に、軸索形態へのインビボ作用が分析されており、軸索膨張の数の減少が確認されている。IL-4およびIL-13誘導体は、全長IL-4と同じ方法で神経突起伸長を増加させることができる(図5)。本発明者らによって実施された実験において増加した結果は、IL-4および/またはIL-13誘導体ペプチドが、免疫細胞に影響を与えずに神経突起伸長再生を刺激することが可能であることを示唆する。本発明の誘導体ペプチドの生物活性は、構造的特徴および共通結合原理による可能性が高く、生物活性は、免疫システムに影響を与えずに神経細胞の軸索伸展を刺激することが可能であると定義される。本発明によって、IL-4誘導体は有毒ではなく、EAEモデルで示されるようにインビボで自己免疫性脳脊髄炎に有益作用を示すこともまた示された。化合物はまた、軸索成長および神経細胞のシグナルにおいて有益作用、炎症細胞においては最小限の作用のみを有することも示している。本明細書で示す通り、本発明のIL-4誘導体は、天然IL-4と同様の臨床結果の有意な改善を導いた。本発明の全てのIL-4およびIL-13誘導体がIL-4Rに結合する共通の能力を有し、IL-4R-アゴニストとしての役割を例証している。
【0056】
従って、本発明は、少なくとも1つの本発明の化合物を含む医薬組成物、および薬学的に好適な担体、ビヒクルまたは薬品も含包する。好ましくは、そのような担体、ビヒクルまたは薬品は薬学的有効成分の投与、例えば鼻腔粘膜を介する経粘膜投与などにおいて好適である。医薬組成物に使用されるビヒクルは、溶媒、共溶媒、賦活薬、pH緩衝剤、抗酸化薬、添加剤等を含み得る。ビヒクルの様々な成分は非毒性であり、総組成物の他の成分と有害な方法で相互作用することが無い。
【0057】
好ましくは、本発明の化合物は、医薬組成物中に療治効果的な量、すなわち、非毒性であるが、所望の治療効果を提供する薬または活性剤として作用するのに十分な濃度で医薬組成物中に含まれる。例えば、1回以上の本発明の化合物の量が、神経炎症もしくは神経変性疾患、または神経障害もしくは外傷性神経系損傷の治療に有効である。本発明の化合物は、T-細胞、または骨髄系細胞に影響を与えることなく神経細胞に作用する。
【0058】
本明細書に記載されるインビトロおよびインビボデータによって例証されるように、本発明の化合物は、神経炎症、または神経変性疾患の治療または予防での使用に好適である。好ましい神経炎症または神経変性疾患には、全ての形の多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、パーキンソン病、アルツハイマー病または他の形の痴呆症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびハンチントン舞踏病が含まれる。
【0059】
本発明の化合物は、神経障害または外傷性神経系損傷の治療または予防での使用にも好適である。好ましい神経障害は、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーおよび糖尿病性神経障害である。
【0060】
好ましい外傷性神経系損傷は、脊髄損傷、外傷性脳損傷、発作、末梢神経損傷である。
【0061】
医薬適用性は、腰椎穿刺(髄腔内注射)、鼻腔塗布および全身性注入によって本明細書で例証される。
【0062】
本発明は、以下の実施例にてさらに例証される:
IL-4誘導体およびIL-13誘導体のデザイン
【0063】
本発明のIL-4誘導体およびIL-13誘導体は、A-L1-B-L2-Cの順序の構造によって定義される化合物である。発明者らは、ヒトおよびマウスのIL-4の異なるαヘリックス領域から誘導されたもので、上の構造に従って組成された、様々なIL-4誘導体を試験した。これらの新しく生成されたIL-4誘導体は、「Link4」および「AvoC」と本明細書では名づけられる。
【0064】
発明者らは、ヒトおよびマウスのIL-13の異なるαヘリックス領域から誘導されたもので、上の構造に従って組成された、様々なIL-13誘導体を試験した。これらの新しく生成されたIL13誘導体は、「Link13」と本明細書では名づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1では、誘導体Link4およびLink13のデザインが記載される。IL-4およびIL-4受容体の既知の3-D構造に基づいて、発明者らはIL-4Rに結合するのに必要となるアミノ酸伸長物を組み合わせた。次に発明者らは、どのaA~aDヘリックスの組合せを作成するかを決定するためにIL-4たんぱく質の表面上にどのアミノ酸が位置していたかを特定した。αCヘリックスの一部分が方向転換し、1つの連結アミノ酸と共に、2つの連結アミノ酸と共にαDヘリックスの一部分に結合されたαAヘリックスの一部分に接続していた。受容体結合アミノ酸が同定されかつ結合され、共受容体鎖が互いに連結したIL-4およびIL-13誘導体を得た。IL-4およびIL-13の誘導体が、IL-4およびIL-13の配列同族関係に基づいて同様の方法でデザインされた。IL-4誘導体AvoCが、他のIL-4がIL-4の受容体に結合する原理に基づいてデザインされた。IL-4の結合配列は、コアが疎水性残基によって囲まれたアボカドクラスタと呼ばれるものによって同定された(T.D.Mueller,J.L.Zhang,W.Sebald,A.Duschl,“Structure,binding and antagonists in the IL-4/IL-13 receptor system”,Biochimica Biophysics Acta,2002,Vol.1592,p.237-250)。アミノ酸の伸長物はIL-4の表面構造を模倣する形で配置された。この誘導体もまた、αAヘリックスから誘導された配列は両方の受容体鎖に結合するため、2つの受容体鎖を連結しそうである。図1Aは、α-ヘリックスαA,αB,αC,αDおよびβ-リンカーの位置と整列された、ヒトIL-4(配列番号:23)およびマウスIL-4(配列番号:24)のアミノ酸配列を示す。黒の矢印ヘッドはIL-4Rα鎖への結合位置を示し、グレーの矢印ヘッドは、IL-13Rα1または共通γ-鎖のいずれかの双対鎖への結合位置を指している。太字のアミノ酸は図1Bおよび1Cに示されるように本発明のIL-4誘導体の構築に使用されるアミノ酸である。図1Bは、IL-4誘導体Link4を示し、αC、αAおよびαDヘリックス領域からの選択されたアミノ酸が太字で示される。図1Cは、IL-4誘導体AvoCを示し、αA、αCおよびαBヘリックス領域からの選択されたアミノ酸が太字で示される。図1Dは、α-ヘリックスαA,αB、αC、αDを含む、ヒトIL-13(配列番号:25)およびマウスIL-13(配列番号:26)の整列されたアミノ酸配列を示す。本発明のIL-13誘導体Link13をデザインするために使用されるアミノ酸が示される。図1Eは、IL-13誘導体Link13を示し、αC、αAおよびαDヘリックス領域からの選択されたアミノ酸が太字で示される。図1Fは、本発明のマウスおよびヒトIL-4およびIL-13誘導体の配列類似性を示す。全長IL-4は、マウスおよびヒト変異体間でおおよそ40%のみの同族関係を有し、マウスおよびヒトLink4は68.4%の類似性を共有し、AvoCは61%、Link13は81%の類似性を共有する。
図2図2は、マウス胎仔線維芽細胞(Mef)(図2A)および海馬神経細胞(HT22)(図2B)についての毒性アッセイを示す。有毒はマウス胎仔線維芽細胞(Mef)および海馬細胞株HT22をCellTiter-blueアッセイ(ctb)に供することで確認する。濃度を高めた状態で適用したLink4およびAvoCは、線維芽細胞(図2A)、または海馬神経細胞(図2B)に有毒効果は無かった。
図3図3は、IL-4誘導体Link4のインビボ効果を示す。腰部(A)髄腔内注射、または(B)鼻腔塗布を介したEAE(グレーバー)の慢性期中のマウスの治療は、高い病気レベルのままであるPBS対照と比較して、IL-4およびLink4治療動物の臨床スコアにて有意な改善を示した。Ph8ペプチドによる腰部治療では疾病経過の効果が無かったことも示される。Link4が、IL-4インビボでも同様の効果を有するのかどうかを試験するために、2つのパイロット実験が実行された。第1の実験(図3A)では、BI6マウスがEAEに供され、第1の病気ピーク後5日目から始まる病気の慢性期中に、IL-4、Link4、Ph8およびPBS(n=各グループ6~7動物)によって14日、1日おきに腰部髄腔内注射を直接脳脊髄液(CSF)にすることによって治療される。Link4による治療は、IL-4と同様に臨床スコアの有意な改善をもたらし、一方で既知の部分アゴニストPh8は臨床症状を改善しなかった。より臨床を解釈するために、次に治療をIL-4およびLink4(図3B;2プールされた実験,n=各グループ15~16)による鼻腔治療に切り替えた。鼻腔に塗布する治療は、嗅覚神経繊維が骨を通って横切る篩板を通って脳に入ることができ、結果的に鼻腔の頂部と脳の間を接続する(C.F.Xiao,F.J.Davis,B.C.Chauhan,K.L.Viola P.N.Lacor,P.T.Velasco,W.L.Klein,and N.B.Chauhan,Brain transit and ameliorative effects of intranasally delivered anti-amyloid-beta oligomer antibody in 5XFAD mice.J Alzheimers Dis 35,777-788(2013))。またしても、IL-4およびLink4治療の両方が有効であった。
図4図4は、免疫システムにおける本発明のIL-4およびIL-13誘導体の効果を示す。A-B:A:CD11b骨髄由来マクロファージ(BMDM)をF80CD206細胞へ分化したものおよびB:CD4T細胞をGata3細胞に分化したものにおける、IL-4並びに異なる濃度のLink4およびLink13によるインキュベーションの効果。C-D:PBS、IL-4、またはLink4で治療されたEAEマウスの、T細胞並びにC:脾臓およびD:中枢神経系(CNS)から単離された免疫細胞のCD11bMHOIG単球/マクロファージ/ミクログリアの異なる集団についてのFACS結果。Link4およびLink13が免疫細胞を変化させることができるかどうかを調査するために、インビトロアッセイを骨髄由来マクロファージ(BDMB)および天然T細胞にて実行した。IL-4によるBDMBの治療は、CD11bBMDM上の分化マーカーF80およびCD206の発現を増加させた。この分化は、Link4またはLink13への反応としては起こらなかった(図4A)。IL-4で観察した予期していたGata3CD4T細胞への分化は、細胞がLink4、またはLinkl3でインキュベートされた場合には、またしても起こらなかった(図4B)。IL-4よりのも高い濃度ではリンク類似体が必要であることを否定するために、増加させた量でアッセイを実行したが、結果は同じであった。続いて、図3Bと同様に、鼻腔内に塗布した場合の免疫細胞におけるIL-4およびLink4の効果を分析した。鼻腔塗布治療は末梢(肺、血流)に侵入することができるため、物質が脾臓内のリンパ球集団に影響を与えるかどうかを確認することが最も重要であった。Link4についてCD8細胞傷害性T-細胞に減少が見つかったのに対し、全てのlCD4Tヘルパー細胞型が未変化であった。単球/マクロファージのCD11b+MHCII+集団もまた変化がなかった。脳および脊髄(CNS、中枢神経系としてまとめる)に侵入するリンパ球の集団について、IL-10細胞で有意な増加のみが観察された。
図5図5は、神経細胞における本発明のIL-4およびIL-13誘導体の効果を示す。A:PBS対照と比較した、50ng/mlのIL-4、Link4、またはLinkl3を受けた皮質の伸展。48時間での成長の増加を、24時間での基本的な(未治療)成長で割って計算した。B:解離皮質ニューロンをIL-4、Link4、またはPBSにて10分治療した後のシグナル伝達分子のリン酸化における効果。Link4は、IL-4と同様の神経細胞のシグナル効果を示した。
図6図6は、マウスEAEモデルにおいて臨床症状を減少するのに、ヒトLink4はマウスLink4と等しく有効であることを示す。発明者らは、EAE実験を実行し、マウスにおける症状の減少に、ヒトLink4が、マウスLink4およびマウス全長IL-4と等しく有効であることを観察した。これらの結果は、本発明の誘導体は複数の種に渡って使用することができることを示している。腰部注射を介したEAE(グレーバー)の慢性期中のマウスの治療は、臨床スコアにて有意な改善を示した。
図7図7は、マウスおよびヒトにおいて、Link4の神経再生作用を示し、A:病気の慢性期中におけるEAEマウスの脊髄での皮質脊髄路軸索の組織学的解析。マウスLink4は軸索膨張の数をかなり減らした。B:ヒトH9細胞-由来神経細胞におけるヒトLink4誘発神経突起伸長。ヒト神経細胞は、市販されるヒト神経幹細胞(H9細胞)と一緒に培養され、次に分化され神経細胞になる。ヒトLink4は、全長IL-4と同じ方法でこれらの細胞の神経突起伸長を増加させることができる。本明細書に記載されるヒトH9細胞の成長アッセイは、ヒト神経細胞における本発明の誘導体ペプチドの有効性を簡単に検知するのに使用することができる。特に、このアッセイは、本発明の範囲内に入る誘導体ペプチドが機能的かどうかを手早く試験するために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
材料および方法
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)
活性EAEとして、週齢9~10のメスC57BI6マウスを、完全フロイントアジュバント(CFA)と混合した200μgミエリンオリゴデンドロサイトたんぱく質35~55(MOG35~55)を皮下注射することによって、前述のように免疫化する(M.Paterka,J.O.Voss,J.Werr,E.Reuter,S.Franck,T.Leuenberger,J.Herz,H.Radbruch,T.Bopp,V.Siffrin,and F.Zipp,Dendritic cells tip the balance towards induction of regulatory T cells upon priming in experimental autoimmune encephalomyelitis.J Autoimmun 67,108-1 14(2017))。MOG35~55免疫化の後、400ngの百日咳毒素(PTX)を、免疫化した日および24時間後に腹腔内に投与した。以下のパラメータを使用して臨床症状のスコアを付けた。
【0067】
【表1】
【0068】
rlL-4(1μg、Peprotech)、Ph8(1μg、カスタム合成、SchaferN)、Link4(1μg,カスタム合成,SchaferN)またはビヒクル(PBS)による治療を病気モデルの慢性期中に、腰部髄腔内注射によって実行(R.Lu and A.Schmidtko,Direct intrathecal drug delivery in mice for detecting in vivo effects of cGMP on pain processing.MethodsMolBiol1020,215-221(2013))、またはIL-4およびLink4の鼻腔塗布を掲載される手順に従って実行した(C.F.Xiao,F.J.Davis,B.C.Chauhan,K.L.Viola,P.N.Lacor,P.T.Velasco,W.L.Klein,and N.B.Chauhan,Brain transit and ameliorative effects of intranasally delivered anti-amyloid-beta oligomer antibody in 5XFAD mice.J Alzheimers Dis 35,777-788(2013))。マウスはストレスを避けるために事前にトレーニングされ、45度の角度で支えIL-4溶液(1μg、Peprotech)を、ピペットチップを使用して鼻腔に塗布した。
【0069】
軸索膨張アッセイ
EAE実験を、皮質脊髄神経細に胞黄色蛍光タンパク質を発現するYFP-HマウスをMOG35-55で免疫化することにより実行した。上述されるように、マウスをIL-4、またはPBSで治療した。治療最終日に、麻酔を過量投与して犠牲にし、4%のパラホルムアルデヒドで経心腔的灌流をした。脊髄を解剖し、さらに凍結切片を進めた。YFP-ラベルされた皮質脊髄路軸索をKeyenceBZ-9000顕微鏡を使用して撮影した。軸索膨張を定量化するために、染色されたピクセルが強調されるようImageJに閾値を設定した。ImageJプラグイン「粒子解析」を使用して閾値膨張を数えた。
【0070】
フローサイトメトリー(FACS)
CNSおよび脾臓をEAEマウスから取り除き、d35で、鼻腔からのIL-4、Link4、またはPBSにて治療し、免疫細胞を前述の通り単離した(M.Paterka,J.O.Voss,J.Werr,E.Reuter,S.Franck,T.Leuenberger,J.Herz,H.Radbruch,T.Bopp,V.Siffrin,and F.Zipp,Dendritic cells tip the balance towards induction of regulatory T cells upon priming in experimental autoimmune encephalomyelitis.J Autoimmun 67,108-1 14(2017))。T細胞のインビトロ刺激について、抗CD3(145-2C11)および抗CD28(37.51)を使用した。以下の抗体をBDFACSCanto II(BD Bioscience)を用いたフローサイトメトリーで使用した:抗CD4 PEcy7(RM4-5)、抗CD8 FITC(53-6.7)、抗CD3 APC(145-2c11)、抗CD11bbio(M1/70),抗MHCIIPE(AF6-120.1)、抗CD11bV450(HL311B)、抗CD45AF605(30-F11)、抗GM-CSFPE(MP1-22E9)、抗IL17APC(eBio17B7)、抗TNFaAF700(MP6-XT22)、抗IFN-yV450(XMG1.2)、抗GATA-3PE(TWAZ)、抗FOXP3PEcy7(FZK-16s)、抗IL-10APC(JES5-16E3)、抗CD4V450(RM4-5)。全ての抗体はeBioscienceまたはBiolegendから購入した。
【0071】
マウスのリンパ球(CD4CD62L)の単離
Tリンパ球の単離には、週齢5~8のC57BL/6マウスを頚椎脱臼により犠牲にし、脾臓およびリンパ節(LN)を単離し、洗浄溶媒(PBS中、5%FCS、1%P/S、1%HEPES)と一緒に50mlチューブへ100μmセルストレーナーから擦りこむ。洗浄後、細胞は4℃、550gで5分間遠心分離機にかけた。赤血球を除去するために、上澄部を溶解バッファー中で再懸濁し、続いて遠心分離にかけた(5分間、550g、4℃)。細胞を、MACSバッファー中で際懸濁し、MidiMACSおよびQuadroMACS Seperatorsを使用して、氷上で磁気リンパ球ソートを実行した。CD4未接触およびCD8接触細胞ソートを、mlMACSバッファー中(5分間、550g、4℃)で洗浄工程内で実行した。細胞を、4℃で5分間、CMACSバッファー中でCD4T細胞ビオチン抗体カクテル(Miltenyi Biotec)とインキュベートした。CD8リンパ球の汚染の可能性を低減させるためにCD8マイクロビーズを添加した。4℃で10分間インキュベートした後、細胞を再度洗浄しMACSバッファー中で際懸濁した。MACSカラムは予め平衡化され、プレ分離フィルタ(30μm)をかぶせた。最大300x10細胞を各カラムに添加し、続いてMACSバッファー中で洗浄工程を3回連続行った。CD3CD4CD8濃縮フロースルーを次のCD62L接触ソートのために回収した。遠心分離(5分間、550g、4℃)後、MACSバッファー中のCD62Lマイクロビーズを細胞に添加し、4℃で15分間インキュベートした。洗浄後、細胞をMACSバッファー中で再懸濁し、新しいカラムに装填した。ポジティブラベルのCD4CD62L細胞を、カラム内濃縮し、MACSバッファー中に回収した。磁気細胞ソートの純度を、フローサイトメトリーによって事前および事後試料を比較することによって評価する。細胞をCD4-Horizon(1:400)、CD3-APC(1:600)およびCD62L-APC(1:200)を用いて染色した。CD4細胞からのCD4CD62L純度は通常約>97%である。
【0072】
マウス抗原提示細胞(APC)の単離
抗原提示細胞を成体C57BL/6マウス脾臓の溶解およびMidiMACSおよびQuadroMACS Separatorsを用いた磁気免疫細胞ソートにより単離した。細胞懸濁液MACSバッファーで洗浄し、遠心分離した(5分、550g、4℃)。続いて、細胞を95mIMACSバッファーおよびCD90.2非接触マイクロビーズ中で再懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。MACSバッファーで洗浄および遠心分離(5分、550g、4℃)の後、細胞を、MACSバッファー中で再懸濁し、カラムに充填しMACSバッファー中に回収した。増殖サイクルを止めるために、精製したAPCを30Gy/3000radで照射した。
【0073】
2分化
最初の刺激として、24ウェルプレートの各ウェルに2mlマウス媒体(RPMIバッファー中0%FCS、1%P/S、1%L-グルタミン、0.1%b-メルカプトエタノール、1%HEPES)中600億個の細胞濃度にて、CD4CD62L細胞を、抗原提示細胞(APC)と共に1:5の比率で共培養した。非特異的なT細胞受容体の活性化のために、2μg/m抗CD3を培養液に添加した。T2細胞への分化のために、IL-4(10ng/ml)、α-IL-12(10μg/ml)およびα-IFN(10μg/ml)を添加した。3日および5日目に細胞が分割し、10μg/mlIL-2および10ng/mlIL-4を含有する新鮮な培地に蒔いた。7日目に、細胞を抗CD3/抗CD28で刺激し、分泌を防止するためにブレフェルジンで処理した。4時間のインキュベーションの後、異なるTリンパ球培養菌のサイトカイン確認を、細胞外染色にCD4-PECy7(1:1000)、細胞内染色にFc-receptor-block(1:100)およびIFN-g-Horizon(1:200)、TNFa-AF700(1:200)およびIL-10-APC(1:200)を使用してフローサイトメトリーによって実行した。T2細胞を核内Gata3-PE(1:100)のために追加的に染色した。
【0074】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)の生成
マウスのBMDMを、成体C57BL/6マウスから単離した。脛骨および大腿骨を無菌のPBSで流し、骨髄を洗浄溶媒中に回収した。細胞懸濁液を100μmナイロンメッシュで濾過した後、細胞を遠心分離し(5分、550g、4℃)、マウス溶媒(RPMIバッファー中、10%FCS、1%P/S、1%L-グルタミン、0.1%b-メルカプトエタノール、1%HEPES)中で再懸濁した。BMDMのインビトロ生成のために、細胞を6ウェルプレートに蒔き、20ng/mlのクロファージ刺激因子(M-CSF)に4日間曝した。細胞の活性化のために、デキサメタゾン(5x10M)、LPS(10μg/ml)およびIL-4(10ng/ml)を培養液に次の3日間添加した。
【0075】
CellTiter-blue細胞生存アッセイ(ctb)
マウス胎仔線維芽細胞(Mef)(Sigma-Aldrich)および海馬HT22(ThermoScientific)細胞を、メーカーのプロトコルに従って培養した。Ctbアッセイをメーカーのプロトコル(Promega)に従って実行した。
【0076】
皮質の成長アッセイおよび解離皮質ニューロン
新生児(P1-3)皮質外植片を、ブレグマ0~-1.5(運動皮質)からの250μm厚さのビブラトーム(HM650V、ThermoFisher)セクションから解離させた。表層Vを顕微解剖し、ポリ-D-リジン(0.5mg/ml)およびラミニン(1mg/ml)でコーティングされたカバーガラスに蒔き、2%ウマ血清、2%B27、1%glutamaxおよび0.5%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む神経細胞用基礎培地で成長させた。外植片をrlL-4(50ng/ml)、Link4(50ng/ml)、Link13(50ng/ml)またはPBSで48時間処理した。軸索長さを、Adobe Photoshopを使用して、初期成長24時間目で補正した40個の最長軸索の長さを測定することによって評価した。解離皮質ニューロンを前述の通り調製した(J.T.Walsh,S.Hendrix,F.Boato,I.Smirnov,J.Zheng,J.R.Lukens,S.Gadani,D.Hechler,G.Golz,K.Rosenberger,T.Kammertons,J.Vogt,C.Vogelaar,V.Siffrin,A.Radjavi,A.Fernandez-Castaneda,A.Gaultier,R.Gold,T.D.Kanneganti,R.Nitsch,F.Zipp,J.Kipnis,“MHCII-independent CD4+ T cells protect injured CNS neurons via IL-4”,J.Clin.Invest.,2015,Vol.125,p.699-714)。18日目のマウス胎児(E18)の皮質をトリプシン/DNase溶液と一緒にインキュベートし、粉砕して分離させた。細胞を、プレート培地(1xMEM-Glutamax、20%ぶどう糖、10%HS、1xPenStrep)中で再懸濁し、6ウェルプレートの各プレートに600,000個の細胞を濾過-殺菌した。蒔いてから5時間後、培地を吸引し、ウェルを温かいPBSで2回洗浄し、細胞をNB-培地で培養した。50ng/mlIL-4、50ng/mlLink4または相当量のPBSで処理する前に、培養液を3日間展開させた。10分後、細胞を溶解バッファーに採取し、ウエスタンブロット法にかけた。細胞培地試薬はFisher ScientificおよびSigmaから入手した。シグナル実験のために、細胞を0ng/mlIL-4(Peprotech)、または相当量のPBSと一緒に10分間インキュベートした。
【0077】
H9ヒト神経幹細胞用培地
H9ヒト神経幹細胞用培地(H9hNSC)をGibcoから購入し、メーカーの指示通りに展開した。連続的神経分化のために、hNSCを採取し、25.000細胞/cmの密度で、Matrigel(高濃度、低下した成長因子;コーニング;KnockoutDMEM[Gibco]中1:100に希釈)でコーティングされたカバーガラスに再び蒔いた。hNSCを、神経細胞用基礎培地(Neurobasal、1XB27、1XGlutamax、1XPenicillin/Streptomycin、全てGibcoから入手)で48時間休ませ、その後さらに4日間EnStem A Neural Differentiation Medium(SCM017,Millipore)に切り替えて休ませた。培養物を、50ng/mlまたは相当量のPBSで24時間組み換えヒトIL-4(Peprotech)、またはヒトLink4で処理した。固定された培養物を、βIII-チューブリン(clone Tuj1;BioLegend)のために免疫蛍光法で染色し、KeyenceBZ-X710オールインワン蛍光顕微鏡で撮像した。分析を、ImageJのSimple Neurite Trackerプラグインを使用して、各条件につき少なくとも5つの画像から最長の神経炎拡張をトラッキングすることにより盲検法で実施した。
【0078】
ウエスタンブロット法
ウエスタンブロット法について、次の一次抗体を使用した:抗IRS1(EMD Millipore)、抗リン酸化IRS1(Cell Signaling Technology)、抗MAPKおよび抗リン酸化MAPK(Cell Signaling Technology)、抗PKCy(Santa-Cruz)、抗リン酸化PKCy(Biozol)。Li-Cor Odyssey FC imaging system(Li-CorBioscience)を使用したたんぱく質の定量分析のためにDyLight 800/600-結合二次抗体を使用した。リン酸抗体でプローブしたブロットは視覚化した後剥がされ、同じ試料のパラレル検出のために全抗体と一緒にインキュベーションした。
【0079】
統計分析
統計分析をGraphpad Prism 5(Graph Pad Software Inc)を使用して実施した。臨床スコアを、二元配置反復測定分散分析(Two Way Repeated Measures ANOVA)を使用し、事後のボンフェローニ調整を行い分析した。インビトロ分析およびウエスタンブロット法によって取得したデータを、独立t検定または多重検定のためにTukey検定を用いた一元配置分散分析(One Way ANOVA)にかけた。
【0080】
ヒト(hu)およびマウス(mu) Link4、Link13、AvoCのアミノ酸配列
IL-4およびIL-13誘導体として以下のアミノ酸配列が決定された:
huLink4 (配列番号 1):
Trp Asn Arg Ser Glu lie lie Lys Thr Gly Ser Lys Thr lie Met Arg Glu Lys Tyr
hul_ink13 (配列番号 2):
Leu Met Arg Ser Glu Leu lie Glu Glu Leu Val Asn lie Thr Gly Ser Phe Val Lys Asp Leu Leu Leu His Leu Lys Lys
huAvoC (配列番号 3):
Glu lie lie Lys Thr Gly Ser Arg Leu Asp Arg Asn Leu T rp Gly Ser Gly Ser Arg Ala Ala Thr Val Leu Arg Gin Phe Tyr Ser
muLink4 (配列番号 4):
Arg Ala Arg Ser Glu lie lie Gly lie Gly Ser Lys Ser lie Met Gin
muLink13 (配列番号 5):
Leu lie Arg Ser Glu Leu lie Glu Glu Leu Ser Asn lie Thr Gly Ser Phe lie Thr Lys Leu Leu Ser Tyr Thr Lys Gin
muAvoC (配列番号 6):
Glu lie lie Gly lie Gly Pro Arg Leu Phe Arg Ala Phe Arg Cys Ser Gly Ser Arg Ala Ser Lys Val Leu Arg lie Phe Tyr Leu
SEQUENCE LISTING
<110> Universitatsmedi zin der Johannes Gutenberg-Universitat Mainz
<120> Novel IL-4-/IL-13-derived peptide compounds for the treatment or
prevention of neurodegenerative or neuroinflammatory diseases
<130> LINK4
<160> 27
<170> Patentln version 3.5
<210> 1
<211> 19
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 1
Trp Asn Arg Ser Glu lie lie Lys Thr Gly Ser Lys Thr lie Met Arg 1 5 10 15
Glu Lys Tyr
<210> 2
<211> 27
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 2
Leu Met Arg Ser Glu Leu lie Glu Glu Leu Val Asn lie Thr Gly Ser 1 5 10 15
Phe Val Lys Asp Leu Leu Leu His Leu Lys Lys
20 25
<210> 3
<211> 29
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 3
Glu lie lie Lys Thr Gly Ser Arg Leu Asp Arg Asn Leu Trp Gly Ser 1 5 10 15
Gly Ser Arg Ala Ala Thr Val Leu Arg Gin Phe Tyr Ser
20 25
<210> 4
<211> 19
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 4
Arg Ala Arg Ser Glu lie lie Gly lie Gly Ser Lys Ser lie Met Gin 1 5 10 15
Met Asp Tyr
<210> 5
<211> 27
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 5
Leu lie Arg Ser Glu Leu lie Glu Glu Leu Ser Asn lie Thr Gly Ser 1 5 10 15
Phe lie Thr Lys Leu Leu Ser Tyr Thr Lys Gin
20 25
<210> 6
<211> 29
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 6
Glu lie lie Gly lie Gly Pro Arg Leu Phe Arg Ala Phe Arg Cys Ser 1 5 10 15
Gly Ser Arg Ala Ser Lys Val Leu Arg lie Phe Tyr Leu
20 25
<210> 7
<211> 3
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 7
Trp Asn Arg

<210> 8
<211> 3
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 8
Arg Ala Arg

<210> 9
<211> 3
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 9
Leu Met Arg

<210> 10
<211> 3
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 10
Leu lie Arg

<210> 11
<211> 5
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 11
Glu lie lie Lys Thr
1 5
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<211> 5
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 12
Glu lie lie Gly lie
1 5
<210> 13
<211> 10
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 13
Glu Leu lie Glu Glu Leu Val Asn lie Thr 1 5 10 <210> 14
<211> 10
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 14
Glu Leu lie Glu Glu Leu Ser Asn lie Thr 1 5 10
<210> 15
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 15
Arg Leu Asp Arg Asn Leu Trp Gly
1 5
<210> 16
<211> 8
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 16
Arg Leu Phe Arg Ala Phe Arg Cys
1 5
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<211> 8
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 17
Lys Thr lie Met Arg Glu Lys Tyr
1 5
<210> 18
<211> 11
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 18
Phe Val Lys Asp Leu Leu Leu His Leu Lys Lys 1 5 10
<210> 19
<211> 11
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 19
Arg Ala Ala Thr Val Leu Arg Gin Phe Tyr Ser
1 5 10
<210> 20
<211> 8
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 20
Lys Ser lie Met Gin Met Asp Tyr
1 5
<210> 21
<211> 11
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 21
Phe lie Thr Lys Leu lie Ser Tyr Thr Lys Gin
1 5 10
<210> 22
<211> 11
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 22
Arg Ala Ser Lys Val Leu Arg lie Phe Tyr Leu
1 5 10
<210> 23
<211> 120
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 23
lie Thr Leu Gin Glu lie lie Lys Thr Leu Asn Ser Leu Thr Glu Gin 1 5 10 15
Lys Thr Leu Cys Thr Glu Leu Thr Val Thr Asp lie Phe Ala Ala Ser
20 25 30
Lys Asn Thr Thr Glu Lys Glu Thr Phe Cys Arg Ala Ala Thr Val Leu
35 40 45
Arg Gin Phe Tyr Ser His His Glu Lys Asp Thr Arg Cys Leu Gly Ala 50 55 60
Thr Ala Gin Gin Phe His Arg His Lys Gin Leu lie Arg Phe Leu Lys 65 70 75 80
Arg Leu Asp Arg Asn Leu Trp Gly Leu Ala Gly Leu Asn Ser Cys Pro
85 90 95
Val Lys Glu Ala Asn Gin Ser Thr Leu Glu Asn Phe Leu Glu Arg Leu
100 105 110
Lys Thr lie Met Arg Glu Lys Tyr
115 120
<210> 24
<211> 113
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 24
Lys Asn His Leu Arg Glu lie lie Gly lie Leu Asn Glu Val Thr Gly 1 5 10 15
Glu Gly Thr Pro Cys Thr Glu Met Asp Val Pro Asn Val Leu Thr Ala
20 25 30
Thr Lys Asn Thr Thr Glu Ser Glu Leu Val Cys Arg Ala Ser Lys Val
35 40 45
Leu Arg lie Phe Tyr Leu Lys His Gly Lys Thr Pro Cys Leu Lys Lys 50 55 60
Asn Ser Ser Val Leu Met Glu Leu Gin Arg Leu Phe Arg Ala Phe Arg 65 70 75 80
Cys Leu Asp Ser Ser lie Ser Cys Thr Met Asn Glu Ser Lys Ser Thr
85 90 95
Ser Leu Lys Asp Phe Leu Glu Ser Leu Lys Ser lie Met Gin Met Asp
100 105 110
Tyr
<210> 25
<211> 106
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 25
Thr Ala Leu Arg Glu Leu lie Glu Glu Leu Val Asn lie Thr Gin Asn 1 5 10 15
Gin Lys Ala Pro Leu Cys Asn Gly Ser Met Val Trp Ser lie Asn Leu
20 25 30
Thr Ala Gly Met Tyr Cys Ala Ala Leu Glu Ser Leu lie Asn Val Ser
35 40 45
Gly Cys Ser Ala lie Glu Lys Thr Gin Arg Met Leu Ser Gly Phe Cys 50 55 60
Pro His Lys Val Ser Ala Gly Gin Phe Ser Ser Leu His Val Arg Asp 65 70 75 80
Thr Lys lie Glu Val Ala Gin Phe Val Lys Asp Leu Leu Leu His Leu
85 90 95
Lys Lys Leu Phe Arg Glu Gly Arg Phe Asn
100 105
<210> 26
<211> 102
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 26
Pro Leu Thr Leu Lys Glu Leu lie Glu Glu Leu Ser Asn lie Thr Gin 1 5 10 15
Asp Gin Thr Pro Leu Cys Asn Gly Ser Met Val Trp Ser Val Asp Leu
20 25 30
Ala Ala Gly Gly Phe Cys Val Ala Leu Asp Ser Leu Thr Asn lie Ser
35 40 45
Asn Cys Asn Ala lie Tyr Arg Thr Gin Arg lie Leu His Gly Leu Cys 50 55 60
Asn Arg Lys Ala Pro Thr Thr Val Ser Ser Leu Pro Asp Thr Lys lie 65 70 75 80
Glu Val Ala His Phe lie Thr Lys Leu Leu Ser Tyr Thr Lys Gin Leu 85 90 95
Phe Arg His Gly Pro Phe
100
<210> 27
<211> 16
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 27
Ala Gin Phe His Arg His Lys Gin Leu lie Arg Phe Leu Lys Arg Ala 1 5 10 15
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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