IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オンクオリティー ファーマシューティカルズ チャイナ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】腫瘍療法の副作用の予防または治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/21 20060101AFI20240716BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61K31/21
A61P17/00
A61K39/395 N
A61K31/44
A61K31/47
A61K31/506
A61K31/444
A61K31/4439
A61K31/496
A61K31/404
A61K31/454
A61K31/517
A61K31/53
A61K31/502
A61K31/416
A61K38/17
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020558446
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2019082623
(87)【国際公開番号】W WO2019201195
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】201810339975.5
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520401952
【氏名又は名称】オンクオリティー ファーマシューティカルズ チャイナ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シーイー
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ジャオユー
(72)【発明者】
【氏名】リュー、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、リナン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、レイイン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ジェ
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/160628(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/037095(WO,A2)
【文献】Kruzliak, P. et al.,Therapeutic potential of nitric oxide donors in the prevention and treatment of angiogenesis-inhibitor-induced hypertension,Angiogenesis,2013年,Vol.16, No.2,p.289-295,doi:10.1007/s10456-012-9327-4
【文献】長谷 善明, 土井 俊彦,VEGFR阻害薬(マルチキナーゼ阻害薬),日本臨床,2015年,第73巻,増刊号2,P.261-266
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 48/00
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
PubMed
医中誌WEB
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群を予防または治療するために用いられる、ニトログリセリンを含む医薬品、ただし、
該医薬品における前記ニトログリセリンの濃度は0.05%(w/w)~0.2%(w/w)であり、
前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、
ラムシルマブ、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アパチニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、スニチニブ、サリドマイド(Thalidomide)、フルキンチニブ、ブリバニブ、バタラニブ、セディラニブ、リニファニブ(Linifanib)、バンデタニブ、ドビチニブ、ドナフェニブ、アフリベルセプト、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される
【請求項2】
前記手足症候群が、前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与によって生じる、
請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
前記VEGFR阻害剤および/または前記VEGF阻害剤が、腫瘍の治療に用いられる、
請求項1~2のいずれかに記載の医薬品。
【請求項4】
前記手足症候群の患部が、腫瘍の患部と異なる、
請求項1~3のいずれかに記載の医薬品。
【請求項5】
前記手足症候群が、VEGFRおよび/またはVEGFが阻害されることによって生じる、
請求項1~4のいずれかに記載の医薬品。
【請求項6】
前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群の重篤度が、NCI-CTCAE V5.0におけるグレード1 またはそれ以上、グレード2またはそれ以上、グレード3またはそれ以上、グレード4またはそれ以上、および/またはグレード5に基づく、
請求項1~5のいずれかに記載の医薬品。
【請求項7】
前記ニトログリセリンが、局所投与に適するように調製されている、
請求項1~6のいずれかに記載の医薬品。
【請求項8】
前記局所投与の投与部位が、がんの発生部位またはがんの潜在的な転移部位ではない、
請求項7に記載の医薬品。
【請求項9】
前記ニトログリセリンが、軟膏剤として調製される、
請求項1~8のいずれかに記載の医薬品。
【請求項10】
前記ニトログリセリンは基本的に、前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果に影響しない、
請求項1~9のいずれかに記載の医薬品。
【請求項11】
前記対象が、がん患者を含む、
請求項1~10のいずれかに記載の医薬品。
【請求項12】
前記対象が、過去、現在および/または将来において、前記VEGFR阻害剤および/または前記VEGF阻害剤を投与される、
請求項1~11のいずれかに記載の医薬品。
【請求項13】
前記対象が、前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する、
請求項1~12のいずれかに記載の医薬品。
【請求項14】
手足症候群の重篤度が、前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与後増加する、
請求項1~13のいずれかに記載の医薬品。
【請求項15】
前記対象が、前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与前に、未だ手足症候群に罹患していない、
請求項1~14のいずれかに記載の医薬品。
【請求項16】
前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤がソラフェニブである、請求項1に記載の医薬品。
【請求項17】
前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤がアパチニブである、請求項1に記載の医薬品。
【請求項18】
前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤がレンバチニブである、請求項1に記載の医薬品。
【請求項19】
前記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤がレゴラフェニブである、請求項1に記載の医薬品。
【請求項20】
医薬品中のニトログリセリンの濃度が0.1%(w/w)~0.2%(w/w)である、請求項1に記載の医薬品。
【請求項21】
医薬品中のニトログリセリンの濃度が0.2%(w/w)である、請求項1に記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患治療の分野に関し、例えば、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を予防または治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮細胞増殖因子受容体(Vascular endothelial growth factor receptor、VEGFR)の突然変異または過剰発現は、多種類のがんに関連付けられていることが見出されており、しかも、このような腫瘍に罹患している患者は、VEGFRおよび/またはVEGFを阻害する療法(例えば、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与する)によって治療されることができる。しかしながら、このような治療では、深刻な副作用、特に、皮膚、五官や胃腸管に発生する副作用をよく引き起こす。VEGFRおよび/またはVEGFを阻害する療法による深刻な副作用は、患者の生活の質を損なうことによって、患者の服薬コンプライアンスや耐性を低減し、VEGFR/VEGF阻害剤の中止または過少投与をきたし、治療効果に悪影響を及ぼし、ひいては、疾患進行が早く、患者生存期間の短縮が見られている。
現在、治療計画は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う副作用を有効に抑えることができない。そのため、これらの副作用を抑えることに成功する治療計画が強く望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患を予防または治療するための方法を提供する。具体的に、本発明は、一酸化窒素放出剤によって受験者におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を予防または治療することに関し、例えば、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気などのようなVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤による副作用を効果的に抑えることができる。
【0004】
本発明に用いられる一酸化窒素放出剤(例えば、ニトログリセリン)は、報道による高い用量(例えば、約2%)の一酸化窒素放出剤(例えば、ニトログリセリン)によって狭心症を予防または治療することと異なり、有効用量が、0.5%または以下、例えば0.45%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.25%以下、0.2%以下、0.15%以下、または、0.1%以下と低くなってよく、かつ、腫瘍療法の副作用を予防または治療する作用、例えば、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を予防または治療する作用、例えば、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う五官疾患もしくは病気、および/またはVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃腸管疾患もしくは病気などを予防または治療する作用を発揮することを驚くほどに発見した。本発明より前に、一酸化窒素放出剤は上記疾患を治療するために用いられていない。
一方で、本発明は、医薬品の調製における一酸化窒素放出剤の使用を提供する。上記医薬品は、受験者におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を予防または治療するために用いられる。例えば、上記疾患もしくは病気は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与によって生じる。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/または上記VEGF阻害剤は、腫瘍の治療に用いられる。ある実施形態において、上記疾患もしくは病気の患部が腫瘍の患部と異なる。ある実施形態において、上記医薬品は、局所投与に適するように調製される。ある実施形態において、上記局所投与の投与部位はがんの発生部位またはがんの潜在的な転移部位ではない。ある実施形態において、上記医薬品における上記一酸化窒素放出剤の濃度は約0.0001%(w/w)~約50%(w/w)である。ある実施形態において、上記医薬品は、外用投与に適するように調製される。ある実施形態において、上記医薬品は、軟膏剤として調製される。ある実施形態において、上記医薬品は、さらに、1種類または多種類の他の活性成分を含む。ある実施形態において、上記医薬品は、基本的に上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果(例えば、がん治療効果)に影響しない。
【0005】
その一方で、本発明は、受験者におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を予防または治療するために用いられる一酸化窒素放出剤を提供する。例えば、上記疾患もしくは病気は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与によって生じる。
その一方で、本発明は、受験者に一酸化窒素放出剤を予防または治療有効量で投与することを含む、上記受験者におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気の予防または治療方法を提供する。ある実施形態において、上記受験者は、ヒトまたは非ヒト動物を含む。例えば、上記非ヒト動物は、サル、ニワトリ、ガチョウ、ネコ、イヌ、マウスおよびラットからなる群から選ばれる動物を含んでよい。ある実施形態において、上記受験者はがん患者を含む。ある実施形態において、上記受験者は、過去、現在および/または将来において、上記VEGFR阻害剤および/または上記VEGF阻害剤が投与される。ある実施形態において、上記受験者は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する。ある実施形態において、上記疾患もしくは病気の重篤度は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与後増加する。ある実施形態において、上記受験者は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与前に、未だ上記疾患もしくは病気に罹患していない。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤を含まない。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、ニトログリセリンを含まない。ある実施形態において、上記疾患もしくは病気は、上記受験者にVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与することによって生じる。例えば、上記受験者に対して、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与前、同時または後で、上記一酸化窒素放出剤を投与する。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/または上記VEGF阻害剤は、腫瘍の治療に用いられる。ある実施形態において、上記疾患もしくは病気の患部は、腫瘍の患部と異なる。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤の投与は、局所投与である。ある実施形態において、上記局所投与の投与部位は、がんの発生部位またはがんの潜在的な転移部位ではない。ある実施形態において、投与される上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.0001%(w/w)~約50%(w/w)である。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤の投与は外用投与である。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、軟膏剤に包含して投与される。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、1種類または多種類の他の活性成分と一緒に投与される。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤の投与は、基本的に上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果に影響しない。
【0006】
その一方で、本発明は、医薬品組み合わせまたはキットを提供する。上記医薬品組み合わせまたはキットは、1)VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤、および、2)一酸化窒素放出剤を含んでよい。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤と互いに混合されない。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤とそれぞれ独立して個別の容器に収容されている。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、外用投与に適するように調製される。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、軟膏剤として調製される。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.0001%(w/w)~約50%(w/w)である。ある実施形態において、2)に記載の一酸化窒素放出剤は、1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤による疾患もしくは病気を予防または治療することができる。ある実施形態において、2)に記載の一酸化窒素放出剤は、基本的に、1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果に影響しない。ある実施形態において、1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与前、同時あるいは後で、2)に記載の一酸化窒素放出剤を投与する。
その一方で、本発明は、過去、現在および/または将来においてVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与され、かつVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する受験者に対して、一酸化窒素放出剤を投与することを含む方法を提供する。
【0007】
その一方で、本発明は、過去、現在および/または将来においてVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与され、疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する受験者に対して、一酸化窒素放出剤を投与することを含む、上記疾患もしくは病気を予防または治療するための方法を提供する。
その一方で、本発明は、手足症候群である疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する受験者に一酸化窒素放出剤を投与することを含む、上記疾患もしくは病気を予防または治療するための方法を提供する。
ある実施形態において、上記受験者は、過去、現在および/または将来において、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与される。
その一方で、本発明は、1)VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与される受験者の1種類または多種類の皮膚組織、五官および/または胃腸管の特徴を監視し、2)上記監視によって、上記受験者の上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気の発症を示した場合に、上記受験者に一酸化窒素放出剤を投与することを含む方法を提供する。
ある実施形態において、上記方法は、さらに、上記皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気を監視し続け、および上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を任意選択で減少または中止することを含む。
ある実施形態において、上記疾患もしくは病気の重篤度は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与後増加する。
ある実施形態において、上記受験者は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与される前に、未だ上記疾患もしくは病気に罹患していない。
ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤を含まない。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、ニトログリセリンを含まない。
【0008】
ある実施形態において、上記疾患もしくは病気は、上皮組織疾患もしくは病気である。
ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与することによって、がんを治療する。ある実施形態において、上記疾患もしくは病気の患部は、がんの患部と異なる。
ある実施形態において、上記受験者に上記一酸化窒素放出剤を局所投与する。
ある実施形態において、上記受験者におけるがん細胞を基本的に含まない部位に、上記一酸化窒素放出剤を局所投与する。ある実施形態において、上記受験者の非がん部位に上記一酸化窒素放出剤を投与する。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤は、少なくとも1種類がVEGFRタンパク質および/またはVEGFRタンパク質をコードする核酸に直接作用する。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGF阻害剤は、少なくとも1種類がVEGFタンパク質および/またはVEGFタンパク質をコードする核酸に直接作用する。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/または本発明に記載のVEGF阻害剤は、腫瘍の治療に用いられる。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤は、低分子VEGFR阻害剤、VEGFRに特異的結合するタンパク質高分子、VEGFRタンパク質発現を阻害するRNAiおよび/またはVEGFRタンパク質発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでいる。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGF阻害剤は、VEGF捕捉剤および/またはVEGF発現量を低減する試薬を含む。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤は、VEGFR1、VEGFR2および/またはVEGFR3を阻害する。
【0009】
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、ラムシルマブ、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アパチニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、バンデタニブ、スニチニブ、ミドスタウリン、チボザニブ、フルキンチニブ、セディラニブ、ブリバニブ、ドナフェニブ、スルファチニブ、アンロチニブ、Famitinib、Tesevatinib、Vorolanib、モテサニブ、Linifanib、Semaxanib、ドビチニブ、orantinib、バタラニブ、テラチニブ、Glesatinib、ルシタニブ、Ilorasertib、Rebastinib、Golvatinib、Foretinib、ningetinib、Tafetinib、Altiratinib、TAS-115、Chiauranib、Henatinib、4SC-203、AAL-993、ACTB-1003、AEE-788、AMG-628、アレノブファギン、BAW2881、BIBF-1202、BMS-690514、BMS-794833、CEP-11981、CEP-5214、CP-547632、CYC116、DW532、ENMD-2076、FIIN-1、GFB-204、BFH-772、BMS599626、BMS690514、PP 121、MGCD 265アナログ、AC480、Ki 8751、KRN 633、WHI-P 154、TAK593、JI 101、AZD-2932、SCR-1481B1、イソリキリチゲニン、JNJ-26483327、KI-20227、LY2457546、ODM-203、OSI-930、PF-00337210、CGP41231、R1530、RAF265、SAR131675、Semaxinib、SIM010603、SKLB1002、SKLB610、SU 5205、SU11652、SU14813、SU-1498、SU-4312、SU5402、T-1840383、タンシノンIIA、TAS-115、TG 100572、TG 100801、TG100572 HCl、Toceranib、チロシンリン酸化阻害剤A9、Tesevatinib、XL-844、XL999、ZD4190 HCl、ZM-306416、ZM323881 HCl、ABT-510、NVP-ACC789、ADT-OH、BMS-645737、EG 00229、XL-820、SGI-7079、エンドスタチン、タキシフォリン、アフリベルセプト、それらの薬学的に許容される塩、および/または上記任意の組合わせを含む。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、1種類または多種類の他の療法と併用して投与される。上記1種類または多種類の他の療法は、1種類または多種類の他の抗腫瘍療法を含んでよい。
ある実施形態において、本発明に記載の疾患もしくは病気は、VEGFRおよび/またはVEGFが阻害されることによって生じる。
ある実施形態において、本発明に記載の疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気、および/または胃腸管疾患もしくは病気を含む。
【0010】
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気、および/または胃腸管疾患もしくは病気は、上記皮膚組織、五官および/または胃腸管におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う上皮組織疾患もしくは病気を含む。
ある実施形態において、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う上皮組織疾患もしくは病気は、内皮細胞病変に伴う上記疾患もしくは病気、および/または上皮細胞病変に伴う上記疾患もしくは病気を含み、かつ、ここで上記内皮細胞病変および/または上皮細胞病変は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う。上記内皮細胞は、血管内皮細胞を含んでよい。上記上皮細胞は、皮膚上皮細胞、口腔上皮細胞、鼻腔上皮細胞、胃上皮細胞および/または腸管上皮細胞を含んでよい。
ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮疹、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う掻痒症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う紅斑、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う脱毛症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う爪囲炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う色素異常症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻血、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻咽頭炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口唇炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食道粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う下痢、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う嘔吐、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う吐き気、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食欲不振、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う便秘、およびVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う腹痛からなる群から選ばれる疾患もしくは病気を含む。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群を含む。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気の重篤度は、NCI-CTCAE V5.0におけるグレード1 またはそれ以上、グレード2またはそれ以上、グレード3またはそれ以上、グレード4またはそれ以上、および/またはグレード5に基づく。
【0011】
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、NO+、NO-、N2O、NO、N2O3、NO2、NO3 -およびNO2 -からなる群から選ばれる物質を生成することができる。例えば、上記一酸化窒素放出剤は、NOを直接または間接的に生成することができる。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤はNOを有する。
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、有機分子、無機分子、高分子材料、ナノ材料および/またはアンモニア酸化微生物(AOM)を含む。
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、有機分子を含み、かつ上記有機分子は、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール、硝酸イソソルビド、硝酸トロール、ニコランジル、硝酸プロパチル、モルシドミン、5-アミノ-3-(4-モルホリニル)-1,2,3-オキサジアゾール、亜硝酸イソアミル、3,3-ジ(アミノエチル)-1-ヒドロキシ-2-カルボニル-1-トリアゼン(NOC-18)、スルホノノエート二ナトリウム塩、S-ニトロソグルタチオン、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン、4-フェニル-3-フロキサンカルボニトリル、(±)-(E)-4-エチル-2-(E)-ハイドロキシイミノ-5-ニトロ-3-ヘキセナミド、ストレプトゾシン、酢酸NG-ヒドロキシ-L-アルギニン塩、O2-(2,4-ジニトロフェニル) 1-[(4-エトキシカルボニル)ピペラジン-1-イル]1,2-ジオールジアゼン-1-イウム、N-ニトロソジブチルアミン、3-モルホリノ-シドノニミン、リンシドミン、3-(4-アセチルフェニル)シドノン、ジエチルアミンノノエート/AMおよび/またはItraminを含む。例えば、上記有機分子は、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、硝酸イソソルビドおよびそれらの任意の組合わせからなる群から選ばれてよい。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、ニトログリセリンを有する有機分子を含む。
【0012】
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、ニトロキシル錯体、ニトロシル錯体、金属ニトロソアミノ錯体、硝酸塩および/または亜硝酸塩を有する無機分子を含む。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、ニトロプルシドナトリウムを有する無機分子を含む。
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、アンモニア酸化細菌(AOB)を含有するアンモニア酸化微生物(AOM)を含む。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、ニトロソコッカス属(Nitrosococcus)、ニトロソスピラ属(Nitrosospira)、ニトロソシスティス属(Nitrosocystis)、ニトロソロブス属(Nitrosolobus)および/またはニトロソビブリオ属(Nitrosovibrio)を含有するアンモニア酸化微生物(AOM)を含む。
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、2000ダルトン以下、1500ダルトン以下、1200ダルトン以下、1000ダルトン以下、900ダルトン以下、800ダルトン以下、700ダルトン以下、600ダルトン以下、500ダルトン以下、400ダルトン以下、300ダルトン以下、200ダルトン以下または100ダルトン以下の分子量を有する。
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、S-ニトロソチオールシリカナノ粒子、S-ニトロソエタンジチオールキチンおよび/またはオリゴメリックプロパンジアミングラフトキトサンNONOateを有する高分子またはナノ材料を含む。
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、ジアゼニウムジオレート、ヒドロキシジアゼンスルホン酸、S-ニトロソチオール、フロキサン、オキシム、N-ニトロソアミン、N-ヒドロキシグアニジン、ジアゼニウムジオレート、硝酸塩、亜硝酸塩、硝酸エステル、亜硝酸エステル、シドノンイミン、シドノン、オキサトリアゾール-5-イミン、オキサトリアゾール-5-オン、ヒドロキシアミン、ジオキサジアゾシクロブテン、N-ヒドロキシニトロソアミン、N-ニトロソイミン、ヒドロキシ尿素および金属ニトロソアミノ錯体のうちの1つまたは複数の基を有する。
【0013】
当該技術分野における当業者は、以降の詳細な記載からの本開示のその他の側面や利点の把握が容易であろう。以下の詳細な記載では、本開示の例としての実施形態しか表現して記載していない。当該技術分野における当業者にとって、本開示の詳細によって、本発明に係る趣旨や範囲を逸脱しない限り、公開されている具体的な実施形態を変更しても良い。それに応じて、本発明において、図面や明細書の記載があくまでも例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本願に係る発明の具体的な特徴は、添付の請求項のように示されたものである。本発明に係る特徴やメリットは、以下詳しく記載されている例示的実施形態や図面を参照することによって、より確実的に把握されるだろう。図面に関しては、以下のように概略的に説明する。
図1図1は、S-ニトロソチオールシリカナノ粒子の例示的合成経路を示す。
図2図2は、S-ニトロソエタンジチオールキチンの例示的合成経路を示す。
図3図3は、オリゴメリックプロパンジアミングラフトキトサンNONOateの例示的合成経路を示す。
図4図4A-4Cは、HUVEC細胞に一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。
図5図5A-5Cは、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。
図6図6A-6Cは、HOK細胞に一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。
図7図7A-7Cは、GES-1細胞に一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。
図8図8A-8Cは、FHs 74 Int細胞に一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。
図9図9A-9Dは、HUVECおよびGES-1細胞内/外の一酸化窒素の相対的含有量を示す。
図10図10A-10Dは、一酸化窒素放出剤による24時間処理後細胞外の一酸化窒素の相対的含有量を示す。
図11図11A-11Dは、一酸化窒素放出剤による24時間に処理後細胞内の一酸化窒素の相対的含有量を示す。
図12図12A-12Bは、シルデナフィルによるHUVEC細胞処理後、各時点における細胞外/内の一酸化窒素の相対的含有量を示す。 図12C-12Dは、異なる濃度のシルデナフィルによるHUVEC細胞24時間処理後、細胞外/内の一酸化窒素の相対的含有量を示す。
図13図13A-13Bは、100 μMのシルデナフィルによるGES-1細胞24時間処理後、細胞外/内の一酸化窒素の相対的含有量を示す。 図13C-13Dは、100 μMのシルデナフィルによるHaCaT細胞24時間処理後、細胞外/内の相対的NO一酸化窒素の相対的含有量を示す。
図14図14は、VEGFRおよび/またはVEGFの阻害による手足症候群のラットモデルの左足拡大図、左右足正面図、右足拡大図を示す。
図15図15は、本発明に係る実施例55-100、実施例111-112の投与群における1匹の典型的なラット(左足塗布)の左足拡大図、左右足正面図、右足拡大図を示す。
図16図16は、本発明に係る実施例101-108の投与群における1匹の典型的なラット(右足塗布)の左足拡大図、左右足正面図、右足拡大図を示す。
図17図17は、本発明に係る実施例113-123の投与群における1匹の典型的なラット(左足塗布)の左足拡大図、左右足正面図、右足拡大図を示す。
図18図18は、本発明に係る実施例124の投与群における1匹の典型的なラット(右足塗布)の左足拡大図、左右足正面図、右足拡大図を示す。
図19図19は、本発明に係る実施例143の一酸化窒素放出剤が外用投与される場合におけるVEGFR/VEGF阻害剤により治療された担癌ラットの腫瘍容積変化への影響を示す。
図20図20は、HUVEC細胞に一酸化窒素放出剤(またはジルチアゼム)を投与後測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。
図21図21は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。
図22図22は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後一酸化窒素の相対的含有量を示す。
図23図23は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後カルモジュリン(CaM)の発現レベルを示す。
図24図24は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後カルモジュリン相対発現量のグレー値解析結果を示す。
図25図25は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後カルレティキュリンの発現レベルを示す。
図26図26は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後カルレティキュリン相対発現量のグレー値解析結果を示す。
図27図27は、本発明に係る実施例148-153の投与群における1匹の典型的なラットの左足と右足の塗布後、その左足拡大図、左右足正面図、右足拡大図を示す。
図28図28は、本発明に係る実施例154の投与群における1匹の典型的なラットの左足と右足の塗布後、その左足拡大図、左右足正面図、右足拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明の実施形態を、所定の具体的な実施例によって説明するが、当業者が、本明細書に公開された内容により、本願発明のその他のメリットや効果を容易に把握することができる。

VEGFR阻害剤、VEGF阻害剤
本発明において、「VEGFR」という用語は、通常、受容体型チロシンキナーゼReceptor tyrosine kinases (RTKs))ファミリーに属する血管内皮増殖因子受容体(Vascular Endothelial GrowFactor Receptor)を指す。VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3である3つの主なサブタイプを含むと報告されている。その中で、VEGFR1とVEGFR2は主に、腫瘍血管内皮の表面に分布し、腫瘍血管形成を媒介し、VEGFR3は主に、リンパ管内皮の表面に分布し、腫瘍リンパ管形成を媒介する。VEGFR2は、血管新生と有糸分裂における主なVEGF情報伝達受容体であると報告されている。VEGFファミリーは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-Eおよび胎盤増殖因子(PGF)を含む。報告によれば、VEGF-AがVEGFR-1およびVEGFR-2に結合することによって、VEGFへの細胞応答すべてをほとんど調節することができる。内皮細胞におけるVEGFR-2の活性化によって、細胞の増殖、遊走、生存率増加および血管透過性増加をもたらす(Waldner, Maximilian J.et al.,The Journal of Experimental Medicine 207.13,2010参照)。VEGFR発現またはそのキナーゼ活性上昇は、一連のヒト癌に伴う。
本発明において、「VEGF」という用語は、通常、血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Grow Factor)を指し、病理学的血管形成シグナリング経路に必要の重要な内皮細胞特異的増殖因子と見なし、VEGF受容体型チロシンキナーゼシグナリング経路の阻害により、腫瘍増殖における新生血管形成が遮断され、血管形成性腫瘍を停滞または退縮させると報告されている(Gerald McMahon, The Oncologist 2000, 5:3-10参照)。
本発明において、「VEGFR阻害剤」という用語は、通常、受験者に投与される場合に、受験者におけるVEGFR活性に関連する生物学的活性の阻害(VEGFRのその天然リガンドへの結合により生じる下流生物学的作用の阻害のすべてを含む)を引き起こすあらゆる物質を含んで、当該技術分野で周知か、または将来に見出され、かつVEGFRの発現、数または活性低下を引き起こすことができるすべての物質または試薬を指す。ある実施形態において、VEGFR阻害剤は、がん治療過程においてVEGFR活性またはその下流生物学的作用を遮断することができるあらゆる試薬を含む。例えば、上記VEGFR阻害剤は、腫瘍を治療するために用いられる。例えば、上記VEGFR阻害剤は、VEGFRの1種類または多種類の機能を直接に阻害することができる。例えば、上記VEGFR阻害剤は、VEGFRをコードする核酸配列に結合することができる。例えば、上記VEGFR阻害剤は、VEGFRタンパク質の転写レベルを低下させることができる。
【0016】
本発明において、「VEGF阻害剤」という用語は、通常、受験者に投与される場合に、受験者におけるVEGF活性に関連する生物学的活性の阻害を引き起こすあらゆる物質を含んで、当該技術分野で周知か、または将来に見出され、かつVEGFの発現、数または活性の低下を引き起こすことができるすべての物質または試薬を指す。ある実施形態において、VEGF阻害剤は、VEGF活性またはその下流生物学的作用を遮断することができるあらゆる試薬を含む。ある実施形態において、VEGF阻害剤は、がん治療過程においてVEGF活性またはその下流生物学的作用を遮断することができるあらゆる試薬を含む。例えば、上記VEGF阻害剤は、腫瘍を治療するために用いられる。例えば、上記VEGF阻害剤は、VEGFの1種類または多種類の機能を直接に阻害することができる。例えば、上記VEGF阻害剤は、VEGFをコードする核酸配列に結合することができる。例えば、上記VEGF阻害剤は、VEGFタンパク質の転写レベルを低下させることができる。
本発明において、上記VEGFおよび/またはVEGFR阻害レベルの検出および/または評価方法は、インビボまたはインビトロにかかわらず、当該技術分野で周知であって、本発明に記載のVEGF阻害剤および/またはVEGFR阻害剤を同定、基準化、スクリーニングおよび/または評価するためにも用いられる。
本発明において、「VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気」という用語は、通常、受験者に対するVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与にある程度伴う疾患もしくは病気を指す。例えば、上記疾患もしくは病気は、受験者における上記VEGFR阻害剤および/または上記VEGF阻害剤の投与による疾患もしくは病気でありうる。例えば、上記疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う五官疾患もしくは病気、および/またはVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃腸管疾患もしくは病気をを含む。また、例えば、上記疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮疹、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う掻痒症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う紅斑、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う脱毛症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う爪囲炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う色素異常症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻血、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻咽頭炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口唇炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食道粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う下痢、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う嘔吐、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う吐き気、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食欲不振、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う便秘、並びに、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う腹痛を含む。本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤おび/よまたはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群でありうる。
【0017】
本発明において、「腫瘍」という用語は、通常、生体において様々な発癌因子により局所的な組織細胞が増殖することによって形成される新作物を指し、また、このような新生物が、占拠性集塊を多く呈し、新生物とも称する。腫瘍は、新生物の細胞特性および生体への有害度に基づき、良性腫瘍と悪性腫瘍の2種類にも分けられ、悪性腫瘍が癌と総称して呼ばれる。上記腫瘍は、上皮悪性腫瘍(上皮由来のがん)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、腸癌、前立腺癌、膵臓癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、食道癌、頭頸部癌、胃癌および喉頭癌からなる群から選ばれる。例えば、上記腫瘍は、肝臓臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、胃癌、食道癌または甲状腺癌でありうる。
【0018】
本発明において、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、例えば、候補物質/試薬を投与後、VEGFRおよび/またはVEGF発現レベルもしくは活性の変化を検出するなど当該技術分野で公知の方法により特定またはスクリーニングされ得る。VEGFRおよび/またはVEGF発現レベルの検出は、例えば、免疫組織化学的方法、PCR、RT-PCR、in situハイブリダイゼーション法、Southern blot、Western blot、Northern blot、分光分析法およびELISAなどの当該技術分野で公知の方法により行なうこともできる。
本発明において、上記VEGFR阻害剤は、少なくとも1種(例えば、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種またはそれ以上であってよい)が、VEGFRタンパク質および/またはVEGFRタンパク質をコードする核酸に直接に作用することができる。
本発明において、上記VEGF阻害剤は、少なくとも1種(例えば、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種またはそれ以上であってよい)が、VEGFタンパク質および/またはVEGFタンパク質をコードする核酸に直接に作用することができる。
例えば、上記VEGFR阻害剤は、低分子VEGFR阻害剤、VEGFRに特異的に結合するタンパク質高分子、VEGFRタンパク質の発現を阻害するRNAiおよび/またはVEGFRタンパク質の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
本発明において、「低分子VEGFR阻害剤」という用語は、VEGFRと可逆的にまたは非可逆的に結合する低分子VEGFR阻害剤、または突然変異VEGFRに特異的に結合する低分子VEGFR阻害剤を含む。例えば、上記低分子VEGFR阻害剤は、レゴラフェニブ、ポナチニブ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ソラフェニブ、アパチニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、バンデタニブ、スニチニブ、ミドスタウリン、チボザニブ、フルキンチニブ、セディラニブ、ブリバニブ、ドナフェニブ、スルファチニブ、アンロチニブ、Famitinib、Tesevatinib、Vorolanib、モテサニブ、Linifanib、Semaxanib、ドビチニブ、orantinib、バタラニブ、テラチニブ、Glesatinib、ルシタニブ、Ilorasertib、Rebastinib、Golvatinib、Foretinib、ningetinib、Tafetinib、Altiratinib、TAS-115、Chiauranib、Henatinib、4SC-203、AAL-993、ACTB-1003、AEE-788、AMG-628、アレノブファギン、BAW2881、BIBF-1202、BMS-690514、BMS-794833、CEP-11981、CEP-5214、CP-547632、CYC116、DW532、ENMD-2076、FIIN-1、GFB-204、BFH-772、BMS599626、BMS690514、PP 121、MGCD 265アナログ、AC480、Ki 8751、KRN 633、WHI-P 154、TAK593、JI 101、AZD-2932、SCR-1481B1、イソリキリチゲニン、JNJ-26483327、KI-20227、LY2457546、ODM-203、OSI-930、PF-00337210、CGP41231、R1530、RAF265、SAR131675、Semaxinib、SIM010603、SKLB1002、SKLB610、SU 5205、SU11652、SU14813、SU-1498、SU-4312、SU5402、T-1840383、タンシノンIIA、TAS-115、TG 100572、TG 100801、TG100572 HCl、Toceranib、チロシンリン酸化阻害剤A9、Tesevatinib、XL-844、XL999、ZD4190 HCl、ZM-306416、ZM323881 HCl、ABT-510、NVP-ACC789、ADT-OH、BMS-645737、EG 00229、XL-820、SGI-7079、エンドスタチン(Endostatin)および/またはタキシフォリンを含む。
【0019】
本発明において、「特異的に結合する」という用語は、通常、上記VEGFR阻害剤が複雑な混合物においてVEGFRを特異的に認識して結合することができる一方、この複雑な混合物におけるその他の成分を認識または結合することがほとんどないことを意味する。例えば、上記阻害剤は、VEGFRとの親和性が、その他の非特異的結合成分との親和性の少なくとも2倍(例えば、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上)であってよい。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤は、VEGFRとの結合平衡解離定数の値が10-6以下(例えば、10-7 M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、またはそれ以下であってよい)である。
【0020】
本発明において、上記VEGFRに特異的に結合するタンパク質高分子は、VEGFRに対する抗体、抗体変異体、融合タンパク質、誘導体またはその断片であってよい。例えば、VEGFRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であってよい。
本発明において、上記抗体は、通常、所定の抗原を特異的に認識および/または中和することができるポリペプチド分子を指す。例えば、抗体は、ジスルフィド架橋により互いに連結された少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)からなる免疫グロブリンを含むと共に、その抗原結合部分より構成される分子の全てを含んでよい。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、抗体断片または抗体誘導体を含むと共に、ヒト抗体(完全ヒト抗体)、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv)、および抗原に結合する抗体断片(例えば、Fab、Fab’および(Fab)2断片)を含むが、これに限定されない。ここで、上記キメラ抗体は、重鎖または軽鎖アミノ酸配列の一部がある種由来の抗体における対応するアミノ酸配列と相同か、または所定のクラスに属する一方で、その残りのフラグメントが別の種における対応する配列と相同のものでありうる。ここで、上記ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来配列を少なく含むことにより、異種抗体をヒトに導入した場合の免疫原性を低減すると共に、抗体の完全な抗原結合親和性や特異性を保持するキメラ抗体を指す。ここで、上記完全ヒト抗体は、ヒトまたはヒト免疫細胞によって産生されるか、または例えばヒト抗体ライブラリーを利用するトランスジェニック非ヒト動物などの非ヒトに由来する抗体のアミノ酸配列、もしくはその他のヒト抗体をコードする配列に対応する配列を含む抗体を指す。
本発明において、上記抗原結合断片抗体は、抗原に特異的に結合する機能を発揮させる1つまたは複数の断片でありうる。抗体の抗原結合機能は、抗体の全長断片によって発揮され得る。抗体の抗原結合機能は、Fv、ScFv、dsFv、Fab、Fab’あるいはF(ab’)2断片の重鎖を含むか、または、Fv、ScFv、dsFv、Fab、Fab’あるいはF(ab’)2断片の軽鎖を含むことで発揮され得る。(1)Fab断片、すなわちVL、VH、CLおよびCHドメインからなる1価断片、(2)F(ab’)2断片、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合する2つのFab断片を含む2価断片、(3)VHおよびCHドメインからなるFd断片、(4)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(5)VHドメインからなるdAb断片(Wardet al., (1989)Nature 341:544-546)、(6)単離された相補性決定領域(CDR)、(7)合成リンカーによって任意に連結可能な2つまたは2つ以上の単離されたCDRの組合せ、(8)ラクダ化単一ドメイン抗体(Camelized single domain antibody)、すなわち2つの重鎖可変領域を含有するが軽鎖を含有しない抗体、並びに(9)ナノ抗体、すなわち重鎖可変領域、CH2およびCH3を含む。尚、VLとVHが対合して形成される1価の一本鎖分子Fv(scFv)を含んで良い(Birdet al.,(1988)Science 242:423-426;およびHustonet al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci. 85:5879-5883を参照)。上記「抗原結合部分」は、更に、(1)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドと融合する結合ドメインポリペプチド、(2)ヒンジ領域と融合する免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(3)CH2定常領域と融合する免疫グロブリン重鎖CH3定常領域から選ばれる結合ドメインを含む、免疫グロブリン融合タンパク質より構成されて良い。
【0021】
例えば、上記VEGFRに特異的に結合するタンパク質高分子は、抗原が断片に結合するラムシルマブ、またはその機能性変異体でありうる。
本発明において、「VEGF捕捉剤」という用語は、通常、VEGFを結合によって捕捉することができる試薬を指す。例えば、上記VEGF捕捉剤は、ベバシズマブとアフリベルセプトからなる群から選ばれる。
本発明において、「VEGF発現量を低下させる試薬」という用語は、通常、受験者におけるVEGF発現量を直接的または間接的に低下させることができる物質を指す。例えば、上記VEGF発現量を低下させる試薬は、テムシロリムス(Temsirolimus)とサリドマイド(Thalidomide)からなる群から選ばれる。
本発明において、「RNAi」という用語は、通常、外来性または内在性二本鎖RNA分子または低分子RNAが一般的であるRNA干渉(RNA interference)ともいい、一般的に、標的基因の発現または翻訳がmRNAをターゲティングして特異的分解することによって抑制される。通常、RNAiは、他のmRNA分子に結合することによって、さらに、例えばmRNAのタンパク質への翻訳を阻害するなど活性を向上または低減させることができるマイクロRNA(miRNA)と低分子干渉RNA(siRNA)の2種類の低分子RNAを含む。真核動物において、RNAi経路は、RNaseIII酵素(例えば、Dicer、DCLまたはDrosha)によって長い二本鎖RNA(dsRNA)を長さが約20~23個のヌクレオチドに相当するsiRNA二本鎖セグメントに切割する。各siRNAは、それぞれ2つの一本鎖RNA(ssRNA)、すなわちパッセンジャー(passenger)鎖とガイド(guide)鎖に分割されている。パッセンジャー(passenger)鎖は分解される一方で、ガイド鎖はRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれる。ガイド鎖がmRNA分子と相補的である場合、該mRNA分子がRISCにより切断されることによって分解される。
【0022】
本発明において、VEGFRタンパク質発現を阻害するRNAiは、VEGFRをコードするmRNAをターゲティングして特異的分解することによってVEGFRの発現または翻訳を阻害することができる。本発明において、VEGFタンパク質発現を阻害するRNAiは、VEGFをコードするmRNAをターゲティングして特異的分解することによってVEGFの発現または翻訳を阻害することができる。
本発明において、「オリゴヌクレオチド」という用語は、通常、リボ核酸(RNA)あるいはデオキシリボ核酸(DNA)またはその模倣体のいずれかもしくは構造的に修飾された核酸のオリゴマーまたはポリマーを指す。上記オリゴヌクレオチドは、天然に存在する核酸塩基、糖および共有ヌクレオシド(バックボーン)間結合からなるオリゴヌクレオチド、および同様に機能する非天然に存在するオリゴヌクレオチドを含む。修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、通常、例えば細胞取り込みの亢進、核酸標的に対する親和性の亢進およびヌクレアーゼの存在下における安定性の増加の特性のため、しばしば天然の型より好ましい。
本発明において、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、通常、標的核酸の対応する領域やセグメントとの少なくとも一部のハイブリダイゼーションを可能にする核酸塩基配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。本発明において、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約8~約50核酸塩基を含有可能である。
【0023】
本発明において、上記VEGFR阻害剤は、VEGFR1、VEGFR2および/またはVEGFR3を阻害することができる。例えば、上記VEGFR阻害剤は、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3における1種類、2種類または3種類を阻害することができる。
ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、ラムシルマブ、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、ポナチニブ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アパチニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、バンデタニブ、スニチニブ、ミドスタウリン、チボザニブ、フルキンチニブ、セディラニブ、ブリバニブ、ドナフェニブ、スルファチニブ、アンロチニブ、Famitinib、Tesevatinib、Vorolanib、モテサニブ、Linifanib、Semaxanib、ドビチニブ、orantinib、バタラニブ、テラチニブ、Glesatinib、ルシタニブ、Ilorasertib、Rebastinib、Golvatinib、Foretinib、ningetinib、Tafetinib、Altiratinib、TAS-115、Chiauranib、Henatinib、4SC-203、AAL-993、ACTB-1003、AEE-788、AMG-628、アレノブファギン、BAW2881、BIBF-1202、BMS-690514、BMS-794833、CEP-11981、CEP-5214、CP-547632、CYC116、DW532、ENMD-2076、FIIN-1、GFB-204、BFH-772、BMS599626、BMS690514、PP 121、MGCD 265アナログ、AC480、Ki 8751、KRN 633、WHI-P 154、TAK593、JI 101、AZD-2932、SCR-1481B1、イソリキリチゲニン、JNJ-26483327、KI-20227、LY2457546、ODM-203、OSI-930、PF-00337210、CGP41231、R1530、RAF265、SAR131675、Semaxinib、SIM010603、SKLB1002、SKLB610、SU 5205、SU11652、SU14813、SU-1498、SU-4312、SU5402、T-1840383、タンシノンIIA、TAS-115、TG 100572、TG 100801、TG100572 HCl、Toceranib、チロシンリン酸化阻害剤A9、Tesevatinib、XL-844、XL999、ZD4190 HCl、ZM-306416、ZM323881 HCl、ABT-510、NVP-ACC789、ADT-OH、BMS-645737、EG 00229、XL-820、SGI-7079、エンドスタチン(Endostatin)、タキシフォリン、アフリベルセプト、および/または、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の薬学的に許容される塩を含んでよい。
本発明において、上記「薬学的に許容される塩」は、上記化合物の薬学的に許容可能な塩を意味する。ある実施形態において、上記薬学的に許容される塩は、トシル酸ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、パゾパニブ塩酸塩およびDovitinib(TKI258)乳酸塩からなる群から選ばれてよい。
【0024】
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、1種類または多種類の他の療法と併用して投与されることができる。ある実施形態において、上記1種類または多種類の他の療法は、1種類または多種類の他の抗腫瘍療法を含んでよい。例えば、上記他の抗腫瘍療法は、細胞毒性抗がん剤、免疫療法抗がん剤および/またはホルモン療法抗がん剤を含んでよい。上記他の抗腫瘍療法は、放射線療法または外科療法も含んでよい。
本発明において、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、他の抗腫瘍療法と組み合わせて用いられる場合に、受験者に対して同時にまたは一定の間を置いてそれぞれ投与されてよい。例えば、上記他の抗腫瘍療法は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤と混合して単一組成物とする単一薬剤の一部でありうる。又、例えば、上記他の抗腫瘍療法は、上記のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤とそれぞれ投与される個別の薬剤でありうる。本発明において、上記他の抗腫瘍療法は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤と混合して単一組成物とした場合、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が総用量に対して約1~99%(例えば約5~95%、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%または約99%)の用量レベルで存在および/または投与される。
抗がん療法に用いられる細胞毒性抗がん剤は、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、イソチオシアネート、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、ジエチレントリアミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン(pipobroman)、エトグルシド(ethoglucid)、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、アルトレタミン、ロムスチン、ジクロロピリジン、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ(pumitepa)、リボムスチン(Ribomustin)、テモゾロミド、ジクロフェナク、トロバフロキサシン、ジノスタチン、シンバスタチン、ペネム、システムスチン(cystemustine)およびビゼレシン(bizelesin)のようなアルキル化剤;例えばメルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、エノシタビン、シタラビン、オキサリプラチン、塩酸アンシタビン、5-FUおよびその誘導体(例えば、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、カペシタビンなど)、アミノプテリン、ネルザラビン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ペントスタチン、ピリトレキシム(piritrexim)、ヨードウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチンおよびベンダムスチンのような代謝拮抗剤;例えばアクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、塩酸ステフィマイシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸ミトキサントロンおよび塩酸イダルビシンのような抗腫瘍性抗生物質;および/または、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセルおよびビノレルビンなどの植物由来の細胞毒性抗がん剤;例えばベバシズマブ、およびPCT特許出願WO 2005/012359、WO 2005/044853、WO 98/45332、WO 96/30046、WO 94/10202、米国特許US7,060,269、US6,582,959、US6,703,020、US6,054,297、米国特許出願US2006/009360、US2005/0186208、US2003/0206899、US2003/0190317、US2003/0203409およびUS2005/0112126に公開されているそれらのVEGF阻害剤のようなVEGF阻害剤を含んでよい。
【0025】
がん療法に用いられる免疫療法抗がん剤は、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、エベロリムス、レバミソール、ポリサッカライドK、プロコダゾール(procodazole)および/または免疫チェックポイント阻害剤(例えば、CTLA4阻害剤、TIM-3阻害剤、PD-1阻害剤(例えば、Nivolumab(ニボルマブ)、Pembrolizumab(ペムブロリズマブ)、Pidilizumab、AMP514(Amplimmune)、AMP-224、およびPCT特許出願WO2006/121168、WO2009/114335、WO2009/101611、米国特許US 8609089、米国特許出願US2010/028330、US2012/0114649に公開されている他のPD-1阻害剤)、PD-L1阻害剤(例えば、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718C、MDX-1105、およびPCT特許出願WO2010/077634ならびに米国特許US7,943,743に公開されている他のPD-L1阻害剤))を含んでよい。
【0026】
がん療法に用いられるホルモン療法抗がん剤は、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、プロゲステロン、メパルトリシン(mepartricin)、ラロキシフェンまたはメロキシフェン、レボフロキサシン、抗エストロゲン(例えば、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェンなど)、避妊薬、プロスタサイクリン、テストラクトン、アミノスクシンイミド、LH-RHアゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリンなど)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミドなど)、5α-還元酵素阻害剤(例えば、フィナステリド、エプリステリド(Epristeride))、副腎皮質ホルモン系薬剤(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンなど)および/またはアンドロゲン合成阻害剤(例えば、アビラテロンなど)を含んでよい。
【0027】
VEGFRおよび/またはVEGF阻害に伴う疾患もしくは病気
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFRおよび/またはVEGFの阻害との間に統計学的に有意な関連がありうる。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFRおよび/またはVEGFが阻害されるによって生じる。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気を含む。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気は、上記皮膚組織、五官および/または胃腸管におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う上皮組織疾患もしくは病気を含む。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与されることにより生じる副作用または有害反応を含む。
【0028】
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、従来のいずれかのその他の疾患もしくは病気と違っている新しい適応症でありうる。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、診断方式、治療方式および/または症状がともに独特である。例えば、エリスロマイシン軟膏は、皮疹を治療することができるが、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮疹には治療効果がない。
本発明において、「皮膚組織疾患もしくは病気」という用語は、通常、皮膚(毛と爪を含む)の形態、構造および/または機能が発生する病理学的変化を指す。例えば、上記皮膚組織疾患もしくは病気は、皮疹、手足症候群、掻痒症、紅斑、皮膚乾燥症、脱毛症、爪囲炎、色素異常症などを含むが、これに限定されない。
本発明において、「皮疹」という用語は、通常、皮膚の色、外観またはテクスチャーに影響を及ぼす皮膚変化を指す。皮疹は、体の一部に限局することも、皮膚全体に及ぶこともある。皮疹は、さらに、蕁麻疹を含む。
本発明において、「手足症候群」という用語は、Hand Foot Syndrome(HFS)、Palmar Plantar Erythrodysesthesia(PPE)またはHand-foot skin reaction(HFSR)とも呼ばれ、ハーバード大学医学大学院ニューイングランド・ディケンズ病院のJacob LokichおよびCeryMoorが1984年に初めて記載するものである。典型的な臨床的徴候は、進行性を示し、主に手の指(足の指)の発熱、疼痛、紅斑性腫脹が出現され、重篤の場合は、落屑、潰瘍および激痛などに進行する。HFSの病理学的徴候は、主に、例えば、基底ケラチノサイト空胞変性、皮膚血管周囲のリンパ球浸潤、ケラチノサイトアポトーシスおよび皮膚浮腫などを含む。HFSは、例えば、手掌・足底感覚鈍麻または化学療法誘発性肢端紅斑などを含む。腫瘍患者は、化学療法または分子標的療法(例えば、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤)を受けている途中で、かかる症状が現れる可能性がある。
【0029】
現在、手足症候群(HFS)には、グレード分類方法がいくつかあり、中でも、手足症候群が3つのグレードに分けられる米国国立がん研究所(NCI)のグレード分類基準が多く使用されている。グレード1:わずかな皮膚変化または皮膚炎に感覚異常を伴う(例えば、指紋消失、色素沈着、紅斑、皮膚剥脱、感覚異常、感覚鈍麻、皮膚麻痺など)が、日常生活に影響を与えない、グレード2:皮膚変化がグレード1と同様に疼痛を伴い、日常生活に影響を少々与え、皮膚表面が完全である、グレード3:潰瘍性皮膚炎、または皮膚が変化すると共に激痛を伴い、日常生活に厳重な影響を与え、明らかな組織損傷(例えば、落屑、水疱、出血、浮腫など)がある。
なお、世界保健機関(WHO)によれば、HFSが4つのグレードに分けられる。グレード1:手や足の感覚鈍麻、感覚異常またはヒリヒリ感、グレード2:荷物及び歩行時の不快感、疼痛を伴わない腫脹または紅斑:グレード3:疼痛を伴う紅斑および手掌・足底浮腫、爪周囲の紅斑および腫脹:グレード4:皮膚剥脱、化膿、水疱形成および激痛。
本発明において、「紅斑」という用語は、通常、真皮乳頭層における毛細血管網の局所的または全身的拡張による局所的または全身的な赤い発疹を指す。
本発明において、「爪囲炎」という用語は、通常、細菌が爪の周りにおける皮膚の微小な損傷により皮下に侵入して繁殖することにより引き起こされることが一般的である手の指(足の指)の爪の周囲の軟組織の感染性病変を指し、臨床的に、患部が赤く腫れて痛くなり、炎症性滲出を伴うおよび肉芽組織増殖をきたすなどと表現する。
本発明において、「色素異常症」という用語は、通常、皮膚の色が通常の場合よりも淡くまたは濃くなり、斑または変色が生じる病気を指す。低色素沈着(hypopigmentation)は、体が十分な色素を生成することができないためである一方、高色素沈着(hyperpigmentation)は、身体が過剰な色素を生成するためである。
【0030】
本発明において、「五官疾患もしくは病気」という用語は、通常、耳、眉、目、鼻、口などの器官が形態、構造および/または機能的におきる病理学的変化を指す。例えば、上記五官疾患もしくは病気は、口腔潰瘍(oral Mucositis)、口腔乾燥症(dry mouth)、鼻血(epistaxis)、鼻咽頭炎および/または口唇炎を含むが、これに限定されない。
本発明において、「鼻咽頭炎」という用語は、通常、急性鼻咽頭炎と慢性鼻咽頭炎に分けられる鼻咽頭粘膜、粘膜下層およびリンパ組織における炎症性反応を指す。症状は、鼻咽頭内に乾燥や不快感があり、ねばねばした分泌物を吐き出しつらく、吐き気を伴うことが多くあり、重篤の場合は、嗄声、咽頭痛、頭痛、眩暈、倦怠、消化不良、微熱などの局所または全身的病徴を含むが、これに限定されない。鼻咽頭に対する検査によって、慢性粘膜充血、増殖、肥大、分泌物または痂で覆われることなどが見られる。
本発明において、「口唇炎」という用語は、通常、唇部におきる炎症性疾患もしくは病気を指す。例えば、口周囲皮膚、赤唇縁および/または唇粘膜における炎症などを含む。病気の経過に従って、急性口唇炎と慢性口唇炎に分けられ、臨床症状の特徴に従って、糜爛性口唇炎、湿疹性口唇炎、落屑性口唇炎に分けられ、病因や病理に従って、慢性非特異性口唇炎、腺性口唇炎、良性リンパ増殖性口唇炎、肉芽腫性口唇炎、メルカーソン・ローゼンタール症候群、光線性口唇炎およびアレルギー性口唇炎などに分けられる。
本発明において、「胃腸管疾患もしくは病気」という用語は、通常、胃腸組織(例えば、胃幽門部から肛門までの消化管組織)が形態、構造および/または機能的におきる病理学的変化を指す。例えば、上記胃腸管疾患もしくは病気は、下痢(diarrhea)、嘔吐(vomitting)、吐き気(nausea)、食欲不振(anorexia)、便秘(constipation)および/または腹痛(abdominal pain)などを含むが、これに限定されない。
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/または上記VEGF阻害剤は、腫瘍を治療するために用いられる。例えば、上記疾患もしくは病気は、患部が腫瘍の患部と異なる。
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気は、上記皮膚組織、五官および/または胃腸管におけるVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う上皮組織疾患もしくは病気を含んでよい。
【0031】
本発明において、「上皮組織」という用語は、身体全体の自由および閉鎖表面を覆う1層または複数層の細胞を含み、皮膚、粘液、腔、漿液および腺腔を含む。あらゆる上皮層も、粘膜(または内腔)空間に向かう頂端部と漿膜(または深層)空間に向かう基底外側膜との2つの特殊のドメインを含む。そのため、上皮組織の重要な機能は、この2つの空間における多くの生理的プロセスを分離および制御するのに適当なバリアを提供することである。上皮組織は、上皮細胞および内皮細胞を含む。
本発明において、「上皮組織疾患もしくは病気」という用語は、通常、上皮細胞および/または内皮細胞の病変による疾患もしくは病気を指す。例えば、上記上皮組織疾患もしくは病気は、皮疹、ざ瘡、皮膚掻痒症、脱毛症、毛髪変化、紅斑、皮膚剥脱(skin exfoliation)、ヘルペス、多毛症、色素沈着(hyper-pigmentation)、爪疾患(nail disorders)、爪囲炎および爪裂症、皮膚乾燥症、過敏症、粘膜炎、鼻咽頭炎、鼻血、口腔乾燥症、口唇炎、口腔潰瘍および/または胃腸管粘膜損傷を含む。また、例えば、上記上皮組織疾患もしくは病気は、さらに、皮膚の上皮細胞疾患もしくは病気(例えば、皮疹、ざ瘡、酒さ、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、狼瘡、強皮症、天疱瘡、色素沈着、黒斑病、白斑病、蕁麻疹、体部白癬、皮膚掻痒症、脱毛症、毛髪変化、紅斑、爪囲炎および爪裂症、皮膚乾燥症、過敏症および乾癬)、口腔の上皮細胞疾患もしくは病気(例えば、天疱瘡、口唇疱疹、ヘルペス口内炎、肉芽腫性口唇炎、口腔潰瘍、類天疱瘡、シェーグレン症候群、ベーチェット症候群および口腔内サルコイドーシスなど)、鼻腔上皮細胞の疾患もしくは病気(鼻血、副鼻腔炎、鼻せつおよび鼻ポリープなど)、胃上皮細胞の疾患もしくは病気(例えば、胃炎、腸上皮化生、胃穿孔、胃瘻、胃潰瘍および消化管ポリープ)および/または小腸上皮細胞の疾患もしくは病気(例えば、腸炎、クローン病、腸穿孔、腸瘻、腸潰瘍、潰瘍性結腸炎およびNSAIDs腸疾患)を含む。
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う上皮組織疾患もしくは病気は、内皮細胞病変に伴う上記疾患もしくは病気、および/または上皮細胞病変に伴う上記疾患もしくは病気を含み、ここで、上記内皮細胞病変および/または上皮細胞病変が、上記VEGFRおよび/またはVEGFが阻害されるに伴う。
【0032】
例えば、上記内皮細胞は、血管内皮細胞を含んでよい。血管内皮細胞病変は、内皮機能障害を含む。例えば、上記血管内皮細胞病変は、退行性変性血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化、動脈中膜硬化および細動脈硬化(例えば、硝子様変性型細動脈硬化および増殖性細動脈硬化))、炎症性血管疾患(例えば、感染性動脈炎、梅毒性動脈炎、巨細胞性動脈炎、閉塞性血栓血管炎およびリウマチ性動脈炎)、機能性血管疾患(例えば、レイノー病、肢端チアノーゼおよび肢端紅痛症)および/または先天性血管疾患(例えば、先天性動静脈瘻)などを含む。
本発明において、上記上皮細胞は、皮膚上皮細胞、口腔上皮細胞、鼻腔上皮細胞、胃上皮細胞および/または腸管上皮細胞を含む。例えば、上記上皮細胞病変は、皮膚上皮細胞病変(例えば、皮疹、ざ瘡、酒さ、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、狼瘡、強皮症、天疱瘡、色素沈着、黒斑病、白斑病、蕁麻疹、体部白癬、皮膚掻痒症、脱毛症、毛髪変化、紅斑、爪囲炎および爪裂症、皮膚乾燥症、過敏症および乾癬)、口腔上皮細胞病変(例えば、天疱瘡、口唇疱疹、ヘルペス口内炎、肉芽腫性口唇炎、口腔潰瘍、類天疱瘡、シェーグレン症候群、ベーチェット症候群および口腔内サルコイドーシスなど)、鼻腔上皮細胞病変(鼻血、副鼻腔炎、鼻せつおよび鼻ポリープなど)、胃上皮細胞病変(例えば、胃炎、腸上皮化生、胃穿孔、胃瘻、胃潰瘍および消化管ポリープ)および/または小腸上皮細胞病変(例えば、腸炎、クローン病、腸穿孔、腸瘻、腸潰瘍、潰瘍性結腸炎およびNSAIDs腸疾患)などを含む。
本発明の発明者は、VEGFRおよび/またはVEGFの阻害によって内皮細胞、内皮組織が損なわれることにより、皮膚組織、口腔組織、鼻腔組織および/または胃腸管組織の疾患もしくは病気を生じることを見出した。これらの疾患もしくは病気の発生および進行において、通常、内皮細胞、内皮組織の損傷/病変から病勢が進むとともに、上皮細胞にも病変を表現し、最終的に、患者ではVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う内皮細胞病変、および/またはVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う上皮細胞病変として現れる。
【0033】
ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮疹、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う掻痒症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う紅斑、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う脱毛症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う爪囲炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う色素異常症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻血、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻咽頭炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口唇炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食道粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う下痢、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う嘔吐、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う吐き気、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食欲不振、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う便秘、および/または、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う腹痛を含んでよい。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群を含む。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気の重篤度は、NCI-CTCAE V5.0におけるグレード1またはそれ以上、グレード2またはそれ以上、グレード3またはそれ以上、グレード4またはそれ以上、および/またはグレード5に基づく。
ある実施形態において、上記疾患もしくは病気は、皮疹、手足症候群、掻痒症、紅斑、皮膚乾燥症、脱毛症、爪囲炎、色素異常症、口腔潰瘍、口腔乾燥症、鼻血、鼻咽頭炎、口唇炎、食道粘膜炎、胃粘膜炎、胃潰瘍、下痢、嘔吐、吐き気、食欲不振、便秘および/または腹痛を含んでよい。例えば、上記疾患もしくは病気は、手足症候群を含む。
【0034】
ある実施形態において、上記VEGFRおよび/またはVEGFが阻害されるに伴う疾患もしくは病気は、基本的に、1%シルデナフィル、尿素クリーム、ワセリン軟膏、尿素軟膏、ブリモニジン軟膏、ビタミンB6軟膏、ニコチン軟膏、デキサメタゾン軟膏、ヒドロコルチゾン軟膏、Vk1軟膏(0.1%)、エリスロマイシン軟膏およびトリアムシノロン軟膏からなる群から選ばれる薬剤を投与することによって治療または緩和されることがない。

一酸化窒素放出剤
本発明において、「一酸化窒素放出剤」という用語は、通常、一酸化窒素を供与、生成および/または放出することができるあらゆる物質を指す。ある実施形態において、一酸化窒素放出剤は、一酸化窒素を直接的に供与、生成および/または放出することができる。例えば、一酸化窒素放出剤は、その他の物質を刺激することにより、一酸化窒素を供与、生成および/または放出することができる。例えば、一酸化窒素放出剤は、化学反応または酵素触媒反応の反応物として、これらの反応により、一酸化窒素を供与、生成および/または放出することができる。ある実施形態において、一酸化窒素放出剤は、化学反応または酵素触媒反応の触媒として、これらの反応により、その他の物質を刺激することによって一酸化窒素を供与、生成および/または放出することができる。一酸化窒素放出剤には、一酸化窒素そのものも含まれる。
上記一酸化窒素放出剤は、例えば、亜硝酸塩、NO、NO2 -および/またはS-ニトロソチオールレベルを検出することで、試験化合物が一酸化窒素を供与、生成、放出および/または直接的または間接的に転移する能力を検出するような当該技術分野で公知の方法により特定またはスクリーニングされ得る。亜硝酸塩、NO、NO2 -および/またはS-ニトロソチオールレベルは、当該技術分野で公知のいかなる方法によって検出されることができる。例えば、一酸化窒素放出剤は、例えば、亜硝酸塩とp-アミノベンゼンスルホン酸とを反応させ、続いて分光分析法で反応生成物を検出することに基づいたGriess分析法(Molecular Probes)により、亜硝酸塩を分析するように、亜硝酸塩を検出することによって特定またはスクリーニングされ得る。高感度化学発光技術により、95℃の還流室中で亜硝酸塩/硝酸塩をNOに還元して測定することもできる。また、例えば、一酸化窒素放出剤は、血液におけるHb-NOレベルを測定することによって特定またはスクリーニングされ得る。NOは、ヘモグロビン(Hb)に強固に結合され、NOとHbの相互作用は、血管中でNOが代謝する主要な経路と見なすことが分かっている。従って、血液におけるHb-NOレベルは、内在性NOによって生じる良好な指標である。いくつかの実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、全血と赤血球における常磁性ヘモグロビン-NO付加物(Hb-NO)を電子常磁性共鳴(EPR)分光法を用いて測定することによって特定またはスクリーニングされ得る。また、例えば、上記一酸化窒素放出剤は、NO特異的電極による電流分析を行なうことによって特定またはスクリーニングされ得る。このような方法は、NO電極を生体内またはサンプルに挿入することが必要である。また、例えば、上記一酸化窒素放出剤は、S-ニトロソチオールを検出することによって特定またはスクリーニングされ得る。EcoMedics CLD 88 Exhalyzer(Annex,Herts,UK)では、タンパク質のS-ニトロソチオールを化学発光検出法によって測定する(Feelisch,M.et al.,Concomitant S-, N-, and heme-nitros(yl)ation in biological tissues and fluids: implications for the fate of NO in vivo. FASEB. J 16, 1775-85(2002))。また、例えば、上記一酸化窒素放出剤は、NOレベルを間接的方法を用いて検出することによって特定またはスクリーニングされ得る。例えば、NOレベルは、EndoPAT法で内皮機能の非侵襲的検出を行なうことにより測定する。具体的な検出方法は、米国特許US9696324を参照することができる。一酸化窒素放出剤は、NO3 -を硝酸還元酵素でNO2 -に特異的に還元し、NO2 -と発色剤の作用により有色物質を生成し、吸光度を測定して血清NO含有量を示すことにより特定またはスクリーニングすることもできる。
【0035】
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、NO+、NO-、N2O、NO、N2O3、NO2、NO3 --およびNO2 -の少なくとも1種類を生成することができる。例えば、上記一酸化窒素放出剤は、NOを直接または間接的に生成することができる。
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、有機分子、無機分子、高分子材料、ナノ材料および/またはアンモニア酸化微生物(AOM)を含んでよい。例えば、上記一酸化窒素放出剤は、NOでありうる。
本発明において、「有機分子」という用語は、通常、炭素含有化合物であって、炭素の酸化物、炭酸、炭酸塩、シアン、シアン化物、オキソシアン、シアネート、チオシアン、メタルカーバイドなどを含まないことを指す。
例えば、上記一酸化窒素放出剤は、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール、硝酸イソソルビド、硝酸トロール、ニコランジル、硝酸プロパチル、モルシドミン、5-アミノ-3-(4-モルホリニル)-1,2,3-オキサジアゾール、亜硝酸イソアミル、3,3-ジ(アミノエチル)-1-ヒドロキシ-2-カルボニル-1-トリアゼン(NOC-18)、スルホノノエート二ナトリウム塩、S-ニトロソグルタチオン、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン、4-フェニル-3-フロキサンカルボニトリル、(±)-(E)-4-エチル-2-(E)-ハイドロキシイミノ-5-ニトロ-3-ヘキセナミド、ストレプトゾシン、酢酸NG-ヒドロキシ-L-アルギニン、O2-(2,4-ジニトロフェニル)1-[(4-エトキシカルボニル)ピペラジン-1-イル]1,2-ジオールジアゼン-1-イウム、N-ニトロソジブチルアミン、3-モルホリノ-シドノニミン、リンシドミン、3-(4-アセチルフェニル)シドノン、ジエチルアミンノノエート/AMおよび/またはItraminを有する有機分子を含んでよい。例えば、上記一酸化窒素放出剤は、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビドおよび/または硝酸イソソルビドを有する有機分子を含んでよい。ある実施形態において、上記有機分子は、ニトログリセリンを有してよい。
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、ニトロキシル錯体、ニトロシル錯体、金属ニトロソアミノ錯体、硝酸塩および/または亜硝酸塩を有する無機分子を含んでよい。例えば、上記無機分子は、ニトロプルシドナトリウムを有してよい。
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、2000ダルトン以下、1500ダルトン以下、1200ダルトン以下、1000ダルトン以下、900ダルトン以下、800ダルトン以下、700ダルトン以下、600ダルトン以下、500ダルトン以下、400ダルトン以下、300ダルトン以下、200ダルトン以下または100ダルトン以下の分子量を有してよい。
【0036】
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、NO供与基を有する高分子でありうる。架橋または未架橋のポリマー、樹状高分子、金属化合物、有機金属化合物、無機系化合物およびその他の高分子足場を含むいかなる好適な高分子を使用することができる。NO放出高分子は、NO放出共縮合シリカ、例えばジアゾキシドジスルフェイト官能化ポリシロキサン、NO放出ゼオライト(米国特許出願US2006/0269620またはUS2010/0331968参照)、NO放出金属有機骨格(MOF)(米国特許出願US2010/0239512またはUS2011/0052650参照)、NO放出マルチドナー化合物(米国特許出願US2014/0171395参照)、NO放出樹状高分子または金属構造(米国特許出願US2009/0214618参照)、NO放出コーティング層(米国特許出願US2011/0086234参照)、米国特許出願US2010/0098733およびPCT特許出願WO2012/100174に記載の化合物を含んでよい。上記参照文献に開示の内容は、その全体が参照により本願明細書に取り込まれる。いくつかの実施形態において、一酸化窒素放出剤は、NO供与基を有するナノ材料、例えばシリカから形成された共縮合シロキサン網状結合であるナノ結晶でありうる。
また、例えば、NO放出高分子は、さらに、S-ニトロソチオールシリカナノ粒子、S-ニトロソエタンジチオールキチン、オリゴメリックプロパンジアミングラフトキトサンノノエートおよび/またはNovanInc.の一酸化窒素放出剤(例えばSB204、SB206、SB208、SB414またはNVN3100)および米国特許US8282967、US8956658、US8962029、US9403851、US9403852、US9187501、US8399005、US8981139、US9713652、US9238038、US9669041、US8591876、US9526738、US9737561、US9427605、米国特許出願US2009/0214618、US2012/0021055、US2012/0034169、US2014/0005426、US2014/0058124、US2015/0182543、US2016/0060279、US2014/0065200、US2015/0225488、US2010/0297200、US2013/0196951、US2013/0344334、US2014/0017121、US2011/0086234、US2014/0134321、US2010/0098733、US2012/0230921、US2014/0171395、US2016/0083339、US2016/0199295、US2014/0255318、US2017/0246205、US2012/0136323、US2012/0156163、US2014/0057001、US2012/0134951、US2017/0056437、US2017/0312307、US2017/0216197、US2015/0024052、US2008/0311163、US2016/0256366、US2015/0111973、US2017/0196905、PCT特許出願WO2017/079268、WO2004/009253、WO2017/151905、WO2016/160089およびWO2017/019614に記載のものを含む。
【0037】
本発明において、オリゴメリックプロパンジアミングラフトキトサンノノエートは、ジアゼニウムジオレートを含む。例えば、一酸化窒素放出剤は、オリゴメリックプロパンジアミングラフトキトサンNONOateでありうる。本発明において、NONOateは、化式R1R2N-(NO-)-N=Oを含む化合物を指してよく、ここで、R1とR2がともにアルキル基である。
本発明において、一酸化窒素放出剤は、アンモニア酸化細菌(AOB)を有するアンモニア酸化微生物(AOM)を含んでよい。例えば、上記アンモニア酸化微生物(AOM)は、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、ニトロソコッカス属(Nitrosococcus)、ニトロソスピラ属(Nitrosospira)、ニトロソシスティス属(Nitrosocystis)、ニトロソロブス属(Nitrosolobus)および/またはニトロソビブリオ属(Nitrosovibrio)を含んでよい。例えば、上記アンモニア酸化微生物(AOM)は、AOBiome, LLCの一酸化窒素放出微生物群集(例えばAOB101、AOB102、AOB103、AOB201、AOB201またはAOB203)、および米国特許US 7820420B2、US9738870B2、WO2017004534A2、US10078054B2、US2017189454A1、US20170191109A1、US20180092948A1、WO2018057710A1、WO2018017583A1、WO2018111888A1、US20070148136A1、US2005106126A1、US20170037363A1、CN1997731A、US20170189454A1およびWO2017004557A1に開示のものを含んでよい。
【0038】
本発明において、「高分子」という用語は、通常、分子量が2000ダルトンよりも大きく、3000ダルトンよりも大きく、4000ダルトンよりも大きく、5000ダルトンよりも大きく、6000ダルトンよりも大きく、7000ダルトンよりも大きく、8000ダルトンよりも大きく、9000ダルトンよりも大きく、10000ダルトンよりも大きく、12000ダルトンよりも大きく、15000ダルトンよりも大きく、または20000ダルトンよりも大きいあらゆる化合物を指す。
本発明において、「小分子」という用語は、通常、分子量が2000ダルトン以下、1500ダルトン以下、1200ダルトン以下、1000ダルトン以下、900ダルトン以下、800ダルトン以下、700ダルトン以下、600ダルトン以下、500ダルトン以下、400ダルトン以下、300ダルトン以下、200ダルトン以下、または100ダルトン以下のあらゆる化合物を指す。
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、ジアゼニウムジオレート、ヒドロキシジアゼンスルホン酸、S-ニトロソチオール、フロキサン、オキシム、N-ニトロソアミン、N-ヒドロキシグアニジン、ジアゼニウムジオレート、硝酸塩、亜硝酸塩、硝酸エステル、亜硝酸エステル、シドノンイミン、シドノン、オキサトリアゾール-5-イミン、オキサトリアゾール-5-オン、ヒドロキシアミン、ジオキサジアゾシクロブテン、N-ヒドロキシニトロソアミン、N-ニトロソイミン、ヒドロキシ尿素および金属ニトロソアミノ錯体のうちの1つまたは複数の基を有してよい。
例えば、上記一酸化窒素放出剤は、表1から選ばれる1つまたは複数の基を有してよい。
【0039】
【表1-1】

【表1-2】

本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、生理的条件下で正、中性または負に帯電してよい。本発明において、上記一酸化窒素放出剤のlogPは、1~5の間にあってよい。例えば、1.5~3.5の間にあってよい。
本発明に記載の一酸化窒素放出剤は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を予防または治療するために用いられる。
【0040】
疾患の予防および/または治療方法および対応する使用
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を予防または治療するために用いられる医薬品を調製することができる。
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮疹、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う掻痒症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う紅斑、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う脱毛症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う爪囲炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う色素異常症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻血、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻咽頭炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口唇炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食道粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う下痢、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う嘔吐、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う吐き気、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食欲不振、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う便秘、およびVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う腹痛を予防または治療するために用いられることができる。例えば、上記の一酸化窒素放出剤は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群を予防または治療するために用いられることができる。
【0041】
本発明において、上記一酸化窒素放出剤は、皮疹、手足症候群、掻痒症、紅斑、皮膚乾燥症、脱毛症、爪囲炎、色素異常症、口腔潰瘍、口腔乾燥症、鼻血、鼻咽頭炎、口唇炎、食道粘膜炎、胃粘膜炎、胃潰瘍、下痢、嘔吐、吐き気、食欲不振、便秘および/または腹痛を予防または治療するために用いられることができる。例えば、上記の一酸化窒素放出剤は、上記手足症候群を予防または治療するために用いられることができる。
ある実施形態において、上記医薬品は、局所投与に適するように調製される。いくつかの実施形態において、上記局所投与の投与部位は、がんの発生部位またはがんの潜在的な転移部位ではなくてよい。例えば、上記投与部分は、がんの原発部位ではなくてよい。又、例えば、上記投与部分は、がんの転移部位ではなくてよい。例えば、上記転移部位は、リンパ行性転移、血行性転移および/または播種性転移によるがん転移の発生部位を含んでよい。いくつかの実施形態において、上記転移部位は、骨、脳、肝臓、胃および/または肺を含んでよい。又、例えば、上記投与部分は、がんの再発部位ではなくてよい。本発明の上記医薬品において、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.0001%(w/w)~約50%(w/w)であってよく、例えば、約0.0001%(w/w)~約10%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約9.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約9%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約8.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約8%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約7.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約7%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約6.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約6%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約5.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約4.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約4%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約3.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約3%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約2.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約2%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約1.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約1%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.01%(w/w)またはこれ以下の範囲に変動してよい。本発明の上記医薬品において、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.0001%(w/w)~約1%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.9%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.6%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.5%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.4%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.3%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.2%(w/w)、約0.1%(w/w)~約0.2%(w/w)またはこれ以下の範囲に変動してよい。例えば、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.2%(w/w)であってよい。または、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.1%(w/w)であってよい。
【0042】
本発明において、上記一酸化窒素放出剤を含む上記医薬品は、基本的に上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果に影響しない。例えば、上記一酸化窒素放出剤を含む上記医薬品の投与は、基本的に、基本的に同じな治療効果を達成するために、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の用量を増加する必要がない。
ある実施形態において、上記医薬品は、外用投与に適するように調製される。
ある実施形態において、上記医薬品は、局所皮膚投与に適するように調製される。例えば、上記医薬品は、軟膏剤、ローションまたはクリームであってよい。
本発明において、上記医薬品は、さらに、1種類または多種類の他の活性成分を含んでよい。例えば、上記活性成分は、医学的効果または生理活性を有する単量体化合物を指す。例えば、上記他の活性成分は、抗炎症薬、鎮痛薬、局所麻酔剤、抗生物質、抗ヒスタミン薬、防腐剤、免疫抑制剤および止血薬からなる群から選ばれてよい。
【0043】
本発明において、上記医薬品は、さらに、薬学的に許容可能な担体を含んでよい。例えば、上記薬学的に許容可能な担体は、充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝液、防腐剤、滑沢剤、矯味剤、増粘剤、着色剤および乳化剤からなる群から選ばれてよい。
その一方で、本発明は、VEGFRおよび/またはVEGFの阻害に伴う疾患もしくは病気(例えば、VEGFRおよび/またはVEGFの阻害に伴う上皮組織疾患)を予防または治療するために用いられる一酸化窒素放出剤を提供する。
その一方で、本発明は、受験者における上記VEGFRおよび/またはVEGFの阻害に伴う疾患もしくは病気の予防または治療方法を提供する。上記方法は、上記受験者に本発明に記載の一酸化窒素放出剤を予防または治療有効量で投与することを含む。
本発明において、「予防」という用語は、「予防的治療」と交換可能に使用され得る。本発明において「予防」とは、通常、予めある対策を取り込むことによって、疾患またはその1種類または多種類の症状の発症、再発または拡散を防ぐと意味する。本発明において、「治療」という用語は、通常、疾患を解消または改善するか、または疾患に伴う1種類または多種類の症状を緩和することを意味する。
本発明において、「受験者」という用語は、通常、疾患の診断、予後、改善、予防および/または治療が必要なヒトまたは非ヒト動物(哺乳動物、齧歯目動物および鳥類動物などを含む)を指す。例えば、上記受験者は、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、ウサギまたはウマ)、または齧歯目動物(例えば、ラットおよびマウス)、または霊長類動物(例えば、ゴリラおよびサル)、または飼育動物(例えば、イヌおよびネコ)であってよい。本発明において、上記受験者は、一酸化窒素放出剤による治療または予防が必要な受験者であってよい。本発明において、上記受験者は、がん患者を含んでよい。例えば、上記受験者は、過去、現在および/または将来において、上記VEGFR阻害剤および/または上記VEGF阻害剤が投与されてよい。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤であってよい。
【0044】
本発明において、上記疾患もしくは病気の重篤度は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与後増加してよい。例えば、上記疾患もしくは病気の重篤度は、約5%またはそれ以上、約10%またはそれ以上、約15%またはそれ以上、約20%またはそれ以上、約25%またはそれ以上、約30%またはそれ以上、約35%またはそれ以上、約40%またはそれ以上、約45%またはそれ以上、約50%またはそれ以上、約60%またはそれ以上、約70%またはそれ以上、約80%またはそれ以上、約90%またはそれ以上、約100%またはそれ以上、約200%またはそれ以上、あるいはさらにそれ以上増加してよい。
本発明において、上記受験者は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与前に、未だ上記疾患もしくは病気に罹患していない。本発明において、「上記受験者は未だ上記疾患もしくは病気に罹患していない」という用語は、通常、受験者が、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気の既往歴を持つことがないと意味する。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与する1日以上、1週間以上、1ヶ月以上、1年以上、10年以上前に、または生まれてから、未だ本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気に罹患していない。
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤を含まない。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、ニトログリセリンを含まない。
本発明において、「有効量」という用語は、通常、受験者の疾患または症状を緩和または解消するか、または疾患または症状の発症を予防的に抑制または防止することが医薬品の量を指す。通常、受験者の体重、年齢、性別、飲食、排せつ率、既往歴、現在の治療、投薬時期、剤型、投薬方法、投薬経路、医薬品組み合わせ、上記受験者の健康状況および交差感染の潜在的なリスク、アレルギー、過敏症や副作用、および/または上皮(もしくは内皮)組織疾患進行の度合いなどに従って、具体的な有効量を決めることができる。当該技術分野における当業者(例えば、医者または獣医)は、これらまたは他の条件または必要に基づき、用量を一定の比率によって低減または増加することができる。
【0045】
ある実施形態において、投与される上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.0001%(w/w)~約50%(w/w)であって、例えば、約0.0001%(w/w)~約10%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約9.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約9%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約8.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約8%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約7.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約7%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約6.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約6%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約5.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約4.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約4%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約3.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約3%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約2.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約2%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約1.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約1%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.5%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.01%(w/w)であってよく、またはより小さい範囲に変化してよい。本発明の上記医薬品において、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.0001%(w/w)~約1%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.9%(w/w)、約0.0001%(w/w)~約0.6%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.5%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.4%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.3%(w/w)、約0.05%(w/w)~約0.2%(w/w)、約0.1%(w/w)~約0.2%(w/w)であってよく、またはより小さい範囲に変動してよい。例えば、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.2%(w/w)であってよい。または、上記一酸化窒素放出剤の濃度は、約0.1%(w/w)であってよい。
本発明において、上記受験者は、ヒトまたは非ヒト動物を含んでよい。例えば、上記非ヒト動物は、サル、ニワトリ、ガチョウ、ネコ、イヌ、マウスおよびラットからなる群から選ばれてよい。なお、非ヒト動物は、ヒト以外のいかなる動物種、例えば家畜動物、または齧歯目動物、または霊長類動物、または飼育動物、または家禽動物を含んでもよい。上記ヒトは、コーカソイド、アフリカ人、アジア人、セム族、または他の人種、あるいは各種の人種の雑種であってよい。又、例えば、上記ヒトは、高齢者、成人、青年、児童または幼児であってよい。
実験動物における有効量から、ヒトにおける有効量を推定することができる。例えば、Freireichらは、動物とヒトに対する用量の相互関係(体表面積1平方メートル当たりのミリグラムに基づく)について述べた(Freireich et al.,Cancer Chemother. Rep. 50,219(1966))。体表面積は、患者の身長や体重から近似的に特定することができる。例えばScientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,537(1970)を参照する。
【0046】
本発明の上記方法において、上記VEGFRおよび/またはVEGFは、上記受験者にVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与することによって阻害される。
例えば、上記受験者への上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与前、同時あるいは後で、上記一酸化窒素放出剤を投与してよい。上記一酸化窒素放出剤は、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤と同時に投与される場合に、総用量に対して約0.0001~10%(例えば約0.005~10%、約0.01~10%、約0.05~10%、約0.1~10%、約0.2~10%、約0.3~10%、約0.4~10%、約0.5~10%、約0.6~10%、約0.7~10%、約0.8~10%、約0.9~10%、約0.95~10%、約1~10%、約2~10%、約3~10%、約5~10%、約6~10%、約8~10%またはこれ以下の範囲)の用量レベルで投与されてよい。上記一酸化窒素放出剤は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤と間欠的に投与される実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与前または後で間欠的に投与されてよい。上記間隔の時間は、1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間、45分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月またはより長い期間であってよい。
ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、外用投与である。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、軟膏剤に包含して投与される。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤は、1種類または多種類の他の活性成分と共に投与される。ある実施形態において、上記一酸化窒素放出剤の投与は、基本的に、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果に影響しない。
その一方で、本発明は、医薬品組み合わせ(例えば、キット)を提供する。上記医薬品組み合わせは、1)本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤、および、2)本発明に記載の一酸化窒素放出剤を含んでよい。ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤と互いに混合されない。
【0047】
ある実施形態において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤とそれぞれ独立して個別の容器に収容されている。例えば、上記医薬品組み合わせには、少なくとも1種類が本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を含有し、少なくとももう1種類が本発明に記載の一酸化窒素放出剤を含有する2種類またはそれ以上互いに個別に包装された医薬品を含んでよい。
上記医薬品組み合わせのいくつかの実施形態において、2)に記載の一酸化窒素放出剤が、1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気(例えば、本発明に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気)を予防または治療可能である。ある実施形態において、2)に記載の一酸化窒素放出剤が、基本的に、1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果に影響しない。ある実施形態において、1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与前、同時あるいは後で、2)に記載の一酸化窒素放出剤を投与する。
本発明において、上記「基本的に影響しない」は、上記医薬品組み合わせまたはキットの2)に記載の一酸化窒素放出剤と1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の治療効果が、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の個別による治療効果に比べて、相当するかまたは有意に劣っていないと意味する。例えば、上記医薬品組み合わせまたはキットの2)に記載の一酸化窒素放出剤と1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、いずれかの受験者にとって、腫瘍容積減少率が、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の個別による治療効果に比べて、同じか、または、約5%以上、約4%以上、約3%以上、約2%以上、約1%以上、約0.5%以上、約0.1%以上、約0.01%以上、約0.001%以上またはこれ以下ぐらい減少する。
本発明は、さらに、過去、現在および/または将来においてVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与され、かつVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する受験者に一酸化窒素放出剤を投与することを含む方法を提供する。
【0048】
本発明は、さらに、過去、現在および/または将来においてVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与される、疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する受験者に一酸化窒素放出剤を投与することを含む上記疾患もしくは病気を予防または治療するための方法を提供する。
本発明において、上記受験者は、既にVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気に罹患しているか、または、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を大きな確率で罹患してもよい。
本発明において、「容易に罹患する」という用語は、通常、受験者が上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気を大きな確率で罹患することを指す。例えば、上記した大きな確率とは、ある受験者が健常の受験者よりも、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気に罹患する確率が約少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%またはそれ以上上がることを指す。
本発明は、さらに、手足症候群である疾患もしくは病気に罹患しているか、または容易に罹患する受験者に一酸化窒素放出剤を投与することを含む上記疾患もしくは病気を予防または治療するための方法を提供する。
例えば、上記受験者は、過去、現在および/または将来においてVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与されてよい。
例えば、上記疾患もしくは病気は、手足症候群であってよい。例えば、上記疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気であってよい。例えば、上記疾患もしくは病気は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群であってよい。
【0049】
本発明は、さらに、1)VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与される受験者の1種類または多種類の皮膚組織、五官および/または胃腸管の特徴を監視し、2)上記監視によって、上記受験者の上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気の発症を示した場合に、上記受験者に一酸化窒素放出剤を投与することを含む、方法を提供する。
本発明において、「皮膚組織の特徴」という用語は、通常、皮膚組織疾患もしくは病気を反映することができる特徴を指す。例えば、上記の特徴は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚組織疾患もしくは病気を反映することができる特徴を含んでよい。例えば、上記の特徴は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮疹、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う手足症候群、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚掻痒症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚紅斑および/または紫斑、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う皮膚乾燥症および/または亀裂、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う脱毛症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う爪囲炎、および/または、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う色素異常症を反映することができる特徴を含んでよい。例えば、上記の特徴は、紅斑の面積およびグレード、紫斑の面積およびグレード、丘疹の数およびびグレード、膿疱の数およびびグレード、結節の数およびびグレード、皮膚腫脹範囲およびグレード、皮膚潰瘍グレード、皮膚乾燥症グレード、皮膚亀裂グレード、皮膚角化グレード、皮膚苔蘚化グレード、皮膚落屑面積およびグレード、皮膚のツッパリ感、皮膚掻痒症グレード、真皮と皮下の結合箇所における血管炎症グレード、皮膚組織壊死グレード、皮膚糜爛潰瘍グレード、網状皮斑面積、皮膚色素沈着グレード、水疱およびブラの数、抜け毛の場所/面積/グレード、皮膚肉芽増殖グレード、皮脂過剰グレード、毛包炎グレード、爪周囲腫脹グレード、爪周囲膿瘍グレード、爪周囲皮膚色素沈着、爪床萎縮グレード、爪甲の菲薄化または肥大化、爪甲色異常、爪横割れ、爪縦割れ、翼状爪などを含んでよい。
【0050】
本発明において、「五官の特徴」という用語は、通常、五官疾患もしくは病気を反映することができる特徴を指す。例えば、上記の特徴は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う五官疾患もしくは病気を反映することができる特徴を含んでよい。例えば、上記の特徴は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口腔乾燥症、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻血、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う鼻咽頭炎、および/または、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う口唇炎を反映することができる特徴を含んでよい。例えば、上記の特徴は、口腔粘膜充血グレード、口腔粘膜浮腫グレード、口腔粘膜疱疹グレード、口腔粘膜潰瘍グレード、口腔粘膜口腔粘膜下線維症グレード、舌腺/舌下腺/耳下腺など唾液腺萎縮グレード、口腔乾燥症グレード、カリエスグレード、舌腫大グレード、舌側歯列グレード、鼻血発生頻度、鼻血量、中咽頭および鼻咽頭粘膜浮腫グレード、中咽頭および鼻咽頭粘膜疱疹グレード、中咽頭および鼻咽頭粘膜潰瘍グレード、中咽頭および鼻咽頭粘膜増殖グレード、中咽頭および鼻咽頭濾胞増殖グレード、唇や唇周辺腫脹グレード、唇や唇周辺疱疹グレード、唇や唇周辺紅斑グレード、唇や唇周辺皮膚落屑グレード、唇や唇周辺皮膚苔蘚化グレード、ならびに唇や唇周辺皮膚糜爛グレードなどを含んでよい。
本発明において、「胃腸管の特徴」という用語は、通常、胃腸管疾患もしくは病気を反映することができる特徴を指す。例えば、上記の特徴は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃腸管疾患もしくは病気を反映することができる特徴を含んでよい。例えば、上記の特徴は、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食道粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃粘膜炎、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う胃潰瘍、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う下痢、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う嘔吐、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う吐き気、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う食欲不振、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う便秘、および/または、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う腹痛を反映することができる特徴を含んでよい。例えば、上記の特徴は、食欲減退グレード、胃もたれグレード、嚥下障害グレード、胸骨下焼灼感グレード、胸骨下痛グレード、上腹部痛の時間(空腹時または満腹時)およびグレード、腹部膨満グレード、下痢グレード、排便回数、排便時間、排便前腹痛、渋り腹、異常便(例えば黒色便、赤色便、粘液便、粘血便、水っぽい便、水様便など)、嘔吐頻度、吐瀉物様子、吐血様子、吐き気、栄養不足グレード、微量元素欠乏グレードなどを含んでよい。
【0051】
本発明において、上記方法は、さらに、上記皮膚組織疾患もしくは病気、五官疾患もしくは病気および/または胃腸管疾患もしくは病気を監視し続け、および上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与を任意選択で減少または中止することを含んでよい。例えば、上記監視し続けるとは、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与後約少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも10日、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、またはより長い時間で監視することを指す。例えば、上記減少または中止するとは、上記受験者に上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与する用量が、上記方法のステップ1)に記載のVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の用量よりも、約少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%減少することを指す。
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤の投与に伴う疾患もしくは病気の重篤度は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与後増加してよい。例えば、上記重篤度は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上増加してもよい。
本発明において、上記受験者は、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤が投与された前に、未だ上記疾患もしくは病気に罹患していなくてもよい。
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、上記一酸化窒素放出剤を含まなくてもよい。例えば、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤は、ニトログリセリンを含まなくてもよい。
本発明において、上記疾患もしくは病気は、上皮組織疾患もしくは病気であってよい。
【0052】
本発明において、上記VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤を投与することによって、がんを治療することができる。例えば、上記疾患もしくは病気の患部は、がんの患部と異なってもよい。
本発明において、上記受験者に上記一酸化窒素放出剤を局所投与してよい。例えば、上記受験者におけるがん細胞を基本的に含まない部位に、上記一酸化窒素放出剤を局所投与してもよい。
本発明において、「がん細胞を基本的に含まない部位」という用語は、通常、受験者におけるがん細胞含有量が基本的にがん細胞がないと考えられるほど低い組織器官または部位を指す。例えば、上記基本的に含まないとは、上記がん細胞の数が該部位の総細胞数の0.01%以下、例えば、0.005%以下、0.001%以下、0.0001%以下、0.00001%以下またはより低い割合を占めると意味する。
又、例えば、上記受験者における非がん部位に上記一酸化窒素放出剤を投与することができる。
本発明において、「非がん部位」という用語は、通常、受験者における非がん病巣であって、かつ非がん転移領域の部位を指す。例えば、上記がん病巣は、がんの原発部位であってよい。例えば、上記がん転移領域は、原発部位腫瘍と同じなタイプの腫瘍の位置する領域であってよい。例えば、上記がん転移領域は、リンパ行性転移、血行性転移または播種性転移によって形成されるものである。
本発明において、「一(a)」、「一つ(an)」、「上記(the)」、ならびに「少なくとも1種類」という用語、およびそれに類似の指示語の使用は、単数および複数の両方を包含するように解するべきである。本明細書で他に指示していないか又は文脈によって明らかに相反していない限り、「少なくとも1種類」という用語に1項または複数項の列挙項(例えば、「少なくとも1種類のAとB」)が後続される場合、この列挙項から選ばれる1項(AまたはB)または2項または複数項の任意の組合わせ(AとB)を示すことが理解されるべきである。
本発明において、特に断りがない限り、「含む」、「有する」、「包含する」および「含有する」という用語は、開放的用語、(すなわち、「含むが、これに限定されないことを意味する」)と解釈されるべきである。
【0053】
以下の実施形態は、いかなる理論にもよらず、本発明の装置、方法やシステムの作用形態を釈明することに過ぎなく、本願発明の範囲を限定するものではない。

実施例
本発明に係る実施例の結果において、**はP<0.01、*はP<0.05、***はP<0.001を示し、t-testによる統計的検定が行われた。
実施例1:S-ニトロソチオールシリカナノ粒子の合成
4 mlの(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランと2 mlのオルトケイ酸テトラエチルの混合液を、シリンジポンプを用いて0.5 ml/minの速度で脱イオン水30 ml、エタノール30 mlおよびアンモニア水30 mlとの混合溶液に注入すると共に、その過程に反応液を0℃に保持した。注入完了後、反応液を室温下で2.5時間撹拌後、4000rpmで8分間遠心分離した。沈殿物を、それぞれ氷水100 mlとエタノール100 mlで1回洗浄して、真空乾燥させることによってメルカプト化シリカナノ粒子が得られた。
メルカプト化シリカナノ粒子150 mgをメタノール4 mlで分散させ、温度を0℃に下げると共に、1 mol/L亜硝酸ナトリウムと1 mmol/Lジエチレントリアミン五酢酸の混合溶液2 mlを撹拌し続けながら添加し、また、5 mol/L塩酸水溶液を2 ml加えた。反応液を、暗所かつ0℃下で2.5時間撹拌し、次いで、4℃で、4000rpmで5分間遠心分離した。沈殿物を、それぞれ4℃の1 mmol/Lジエチレントリアミン五酢酸水溶液30 mlと4℃のメタノール30 mlで1回ずつ洗浄すると、あらためて遠心分離によって固体を採取した。暗所で、-30℃下で30分間真空乾燥させることにより得られた乾燥した最終生成物を、使うまで-20℃下で保管した。
最終生成物をpH=7.4のPBS緩衝溶液に溶解させて、ZS90型ナノ粒度電位計で測定された生成物の流体力学的半径は423 nm、多分散度は0.061であった。該溶液の紫外可視吸収スペクトル(Thermo Fisher EV300型紫外可視分光光度計による検出)は、330nmにおける特性吸収ピークを含む。200 Wで5時間照射する条件下で、碧雲天社による一酸化窒素アッセイキット(Griess法、上海碧雲天バイオテクノロジー有限会社から購入)によって放出された一酸化窒素の総量を測定することによって一酸化窒素貯蔵量を特徴づけ、最終生成物である一酸化窒素の貯蔵量を1.87±0.55μmol/mgとして測定した。
【0054】
実施例2:S-ニトロソエタンジチオールキチンの合成
キチン2 gと塩化リチウム5 gをジメチルアセトアミド50 mlに分散させ、0℃下でN,N-ジイソプロピルエチルアミンを20 ml加えた。p-トルエンスルホニルクロリド20 gをジメチルアセトアミド20 mlに溶解させて、前述したキチン含有溶液に入れた。混合溶液を4℃下で20時間撹拌しながら反応後、アセトン300 mlに入れて、沈降してろ過した。沈殿物をそれぞれメタノール300 ml、脱イオン水150 mlとアセトン300 mlで各1回洗浄後、真空乾燥させることによって、p-トルエンスルホン化キチンが得られた。
p-トルエンスルホン化キチン1 gおよび塩化リチウム2.5 gをジメチルアセトアミド40 mlに分散後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン3 mlと1,2-エタンジチオール1.5 mlを加えた。混合溶液を、60℃、窒素雰囲気で24時間撹拌後、アセトン400 mlに入れて、沈降してろ過した。沈殿物をメタノール400 mlとアセトン400 mlで各1回洗浄して真空乾燥後、10 mmol/Lの1,4-ジチオトレイトールとN,N-ジイソプロピルエチルアミンを含むジメチルアセトアミド溶液25 mlに分散させ、室温下で1時間撹拌しながらろ過した。沈殿物を、それぞれメタノール400 mlとアセトン400 mlで洗浄して真空乾燥させることによって、メルカプト化キチン化合物が得られた。メルカプト化キチン化合物200 mgをジメチルアセトアミド/メタノール混合溶媒5 ml(容積比3/1)に分散させると共に、亜硝酸tert-ブチルを1 ml加えて、室温下で12時間撹拌後、混合溶液をメタノール100 mlに加えて30分間撹拌しながらろ過し、真空乾燥させることによって最終生成物が得られた。
最終生成物の赤外スペクトル(Nicolet 6700型赤外分光計による検出)における主要吸収ピーク(波数):3600-3200、3285、1652、1537、10283360-3220、1250-1300、1050-1070。その拡散反射紫外可視吸収スペクトル(Thermo Fisher EV300型紫外可視分光光度計による検出)は、549 nmにおける特性吸収ピークを含むことを示した。200 Wで5時間照射する条件下で、碧雲天社による一酸化窒素アッセイキット(Griess法)によって放出された一酸化窒素の総量を測定することによって一酸化窒素貯蔵量が特徴づけられ、最終生成物である一酸化窒素貯蔵量が0.37±0.08 μmol/mgであった。
【0055】
実施例3:オリゴメリックプロパンジアミングラフトキトサンNONOateの合成
2-メチルアジリジン250 μLを1 mol/L塩酸水溶液300 μLと混合させ、20 mg/ mlのキトサン水溶液10 mlに1滴ずつ滴下した。混合溶液を、室温下で4日撹拌後、78℃で20時間撹拌し、その後、アセトン300 mlに注いで沈降させ、遠心分離した。沈殿物をメタノールで2回洗浄して、真空乾燥させることによって第2級アミン化変性キトサンが得られた。核磁気共鳴スペクトル(Bruker AvanceIII型核磁気共鳴スペクトロメータ、400 MHz,CD3OD)に示したピーク位置:0.8-1.1、1.9、2.3-2.7、3.3-4.0、4.4。
第2級アミン化変性キトサン50 mgを水1 mlとメタノール3 mlの混合溶媒に溶かし、該混合溶液を6 mol/Lのメタノールナトリウム溶液100 μLと一緒にParr水素化スイング式反応器に入れた。高純度窒素ガス置換で脱酸素を複数回行い、次いで、一酸化窒素ガスを注入して、10気圧を保持しつつ、室温で4日反応させた。反応完了後、高純度窒素ガ置換で未反応の一酸化窒素を複数回除去した。次いで、反応液を300 mlのアセトンに入れて沈降させ、遠心分離することによって沈殿を採取して、真空乾燥させることによって最終生成物が得られた、-20℃下で使うまで保管した。
最終生成物(ジアゼニウムジオレートを含む)の赤外スペクトル(Nicolet 6700型赤外分光計による検出)における主要吸収ピーク(波数):3600-3200、3285、1650、1587、1284、1059。その紫外可視吸収スペクトル(Thermo Fisher EV300型紫外可視分光光度計による検出)は、252 nmにおける特性吸収ピークを含む。サンプルをPBS溶液に溶かし、碧雲天社による一酸化窒素アッセイキット(Griess法)によって放出された一酸化窒素の総量を測定することによってサンプルの一酸化窒素貯蔵量が得られ、0.77±0.11μmol/ mlであった。
【0056】
実施例4-15:VEGF/VEGFR阻害剤によるHUVECの細胞増殖・毒性に対する一酸化窒素放出剤の緩和作用およびシルデナフィルとの比較
シルデナフィルを抗VEGFマルチキナーゼ阻害剤による副作用である手掌足底発赤知覚不全症候群(Palmar Plantar Erythrodysesthesia,PPE)の治療に用いる試みが報道されている(Kellen L. Meadowsら,Support Care Cancer. 2015 May ; 23(5): 1311-1319を参照)。しかしながら、シルデナフィルは、抗VEGFマルチキナーゼ阻害剤によるPPEの治療効果が、極めて限定的で、ほぼ無効である。本発明において、一酸化窒素放出剤の効果が、シルデナフィルと比較された。
浮遊培養されたHUVEC細胞を消化して細胞数をカウントすると共に、1ウェルごとに5000~10000細胞ずつ、96ウェルプレートに播種した。各ウェルは、1ウェルごとに基礎培地を含むとともに、最終的に含有される液体体積が約100μLであるように、ブランク対照群、VEGF/VEGFR阻害剤群、VEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群、VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群、一酸化窒素放出剤溶媒対照群、VEGF/VEGFR阻害剤+シルデナフィル群およびシルデナフィル溶媒対照群に分けられた。群分けは、具体的に以下の通りであった。
1)ブランク対照群:通常の基礎培地交換以外に、いかなる追加的な溶液も加えられなく、
2)VEGF/VEGFR阻害剤群:VEGF/VEGFR阻害剤溶液(最終濃度が表1に示され、VEGF/VEGFR阻害剤溶液の溶媒がDMSOである)が加えられ、
3)VEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群:VEGF/VEGFR阻害剤溶液および一酸化窒素放出剤溶液(VEGF/VEGFR阻害剤と一酸化窒素放出剤の最終濃度が表1に示され、一酸化窒素放出剤の溶解性に基づき、一酸化窒素放出剤溶液の溶媒としてエタノールまたは無菌水を選択し、選択された対応する溶媒を加えることにより各群の総体積のわずかな違いを埋めた)が加えられ、
4)VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群:群2)における対応する上記VEGF/VEGFR阻害剤溶液に含まれたものと等体積のDMSOが加えられ、
5)一酸化窒素放出剤溶媒対照群:群3)における対応する上記一酸化窒素放出剤に含まれたものと等体積・同種類の溶媒(例えば、エタノールまたは無菌水)が加えられ、
6)VEGF/VEGFR阻害剤+シルデナフィル群:まず、VEGF/VEGFR阻害剤溶液が加えられ、次に、シルデナフィル溶液(VEGF/VEGFR阻害剤とシルデナフィルの最終濃度が表2に示され、シルデナフィル溶液の溶媒がDMSOであり、選択された対応する溶媒を加えることにより各群の総体積のわずかな違いを埋めた)が加えられ、
7)シルデナフィル溶媒対照群:群6)における対応する上記シルデナフィルに含まれたものと等体積のDMSOが加えられた。
【0057】
VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群は、データ処理に関与せず、実験システム誤差を評価するための参照のみとされた。一酸化窒素放出剤溶媒対照群、シルデナフィル溶媒対照群は、データ修正に用いられるため、溶媒による結果の影響がなくなっている。
24~48時間連続に培養後、Cell Counting Kit-8(CCK-8)アッセイキット(C0037、上海碧雲天バイオテクノロジー有限会社、Beyotime Biotechnology)により細胞生存率を測定して、VEGF/VEGFR阻害剤による細胞の増殖・毒性および一酸化窒素放出剤やシルデナフィルによる増殖・毒性の緩和作用を算出した。GraphPad Prism 6.0ソフトウェア、t検定により、結果について統計分析およびプロットを行った。
表2は、各種のVEGF/VEGFR阻害剤と一酸化窒素放出剤またはシルデナフィルの組み合わせ、ならびに対応する実験結果(ここで、細胞生存率欄のデータは、VEGF/VEGFR阻害剤群に比べて、対応するVEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群(またはシルデナフィル)で増加した生存細胞のパーセンテージを表す)を例として挙げた。図4A~4Cは、HUVEC細胞にVEGF/VEGFR阻害剤ソラフェニブトシル酸塩(V1)、スニチニブリンゴ酸塩(V3)またはレゴラフェニブ(V4)および一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後24時間に、CCK-8法によって測定された細胞増殖・毒性の例示的結果をそれぞれ示す。ここで、横軸は異なる実験群と対照群、縦軸は細胞生存率(ブランク対照群の細胞生存率を100%として、他の実験群または溶媒対照群における細胞生存パーセンテージを算出した)を示す。ここで、***は、P<0.001であって、対応するVEGF/VEGFR阻害剤単独投与群よりも有意差を有することを表し、**は、P<0.01であって、対応するVEGF/VEGFR阻害剤単独投与群よりも有意差を有することを表し、*は、P<0.05であって、対応するVEGF/VEGFR阻害剤単独投与群よりも有意差を有することを表し、統計的検定がt-testによって実施される。
【0058】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

表2および図4A~4Cに示した結果から、一酸化窒素放出剤は、増殖・毒性に対して有意な緩和作用を有し、その緩和作用はシルデナフィルよりも明らかに優れたことが分かった。
【0059】
実施例16-32:VEGF/VEGFR阻害剤による不死化ヒト表皮細胞(HaCaT)、ヒト口腔粘膜上皮角化細胞(HOK)、ヒト小腸型腸管上皮細胞(FHs 74 Int)、胃上皮細胞(GES-1)阻害剤の細胞増殖・毒性に対する一酸化窒素放出剤の緩和作用およびシルデナフィルとの比較
様々の実験用の上皮細胞を培養し、ここで、実施例16-20に不死化ヒト表皮細胞(HaCaT)が使用され、結果を表3に対応し;実施例21-24にヒト口腔粘膜上皮角化細胞(HOK)が使用され、結果を表4に対応し;実施例25-28に胃上皮細胞(GES-1)が使用され、結果を表5に対応し;実施例29-32にヒト小腸型腸管上皮細胞(FHs 74 Int)が使用され、結果を表6に対応した。
浮遊培養された細胞を消化して細胞数をカウントすると共に、1ウェルごとに5000~10000細胞ずつ、96ウェルプレートに播種した。各ウェルは、1ウェルごとに基礎培地を含むとともに、最終的に含有される液体体積が約100μLであるように、ブランク対照群、VEGF/VEGFR阻害剤群、VEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群、VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群、一酸化窒素放出剤溶媒対照群、VEGF/VEGFR阻害剤+シルデナフィル群、およびシルデナフィル溶媒対照群に分けられた。群分けは、具体的に以下の通りであった。
1)ブランク対照群:通常の基礎培地交換以外に、いかなる追加的な溶液も加えられなく、
2)VEGF/VEGFR阻害剤群:VEGF/VEGFR阻害剤溶液(最終濃度が表2に示され、VEGF/VEGFR阻害剤溶液の溶媒がDMSOである)が加えられ、
3)VEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群:VEGF/VEGFR阻害剤溶液および一酸化窒素放出剤溶液(VEGF/VEGFR阻害剤と一酸化窒素放出剤の最終濃度が表2に示され、一酸化窒素放出剤の溶解性に基づき、一酸化窒素放出剤溶液の溶媒としてエタノールまたは無菌水を選択し、選択された対応する溶媒を加えることにより各群の総体積のわずかな違いを埋めた)が加えられ、
4)VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群:群2)における対応する上記VEGF/VEGFR阻害剤溶液に含まれたものと等体積のDMSOが加えられ、
5)一酸化窒素放出剤溶媒対照群:群3)における対応する上記一酸化窒素放出剤に含まれたものと等体積・同種類の溶媒(例えば、エタノールまたは無菌水)が加えられ、
6)VEGF/VEGFR阻害剤+シルデナフィル群:まず、VEGF/VEGFR阻害剤溶液が加えられ、次に、シルデナフィル溶液(VEGF/VEGFR阻害剤とシルデナフィルの最終濃度が表2に示され、シルデナフィル溶液の溶媒がDMSOであり、選択された対応する溶媒を加えることにより各群の総体積のわずかな違いを埋めた)が加えられ、
7)シルデナフィル溶媒対照群:群6)における対応する上記シルデナフィルに含まれたものと等体積のDMSOが加えられた。
【0060】
VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群は、データ処理に関与せず、実験システム誤差を評価するための参照のみとされた。一酸化窒素放出剤溶媒対照群、シルデナフィル溶媒対照群は、データ修正に用いられるため、溶媒による結果の影響がなくなっている。
24~48時間連続に培養した後、Cell Counting Kit-8(CCK-8)アッセイキット(C0037、上海碧雲天バイオテクノロジー有限会社、Beyotime Biotechnology)により細胞生存率を測定して、VEGF/VEGFR阻害剤による細胞の増殖・毒性および一酸化窒素放出剤やシルデナフィルによる増殖・毒性の緩和作用を算出した。GraphPad Prism 6.0ソフトウェア、t検定により、結果について統計分析およびプロットを行った。
表3~表6は、各種のVEGF/VEGFR阻害剤と一酸化窒素放出剤またはシルデナフィルの組み合わせ、および対応する実験結果(ここで、細胞生存率欄のデータは、VEGF/VEGFR阻害剤群に比べて、対応するVEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群(またはシルデナフィル)で増加した生存細胞のパーセンテージを表す)を例として挙げた。図5はHaCaT細胞における実験結果、図6はHOK細胞における実験結果、図7はGES-1細胞における実験結果、図8はFHs 74 Int細胞における実験結果を示す。ここで、横軸は異なる実験群と対照群、縦軸は細胞生存率(ブランク対照群の細胞生存率を100%として、他の実験群または溶媒対照群における細胞生存パーセンテージを算出した)を示す。ここで、図5A、6A、7Aおよび8Aは、いずれも異なる種類の細胞にVEGF/VEGFR阻害剤ソラフェニブトシル酸塩(V1)および一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後24時間に、CCK-8法によって測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示し、図5B、6B、7Bおよび8Bは、いずれも異なる種類の細胞にVEGF/VEGFR阻害剤スニチニブリンゴ酸塩(V3)および一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後24時間に、CCK-8法によって測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示し、図5C、6C、7Cおよび8Cは、いずれも異なる種類の細胞にVEGF/VEGFR阻害剤レゴラフェニブ(V4)および一酸化窒素放出剤(またはシルデナフィル)を投与後24時間に、CCK-8法によって測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。ここで、***は、P<0.001であって、対応するVEGF/VEGFR阻害剤単独投与群よりも有意差を有することを表し、**は、P<0.01であって、対応するVEGF/VEGFR阻害剤単独投与群よりも有意差を有することを表し、*は、P<0.05であって、対応するVEGF/VEGFR阻害剤単独投与群よりも有意差を有することを表し、統計的検定がt-testによって実施された。
【0061】
【表3】

表3および図5に示した結果から、VEGF/VEGFR阻害剤は、皮膚細胞(HaCaT)に対して増殖・毒性を有するが、一酸化窒素放出剤は、VEGF/VEGFR阻害剤による増殖・毒性に対して、シルデナフィルよりも明らかに優れた有意な緩和作用を有することが分かった。
【0062】
【表4】

表4および図6に示した結果から、VEGF/VEGFR阻害剤は、ヒト口腔粘膜上皮角化細胞(HOK)に対して増殖・毒性を有するが、一酸化窒素放出剤は、VEGF/VEGFR阻害剤による増殖・毒性に対して、シルデナフィルよりも明らかに優れた有意な緩和作用を有することが分かった。
【0063】
【表5】

表5および図7に示した結果から、VEGF/VEGFR阻害剤は、ヒト胃上皮細胞(GES-1)に対して増殖・毒性を有するが、一酸化窒素放出剤は、VEGF/VEGFR阻害剤による増殖・毒性に対して、シルデナフィルよりも明らかに優れた有意な緩和作用を有することが分かった。
【0064】
【表6】

表6および図8に示した結果から、VEGF/VEGFR阻害剤は、ヒト小腸型腸管上皮細胞(FHs 74 Int)に対して増殖・毒性を有するが、一酸化窒素放出剤は、VEGF/VEGFR阻害剤による増殖・毒性に対して、シルデナフィルよりも明らかに優れた有意な緩和作用を有することが分かった。
【0065】
実施例33-46:一酸化窒素放出剤による細胞内/外一酸化窒素レベル影響の測定
浮遊培養されたHUVEC、HaCaT、HOK、FHs 74 IntまたはGES-1細胞を消化して、細胞数をカウントすると共に、1ウェルごとに100,000-200,000細胞ずつ、24ウェルプレートに播種した。細胞が壁面に付着した場合に、一酸化窒素放出剤溶液を所定の最終濃度まで加えた(表7~8に示される)。対照群に培地を加えた。一酸化窒素放出剤が加えられた各時点(6時間、12時間、24時間および48時間、表7~8に示される)で、細胞外上清における一酸化窒素レベルを検出するための各群の上清をそれそれ50 μL採取すると同時に、残りの上清を廃棄し、細胞溶解液を加えて十分に細胞溶解後、細胞内一酸化窒素レベルを検出するための溶解液を50 μL採取した。一酸化窒素アッセイキット(S0021、Beyotime社製)により一酸化窒素含有量を検出した。
ここで、図9A~9Dは、それぞれHUVEC細胞外、HUVEC細胞内、GES-1細胞外およびGES-1細胞内で一酸化窒素放出剤を投与後6時間、12時間、24時間、48時間における一酸化窒素の相対的含有量を示す。NTGは、ニトログリセリンを表し、対照群は、基礎培地が用いられ、生理的レベルを反映する。
図10A~10Dは、それぞれ一酸化窒素放出剤(硝酸イソソルビド、ニコランジル、モルシドミンおよび亜硝酸イソアミル)によって24時間処理後、HUVEC細胞外、GES-1細胞外、HaCaT細胞外およびHOK細胞外における一酸化窒素の相対的含有量を示す。対照群は、基礎培地が用いられ、生理的レベルを反映する。ここで、**はP<0.01であって、対応する対照群よりも有意差を持つことを表し、*はP<0.05であって、対応する対照群よりも有意差を持つことを表し、統計的検定がt-testによって実施された。
図11A~11Dは、それぞれ一酸化窒素放出剤(硝酸イソソルビド、ニコランジル、モルシドミンおよび亜硝酸イソアミル)によって24時間処理後、HUVEC細胞内、GES-1細胞内、HaCaT細胞内およびHOK細胞内における一酸化窒素の相対的含有量を示す。対照群は、基礎培地が用いられ、生理的レベルを反映する。ここで、***はP<0.001であって、対応する対照群よりも有意差を持つことを表し、**はP<0.01であって、対応する対照群よりも有意差を持つことを表し;*はP<0.05であって、対応する対照群よりも有意差を持つことを表し、統計的検定がt-testによって実施された。
表7~8および図9~11に示した結果から、一酸化窒素放出剤は、一酸化窒素を放出することによって、細胞内の一酸化窒素レベルを向上させることができることが分かった。
【0066】
【表7】
【0067】
【表8】
【0068】
実施例47-54:シルデナフィルは一酸化窒素を放出することができず、HUVEC、HaCaTまたはGES-1細胞内および細胞外のNOレベルを向上させることもできない
浮遊培養されたHUVEC、HaCaTまたはGES-1細胞を消化して、細胞数をカウントすると共に、1ウェルごとに500,000~1,000,000細胞ずつ、6ウェルプレートに播種した。細胞が壁面に付着した場合に、シルデナフィル溶液を所定の最終濃度まで加えた(表9~10に示される)。対照群に基礎培地を加えた。シルデナフィルが加えられた各時点(6時間、12時間、24時間および48時間)で、細胞外NOレベルを検出するための各群の上清をそれぞれ50 μL採取すると同時に、残りの上清を廃棄し、細胞溶解液を加えて十分に細胞溶解後、細胞内NOレベルを検出するための溶解液を50 μL採取した。一酸化窒素アッセイキット(S0021、Beyotime社製)により一酸化窒素含有量を検出した。図12~13は、実験結果を例として挙げた。
【0069】
ここで、図12A~12Bは、それぞれ100 μMのシルデナフィルによりHUVEC細胞を処理後の各時点(6時間、12時間、24時間、48時間)での細胞外/内NO相対的含有量を示す。図12C~12Dは、それぞれ異なる濃度のシルデナフィルによりHUVEC細胞を処理後24時間における細胞外/内NO相対的含有量を示す。対照群は、基礎培地が用いられ、生理的レベルを反映する。
図13A~13Bは、それぞれ100 μMのシルデナフィルによりGES-1細胞を処理後24時間における細胞外/内NO相対的含有量を示す。図13C~13Dは、それぞれ100 μMのシルデナフィルによりHaCaT細胞を処理後24時間における細胞外/内NO相対的含有量を示す。対照群は、基礎培地が用いられ、生理的レベルを反映する。
これらの結果から、シルデナフィルは、一酸化窒素を放出することができず、HUVEC、HaCaTまたはGES-1細胞内および細胞外のNOレベルを向上させることもできないことが分かった。
【0070】
【表9】

【表10】
【0071】
実施例55-108:一酸化窒素放出剤はインビトロで低分子VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群を予防/治療することができる
ラットモデルを構築し、8週齢メスSDラットにそれぞれ表11に示した低分子VEGFR/VEGF阻害剤を毎日強制経口投与後数日後に、ラットが足に手足症候群症状を発症した(図14に示される)。ラットは、かかるVEGFR/VEGF阻害剤投与後、手足症候群症状を発症し、かつ症状が非常に似ている点で、ヒトに類似している。したがって、ラットは、VEGFR/VEGF阻害剤による副作用(例えば、手足症候群)を模倣するための最適な動物モデルである。
上記ラット(約200g)を1週間飼育しながら適応後、10匹を1群として群分けし、強制経口投与試験を行った。各種の低分子VEGFR/VEGF阻害剤をひまし油:エタノール=1:1の混合溶液に溶解させ、強制経口投与前に、上記VEGFR/VEGF阻害剤薬剤溶液を所望の濃度にPBSで希釈(PBS溶液で約3倍希釈)し、単回強制経口投与量が2mLを超えず、用量が表11に示されるように設定された。強制経口投与された場合に、ラットに対して、左足(足蹠および趾間)に一酸化窒素放出剤を含む軟膏(約0.05g)を塗布し、右足をブランク対照とし、薬剤を塗布しないように塗布後、そのラットを固定筒体に入れて固定後4時間に、解放すると共に、塗布箇所に残った薬剤を清水で拭き取り、ケージに戻した。VEGFR/VEGF阻害剤の強制経口投与頻度は表11に示されるが、一酸化窒素放出剤は1日に1回のみ塗布された。試験が終わるまで、強制経口投与と塗布作業を毎日繰り返した。塗布後15~18日目に、塗布側が正常に保持されたか、または非塗布側の手足症候群よりも著しく軽いラットの匹数を手足症候群が効果的に抑制されたラットの匹数として統計した。
表11は、各VEGFR/VEGF阻害剤および一酸化窒素放出剤軟膏の動物実験組み合わせ、および対応する実験結果を例として挙げた(ここで、制御率欄の数=1群ごとに手足症候群が効果的に抑制されたラットの匹数/1群ごとに手足症候群モデルが構築された匹数×100%になり、手足症候群モデル構築率が1群ごとに30%~70%になり、すなわち10匹ラットのうち、約3~7匹が手足症候群モデルとなり、また、異なる薬剤群では、手足症候群モデルの構築過程に、ラットが死亡したか、またはモデル構築に成功しなかったなどのことがいずれもごくわずかであった)。
【0072】
【表11-1】

【表11-2】

【表11-3】

注釈:抗がん剤のモデル構築率は、一定ではなく、手足症候群モデル構築率が1群ごとに30%~70%であって、すなわち10匹ラットのうち、約3~7匹が手足症候群モデルとなり、また、異なる薬剤群では、手足症候群モデル構築過程に、ラットが死亡したか、またはモデル構築に成功しなかったなどのことがいずれもごくわずかであった。制御率とは、実験群の手足症候群モデルが構築されたラットのうち、塗布側が未塗布側よりも軽い足の症状を発症したラットが占める比率である。
【0073】
表11に示した結果から、上記一酸化窒素放出剤は、VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群を効果的に予防、治療することができることが分かった。しかも、図15~16に示した結果からも、上記一酸化窒素放出剤は、VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群を効果的に予防、治療することができることを反映した。図15は、実施例55-100の投与群における1匹の典型的なラットは、左足に薬剤(一酸化窒素放出剤軟膏)が塗布された場合に、その左足の手足症候群が著しく緩和されたことを表し、図16は、実施例101-108の投与群における1匹の典型的なラットは、右足に薬剤(一酸化窒素放出剤軟膏)が塗布された場合に、その右足の手足症候群も著しく緩和されたことを表した。
【0074】
実施例109-110:一酸化窒素放出剤はインビトロで低分子VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群を予防/治療することができる
ニトロソモナス属ウォッシュの調製は、ニトロソモナス属(Nitrosomonas europaea、カタログ番号:ATCC 19718)を無機培養液(カタログ番号:ATCC 2265)に播種して、約200rpm、26℃、暗条件下で、著しく濁るまで3~5日増幅培養することによって、菌母液を得て、また、母液を血球計算盤により測定される異なる細菌濃度(例えば、107、108、109、1010個/mL)に上記無機培養液によって希釈することによって、ニトロソモナス属ウォッシュを得た。
ラットモデルの構築は、8週齢メスSDラットに、それぞれ表12に示した低分子VEGFR/VEGF阻害剤を毎日強制経口投与し、数日後、その足で手足症候群の症状を発症させた。ラットは、上記VEGFR/VEGF阻害剤投薬後、手足症候群症状を発症し、かつ症状が非常に似ている点で、ヒトに類似している。従って、ラットは、VEGFR/VEGF阻害剤による副作用(例えば、手足症候群)を模倣するための最適な動物モデルである。
上記ラット(約200 g)を1週間飼育しながら適応後、10匹を1群として群分けし、強制経口投与試験を行った。各種の低分子VEGFR/VEGF阻害剤をひまし油:エタノール=1:1の混合溶液に溶解させ、強制経口投与前に、上記VEGFR/VEGF阻害剤薬剤溶液をPBSで所望の濃度に希釈させ(PBS溶液で約3倍希釈)、単回強制経口投与量が2 mLを超えず、用量が表12に示されるように設定された。強制経口投与後、ラットを固定筒体で固定すれば、1日に1回左足を細菌ウォッシュに浸し、10分間後ラットを解放し、右足をブランク対照として浸漬しないようにした。VEGFR/VEGF阻害剤の強制経口投与頻度は、表12に示されるが、細菌ウォッシュ中への浸漬は1日に1回のみとした。ラットが死亡するまで強制経口投与と浸漬試験を毎日繰り返していた。塗布後15~18日に、浸漬側が正常に保持されたか、または非浸漬側の手足症候群よりも著しく軽いラットの匹数を手足症候群が効果的に抑制されたラットの匹数として統計した。
【0075】
表12は、各VEGFR/VEGF阻害剤および一酸化窒素放出剤軟膏が投与される動物実験、および対応する実験結果を例として挙げた(ここで、制御率欄の数=1群ごとに手足症候群が効果的に抑制されたラットの匹数/1群ごとに手足症候群モデルが構築された匹数×100%になり、手足症候群モデル構築率が1群ごとに30%~70%になり、すなわち10匹のラットのうち、約3~7匹が手足症候群モデルとなり、また、異なる薬剤群ラットでは、手足症候群モデルの構築過程に、ラットが死亡したか、またはモデル構築に成功しなかったなどのことがいずれもごくわずかであった)。
【0076】
【表12】

表12に示した結果から、一酸化窒素放出剤ウォッシュは、VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群を効果的に予防、治療することができることが分かった。
【0077】
実施例111-112:一酸化窒素放出剤はインビトロでタンパク質高分子VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群を予防/治療することができる
ラムシルマブ(Ramucirumab)またはベバシズマブ(Bevacizumab)を、生理食塩水で所望の濃度に希釈させた。上記ラット(約200 g)を1週間飼育しながら適応後、10匹を1群として群分けし、注入投与試験を行った。希釈されたラムシルマブを、週に1回、40 mg/kgの投与量で60分間静脈注入し、同時にパクリタキセルを併用した(10 mg/kg)。ラットに対して、左足(足蹠および趾間)に一酸化窒素放出剤を含む軟膏(約0.05 g)を塗布し、右足をブランク対照とし、薬剤を塗布しないように塗布後、そのラットを固定筒体に入れて固定後4時間に、解放すると共に、塗布箇所に残った薬剤を清水で拭き取り、ケージに戻すと共に、実験現象を観察し、ラットが死亡するまで終わるように、実験を2~4週間連続に行った。
表13は、各VEGFR/VEGF阻害剤および一酸化窒素放出剤軟膏が投与される動物実験、および対応する実験結果を例として挙げた(ここで、制御率欄の数=1群ごとに手足症候群が効果的に抑制されたラットの匹数/1群ごとに手足症候群モデルが構築された匹数×100%になり、手足症候群モデル構築率が1群ごとに10%~30%になり、すなわち10匹ラットのうち、約1~3匹が手足症候群モデルとなった)。
【0078】
【表13】

注釈:抗がん剤のモデル構築率は、一定ではなく、手足症候群モデル構築率が1群ごとに10%~30%であって、すなわち10匹ラットのうち、約1~3匹が手足症候群モデルになり、また、異なる薬剤群では、手足症候群モデル構築過程に、ラットが死亡したか、またはモデル構築に成功しなかったなどのことがいずれもごくわずかであった。制御率とは、実験群の手足症候群モデルが構築されたラットのうち、塗布側が未塗布側よりも軽い足の症状を発症したラットが占める比率である。
図15は、実施例111-112の投与群における1匹の典型的なラットは、左足に薬剤(一酸化窒素放出剤軟膏)が塗布された場合に、その左足、正面および右足の状況を示す。
表13および図15に示した結果から、一酸化窒素放出剤軟膏は、モノクローナル抗体系VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群を効果的に予防することができることが分かった。
【0079】
実施例113-124:ラット動物モデルにおける低分子VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群の治療を検証する実験
上記ラット(約200 g)を1週間飼育しながら適応後に、10匹を1群として群分けし、強制経口投与試験を行った。VEGFR/VEGF阻害剤をひまし油:エタノール=1:1の混合溶液に溶解させ、強制経口投与前に、PBSで所望の濃度に希釈させ(PBS溶液で約3倍希釈)、強制経口投与量が2 mLを超えず、用量が表14に示されるように設定された。ラットが手足症候群を発症するまでにVEGFR/VEGF阻害剤を毎日強制経口投与し続けていたが、そのラットが手足症候群を発症すると、ラットの治療実験を行った。治療実験過程に、VEGFR/VEGF阻害剤を(強制経口投与頻度が表14に示した通りであった)低頻度に強制経口投与し続けて、強制経口投与後、ラットに対して、左足(足蹠および趾間)に一酸化窒素放出剤である軟膏(約0.05 g)を塗布し、右足をブランク対照として塗布しないように塗布後、そのラットを、固定筒体に固定後4時間に解放すると共に、塗布箇所に残った薬剤を清水で拭き取り、ケージに戻した。VEGFR/VEGF阻害剤の強制経口投与頻度は、表14に示されるが、一酸化窒素放出剤は、1日に1回のみ塗布された。塗布後6~10日に、塗布側の足が正常に回復したか、または非塗布側の足よりも著しく軽いラットの匹数を、手足症候群が効果的に治療されたラットの匹数として統計した。
表14は、各低分子VEGFR/VEGF阻害剤および一酸化窒素放出剤軟膏が投与された動物実験、および対応する実験結果を例として挙げた(ここで、緩和率欄の数=1群ごとに手足症候群が効果的に治療されたラットの匹数/1群ごとに手足症候群モデルが構築された匹数×100%)。
【0080】
【表14-1】

【表14-2】

注釈:抗がん剤のモデル構築率は、一定ではなく、手足症候群モデル構築率が1群ごとに40%~70%であって、すなわち10匹ラットのうち、約1~3匹が手足症候群モデルになり、また、異なる薬剤群では、手足症候群モデル構築過程に、ラットが死亡したか、またはモデル構築に成功しなかったなどのことがいずれもごくわずかであった。制御率とは、実験群の手足症候群モデルが構築されたラットのうち、塗布側が未塗布側よりも軽い足の症状を発症したラットが占める比率である。
図17は、実施例113-124の投与群における1匹の典型的なラットは、左足に薬剤(一酸化窒素放出剤軟膏)が塗布された場合に、その左足、正面および右足の状況を示す。図18は、実施例124の投与群における1匹の典型的なラットは右足塗布(一酸化窒素放出剤軟膏)後、その左足と右足の状況を示す。
表14および図17-18における結果から、一酸化窒素放出剤軟膏は、低分子VEGFR阻害剤による手足症候群を効果的に治療することができることが分かった。
【0081】
実施例125-142:低分子VEGFR/VEGF阻害剤による手足症候群の予防実験における、0.2%ニトログリセリン軟膏と従来の臨床試験的薬剤および他の一酸化窒素放出剤の比較
上記ラット(約200g)を1週間飼育しながら適応後に、10匹を1群として群分けし、強制経口投与試験を行った。VEGFR阻害剤をひまし油:エタノール=1:1の混合溶液に溶解させ、強制経口投与前に、PBSで所望の濃度に希釈させ(PBS溶液で約3倍希釈)、単回強制経口投与量が2mLを超えず、用量が表15に示されるように設定された。強制経口投与後、ラットに対して、左足(足蹠および趾間)にニトログリセリン軟膏(約0.05g)を塗布し、右足に同様にして従来臨床試験的薬剤または他の一酸化窒素放出剤軟膏を塗布後、そのラットを固定筒体で固定後約4時間に解放すると共に、塗布箇所に残った薬剤を清水で拭き取り、ケージに戻した。VEGFR/VEGF阻害剤の強制経口投与頻度は、表15に示されるが、従来の臨床上で他の皮膚薬剤および一酸化窒素放出剤が1回のみ塗布された。臨床試験的薬剤(または他の一酸化窒素放出剤)塗布側の足が手足症候群症状を発症するか、またはラットが死亡するまでVEGFR/VEGF阻害剤強制経口投与を毎日繰り返していた。塗布後15~18日に、ニトログリセリン軟膏塗布側の足が正常か、または臨床試験的薬剤(または他の一酸化窒素放出剤)塗布側の足よりも著しく軽いラットの匹数を、手足症候群が効果的に予防されるラットの匹数として統計した。
表15は、0.2%ニトログリセリン軟膏と臨床試験的薬剤(または他の一酸化窒素放出剤)の実験組合わせ、および対応する実験結果を例として挙げた(ここで、相対緩和率欄の数=手足症候群は左足が右足よりも著しく軽いラットの匹数/1群ごとに手足症候群を発症した匹数×100%)。
【0082】
【表15】

表15に示した結果から、0.2%ニトログリセリン軟膏は、1%のシルデナフィルよりも、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤による手足症候群を効果的に制御可能であり;従来臨床で他の試験的薬剤(VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤による手足症候群の治療効果がほぼない)よりもVEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤による手足症候群を効果的に抑制可能であり;他の一酸化窒素放出剤軟膏よりも、VEGFR阻害剤および/またはVEGF阻害剤による手足症候群をより効果的に制御可能であったことが判明した。ニトログリセリン軟膏は、0.2%の濃度が従来臨床上で他の試験的薬剤の濃度より明らかに低いことによって、0.2%の濃度でも想像以上の技術的効果を達成したことが分かった。
【0083】
実施例143:一酸化窒素放出剤による上記VEGFR/VEGF阻害剤治療効果の影響
BALB/Cヌードマウス(肝臓がん細胞HepG2異種移植)モデルを構築して安定後、モデルマウスを、10匹を1群として3群(3群マウスの腫瘍サイズ平均値をできるだけ一致させる)に群分けて、強制経口投与および薬剤塗布試験を行った。
VEGFR阻害剤をひまし油:エタノール=1:1(容積比)の混合溶液に溶解させ、強制経口投与前に、PBSで所望の濃度に希釈させ(PBS溶液で約3倍希釈)、強制経口投与量が0.2 mLを超えず、用量が毎日30 mg/kgになるように設定された。担癌マウスにソラフェニブを毎日経口投与することによって腫瘍を制御または縮小する。同時に、外用投与するように、マウスの背に副作用治療薬剤を塗布した(具体的に、A群:強制経口投与+賦形剤塗布、B群:強制経口投与+0.15%ニトログリセリン軟膏塗布、C群:強制経口投与+0.2%ニトログリセリン軟膏塗布のように群分けて、マーカーペンで約5.8平方センチメートルのベタ塗りエリアを標識すると共に、該ベタ塗りエリアがマウスの口から接触可能なエリアでもなく、腫瘍隣接エリアでもないようにした)。毎日強制経口投与後、モデルマウスの背における標識されたエリアに、綿棒でブランク軟膏を皮膚を潤滑に保つように均一に塗りつければよく、塗布後、各匹のマウスをそれぞれ1つの相対的に独立した空間に4時間放置後、紙タオル、または水付き紙タオルでマウスの背に残った軟膏を軽く拭き取り、次に、マウスを、この前飼育されたケージに返し、通常に活動させるようにした。2日おきに腫瘍のサイズを測定しながら記録した。20日間実験して終われば、マウスを解剖して腫瘍を取り出し、計りながら記録し、そして、異なる実験群における腫瘍容積変化を観察した。
実験結果は図19に示された。図19の実験結果から、異なる実験群において、腫瘍容積は、軟膏塗布群(B群またはC群)が賦形剤群(A群)よりも小さく、且つ、C群がB群に対して近いかまたはやや小さかったことが分かり、それによって、一酸化窒素放出剤の外用軟膏は、腫瘍に対するVEGFR/VEGF阻害剤の効果を低減することがなかった。
【0084】
実施例144-145:VEGFR/VEGF阻害剤によるHUVEC、HaCaTの細胞増殖・毒性に対する一酸化窒素放出剤の緩和作用およびカルシウム拮抗剤との比較
カルシウム拮抗剤(例えば、ジルチアゼムDiltiazem)は、抗VEGFRマルチキナーゼ阻害剤による副作用である手足症候群(HFS)を治療することができると報告されている(米国特許出願US2016/0101114A1を参照)。しかしながら、ジルチアゼムは、抗VEGFRマルチキナーゼ阻害剤による手足症候群(HFS)への治療効果が非常に限定的である。本発明において、一酸化窒素放出剤の効果をカルシウム拮抗剤と比較した。
浮遊培養されたHUVEC、HaCaT細胞を消化して細胞数をカウントすると共に、1ウェルごとに5000細胞ずつ、96ウェルプレートに播種した。各ウェルは、1ウェルごとに基礎培地を含むとともに、最終的に含有される液体体積が約100 μLであるように、ブランク対照群、VEGF/VEGFR阻害剤群、VEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群、VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群、一酸化窒素放出剤溶媒対照群、VEGF/VEGFR阻害剤+カルシウム拮抗剤組、およびカルシウム拮抗剤溶媒対照群に分けられた。群分けは、具体的に以下の通りであった。
1)ブランク対照群:通常の培地交換以外に、いかなる追加的な溶液も加えられなく、
2)VEGF/VEGFR阻害剤群:VEGF/VEGFR阻害剤溶液(最終濃度が表16に示され、VEGF/VEGFR阻害剤溶液の溶媒がDMSOである)が加えられ、
3)VEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群:VEGF/VEGFR阻害剤溶液および一酸化窒素放出剤溶液(VEGF/VEGFR阻害剤と一酸化窒素放出剤の最終濃度が表16に示され、一酸化窒素放出剤の溶解性に基づき、一酸化窒素放出剤溶液の溶媒としてエタノールまたは無菌水を選択し、選択された対応する溶媒を加えることにより各群の総体積のわずかな違いを埋めた)が加えられ、
4)VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群:群2)における対応する上記VEGF/VEGFR阻害剤溶液に含まれたものと等容積のDMSOが加えられ、
5)一酸化窒素放出剤溶媒対照群:群組3)における対応する上記一酸化窒素放出剤に含まれたものと等体積・同種類の溶媒(例えば、エタノールまたは無菌水)が加えられ、
6)VEGF/VEGFR阻害剤+カルシウム拮抗剤組:まず、VEGF/VEGFR阻害剤溶液が加えられ、次に、カルシウム拮抗剤溶液(VEGF/VEGFR阻害剤とカルシウム拮抗剤の最終濃度が表16に示され、カルシウム拮抗剤溶液の溶媒がともにDMSOであり、選択された対応する溶媒を加えることにより各群の総体積のわずかな違いを埋めた)が加えられ、
7)カルシウム拮抗剤溶媒対照群:群6)における対応する上記カルシウム拮抗剤に含まれたものと同容積のDMSOが加えられた。
【0085】
VEGF/VEGFR阻害剤溶媒群は、データ処理に関与せず、実験システム誤差を評価するための参照のみとされた。一酸化窒素放出剤溶媒対照群、カルシウム拮抗剤溶媒対照群は、データ修正に用いられるため、溶媒による結果の影響がなくなっている。
24時間連続に培養後、Cell Counting Kit-8(CCK-8)アッセイキット(C0037、Beyotime Biotechnology)により細胞の生存率を測定して、細胞に対するVEGF/VEGFR阻害剤の増殖・毒性および一酸化窒素放出剤またはカルシウム拮抗剤による増殖・毒性の緩和作用を算出した。GraphPad Prism 6.0ソフトウェア、t検定により、結果について統計分析およびプロットを行った。
表16は、各種のVEGF/VEGFR阻害剤と一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)の組合わせ、および対応する実験結果を例として挙げた(ここで、細胞生存率欄のデータは、VEGF/VEGFR阻害剤群に比べて、対応するVEGF/VEGFR阻害剤+一酸化窒素放出剤群(またはカルシウム拮抗剤)で増加した生存細胞のパーセンテージを表す)。図20は、HUVEC細胞にVEGF/VEGFR阻害剤ソラフェニブトシル酸塩(V1)と一酸化窒素放出剤(またはジルチアゼム)を投与後24時間に、CCK-8法によって測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。図21は、HaCaT細胞にVEGF/VEGFR阻害剤ソラフェニブトシル酸塩(V1)と一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後24時間に、CCK-8法によって測定された細胞増殖・毒性の例示的結果を示す。ここで、横軸は異なる実験群と対照群、縦軸は細胞の生存率(ブランク対照群の細胞生存率を100%として他の実験群または溶媒対照群における細胞の生存パーセンテージを算出した)を表す。ここで、***はP<0.001、**はP<0.01、*はP<0.05を示し、対応するVEGF/VEGFR阻害剤単独投与群よりも有意差を持ち、統計的検定がt-testによって実施される。
【0086】
【表16】

実施例146:一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)による細胞外一酸化窒素レベル影響の測定
一酸化窒素放出剤とカルシウム拮抗剤による細胞外一酸化窒素含有量の影響を比較したところ、結果として、カルシウム拮抗剤が細胞外一酸化窒素含有量を増加することができなかったし、一酸化窒素を生成することができなかったので、一酸化窒素放出剤に該当しない。
浮遊培養されたHaCaT細胞を消化して細胞数をカウントすると共に、1ウェルごとに20000細胞ずつ、24ウェルプレートに播種した。細胞が壁面に付着した場合に、一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)溶液を所定の最終濃度(表17に示される)まで加えた。対照群に基礎培地を加えた。一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)が加えられた後24 hに、細胞外の上清における一酸化窒素レベルを検出するための各群の上清を50 μL採取し、一酸化窒素アッセイキット(S0021,BeyotimeBiotechnology)により一酸化窒素含有量を検出した。
図22は、HaCaT細胞外で一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後24時間における一酸化窒素の相対的含有量を示す。対照群は基礎培地であって、生理的レベルを反映する。ここで、***はP<0.001、**はP<0.01、*はP<0.05を示し、対応する対照群よりも有意差を持ち、統計的検定がt-testによって実施された。
【0087】
【表17】

実施例147:一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)によるHaCaT細胞のカルモジュリン、カルレティキュリン発現レベル影響の測定
カルモジュリン(CaM)は、1種類の中間カルシウム結合メッセンジャータンパク質であり、二次メッセンジャーCa2 +の細胞内標的(Chin D and Means AR, 2000)である。カルモジュリンは、カルシウム情報伝達経路の一部として、活性化のためにCa2 +イオンとの結合が必要であるので、通常、カルシウム情報伝達におけるマーカーとして用いられる(Berchtold and Villalobo, 2014)。カルレティキュリン(CRT)は、Ca2 +イオンとの結合によって不活性化になる。(Michalak M, et al., 2002)本発明において、HaCaT細胞におけるカルモジュリン、カルレティキュリン発現レベルに対する一酸化窒素放出剤とカルシウム拮抗剤の影響を比較した。
浮遊培養されたHaCaT細胞を消化して細胞数をカウントすると共に、6ウェルプレートに播種した。1ウェルごとに細胞を200000個播種した。細胞が壁面に付着した場合に、一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)溶液を所定の最終濃度100 μMまで加えた。対照群に基礎培地を加えた。一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を加えた後24 hに、RIPAライセート(P0013C,Beyotime Biotechnology)でタンパク質を抽出し、Western Blotでカルモジュリン、カルレティキュリンの発現変化を検出した。
図23は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後24時間におけるカルモジュリン(CaM)の発現レベルを示す。図24は、カルモジュリンの相対発現量グレー値解析結果を示す。図25は、HaCaT細胞に一酸化窒素放出剤(またはカルシウム拮抗剤)を投与後24時間におけるカルレティキュリン(CRT)の発現レベルを示す。図26は、カルレティキュリンの相対発現量グレー値解析結果を示す。
Image Labを用いてグレー値解析を行い、GraphPad Prism 6.0ソフトウェア、t検定によって結果に対して統計分析およびプロットを行った。ここで、***はP<0.001、**はP<0.01、*はP<0.05を示し、対応する対照群よりも有意差を持ち、t-testによる統計的検定が行われた。
図23図24の結果から、カルモジュリンは、対照群よりも、一酸化窒素放出剤群のほうが著しい変化がなく、また、カルシウム拮抗剤ジルチアゼム群が有意に低減したことが分かり、図25図26の結果から、カルレティキュリンは、対照群よりも、一酸化窒素放出剤群が少し低減し、また、カルシウム拮抗剤ニフェジピン群のカルレティキュリン発現が有意に向上したことが分かる。そのため、一酸化窒素放出剤は、カルシウム拮抗剤に該当しない。
【0088】
実施例148-159:低分子VEGF/VEGFR 阻害剤による手足症候群の予防実験における、0.2%ニトログリセリン軟膏と他の一酸化窒素放出剤およびカルシウム拮抗剤の比較
上記ラット(約200 g)を1週間飼育しながら適応後、10匹を1群として群分けし、強制経口投与試験を行った。VEGF/VEGFR阻害剤をひまし油:エタノール=1:1の混合溶液に溶解させ、強制経口投与前に、PBSで所望の濃度に定容希釈させ(PBS溶液で約3倍希釈)、単回強制経口投与量が2 mLを超えず、用量が表18に示されるように設定された。強制経口投与後、ラットに対して、左足(足蹠および趾間)にニトログリセリン軟膏(または他の一酸化窒素放出剤)(約0.05 g)を塗布し、右足に同様にしてカルシウム拮抗剤軟膏を塗布後、そのラットを固定筒体で固定後約4時間に解放すると共に、塗布箇所に残った薬剤を清水で拭き取り、ケージに戻した。VEGF/VEGFR阻害剤の強制経口投与頻度は、表18に示される。カルシウム拮抗剤軟膏が塗り付けられた足が手足症候群症状を発症するか、またはラットが死亡するまで、VEGF/VEGFR阻害剤強制経口投与を毎日繰り返していた。塗布後15~18日に、ニトログリセリン軟膏(または他の一酸化窒素放出剤)塗布側の足が正常か、またはカルシウム拮抗剤軟膏塗布側の足よりも著しく軽いラットの匹数を計算して、手足症候群が効果的に予防されるラットの匹数として統計した。
表18は、0.2%ニトログリセリン軟膏(または他の一酸化窒素放出剤)とカルシウム拮抗剤軟膏の実験組合わせ、および対応する実験結果を例として挙げた(ここで、相対緩和率欄の数=手足症候群は左足が右足よりも著しく軽いラットの匹数/1群ごとに手足症候群を発症した匹数×100%)。
【0089】
【表18】

注釈:抗がん剤のモデル構築率は、一定ではなく、手足症候群モデル構築率が1群ごとに30%~90%であって、すなわち10匹ラットのうち、約3~9匹が手足症候群モデルとなり、また、異なる薬剤群では、手足症候群モデル構築過程に、ラットが死亡したか、またはモデル構築が成功しなかったなどのことがいずれもごくわずかであった。制御率とは、実験群の手足症候群モデルが構築されたラットのうち、ニトログリセリン軟膏が塗布された足の手足症状がもう1匹の他の薬剤が塗布された足の症状よりも軽いラットが占める比率である。
図27は、実施例148-153の投与群における1匹の典型的なラットは、左足が(0.2%ニトログリセリン軟膏)塗布され、右足が(0.2%ジルチアゼム軟膏)塗布された場合に、その左足、正面と右足の状況を示す。図28は、実施例154の投与群における1匹の典型的なラットは、左足が(0.2%硝酸イソソルビドと一硝酸イソソルビドの混合軟膏)塗布され、右足が(0.2%ジルチアゼム軟膏)塗布された場合に、その左足、正面と右足の状況を示す。
表18および図27に示した結果から、0.2%ニトログリセリン軟膏および他の一酸化窒素放出剤軟膏は、0.2%のカルシウム拮抗剤軟膏よりも、VEGF/VEGFR阻害剤による手足症候群を効果的に制御することができることが分かった。
【0090】
ここで、本明細書では、発明者に周知の本発明を実施するための形態を包含する本発明の好ましい実施形態を記載した。当該技術分野における当業者にとっては、上記の明細書を読んだうえで、それらの好ましい実施形態の変形が明らかである。発明者は、当業者が必要に応じてこのような変形を使用可能であると予想し、且つ、本明細書に具体的に記載された形態以外の形態で本発明を実施することを意図している。このため、本発明は、法律の適用により許容される本願の添付の請求範囲に記載した要旨のあらゆる修正と均等物を包含する。また、本明細書に特に説明しないまたは文脈と明確に矛盾しない限り、本発明は、上述のような要素のあらゆる可能な変形の任意の組合わせを包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28