IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシタッツメディズィン デア ヨハネス グーテンベルク−ユニバーシタット マインツの特許一覧

特許7520386持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用
<>
  • 特許-持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用 図1
  • 特許-持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用 図2
  • 特許-持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用 図3
  • 特許-持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用 図4
  • 特許-持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用 図5
  • 特許-持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用 図6
  • 特許-持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】持続性感染または癌の予防または治療における医薬組成物、ワクチン及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240716BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K31/122
A61K31/4745
A61P43/00 121
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P35/00
A61K39/39
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021523181
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019079821
(87)【国際公開番号】W WO2020094496
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】18204287.9
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520363878
【氏名又は名称】ユニバーシタッツメディズィン デア ヨハネス グーテンベルク-ユニバーシタット マインツ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ラドサック,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ソール,ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】スタッセン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,アン-カトリン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0100477(US,A1)
【文献】Journal of Dermatological Science,2017年,Vol.87,pp.260-267,http://dx.doi.org/10.1016/j.jdermsci.2017.07.018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 31/00-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分:
(a)ジスラノール(アントラリン、シグノリン)、
(b)イミキモド(R837)
(c)少なくとも1つのペプチド抗原、を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのペプチド抗原が、(i)主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCI)リガンド、(ii)主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCII)リガンド、または、(iii)前記MHCI及び/またはMHCIIリガンドのうちの1つ以上を含むペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのペプチド抗原が、配列番号1(PLDGEYFTL)、配列番号2(YMNGTMSQV),配列番号3(AAGIGILTV)、配列番号4(VLRENTSPK)、配列番号5(SPSSNRIRNT)、配列番号6(RLVTLKDIV)、配列番号7(AVFDRKSDAK)、配列番号8(GLSPTVWLSV)、配列番号9(ILKEPVHGV)、配列番号10(KIRLRPGGK)、配列番号11(TPGPGVRYPL)、配列番号12(ILGFVFTLTV)、配列番号13(VLTDGNPPEV)、配列番号14(TQHFVQENYLEY)、配列番号15(WRRAPAPGAKAMAPG)、配列番号16(FRKQNPDIVIQYMDDLYVG)、配列番号17(RIHIGPGRAFYTTKNIIGTI)、配列番号18(PGPLRESIVCYFMVFLQTHI)、配列番号19(PYYTGEHAKAIGN)、配列番号20,(IAFNSGMEPGVVAEKV)、配列番号21(KQEELERDLRKTKKKI)、配列番号22(GRDIKVQFQSGGNNSPAV)、配列番号23(SIINFEKL)、配列番号24(SIIQFEHL)、配列番号25(SGPSNTPPEI)、及び前記アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が化学基、好ましくはNHまたはCHに連結されているその修飾形態のアミノ酸配列を含む合成ペプチドまたは単離された天然に存在するペプチドである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、0.3125重量%~4重量%のジスラノール(アントラリン、シグノリン)、0.1重量%~10重量%のイミキモド(R837)、及び0.01重量%~30重量%の少なくとも1つのペプチド抗原、を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物の前記3つの成分が、無傷のまたは病変の皮膚領域への局所投与に適合した形態で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物が、薬学的に許容されるビヒクル、希釈剤、アジュバントまたは賦形剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物がワクチンの形態で提供される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
持続性のウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症の予防または治療に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
癌の予防または治療に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも以下の成分:
(a)ジスラノール(アントラリン、シグノリン)、
(b)イミキモド(R837)
(c)少なくとも1つのペプチド抗原を含む医薬併用調製物であって、
成分(a)及び成分(b)及び(c)が、少なくとも2つの別個の製剤で存在する、調製物。
【請求項11】
前記製剤中の成分(a)、成分(b)及び成分(c)が、請求項1~のいずれか一項に記載のとおり定義される、請求項に記載の医薬併用調製物。
【請求項12】
成分(a)の前記製剤が、成分(b)及び前記成分(c)の製剤と同時にまたは連続してヒトまたは動物の身体に適用されるように適合されている、請求項10または請求項11に記載の医薬併用調製物。
【請求項13】
持続性のウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症の予防または治療に使用するための、請求項1012のいずれか一項に記載の医薬併用調製物。
【請求項14】
癌の予防または治療に使用するための、請求項1012のいずれか一項に記載の医薬併用調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジスラノール(アントラリン、シグノリン)、または他のアントロンまたはヒドロキシアントラセン、少なくとも1つのToll様受容体7(TLR7)リガンド、及び少なくとも1つのペプチド抗原からなる群から選択される少なくとも1つの酸化ストレッサーを含む医薬組成物に関する。本発明は、これらの成分を含む医薬併用調製物、及び持続性ウイルス感染症、細菌感染症もしくは真菌感染症、または癌の予防もしくは治療に使用するためのそのような医薬組成物または併用調製物の使用にさらに関する。本発明の医薬組成物または併用調製物は、ヒトまたは動物の身体の皮膚への局所適用に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
自然免疫系の活性化は、適応免疫応答を開始するための前提条件である。これらの応答を誘発する主要経路のうちの1つは、Toll様受容体(TLR)を介した異物の認識であり、その結果として、抗原提示細胞(APC)が活性化され、様々な炎症誘発性メディエーターが産生される(Takeda K et al.,Toll-like receptors,Annu Rev Immunol(2003),Vol.21:335-376)。
【0003】
TLRは、様々な外因性及び内因性リガンドを認識し、天然及び合成TLRリガンドがTLRへ結合することにより、複数のサイトカインの産生が誘導され、その結果として自然免疫及び獲得免疫が強化される(Vasilakos JP,Tomai MA.The use of Toll-like receptor 7/8 agonists as vaccine adjuvants.Expert Rev Vaccines.2013;12:809-19;Aranda F,Vacchelli E,Obrist F,Eggermont A,Galon J,Sautes-Fridman C,Cremer I,Henrik Ter Meulen J,Zitvogel L,Kroemer G,Galluzzi L.Trial Watch:Toll-like receptor agonists in oncological indications.Oncoimmunology.2014;3:e29179;Dowling JK,Mansell A.Toll-like receptors:the swiss army knife of immunity and vaccine development.Clin Transl Immunology.2016;5:e85)。TLRに結合するように設計された小さい化合物は、感染症及び癌のワクチン及びアジュバントの潜在的な薬物である。エンドソームで発現するTLR7及びTLR8は、構造的類似性を有しており、微生物の一本鎖RNA(ssRNA)を認識する。合成ssRNAのイミダゾキノリン化合物であるイミキモド(R837)及びレシキモド(R848)は、TLR7のみ、及びTLR7とTLR8の両方にそれぞれ結合する(Dockrell DH,Kinghorn GR.Imiquimod and resiquimod as novel immunomodulators.J Antimicrob Chemother.2001;48:751-5;Schon MP,Schon M.TLR7 and TLR8 as targets in cancer therapy.Oncogene.2008;27:190-9)。しかし、レシキモドはマウスTLR8媒介活性化を発揮することはない。TLR7/8媒介シグナル伝達は、APCによるNF-kB媒介炎症性サイトカイン及びケモカイン、ならびにI型インターフェロン(IFN)の産生を誘導し、エフェクターT細胞の増強をもたらす(Vasilakos JP,Tomai MA.The use of Toll-like receptor 7/8 agonists as vaccine adjuvants.Expert Rev Vaccines.2013;12:809-19;Smits EL,Ponsaerts P,Berneman ZN, Van Tendeloo VF.The use of TLR7 and TLR8 ligands for the enhancement of cancer immunotherapy.Oncologist.2008;13:859-75;Meyer T,Surber C,French LE,Stockfleth E.Resiquimod,a topical drug for viral skin lesions and skin cancer.Expert Opin Investig Drugs.2013;22:149-59)。
【0004】
一部のイミダゾキノリンは、TLR耐性ならびに炎症誘発性及びアポトーシス促進性の悪影響を回避するために、非黒色腫皮膚癌及びウイルス性皮膚病変の治療のための局所投与薬として臨床現場で適用されている(Hayashi T,Gray CS,Chan M,Tawatao Rl,Ronacher L,McGargill MA,Datta SK,Carson DA,Corr M.Prevention of autoimmune disease by induction of tolerance to Toll-like receptor 7.Proc Natl Acad Sci U S A.2009;106:2764-9;Micali G,Lacarrubba F,Nasca MR,Schwartz RA.Topical pharmacotherapy for skin cancer:part I.Pharmacology.J Am Acad Dermatol.2014;70:965.e1 -12;quiz 77-8;Mark KE,Spruance S,Kinghorn GR,Sacks SL,Slade HB,Meng TC,Selke S,Magaret A,Wald A.Three phase III randomized controlled trials of topical resiquimod 0.01 -percent gel to reduce anogenital herpes recurrences.Antimicrob Agents Chemother.2014;58:5016-23;Rook AH,Gelfand JM,Wysocka M,Troxel AB,Benoit B,Surber C,Elenitsas R,Buchanan MA,Leahy DS,Watanabe R,Kirsch IR,Kim EJ,Clark RA.Topical resiquimod can induce disease regression and enhance T-cell effector functions in cutaneous T-cell lymphoma.Blood.2015;126:1452-61)。
【0005】
近年では、レシキモド及びその関連コンジュゲートなどのTLR7アゴニストの全身投与または腫瘍内投与は、マウス腫瘍モデルにおいてTAMまたはMDSC媒介免疫抑制を阻害することにより効率的な腫瘍退縮を誘導することが示された(Spinetti T,Spagnuolo L,Mottas I,Secondini C,Treinies M,Ruegg C,Hotz C,Bourquin C.TLR7-based cancer immunotherapy decreases intratumoral myeloid-derived suppressor cells and blocks their immunosuppressive function.Oncoimmunology.2016;5:e1230578;Sato-Kaneko F,Yao S,Ahmadi A,Zhang SS,Hosoya T,Kaneda MM,Varner JA,Pu M,Messer KS,Guiducci C,Coffman RL,Kitaura K,Matsutani T,et al.Combination immunotherapy with TLR agonists and checkpoint inhibitors suppresses head and neck cancer.JCI Insight.2017;2:e93397)。HNCなどのPD-1遮断療法抵抗性及び免疫抑制性腫瘍では、TLR7アゴニストとPD-1遮断との併用治療が効果的な癌免疫療法となり得る。この研究では、2つのPD-L1遮断抵抗性腫瘍モデルにおいて、全身性低用量レシキモドの単剤療法と抗PD-L1治療との併用療法の効果を調べた。
【0006】
細胞傷害性T細胞は、細胞内病原体または腫瘍細胞を排除するための直接的または間接的な臨床標的である。近年の免疫戦略では、T細胞、特に細胞傷害性T細胞を活性化する試みを行うが、この方法には、長期的効果を有する効率的なT細胞応答を生成する能力がない。通常、そのような応答は、持続可能な免疫応答を開始するために、免疫系のメモリー細胞によって媒介される。
【0007】
米国特許第9017654号明細書では、少なくとも1つのTLR7リガンド及びMHCクラスI分子及びMHCクラスII分子のうちの少なくとも1つによって提示される能力を有するMHCIリガンドまたはMHCIIリガンドとして適格であるペプチドを含む医薬調製物について記載している。医薬調製物は、ウイルス、細菌、または真菌によって引き起こされる疾患に利用される。しかし、この調製物は効率的な治療的免疫応答を引き出すことができず、その根本的な問題は、誘導された免疫応答が持続可能なメモリー免疫応答、特に治療的に有効なメモリーT細胞応答を引き起こすことができないことである。
【0008】
別のアプローチでは、異なるTILプロファイルを呈する2つのPHTL1遮断抵抗性腫瘍モデルにおける全身レシキモド投与免疫療法及びPD-L1遮断との併用治療を示唆している(Nishii N et al.,onco-target(2018),Vol.9:13301-1312)。ここでも、このアプローチは、メモリーT細胞応答を引き起こすことなく、その結果、ウイルス誘発細胞または腫瘍細胞の認識及び破壊をもたらす。
【0009】
代替アプローチは、有効量の抗原またはワクチンと併用したインフルエンザワクチン接種のアジュバントとしてのアントラリンを記載している米国特許公開第2017/0100477(A1)号に開示されている。ワクチンと併用したイミキモドは、ワクチン単独と比較した場合にマウスの生存を改善するためのアジュバント効果のために使用された。
【0010】
9-フェナントロールが、マウスにおけるイミキモドによる経皮免疫後のCD8+T細胞応答の生成を増強することも示唆された(Hartmann Ann-Kathrin et al.,「9-Phenanthrol enhances the generation of an CD8+T cell response following transcutaneous immunization imiquimod in mice」、Journal of Dermatological Science,vol.87,issue 3,12 August 2017)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第9017654号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Takeda K et al.,Toll-like receptors,Annu Rev Immunol(2003),Vol.21:335-376
【文献】Vasilakos JP,Tomai MA.The use of Toll-like receptor 7/8 agonists as vaccine adjuvants.Expert Rev Vaccines.2013;12:809-19;Aranda F,Vacchelli E,Obrist F,Eggermont A,Galon J,Sautes-Fridman C,Cremer I,Henrik Ter Meulen J,Zitvogel L,Kroemer G,Galluzzi L.Trial Watch:Toll-like receptor agonists in oncological indications.Oncoimmunology.2014;3:e29179;Dowling JK,Mansell A.Toll-like receptors:the swiss army knife of immunity and vaccine development.Clin Transl Immunology.2016;5:e85
【文献】Dockrell DH,Kinghorn GR.Imiquimod and resiquimod as novel immunomodulators.J Antimicrob Chemother.2001;48:751-5;Schon MP,Schon M.TLR7 and TLR8 as targets in cancer therapy.Oncogene.2008;27:190-9
【文献】Vasilakos JP,Tomai MA.The use of Toll-like receptor 7/8 agonists as vaccine adjuvants.Expert Rev Vaccines.2013;12:809-19;Smits EL,Ponsaerts P,Berneman ZN, Van Tendeloo VF.The use of TLR7 and TLR8 ligands for the enhancement of cancer immunotherapy.Oncologist.2008;13:859-75;Meyer T,Surber C,French LE,Stockfleth E.Resiquimod,a topical drug for viral skin lesions and skin cancer.Expert Opin Investig Drugs.2013;22:149-59
【文献】Hayashi T,Gray CS,Chan M,Tawatao Rl,Ronacher L,McGargill MA,Datta SK,Carson DA,Corr M.Prevention of autoimmune disease by induction of tolerance to Toll-like receptor 7.Proc Natl Acad Sci U S A.2009;106:2764-9;Micali G,Lacarrubba F,Nasca MR,Schwartz RA.Topical pharmacotherapy for skin cancer:part I.Pharmacology.J Am Acad Dermatol.2014;70:965.e1 -12;quiz 77-8;Mark KE,Spruance S,Kinghorn GR,Sacks SL,Slade HB,Meng TC,Selke S,Magaret A,Wald A.Three phase III randomized controlled trials of topical resiquimod 0.01 -percent gel to reduce anogenital herpes recurrences.Antimicrob Agents Chemother.2014;58:5016-23;Rook AH,Gelfand JM,Wysocka M,Troxel AB,Benoit B,Surber C,Elenitsas R,Buchanan MA,Leahy DS,Watanabe R,Kirsch IR,Kim EJ,Clark RA.Topical resiquimod can induce disease regression and enhance T-cell effector functions in cutaneous T-cell lymphoma.Blood.2015;126:1452-61
【文献】Spinetti T,Spagnuolo L,Mottas I,Secondini C,Treinies M,Ruegg C,Hotz C,Bourquin C.TLR7-based cancer immunotherapy decreases intratumoral myeloid-derived suppressor cells and blocks their immunosuppressive function.Oncoimmunology.2016;5:e1230578;Sato-Kaneko F,Yao S,Ahmadi A,Zhang SS,Hosoya T,Kaneda MM,Varner JA,Pu M,Messer KS,Guiducci C,Coffman RL,Kitaura K,Matsutani T,et al.Combination immunotherapy with TLR agonists and checkpoint inhibitors suppresses head and neck cancer.JCI Insight.2017;2:e93397
【文献】Nishii N et al.,onco-target(2018),Vol.9:13301-1312
【文献】Hartmann Ann-Kathrin et al.,「9-Phenanthrol enhances the generation of an CD8+T cell response following transcutaneous immunization imiquimod in mice」、Journal of Dermatological Science,vol.87,issue 3,12 August 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、持続性ウイルス、細菌感染症もしくは真菌感染症または癌などの新生物性疾患を予防または治療するために、治療的に有効なメモリーT細胞応答を誘導する能力を有する医薬組成物及び併用調製物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、少なくとも以下の成分:(a)ジスラノール(アントラリン、シグノリン)、または他のアントロンまたはヒドロキシアントラセンからなる群から選択される少なくとも1つの酸化ストレッサー、(b)少なくとも1つのToll様受容体7(TLR7)リガンド、及び(c)少なくとも1つのペプチド抗原、を含む医薬組成物または医薬併用調製物によって解決される。
【0015】
酸化ストレッサーは、酸化ストレス(=酸化ストレス物質)を引き起こす物質または剤である。
【0016】
驚くべきことに、ジスラノールなどの酸化ストレッサーの同時または連続投与は、少なくとも1つのTLR7リガンド及びTエフェクター細胞によって認識される抗原エピトープを含むペプチド抗原と併用して投与された場合、細胞傷害性T細胞の相乗的活性化を強化するであろうことが見出された。相乗的併用は、改善された全身性T細胞付与免疫応答を引き起こし、その後メモリーT細胞応答を活性化し、これにより、病原体及び腫瘍細胞の認識及び破壊をより効率的にする。したがって、本発明の調製物は、ジスラノールなどの酸化的ストレッサーを適用せずに、TLR7リガンドとペプチド抗原のみの併用と比較してより効率的である。本発明で使用されるジスラノールは、ヒドロキシアントロン、アントラセン誘導体、好ましくは1,8-ジヒドロキシ-9-アントロンである化合物である。
【0017】
3つの化合物の相乗効果及び医薬薬物としてのそれらの適用は、医薬組成物及び調製物を、進行性腫瘍疾患またはシステム病原体感染症、特にウイルス感染症に罹患する患者の治療に好適となるものとする。本発明の医薬組成物及び調製物は、好ましくは、経皮ワクチン接種によって媒介される患者(ヒトまたは動物)の皮膚への局所投与に好適である。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明の組成物または併用調製物のTLR7リガンドは、イミキモド(R837)、ロキソリビン及び/またはレシキモド(R848)である。本発明はまた、同じまたは同様の治療効果をもたらす、同じ生物学的または薬学的活性を有するイミキモド、ロキソリビン及び/またはレシキモドの類似体または修飾形態を包含する。本発明の組成物のTLR7リガンドは、TLR7受容体によって認識され、1つ以上のシグナルをトリガーして免疫応答を促進できる能力を有する限り、任意の起源、すなわち天然及び/または合成起源であり得る。したがって、Pam3Cys、ポリ-(I:C)またはCpG-DNAなどの他のTLR7リガンドも、本発明による組成物及び併用調製物中で使用するのに好適である化合物である。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物の少なくとも1つのペプチド抗原は、(i)主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCI)リガンド、(ii)主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCII)リガンド、または(iii)MHCI及び/またはMHCIIリガンドのうちの1つ以上を含むペプチドからなる群から選択される。ペプチド抗原は、細胞傷害性T細胞によって認識される能力を有し、好ましくは、ウイルス、真菌、または細菌源のペプチドである。あるいは、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子によって提示される腫瘍特異的ペプチドまたは腫瘍関連ペプチドは、本発明に含まれる。
【0020】
本発明による「ペプチド抗原」という用語は、ペプチドのみでなく、ポリペプチド、及びタンパク質も指す。
【0021】
好適なペプチド抗原は、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、または以下のアミノ酸配列のうちの1つからなる、任意の合成ペプチドまたは単離された天然に存在するペプチドであり得る:配列番号1(PLDGEYFTL)、配列番号2(YMNGTMSQV),配列番号3(AAGIGILTV)、配列番号4(VLRENTSPK)、配列番号5(SPSSNRIRNT)、配列番号6(RLVTLKDIV)、配列番号7(AVFDRKSDAK)、配列番号8(GLSPTVWLSV)、配列番号9(ILKEPVHGV)、配列番号10(KIRLRPGGK)、配列番号11(TPGPGVRYPL)、配列番号12(ILGFVFTLTV)、配列番号13(VLTDGNPPEV)、配列番号14(TQHFVQENYLEY)、配列番号15(WRRAPAPGAKAMAPG)、配列番号16(FRKQNPDIVIQYMDDLYVG)、配列番号17(RIHIGPGRAFYTTKNIIGTI)、配列番号18(PGPLRESIVCYFMVFLQTHI)、配列番号19(PYYTGEHAKAIGN)、配列番号20,(IAFNSGMEPGVVAEKV)、配列番号21(KQEELERDLRKTKKKI)、配列番号22(GRDIKVQFQSGGNNSPAV)、配列番号23(SIINFEKL)、配列番号24(SIIQFEHL)、配列番号25(SGPSNTPPEI)、及び上記アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が化学基、好ましくはNHまたはCHに連結されているその修飾形態。
【0022】
好ましい実施形態では、ペプチド抗原は、配列番号1~配列番号25のアミノ酸配列のいずれかからなる。本発明はまた、これらのアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が、NHまたはCHなどの1つ以上の化学基に連結されている、上記ペプチド抗原の改変形態をカバーする。さらに、本発明はまた、アミノ酸配列内の1つ以上のアミノ酸の欠失、付加または置換を有する配列番号1~配列番号25のアミノ酸配列に基づくアミノ酸配列をカバーする。
【0023】
本発明の医薬組成物内の個々の成分は、とりわけ、製剤の種類及び形態、意図される投与形態、治療される疾患またはワクチン接種の種類に依存する、様々な量で存在し得る。本発明の医薬組成物は、これらに限定されないが、腹腔内投与、鼻腔内投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、経口投与、直腸内投与、眼内投与、皮内投与などのために、溶液、懸濁液、クリーム、軟膏、粉末として使用され得る。特定の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、哺乳動物体の皮膚、特に無傷または病変の皮膚領域への局所適用に適合されている。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は、0.0321重量%~4重量%のジスラノール、または他のアントロンまたはヒドロキシアントレセンなどの少なくとも1つの酸化ストレッサー、0.1重量%~10重量%の少なくとも1つのToll様受容体7(TLR7)リガンド及び0.01重量%~30重量%の少なくとも1つのペプチド抗原、を含む。
【0025】
特に好ましい実施形態では、医薬組成物の成分の濃度は以下のとおりである:ジスラノール、または他のアントロンまたはヒドロキシアントレセンなどの少なくとも1つの酸化ストレッサーが0.0625重量%~0.5重量%、少なくとも1つのToll様受容体7(TLR7)リガンドが3重量%~5重量%、少なくとも1つのペプチド抗原が0.1重量%~0.4重量%。
【0026】
医薬組成物は、それぞれの投与形態に適合した、薬学的に許容されるビヒクル、希釈剤、アジュバントまたは賦形剤を含み得る。したがって、任意の希釈剤、アジュバントまたは賦形剤、例えば、精製水、ベンジルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ステアリン酸ソルビタン、グリセロール、メチル-4-ヒドロキシベンゾエート、プロピル-4-ヒドロベンゾエート、イソステアリン酸、キサンタンガムを使用することができる。また、担体、アジュバントまたは添加剤は、親水性溶媒または親油性溶媒、可溶化剤、乳化剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、及び/または局所適用の基礎を提供するための剤、または皮膚浸透能力を高めるための剤などの医薬組成物の一部であり得る。
【0027】
本発明の医薬組成物は、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、または悪性腫瘍に対するワクチン接種戦略に使用するのに特に好適であり、したがって、好ましくはワクチンの形態で提供される。特に好ましいのは、特に局所投与による経皮免疫である。局所投与の1つの利点は、患者、特に先端恐怖症を患っている患者のコンプライアンスの改善である。そのため、局所投与形態は、小児または高齢の患者の治療に特に有用である。さらなる利点は、局所投与は通常、皮膚に医薬品を適用するために医学的に資格のある人員を必要としないことである。局所形態で投与される医薬組成物または併用調製物の能力により、例えば、インフルエンザなどの流行性ウイルス感染の予防または治療のために、ヒトまたは動物の両方の大量ワクチン接種または免疫化が可能になる。獣医学において、集約的畜産で発生する豚インフルエンザなどの経済的に破壊的な感染症は、本発明の医薬組成物または併用調製物の好適な標的である。治療される動物の例は、ウシ、ヒツジ及びブタ(pig)、ブタ(hog)、ヤギ、トリ、または雄七面鳥などの家畜である。さらに、本発明の調製物はまた、気腫疽(気腫疽菌(Clostridium chauvoei)によって引き起こされる黒脚)、口蹄疫(アフトウイルスによって引き起こされる)、狂犬病(リッサウイルスによって引き起こされる)、ブルータング(ブルータングウイルスによって引き起こされる)、痘瘡、ブルセロシス、リステリア症、カンピロバクター流産、結核及びパラ結核(ヨーネ病)、牛流行熱(牛流行熱ウイルス、BEFVによって引き起こされる)、牛鼻気管炎(牛ヘルペスウイルス-1によって引き起こされる)、PPR(ヤギ疫病、モルビリウイルスによって引き起こされる)、バベシア症(バベシア属によって引き起こされる)、アフリカ豚熱及び豚熱、鳥インフルエンザ、シュマレンベルク ウイルスの治療に使用され得る。
【0028】
本発明によって治療することができる好ましい癌は、黒色腫及び非黒色腫皮膚癌、胃腸管(結腸、膵臓、肝臓など)、肺癌、悪性リンパ腫、急性及び慢性白血病、ならびに他の癌である。
【0029】
本発明の調製物の3つの成分の相乗効果により、持続性病原体感染または腫瘍疾患を治療できるようにするために、明確に定義されたペプチド抗原に対する特定の免疫応答が可能になる。3つの成分すべてが、予想外で驚くべき誘導された免疫応答に関連して、この相乗効果に寄与する。イミキモドなどのTLR7リガンドとペプチド抗原の唯一の併用は、治療目的に好適である満足のいく持続的免疫応答を誘導するのには十分ではない。本発明に示されるように、ジスラノール(または他のアントロンもしくはヒドロキシアントラセン化合物)が存在することまたは同時投与することは、TLR7リガンド及びペプチド抗原のみの適用と比較して、はるかに持続的であり、かつ長期の免疫応答をもたらす相乗効果となる。特に、本発明の3成分組成物は、所望の治療的免疫応答の誘導に必要な細胞傷害性T細胞及びメモリーT細胞を刺激することにより、適応免疫応答の強力な刺激をもたらす。
【0030】
さらなる態様では、本発明はまた、上記の少なくとも1つの酸化ストレッサー、少なくとも1つのTLR7リガンド及び少なくとも1つのペプチド抗原を含む医薬併用調製物に関する。医薬組成物に関して記載されていることはいずれも、併用調製物にも適用され、逆もまた同様である。
【0031】
酸化ストレッサーは、TLR7リガンド及び/またはペプチド抗原と同時にまたは連続して投与することができ、これは、治療する疾患の種類、ワクチン接種の種類、及び医薬品またはワクチンの処方に影響を与える他のパラメータまたは因子によって異なる。好ましい実施形態では、少なくとも1つの酸化ストレッサーは、別個の製剤内に存在し、少なくとも1つのTLR7リガンド及び/または少なくとも1つのペプチド抗原は、1つ以上の別個の製剤中に提供される。好ましい実施形態では、少なくとも1つのTLR7リガンド及び少なくとも1つのペプチド抗原は、単一の製剤で提供される。代替的実施形態では、TLR7リガンド及びペプチド抗原は、2つの別個の製剤で提供される。
【0032】
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体に同時にまたは連続的に適用されるそのような医薬併用調製物の使用に関する。この実施形態では、少なくとも1つの酸化ストレッサーの製剤は、TLR7リガンド及び/またはペプチド抗原の1つ以上の製剤と同時にまたは連続して、ヒトまたは動物の皮膚に適用されるように適合されている。治療は、1回の治療として、またはそれぞれの製剤の同一の用量または異なる用量でのいくつかの連続治療として実施できる。
【0033】
好ましい実施形態では、医薬併用調製物は、患者の皮膚への局所投与に適合している。ジスラノールなどの酸化ストレッサーの局所投与は、抗原提示細胞(APC)が抗原エピトープを保有する投与されたペプチド抗原を免疫系、特にCD8+T細胞に提示することが可能になる酸化メカニズムによって、炎症環境を誘発する。このメカニズムは、製剤中に存在する少なくとも1つのTLR7リガンドによって引き起こされる。驚くべきことに、調製物の3つの成分の同時投与は、1回の適用後にすでにメモリー応答などの強力な一次細胞傷害性T細胞応答をもたらす。本発明によって示されるように、免疫応答は、メモリーT細胞が関与するために長期的な効果を有し、したがって、罹患患者からの細菌、ウイルスまたは真菌などの病原体の除去において非常に効率的である。同じ戦略は、ペプチド抗原として提示され得るような標的抗原エピトープが知られている悪性腫瘍の治療または予防にも適用することができる。好ましくは、本発明のペプチド抗原は、細胞傷害性T細胞応答及びメモリーT細胞応答を誘発するためにAPCに提示されるペプチドエピトープを保有する。
【0034】
医薬併用調製物の製剤の個々の成分の量は、当業者によって選択され得、治療の種類、成分の形態及び濃度、ならびに活性剤の治療効果に影響を与える他のパラメータまたは因子に従って適合させることができる。治療は、1回の治療として実施することも、異なるまたは同じ量のそれぞれの製剤を使用して数回繰り返すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ジスラノール(アントラリン)により、イミキモドベースの経皮免疫後のT細胞応答(一次T細胞応答)が増強されることを示す図である。
図2】ジスラノール(アントラリン)とイミキモドベースの経皮免疫との併用が、メモリー免疫応答(二次T細胞応答)を誘発することを示す図である。
図3】ダントロンではなくジスラノール(アントラリン)が、イミキモドベースの経皮免疫後、T細胞応答(一次T細胞応答)を増強することを示す図である。
図4】α-トコフェロールが、CTL頻度に影響を与えることなく、ジスラノール(アントラリン)TCIによって誘導される細胞溶解活性の増強に拮抗することを示す図である。
図5】アントラリン(ジスラノール)が、脾臓樹状細胞のin vitroでのTLR7媒介活性化を阻害することを示す図である。
図6】T細胞応答(一次T細胞応答)を増強するには、同じ場所にジスラノール(アントラリン)及びTCIを必要とすることを示す図である。
図7】骨髄由来マクロファージ(BMM)が、アントラリン/R848またはアントラリン/イミキモド刺激後のCD80/CD86発現を上方制御することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、以下の実施例によってより詳細に説明される。実施例は、例示のみを目的としており、本発明をそれに限定するものではない。
【実施例
【0037】
本発明の医薬調製物の治療的効果及び予防的効果を示すために実験を行った。
【0038】
図1は、ジスラノール(アントラリン)により、イミキモドベースの経皮免疫後のT細胞応答(一次T細胞応答)が増強されることを示す図である。
【0039】
C57BL/6マウス(n=4~12/群)は、Lopez A.et al.(2017)の説明に従って、DMSOに溶解し、cremor basalis officinalisと混合した50mgのIMI-Solと共に100μgの合成ペプチドOVA257264(SIINFEKL;配列番号23)、及びOVA223-237(SIIQFEHL;配列番号24;peptides&elephants,Potsdam,Germanyから得た)を使用して、経皮免疫(TCI)によって免疫した(Pamela Aranda Lopez et al.,「Transcutaneous Immunization with a Novel Imiquimod Nanoemulsion Induces Superior T Cell Responses and Virus Protection」Journal of Dermatological Science87,no.3(2017年9月):252-59、doi:10.1016/j.jdermsci.2017.06.012)。TCI治療は1日目に耳の皮膚を介して適用した。
【0040】
示されている場合、24時間前にジスラノール(=ワセリン中0.0625%のアントラリン)を耳の皮膚に適用した。(A)ペプチド特異的CD8T細胞の頻度は、フローサイトメトリーにより7日目に評価した。(B)In vivo細胞溶解活性は、ペプチドをロードした脾細胞の移入の20時間後の7日目に分析した。(C)示された治療後7日目の脾細胞のIFN-γ産生。脾細胞は、ELISpotアッセイにより採取し、分析する前に、示されたペプチドで24時間再刺激した。(D)C57BL/6マウス(n=5/群)は(A)のように免疫化し、7日後OVAトランスジェニックワクシニアウイルスに感染させた(VV-OVA、2x10pfu i.p.。感染の5日後、マウスを屠殺し、卵巣ウイルス量をBSC-40プラークアッセイによって判定した。
*ボンフェローニ事後検定分析による一元配置分散分析による有意性;p<0,05(*)。
【0041】
結論:
結果は、TCIと併用した皮膚のジスラノール治療がCD8陽性及びCD4陽性T細胞のT細胞活性化に相乗効果を有することを示している。アントラリン/TCIの併用のみが、VV-OVAに対する防御免疫応答をもたらす。
【0042】
図2は、ジスラノール(アントラリン)とイミキモドベースの経皮免疫との併用が、メモリー免疫応答(二次T細胞応答)を誘発することを示す図である。
【0043】
C57BL/6マウス(n=3~8/群)をTCIで免疫し、図1(A)に記載のとおり実施した。ペプチド特異的CD8T細胞の頻度は、35日目にフローサイトメトリーにより評価した。(B)In vivo細胞溶解活性は、ペプチドをロードした脾細胞を移入後20時間での35日目に分析した。(C)示された治療後35日目の脾細胞のIFN-γ産生。脾細胞は、ELISpotアッセイにより採取し、分析する前に、示されたペプチドで24時間再刺激した。*ボンフェローニ事後検定分析による一元配置分散分析による有意性;p<0,05(*)。
【0044】
結論:
結果は、TCIと併用した皮膚のジスラノール治療が、メモリーT細胞の形成など、CD8陽性及びCD4陽性T細胞のT細胞活性化に相乗効果を有することを示している。
【0045】
図3は、ダントロンではなくジスラノール(アントラリン)が、イミキモドベースの経皮免疫後、T細胞応答(一次T細胞応答)を増強することを示す図である。
【0046】
C57BL/6マウス(n=5/群、未治療n=2)は、図1に記載のとおり実行されたTCIによって免疫化した。TCI治療は1日目に耳の皮膚を介して適用した。示されている場合、ダントロン(ワセリン中0.0625%)またはジスラノール(=ワセリン中0.0625%のアントラリン)を24時間前に耳の皮膚に適用した。(A)ペプチド特異的CD8T細胞の頻度は、フローサイトメトリーにより7日目に評価した。(B)In vivo細胞溶解活性は、ペプチドをロードした脾細胞の移入の20時間後の7日目に分析した。*ボンフェローニ事後検定分析による一元配置分散分析による有意性;p<0,05(*)。
【0047】
結論:
結果は、TCIと併用した皮膚のジスラノール治療がT細胞活性化に相乗効果を有することを示している。酸化された類似体ダントロンは、T細胞の活性化に対する影響を有さず、これは、アントラリンが酸化メカニズムによって作用することを示唆するものである。
【0048】
図4は、α-トコフェロールが、CTL頻度に影響を与えることなく、ジスラノール(アントラリン)TCIによって誘導される細胞溶解活性の増強に拮抗することを示す図である。
【0049】
C57BL/6マウス(n=4~10/群)は、図1に記載のとおり実行されたTCIによって免疫化した。示されているように、TCI治療は、1日目に両耳のいずれかに耳の皮膚を介して適用した。示されている場合、アントラリン及び/またはTCIを適用する1時間前に、抗酸化剤としてα-トコフェロール(600U/kg)を腹腔内注射した。(A)ペプチド特異的CD8T細胞の頻度は、フローサイトメトリーにより7日目に評価した。(B)In vivo細胞溶解活性は、ペプチドをロードした脾細胞の移入の20時間後の7日目に分析した。(C)示された治療後7日目の脾細胞のIFN-γ産生。
*ボンフェローニ事後検定分析による一元配置分散分析による有意性;p<0,05(*)。
【0050】
結論:
TCIに対するアントラリンのアジュバント効果は、酸化メカニズムに依存する。
【0051】
図5は、アントラリン(ジスラノール)が、脾臓樹状細胞のin vitroでのTLR7媒介活性化を阻害することを示す図である。
【0052】
CD1 1c陽性樹状細胞(DC)は、Weber M et al.(2014)に記載のとおり、C57BL/6マウスの脾臓から精製され、TLR7/8アゴニストR-848(10μg/ml)、アントラリン(ジスラノール)、N-アセチルシステイン(NAC 5mM)で示されるように活性化させるか、またはIscoves培地+5%FCSで未治療のままであった(Michael Weber et al.,「Donor and Host B Cell-Derived IL-10 Contributes to Suppression of Graft-Versus-Host Disease.,」European Journal of Immunology 44,no.6(June 2014):1857-65,doi:10.1002/eji.201344081)。
【0053】
24時間のインキュベーション後、細胞を採取し、特定のmAbで標識し、フローサイトメトリーで活性化マーカーCD40、CD80、及びCD86のライブでのゲーティング(ヨウ化プロピジウム陰性、CD1 1c/MHCクラスII陽性DC)を分析した。
【0054】
結論:
アントラリンは、in vitroにおいてDCのTLR7媒介活性化を抑制する。活性化表現型は、抗酸化剤としてNACを追加することによって復元される。したがって、in vivoでのT細胞活性化に対するアントラリンの相乗効果は驚くべきものであり、予想外である。NACの存在下においてDC活性化が回復することは、アントラリンが酸化メカニズムによって作用することを示している。
【0055】
図6は、T細胞応答(一次T細胞応答)を増強するには、同じ場所にジスラノール(アントラリン)及びTCIを必要とすることを示す図である。
【0056】
C57BL/6マウス(n=2~9/群)は、図1に記載のとおり実行されたTCIによって免疫化した。TCI治療は、示されているとおり、1日目に両耳または片方のみの耳のいずれかに耳の皮膚を介して適用した。(A)ペプチド特異的CD8T細胞の頻度は、フローサイトメトリーにより7日目に評価した。(B)In vivo細胞溶解活性は、ペプチドをロードした脾細胞の移入の20時間後の7日目に分析した。
*ボンフェローニ事後検定分析による一元配置分散分析による有意性;p<0,05(*)。
【0057】
結論:
アントラリン及びTCIは、T細胞の相乗的な活性化を媒介するために同じ部位(耳)に必要である。アントラリン/TCIにおける誘導されたT細胞応答の大きさは、治療領域と相関する(用量応答関係)。したがって、in vivoでのT細胞活性化に対するアントラリンの相乗効果は、免疫細胞の局所的活性化によって開始される。
【0058】
図7は、骨髄由来マクロファージ(BMM)が、アントラリン/R848またはアントラリン/イミキモド刺激後のCD80/CD86発現を上方制御することを示す図である。
【0059】
BMM前駆細胞を骨髄から分離し、10%FCS及び10%L929線維芽細胞培養上清(M-CSFを含む)を添加した培地で分化させた。6日目にマクロファージをセルスクレーパーで採取し、2.5x10BMMを96Uウェルに播種した。次に、BMMをアントラリン単独(0.25~1μMの範囲)、TLR7リガンドであるレシキモド(R848、10μg/ml)及びイミキモド(10μg/ml)、またはアントラリンとTLR7ライゲーションの両方の併用で刺激した。刺激の24時間後、BMMを採取し、生きているMHCIIF4/80CD1 1bBMMの活性化状態を、共刺激表面マーカーCD80及びCD86のFACS分析によって評価した。さらに、刺激させたBMMの上清を24時間後に収集し、その後IL-6ELISAを実施した。
【0060】
結論:
実験は、TLR7リガンドとしてイミキモド(R837)またはレシキモド(R848)をジスラノール(アントラリン)及びペプチド抗原と共に使用した本発明の併用の結果を要約している。示されているように、ジスラノール(アントラリン)、TLR7リガンド、及びペプチド抗原の適用は、BMM細胞の協調的活性化をもたらし、これは、アントラリン及び/またはペプチド抗原のみを適用した場合と比較して有意に効果的である。
【0061】
材料及び方法
マウス
6~8週齢のC57BL/6(野生型)マウスをワクチン接種実験に使用し、University of Mainz(TARC)またはHarlan Laboratoriesの動物施設から購入した。すべての動物の手順は、施設のガイドラインに従って実施し、地元の動物福祉担当官((Prof.Dr.O.Kempski)、University Medical Center(Mainz,Germany))が率いる施設の審査委員会によって審査され、確認された。すべてのアッセイは、責任ある当局によって承認された(National Investigation Office Rheinland-Pfalz,Koblenz,Germany)。この機関によって割り当てられた承認ID:AZ 23 177-07/G13-1-012。
【0062】
経皮免疫
経皮免疫は、50mgのIMI-Sol(自社生産)と100μgの合成ペプチドOVA257-264(SIINFEKL;配列番号23)及びOVA223-237(SIIQFEHL;配列番号24;peptides&elephants Potsdam,Germanyから得た))を使用して、DMSOに溶解し、cremor basalis officinalisと混合して、以前に記載されているように(Lopez et al.2017)実施した。TCI治療は1日目に耳の皮膚を介して適用した。
【0063】
TCIに先立ち、示されているとおり、0日目に耳を25mgのアントラリンまたはダントロン含有(1/16%)ワセリンクリームで前処理した。α-トコフェロールは、アントラリン及び/またはTCIを適用する1時間前に、体重調整投与量(600U/kg体重、i.p.)で投与した。体重調整投与量でケタミン/ロンプンの希釈液を使用して、すべての手順の前にマウスを麻酔した。
【0064】
フローサイトメトリー分析及びin vivo細胞障害性アッセイ
フローサイトメトリー分析及びin vivo細胞障害性の評価は、以前に記載されているように実施した(Lopez et al.2017)。血液サンプルは、尾静脈切開により収集し、低張溶解に供され、示されたとおり特定のmAbと共にインキュベートした。FACS分析に使用した抗体は、PBコンジュゲート抗CD8(クローン53-6.7;eBioscience、San Diego,USA)、FITCコンジュゲート抗CD62L(クローン17A2;eBioscience、San Diego,USA)、及びAPCコンジュゲート抗CD44(クローンGK1.5;BioLegend、San Diego,USA)であった。ペプチド特異的CD8T細胞の頻度を測定するために、血液サンプルをPEコンジュゲートOVA257-264 H2-K(四量体標識、自社生産)で染色した。
【0065】
In vivoの細胞溶解活性を検出するために、同系野生型マウスの脾細胞を異なる量の5,6-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen、Carlsbad、USA)で標識し、その結果、CFSElow及びCFSEhigh集団をもたらした。CFSElowで標識した細胞は、1μMのOVA257-264でさらに標識した。免疫及び未処理のマウスへの1:1の比率(CFSElow:CFSEhigh)での3x10細胞の養子移入は、尾静脈への静脈内注射によって行われた。一次応答中の細胞溶解活性を評価するために、血液を採取し、免疫後7日目、標的細胞の移入から20時間後にフローサイトメトリーにかけた。特異的溶解は以下のように評価した:特異的溶解(%)=100x(1-(免疫化されたマウスのCFSElow/未処理の対照のCFSElow)。すべての分析は、LSRIIフローサイトメーター及びFACSDivaソフトウェアを使用して実行した(Becton Dickinson,Franklin Lakes,USA)。
【0066】
IFNγELISpotアッセイ
96ウェルプレート(MultiScreenHTS IP、0.45mm、Merck Millipore、Darmstadt,Germany)を、マウスIFNγ AN18抗体(10mg/ml、Mabtech、Nacka Strand、Sweden)で4℃で一晩コーティングした。ブロッキングステップ後、5x10個の細胞を追加した。したがって、脾細胞を溶解し、1mM OVA257-264、1mM OVA323-337をロードするか、培地に残した。37℃で一晩インキュベートした後、プレートを洗浄し、ビオチン化IFNγ R4-6A2抗体(2mg/ml、Mabtech、2時間、37℃)で染色した。その後、Vectastain ABC Kit(Vector Laboratories、Burlingame、USA)/AEC(Sigma-Aldrich、Taufkirchen、Germany)複合体を、製造業者の指示に従って追加した。スポットが目で確認された後、プレートを水で洗浄し、一晩乾燥させた。分析は、ImmunoSpot Analyzerによって実行した(C.T.L.Europe,Bonn,Germany)。
【0067】
樹状細胞の単離、培養及び活性化マーカーの評価
C57BL6/J野生型マウスの脾臓を採取し、取り、2型コラゲナーゼ(Worcester、Pappenheim、Germanyから50U/ml)で45分間消化させ、2mM EDTA(Sigma-Aldrich、Taufkirchen、Germany)を添加して停止させた。低張溶解ステップ後、CD1 1 c MicroBeads UltraPure(Miltenyi Biotec、Germany)を製造業者の指示に従って使用して、DCを単離した。2x10 CD1 1 cDC/ウェルを96ウェルプレートにプレーティングし、TLR7リガンドR-848(10ug/ml)及び/または異なる濃度のアントラリン(DMSOに溶解)の存在下で24時間または48時間培養した。その後、細胞を洗浄し、FACS分析のために以下の抗体で染色した:CD19-PerCP、CD90.2-PerCP、CD1 1c-APCまたはPE-Cy7、MHCII-BV241、CD86-PE、CD80-FITCまたはBV605、CD40-APC。さらに、24時間または48時間後のDC培養の上清を収集し、サイトカインビーズアレイ(CBA)分析に使用した。以下のサイトカインは、CBA技術を使用して定量化した:IL-1b;IL-6;IL-10;IL-12;IL-23、TNF-α。
【0068】
プラークアッセイによるウイルス防御の評価
感染前に、雌のC57BL6/Jマウスを上記のとおり免疫した。7日目に、効果的な免疫化が四量体染色によって確認された。その後、2x10 pfuのワクシニアOVAウイルス(VV OVA)を200μlの培地に再懸濁し、腹腔内注射で適用した。感染の5日後、マウスを屠殺し、卵巣を摘出し、細かく切り刻んだ。異なる濃度のこれらのウイルス含有サンプルをBSC-40細胞の層に加えた。続いて、プレートを37℃で24時間インキュベートした。このインキュベーション後、光学顕微鏡での検査により、細胞層内のプラークの出現が明らかになった。続いて、残りのBSC-40細胞をクリスタルバイオレット溶液で染色し、ライトボックスでプラークの数を数えた。数を数えたプラークに適切なウェルの希釈係数を掛けて、pfu/卵巣を推定した。
【0069】
腫瘍拒絶アッセイ
MC38結腸腺癌細胞は、H.C.Probst(Institute for Immunology,University Medical Center Mainz)によって提供を受けた。接種前に、MC38細胞を1%ペニシリン-ストレプトマイシン、10%FCS、2mMグルタミン及び1mMピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM(Thermo Fisher Scientific)で1週間培養した。麻酔をかけた動物の左下腹部に腫瘍細胞を皮下注射した。治療は、腫瘍サイズ約25mmで開始した(接種後5~7日)。腫瘍の成長は、キャリパーを使用して週に3回、2次元で腫瘍直径を測定することによって追跡した。腫瘍サイズが直径400mmを超えたとき、または出血性潰瘍が発生したときに、マウスを屠殺した。死の時点は屠殺の翌日として記録した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
0007520386000001.app