(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】送風ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 25/16 20060101AFI20240716BHJP
F04D 17/04 20060101ALI20240716BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
F04D25/16
F04D17/04 D
F04D29/28 C
(21)【出願番号】P 2021545573
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2020034142
(87)【国際公開番号】W WO2021049536
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019167441
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀千人
(72)【発明者】
【氏名】ワー・ワー・ミン・スエ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103321929(CN,A)
【文献】国際公開第2017/085837(WO,A1)
【文献】特開2008-010256(JP,A)
【文献】特開2012-132428(JP,A)
【文献】特公昭41-011946(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/16
F04D 17/04
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一回転軸上に近接した状態で連結された2台の送風ファンからなる複合ファンと、
該複合ファンを収容するケーシングと、
該ケーシングの一面に形成された
空気取り入れ口と、
該
空気取り入れ口とは別の面に形成された空気の吐出口とを有し、
上記2台の送風ファンは、遠心ファンと横流ファンとが組み合わされた複合ファンであり、
上記2台の送風ファンのうち上段に取り付けられる送風ファンが横流ファンであって、該横流ファンがクロスフローファンであるとき、
上記クロスフローファンは上記
空気取り入れ口側に取り付けられ、
下段に取り付けられる上記遠心ファン側のベルマウスより取り込んだ空気流の一部に、上記クロスフローファン側からの空気流の一部を混合して吐出エネルギーを付与した上で、上記クロスフローファン側より吐出させるようにした
ことを特徴とする送風ファン。
【請求項2】
上記クロスフローファン側からの空気流の一部を混合して吐出エネルギーを付与した上で、上記クロスフローファン側より吐出させるための導風部材が、上記ケーシング内に設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の送風ファン。
【請求項3】
箱形のケーシングが使用されると共に、このケーシング内に取り付けられた上記導風部材は、上記回転軸を挟んで上記クロスフローファンの左右に、該クロスフローファンの周面と対峙するように設けられると共に、
上記導風部材の一方が曲線ケーシング体で、他方が曲線舌状体で構成される
ことを特徴とする
請求項2記載の送風ファン。
【請求項4】
上記2台の送風ファンのうち上段に取り付けられる送風ファンが遠心ファンであって、該遠心ファンがシロッコファンであるとき、
上記ケーシングは円筒状のケーシングが使用されると共に、
上記シロッコファンは上記空気取り入れ口側に収容され、
該シロッコファンと下段に取り付けられる横流ファンとの間の境界面に設置された導風部材は、上記ケーシングの内壁面にほぼ半周に亘って設けられた半円状の仕切板で構成され、この導風部材によって、上記シロッコファンに流入した空気流をダイレクトに上記横流ファン側に送り込んでこの横流ファンから吐出する空気流に吐出エネルギーを付与するようにした
ことを特徴とする
請求項1記載の送風ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複合ファンを使用した送風ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄機、空気乾燥機、空調機器などでは、現在よりもさらなる圧力の上昇が望まれている。
【0003】
これら機器に使用されるファンのうち、横流ファンや斜流ファンでは圧力が足りず、そのためこれらのファンに代えて遠心ファンが利用される傾向にある。
【0004】
遠心ファンの一種であるターボファンは高圧力を得ることができることに加え、比較的効率が高く、低騒音であるという特徴がある。
【0005】
そのため、天井埋め込み型のエアコンやダクト付きの送風機、エアフィルタなど様々な民生機器に利用されている。
【0006】
シロッコ形やターボ形の遠心ファンの場合には、周知のように横流ファンに比べ静圧が高い反面風量が少ないという欠点がある。この風量が少ない欠点を補うため従来では、使用する羽根車の形状を改良する試みが行われていたが、未だ充分満足し得る風量が得られていない。
【0007】
また風量改善のために羽根車からの吐出流れをケーシングによって羽根車の周方向に集めた上で吐出させるように構成した場合には、スクロールケーシングのようにケーシング自体の形状が大きくなってしまうためにファン設置場所が制限されてしまうし、ファンの小型化隘路となっている。
【0008】
一方で、小型の用途では、大型の産業用途とは異なり、設置スペース等の問題などから、スクロールケーシングの代わりに四角形状(箱形)の単純ケーシングが利用されている。
【0009】
スクロールケーシングでは、通常広がり角が6度程度であり、またスクロールケーシングでは羽根車からの吐出流れを360°集めるために周方向の吐出口に向かって次第にケーシングの断面積が広くする必要がある。また、スクロールケーシングの最大幅は羽根車直径の3倍程度確保する必要がある。
【0010】
ところで遠心ファンのケースとして単純ケーシングを利用した場合、羽根車及びケーシング内での流れを周方向に向かって大きく変化させるため、ケーシングの奥側(吐出口と反対側)で圧力が高く、流量が少なくなり、逆に吐出側(出口側)では圧力が低く流量が多くなる傾向にある。これによって遠心ファンの性能を低下させる原因となっている。送風ファンとしての従来例は多数存在するが、そのうちで以下のような文献が存在する。特許文献1は、チャンバーフィルターとの間に気流調整ユニットを設けて空気の風速分布を均一にした技術で、ファンとしてはターボファンが使用されている。
【0011】
特許文献2は、シロッコファンを用いた集塵装置に関する技術である。特許文献3は、クロスフローファンを用いた空気調和機であって、熱交換効率を高める技術である。特許文献4は、熱交換効率を向上させた熱交換装置に関するものである。特許文献5は、羽根の溶着強度を高めたターボファンが開示されている。
【0012】
特許文献6は、シロッコ形遠心ファンの外周に環状のディフューザーを配置することで、静圧を確保しつつ、遠心方向の全周に亘って空気を吐出させることができるようにしたものである。同文献6では、熱交換器とディフューザーを一緒にして小型化を図っているが、ディフューザーは放射状であって、圧力の回復を行うためにはスクロールケーシングをつけなければならず、そうすると小型化を達成できないという、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2009-101305号公報
【文献】特開2010-131513号公報
【文献】特開平6-94256号公報
【文献】特開2010-98217号公報
【文献】特開2018-178795号公報
【文献】特開2004-60622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記各特許文献には、遠心ファンや横流ファンを使用した送風ファンに関して、何れもケーシングを大型化することなく、風量の増加を図ることの技術は開示されていない。
【0015】
この発明は、これらの問題を解決するため、タイプの異なる2段構成の複合ファンを使用すると共に、これを箱形若しくは円筒形という簡単な形状のケーシング内に収容したとき、吐出口とは反対側のケーシング奥側における空気流に対して吐出エネルギーを与えてケーシング奥側の空気を効率よく吐出させることができるようにしたもので、小型化と共に、風量の増大を図れるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、請求項1記載の発明に係る送風ファンは、同一回転軸上に近接した状態で連結された2台の送風ファンからなる複合ファンと、該複合ファンを収容するケーシングと、該ケーシングの一面に形成された空気取り入れ口と、該空気取り入れ口とは別の面に形成された空気の吐出口とを有し、上記2台の送風ファンは、遠心ファンと横流ファンとが組み合わされた複合ファンであり、上記2台の送風ファンのうち上段に取り付けられる送風ファンが横流ファンであって、該横流ファンがクロスフローファンであるとき、上記クロスフローファンは上記空気取り入れ口側に取り付けられ、下段に取り付けられる上記遠心ファン側のベルマウスより取り込んだ空気流の一部に、上記クロスフローファン側からの空気流の一部を混合して吐出エネルギーを付与した上で、上記クロスフローファン側より吐出させるようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載のこの発明に係る送風ファンにあっては、上記クロスフローファン側からの空気流の一部を混合して吐出エネルギーを付与した上で、上記クロスフローファン側より吐出させるための導風部材が、上記ケーシング内に設けられたことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載のこの発明に係る送風ファンにおいて、箱形のケーシングが使用されると共に、このケーシング内に取り付けられた上記導風部材は、上記回転軸を挟んで上記クロスフローファンの左右に、該クロスフローファンの周面と対峙するように設けられると共に、上記導風部材の一方が曲線ケーシング体で、他方が曲線舌状体で構成されることを特徴とする。
【0019】
請求項4記載のこの発明に係る送風ファンにおいて、上記2台の送風ファンのうち上段に取り付けられる送風ファンが遠心ファンであって、該遠心ファンがシロッコファンであるとき、上記ケーシングは円筒状のケーシングが使用されると共に、上記シロッコファンは上記空気取り入れ口側に収容され、該シロッコファンと下段に取り付けられる横流ファンとの間の境界面に設置された導風部材は、上記ケーシングの内壁面にほぼ半周に亘って設けられた半円状の仕切板で構成され、この導風部材によって、上記シロッコファンに流入した空気流をダイレクトに上記横流ファン側に送り込んでこの横流ファンから吐出する空気流に吐出エネルギーを付与するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したようにこの発明に係る送風ファンは、タイプの異なる2台の送風ファンを使用した送風ファンからなる複合ファンであり、これを箱形若しくは円筒状のケーシングに収容し、近接して配置されたこれら2台の送風ファンを同時駆動して吐出口と反対側ケーシング内の空気流に対して吐出エネルギーを付与することで、ケーシング内に吸い込まれた空気を吐出させるようにしたものである。この構成とすることによってタイプの異なる2台の送風ファンの特徴を生かしつつ、吐出口とは反対側のケーシング内の空気も、効率よく吐出させることができるので、高効率で、大きな風量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明にかかる送風ファンの一例を示す要部の斜視図である。
【
図2】複合ファンの一例を示す要部の斜視図である。
【
図4】送風ファンを左手前方より見た斜視図である。
【
図5】ケーシングを含めたこの発明にかかる送風ファンの正面図である。
【
図8】この発明にかかる送風ファンの他の例を示す要部の斜視図である。
【
図10】
図8の平面図において、主としてシロッコファンを中心に空気流の流れを描いた図である。
【
図11】
図8の平面図において、主としてクロスフローファン用下部ケーシングを中心に空気流の流れを描いた図である。
【
図12】
図8の平面図において、主としてシロッコファンに設けられた仕切板を中心に空気流の流れを描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
続いて、この発明に係る送風ファンの一例を、図面を参照して説明する。この発明の送風ファンは、同一回転軸上に連結されたタイプの異なる第1と第2の送風ファンからなる複合ファンを用い、この複合ファンをケーシング内に収容したものである。2段構成の複合ファンのうち、上段が第1の送風ファンであり、下段が第2の送風ファンである。ケーシングの下部には単一の駆動モータが設けられ、この駆動モータによって複合ファンが同時に駆動される。
【0023】
タイプの異なる送風ファンとしては遠心ファンと横流ファンが使用される。遠心ファンはターボファンやシロッコファンが知られ、横流ファンとしてはクロスフローファンが知られているので、これらファンの何れか2つを使用して複合ファンが構成されることになる。したがって、最もポピュラーな複合ファンの組み合わせとしては、
(例1)ターボファンとクロスフローファンを組み合わせた複合ファン(第1の複合ファン)
(例2)シロッコファンとクロスフローファンを組み合わせた複合ファン(第2の複合ファン)
が考えられる。まず、第1の複合ファンを使用した送風ファンの具体例(第1の実施例)を、
図1以下を参照して説明する。
【0024】
(第1の実施例)
図1は第1の複合ファンを使用した送風ファン1の概念を示す斜視図である。この送風ファン1は図示するように上下2段に亘り近接して配置された複合ファン10を有する。複合ファン10は第1の送風ファン10Aと第2の送風ファン10Bとで構成され、これらが駆動モータ12から延びる同一の回転軸14によって回転駆動される。この例では、回転軸14は下段の送風ファン10Bに回転的に連結されている。
【0025】
複合ファン10は箱形で、扁平な形状をなすケーシング20内に、第1の送風ファン10Aがケーシング20の上面20aのほぼ中央に穿設されたベルマウス22側となるように収容される。ベルマウス22は空気取り入れ口として機能し、ケーシング20の、この例では右側面20b側は、そのほぼ全体が開口されており、ここが送風の吐出口24として利用される。駆動モータ12はケーシング20の外部(下面側:
図4参照)に取り付け固定される。
【0026】
本実施例では、上段に位置する第1の送風ファン10Aはクロスフローファンが用いられ、下段の第2の送風ファン10Bはターボファンが用いられている。
【0027】
ターボファン10Bの上部(シュラウド側)に、クロスフローファン10Aを配した理由は以下の通りである。
【0028】
ターボファン10Bでは通常ベルマウス22からシュラウド側の空間が大きく空いている場合が多い。そこで、ターボファン10Bの上部であるシュラウド側にクロスフローファン10Aを配置することで、空間利用率が大きく改善される。小型化にも繋がる。民生用として利用することを考慮すると、ターボファン10Bのハブ側に駆動モータ12を配置してスパンを抑える構造となるため、シュラウド側にクロスフローファン10Aを配置した方が得策である。
【0029】
もちろん、ベルマウス側ではなくその反対側(ハブ側)に大きな空間があれば、この空間を利用してクロスフローファン10Aを取り付けることも可能である。例えば、産業用で駆動モータが外部に配置される構成では、ハブ側にも空間が存在するので、この空間を利用してクロスフローファンを配置できる。
【0030】
図2以下に示す複合ファン10では、クロスフローファン10A、ターボファン10B共に、樹脂製、金属製のいずれの場合でも成型体として構成される。
【0031】
樹脂によるモールド成型について説明するならば、クロスフローファン10Aも、ターボファン10Bも、何れも複数の羽根と、羽根の下側を支える板状のハブと上側を支える板状のシュラウドからなる。ターボファン10B用のハブ34に対して、この例では
図6に示すように6枚構成の羽根32(破線図示)が等間隔に一体成形される。
【0032】
これに対して、ターボファン用のシュラウド36は、通常の形状とは異なる形体が採用されている。
図1にはこのシュラウド36は図示されていないが、
図2および
図7からも明らかなように、シュラウド36はラッパ状の截頭円錐体として形成され、ベルマウス22側が径小で、ハブ34側が径大となる円錐体であって、
図2、
図3に示すようにベルマウス22が、クロスフローファン10Aのシュラウド46の上面より僅かに上方に突出するように取り付けられる。その結果、ハブ34とシュラウド36との間に設けられる羽根32は
図7のようにスパン方向に長くなる台形状の板体である。
【0033】
シュラウド36の形体をこのような円錐体としたのは、クロスフローファン10Aのベルマウスの方がターボファン10Bのベルマウス22の径よりも遥かに大きいから、円錐体形状のシュラウド36でも十分に配置できることに加え、ベルマウス22から取り込んだ空気を効率よくクロスフローファン10A側に送り込めるようにするためである。
【0034】
クロスフローファン10Aのハブ44はターボファン10B用のシュラウド36と兼用することができ、しかもクロスフローファン10A用の羽根42は、ターボファン10B用のシュラウド36と一体成形することが可能なので、クロスフローファン10A用のシュラウド46のみが別体として成形され、後で組み立てられることになる。クロスフローファン10Aのシュラウド46は既存ファンと同じ板状体である。
【0035】
クロスフローファン10Aに使用される羽根42は同一形状のものが使用されると共に、同じ円周上に等間隔で複数枚並ぶように、ハブ44と一体成形される。
図2に示すように、クロスフローファン10A用の羽根42は回転方向(時計方向)に向かって取り付けられるのに対し、ターボファン10B用の羽根32は回転方向とは反対向きに取り付けられている。
【0036】
複合ファン10が収容されたケーシング20内には、さらに以下のような部材が配置されている。
図1および
図6に示すように、クロスフローファン10Aの周面のみに対峙するケーシング20内、この例では
図1および
図6に示すように、左右側面に羽根42の外周面と少許の間隙を保持して導風部材50が配置される。
【0037】
導風部材50は、クロスフローファン10A側から送り込まれた空気流をターボファン10B側に流して吐出エネルギーを与えると共に、ターボファン10B自身の空気流と共にクロスフローファン10Aのスパン側を通して吐出口24に向けて吐出させるために設けられたものである(
図4および
図6参照)。
【0038】
つまり、吐出口24と反対側のケーシング20内に滞留した空気流に対する吐出エネルギーを第1又は第2の送風ファン(この例では、クロスフローファン10A)の風力によって付与し、吐出エネルギーが付与されたこの空気流をケーシング20内に吸い込まれた空気流と共に、複合ファン10の回転によって吐出口24より吐出させるようにするために、導風部材50が設けられている。
【0039】
導風部材50は図示のように、左側面側に曲面状をなす曲面状ケーシング体52が配置され、右側面側に同じく曲面状をなす舌状体54が配置される。曲面状ケーシング体52は、吐出口24側寄りから四分の1周分位に亘りクロスフローファン10Aの周面のみと対峙するような長さと幅を有する。(
図4~
図6参照)。
これに対して
図6に示すように舌状体54は吐出口24側から30~40°程度対峙する長さと幅に選定されている。この導風部材50の形状や長さおよび幅は、目的に応じて適宜選定選択することができる。
【0040】
このように、箱型のケーシング20を使用する場合でも、導風部材50を設けることによって、羽根32、42の上部あるいは下部の、これまでは使用されていなかった部分の空気流を所望方向に誘導して出口側に吐出させることができる。空気流を有効に活用できる分、箱型のケーシング幅を抑えることができる。実験によれば、ケーシング20の幅は、ファン直径の最大1.5倍程度まで確保すれば充分である。スクロールケーシングを使用する場合よりも小型化が可能になる。
【0041】
上述したように、ターボファン10B周りのケーシング20の形状は箱型であるのに対し、クロスフローファン10A周りのケーシング20の内部形状は、導風部材50のために多少変形した形状となっている。この導風部材50によって、上述したようにターボファン10Bから吹き出された空気流をクロスフローファン10Aに導き易くなる。この導風効果を得るために、ケーシング20の壁面の一部をクロスフローファン10Aの外周回転面に近接するように、曲面状ケーシング体52と舌状体54を設けたものである。
【0042】
こうすることによって、ターボファン10Bからの流れのうち、吐出口24近くではそのまま出ていく。ケーシング奥側の風の流れは、クロスフローファン10Aの方に吸い込まれてターボファン10Bのシュラウド36側から吐出する。このとき、ターボファン10Bからの流れと、クロスフローファン10Aからの流れは、そのまま複合ファン10から吐出する流れとして吐出するので、出口側では大きな風量、流速となって放出(吐出)されることになる。
【0043】
続いて、上述した送風ファン1における風の流れについて、
図1、
図6及び
図7を参照して説明する。図示した矢印が風の流れる方向を示す。ここに、破線矢印は主としてターボファン10Bによる空気流、実線矢印は主としてクロスフローファン10Aによる空気流、白抜き実線矢印はターボファン10Bによる空気流とクロスフローファン10Aによる空気流の合成空気流である。
【0044】
上記構成では、ベルマウス22側より吸引した空気流を直接ターボファン10Bの羽根32側に導き、その空気流を更にターボファン10B用の羽根32でクロスフローファン10A側に導いて実線矢印のように吐出させる。また、ターボファン10Bの羽根32での空気流は破線矢印のようにケーシング20の底部側より吐出させると共に、ターボファン10Bで得た空気流とクロスフローファン10Aで得た空気流の双方を利用して白抜き矢印のように出口側より吐出させて風量の増強を図る。これに加えてケーシング20の奥側(吐出口24とは反対側)に滞留しがちな空気流にエネルギー(ベルマウス22側からの風による吐出エネルギー)を与えて、白抜き矢印のように吐出させることでファン性能の改善を図るものである。
【0045】
このように吐出エネルギーを付与することで、ターボファン10Bの出口側(吐出口24側)とその反対側(ケーシング20の奥側)とで生じる圧力流れの違いを抑えることができ、ターボファン10Bの周方向への均一性が上がり、ターボファン10B自体の性能を向上させることができる。
図1のように構成したときのファン性能を、数値解析ソフト(ANSYS-CFD-CFX)を使用してシミュレーションした。
図1構成の送風ファン(2段式送風ファン)の設計流量係数φを、φ=0.187とすると、2段式送風ファンの全圧係数の値は、ターボファンを1台使用した単段式の送風ファンのそれよりも35%程度大きくなった。静圧係数はあまり変化がなかった。2段式の送風ファンにおける全圧に基づく効率は、単段式の送風ファンよりも40%程度優れ、静圧に基づく効率は34%程度優れていた。効率の改善効果は流速と体積流量の増加に寄るものである。
【0046】
第1の複合ファンを使用した送風ファン1にあって、ケーシング20の角部は鋭角に描かれているが、丸みを帯びたコーナー部に変更することも勿論可能である。
【0047】
(第2の実施例)
第2の実施例として示す第2の複合ファン60は、
図8に示すように第1の送風ファン60Aとして遠心ファンの一種であるシロッコファンが使用され、第2の送風ファン60Bとしては、横流ファンとしてのクロスフローファンが使用される。
【0048】
上段にはシロッコファン60Aが配され、下段にはクロスフローファン60Bが配され、近接して取り付けられたシロッコファン60Aとクロスフローファン60Bとは駆動モータ100から延びる同一の回転軸102によって回転駆動される。
【0049】
なお、クロスフローファン60Bとしては使用する羽根の枚数はシロッコファン60Aとほぼ同じであるが、羽根の向きは、回転方向とは反対向きである。同数の場合には、シロッコファン60Aをクロスフローファン60Bとしても使用することができる。その場合には、シロッコファン60Aを上下逆転して取り付けることで、クロスフローファン60Bとして使用することになる。
【0050】
第2の複合ファン60は円筒形をなすケーシング90内に、シロッコファン60Aがケーシング90のほぼ上面中央に穿設されたベルマウス92側となるように収容される。ベルマウス92は空気取り入れ口として機能し、ケーシング90の下面右側にはダクト95を介して吐出口94が設けられている。駆動モータ100はケーシング90の外部(下面側)に取り付け固定される。
【0051】
図8以下に示す第2の複合ファン60では、シロッコファン60A、クロスフローファン60B共に、樹脂製、金属製のいずれの場合でも成型体が使用される。
【0052】
シロッコファン60Aもクロスフローファン60Bも、周知の構成を踏襲している。
図8および
図9に示すように、シロッコファン60Aにあっては、円盤状をなすハブ74の上面に複数の羽根72が等間隔に所定枚数だけ垂設され、それらの上端が同じく円盤状をなすシュラウド76によって固定されている。ハブ74の中心部は回転連結部104bとしても機能する。
【0053】
クロスフローファン60Bも同様な構成であって、円盤状をなすハブ84の上面に複数の羽根82が等間隔に所定枚数だけ垂設され、それらの上端が同じく円盤状をなすシュラウド86によって固定されている。クロスフローファン60B用のハブ84の中心部は回転連結部104aとしても機能する。クロスフローファン60B用のシュラウド86とシロッコファン60A用のハブ74の中心部は回転連結部104bとしても機能する。
【0054】
このように構成された第2の複合ファン60は
図8に示すようなケーシング90内に収容される。
【0055】
図8に示すようにこのケーシング90は円筒状をなす上部ケーシング90Aと、同じく円筒状ではあるが多少変形した下部ケーシング90Bとで構成され、上部ケーシング90Aはシロッコファン60Aが収容されるスペースとして確保されると共に、下部ケーシング90Bはクロスフローファン60Bが収容されるスペースとして利用される。上部ケーシング90Aの上面中央部に、比較的大きな径をなすシロッコファン60A用のベルマウス92が穿設されている。上部ケーシング90Aの内径と高さはシロッコファン60Aの作動効率に支障を来たさない程度の大きさに選定されている。
【0056】
下部ケーシング90Bは、上部より送り込まれた空気流を無駄なく吐出口94側に誘導するための構成が施される。
図11はこの関係を図示したものであって、主たる空気流の流れを矢視で示す。
【0057】
下部ケーシング90Bの左右の一部に、クロスフローファン60Bの外周面に接近したくびれた部分96a、96bが形成され、このくびれ部分96a、96bによって下部ケーシング90Bに送り込まれた空気流(シロッコファン60A側からの空気流とクロスフローファン60B自身の空気流)を、クロスフローファン60Bを貫流して吐出口94に送り出すことができる。
【0058】
左右のくびれ部分96a、96bの外周面に対する間隙や長さは上述の目的を具現できる適宜な値に選定されている。この例では、くびれ部分96bの方が、くびれ部分96aより短い。これはくびれ部分96bの方がダクト95に近いからである。
【0059】
図12はシロッコファン60Aの平面を中心に図示したものであって、シロッコファン60Aのハブ74の外周面に対向する上部ケーシング90Aの内壁面に、ほぼ半周に亘って仕切板97が設けられている。この仕切板97によって
図12の矢視で示すように上部ケーシング90A側からの空気流を、仕切板97に沿って下部ケーシング90Bの内部に流し、空気流が効率よく下部ケーシング90B側に流れ込むように工夫されている。
したがって、第2の複合ファン60全体の空気流の流れを矢視をもって示すと、
図10のようになる。シロッコファン60Aから吐出口94に向けて流れる空気流はなく、殆ど下部のクロスフローファン60Bから空気流が吐出することになる。
【0060】
ケーシング90として、上述したような円筒形のケーシングを使用する場合には、ケーシング内での空気流の流れが比較的一様で、均一性が維持されると考えられるのと、2段の送風ファンを使用することで、空気流に対する吐出エネルギーが増える。ケーシング90として円筒形ではなく箱形のケーシングを使用して構成した場合に比べ、ケーシングの奥側(吐出口とは反対側)での滞留はあまり発生しないので、効率よく空気流をダクト95側に吐出させることができる。
【0061】
この発明における構造的な特徴は以下の通りである。
1.遠心ファンと横流ファンとが同一回転軸上に近接して取り付けられているので、1つのモータで駆動できる。
2.シンプルな形状のケーシングを使用できるため、小型化が可能である。
3 スクロールケーシングのような大きなケーシングを必要としないで、風を吐出させることができるので、ファン性能が向上する。
4.遠心ファンとしてシロッコファンを使用した場合、シロッコファンからの吐出を周方向ではなく、スパン方向に流してクロスフローファンを横切るようにしたので、ケーシング自体を小さくでき、小さくしても充分に圧力を高めることができる。
【0062】
上述した第1および第2の実施例において、遠心ファンや横流ファンの大きさや、使用する羽根の枚数などは自由に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、空気清浄機、空気乾燥機、空調機器などの民生用機器に適用して好適である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・送風ファン
10,60・・・複合ファン
10A,60A・・・第1の送風ファン
10B,60B…第2の送風ファン
20,90・・・ケーシング
12,100・・・駆動モータ
22,92・・・ベルマウス
24、94・・・吐出口
50・・・導風部材
52・・・曲面状ケーシング体
54・・・舌状体
96a、96b・・・くびれ部分
97・・・仕切板