(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】T細胞機能を評価して治療法に対する応答を予測するための方法および薬剤
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240716BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240716BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240716BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240716BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240716BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240716BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240716BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240716BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240716BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K35/17
C07K14/47
C07K16/18
C12N5/0783
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2021550074
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 AU2020050172
(87)【国際公開番号】W WO2020172712
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-16
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520159282
【氏名又は名称】エピアクシス セラピューティクス プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、スダ
(72)【発明者】
【氏名】マクアイグ、ロバート
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534363(JP,A)
【文献】国際公開第2018/104909(WO,A2)
【文献】Laura M. McLane,Differential Localization of T-bet and Eomes in CD8 T Cell Memory Population,The Journal of Immunology,2013年,Vol.190, No.7,pp.3207-3215,DOI: 10.4049/jimmunol.1201556
【文献】Jiang Zhang,T-bet and Eomes Govern Differentiation and Hunction of Mouse and Human NK Cells and ILC1,European Journal of Immunology,2018年,Vol.48, No.5,pp.738-750,DOI: 10.1002/eji.201747299
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞の
エフェクター機能を評価するための方法であって、前記方法は、T細胞において、EOMES
-641KまたはEOMES-373Kの翻訳後修飾を検出することを含む、方法。
【請求項2】
前記翻訳後修飾の検出は、
(1)前記T細胞におけるEOMES-641Kのアセチル化(EOMES-641K-Ac)を検出し、前記T細胞が機能不全であると決定すること;
(2)前記T細胞におけるEOMES-641Kのメチル化(EOMES-641K-Me)を検出し、前記T細胞が機能性であると決定すること;あるいは
(3)前記T細胞におけるEOMES-373
Kのメチル化
(EOMES-373K-Me)を検出し、前記T細胞が機能性であると決定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
EOMES-641K-Acを検出することは、適切な対
照と比較して、前記T細胞において上昇したレベルのEOMES-641K-Acを検出することを含み;
EOMES-641K-Meを検出することは、適切な対
照と比較して、前記T細胞において上昇したレベルのEOMES-641K-Meを検出することを含み;かつ
EOMES-373K-Meを検出することは、適切な対
照と比較して、前記T細胞において上昇したレベルのEOMES-373K-Meを検出することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記EOMES-641K-Acを検出することは、前記T細胞におけるEOMES-641K-Acの核および/または細胞質の局在を検出することをさらに含み;
前記EOMES-641K-Meを検出することは、前記T細胞におけるEOMES-641K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することをさらに含み;かつ
前記EOMES-373K-Meを検出することは、前記T細胞におけるEOMES-373K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することをさらに含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞におけるEOMES-641K-Acの核および/または細胞質の局在を検出することは、前記T細胞において、
EOMES-641K-Acの細胞質の局在に対するEOMES-641K-Acの核の局在の比、または
EOMES-641K-Acの核の局在に対するEOMES-641K-Acの細胞質の局在の
比を検出することを含み、
前記T細胞におけるEOMES-641K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することは、前記T細胞において、
EOMES-641K-Meの細胞質の局在に対するEOMES-641K-Meの核の局在の比、または
EOMES-641K-Meの核の局在に対するEOMES-641K-Meの細胞質の局在の
比を検出することを含み、かつ
前記T細胞におけるEOMES-373K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することは、前記T細胞において、
EOMES-373K-Meの細胞質の局在に対するEOMES-373K-Meの核の局在の比、または
EOMES-373K-Meの核の局在に対するEOMES-373K-Meの細胞質の局在の
比を検出することを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
免疫療法に対して癌を有する対象の応答の可能性を試験するための方法であって、前記方法は、前記対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、請求項1に記載のEOMES
-641KまたはEOMES-373Kの翻訳後修飾を検出することを含み、前記
免疫療法に対する前記対象の応答の可能性は、前記翻訳後修飾の検出によって示される方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記方法は、
(1)前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641Kのアセチル化(EOMES-641K-Ac)を検出することであって、前記
免疫療法に対して耐性または非応答性の可能性が増加したことは、前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Acの検出によって示される、検出すること;
(2)前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641Kのメチル化(EOMES-641K-Me)を検出することであって、前記
免疫療法に対して感受性または応答性の可能性が増加したことは、前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Meの検出によって示される、検出すること;あるいは
(3)前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-373Kのメチル化(EOMES-373K-Me)を検出することであって、前記
免疫療法に対して感受性または応答性の可能性が増加したことは、前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-373K-Meの検出によって示される、検出すること、
を含む、方法。
【請求項8】
前記EOMES-641K-Acを検出することは、適切な対
照と比較して、前記T細胞または前記T細胞集団にお
いて上昇したレベルのEOMES-641K-Acを検出すること;
前記EOMES-641K-Meを検出することは、適切な対
照と比較して、前記T細胞または前記T細胞集団において上昇したレベルのEOMES-641K-Meを検出すること;および
前記EOMES-373K-Meを検出することは、適切な対
照と比較して、前記T細胞または前記T細胞集団において上昇したレベルのEOMES-373K-Meを検出すること、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記EOMES-641K-Acを検出することは、前記T細胞におけるEOMES-641K-Acの核および/または細胞質の局在を検出することをさらに含み;
前記EOMES-641K-Meを検出することは、前記T細胞におけるEOMES-641K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することをさらに含み;かつ
前記EOMES-373K-Meを検出することは、前記T細胞におけるEOMES-373K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することをさらに含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記T細胞におけるEOMES-641K-Acの核および/または細胞質の局在を検出することは、前記T細胞において、
EOMES-641K-Acの細胞質の局在に対するEOMES-641K-Acの核の局在の比、または
EOMES-641K-Acの核の局在に対するEOMES-641K-Acの細胞質の局在の
比を検出することを含み;
前記T細胞におけるEOMES-641K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することは、前記T細胞において、
EOMES-641K-Meの細胞質の局在に対するEOMES-641K-Meの核の局在の比、または
EOMES-641K-Meの核の局在に対するEOMES-641K-Meの細胞質の局在の
比を検出することを含み;かつ
前記T細胞におけるEOMES-373K-Meの核および/または細胞質の局在を検出することは、前記T細胞において、
EOMES-373K-Meの細胞質の局在に対するEOMES-373K-Meの核の局在の比、または
EOMES-373K-Meの核の局在に対するEOMES-373K-Meの細胞質の局在の
比を検出することを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
免疫療法に対して癌を有する対象の耐性または感受性の可能性を試験するための方法において、前記方法は、
(1)前記対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMES-641K-Acの存在を検出することであって、前記
免疫療法に対する耐性の可能性が増加したことは、前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Acの存在の検出によって示される、検出すること;
(2)前記対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMES-641K-Meの存在を検出することであって、前記
免疫療法に対する感受性の可能性が増加したことは、前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Meの存在の検出によって示される、検出すること;あるいは
(3)前記対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMES-373K-Meの存在を検出することであって、前記
免疫療法に対する感受性の可能性が増加したことは、前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-373K-Meの存在の検出によって示される、検出するこ
と、
を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
(1)前記T細胞または前記T細胞集団中のEOMES-641K-Acレベルの上昇を、適切な対
照と比較して検出することであって、前記
免疫療法に対する耐性の可能性が増加したことは、前記対照に対して前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Acのレベルの上昇を検出することによって示される、検出すること;
(2)前記T細胞または前記T細胞集団中のEOMES-641K-Meレベルの上昇を、適切な対
照と比較して検出することであって、前記
免疫療法に対する感受性の可能性が増加したことは、前記対照に対して前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Meのレベルの上昇を検出することによって示される、検出すること;あるいは
(3)前記T細胞または前記T細胞集団中のEOMES-373K-Meレベルの上昇を、適切な対
照と比較して検出することであって、前記
免疫療法に対する感受性の可能性が増加したことは、前記対照に対して前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-373K-Meのレベルの上昇を検出することによって示される、検出すること、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法において、
(1)前記T細胞または前記T細胞集団を含むサンプルを、EOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子と接触させ、かつ前記抗原結合分子および前記EOMES-641K-Acを含む複合体を前記サンプル中で検出することであって、前記
免疫療法に対する耐性の可能性が増加していることは、前記複合体の検出によって示される、検出すること;
(2)前記T細胞または前記T細胞集団を含むサンプルを、EOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させ、かつ前記抗原結合分子および前記EOMES-641K-Meを含む複合体を前記サンプル中で検出することであって、前記
免疫療法に対する感受性の可能性が増加していることは、前記複合体の検出によって示される、検出すること;または
(3)前記T細胞または前記T細胞集団を含むサンプルを、EOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させ、かつ前記抗原結合分子および前記EOMES-373K-Meを含む複合体を前記サンプル中で検出することであって、前記
免疫療法に対する感受性の可能性が増加していることは、前記複合体の検出によって示される、検出すること、
を含む、方法。
【請求項14】
免疫療法に対する癌を有する対象の応答の可能性を試験する方法であって、前記方法は、EOMES-641K-AcおよびEOMES-641K-Meのレベルを前記対象から得られたT細胞またはT細胞集団中で測定することと;前記T細胞または前記T細胞集団におけるEOMES-641K-AcおよびEOMES-641K-Meのレベルを比較することと;を含み、前記
免疫療法に対する応答は前記比較によって示されるものであり、EOMES-641K-Meよりも高いレベルのEOMES-641K-Acは、前記
免疫療法に対する耐性の可能性が増加したことを示し、EOMES-641K-Acよりも高いレベルのEOMES-641K-Meは、前記
免疫療法に対する感受性の可能性が増加したことを示す、方法。
【請求項15】
前記T細胞または前記T細胞集団を含むサンプルを、EOMES-641K-Acに特異的に結合する第1の抗原結合分子、およびEOMES-641K-Meに特異的に結合する第2の抗原結合分子と接触させることと;前記サンプル中で、前記第1の抗原結合分子および前記EOMES-641K-Acを含む第1の複合体のレベル、および前記第2の抗原結合分子および前記EOMES-641K-Meを含む第2の複合体のレベルを測定することと、を含み、前記
免疫療法に対する応答の可能性は、前記第1の複合体のレベルおよび前記第2の複合体のレベルの比較に基づいて示され、前記サンプル
において前記第1の複合体
が前記第2の複合体より
もレベル
が高いことは、前記
免疫療法に
対する耐性の可能性が増加したことを示し、前記サンプル
において前記第
2の複合体
が前記第
1の複合体
よりもレベル
が高いことは、前記
免疫療法に
対して感受性を示す可能性が増加したことを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記T細胞において、少なくとも1つの追加のバイオマーカーを検出することをさらに含み、前記
少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1およびCD107aの中から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
免疫療法に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象
を層別
化するための方法であって、前記方法は、前記対象から採取したサンプルにおいて、請求項1に記載のEOMES
-641KまたはEOMES-373Kの翻訳後修飾を含むT細胞またはT細胞集団を検出することを含み、前記
免疫療法に対する可能性のある応答者または非応答者としての前記対象の層別化は、
前記T細胞または
前記T細胞集団におけるEOMES
-641KまたはEOMES-373Kの翻訳後修飾の検出に基づいて示される方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法は:
(1)
前記T細胞または前記T細胞集団においてEOMES-641K-Acを検出することであって、前記
免疫療法に対する可能性のある非応答者としての前記対象の層別化は、前記T細胞または
前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Acの検出に基づいて示される、検出すること;
(2)
前記T細胞または前記T細胞集団においてEOMES-641K-Meを検出することであって、前記
免疫療法に対する可能性のある応答者としての前記対象の層別化は、前記T細胞または
前記T細胞集団におけるEOMES-641K-Meの検出に基づいて示される、検出すること;あるいは
(3)
前記T細胞または前記T細胞集団においてEOMES-373K-Meを検出することであって、前記
免疫療法に対する可能性のある応答者としての前記対象の層別化は、前記T細胞または
前記T細胞集団におけるEOMES-373K-Meの検出に基づいて示される、検出すること、
を含む方法。
【請求項19】
前記EOMES-641K-Acの検出は、前記サンプルを、EOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、前記サンプルにおいて、前記抗原結合分子および前記EOMES-641K-Acを含む複合体を検出することであって、前記
免疫療法に対する可能性のある非応答者としての前記対象の層別化は、前記複合体の検出によって示される、前記検出することと、を含み;
前記EOMES-641K-Meの検出は、前記サンプルを、EOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、前記サンプルにおいて、前記抗原結合分子および前記EOMES-641K-Meを含む複合体を検出することであって、前記
免疫療法に対する可能性のある応答者としての前記対象の層別化は、前記複合体の検出によって示される、前記検出することと、を含み;かつ
前記EOMES-373K-Meの検出は、前記サンプルを、EOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、前記サンプルにおいて、前記抗原結合分子および前記EOMES-373K-Meを含む複合体を検出することであって、前記
免疫療法に対する可能性のある応答者としての前記対象の層別化は、前記複合体の検出によって示される、前記検出することと、を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、EOMES-641K-Acに特異的に結合する第1の抗原結合分子およびEOMES-641K-Meに特異的に結合する第2の抗原結合分子と前記サンプルを接触させることと;前記サンプル中で、前記第1の抗原結合分子およびEOMES-641K-Acを含む第1の複合体のレベル、および前記第2の抗原結合分子およびEOMES-641K-Meを含む第2の複合体のレベルを測定することとを含み、前記対象の可能性のある応答者または可能性のある非応答者としての層別化は前記第1の複合体のレベルおよび前記第2の複合体のレベルの比較に基づいて示され、サンプル中で前記第1の複合体のレベルが前記第2の複合体
のレベルよりも高い場合には、前記対象は可能性のある非応答者として示され、かつ前記サンプル中で前記第2の複合体のレベルが前記第1の複合体
のレベルよりも高い場合には、前記対象は可能性のある応答者として示される、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
T細胞の
エフェクター機能を評価するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための、または
免疫療法に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための、または
免疫療法による癌を有する対象の治療を管理するための、または対象の免疫機能を評価するための、または免疫機能の障害または低下を有する対象の
免疫療法による治療を管理するための
、抗原結合分子であって
、EOMES-641K-Acと特異的に結合する抗原結合分子。
【請求項22】
T細胞の
エフェクター機能を評価するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための、または
免疫療法に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための、または
免疫療法による癌を有する対象の治療を管理するための、または対象の免疫機能を評価するための、または免疫機能の障害または低下を有する対象の
免疫療法による治療を管理するための
、抗原結合分子であって
、EOMES-641K-Meと特異的に結合する抗原結合分子。
【請求項23】
T細胞の
エフェクター機能を評価するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための、または
免疫療法に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための、または
免疫療法に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための、または
免疫療法による癌を有する対象の治療を管理するための、または対象の免疫機能を評価するための、または免疫機能の障害または低下を有する対象の
免疫療法による治療を管理するための
、抗原結合分子であって
、EOMES-373K-Meと特異的に結合する抗原結合分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、T細胞機能を評価し、治療法に対する応答を予測するための方法および薬剤に関する。より詳細には、本発明は、T細胞の機能を評価するため、対象の免疫機能を評価するため、免疫療法を含む治療法に対する癌患者の応答の可能性を予測するため、癌患者を治療法に対する可能性のある応答者または非応答者として層別化するため、および癌患者の治療を管理するために有用である、T細胞中の異なる形態のエオメソデルミン(EOMES)を検出するための方法および薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は世界中の罹患率と死亡率の重要な原因である。さまざまな種類の癌に対する標準治療は、長年にわたって大幅に改善されてきたが、現在の標準治療では、依然として、癌治療を改善するための効果的な治療法の必要性を満たすことができていない。細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)とプログラム細胞死受容体-1(PD-1)およびそのリガンドPD-L1を標的とする免疫腫瘍学的薬剤の臨床使用は、多くの種類の癌を治療するための標準治療の改善をもたらした。これらのチェックポイント阻害剤は、ある種の癌において改善された臨床応答をもたらしたが、持続的な臨床応答は、患者の約10~45%にしか起こらない。さらに、かなりの数の腫瘍が耐性であるか、または難治性になる。例えば、メラノーマおよび肺癌の約20~50%は免疫療法に有意に応答するが、応答しないものもある。したがって、どの対象が癌治療法のより良い候補であるかを同定することは、医療および患者のQOLの観点から非常に有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、当技術分野では、免疫療法を含む治療法への応答を予測することを助け、精度を向上させる方法および薬剤が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、T細胞におけるEOMESの異なる翻訳後修飾(post-translational modification)が、異なる細胞区画へのこの転写因子の局在と関連していたという決定から部分的に生じる。さらに、異なる翻訳後修飾は、異なるT細胞機能および癌治療法に対する応答性と関連していた。特に、本発明者らは、EOMESの核局在配列(NLS)におけるリジン(すなわち、EOMES-641K)の異なる翻訳後修飾が、EOMESの核または細胞質への局在に関連していることを見出した。より具体的には、EOMES-641Kのアセチル化(すなわち、EOMES-263K-Ac)は、EOMESの核への偏った局在(biased localization)と関連していることが見出された。興味深いことに、このアセチル化された形態のEOMESは、T細胞の疲弊および治療に対する耐性または非応答性にも関連していることが見いだされた。逆に、EOMES-641Kのメチル化(すなわちEOMES-641K-Me)は一般的にT細胞の細胞質へのEOMESのより偏った局在と関連していることが見出された。この形態のEOMESは、有能な免疫機能を有するT細胞とも関連しており、癌治療法(cancer therapy)への応答性と相関していた。本発明者らはまた、EOMESのDNA結合ドメインにおけるリジン(すなわち、EOMES-373K)の翻訳後修飾が、癌治療法に対する応答性と相関することを示した。具体的には、EOMES-373Kのメチル化(すなわち、EOMES-373K-Me)は、偏った細胞質局在と癌治療への応答性と関連していた。
【0005】
これらの知見は、以下に記載されるように、T細胞の機能を評価するための、対象の免疫機能を評価するための、治療法に対する応答を予測および/またはモニタリングするための、T細胞にて発現されたEOMESの形態に従って患者を有望な応答者または非応答者として層別化するための、層別化に従って患者の治療を管理するための、ならびに臨床転帰を予測するための、方法および薬剤において実践に移されている。
【0006】
したがって、一態様において、T細胞の機能を評価するための方法が提供され、同方法は、T細胞において、EOMESの核局在配列および/またはDNA結合モチーフにおける翻訳後修飾を検出することを含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0007】
一実施形態において、この方法は、T細胞におけるEOMES-641Kのアセチル化(本明細書では「EOMES-641K-Ac」とも称される)を検出することと、T細胞が機能不全であると決定することと、を含む。特定の実施形態において、適切な対照(例えば、機能的T細胞)と比較して、T細胞において上昇したレベルのEOMES-641K-Acが検出される。この方法は、T細胞におけるEOMES-641K-Acの細胞局在(例えば、核および/または細胞質局在)を検出することをさらに含み得る。特定の例において、この方法は、T細胞において、核対細胞質の比、または細胞質対核の比、EOMES-641K-Acの局在を検出することを含む。
【0008】
T細胞の機能を評価するための方法のさらなる実施形態では、この方法は、T細胞中のEOMES-641Kのメチル化(本明細書では「EOMES-641K-Me」とも呼ばれる)を検出することと、T細胞が機能的であることを決定することと、を含む。例えば、適切な対照(例えば、機能不全T細胞)と比較して、T細胞において上昇したレベルのEOMES-641K-Meが検出され得る。この方法は、T細胞におけるEOMES-641K-Meの細胞局在(例えば、核および/または細胞質局在)を検出することをさらに含み得る。一例において、T細胞において、核対細胞質の比、または細胞質対核の比、EOMES-641K-Meの局在が検出される。
【0009】
T細胞の機能を評価するための方法の別の実施形態では、この方法は、T細胞中のEOMES-373Kのメチル化(本明細書では「EOMES-373K-Me」とも呼ばれる)を検出することと、T細胞が機能的であることを決定することと、を含む。一例において、適切な対照(例えば、機能不全T細胞)と比較して、T細胞において上昇したレベルのEOMES-373K-Meが検出される。この方法は、T細胞におけるEOMES-373K-Meの細胞局在(例えば、核および/または細胞質局在)を検出することをさらに含み得る。一実施形態において、T細胞において、核対細胞質の比、または細胞質対核の比、EOMES-373K-Meの局在が検出される。
【0010】
本発明のさらなる態様は、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための方法を提供し、この方法は、対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMESの核局在配列および/またはEOMESのDNA結合モチーフにおける翻訳後修飾を検出することと、それによって、治療法に対する対象の応答の可能性を予測することと、を含む、それからなる、または本質的にそれからなる方法を提供する。
【0011】
この方法の一実施形態において、方法は、T細胞またはT細胞集団におけるEOMES-641Kのアセチル化(本明細書では「EOMES-641K-Ac」とも称される)を検出することと、それによって対象が治療法に対して耐性または非応答性である可能性が増加していることを決定することと、を含む。一例において、方法は、適切な対照(例えば、機能性T細胞、健康な対象から得られたT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞集団における上昇したレベルのEOMES-641K-Acを検出すること、を含む。この方法は、T細胞におけるEOMES-641K-Acの細胞局在(例えば、核および/または細胞質局在)を検出することをさらに含み得る。特定の例において、この方法は、T細胞において、核対細胞質の比、または細胞質対核の比、EOMES-641K-Acの局在を検出することを含む。
【0012】
治療法に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための方法のさらなる実施形態において、この方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-641Kのメチル化(本明細書では「EOMES-641K-Me」とも呼ばれる)を検出することと、それによって、対象が治療法に対して感受性または応答性の可能性が増大していることを決定することと、を含む。一例において、適切な対照(例えば、機能不全のT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞の集団におけるEOMES-641K-Meのレベルの上昇が検出される。この方法は、T細胞におけるEOMES-641K-Meの細胞局在(例えば、核および/または細胞質局在)を検出することをさらに含み得る。一例において、T細胞において、核対細胞質の比、または細胞質対核の比、EOMES-641K-Meの局在が検出される。
【0013】
治療法に対して癌を有する対象の応答の可能性を予測するための方法の別の実施形態において、この方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-373Kのメチル化(本明細書では「EOMES-373K-Me」とも呼ばれる)を検出することと、それによって、対象が治療法に対して感受性または応答性の可能性が増大していることを決定することと、を含む。一例において、適切な対照(例えば、機能不全のT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞の集団におけるEOMES-373K-Meのレベルの上昇が検出される。この方法は、さらに、T細胞におけるEOMES-373K-Meの細胞内局在(例えば、核および/または細胞質の局在)を検出すること、および任意選択的に、T細胞において、核対細胞質の比率、または細胞質対核の比率、EOMES-373K-Meの局在を検出することと、を含むことができる。
【0014】
本発明の別の態様は、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対して癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための方法を提供し、この方法は、対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMES-641K-Acの存在を検出することと、それにより、対象が治療法に対して耐性の可能性が増加したことを決定することと、を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。一実施形態において、この方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-641K-Acレベルの上昇を、適切な対照(例えば、機能性T細胞または健康な対象、または癌治療法に感受性のある対象から得られたT細胞)と比較して検出することを含み、これは、対象が治療法に対して耐性の可能性が増加したことを示す。特定の例において、この方法は、T細胞またはT細胞の集団を含むサンプルを、EOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、抗原結合分子およびEOMES-641K-Acを含む複合体をサンプル中で検出することによって、対象が治療法に対して耐性の可能性が増加していることを決定することと、を含む。
【0015】
治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための方法を提供し、この方法は、対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMES-641K-Meの存在を検出することと、それにより、対象が治療法に対して感受性の可能性が増加したことを決定することと、を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。一例において、方法は、適切な対照(例えば、機能不全T細胞、癌治療法に対して耐性である対象から得られたT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞集団における上昇したレベルのEOMES-641K-Meを検出すること、を含み、それは、対象が治療法に対して感受性の可能性が増大していることを指す。1つの特定の実施形態において、この方法は、T細胞またはT細胞の集団を含むサンプルを、EOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、抗原結合分子およびEOMES-641K-Meを含む複合体をサンプル中で検出することとを含み、それによって、対象が治療法に対して感受性の可能性が増加していることを決定する。
【0016】
さらなる態様において、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための方法を提供し、この方法は、対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMES-373K-Meの存在を検出することと、それにより、対象が治療法に対して感受性の可能性が増加したことを決定することと、を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。いくつかの例において、方法は、適切な対照(例えば、機能不全T細胞、癌治療に対して耐性である対象から得られたT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞集団における上昇したレベルのEOMES-373K-Meを検出すること、を含み、それは、対象が治療法に対して感受性の可能性が増大していることを指す。さらなる例において、この方法は、T細胞またはT細胞の集団を含むサンプルを、EOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、抗原結合分子およびEOMES-373K-Meを含む複合体をサンプル中で検出することとを含み、それによって、対象が治療法に対して感受性の可能性が増加していることを決定する。
【0017】
別の態様において、本発明は、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌患者の応答の可能性を予測する方法を提供し、同方法は、EOMES-641K-AcおよびEOMES-641K-Meのレベルを対象から得られたT細胞またはT細胞集団中で測定することと;T細胞またはT細胞集団におけるEOMES-641K-AcおよびEOMES-641K-Meのレベルを比較することと;比較に基づいて対象の治療に対する応答を予測することと、を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなり、ここで、EOMES-641K-Meよりも高いレベルのEOMES-641K-Acは、対象が治療法に対して耐性の可能性が高いことを示し、EOMES-641K-Acよりも高いレベルのEOMES-641K-Meは、対象が治療法に対して感受性の可能性が高いことを示す。一実施形態において、方法は、T細胞またはT細胞集団を含むサンプルを、EOMES-641K-Acに特異的に結合する第1の抗原結合分子、およびEOMES-641K-Meに特異的に結合する第2の抗原結合分子と接触させることと;サンプル中で、第1の抗原結合分子およびEOMES-641K-Acを含む第1の複合体のレベル、および第2の抗原結合分子およびEOMES-641K-Meを含む第2の複合体のレベルを測定することと;前記比較に基づいて、前記治療法に対して対象の応答の可能性を予測することであって、前記サンプル中の前記第1の複合体の前記第2の複合体よりも高いレベルは、前記対象が前記治療法に耐性である可能性が高いことを示し、前記サンプル中の前記第1の複合体よりも前記第2の複合体のより高いレベルは、前記対象が前記治療法に感受性を示す可能性が高いことを示す、前記予測することと、を包含する。この方法は、T細胞またはT細胞集団において、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1および/またはCD107aのような少なくとも1つの追加のバイオマーカーを検出することをさらに含み得る。
【0018】
本発明はまた、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための方法を提供し、同方法は、対象から採取したサンプルにおいて、EOMESの核局在配列および/またはDNA結合モチーフにおける翻訳後修飾を含むT細胞またはT細胞集団を検出することにより、同対象をその治療法に対する可能性のある応答者または非応答者として層別化することを含む、それからなる、またはそれから本質的になる。
【0019】
一例において、この方法は、T細胞またはT細胞の集団においてEOMES-641K-Acを検出することと、対象を治療法に対する可能性のある非応答者として層別化することと、を含む。特定の実施形態において、この方法は、サンプルを、EOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることと、サンプルにおいて、抗原結合分子およびEOMES-641K-Acを含む複合体を検出することと、それにより、対象を治療法に対する可能性のある非応答者として層別化することと、を含む。さらなる実施形態において、この方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-641K-Meを検出し、例えば、サンプルをEOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることによって、治療法に対する可能性のある応答者としての対象を層別化することと、抗原結合分子およびEOMES-641K-Meを含む複合体をサンプル中で検出することによって、治療法に対する可能性のある応答者としての対象を層別化することと、を含む。別の実施形態において、この方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-373K-Meを検出し、例えば、サンプルをEOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させることによって、治療法に対する可能性のある応答者としての対象を層別化することと、抗原結合分子およびEOMES-373K-Meを含む複合体をサンプル中で検出することによって、治療法に対する可能性のある応答者としての対象を層別化することと、を含む。
【0020】
治療法に対する応答者または非応答者である可能性が高いとして癌を有する対象を層別化する方法の一実施形態において、この方法は、EOMES-641K-Acに特異的に結合する第1の抗原結合分子およびEOMES-641K-Meに特異的に結合する第2の抗原結合分子とサンプルを接触させることと;サンプル中で、第1の抗原結合分子およびEOMES-641K-Acを含む第1の複合体のレベル、および第2の抗原結合分子およびEOMES-641K-Meを含む第2の複合体のレベルを測定することと;比較に基づいて対象を可能性のある応答者または可能性のある非応答者として層別化することであって、サンプル中で第1の複合体のレベルが第2の複合体よりも高い場合には、対象を可能性のある非応答者として層別化し、かつサンプル中で第2の複合体のレベルが第1の複合体よりも高い場合には、対象を可能性のある応答者として層別化することと、を含む。
【0021】
本発明はまた、癌を有する対象の治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)での治療を管理する方法を提供し、同方法は、前記対象が前記治療法に対する応答者である可能性が高いことに基づいて、前記治療法を用いて治療を行うための癌を有する対象を選択すること、または前記対象が前記治療法に対する非応答者である可能性が高いことに基づいて、前記治療法を用いて治療を行なわないための癌を有する対象を選択すること、前記選択に基づいて前記対象を前記治療法で治療することまたは治療しないこと、を含む、それからなる、または本質的にそれからなり、前記選択は、前記対象から採取されたサンプルにおいて、EOMESの核局在配列および/またはDINA結合モチーフにおける翻訳後修飾を含むT細胞またはT細胞の集団を検出することによって、前記治療法に対する応答者または非応答者の可能性があるものとして前記対象を層別化することを含む、層別化の方法に基づいている。一例において、層別化の方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-641K-Meを検出し、治療法に対する可能性のある応答者としての対象を層別化すること、例えば、サンプルをEOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させ、抗原結合分子およびEOMES-641K-Meを含む複合体をサンプル中で検出することによって治療法に対する可能性のある応答者としての対象を層別化すること、を含む。別の例において、層別化の方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-373K-Meを検出し、治療法に対する可能性のある応答者として対象を層別化すること、例えば、サンプルをEOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と接触させ、抗原結合分子およびEOMES-373K-Meを含む複合体をサンプル中で検出することによって、治療に対する可能性のある応答者としての対象を層別化すること、を含む。さらなる例において、層別化の方法は、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-641K-Acを検出し、治療に対する可能性のある非応答者としての患者を層別化すること、例えば、サンプルをEOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子と接触させ、抗原結合分子およびEOMES-641K-Acを含む複合体をサンプル中で検出することによって、治療法に対する可能性のある非応答者としての患者を層別化すること、を含む。特定の実施形態において、層別化の方法は、EOMES-641K-Acに特異的に結合する第1の抗原結合分子およびPD EOMES-641K-Meに特異的に結合する第2の抗原結合分子とサンプルを接触させることと;サンプル中で、第1の抗原結合分子およびEOMES-641K-Acを含む第1の複合体のレベル、および第2の抗原結合分子およびEOMES-641K-Meを含む第2の複合体のレベルを測定することと;比較に基づいて対象を可能性のある応答者または可能性のある非応答者として層別化することであって、サンプル中で第1の複合体のレベルが第2の複合体よりも高い場合には、対象を可能性のある非応答者として層別化し、かつサンプル中で第2の複合体のレベルが第1の複合体よりも高い場合には、対象を可能性のある応答者として層別化することと、を含む。
【0022】
上述の方法のいくつかの例において、方法は、T細胞またはT細胞集団において、例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1および/またはCD107aのような少なくとも1つの追加のバイオマーカーを検出することをさらに含み得る。
【0023】
さらなる態様において、対象の免疫機能を評価するための方法が提供され、同方法は、対象から得られたT細胞またはT細胞集団において、EOMESの核局在配列および/またはEOMESのDNA結合モチーフにおける翻訳後修飾を検出することを、含む、それからなる、または本質的にそれからなる。
【0024】
一実施形態において、方法は、T細胞またはT細胞集団におけるEOMES-641Kのアセチル化(本明細書では「EOMES-641K-Ac」とも称される)を検出することと、それによって対象の免疫機能が低下していることを決定することと、を包含する。例えば、方法は、適切な対照(例えば、正常な、もしくは適格な(competent)免疫機能を有する対象から得られたT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞集団における上昇したレベルのEOMES-641K-Acを検出すること、を含む。いくつかの実施形態において、T細胞におけるEOMES-641K-Acの細胞局在、例えば、核および/または細胞質局在、が検出される。特定の例において、この方法は、T細胞において、核対細胞質の比、または細胞質対核の比、EOMES-641K-Acの局在を検出することを含む。
【0025】
さらなる実施形態において、免疫機能を評価するための方法は、T細胞またはT細胞の集団におけるEOMES-641Kのメチル化(本明細書では「EOMES-641K-Me」とも呼ばれる)を検出し、それにより、対象が正常なまたは適格な免疫機能を有していることを決定することを含み、例えば適切な対照(例えば、免疫機能が低下している対象からのT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-641K-Meの上昇したレベルを検出することを含む。一例において、T細胞におけるEOMES-641K-Meの細胞局在、例えば、核および/または細胞質局在、が検出される。特定の例において、この方法は、T細胞において、核対細胞質の比、または細胞質対核の比、EOMES-641K-Meの局在を検出することを包含する。
【0026】
別の実施形態において、方法は、T細胞またはT細胞の集団におけるEOMES-373Kのメチル化(本明細書では「EOMES-373K-Me」とも呼ばれる)を検出し、それにより、対象が正常なまたは適格な免疫機能を有していることを決定することを含み、例えば適切な対照(例えば、免疫機能が低下している対象からのT細胞)と比較して、T細胞またはT細胞集団中のEOMES-373K-Meの上昇したレベルを検出することを含む。一実施形態において、方法は、T細胞におけるEOMES-373K-Meの細胞内局在を検出すること、例えば、T細胞におけるEOMES-373K-Meの核および/または細胞質の局在を検出すること、および任意選択的に、T細胞において、核対細胞質の比率、または細胞質対核の比率、EOMES-373K-Meの局在を検出することと、を含む。
【0027】
EOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子も提供され、適切には、同抗原結合分子はT細胞の機能を評価するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)による癌を有する対象の治療を管理するための、対象の免疫機能を評価するための、および/または治療法(例えば、免疫療法)による免疫機能の障害または低下を有する対象の治療を管理するための、ものである。
【0028】
別の態様において、EOMES-641K-Acと、EOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子と、を含む複合体が提供される。
さらなる態様において、EOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子も提供され、適切には、同抗原結合分子はT細胞の機能を評価するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)による癌を有する対象の治療を管理するための、対象の免疫機能を評価するための、および/または治療法(例えば、免疫療法)による免疫機能の障害または低下を有する対象の治療を管理するための、ものである。
【0029】
さらに本明細書において記載されているのは、EOMES-641K-Meと、EOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と、を含む複合体である。
別の態様において、EOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子も提供され、適切には、同抗原結合分子はT細胞の機能を評価するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)による癌を有する対象の治療を管理するための、対象の免疫機能を評価するための、および/または治療法(例えば、免疫療法)による免疫機能の障害または低下を有する対象の治療を管理するための、ものである。
【0030】
また、EOMES-373K-Meと、EOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子と、を含む複合体が提供される。
本発明のさらなる態様は、T細胞の機能を評価するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の応答の可能性を予測するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の耐性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する癌を有する対象の感受性の可能性を決定するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)に対する可能性のある応答者または非応答者として癌を有する対象を層別化するための、治療法(例えば、細胞傷害性療法および/または免疫療法)による癌を有する対象の治療を管理するための、対象の免疫機能を評価するための、および/または治療法(例えば、免疫療法)による免疫機能の障害または低下を有する対象の治療を管理するための、キットが提供され、同キットはEOMES-641K-Acに特異的に結合する抗原結合分子、EOMES-641K-Meに特異的に結合する抗原結合分子、およびEOMES-373K-Meに特異的に結合する抗原結合分子の少なくとも1つ、2つ、またはそれぞれを含む。一実施形態において、キットは、陽性対照および陰性対照を含む1つまたは複数の対照を含み、例えば、陽性対照は、EOMES-641K-Acポリペプチド、EOMES-641K-MeポリペプチドおよびEOMES-373K-Meポリペプチドから選択される。キットは、任意選択で、上記および本明細書に記載の方法を実施するための指示説明書を含み得る。
【0031】
本発明の別の態様は、EOMES-641K-Acと、EOMES-641K-Acに特異的に結合する第1の抗原結合分子と、を含む、EOMES-641K-MeとEOMES-641K-Meに特異的に結合する第1の抗原結合分子とを含む、あるいは、EOMES-373-MeとEOMES-373K-Meに特異的に結合する第1の抗原結合分子とを含む、複合体を含むT細胞に関する。一例において、T細胞は、第1の抗原結合分子に結合する第2の抗原結合分子、例えば、検出可能な標識を含む第2の抗原結合分子、をさらに含む。
【0032】
上記および本明細書に記載の方法、キット、抗原結合分子、複合体またはT細胞の一実施形態において、治療法は、免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法である。例示的な阻害剤には、免疫チェックポイント分子に特異的に結合するアンタゴニスト抗原結合分子(例えば、抗体)が含まれる。一例において、アンタゴニスト抗原結合分子(例えば、抗体)は、PD-1、PD-L1およびCTLA4から選択される免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1-1】
図1は、健康なドナーおよび転移性乳癌またはメラノーマ患者から単離されたCD8
+T細胞におけるEOMESの有病率(prevalence)を示す概略図、グラフおよび写真である。CD8
+T細胞を、ベースライン出血(baseline bleed)後24か月間、3か月ごとに健康なドナー(HD)、転移性乳癌患者またはメラノーマ患者の液体生検から分離した。メラノーマ患者は、免疫療法治療に対する客観的応答(ペムブロリズマブ、ニボルマブおよび/またはイピリムマブを用いた単剤または2剤併用療法)に基づき、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)または進行(PD)に更に分類した。図のプロットは、PD(進行)またはCR(完全奏効)患者コホートのいずれかについてRECIST1.1に記載された腫瘍成長における変化(%)を示す。(A)CD8
+T細胞は、上記の完全奏効(CR)、安定(SD)または進行(PD)メラノーマ患者から単離した。細胞をホルボール-12-ミリステート13-アセテート+カルシウムイオノフォアA23187(PMA/CI)で刺激するか、または刺激せず固定した。NS CD8
+T細胞に対する抗Ki67およびNSまたはST CD8
+T細胞に対する抗TNF-αまたは抗IFN-γに対する一次抗体を用い、DAPI染色により免疫蛍光顕微鏡観察を行った。グラフは、Ki67についての核蛍光強度(NFI)値、およびTNF-αおよびIFN-γについての総蛍光強度(TFI)値を表し、ImageJを使用して測定し、核マイナスバックグラウンドを選択した(10人の患者コホートについて患者当たりn>20個の個々の細胞)。(B)CD8
+T細胞を、健康なドナー(HD)および、上記したように完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)または進行(PD)として分類したメラノーマ患者から単離した。細胞を固定し、EOMESおよびPD1に対する一次抗体を用いて、DAPI染色で免疫蛍光顕微鏡検査を行った。グラフは、EOMESの複合体についてのTFI値とPD-1についての平均NFIとを表し、細胞数とIFシグナル強度を定量化するために高スループットIF顕微鏡検査のための多重免疫蛍光サンプルのための一般的なスキャンと分析システム(Applied Scientific Instrumentation;ASI)を使用して測定した(10人の患者のコホートについて患者あたりn>2500個の個々の細胞)。グラフは集団(%)を表す。
【
図1-2】(C)NLSドメインを示すEOMESタンパク質構造。(D)EOMESプラスミドの模式図:EOMES WT(E-WT;野生型EOMES);EOMES変異体1(E-MUT1;641位のリジンの位置にアラニン変異を有するEOMES、それはリジン残基の非アセチル化または非メチル化を模倣する);およびEOMES変異体2(E-MUT2;641位のリジンの位置にフェニルアラニン変異を有するEOMES、それはリジン残基の高メチル化状態を模倣する)。
【
図1-3】(E)Jurkat T細胞を、ベクターのみ(VO)、E-WT、E-MUT1またはE-MUT2のいずれかでトランスフェクトし、抗EOMES、抗TBETおよび抗PD1抗体でプローブした(probed)。グラフのプロットは、ImageJマイナスバックグラウンドを使用して測定したEOMESのFn/cまたはEOMESの平均NFI、またはPD-1の平均TFIを表す(グループあたりn=>20の細胞)。各データセットの代表的な画像を示す。スケールバーはオレンジ色で表示され、長さは10mmである。(F)VO、E-WT、E-MUT1またはE-MUT2のいずれかでトランスフェクトしたJurkat T細胞を、抗Ki67、抗IFN-γおよび抗TNF-α抗体でプローブした。グラフのプロットは、ImageJマイナスバックグラウンドを使用して測定したKi67、IFN-γおよび-TNF-αのTFIを示す(グループあたりn=>20の細胞)。
【
図2】
図2は、種々のEOMESポリペプチドに対して生じたポリクローナルウサギ抗体の特異性のグラフである。(A)翻訳後修飾を受けていないEOMESポリペプチドに対して産生された抗体。(B)641位のリジンにてアセチル化されたEOMESポリペプチドに対して産生された抗体。(C)641位のリジンにてメチル化されたEOMESポリペプチドに対して産生された抗体。(D)373位のリジンにてメチル化されたEOMESポリペプチドに対して産生された抗体。
【
図3-1】
図3は、免疫療法に対する患者の応答を予測する抗EOMES抗体の能力を示す概略図およびグラフである。(A)DNA結合ドメインを示すEOMESタンパク質構造。(B)未修飾またはメチル化(Me)もしくはアセチル化(Ac)により修飾されたNLSモチーフまたはDNA結合モチーフに特異的なポリクローナル抗体の産生の概略。(C)最終的に応答者または耐性者コホートとして分類された原発腫瘍のベースライン生検由来のメラノーマ患者ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルを、BOND RX(ライカバイオシステムズ(Leica Biosystems))を用いて3D高解像度顕微鏡検査のために処理した。FFPE組織を固定し、DAPI染色でCD8、アセチル化EOMES(抗EOMES-641K-Ac;「EOMES-AC」)またはメチル化EOMES(抗EOMES-641K-Me;「EOMES-Me」)に対する一次抗体でサンプルをプロービングすることにより免疫蛍光顕微鏡検査を行った。グラフプロットは、ImageJマイナスバックグラウンドを使用して測定した、EOMES-Meの平均NFI値およびEOMES-Acの平均NFIを表す(患者サンプルあたりN=90細胞。10人の患者を対象としたコホート)。
【
図3-2】(D)同意を得たメラノーマ患者からベースライン出血後24ヵ月間、3ヵ月毎に液体生検を実施した。患者はさらに、免疫療法治療に対する客観的応答(ペムブロリズマブ、ニボルマブおよび/またはイピリムマブを用いた単剤または2剤併用療法)に基づき免疫療法に耐性または応答性と分類した。RECIST1.1に従って定義された耐性者コホートまたは応答者コホートのいずれかからの血液から単離したCD8
+T細胞を、抗CD8抗体および抗EOMES-641K-Acポリクローナル抗体を用いてスクリーニングした。細胞を固定し、抗体とDAPI染色で免疫蛍光顕微鏡検査を行った。グラフプロットは、コホートのN=10人の患者についてImageJマイナスバックグラウンドを用いて測定したEOMES-641K-Acの平均NFIおよび細胞質蛍光強度(CFI)を表す(グループあたりn=10人の患者)。(E)ベースライン出血後24か月間、3か月ごとに、同意したメラノーマ患者から液体生検を行った。患者はさらに、免疫療法治療に対する客観的応答(ペムブロリズマブ、ニボルマブおよび/またはイピリムマブを用いた単剤または2剤併用療法)に基づき免疫療法に耐性または応答性と分類した。RECIST1.1に従って定義された耐性者コホートまたは応答者コホートのいずれかからの血液から単離したCD8
+T細胞を、抗CD8抗体および抗EOMES-641K-Meポリクローナル抗体を用いてスクリーニングした。細胞を固定し、抗体とDAPI染色で免疫蛍光顕微鏡検査を行った。グラフプロットは、ImageJマイナスバックグラウンドを使用して測定したEOMES-641K-Meの平均NFI、CFIを表す(グループあたりn=10人の患者)。(F)ベースライン出血後24か月間、3か月ごとに、同意したメラノーマ患者から液体生検を行った。患者はさらに、免疫療法治療に対する客観的応答(ペムブロリズマブ、ニボルマブおよび/またはイピリムマブを用いた単剤または2剤併用療法)に基づき免疫療法に耐性または応答性と分類した。RECIST1.1に従って定義された耐性者コホートまたは応答者コホートのいずれかからの血液から単離したCD8
+T細胞を、抗CD8抗体および抗EOMES-373K-Meポリクローナル抗体を用いてスクリーニングした。細胞を固定し、抗体とDAPI染色で免疫蛍光顕微鏡検査を行った。グラフプロットは、ImageJマイナスバックグラウンドを使用して測定したEOMES-373K-Meの平均NFI、CFIを表す(グループあたりn=10人の患者)。(G)ベースライン出血後12か月間、1か月ごとに、BRACA陽性、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の同意した患者から液体生検を行った。RECIST1.1に従って定義された耐性者コホートまたは応答者コホートのいずれかからの血液から単離したCD8
+T細胞を、抗CD8抗体および抗EOMES-641K-Meポリクローナル抗体または抗EOMES-641K-Acポリクローナル抗体を用いてスクリーニングした。細胞を固定し、抗体とDAPI染色で免疫蛍光顕微鏡検査を行った。グラフプロットは、ImageJマイナスバックグラウンドを使用して測定したEOMES-641K-Acの平均FIおよびEOMES-641K-Meの平均FIを表す(グループあたりn=10人の患者)。
【
図4】
図4は、脳腫瘍の転移病変における翻訳後修飾EOMESの有病率を示すグラフである。10人の患者サンプルからの原発腫瘍脳FFPE切片を、Perkin ElmerからのBOND RXおよびOPAL-5カラー自動化キットを用いて処理した。抗EOMES-641K-Ac、抗EOMES-641K-Me、抗サイトケラチン(腫瘍マーカー)および抗CD8抗体、ならびにOpal-kit色素520、570、650および690を用いたDAPI染色(緑=EOMES-641K-Ac、シアン=EOMES-EOMES-641K-Me、赤=CD8、マゼンタ=サイトケラチン、DAPI=青)を用いて、FFPE組織を固定し、免疫蛍光顕微鏡検査を実施した。CD8
+およびEOMES-641K-AcまたはEOMES-641K-Me陽性のCD8
+T細胞の集団(%)が測定された。(A)グラフプロットは、EOMES-641K-AcまたはEOMES-641K-Meに対して陽性のCD8
+T細胞の集団(%)を表す。(B)グラフプロットは、CD8
+T細胞におけるEOMES-641K-AcおよびEOMES-641K-MeのTFI(+/-標準誤差)を表す。(N:N=10人の患者について、患者FFPEサンプル当たり少なくとも5万個の細胞をプロファイリングした)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1.定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0035】
本明細書で使用される冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0036】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に知られているそれぞれの値についての通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた実施形態を含む(および説明する)。
【0037】
「同時に投与administration concurrently」または「同時に投与する」または「共投与する」などの用語は、2つ以上の活性物質を含有する単一の組成物の投与、あるいは別個の組成物としてのおよび/または同時存在的にもしくは同時に、もしくは有効な結果が全てのこのような活性物質が単一組成物として投与される場合に得られる結果と同等である十分に短い期間内で順次に、別個の経路により送達される各活性物質の投与を指す。「同時に」とは、活性薬剤が実質的に同時に、そして望ましくは同じ製剤中で一緒に投与されることを意味する。「同時存在的に(contemporaneously)」とは、活性薬剤が時間的に接近して投与されることを意味し、例えば、1つの薬剤が、別の薬剤の前に、または後に、約1分以内~約1日以内に投与されることを意味する。任意の同時存在的な時間が有用である。しかしながら、同時に投与されない場合、薬剤が約1分以内~約8時間以内、適切には約1時間~約4時間未満以内に投与されることが多いであろう。同時存在的に投与される場合、薬剤は、適切には対象上の同じ部位で投与される。「同じ部位」という用語は正確な位置を含むが、約0.5~約15cm以内、好ましくは約0.5~約5cm以内であり得る。本明細書で使用される「別々に」という用語は、薬剤が間隔を置いて、例えば、約1日~数週間または数ヶ月の間隔で投与されることを意味する。活性剤は、いずれの順序でも投与され得る。本明細書で使用される「順次」という用語は、薬剤が順番通りに、例えば、数分、数時間、数日または数週間の間隔で投与されることを意味する。適切な場合、活性剤は、規則正しい反復サイクルで投与され得る。
【0038】
「薬剤」という用語は、任意の診断薬、治療薬、または予防薬を指す。「薬剤」という用語は、狭義に解釈されるべきではなく、小分子、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質などのタンパク質性分子、ならびにRNA、DNAおよび模倣物などの遺伝的分子ならびにそれらの化学的類似体、ならびに細胞性薬剤に及ぶ。「薬剤」という用語は、本明細書で言及されるポリペプチドを産生および分泌することができる細胞、ならびにそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。「薬剤」という用語はまた、ウイルスまたは非ウイルスベクターなどのベクター、一定の範囲の細胞での発現および分泌のための発現ベクターおよびプラスミドを含む核酸構築物にまで及ぶ。
【0039】
本明細書で使用される「増幅」は、一般に、所望の配列の複数のコピーを産生する過程を指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、必ずしもテンプレート配列に対する完全な配列相補性または同一性を意味するものではない。例えば、コピーは、ヌクレオチド類似体(デオキシイノシンのような)、意図的な配列変化(テンプレートとハイブリダイズ可能であるが、相補的ではない配列を含むプライマーを通して導入される配列変化など)および/または増幅中に生じる配列エラーを含むことができる。
【0040】
バイオマーカーの「量」または「レベル」は、サンプル中の検出可能なレベルまたは量である。これらは、当業者に知られており、本明細書にも開示されている方法によって測定することができる。これらの用語は、定量的な量またはレベル(例えば、重量またはモル)、半定量的な量またはレベル、相対的な量またはレベル(例えば、クラス内の重量%またはモル%)、濃度などを包含する。したがって、これらの用語は、サンプル中のバイオマーカーの絶対量または相対量またはレベルまたは濃度を包含する。評価されたバイオマーカーの発現レベルまたは量は、治療に対する応答を決定するために使用することができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連するリストされた項目の1つ以上の任意の組み合わせおよび全ての可能な組み合わせを含む。
「アンタゴニスト」または「阻害剤」という用語は、受容体などの別の分子の生物学的活性または効果を防止、遮断、阻害、中和、または低減する物質を指す。
【0042】
「アンタゴニスト抗体」という用語は、標的に結合し、その標的の生物学的効果を防止または低減する抗体を指す。いくつかの実施形態において、この用語は、それが結合されている標的、例えば、PD-1、CTLA4などが生物学的機能を発揮することを妨げる抗体を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗免疫チェックポイント分子アンタゴニスト抗体」は、免疫チェックポイント分子によって媒介される生物学的活性および/または下流の事象を阻害することができる抗体を指す。抗免疫チェックポイント分子アンタゴニスト抗体は、免疫チェックポイント分子の生物学的活性(免疫チェックポイント分子を介する阻害性シグナル伝達および免疫チェックポイント分子によって媒介される下流の事象を含む)を(顕著な程度を含む任意の程度で)遮断、拮抗、抑制する、または低下させる抗体を包含し、前記生物学的活性は、例えば、免疫チェックポイント分子結合パートナーと免疫チェックポイント分子との結合および下流のシグナル伝達、腫瘍増殖を含む細胞増殖の阻害、T細胞増殖の阻害、T細胞活性化の阻害、サイトカイン分泌の阻害、および抗腫瘍免疫応答の阻害である。本発明の目的のためには、用語「抗免疫チェックポイント分子アンタゴニスト抗体」(互換的に以下のようにも称される:「アゴニスト免疫チェックポイント分子抗体」、「アンタゴニスト抗免疫チェックポイント分子抗体」または「免疫チェックポイント分子アンタゴニスト抗体」)は、それによって免疫チェックポイント分子そのもの、免疫チェックポイント分子の生物学的活性、または生物学的活性の結果をいずれも意義のある程度に実質的に無効化し、低下させ、または中和する、以前に識別された名称、タイトル、ならびに機能的状態および特徴の全てを包含することは明らかに理解されるであろう。
【0044】
本明細書中の「抗体」という用語は、最も広義に使用され、具体的には、所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および単一可変ドメイン抗体を包含する。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重鎖(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVHと略される場合がある)と重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインで構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVRまたはVLと略される場合がある)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)を含む。VHおよびVL領域はさらにまた超可変領域に細分化され、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ、当該領域にはより保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が点在する。各VHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。本発明の異なる実施形態において、抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であり得るか、または天然または人工的に改変され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義することができる。任意のクラスの抗体、例えばIgG、IgA、またはIgM(またはそれらのサブクラス)が「抗体」という用語の範囲内に含まれ、さらに抗体は必ずしもいずれか特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てられる。5つの主要な免疫グロブリンクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかはさらにサブクラス(サブタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けられる。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置はよく知られている。
【0045】
「抗原結合フラグメント」は、非抗体タンパク質の足場に1つ以上のCDRを配置する手段によって提供され得る。本明細書で用いられる「タンパク質足場」には、限定されるものではないが、免疫グロブリン(Ig)足場(例えばIgG足場)が含まれ、免疫グロブリン(Ig)足場は、4本鎖または2本鎖抗体であってもよく、または抗体のFc領域のみを含んでいてもよく、または1つの抗体に由来する1つ以上の定常領域を含んでいてもよく、前記定常領域はヒトもしくは霊長類起源であってもよく、またはヒトおよび霊長類の定常領域の人工的キメラであってもよい。タンパク質足場は、Ig足場、例えば、IgG足場、またはIgA足場であり得る。IgG足場は、抗体のいくつかまたはすべてのドメイン(すなわち、CH1、CH2、CH3、VH、VL)を含み得る。抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgG4PEから選択されるIgG足場を含むことができる。例えば、足場はIgG1であってもよい。足場は、抗体のFc領域からなるかもしくはFc領域を含むことができ、またはその一部である。抗原結合フラグメントの非限定的な例には以下が含まれる:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識ユニット(例えば単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチド。他の操作された分子、例えばドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ジアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュール免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインもまた、本明細書で用いられる「抗原結合フラグメント」という表現に包含される。抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは任意のサイズまたはアミノ酸組成が可能であり、概して少なくとも1つのCDRを含み、前記CDRは、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているかまたはフレームワーク配列とインフレームである。VLドメインと結合したVHドメインを有する抗原結合フラグメントでは、VLおよびVHドメインは、互いに対して任意の適切な配置で位置し得る。例えば、可変領域はダイマー性であり、VH-VH、VH-VLまたはVL-VLダイマーであり得る。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントはモノマーVHまたはVLドメインを含むことができる。ある種の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含むことができる。本発明の抗体の抗原結合フラグメントで見出され得る可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的立体配置には以下が含まれる:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CL。可変および定常ドメインの任意の立体配置(上記に列挙した任意の例示的立体配置を含む)では、可変および定常ドメインは互いに対して直接連結されても、完全もしくは部分的ヒンジまたはリンカー領域によって連結されてもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2つの(例えば5、10、15、20、40、60または60を超える)アミノ酸からなっていてもよく、それらは、単一ポリペプチド分子の隣接する可変および/または定常ドメイン間で可撓性または半可撓性結合を生じる。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、上記に列挙した可変および定常ドメインのいずれかの、互いにおよび/または1つ以上のモノマーVHおよびVLドメインと(例えばジスルフィド結合によって)非共有結合されたホモダイマーまたはヘテロダイマー(または他のマルチマー)を含むことができる。完全な抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは単一特異的または多重特異的(例えば、二重特異的)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別個の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗原結合分子フォーマットを含む任意の多重特異性抗原結合分子フォーマットは、当技術分野で利用可能な日常的な技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの状況での使用に適合させることができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語およびその文法的に同等の表現(例えば「抗原性の」)は、特異的な液性または細胞性免疫の生成物(例えば抗体分子またはT細胞受容体)が特異的に結合することができる化合物、組成物または物質を指す。抗原は任意のタイプの分子であることができ、例えば、ハプテン、単純な中間代謝物、糖類(例えばオリゴ糖)、脂質、およびホルモンならびに、巨大分子、例えば複合炭水化物(例えば多糖類)、リン脂質、およびタンパク質が含まれる。抗原の一般的なカテゴリーには、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原生動物および他の寄生虫抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶に関与する抗原、毒素、および他の雑多な抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
「抗原結合分子」とは、標的抗原に対して結合親和性を有する分子を意味する。この用語は、抗原結合活性を示す免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、および非免疫グロブリン由来のタンパク質フレームワークにまで及ぶことが理解されよう。本発明の実施に有用な代表的な抗原結合分子には、抗体および抗原結合フラグメントが含まれる。
【0048】
「抗原提示細胞」または「APC」なる用語は、免疫系の特異的なエフェクター細胞(本明細書では「免疫エフェクター細胞」とも称される)によって認識され得るペプチド-MHC複合体の形で1つ以上の抗原を提示し、それによって、提示される1つまたは複数の抗原に対する免疫応答を調整する(例えば、刺激する/増強する、あるいは低減する/寛容化する/アネルギー化する)ことができる細胞のクラスを指す。APCは、免疫エフェクター細胞、例えばTリンパ球(CD8+および/またはCD4+リンパ球を含む)を活性化することができる。APCとして作用する潜在能力をインビボで有する細胞には、例えば専門的APC(例えば樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、単球およびB細胞)だけでなく非専門的APCも含まれ、非専門的APCの例示的な例には活性化上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞および血管内皮細胞ならびに癌細胞が含まれる。多くの細胞タイプが、それらの細胞表面に免疫エフェクター細胞(T細胞を含む)の認識のために抗原を提示することができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「抗原特異的」という用語は、特定の抗原または抗原のフラグメントの供給が特異的な細胞増殖、適切にはT細胞増殖を生じる細胞集団の特性を指し、T細胞増殖は例えば、損傷した細胞、悪性疾患または感染に適切に向けられるT細胞(例えばCTLおよび/またはヘルパーT細胞)の活性化を特徴とする。
【0050】
本明細書で使用する場合、「結合する」、「~と特異的に結合する」または「~に特異的である」という用語は、測定可能でかつ再現性がある相互作用、例えば標的と抗体との間の結合を指し、それは、生物学的分子を含む不均質な分子集団の存在下で標的の存在について決定力を有する。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するかまたは特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力、より容易に、および/またはより長い持続時間でこの標的に結合する抗体である。一実施形態において、無関係の標的への抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、標的への抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態において、標的と特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態において、抗体は、異なる種に由来するタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープと特異的に結合する。別の実施形態において、特異的結合は、排他的結合を含むことができるが、排他的結合を要求することはない。
【0051】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、サンプルにおいて検出することができる、例えば、予測、診断、および/または予後の指標を指す。バイオマーカーは、疾患または異常(例えば癌)の特別なサブタイプ(一定の、分子的、病理学的、組織学的および/または臨床的特色を特徴とする)の指標として役立ち得る、および/または、特別な細胞タイプまたは状態(例えば上皮性、間葉性など)および/または治療法に対する応答の指標として役立ち得る。バイオマーカーには、限定されるものではないが、以下が含まれる:ポリヌクレオチド(例えばDNAおよび/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数変化(例えばDNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド修飾(例えば翻訳後修飾)、炭水化物、および/または糖脂質系分子マーカー。バイオマーカーは、その(症候を含む)生理学的または病理生理学的状態(例えば原発性の癌、転移性の癌など)の発症前の対象から得られたサンプル中に存在し得る。したがって、対象から得られたサンプル中のバイオマーカーの存在は、対象がその生理学的または病態生理学的状態または症状を発症するリスクが増加していることを示し得る。代替的に、あるいは付随的に、バイオマーカーは個体で通常発現され得るが、その発現は、生理学的または病理生理学的状態(それらの症候を含む)の開始前に変化し得る(すなわち、バイオマーカーは増加(アップレギュレーション、過剰発現)するかまたは低下(ダウンレギュレーション、減少発現)する)。したがって、バイオマーカーのレベルの変化は、対象がその生理学的もしくは病理学的状態またはそれらの症候を発達させるリスクが増加していることを示し得る。代替的に、あるいは付随的に、バイオマーカーのレベルの変化は、特別な生理学的もしくは病理学的状態またはその症候の対象における変化を反映している可能性があり、それによって、生理学的もしくは病理学的状態またはその症候の本質をある期間にわたって追跡することを可能にする。このアプローチは、例えば、対象におけるその有効性を評価する目的(または他の目的)で治療レジメンを監視するのに有用であり得る。本明細書に記載されるように、バイオマーカーのレベルへの言及は、バイオマーカーの濃度、またはバイオマーカーの発現のレベル、またはバイオマーカーの活性を含む。
【0052】
「バイオマーカーシグネチャー」、「シグネチャー」、「バイオマーカー発現シグネチャー」、または「発現シグネチャー」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、その発現が指標、例えば予測、診断、および/または予後の指標となる1つのバイオマーカーまたはバイオマーカーの組合せを指す。バイオマーカーシグネチャーは、一定の分子的、病理学的、組織学的および/または臨床的特色を特徴とする、疾患または病態の特別なサブタイプ(例えば原発性の癌、転移性の癌)、またはその症候(例えば治療法に対する応答、薬剤耐性、および/または疾病負荷)の指標として機能し得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーシグネチャーは「遺伝子シグネチャー」である。「遺伝子シグネチャー」という用語は、「遺伝子発現シグネチャー」と互換的に用いられ、その発現が指標、例えば予測、診断、および/または予後の指標となる1つのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組合せを指す。いくつかの実施形態において、バイオマーカーシグネチャーは「タンパク質シグネチャー」である。「タンパク質シグネチャー」という用語は、「タンパク質発現シグネチャー」と互換的に用いられ、その発現が指標、例えば予測、診断、および/または予後の指標となる1つのポリペプチドまたはポリペプチドの組合せを指す。バイオマーカーシグネチャーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100の、または100を超えるバイオマーカーを含むことができる。
【0053】
「癌」または「癌性」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とし、局所的におよび/または身体の他の部分に拡大して(転移する)侵襲するという潜在能力を有する、対象の生理学的状態を指すかまたは説明する。「癌」という用語は、本明細書では一般的には「腫瘍」と互換的に用いられ(腫瘍が特に「良性の」腫瘍(近傍の組織を侵襲しまたは転移する能力を欠く異常な細胞の塊)を指していない場合)、悪性の固形腫瘍(例えば癌腫、肉腫)および検出可能な固形腫瘍塊が存在し得ない悪性増殖(例えばある種の血液学的悪性腫瘍)を包含する。非限定的な癌の例には、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が含まれる。そのような癌のより具体的な例には、限定されるものではないが、以下が含まれる:扁平上皮癌(例えば上皮性扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌を含む)、肺の腺癌および肺の扁平細胞癌腫、腹膜の癌、肝細胞癌、胃に関する(gastric)癌または胃癌(胃腸癌および胃腸間質癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿路癌、肝臓癌(hepatoma)、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎または腎臓に関する(renal)癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝(hepatic)癌、肛門癌、陰茎癌、メラノーマ、表在拡大型メラノーマ、悪性黒子型メラノーマ、末端黒子型メラノーマ、結節性メラノーマ、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型切れ込み細胞NHL、バルキー病変NHL、マントル細胞リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、および移植後リンパ球増殖性疾患(PTLD)、ならびに、母斑症、浮腫(例えば脳腫瘍に関連するもの)、メイーグ症候群に付随する異常な血管増殖、脳ならびに頭頸部の癌、および関連する転移疾患。特定の実施形態において、本発明の抗体による治療に適している癌には、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、卵巣癌、中皮腫、および多発性骨髄腫が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は、小細胞肺癌、神経膠芽腫、神経芽腫、メラノーマ、乳房癌腫、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、および肝細胞癌から選択される。さらにいくつかの実施形態において、癌は、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、神経膠芽腫および乳房癌腫(これらの癌の転移型を含む)から選択される。特定の実施形態において、がんはメラノーマまたは肺癌、適切には転移性メラノーマまたは転移性肺癌である。
【0054】
「細胞区画」という用語は、細胞小器官(ミトコンドリア、ゴルジ装置、小胞体、リボソームなど)、核、細胞質(任意で細胞小器官を含む)、核膜、細胞膜および他の細胞領域、を含む。
【0055】
「化学療法」という用語は、1つ以上の化学療法剤(細胞の成長および細胞の分裂を阻害し停止させる)を用いるヒトおよび動物の治療法を指し、同化学療法剤は細胞増殖阻害剤とみなされ、細胞死(細胞アポトーシス)を誘発するために用いられる。正常な細胞と比較して、癌細胞は制御不能に成長および分裂するため、化学療法は癌細胞に対してより効果的でなければならない。
【0056】
「化学療法剤」という用語は、腫瘍の成長を阻害するのに有効な化合物を指す。化学療法剤の例には以下が含まれる:エルロチニブ(TARCEVA(登録商標):Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標):Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標):AstraZeneca)、スニチブ(SUTENT(登録商標):Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標):Novartis)、イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標):Novartis)、フィナスネート(VATALANIB(登録商標):Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標):Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標):Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016:Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標):Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標):AstraZeneca)、AG1478、アルキル化剤、例えばチオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロスフォスファミド;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパおよびウレドパ;エチレンイミンおよびメチラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホロアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロメラミンを含む);アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(トポテカンおよびイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);アドレノコルチコステロイド(プレドニソンおよびプレドニゾロンを含む);酢酸クリプロテロン;5α-レダクターゼ(フィナステリドおよびドゥタステリドを含む);ボリノスタート、ロミデプシン、パノビノスタート、バルプロ酸、モセチノスタートドラスタチン;アルデスロイキン、タルクドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード(例えばクロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード);ニトロソウレア(例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン);抗生物質、例えばエンジイン系抗生物質(例えばカリケアミシン、特にカリケアミシンγ1Iおよびカリケアミシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.、1994、33:183-186);ダイネミシン(ダイネミシンAを含む);ビスホスホネート(例えばクロドロネート);エスペラミシンとともにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連クロモタンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(ADRIAMYCIN(登録商標))(ドキソルビシン)、モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝薬、例えばメトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトトレキセート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補液、例えば葉酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デモコルシン;ジアジクオン;エルフォミシン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダムノール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ヴェルラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ヴィンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(パクリタキセル:Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、アブラキサン(ABRAXANE(登録商標))(クレモフォール含まず)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子処方物(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)およびタキソテア(TAXOTERE(登録商標))(ドセタキセル、ドクセタキセル:Sanofi-Aventis);クロラムブシル;ゲムザー(GEMZAR(登録商標))(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金アナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン(NAVELBINE(登録商標))(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標);イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;並びに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、酸、および誘導体。
【0057】
化学療法剤はまた以下を含む:(i)腫瘍でホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、例えば以下を含む:タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびファレストン(FARESTON(登録商標))(トレミフェンクエン酸塩);(ii)酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤(それらは副腎でエストロゲン生成を調節する)、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、メガセ(MEGASE(登録商標))(酢酸メゲストロール)、アロマシン(AROMASIN(登録商標))(エクセメスタン:Pfizer)、フォルメスタニー、ファドロゾール、リビソル(RIVISOR(登録商標))(ヴォロゾール)、フェマラ(FEMARA(登録商標))(レトロゾール:Novartis)、およびアリミデクス(ARIMIDEX(登録商標))(アナストロゾール:AstraZeneca):(iii)抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン;ブセレリン、トリプテレリン、メドロキシプロゲステロンアセテート、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン(いずれもトランスレチノイン酸)、フェンレチニド、ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);(iv)タンパク質キナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖で示唆されるシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、RalfおよびH-Ras;(vii)リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えばANGIOZYME(登録商標))およびHER2発現阻害剤;(viii)ワクチン、例えば遺伝子療法ワクチン(例えばALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)およびVAXID(登録商標));PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えばLURTOTECAN(登録商標));アバレリクス(ABARELIX(登録商標))rmRH;および(ix)上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、酸および誘導体。
【0058】
化学療法剤はまた、以下のような抗体を含む:アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標):Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標):Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標):Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標):Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4:Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標):Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)および抗体薬コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガミシン(MYLOTARG(登録商標):Wyeth)。本発明の化合物と組み合わせた薬剤としての治療可能性を有する追加のヒト化モノクローナル抗体は以下を含む:アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピノイズマブ、ビバツズマブメルトランシン、カンツズマブメルトランシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブオゾガミシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペクセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウロトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、および抗インターロイキン-12(ABT-874/J695:Wyeth Research and Abbott Laboratories、これは、組換え体の排他的ヒト配列の完全長IgG1λ抗体であり、遺伝的に改変されてインターロイキン-12 p40タンパク質を認識する)。
【0059】
化学療法剤には、「EGFR阻害剤」も含まれ、これは、EGFRに結合するか、さもなければEGFRと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を防止または低減する化合物を指し、あるいは「EGFRアンタゴニスト」と称される。そのような薬剤の例には、EGFRに結合する抗体および小分子が含まれる。EGFRに結合する抗体の例は以下を含む:MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号明細書、Mendelsohn他、を参照)およびそれらのバリアント、例えばキメラ化225(C225またはセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標))および再形成ヒト225(H225)(国際出願第WO96/40210号、Imclone Systems Inc.、を参照);IMC-11F8、完全にヒト、EGFR-標的抗体(Imclone);II型変異体EGFRと結合する抗体(米国特許第5,212,290号明細書);米国特許第5,891,996号明細書に記載されたEGFRと結合するヒト化およびキメラ抗体;およびEGFRと結合するヒト抗体、例えばABX-EGFまたはパニツムマブ(国際出願第WO98/50433号、Abgenix/Amgen、を参照);EMD 55900(Stragliotto他、Eur.J.Cancer 32A:636-640、1996);EMD7200(マツズマブ)、EGFRに対向するヒト化EGFR抗体であって、EGFR結合についてEGFおよびTGF-αの両方と競合する(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);完全にヒト抗体であって、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3およびE7.6.3として知られ、米国特許第6,235,883号明細書に記載されているもの;MDX-447(Medarex Inc);およびmAb 806またはヒト化mAb 806(Johns他、J.Biol.Chem.、279(29):30375-30384、2004年)。抗EGFR抗体は、細胞傷害性薬剤とコンジュゲートさせて、免疫コンジュゲートを生成することができる(例えば、EP659439A2、Merck Patent GmbHを参照のこと)。EGFRアンタゴニストには、例えば以下に記載された化合物である小分子が含まれる:米国特許第5,616,582号明細書、米国特許第5,457,105号明細書、米国特許第5,475,001号明細書、米国特許第5,654,307号明細書、米国特許第5,679,683号明細書、米国特許第6,084,095号明細書、米国特許第6,265,410号明細書、米国特許第6,455,534号明細書、米国特許第6,521,620号明細書、米国特許第6,596,726号明細書、米国特許第6,713,484号明細書、米国特許第5,770,599号明細書、米国特許第6,140,332号明細書、米国特許第5,866,572号明細書、米国特許第6,399,602号明細書、米国特許第6,344,459号明細書、米国特許第6,602,863号明細書、米国特許第6,391,874号明細書、米国特許第6,344,455号明細書、米国特許第5,760,041号明細書、米国特許第6,002,008号明細書および米国特許第5,747,498号明細書ならびに以下のPCT刊行物:国際公開第WO98/14451号、国際公開第WO98/50038号、国際公開第WO99/09016号および国際公開第WO99/24037号。特定の小分子EGFRアンタゴニストには以下が含まれる:OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、タルセバ(TARCEVA(商標),Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD 183805(CI 1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルフォリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-,ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフチニブ(IRESSA(商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルフォリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM 105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール)-;(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(-ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU 5271、Pfizer);二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルフォニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)。
【0060】
化学療法剤にはまた、以下を含む「チロシンキナーゼ阻害剤」が含まれる:先行するパラグラフに記載のEGFR標的薬;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばTakedaから入手可能なTAK165;CP-724,714(ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択性阻害剤)(PfizerおよびOSI);二重HER阻害剤、例えばEKB-569(Wyethから入手可能)(これは優先的にEGFRと結合するが、HER2およびEGFR過剰発現細胞を阻害する);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能)、経口用HER2およびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);汎HER阻害剤、例えばカネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えばアンチセンス薬剤ISIS-5132(ISIS Pharmaceuticalsから入手可能、Raf-1シグナル伝達を阻害する);非HER標的TK阻害剤、例えばイマチニブメシレート(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);マルチ標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えばスヌチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばヴァタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外調節キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えばPD 153035、4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えばCGP 59326、CGP 60261およびCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含むチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えばHERをコードする核酸と結合するもの);キノキサリン(米国特許第5,804,396号明細書);チルホスチン(米国特許第5,804,396号明細書);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);汎HER阻害剤、例えばCI-1033(Pfizer);アフィニタック(ISIS 3521、Isis/Lilly);イマチニブメシレート(GLEEVEC(登録商標);PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);または以下の特許刊行物のいずれかに記載されたもの:米国特許第5,804,396明細書、国際公開第WO1999/09016号(American Cyanamid)、国際公開第WO1998/43960号(American Cyanamid)、国際公開第WO1997/38983号(Warner Lambert)、国際公開第WO1999/06378号(Warner Lambert)、国際公開第WO1999/06396号(Warner Lambert)、国際公開第WO1996/30347号(Pfizer, Inc)、国際公開第WO1996/33978号(Zeneca)、国際公開第WO1996/3397号(Zeneca)および国際公開第WO1996/33980号(Zeneca)。
【0061】
化学療法剤はまた以下を含む:デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミフォスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバクジマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンα、デニロイキン、デキサラゾキサン、エポエチンα、エロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、レナリドミド、レバミソール、メスナ、メトキシサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキシド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、ヴァルルビシン、ゾレドロネートおよびゾレドロン酸、ならびにそれらの医薬的に許容できる塩。
【0062】
化学療法剤はまた以下を含む:ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、チキソコルロールピバル酸、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、アクロメタゾンジプロピオネート、ベタメタゾンバレレート、ベタメタゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾール-17-プロピオネート、フルオコルトロンカプロン酸、フルオコルトロンピバル酸およびフルプレニデン酢酸;免疫選択性抗炎症ペプチド(ImSAID)、例えば、フェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)およびそのD-異性体型(feG)(IMULAN BioTherapeutics,LLC);抗リウマチ薬、例えばアザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミデミノサイクリン、スルファサラジン、腫瘍壊死因子α(TNF-α)遮断剤、例えばエタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、セルトリズマブペゴール(Cimzia)、ゴリムマブ(Simponi)、インターロイキン1(IL-1)遮断剤、例えばアナキンラ(Kineret)、T-細胞共同刺激遮断剤、例えばアバタセプト(Orencia)、インターロイキン6(IL-6)遮断剤、例えばトシリズマブ(ACTEMERA(登録商標));インターロイキン13(IL-13)遮断剤、例えばレブリキズマブ;インターフェロンα(IFN)遮断剤、例えばロンタリズマブ;ベータ7インテグリン遮断剤、例えばrhuMAb ベータ7;IgE経路遮断剤、例えば抗M1プライム;分泌ホモトリマーLTa3および膜結合ヘテロトリマーLTa1/β2遮断剤、例えば抗リンホトキシンα(LTa);放射性同位元素(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位元素);種々の研究中薬剤、例えばチオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH3、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832);ポリフェノール、例えばケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸およびその誘導体;オートファジー阻害剤、例えばクロロキン;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9-アミノカンプトテシン;ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));および上皮増殖因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばテラトープ(THERATOPE(登録商標))ワクチン;ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えばPS341);CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピキサントロン;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))、および上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、酸または誘導体、ならびに上記の2つ以上の組合せ、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾロンの併用療法の略語)、およびFOLFOX(5-FUおよびロイコボリンを併用してオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いる治療レジメンの略語)。
【0063】
化学療法剤は、鎮痛、解熱、および抗炎症効果を有する非ステロイド性抗炎症薬を含む。NSAIDは、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤を含む。NSAIDの具体的な例は以下を含む:アスピリン、プロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルブリプロフェン、オキサプロジンおよびナプロキセン、酢酸誘導体、例えばインドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、エノール酸誘導体、例えばピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカムおよびイソシキカム、フェナム酸誘導体、例えばメフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、ならびにCOX-2阻害剤、例えばセレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブ。NSAIDは、以下の症状:例えば関節リウマチ、変形性関節症、炎症性関節症、強直性脊椎症、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛および片頭痛、術後痛、炎症および組織損傷に起因する軽度から中等度の痛み、発熱、腸閉塞および腎疝痛のような症候の緩和のために適用され得る。
【0064】
「臨床転帰(clinical outcome)」または「臨床エンドポイント」という用語は、治療に対する患者の応答に関連する臨床的観察または測定を指す。臨床転帰の非限定的な例は以下を含む:腫瘍応答(TR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)、腫瘍再発までの時間(TTR)、腫瘍進行までの時間(TTP)、相対リスク(RR)、毒性または副作用。「全生存期間」(OS)は、ナイーブまたは未治療の個人または患者と比較して、余命の延長を意図する。「無増悪生存期間」(PFS)または「腫瘍進行までの時間」(TTP)は、治療中および治療後に癌が増殖しない期間の長さを示す。無増悪生存期間は、患者が完全奏効または部分奏効を示した期間、ならびに患者が安定病状を示した期間を含む。本明細書で使用され、かつ国立癌研究所によって定義される「腫瘍再発」は、通常、癌が検出されなかった一定の期間の後に再発した(復活した)癌である。癌は、最初の(原発性の)腫瘍と同じ場所または身体の別の場所で再発し得る。再発癌(recurrent cancer)とも称される。「腫瘍再発までの時間」(TTR)は、癌と診断された日付から最初の再発、死亡、または最後の接触(患者が最後の接触時に腫瘍再発を全く示さなかった場合)の日付までの期間と定義される。患者が再発をしなかった場合、TTRは死亡時または最後のフォローアップ時に打ち切られた。統計学および数学的疫学における「相対リスク」(RR)は、曝露に対するイベント(または疾患の発症)のリスクを指す。相対リスクは、曝露されたグループと曝露されていないグループで発生するイベントの確率比である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「複合体」という用語は、互いに直接および/または間接的に接触している複数の分子(例えば、ペプチド、ポリペプチドなど)の集合体または凝集体を指す。特定の実施形態において、「接触」、より詳細には「直接的接触」は、引きつける力を有する非共有結合的相互作用(例えばファンデルワールス力、水素結合、イオン性および疎水性相互作用など)が複数の分子の相互作用を支配するために十分に2つ以上の分子が接近していることを意味する。そのような実施形態において、分子の複合体(例えば、ペプチドおよびポリペプチド)は、(例えば、その構成要素分子の非凝集または非複合化状態と比較して)当該複合体が熱力学的に有利であるような条件下で形成される。本明細書で使用される「ポリペプチド複合体」または「タンパク質複合体」という用語は、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー、デカマー、ウンデカマー、ドデカマー、またはより高次のオリゴマーを指す。特定の実施形態において、ポリペプチド複合体は、EOMESがEOMESに特異的な抗原結合分子と結合することによって形成される。
【0066】
本明細書を通して、文脈がそうでないことを必要としないかぎり、含む(comprise)、含む(comprises)、含む(comprising)という語は、記載のステップもしくは要素または複数のステップもしくは複数の要素のグループを含有することを意味するが、任意の他のステップもしくは要素または複数のステップもしくは複数の要素のグループを排除しないと理解されるであろう。したがって、「含む(comprising)」という用語の使用は、列挙された要素が要求されるかまたは必須であるが、他の成分は随意であり、存在する場合も存在しない場合もあることを示す。「~からなる(consisting)」とは、「~からなる」と言う語句に続くものは何であれ含有することを意味し、かつそれらに限定される。したがって、「~からなる」と言う語句は、列挙された要素が要求されるかまたは必須であり、他の要素は存在しない可能性があることを示す。「本質的に~からなる(consisting essetially of)」とは、当該語句の後に列挙された任意の要素を含有すること、かつ、当該列挙された要素について本開示で指定された活性または作用に干渉または寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「本質的に~からなる」と言う語句は、列挙された要素は要求されるかまたは必須であるが、他の要素は随意であり、それらが列挙された要素の活性または作用に影響するか否かに応じて存在することもあり、存在しないこともあることを示す。
【0067】
本明細書で使用されるように、「相関する」または「~と相関性を有する」という用語は、「変数」と称される2つ以上の事柄(例えば、事象、特徴、成果、数、データセットなど)間における統計的な関連を指す。当該事柄は種々のタイプであり得ることは理解されるであろう。当該変数は、多くの場合、数値(例えば測定量、値、可能性、リスク)として表現され、ここで、正の相関性は、一方の変数が増加するとき他方もまた増加することを意味し、負の相関性(反相関とも称される)は、一方の変数が増加するとき他方の変数は減少することを意味する。
【0068】
「対応する(corresponds)」または「~に対応する(corresponding to)」とは、参照アミノ酸配列に対して実質的な配列類似性または同一性を示すアミノ酸配列を意味する。一般に、アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列の少なくとも一部分に対して少なくとも約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または100%さえまでも配列類似性または同一性を示すであろう。
【0069】
本明細書で使用される「細胞傷害性薬剤(cytotoxic agent)」という用語は、細胞に有害である(例えば、細胞死を引き起こす、増殖を阻害する、またはさもなければ細胞機能を妨げる)任意の薬剤を指す。細胞傷害性薬剤には、限定されるものではないが、以下が含まれる:放射性同位元素(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位元素);化学療法剤;増殖阻害剤;酵素およびそのフラグメント(例えば、核酸分解酵素);および毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起原の、小分子毒素または酵素的に活性な毒素(これらのフラグメントおよび/またはバリアントを含む))。例示的な細胞傷害性薬剤は以下を含む:抗微小管薬剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害剤、抗代謝薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管形成阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、LDH-A阻害剤、脂肪酸生合成阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、および癌代謝阻害剤。いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤はタキサンである。このタイプの代表的な例において、タキサンはパクリタキセルまたはドセタキセルである。いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤は白金剤である。いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤はEGFRのアンタゴニストである。このタイプの代表的な例において、EGFRのアンタゴニストはN-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えばエルロチニブ)である。いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬剤はRAF阻害剤である。このタイプの非限定的な例において、RAF阻害剤は、BRAFおよび/またはCRAF阻害剤である。他の非限定的な例において、RAF阻害剤はベムラフェニブである。一実施形態において、細胞傷害性薬剤はPI3K阻害剤である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「細胞傷害性療法(cytotoxic therapy)」という用語は、細胞損傷を誘発する療法を指し、限定されるものではないが、放射線、化学療法、光線力学療法、高周波焼灼、抗血管新生療法およびそれらの組み合わせを含む。細胞傷害性治療薬は、細胞に適用されるとDNA損傷を誘発する可能性がある。
【0071】
本明細書で使用される場合、「疾患の進行を遅らせる」または「疾患の進行速度を低下させる」とは、疾患(癌など)の発症を延期する、妨害する、速度を低下させる、遅延させる、安定化させる、および/または延期させることを意味する。この遅延は、疾患の病歴および/または治療される個体に応じて、さまざまな長さの期間になる可能性がある。当業者には明らかであるように、十分なまたは有意な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含することができる。例えば、転移の発生などの後期癌は遅延する可能性がある。
【0072】
「検出」という用語は、直接および間接の検出を含む、検出の任意の手段を含む。
本明細書で使用される「薬物」という用語は、インビボで生物学的または検出可能な活性を有する任意の物質を指す。薬物という用語は、細胞傷害性薬剤、細胞増殖抑制剤、抗血管形成剤、減量剤、化学療法剤、放射線療法剤、標的誘導抗癌剤、生物学的応答改変剤、癌ワクチン、サイトカイン、ホルモン療法剤、抗代謝薬および免疫療法剤を包含する。
【0073】
「薬剤耐性」という用語は、疾患が1つまたは複数の薬物の治療に応答しない状態を指す。薬剤耐性は、内因性(または一次耐性)(疾患は当該1つの薬剤または複数の薬剤に対して応答したことが無いことを意味する)であるか、あるいは後天的(疾患が以前に応答した1つの薬剤または複数の薬剤への応答を停止することを意味する)(二次耐性)であり得る。特定の実施形態において、薬剤耐性は内因性である。特定の実施形態において、薬剤耐性は後天的である。
【0074】
「有効量」とは、少なくとも特定の障害の測定可能な改善または予防を達成するために必要な最小量である。本明細書における有効量は、患者の病状、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて変化し得る。有効量はまた、治療の毒性または有害な作用を治療的に有益な効果が上回る量である。予防的使用の場合、有益なまたは所望される結果は例えば以下の結果を含む:リスクの排除もしくは低減、重篤度の緩和、または疾患(疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症候、その合併症、および疾患の発達中に提示される中間的な病理学的表現型を含む)の開始の延期。治療的使用の場合、有益なまたは所望される結果は例えば以下の臨床結果を含む:疾患に起因する1つ以上の症候の減少、疾患に罹患している患者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の医薬の用量の低減、例えば標的誘導を介する別の医薬の効果の増強、疾患の進行の遅延、および/または延命。癌または腫瘍の場合、薬剤の有効量は以下の効果を有することができる:癌細胞の数の減少、腫瘍サイズの低減、抹消器官への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させる)、腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させる)、腫瘍増殖をある程度阻害する、および/または癌または腫瘍に関連する症候の1つ以上をある程度緩和する。有効量は、1回または複数回の投与で達成することができる。本発明の目的のために、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量とは、直接的または間接的に予防的または治療的治療を達成するのに十分な量である。臨床的な文脈で理解されるように、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つまたは複数の治療薬を投与する状況で考慮され得、単一の薬剤は、1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて、望ましい結果が達成され得るもしくは達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。治療の有効量は、癌治療を評価する上で一般的に用いられる多様な終了点によって測定でき、限定されるものではないが、以下が含まれる:生存期間を延長する(全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を含む);目的の応答が得られる(完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む);腫瘍退縮、腫瘍重量またはサイズの縮小、疾患が進行するまでの期間の延長、生存期間の延長、PFSの延長、OS率の改善、応答持続期間の増加、および生活の質の改善、および/または癌の徴候または症候の改善。本明細書で用いられる場合、「進行(progressive disease)(PD)」という用語は、標的病巣の直径の合計の少なくとも20%の増加を指し、参照として試験の最少合計を用いる(もし合計が試験で最少である場合には、最少合計は基準合計を含む)。20%の相対増加に加えて、合計はまた少なくとも5mmの絶対増加を示す必要がある。1つ以上の新規病巣の出現もまた進行とみなされる。本明細書で用いられる場合、「部分奏効(patial response)」(PR)という用語は、標的病巣の直径の合計の少なくとも30%の減少を指し、参照として基準合計直径を用いる。本明細書で用いられる場合、「完全奏効(complete response)」(CR)という用語は、全ての非結節性標的病巣の消失を指し、任意の標的リンパ節の短軸は10mm未満に減少する。本明細書で用いられる場合、「安定(stable disease)」(SD)という用語は、PRには十分な退縮ではなくPDと定性化するには十分な増加でもないことを指し、参照として試験中の直径の最少合計を用いる。
【0075】
「エピトープ」という用語は抗体の抗原結合領域の1つ以上で抗体によって認識されかつ結合され得る分子の部分を指す。エピトープは多くの場合、分子の表面集団(例えばアミノ酸または糖側鎖)からなり、特異的な三次元構造的特徴ならびに特異的な荷電特徴を有する。いくつかの実施形態において、エピトープは「タンパク質エピトープ」である。タンパク質エピトープは、線状または立体構造的であり得る。線状エピトープでは、タンパク質と相互作用分子(例えば抗体)との間で相互作用する点の全てが、同タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に出現する。「非線状エピトープ」または「立体構造エピトープ」は、不連続ポリペプチド(またはアミノ酸)を、同エピトープに特異的な抗体が結合する抗原性タンパク質内に含む。抗原上の所望のエピトープが決定されると、例えば、本明細書に記載されている技術を使用して、そのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。あるいは、発見プロセス中に、抗体の生成および特徴付けにより、望ましいエピトープに関する情報が解明される可能性がある。この情報から、同じエピトープとの結合について複数の抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。これを達成するアプローチは、競合および交差競合試験を実施して、標的抗原(例えば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Me、EOMES-373K-Meなど)との結合について互いに競合または交差競合する抗体(例えば抗原との結合について競合する抗体)を見つけ出すことである。
【0076】
遺伝子配列に関して「発現」という用語は、RNA転写物(例えばmRNA、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNAなど)を生成する遺伝子の転写、および適切な場合には、得られたmRNA転写物のタンパク質への翻訳を指す。したがって、文脈から明瞭であろうが、コード配列の発現はコード配列の転写および翻訳から生じる。逆に、非コード配列の発現は、非コード配列の転写から生じる。
【0077】
本明細書で用いられる場合、バイオマーカーまたはバイオマーカー複合体レベルに関して「増加」または「増加した」という用語は、別のバイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体のレベルまたは対照のレベルと比較して、当該バイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体レベルにおける統計的に有意で測定可能な増加を指す。増加は、好ましくは少なくとも約10%の増加、または少なくとも約20%の増加、または少なくとも約30%の増加、または少なくとも約40%の増加、または少なくとも約50%の増加である。
【0078】
本明細書で用いられる場合、バイオマーカーまたはバイオマーカー複合体レベルに関して「より高い」という用語は、別のバイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体のレベルまたは対照のレベルと比較して、当該バイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体レベルにおける統計的に有意で測定可能な相違を指し、ここで、当該バイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体の測定値は、他のバイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体レベルまたは対照のレベルよりも大きい。相違は、好ましくは少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%である。
【0079】
本明細書で用いられる場合、バイオマーカーまたはバイオマーカー複合体レベルに関して「低減」または「低減した」という用語は、別のバイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体のレベルまたは対照のレベルと比較して、当該バイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体レベルにおける統計的に有意で測定可能な低減を指す。低減は、好ましくは少なくとも約10%の低減、または少なくとも約20%の低減、または少なくとも約30%の低減、または少なくとも約40%の低減、または少なくとも約50%の低減である。
【0080】
本明細書で用いられる場合、バイオマーカーまたはバイオマーカー複合体レベルに関して「より低い」という用語は、別のバイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体のレベルまたは対照のレベルと比較して、当該バイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体レベルにおける統計的に有意で測定可能な相違を指し、ここで、当該バイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体の測定値は、他のバイオマーカーもしくはバイオマーカー複合体レベルまたは対照のレベルよりも小さい。相違は、好ましくは少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%である。
【0081】
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に交換可能に使用され、概してサンプル中のバイオマーカーの量を指す。「発現」は、概して、情報(例えば遺伝子によってコードされる情報および/またはエピジェネティックな情報)が、細胞に存在し機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド修飾(例えばポリペプチドの翻訳後修飾)さえも指すことができる。転写ポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、もしくはポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド修飾(例えばポリペプチドの翻訳後修飾)のフラグメントもまた、それらがまた別のスプライシングによって生成された転写物もしくは分解転写物に由来しようと、またはポリペプチドの翻訳後プロセッシング(例えばタンパク質分解)に由来しようと発現とみなされるであろう。「発現遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写されて、ポリペプチドに翻訳されるもの、およびRNAに転写されるがポリペプチドに翻訳されないもの(例えばトランスファーRNAおよびリボソームRNA)もまた含む。したがって、「上昇発現」、「上昇発現レベル」、または「上昇したレベル」は、対照(例えば、治療法に応答するまたは応答しない1つもしくは複数の細胞、または治療法に応答するまたは応答しない1人もしくは複数の個体、または内部コントロール(例えばハウスキーピングバイオマーカー))と比較して、細胞または個体におけるバイオマーカーの増加発現または増加レベルを指す。「低下発現」、「低下発現レベル」、または「低下したレベル」は、対照(例えば、治療法に対応するまたは対応しない1つもしくは複数の細胞、または治療法に応答するまたは応答しない1人もしくは複数の個体、または内部コントロール(例えばハウスキーピングバイオマーカー))と比較して、個体におけるバイオマーカーの低下発現または低下したレベルを指す。いくつかの実施形態において、低下発現は、発現がほとんどまたは全くない。特定の実施形態において、EOMES-641K-Acの上昇したレベルは、EOMESの主に核の局在(localizaion)または細胞質よりも核での高い局在と相関性を有するレベルを指す。EOMES-641K-Acの上昇したレベルは、治療法への耐性とも相関している可能性がある。他の実施形態において、EOMES-641K-Meの上昇したレベルは、EOMESの主に細胞質の局在または核よりも細胞質および/または細胞膜での高い局在と相関性を有するレベルを指す。EOMES-641K-Meの上昇したレベルは、治療法への応答性とも相関している可能性がある。
【0082】
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、全ての細胞タイプで典型的には同様に存在する、バイオマーカーまたはバイオマーカーグループ(例えばポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態において、ハウスキーピングバイオマーカーは「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に不可欠であり、典型的にはすべての細胞型に同様に存在するタンパク質をコードする遺伝子または遺伝子グループを指す。
【0083】
本明細書で用いられる場合、「増殖阻害剤(growth inhibitory agent)」は、細胞の増殖をインビトロまたはインビボで阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態において、増殖阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止または低減する増殖阻害抗体である。別の実施形態において、増殖阻害剤は、S期の細胞のパーセンテージを著しく減少させるものであり得る。成長阻害剤の例には、G1停止およびM期停止を誘発する薬剤など、細胞周期の進行を(S期以外の場所で)遮断する薬剤が含まれる。古典的なM期遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、およびトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシン、が含まれる。G1を停止させる薬剤はまたS期の停止にも波及し、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、およびara-Cである。更なる情報は以下で見出すことができる:メンデルゾーン(Mendelsohn)およびイスラエル(Israel)編、The Molecular Basis of Cancer、第1章、表題「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」、ムラカミ他(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば13頁による。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、いずれもイチイの木に由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイから得られるドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成アナログである。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリンダイマーから微小管の集合を促進し、脱ポリマー化を妨げることによって微小管を安定させ、これは細胞の有糸分裂の阻害を生じる。
【0084】
「免疫チェックポイント分子」という用語は、免疫チェックポイントとして機能する受容体およびリガンドの両方を含む。免疫チェックポイントは免疫回避メカニズムであり、免疫系がそれ自身の身体を攻撃することを防ぐ。免疫チェックポイント受容体はT細胞上に存在し、癌細胞を含む抗原提示細胞上で発現される免疫チェックポイントリガンドと相互作用する。T細胞は、MHC分子上で提示される抗原を認識し、活性化されて免疫反応を生じる一方で、上記と並行して発生する免疫チェックポイント受容体とリガンドとの間の相互作用がT細胞の活性化を制御する。免疫チェックポイント受容体は共刺激性受容体および阻害性受容体を含み、T細胞活性化および免疫反応は両受容体間の均衡によって制御される。遮断または阻害のための標的となり得る例示的な免疫チェックポイント分子には、限定されるものではないが、以下が含まれる:CTLA-4、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、PD-L1、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、VISTA、KIR、2B4(CD2ファミリー分子に属し、全てのNK、γδおよびメモリーCD8+(αβ)T細胞で発現される)、CD160(BY55とも称される)およびCGEN-15049。
【0085】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」または「チェックポイント阻害剤」という用語は、1つ以上の免疫チェックポイント分子を全体的にまたは部分的に減弱させ、阻害し、干渉しまたは調整する任意の薬剤、分子、化合物、化学物質、タンパク質、ポリペプチド、巨大分子などを指す。そのような阻害剤は、小分子阻害剤を含むことができ、または免疫チェックポイント受容体と結合してそれらを遮断もしくは阻害する抗原結合分子または免疫チェックポイント受容体リガンドと結合してそれらを遮断もしくは阻害する抗体であり得る。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、限定されるものではないが、抗免疫チェックポイント分子アンタゴニスト抗体、例えば以下が含まれる:デュルバルマブ(抗PD-L1抗体;MEDI4736)、ペンブロリズマブ(抗PD-1モノクローナル抗体)、ニボルマブ(抗PD-1抗体)、ピジリズマブ(CT-011;ヒト化抗PD-1モノクローナル抗体)、AMP224(組換えB7-DC-Fc融合タンパク質)、BMS-936559(抗PD-1抗体)、アテゾリズマブ(MPLDL3280A;ヒトFc最適化抗PD-L1モノクローナル抗体)、アブエルマブ(MSB0010718C;ヒト抗PD-L1抗体)、イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、および抗OX40。
【0086】
本発明の文脈において、「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫反応時にエフェクター機能を示す細胞に関する。例えば、そのような細胞は、サイトカインおよび/またはケモカインを分泌し、微生物を殺し、抗体を分泌し、感染または癌性細胞を認識し、そして任意選択でそのような細胞を排除する。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、好中球、マクロファージ、および樹状細胞を含む。
【0087】
「免疫応答」という用語は、宿主動物の免疫系による特定の物質(例えば抗原または免疫原)との任意の検出可能な応答を指し、前記応答は例えば、自然免疫応答(例えばToll受容体シグナル伝達カスケードの活性化)、細胞媒介免疫応答(例えばT細胞(例えば抗原特異的T細胞)および免疫系の非特異的細胞によって媒介される応答)、および液性免疫応答(例えばB細胞によって媒介される応答、例えば抗体の生成および血漿、リンパおよび/または組織液へのその分泌)である。
【0088】
T細胞、特にCD8+T細胞に関する「免疫機能」または「機能」という用語は、T細胞が増殖、活性化、および/または細胞溶解する能力を指す。T細胞の免疫機能は、増殖、活性化、または細胞溶解のいずれか1つまたは複数を測定する周知の機能アッセイを使用して評価され得る。特定の例では、T細胞の抗腫瘍活性を使用してその免疫機能を評価する。あるいは、例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、またはCD107aなどの、T細胞における様々なエフェクタータンパク質の発現および/または分泌を評価することができる。たとえば、IFN-γ、IL-2およびTNFは、CD8+T細胞活性化のバイオマーカーとして使用することができ;CD107aは脱顆粒のマーカーとして使用することができ;そしてKi67はT細胞増殖のバイオマーカーとして使用することができる。したがって、機能的T細胞またはT細胞の集団、特に機能的CD8+T細胞またはCD8+T細胞の集団は、健康な対象からのT細胞に期待されるレベルで増殖、活性化および/または細胞溶解することができるものであり、上記および本明細書に記載のアッセイおよび/またはエフェクタータンパク質/バイオマーカーを使用して評価される。逆に、機能不全のT細胞またはT細胞集団(例えば、機能不全のCD8+T細胞またはCD8+T細胞集団など)は、増殖、活性化、および/または細胞溶解の能力が低減または減少しており、例えば、上記および本明細書に記載されたアッセイおよび/またはエフェクタータンパク質/バイオマーカーを用いて評価されるとき、増殖、活性化および/または細胞溶解のレベルが低減または減少している(例えば、機能的なT細胞またはT細胞集団と比較して、約または少なくとも、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%または95%低下または減少している)。
【0089】
「免疫療法」という用語は、ヒトまたは動物の免疫系の1つ以上の成分を意図的に調節して、直接的または間接的にいくつかの治療的利益(全身的および/または局所的効果を含む)および予防的および/または治癒的効果を達成する任意の治療法を指す。免疫療法は、1つ以上の免疫療法剤を、単独でまたは任意の組合せで、ヒト対象または動物対象に任意のルートで(例えば経口的に、静脈内に、皮膚に、注射によって、吸入によって、など)、全身的であれ局所的であれまたはその両方であれ投与することを含むことができる。免疫療法は、サイトカインの産生の惹起、増加、低下、停止、防止、遮断、あるいはサイトカインの産生の調節、および/または1つ以上の治療物質もしくは診断物質の身体の特定の場所または特定の種類の細胞もしくは組織への送達、および/または特定の細胞もしくは組織の破壊に関与することができる。免疫療法を用いて、局所効果、全身効果または両方の組合せを達成することができる。
【0090】
本明細書で用いられる「免疫療法剤」という用語は、癌細胞に対する身体の免疫応答を直接的または間接的に復元し、強化し、刺激しまたは増加させるか、および/または他の抗癌療法の副作用を低下させる任意の薬剤、化合物または生物製剤を指す。したがって、免疫療法は、直接的または間接的に癌細胞に対する免疫系の応答を刺激または強化するか、および/または他の抗癌剤が引き起こしたかもしれない副作用を軽減する治療法である。免疫療法はまた、当該技術分野において、免疫学療法、生物学療法、生物学的応答修正療法およびバイオ療法とも称される。当該技術分野において一般的な免疫療法剤の例には、限定されるものではないが、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体および非サイトカインアジュバントが含まれる。あるいは、免疫療法剤治療は、ある量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞など)を対象に投与することからなることができる。免疫療法剤は非特異的であってもよく(すなわち、免疫系を全般的にブーストして癌細胞の成長および/または拡大の戦いでヒトの体をより有効にする)、または特異的であってもよい(すなわち癌細胞そのものを標的化する)。免疫療法レジメンは、非特異的および特異的免疫療法剤の使用を組み合わせる場合がある。非特異的免疫療法剤は、免疫系を刺激するかまたは間接的に改善する物質である。非特異的免疫療法剤は癌治療のための主要な治療法として単独で用いられる、ならびに、主要な治療法に加えて、この場合では、非特異的免疫療法剤はアジュバントとして機能し、他の治療法(例えば癌ワクチン)の有効性を強化する。この後者の状況において、非特異的免疫療法剤はまた、他の治療法の副作用(例えばある種の化学療法剤によって誘発される骨髄抑制)を軽減するために機能し得る。非特異的免疫療法剤は重要な免疫系細胞で機能し、二次応答(例えばサイトカインおよび免疫グロブリンの産生増加)を引き起こすことができる。あるいは、薬剤自体がサイトカインを含むことができる。非特異的免疫療法剤は、概してサイトカインまたは非サイトカインアジュバントに分類される。多数のサイトカインが、免疫系をブーストするために設計された一般的な非特異的免疫療法剤としてまたは他の治療法とともに提供されるアジュバントとして癌治療で適用されてきた。適切なサイトカインには、限定されるものではないが、インターフェロン、インターロイキンおよびコロニー刺激因子が含まれる。本発明で意図されるインターフェロン(IFN)には、IFNの一般的タイプ、IFN-アルファ(IFN-α)、IFN-ベータ(IFN-β)およびIFN-ガンマ(IFN-γ)が含まれる。IFNは、癌細胞に直接的に、例えばそれらの成長を遅らせ、より正常な行動を有する細胞へとそれらの発達を促し、および/またはそれらの抗原産生を増加させ、それによって免疫系が癌細胞を認識および破壊することをより容易にすることによって機能することができる。IFNはまた、癌細胞に間接的に、例えば血管形成を遅らせ、免疫系をブーストし、および/またはナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞およびマクロファージを刺激することによって機能することができる。組換えIFN-αは、ロフェロン(Roferon;Roche Pharmaceuticals)およびイントロンA(Intron A;Schering Corporation)として市販されている。本発明によって企図されるインターロイキンには、IL-2、IL-4、IL-11およびIL-12が含まれる。市販の組換えインターロイキンの例には、プロロイキン(Proleukin(登録商標))(IL-2;Chiron Corporation)およびニューメガ(Neumega(登録商標))(IL-12;Wyeth Pharmaceuticals)が含まれる。ザイモジェネティクス社(Zymogenetics,Inc.、シアトル、ワシントン州)は現在IL-21の組換え型を試験している(それはまた本発明の組合せでの使用が意図される)。本発明によって企図されるコロニー刺激因子(CSF)には、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSFまたはフィルグラスチム)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSFまたはサルグラモスティム)およびエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルボポエチン)が含まれる。1つ以上の増殖因子を用いる治療は、伝統的な化学療法を受けている対象で新しい血球の産生を刺激するために役立つ。したがって、CSFを用いる治療は、化学療法に関連する副作用の軽減に有用で、より高い用量の化学療法剤を用いることを可能にする。多様な組換えコロニー刺激因子が市販されており、例えば、ニューポゲン(Neupogen(登録商標))(G-CSF;Amgen)、ニューラスタ(Neulasta)(ペルフィルグラスチム(pelfilgrastim);Amgen)、ロイキン(Leukine)(GM-CSF;Berlex)、プロクリット(Procrit)(エリスロポエチン;Ortho Biotech)、エポゲン(Epogen)(エリスロポエチン;Amgen)、アラネスプ(Aranesp)(エリスロポエチン)である。特異的または非特異的標的を有するということに加えて、免疫療法剤は能動的であることができ、すなわち、自身の免疫応答(液性および細胞性応答を含む)を刺激するか、または免疫療法剤は受動的であることができ、すなわち、身体外で生成された免疫系成分(例えば抗体、エフェクター免疫細胞、抗原提示細胞など)を含む。特定の実施形態において、受動免疫療法は、癌細胞または免疫細胞の表面で見出される特定の抗原に対して特異的であるか、または特定の細胞増殖因子に特異的である1つ以上のモノクローナル抗体の使用を含む。モノクローナル抗体を癌の治療に多数の方法で用いて、例えば、特定のタイプの癌に対する対象の免疫応答を強化することができ、特定の細胞増殖因子(例えば血管形成に関与するもの)を標的とすることによって、または例えば化学療法剤、放射性粒子もしくは毒素のような薬剤に連結もしくはモンジュゲートさせたときに他の抗癌剤の癌細胞への送達を強化することによって癌細胞の増殖に干渉することができる。癌の免疫療法剤として現在用いられているモノクローナル抗体には、限定されるものではないが、以下が含まれる:アレムツズマブ(LEMTRADA(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、アブシキシマブ(REOPRO(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピニューズマブ、バシリキシマブ(SIMULECT(登録商標))、バビツキシマブ、ベリムマブ(BENLYSTA(登録商標))、ブリアンキヌマブ、カナキヌマブ(ILARIS(登録商標))、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール(CIMZIA(登録商標))、シドフシツズマブ、シドツズマブ、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレネズマブ、ダシリズマブ(ZENAPAX(登録商標))、ダロチズマブ、デノスマブ(PROLIA(登録商標)、XGEVA(登録商標))、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、イピリムマブ、イムガツズマブ、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レキサツムマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ、ルリズマブペゴール、ルムレツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モガムリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ムロノマブ、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))、ネシツムマブ(PORTRAZZA(登録商標))、ニモツズマブ(THERACIM(登録商標))、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オロキズマブ、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))、オナルツズマブ(MetMAbとしても知られている)、パリビズマブ(SYNAGIS(登録商標))、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、ペキセリズマブ、プリリキシマブ、ラルビズマブ、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロバツムマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズムマブ、サリルマブ、セクキヌマブ、セリバンツマブ、シファリムマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、シプリズマブ、ソンツズマブ、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))、トラリズマブ、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))、ベドリズマブ(ENTYVIO(登録商標))、ビシリズマブ、ザノリムマブ、ザルツムマブ。
【0091】
本明細書で用いられるように、「指示説明書」には刊行物、録音物、図表、または本発明の組成物および方法の有用性を伝達するために用いることができる任意の他の表現媒体が含まれる。本発明のキットの指示説明書は、例えば、本発明の治療薬もしくは診断薬を含む容器に添付されるか、または本発明の治療薬もしくは診断薬を含む容器と一緒に出荷され得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「標識」という用語は、検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、典型的には試薬、例えばポリヌクレオチドプローブまたは抗体とコンジュゲートされるか、または直接的もしくは間接的に融合され、当該標識がコンジュゲートまたは融合される試薬の検出を容易にする。標識そのものが検出可能であってもよく(例えば放射性同位元素標識または蛍光標識)、酵素標識の場合は、標識は基質化合物または組成物の化学的改変を触媒し、検出可能な生成物を生じてもよい。
【0093】
本明細書で使用される場合、「局在する(localize)」という用語およびその文法的同等物は、特定のまたは限定された空間または領域、例えば特定の細胞、組織、細胞小器官、または細胞区画などの細胞内領域に蓄積するか、またはそれらに限定されることを意味する(例えば、核、細胞質、核膜、細胞膜など)。
【0094】
「多重PCR」という用語は、単一供給源(例えば1つの個体)から得られる核酸で実施される単一PCR反応であって、単一反応で2つ以上のDNA配列を増幅させるために2つ以上のプライマーセットが用いられるものを指す。
【0095】
本明細書で互換的に用いられる「患者」、「対象」、「宿主」または「個体」という用語は、治療または予防が所望される任意の対象、特に脊椎動物の対象、より詳しくは哺乳動物の対象を指す。本発明の範囲内に入る適切な脊椎動物には、限定されるものではないが、以下を含む脊索動物亜門の任意のメンバーが含まれる:霊長類(例えばヒト、サルおよび類人猿であり、さらに以下のサルの種を含む:例えばマカカ(Macaca)属(例えばカニクイザル(例えばマカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis)および/またはアカゲザル(マカカ・ムラッタ(Macaca mulatta))およびヒヒ(パピオ・ウルシヌス(Papio ursinus))、ならびにマーモセット(カリトリクス(Callithrix)属由来の種)、リスザル(サイミリ(Saimiri)属由来の種)およびタマリン(サグイヌス(Saguinus)属由来の種)、ならびに類人猿の種(例えばチンパンジー(パン・トログロダイテス(Pan troglodytes))、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット)、ウサギ類(例えばウサギ、ノウサギ)、ウシ類(例えば畜牛)、ヒツジ類(例えばヒツジ)、ヤギ類(例えばヤギ)、ブタ類(例えばブタ)、ウマ類(例えばウマ)、イヌ類(例えばイヌ)、ネコ類(例えばネコ)、鳥類(例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、カモ、愛玩鳥類(例えばカナリア、インコなど))、海洋哺乳動物(例えばイルカ、クジラ)、爬虫類(ヘビ、カエル、トカゲ)、および魚類。好ましい対象は、癌に罹患したヒトである。
【0096】
「医薬組成物」または「医薬処方物」という用語は調製物を指し、同調製物は、活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にする形態にあり、かつ同組成物または処方物が投与される対象にとって許容できないほど有害な付加成分を含まない。そのような処方物は無菌である。「医薬的に許容できる」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象の哺乳動物に常識的に投与して、用いられる活性成分の有効な用量を提供することができるものである。
【0097】
「予測的(predictive)」という用語およびその文法形は概して、治療法に応答する患者の可能性を直接的もしくは間接的に識別する手段、または治療法に応答して臨床転帰を得る手段を提供するバイオマーカーまたはバイオマーカーシグネチャーを指す。
【0098】
「予後(prognostic)」という用語およびその文法形は概して、個体の疾患もしくは病態の進行の可能性または重篤度に関する情報を提供する薬剤または方法を指す。いくつかの実施形態において、予後はまた、対象の疾患または病態について、治療または他の治療レジメンに対して陽性または陰性の応答を示す能力を指す。いくつかの実施形態において、予後は、疾患/状態に関連する症状の存在または減少を予測する能力を指す。予後診断薬または方法は、対象または対象から入手したサンプルを複数のカテゴリーの1つに分類することを含むことができ、ここで、カテゴリーは、対象が個々の成果を示す種々の可能性と相関性を有する。例えば、カテゴリーは低リスクおよび高リスクであり、ここで、低リスクカテゴリーの対象は、高リスクカテゴリーの対象よりも悪い成果を(例えば、5年または10年以内といった所与の期間内に)示す可能性が低い。悪い成果は、例えば病気の進行、病気の再発または当該疾患に起因する死亡であり得る。
【0099】
「放射線療法」とは、細胞に十分な損傷を誘発して正常に機能する能力を制限するか、または完全に細胞を破壊するための誘導ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。線量および治療期間を決定するための当技術分野で知られている多くの方法があることが理解されよう。典型的な治療は1回投与として提供され、典型的な線量は1日に付き10~200ユニット(グレイ)の範囲である。
【0100】
本明細書で使用されるように、ある治療法で既に治療を受けている癌患者は、当該対象が当該技術分野で認証された客観的基準セットまたはその合理的修正にしたがって、抗癌効果のエビデンス(臨床的に重要な利益(例えば癌の症候の予防もしくは重篤度の軽減または進行の遅延)を含む)を示す場合、当該治療法に対して「応答する」、「応答」を有する、「正の応答」を有する、または「応答性」であるとみなされる。前述の用語は、癌に関しても使用され得ることが理解されよう。癌に対する抗癌治療の効果を評価するために多様な異なる客観的基準が当該技術分野において公知である。世界保健機構(WHO)基準(Miller,AB他、Cancer、1981;47(1):207-14)およびその修正版(固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)(Therasse P他、J Natl Cancer Inst、2000;92:205-16))ならびにその改訂版(Eisenhauer E A:固形腫瘍における新規な応答基準:改訂RECISTガイドライン(version 1.1);Eur J Cancer、2009;45(2):228-47)は客観的基準セットであり、これらは、例えばコンピュータ断層写真技術(CT)、磁気共鳴画像化法(MRI)または通常のX線写真から得られる、腫瘍病巣のサイズおよび数の画像測定ならびに新規病巣の検出に基づいている。選択された病巣(標的病巣と称される)の寸法を用いて、異なる時点の画像間における腫瘍負荷の変化を計算する。計算した応答を続いて、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、または進行(PD)として分類する。CRは腫瘍の完全な消失であり(-100%)、PDは、約20%~25%またはこれを超える(該当する基準による)増加および/または新規な病巣の出現である。PRは、(新規な病巣の出現のない)腫瘍病巣サイズの顕著な(少なくとも約30%の)減少であるが、ただしサイズの減少は完全応答より小さい。SDはPRとPDとの間に存在する(詳細については表1および2を参照されたい)。これらの基準は、抗癌剤の有効性を評価する第II相の一次終了点として、例えば全生存期間の代用として広く用いられる。しかしながら、WHO、RECISTおよびRECIST 1.1基準を用いる解剖画像化のみが、細胞傷害性薬剤の初期効果の検出のために設計されたが、一定の制限が、特に病状を安定化させるより新規な癌療法の評価では一定の制限が生じた。免疫療法抗癌剤または分子標的抗癌剤で治療される患者の臨床応答パターンは細胞傷害性薬剤のパターンを超えることがあり、腫瘍負荷の最初の増加または新規病巣の出現の後で明らかとなり得る。例えば、免疫チェックポイント阻害剤に対する有意義な腫瘍応答は、遅れて、いくつかの症例ではWHOまたはRECIST定義PDの後で出現することがある。免疫関連応答基準(irRC)と指定された基準は、免疫療法で観察される追加の好ましい応答パターンを捕捉しようとして定義された(ウォルコック(Wolchok),J D他、2009;固形腫瘍における免疫療法活性の評価のためのガイドライン:免疫関連応答基準(Clin.Care Res.、15、7412-7420))。好ましい生存に関連する4つのパターンが識別された:すなわち、基準病巣が減少し新規病巣が存在しない;持続性の病状安定;総腫瘍負荷は初期に増加するが最終的には応答する;および新規病巣の出現中または出現後に総腫瘍負荷が減少する。これらのうちで後者の2つは、WHOまたはRECIST基準で好ましいと考えられる応答パターンとは全く異なる。irRCは、完全奏効(irCR)、部分奏効(irPR)、安定(irSD)、および進行(irPD)のための基準を含む。とりわけ、irRCは、測定可能な新規病巣を「総腫瘍負荷」に取り込み、この変数をベースライン測定値と比較し、新規病巣は必然的に進行した病状を表すとは考えていない。要約すると、免疫関連応答基準によれば、irCRは、測定可能であれ測定不能であれ全ての病巣の完全な消失および無新規病巣であり;irPRは、ベースラインと対比して50%以上の腫瘍負荷の減少であり;irSDは、irCRまたはirPRの基準に適合せず進行した病状(irPD)が存在しない病状であり;irPDは、最下点(記録された最小の腫瘍負荷)と対比して総腫瘍負荷の25%以上(gtoreq.)の増加である(ウォルコック(Wolchok)、前出)。irCR、irPRおよびirPDは、最初の文書記録から少なくとも4週間の反復連続評価による確認を必要とする。irCR、irPRおよびirPDは、WHO基準でCR、PRまたはSDの全ての患者だけでなく、これらのirRCカテゴリーにWHO PDからシフトする患者を含む。しかしながら、WHOまたはRECIST基準に従えばPDと分類されるようないくらかの患者は、irRCに従えばむしろPRまたはSDと分類され、彼らを好ましい生存を示す可能性が高いと識別する。irRCは、免疫チェックポイント阻害剤および他の免疫療法剤に適用できる。当該技術分野では追加の応答基準が知られていることは当業者には理解されるであろう。それらは、多様な因子を考慮し、多様な因子は、例えば腫瘍生命維持組織のインジケーターとしての腫瘍動脈の強化度および/または腫瘍密度の変化であり、動脈強化の低下および腫瘍密度の低下は生命維持腫瘍組織の(例えば腫瘍壊死による)減少のインジケーターである。例えば、修正RECIST基準(mRECIST)は腫瘍動脈強化度の変化を考慮する(レンチオニ(Lencioni)Rおよびロベット(Llovet)J M.、Semin Liver Dis、30:52-60、2010)。Choi基準および修正Choi基準は、CTによる腫瘍密度の減少を考慮する(チェ(Choi)H他、J Clin Oncol、25:1753-1759、2007;ナサン(Nathan)P D他、Cancer Biol Ther、9:15-19、2010;スミス(Smith)A D他、Am J Roentgenol、194:157-165、2010)。そのような基準は、ある種の癌タイプおよび/またはある種の治療薬剤クラスで特に有用であり得る。例えば、有効な治療にもかかわらず、複数の腫瘍(例えばリンパ腫、肉腫、ヘパトーマ、中皮腫、および消化管間質腫瘍)では、腫瘍サイズの変化は最小限である。CTによる腫瘍密度、コントラスト強化、またはMRIによる特徴付けはサイズよりも情報量が多いように思われる。特定の実施形態において、機能性画像化、例えば陽電子放出断層撮影(PET)を用いることができる。例えば、固形腫瘍におけるPET応答基準(PERCIST)を用いることが可能で、治療応答は、(18)F-FDG PET画像化で評価される代謝性変化によって評価され、トレーサーの取り込みの低下が指標である(ワール(Wahl)R L他、J Nucl Med、2009;50、Suppl 1:122S-50S)。種々の特定の癌のタイプ(例えばメラノーマ、乳癌、および肺癌)のために開発された応答基準が当該技術分野で知られていることもまた理解されよう。対照的に、ある治療法で既に治療を受けている癌患者は、その治療法が臨床的に有意な利益(例えば症候の予防または重篤度の軽減)を提供しないか、または癌の進行速度を増加させる場合には、その治療法に対して「応答しない」、「応答を欠く」、「負の応答を有する」または「非応答性」であるとみなされる。
【0101】
本開示の目的のためには、単独療法として、または1つ以上の活性薬剤(例えば補完阻害剤、追加の抗癌剤、またはその両方)との併用にて、免疫療法で治療される癌患者は、同患者が、少なくとも免疫関連応答基準にしたがって完全応答、部分応答、または安定病状を有する場合には、当該治療に対して「応答する」、「応答」を有する、または「応答性」であるとみなされる。(癌患者はまた、RECIST、RECIST 1.1、WHO、および/または他の基準(例えば上記に記載したもの)にしたがって応答することもあり得る)。同様に、そのような症例の癌は、当該治療に対して「応答する」、「応答性」である、または「感受性」であると称される。癌患者は、免疫関連応答基準にしたがって進行性の病状を有する場合、当該治療に対して「応答しない」、「応答」を示さない、または「非応答性」であるとみなされる。(癌患者はまた、RECIST、RECIST 1.1、WHO、および/または他の基準(例えば上記に記載したもの)にしたがって応答しないこともあり得る)。同様に、そのような症例の癌は、当該治療に対して「応答しない」、または「非応答性」、「非感受性」または「耐性」であると称される。(癌が最初は応答するが、患者がその後で当該治療の存在下で進行性の病状を示す場合、癌はまた治療に対して耐性になったとみなされる)。したがって、例えば、癌の治療に対する応答に関連する本明細書に記載の方法(例えば応答の可能性を予測する方法、予測される応答にしたがって患者を分類する方法、応答の可能性を高める方法)および製品について、応答は、irCR、irPR、またはirSDと定義され、応答の欠如は、別に指定されない限りirPDと定義される。特定の実施形態において、任意の有用な応答基準を指定することができる。当該応答基準は、例えば全生存期間の増加または他の臨床的に有意義な利益などの利益と相関性を有することが既に示されているかもしれない。既存の応答基準の改良または改訂(例えば、免疫チェックポイント阻害剤に適用できる、またはそうでなければ有用である、臨床活性の追加の好ましいパターン(例えば、全生存の増加と相関する)を包含する)が、将来開発され得ることは理解されるであろう。特定の実施形態において、そのような応答基準のいずれも本明細書に記載の方法で使用するために指定できる。
【0102】
本明細書で使用される「サンプル」という用語は任意の生物学的標本を含み、前記標本は、対象から抽出されるか、処理されないか、処理されるか、希釈されるかまたは濃縮されることがある。サンプルはその範囲内に以下を含む:対象から単離された類似する液体、細胞または組織の収集物(例えば外科的に切除した腫瘍組織、生検、(微細針吸引を含む))、ならびに対象内に存在する液体、細胞または組織。いくつかの実施形態において、サンプルは生物学的流体である。生物学的流体は、典型的には生理学的温度の液体であり、対象または生物学的供給源に存在する、そこから引き抜かれる、発現される、または他の方法で抽出される天然に存在する流体を含み得る。ある種の生物学的流体は、特定の組織、器官または局在領域に由来し、さらにある種の他の生物学的流体は、対象または生物学的供給源でより包括的にまたは全身的に存在し得る。生物学的流体の例には、血液、血清および漿液、血漿、リンパ、尿、唾液、嚢胞液、涙液、糞便、喀痰、分泌組織および器官の粘膜分泌物、膣分泌物、腹水(例えば非固形腫瘍に付随するもの)、胸膜腔、心膜腔、腹膜腔、腹腔および他の身体腔の液体、気管支肺胞洗浄によって収集される液体などが含まれる。生物学的液体はまた、対象または生物学的供給源と接触させた流動性溶液を含むことができ、前記は、例えば細胞および器官培養液(細胞または器官馴化培地を含む)、洗浄液などである。本明細書で使用される「サンプル」という用語は、対象から除去された材料または対象に存在する材料を包含する。
【0103】
本明細書で使用される、「参照サンプル(reference sample)」、「参照細胞」、「参照組織」、「参照レベル」、「対照サンプル(control sample)」、「対照細胞」、「対照組織」または「対照レベル」は、比較の目的のために用いられるサンプル、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体(例えば組織または細胞)であるが、異なる時点(例えば、治療前および治療後)の健康なおよび/または無病の部分から得られる。別の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、評価される対象または個体ではない健康な個体から得られる。特定の例において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、機能的T細胞、機能不全T細胞(例えば、疲弊したT細胞)、治療に応答性または感受性のある対象からのT細胞、または治療に応答しないまたは耐性のある対象からのT細胞、であるか、あるいはそれらを含む。特定の実施形態において、T細胞はCD8+T細胞である。
【0104】
本発明の特定の方法論は、値、レベル、特徴、特性、性質などを「適切な(suitable)対照」と比較することを包含するステップを含み、「適切な対照」は、本明細書では「適した(appropriate)対照」、「対照サンプル」または「参照」と交換可能に参照される。「適切な対照」、「適した対照」、「対照サンプル」または「参照」は、比較目的に有用な当業者によく知られている任意の対照または標準である。いくつかの実施形態において、「適切な対照」または「適した対照」は、例えば、特定のバイオマーカープロファイルを示す細胞、組織、または患者、例えば、対照細胞、細胞集団、組織、または患者において決定される値、レベル、特徴、特性、性質などである。「適切な対照」は、細胞サンプルを比較することができる特定のバイオマーカープロファイルに相関する、本発明の1つまたは複数のバイオマーカーのレベル/比率のパターンであり得る。細胞サンプルは、負の対照と比較することもできる。そのような参照レベルはまた、生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルの測定に用いられる固有の技術(例えばLC-MS、GC-MS、ELISA、PCRなど)に合わせて調整することができ、ここで、バイオマーカーのレベルは用いられる固有の技術に基づいて相違し得る。適切な対照は、例えば、機能的T細胞、機能不全T細胞(例えば、疲弊したT細胞)、治療に応答性または感受性のある対象からのT細胞、または癌治療に応答しないまたは耐性のある対象からのT細胞を含む。
【0105】
本明細書で使用される場合、「階層化する(stratifying)」および「分類する」という用語は交換可能に使用され、特定の生理学的または病態生理学的状態または病態の特徴に基づいて対象を異なる階層またはクラスに分類することを指す。例えば、対象がある治療法(例えば化学療法または免疫療法)に応答する可能性が高いか否かにしたがって、対象の集団を階層化することは、場合によっては1つ以上のバイオマーカー(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1またはCD107a)と組み合わせて、T細胞において、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-MeおよびEOMES-373K-Meを含む治療法バイオマーカーに対する応答のレベルに基づいて対象を割り当てる工程を必要とする。
【0106】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、治療される個体または細胞の臨床病変過程の際の自然な過程を変更するために設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果には、疾患の進行速度の低下、病状の改善または緩和、および寛解または予後の改善が含まれる。例えば、癌に関連する1つ以上の症候が緩和または除去される(限定されるものではないが、癌細胞の増殖の低下(または癌細胞の破壊)、病原体感染の低下、当該疾患から生じる症状の軽減、当該疾患に罹患した者の生活の質の向上、当該疾患の治療に必要とされる他の医薬の用量の減少、および/または個体の延命、を含む)ならば、当該個体は首尾よく「治療される」。「ある治療法による治療」、「ある治療法で治療する」、「ある薬剤による治療」、「ある薬剤で治療する」などの句は、有効量の治療法または薬剤(癌療法または薬剤(例えば細胞傷害性薬剤または免疫療法薬剤)を含む)の患者への投与、または、有効量の2つ以上の治療法または薬剤(複数の癌療法または薬剤(例えば複数の細胞傷害性薬剤または免疫療法薬剤から選択される2つ以上の薬剤)を含む)の患者への同時投与を指す。
【0107】
「治療成果(treatment outcome)」は、選択した治療法または治療に対する癌患者の応答を予測すること(特定の治療により患者が正のまたは負の成果を有する可能性を含む)を指す。「正の治療成果を示す」または同様の用語は、選択された治療から患者が有益な結果(例えば、完全または部分奏効、完全または部分寛解、腫瘍サイズの低下、安定病状など)を受ける可能性が高いことを指す。または同様の用語は、潜在する癌の進行に関して患者が選択された治療から有益な結果を受けない可能性が高いこと(例えば進行病状、病状の再発、腫瘍サイズ増加など)を意味しようと意図される。
【0108】
本明細書で使用される「腫瘍」は、悪性または良性を問わず、すべての腫瘍性細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」、「過剰増殖性疾患」および「腫瘍」という用語は、本明細書で示されるように互いに排他的ではない。
【0109】
本明細書で用いられるように、遺伝子の名称の下線または斜字体は、そのタンパク質生成物とは対照的に遺伝子を指し、タンパク質生成物は、下線または斜字体がいずれも存在しないその遺伝子の名称によって示される。例えば、斜字体の「EOMES」はEOMES(斜字体)遺伝子を意味し、「EOMES」は、EOMES(斜字体)遺伝子の転写および翻訳および/または選択的スプライシングから生成された1つまたは複数のタンパク質産物を示す。
【0110】
本明細書に記載される各実施形態は、特に明記しない限り、必要な変更を加えて、すべての実施形態に適用されるものとする。
2.検出、診断および予後の方法
EOMESは、T細胞の疲弊と機能不全に関連する転写因子である。本発明は、EOMESのNLS内に含まれるEOMESポリペプチド配列の位置641におけるリジン(lysine)の異なる翻訳後修飾、またはEOMESのDNA結合ドメイン内に含まれるEOMESポリペプチドの位置373におけるリジンの異なる翻訳後修飾が、核または細胞質へのEOMESの局在に影響を及ぼし、タンパク質-タンパク質相互作用またはタンパク質-DNA相互作用にも影響を及ぼし得ることを開示する。さらに、これらのリジンの翻訳後修飾が異なるEOMESポリペプチドは、機能性または機能不全のT細胞に関連しており、癌治療に対する応答性を予測するために使用できる。
【0111】
代表的なEOMESポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:
【0112】
【0113】
上記配列において、373位のリジン(すなわち、373K)および641位のリジン(すなわち、641K)は太字で強調表示されている。
本発明者らは、641位のリジンのアセチル化(すなわち、EOMES-641K-Ac)が、EOMESをT細胞(例えば、CD8+T細胞)の核に主に局在させることを見出した。さらに、EOMES-641K-Acの発現は、消耗した老化T細胞シグネチャー(例えば、Ki67、TNF-α、および/またはIFN-γの低発現または発現の低下)を有する機能不全T細胞と関連していた。この知見と一致して、EOMES-641K-Acの発現は、癌治療に対する耐性または非不応答性と関連していた。
【0114】
また、本発明者らは、ジメチル化(Me2)を含む、EOMESの641位におけるリジンのメチル化(すなわちEOMES-641K-Me)、またはEOMESの373位におけるリジンのメチル化(即ち、EOMES-373K-Me)が、機能性T細胞表現型および癌治療法に対する応答性と関連することを見出した。これらのEOMESのメチル化型は核よりも細胞質に局在する傾向があったが、核におけるいくらかの発現も観察された。
【0115】
従って、本発明によれば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Me、および/またはEOMES-373K-Meは、T細胞の機能を評価するためのバイオマーカー、癌治療法(例えば、化学療法および/または免疫療法)に対する対象の応答の可能性(治療法に対する耐性または感受性の可能性を含む)を予測するためのバイオマーカー、治療法に対する可能性のある応答者または非応答者として癌患者を層別化するためのバイオマーカー、治療法を用いた癌患者の治療を管理するためのバイオマーカー、および治療法で治療された癌患者の治療結果を予測するためのバイオマーカー、として使用され得る。
【0116】
本発明の実施のためのT細胞は、任意の適切なT細胞含有患者サンプルから得ることができ、その具体例としては、液体生検、腫瘍生検、初代細胞培養物またはT細胞由来の細胞株、ならびにホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍サンプルまたは凍結腫瘍サンプルなどの保存腫瘍サンプルが挙げられる。いくつかの実施形態において、サンプルは治療法での治療の前に得られる。他の実施形態において、サンプルは治療法での治療の後に得られる。いくつかの実施形態においてでは、サンプルは、ホルマリン固定およびパラフィン包埋、保存、新鮮または凍結することができる組織サンプルを含む。いくつかの実施形態において、サンプルは全血である。特定の実施形態において、T細胞はCD8+T細胞である。
【0117】
バイオマーカー(例えば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-MeおよびEOMES-373K-Meのいずれか1つ以上、および場合により、例えばIFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1またはCD107aなどのT細胞機能のバイオマーカーなどの1つ以上の他のバイオマーカー)の存在および/またはレベル/量は、タンパク質およびタンパク質フラグメントを含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の適切な基準に基づいて、定性的および/または定量的に決定され得る。特定の実施形態において、第1のサンプルにおけるバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、第2のサンプル(例えば、治療法での治療の前)における存在/非存在および/または発現レベル/量と比較して、増加または上昇される。特定の実施形態において、第1のサンプルにおけるバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、第2のサンプル(例えば、治療法での治療の前)における存在/非存在および/または発現レベル/量と比較して、減少または低減される。特定の実施形態において、第2のサンプルは、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/非存在および/またはレベル/量を決定するためのさらなる開示を本明細書に記載する。
【0118】
いずれかの方法のいくつかの実施形態において、上昇したレベルとは、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されるものなどの標準的な技術分野の公知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸)のレベルにおける10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のいずれかの全体的な増加を指す。特定の実施形態において、上昇したレベルは、サンプル中のバイオマーカーのレベル/量の増加を意味し、ここで、増加は、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーのレベル/量の1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍の少なくともいずれかである。いくつかの実施形態において、上昇したレベルは、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えばハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
【0119】
いずれかの方法のいくつかの実施形態において、低減したレベルとは、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織と比較して、本明細書に記載されるものなどの標準的な技術分野の公知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、遺伝子またはmRNA)のレベルにおける10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のいずれかの全体的な低減を指す。特定の実施形態において、低減したレベルは、サンプル中のバイオマーカーのレベル/量の減少を意味し、ここで、減少は、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーのレベル/量の0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍の少なくともいずれかである。
【0120】
サンプル中の多様なバイオマーカーの存在および/またはレベル/量は多数の方法論によって分析でき、その多くは当業界で公知であり、かつ当業者に理解されており、限定されるものではないが、以下が含まれる:免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈澱、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量血液依拠アッセイ(例として血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)(定量リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)および他の増幅型検出方法(例えば分枝DNA、SISBA、TMAなど)を含む)、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、および/または遺伝子発現の連続分析(「SAGE」)ならびに、タンパク質、遺伝子、および/または組織アレイ分析によって実施できる広範囲のアッセイのいずれか1つ。遺伝子および遺伝子生成物のステータスを評価するための典型的なプロトコルは、例えば以下で見出される:アウスベル(Ausubel)他、編、1995、Current Protocols In Molecular Biology,Unit2(ノーザンブロッティング)、Unit4(サザンブロッティング)、Unit15(免疫ブロッティング)およびUnit18(PCR分析)。多重イムノアッセイ(例えばRules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手できるもの)もまた用いることができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、特に翻訳後修飾によって特徴付けられないバイオマーカー(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1またはCD107a)について、バイオマーカーの存在および/またはレベル/量は、以下を含む方法を用いて決定される:(a)遺伝子発現プロファイリング、PCR(例えばRT-PCRまたはqRT-PCR)、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはFISHをサンプルで実施すること;および(b)サンプル中のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量を決定すること。いくつかの実施形態において、マイクロアレイ法は、マイクロアレイチップの使用を含み、同チップは、上記に記載の遺伝子をコードする核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる1つ以上の核酸分子を有するか、または上記に記載の遺伝子によってコードされるタンパク質の1つ以上と結合できる1つ以上のポリペプチド(例えば、ペプチドもしくは抗体)を有する。一実施形態において、PCR方法はqRT-PCRである。一実施形態において、PCR方法は多重PCRである。いくつかの実施形態において、遺伝子発現は、マイクロアレイによって測定される。いくつかの実施形態において、遺伝子発現は、qRT-PCRによって測定される。いくつかの実施形態において、遺伝子発現は、多重PCRによって測定される。
【0122】
細胞中のmRNAの評価の方法は周知であり、例えば以下が含まれる:相補性DNAプローブを用いるハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを用いるin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロットおよび関連技術)、および多様な核酸増幅アッセイ(例えば、1つ以上の遺伝子に特異的な相補性プライマーを用いるRT-PCR、および他の増幅型検出方法(例えば分枝DNA、SISBA、TMAなど))。
【0123】
哺乳動物からのサンプルは、ノーザン分析、ドットブロット分析またはPCR分析を用いてmRNAについて簡便にアッセイすることができる。加えて、そのような方法は、(例えば「ハウスキーピング」遺伝子(例えばアクチンファミリーメンバー)の比較対照mRNA配列のレベルを同時に調べることによって)、生物学的サンプル中の標的mRNAのレベルの決定を可能にする1つ以上のステップを含むことができる。場合によっては、増幅された標的cDNAの配列を決定することが可能である。
【0124】
任意選択的な方法は、組織または細胞サンプルで、マイクロアレイ技術によってmRNA(例えば標的mRNA)を検査および検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを用いて、試験および対照組織サンプル由来の試験および対照mRNAサンプルを逆転写および標識して、cDNAプローブを作製する。前記プローブを続いて固体支持体上に固定した核酸アレイとハイブリダイズさせる。当該アレイは、アレイの各メンバーの配列および位置が分かるように構成される。例えば、その発現がある治療法に対する臨床的利益の増加または低下と相関性を有する遺伝子の選択物を固体支持体上に並べることができる。標識プローブと特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、当該プローブが由来するサンプルがその遺伝子を発現することを示す。
【0125】
好ましい実施形態において、存在および/またはレベル/量は、タンパク質レベルを観察することによって測定される。ある種の実施形態において、方法は、生物学的サンプル(癌患者からのサンプルなど)を治療法バイオマーカー(例えば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Me)に対する応答に特異的な抗原結合分子(例えば、抗体)と、同バイオマーカーの結合を許容する条件下で接触させること;および複合体が同抗原結合分子(1つまたは複数)と同バイオマーカーとの間で形成されるか否かを検出すること、を含む。そのような方法は、インビトロまたはインビボの方法であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗バイオマーカー抗原結合分子を用いて、治療法(例えば免疫療法)に対して適格である対象を選択する。
【0126】
ある種の実施形態において、サンプル中のバイオマーカータンパク質の存在および/または発現レベル/量は、免疫組織化学(IHC)および免疫蛍光顕微鏡(IF)プロトコルを用いて検査される。いくつかの実施形態において、ある個体からのサンプル中の治療法バイオマーカー(例えば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Me)に対する応答のレベルは上昇したレベルであり、さらなる実施形態では、前記はIHCまたはIFを用いて決定される。一実施形態において、バイオマーカーのレベルは、以下を含む方法を用いて決定される:(a)抗原結合分子を用いてサンプル(例えば、癌患者からのサンプル)のIHCまたはIF分析を実施すること;および(b)サンプル中のバイオマーカーのレベルを決定すること。いくつかの実施形態において、IHCまたはIF染色強度は、参照と比較して決定される。いくつかの実施形態において、参照は参照値である。いくつかの実施形態において、参照は、参照サンプル(例えば、対照細胞株染色サンプルまたは非癌性患者からのサンプルまたは治療前の患者からのサンプル)である。
【0127】
特定の方法において、サンプルは、分子-バイオマーカー複合体が形成されるのに十分な条件下で、前記バイオマーカーに特異的な抗原結合分子と接触されてもよく、次いで、当該複合体を検出してもよい。バイオマーカーの存在は、顕微鏡検査(例えば、IF顕微鏡検査)、ウエスタンブロッティング、および血液を含む多種多様な組織およびサンプルをアッセイするためのELISA手順などの多くの方法で検出することができる。そのようなアッセイ様式を用いる広範囲の免疫アッセイ技術が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号明細書、米国特許第4,424,279号明細書および米国特許第4,018,653号明細書、を参照されたい。これらは、非競合タイプとともに伝統的な競合結合アッセイの、1か所および2か所、または「サンドイッチ」アッセイの両方を含む。これらのアッセイは、標識抗体の標的バイオマーカーへの直接結合も含む。
【0128】
特定の実施形態において、サンプルは、アッセイされるバイオマーカーの量および使用されるサンプルの品質の変動性の両方の相違、ならびにアッセイ実行間の変動性について正規化される。そのような正規化は、ある種の正規化バイオマーカー(周知のハウスキーピング遺伝子の発現生成物を含む)の発現を検出し取り入れることによって達成できる。正規化は、アッセイされる複数の遺伝子またはその大きなサブセットの全ての平均もしくは中央値シグナルに基づくことができる(全体的正規化アプローチ)。遺伝子ごとに、対象の腫瘍のmRNAまたはタンパク質の測定した正規化された量が、参照セットで見出される量と比較される。対象毎の被検腫瘍当たりの各mRNAまたはタンパク質の正規化発現レベルは、参照セットで測定した発現レベルのパーセンテージとして表すことができる。分析されるべき特定の対象のサンプルで測定した存在および/または発現レベル/量は、この範囲内のいずれかのパーセンタイルに当てはまるであろう。それはは当該技術分野において周知の方法によって決定できる。
【0129】
特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞または対照組織は、単一サンプルであるか、または同じ対象もしくは個体由来の組合せ多重サンプルであって試験サンプルが得られるときとは異なる1つ以上の時点で得られる組合せ多重サンプルである。特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞または対照組織は、同じ対象または個体から、試験サンプルが得られるときよりも早い時点で得られる。そのような参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞または対照組織は、同参照サンプルが治療の前に得られ、試験サンプルが治療後に得られるのであれば有用であり得る。
【0130】
特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、1人以上の健康な個体(前記対象または個体ではない)に由来する複数のサンプルの組合せである。特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、疾患または異常(例えば癌)を有する1人以上の個体(前記対象または個体ではない)に由来する複数のサンプルの組合せである。
【0131】
いくつかの実施形態において、サンプルは臨床サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは血液などの液体生検である。他の実施形態において、サンプルは、T細胞を含む腫瘍組織サンプル(例えば、生検組織)などの組織サンプルである。いくつかの実施形態において、組織サンプルは肺組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは腎組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは皮膚組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは膵臓組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは胃組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは膀胱組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは食道組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは中皮組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは乳房組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは甲状腺組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは結腸直腸組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは頭頸部組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは骨肉腫組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは前立腺組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは卵巣組織、HCC(肝臓)、血液細胞、リンパ節、および/または骨/骨髄組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは結腸組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは子宮内膜組織である。いくつかの実施形態において、組織サンプルは脳組織(例えば、神経膠芽腫、神経芽細胞腫など)である。
【0132】
いくつかの実施形態において、腫瘍は、悪性の癌性腫瘍(すなわち、癌)である。いくつかの実施形態において、腫瘍および/または癌は、固形腫瘍または非固形もしくは軟組織腫瘍である。軟組織腫瘍の例には、白血病(例えば慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、前リンパ球性白血病、または有毛細胞白血病)またはリンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、またはホジキン病)が含まれる。固形腫瘍には、血液、骨髄、またはリンパ系以外の身体組織の任意の癌が含まれる。固形腫瘍はさらに、上皮細胞起源のものおよび非上皮細胞起源のものに分けることができる。上皮細胞固形腫瘍の例には、胃腸管、結腸、結腸直腸(例えば基底細胞結腸直腸癌)、乳房、前立腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣(例えば卵巣内膜癌腫)、頭頸部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、唇、鼻咽頭、皮膚、子宮、男性生殖器官、泌尿器官(例えば尿路上皮癌腫、異形成尿路上皮癌腫、移行上皮癌腫)、膀胱、および皮膚の腫瘍が含まれる。非上皮起源の固形腫瘍には、肉腫、脳腫瘍、および骨腫瘍が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態において、癌は、セカンドラインまたはサードライン局所進行性または転移性非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態において、癌は腺癌である。いくつかの実施形態において、癌は扁平上皮細胞癌である。いくつかの実施形態において、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、神経膠芽腫、神経芽腫、メラノーマ、乳癌(例えばトリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、または肝細胞癌である。いくつかの実施形態において、癌は原発腫瘍である。いくつかの実施形態において、癌は、上記のタイプの癌のいずれかに由来する第2の部位における転移性腫瘍である。
【0133】
いくつかの実施形態において、治療法バイオマーカーに対する少なくとも1つの応答は、以下からなる群より選択される方法を用いてサンプル中に検出される:FACS、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈澱、免疫組織化学、免疫蛍光、放射性免疫アッセイ、ドットブロッティング、免疫検出法、HPLC、表面プラズモン共鳴、分光分析法、質量分析法、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、およびFISH、ならびにそれらの組合せ。いくつかの実施形態において、治療法バイオマーカーに対する少なくとも1つの応答は、FACS分析または免疫蛍光顕微鏡法を使用して検出される。いくつかの実施形態において、治療法バイオマーカーに対する少なくとも1つの応答は、血液サンプルにおいて検出される。いくつかの実施形態において、治療法バイオマーカーに対する少なくとも1つの応答は、血液サンプルから得られたCD8+T細胞において検出される。細胞選別を含むがこれらに限定されない、そのような細胞集団を単離/濃縮するための任意の適切な方法を使用することができる。いくつかの実施形態において、EOMES-641K-Ac発現は、治療、適切には免疫療法(例えば、抗免疫チェックポイント分子抗体を含むもの)による治療に応答する個体からのサンプルにおいて低下する。いくつかの実施形態において、EOMES-641K-Ac発現は、治療、適切には免疫療法(例えば、抗免疫チェックポイント分子抗体を含むもの)による治療に応答しないか、あるいは弱く応答する個体からのサンプルにおいて上昇する。いくつかの実施形態において、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Meの発現は、治療、適切には免疫療法(例えば、抗免疫チェックポイント分子抗体を含むもの)による治療に応答しないか、あるいは弱く応答する個体からのサンプルにおいて低下する。いくつかの実施形態において、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Meの発現は、治療、適切には免疫療法(例えば、抗免疫チェックポイント分子抗体を含むもの)による治療に応答する個体からのサンプルにおいて上昇する。例えば、EOMES-641K-AcとEOMES-641K-Meの比率またはその逆など、バイオマーカーの比率が評価される。
【0134】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のバイオマーカーの発現レベルを、例えば、機能的またはコンピテントな(competent)T細胞を含むサンプル、機能不全または疲弊したT細胞を含むサンプル、癌ではない対象からのサンプル、あるいは癌に罹患しているが治療(例えば、細胞傷害性療法または免疫療法)を受けていない対象からのサンプルを含む参照(reference)と比較することができる。いくつかの実施形態において、参照は、複数の対象またはサンプルからの参照値を含み得る。例えば、治療バイオマーカーに対する少なくとも1つの応答の発現レベルの平均値(mean)、平均値(average)、または中央値は、健康な対象、治療法に応答する対象または治療法に応答しない対象の集団、あるいは既知の免疫機能を有するT細胞の複数のサンプルから、全体として生成され得る。共有の特徴(例えば同じ癌タイプおよび/またはステージ、または共通する治療法への曝露)を有する癌から得られたサンプルセットを、例えば臨床転帰研究などで集団から研究することができる。このセットを用いて、それに対して対象のサンプルを比較し得る参照(例えば、参照数)を誘導することができる。
【0135】
本開示の特定の態様は、T細胞を含むサンプル中の1つ以上のバイオマーカー(例えば、mRNAおよびタンパク質を含む遺伝子発現生成物)の発現レベルの測定に関する。いくつかの実施形態において、サンプルは、末梢血サンプル(例えば、癌患者からのもの)であり得る。いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは、1つ以上の細胞型(例えば、CD8+T細胞)を分離または単離するために処理され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞型を分離または単離することなく用いられ得る。
【0136】
腫瘍サンプルは、生検、内視鏡検査、または外科的処置を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で知られている任意の方法によって対象から得ることができる。いくつかの実施形態において、腫瘍サンプルは、凍結、固定(例えば、ホルマリンまたは同様の固定剤を使用することによる)および/またはパラフィンワックスへの包埋などの方法によって調製され得る。いくつかの実施形態において、腫瘍サンプルは切片化することができる。いくつかの実施形態において、新鮮な腫瘍サンプル(すなわち、上記の方法によって調製されていないもの)を使用することができる。いくつかの実施形態において、末梢血サンプルは、mRNAおよび/またはタンパク質の完全性を維持するために、溶液中でのインキュベーションによって調製され得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、サンプルは末梢血サンプルであり得る。末梢血サンプルは、白血球、PBMCなどを含むことができる。末梢血サンプルから白血球を単離するための当該技術分野で公知の任意の技術を用いることができる。例えば、血液サンプルを採取し、赤血球を溶解し、白血球ペレットを単離してサンプルに使用することができる。別の例では、密度勾配分離を使用して、赤血球から白血球(例えばPBMC)を分離することができる。いくつかの実施形態において、新鮮な末梢血サンプル(すなわち、上記の方法によって調製されていないもの)を使用することができる。いくつかの実施形態において、末梢血サンプルは、mRNAおよび/またはタンパク質の完全性を維持するために、溶液中でのインキュベーションによって調製され得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、治療法に対する応答性は以下の任意の1つ以上を指すことができる:生存期間の延長(全生存期間および無増悪生存期間を含む);客観的応答(完全奏効または部分奏効を含む)をもたらす;または癌の徴候もしくは症候の改善。いくつかの実施形態では、応答性は、癌患者における腫瘍のステータス(すなわち奏効、安定または進行)を決定する公開RECISTガイドラインセットの1つ以上の要件の改善を指すことができる。これらのガイドラインのより詳細な議論については以下を参照されたい:アイゼンハウエル(Eisenhauer)ら、2009、Eur J Cancer、45:228-47;トパリアン(Topalian)ら、2012、N Engl J Med、366:2443-54;ウォルコック(Wolchok)ら、2009、Clin Can Res、15:7412-20;およびテラッセ(Therasse)ら、2000、J.Natl.Cancer Inst.、92:205-16。応答性対象は、その癌が、例えばRECIST基準に基づいて1つ以上の要件に関して改善を示す対象を指すことができる。非応答性対象は、その癌が、例えばRECIST基準に基づいて1つ以上の要件に関して改善を示さない対象を指すことができる。
【0139】
従来の応答基準は、本発明の治療薬剤の抗腫瘍活性の特徴付けには適切ではない可能性があり、即ち本発明の治療薬剤は、最初の明らかな放射線医学的進行(新規病巣の出現を含む)に続く遅延した応答をもたらす傾向がある。したがって、新規病巣が出現する可能性を考慮し、放射線医学的進行をその後の評価で確認できる、修正した応答基準が開発された。したがって、いくつかの実施形態において、応答性は、免疫関連応答基準(irRC)に従う、より多くの要件の1つの改善を指すことができる。例えば前述のウォルコック(Wolchok)ら、2009、を参照されたい。いくつかの実施形態において、新規病巣は定義した腫瘍負荷に加えられ、その後の評価で放射線医学的進行に関して追跡される。いくつかの実施形態において、非標的病変の存在は完全奏効の評価に含まれ、放射線医学的進行の評価には含まれない。いくつかの実施形態において、放射線医学的進行は、測定可能な疾患に基づいてのみ決定され得るか、および/または最初の記録の日付から4週間以上の連続評価によって確認され得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、応答性は、免疫活性化を含み得る。いくつかの実施形態において、応答性は、治療有効性を含み得る。いくつかの実施形態において、応答性は、免疫活性化および治療有効性を含み得る。
【0141】
3.バイオマーカーパネル
本発明のバイオマーカーを予測および/または予後試験に用いて、患者の治療法応答シグネチャーステータスを評価し、決定し、および/または定性化し(本明細書では互換的に用いることができる)、したがって患者の治療を誘導することができる。「治療法応答シグネチャーステータス(response to therapy signature status)」という語句は、高治療法応答シグネチャー(RT高)および低治療法応答シグネチャー(RT低)を含む。このステータスに基づいて、追加の検査または治療手順またはレジメンを含む、さらなる手順を示すことができる。
【0142】
治療法応答シグネチャーパネルは、適切には、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Meの1つまたは複数を含む。例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1および/またはCD107aなどの任意の1つまたは複数の他のバイオマーカーもパネルに含まれ得ることが理解される。
【0143】
治療法に対する応答を正しく予測するためのアッセイの能力は、一般に、アッセイの感受性、アッセイの特異性または受信者動作特性(「ROC」)曲線下の面積として測定される。感受性は試験によって陽性と予測される真の陽性のパーセンテージで、一方、特異性は試験によって陰性と予測される真の陰性のパーセンテージである。ROC曲線は、1-特異性の関数として試験の感受性を提供する。ROC曲線下の面積が大きいほど、試験の予測値はより強力になる。試験の有用性の他の有用な測定は陽性の予測値および陰性の予測値である。陽性の予測値は、検査の結果が陽性で実際に陽性である人々のパーセンテージである。陰性予測値は、検査の結果が陰性で実際に陰性である人々のパーセンテージである。
【0144】
特定の実施形態において、本発明のバイオマーカーシグネチャーは、種々の治療法応答ステータスで、少なくともp<0.05、p<10-2、p<10-3、p<10-4またはp<10-5の統計的相違を示すことができる。これらのバイオマーカーを使用する予測または予後試験は、少なくとも0.6、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、または少なくとも約0.9のROCを示し得る。
【0145】
特定の実施形態において、バイオマーカーは、本明細書に記載の方法を用いて患者サンプルで測定され、治療法応答シグネチャーステータスが計算される。特定の実施形態において、当該測定を、関連する予測または予後量、カットオフ、または多変量モデルスコア(高治療法応答シグネチャー(RT高)ステータスを低治療法応答シグネチャー(RT低)ステータスから区別するもの)と比較することができる。予測量または予後量は、バイオマーカーの測定量を表し、それを超えると、またはそれを下回ると、患者は特定の治療法応答シグネチャーステータスを有すると分類される。当技術分野でよく理解されているように、アッセイで使用される特定の予測または予後カットオフを調整することにより、当業者の好みに応じて、アッセイの感受性または特異性を高めることができる。特定の実施形態において、特定の予測または予後診断カットオフは、例えば、種々の治療法応答シグネチャーステータスを有する患者に由来する統計的に有意な数のサンプルのバイオマーカーのレベルまたは量を測定し、望ましいレベルの特異性および感受性に適合するカットオフを引き出すことによって決定することができる。
【0146】
さらに、特定の実施形態において、バイオマーカーパネルのバイオマーカーについて測定された値は数学的に組み合わされ、組み合わされた値は、高治療法応答シグネチャーまたは低治療法応答シグネチャーの基本的な予測または予後診断の問題と相関性を有する。バイオマーカーの値は当該技術分野で公知の適当な数学的方法によって組合わせることができる。バイオマーカー組合せを疾患ステータスと相関させるための周知の数学的方法は、例えば以下の方法を利用する:判別分析(DA)(例えば線形DA、二次DA、正規化DA)、判別機能分析(DFA)、例えばカーネル(Kernel)法(例えばSVM)、多次元スケーリング(MDS)、非パラメトリック法(例えばK近傍分類)、PLS(部分的最小二乗)、ツリー型方法(例えばロジック回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バギング法)、普遍化線形法(例えばロジスティック回帰)、主成分型方法(例えばSIMCA)、一般化された加法モデル、ファジィロジックベースの方法、ニューラルネットワークおよび遺伝的アルゴリズムベースの方法。当業者は、本発明のバイオマーカーの組み合わせを評価するための適切な方法を選択することに問題はないであろう。一実施形態において、本発明のバイオマーカー組合せを相関させる際に用いられる方法は以下から選択されるDA(例えば線形、二次、正規化判別分析)、DFA、カーネル(Kernel)法(例えばSVM)、非パラメトリック法(例えばK近傍分類)、PLS(部分的最小二乗)、ツリー型方法(例えばロジック回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング法)または普遍化線形法(例えばロジスティック回帰)および主成分分析。これらの統計的方法に関する詳細は以下の参考文献で見出される:ルシンスキ(Ruczinski)ら、12 J. OF COMPUTATIONAL AND GRAPHICAL STATISTICS、475-511、2003;フリードマン(Friedman)、J.H.、 84 J. OF THE AMERICAN STATISTICAL ASSOCIATION、165-75、1989;ハスティ(Hastie)、トレボール(Trevor)、ティブシラニ(Tibshirani)、ロベルト(Robert)、フリードマン(Friedman)、ジェローム(Jerome)、The Elements of Statistical Learning、Springer Series in Statistics(2001);ブライマン(Breiman), L.、フリードマン(Friedman), J.H.、オルシェン(Olshen), R.A.、ストーン(Stone), C.J.、Classification and regression trees,California:Wadsworth、1984;ブライマン(Breiman), L.、45 MACHINE LEARNING 5-32、2001;ペペ(Pepe), M.S.、The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction、Oxford Statistical Science Series、28、2003;およびトゥーダ(Duda), R.O.、ハート(Hart), P.E.,ストーク(Stork),D.G.、Pattern Classification、Wiley Interscience、第2版(2001)。
【0147】
4.治療法応答シグネチャーステータスを定性化する分類アルゴリズムの作製
いくつかの実施形態において、「既知のサンプル」などのサンプルを使用して作製されたデータを次に使用して、分類モデルを「学習(train)」させることができる。「既知のサンプル」とは、事前に分類されたサンプルである。分類モデルを形成するために使用されるデータは、「学習用データセット」と呼ぶることができる。分類モデルを形成するために使用される学習用データセットは、生データまたは予め処理されたデータを含み得る。一旦学習すると、分類モデルは未知のサンプルを使用して作製されたデータのパターンを認識することができる。次に、分類モデルを使用して、未知のサンプルを複数のクラスに分類することができる。これは、たとえば、特定の生物学的サンプルがある生物学的状態に関連しているかどうかを予測するのに有用であり得る。
【0148】
分類モデルは、データに存在する客観的パラメータに基づいてデータの本体を複数のクラスに分離しようとする適切な統計的分類または学習方法を使用して形成することができる。分類方法は教師ありのものでも教師なしのものでもよい。教師ありまたは教師なし分類プロセスの例は以下に記載されている:ジェイン(Jain)、「Statistical Pattern Recognition:A Review」、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、Vol.22、No.1、January 2000(前記の教示は参照によって本明細書に含まれる)。
【0149】
教師あり分類では、既知カテゴリーの例を含む学習用データが学習メカニズムに提示され、同学習メカニズムは既知クラスの各々の範囲を明確にする関係性の1つ以上のセットを学習する。次に、新しいデータを学習メカニズムに適用し、同学習メカニズムは学習した関係を使用して新しいデータを分類する。教師あり分類プロセスの例には以下が含まれる:線形回帰プロセス(例えば多重線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)回帰および主成分回帰(PCR)、二元性決定ツリー(例えば再帰分割プロセス、例えばCART)、人工ニューラルネットワーク、例えば逆伝播ネットワーク、判別分析(例えばベイズ(Bayesian)分類器またはフィッシャー分析)、ロジスティック分類器、およびサポートベクタークラシファイアー(サポートベクターマシン)。
【0150】
別の教師あり分類方法は、再帰分割プロセスである。再帰分割プロセスは、再帰分割ツリーを使用して、未知のサンプルから派生したデータを分類する。再帰分割プロセスの更なる詳細は、米国特許出願第20020138208A1号明細書(パウルス(Paulse)ら、「Method for analyzing mass spectra」)で提供される。
【0151】
他の実施形態では、作成される分類モデルは、教師なし学習方法を使用して形成することができる。教師なし分類は、学習用データセット内の類似性に基づいて分類を学習しようとし、学習用データセットが由来するスペクトルを予め分類することを必要としない。教師なし学習方法には、クラスター分析が含まれる。クラスター分析は、データを「クラスター」またはグループに分割しようとし、これらのグループには、理想的には互いに非常に類似し、他のクラスターのメンバーとは非常に異なるメンバーを有するべきである。次に、データアイテム間の距離を測定する何らかの距離メトリックを使用して類似性を測定し、互いに近いデータアイテムをクラスターにまとめる。クラスター化技術には、マックィーンのK平均アルゴリズムおよびコホネンの自己組織化マップアルゴリズムが含まれる。
【0152】
生物学的情報の分類に使用するために主張された学習アルゴリズムは、例えば、PCT国際公開番号WO01/31580号(バーンヒル(Barnhill)ら、「Methods and devices for identifying patterns in biological systems and methods of use thereof」)、米国特許出願公開第2002/0193950号明細書(ガービン(Gavin)ら、「Method or analyzing mass spectra」)、米国特許出願公開第2003/0004402号明細書(ヒット(Hitt)ら、「Process for discriminating between biological states based on hidden patterns from biological data」)、および米国特許出願公開第2003/555615号明細書(チャン(Zhang)およびチャン(Zhang)、「Systems and methods for processing biological expression data」)。
【0153】
分類モデルは任意の適切なデジタルコンピュータで作製し、用いることができる。適切なデジタルコンピュータには、マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、または大型コンピュータが含まれ、これらは任意の標準または特殊化オペレーティングシステム、例えばユニックス、ウインドウズ(Windows(登録商標))またはリナックス(Linux(商標))系オペレーティングシステムを用いる。質量分析計を利用する実施形態において、使用されるデジタルコンピュータは、問題のスペクトルを作製するために使用される質量分析計から物理的に分離され得るか、または質量分析計に結合され得る。
【0154】
本発明の実施形態による学習用データセットおよび分類モデルは、デジタルコンピュータによって実行または使用されるコンピュータコードによって具体化することができる。コンピュータコードは任意の適切なコンピュータ読み出し可能媒体(光学または磁気ディスク、スティック、テープなどを含む)に保存することができ、任意の適切なコンピュータプログラム言語(R、C、C++、ビジュアルベーシックなどを含む)で書き込むことができる。
【0155】
上記に記載した学習アルゴリズムは、既に発見されたバイオマーカーのための分類アルゴリズムの開発、および新規なバイオマーカーの発見の両方で有用である。分類アルゴリズムは、単独でまたは組み合わせて用いられるバイオマーカーのための診断値(例えばカットオフ点)を提供することによって診断試験のための基礎を順次形成する。
【0156】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される分類方法のいずれも、少なくとも部分的に1つまたは複数のコンピュータによって実行でき、および/または非一時的なコンピュータ媒体上のデータベースに格納することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示する分類方法のいずれも、コンピュータ読み出し可能媒体(コンピュータ実行可能命令を有する)で少なくとも部分的に実行または保存することができる。いくつかの実施形態において、コンピュータ読み出し可能媒体は、任意の非一時的および/または有形コンピュータ読み出し可能媒体を含む。
【0157】
5.抗体および細胞株
本発明は、治療法応答バイオマーカーに特異的に結合する抗原結合分子を使用して、治療法応答バイオマーカー、特にEOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Meの局在、検出および定量化を開示する。このような抗原結合分子は、典型的には単離されたアセチル化またはメチル化部位特異的抗原結合分子であり、641Kがアセチル化またはメチル化されている場合、あるいは373Kがメチル化されている場合にのみEOMESに特異的に結合する。そのような抗原結合分子は、標準的な抗体生成方法(例えば抗ペプチド抗体方法)により、本明細書で提供するアセチル化およびメチル化部位配列情報を用い、例えば実施例の例の記載にしたがって生成することができる。例えば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-MeまたはEOMES-373K-Meに特異的に結合する抗体は、それぞれアセチル化またはメチル化残基を包含するアミノ酸配列の全部または部分を含むペプチド抗原(例えば配列番号:3、4または5に示される配列を含むペプチド抗原(EOMESの641位のアセチル化またはメチル化リジン(適切にはジメチルリジン)およびEOMESの373位のメチル化リジン(適切にはジメチルリジン)を包含する))で動物を免疫して、641位でアセチル化またはメチル化されたとき、あるいは373位でメチル化されたときにのみEOMESに結合する抗体を産生させることによって生成できる。
【0158】
本発明のポリクローナル抗体は、標準的技術にしたがい、目的のタンパク質のアセチル化またはメチル化部位に対応するペプチド抗原で適切な動物(例えばウサギ、ヤギなど)を免疫し、免疫血清を当該動物から収集し、さらにポリクローナル抗体を当該免疫血清から分離することによって標準的手順で作製することができる。例えば、641Kでアセチル化またはメチル化された場合にのみEOMESに結合する抗体が望まれる場合、ペプチド抗原は、アセチル化またはメチル化された形態のリジン(例えば、それぞれK(Ac)またはK(Me2))を含む。逆に、641Kでアセチル化またはメチル化されていない場合にのみEOMESに結合する抗体が望まれる場合、ペプチド抗原は、アセチル化またはメチル化されていない従来型のリジンを含む。
【0159】
本発明の抗体を産生するのに適したペプチド抗原は、周知の技術に従って設計、構築、および使用することができる。例えば、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL、第5章、p.75-76、Harlow&Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory(1988);チェルニック(Czernik)、Methods In Enzymology、201:264-283、1991;メリフィールド(Merrifield)、J.Am.Chem.Soc.、85:21-49、1962、を参照されたい。
【0160】
より長いまたはより短いアセチルペプチド抗原またはメチルペプチド抗原を使用することができることは、当業者によって理解されるであろう。例えば、ペプチド抗原は配列番号3、4または5に示されるアミノ酸配列を含むことができ、またはペプチド抗原は当該配列にフランキングする追加のアミノ酸を含むことができ、またはアセチル化され得るもしくはメチル化され得るリジンに直接フランキングする開示された配列の一部分のみを含むことができる。典型的には、所望されるペプチド抗原は、アセチル化され得るまたはメチル化され得るアミノ酸の各側にフランキングし、それを包含する4つ以上のアミノ酸を含むであろう。本明細書に記載されるように産生されたポリクローナル抗体は、以下にさらに記載されるようにスクリーニングされ得る。
【0161】
本発明のモノクローナル抗体は、コーラー(Kohler)およびミルシュタイン(Milstein)の周知の技術に従ってハイブリドーマ細胞株で産生され得る。以下を参照されたい:コーラーおよびミルシュタイン、Nature、265:495-97、1975;コーラーおよびミルシュタイン、Eur.J.Immunol.、6:511、1976;さらにまた、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、アウスベル(Ausubel)他編、1989。そのように生成されたモノクローナル抗体は非常に特異的であり、本発明によって提供される診断アッセイ法の選択性および特異性を改善する。例えば、適切な抗原を含む溶液をマウスまたは他の種に注射し、十分な時間の後(従来の技術に従って)、動物を犠牲にし、脾臓細胞を得る。続いてミエローマ細胞と典型的にはポリエチレングリコールの存在下で当該脾臓細胞を融合させることによってそれらを不死化して、ハイブリドーマ細胞を作製する。例えばウサギ融合ハイブリドーマは、1997年10月7日発行の米国特許第5,675,063号明細書(C.ナイト(Knight))の記載にしたがって作製され得る。続いて、ハイブリドーマ細胞を適切な選別培地(例えばヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT))で増殖させ、以下に記載するように、所望の特異性を有するモノクローナル抗体について上清をスクリーニングする。分泌された抗体は、沈殿、イオン交換またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の方法によって組織培養上清から回収することができる。
【0162】
モノクローナルFabフラグメントはまた、当業者に知られている組換え技術によって大腸菌で産生され得る。例えば以下を参照されたい:W.ヒューズ(Huse)、Science、246:1275-81、1989;ムリナックス(Mullinax)ら、Proc.Nat’l Acad.Sci.、87:8095、1990。あるアイソタイプのモノクローナル抗体が特定の用途に好ましい場合、特定のアイソタイプは、最初の融合物から選択することによって直接調製するか、または種々のアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマからsib選別技術を用いてクラススイッチ変種を単離することによって二次的に調製することができる(ステプレウスキー(Steplewski)ら、Proc.Nat’l Acad.Sci.、82:8653、1985;スピラ(Spira)ら、J.Immunol.Methods、74:307、1984)。
【0163】
本発明のアセチル化部位特異的抗体またはメチル化部位特異的抗体の好ましいエピトープは、アセチル化され得るまたはメチル化され得るリジンを含む約8~17のアミノ酸から本質的になるペプチドフラグメントであり、ここで、約3~8のアミノ酸はアセチル化され得るリジンの各側に位置し、したがって、本発明の抗体は、そのようなエピトープ配列を含む翻訳後修飾EOMESポリペプチドに特異的に結合する。本発明の抗体が結合する特に好ましいエピトープは、アセチル化され得るまたはメチル化され得る部位の配列の全てもしくは一部を含む(アセチル化され得るまたはメチル化され得るアミノ酸を含む)。
【0164】
本発明の範囲内に含まれるものは、等価の非抗体分子、例えば、本発明のアセチル特異的またはメチル特異的抗原結合分子が結合するエピトープと本質的に同じアセチル化され得るまたはメチル化され得るエピトープに、アセチル特異的またはメチル特異的な様式で結合する抗原結合フラグメントである。例えば、ノウベルガー(Neuberger)ら、Nature 312:604、1984、を参照されたい。そのような同等の非抗体試薬は、以下でさらに説明される本発明の方法において適切に使用され得る。
【0165】
本発明で企図される抗原結合分子は、免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む)を含む任意のタイプの抗体およびその抗原結合フラグメントであり得る。抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマまたはヒトを含む任意の起源の種であり得るか、またはキメラ抗体であり得る。例えば、M.ウォーカー(Walker)他、Molec.Immunol.、26:403-11、1989;モリシオン(Morrision)他、Proc.Nat’l.Acad.Sci.、81:6851、1984;ノウベルガー(Neuberger)ら、Nature 312:604、1984、を参照されたい。抗体は、米国特許第4,474,893号明細書(リディング(Reading))または米国特許第4,816,567号明細書(カビリー(Cabilly)ら)に開示された方法にしたがって生成される組換えモノクローナル抗体でもよい。抗体はまた、米国特許第4,676,980号明細書(セゲル(Segel)ら)に開示された方法にしたがって作製される特異抗体によって化学的に構築されてもよい。
【0166】
本発明はまた、本発明の抗体を産生する不死化細胞株を提供する。例えば、上記の記載にしたがって構築されたハイブリドーマクローン(本明細書に開示したEOMESアセチル化またはメチル化部位に対するモノクローナル抗体を産生する)もまた提供される。同様に、本発明は、本発明の抗体を産生する組換え細胞を含み、前記細胞は、周知技術によって構築され得、例えば、モノクローナル抗体の抗原結合部位をPCRによってクローニングし、単鎖抗体をファージディスプレー組換え抗体または可溶性抗体として大腸菌で生成することができる(例えば、ANTIBODY ENGINEERING PROTOCOLS、1995、Humana Press、Sudhir Paul editor、を参照されたい)。
【0167】
本発明のアセチル化またはメチル化部位特異的抗体は、ポリクローナルであろうとモノクローナルであろうと、標準的な技術に従って、エピトープおよびアセチルまたはメチル特異性についてスクリーニングすることができる。例えば、ケミック(Czemik)ら、Methods in Enzymology、201:264-283、1991、を参照されたい。例えば、抗体をELISAによってアセチルおよび非アセチルペプチドライブラリーに対してスクリーニングして、所望の抗原およびアセチル化またはメチル化(または非アセチル化、非メチル化)形態の抗原とのみの反応性の両方に対する特異性を確実にすることができる。ペプチド競合アッセイを実施して、所与のタンパク質アセチル化シグナル伝達タンパク質上の他のアセチルエピトープとの反応性の欠如を確認することができる。抗体はまた、シグナル伝達タンパク質を含む細胞調製物(例えば標的タンパク質を過剰発現する細胞株)に対するウエスタンブロッティングによって試験することができ、所望のアセチル化エピトープ/標的との反応性を確認することができる。
【0168】
所望のアセチル化またはメチル化エピトープに対する特異性も、アセチル化されることが判明している所望のエプトープの外側の位置にアセチル化され得るまたはメチル化され得る残基を欠く変異体を構築するか、あるいは、所望のアセチルエピトープもしくはメチルエピトープを変異させて反応性を欠くことを確認すること、によって調べることができる。本発明のアセチル化またはメチル化部位特異的抗原結合分子は、非標的タンパク質中の関連するエピトープに対していくつかの限定された交差反応性を示し得る。このことは予想されないことではない。なぜならば、ほとんどの抗原結合分子はある程度の交差反応性を示し、抗ペプチド抗体は、当該免疫ペプチドに対して高い相同性を有するエピトープとはしばしば交差反応するからである。例えば、前述のケミック(Czemik)を参照されたい。非標的タンパク質との交差反応性は、既知の分子量のマーカーとの一緒のウエスタンブロッティングによって容易に特徴づけられる。交差反応性タンパク質のアミノ酸配列を調べて、本発明の抗原結合分子が特異的であるEOMESエピトープに高度に相同な部位を同定することができる。
【0169】
特定の場合において、ポリクローナル抗血清は、アセチルリジンまたはメチルリジン(適切にはジメチルリジン)自体に対していくらかの望ましくない普遍的交差反応を示すことがあり、これは抗血清の更なる精製によって、例えばアセチルチラミンまたはメチルチラミンカラムで除去することができる。本発明の抗原結合分子は、641Kまたは373Kでアセチル化された場合またはメチル化された場合にのみ(または場合によってはアセチル化されておらず、メチル化されていない場合にのみ)EOMESに特異的に結合し、(実質的に)他の形態に結合しない(抗原結合分子に特異的である形態と比較して)。
【0170】
抗原結合分子は、EOMESのアセチル化またはメチル化を調べるために、正常および機能不全の(例えば、疲弊した)T細胞を使用してIHCまたはIFによってさらに特徴付けることができる。IHCまたはIFは、周知の技術に従って実施することができる。例えば、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL、第10章、Harlow&Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、を参照されたい。例えば、簡単に述べると、パラフィン包埋組織(例えば、腫瘍組織)を以下の工程によって免疫組織化学染色のために準備する:キシレンに続いてエタノールを用いて組織切片を脱パラフィンし;水に続いてPBSで水和し;クエン酸ナトリウム緩衝液中でスライドを加熱することによって抗原を露呈させ;過酸化水素中で切片をインキュベートし;遮断溶液中で遮断し;一次抗体および二次抗体中でスライドをインキュベートし;最後に製造業者の指示にしたがってABCアビジン/ビオチン法を用いて検出する。IFは、たとえば、基本的に以下の実施例で説明するように実施することができる。
【0171】
抗原結合分子は、さらにまた標準的な方法にしたがって実施されるフローサイトメトリーによって特徴付けることができる。チャウ(Chow)ら、Cytometry(Communications in Clinical Cytometry)、46:7205-238、2001、を参照されたい。簡単にかつ例示として記載すると、サイトメトリー分析のために以下のプロトコルを利用することができる:サンプルをフィコール勾配で遠心分離して赤血球を除去し、続いて、細胞を2%のパラホルムアルデヒドで10分間、37℃で固定し、その後90%メタノールで30分間、氷上で透過処理する。続いて、本発明の一次アセチル化またはメチル化部位特異的抗原結合分子(それらは、例えば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-MeまたはEOMES-373K-Meを検出する)で細胞を染色し、洗浄し、蛍光標識二次抗体で標識することができる。この時点で、T細胞機能の評価を支援するために、追加の蛍光色素コンジュゲートバイオマーカー抗体(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2、Ki67、PD-1、および/またはCD107aなど)を追加することもできる。次に、使用する機器の特定のプロトコルに従って、フローサイトメーターで細胞を分析することができる。
【0172】
抗原結合分子は、マルチパラメーター分析で使用するために、有利には蛍光色素(例えばAlexa Fluor(登録商標)488)に結合させることができる。
本発明のアセチル化またはメチル化部位特異的抗原結合分子は、641Kでアセチル化またはメチル化された場合にのみ、あるいは373Kでメチル化された場合にのみ、ヒトEOMESポリペプチドに特異的に結合するが、ヒト種自体の結合のみに限定されるものではない。本発明は、ヒトのアセチル化またはメチル化部位に結合することに加えて、他の種(例えば、マウス、ラット、サル、酵母)からのそれぞれのEOMESタンパク質の保存された高度に相同または同一のアセチル化またはメチル化部位にも結合する抗原結合分子を含む。他の種で保存されている高度に相同または同一の部位は、本明細書に開示されるヒトEOMESアセチル化およびメチル化部位とのBLASTの使用などの標準的な配列比較によって容易に同定することができる。
【0173】
6.キット
本発明はまた、バイオマーカーの検出および/または定量化を可能にする試薬を含む、治療法バイオマーカーおよび本明細書に開示される他のバイオマーカーへの応答を含む、バイオマーカーの発現を決定するためのキットにも及ぶ。そのような試薬には、例えば、バイオマーカーの定量化を可能にする化合物または材料、あるいは化合物または材料のセットが含まれる。特定の実施形態において、化合物、材料または化合物もしくは材料のセットは、タンパク質の発現レベルまたは遺伝子の発現レベルを決定することを可能にし、これには、限定されるものではないが、抗原結合分子(例えば、抗体)、RNA抽出のための材料、対応するcDNAの合成のためのプライマー、DNA増幅のためのプライマー、および/または遺伝子によってコードされるRNA(または対応するcDNA)と特異的にハイブリダイズすることができるプローブ、TaqManプローブなど、が含まれる。
【0174】
キットはまた、任意に、標識、陽性および陰性対照、洗浄溶液、ブロッティング膜、マイクロタイタープレート、希釈緩衝液などの検出のための適切な試薬を含み得る。例えば、タンパク質ベースの検出キットは、(i)EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Meから適切に選択される少なくとも1つのEOMESポリペプチド、あるいは、641K-Ac、641K-Meもしくは373K-Meを含むそのフラグメントから適切に選択される少なくとも1つのEOMESポリペプチド、およびアセチル化またはメチル化されていないEOMESポリペプチド(対照として使用可能)、および(ii)EOMESポリペプチド(例えば、EOMES-641K-Ac、EOMES-641K-Meおよび/またはEOMES-373K-Me、および/またはアセチル化またはメチル化されていないEOMESポリペプチド)に特異的に結合する1つまたは複数の抗原結合分子、を含み得る。抗原結合分子は適切には検出可能に標識されている。キットはまた、本明細書に記載のアッセイの1つを実施するための様々なデバイス(例えば、1つ以上)および試薬(例えば、1つ以上)および/またはキットを使用してT細胞機能バイオマーカー遺伝子の発現を定量化するための印刷された指示説明書を特徴とし得る。
【0175】
診断キットの構成要素を梱包するのに適した材料には、クリスタル(crystal)、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど)、ボトル、バイアル、紙、封筒などが含まれ得る。さらに、本発明のキットは、キットに含まれる異なる構成要素を同時に、連続して、または別々に使用するための指示説明書を含むことができる。指示説明書は、印刷物の形態、または電子記憶媒体(磁気ディスク、テープなど)、光学媒体(CD-ROM、DVD)などの対象が読み取ることができるように命令を記憶することができる電子支持体の形態であり得る。あるいは、またはそれに加えて、媒体は指示説明書を提供するインターネットアドレスを含むことができる。
【0176】
7.患者の分類および治療の管理
本発明は、癌の治療のための治療法(例えば、細胞傷害性療法、免疫療法など)での治療の適切な候補である個体を選択または同定する方法にまで及ぶ。そのような個体には、治療に応答すると予測され、したがって、異なる特徴(例えば、治療に対する非応答性)を有する他の患者と比較して治療法の投与から利益を得る可能性が高い患者が含まれる。特定の実施形態において、適切な候補者は、治療から利益を得る可能性が合理的に高いか、またはそのリスクおよび副作用を考慮して治療を投与することを正当化するのに少なくとも十分に利益を得る可能性が高い候補者である。本発明は、癌の治療のための治療法(例えば、細胞傷害性療法、免疫療法など)での治療の適切な候補ではない個体を選択または同定する方法を包含する。そのような個体には、異なる特徴(例えば治療法に対する応答性)を有する他の患者と比較して、当該治療法に非応答であるか、または弱く応答すると予測され、したがって当該治療法の実施から利益を得る可能性が低い患者、あるいはそのような治療から利益を受ける可能性が低いかまたは実質的に可能性がなく、したがって異なるもしくは追加の治療を使用することが所望され得る患者が含まれる。いくつかの実施形態において、対象が治療法での治療の適切な候補であるかどうかは、対象から得られたサンプル中の治療法バイオマーカーに対する少なくとも1つの応答のアッセイに基づいて決定される。
【0177】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、治療バイオマーカーに対する少なくとも1つの応答のアッセイに基づいて、癌の治療を必要とする対象が治療法(例えば、細胞傷害性療法、免疫療法など)での治療に応答する可能性を決定する方法、および/または、そのような治療を受ける対象を特定および/または選択すること、である。特定の実施形態において、治療法は、適切には抗免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法である。「免疫チェックポイント阻害剤での治療」という句(または、「免疫チェックポイント阻害剤治療」、「免疫チェックポイント阻害剤を用いる治療法」もしくは「免疫チェックポイント阻害剤治療法」とも呼ばれる)は、単一の免疫チェックポイント阻害剤での治療に関する実施形態、および2つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせた治療に関する実施形態、を包含する。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤治療は、単一の薬剤を使用して、または2つ以上の別個の薬剤を使用して、2つ以上の異なる免疫チェックポイント経路を阻害することを含む。
【0178】
本発明はまた、免疫機能を刺激または強化する治療法(例えば、養子免疫療法などの免疫療法)での治療のために、免疫機能が損なわれているまたは低下している個体を選択または同定する方法において、本明細書に記載の対象のT細胞機能または免疫機能を評価するための方法の使用を包含する。
【0179】
本発明を容易に理解し、実用化するために、特定の好ましい実施形態を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例】
【0180】
実施例1
T細胞におけるEOMESの発現
ステージIV転移性メラノーマ癌からのCD8+T細胞の機能的性質を定量するため、血液中の免疫細胞の表現型を定量するための重要なツールである液体生検を、RECIST1.1(腫瘍量の変化に基づいて治療法に対する応答を分類する;アイゼンハウアー(Eisenhauer)ら、Eur J Cancer、2009、45(2):228-47)に基づいて層別化したメラノーマ患者、転移性乳癌患者および健康な個体から得た。患者のサブグループには、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、または進行(PD)の患者として分類されたものが含まれていた。簡単に述べると、CD8+T細胞を、ベースライン出血(baseline bleed)後24か月間、3か月ごとに健康なドナー(HD)、転移性乳癌患者またはメラノーマ患者の液体生検から単離した。メラノーマ患者は、免疫療法治療に対する客観的応答(ペムブロリズマブ、ニボルマブおよび/またはイピリムマブを用いた単剤または2剤併用療法)に基づき、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)または進行(PD)に更に分類した。
【0181】
エフェクターマーカーの発現を促進するためにCD8
+T細胞の刺激の前または後に分析を行い、タンパク質発現を高解像度免疫蛍光で分析した。機能不全/疲弊したCD8
+T細胞はエフェクタータンパク質を発現できない((ファン(Huang)ら、2017、Nature、545(7652)、60-65;ウェリー(Wherry)およびクラチ(Kurachi)、2015、Nat Rev Immunol、15(8)、486-499;ベングシュ(Bengsch)ら、2018、Immunity、48(5)、1029-1045;カタコビッチ(Catakovic)ら、2017、Cell Commun Signal、15(1)、1;ウォロニエッカ(Woroniecka)ら、2018、Clin Cancer Res、24(17)、4175-4186)。この研究におけるT細胞の分析は、CRおよびSDメラノーマコホートと比較して、PDコホートはKi67、TNF-αおよびIFN-γの発現が低く、刺激に対する影響は観察されなかったことを示した(
図1A)。
【0182】
次に、機能不全であることが上で示された同じ患者コホートに由来するCD8
+T細胞を、提案された疲弊シグネチャー、PD-1およびEOMESの発現について調べた。PD-1は、機能不全T細胞に見られる主要な抑制性チェックポイントであるため、含めた。分析により、メラノーマPDコホートに由来するCD8
+T細胞は、HD、CR、PRコホートよりも有意かつ著しく高い核EOMES発現を示したことが明らかになった(
図1B)。
【0183】
疲弊した機能不全T細胞におけるEOMESの重要性のため、潜在的なメチル化残基を特定するためのNLSマッパーおよびオンラインツールを使用して、推定核局在シグナルについてEOMES配列を調べた。C末端の配列は、核局在を媒介する可能性が高いと同定された(
図1C)。この領域は
635VYTSACKRRRLSP
647として識別され、641位のリジン(K)(641K)は、メチル化/脱メチル化の潜在的なターゲットとして、また種固有のメチル化部位およびアセチル化部位のツール予測に基づいてアセチル化の標的として識別した。(ウェン(Wen)ら、2016、Bioinformatics、32(20)、3107-3115)。多くの研究により、タンパク質と標的との相互作用および局在を制御するためのさまざまな翻訳後修飾の重要性が実証されてきた。したがって、EOMES NLS内のこのリジンのメチル化、脱メチル化およびアセチル化は、その核局在とダイナミクスの調節に重要である可能性があるとの仮説が立てられた。
【0184】
641KでのEOMESの翻訳後修飾の重要性を理解するために、3つの3プラスミド構築物を作成した(
図1D)。野生型EOMES配列を表すE-WT;E-MUT1(641Kがアルギニン(R)に変異しており、メチル化されていないアセチル化されていない状態のリジンを模倣している);E-MUT2(641Kがフェニルアラニンに変異しており、リジンの高メチル化状態を模倣している)。E-MUT1はメチル化またはアセチル化されることができないので、この構築物は、この突然変異によって核内移行動態が変化するという仮説を立てて、核内移行におけるアセチル化およびメチル化の重要性を示すために用いた。E-MUT2の変異はEOMESポリペプチドを核局在不能にするはずである。
【0185】
脱メチル化できる641位の機能的リジンがEOMESの核への核移行に必要であるのに対し、641KでのEOMESの高メチル化は核EOMESの減少をもたらすことが観察された。特に、E-WT、E-MUT1およびE-MUT2を用いたJurkat細胞のEOMES、TBETおよびPD-1に対するトランスフェクションの影響を調べたところ、
図1Eに示す結果が得られた。高解像度顕微鏡検査では、E-WTと比較して、E-MUT1またはE-MUT2をトランスフェクションした細胞におけるEOMESの局在は、細胞質へより有意に偏っており、有意に低い核EOMESおよび低い核バイアス(細胞質に対する核の蛍光の比:Fn/cで示されるように)が認められた(
図1E)。ベクターのみの対照と比較して、E-MUT1でトランスフェクトした細胞におけるEOMES発現はわずかに低かったが有意ではなく、一方、EOMESのFn/cはベクターのみの対照と比較して依然として細胞質に偏っていた。E-MUT2でトランスフェクトした細胞では、平均NFIおよびEOMESのFn/cは、ベクターのみの対照で観察されたものより有意に低かった。TBET発現は、E-WTのトランスフェクションによりわずかに増加したが、E-MUT2のE-MUT1のトランスフェクションは、ベクターのみの対照およびE-WTの両方と比較して、核TBETのより高い発現を誘導した。PD-1の発現はE-WTによるトランスフェクションの影響を受けなかったが、E-MUT1およびE-MUT2の両方のトランスフェクションによりPD-1の発現を有意に無効にした。
【0186】
これらのデータは、641Kの構成的メチル化(E-MUT2で表される)が、641Kの非メチル化/非アセチル化(E-MUT1で表される)よりも、細胞局在およびタンパク質発現に対して異なる効果を有することを示唆する。これは、641Kでのメチル化がEOMESのタンパク質相互作用に及ぼす影響に起因する可能性があり、タンパク質の発現に対する異なる相互作用と異なる影響をもたらす。これは、EOMESの核標的化およびタンパク質-タンパク質相互作用に影響する641Kの脱メチル化の重要性を示す。
【0187】
Ki67、IFN-γおよびTNF-αの発現に対するE-WT、E-MUT1およびE-MUT2のトランスフェクションの効果を、上記のようにトランスフェクションした同じJurkat細胞のセットで調べた。高分解能顕微鏡解析により、E-WTのトランスフェクションは、ベクターのみの対照またはE-WTと比較して、Ki67、IFN-γおよびTNF-αの発現を有意に抑制することが明らかにされた。E-MUT1のトランスフェクションは、対照と比較して、Ki67およびIFN-γの発現を有意に誘導したが、TNF-αの発現は誘導しなかったが、これらのタンパク質の発現は、E-WTトランスフェクション細胞と比較して有意に高かった。E-MUT2のトランスフェクションは、3つすべてのタンパク質の発現に有意かつ強い影響を及ぼし、対照、E-WTまたはE-MUT1でトランスフェクションした細胞よりもはるかに高い発現が観察された(
図1F)。
【0188】
このデータは、核局在EOMESが、Ki67、IFN-γおよびTNF-αのE-WT抑制によって示されるように、エフェクターマーカーの発現を抑制するために必要であることを示唆する。しかし、高メチル化EOMESはKi67、IFN-γおよびTNF-αの強い発現を誘導できることも見出した。これは、重要な残基でのEOMESの異なる翻訳後修飾が、局在に影響することに加えて、エフェクタータンパク質のE-MUT1とE-MUT2誘導発現の違いにより見られるように、異なるタンパク質相互作用も誘導することを示唆する。したがって、EOMESの641Kに存在する特異的翻訳後修飾は、タンパク質-標的相互作用および核局在と同様にEOMESのタンパク質標的の調節に重要であると結論した。
【0189】
実施例2
翻訳後修飾されたEOMESに特異的な抗体は治療法に対する応答を予測することができる
EOMESポリペプチドにおける641Kの翻訳後修飾の効果を研究するために、641K-メチル化および641Kアセチル化EOMESタンパク質(EOMES-641K-MeおよびEOMES-641K-Ac)に対して生じたNLSモチーフに特異的なウサギポリクローナル抗体。
図2に抗体の特異性を示す。
【0190】
同定されたEOMES NLSに加えて、EOMES DNA結合ドメインもEOMESポリペプチドの
【0191】
【0192】
において同定され、中央リジンが373位(373K)にあり、標的結合特異性の制御に重要であった。転写因子T-bet内のDNA結合ドメインのX線構造に基づいて、EOMES:DNA複合体の相同性モデルを作成し、EOMESとDNA/クロマチン/プロモーター領域との間の潜在的な相互作用領域を評価した。DNA結合ドメイン内のEOMESとT-BET間の高い配列同一性(72%)はモデルにおける100%の信頼水準を提供し、EOMESとT-betのオーバーレイによりこれらの領域における高い類似性を確認した。EOMESの373位リジンはT-BET(373K)に保存されており、T-BETはDNA上のリン酸と結合することが示されていた。このリジン残基のメチル化はDNA結合を阻害すると予想される(
図3A)。この残基にメチル化を含むEOMES(例えば:EOMES-373K-Me)に対するウサギのポリクローナル抗体作製した(
図2および3B)。
【0193】
本発明者らは、EOMES-641Kのアセチル化は、より疲弊度の高いCD8
+T細胞サンプルにおいてより優勢であると仮定した。また、EOMES-641K-Meの有病率(prevalence)は、EOMES-373K-Meと共により応答性の高いCD8
+T細胞でより高いと予測された。そこで、メラノーマ患者の2つのコホートから採取したベースラインのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織において、EOMES-641K-MeとEOMES-641K-Acのプロファイルを調べた。同患者は、治療開始後に免疫療法に対して応答性がある、または免疫療法に対して耐性である、のいずれかに分類された患者である。ベースラインFFPE組織は、治療が開始される前に採取した。高解像度イメージングによるタンパク質発現の分析は、EOMES-641K-Meが両コホートのT細胞に存在するが、応答者コホートでは耐性者コホートよりも有意に高いレベルであることを明らかにした。耐性コホートはEOMES-641K-Acの有意な強度が観察された唯一のコホートであり、応答者コホートは実質的に観察可能なEOMES-641K-Acを有していなかった(
図3C;代表的な画像は示されていない)。
【0194】
ベースライン組織におけるEOMES-641K-MeおよびEOMES-641K-Acの相対的存在は、患者サンプルの基礎疲弊シグネチャーを表し、それが免疫療法のみに応答する能力を有するかどうかを表している可能性がある。EOMES-641K-Acの有病率が高い場合には、免疫療法単独では不十分であり、EOMES-641K-Acの翻訳後修飾を標的とするエピジェネティック薬などの追加的な治療法が必要であることが示唆される。
【0195】
EOMES-641K-Ac有病率は、その後、健康なドナー、免疫療法に応答する患者、および免疫療法に耐性の患者のいずれかに由来するCD8
+T細胞の高分解能顕微鏡検査によって調べた。解析の結果、耐性、難治性患者由来のCD8
+T細胞のみが有意なレベルのEOMES-641K-Acを有し、このEOMES-641K-Acも核局在に偏っていたことが明らかとなった(
図3D;代表的な画像は示されていない)。
【0196】
EOMES-641K-Meはまた、健康なドナー、免疫療法に応答する患者、または免疫療法に耐性の患者に由来するCD8
+T細胞の高解像度顕微鏡検査によってもプロファイリングされた。分析は、応答性コホートからのCD8
+T細胞が、耐性、難治性患者コホートまたは健康なドナーコホートからのT細胞より有意に高いレベルのEOMES-641K-Meを有することを明らかにした。EOMES-641K-Meは、3つのコホートすべてにおいて細胞質に局在する方向に主に偏っており、EOMES-641K-Meの有意な核内発現は、応答者由来のCD8
+T細胞においてのみ検出された(
図3E;代表的な画像は示されていない)。
【0197】
同じ患者コホート由来のCD8
+T細胞におけるEOMES-373K-Me有病率も高分解能顕微鏡検査によって評価した。分析は、応答性コホートからのCD8
+T細胞が、耐性、難治性患者コホートおよび程度は低いが健康ドナーコホートより有意に高いレベルのEOMES-373K-Meを有することを明らかにした。EOMES-373K-Meも応答者コホートのみで核局在に偏っていたことが明らかとなった(
図3F;代表的な画像は示されていない)。
【0198】
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)患者由来のCD8
+T細胞におけるEOMES-641K-MeおよびEOMES-641K-Acの分析は、これらの細胞が耐性メラノーマ患者由来のCD8
+T細胞と一致するEOMESシグネチャーを有することをも明らかにし、TNBC患者由来のこれらのT細胞も疲弊していることを示唆した(
図3G;代表的な画像は示されていない)。特に、TNBCは免疫療法によく応答していない。
【0199】
要約すると、EOMES-641K-Acは免疫療法に対する非応答者である患者と関連し、従って患者を免疫療法に対する非応答者として予測または分類することができる。逆に、EOMES-641K-MeおよびEOMES-373K-Meは免疫療法に対する応答者である患者と関連しているため、患者を免疫療法に対する応答者として予測または分類することができる。
【0200】
このデータは、EOMESの核局在が疲弊表現型にとって重要であり、641位および373位でアセチル化された形態および脱メチル化を維持することを示している。エフェクター機能、すなわち健康なT細胞に見られる状態では、EOMESはメチル化されて細胞質に発現するが、核内にも存在する。
【0201】
このデータはまた、EOMESの新しい役割を示唆する。この因子は、641Kおよび373Kに存在する特異的な翻訳後修飾に基づいて、正および負の機能を有することができる。EOMESの核局在は、641Kでの翻訳後修飾によっても影響され、EOMES-641K-Meは、治療法に耐性の患者由来のCD8+T細胞において完全に細胞質であったが、治療法に応答する患者由来の細胞の核にも局在した。
【0202】
実施例3
転移性脳腫瘍患者由来のCD8
+T細胞におけるEOMESの局在
転移性脳腫瘍患者の転移性脳病変からのFFPE組織を、EOMES-641K-AcまたはEOMES-641K-Meのいずれかを発現する浸潤性CD8
+T細胞を標的とする自動化ASI mIFシステムを介して調べた。興味深いことに、EOMES-641K-Acを発現する腫瘍病変内のCD8
+T細胞は、CD8
+T細胞集団の約60%を占め、一方、EOMES-641K-Meを発現するCD8
+T細胞は、CD8
+T細胞集団のわずか18%未満を占めた。加えて、EOMES-641K-Acの発現強度は、病変内のCD8
+T細胞に対するEOMES-641K-Meのそれより有意に高かった。このことは、EOMES-641K-Acが脳転移事象における癌転移病変内のCD8
+T細胞において上方制御されていることを示唆し、これは疲弊したCD8
+T細胞シグネチャーを示す。(
図4;代表的な画像は示されていない)。
【0203】
実施例4
材料および方法
CD8+T細胞の単離
転移性メラノーマ生検を、CD8+T細胞を分離するためにRosetteSep(商標)法を用いて予備濃縮した。RosetteSep(商標)ヒトCD8濃縮キット(15063、Stemcell Technologies社)を用いてCD8+T細胞を単離し、SepMate(商標)-50(IVD)密度勾配チューブ(85450、Stemcell Technologies社)とLymphoprep(商標)密度勾配培地(07861、Stemcell Technologies社)による密度勾配遠心分離を用いて赤血球を除去した。
【0204】
免疫蛍光顕微鏡検査
単離されたCD8+T細胞またはJurkat細胞を、ポリ-l-リジンで前処理したカバースリップ上に細胞質分取し、次いで染色のためにPBS中に保存した。細胞を1%Triton(登録商標)X-100と20分間インキュベートすることによって透過性化し、抗CD8、抗TNF、抗IFN-γ、抗Ki67、抗PD1、抗EOMES、抗TBETおよび抗サイトケラチン抗体を含む関連抗体でプローブした。カスタムポリクローナルウサギ抗-EOMES-641K-Ac、抗-EOMES-641K-Meおよび抗-EOMES-373K-Meも使用した。一次抗体は、Alexa Fluor(登録商標)488(抗ウサギ)、568(抗マウス)または647(抗ラット)に結合させた二次抗体で可視化した。
【0205】
転移性病変腫瘍生検由来のFFPEサンプルは、OPAL染色のためのBOND RX(Perkin-Elmer)を用いて、以下の機器プロトコルを用いて処理した:Epitope Retrieval Solution 1(pH6のEDTAベースの回収溶液)を用いて100℃で20分間ER2、その後、ウサギ抗EOMES-641K-Acまたは抗EOMES-641K-Meおよびマウス宿主CD8を用いてプロービングし、Opal Kit520、570および690を用いて可視化した。
【0206】
カバースリップをProLong(登録商標)Diamond Antifade試薬(Life Technologies)でガラス顕微鏡スライドに装着した。タンパク質標的を共焦点レーザ走査顕微鏡により局在化した。LAXソフトウェアを実行する100倍油浸レンズを用いたLeica DMI8顕微鏡を用いて単一の0.5μm切片を得た。最終画像は同一断面の4枚の連続画像を平均化して得た。デジタル画像をImageJソフトウェア(ImageJ、NIH、アメリカ合衆国、メリーランド州、ベセスダ)を用いて解析し、全蛍光強度(TFI)、核蛍光強度(NFI)、細胞質蛍光強度(CFI)のいずれかを決定した。Mann-Whitneyノンパラメトリック検定(GraphPad Prism(商標)、GraphPad Software、カリフォルニア州、サンディエゴ)を用いて、データセット間の有意差を決定した。
【0207】
EOMES抗体の産生
以下のペプチドに対して抗体を作製した:EOMES NLS:VTYSCKRRRLSP(配列番号2);EOMES-641K-Ac:VTYSCK(Ac)RRRLSP(配列番号3);EOMES-641K-Me:VTYSCK(Me)RRRLSP(配列番号4);およびEOMES-373K-Me:RQUISFGKLK(Me)LTNNKGANN(配列番号5)。一般に、短いペプチドはそれ自体では免疫原性をもたないので、多くの場合、それらを免疫原性キャリアタンパク質と結合させる必要がある。このカップリングを促進するために、システインを上記ペプチド配列のC末端に取り込み、反応させて、ペプチドを免疫原性担体タンパク質、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にコンジュゲートした。抗ジメチル化または抗アセチル化ペプチド抗体を生成するために特別な免疫プロトコルは必要とされなかった。各ペプチド配列について2匹または4匹のウサギを数週間間隔で免疫した。最初の免疫は完全フロイントのアジュバントとのペプチドコンジュゲートのエマルジョンで行い、2番目の免疫は不完全フロイントのアジュバントを用いた。強力な抗ペプチド血清を数週間後に得た(パルフレイマン(Palfreyman)ら、(1984)J Immunol Meth、75:383を参照のこと。)。
【0208】
ジメチル化およびアセチル化ペプチド抗血清の試験は、血清を非翻訳後修飾ペプチド、ジメチル化ペプチドまたはアセチル化ペプチドで被覆したマイクロタイタープレートで滴定した酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて行った。
【0209】
製造業者の指示に従い、入手可能なシステイン残基を用いて、未修飾ペプチドをゲルSulfo Link Coupling Resin(Thermo Scientific、カタログ番号20401)に結合させることにより抗体増強を行った。得られたゲルを抗血清のアリコートと共にインキュベートして、未修飾ペプチドに特異的な抗体を吸収させた。得られた抗血清は、ジメチル化ペプチドまたはアセチル化ペプチド配列に対して増強された特異性を有する。
【0210】
ジメチル化またはアセチル化されたペプチドにのみ特異的なアフィニティー精製された抗体を産生するために、増強手順を最初に行って、修飾されていないペプチドに特異的な抗体を血清から除去した。アフィニティー精製された抗体の特異性をELISAで試験した。
図2に示すように、産生された抗体は種々のペプチドに対して高い特異性を示した。
【0211】
ASIシステム法(高スループット高解像度顕微鏡検査)
ASIのmIFシステムは、多重免疫蛍光サンプルのための一般的な走査および分析システムである。DAPIと最大6つの抗体染色で染色されたスライドをスキャンし、自己蛍光を除去し、フィルター間の混合を解消し、取得したデータで細胞ベースの分析を行うように設計された。接触細胞は自動的にセグメント化され、シグナル発現は定量的に測定され、細胞当たりの結果および走査領域全体の結果が表示される。次のようなさまざまな自動および半自動スキャンモードがサポートされている。
【0212】
1.懸濁サンプルのための効率的な密度ベースのスキャン-最速の細胞スコアリングのための細胞集団に基づいたサンプルのスキャン;
2.選択領域/エリアの走査;および
3.対象となる特定の場所のインタラクティブなスキャン。
【0213】
すべてのモードにおいて、抗体の共局在を伴う数千および数万の細胞についての統合された統計は、数分で誘導することができる。3Dスタッキング、自動露光、自動焦点および他の撮像パラメータは、各走査の固有の部分である。平均核蛍光強度(NFI)または全蛍光強度(FI)のいずれかを決定するために画像を使用した。細胞を自動的に選択し、蛍光強度を測定するために使用される自動化ステージおよびASIソフトウェアを使用して、定義された領域内の細胞の総数を計数した。次いで、得られたデータを用いて、総細胞集団の%として表されるCTC集団動態を計算した。
【0214】
本明細書で引用されたすべての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本出願の「先行技術」として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0215】
本明細書全体を通して、その目的は、本発明を任意の一実施形態または特定の特徴の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することであった。したがって、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態において様々な修正および変更を行うことができることを理解するであろう。このような修正および変更はすべて、本明細書に添付された特許請求の範囲内にあることが意図されている。