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特許7520394抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬、その調製方法および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/09 20060101AFI20240716BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61K31/09
A61K31/222
A61P1/04
A61P29/00
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022048441
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2020524059の分割
【原出願日】2018-07-28
(65)【公開番号】P2022089845
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】519244463
【氏名又は名称】スージョウ・ファルマヴァン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 世平
(72)【発明者】
【氏名】曹 宇
(72)【発明者】
【氏名】李 志
(72)【発明者】
【氏名】▲兪▼ 云会
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 奎
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲敏▼▲潔▼
(72)【発明者】
【氏名】袁 高▲綱▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 涛
(72)【発明者】
【氏名】▲魚▼ ▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】江 ▲伝▼▲亮▼
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特許第7332167(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第105198714(CN,A)
【文献】J Nat Prod,2012年,75,1798-1802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/09
A61K 31/222
A61P 1/04
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iまたは式IIを有する化合物又はその医薬的に許容される塩を活性成分として含有する、炎症性腸疾患治療のための医薬であって、
【化1】
【化2】
およびRは、いずれも独立して水素、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、アリル基、イソブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、またはアセチル基から選ばれるいずれか1種であり、
は水素またはスルホン酸基から選ばれ、且つ
式Iにおいて、R、RおよびRが同時に水素ではなく、R、RおよびRが同時にアセチル基ではなく、RおよびRが同時にベンジル基ではなく、式IIにおいて、RおよびRが同時に水素またはベンジル基ではない、医薬。
【請求項2】
式Iまたは式IIの化合物は、以下の化合物A~Jのいずれか1種から選ばれる、請求項1に記載の医薬:
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は医薬分野に属し、抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬、その調製方法および使用に関し、特に、ミリカノール(Myricanol)誘導体、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease、IBD)は、病因が未だ明らかでない1グループの慢性非特異的炎症性腸疾患であり、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis、UC)およびクローン病(Crohn’s Disease、CD)を含み、発症メカニズムは不明であるが、既に発見された関連病原性因子は、遺伝、感染、環境汚染、食事、腸マイクロ生態等を含む。炎症性腸疾患は、北米およびヨーロッパの一般的な疾患であり、潰瘍性大腸炎は、ヨーロッパと米国における羅患率が240/10万であり、発症率が10/10万~20/10万であり、クローン病は、羅患率が200/10万であり、発症率が5/10万~10/10万である。この30年間、日本のIBDの発症率も徐々に高まる傾向となっている。中国では、一般的な群衆の疫学的資料がないが、この十数年間、本疾患の診察人数の段階的な増加傾向が非常に明らかである。多くの病院の症例の統計をまとめて推定すると、潰瘍性大腸炎は羅患率が11.6/10万で、発症率が約3/10万であり、クローン病は羅患率が1.4/10万で、発症率が約0.4/10万であり、実際の症例がより多くなる可能性がある。
【0003】
アミノサリチル酸、糖質コルチコイド、免疫抑製剤、バイオ製剤等を基礎とする従来のIBDの治療プランは現在依然として主流であり、病因が複雑で、治療効果が良くないため、治療を受けた多くの患者は緩和できず、80%と高いクローン病患者および30%のUC患者は、最終的に手術を受ける必要があり、この分野では巨大の医学的ニーズは満足されていない。近年、糞便微生物移植(Fecal microbiota transplantation、FMT)の臨床試験および応用が進められているが、患者の受け入れ度が低く、更に探索する必要がある。そのため、腸部に入って著しい治療作用を発揮し、潰瘍面積を効果的に減少し、患者の症状を緩和することができるとともに、薬剤耐性を発生せず、安全で確実な炎症性腸疾患(IBD)治療薬の見出しは、依然として臨床的に早急に解決すべき問題となっている。
【0004】
ヤマモモ科(Myricae)ヤマモモ属(Myrica)植物は、中国での栽培面積が広く、歴史が長い。漢方薬の論述によると、ヤマモモ樹皮が苦く、性質が温かく、うっ血を取り除いて止血して鎮痛する効果を有し、民間では、打撲傷、骨折、下痢、胃および十二指腸潰瘍、歯痛等を治療するために用いられる。ミリカノール(Myricanol)は、ヤマモモ樹皮から抽出した典型的な大環状ビフェニル型の環状ジアリールヘプタン系化合物であり、構造は式IIIに示すように、独特した化学構造を有するため、近年、該系の化合物は注目されており、現在報道されたミリカノールの薬理的活性に関連する研究は、主にその抗ウイルス、抗腫瘍、抗酸化、ラジカルの消去、免疫調節および抗アレルギー等の面に関し、その潜在的な用途が広いことが分かった。
【0005】
CN102552243Aは、ミリカノールおよび/またはミリセチンの抗腫瘍医薬の調製における使用を開示し、前記抗腫瘍医薬は、肝癌を予防および/または治療するため医薬、肺癌を予防および/または治療するための医薬、白血病を予防および/または治療するための医薬、胃癌を予防および/または治療するための医薬、または他の腫瘍を予防および/または治療するための医薬を含み、この出願はミリカノールの抗腫瘍における使用だけを開示し、腫瘍を治療する医薬としての作用に限られている。
【0006】
CN105198714Aは、ミリカノール誘導体、その調製方法および抗腫瘍における使用を開示し、該ミリカノール誘導体の構造は以下のとおりである。
【化1】
【0007】
ただし、Rは置換ベンジル基である。該ミリカノール誘導体は、ミリカノールを原料とし、塩基性条件で、置換ベンジル基と常温で置換反応して得られ、該ミリカノール誘導体の抗腫瘍医薬の調製における使用は、ミリカノールの5位のヒドロキシ基に、F、Cl、Br、CN、NO、Me、またはOMeにより置換されたパラ位のベンジル系プロドラッグを導入することにより、インビボでゆっくりと加水分解し、親薬剤を放出して治療効果および作用時間を延長することができるとともに、バイオアベイラビリティを改善し、抗腫瘍活性も更に強化され、この方法で調製されたミリカノール誘導体も抗腫瘍方面の使用だけに限られている。
【0008】
US8940945B2は、Tauタンパク質を減少する方法、材料および神経変性疾患の治療方法を開示し、ミリカノール化合物を提供し、実施例において、ミリカノール誘導体はトウゴマ属植物から分離されて得られたものであり、神経変性疾患の治療に使用される。この出願で開示されるミリカノールおよび誘導体も、神経変性疾患における使用だけに限られている。
【0009】
現在、ミリカノールおよびその誘導体の、炎症性腸疾患に関連する方面における使用に関する研究報告はまだない。ミリカノールをより良好にこの特定の適応症に使用するために、一定の構造活性相関に基づいてミリカノールを修飾し、修飾されたミリカノール誘導体はその活性および/または創薬可能性を増加することを目的とし、炎症性腸疾患(IBD)の治療および予防の投薬要求を更に満たすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願の目的は、抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬、その調製方法および使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明目的を達成するために、本願は以下の技術案を採用する。
【0012】
第1の態様では、本願は、式Iまたは式IIで表される構造を有する、抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬を提供する。
【化2】
【化3】
(ただし、RおよびRは、いずれも独立して水素、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、アリル基、イソブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、アセチル基、スルホン酸基、リン酸基、安息香酸基、ベンズアミド基、ベンゾイルシクロプロピルアミノ基、ベンゼンスルホン酸基、ピリジンカルボキサミド基、ピコリノイルシクロプロピルアミノ基、ピリミジンカルボキサミド基、またはピリミジニルホルミルシクロプロピルアミノ基から選ばれるいずれか1種であり、
は水素、アセチル基、スルホン酸基、またはリン酸基から選ばれるいずれか1種であり、
式Iにおいて、R、RおよびRが同時に水素ではなく、R、RおよびRが同時にアセチル基ではなく、RおよびRが同時にベンジル基ではないことと、式IIにおいて、RおよびRが同時に水素またはベンジル基ではないこととを満たす。)
【0013】
本願に係る抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬は、IBDに関連するCOX2のタンパク質発現を抑制することができ、炎症因子PGEを強く抑制する能力を有し、炎症性腸疾患の潰瘍面積を効果的に減少して症状を緩和することができるとともに、明らかな毒性の副反応がなく、安全性が高くて確実である。
【0014】
従来方法に開示されたミリカノールおよびその誘導体の抗腫瘍方面における使用と比べ、本願に係る抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬は、全く新しい用途を開発し、ミリカノール誘導体の適用範囲を大きく拡張する。
【0015】
上記COX2は誘導型酵素であり、複数種のサイトカインおよび炎症伝達物質により誘導され得て、炎症と密接に関連し、現在、正常な生理状態でCOX2はほとんど発現せず、いくつかの病理状態(例えば、胃潰瘍、炎症性腸疾患、結腸癌等)でCOX2の発現量が明らかに上昇し、PGEはCOX2下流の1つの重要な炎症指標因子であることが既に報告されている。
【0016】
好ましくは、以下のような化合物A~J構造のうちのいずれか1種を有する。
【化4】
【0017】
好ましくは、前記抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の構造は、
【化5】
【化6】
または
【化7】
のうちのいずれか1種である。
【0018】
本願において、上記3種の構造のミリカノールの誘導体が好ましく、より高いCOX2のタンパク質発現抑制率を有し、より高い炎症因子PGEの抑制率を有し、抑制率が100%に達することができ、他のミリカノール誘導体と比べてその抗炎症効果がより優れている。
【0019】
第2の態様では、本願は、式Iで表される構造を有する、抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の調製方法であって、
以下の反応式のように、式IIIで表される化合物ミリカノールが、塩基性試薬の存在下で求核試薬と置換反応を経て式Iで表される化合物を得ることを含む調製方法を提供する。
【化8】
(ただし、RおよびRは、いずれも独立して水素、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、アリル基、イソブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、アセチル基、スルホン酸基、リン酸基、安息香酸基、ベンズアミド基、ベンゾイルシクロプロピルアミノ基、ベンゼンスルホン酸基、ピリジンカルボキサミド基、ピコリノイルシクロプロピルアミノ基、ピリミジンカルボキサミド基、またはピリミジニルホルミルシクロプロピルアミノ基から選ばれるいずれか1種であり、
は水素、アセチル基、スルホン酸基、またはリン酸基から選ばれるいずれか1種であり、
、RおよびRが同時に水素ではなく、R、RおよびRが同時にアセチル基ではなく、RおよびRが同時にベンジル基ではないことを満たす。)
【0020】
本願において、求核試薬は、R、RおよびRと同じ基を有するハロゲン化物または酸無水物等であり、反応後に式Iの構造を得ることができ、当業者は式Iの構造に基づいて求核試薬を選択することができる。
【0021】
好ましくは、前記塩基性試薬は、ピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、またはカリウム-t-ブトキシドのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、ピリジンまたはトリエチルアミンであることが好ましい。
【0022】
本願において、塩基性試薬は上記挙げられた試薬に限定されず、塩基性環境を提供できて反応の順方向進行に寄与する塩基性試薬であれば良い。
【0023】
好ましくは、前記式IIIで表される化合物ミリカノールと求核試薬とのモル比は1:(1~6)であり、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、または1:6であってもよい。
【0024】
本願において、式IIIで表される化合物ミリカノールと求核試薬とのモル比は置換反応の過程を決める。異なる求核試薬は立体障害や電子的効果が異なるため、R、R、Rの置換反応に優先順位が存在し、一般的には、優先順位がR>R>Rであるが、置換基に対応する置換試薬がハロゲン化アシル(acyl halide)である場合、優先順位がR>R>Rである。本願は、反応中にミリカノールと求核試薬との投入比を制御することにより、一置換または多置換の反応生成物を得ることができる。
【0025】
例示的には、反応順序がR>R>Rである場合、ミリカノールは無水酢酸と反応し、反応のモル比を約1:2に制御して投入すると、このとき、RとR位置だけの置換が発生し、この場合、
【化9】
を得ることができる。ミリカノールは臭化アリルと反応する場合、反応のモル比を1:1に制御して投入すると、R位置だけの置換が発生し、得られた化合物は
【化10】
である。反応順序がR>R>Rである場合、ミリカノールはクロロスルホン酸と反応し、両者の反応のモル比を約1:1に制御して投入すると、R位置だけの置換が発生し、得られた化合物は、
【化11】
である。
【0026】
好ましくは、前記置換反応の溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ピリジン、またはトリエチルアミンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0027】
好ましくは、前記置換反応の温度は0~80℃であり、例えば、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、または80℃等であってもよい。
【0028】
好ましくは、前記置換反応の時間は1~30hであり、例えば、1h、5h、10h、15h、20h、25h、または30h等であってもよい。
【0029】
また、本願は、式Iで表される構造を有する、抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の調製方法であって、
以下の反応式のように、式IVで表される化合物が、酸化剤の存在下で酸化反応により式IIで表される化合物を得ることを含む調製方法を更に提供する。
【化12】
(ただし、RおよびRは、いずれも独立して水素、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、アリル基、イソブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、アセチル基、スルホン酸基、リン酸基、安息香酸基、ベンズアミド基、ベンゾイルシクロプロピルアミノ基、ベンゼンスルホン酸基、ピリジンカルボキサミド基、ピコリノイルシクロプロピルアミノ基、ピリミジンカルボキサミド基、またはピリミジニルホルミルシクロプロピルアミノ基から選ばれるいずれか1種であり、
およびRが同時に水素またはベンジル基ではないことを満たす。)
【0030】
好ましくは、前記式IVで表される化合物と酸化剤とのモル比は1:(0.5~5)であり、例えば、1:0.5、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、または1:5等であってもよい。
【0031】
好ましくは、前記酸化剤は、クロロクロム酸ピリジニウム塩、三酸化クロム、オゾン、過酸化水素水、または三酸化硫黄のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0032】
好ましくは、前記酸化反応の溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ヘプタン、またはジメチルスルホキシドのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0033】
好ましくは、前記酸化反応の温度は0~50℃であり、例えば、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、または50℃であってもよい。
【0034】
好ましくは、前記酸化反応の時間は1~10hであり、例えば、1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、または10hであってもよい。
【0035】
第3の態様では、本願は、第1の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の医薬的に許容される塩を提供する。
【0036】
好ましくは、前記医薬的に許容される塩は、式Iで表される化合物の金属塩または式IIで表される化合物の金属塩である。
【0037】
好ましくは、前記金属塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、またはカルシウム塩のうちのいずれか1種を含み、ナトリウム塩またはカリウム塩であることが好ましい。
【0038】
第4の態様では、本願は、第1の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の溶媒和物を提供する。
【0039】
好ましくは、前記溶媒和物は、式Iで表される化合物の水和物、式Iで表される化合物のアルコール和物、式IIで表される化合物の水和物、または式IIで表される化合物のアルコール和物である。
【0040】
第5の態様では、本願は、第1の態様の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の互変異性体もしくは立体化学異性体を提供する。
【0041】
本願において、互変異性体とは、化学構造における二重結合のシス-トランス異性を指し、立体化学異性体とは、R基における各キラル中心の異性を指す。
【0042】
第6の態様では、本願は、第1の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬のプロドラッグを提供する。
【0043】
本願において、抗炎症性腸疾患の作用を有するプロドラッグは、インビトロで活性がないかまたは活性が小さく、インビボ代謝変化を経た後に活性を有するミリカノール誘導体を放出することにより、その作用を発揮する。
【0044】
第7の態様では、本願は、第1の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬を含む医薬組成物を提供する。
【0045】
好ましくは、前記医薬組成物は補助材料を更に含む。
【0046】
好ましくは、前記補助材料は、賦形剤、希釈剤、担体、調味剤、粘着剤、または充填剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0047】
好ましくは、前記抗炎症医薬組成物の剤形は、経口投与製剤、外用製剤、または非経口投与製剤のうちのいずれか1種を含む。
【0048】
例えば、本願において、前記医薬組成物は、固体、半固体、液体、または気体製剤として調製することができ、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、粒剤、ペースト剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル化剤、微小球およびエアロゾル等である。本願における化合物、またはその医薬的に許容される塩、またはその医薬組成物を投与する典型的な経路は、経口、直腸、局所、吸入、非経口、舌下、膣内、鼻内、眼内、腹膜内、筋肉内、皮下、静脈内投与を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0049】
第8の態様では、本願は、第1の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬、第3の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の医薬的に許容される塩、第4の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の溶媒和物、第5の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬の互変異性体もしくは立体化学異性体、第6の態様に記載の抗炎症性腸疾患の作用を有するプロドラッグ、あるいは第7の態様に記載の医薬組成物の、炎症性腸疾患を治療する医薬の調製における使用を提供する。
【発明の効果】
【0050】
従来技術と比べ、本願は以下の有益な効果を有する。
【0051】
本願に係る抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬、その医薬的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、互変異性体もしくは立体化学異性体、または医薬組成物は、炎症性腸疾患に良好な作用を果たすことができ、いずれも炎症性腸疾患の予防治療薬剤として開発することができる。本願に係る抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬は、良好な創薬可能性を有し、炎症性腸疾患の潰瘍面積を効果的に減少して症状を緩和することができるとともに、安全で確実であり、炎症性腸疾患のような症状を緩和し改善する必要がある疾患に対して更に臨床的意義を有し、広い応用の見通しを有している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本願の実施例1の化合物Aの核磁気共鳴スペクトルである。
図2】本願の実施例7の化合物Gの核磁気共鳴スペクトルである。
図3】本願の実施例8の化合物Hの核磁気共鳴スペクトルである。
図4図4Aは本願の実施例10における化合物AのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図であり、図4Bは本願の実施例10における化合物BのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図であり、図4Cは本願の実施例10における化合物CのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図であり、図4Dは本願の実施例10における化合物DのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図であり、図4Eは本願の実施例10における化合物EのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図であり、図4Fは本願の実施例10における化合物FのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図であり、図4Gは本願の実施例10における化合物GのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図であり、図4Hは本願の実施例10における化合物HのマウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響の図である。
図5】本願の実施例10における化合物A~Hの、マウスマクロファージRAW264.7が分泌したIL-6のタンパク質レベルに対する影響の図(n=3)である。
図6】本願の実施例10における化合物A~Hの、マウスマクロファージRAW264.7が分泌したTNF-αのタンパク質レベルの活性に対する影響の図(n=3)である。
図7】本願の実施例10における化合物A、B、GおよびHの、マウスマクロファージRAW264.7が分泌したPGEのタンパク質レベルに対する影響の図(n=3)である。
図8】本願の実施例10における化合物A、B、GおよびHの、マウスマクロファージRAW264.7が発現したCOX2タンパク質に対する影響の図である。
図9】本願の実施例10における化合物Hの、マウスマクロファージRAW264.7が発現したPGEのタンパク質レベルに対する活性比較図(n=3)である。
図10】本願の実施例11における化合物Hの、5%のDSSにより誘導された急性IBDモデルの体重変化率に対する影響の図(n=10)である(ブランクグループ vs 5%のDSS ***p<0.001、5%のDSS vs 5%のDSS+5mg/kg ##p<0.01)。
図11】本願の実施例11における化合物Hの、5%のDSSにより誘導された急性IBDモデルの血清内のIL-6のタンパク質レベルに対する影響の図(n=10)である。
図12】本願の実施例11における化合物Hの、5%のDSSにより誘導された急性IBDモデルのDAI採点に対する影響の図(n=10)である。
図13】本願の実施例11における化合物Hの、5%のDSSにより誘導された急性IBDモデルの結腸直腸の病理に対する影響の図である。
図14】本願の実施例11における化合物Hの、5%のDSSにより誘導された急性IBDモデルの結腸直腸のMPOに対する影響の図である。
図15】本願の実施例12における化合物Hで治療するラットの結腸直腸の湿重量変化の模式図である。
図16】本願の実施例12における化合物Hで治療するラットの結腸直腸の潰瘍面積の模式図である。
図17】本願の実施例12における化合物Hで治療するラットの結腸直腸の病理HEの炎症採点の模式図である(p<0.05 vs ブランク #p<0.05 vs 2.5%のTNBS+溶媒)。
図18】本願の実施例12における化合物Hで治療するラットの結腸直腸の病理HEの概ねの損傷の採点の模式図である(*p<0.05 vs ブランク ##p<0.01 vs 2.5%のTNBS+溶媒)。
図19】本願の実施例12における化合物Hで治療するラットの結腸直腸の病理HEの潰瘍損傷の採点の模式図である(*p<0.05 vs ブランク #p<0.05 vs 2.5%のTNBS+溶媒)。
図20】本願の実施例12における化合物Hで治療するラットの結腸直腸の解剖損傷の模式図である。
図21】本願の実施例12における化合物Hで治療するラットの結腸直腸のHEの病理模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、具体的な実施形態を参照しながら本願の技術案について更に説明する。当業者であれば、前記実施例は本願を理解するためのものに過ぎず、本願を具体的に限定するものではないことを理解すべきである。
【0054】
実施例1
本実施例は以下の方法により、5,17-ジアセトキシミリカノールを調製した。
【0055】
窒素保護の下で、ミリカノール(0.49g、1.37mmol)、ジクロロメタン(30ml)およびピリジン(0.32g、4.10mmol)を順に100mlのナスフラスコに入れ、無水酢酸(0.31g、2.20mmol)を別に取り、ジクロロメタン(20ml)で希釈し、定圧滴下漏斗に置き、ナスフラスコにゆっくりと滴下して反応を行い、約30minかけて滴下を終了した。系を60℃の油浴に移して3h還流反応させ、反応液をLC-MSにより検出した。反応液を、調製用液体クロマトグラフィー分離(移動相:石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)で勾配溶出し、レシーバー液を合わせ、溶媒をスピンドライして5,17-ジアセトキシミリカノール(白色固体A、0.35g、LC-MS:m/z=443.1(M+1)、純度99.36%)を取得し、収率が58%であった。その核磁気共鳴スペクトルは図1に示すとおりである。
【0056】
実施例
本実施例は以下の方法により、5-n-プロポキシミリカノールを調製した。
【0057】
窒素保護の下で、ミリセチン(0.36g、1.01mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(10ml)、1-クロロプロパン(0.17g、2.21mmol)および炭酸カリウム(0.42g、3.01mmol)を順に100mlのナスフラスコに入れた。系を100℃の油浴内で3h反応させ、反応液をLC-MSにより検出した。反応液を調製用液体クロマトグラフィー分離(移動相:石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)で勾配溶出し、レシーバー液を合わせ、溶媒をスピンドライして5-n-プロポキシミリカノール(白色固体B、0.28g、LC-MS:m/z=395.6(M-H)、99.38%)を取得し、収率が70%であった。
【0058】
実施例3
本実施例は以下の方法により、5-ベンジルオキシミリカノールを調製した。
【0059】
窒素保護の下で、ミリカノール(0.36g、1.00mmol)、アセトニトリル(10ml)、ブロモベンジル(0.38g、2.21mmol)および炭酸カリウム(0.42g、3.01mmol)を順に100mlのナスフラスコに入れた。系を80℃の油浴内で6h反応させ、反応液をLC-MSにより検出した。反応液を調製用液体クロマトグラフィー分離(移動相:石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)で勾配溶出し、レシーバー液を合わせ、溶媒をスピンドライして5-ベンジルオキシミリカノール(白色固体C、0.20g、LC-MS:m/z=447.6(M-H)、98.09%)を取得し、収率が62%であった。
【0060】
実施例4
本実施例は以下の方法により、5,17-ジアリルオキシミリカノールを調製した。
【0061】
窒素保護の下で、ミリカノール(0.36g、1.00mmol)、アセトニトリル(10ml)、臭化アリル(0.27g、2.21mmol)および炭酸カリウム(0.42g、3.01mmol)を順に100mlのナスフラスコに入れた。系を80℃の油浴内で6h反応させ、反応液をLC-MSにより検出した。反応液を調製用液体クロマトグラフィー分離(移動相:石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)で勾配溶出し、レシーバー液を合わせ、溶媒をスピンドライして5,17-ジアリルオキシミリカノール(白色固体D、0.35g、LC-MS:m/z=439.6(M-H)、99.70%)を取得し、収率が79%であった。
【0062】
実施例5
本実施例は以下の方法により、5-アリルオキシミリカノールを調製した。
【0063】
窒素保護の下で、ミリカノール(0.36g、1.00mmol)、アセトニトリル(10ml)、臭化アリル(0.13g、1.10mmol)および炭酸カリウム(0.42g、3.01mmol)を順に100mlのナスフラスコに入れた。系を60℃の油浴内で6h反応させ、反応液をLC-MSにより検出した。反応液を調製用液体クロマトグラフィー分離(移動相:石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)で勾配溶出し、レシーバー液を合わせ、溶媒をスピンドライして5-アリルオキシミリカノール(白色固体E、0.22g、LC-MS:m/z=399.2(M+H)、96.64%)を取得し、収率が55%であった。
【0064】
実施例6
本実施例は以下の方法により、5,17-アリルオキシミリセチンを調製した。
【0065】
5,17-ジアリルオキシミリカノール(1.20g、2.74mmol)を秤量してジクロロメタン(50ml)に溶解し、クロロクロム酸ピリジニウム(2.95g、13.69mmol)を加え、アルゴンガス保護の下で1h反応させた。TLC(PE:EA=3:1)は原料が消失したことを示すと、反応を停止し、濃縮してライトブラウン固体を得た。高速調製用クロマトグラフィーを用いてカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)を行って勾配溶出し、5,17-アリルオキシミリセチン(白色固体F、0.71g、LC-MS:m/z=436.6(M+H)、94.53%)を取得し、収率が59%であった。
【0066】
実施例7
本実施例は以下の方法により、5-アセトキシミリカノールを調製した。
【0067】
窒素保護の下で、ミリカノール(0.49g、1.37mmol)、ジクロロメタン(30ml)およびピリジン(0.32g、4.10mmol)を順に100mlのナスフラスコに入れ、無水酢酸(0.16g、1.10mmol)を別に取り、ジクロロメタン(20ml)で希釈し、定圧滴下漏斗に置き、ナスフラスコにゆっくりと滴下して反応を行い、約30minかけて滴下を終了した。系を60℃の油浴に移して3h還流反応させ、反応液をLC-MSにより検出した。反応液を調製用液体クロマトグラフィー分離(移動相:石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)で勾配溶出し、レシーバー液を合わせ、溶媒をスピンドライして5-アセトキシミリカノール(白色固体G、0.32g、LC-MS:m/z=400.7(M+H)、94.67%)を取得し、収率が80%であった。その核磁気共鳴スペクトルは図2に示すとおりである。
【0068】
実施例8
本実施例は以下の方法により、11-スルホニルオキシミリカノールを調製した。
【0069】
ミリカノール(0.36g、1.00mmol)を秤量してジクロロメタン(20ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.24g、3.01mmol)を加えた。氷浴で、クロロスルホン酸(0.18g、1.51mmol)およびジクロロメタン(10ml)溶液を滴下し、15min滴下し、16h以上反応させた。TLC(PE:EA=3:1)は原料が消失したことを示した。シリカゲル(100~200メッシュ、3g)を加えて撹拌し、高速調製用クロマトグラフィーを用いてカラムクロマトグラフィー(移動相:ジクロロメタン-MeOH:0-15%)を行って勾配溶出し、溶媒をスピンドライして11-スルホニルオキシミリカノール(白色固体H、0.38g、LC-MS:m/z=436.7(M-H)、97.82%)を取得し、収率が86%であった。その核磁気共鳴スペクトルは図3に示すとおりである。
【0070】
実施例9
本実施例は以下の方法により、5,17-ジアセトキシミリセチンを調製した。
【0071】
5,17-ジアセトキシミリカノール(0.36g、1.00mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、クロロクロム酸ピリジニウム(1.29g、6.00mmol)を加え、アルゴンガス保護の下で1h反応させた。TLC(PE:EA=5:1)は原料が消失したことを示すと、反応を停止し、濃縮してライトブラウン固体を得た。高速調製用クロマトグラフィーを用いてカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-酢酸エチル:0~35%)を行って勾配溶出し、5,17-ジアセトキシミリセチン(白色固体J、0.32g、LC-MS:m/z=463.2(M+23)、94.53%)を取得し、収率が94%であった。
【0072】
実施例10
本実施例において、実施例1~8で調製した化合物A~Hに対してインビトロ抗炎症活性テストを行った。
【0073】
ミリカノール誘導体の、細菌性リポ多糖(以下、LPSと略称する)の刺激により誘導されたマウスのマクロファージ細胞株RAW264.7が分泌したIL-6、TNF-α、PGE等の炎症因子の発現に対する影響:予め調製された細胞懸濁液を取り、15000個の細胞/ウェル、100μl/ウェルで96ウェルプレートに接種し、37℃で5%のCOインキュベーターに置いて一晩培養し、細胞を80%集め、元の培養液を捨て、ウェルごとに配合された異なる濃度の被験薬液を100μL加え、薬を加えて1h培養した後、LPS溶液を加え、培養系におけるLPSの最終濃度が100ng/mLであった。濃度ごとに平行な3ウェルを設け、それと同時に細胞対照グループ(薬剤無し、溶媒無し)、およびブランク培地対照グループ(細胞無し、溶媒対照孔(Zero adjustment hole))を設け、24h培養し続けた。細胞培養上清を吸い取り、R&D ELISA検出キット(M6000B、MTA00B、VAL601)を用い、各グループのIL-6、TNF-α、PGE等の炎症因子の発現を検出した。
【0074】
図4は、各ミリカノール誘導体(すなわち、化合物A~H)の、マウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対する影響を示す。図4の結果から見られるように、一部の化合物A(40μM)、B(30μM)、C(30μM)、D(30μM)、E(30μM)、F(80μM)、G(40μM)、H(80μM)は、マウスマクロファージRAW264.7の増殖活性に対して明らかな影響(n=3)がなく、後続の抗炎症活性はいずれも該薬剤濃度またはそれ以下の濃度で行った。
【0075】
細胞実験において、nは実験回数であり、毎回3つのウェル(繰り返し数)があり、動物実験において、nは各グループの動物の数(サンプル量)である。
【0076】
図5図6および図7は、ミリカノール誘導体の、マウスマクロファージRAW 264.7の抗炎症活性に対する影響(n=3)を示す。
【0077】
図5の結果から見られるように、全てのミリカノール誘導体は、LPSにより誘導されたマウスマクロファージRAW264.7細胞が分泌したIL-6に対して抑制作用を有することを示し、A、B、G、Hのような一部の化合物は、LPSの刺激によるRAW264.7細胞のIL-6分泌を強く抑制する作用を有し、炎症性腸疾患患者の血清または腸管局所的炎症に対して抑制作用を有する可能性があることを意味する。
【0078】
図6の結果から見られるように、一部のミリカノール誘導体は、LPSにより誘導されたマウスマクロファージRAW264.7細胞が分泌したTNF-αに対して著しい抑制作用を有することを示し、炎症性腸疾患患者の血清または腸管局所的炎症に対して抑制作用を有する可能性があることを意味する。
【0079】
図7の結果から見られるように、一部のミリカノール誘導体(A、B、G、H)は、LPSにより誘導されたマウスマクロファージRAW264.7細胞が分泌したPGEに対して著しい抑制作用を有し、炎症性腸疾患患者の血清または腸管局所的炎症に対して抑制作用を有する可能性があることを意味する。
【0080】
図8の結果から見られるように、ミリカノールおよびその一部の誘導体(A、B、G、H)は、IBDに関連するCOX2のタンパク質発現を抑制することができ、誘導体GおよびHの抑制効果はミリカノールよりも優れた。
【0081】
図9の結果から見られるように、ミリカノールとその誘導体A、B、GおよびHは、炎症因子PGEを強く抑制する能力を有し、図中から見られるように、誘導体HのPGEを抑制する活性は、良好な用量依存性があり、且つ20μMの用量で誘導体Hの抑制効果はミリカノールよりも優れた。
【0082】
ミリカノールおよび化合物Hの、LPSにより誘導されたマウスマクロファージRAW264.7が分泌したPGEに対する抑制作用は、以下の表1に示すとおりである。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例11
本実施例において、ミリカノール誘導体化合物Hの、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)により誘導されたIBDマウスインビボモデルに対するインビボにおける薬力学的活性をテストした。
【0085】
雌性で6~8週齢のSPF級C57BL/6マウスを3~7日適応性飼育させた後、5%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水溶液を自由摂水の方式でマウスに給餌し(day0)、2日ごとに新鮮なDSS水溶液を1回交換し、DSS水溶液を7日(day7)間自由摂水した後、新鮮な精製水に交換して給餌した。モデル構築してから4日間後に、モデル構築の5日目から投与し始め、尾静脈投与でそれぞれ動物に5mg/kg、2.5mg/kg、1.25mg/kgの薬剤を投与して治療した。4日間連続的に投与した後、1日観察し、最後一回投与してから24時間後に実験を終了した。
【0086】
検出指標:各グループの動物の体重を観察して毎日記録するとともに、各動物の糞便を収集し、便潜血の状況を検出し、明らかな血便を判断できないと、潜血検出キットで潜血状況を確認し、実験記録紙に記録し、且つ撮像して記録した。実験が終了すると、動物血清を収集し、血液内のIL-6の発現を検出した。それと同時に、各動物の糞便性状、潜血状況、体重変化率に対して採点し、得られた点数を加算して該動物のDAI点数を得た。動物の結腸直腸組織のサンプルを収集し、後続の病理学および組織内のMPO等の検出を行った。
【0087】
図10の結果から見られるように、ミリカノール誘導体Hは、5%のDSSにより誘導されたマウス急性IBDモデルの体重減少傾向に対して緩和の作用を有することを示した。炎症性腸疾患患者の体重軽減を改善する作用を有することを意味する。
【0088】
図11の結果から見られるように、ミリカノール誘導体Hは著しい抗炎症作用を示し、炎症性腸疾患患者の炎症反応を改善する作用を有することを意味する。
【0089】
図12の結果から見られるように、ミリカノール誘導体Hは著しいマウスDAI採点低減作用を示し、炎症性腸疾患患者の疾患状態全体を改善し、病症を改善する作用を有することを意味する。
【0090】
図13の結果から見られるように、ミリカノール誘導体Hは、5%のDSSのC57BL/6マウス腸管粘膜に対する損傷を修復する著しい作用を示し、炎症性腸疾患患者の腸管損傷を改善する作用を有することを意味する。
【0091】
図14の結果から見られるように、ミリカノール誘導体Hは、5%のDSSによるマウスの結腸直腸部位の酸化的損傷を改善する一定の作用を有する。
【0092】
実施例12
本実施例において、化合物Hの、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)により誘導されたIBDラットインビボモデルに対するインビボにおける薬力学的活性をテストした。
【0093】
試験方法:雌性で180~200gのSPF級SDラットを5~7日間適応性飼育させた後、モデル構築を開始し、モデル構築するとき、まずラットを麻酔し、予めマークされた猫用尿道カテーテルを肛門から貫通して結腸の8センチメートルまで入れ、その後、250μLの2.5%(wt/vol)のTNBS溶液をゆっくりと結腸の内腔に注入してラットを1分間反転させ、1分間後に、カテーテルを腸管から徐々に取り出し、頭を下向きにしてラットを1分間放置し、その後、ラットをケージ内に戻し、ブランクグループのラットに同じ容量の生理食塩水を投与した。モデル構築の2日目、すなわち、D1に、胃内投与の方式で投与し、6日間連続的に投与した。
【0094】
検出指標:各グループ動物体重を観察して毎日記録し、実験が開始すると各動物糞便を収集し、便潜血状況を検出し、明らかな血便を判断できないと、潜血検出キットで潜血状況を確認し、実験記録紙に記録し、且つ撮像して記録した。実験が終了すると、各動物の糞便性状、潜血状況、体重変化率に対して採点し、得られた点数を加算して最終的な各動物のDAI点数を得た。動物結腸直腸組織のサンプルを収集し、湿重量を秤量し、後続の病理学的検出を行った。
【0095】
実験結果により、2.5%のTNBSでラットを処理した後、ラットの腸湿重量は、ブランクグループと治療グループの両方よりも増加したが、いずれも統計学的差異がなく、一方、H-12.5mg/kg投与グループは、ラットの浮腫を軽減する傾向がある(図15に示す)ことが示されている。
【0096】
実験結果:12.5mg/kg-Hの経口投与は、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルの結腸直腸の潰瘍面積を著しく縮小する作用を有し(図16に示す)、該指標では、治療効果が5-アミノサリチル酸(5-ASA)よりもやや良好であった。
【0097】
実験結果:12.5mg/kg-Hの経口投与は、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルの結腸直腸の炎症レベルを著しく低減する傾向があり、該指標では、治療効果が5-アミノサリチル酸(5-ASA)に相当した(図17に示す)。
【0098】
実験結果:12.5mg/kg-Hの経口投与は、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルの結腸直腸の概ねの損傷レベルを著しく低減する作用を有し、該指標では、治療効果が5-アミノサリチル酸(5-ASA)に相当した(図18に示す)。
【0099】
実験結果:12.5mg/kg-Hの経口投与は、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルの結腸直腸の潰瘍損傷採点を著しく低減する作用を有し、該指標では、治療効果が5-アミノサリチル酸(5-ASA)よりもやや良好であった(図19に示す)。
【0100】
実験結果:12.5mg/kg-H、25mg/kg-Hの経口投与は、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルの結腸直腸の潰瘍損傷を低減する作用を有した(図20および図21に示す)。
【0101】
病理的観察結果により、12.5mg/kg-Hの経口投与は、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルのラットの結腸直腸の炎症採点を著しく緩和する作用を有し(図17に示す)、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルのラットの結腸直腸の全体損傷程度を著しく縮小する治療効果を有し(図18に示す)、2.5%のTNBSにより誘導されたIBDモデルのラットの損傷の重篤度を著しく緩和する治療効果を有する(図19図20および図21に示す)ことが示されている。
【0102】
以上の実験結果をまとめ、ミリカノール誘導体である化合物Hは良好な抗炎症性腸疾患の作用を有することを意味する。
【0103】
実施例13
本実施例において、化合物A、B、Gおよび化合物Hの急性毒性をテストし、具体的なステップは以下のとおりである。
【0104】
実験方法:30匹のSDラットを採用し、雌雄半分ずつ、グループ分けする時、体重平均数は雌160~200gで、雄180~220gであり、個体体重は平均体重±20%範囲内にあるべきであった。試験前に、動物をまず少なくとも5日間馴化させる必要があり、健康(雌である場合妊娠していない)のラットを被験動物として選択した。馴化期間の主な検査内容は、注文時に要求する品質指標と一致するか否か、一般的な状態検査、体重が試験に要求される体重範囲に達するか否かを検査することであった。不合格の異常動物を本試験に取り込まない。ラットに経口単回投与し、低、中、高用量で投与し、ブランク製剤予備実験により、用量調整はそれぞれ100mg/kg、300mg/kg、1000mg/kgであり、対照グループを別に設け、等体積の溶媒を経口投与した。
【0105】
観察方法:(1)一般的な状態の観察:ラットの外観徴候、投与部位(出血の有無、発赤腫脹、うっ血、硬変、化膿、潰瘍)、毛、一般的な挙動活動、精神状態、腺体分泌、皮膚と粘膜の色、呼吸状態、糞便性状、生殖器、死亡等の状況、および他の毒性症状を観察し、毎回投与してから約0~2時間、4~6時間に、1回ずつ観察し、毒性症状があれば観察回数を増加してもよい。(2)概ねの解剖学的観察:試験の14日目に、各グループのすべての生きているラットを解剖して観察し、投与部位および概ねの解剖により、テスト製品に関連する可能性のある異常臓器組織を観察して見出し、撮像して記録した。(3)瀕死動物の取り扱い:ラット状態および観察時間を記録し、体重を測定した。(4)死亡動物の取り扱い:ラットの死亡時間または死亡発見時間を記録し、体重を測定した後、速やかに解剖して概ね観察し、その死因を推定した。化合物A、B、CおよびHの急性毒性用量および結果は以下の表2に示すとおりである。
【0106】
【表2】
【0107】
実験結果:SDラットに上記化合物を単回胃内投与した後、明らかな毒副作用が現れず、明らかな体重減少および食事量減少の傾向が見られなかった。ミリカノール誘導体の単回急性毒性耐量MTD>1000mg/kgであることを意味し、ここで、HのMTD>1500mg/kgであった。
【0108】
本願の上記実施例をまとめると、本願の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬は、合成原料が天然物に由来し、グリーンで環境に優しく、合成プロセス過程が簡単で、制御しやすく、薬効実験から見ると、該系化合物は、炎症性腸炎(IBD)疾患の治療薬として広く使用でき、且つ、明らかな副作用が見られず、広い応用の見通しを有していることが分かった。
【0109】
本願は上記実施例により本願の抗炎症性腸疾患の作用を有する医薬、その調製方法および使用を説明したが、本願は上記プロセスステップに限定するものではなく、すなわち、本願が上記プロセスステップに依存しなければ実施できないことを意味するものではないことを、出願人より声明する。当業者であれば、本願に対するいかなる改良、本願に使用される原料に対する等価的な置換および補助成分の追加、具体的な形態の選択等は、全て本願の保護範囲および開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図4(C)】
図4(D)】
図4(E)】
図4(F)】
図4(G)】
図4(H)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21