(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】加熱調理器、加熱調理器の制御方法
(51)【国際特許分類】
F24C 7/04 20210101AFI20240716BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
F24C7/04 301A
A47J37/06 321
(21)【出願番号】P 2023062005
(22)【出願日】2023-04-06
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000130307
【氏名又は名称】株式会社コメットカトウ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々部 正幸
(72)【発明者】
【氏名】黒田 達夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 恭史
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-51712(JP,A)
【文献】特開2015-226617(JP,A)
【文献】特開2013-215420(JP,A)
【文献】特開2013-251162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-15/36
H05B 1/00-11/00
A47J 37/06,27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理プログラムに従って食材を調理する加熱調理器であって、
前記食材を加熱するプレートと、
前記プレートの温度を検出する温度検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記食材の調理開始前に予め前記温度検出部が検出した前記プレートの温度の推移に基づいて、調理開始時の前記プレートの温度状態を推定し、
前記制御部は、推定した前記温度状態に基づいて、前記食材の調理中に、前記調理プログラムを変更する、加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器であって、
前記温度検出部は、前記プレートの異なる位置に設けられた2以上の温度センサを有し、
前記制御部は、2以上の前記温度センサが検出した、前記プレートの異なる位置の温度の推移に基づいて、調理中の前記食材の数量を推定し、
前記制御部は、推定した前記食材の数量に基づいて、前記食材の調理中に、前記調理プログラムを変更する、加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器であって、
前記制御部は、前記食材の調理開始後の所定期間において、前記温度検出部が検出した(1)~(3)のうちの少なくとも1つに基づいて、前記食材の数量を推定する、加熱調理器。
(1)複数の前記温度センサが検出した温度の、平均値の変化量
(2)前記プレート上に前記食材がない場合の前記変化量と、前記プレート上で前記食材の加熱調理をしている場合の前記変化量と、の差分
(3)複数の前記温度センサのうち、所定の閾値以上検出温度が低下した前記温度センサの数
【請求項4】
請求項3に記載の加熱調理器であって、
前記制御部は、前記(1)~前記(3)のそれぞれに基づいて推定した前記食材の数量が一致しない場合は、最も多い数量を推定した推定結果に基づいて、前記調理プログラムを変更する、加熱調理器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の加熱調理器であって、
前記調理プログラムは、変更可能なパラメータとして、前記食材の調理時間と、前記プレートの温度のうちの、少なくとも一方を含む、加熱調理器。
【請求項6】
調理プログラムに従って、プレート上の食材を加熱して調理する加熱調理器の制御方法であって、
前記食材の調理開始前に温度検出部が検出した前記プレートの温度の推移に基づいて、調理開始時の前記プレートの温度状態を推定する、温度状態推定処理と、
推定した前記温度状態に基づいて前記調理プログラムを変更する、調理プログラム変更処理と、を含む、加熱調理器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器、および加熱調理器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータにより加熱される鉄板(プレート)で食材を加熱調理するグリドル(加熱調理器)が特許文献1に開示されている。特許文献1のグリドルは、料理の種類ごとに、プレートの温度や調理時間等をパラメータとした調理パターン情報(調理プログラム)が設定され、調理パターン情報に従い食材が調理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような加熱調理器において、プレートの温度は目標とする温度付近で変化する場合があり、調理開始時点のプレートの温度状態は調理の機会ごとに異なる。そのため、調理の度にプレートから食材に伝わる熱量が変動し、出来上がりの品質にばらつきが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、プレートから食材に伝わる熱量の変動を抑制して、安定した品質の調理が可能な加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
調理プログラムに従って食材を調理する加熱調理器は、前記食材を加熱するプレートと、前記プレートの温度を検出する温度検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記食材の調理開始前に前記温度検出部が検出した前記プレートの温度の推移に基づいて、調理開始時の前記プレートの温度状態を推定し、推定した前記温度状態に基づいて、前記食材の調理中に、前記調理プログラムを変更する。
【0007】
このような構成の加熱調理器は、まず初期設定の調理プログラムで調理開始する。調理中に、調理開始時のプレートの温度状態を推定し、推定したプレートの温度状態に基づいて、調理プログラムを変更する。加熱調理器は、変更した調理プログラムに従って、調理中の食材を継続して調理する。
【0008】
このようにすると、調理する機会ごとに、調理開始時の温度状態を反映した変更後の調理プログラムで調理することができる。調理プログラムを変更しない場合と比べて食材に伝わる熱量の変動が抑制され、安定した品質の調理が可能になる。
【0009】
また、温度の推移には、ある時点の温度だけでなく、温度の時間変化(上昇中か下降中か維持しているか)も含まれる。プレートの温度が同一であっても、温度が上昇中か下降中かあるいは維持しているかによって、プレートが保持している熱量は異なる。調理開始前の温度と温度の時間変化から、温度状態をより正確に推定できる。正確な温度状態に基づいて、食材に伝わる熱量の変動をより抑制できる調理プログラムに変更できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、食材に伝わる熱量の変動を抑制して、安定した品質の加熱調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】調理を行わない場合における平均温度の推移を示す説明図
【
図6】1個の食材を調理する場合の平均温度の推移を示す説明図
【
図7】3個の食材を調理する場合の平均温度の推移を示す説明図
【
図8】6個の食材を調理する場合の平均温度の推移を示す説明図
【
図9】調理開始から終了までの平均温度の推移を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本実施形態の概要>
(I)調理プログラムに従って食材を調理する加熱調理器は、前記食材を加熱するプレートと、前記プレートの温度を検出する温度検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記食材の調理開始前に前記温度検出部が検出した前記プレートの温度の推移に基づいて、調理開始時の前記プレートの温度状態を推定し、推定した前記温度状態に基づいて、前記食材の調理中に、前記調理プログラムを変更する。
【0013】
このような構成の加熱調理器は、まず初期設定の調理プログラムで調理開始する。調理中に、調理開始前のプレートの温度状態を推定し、推定したプレートの温度状態に基づいて、調理プログラムを変更する。変更した調理プログラムに従って、調理中の食材を継続して調理する。
【0014】
このようにすると、調理する機会ごとに、調理開始時の温度状態を反映した変更後の調理プログラムで調理することができる。調理プログラムを変更しない場合と比べて食材に伝わる熱量の変動が抑制され、安定した品質の調理が可能になる。
【0015】
また、温度の推移には、ある時点の温度だけでなく、温度の時間変化(上昇中か下降中か)も含まれる。プレートの温度が同一であっても、温度が上昇中か下降中かによって、プレートが保持している熱量は異なる。調理開始前の温度と温度の時間変化から、温度状態をより正確に推定できる。正確な温度状態に基づいて、食材に伝わる熱量の変動をより抑制できる調理プログラムに変更できる。
【0016】
(II)前記温度検出部は、前記プレートの異なる位置に設けられた2以上の温度センサを有し、前記制御部は、2以上の前記温度センサが検出した、前記プレートの異なる位置の温度の推移に基づいて、調理中の前記食材の数量を推定し、前記制御部は、推定した前記食材の数量に基づいて、前記食材の調理中に、前記調理プログラムを変更してもよい。
【0017】
調理が始まると、プレートから食材に熱量が移動するため、プレートの温度が一時的に低下する。プレートの温度は、食材から離れた箇所よりも、食材に近い箇所において大きく低下する。プレートの異なる位置に複数の温度センサを設けると、調理開始後の各温度センサが検出する温度の推移は、食材までの距離によって異なる。したがって、各温度センサで検出した温度の推移から、食材の数量を推定できる。推定した食材の数量を反映した調理プログラムに変更することにより、食材に伝わる熱量の変動をさらに抑制して、安定した品質の調理が可能になる。
【0018】
(III)前記制御部は、前記食材の調理開始後の所定期間において、前記温度検出部が検出した(1)~(3)のうちの少なくとも一つに基づいて、前記食材の数量を推定してもよい。
(1)複数の前記温度センサが検出した温度の、平均値の変化量
(2)前記プレート上に前記食材がない場合の前記変化量と、前記プレート上で前記食材の加熱調理をしている場合の前記変化量と、の差分
(3)複数の前記温度センサのうち、所定の閾値以上検出温度が低下した前記温度センサの数
【0019】
(1)について
加熱されたプレートで食材の調理を開始すると、プレートから食材に熱が移動してプレートの平均温度は変化する。食材の数量が多いほど、平均温度の変化量は大きくなるため、平均温度の変化量から食材の数量を推定できる。
【0020】
(2)について
プレート上に食材がない非調理時であっても、プレートの平均温度は変化(ハンティング)する。非調理時の平均温度の変化量と、食材を調理中の平均温度の変化量と、の差分から、食材に起因した変化量が分かり、食材の数量を推定できる。
【0021】
(3)について
加熱されたプレートで食材の調理を開始すると、食材の近傍に位置する温度センサは、食材から離れた位置の温度センサよりも、検出温度が大きく変化する。所定の閾値以上検出温度が変化した温度センサの近傍には食材があると考えられるため、そのような温度センサの数から食材の数量を推定できる。
【0022】
(IV)前記制御部は、前記(1)~前記(3)のそれぞれに基づいて推定した前記食材の数量が一致しない場合は、最も多い数量を推定した推定結果に基づいて、前記調理プログラムを変更してもよい。
【0023】
プレート上の食材の数量が多い場合は、少ない場合と比べて、食材1つあたりに伝わる熱量が少なくなるため、加熱不足になるおそれがある。(1)~(3)で推定結果が一致しない場合は、最も多い数量に基づいた調理プログラムに変更して調理することにより、加熱不足を回避できる。
【0024】
(V)前記調理プログラムは、変更可能なパラメータとして、前記食材の調理時間と、前記プレートの温度のうちの、少なくとも一方を含んでいてもよい。調理時間や、プレートの温度を変更することにより、調理が終了するまでの間にプレートから食材に伝わる熱量を容易に増減させることができる。
【0025】
(VI)調理プログラムに従って、プレート上の食材を加熱して調理する加熱調理器の制御方法は、前記食材の調理開始前に温度検出部が検出した前記プレートの温度の推移に基づいて、調理開始時の前記プレートの温度状態を推定する、温度状態推定処理と、推定した前記温度状態に基づいて、前記食材の調理中に、前記調理プログラムを変更する、調理プログラム変更処理と、を含む。
【0026】
<実施形態>
図1から
図13を参照して、上記した発明の実施形態について説明する。
【0027】
1.加熱調理器10の全体構成
図1は、本実施形態に係る加熱調理器10の全体を示す斜視図である。
図2は、加熱調理器10の電気的構成を示すブロック図である。なお、以降の説明において、上下方向、左右方向、前後方向とは、
図1に示す方向を指すものとする。
図1に示す方向は、本実施形態の理解を助けるために記載したのであり、発明を限定するものではない。
【0028】
図1に示すように、加熱調理器10は、筐体11と、調理対象である食材S(
図6参照)を載置するプレート12と、を備える。加熱調理器10は、加熱されたプレート12の上面(調理面)に食材Sを載置して、食材Sを加熱調理する装置である。食材Sとは、形状、大きさ、質量等が略同一になるように成形されたハンバーガー用のパティを例示することができる。プレート12は、同時に調理可能な食材Sの数量が定められている。本実施形態のプレート12は、一例として、同時に調理可能な数量nは1~6個である。
【0029】
筐体11は上方に向かって開口した略箱型形状をなしており、開口には矩形板状のプレート12が嵌め込まれている。プレート12は一例として鉄製である。ただし、プレート12の材質は鉄に限られず、他の材質であってもよい。他の材質の例としてアルミ、銅、ねずみ鋳鉄、アルミ鋳物などを例示できる。
【0030】
筐体11の内部には、プレート12を加熱する熱源13が設けられている。熱源13は、プレート12の下方において蛇行して取り回されており、プレート12の下面の広い範囲を加熱することができる。熱源13のオンオフや出力の制御は、後述する制御部30により行われる。
【0031】
プレート12を加熱する熱源13の加熱方式は、一例として、シーズヒータ式である。熱源13の加熱方式は、シーズヒータ式に限られない。他の例として、自然燃焼バーナ式、強制吸気バーナ式、電磁誘導加熱式、鋳込みヒータ式などを例示できる。
【0032】
プレート12は、プレート12の温度を検出する温度検出部14(
図2参照)を備えている。温度検出部14は、プレート12の異なる位置に設けられた2以上(本実施形態では9個)の温度センサ15を含んでいる。温度センサ15は、例えば熱電対であり、プレート12の内部に埋め込まれている。温度センサ15がプレート12の内部に埋め込まれていることで、温度センサ15は、食材Sが載置される上面に近い位置の温度を検出できる。
【0033】
9個の温度センサ15は、平面視すると3行3列の格子点に位置するように、等間隔で配置されている。各温度センサ15は、プレート12の温度を常時検出して制御部30に送信する。以降の説明において、プレート12の中央近傍(2行目中央)に位置する温度センサ15を、特に温度制御センサ15Aと表記することがある。温度制御センサ15Aの検出値を、プレート温度Tとする。プレート温度Tは、制御部30によるプレート12の温度制御に用いられる。
【0034】
各温度センサ15が検出した検出値は、後述する制御部30に集約される。9個の温度センサ15の検出値は、後述する温度状態の推定および食材Sの数量の推定に用いられる。温度制御センサ15Aは、各温度センサ15のうち、いずれの温度センサ15であってもよい。
【0035】
筐体11の前面には、操作パネル20が設けられている。
図2に示すように、操作パネル20は、ユーザ(調理者)が操作する、調理開始ボタン22と、プログラム選択ボタン23とを備えている。さらに、操作パネル20は、加熱調理器10の動作状態などの情報をユーザに知らせるための表示部21と、報知部24と、を備えている。
【0036】
表示部21は、例えば液晶パネルであり、実行中の調理プログラムPの種類や、調理する食材Sの名称、プレート温度T、調理終了までの残り時間trなどの情報を表示して、ユーザがこれらの情報を視認できるようにしている。報知部24は、例えば発光体やブザーである。報知部24は、制御部30から所定の信号を受信すると、光や音を発して、調理開始可能になったことや、調理の終了をユーザに報知する。
【0037】
プログラム選択ボタン23は、記憶部33に記憶されている複数の調理プログラムPから、ユーザが任意の調理プログラムPを選択する際に押下するボタンである。調理開始ボタン22は、選択した調理プログラムPを実行し、食材Sの調理を開始する際にユーザが押下するボタンである。
【0038】
制御部30は、演算部31、計時部32、記憶部33を備えている。演算部31は、各温度センサ15から取得した温度データを基に演算を行い、演算結果に基づいて熱源13を制御する。また、演算部31は、温度検出部14が検出した検出値について演算を行い、演算結果に基づき調理プログラムPに含まれるパラメータを変更する。
【0039】
計時部32は、ユーザが調理開始ボタン22を押下してからの時間を計測し、調理プログラムPに含まれる調理時間t0からのカウントダウンを行う。調理開始ボタン22の押下後、調理時間t0が経過すると、計時部32は表示部21や報知部24に所定の信号を発する。
【0040】
記憶部33は、演算部31を制御するプログラム等を記憶するROM、RAM等から構成されている。記憶部33には、食材Sの調理において実行される調理プログラムPが記憶されている。
【0041】
2.調理プログラムPについて
調理プログラムPは、加熱調理器10で加熱調理を行う際に、演算部31が実行するプログラムである。記憶部33には、食材Sの種類ごとに予め作成された調理プログラムPが記憶されている。本実施形態の加熱調理器10の記憶部33には、食材Sに対応する調理プログラムPとして、調理プログラムP0が記憶されている。P0は初期設定の調理プログラムである。
【0042】
ユーザは、食材Sの調理を開始する前に、プログラム選択ボタン23を操作して、調理プログラムP0を選択する。食材Sとは異なる種類の食材を調理する場合には、調理プログラムP0以外のプログラムを選択する。
【0043】
調理プログラムP0は、パラメータの初期設定値として調理時間t0、目標温度T0を含んでいる。目標温度T0は、食材Sの調理において目標値となるプレート温度Tである。本実施形態では、初期設定値の一例として調理時間t0を90秒、目標温度T0を180℃としている。調理プログラムP0を実行すると、制御部30が、プレート温度Tが目標温度T0になるように、熱源13を制御する。
【0044】
制御部30による熱源13の制御とプレート温度Tとの関係について、
図3、
図4を参照して説明する。
図3の紙面中上方のグラフは、プレート12が冷間状態のときに調理プログラムP0を実行し、プレート温度Tが目標温度T0の近傍で維持されるまでの、経過時間(横軸)とプレート温度(縦軸)との関係を示している。なお、a、bは後述する温度状態を判定するためにユーザが任意に設定するパラメータである。
図3の紙面中下方のグラフは、熱源13のON/OFF(シーズヒータに流す電流のON/OFF)を示しており、横軸は紙面中上方のグラフの経過時間と共通である。
【0045】
調理プログラムP0を実行すると、制御部30は熱源13をONし、プレート温度Tは上昇する。プレート温度Tが上昇してT0を超えると、制御部30は熱源13をオフにする。熱源13のオフ後もプレート温度Tはしばらく上昇し、その後放熱して温度が低下する(オーバーシュート)。プレート温度Tが低下してT0を下回ると、制御部30は熱源13をオンにする。熱源13をオンにすると、プレート温度Tはしばらく下降した後に上昇に転じる。プレート温度Tが上昇してT0を上回ると、制御部30は熱源13をオフにする。熱源13をオフにすると、プレート温度Tはしばらく上昇した後放熱により温度が下降に転じる。制御部30は、プレート温度Tが下降してT0を下回ると、熱源13をオンにする。
【0046】
制御部30は、以上のように熱源13をオンオフ制御し、プレート温度Tは目標温度T0の近傍で上下に変動を繰り返すようになる。オーバーシュート後のプレート温度Tが、目標温度T0の近傍で変動することを、ハンティングという。
【0047】
ここで、ハンティング中のプレート温度Tと温度の推移に基づいて、プレート12の温度状態を、状態A~Dの4つに便宜的に分ける。温度状態を区別する条件は下記の通りである。
【0048】
状態A:プレート温度Tが、T0-b以下
状態B:プレート温度Tが、T0-b~T0+a、かつ温度上昇中
状態C:プレート温度Tが、T0+a以上
状態D:プレート温度Tが、T0-b~T0+a、かつ温度下降中
【0049】
ハンティング中のプレート12は、
図3、
図4に示すように、状態A~状態Dを繰り返す。制御部30は、温度制御センサ15Aから検出値を受信し、プレート温度Tがハンティングしていると判断すると、プレート12が十分に加熱され食材Sの調理が可能になったと判断する。また、制御部30は、調理が可能と判断すると、表示部21にその旨を表示させたり、報知部24に音や光を発する等させたりして、調理が可能になったことをユーザに報知する。
【0050】
調理時間t0は、目標温度T0に加熱されたプレート12で食材Sを調理する時間である。ハンティング中のプレート12の上面に、ユーザが食材Sを載置した後、調理開始ボタン22を押下することで、調理時間t0のカウントダウンが始まり、表示部21に残り時間trが表示される。残り時間trが0(ゼロ)になると、制御部30は、表示部21にその旨を表示させたり、報知部24に音や光を発する等させたりして、食材Sの調理が終了したことをユーザに報知する。
【0051】
3.プレート12から食材Sに伝わる熱量について
3.1 調理開始時の温度状態の推定
プレート12が保持している熱量は、調理開始時の温度状態(状態A~状態D)によって異なる。そのため、プレート12上の食材Sの数量nと、プレート12に食材Sを載置している調理時間t0の双方が同一であっても、状態A~Dのどの温度状態のときに調理を開始したかによって、プレート12から食材Sに伝わる熱量は変動する。
【0052】
状態A~Dのうち、プレート12が保持している熱量が最も多く、プレート12に載置した食材Sに最も多くの熱を伝えることができるのは、プレート温度Tが最も高い状態Cで調理を開始したときである。一方、食材Sに伝える熱量が最も少ないのは、プレート温度Tが最も低い状態Aで調理を開始したときである。
【0053】
状態Bと状態Dは、プレート温度Tの範囲がT0-bからT0+aで同一である。しかし、状態Bでは熱源13がオンであり、熱源13からプレート12に熱量が流入して温度上昇中であるのに対し、状態Dでは熱源13がオフであり放熱により温度下降中である。プレート温度Tが同じであっても、放熱中の状態Dよりも、加熱中の状態Bの方がプレート12で保持している熱量は多くなる。したがって、状態Bのときに調理を開始した方が、状態Dのときに調理を開始するよりも、食材Sに伝わる熱量が多い。
【0054】
以上より、温度状態ごとの、プレート12が保持している熱量の多さは、以下に示す順になる。調理時間t0と食材Sの数量nが同一の場合であれば、調理開始時においてプレート12が保持している熱量が多いほど、食材Sに伝わる熱量は多い。
状態C>状態B>状態D>状態A
【0055】
制御部30は、温度制御センサ15Aの検出値を常時モニタしており、プレート温度Tの推移を記憶部33に記憶している。プレート温度Tがハンティングして調理可能な状態になった後、調理開始までの間は、
図3、
図4に示すように、状態A~Dが繰り返される。ユーザが調理開始ボタン22を押下して調理が開始されると、制御部30は、調理開始時におけるプレート温度TをT0+a、T0-bと比較するとともに、調理開始時のプレート温度Tの推移(上昇中か下降中か維持しているか)に基づいて、調理開始時の温度状態が状態A~Dのいずれであるか推定する。
【0056】
3.2 食材Sの数量nの推定
本実施形態のプレート12は、上述したように1個~6個の食材Sを同時に調理できる。調理開始後はプレート12から食材Sに熱量が移動するため、プレート12の温度はハンティングとは異なる傾向で変化する。同時に調理する数量nが多いほど、より多くの熱量がプレート12から食材Sに移動するため、プレート12の温度は大きく変化する。したがって、プレート12の温度の推移に基づいて、数量nを推定することができる。具体的な推定手段を以下に説明する。
【0057】
図5~
図8は、プレート12の温度状態が状態C(高温時)のときに調理を開始した場合の、各温度センサ15の検出値と、平均温度Taveの推移を示す図である。平均温度Taveは、9個の温度センサ15の平均値である。各図において、t=0秒(調理開始時)、t=10秒、t=40秒、t=90秒(調理終了)のときの各温度センサ15の検出値と、平均温度Taveの値を表示している。プレート温度T(温度制御センサ15Aの検出値)の目標温度T0を180℃とする。
【0058】
図5に、プレート12上の食材Sの数量nが0個、つまり非調理時における各温度センサ15の検出値と平均温度Taveの推移を、調理時との比較として示している。プレート温度Tは、t=0秒のときに187℃でピークを示し、その後放熱により低下する。t=90秒までの期間では、温度制御センサ15Aの検出値が目標温度T0(180℃)を下回らないため、t=0~90秒の期間中に熱源13はオンにならない。
図5のケースでは、t=0~90秒の期間におけるプレート温度Tは放熱により低下し続ける。このとき平均温度Taveは、t=0秒の180.0℃から、t=90秒の174.7℃まで低下する。
【0059】
図6、
図7、
図8は、プレート12上の食材Sの数量nがそれぞれ1個、3個、6個のときの、各温度センサ15の検出値と平均温度Taveの推移を示す図である。
図5および
図6~
図8は、開始時点における各温度センサ15の検出値は一致しているが、調理開始後の各温度センサ15の検出値は異なっている。また、平均温度Taveの推移も、食材Sの数量により異なっている。なお、食材Sの数量nにかかわらず、プレート温度Tが目標温度T0(180℃)を下回るタイミングで、制御部30は熱源13をオンにする制御を行う。
【0060】
図9は、
図5~
図8に示す平均温度Taveの推移を、横軸を調理開始からの経過時間としてプロットしたグラフである。
図9に示すように、調理開始後、t=40秒までの平均温度Taveは、数量nが多いほど大きく低下する。
【0061】
本実施形態では、調理開始後の所定期間(一例として、本実施形態ではt=10秒~40秒の期間)における各温度センサ15の検出値および平均温度Taveの推移に基づいて数量nを推定する。
【0062】
所定期間の始点を調理開始時(t=0秒)とせずに調理開始から10秒後(t=10秒)とした理由は以下の通りである。第1に、加熱されたプレート12上に食材Sを載置した直後は、検出値が不安定になる場合があり、その影響を低減させるためである。第2に、複数の食材Sを載置する場合、1つ目の食材Sを載置してから最後の食材Sを載置するまでの時間差に起因して、各温度センサ15の検出値にばらつきが生じるおそれがある。時間差による検出値のばらつきの影響を低減させるために、調理開始後10秒経過したときを所定期間の始点としている。
【0063】
所定期間の終点を調理開始から40秒後(t=40秒)とした理由は、本実施形態の調理時間t0の初期設定値が90秒であることに起因している。調理時間t0の前半における検出値に基づいて数量nを推定し、調理時間t0の後半で、推定した数量nを反映させた調理プログラムPを実行するためである。所定期間の終点は、調理時間t0の半分以下が望ましい。なお、所定期間は、t=10秒~40秒の期間に限られず、ユーザが任意に設定してもよい。
【0064】
食材Sの数量nを推定するにあたり、制御部30は、所定期間(t=10秒~40秒の)における温度センサ15の検出値に基づいて、下記(1)~(3)の値をそれぞれ求める。
図5~
図8の右下には、各値の算出結果を示している。
(1)変化量Td
(2)差分Tdiff
(3)センサ数N
【0065】
(1)変化量Tdについて
変化量Tdは、所定期間における平均温度Taveの変化量である。例えば
図6(食材1個)では、平均温度Taveは、t=10秒~40秒の所定期間において177.9℃から175.6℃まで低下している。食材Sが1個の場合の変化量Tdは、177.9-175.6=2.3℃となる。
【0066】
(2)差分Tdiffについて
差分Tdiffは、非調理時(食材0個)における、所定期間の平均温度Taveの変化量Tdと、調理時における所定期間の平均温度Taveの変化量Tdと、の差分である。
【0067】
非調理時の検出値(
図5参照)によると、t=10秒~40秒の所定期間において、平均温度Taveは178.4℃から176.6℃まで低下している。非調理時のTdは178.4-176.6=1.8℃である。上記したように、
図6の例における変化量Tdは2.3℃であるため、差分Tdiffは、2.3-1.8=0.5℃である。
【0068】
(3)センサ数Nについて
センサ数Nは、所定期間において所定の閾値(本実施形態では一例として4℃)Tx以上低下した温度センサ15の数である。
図6の例では、所定期間において、4℃以上低下した温度センサ15は、9個の温度センサ15のうち、中段中央に位置する1個(182℃から178℃に4℃低下)のみである。よって、センサ数Nは1個となる。所定の閾値Txは、ユーザが任意の値を設定してもよい。
【0069】
以上より、
図6の例では、(1)変化量Td=2.3℃、(2)差分Tdiff=0.5℃、(3)センサ数N=1個、となる。
【0070】
同様の処理を
図7、
図8についても行い、それらの結果をまとめた表を
図10に示す。また、
図11(A)~(C)に、求めた各値(変化量Td、差分Tdiff、センサ数N)のそれぞれに基づいて、制御部30が数量nを推定する場合の判断基準の一例を示す。判断基準(A)~(C)は、ユーザが任意に設定でき、記憶部33に記憶されている。
【0071】
制御部30は、変化量Td、差分Tdiff、センサ数Nごとに、判断基準(A)~(C)を参照して、数量nを推定する。例えば、
図11(A)は、変化量Tdが2.5℃以下の場合は数量nが少量(1~2個)であると推定し、2.5℃~3.5℃の場合は中量(3~4個)であると推定し、3.5℃以上の場合は多量(5~6個)であると推定することを示している。
【0072】
本実施形態の例では、
図10に示すように、実際の数量nが3個の場合、変化量Td=3.1℃である。制御部30は、
図11(A)の判断基準を参照し、Tdが2.5~3.5℃の範囲にあることから、数量nは中量と推定する。また、差分Tdiff=1.3℃である。制御部30は、
図11(B)の判断基準を参照し、Tdiffが1.0~2.0℃の範囲にあることから、数量nは中量と推定する。また、センサ数Nは2個である。制御部30は、
図11(C)の判断基準を参照し、センサ数Nが2~3個の範囲にあることから、数量nは中量と推定する。
【0073】
実際の食材Sの数量nが1個の場合や6個の場合も同様に、
図11の判断基準に基づいて推定する。数量nは
図10に示すようにそれぞれ少量、多量と推定できる。以上説明したように、制御部30は、調理開始後の所定期間における温度の推移に基づいて、食材Sの数量nを推定できる。
【0074】
4.調理プログラムP0の変更について
制御部30は、推定した調理開始時の温度状態(状態A~状態D)と、同時に調理する食材Sの数量nに基づいて、調理プログラムP0のパラメータである目標温度T0と調理時間t0のうちの少なくとも一方を変更する。本実施形態では、調理時間t0を変更する場合について説明する。
【0075】
初期設定の調理プログラムP0に含まれるパラメータ(プレート温度T0、調理時間t0)は、任意に設定することができる。本実施形態の例では、プレート12の温度が最も低い状態Aのときに調理を開始し、かつ、食材Sの数量nが調理可能な範囲内(本実施形態では1~6個)において最大(6個)の場合に、食材Sに伝わる熱量が最適になるような値に設定している。
【0076】
なぜならば、食材Sに伝わる熱量が最も少ない状態A(低温時)で調理を開始したときに最適に調理できるように調理プログラムP0を設定すれば、状態Aよりも多くの熱量が伝わる他の温度状態(状態B~状態D)で調理を開始したとしても、食材Sに伝わる熱量は状態Aで開始したときより減少することはない。そのため、調理プログラムP0で調理すれば、調理開始時のプレート12の温度状態によらず、少なくとも加熱不足(アンダークック)にはならないからである。また、同時に調理する食材Sの数量nが多いほど、1つあたりの食材Sに伝わる熱量は分散する。逆に、同時に調理する食材Sの数量nが少ないほど、1つあたりの食材Sに伝わる熱量は増大する。数量nが最大数量のときに最適に調理できるように調理プログラムP0を設定すれば、数量nが最大数量より少ない場合であっても、食材S1つあたりに伝わる熱量が不足することはなく、少なくともアンダークックにはならないからである。
【0077】
状態A以外で調理開始した場合や、数量nが最大以外の場合では、食材Sに伝わる熱量は最適な熱量を超えて、過剰に加熱(オーバークック)されることになる。本実施形態では、調理開始時のプレート12の温度状態や、一度に調理する食材Sの数量nが変わっても、調理終了時にオーバークックにならないように、調理プログラムP0を調理プログラムP1に変更する。具体的には、調理プログラムP0のパラメータの1つである調理時間t0を、t1に変更する。調理時間をt1に変更すると、カウントダウン中の残り時間trは、調理開始時における調理時間がt1であったときの値に変わる。
【0078】
図12は、推定した調理開始時の温度状態、および、推定した食材Sの数量nと、変更後の調理時間t1との関係を示す表である。
図12の表は、ある温度状態、かつ、ある数量nの場合に、右列に示す調理時間t1で調理すれば、プレート12から食材Sに伝わる熱量が最適になることを示している。
【0079】
推定した温度状態と数量nの両方が、実際の温度状態及び数量nと一致している場合、調理時間t1で調理すれば、調理中の食材Sはオーバークックにもアンダークックにもならず、最適な状態に調理することができる。言い換えると、調理時間をt0からt1に変更すれば、どの温度状態、どの数量nであっても、食材Sに伝わる熱量の変動を抑制して、安定した品質の調理が可能になる。
【0080】
図12の表における変更後の調理時間t1の値は、例えばユーザが実験によって予め求めた値であり、これらの値はデータテーブル等の形式で記憶部33に記憶されている。
【0081】
調理時間t0の変更について、
図9を参照して説明する。
図9は状態Cのときに初期設定値のt0=90秒間調理した場合の、平均温度Taveの推移を示すグラフである。食材Sの数量nが1個の場合、90秒の調理時間が7秒短縮されてt1=83秒(
図12参照)に変更される。変更前の90秒間調理するとオーバークックになるが、調理時間を83秒に短縮することにより、食材Sに伝わる熱量が減少し、最適な状態に調理できる。
【0082】
調理プログラムP0からP1への変更に伴い、カウントダウン中の残り時間trは7秒減少する。調理開始から83秒経過した時点で、残り時間trが0(ゼロ)になり、表示部21や報知部24によって、ユーザに調理終了が報知される。
【0083】
同様に、数量nが3個の場合は、5秒短縮されて調理時間t1=85秒に変更され、6個の場合は3秒短縮されてt1=87秒に変更される。これにより、食材Sに伝わる熱量の変動が抑制され、オーバークックにもアンダークックにもならずに、食材Sを、最適な状態に、安定した品質で調理することができる。
【0084】
なお、温度状態のみを推定して数量nの推定をしない場合は、制御部30は、数量nが多量であると仮定して、多量の場合の調理時間t1を適用し、アンダークックを防止する。
【0085】
5.フローチャートの説明
本実施形態の加熱調理器10を用いた食材Sの加熱調理を、
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0086】
食材Sの調理を開始する前に、ユーザは、食材Sの種類に応じた調理プログラムPを選択する(S10)。調理プログラムP0が選択されると、制御部30はプレート温度Tが目標温度T0を維持(ハンティング)するように、熱源13を制御する。プレート温度Tが目標温度T0に到達し、ハンティングが始まると(S20)、制御部30は、表示部21の表示や報知部24のブザー音などにより、調理可能になった旨をユーザに報知する。
【0087】
ユーザは食材Sをプレート12上に載置し、調理開始ボタン22を押下して、調理が開始される(S30)。調理が開始されると、制御部30は、調理開始前の平均温度Taveの推移に基づいて、調理開始時におけるプレート12の温度状態を推定する(S40)。次に、制御部30は、調理開始後の所定期間(10秒~40秒)における平均温度Taveの推移に基づいて、調理中の食材Sの数量nを推定する(S50)。
【0088】
次に、制御部30は、推定した温度状態と、数量nと、記憶部33に記憶されている
図12のデータテーブルと、に基づいて、調理プログラムP0の変更が必要か否かを判断する(S60)。調理プログラムP0の変更が必要だと判断した場合(S60:YES)、制御部30は
図12のデータテーブルを参照して、調理プログラムP0をP1に変更して調理を継続する。具体的には、調理時間t0をt1に変更して(S70)調理開始からt1秒間の調理を行い、t1秒経過すると調理を終了する(S80)。
【0089】
調理プログラムP0が変更不要と判断した場合は(S60:NO)、調理プログラムP0を変更しない。この場合は調理開始からt0秒経過時に調理を終了する(S80)。
【0090】
調理時間t0またはt1が経過して、調理プログラムP0またはP1が終了すると、ユーザは調理された食材Sを加熱調理器10から取り出す(S80)。その後、制御部30は、調理プログラムP1を、初期設定の調理プログラムP0に戻す(S90)。今回変更した調理プログラムP1は今回の調理にのみ適用し、次回の調理には適用しない。次回の調理では、初期設定の調理プログラムP0適用して調理を開始し、その後数量の推定とプログラムの変更を行って、アンダークックを防止する。
【0091】
連続して調理する場合は(S100:YES)S20に戻り、初期設定の調理プログラムP0で調理開始する。連続して調理しない場合は(S100:NO)加熱調理を終了する。
【0092】
6.効果説明
上記の構成では、調理開始前のプレート温度Tの推移から推定した調理開始時の温度状態を、調理中の食材Sに反映させて調理することができる。調理開始時の温度状態に起因した、食材Sに伝わる熱量の変動を抑制して、安定した品質の加熱調理を行うことができる。
【0093】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、加熱調理器10は、温度状態の推定と、数量nの推定の両方を行う場合を例示した。加熱調理器10は、温度状態の推定のみを行ってもよい。
【0094】
(2)上記実施形態では、推定した温度状態と数量nとに基づいて、初期設定の調理プログラムP0に含まれる調理時間t0を変更した。変更するパラメータは調理時間t0に限られない。変更するパラメータは、目標温度T0でもよいし、他のパラメータであってもよい。例えば、目標温度T0が調理時間t0の間に段階的に変更されるプログラムの場合、変更のタイミングや、変更前後の目標温度T0を変更してもよい。
【0095】
(3)上記実施形態では、変化量Tdから推定される数量nと、差分Tdiffから推定される数量nと、センサ数Nから推定される数量nと、はそれぞれ一致していたが、一致しない場合もあり得る。推定される数量nが一致しない場合は、3つの推定結果のうち、食材Sを最も多い数量nを推定した推定結果を適用して、調理プログラムPを変更する。このようにすると、より長時間食材Sを加熱調理することができるため、食材Sのアンダークックを防ぐことができる。
【0096】
(4)上記実施形態では、食材Sの形状、大きさ、質量等が略同一の場合を例示して説明したが、食材Sの形状等は同一でなくてもよい。
【0097】
(5)上記実施形態では、複数の温度センサ15は格子状に等間隔で配置されていたが、温度センサ15の配置は格子状、等間隔に限られない。環状に配置されていてもよいし、不等間隔に配置されていてもよい。
【0098】
(6)温度センサ15は熱電対の場合を例示したが、温度センサ15は、サーミスタ、測温抵抗体、放射温度計、バイメタル温度計、熱膨張式温度計等であってもよい。
【0099】
(7)上記実施形態では、食材Sを加熱するプレート12が1枚の加熱調理器10を例示したが、プレート12は左右または前後方向に複数並んでいてもよい。また、加熱調理器10は、開閉式の2枚のプレート12で食材Sを上下に挟み込んで加熱調理してもよい。
【符号の説明】
【0100】
10: 加熱調理器
12: プレート
15: 温度センサ
20: 操作パネル
30: 制御部
P: 調理プログラム
S: 食材
T: プレート温度
Tave: 平均温度
Td: 変化量
Tdiff: 差分
N: センサ数
n: (食材Sの)数量
t0: 調理時間
【要約】
【課題】食材に伝わる熱量の変動を抑制して、安定した品質の加熱調理を行う
【解決手段】調理プログラムPに従って食材を調理する加熱調理器10は、食材Sを加熱するプレート12と、プレート12の温度を検出する温度検出部14と、制御部30と、を備え、制御部30は、食材Sの調理開始前に温度検出部14が検出したプレート12の温度の推移に基づいて、調理開始時のプレート12の温度状態を推定し、推定した温度状態に基づいて調理プログラムPを変更する。
【選択図】
図13