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特許7520453非水電解質用添加剤を含む非水電解質およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】非水電解質用添加剤を含む非水電解質およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240716BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240716BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240716BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240716BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0568
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023568395
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 KR2022014692
(87)【国際公開番号】W WO2023055144
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0129872
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウ・オ
(72)【発明者】
【氏名】ビュン・チュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ミ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】スン・グク・パク
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001567(JP,A)
【文献】米国特許第9627712(US,B2)
【文献】中国特許出願公開第112563571(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102569886(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0095901(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566-10/0569
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される非水電解質用添加剤を含む非水電解質:
【化1】
(前記化学式1中、Rは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、および炭素数3~12のシクロアルケニル基からなる群から選択される何れか1つであり、
およびRは、それぞれ独立して、H、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、および炭素数3~12のシクロアルケニル基からなる群から選択される何れか1つであり、
Aは、炭素数1~5のアルキレン基である。)
【請求項2】
前記化学式1のRおよびRがHである、請求項1に記載の非水電解質。
【請求項3】
前記化学式1のRが、炭素数1~10のアルキル基である、請求項1に記載の非水電解質。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1で表される化合物である、請求項1に記載の非水電解質:
【化2】
(前記化学式1-1中、Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、
Aは、炭素数1~5のアルキレン基である。)
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-2で表される化合物である、請求項1に記載の非水電解質。
【化3】
【請求項6】
前記非水電解質用添加剤は、非水電解質100重量部に対して0.01重量部~5重量部の含量で含まれる、請求項1に記載の非水電解質。
【請求項7】
リチウム塩としてLiPFを含む、請求項1に記載の非水電解質。
【請求項8】
前記LiPFは、0.5M~4Mの濃度で含まれる、請求項7に記載の非水電解質。
【請求項9】
リチウム塩として、LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiCHSO、LiN(SOF)、LiN(SOCFCF、およびLiN(SOCFからなる群から選択される少なくとも1つ以上のリチウム塩をさらに含む、請求項7に記載の非水電解質。
【請求項10】
有機溶媒をさらに含む、請求項1に記載の非水電解質。
【請求項11】
前記有機溶媒は、環状カーボネート系有機溶媒、直鎖状カーボネート系有機溶媒、直鎖状エステル系有機溶媒、および環状エステル系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒を含む、請求項10に記載の非水電解質。
【請求項12】
添加剤として、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換のカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系化合物、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物をさらに含む、請求項1に記載の非水電解質。
【請求項13】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータと、請求項1から12の何れか一項に記載の非水電解質と、を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月30日に出願された韓国特許出願第10-2021-0129872号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、非水電解質用添加剤を含む非水電解質およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、リチウム二次電池の応用領域が、電気、電子、通信、コンピュータなどのような電子機器の電力供給だけでなく、自動車や電力貯蔵装置などのような大面積機器の電力貯蔵および供給に急速に拡大しており、これに伴い、高容量、高出力で、且つ高安定性の二次電池に対する要求が増加している。
【0004】
特に、自動車用途のリチウム二次電池においては、高容量、高出力、長期寿命特性が重要となっている。二次電池の高容量化のために、エネルギー密度は高いが、安定性が低いニッケル高含量の正極活物質を用いたり、二次電池を高電圧で駆動することがある。
【0005】
しかし、上記の条件下で二次電池を駆動する場合、充放電が進行するに伴い、電解質の劣化により発生する副反応によって、正/負極の表面に形成された被膜あるいは電極表面の構造が劣化し、正極の表面から遷移金属イオンが溶出され得る。このように、溶出された遷移金属イオンが負極に電着(electro-deposition)されてSEIの不動態(passivation)能力を低下させるため、負極が劣化するという問題が発生する。
【0006】
かかる二次電池の劣化現象は、正極の電位が高くなるか、電池が高温に露出した際にさらに加速化する傾向を示す。
【0007】
また、リチウムイオン電池を長時間連続して用いたり、高温で放置すると、ガスが発生して電池の厚さが上昇する、いわゆる膨潤現象が発生するが、この時に発生するガスの量は、このようなSEIの状態によって左右されると知られている。
【0008】
したがって、かかる問題を解決するために、正極における金属イオンの溶出を抑え、負極に安定なSEI膜を形成して、二次電池の膨潤現象を減少させ、且つ高温での安定性を高めることができる方法に関する研究開発が試されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題を解決するために多角的に研究を行った結果、本発明は、正極の劣化を抑え、正極と電解質の副反応を減少させ、負極に安定なSEI膜を形成することができる非水電解質用添加剤を提供することを課題とする。
【0010】
また、本発明は、前記非水電解質用添加剤を含むことで、高温での安定性を高めた非水電解質を提供することを課題とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記非水電解質を含むことで、高温サイクル特性および高温貯蔵特性が改善され、諸性能が向上したリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態によると、上記の目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表される非水電解質用添加剤を含む非水電解質を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1中、Rは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、および炭素数3~12のシクロアルケニル基からなる群から選択される何れか1つであり、RおよびRは、それぞれ独立して、H、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、および炭素数3~12のシクロアルケニル基からなる群から選択される何れか1つであり、Aは、炭素数1~5のアルキレン基であってもよい。
【0015】
他の実施形態によると、本発明は、前記非水電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非水電解質用添加剤として提供される化学式1で表される化合物は、窒素が置換されたピロール構造に基づく化合物であり、リチウム二次電池の抵抗が増加することを最小化するとともに、負極の表面に安定なSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜を形成することができる。よって、高温でSEIの不動態(passivation)能力が低下することを抑え、負極の劣化を防止することができる。
【0017】
また、本発明の非水電解質用添加剤として提供される化学式1で表される化合物は、ピロール構造にアミン基を含む置換基を有することで、リチウム塩として用いられるLiPFの充放電副産物であるPFと高い結合エネルギーを有するため、PFの追加の分解反応を抑え、電池の耐久性を増大させる効果がある。
【0018】
したがって、前記化学式1の化合物を含む本発明の非水電解質を用いる場合、高温でも安定で且つ低抵抗の電極-電解質界面を形成することができるため、高温サイクル特性および高温貯蔵特性が改善され、諸性能が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0020】
本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解されるべきである。
【0021】
また、本明細書において、「炭素数a~b」の記載において、「a」および「b」は、具体的な官能基に含まれる炭素原子の個数を意味する。すなわち、前記官能基は、「a」~「b」個の炭素原子を含み得る。例えば、「炭素数1~5のアルキレン基」は、炭素数1~5の炭素原子を含むアルキレン基、すなわち、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH-、および-CH(CH)CHCH-などを意味する。
【0022】
また、本明細書において、前記「アルキレン基」という用語は、分岐または非分岐の2価の炭化水素基を意味する。
【0023】
また、本明細書において、アルキル基またはアルキレン基は、置換されても置換されていなくてもよい。前記「置換」とは、別に定義しない限り、炭素に結合された少なくとも1つ以上の水素が、水素以外の元素で置換されることを意味し、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数3~12のヘテロシクロアルキル基、炭素数3~12のヘテロシクロアルケニル基、炭素数6~12のアリールオキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、ニトロ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のヘテロアリール基、炭素数6~20のハロアリール基などで置換されることを意味する。
【0024】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0025】
〔非水電解質〕
本発明の一実施形態に係る非水電解質は、添加剤として下記化学式1で表される化合物を含む。本発明の非水電解質を含む二次電池は、高温における界面反応による劣化が抑えられ、高温サイクル特性および高温貯蔵特性に優れることができる。
【0026】
【化2】
【0027】
前記化学式1の化合物は、窒素が置換されたピロール構造に基づく化合物であり、リチウム二次電池の抵抗が増加することを最小化するとともに、負極の表面に安定なSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜を形成することができる。よって、高温でSEIの不動態(passivation)能力が低下することを抑え、負極の劣化を防止することができる。また、前記化学式1で表される化合物は、ピロール構造にアミン基を含む置換基を有することで、リチウム塩として用いられるLiPFの充放電副産物であるPFと高い結合エネルギーを有するため、PFの追加分解反応を抑え、電池の耐久性を増大させる効果がある。
【0028】
前記化学式1中、Rは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、および炭素数3~12のシクロアルケニル基からなる群から選択される何れか1つであってもよい。好ましくは、前記化学式1のRは、炭素数1~10の直鎖状または分岐状アルキル基であってもよく、最も好ましくは、前記化学式1のRは、炭素数1~5の直鎖状アルキル基であってもよい。
【0029】
前記化学式1中、RおよびRは、それぞれ独立して、H、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、および炭素数3~12のシクロアルケニル基からなる群から選択される何れか1つであってもよい。好ましくは、前記化学式1のRおよびRは、それぞれ独立して、Hおよび炭素数1~10のアルキル基からなる群から選択される何れか1つであってもよい。最も好ましくは、前記化学式1のRおよびRはHであってもよい。
【0030】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1で表される化合物であってもよい。
【0031】
【化3】
【0032】
前記化学式1-1中、Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、Aは、炭素数1~5のアルキレン基であってもよい。
【0033】
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-2で表される化合物であってもよい。
【0034】
【化4】
【0035】
本発明に係る非水電解質用添加剤は、非水電解質100重量部に対して、0.01重量部~5重量部の含量で含まれてもよく、好ましくは、0.05重量部~0.9重量部、より好ましくは0.1重量部~0.4重量部の含量で含まれてもよい。前記化学式1で表される化合物の含量が上記の範囲を満たす場合、正極への被膜形成効果が十分であって正極活物質からの遷移金属の溶出が抑制される効果があり、電解質の粘度が適切なレベルに維持され、高温貯蔵時にレート特性や寿命特性に優れる効果がある。
【0036】
本発明に係る非水電解質は、リチウム塩、有機溶媒、またはその他の電解質添加剤をさらに含んでもよい。
【0037】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池内で電解質塩として用いられるものであって、イオンを伝達するための媒体として用いられるものである。
【0038】
本発明に係る非水電解質は、高温安定性に優れる点から、リチウム塩としてLiPFを含んでもよい。この場合、前記化学式1で表される化合物は、リチウム塩として用いられるLiPFの充放電副産物であるPFと高い結合エネルギーを有するため、PFの追加の分解反応を抑え、電池の耐久性を増大させる効果がある。
【0039】
通常、リチウム塩は、例えば、カチオンとしてLiを含み、アニオンとして、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、PF 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、(CFSO、(FSO、BF 、BC 、PF 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、およびSCNからなる群から選択される少なくとも何れか1つを含んでよい。
【0040】
具体的に、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiCHSO、LiN(SOF)(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)、LiN(SOCFCF(リチウムビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド;LiBETI)、およびLiN(SOCF(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;LiTFSI)からなる群から選択される単一物または2種以上の混合物を含んでもよい。これらの他にも、リチウム二次電池の電解質に通常用いられるリチウム塩が制限されずに使用可能である。
【0041】
前記リチウム塩は、通常使用可能な範囲内で適宜変更し得るが、電極表面の腐食防止用被膜形成の最適な効果を得るために、電解質中に、0.5M~4Mの濃度、好ましくは、0.5M~3Mの濃度、より好ましくは、0.8M~2Mの濃度で含まれてもよい。前記リチウム塩の濃度が上記の範囲を満たす場合、リチウム二次電池の高温貯蔵時におけるサイクル特性の改善効果が十分であり、非水電解質の粘度が適切であって電解質含浸性が改善されることができる。
【0042】
前記有機溶媒は、環状カーボネート系有機溶媒、直鎖状カーボネート系有機溶媒、直鎖状エステル系有機溶媒、および環状エステル系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒を含んでもよい。
【0043】
具体的に、前記有機溶媒は、環状カーボネート系有機溶媒、直鎖状カーボネート系有機溶媒、またはこれらの混合有機溶媒を含んでもよい。
【0044】
前記環状カーボネート系有機溶媒は、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高いため電解質中のリチウム塩を解離させやすい有機溶媒であり、その具体的な例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒を含んでもよく、中でも、エチレンカーボネートを含んでもよい。
【0045】
また、前記直鎖状カーボネート系有機溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒であって、その代表例として、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒を用いてもよく、具体的に、エチルメチルカーボネート(EMC)を含んでもよい。
【0046】
また、前記有機溶媒は、高いイオン伝導率を有する電解質を製造するために、前記環状カーボネート系有機溶媒および直鎖状カーボネート系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つ以上のカーボネート系有機溶媒に、直鎖状エステル系有機溶媒および環状エステル系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つ以上のエステル系有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0047】
かかる直鎖状エステル系有機溶媒の具体的な例として、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートからなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒が挙げられる。
【0048】
また、前記環状エステル系有機溶媒としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒が挙げられる。
【0049】
一方、前記有機溶媒は、必要に応じて、非水電解質に通常用いられる有機溶媒を制限されずに追加して用いてもよい。例えば、エーテル系有機溶媒、グライム系溶媒、およびニトリル系有機溶媒の少なくとも1つ以上の有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0050】
前記エーテル系溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、1,3-ジオキソラン(DOL)、および2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン(TFDOL)からなる群から選択される何れか1つ、またはこれらのうち2種以上の混合物が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
前記グライム系溶媒は、直鎖状カーボネート系有機溶媒に比べて高い誘電率および低い表面張力を有し、金属との反応性が少ない溶媒であって、ジメトキシエタン(グライム、DME)、ジエトキシエタン、ジグライム(diglyme)、トリグライム(Triglyme)、およびテトラグライム(TEGDME)からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0052】
前記ニトリル系溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリルからなる群から選択される1種以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0053】
また、本発明の非水電解質は、高出力の環境で非水電解質が分解されて負極の崩壊が引き起こされることを防止するか、低温高率放電特性、高温安定性、過充電防止、高温での電池膨張抑制効果などをより向上させるために、必要に応じて、前記非水電解質中に公知の電解質添加剤をさらに含んでもよい。
【0054】
かかるその他の電解質添加剤は、その代表例として、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換のカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系化合物、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上のSEI膜形成用添加剤を含んでもよい。
【0055】
前記環状カーボネート系化合物としては、ビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネートが挙げられる。
【0056】
前記ハロゲン置換のカーボネート系化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。
【0057】
前記スルトン系化合物としては、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物が挙げられる。
【0058】
前記サルフェート系化合物としては、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、またはメチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)が挙げられる。
【0059】
前記ホスフェート系化合物としては、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、テトラメチルトリメチルシリルホスフェート、トリメチルシリルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトからなる群から選択される1種以上の化合物が挙げられる。
【0060】
前記ボレート系化合物としては、テトラフェニルボレート、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiODFB)、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(C、LiBOB)が挙げられる。
【0061】
前記ニトリル系化合物としては、スクシノニトリル、アジポニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、および4-フルオロフェニルアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物が挙げられる。
【0062】
前記ベンゼン系化合物としてはフルオロベンゼンが挙げられ、前記アミン系化合物としてはトリエタノールアミンまたはエチレンジアミンなどが挙げられ、前記シラン系化合物としてはテトラビニルシランが挙げられる。
【0063】
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解質に含まれるリチウム塩と異なる化合物であり、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)、LiPO、またはLiBFなどが挙げられる。
【0064】
かかるその他の電解質添加剤のうち、ビニレンカーボネート(VC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、エチレンサルフェート(Esa)、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)のうち1つ以上をさらに含む場合、二次電池の初期活性化工程時に負極の表面にさらに強固なSEI被膜を形成することができ、高温における電解質の分解により生成され得るガスの発生を抑え、二次電池の高温安定性を向上させることができる。
【0065】
一方、前記その他の電解質添加剤は、2種以上が混合して用いられてもよく、非水電解質の全重量を基準として、0.050~20重量%、具体的には0.10~15重量%で含まれてもよく、好ましくは0.30~10重量%であってもよい。前記その他の電解質添加剤の含量が上記の範囲を満たす場合、より優れたイオン伝導度およびサイクル特性改善の効果が得られる。
【0066】
〔リチウム二次電池〕
本発明は、また、前記非水電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0067】
具体的に、前記リチウム二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータと、前述の非水電解質と、を含む。
【0068】
この際、本発明のリチウム二次電池は、当技術分野で知られた通常の方法により製造することができる。例えば、正極、負極、および正極と負極との間にセパレータが順に積層された電極組立体を形成した後、前記電極組立体を電池ケースの内部に挿入し、本発明に係る非水電解質を注入することで製造することができる。
【0069】
(1)正極
前記正極は、正極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む正極合剤スラリーを正極集電体上にコーティングして製造することができる。
【0070】
前記正極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが用いられてもよい。
【0071】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウムなどの1種以上の金属とリチウムを含むリチウム金属酸化物を含んでもよい。より具体的に、前記リチウム金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMn(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNi(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMn)O(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r<1、p+q+r=1)またはLi(Nip1Coq1Mnr1)O(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r1<2、p1+q1+r1=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr2S2)O(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、およびMoからなる群から選択され、p2、q2、r2、およびs2は、それぞれ独立の元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r2<1、0<s2<1、p2+q2+r2+s2=1である)など)などが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。
【0072】
中でも、電池の容量特性および安定性を高めることができる点から、前記リチウム金属酸化物は、LiCoO、LiMnO、LiNiO、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)OおよびLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなど)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)Oなど)などであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0073】
中でも、電池の容量特性を最も高めることができる点から、ニッケルの含有量が80atm%以上である正極活物質が用いられることができる。例えば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表されるものを含んでもよい。
【0074】
[化学式2]
LiNiCo
【0075】
前記化学式2中、前記Mは、MnおよびAlから選択される1種以上であり、好ましくは、Mn、またはMnおよびAlの組み合わせであってもよい。
【0076】
は、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、P、およびSからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0077】
前記xは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムの原子分率を表し、0.90≦x≦1.1、好ましくは0.95≦x≦1.08、より好ましくは1.0≦x≦1.08であってもよい。
【0078】
前記aは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた金属元素のうちニッケルの原子分率を表し、0.80≦a<1.0、好ましくは0.80≦a≦0.95、より好ましくは0.80≦a≦0.90であってもよい。ニッケルの含有量が上記の範囲を満たす場合、高容量特性を実現することができる。
【0079】
前記bは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた金属元素のうちコバルトの原子分率を表し、0<b<0.2、0<b≦0.15、または0.01≦b≦0.10であってもよい。
【0080】
前記cは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた金属元素のうちMの原子分率を表し、0<c<0.2、0<c≦0.15、または0.01≦c≦0.10であってもよい。
【0081】
前記dは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた金属元素のうちMの原子分率を表し、0≦d≦0.1、または0≦d≦0.05であってもよい。
【0082】
前記正極活物質は、正極合剤スラリー中において、溶媒を除いた固形物の全重量を基準として、60~99重量%、好ましくは70~99重量%、より好ましくは80~98重量%で含まれてもよい。
【0083】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と、集電体に対する結合を補助する成分である。
【0084】
このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、種々の共重合体などが挙げられる。
【0085】
通常、前記バインダーは、正極合剤スラリー中において、溶媒を除いた固形分の全重量を基準として、1~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは1~10重量%で含まれてもよい。
【0086】
前記導電材は、正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、正極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、1~20重量%で添加されてもよい。このような導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどの炭素粉末;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。
【0087】
通常、前記導電材は、正極合剤スラリー中において、溶媒を除いた固形物の全重量を基準として、1~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは1~10重量%で含まれてもよい。
【0088】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50~95重量%、好ましくは70~95重量%、より好ましくは70~90重量%となるように含まれてもよい。
【0089】
(2)負極
前記負極は、例えば、負極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む負極合剤スラリーを負極集電体上にコーティングして製造するか、炭素(C)からなる黒鉛電極または金属自体を負極として用いることができる。
【0090】
例えば、前記負極集電体上に負極合剤スラリーをコーティングして負極を製造する場合、前記負極集電体は、一般に、3~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0091】
また、前記負極活物質は、リチウム金属、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質、金属またはこれらの金属とリチウムの合金、金属複合酸化物、リチウムをドープおよび脱ドープできる物質、および遷移金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0092】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質としては、リチウムイオン二次電池で一般に用いられる炭素系負極活物質であれば特に制限されずに使用可能であり、その代表例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらをともに用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛などのような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0093】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、およびSnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族の元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択されるものが使用できる。
【0094】
前記リチウムをドープおよび脱ドープできる物質としては、Si、SiO(0<x≦2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらの少なくとも1つとSiOを混合して用いてもよい。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0095】
前記遷移金属酸化物としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0096】
前記負極活物質は、負極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、60~99重量%、好ましくは70~99重量%、より好ましくは80~98重量%で含まれてもよい。
【0097】
このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの種々の共重合体などが挙げられる。具体的に、増粘性が高い点から、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)-カルボキシメチルセルロース(CMC)が使用できる。
【0098】
通常、前記バインダーは、負極合剤スラリー中において、溶媒を除いた固形物の全重量を基準として、1~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは1~10重量%で含まれてもよい。
【0099】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、1~20重量%で添加されてもよい。このような導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどの炭素粉末;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0100】
前記導電材は、負極合剤スラリー中において、溶媒を除いた固形物の全重量を基準として、1~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは1~10重量%で含まれてもよい。
【0101】
前記溶媒は、水またはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%となるように含まれてもよい。
【0102】
前記負極として、金属自体を用いる場合、金属薄膜自体または前記負極集電体上に金属を物理的に接合、圧延、または蒸着などをする方法により製造することができる。前記蒸着方式としては、金属を電気的蒸着または化学的蒸着(chemical vapor deposition)する方法を用いることができる。
【0103】
例えば、前記金属薄膜自体または前記負極集電体上に接合/圧延/蒸着される金属は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銅(Cu)、およびインジウム(In)からなる群から選択される1種の金属または2種の金属の合金などを含んでもよい。
【0104】
(3)セパレータ
また、セパレータとしては、従来セパレータとして用いられている通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独共重合体、プロピレン単独共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して用いてもよく、または、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれた、コーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造として用いられてもよい。
【0105】
具体的に、本発明の電極組立体に含まれるセパレータとしては、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティング層が形成されているSRS(safety reinforced separator)セパレータが用いられてもよい。
【0106】
具体的に、本発明の電極組立体に含まれるセパレータは、多孔性のセパレータ基材と、前記セパレータ基材の片面または両面に全体的にコーティングされる多孔性のコーティング層と、を含み、前記コーティング層は、金属酸化物、メタロイド酸化物、金属フッ化物、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせから選択される無機物粒子と、前記無機物粒子を互いに連結および固定するバインダー高分子の混合物を含むものであってもよい。
【0107】
前記コーティング層は、無機物粒子として、Al、SiO、TiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、SrTiO、BaTiO、Mg(OH)、およびMgFから選択される1種以上を含むものであってもよい。ここで、無機物粒子は、セパレータの熱的安定性を向上させることができる。すなわち、無機物粒子は、高温でセパレータが収縮することを防止することができる。そして、バインダー高分子は、無機物粒子を固定させ、セパレータの機械的安定性も向上させることができる。
【0108】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形、またはコイン(coin)形などであってもよい。
【0109】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明の理解のための例示にすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。本記載の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が、添付の特許請求の範囲に属するということはいうまでもない。
【0110】
〔実施例〕
実施例1
(非水電解質の製造)
有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=30:70体積比)に、LiPFが1.0M、ビニレンカーボネート(VC)が0.5重量%となるように溶解して非水溶媒を製造し、前記非水溶媒99.9gに、化学式1-2の化合物0.1gを投入して非水電解質を製造した。
【0111】
【化5】
【0112】
(リチウム二次電池の製造)
正極活物質(LiNi0.9Co0.06Mn0.03Al0.01)と導電材(カーボンブラック)とバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を97.6:0.8:1.6の重量比で、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極スラリー(固形分60重量%)を製造した。前記正極スラリーを厚さ13.5μmの正極集電体(Al薄膜)の一面に塗布し、乾燥およびロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0113】
負極活物質(グラファイト:SiO=90.0:10.0重量比)と導電材(カーボンブラック)とバインダー(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)-カルボキシメチルセルロース(CMC))を97.6:0.8:1.6の重量比で、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して負極スラリー(固形分60重量%)を製造した。前記負極スラリーを厚さ6μmの負極集電体(Cu薄膜)の一面に塗布し、乾燥およびロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0114】
ドライルームで、上記で製造された正極と負極との間に、無機物粒子Alが塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータを介在した後、上記で製造された非水電解質を注液して二次電池を製造した。
【0115】
実施例2
前記実施例1で製造した非水溶媒99.7gに前記化学式1-2の化合物0.3gを投入して非水電解質を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法により二次電池を製造した。
【0116】
実施例3
前記実施例1で製造した非水溶媒99.5gに前記化学式1-2の化合物0.5gを投入して非水電解質を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法により二次電池を製造した。
【0117】
比較例1
前記実施例1で製造した非水溶媒100gで非水電解質を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法により二次電池を製造した。
【0118】
比較例2
前記実施例1で製造した非水溶媒99.9gに下記化学式Aの化合物0.1gを投入して非水電解質を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法により二次電池を製造した。
【0119】
【化6】
【0120】
〔実験例1-高温サイクル特性の評価〕
実施例1~3並びに比較例1および2で製造したそれぞれの二次電池に対して、サイクル特性を評価した。
【0121】
具体的に、前記実施例1~3並びに比較例1および2で製造されたそれぞれの電池を、45℃で、0.33Cの定電流で4.2Vまで充電し、0.33Cの定電流で2.8Vまで放電することを1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った後、100サイクル後の初期容量に対する容量維持率を測定した。その結果を下記表1に示した。
【0122】
【表1】
【0123】
表1に示されたように、本願発明の非水電解質用添加剤を使用した実施例1~3は、それを使用しなかった比較例1および2に比べて容量維持率が高く、寿命特性に優れていた。
【0124】
〔実験例2-高温貯蔵特性の評価〕
実施例1~3並びに比較例1および2で製造したそれぞれの二次電池に対して、高温貯蔵特性を評価した。
【0125】
具体的に、前記実施例1~3並びに比較例1および2のそれぞれの二次電池を、4.2Vまで満充電した後、60℃で4週間保存した。
【0126】
保存する前に、満充電された二次電池の抵抗を測定し、初期二次電池の抵抗と設定した。
【0127】
4週後、保存された二次電池の抵抗を測定し、4週の保存期間の間に増加した抵抗を計算した。前記初期二次電池の抵抗に対する、増加した抵抗のパーセントの割合を計算して4週後の抵抗増加率を導出した。その結果を下記表2に示した。
【0128】
【表2】
【0129】
前記表2に示されたように、実施例1~3の二次電池は、比較例1および2の二次電池に比べて4週後の抵抗増加率が少なく、高温で安定な性能を有することが確認された。