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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20240716BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20240716BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/32
B60R16/02 623
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020113374
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011942
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】今村 健太
(72)【発明者】
【氏名】高下 槙司
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-025850(JP,A)
【文献】特開2010-195155(JP,A)
【文献】特開2001-171443(JP,A)
【文献】特開2010-130812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22-3/40
H02G 11/00-11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたドア開口を前後方向のスライドにより開閉するスライドドアを採用した車両に適用されて、前記車体と前記スライドドアとに跨がって設けられるワイヤハーネスを配策する構造であって、
前記ワイヤハーネスが挿通されて、前記ワイヤハーネスを前記車体側で支持するクランプと、
前記クランプの上方に配置され、前記ワイヤハーネスが挿通されて、その挿通方向と直交する方向に前記ワイヤハーネスの移動を規制する規制部と、
前記規制部の上方に配置され、前記車体内で配策された車両側ハーネスと接続されるコネクタを保持する保持部と、を含み、
前記クランプから前記車体側の引き出し方向に引き出される前記ワイヤハーネスが、前記クランプの上方かつ前記引き出し方向と反対方向に折り返されて、前記規制部に挿通され、前記規制部の上方かつ前記引き出し方向にさらに折り返されて、
前記ワイヤハーネスの先端に取り付けられた前記コネクタが、前記保持部に保持される、配策構造。
【請求項2】
前記ワイヤハーネスにおける前記規制部から前記保持部に引き回される部分が張り出すことを防止する防止部、をさらに含む、請求項1に記載の配策構造。
【請求項3】
車体に設けられたドア開口を前後方向のスライドにより開閉するスライドドアを採用した車両に適用されて、前記車体と前記スライドドアとに跨がって設けられるワイヤハーネスを配策する構造であって、
前記ワイヤハーネスが挿通されて、前記ワイヤハーネスを前記車体側で支持するクランプと、
前記クランプの上方に配置され、前記ワイヤハーネスが挿通されて、その挿通方向と直交する方向に前記ワイヤハーネスの移動を規制する規制部と、
前記規制部の上方に配置され、前記車体内で配策された車両側ハーネスと接続されるコネクタを保持する保持部と、を含み、
前記クランプから前記車体側に引き出される前記ワイヤハーネスが、前記クランプの上方に折り返されて、前記規制部に挿通され、前記規制部の上方にさらに折り返されて、
前記ワイヤハーネスの先端に取り付けられた前記コネクタが、前記保持部に保持され、
前記ワイヤハーネスにおける前記規制部から前記保持部に引き回される部分が張り出すことを防止する防止部、をさらに含む、配策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワンボックスタイプやミニバンタイプの多くの車両では、後部サイドドアに前後方向のスライドにより開閉するスライドドアが採用されている。スライドドアには、ウインドウガラスを昇降させるパワーウインドウモータなどの電装品が備えられている。そのため、車体とスライドドアとの間にワイヤハーネスが配索され、ワイヤハーネスにより、車体側からスライドドア側への給電が行われる。
【0003】
ワイヤハーネスは、車体側がプロテクタで支持される(たとえば、特許文献1参照)。プロテクタは、底壁と上壁との間で1対の側壁に挟まれる空間を有しており、一方の開口をスライドドアにより開閉されるドア開口に向けて配置されている。ワイヤハーネスは、プロテクタに挿通されて、車体側およびスライドドア側の両側に引き出されている。プロテクタから車体側に引き出されたワイヤハーネスの先端部には、車体内で配策される車両側ハーネスが接続されるコネクタが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-187057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤハーネスは、車両側ハーネスとの接続作業をスムーズに行えるように、余長が持たされている。ワイヤハーネスが車両側ハーネスと接続された後、その余長によりワイヤハーネスがボルトなどの他部材と干渉しないよう、たとえば、コネクタがプロテクタと横並びに配置されて固定されることにより、余長が管理される。
【0006】
しかし、車両によっては、プロテクタとコネクタとを横並びで配置するスペースがない場合がある。
【0007】
本発明の目的は、プロテクタとコネクタとを横並びに配置するスペースがなくても、ワイヤハーネスの余長を管理できる、ワイヤハーネスの配索構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係るワイヤハーネスの配索構造は、車体に設けられたドア開口を前後方向のスライドにより開閉するスライドドアを採用した車両に適用されて、車体とスライドドアとに跨がって設けられるワイヤハーネスを配策する構造であって、ワイヤハーネスが挿通されて、ワイヤハーネスを車体側で支持するクランプと、クランプの上方に配置され、ワイヤハーネスが挿通されて、その挿通方向と直交する方向にワイヤハーネスの移動を規制する規制部と、規制部の上方に配置され、車体内で配策された車両側ハーネスと接続されるコネクタを保持する保持部とを含み、クランプから車体側に引き出されるワイヤハーネスが、クランプの上方に折り返されて、規制部に挿通され、規制部の上方にさらに折り返されて、ワイヤハーネスの先端に取り付けられたコネクタが、保持部に保持される。
【0009】
この配索構造では、クランプ、規制部および保持部が用いられる。ワイヤハーネスは、クランプに挿通され、クランプから車体側に引き出されて、クランプの上方に折り返される。そして、ワイヤハーネスは、クランプの上方に設けられた規制部に挿通され、規制部から引き出されて、規制部の上方にさらに折り返される。その折り返されたワイヤハーネスの先端には、車両側ハーネスと接続されるコネクタが取り付けられており、規制部の上方に配置された保持部により、そのコネクタが保持される。
【0010】
これにより、クランプとコネクタとを横並びに配置するスペースがなくても、クランプの上方でコネクタの位置が決まるので、ワイヤハーネスの余長を管理することができる。
【0011】
また、ワイヤハーネスが規制部に挿通されることにより、その挿通方向と直交する方向にワイヤハーネスの移動を規制でき、ワイヤハーネスが挿通方向と直交する方向に存在する他部材と干渉することを防止できる。
【0012】
ワイヤハーネスの配索構造には、ワイヤハーネスが規制部から保持部に引き回される部分で張り出すことを防止する防止部がさらに含まれることが好ましい。
【0013】
防止部により、規制部と保持部との間のワイヤハーネスの張り出しを防止することができる。
【0014】
また、作業者が保持部にコネクタを保持させる際に、規制部と保持部との間のワイヤハーネスの余長(余長により張り出した部分)が防止部に当たることにより、その余長が規制部とクランプとの間に追いやられる。そのため、ワイヤハーネスの配索時の余長の取り扱いが容易であり、ワイヤハーネスの配索作業性(組付け作業性)が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プロテクタとコネクタとを横並びに配置するスペースがなくても、ワイヤハーネスの余長を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤハーネスの配索構造が適用された車両の左側部を示す斜視図である。
図2】ワイヤハーネスの配索構造を示す平面図である。
図3】ワイヤハーネスの配索構造をドア開口側かつ後側から見た斜視図である。
図4】ワイヤハーネスの配索構造をドア開口側かつ前側から見た斜視図であり、ワイヤハーネスの配索作業の手順1を示す。
図5】ワイヤハーネスの配索構造をドア開口側かつ前側から見た斜視図であり、ワイヤハーネスの配索作業の手順2を示す。
図6】ワイヤハーネスの配索構造をドア開口側かつ前側から見た斜視図であり、ワイヤハーネスの配索作業の手順3を示す。
図7】ワイヤハーネスの配索構造をドア開口側かつ前側から見た斜視図であり、ワイヤハーネスの配索作業の手順4を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<ワイヤハーネスの配索構造>
図1は、本発明の一実施形態に係るワイヤハーネスWHの配索構造が適用された車両1の左側部を示す斜視図である。
【0019】
車両1は、ミニバンタイプの車両であり、車体2の後側部に設けられたドア開口3を開閉する後部サイドドアに、前後方向のスライドにより開閉するスライドドア4を採用している。
【0020】
車体2のフロアパネル5上には、ドア開口3の後端部に臨む位置に、回転クランプ6が配置されている。回転クランプ6からドア開口3側(スライドドア4側)に、ワイヤハーネスWHが引き出されている。回転クランプ6の前側には、後部座席7用のシートベルト8が設けられており、ワイヤハーネスWHは、シートベルト8とドア開口3の後端との間を通されて、スライドドア4内に導入されている。ワイヤハーネスWHにより、車体2側からスライドドア4に設けられているパワーウインドウモータなどの電装品への給電が行われる。
【0021】
図2は、ワイヤハーネスWHの配索構造を示す平面図である。図3は、ワイヤハーネスWHの配索構造をドア開口3側かつ後側から見た斜視図である。図4図5図6および図7は、ワイヤハーネスWHの配索構造をドア開口3側かつ前側から見た斜視図であり、それぞれワイヤハーネスWHの配索作業の手順1~4を示す。
【0022】
回転クランプ6は、ドア開口3側の端面に、ハーネス引出口11を有している。ハーネス引出口11は、ドア開口3側かつ斜め前側に向けられて、前後方向に長い略楕円形状に形成されている。回転クランプ6内には、ハーネス引出口11と連通するハーネス通路12が形成されている。回転クランプ6は、ドア開口3側の端から車体2の内側(以下、単に「内側」という。)かつ後側に車幅方向に対して斜めに延び、途中で屈曲して、車幅方向に延びている。回転クランプ6の内側の端面は、開放されている。
【0023】
ワイヤハーネスWHは、回転クランプ6のハーネス通路12に挿通されて、回転クランプ6の内側の端面から内側にも引き出されている。ワイヤハーネスWHは、球体13に通されており、その球体13がハーネス通路12内に配置されている。これにより、スライドドア4の開閉に追従して、ワイヤハーネスWHの球体13からドア開口3側の部分が前後方向にスムーズに揺動する。
【0024】
回転クランプ6の内側の端部上には、規制部21が設けられている。規制部21は、図4に示されるように、前後方向に間隔を空けて対向する1対の側壁22,23を有している。後側の側壁23の上端には、インテグラルヒンジ24により、蓋体25が揺動可能に支持されている。
【0025】
蓋体25の上面には、保持部26が一体に形成されている。保持部26は、蓋体25の上面から突出するブロック状をなしている。保持部26の前後の側面には、係止溝27が形成されている。
【0026】
また、回転クランプ6の上面には、途中の屈曲部分上に、防止部31が形成されている。防止部31の内側には、回転クランプ6を車体側に固定するボルト穴が形成されている。そのボルト穴にボルトが挿通され、ボルトが締め付けられることで、回転クランプ6が車体2に固定される。ボルトの頭部分が防止部31に囲まれていることで、ワイヤハーネスWHがボルトの頭部分と接触することが防止される。防止部31は、回転クランプ6の上面から膨出しており、その頂上から規制部21に向かって略S字状に湾曲する湾曲面32を有している。
【0027】
ワイヤハーネスWHの内側の先端には、雌コネクタ41が取り付けられている。雌コネクタ41には、図2に示されるように、車体2内で配索される車両側ハーネス42の雄コネクタ43が結合される。
【0028】
ワイヤハーネスWHの配索作業時には、図4に示されるように、回転クランプ6のハーネス通路12に挿通されて、その両端が回転クランプ6から引き出される。回転クランプ6から内側に引き出されたワイヤハーネスWHの先端部は、上方に折り返されて、規制部21の側壁22,23の間を通される。その後、図5に示されるように、規制部21の蓋体25が閉じられる。規制部21からドア開口3側に引き出されたワイヤハーネスWHの先端部は、規制部21の上方にさらに折り返される。ワイヤハーネスWHの先端の雌コネクタ41には、保持部26の係止溝27に進入可能な係止片(図示せず)が形成されている。ワイヤハーネスWHが規制部21の上方に折り返された後、図6に示されるように、雌コネクタ41が保持部26に向けて内側からスライドされて、雌コネクタ41の係止片が保持部26の係止溝27に差し入れられる。これにより、雌コネクタ41の係止片が保持部26の係止溝27に係止し、図7に示されるように、雌コネクタ41が保持部26に保持される。
【0029】
<作用効果>
以上のように、ワイヤハーネスWHの配索には、回転クランプ6、規制部21および保持部26が用いられる。ワイヤハーネスWHは、回転クランプ6に挿通され、回転クランプ6から車体2側に引き出されて、回転クランプ6の上方に折り返される。そして、ワイヤハーネスWHは、回転クランプ6の上方に設けられた規制部21に挿通され、規制部21から引き出されて、規制部21の上方にさらに折り返される。その折り返されたワイヤハーネスWHの先端には、車両側ハーネス42と接続される雌コネクタ41が取り付けられており、規制部21の上方に配置された保持部26により、その雌コネクタ41が保持される。
【0030】
これにより、回転クランプ6と雌コネクタ41とを横並びに配置するスペースがなくても、回転クランプ6の上方で雌コネクタ41の位置が決まるので、ワイヤハーネスWHの余長を管理することができる。
【0031】
また、ワイヤハーネスWHが規制部21(側壁22,23間)に挿通されることにより、その挿通方向と直交する方向、つまり前後方向にワイヤハーネスWHの移動を規制でき、ワイヤハーネスWHがその方向に存在する他部材と干渉することを防止できる。
【0032】
さらに、回転クランプ6の上面には、防止部31が膨出して形成されている。防止部31は、規制部21と対向する湾曲面32を有している。この湾曲面32により、ワイヤハーネスWHが規制部21から保持部26に引き回される部分で張り出すことを防止することができる。
【0033】
また、作業者が保持部26に雌コネクタ41を保持させる際に、規制部21と保持部26との間のワイヤハーネスWHの余長(余長により張り出した部分)が防止部31の湾曲面32に当たることにより、その余長が湾曲面32に沿って規制部21と回転クランプ6との間に追いやられる。そのため、ワイヤハーネスWHの配索時の余長の取り扱いが容易であり、ワイヤハーネスWHの配索作業性(組付け作業性)が向上する。
【0034】
また、規制部21は、その上面をなす蓋体25がインテグラルヒンジ24により開閉可能に設けられているので、ワイヤハーネスWHを規制部21の側壁22,23間に配索する際に、蓋体25を開けて、その作業を楽に行うことができる。よって、蓋体25を開閉可能とした構成により、ワイヤハーネスWHの配索作業性をさらに向上することができる。
【0035】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0036】
たとえば、ワイヤハーネスWHの内側の先端に雌コネクタ41が取り付けられているとしたが、雄コネクタがワイヤハーネスWHの内側の先端に取り付けられていてもよい。この場合、車両側ハーネス42には、その雄コネクタに結合可能な雌コネクタが取り付けられる。
【0037】
また、規制部21の蓋体25を開閉可能にするため、インテグラルヒンジ24が採用されているが、インテグラルヒンジ24以外のヒンジにより、蓋体25が開閉可能に設けられてもよい。ただし、インテグラルヒンジ24であれば、蓋体25と一体に形成できるので、コストの低減を図ることができる。
【0038】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1:車両
2:車体
3:ドア開口
4:スライドドア
21:規制部
26:保持部
31:防止部
41:雌コネクタ
42:車両側ハーネス
WH:ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7