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特許7520458能動型騒音制御システム及び車載システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】能動型騒音制御システム及び車載システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240716BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240716BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G10K11/178 140
B60R11/02 M
B60R11/02 S
H04R1/02 102B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020134201
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030302
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
(72)【発明者】
【氏名】梶川 嘉延
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012917(JP,A)
【文献】特開2020-106619(JP,A)
【文献】特表2019-536107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1席に着座したユーザに向けて第1の音源の音である第1音が出力され、第2席に着座したユーザに向けて第2の音源の音である第2音が出力される環境に適用される能動型騒音制御システムであって、
第1スピーカと、
第2スピーカと、
マイクと、
前記第1スピーカから、前記第1席に着座したユーザに対して前記第2音をキャンセルする音である第1キャンセル音を出力する第1騒音制御装置と、
前記第2スピーカから、前記第2席に着座したユーザに対して前記第1音をキャンセルする音である第2キャンセル音を出力する第2騒音制御装置とを備え、
前記第1騒音制御装置は、
前記第2音を入力とする第1の補助フィルタと、
前記第1の補助フィルタの出力を用いて前記マイクの出力の補正を行って、第1エラー信号として出力する第1の補正部と、
前記第2音を入力とし、前記第1エラー信号をエラーとして自身の伝達関数を更新する適応動作を行って、前記第1キャンセル音を生成する第1の適応フィルタとを備え、
前記第1の補助フィルタには、当該第1の補助フィルタの出力を用いた前記第1の補正部の補正によって、前記マイクの出力に含まれる前記第2音の成分が、前記第1席に着座したユーザの音の聴取位置と成り得る位置である第1キャンセル位置に伝達した音に含まれる前記第2音の成分に補正される伝達関数として予め求めた伝達関数が設定されており、
前記第2騒音制御装置は、
前記第1音を入力とする第2の補助フィルタと、
前記第2の補助フィルタの出力を用いて前記マイクの出力の補正を行って、第2エラー信号として出力する第2の補正部と、
前記第1音を入力とし、前記第2エラー信号をエラーとして自身の伝達関数を更新する適応動作を行って、前記第2キャンセル音を生成する第2の適応フィルタとを備え、
前記第2の補助フィルタには、当該第2の補助フィルタの出力を用いた前記第2の補正部の補正によって、前記マイクの出力に含まれる前記第1音の成分が、前記第2席に着座したユーザの音の聴取位置と成り得る位置である第2キャンセル位置に伝達した音に含まれる前記第1音の成分に補正される伝達関数として予め求めた伝達関数が設定されていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第1席から第2席に向かう方向を所定方向として、前記マイクは、前記所定方向について、前記第1スピーカと前記第2スピーカとの間の位置に配置されていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項3】
請求項1記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第1席から第2席に向かう方向を所定方向として、当該所定方向について、前記第1スピーカと前記マイクと前記第2スピーカは、前記第1席に着座したユーザの音の聴取位置と前記第2席に着座したユーザの音の聴取位置との間に配置されており、
前記マイクは、前記所定方向について、前記第1スピーカと前記第2スピーカとの間の位置に配置され、
前記第1音は前記第1スピーカから前記第1席に着座したユーザに向けて出力され、前記第2音は前記第2スピーカから前記第2席に着座したユーザに向けて出力されることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第2席は、前記第1席と前後方向に並んだ前記第1席の後方の席であり、
前記第1スピーカと前記マイクと前記第2スピーカは、前記第1席に設けられていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項5】
請求項4記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第1スピーカと前記マイクは前記第1席のヘッドレストに設けられ、前記第2スピーカは前記第1席のヘッドレストまたはシートバックに設けられていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項6】
請求項1、2または3記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第2席は、前記第1席と左右方向に並んだ席であることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第1スピーカと前記マイクと前記第2スピーカのうちの少なくとも一つは、自動車の車内天井に配置されていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項8】
請求項1、2または3記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第2席は、前記第1席と前後方向に並んだ前記第1席の後方の席であり、
前記第1キャンセル位置は、前記第1席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置であり、前記第2キャンセル位置は、前記第2席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置より前方かつ前記第1席より後方の位置であることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項9】
第1席と当該第1席の後ろの座席である第2席を有する自動車に搭載される車載システムであって、
前記第1席に着座したユーザに向けて第1の音源の音である第1音を出力する第1音出力部と、
前記第2席に着座したユーザに向けて第2の音源の音である第2音を出力する第2音出力部と、
前記第1席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置である第1キャンセル位置において、前記第2音を最もキャンセルする音である第1キャンセル音を出力する第1騒音制御部と、
前記第2席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置より前方かつ前記第1席より後方の位置である第2キャンセル位置において、前記第1音を最もキャンセルする音である第2キャンセル音を出力する第2騒音制御部とを有することを特徴とする車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を打ち消す騒音キャンセル音を放射することにより騒音を低減する能動型騒音制御(ANC; Active Noise Control)の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
騒音を打ち消す騒音キャンセル音を放射することにより騒音を低減する能動型騒音制御技術としては、騒音キャンセル位置の近傍に配置したマイクと、騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、騒音源の出力信号もしくは当該出力信号を疑似した信号に適応的に設定した伝達関数を施してスピーカから出力するキャンセル音を生成する適応フィルタとを設け、適応フィルタにおいて、補助フィルタを用いてマイクの出力を補正した信号をエラー信号として伝達関数を適応的に設定する能動型騒音制御(ANC; Active Noise Control)の技術が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【0003】
ここで、この技術では、補助フィルタには、予め騒音キャンセル位置に配置した学習用のマイクを用いて学習した、騒音キャンセル位置にマイクが配置されていた場合にマイクから出力される信号に、マイクが実際に出力する信号を補正する伝達関数が設定されており、このような補助フィルタを用いることにより、マイクの位置と異なる騒音キャンセル位置において、騒音をキャンセルしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-12917号公報
【文献】特開2018-72770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の座席のユーザと第2の座席のユーザが、それぞれ異なる音楽を楽しむため等に、第1の座席用のスピーカから第1の音源の音を出力し第2の座席用のスピーカから第2の音源の音を出力する環境において、上述した能動型騒音制御技術を適用して、各ユーザに、他のユーザが聴いている音源の音が聴こえないようにする場合には、次のような問題が生じる。
【0006】
すなわち、まず、それぞれの席毎にマイクが必要となり、システムの規模、コストが増大する。
また、たとえば、第1の座席と第2の座席を前後に並んだ席とし、各席に当該席のユーザに対してキャンセル音を出力するスピーカを組み込んだ場合、前席のユーザについては、当該ユーザの音の聴取位置が前席に対して設定した騒音キャンセル位置より前方の位置に変位しても、当該変位に伴い後席方向から聞こえる第2の音源の音の減衰も大きくなるため、第2の音源の音のキャンセル音によるキャンセルの効果の弱まりが感じられにくいが、後席のユーザについては、当該ユーザの音の聴取位置が後席に対して設定した騒音キャンセル位置より前方に変位すると、当該変位に伴い前席方向から聞こえる第1の音源の音が大きくなるため、第2の音源の音のキャンセル音によるキャンセルの効果の弱まりによる違和感が大きく感じられてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構成において、並んだ座席のユーザのそれぞれに対して能動型騒音制御技術を適用して当該ユーザにとっての騒音をキャンセルすることを課題とする。
【0008】
また、本発明は、並んだ座席のユーザのそれぞれに対して能動型騒音制御技術を適用して当該ユーザにとっての騒音をキャンセルしつつ、ユーザの頭部の移動に伴うキャンセル効果の弱まりによる違和感の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、第1席に着座したユーザに向けて第1の音源の音である第1音が出力され、第2席に着座したユーザに向けて第2の音源の音である第2音が出力される環境に適用される能動型騒音制御システムに、第1スピーカと、第2スピーカと、マイクと、前記第1スピーカから、前記第1席に着座したユーザに対して前記第2音をキャンセルする音である第1キャンセル音を出力する第1騒音制御装置と、前記第2スピーカから、前記第2席に着座したユーザに対して前記第1音をキャンセルする音である第2キャンセル音を出力する第2騒音制御装置とを備えたものである。
【0010】
ここで、前記第1騒音制御装置には、前記第2音を入力とする第1の補助フィルタと、前記第1の補助フィルタの出力を用いて前記マイクの出力の補正を行って、第1エラー信号として出力する第1の補正部と、前記第2音を入力とし、前記第1エラー信号をエラーとして自身の伝達関数を更新する適応動作を行って、前記第1キャンセル音を生成する第1の適応フィルタとを備える。また、前記第1の補助フィルタには、当該第1の補助フィルタの出力を用いた前記第1の補正部の補正によって、前記マイクの出力に含まれる前記第2音の成分が、前記第1席に着座したユーザの音の聴取位置と成り得る位置である第1キャンセル位置に伝達した音に含まれる前記第2音の成分に補正される伝達関数として予め求めた伝達関数を設定する。
【0011】
また、前記第2騒音制御装置には、前記第1音を入力とする第2の補助フィルタと、前記第2の補助フィルタの出力を用いて前記マイクの出力の補正を行って、第2エラー信号として出力する第2の補正部と、前記第1音を入力とし、前記第2エラー信号をエラーとして自身の伝達関数を更新する適応動作を行って、前記第2キャンセル音を生成する第2の適応フィルタとを備える。そして、前記第2の補助フィルタには、当該第2の補助フィルタの出力を用いた前記第2の補正部の補正によって、前記マイクの出力に含まれる前記第1音の成分が、前記第2席に着座したユーザの音の聴取位置と成り得る位置である第2キャンセル位置に伝達した音に含まれる前記第1音の成分に補正される伝達関数として予め求めた伝達関数を設定する。
【0012】
このような、能動型騒音制御システムによれば、第1音と第2音が無相関である場合、各席毎にマイクを設けることなく、第1席に対して出力される第1音を第2席においてキャンセルし、第2席に対して出力される第2音を第2席においてキャンセルすることができる。
【0013】
ここで、この能動型騒音制御システムにおいて、前記第1席から第2席に向かう方向を所定方向として、前記マイクを、前記所定方向について、前記第1スピーカと前記第2スピーカとの間の位置に配置してもよい。
【0014】
または、これらの能動型騒音制御システムにおいて、前記第1席から第2席に向かう方向を所定方向として、当該所定方向について、前記第1スピーカと前記マイクと前記第2スピーカを、前記第1席に着座したユーザの音の聴取位置と前記第2席に着座したユーザの音の聴取位置との間に配置し、前記マイクを、前記所定方向について、前記第1スピーカと前記第2スピーカとの間の位置に配置し、前記第1音を前記第1スピーカから前記第1席に着座したユーザに向けて出力し、前記第2音は前記第2スピーカから前記第2席に着座したユーザに向けて出力してもよい。
【0015】
これらのようにすることにより、第1キャンセル音や第2キャンセル音を出力する第1スピーカや第2スピーカを、第1音や第2音の出力に共用して、全体としてのシステムの構成を簡易化することができる。
【0016】
ここで、以上の能動型騒音制御システムは、前記第2席を、前記第1席と前後方向に並んだ前記第1席の後方の席とし、前記第1スピーカと前記マイクと前記第2スピーカを、前記第1席に設けてもよい。
【0017】
また、この場合には、前記第1スピーカと前記マイクを、前記第1席のヘッドレストに設け、前記第2スピーカを前記第1席のヘッドレストまたはシートバックに設けてもよい。
【0018】
または、以上の能動型騒音制御システムにおいて、前記第2席を、前記第1席と左右方向に並んだ席としてもよい。
また、以上の能動型騒音制御システムの前記第1スピーカと前記マイクと前記第2スピーカのうちの少なくとも一つを、前記自動車の車内天井に配置してもよい。
ここで、前記第2スピーカを前記第1席に着座したユーザの音の聴取位置と前記第2席に着座したユーザの音の聴取位置との間に配置し、前記第2音を前記第2スピーカから前記第2席に向けて出力する場合、能動型騒音制御システムは、前記第2席を、前記第1席と前後方向に並んだ前記第1席の後方の席とし、前記第1キャンセル位置を、前記第1席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置とし、前記第2キャンセル位置は、前記第2席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置より前方かつ前記第1席より後方の位置としてもよい。
【0019】
このようにすることにより、第2席に着座したユーザの聴取位置が標準的な音の聴取位置よりも前方の第2キャンセル位置にあるときに第1音を良好にキャンセルできる。また、第2席に着座したユーザの聴取位置が、標準的な聴取位置などの第2キャンセル位置よりも後方の位置となった場合には、聴取位置の前方から聞こえてくる第1音の大きさも、聴取位置が第2キャンセル位置にあるときよりも小さくなるので、ユーザの聴取位置が第2キャンセル位置よりも後方となったことによるキャンセル効果の弱まりによる違和感の発生は抑制される。
【0020】
また、併せて、本発明は、第1席と当該第1席の後ろの座席である第2席を有する自動車に搭載される車載システムに、前記第1席に着座したユーザに向けて第1の音源の音である第1音を出力する第1音出力部と、前記第2席に着座したユーザに向けて第2の音源の音である第2音を出力する第2音出力部と、前記第1席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置である第1キャンセル位置において、前記第2音を最もキャンセルする音である第1キャンセル音を出力する第1騒音制御部と、前記第2席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置より前方かつ前記第1席より後方の位置である第2キャンセル位置において、前記第1音を最もキャンセルする音である第2キャンセル音を出力する第2騒音制御部とを設けたものである。
【0021】
このような車載システムによれば、第2席に着座したユーザの聴取位置が標準的な音の聴取位置よりも前方の第2キャンセル位置にあるときに第1音を良好にキャンセルできる。また、第2席に着座したユーザの聴取位置が、標準的な聴取位置などの第2キャンセル位置よりも後方の位置となった場合には、前方の第1席の方向から聞こえてくる第1音の大きさも、より小さくなるので、ユーザの聴取位置の第2キャンセル位置からのずれによるキャンセル効果の弱まりによる違和感の発生は抑制される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成において、並んだ座席のユーザのそれぞれに対して能動型騒音制御技術を適用して当該ユーザにとっての騒音をキャンセルすることができる。
【0023】
また、並んだ座席のユーザのそれぞれに対して能動型騒音制御技術を適用して当該ユーザにとっての騒音をキャンセルしつつ、ユーザの頭部の移動に伴うキャンセル効果の弱まりによる違和感の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る車載システムのスピーカとマイクの配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る補助フィルタの伝達関数の学習の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る学習用マイクの配置例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る車載システムのスピーカとマイクの他の配置例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る車載システムのスピーカとマイクの他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは、自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、第1席用オーディオソース1、第2席用オーディオソース2、第1席用騒音制御装置3、第2席用騒音制御装置4、第1席用加算部5、第2席用加算部6、第1席用スピーカ7、第2席用スピーカ8、マイク9を備えている。
【0026】
第1席は、自動車の前席の一つであり、第2席は第1席の真後ろの後席である。
以下では、第1席は運転席であり、第2席は運転席の真後ろの後席であるものとして説明を行う。
図2a、bに示すように、第1席用スピーカ7は、運転席のヘッドレストの前部に前方に向けて音を放射するように配置され、第2席用スピーカ8は、運転席のヘッドレストの後部に後方に向けて音を放射するように配置される。
【0027】
そして、マイク9は、運転席のヘッドレストに、前後方向についての位置が第1席用スピーカ7と第2席用スピーカ8との間の位置となるように配置される。
図1に戻り、第1席用オーディオソース1は、第1席のユーザが聴取する音楽等の音を出力する音源であり、第1席用オーディオソース1が出力した音は第1席用加算部5を介して第1席用スピーカ7から出力される。
【0028】
また、第2席用オーディオソース2は、第2席のユーザが聴取する音楽等の音を出力する音源であり、第2席用オーディオソース2が出力した音は第2席用加算部6を介して第2席用スピーカ8から出力される。
【0029】
第1席用騒音制御装置3には、第2席用オーディオソース2の音とマイク9で収音した音が入力し、第1席用騒音制御装置3は、これらの入力する音から、第1席に着座したユーザの音の標準的な聴取位置において最も良く第2席用オーディオソース2の音をキャンセルするキャンセル音を生成し、第1席用加算部5を介して第1席用スピーカ7から出力する。
【0030】
また、第2席用騒音制御装置4には、第1席用オーディオソース1の音とマイク9で収音した音が入力し、第2席用騒音制御装置4は、これらの入力する音から、第2席に着座したユーザの音の標準的な聴取位置より少し前の位置において最も良く第1席用オーディオソース1の音をキャンセルするキャンセル音を生成し、第2席用加算部6を介して第2席用スピーカ8から出力する。
【0031】
第1席用騒音制御装置3は、第1席用可変フィルタ31、第1席用適応アルゴリズム実行部32、予め伝達関数S1^(z)が設定された第1席用推定フィルタ33、予め伝達関数H1(z)が設定された第1席用補助フィルタ34、第1席用減算器35を備えている。
【0032】
第2席用オーディオソース2から第1席用騒音制御装置3に入力した音は、第1席用可変フィルタ31を通ってキャンセル音として、第1席用加算部5を介して第1席用スピーカ7から出力される。
【0033】
また、第2席用オーディオソース2から第1席用騒音制御装置3に入力した音は、第1席用補助フィルタ34を通って、第1席用減算器35に送られる。
第1席用減算器35は、マイク9で収音した音から第1席用補助フィルタ34の出力を減算し、第1席用適応アルゴリズム実行部32に送る。
第1席用補助フィルタ34には、第1席用減算器35の出力が、第1席のユーザの標準的な聴取位置にマイク9が位置していた場合にマイク9から出力される信号になるように、マイク9が実際に出力する信号を補正する伝達関数H1(z)が予め設定されている。この第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)の設定法については後述する。
【0034】
次に、第1席用推定フィルタ33には、第1席用騒音制御装置3からマイク9までの伝達関数S1(z)を実測等により推定した推定伝達特性S1^(z)が予め設定されており、第1席用推定フィルタ33は、入力した第2席用オーディオソース2からの音に伝達特性S1^(z)を畳み込んで、第1席用適応アルゴリズム実行部32に出力する。
【0035】
第1席用可変フィルタ31と第1席用適応アルゴリズム実行部32と第1席用推定フィルタ33はFiltered-X適応フィルタを構成している。
第1席用適応アルゴリズム実行部32は、第1席用推定フィルタ33で伝達関数S1^(z)が畳み込まれた信号を用いながら、第1席用減算器35から出力される信号をエラーとしてNLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、第1席用可変フィルタ31の伝達関数W1(z)を更新する適応動作を行う。そして、この結果、第1席用適応アルゴリズム実行部32で適応に用いる第2席用オーディオソース2の音は第1席用オーディオソース1の音とは無相関であるので、第1席用可変フィルタ31は、第1席のユーザの標準的な聴取位置で第2席オーディオソースの出力する音をキャンセルするキャンセル音を出力するように適応される。
【0036】
次に、第2席用騒音制御装置4は、第2席用可変フィルタ41、第2席用適応アルゴリズム実行部42、予め伝達関数S2^(z)が設定された第2席用推定フィルタ43、予め伝達関数H2(z)が設定された第2席用補助フィルタ44、第2席用減算器45を備えている。
【0037】
第1席用オーディオソース1から第2席用騒音制御装置4に入力した音は、第2席用可変フィルタ41を通ってキャンセル音として、第2席用加算部6を介して第2席用スピーカ8から出力される。
【0038】
また、第1席用オーディオソース1から第2席用騒音制御装置4に入力した音は、第2席用補助フィルタ44を通って、第2席用減算器45に送られる。
第2席用減算器45は、マイク9で収音した音から第2席用補助フィルタ44の出力を減算し、第2席用適応アルゴリズム実行部42に送る。
第2席用補助フィルタ44には、第2席用減算器45の出力が、第2席のユーザの標準的な聴取位置よりも少し前の位置にマイク9が位置していた場合にマイク9から出力される信号になるように、マイク9が実際に出力する信号を補正する伝達関数H2(z)が予め設定されている。この第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)の設定法については後述する。
【0039】
次に、第2席用推定フィルタ43には、第2席用騒音制御装置4からマイク9までの伝達関数S2(z)を実測等により推定した推定伝達特性S2^(z)が予め設定されており、第2席用推定フィルタ43は、入力した第1席用オーディオソース1からの音に伝達特性S2^(z)を畳み込んで、第2席用適応アルゴリズム実行部42に出力する。
【0040】
第2席用可変フィルタ41と第2席用適応アルゴリズム実行部42と第2席用推定フィルタ43はFiltered-X適応フィルタを構成している。
第2席用適応アルゴリズム実行部42は、第2席用推定フィルタ43で伝達関数S2^(z)が畳み込まれた信号を用いながら、第2席用減算器45から出力される信号をエラーとしてNLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し第2席用可変フィルタ41の伝達関数W2(z)を更新する適応動作を行う。
【0041】
そして、この結果、第2席用適応アルゴリズム実行部42で適応に用いる第1席用オーディオソース1の音は第2席用オーディオソース2の音とは無相関であるので、第2席用可変フィルタ41は、第2席のユーザの聴取位置よりも少し前の位置で第1席オーディオソースの出力する音をキャンセルするキャンセル音を出力するように適応される。
【0042】
次に、上述した第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)の設定法について説明する。
第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)は、たとえば、予め次のような第1段階の学習処理と第2段階の学習処理を行うことにより設定する。
第1段階の学習処理は、図1の車載システムにおいて第1席用騒音制御装置3を図3aに示す第1段階学習処理部50に置換し、第1段階学習処理部50に学習用マイク60を接続した構成において行う。
【0043】
学習用マイク60は、図4a1、a2に示すように運転席である第1席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置に配置して用いる。
図3aに戻り、第1段階学習処理部50は、第1段階学習処理部50から学習用マイク60までの伝達関数S1v(z)の推定値S1v^(z)が設定された学習用推定フィルタ51、第1段階学習用可変フィルタ52、第1段階学習用適応アルゴリズム実行部53を備えている。
【0044】
そして、このような構成において、第2席用オーディオソース2の出力する音は学習用推定フィルタ51と第1段階学習用可変フィルタ52に入力し、第1段階学習用可変フィルタ52の出力は第1席用スピーカ7に出力される。また、第1段階学習用可変フィルタ52、学習用推定フィルタ51、第1段階学習用適応アルゴリズム実行部53は、Filtered-X適応フィルタを構成しており、第1段階学習用適応アルゴリズム実行部53は、学習用推定フィルタ51の出力を用いながら、学習用マイク60の出力をエラーとしてNLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、第1段階学習用可変フィルタ52の伝達関数W(z)を更新する。
【0045】
そして、適応アルゴリズムの実行によって、収束安定した第1段階学習用可変フィルタ52の伝達関数W(z)を第1段階の学習処理の結果として得る。
次に、第2段階の学習処理は、図1の車載システムにおいて第1席用騒音制御装置3を図3bに示す第2段階学習処理部70に置換した構成において行う。
第2段階学習処理部70は、第1段階の学習処理の結果として得た伝達関数W(z)を伝達関数として設定した固定フィルタ71と、第2段階学習用可変フィルタ72と、第2段階学習用適応アルゴリズム実行部73と、第2段階学習用減算器74を備えている。
【0046】
そして、このような構成において、第2席用オーディオソース2の出力する音は固定フィルタ71を通って第1席用スピーカ7に出力される。
また、第2席用オーディオソース2の出力する音は第2段階学習用可変フィルタ72を通って第2段階学習用減算器74に送られ、第2段階学習用減算器74はマイク9でピックアップした信号から第2段階学習用可変フィルタ72の出力を減算し出力する。
【0047】
第2段階適応アルゴリズム実行部は、第2段階学習用減算器74の出力をエラーとしてNLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、第2段階学習用可変フィルタ72の伝達関数H(z)を更新する。
【0048】
そして、適応アルゴリズムの実行によって、収束安定した伝達関数H(z)を、第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)とする。
ここで、このようにして学習された伝達関数H1(z)は、上述のように、第1席用騒音制御装置3において、第1席用減算器35の出力が、第1席のユーザの標準的な聴取位置にマイク9が位置していた場合にマイク9から出力される信号となることが期待できる伝達関数となる。
【0049】
次に、第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)の設定は、第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)の場合と同様に、図1の車載システムにおいて第2席用騒音制御装置4を図3aに示す第1段階学習処理部50に置換し、第1段階学習処理部50に学習用マイク60を接続した構成において第1段階の学習を行い、図1の車載システムにおいて第2席用騒音制御装置4を図3bに示す第2段階学習処理部70に置換した構成において第2段階の学習処理を行うことにより設定する。
【0050】
したがって、第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)の第1段階の学習処理においては、図3a、bの第2席用オーディオソース2は第1席用オーディオソース1となり、第1席用スピーカ7は第2席用スピーカ8となり、第1席用加算部5は第2席用加算部6となり、第2席用加算部6は第1席用加算部5となる。また、第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)の第1段階の学習処理においては、学習用マイク60を、図4b1、b2に示すように運転席の真後ろの席である第2席に着座したユーザの標準的な音の聴取位置の少し前の位置に配置して行う。なお、第1段階学習処理部50の学習用推定フィルタ51には、第1段階学習処理部50から図4b1、b2に示すように配置した学習用マイク60までの伝達関数S1v(z)の推定値を設定する。
【0051】
そして、第2段階の学習処理において収束安定した第2段階学習処理部70の第2段階学習用可変フィルタ72の伝達関数H(z)を、第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)とする。
【0052】
このようにして学習された伝達関数H2(z)は、上述のように、第2席用騒音制御装置4において、第2席用減算器45の出力が、第2席のユーザの標準的な聴取位置より少し前の位置にマイク9が位置していた場合にマイク9から出力される信号となることが期待できる伝達関数となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明した。
このように、本実施形態によれば、それぞれの席毎にマイク9を設けることなく、同じマイク9を用いて、第1席と第2席に対して、他方の席用の相互に無相関なオーディオソースの音のキャンセルを行うことができ、また、第1席用スピーカ7と第2席用スピーカ8をオーディオソースの音の出力とキャンセル音の出力に共用化できるので車載システムの構成を簡易化できる。
【0054】
また、本実施形態では、第2席用騒音制御装置4は、第2席に着座したユーザの音の標準的な聴取位置より少し前の位置において最も良く第1席用オーディオソース1の音をキャンセルするキャンセル音を生成するので、第2席に着座したユーザの聴取位置が標準的な音の聴取位置よりも前方の位置にあるときにも第1音を良好にキャンセルできる。また、この場合、第2席に着座したユーザの聴取位置が、標準的な聴取位置などの、より後方の位置となった場合にはキャンセル効果が弱まることとなるが、聴取位置の前方から聞こえてくる第1席用オーディオソース1の音の大きさも小さくなるので、キャンセル効果の弱まりによる違和感の発生は抑制される。
【0055】
なお、以上の実施形態は、マイク9と第1席用スピーカ7と第2席用スピーカ8と第1席用加算部5と第2席用加算部6と第1席用騒音制御装置3と第2席用騒音制御装置4とのセットを2セット設け、第1席のユーザの左右の耳のそれぞれについて第2席用オーディオソース2の音をキャンセルし、第2席のユーザの左右の耳のそれぞれについて第1席用オーディオソース1の音をキャンセルするようにしてもよい。
【0056】
すなわち、この場合には、たとえば、図5aに示すように、第1のセットの第1席のユーザの標準的な左耳の位置に向かって音を放射する第1席用スピーカ7a、第1のセットのマイク9a、第1のセットの第2席のユーザの標準的な左耳の位置に向かって音を放射する第2席用スピーカ8aを第1のヘッドレストの左側に配置し、第2のセットの第1席のユーザの標準的な右耳の位置に向かって音を放射する第1席用スピーカ7b、第2のセットのマイク9b、第2のセットの第2席のユーザの標準的な右耳の位置に向かって音を放射する第2席用スピーカ8bを第1のヘッドレストの右側に配置する。
【0057】
また、この場合には、第1セットの第1席用騒音制御装置3と第2セットの第1席用騒音制御装置3の第1席用適応アルゴリズム実行部32は、自セットの第1席用減算器35から出力される信号と他セットの第1席用減算器35から出力される信号との双方をエラーとして第1席用可変フィルタ31の伝達関数W1(z)を更新する適応動作を行い、第1セットの第2席用騒音制御装置4と第2セットの第2席用騒音制御装置4の第2席用適応アルゴリズム実行部42は、自セットの第2席用減算器45から出力される信号と他セットの第2席用減算器45から出力される信号との双方をエラーとして第2席用可変フィルタ41の伝達関数W2(z)を更新する適応動作を行う。
【0058】
また、この場合には、図5bに示すように、第1席のユーザの標準的な左の耳の位置に配置した第1席用左学習用マイク60aと、第1席のユーザの標準的な右の耳の位置に配置した第1席用右学習用マイク60bと、第2席のユーザの標準的な左の耳の位置の少し前の位置に配置した第2席用左学習用マイク60cと、第2席のユーザの標準的な右の耳の位置の少し前の位置に配置した第2席用右学習用マイク60dを用い、第1のセットの第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)として、マイク9aの出力と、マイク9aが第1席用左学習用マイク60aの位置にあった場合の出力との差分が第1席用減算器35の減算で補正される伝達関数H1(z)を求め、第2のセットの第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)として、マイク9bの出力と、マイク9bが第1席用右学習用マイク60bの位置にあった場合の出力との差分が第1席用減算器35の減算で補正される伝達関数H1(z)を求め、第1のセットの第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)として、マイク9aの出力と、マイク9aが第2席用左学習用マイク60cの位置にあった場合の出力との差分が第2席用減算器45の減算で補正される伝達関数H2(z)を求め、第2のセットの第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)として、マイク9bの出力と、マイク9bが第2席用右学習用マイク60dの位置にあった場合の出力との差分が第2席用減算器45の減算で補正される伝達関数H2(z)を求める。
【0059】
また、以上の実施形態は、第1席用スピーカ7から第1席用オーディオソース1の音と第1席用騒音制御装置3のキャンセル音の双方を出力し、第2席用スピーカ8から第2席用オーディオソース2の音と第2席用騒音制御装置4のキャンセル音の双方を出力したが、これは、第1席用オーディオソース1の音は、第1席の前方に別途設けたスピーカから出力し、第2席用オーディオソース2の音は、第1席と第2席の間に別途設けたスピーカから出力し、第1席用スピーカ7から第1席用騒音制御装置3のキャンセル音のみを出力し、第2席用スピーカ8から第2席用騒音制御装置4のキャンセル音のみを出力する場合にも同様に適用することができる。
【0060】
また、本実施形態における第1席用スピーカ7、第2席用スピーカ8、マイク9の配置は、図2a、bに示した配置以外の配置としてよい。
たとえば、図5cに示すように、自動車車内の天井のヘッドレストより前方の位置に第1席に向けて音を放射する第1席用スピーカ7を設け、自動車車内の天井のヘッドレストより前方の位置に第2席に向けて音を放射する第2席用スピーカ8を設け、第1席のヘッドレストにマイク9を設けるようにしてもよい。
【0061】
または、図5dに示すように、運転席のヘッドレストの前部に前方に向けて音を放射するように第1席用スピーカ7を設け、運転席のシートバックに後方に向けて音を放射するように第2席用スピーカ8を設け、運転席のヘッドレストの後部にマイク9を設けるようにしてもよい。
【0062】
なお、どのような配置にするにせよ、マイク9は、前後方向について第1席用スピーカ7と第2席用スピーカ8の間の位置とすることが好ましい。
また、第1席用スピーカ7、第2席用スピーカ8、マイク9は、近接した位置に配置し、第1席用スピーカ7とマイク9、第2席用スピーカ8とマイク9間の伝達経路の変化の影響が小さくなるようにすることが好ましい。
【0063】
また、以上の実施形態は、第1席と第2席を左右に並んだ座席として適用することもできる。
すなわち、この場合には、たとえば、左右に並んだ座席のうちの左の座席を第1席、右の座席を第2席として、図6a1に示すように、第1席と第2席の間に、左から右に向かって順に、左に向かって音を放射する第1席用スピーカ7、マイク9、右に向かって音を放射する第2席用スピーカ8を配置する。
【0064】
また、この場合には、第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)の第1段階の学習処理を、図6a2に示すように、第1席のユーザの標準的な右の耳の位置に学習用マイク60eを配置して行い、第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)の第1段階の学習処理を、第2席のユーザの標準的な左の耳の位置に学習用マイク60fを配置して行うようにする。
【0065】
ただし、第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)の第1段階の学習処理を、第1席のユーザの標準的な左の耳の位置や標準的な左右の耳の中央の位置に学習用マイク60を配置して行い、第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)の第1段階の学習処理を、第2席のユーザの標準的な右の耳の位置や標準的な左右の耳の中央の位置に学習用マイク60を配置して行うこともできる。
【0066】
また、本実施形態を拡張して、第1席と第2席を左右に並んだ座席として適用する場合においても、マイク9と第1席用スピーカ7と第2席用スピーカ8と第1席用加算部5と第2席用加算部6と第1席用騒音制御装置3と第2席用騒音制御装置4とのセットを2セット設け、第1席のユーザの左右の耳のそれぞれについて第2席用オーディオソース2の音をキャンセルし、第2席のユーザの左右の耳のそれぞれについて第1席用オーディオソース1の音をキャンセルするようにしてもよい。
【0067】
すなわち、この場合には、たとえば、図6b1に示すように、第1席と第2席の間に、左から右に向かって順に、第1のセットの第1席のユーザの標準的な右耳の位置に向かって音を放射する第1席用スピーカ7c、第1のセットのマイク9c、第1のセットの第2席のユーザの標準的な左耳の位置に向かって音を放射する第2席用スピーカ8cを配置し、これらの前方の左右方向について第1席と第2席の間に、左から右に向かって順に、第2のセットの第1席のユーザの標準的な左耳の位置に向かって音を放射する第1席用スピーカ7d、第2のセットのマイク9d、第2のセットの第2席のユーザの標準的な右耳の位置に向かって音を放射する第2席用スピーカ8dを配置する。
【0068】
また、この場合には、図6b2に示すように、第1席のユーザの標準的な左の耳の位置に配置した第1席用左学習用マイク60gと、第1席のユーザの標準的な右の耳の位置に配置した第1席用右学習用マイク60hと、第2席のユーザの標準的な左の耳の位置に配置した第2席用左学習用マイク60jと、第2席のユーザの標準的な右の耳の位置に配置した第2席用右学習用マイク60hを用いて、第1のセットの第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)として、マイク9cの出力と、マイク9cが第1席用右学習用マイク60hの位置にあった場合の出力との差分が第1席用減算器35の減算で補正される伝達関数H1(z)を求め、第2のセットの第1席用騒音制御装置3の第1席用補助フィルタ34の伝達関数H1(z)として、マイク9dの出力と、マイク9dが第1席用左学習用マイク60gの位置にあった場合の出力との差分が第1席用減算器35の減算で補正される伝達関数H1(z)を求め、第1のセットの第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)として、マイク9cの出力と、マイク9cが第2席用左学習用マイク60jの位置にあった場合の出力との差分が第2席用減算器45の減算で補正される伝達関数H2(z)を求め、第2のセットの第2席用騒音制御装置4の第2席用補助フィルタ44の伝達関数H2(z)として、マイク9dの出力と、マイク9dが第2席用右学習用マイク60kの位置にあった場合の出力との差分が第2席用減算器45の減算で補正される伝達関数H2(z)を求める。
【0069】
また、本実施形態は、各席のオーディオソースが複数チャネルである場合に他席のオーディオソースの音をキャンセルするように拡張して適用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1…第1席用オーディオソース、2…第2席用オーディオソース、3…第1席用騒音制御装置、4…第2席用騒音制御装置、5…第1席用加算部、6…第2席用加算部、7…第1席用スピーカ、8…第2席用スピーカ、9…マイク、31…第1席用可変フィルタ、32…第1席用適応アルゴリズム実行部、33…第1席用推定フィルタ、34…第1席用補助フィルタ、35…第1席用減算器、41…第2席用可変フィルタ、42…第2席用適応アルゴリズム実行部、43…第2席用推定フィルタ、44…第2席用補助フィルタ、45…第2席用減算器、50…第1段階学習処理部、51…学習用推定フィルタ、52…第1段階学習用可変フィルタ、53…第1段階学習用適応アルゴリズム実行部、60…学習用マイク、70…第2段階学習処理部、71…固定フィルタ、72…第2段階学習用可変フィルタ、73…第2段階学習用適応アルゴリズム実行部、74…第2段階学習用減算器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6