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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】基板生産システムおよび基板生産方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240716BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H05K13/04 M
H05K3/34 505D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020200992
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088876
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】川井 太朗
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/080502(WO,A1)
【文献】特開2020-161749(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029255(WO,A1)
【文献】特開2006-237236(JP,A)
【文献】特開2013-187483(JP,A)
【文献】特開2015-142032(JP,A)
【文献】特開2009-267099(JP,A)
【文献】特開2008-010666(JP,A)
【文献】特開2004-085216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた部品実装箇所に印刷された半田に部品を載置する部品実装機と、
前記部品実装箇所に半田を印刷する印刷処理と、前記印刷処理によって印刷された半田に部品を載置する実装処理と、前記実装処理によって部品が載置された基板を加熱することで半田を溶融させるリフロー処理とを通じて取得された実績データに基づき、前記部品実装箇所に印刷された半田に対して部品実装機が部品を載置する位置を制御する制御装置と
を備え、
前記実績データは、前記印刷処理で一の基板に印刷された半田の前記部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、前記実装処理で当該一の基板に載置された部品の前記部品実装箇所に対する位置である載置位置とを前記リフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の前記部品実装箇所への部品の実装の良否を前記リフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示し、
前記印刷処理が実行済みであって前記実装処理が未実行の基板に対して、前記印刷位置の良否を判定する印刷後検査が実行され、
前記制御装置は、前記載置位置と、前記リフロー後検査の検査結果が示す良品率との関係を示す良品分布率を前記実績データから求めて、前記良品分布率において良品率が100%となる載置位置の範囲である適正載置範囲が存在するのに必要となる前記印刷位置の許容範囲である印刷許容範囲を求め、
前記印刷後検査では、前記印刷位置と前記印刷許容範囲とを比較した結果に基づき前記印刷位置の良否を判定する基板生産システム。
【請求項2】
部品実装箇所に対応する開口を有するマスクと基板とを互いに位置合わせして、前記開口を介して前記部品実装箇所に半田を印刷する半田印刷機と、
前記基板に設けられた前記部品実装箇所に印刷された半田に部品を載置する部品実装機と、
前記部品実装箇所に半田を印刷する印刷処理と、前記印刷処理によって印刷された半田に部品を載置する実装処理と、前記実装処理によって部品が載置された基板を加熱することで半田を溶融させるリフロー処理とを通じて取得された実績データに基づき、前記部品実装箇所に印刷された半田に対して部品実装機が部品を載置する位置を制御する制御装置と
を備え、
前記実績データは、前記印刷処理で一の基板に印刷された半田の前記部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、前記実装処理で当該一の基板に載置された部品の前記部品実装箇所に対する位置である載置位置とを前記リフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の前記部品実装箇所への部品の実装の良否を前記リフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示し、
前記印刷処理が実行済みであって前記実装処理が未実行の基板に対して、前記印刷位置の良否を判定する印刷後検査が実行され、
前記制御装置は、前記リフロー後検査において所定の第1割合以上で部品の実装が良好と判定されるのに必要となる前記印刷位置の許容範囲である印刷許容範囲を前記実績データから求め、
前記印刷後検査では、前記印刷位置と前記印刷許容範囲とを比較した結果に基づき前記印刷位置の良否を判定し、
複数の前記部品実装箇所が基板に設けられており、
前記制御装置は、当該複数の前記部品実装箇所のそれぞれについて前記印刷位置を求めた結果に最小二乗法を適用することで算出したマスクと基板との位置関係に基づき、前記半田印刷機によるマスクと基板との位置合わせを制御し、
前記最小二乗法では、前記印刷許容範囲が狭い前記部品実装箇所ほど大きな重み係数を与える基板生産システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記実績データを教示データとして前記測定結果と前記検査結果との関係を機械学習により学習した結果に基づき、前記印刷許容範囲を求める請求項1または2に記載の基板生産システム。
【請求項4】
基板に設けられた部品実装箇所に印刷された半田に部品を載置する部品実装機と、
前記部品実装箇所に半田を印刷する印刷処理と、前記印刷処理によって印刷された半田に部品を載置する実装処理と、前記実装処理によって部品が載置された基板を加熱することで半田を溶融させるリフロー処理とを通じて取得された実績データに基づき、前記部品実装箇所に印刷された半田に対して部品実装機が部品を載置する位置を制御する制御装置と
を備え、
前記実績データは、前記印刷処理で一の基板に印刷された半田の前記部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、前記実装処理で当該一の基板に載置された部品の前記部品実装箇所に対する位置である載置位置とを前記リフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の前記部品実装箇所への部品の実装の良否を前記リフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示し、
前記実装処理が実行済みであって前記リフロー処理が未実行の基板に対して、前記載置位置の良否を判定する実装後検査が実行され、
前記制御装置は、前記リフロー後検査において所定の第2割合以上で部品の実装が良好と判定されるのに必要となる前記載置位置の許容範囲である載置許容範囲を、前記印刷位置が異なる複数の場合について前記実績データから求め、
前記実装後検査では、対象となる前記部品実装箇所の前記印刷位置に対応する前記載置許容範囲と、対象となる前記部品実装箇所の前記載置位置とを比較した結果に基づき、前記載置位置の良否を判定する基板生産システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記実績データを教示データとして前記測定結果と前記検査結果との関係を機械学習により学習した結果に基づき、前記載置許容範囲を求める請求項に記載の基板生産システム。
【請求項6】
前記第2割合は100%である請求項4または5記載の基板生産システム。
【請求項7】
基板に設けられた部品実装箇所に印刷された半田に部品を載置する部品実装機と、
前記部品実装箇所に半田を印刷する印刷処理と、前記印刷処理によって印刷された半田に部品を載置する実装処理と、前記実装処理によって部品が載置された基板を加熱することで半田を溶融させるリフロー処理とを通じて取得された実績データに基づき、前記部品実装箇所に印刷された半田に対して部品実装機が部品を載置する位置を制御する制御装置と
を備え、
前記実績データは、前記印刷処理で一の基板に印刷された半田の前記部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、前記実装処理で当該一の基板に載置された部品の前記部品実装箇所に対する位置である載置位置とを前記リフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の前記部品実装箇所への部品の実装の良否を前記リフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示し、
前記制御装置は、少なくとも部品の重量を含む、前記リフロー後検査の結果と相関を有する相関因子と前記リフロー後検査の結果との関係を、前記実績データを教示データとして機械学習により学習して、保存する基板生産システム。
【請求項8】
基板に設けられた部品実装箇所に半田を印刷する印刷処理と、前記印刷処理によって印刷された半田に部品を載置する実装処理と、前記実装処理によって部品が載置された基板を加熱することで半田を溶融させるリフロー処理とを通じて実績データを取得する工程と、
前記部品実装箇所に印刷された半田に対して部品実装機が部品を載置する位置を前記実績データに基づき制御する工程と
を備え、
前記実績データは、前記印刷処理で一の基板に印刷された半田の前記部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、前記実装処理で当該一の基板に載置された部品の前記部品実装箇所に対する位置である載置位置とを前記リフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の前記部品実装箇所への部品の実装の良否を前記リフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示し、
前記印刷処理が実行済みであって前記実装処理が未実行の基板に対して、前記印刷位置の良否を判定する印刷後検査が実行され、
前記載置位置と、前記リフロー後検査の検査結果が示す良品率との関係を示す良品分布率を前記実績データから求めて、前記良品分布率において良品率が100%となる載置位置の範囲である適正載置範囲が存在するのに必要となる前記印刷位置の許容範囲である印刷許容範囲が求められ、
前記印刷後検査では、前記印刷位置と前記印刷許容範囲とを比較した結果に基づき前記印刷位置の良否を判定する基板生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に設けられた部品実装箇所に印刷された半田に部品を載置することで、部品が実装された基板を生産する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の部品実装箇所への半田の印刷、部品実装箇所に印刷された半田への部品の載置および加熱による半田の溶融といった一連の処理を実行することで、部品が実装された基板が生産される。かかる基板生産では、部品が半田によって部品実装箇所に的確に実装されていることが求められる。しかしながら、半田の印刷で用いられるマスクと基板との位置決め精度の影響等によって、半田と部品実装箇所との間に位置ずれが生じる場合がある。このような場合、特許文献1に記載されているように、半田に対する部品の載置位置を調整することで、半田の溶融に伴うセルフアライメント効果によって部品を部品実装箇所に向けて移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-110170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セルフアライメント効果の大きさは、部品の外形・重量や、部品実装箇所と半田との位置のずれの程度等の影響を受ける。したがって、部品がセルフアライメント効果によってどのように移動するかは予測しきれず、部品実装箇所からずれて印刷された半田に対して、いずれの位置に部品を載置すれば良いのかを判断することは困難であった。その結果、部品を部品実装箇所に的確に実装できない場合があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、セルフアライメント効果の大きさの違いによらず、基板の部品実装箇所に部品を的確に実装することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板生産システムは、基板に設けられた部品実装箇所に印刷された半田に部品を載置する部品実装機と、部品実装箇所に半田を印刷する印刷処理と、印刷処理によって印刷された半田に部品を載置する実装処理と、実装処理によって部品が載置された基板を加熱することで半田を溶融させるリフロー処理とを通じて取得された実績データに基づき、部品実装箇所に印刷された半田に対して部品実装機が部品を載置する位置を制御する制御装置とを備え、実績データは、印刷処理で一の基板に印刷された半田の部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、実装処理で当該一の基板に載置された部品の部品実装箇所に対する位置である載置位置とをリフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の部品実装箇所への部品の実装の良否をリフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示す。
【0007】
本発明に係る基板生産方法は、基板に設けられた部品実装箇所に半田を印刷する印刷処理と、印刷処理によって印刷された半田に部品を載置する実装処理と、実装処理によって部品が載置された基板を加熱することで半田を溶融させるリフロー処理とを通じて実績データを取得する工程と、部品実装箇所に印刷された半田に対して部品実装機が部品を載置する位置を実績データに基づき制御する工程とを備え、実績データは、印刷処理で一の基板に印刷された半田の部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、実装処理で当該一の基板に載置された部品の部品実装箇所に対する位置である載置位置とをリフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の部品実装箇所への部品の実装の良否をリフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示す。
【0008】
このように構成された本発明(基板生産システム、基板生産方法)では、印刷処理、実装処理およびリフロー処理を通じて取得された実績データに基づき、部品実装機による部品実装箇所への部品の載置が制御される。この実績データは、印刷処理で一の基板に印刷された半田の部品実装箇所に対する位置である印刷位置と、実装処理で当該一の基板に載置された部品の部品実装箇所に対する位置である載置位置とをリフロー処理の前に測定した測定結果と、当該一の基板の部品実装箇所への部品の実装の良否をリフロー処理の後に判定するリフロー後検査の検査結果とを対応付けて示す。つまり、実績データは、半田の印刷位置および部品の載置位置と、部品実装の良否とを対応付けて示す。かかる実績データに基づき半田に対する部品の載置位置を制御することで、セルフアライメント効果の大きさを織り込んだ適切な位置に部品を載置できる。その結果、セルフアライメント効果の大きさの違いによらず、基板の部品実装箇所に部品を的確に実装することが可能となる。
【0009】
また、印刷処理が実行済みであって実装処理が未実行の基板に対して、印刷位置の良否を判定する印刷後検査が実行され、制御装置は、リフロー後検査において所定の第1割合以上で部品の実装が良好と判定されるのに必要となる印刷位置の許容範囲である印刷許容範囲を実績データから求め、印刷後検査では、印刷位置と印刷許容範囲とを比較した結果に基づき印刷位置の良否を判定するように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、実績データを踏まえた適切な印刷許容範囲に基づき、印刷位置の良否を判定することができる。
【0010】
また、部品実装箇所に対応する開口を有するマスクと基板とを互いに位置合わせして、開口を介して部品実装箇所に半田を印刷する半田印刷機をさらに備え、複数の部品実装箇所が基板に設けられており、制御装置は、当該複数の部品実装箇所のそれぞれについて印刷位置を求めた結果に最小二乗法を適用することで算出したマスクと基板との位置関係に基づき、半田印刷機によるマスクと基板との位置合わせを制御し、最小二乗法では、印刷許容範囲が狭い部品実装箇所ほど大きな重み係数を与えるように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、基板の複数の部品実装箇所のそれぞれに対してマスクの開口を適切に位置合わせすることができる。
【0011】
また、制御装置は、実績データを教示データとして測定結果と検査結果との関係を機械学習により学習した結果に基づき、印刷許容範囲を求めるように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、実績データに基づき適切な印刷許容範囲を求めることができる。
【0012】
また、第1割合は100%であるように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、適切な印刷許容範囲に基づき、印刷位置の良否を判定することができる。
【0013】
また、実装処理が実行済みであってリフロー処理が未実行の基板に対して、載置位置の良否を判定する実装後検査が実行され、制御装置は、リフロー後検査において所定の第2割合以上で部品の実装が良好と判定されるのに必要となる載置位置の許容範囲である載置許容範囲を、印刷位置が異なる複数の場合について実績データから求め、実装後検査では、対象となる部品実装箇所の印刷位置に対応する載置許容範囲と、対象となる部品実装箇所の載置位置とを比較した結果に基づき、載置位置の良否を判定するように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、実績データを踏まえた適切な載置許容範囲に基づき、載置位置の良否を判定することができる。
【0014】
また、制御装置は、実績データを教示データとして測定結果と検査結果との関係を機械学習により学習した結果に基づき、載置許容範囲を求めるように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、実績データに基づき適切な載置許容範囲を求めることができる。
【0015】
また、第2割合は100%であるように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、適切な印刷許容範囲に基づき、載置位置の良否を判定することができる。
【0016】
また、制御装置は、少なくとも部品の重量を含む、リフロー後検査の結果と相関を有する相関因子とリフロー後検査の結果との関係を、実績データを教示データとして機械学習により学習して、保存するように、基板生産システムを構成してもよい。かかる構成では、保存された相関因子が与える影響を参照して、基板生産に役立てることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、セルフアライメント効果の大きさの違いによらず、基板の部品実装箇所に部品を的確に実装することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る基板生産システムの一例を示すブロック図。
図2】半田印刷機を模式的に示す正面図。
図3】部品実装機を模式的に示す平面図。
図4】印刷処理、実装処理およびリフロー処理を経た基板の状態変化および基板検査の結果の第1実装例~第3実装例を模式的に示す平面図。
図5】印刷処理、実装処理およびリフロー処理を経た基板の状態変化および基板検査の結果の第4実装例~第6実装例を模式的に示す平面図。
図6】半田印刷位置および部品載置位置を模式的に示す平面図。
図7】実績データの一例を表として示す図。
図8】実績データに対して実行される解析の内容を模式的に示す図。
図9】基板生産システムのサーバコンピュータの制御によって実行される動作の第1例を示すフローチャート。
図10】基板生産システムのサーバコンピュータの制御によって実行される動作の第2例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明に係る基板生産システムの一例を示すブロック図である。基板生産システム1は半田印刷機2、印刷検査機3、部品実装機4、実装検査機5、リフロー炉6、基板検査機7およびこれらの装置2~7を統括的に制御するサーバコンピュータ9を備える。半田印刷機2は基板B(図2)に半田を印刷し、印刷検査機3は半田印刷機2による半田の印刷状態を検査する。部品実装機4は印刷検査機3による半田印刷状態の検査を受けた基板Bの半田に対して部品を載置し、実装検査機5は部品実装機4による部品の載置状態を検査する。リフロー炉6は実装検査機5による部品載置状態の検査を受けた基板Bを加熱することで基板Bに印刷された半田を溶融させ、基板検査機7はリフロー炉6による加熱を受けた基板Bにおける部品の実装状態を検査する。基板生産システム1は、このようにして、部品実装済みの基板Bを生産する(基板生産)。
【0020】
なお、装置2~7に対する基板Bの搬送は、コンベアあるいはAGV(Automated Guided Vehicle)といった搬送ロボットや、作業員によって行うことができる。また、印刷検査機3の検査で不良と判定された基板Bは部品実装機4に搬送されず、実装検査機5の検査で不良と判定された基板Bは実装検査機5に搬送されない。
【0021】
サーバコンピュータ9は、基板生産システム1における基板生産の管理および制御を行う。このサーバコンピュータ9は、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶部91と、演算機能を有するプロセッサー等で構成された学習部92とを有する。これら記憶部91および学習部92は、後述する機械学習を実行する。
【0022】
図2は半田印刷機を模式的に示す正面図である。図2および以下の図では、Z方向を鉛直方向とし、X方向およびY方向を水平方向とするXYZ直交座標軸を適宜示す。半田印刷機2は、基板Bのランドに対応して設けられたパターン孔が貫通するマスクMを用いて基板Bのランドに半田を印刷する。この半田印刷機2は、マスクMを保持するマスク保持ユニット21と、マスクMの下方に配置された基板保持ユニット23と、マスクMの上方に配置されたスキージユニット29とを備える。そして、半田印刷機2は、基板保持ユニット23により基板BをマスクMに下方から対向させつつスキージユニット29のスキージ291をマスクMの上面にX方向へ摺動させることで、マスクMの上面に供給された半田を、マスクMのパターン孔を介して基板Bの上面に印刷する(印刷処理)。
【0023】
基板保持ユニット23は、マスク保持ユニット2に保持されたマスクMの下方に配置され、マスクMに対して基板Bの位置を合わせる。この基板保持ユニット23は、基板Bを搬送する一対のコンベア24と、コンベア24から受け取った基板Bを保持する基板保持部25と、コンベア24および基板保持部25を支持する平板形状の可動テーブル26とを有する。
【0024】
一対のコンベア24はX方向に間隔を空けつつY方向に平行に配置されており、それぞれの上面で基板BのX方向の両端を下方から支持する。そして、各コンベア24がY方向に基板Bを搬送して、印刷装置1に対する基板Bの搬入あるいは搬出を実行する。
【0025】
基板保持部25は、平板形状の昇降テーブル251と、可動テーブル26に対してZ方向にスライド可能なスライド支柱252とを有し、昇降テーブル251がスライド支柱252の上端に支持されている。また、昇降テーブル251の上面にはZ方向に立設された複数のバックアップピン253がX方向およびY方向に間隔を空けて並ぶ。そして、スライド支柱252が昇降することで、昇降テーブル251とともにバックアップピン253が昇降する。例えばコンベア24の基板Bの搬入時は、各バックアップピン253の上端がコンベア24の上面より下方に位置する。そして、コンベア24がバックアップピン253の直上に基板Bを搬入すると、バックアップピン253が上昇して、バックアップピン253の上端がコンベア24の上面より上方へ突出する。これによって、コンベア24の上面から各バックアップピン253の上端へ基板Bが受け渡される。
【0026】
また、基板保持部25は、一対のコンベア24の上方でX方向に間隔を空けて配置された一対のクランププレート254を有する。各クランププレート254の上面はX方向およびY方向に平行な平面であり、同じ高さに位置する。これらクランププレート254のうち少なくとも一方は、X方向に可動である。
【0027】
そして、バックアップピン253上の基板Bが一対のクランププレート254の間にまで上昇して、可動のクランププレート254がX方向に移動することで、これらクランププレート254の間隔が狭まって、基板Bがこれらクランププレート254によりX方向(水平方向)からクランプされる。
【0028】
さらに、基板保持ユニット23は、可動テーブル26を駆動するテーブル駆動機構27を有する。このテーブル駆動機構27は、X軸テーブル271と、X軸テーブル271の上面に取り付けられたY軸テーブル272と、Y軸テーブル272の上面に取り付けられたR軸テーブル273と、R軸テーブル273に対して可動テーブル26を昇降させるボールネジ274とを有する。このテーブル駆動機構27は、X軸テーブル271をX方向に駆動し、Y軸テーブル272をY方向へ駆動し、R軸テーブル273をR方向(Z方向に平行な軸を中心とする回転方向)に駆動し、ボールネジ274を回転させることで可動テーブル26をZ方向に駆動する。つまり、テーブル駆動機構27は、可動テーブル26に配置されたコンベア24および基板保持部25をX、Y、Z、R方向に駆動することができる。例えば搬入された基板BをマスクMに対して位置決めする際には、テーブル駆動機構27は、クランププレート254にクランプされた基板Bの位置を、X・Y・R方向に調整しつつ、Z方向へ上昇させる。これによって、クランププレート254および基板Bそれぞれの上面がマスクMの下面に接触する。
【0029】
スキージユニット29は、スキージ291の回転角度を調整することでスキージ291を所定の角度(アタック角度)でマスクMの上面に当接させるとともに、所定の圧力(印圧)でスキージ291をマスクMに押圧する。この状態から、スキージユニット29は、スキージ291を所定の速度(スキージ速度)でスキージ291をX方向に移動させることで、マスクMのパターン孔を介して半田を基板Bのランドに印刷する。
【0030】
図3は部品実装機を模式的に示す平面図である。図3に示すように、部品実装機4は、Y方向へ並列に配置された一対のコンベア41を備える。そして、部品実装機4は、コンベア41によりY方向(基板搬送方向)の上流側から実装処理位置(図3の基板Bの位置)に搬入した基板Bに対して部品Pを実装し、部品Pの実装を完了した基板B(部品実装基板B)をコンベア41により実装処理位置からY方向の下流側へ搬出する。
【0031】
この部品実装機4では、X方向に平行な一対のX軸レール421と、X方向に平行なX軸ボールネジ422と、X軸ボールネジ422を回転駆動するX軸モータ423(サーボモータ)とが設けられ、Y方向に平行なY軸レール424が一対のX軸レール421にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ422のナットに固定されている。Y軸レール424には、Y方向に平行なY軸ボールネジ425と、Y軸ボールネジ425を回転駆動するY軸モータ426(サーボモータ)とが取り付けられており、ヘッドユニット43がY軸レール424にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ425のナットに固定されている。したがって、X軸モータ423によりX軸ボールネジ422を回転させてヘッドユニット43をX方向に移動させ、Y軸モータ426によりY軸ボールネジ425を回転させてヘッドユニット43をY方向に移動させることができる。
【0032】
ヘッドユニット43は、いわゆるロータリ型の実装ヘッド431を有する。つまり、実装ヘッド431は、回転軸を中心に円周状に等角度間隔で配列された複数(8個)のノズル432を有し、複数のノズル432は回転軸を中心に回転可能である。
【0033】
図3に示すように、一対のコンベア41のY方向の両側それぞれでは、2つの部品供給部44がX方向に並んでいる。各部品供給部44に対しては、複数のテープフィーダ441がY方向に並んで着脱可能に装着されている。テープフィーダ441はX方向に延設されており、X方向におけるコンベア41側の先端部に部品供給箇所442を有する。そして、集積回路、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品Pを所定間隔おきに収納したテープが巻き付けられた部品供給リールが各テープフィーダ441に対して配置され、テープフィーダ441には、部品供給リールから引き出されたテープが装填されている。そして、テープフィーダ441は、テープをコンベア41側へ向けてX方向に間欠的に送り出す。これによって、テープ内の部品PがX方向(フィード方向)に送り出されて、テープフィーダ441の部品供給箇所442に順番に供給される。
【0034】
そして、実装ヘッド431は、各ノズル432により部品Pの吸着・載置を行う。具体的には、実装ヘッド431はテープフィーダ441の上方へ移動して、テープフィーダ441により部品供給箇所442に供給された部品Pにノズル432を当接させる。そして、実装ヘッド431は、所定の負圧を実装ヘッド431に発生させることで、ノズル432により部品Pを吸着(ピックアップ)する。実装ヘッド431はこうして部品Pを保持した状態で、実装処理位置の基板Bの上方に所定の移載速度で移動して基板Bに部品Pを載置する。こうして、部品Pを吸着して基板Bに載置する実装処理が部品実装機4により実行される。
【0035】
このように、基板生産システム1では、半田印刷機2による半田の印刷(印刷処理)と、部品実装機4による部品Pの実装(実装処理)と、リフロー炉6による半田の溶融(リフロー処理)とを経て、部品Pが実装された基板Bが生産される。こうして生産された基板Bに対する部品実装の良否は、基板検査機7によって検査される(基板検査)。続いては、基板生産システム1において基板Bに対して実行されるこれら一連の動作について説明する。
【0036】
図4は印刷処理、実装処理およびリフロー処理を経た基板の状態変化および基板検査の結果の第1実装例~第3実装例を模式的に示す平面図である。図4の「印刷直後」の列では、半田印刷機2による印刷処理が実行済みであって部品実装機4による実装処理が未実行の基板Bの状態が示されている。この「印刷直後」の列に示すように、半田印刷機2は、基板BのランドBlに対して半田Sを印刷する。第1および第2実装例では、半田SはランドBlの中央に印刷されており、半田Sの印刷位置がランドBlに一致する。一方、第3実装例では、半田Sの印刷位置がランドBlに対して右側にずれて、半田SはランドBlから右側にはみ出している。
【0037】
図4の「実装直後」の列では、部品実装機4による実装処理が実行済みであってリフロー炉6によるリフロー処理が未実行の基板Bの状態が示されている。この「実装直後」の列に示すように、部品実装機4は、基板BのランドBlに印刷された半田Sに対して部品Pを載置する。部品Pの端部には部品Pの端子が設けられており、半田Sに対して載置された部品Pの端部は半田Sを介してランドBlに電気的に接続される。第1実装例では、部品Pの載置位置が半田Sの印刷位置と一致しており、部品Pの端部は半田Sの中央に位置する。一方、第2実装例では、部品Pの載置位置が半田Sの印刷位置に対して右側にずれて、部品Pは半田Sから右側へみ出している。また、第3実装例では、部品Pの載置位置はランドBlに対して一致する一方、半田Sの印刷位置に対して左側にずれており、部品Pは半田Sから左側へはみ出している。
【0038】
このように、第1実装例は、半田Sの印刷位置および部品Pの載置位置がランドBlに一致する。第2実装例では、半田Sの印刷位置がランドBlに一致する一方、部品Pの載置位置がランドBlおよび半田Sの印刷位置に対して右側にずれている。第3実装例では、部品Pの載置位置がランドBlに一致する一方、半田Sの印刷位置がランドBlおよび部品Pの載置位置に対して右側にずれている。
【0039】
図4の「リフロー直後」の列では、リフロー炉6によるリフロー処理が実行済みの基板Bの状態が示されている。この「リフロー直後」の列に示すように、半田Sはリフローの加熱によって溶融して広がっている。この際、第1~第3実装例のいずれにおいても、半田SはランドBlからはみ出ることなくランドBlの全体に広がっており、部品Pの端部もランドBlの中央に位置している。その結果、基板検査機7による基板検査の結果は各実装例で良好(OK)となっている。つまり、第2あるいは第3実装例では、部品Pの載置位置あるいは半田Sの印刷位置がランドBlに対してずれているものの、半田Sの溶融に伴うセルフアライメント効果によって、半田Sおよび部品PがランドBlに引き寄せられている。
【0040】
かかる図4の結果は、半田Sの印刷位置がランドBlからずれた場合であっても、リフロー処理に伴うセルフアライメント効果によって基板検査の結果が良好となり得ることを示す。そこで、ランドBlに対する半田Sの印刷位置のずれと、部品Pの載置位置との関係について、図5を用いて説明する。
【0041】
図5は印刷処理、実装処理およびリフロー処理を経た基板の状態変化および基板検査の結果の第4実装例~第6実装例を模式的に示す平面図である。図5の「印刷直後」、「実装直後」および「リフロー直後」が示す内容は図4のそれと同じである。図5の「印刷直後」の列に示すように、第4~第6実装例それぞれにおいて、半田Sの印刷位置がランドBlに対して右側に同じだけずれており、半田SはランドBlから右側に同様にはみ出している。
【0042】
図5の「実装直後」の列に示すように、第4実装例では、部品Pの載置位置は、ランドBlに対して一致する一方、半田Sの印刷位置に対して左側にずれており、部品Pは半田Sから左側にはみ出している。第5実装例では、部品Pの載置位置は、ランドBlに対して右側にずれる一方、半田Sに対して左側にずれており、部品PはランドBlから右側にはみ出す一方、半田Sから左側にはみ出している。第6実装例では、部品Pの載置位置は、半田Sの印刷位置に一致する一方、ランドBlに対して右側にずれており、部品Pは、ランドBlから右側にはみ出している。このように図5では、半田Sの印刷位置がランドBlに対して一様に右側にずれつつ、半田Sの印刷位置に対する部品Pの載置位置が異なる第4~第6実装例が示されている。
【0043】
図5に示す「リフロー直後」の列に示すように、第4および第6実装例では、半田Sおよび部品PがランドBlから右側にずれてはみ出しており、基板検査の結果は不良(NG)となっている。つまり、第4実装例は、半田Sに対して部品Pが大きくずれると基板検査の結果が不良となることを示唆し、第6実装例は、ランドBlに対して部品Pが大きくずれると基板検査の結果が不良となることを示唆している。一方、第5実装例では、半田SはランドBlからはみ出ることなくランドBlの全体に広がっており、部品Pの端部もランドBlの中央に位置している。これは、半田Sの印刷位置がランドBlからずれた場合であっても、ランドBlおよび半田Sの印刷位置のそれぞれと部品Pの載置位置との距離を所定範囲に収めることで、セルフアライメント効果を利用して、良好な基板検査結果を得られることを示唆する。
【0044】
そこで、サーバコンピュータ9は、基板生産システム1における基板生産において、印刷検査機3による印刷検査でランドBlに対する半田Sの印刷位置を測定するとともに、実装検査機5による実装検査でランドBlに対する部品Pの載置位置を測定する。そして、サーバコンピュータ9は、印刷位置および載置位置と基板検査機7による基板検査の結果とを対応付けて、実績データとして収集・蓄積する。
【0045】
図6は半田印刷位置および部品載置位置を模式的に示す平面図であり、図7は実績データの一例を表として示す図である。図6に示すように、ランドBlの位置は平面視(Z方向から見て)におけるランドBlの中心(幾何重心)で代表でき、半田Sの位置は平面視における半田Sの中心(幾何重心)で代表でき、部品Pの位置は平面視における部品Pの中心(幾何重心)で代表できる。そして、印刷検査機3は、ランドBlの位置Llに対する半田Sの印刷位置Lsを測定し、実装検査機5はランドBlに対する部品Pの載置位置Lpを測定する。
【0046】
こうして測定された印刷位置Lsおよび載置位置Lpは、図7に示すように、基板検査機7の基板検査結果(OK/NG)と対応付けて、実績データDとして、サーバコンピュータ9が具備する記憶部91に保存される。この実績データDは、基板Bに設けられた複数のランドBlのそれぞれについて求められて、ランドBlと対応付けて保存される。なお、図7は一のランドBlについて取得されて複数の実績データD(1)、D(2)、…、D(8)、…が例示されている。そして、サーバコンピュータ9は、こうして蓄積された多数の実績データDを解析することで、印刷位置Ls、載置位置Lpおよび基板検査結果の間に成立する関係を取得する。
【0047】
図8は実績データに対して実行される解析の内容を模式的に示す図である。図8の「小」、「中」および「大」の各欄では、横軸に載置位置Lpを取り、縦軸に良品率を取ったグラフに実績データDをプロットすることで得られる良品分布図が示されている。特に半田Sの印刷ずれ(すなわち、印刷位置Lsの大きさ)が小・中・大と異なる場合に対応して、「小」、「中」および「大」の各欄の良品分布率が示されている。ここで、半田ずれの程度を示す「小」、「中」および「大」の各階級は、幅を有しており、例えば、大きさがゼロ以上でf1(>0)未満の半田ずれは「小」の階級に属し、大きさがf1以上でf2(>f2)未満の半田ずれは「中」の階級に属し、大きさがf2以上の半田ずれは「大」の階級に属する。互いに異なる半田ずれの大きさに対応する複数(ここの例では3個)の良品分布率のセットは、ランドBl毎に求められる。なお、半田ずれの大きさを分ける階級の個数は、ここの例の3個に限られず、4個以上でも構わない。
【0048】
印刷ずれが「小」の場合には、部品Pの載置位置Lpが位置lp1から位置lp2の範囲では、基板検査結果の良品率(検査数に対して、検査結果がOKとなる割合)が100%となり、位置lp1~位置lp2の範囲が部品Pを載置するための適正載置範囲Apsとなる。印刷ずれが「中」の場合には、部品Pの載置位置Lpが位置lp3から位置lp4の範囲では、基板検査結果の良品率が100%となり、位置lp3~位置lp4の範囲が部品Pを載置するための適正載置範囲Apmとなる。一方、印刷ずれが「大」の場合には、良品率が100%となる範囲、すなわち適正載置範囲Apが存在しない。
【0049】
印刷ずれが「小」の場合の適正載置範囲Apsの中央値(=(lp1+lp2)/2)よりも、印刷ずれが「中」の場合の適正載置範囲Apmの中央値(=(lp3+lp4)/2)は、原点(すなわち、ランドBlの位置Ll)から離れる。また、印刷ずれが「小」の場合の適正載置範囲Apsよりも、印刷ずれが「中」の場合の適正載置範囲Apmは狭くなる。したがって、印刷位置LsがランドBlから離れるほど、適正載置範囲Apの中央値はランドBlから離れるとともに、適正載置範囲Apは狭くなることが判る。
【0050】
図9は基板生産システムのサーバコンピュータの制御によって実行される動作の第1例を示すフローチャートである。図9に示すように、サーバコンピュータ9は、上記のような実績データDの収集、蓄積および解析を、部品実装済みの基板Bの生産と並行して実行する。
【0051】
つまり、基板生産が開始されると、基板生産システム1の最上流に位置する半田印刷機2に基板Bが搬入されて、基板Bに対して印刷処理が実行される(ステップS102)。この印刷処理では、半田印刷機2は、基板Bに付されたフィデューシャルマークをカメラによって撮像した結果に基づき、テーブル駆動機構27によって基板Bの位置を調整することで、マスクMと基板Bとの位置合わせを行う。これによって、基板BのランドBlの位置とマスクMとのパターン孔の位置とが合わせられる。そして、半田印刷機2は、スキージ291によってマスクMの上面を摺動することで、マスクMのパターン孔を介して半田Sを基板BのランドBlに対して印刷する。
【0052】
半田印刷機2で半田Sが印刷された基板Bは、半田印刷機2から印刷検査機3へ搬送される。そして、印刷検査機3は、搬入された基板Bに対して印刷検査を実行する(ステップS103)。印刷検査では、印刷検査機3は、ランドBlに印刷された半田Sをカメラによって撮像した結果に基づき、ランドBlに対する半田Sの位置、すなわち印刷位置Lsを測定する。こうして、複数のランドBlのそれぞれについて測定された半田Sの印刷位置Lsは、印刷検査機3からサーバコンピュータ9の記憶部91に送信されて、記憶部91に保存される。
【0053】
さらに、印刷検査では、測定された印刷位置Lsの良否が判定される。具体的には、印刷位置Lsが所定範囲内であれば、印刷位置Lsは良好と判定される一方、印刷位置Lsが所定範囲外であれば、印刷位置Lsは不良と判定される。そして、全てのランドBlについて印刷位置Lsが良好と判定された基板Bが印刷検査機3から部品実装機4に搬送され、印刷位置Lsが不良と判定されたランドBlを有する基板Bは、印刷検査機3から部品実装機4に搬送されない。
【0054】
部品実装機4は、搬入された基板Bに対して実装処理を実行する(ステップS104)。実装処理では、部品実装機4は、基板Bのフィデューシャルマークや、実装ヘッド431により吸着された部品Pをカメラで撮像した結果に基づき、ランドBlに印刷された半田Sに対して部品Pを載置する。
【0055】
部品実装機4で部品Pが載置された基板Bは、部品実装機4から実装検査機5へ搬送される。そして、実装検査機5は、搬入された基板Bに対して実装検査を実行する(ステップS105)。実装検査では、実装検査機5は、ランドBlに印刷された半田Sに対して載置された部品Pをカメラによって撮像した結果に基づき、ランドBlに対する部品Pの位置、すなわち載置位置Lpを測定する。こうして、複数のランドBlのそれぞれについて測定された部品Pの載置位置Lpは、実装検査機5からサーバコンピュータ9の記憶部91に送信されて、記憶部91に保存される。
【0056】
さらに、実装検査では、測定された載置位置Lpの良否が判定される。具体的には、載置位置Lpが所定範囲内であれば、印刷位置Lsは良好と判定される一方、載置位置Lpが所定範囲外であれば、載置位置Lpは不良と判定される。そして、全てのランドBlについて載置位置Lpが良好と判定された基板Bが実装検査機5からリフロー炉6に搬送され、載置位置Lpが不良と判定されたランドBlを有する基板Bは、実装検査機5からリフロー炉6に搬送されない。
【0057】
リフロー炉6は、搬入された基板Bに対してリフロー処理を実行する(ステップS106)。リフロー処理では、リフロー炉6は、所定の温度プロファイルに従って基板Bを加熱することで、基板BのランドBlに対して印刷された半田Sを溶融させる。
【0058】
リフロー炉6で加熱された基板Bは、リフロー炉6から基板検査機7へ搬送される。そして、基板検査機7は、搬入された基板Bに対して基板検査を実行する(ステップS107)。基板検査では、基板検査機7は、ランドBlに対する部品Pの位置や、ランドBlと部品Pとを接合する半田Sの位置や形状に基づき、ランドBlへの部品Pの実装状態の良否(OK/NG)を判定する。こうして、複数のランドBlのそれぞれについて判定された部品Pの実装状態の良否(基板検査結果)は、基板検査機7からサーバコンピュータ9の記憶部91に送信されて、記憶部91に保存される。こうして、記憶部91では、複数のランドBlのそれぞれについて、実績データDが取得・保存される。
【0059】
サーバコンピュータ9は、記憶部91に蓄積された実績データDを学習部92によって解析することで、図8に例示した印刷位置Lsと適正載置範囲Apとの関係を機械学習によって算出する。具体的には、学習部92は、互いに異なる印刷範囲を示す複数の階級(図8の印刷ずれ「小」、「中」、「大」に相当)を準備し、実績データDをその印刷位置Lsを含む階級に分類する。そして、学習部92は、良品率が所定割合(ここの例では100%)以上となる適正載置範囲Apを機械学習によって算出する。
【0060】
また、図8の例が示唆するように、印刷位置Lsが所定の適正印刷範囲Asから外れると、良品率が100%となる適正載置範囲Apが存在しなくなる(図8の印刷ずれ「大」)。そこで、学習部92は、適正載置範囲Apが存在する適正印刷範囲Asを機械学習によって算出する。つまり、印刷位置Lsが適正印刷範囲As内であれば適正載置範囲Apが存在し、印刷位置Lsが適正印刷範囲As外であれば適正載置範囲Apが存在しない。これら適正載置範囲Apおよび適正印刷範囲Asは、基板Bの複数のランドBlのそれぞれについて求められる。
【0061】
さらに、サーバコンピュータ9は、印刷検査機3におけるマスクMに対する基板Bの適正位置を算出する。具体的には、複数のランドBlについて測定された半田Sの印刷位置Ls(換言すれば、ランドBlと半田Sとの位置ずれ)に対して最小二乗法を適用することで、マスクMに対する基板Bの適正位置が計算される。特にサーバコンピュータ9は、複数のランドBlのそれぞれについて求めた適正印刷範囲Asを比較して、適正印刷範囲Asが狭いランドBlほど大きな重み係数を与えて最小二乗法を実行する。かかる最小二乗法の計算は、学習部92の演算機能により実行してもよいし、学習部92とは異なるプロセッサーにより実行してもよい。
【0062】
図10は基板生産システムのサーバコンピュータの制御によって実行される動作の第2例を示すフローチャートである。サーバコンピュータ9は、図9のフローチャートの実行に伴って十分な量の実績データDが蓄積されると、基板生産に伴って実行するフローチャートを図9から図10に切り替える。図9図10との違いは、図10では学習部92での解析結果を基板生産に利用する点であり、図9で実行される動作は図10においても実行される。ここでは、図9との差異点を中心に説明を行い、図9と共通する内容については相当符号を付して説明を省略する。
【0063】
ステップS102では、半田印刷機2は、学習部92から受け取った適正位置に基づき、マスクMに対する基板Bの位置を調整する。これによって、基板BがマスクMに対する適正位置に位置合わせされた状態で、マスクMのパターン孔を介して基板BのランドBlに半田Sが印刷される。
【0064】
ステップS103では、印刷検査機3は、測定された印刷位置Lsと適正印刷範囲Asとを比較することで印刷検査を実行する。具体的には、印刷位置Lsが適正印刷範囲As内であれば、印刷位置Lsは良好と判定され、印刷位置Lsが適正印刷範囲As外であれば、印刷位置Lsが不良と判定される。
【0065】
ステップS104では、部品実装機4の部品Pの載置が、直前の印刷検査(ステップS103)で測定された印刷位置Lsに基づき制御される。具体的には、学習部92は、ステップS103の印刷検査で測定された各ランドBlの印刷位置Lsに基づき、各ランドBlの適正載置範囲Apを上述の通り算出する。そして、学習部92は、適正載置範囲Apの中央値を、部品Pを載置する目標位置に設定する。こうして、複数のランドBlのそれぞれについて求められた目標位置は、学習部92から部品実装機4に送信され、部品実装機4は、ランドBlに対して設定された目標位置に向けて部品Pを移載することで、ランドBlに印刷された半田Sに対して部品Pを載置する。
【0066】
ステップS105では、実装検査機5は、測定された載置位置Lpと適正載置範囲Apとを比較することで実装検査を実行する。具体的には、学習部92は、ステップS103の印刷検査で測定された各ランドBlの印刷位置Lsに基づき算出した各ランドBlの適正載置範囲Apを部品実装機4に送信する。また、部品実装機4は、ランドBlに対して載置された部品Pの載置位置Lpを測定して、当該載置位置Lpが当該ランドBlに対する適正載置範囲Ap内であるかを判定する。そして、載置位置Lpが適正載置範囲Ap内であれば載置位置Lpは良好と判定され、載置位置Lpが適正載置範囲Ap外であれば載置位置Lpは不良と判定される。
【0067】
以上に説明した実施形態では、印刷処理(ステップS102)、実装処理(ステップS104)およびリフロー処理(ステップ106)を通じて取得された実績データDに基づき、部品実装機4によるランドBl(部品実装箇所)への部品Pの載置が制御される(ステップS104)。この実績データDは、印刷処理で一の基板Bに印刷された半田SのランドBlに対する位置である印刷位置Lsと、実装処理で当該一の基板Bに載置された部品PのランドBlに対する位置である載置位置LpとをステップS106のリフロー処理の前(ステップS103、S105)に測定した測定結果と、当該一の基板BのランドBlへの部品Pの実装の良否をリフロー処理の後に判定するステップS107の基板検査(リフロー後検査)の結果とを対応付けて示す。つまり、実績データDは、半田Sの印刷位置Lsおよび部品Pの載置位置Lpと、部品実装の良否とを対応付けて示す。かかる実績データDに基づき半田Sに対する部品Pの載置位置Lpを制御することで、セルフアライメント効果の大きさを織り込んだ適切な位置に部品Pを載置できる。その結果、セルフアライメント効果の大きさの違いによらず、基板BのランドBlに部品Pを的確に実装することが可能となる。
【0068】
また、印刷処理が実行済みであって実装処理が未実行の基板Bに対して、印刷位置Lsの良否を判定する印刷検査(印刷後検査)が実行される(ステップS103)。これに対して、サーバコンピュータ9(制御装置)は、印刷検査において100%(第1割合)で部品Pの実装が良好と判定されるのに必要となる印刷位置Lsの許容範囲である適正印刷範囲As(印刷許容範囲)を実績データDから求める。そして、印刷検査では、印刷位置Lsと適正印刷範囲Asとを比較した結果に基づき印刷位置Lsの良否が判定される。かかる構成では、実績データDを踏まえた適切な適正印刷範囲Asに基づき、印刷位置Lsの良否を判定することができる。
【0069】
また、ランドBlに対応するパターン孔(開口)を有するマスクMと基板Bとを互いに位置合わせして、パターン孔を介してランドBlに半田Sを印刷する半田印刷機2が具備されている。そして、サーバコンピュータ9は、基板Bの複数のランドBlのそれぞれについて印刷位置Lsを求めた結果に最小二乗法を適用することで算出したマスクMと基板Bとの位置関係に基づき、半田印刷機2によるマスクMと基板Bとの位置合わせを制御する。特にこの最小二乗法では、適正印刷範囲Asが狭いランドBlほど大きな重み係数が与えられる。かかる構成では、基板Bの複数のランドBlのそれぞれに対してマスクMのパターン孔を適切に位置合わせすることができる。
【0070】
また、サーバコンピュータ9は、実績データDを教示データとして測定結果(印刷位置Ls、載置位置Lp)と基板検査機7による検査結果(OK/NG)との関係を機械学習により学習した結果に基づき、適正印刷範囲Asを求める。かかる構成では、実績データDに基づき適切な適正印刷範囲Asを求めることができる。
【0071】
また、実装処理が実行済みであってリフロー処理が未実行の基板Bに対して、載置位置Lpの良否を判定する実装検査(実装後検査)が実行される(ステップS105)。また、サーバコンピュータ9は、ステップS107の基板検査において100%(第2割合)以上で部品Pの実装が良好と判定されるのに必要となる載置位置Lpの許容範囲である適正載置範囲Ap(載置許容範囲)を、印刷位置Lsが異なる複数の場合(階級)について実績データDから求める。そして、実装検査(ステップS105)では、対象となるランドBlについて測定された印刷位置Lsに対応する適正載置範囲Apと、対象となるランドBlについて測定された載置位置Lpとを比較した結果に基づき、載置位置Lpの良否が判定される。かかる構成では、実績データDを踏まえた適切な適正載置範囲Apに基づき、載置位置Lpの良否を判定することができる。
【0072】
また、サーバコンピュータ9は、実績データDを教示データとして測定結果(印刷位置Ls、載置位置Lp)と基板検査機7による検査結果(OK/NG)との関係を機械学習により学習した結果に基づき、適正載置範囲Apを求める。かかる構成では、実績データDに基づき適切な適正載置範囲Apを求めることができる。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態では、基板生産システム1が本発明の「基板生産システム」の一例に相当し、半田印刷機2が本発明の「半田印刷機」の一例に相当し、部品実装機4が本発明の「部品実装機」の一例に相当し、サーバコンピュータ9が本発明の「制御装置」の一例に相当し、適正載置範囲Apが本発明の「載置許容範囲」の一例に相当し、適正印刷範囲Asが本発明の「印刷許容範囲」の一例に相当し、基板Bが本発明の「基板」の一例に相当し、ランドBlが本発明の「部品実装箇所」の一例に相当し、実績データDが本発明の「実績データ」の一例に相当し、部品Pが本発明の「部品」の一例に相当し、半田Sが本発明の「半田」の一例に相当し、印刷位置Lsが本発明の「印刷位置」の一例に相当し、載置位置Lpが本発明の「載置位置」の一例に相当し、印刷位置Lsおよび載置位置Lpが本発明の「測定結果」の一例に相当し、マスクMが本発明の「マスク」の一例に相当し、基板検査の判定結果(OK/NG)が本発明の「検査結果」の一例に相当し、パターン孔が本発明の「開口」の一例に相当し、ステップS102が本発明の「印刷処理」の一例に相当し、ステップS103が本発明の「印刷後検査」の一例に相当し、ステップS104が本発明の「実装処理」の一例に相当し、ステップS105が本発明の「実装後検査」の一例に相当し、ステップS106が本発明の「リフロー処理」の一例に相当し、ステップS107が本発明の「リフロー後検査」の一例に相当し、100%が本発明の「第1割合」および「第2割合」の一例に相当する。
【0074】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば適正載置範囲Apあるいは適正印刷範囲Asを規定する良品率は100%に限られず、100%以下の任意の割合に設定できる。
【0075】
また、適正載置範囲Apあるいは適正印刷範囲Asを算出する具体的方法は、機械学習に限られず、他の方法によってこれらを算出してもよい。
【0076】
また、図6の例では、X方向について印刷位置Lsおよび載置位置Lpを求めているが、Y方向あるいはR方向等の他方向について印刷位置Lsおよび載置位置Lpを求めてもよい。この場合、適正載置範囲Apおよび適正印刷範囲Asを当該他方向について算出すればよい。
【0077】
また、印刷位置Lsおよび載置位置Lp以外で、基板検査機7による基板検査結果と相関を有する相関因子を含むように、実績データDを構成してもよい。このような相関因子の一例としては、部品Pの重量が挙げられる。これによって、部品Pの重量が与える影響を参照して、基板生産に役立てることができる。具体的には、例えば上記の印刷位置Lsと同様に部品Pの重量を取り扱って、部品Pの重量の階級に応じて設定した適正載置範囲Apに基づき載置位置Lpを制御することができる。
【0078】
さらに、他の相関因子としては、部品Pのサイズ、印刷検査機3における印圧、実装検査機5で部品Pを吸着する負圧や部品Pを移載する速度、半田Sの種類あるいはリフロー炉6での温度プロファイルが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明は、基板に設けられた部品実装箇所に印刷された半田に部品を載置することで、部品が実装された基板を生産する技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…基板生産システム
2…半田印刷機
4…部品実装機
9…サーバコンピュータ(制御装置)
Ap…適正載置範囲(載置許容範囲)
As…適正印刷範囲(印刷許容範囲)
B…基板
Bl…ランド(部品実装箇所)
D…実績データ
P…部品
S…半田
Ls…印刷位置(測定結果)
Lp…載置位置(測定結果)
M…マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10