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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240716BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B60R16/02 650U
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021015507
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118785
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】栗原 陽介
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199223(JP,A)
【文献】特開2011-033532(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104817(WO,A1)
【文献】特開2009-264828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて、前記車両の運転を支援する運転支援機能に関わる制御を行う車両用制御装置であって、
前記運転支援機能を作動させる機能作動手段と、
前記運転支援機能をオン状態またはオフ状態のいずれかの状態にする機能作動制御手段と
を備え、
前記運転支援機能は、前記車両と物標との衝突を回避または衝突による被害を軽減するための自動ブレーキを作動させる衝突回避支援機能であり、
前記機能作動制御手段は、前記車両の工場出荷の際には前記衝突回避支援機能をオフ状態にしているものであって、前記車両が納車されるまでの前記車両に対する外部入力に基づいて前記衝突回避支援機能をオン状態にすることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記外部入力は、ライセンスプレートが取付けされることであることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記外部入力は、前記車両に診断装置が接続されること、及び、当該診断装置が接続された後の所定の操作が行われることの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記車両に関わる車体固有の識別情報と前記車両の納入先情報とを対応付けて記憶している外部のサーバ装置と通信可能な車載通信手段を備え、
前記外部入力は、前記車載通信手段を介して前記外部のサーバ装置から送信されてくる所定の情報であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援機能に関わる制御を行う車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車などの車両には、車両の運転を支援する運転支援機能の1つとして、自車両と物標との衝突を回避または衝突による被害を軽減する衝突回避支援機能が搭載されるようになっている。
【0003】
この衝突回避支援機能が搭載されている車両では、たとえば、自車両と物標との相対速度及び相対距離が検出されて、それらの情報から、自車両と物標との衝突の可能性が予測される。そして、衝突の可能性があると予測される場合に、車両のドライバに注意を喚起する衝突警報が出力され、また、ブレーキが自動的に作動される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-132867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、衝突回避支援機能を搭載した複数の車両の物流時には、輸送効率を高めるために、複数の車両を車両間の距離を非常に近づけて船舶などに積載されることになるが、物流時の車両間の距離を非常に近づけて停止させる際に、衝突回避支援機能が予期せずに作動すると、ドライバの安全運転の妨げや車両の積載の妨げとなる懸念がある。また、衝突回避支援機能は非常に強い制動力を発生させるため、車両の物流時に衝突回避支援機能を作動させるとブレーキの慣らしが未完了のため、ブレーキパッドの偏摩耗など、車両の購入者の手に渡る前に車両を傷づけたり、高負荷をかけたりすることが懸念される。また、人が意図して衝突回避支援機能をオン状態からオフ状態にするスイッチが設けられているが、物流の現場でのスイッチ操作は操作忘れなどの懸念があり、許容されないことが多い。
【0006】
本発明の目的は、衝突回避支援機能を、車両の物流時には工場出荷時のオフ状態に維持しつつ、納車時にはオン状態に確実にしておくことができる車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用制御装置は、車両に搭載されて、前記車両の運転を支援する運転支援機能に関わる制御を行う車両用制御装置であって、前記運転支援機能を作動させる機能作動手段と、前記運転支援機能をオン状態またはオフ状態のいずれかの状態にする機能作動制御手段とを備え、前記運転支援機能は、前記車両と物標との衝突を回避または衝突による被害を軽減するための自動ブレーキを作動させる衝突回避支援機能であり、前記機能作動制御手段は、前記車両の工場出荷の際には前記衝突回避支援機能をオフ状態にしているものであって、前記車両が納車されるまでの前記車両に対する外部入力に基づいて前記衝突回避支援機能をオン状態にすることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、衝突回避支援機能を、車両の物流時には工場出荷時のオフ状態に維持しつつ、納車時にはオン状態に確実にしておくことができる。
【0009】
また、前記外部入力は、ライセンスプレートが取り付けされることであるとしてもよい。
【0010】
これによれば、ライセンスプレートは納車前に必ず販売店側で車両に取り付けられるものであるため、ライセンスプレートの取付前の車両の物流時には衝突回避支援機能を工場出荷時のオフ状態に維持することができる。また、販売店側はライセンスプレートを車両に取り付けるという元々行う必要がある作業を行えば衝突回避支援機能がオン状態になるので、販売店側で衝突回避支援機能をオン状態にするための新たな作業が発生せずに、衝突回避支援機能を納車時にはオン状態に確実にしておくことができる。
【0011】
また、前記外部入力は、前記車両に診断装置が接続されること、及び、当該診断装置が接続された後の所定の操作が行われることの少なくともいずれかであるとしてもよい。
【0012】
これによれば、診断装置が車両に接続されて当該診断装置による車両の診断は納車前に必ず販売店側で行われるものであるため、車両に対する診断装置の接続前の車両の物流時には衝突回避支援機能を工場出荷時のオフ状態に維持することができる。また、販売店側は診断装置を車両に接続するという元々行う必要がある作業を行えば衝突回避支援機能がオン状態になるので、または、販売店側は診断装置を車両に接続した後の所定の操作を行えば衝突回避支援機能がオン状態になるので、販売店側での衝突回避支援機能をオン状態にするための作業負担の増大を抑制しながら、衝突回避支援機能を納車時にはオン状態に確実にしておくことができる。
【0013】
また、前記車両に関わる車体固有の識別情報と前記車両の納入先情報とを対応付けて記憶している外部のサーバ装置と通信可能な車載通信手段を備え、前記外部入力は、前記車載通信手段を介して前記外部のサーバ装置から送信されてくる所定の情報であるとしてもよい。
【0014】
これによれば、車両が納入先である販売店の敷地内に存在する前の車両の物流時には衝突回避支援機能を工場出荷時のオフ状態に維持することができる。また、車両が販売店の敷地内に存在することになれば衝突回避支援機能がオン状態になるので、納入先である販売店側で衝突回避支援機能をオン状態にするための新たな作業が発生せず、衝突回避支援機能を納車時には確実にオン状態にしておくことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運転支援機能を、車両の物流時には工場出荷時のオフ状態に維持しつつ、納車時にはオン状態に確実にしておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】車載ECUを搭載する車両の一部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<車両用制御システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用制御システム1の構成を示すブロック図である。
【0019】
車両用制御システム1は、車両A(図2参照)に搭載されて、車両Aの運転を支援する機能に関わる制御を行うシステムである。この車両Aの運転を支援する機能の一つに、車両Aと前方の車両などの物標(以下、説明の便宜上、「物標T」と記載する。)との衝突を回避または衝突による被害を軽減するための衝突回避支援機能がある。この衝突回避支援機能には、自動ブレーキの作動前に衝突の可能性を警報する衝突警報機能と、ドライバに衝突を回避するための行動を促すために、自動ブレーキにより車両Aを1次ブレーキ指示減速度で減速させる1次ブレーキ機能(緩ブレーキ機能)と、衝突の回避及び衝突被害の軽減のために、自動ブレーキにより車両Aを1次ブレーキ指示減速度よりも大きい2次ブレーキ指示減速度で減速させる2次ブレーキ機能(強ブレーキ機能)が含まれており、車両Aと物標Tとの衝突の可能性が高くなるにつれて、衝突警報機能、1次ブレーキ機能、2次ブレーキ機能の順に作動することになっている。
【0020】
車両用制御システム1には、車載ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)11が含まれる。車載ECU11は、マイコン(マイクロコントローラ)12を備えている。マイコン12には、CPU13及びメモリ14が内蔵されている。車両Aには、車載ECU11以外に、各部を制御するための複数の車載ECUが搭載されており、車載ECU11は、他の車載ECUとCAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0021】
車載ECU11の電源端子15は電源2に電源線15aにより電気的に接続されている。また、車載ECU11のアース端子16にはアース線16aの一端部が接続されている。
【0022】
図2に示すように、車両Aのボディ部3(図2参照)の一部品であるアースとして使用される導電率の大きなラジエータグリルロア31には、ライセンスプレートを車両Aに取り付けるために用いる導電率の大きな取付部材4を構成するボルトを挿通するためのボルト穴3aが形成されている。ボルト穴3aの付近には、電気を略通さない導電率の小さいゴム(不図示)が配置されている。
【0023】
ライセンスナンバーは、販売店側で、納車前に、必ず、取付部材4を用いて車両Aのボディ部3(ラジエータグリルロア31)に取り付けられることになっている。アース線16aの他端部16bは、取付部材4を用いてライセンスプレートを車両Aに取り付けた状態では取付部材4を構成するワッシャに接触する位置で、前述のゴムに取り付けられている。
【0024】
車両Aに対するライセンスプレートの取付が行われていない状態では、アース線16aはボディ部3に電気的に接触しておらず、車載ECU11とボディ部3(アース)とは導通していない(非導通状態)。
【0025】
一方、取付部材4を用いて車両Aに対するライセンスプレートの取付が行われている状態では、アース線16aの他端部16bが取付部材4を構成するワッシャに接触し、ワッシャ又はワッシャに接触する取付部材4を構成するボルトがボディ部3に接触し、車載ECU11とボディ部3(アース)とは導通する(導通状態)。すなわち、ライセンスプレートの取付用のボルトの締結で接点がオンとなり、衝突回避支援支援機能がオン状態になる。
【0026】
なお、上記の構成以外であっても、車両Aに対するライセンスプレートの取付が行われていない状態では車載ECU11とボディ部3(アース)とが導通せず、取付部材4を用いて車両Aに対するライセンスプレートの取付が行われている状態では車載ECU11とボディ部3(アース)とが導通する構造であればよい。
【0027】
車両Aのボディ部3には、図2に示すように、ラジエータグリルロア31以外にも、フロントバンパーカバー32、ラジエータグリルモールディングアップ33、及び、フロントボイスカバー34などがある。
【0028】
車載ECU11は、衝突回避支援機能をオン状態とオフ状態とのいずれかに制御する。
【0029】
この実施形態では、取付部材4を用いて車両Aのボディ部3に対してライセンスプレートが取り付けられておらず、車載ECU11のCPU13は、電源投入時に車載ECU11とボディ部3(アース)とが導通していないことを検知した場合、衝突回避支援機能をオフ状態にする。また、取付部材4を用いて車両Aのボディ部3に対してライセンスプレートが取り付けられており(車両Aが納車されるまでの車両Aに対する外部入力)、車載ECU11のCPU13は、電源投入時に車載ECU11と車両Aのボディ部3(アース)とが導通していることを検知した場合、メモリ14に記憶されている車載ECU11とボディ部3とが非導通又は導通を示すアース情報が「非導通」であれば、衝突回避支援機能をオン状態にし、アース情報を「導通」に更新する。なお、メモリ14に記憶されているアース情報の初期値は「非導通」とする。
【0030】
また、車両Aには、ドライバが自らの意図で衝突回避支援機能をオフ状態か、オン状態かに設定する際に操作する図示していないスイッチ(以下、「衝突回避支援機能操作スイッチ」と記載する。)が設けられている。車載ECU11のCPU13は、衝突回避支援機能がオフ状態で、衝突回避支援機能操作スイッチに対して衝突回避支援機能をオン状態に設定する操作が行われたことを検知すると、衝突回避支援機能をオン状態にする。一方で、車載ECU11のCPU13は、衝突回避支援機能がオン状態で、衝突回避支援機能操作スイッチに対して衝突回避支援機能をオフ状態に設定する操作が行われたことを検知すると、衝突回避支援機能をオフ状態にする。
【0031】
車載ECU11のCPU13は、衝突回避支援機能がオン状態のとき、車両Aが物標Tに対する衝突の可能性の高さに応じて、衝突回避支援機能としての衝突警報機能、1次ブレーキ機能(緩ブレーキ機能)、2次ブレーキ機能(強ブレーキ機能)を作動させる。
【0032】
以下に、衝突回避支援機能の状態(オフ状態、オン状態)の遷移の一例を記載する。
【0033】
車両Aの工場出荷時、取付部材4を用いて車両Aのボディ部3に対してライセンスプレートが取り付けられていない。車両Aを工場から出荷する際に車両Aを動かすために電源投入がされ、車載ECU11のCPU13は、電源投入時に車載ECU11とボディ部3(アース)とが導通していないことを検知し、衝突回避支援機能をオフ状態にする。そして、車両Aは工場から出荷されて物流時に船舶等に積載され、販売店に輸送される。物流時の衝突回避支援機能は車両Aの工場出荷時のオフ状態を維持する。
【0034】
販売店側において、車両Aを納車するまでに、必ず、取付部材4を用いてライセンスプレートを車両Aのボディ部3に取り付ける。車載ECU11のCPU13は、電源投入時に車載ECU11と車両Aのボディ部3(アース)とが導通していることを検知し、メモリ14に記憶されているアース情報が「非導通」であることを確認して、衝突回避支援機能をオン状態にし、アース情報を「導通」に更新する。納車時の衝突回避支援機能はオン状態に確実になる。
【0035】
<効果>
以上の実施形態によれば、衝突回避支援機能を、車両Aの工場出荷時には確実にオフ状態とし、車両Aの物流時には工場出荷時のオフ状態に維持しつつ、納車時には確実にオン状態にしておくことができる。
【0036】
また、ライセンスプレートは必ず車両Aを納車する前に販売店側で車両Aのボディ部3に取り付けられるものであるため、車両Aの工場出荷時には衝突回避支援機能を確実にオフ状態とし、車両Aの物流時には衝突回避支援機能を工場出荷時のオフ状態に維持できる。また、販売店側はライセンスプレートを車両Aのボディ部3に取り付けるという元々行う必要がある作業を行えば衝突回避支援機能がオン状態になるので、販売店側で衝突回避支援機能をオン状態にするための新たな作業が発生せず、衝突回避支援機能を納車時には確実にオン状態にしておくことができる。
【0037】
また、物流時に車両間の距離を非常に近づけて停止させる際に、衝突回避支援機能が予期せずに作動すると、ドライバの安全運転の妨げや車両の積載の妨げになることが懸念されるが、上記の実施形態では、車両Aの物流時には衝突回避支援機能がオフ状態であるのでこのような懸念がない。また、衝突回避支援機能は非常に強い制動力を発生させるため、車両Aの物流時に衝突回避支援機能を作動させるとブレーキの慣らしが未完了のため、ブレーキパッドの偏摩耗など、車両Aが購入者の手に渡る前に車両Aを傷づけることなどが懸念されるが、上記の実施形態では、車両Aの物流時には衝突回避支援機能がオフ状態であるのでこのような懸念がない。また、物流の現場での衝突回避支援機能操作スイッチの操作は操作忘れなどの懸念があり、許容されないことが多いが、上記の実施形態では、物流の現場での衝突回避支援機能操作スイッチの操作が不要である。
【0038】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0039】
たとえば、上記の実施形態では、衝突回避支援機能をオフ状態からオン状態にするための、車両Aが納車されるまでの車両Aに対する外部入力を、ライセンスプレートが取付部材4を用いて車両Aのボディ部3に取り付けられることであるとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、次の(1)~(4)などであってもよい。
【0040】
(1)販売店では、当該販売店に到着した車両Aを納車するまでに、車両Aに故障診断装置を接続して車両Aの故障を診断することが必ず行われる。なお、本変形例において、車両Aの故障診断は一般的なものを使用するものとし、故障診断自体には特に特徴があるものではないため、詳細は省略する。(1)では、外部入力を、車両Aに故障診断装置が接続されることであるとする。
【0041】
車載ECU11のCPU13は、電源投入時に故障診断装置が車両Aにこれまでに接続されていないことを示す未接続情報がメモリ14に記憶されていることを確認した場合、衝突回避支援機能をオフ状態にする。このようにすることで、車両Aの工場出荷時までに故障診断装置が車両Aに接続されていない場合には、車両Aを工場から出荷する際に車両Aを動かすための電源投入がされるときに衝突回避支援機能はオフ状態になる。そして、物流時の衝突回避支援機能は車両Aの工場出荷時のオフ状態を維持する。なお、未接続情報は車両Aに故障診断装置が接続されたことを確認するまで記憶される。
【0042】
車載ECU11のCPU13は、故障診断装置が車両Aに接続されたことを検知した場合、衝突回避支援機能をオン状態にし、メモリ14から未接続情報を削除する。上述したように、販売店では車両Aを納車するまでに、車両Aに故障診断装置を接続して車両Aの故障を診断することが必ず行われる。このため、故障診断装置が車両Aに接続されたことを検知した場合に衝突回避支援機能をオン状態にすることで、衝突回避支援機能は納車時にはオン状態になっている。
【0043】
これによれば、故障診断装置を車両Aに接続して故障診断装置による車両Aの故障診断は必ず車両Aを納車する前に販売店側で行われるものであるため、車両Aの工場出荷時には衝突回避支援機能をオフ状態とし、車両Aの物流時には衝突回避支援機能を工場出荷時のオフ状態に維持できる。また、販売店側は元々行う必要がある車両Aの診断のために故障診断装置を車両Aに接続する作業を行えば衝突回避支援機能がオン状態になるので、販売店側で衝突回避支援機能をオン状態にするための新たな作業が発生せず、衝突回避支援機能を納車時には確実にオン状態にしておくことができる。
【0044】
(2)外部入力を、故障診断装置を車両Aに接続した後の所定の操作が行われることであるとする。
【0045】
ここで、所定の操作は、車両Aの故障診断中に故障診断の結果が異状なしの際に行う操作など、故障診断装置を車両Aに接続してから納車までに販売店側で必ず行われる操作であって、人が意図的に衝突回避支援機能をオン状態に設定する操作とは無関係な操作であり、故障診断装置を車両Aに接続してから納車までに販売店側で元々必ず行われる操作であるとする。所定の操作が行われたことを示す情報は故障診断装置から車載ECU11に送信される。
【0046】
車載ECU11のCPU13は、電源投入時に故障診断装置を車両Aに接続した後の所定の操作がこれまでに行われていないことを示す未操作情報がメモリ14に記憶されていることを確認した場合、衝突回避支援機能をオフ状態にする。このようにすることで、車両Aの工場出荷時までに故障診断装置を車両Aに接続した後の所定の操作が行われていない場合には、車両Aを工場から出荷する際に車両Aを動かすための電源投入がされるときに衝突回避支援機能はオフ状態になる。そして、物流時の衝突回避支援機能は車両Aの工場出荷時のオフ状態を維持する。なお、未操作情報は故障診断装置が車両Aに接続された後、所定の操作が行われたことを確認するまで記憶される。
【0047】
車載ECU11のCPU13は、故障診断装置を車両Aに接続した後の所定の操作が行われたことを検知した場合、衝突回避支援機能をオン状態にし、メモリ14から未操作情報を削除する。上述したように、所定の操作は、故障診断装置を車両Aに接続してから納車までに販売店側で必ず行われる操作である。このため、故障診断装置を車両Aに接続した後の所定の操作が行われたことを検知した場合に衝突回避支援機能をオン状態にすることで、衝突回避支援機能は納車時にはオン状態になっている。
【0048】
これによれば、所定の操作は、故障診断装置を車両Aに接続してから納車までに販売店側で必ず行われる操作であるため、車両Aの工場出荷時には衝突回避支援機能をオフ状態とし、車両Aの物流時には衝突回避支援機能を工場出荷時のオフ状態に維持できる。また、販売店側は故障診断装置を車両Aに接続してから納車までに元々行う必要がある所定の操作を行えば衝突回避支援機能がオン状態になるので、販売店側で衝突回避支援機能をオン状態にするための作業負担の増大を抑えながら、衝突回避支援機能を納車時には確実にオン状態にしておくことができる。
【0049】
なお、上記の所定の操作は、例えば、次のようなものであってもよい。故障診断装置を車両Aに接続し、故障診断装置を車両Aに接続した後に行われる故障診断装置による車両Aの故障診断中に、例えば車両Aが異常なしであることを確認した後のタイミングで、診断者に衝突回避支援機能をオン状態に設定するか否かの問い合わせを故障診断装置上で行う。診断者は故障診断装置上で上記の所定の操作に該当する衝突回避支援機能をオン状態に設定する操作かオン状態に設定しない操作を行い、故障診断装置は操作内容を車載ECU11に送信する。車載ECU11のCPU13は、操作内容が衝突回避支援機能をオン状態に設定する操作であったと判定した場合に、衝突回避支援機能をオン状態にする。このようにすると、仮に工場内で故障診断装置を用いて車両Aの故障診断が行われても衝突回避支援機能が自動的にオン状態になることはないので、衝突回避支援機能がオン状態になっている車両Aが工場から出荷される状況を防止できる。また、衝突回避支援機能をオン状態に設定するか否かの問い合わせを、販売店側で元々行われる故障診断に組み込むことにより、販売店側が衝突回避支援機能をオン状態し忘れて納車してしまう事態を防止できる。
【0050】
また、外部入力を、車両Aに故障診断装置が接続されること(上記の(1))、及び、故障診断装置を車両Aに接続した後の上記の所定の操作が行われること(上記の(2))の双方とする。車載ECU11のCPU13は、車両Aに故障診断装置が接続されることと故障診断装置を車両Aに接続した後の上記の所定の操作が行われることとの双方が行われる前の電気投入時には衝突支援機能をオフ状態にし、車両Aに故障診断装置が接続されたことを検知し、さらに、故障診断装置を車両Aに接続した後の所定の操作が行われたことを検知した場合、衝突回避支援機能をオン状態にする。
【0051】
(3)車両Aは販売店に輸送され、納車前に必ず販売店の敷地内に駐車する。(3)では、外部入力を、後述の外部のサーバ装置から送信されてくる所定の情報(例えば、販売店名などの納入先情報、販売店の位置情報)であるとする。
【0052】
車両Aに関わる車体番号などの車体固有の識別情報と車両Aの販売店名などの納入先情報とを対応付けて記憶している外部のサーバ装置とは車載ECU11(外部のサーバ装置と通信するTCU(Telematics Communication Unit)などの車載通信手段を、別途、備えてもよい。)のコネクト機能により携帯電話網や無線LANなどを介して通信可能になっている。車載ECU11のCPU13は、車体番号などの車体固有の識別情報を外部のサーバ装置に送信し、外部のサーバ装置から当該車体固有の識別情報に対応する販売店名などの納入先情報を取得し、マップ情報と取得した販売店名などの納入先情報とから販売店の敷地の位置情報を特定する。なお、外部のサーバ装置で車体固有の識別情報から特定した納入先情報の販売店の敷地の位置情報を特定して、当該販売店の敷地の位置情報を外部のサーバ装置から車載ECU11に送信するようにしてもよい。また、車載ECU11のCPU13は、車両Aに備えたGPS(位置情報取得手段)により定期的に車両Aの位置情報を取得し、販売店の敷地の位置情報と取得した車両Aの位置情報とから車両Aが販売店の敷地内に存在するか否かを判定する。
【0053】
車載ECU11のCPU13は、電源投入時に車両Aがこれまでに販売店の敷地内に存在していないことを示す敷地外情報がメモリ14に記憶されていることを確認した場合、衝突回避支援機能をオフ状態にする。このようにすることで、車両Aの工場出荷時までに車両Aが販売店の敷地内に存在したことはないので、車両Aを工場から出荷する際に車両Aを動かすための電源投入がされるときに衝突回避支援機能はオフ状態になる。そして、物流時の衝突回避支援機能は車両Aの工場出荷時のオフ状態を維持する。なお、敷地外情報は車両Aが販売店の敷地内に存在することを確認するまで記憶される。
【0054】
車載ECU11のCPU13は、車両Aが販売店の敷地内に存在することを検知した場合、衝突回避支援機能をオン状態にし、敷地外情報がメモリ14から記憶される。上述したように、車両Aは販売店に輸送され、納車前に必ず販売店の敷地内に駐車する。このため、車両Aが販売店の敷地内に存在することを検知した場合に衝突回避支援機能をオン状態にすることで、衝突回避支援機能は納車時にはオン状態になっている。なお、納車後に車両Aが販売店の敷地内に駐車した場合に衝突回避支援機能が自動でオン状態にならないように、車両Aが販売店の敷地内に存在することを検知して衝突回避支援機能をオン状態にした場合には、車両Aが販売店の敷地内に存在することに起因して衝突回避支援機能がオン状態にされたことを示す情報をメモリ14に記憶し、当該情報がメモリ14に記憶されている場合には車両Aが販売店の敷地内に存在することを検知しても衝突回避支援機能の状態(オン状態、オフ状態)を維持しておくようにしてもよい。
【0055】
これによれば、車両Aが販売店の敷地内に存在する前の工場出荷時には衝突回避支援機能を確実にオフとし、車両Aの物流時には衝突回避支援機能を工場出荷時のオフ状態に維持できる。また、車両Aが販売店の敷地内に存在することが確認されると衝突回避支援機能がオン状態になるので、販売店側で衝突回避支援機能をオン状態にするための新たな作業が発生せず、衝突回避支援機能を納車時には確実にオン状態にしておくことができる。
【0056】
(4)外部入力を、車載ECU11に対する電源投入であるとする。車載ECU11のCPU13は、当該車載ECU11に対する電源投入時、電源投入の回数をカウントし、カウントした電源投入の回数が所定の電源投入回数未満であることを確認した場合、衝突回避支援機能をオフ状態にする。一方で、カウントした電源投入の回数が所定の電源投入回数であることを確認した場合、衝突回避支援機能をオン状態にする。なお、この場合、工場側及び物流側には車両工場内及び物流中での車載ECU11に対する電源投入を所定の電源投入回数より小さい回数となるように依頼し、販売店側には納車までに車載ECU11に対する電源投入を所定の電源投入回数以上、又は、所定の電源投入回数から車両工場内及び物流中に最低限行われる車載ECU11に対する電源投入の回数を減算回数以上行うように依頼しておくことが好ましい。この場合、衝突回避支援機能を、車両Aの工場出荷時にはオフ状態とし、車両Aの物流時には工場出荷時のオフ状態に維持でき、納車時には確実にオン状態にしておくことができる。
【0057】
また、上記の実施形態では、ライセンスプレートの取り付けられていない状態ではボディ部3(アース)とは導通せず、取り付けられている状態ではボディ部3(アース)と導通する対象が衝突回避支援機能を司る車載ECU11である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、対象を他の車載ECUとし、当該他の車載ECUは当該他の車載ECUとボディ部(アース)とが導通しているか、導通していないか示す情報をCAN通信により車載ECU11に送信し、車載ECU11はこの情報に基づいて衝突回避支援機能の状態(オフ状態、オン状態)の制御を行うようにしてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、運転支援機能として、衝突回避支援機能を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、駐車時のハンドル操作を自動で行う、所謂インテリジェントパーキングアシスト機能、所謂スマートパーキングアシスト機能、所謂アクティブパーキングアシスト機能などと呼ばれる自動駐車機能などであってもよい。
【0059】
また、上記の実施形態や変形例で説明した内容は、ガソリン車、電気自動車、ハイブリッド車などの各種車両に適用することができる。
【0060】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:車両用制御システム
2:電源
3:ボディ部
4:取付部材
11:車載ECU(車両用制御装置、機能作動手段、機能作動制御手段)
図1
図2