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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】摺動部品
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20240716BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
F16J15/34 G
F16C17/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023517153
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013241
(87)【国際公開番号】W WO2022230460
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2021076408
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太
(72)【発明者】
【氏名】井村 忠継
(72)【発明者】
【氏名】王 岩
(72)【発明者】
【氏名】福田 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓志
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061406(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/050920(WO,A1)
【文献】特開2020-173020(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199171(WO,A1)
【文献】特開平06-011046(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024742(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/162348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
F16C 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の相対回転する箇所に配置され他の摺動部品と相対摺動し、その摺動面には、始端部及び終端部を有する動圧発生溝が設けられた摺動部品であって、
前記動圧発生溝は、前記始端部側で周方向に延びる第1溝部と前記終端部側で周方向に延びる第2溝部が周方向および径方向にずれて配置されており、
前記第1溝部と前記第2溝部は、該第1溝部から相対回転方向下流側に向けて傾斜して延びる傾斜溝部により連通されており、
前記傾斜溝部は前記第2溝部よりも深い摺動部品。
【請求項2】
前記第1溝部の相対回転下流側の端部と、前記第2溝部の相対回転上流側の端部と、が前記傾斜溝部により連通されている請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記第2溝部と被密封流体空間とを連通する流体導入溝部を有している請求項1または2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記第2溝部は前記傾斜溝部の下流側端部の側面に連通されており、
前記流体導入溝部は前記傾斜溝部の下流側端部の端面に連通されている請求項に記載の摺動部品。
【請求項5】
前記流体導入溝部は、相対回転方向下流側に向けて傾斜している請求項またはに記載の摺動部品。
【請求項6】
前記流体導入溝部は前記傾斜溝部よりも深い請求項3ないしのいずれかに記載の摺動部品。
【請求項7】
一の前記動圧発生溝の前記第1溝部は、相対回転上流側に隣接する他の前記動圧発生溝の前記終端部よりも漏れ空間側で径方向に重畳するように配置されている請求項1ないしのいずれかに記載の摺動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対回転する摺動部品に関し、例えば自動車、一般産業機械、あるいはその他のシール分野の回転機械の回転軸を軸封する軸封装置に用いられる摺動部品、または自動車、一般産業機械、あるいはその他の軸受分野の機械の軸受に用いられる摺動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械において回転軸周辺の被密封流体の漏れを防止する軸封装置として、例えば相対回転し摺動面同士が摺動する一対の環状の摺動部品からなるメカニカルシールが知られている。このようなメカニカルシールにおいては、近年、環境対策等のために摺動により失われるエネルギーの低減が望まれており、摺動部品の摺動面に正圧発生溝を設けているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるメカニカルシールは、一方の摺動部品の摺動面に動圧発生溝が周方向に複数設けられている。この動圧発生溝は、相対回転上流側の始端部を有し周方向に延びる第1溝部と、相対回転下流側の終端部を有し周方向に延びる第2溝部と、を備えている。第1溝部と第2溝部とは、径方向にずれており、第1溝部の下流側の端部と第2溝部の上流側の端部が径方向に連通している。すなわち、動圧発生溝は平面視クランク状をなしている。
【0004】
摺動部品の相対回転時には、動圧発生溝内に存在する被密封流体が終端部に向けて移動し、該終端部で被密封流体が集中して正圧が発生することで摺動面同士が離間するとともに、摺動面に被密封流体の流体膜が形成されることで潤滑性が向上し、低摩擦化を実現している。一方、動圧発生溝の始端部近傍では相対的な負圧が生じ、摺動面に流出した被密封流体が動圧発生溝内に吸い込まれるため、漏れ空間への被密封流体の漏れを少なくすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/050920号(第8頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の摺動部品にあっては、動圧発生溝の始端部で生じる相対的な負圧により動圧発生溝内に吸い込まれた摺動面間の被密封流体が動圧発生溝の終端部に移動して正圧が発生するようになっている。しかしながら、特許文献1のような摺動部品にあっては、動圧発生溝の第1溝部と第2溝部を繋ぐ連通部分が第1溝部及び第2溝部と略直交するように径方向に延びているため、第1溝部と連通部分との境界部分及び第2溝部と連通部分との境界部分には平面視で略直角をなす角部が形成され、この角部近傍で渦が生じやすくなっている。これにより動圧発生溝内に吸い込まれた被密封流体が終端部に移動しにくくなり、動圧発生溝の終端部に供給される被密封流体が不足して正圧が生じにくくなってしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、動圧発生溝の終端部で正圧を確実に生じさせることができる摺動部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
回転機械の相対回転する箇所に配置され他の摺動部品と相対摺動し、その摺動面には、始端部及び終端部を有する動圧発生溝が設けられた摺動部品であって、
前記動圧発生溝は、前記始端部側で周方向に延びる第1溝部と前記終端部側で周方向に延びる第2溝部が周方向および径方向にずれて配置されており、
前記第1溝部と前記第2溝部は、該第1溝部から相対回転方向下流側に向けて傾斜して延びる傾斜溝部により連通されている。
これによれば、摺動部品の相対回転時には、始端部側の第1溝部で回収された被密封流体が、相対回転方向下流側に向けて傾斜して延びる傾斜溝部に沿って円滑に移動し第2溝部に導入されるため、動圧発生溝の終端部で正圧を確実に生じさせることができる。
【0009】
前記第1溝部の相対回転下流側の端部と、前記第2溝部の相対回転上流側の端部と、が前記傾斜溝部により連通されていてもよい。
これによれば、第1溝部と傾斜溝部との連通部分、第2溝部と傾斜溝部との連通部分で被密封流体が淀むことなく円滑に移動させることができる。
【0010】
前記傾斜溝部は前記第2溝部よりも深くてもよい。
これによれば、傾斜溝部から第1溝部に供給される被密封流体が不足することを抑制できる。また、第1溝部においてキャビテーションが発生しにくい。
【0011】
前記第2溝部と被密封流体空間とを連通する流体導入溝部を有していてもよい。
これによれば、第2溝部には、傾斜溝部から被密封流体が導入されることに加え、被密封流体空間からも流体導入溝部を通じて被密封流体が導入されるため、動圧発生溝の終端部で十分な正圧を発生させることができる。
【0012】
前記第2溝部は前記傾斜溝部の下流側端部の側面に連通されており、
前記流体導入溝部は前記傾斜溝部の下流側端部の端面に連通されていてもよい。
これによれば、傾斜溝部と第2溝部との連通領域を大きく確保できるため、傾斜溝部から第2溝部に向けて流れる被密封流体の流れが流体導入溝部から傾斜溝部内に導入される被密封流体の流れにより阻害されることを抑制できる。
【0013】
前記流体導入溝部は、相対回転方向下流側に向けて傾斜していてもよい。
これによれば、被密封流体が被密封流体空間から流体導入溝部を通じて傾斜溝部内に過剰に導入されることを抑制でき、傾斜溝部から第2溝部内に導入される被密封流体の流れが阻害されることを回避できる。
【0014】
前記流体導入溝部は前記傾斜溝部よりも深くてもよい。
これによれば、傾斜溝部は流体導入溝部よりも浅いため、流体導入溝部内の被密封流体よりも傾斜溝部内の被密封流体に摺動面のせん断力が作用しやすく、傾斜溝部から第2溝部内に被密封流体が優位に流れやすい。
【0015】
一の前記動圧発生溝の前記第1溝部は、相対回転上流側に隣接する他の前記動圧発生溝の前記終端部よりも漏れ空間側で径方向に重畳するように配置されていてもよい。
これによれば、他の動圧発生溝の終端部から漏れ空間に向かって移動する被密封流体を一の動圧発生溝の第1溝部で回収しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1におけるメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。
図2】実施例1における静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
図3】実施例1における静止密封環の摺動面を軸方向から見た拡大図である。
図4】(a)は図3のA-A断面図、(b)は同じくB-B断面図、(c)は同じくC-C断面図である。
図5】本発明の実施例2における静止密封環の摺動面を軸方向から見た拡大図である。
図6】本発明の実施例3における静止密封環の摺動面を軸方向から見た拡大図である。
図7】本発明の実施例4における静止密封環の摺動面を軸方向から見た拡大図である。
図8】本発明の実施例5における静止密封環の摺動面を軸方向から見た拡大図である。
図9】(a)は図8のD-D断面図、(b)は同じくE-E断面図である。
図10】本発明の実施例6における静止密封環の摺動面を軸方向から見た拡大図である。
図11】実施例1の変形例1-1の静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
図12】実施例1の変形例1-2の静止密封環の摺動面を軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る摺動部品を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る摺動部品につき、図1から図4を参照して説明する。尚、本実施例においては、メカニカルシールの内空間S1に被密封流体Fが存在し、外空間S2に大気Aが存在しており、メカニカルシールを構成する摺動部品の内径側を被密封流体空間側(高圧側)、外径側を漏れ空間側(低圧側)として説明する。また、説明の便宜上、図面において、摺動面に形成される溝等にドットを付すこともある。
【0019】
図1に示される自動車用のメカニカルシールは、摺動面の内径側から外径側に向かって漏れようとする内空間S1内の被密封流体Fを密封し外空間S2が大気Aに通ずるアウトサイド形のものである。尚、本実施例では、被密封流体Fが高圧の液体であり、大気Aが被密封流体Fよりも低圧の気体である形態を例示する。
【0020】
メカニカルシールは、回転軸1にスリーブ2を介して回転軸1と共に回転可能な状態で設けられた円環状の他の摺動部品としての回転密封環20と、被取付機器のハウジング4に固定されたシールカバー5に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた摺動部品としての円環状の静止密封環10と、から主に構成され、弾性部材7によって静止密封環10が軸方向に付勢されることにより、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とが互いに密接摺動するようになっている。尚、回転密封環20の摺動面21は平坦面となっており、この平坦面には溝等の凹み部が設けられていない。
【0021】
静止密封環10及び回転密封環20は、代表的にはSiC(硬質材料)同士またはSiC(硬質材料)とカーボン(軟質材料)の組み合わせで形成されるが、これに限らず、摺動材料はメカニカルシール用摺動材料として使用されているものであれば適用可能である。尚、SiCとしては、ボロン、アルミニウム、カーボン等を焼結助剤とした焼結体をはじめ、成分、組成の異なる2種類以上の相からなる材料、例えば、黒鉛粒子の分散したSiC、SiCとSiからなる反応焼結SiC、SiC-TiC、SiC-TiN等があり、カーボンとしては、炭素質と黒鉛質の混合したカーボンをはじめ、樹脂成形カーボン、焼結カーボン等が利用できる。また、上記摺動材料以外では、金属材料、樹脂材料、表面改質材料(コーティング材料)、複合材料等も適用可能である。
【0022】
図2及び図3に示されるように、静止密封環10に対して回転密封環20が実線矢印で示すように反時計回りに相対摺動するようになっている。
【0023】
静止密封環10の摺動面11には、複数の動圧発生溝13が周方向に均等に配設(本実施例では8個)されている。
【0024】
また、摺動面11における動圧発生溝13以外の部分は平坦面を成すランド12となっている。詳しくは、ランド12は、周方向に隣接する動圧発生溝13の間のランド部と、動圧発生溝13の外径側のランド部と、を有し、これら各ランド部は、同一平面状に配置されランド12の平坦面を構成している。さらに、動圧発生溝13の外径側のランド部は周方向に途切れることなく環状をなしている。
【0025】
動圧発生溝13は、第1溝部としての流体回収溝部14と、第2溝部としての正圧発生溝部15と、正圧発生溝部15と流体回収溝部14とを連通する傾斜溝部16と、傾斜溝部16と内空間S1とを連通する流体導入溝部17と、から主に構成されている。
【0026】
図3に示されるように、流体回収溝部14は、静止密封環10と同心円状に周方向に延びている。
【0027】
詳しくは、流体回収溝部14は、主にランド12の平坦面と平行に周方向に延びる底面14aと、底面14aの径方向両端縁からランド12の平坦面に向けて立ち上がる側面14b,14cと、底面14aの相対回転方向上流側の周方向端縁からランド12の平坦面に向けて立ち上がるととともに側面14b,14cに連なる始端面14dと、から構成されている。以下、流体回収溝部14における始端面14d近傍の部位を、動圧発生溝13の始端部13Aという。始端部13Aは閉塞形状をなしその周囲はランド12に囲まれている。
【0028】
正圧発生溝部15は、流体回収溝部14よりも相対回転下流側、かつ内径側にずれた位置において静止密封環10と同心円状に周方向に延びている。
【0029】
詳しくは、正圧発生溝部15は、主にランド12の平坦面と平行に周方向に延びる底面15aと、底面15aの径方向両端縁からランド12の平坦面に向けて立ち上がる側面15b,15cと、底面15aの相対回転方向下流側の周方向端縁からランド12の平坦面に向けて立ち上がるととともに側面15b,15cに連なる終端面15dと、から構成されている。以下、正圧発生溝部15における終端面15d近傍の部位を、動圧発生溝13の終端部13Bという。終端部13Bは閉塞形状をなしその周囲はランド12に囲まれている。
【0030】
傾斜溝部16は、流体回収溝部14と正圧発生溝部15との間で流体回収溝部14から相対回転方向下流側に向けて傾斜して直線状に延び、流体回収溝部14と正圧発生溝部15とを連通している。
【0031】
詳しくは、傾斜溝部16は、主にランド12の平坦面と平行に延びる底面16aと、底面16aの周方向両端縁からランド12の平坦面に向けて立ち上がる側面16b,16cと、から構成されている。底面16aの外径端縁部は、流体回収溝部14の相対回転下流側の端部と重なり合っている。
【0032】
傾斜溝部16の相対回転方向下流側に配置される側面16bの外径側、すなわち側面16bの上流側端部には流体回収溝部14の外径側の側面14bが連続している。
【0033】
傾斜溝部16の相対回転方向上流側に配置される側面16cの外径側、すなわち側面16cの上流側端部には流体回収溝部14の内径側の側面14cが連続している。
【0034】
流体回収溝部14の相対回転下流側の端部と、傾斜溝部16の相対回転上流側の端部とは連通されている。
【0035】
傾斜溝部16の側面16bの内径側、すなわち側面16bの下流側端部には正圧発生溝部15の外径側の側面15bが連続している。
【0036】
傾斜溝部16の内径端縁16dには、ランド12に向けて立ち上がる正圧発生溝部15の内径側の側面15cが同心円弧状かつ深さ方向に段状に連続している。
【0037】
正圧発生溝部15の相対回転上流側の端部と傾斜溝部16の相対回転下流側の端部とは連通している。
【0038】
流体導入溝部17は、傾斜溝部16の底面16aの内径端縁16d、すなわち傾斜溝部16の下流側端部の端面に連通し、該内径端縁16dから静止密封環10の内周面10aまで延びている。
【0039】
詳しくは、流体導入溝部17は、主にランド12の平坦面と平行に延びる底面17aと、底面17aの周方向両端縁からランド12の平坦面に向けて立ち上がる側面17b,17cと、底面17aの外径端縁から内径端縁16dまで立ち上がり側面17b,17cに連なる端面17dと、から構成されている。
【0040】
側面17bは、傾斜溝部16の側面16bと同一平面状に連続し、側面17cは、傾斜溝部16の側面16cと同一平面状に連続している。すなわち、流体導入溝部17は、傾斜溝部16の傾斜に沿って内径端縁16dから相対回転方向下流側に向けて傾斜して延びている。
【0041】
また、一の動圧発生溝13の流体回収溝部14は、相対回転上流側に隣接する他の動圧発生溝13の終端部13Bよりも外径側で径方向に重畳するように配置されている。また、動圧発生溝13の流体回収溝部14の始端面14dは、動圧発生溝13の傾斜溝部16の側面16bに近くに配置されている。動圧発生溝13の流体回収溝部14と動圧発生溝13の正圧発生溝部15とは、周方向の長さの半分以上の長さの広い範囲で径方向に重畳している。
【0042】
次いで、図4に基づいて、動圧発生溝13の各部位の深さ関係について説明する。尚、図4(a)(b)では、円弧状を成す流体回収溝部14および正圧発生溝部15に沿って切断した断面を図示し、図4(c)では傾斜溝部16の側面16b、流体導入溝部17の側面17bと平行に切断した断面を図示している。
【0043】
図4(a)に示されるように、正圧発生溝部15は一定の深さD1を有しているとともに、図4(a)(b)に示されるように、傾斜溝部16は一定の深さD2を有している。
【0044】
傾斜溝部16の深さD2は、正圧発生溝部15の深さD1よりも深い(D1<D2)。例えば、傾斜溝部16の深さD2は正圧発生溝部15の深さD1の3倍~5倍程度の深さとなっている。
【0045】
また、図4(b)に示されるように、流体回収溝部14は傾斜溝部16の深さD2と同じ一定の深さD2を有している。
【0046】
また、図4(c)に示されるように、流体導入溝部17は、一定の深さD3を有している。この流体導入溝部17の深さD3は、傾斜溝部16の深さD2よりも深い(D2<D3)。例えば、流体導入溝部17の深さD3は傾斜溝部16の深さD2の1.5倍~2倍程度、すなわち正圧発生溝部15の深さD1の4.5倍~10倍程度の深さとなっている。
【0047】
次いで、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時の動作について図3を用いて説明する。尚、図3の被密封流体Fの流れについては、わかりやすく説明するために、動圧発生溝13の上流側の流れを白太矢印F1~3で示し、動圧発生溝13の下流側の流れを黒太矢印F4,F5で示し、内空間S1から動圧発生溝13内に導入される流れを黒細矢印F6で示している。
【0048】
まず、回転密封環20が回転していない停止時には、被密封流体Fが動圧発生溝13内に流入している。尚、弾性部材7によって静止密封環10が回転密封環20側に付勢されているので摺動面11,21同士は接触状態となっており、摺動面11,21間の被密封流体Fが外空間S2に漏れ出す量はほぼない。
【0049】
図3に示されるように、回転密封環20が静止密封環10に対して相対回転すると、動圧発生溝13内の被密封流体Fが摺動面21とのせん断により回転密封環20の回転方向に追随移動する。
【0050】
具体的には、流体回収溝部14内では、被密封流体Fが矢印F1に示すように始端部13Aから傾斜溝部16に向かって移動する。これにより始端部13Aの流体圧は、周辺の流体圧よりも相対的に低くなる。言い換えれば、始端部13Aには相対的な負圧が生じ、始端部13Aの周辺の摺動面11,21間の被密封流体Fが矢印F2に示すように流体回収溝部14内に吸い込まれる。
【0051】
また、傾斜溝部16内では、被密封流体Fが矢印F3に示すようにその外径側から内径側の正圧発生溝部15に向かって移動する。傾斜溝部16の深さD2は正圧発生溝部15の深さD1よりも深いため、傾斜溝部16に多く被密封流体Fを保持でき、正圧発生溝部15に供給される被密封流体Fが不足することを抑制できる。
【0052】
また、正圧発生溝部15内では、被密封流体Fが矢印F4に示すように傾斜溝部16から終端部13Bに向かって移動する。終端部13Bに向かって移動した被密封流体Fは、終端部13B及びその近傍で圧力が高められる。すなわち動圧発生溝13の終端部13B及びその近傍で正圧が発生する。
【0053】
正圧発生溝部15の深さD1は浅いため、回転密封環20の回転速度が低速につき被密封流体Fの移動量が少なくても動圧発生溝13の終端部13B及びその近傍にて正圧が発生する。
【0054】
また、動圧発生溝13の終端部13B及びその近傍で発生した正圧による力により、摺動面11,21間が若干離間される(図示略)。これにより、摺動面11,21間には、主に矢印F5に示すように動圧発生溝13内の被密封流体Fが流入する。このように摺動面11,21間に被密封流体Fが介在することにより潤滑性が向上し、摺動面11,21同士の摩耗を抑制することができる。尚、摺動面11,21同士の浮上距離が僅かであるため、動圧発生溝13から摺動面11,21間に流出する被密封流体Fは少なく、かつ摺動面11,21間に流出しても流体回収溝部14により回収されるため、外空間S2にはほとんど漏れ出さないようになっている。
【0055】
また、流体導入溝部17内では、被密封流体Fが矢印F6に示すように内空間S1から傾斜溝部16に向かって移動する。流体導入溝部17の深さD3は、正圧発生溝部15の深さD1、傾斜溝部16の深さD2よりも深いので、被密封流体Fを多量に保持することができ、正圧発生溝部15への被密封流体Fの供給が不足することを抑制できる。
【0056】
さらに、流体導入溝部17内の被密封流体Fには、正圧発生溝部15および傾斜溝部16内の被密封流体Fに比べ摺動面21のせん断力が作用しにくく、正圧発生溝部15には流体導入溝部17からよりも傾斜溝部16から被密封流体Fが流れやすくなっている。そのため、被密封流体Fが傾斜溝部16から正圧発生溝部15に円滑に流れる。
【0057】
以上説明したように、流体回収溝部14と正圧発生溝部15は、該流体回収溝部14から相対回転方向下流側に向けて傾斜して延びる傾斜溝部16により連通されている。これによれば、静止密封環10と回転密封環20との相対回転時には、始端部13A側の流体回収溝部14で回収された被密封流体Fが、相対回転方向下流側に向けて傾斜して延びる傾斜溝部16に沿って円滑に移動し正圧発生溝部15に導入されるため、動圧発生溝13の終端部13Bで正圧を確実に生じさせることができる。
【0058】
また、流体回収溝部14の相対回転下流側の端部と、正圧発生溝部15の相対回転上流側の端部と、が傾斜溝部16により連通されている。これによれば、流体回収溝部14と傾斜溝部16との連通部分、正圧発生溝部15と傾斜溝部16との連通部分で被密封流体Fが淀むことなく円滑に移動させることができる。
【0059】
また、傾斜溝部16の深さD2は正圧発生溝部15の深さD1よりも深くなっており、傾斜溝部16に多く被密封流体Fを保持できるため、正圧発生溝部15に供給される被密封流体Fが不足することを抑制できる。さらに、傾斜溝部16内の被密封流体Fが相対回転により枯渇しないため、正圧発生溝部15においてキャビテーションが発生しにくい。
【0060】
また、正圧発生溝部15と内空間S1とを連通する流体導入溝部17を有している。これによれば、正圧発生溝部15には、傾斜溝部16から被密封流体Fが導入されることに加え、内空間S1からも流体導入溝部17を通じて被密封流体Fが導入されるため、動圧発生溝13の終端部13Bで十分な正圧を発生させることができる。
【0061】
また、正圧発生溝部15は傾斜溝部16の下流側端部の側面16bに連通されており、流体導入溝部17は傾斜溝部16の内径端縁16dに連通されている。これによれば、傾斜溝部16と正圧発生溝部15との連通領域を大きく確保できるため、傾斜溝部16から正圧発生溝部15に向けて流れる被密封流体Fの流れが流体導入溝部17から傾斜溝部16内に導入される被密封流体Fの流れにより阻害されることを抑制できる。
【0062】
また、流体導入溝部17は、相対回転方向下流側に向けて傾斜している。すなわち、流体導入溝部17の内空間S1側の開口は、相対回転方向下流側を向いているため、被密封流体Fが内空間S1から流体導入溝部17を通じて傾斜溝部16内に過剰に導入されることを抑制でき、傾斜溝部16から正圧発生溝部15内に導入される被密封流体Fの流れが阻害されることを回避できる。
【0063】
また、流体導入溝部17の深さD3は傾斜溝部16の深さD2よりも深いため、流体導入溝部17内の被密封流体Fには、傾斜溝部16内の被密封流体Fに比べ摺動面21のせん断力が作用しにくく、正圧発生溝部15には流体導入溝部17からよりも傾斜溝部16から流れやすくなっている。すなわち、流体導入溝部17から傾斜溝部16に流れる被密封流体Fの流れにより、傾斜溝部16から正圧発生溝部15内に導入される被密封流体Fの流れが阻害されることを回避できるため、被密封流体Fが傾斜溝部16から正圧発生溝部15に向けて円滑に流れる。
【0064】
また、一の動圧発生溝13の流体回収溝部14は、相対回転上流側に隣接する他の動圧発生溝13の終端部13Bよりも外径側で径方向に重畳するように配置されているため、他の動圧発生溝13の終端部13Bから外空間S2に向かって移動する被密封流体Fを一の動圧発生溝13の流体回収溝部14で回収しやすい。
【0065】
また、動圧発生溝13の流体回収溝部14の始端面14dは、動圧発生溝13’の傾斜溝部16の側面16bに近付けて配置されているので、動圧発生溝13の流体回収溝部14と動圧発生溝13の正圧発生溝部15とは、周方向の長さの半分以上の長さの広い範囲で径方向に重畳されており、動圧発生溝13の終端部13Bから外空間S2に向かって移動する被密封流体Fを一の動圧発生溝13の流体回収溝部14で確実に回収できる。
【0066】
また、内径側の内空間S1が被密封流体空間、外径側の外空間S2が漏れ空間となっており、流体回収溝部14は正圧発生溝部15よりも外径側に配置されている。流体回収溝部14は正圧発生溝部15よりも周方向に長く形成されており、被密封流体Fを流体回収溝部14で回収しやすい。
【0067】
尚、本実施例1では、流体回収溝部14の相対回転下流側の端部と、正圧発生溝部15の相対回転上流側の端部と、が傾斜溝部16により連通されている形態を例示したが、これに限られず、例えば、傾斜溝部16よりも相対回転下流側に流体回収溝部14の一部が延びていてもよい。また、傾斜溝部16よりも相対回転上流側に正圧発生溝部15の一部が延びていてもよい。また、流体回収溝部14よりも外径側または正圧発生溝部15よりも内径側に傾斜溝部16の一部が延びていてもよい。
【0068】
また、本実施例1では、傾斜溝部16が流体回収溝部14と正圧発生溝部15との間で直線状に延びている形態を例示したが、傾斜溝部は流体回収溝部14と正圧発生溝部15との間で湾曲して延びていてもよい。
【0069】
また、本実施例1では、流体回収溝部14の深さD2が一定である形態を例示したが、例えば、流体回収溝部14が傾斜溝部16に向けて浅くまたは深くなっていてもよい。尚、流体回収溝部14は傾斜面状に漸次浅くまたは深くなっていてもよいし、階段状に浅くまたは深くなっていてもよい。
【0070】
また、本実施例1では、傾斜溝部16の深さD2が一定である形態を例示したが、例えば、傾斜溝部16が外径から内径に向けて浅くまたは深くなっていてもよい。尚、傾斜溝部16は傾斜面状に漸次浅くまたは深くなっていてもよいし、階段状に浅くまたは深くなっていてもよい。
【0071】
また、本実施例1では、流体導入溝部17の深さD3が一定である形態を例示したが、例えば、流体導入溝部17が傾斜溝部16に向けて浅くまたは深くなっていてもよい。尚、流体導入溝部17は傾斜面状に漸次浅くまたは深くなっていてもよいし、階段状に浅くまたは深くなっていてもよい。
【0072】
また、本実施例1では、正圧発生溝部15の深さD1が一定である形態を例示したが、例えば、正圧発生溝部15が終端部13Bに向けて浅くなっていてもよい。尚、正圧発生溝部15は傾斜面状に漸次浅くなっていてもよいし、階段状に浅くなっていてもよい。
【実施例2】
【0073】
次に、実施例2に係る摺動部品につき、図5を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0074】
図5に示されるように、本実施例2の静止密封環210は、流体導入溝部217が径方向に延びている点で実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同一構成となっている。
【0075】
本実施例2の静止密封環210は、流体導入溝部217が径方向に延びている。すなわち、流体導入溝部217の内空間S1側の開口は、静止密封環210の中心を向いているため、実施例1の形態に比べて被密封流体Fが内空間S1から流体導入溝部217を通じて動圧発生溝13内(すなわち傾斜溝部16内)に導入されやすく、終端部13Bで高い正圧が生じるようになっている。
【実施例3】
【0076】
次に、実施例3に係る摺動部品につき、図6を参照して説明する。尚、前記実施例1,2と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0077】
図6に示されるように、本実施例3の静止密封環310は、流体導入溝部317が相対回転方向上流側に向けて傾斜している点で実施例1,2と異なり、その他の点は実施例1,2と同一構成となっている。
【0078】
本実施例3の静止密封環310は、流体導入溝部317が相対回転方向上流側に向けて傾斜している。すなわち、流体導入溝部317の内空間S1側の開口は、相対回転方向上流側を向いているため、実施例1,2の形態に比べて被密封流体Fが内空間S1から流体導入溝部317を通じて動圧発生溝13内(すなわち傾斜溝部16内)に導入されやすく、終端部13Bで高い正圧が生じるようになっている。
【実施例4】
【0079】
次に、実施例4に係る摺動部品につき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0080】
図7に示されるように、本実施例4の静止密封環410の動圧発生溝413は、始端部413A側で周方向に延びる第1溝部としての流体回収溝部414と、終端部413B側で周方向に延びる第2溝部413Cと、流体回収溝部414と第2溝部413Cとを連通する傾斜溝部416と、第2溝部413Cと内空間S1とを連通する流体導入溝部417と、から主に構成されている。
【0081】
第2溝部413Cは、傾斜溝部416の内径側端部から相対回転方向下流側に延び、該傾斜溝部416と同じ深さの深溝部418と、深溝部418から相対回転方向下流側に延び、深溝部418よりも浅い正圧発生溝部415と、から構成されている。流体導入溝部417は、深溝部418の相対回転方向下流側の端部から内空間S1に向けて径方向に延びている。
【0082】
流体回収溝部414と第2溝部413Cとは、流体回収溝部414から相対回転方向下流側に向けて傾斜して延びる傾斜溝部416により連通されているため、流体回収溝部414で回収された被密封流体Fが傾斜溝部16に沿って深溝部418に円滑に移動し、正圧発生溝部415にスムーズに導入されるようになっている。
【実施例5】
【0083】
次に、実施例5に係る摺動部品につき、図8および図9を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0084】
図8および図9に示されるように、本実施例5の静止密封環510は、傾斜溝部516の深さが実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同一構成となっている。
【0085】
本実施例5の静止密封環510の傾斜溝部516は、一定の深さD4を有している。傾斜溝部516の深さD4は、正圧発生溝部15の深さD1よりも深く、流体回収溝部14の深さD2、流体導入溝部17の深さD3よりも浅い(D1<D4<D2<D3)。
【0086】
例えば、傾斜溝部516の深さD4は正圧発生溝部15の深さD1の2倍~3程度の深さとなっている。また、傾斜溝部516の深さD4は流体回収溝部14の深さD2の1/2~1/3程度の深さとなっている。
【0087】
傾斜溝部516の深さD4は正圧発生溝部15の深さD1よりも深いので、正圧発生溝部15に供給される被密封流体Fが不足することを抑制できる。また、傾斜溝部516の深さD4は流体導入溝部17の深さD3よりも浅いので、流体導入溝部17内の被密封流体Fに比べ傾斜溝部516内の被密封流体Fに摺動面21のせん断力が作用しやすくなっている。
【実施例6】
【0088】
次に、実施例6に係る摺動部品につき、図10を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0089】
図10に示されるように、本実施例6の静止密封環610は、流体導入溝部が設けられていない点で実施例1と異なり、その他の点は実施例1と同一構成となっている。
【0090】
本実施例6の静止密封環610の動圧発生溝613は、内空間S1および外空間S2に連通しないディンプル形状を成している。これによれば、摺動面11,21間に流入した被密封流体Fが始端部613Aの近傍で吸い込まれ、動圧発生溝613内を移動して終端部613Bの近傍で集中し正圧が発生するようになっている。
【0091】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0092】
例えば、前記実施例では、摺動部品として、自動車用のメカニカルシールを例に説明したが、一般産業機械等の他のメカニカルシールであってもよい。
【0093】
また、前記実施例1~6では、動圧発生溝及び流体導入溝を静止密封環に設ける例について説明したが、動圧発生溝及び流体導入溝を回転密封環に設けてもよい。言い換えると、本発明の摺動部品は静止密封環でもあっても回転密封環であってもよい。
【0094】
また、前記実施例1~6では、被密封流体空間側を高圧側、漏れ空間側を低圧側として説明してきたが、被密封流体側と漏れ側とは略同じ圧力であってもよい。
【0095】
また、前記実施例1~6では、内径側が被密封流体空間側、外径側が漏れ空間側として説明してきたが、外径側が被密封流体空間側、内径側が漏れ空間側であってもよく、この場合、外径側に第2溝部が配置され、内径側に第1溝部が配置されることが好ましい。参考までに実施例1の動圧発生溝13’、流体導入溝17’の配置が径方向において実施例1とは反対となった変形例1-1を図11に示す。
【0096】
また、前記実施例1~6では、被密封流体により終端部で正圧を生じさせる1種類の動圧発生溝が設けられる形態を例示したが、上記動圧発生溝に加え、漏れ空間内の流体により終端部で正圧を生じさせる例えばスパイラル溝等の別の動圧発生溝が設けられていてもよい。参考までに実施例1の動圧発生溝13に加え、別の動圧発生溝99を設けた変形例1-2を図12に示す。
【0097】
また、前記実施例1~6では、被密封流体空間側に第2溝部が配置され、漏れ空間側に第1溝部が配置されている形態を例示したが、第1溝部に十分な負圧が生じるものであれば、被密封流体空間側に第1溝部が配置され、第1溝部よりも漏れ空間側に第2溝部が配置されていてもよい。
【0098】
また、前記実施例1~6では、相対回転時には、動圧発生溝の始端部に相対的な負圧が発生する形態を例示したが、第1溝部を十分に深く形成し、相対回転時に積極的に負圧が発生しないようになっていてもよい。この場合であっても、第1溝部が十分に深いため、漏れ側に移動する被密封流体を第1溝部で回収できる。
【0099】
また、前記実施例1~6では、被密封流体Fは高圧の液体と説明したが、これに限らず気体または低圧の液体であってもよいし、液体と気体が混合したミスト状であってもよい。
【0100】
また、前記実施例1~6では、漏れ空間側の流体は低圧の気体である大気Aであると説明したが、これに限らず液体または高圧の気体であってもよいし、液体と気体が混合したミスト状であってもよい。
【0101】
また、前記実施例1~6では、第1溝部および第2溝部が静止密封環と同心状に設けられるものに限られず、周方向および径方向に傾斜していてもよい。すなわち、第1溝部および第2溝部は周方向に延びる成分を有し、周方向および径方向に傾斜する傾斜溝部により連通されていればよい。
【0102】
また、前記実施例1~6では、傾斜溝部が少なくとも第2溝部における終端部近傍部位よりも深く形成されている形態を例示したが、傾斜溝部が第2溝部と同じ深さに形成されていてもよい。
【0103】
また、前記実施例1~5では、傾斜溝部が流体導入溝部よりも浅い形態を例示したが、傾斜溝部が流体導入溝部と同じ深さに形成されていてもよい。
【0104】
また、前記実施例1~5では、流体導入溝部が第2溝部に直接連通していない形態を例示したが、流体導入溝部の端部開口の一部または全部が第2溝部に直接連通していてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 回転軸
2 スリーブ
4 ハウジング
10 静止密封環(摺動部品)
11 摺動面
12 ランド
13 動圧発生溝
13A 始端部
13B 終端部
14 流体回収溝部(第1溝部)
15 正圧発生溝部(第2溝部)
16 傾斜溝部
16a 底面
16b,16c 側面
16d 内径端縁(端面)
17 流体導入溝部
20 回転密封環(他の摺動部品)
21 摺動面
210 静止密封環(摺動部品)
217 流体導入溝部
310 静止密封環(摺動部品)
317 流体導入溝部
410 静止密封環(摺動部品)
413 動圧発生溝
413A 始端部
413B 終端部
413C 第2溝部
414 流体回収溝部(第1溝部)
415 正圧発生溝部(第2溝部)
416 傾斜溝部
417 流体導入溝部
418 深溝部(第2溝部)
510 静止密封環(摺動部品)
516 傾斜溝部
610 静止密封環(摺動部品)
613 動圧発生溝
613A 始端部
613B 終端部
A 大気
F 被密封流体
S1 内空間(被密封流体空間)
S2 外空間(漏れ空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12