(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】部分放電検出装置、部分放電検出方法、部分放電検出システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20240716BHJP
【FI】
G01R31/12 A
(21)【出願番号】P 2018110370
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷹箸 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮内 康寿
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】小島 寛史
【審判官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157912(WO,A1)
【文献】特開2005-265684(JP,A)
【文献】特開2016-142609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0298724(US,A1)
【文献】国際公開第2005/086284(WO,A1)
【文献】特開2010-117298(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190260(WO,A1)
【文献】特開平10-170589(JP,A)
【文献】特開2017-156238(JP,A)
【文献】特開2008-304357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電体で構成され、箱体に収納された電気機器の部分放電によって生じる電磁波の電界成分を前記複数の導電体がそれぞれ受信する板状のアンテナであって、前記部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域において、前記部分放電によって発生する電磁波より低い周波数の電磁波に対して相対的にリアクタンスが高くなるインダクタンスを有することで、他の装置からのノイズのうち前記部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域の成分を遮断する、遮蔽材を介して、前記箱体に取り付けられたアンテナと、
前記電磁波から生成される電気信号が表す受信強度に基づいて、前記電気機器の部分放電の発生の有無を判定することで部分放電を検出する部分放電判定部と、
前記複数の導電体それぞれに係る前記受信強度と前記電気信号が取得された日時とに基づいて、前記部分放電の発生した位置を特定する位置特定部と
を備え、
前記アンテナは前記箱体に収納される、
部分放電検出装置。
【請求項2】
前記部分放電判定部によって部分放電が検出された場合、部分放電が発生していることを報知する警報処理を行う警報部をさらに備える、請求項1に記載の部分放電検出装置。
【請求項3】
前記警報部は、前記部分放電判定部によって検出される部分放電の発生の頻度又は受信強度が予め決定された閾値よりも大きい場合、前記警報処理を行う、請求項2に記載の部分放電検出装置。
【請求項4】
前記アンテナは、前記箱体を構成する6面の金属板の内側に設けられた状態で前記電磁波を受信する請求項1から3のいずれか一項に記載の部分放電検出装置。
【請求項5】
前記金属板と前記アンテナとの間には、前記電磁波と同一の周波数帯の電磁波を遮断する遮蔽材が設けられる請求項4に記載の部分放電検出装置。
【請求項6】
箱体に収納された電気機器の部分放電によって生じる電磁波の電界成分を、アンテナの複数の導電体それぞれを介して受信する受信ステップと、
前記電磁波から生成される電気信号が表す受信強度に基づいて、前記電気機器の部分放電の発生の有無を判定することで部分放電を検出する部分放電判定ステップと、
前記複数の導電体それぞれに係る前記受信強度と前記電気信号が取得された日時とに基づいて、前記部分放電の発生した位置を特定する位置特定ステップと
を有し、
前記アンテナは、
前記複数の導電体で構成され、前記箱体に収納された電気機器の部分放電によって生じる電磁波の電界成分を前記複数の導電体がそれぞれ受信する板状のアンテナであって、
前記部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域において、前記部分放電によって発生する電磁波より低い周波数の電磁波に対して相対的にリアクタンスが高くなるインダクタンスを有することで、他の装置からのノイズのうち前記部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域の成分を遮断する、遮蔽材を介して、前記箱体に取り付けられる、
部分放電検出方法。
【請求項7】
複数の導電体で構成され、箱体に収納された電気機器の部分放電によって生じる電磁波
の電界成分を前記複数の導電体がそれぞれ受信する板状のアンテナであって、前記部分放電によって発生する電磁波
と同一の周波数帯域において
、前記部分放電によって発生する電磁波より低い周波数の電磁波に対して相対的に
リアクタンスが高くなるインダクタンスを有する
ことで、他の装置からのノイズのうち前記部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域の成分を遮断する、遮蔽材を介して、前記箱体に取り付けられたアンテナと、
前記電磁波から生成される電気信号が表す受信強度に基づいて、前記電気機器の部分放電の発生の有無を判定することで部分放電を検出する部分放電判定部と、
前記複数の導電体それぞれに係る前記受信強度と前記電気信号が取得された日時とに基づいて、前記部分放電の発生した位置を特定する位置特定部と
を備え、
前記アンテナは前記箱体に収納される、
部分放電検出システム。
【請求項8】
複数の導電体で構成され、箱体に収納された電気機器の部分放電によって生じる電磁波の電界成分を前記複数の導電体がそれぞれ受信する板状のアンテナであって、前記部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域において、前記部分放電によって発生する電磁波より低い周波数の電磁波に対して相対的にリアクタンスが高くなるインダクタンスを有することで、他の装置からのノイズのうち前記部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域の成分を遮断する、遮蔽材を介して、前記箱体に取り付けられたアンテナを備える部分放電検出装置のコンピュータを制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記箱体に収納された電気機器の部分放電によって生じる電磁波の電界成分を、前記アンテナの前記複数の導電体それぞれを介して受信する受信ステップと、
前記電磁波から生成される電気信号が表す受信強度に基づいて、前記電気機器の部分放電の発生の有無を判定することで部分放電を検出する部分放電判定ステップと、
前記複数の導電体それぞれに係る前記受信強度と前記電気信号が取得された日時とに基づいて、前記部分放電の発生した位置を特定する位置特定ステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、部分放電検出装置、部分放電検出方法、部分放電検出システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器は、経年変化によって電気機器表面又は電気機器内部の絶縁体の絶縁性能が劣化する。絶縁性能が劣化すると、劣化箇所で部分放電が発生する。さらに絶縁性能の劣化が進行した場合、絶縁破壊が起きる。絶縁破壊によって、地絡事故等の重大事故が発生する。このため、電気機器の維持・保守において、部分放電を検出する作業が行われている。部分放電検出装置は、部分放電の信号を捉え、信号の大きさ又は発生頻度等から絶縁性能の劣化状況を推定することで部分放電を検出する。
【0003】
従来の部分検出装置として、接地に流れ込むパルス電流又は表面電位の変化から部分放電を検出する装置が提案されている。しかし、パルス電流又は表面電位は微弱である。また、周辺機器から発生するノイズが、パルス電流又は表面電位に重畳する。このため、パルス電流や表面電位の検出は困難である場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より精度良く電気機器の部分放電を検出することができる部分放電検出装置、部分放電検出方法、部分放電検出システム及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の部分放電検出装置は、アンテナと、部分放電判定部と、位置特定部とを持つ。アンテナは、複数の導電体で構成され、箱体に収納された電気機器の部分放電によって生じる電磁波を前記複数の導電体がそれぞれ受信する。部分放電判定部は、前記電磁波から生成される電気信号が表す受信強度に基づいて、前記電気機器の部分放電の発生の有無を判定することで部分放電を検出する。前記アンテナは前記箱体に収納される。位置特定部は、前記複数の導電体それぞれに係る前記受信強度と前記電気信号が取得された日時とに基づいて、前記部分放電の発生した位置を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の部分放電検出装置の機能構成を表す機能ブロック図。
【
図2】実施形態の部分放電検出装置の設置された配電盤の斜視図。
【
図3】実施形態の部分放電の有無の判定と位置の特定との処理の流れを示すフローチャート。
【
図5】実施形態のアンテナの取り付けの一具体例を表す図。
【
図6】配電盤に取り付けされたアンテナの一具体例を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の部分放電検出装置、部分放電検出方法、部分放電検出システム及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態の部分放電検出装置100の機能構成を表す機能ブロック図である。部分放電検出装置100は、電気機器が収容された箱体に収納される。部分放電検出装置100は、アンテナ101を1つ以上備える。アンテナ101は信号線102によって部分放電判定装置103と接続される。部分放電検出装置100は、アンテナ101によって受信された電磁波に基づいて電気機器から発生した部分放電を検出する。
【0010】
アンテナ101は、アルミニウム、銅又は鉄等の導電体で構成される。アンテナ101は電磁波を受信する。電磁波は、例えば電気機器の部分放電によって生じる。部分放電は、例えば、電気機器を構成する遮断機の絶縁性能の劣化によって発生する。アンテナ101によって受信された電磁波に基づいて、電気信号が生成される。電気信号は、信号線102を通じて部分放電判定装置103に入力される。電気信号は、部分放電によって生じる電磁波から得られる受信強度を表す。部分放電判定装置103は、アンテナ101から入力された電気信号に基づいて、部分放電の有無を判定する。部分放電判定装置103は、部分放電判定プログラムを実行することによって通信部104、入力部105、表示部106、信号記憶部107及び制御部108を備える装置として機能する。アンテナ101は、例えば、金属板であってもよい。アンテナ101は、例えば、厚みが0.5mm以下程度の薄板又は金属テープであってもよい。アンテナ101は、大きさに限定はなく、どのような大きさであってもよい。
図1の部分放電検出装置100は、アンテナ101を複数備えるが、複数に限定されない。例えば、部分放電検出装置100は、アンテナ101を1つ備えるように構成されてもよい。
【0011】
通信部104は、ネットワークインタフェースである。通信部104はネットワーク(不図示)を介して、外部のサーバと通信する。通信部104は、例えば無線LAN(Local Area Network)、有線LAN、Bluetooth(登録商標)又はLTE(Long Term Evolution)(登録商標)等の通信方式で通信してもよい。
【0012】
入力部105は、タッチパネル、マウス及びキーボード等の入力装置を用いて構成される。入力部105は、入力装置を部分放電検出装置100に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部105は、入力装置において入力された入力信号から入力データ(例えば、部分放電検出装置100に対する指示を示す指示情報)を生成し、部分放電検出装置100に入力する。
【0013】
表示部106は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の出力装置である。表示部106は、出力装置を部分放電検出装置100に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部106は、映像データから映像信号を生成し自身に接続されている映像出力装置に映像信号を出力する。
【0014】
信号記憶部107は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。信号記憶部107は、信号データを記憶する。信号データは、アンテナ101によって受信された電磁波に基づいて生成される。信号データは、電気信号が取得された日時と電気信号が表す受信強度とを少なくとも保持する。なお、部分放電検出装置100が複数のアンテナ101を備える場合、信号データはアンテナ101の識別情報を保持してもよい。識別情報は、アンテナ101を特定できる情報であればどのような情報であってもよい。
【0015】
制御部108は、部分放電判定装置103の各部の動作を制御する。制御部108は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びRAM(Random Access Memory)を備えた装置により実行される。制御部108は、信号処理プログラムを実行することによって、電気信号取得部109、増幅部110、フィルタ部111、部分放電判定部112及び位置特定部113として機能する。
【0016】
電気信号取得部109は、アンテナ101によって入力された電気信号を取得する。電気信号取得部109は、電気信号が取得された日時と電気信号が表す受信強度とを対応付ける。なお、部分放電検出装置100がアンテナ101を複数備える場合、電気信号取得部109は、電気信号が取得された日時と電気信号が表す受信強度とアンテナの識別情報とを対応付ける。
【0017】
増幅部110は、取得された電気信号を増幅する。増幅部110は、増幅された電気信号をフィルタ部111に出力する。フィルタ部111は、電気信号に重畳するノイズ成分を除去する。フィルタ部111は、例えば、各アンテナ101によって生成された電気信号のうち部分放電信号が含まれる周波数帯域のみを通過させるハンドパスフィルタである。これによりフィルタ部111は、ノイズが除去された電気信号を部分放電判定部112に出力する。
【0018】
部分放電判定部112は、電気信号から部分放電信号を取得する。具体的には、部分放電判定部112は、電気信号の受信強度と所定の閾値とに基づいて、部分放電信号の有無を判定することで部分放電を検出する。所定の閾値は予め決定される。部分放電判定部112は、例えば、電気信号の受信強度が所定の閾値以上である場合に、部分放電信号は“あり”と判定してもよい。部分放電判定部112は、部分放電信号“あり”と判定された場合、電気信号が取得された日時と電気信号が表す受信強度とを信号データとして信号記憶部107に記録する。なお、部分放電検出装置100がアンテナ101を複数備える場合、部分放電判定部112は、電気信号が取得された日時と電気信号が表す受信強度とアンテナの識別情報とを信号データとして信号記憶部107に記録してもよい。
【0019】
位置特定部113は、部分放電による電磁波を複数のアンテナ101で受信した場合、部分放電の発生位置を特定する。位置特定部113は、部分放電信号“あり”と判定された場合、アンテナ101毎に生成された電気信号の信号レベルと電気信号が取得された日時の差とから部分放電の発生位置を特定する。位置特定部113は、部分放電の発生位置を特定するにあたり、公知の方法を用いて特定してもよい。例えば、位置特定部113は、公知の部分放電発生位置の特定方法として、部分放電信号“あり”の電気信号の信号レベルが最も大きい、又は電気信号が取得された日時が最も早いアンテナ101の近傍に部分放電の発生位置があることを特定する方法を用いてもよい。
【0020】
図2は、実施形態の部分放電検出装置100の設置された配電盤10の斜視図である。配電盤10の内部には、電気機器11が収納される。電気機器11は、遮断機、断路器、変流器又は変圧器等の機器(いずれも不図示)によって構成される。電気機器11は、外部から電源ケーブル12を介して、高電圧及び大電流を通電する。電気機器11は、異常時には通電を遮断する機能を有する。なお、配電盤10の下部には、接地極13が接続される。配電盤10は、箱体の一態様である。
【0021】
符号20は、電気機器11を構成する機器(例えば、遮断機)にて、部分放電が発生した位置を示す符号である。符号21から符号25は、部分放電によって放射された電磁波の一例を表す符号である。なお、電磁波の放射される方位は符号21から符号25の5方位に限定されない。部分放電が発生した場合、電磁波は、部分放電の発生した位置を起点にして空間の全方位に放射される。
【0022】
部分放電検出装置100は、配電盤10の内部に収納される。部分放電検出装置100は、配電盤10内部で発生する部分放電を検出する。
図2の場合、部分放電検出装置100は符号20の位置から放射された電磁波を受信する。
図2の場合、アンテナ101は正面扉10aに取り付けられる。アンテナ101は、正面扉10aが閉じられた場合、符号22によって表される電磁波を受信する。受信された電磁波は、信号線102を通じて電気信号として部分放電判定装置103に入力される。部分放電判定装置103は、入力された電気信号によって、部分放電の発生の有無を判定する。部分放電検出装置100は、例えば、配電盤10の正面扉10aの内側に取り付けされてもよい。
【0023】
図3は、実施形態の部分放電の有無の判定と位置の特定との処理の流れを示すフローチャートである。部分放電検出装置100のアンテナ101は電磁波を受信する(ステップS101)。アンテナ101は電磁波を電気信号として部分放電判定装置103に入力する。電気信号取得部109は入力された電気信号を取得する(ステップS102)。増幅部110は、取得された電気信号を増幅する(ステップS103)。フィルタ部111は、電気信号に重畳するノイズ成分を除去する(ステップS104)。
【0024】
部分放電判定部112は電気信号の信号レベルが予め決定された閾値よりも大きいか否か判定する(ステップS105)。電気信号の信号レベルが予め決定された閾値よりも大きい場合(ステップS105:YES)、部分放電判定部112は、電気信号に対して部分放電信号“あり”と判定する(ステップS106)。部分放電判定部112は、部分放電信号“あり”と判定された場合、電気信号が取得された日時と電気信号が表す受信強度とを信号データとして信号記憶部107に記録する(ステップS107)。位置特定部113は、部分放電信号“あり”と判定された場合、アンテナ101毎に生成された電気信号が表す受信強度と電気信号が取得された日時の差とから部分放電の発生位置を特定する(ステップS108)。
【0025】
電気信号の信号レベルが予め決定された閾値以下の場合(ステップS105:NO)、部分放電判定部112は、電気信号に対して部分放電信号“なし”と判定する(ステップS109)。
【0026】
図4は、実施形態のアンテナ101の一具体例を表す図である。アンテナ101は、例えば、
図4に表されるように、複数個の金属片101aから101oを並べて構成されてもよい。この場合、複数個の金属片の個数及び大きさに限定はなく、どのような個数及び大きさであってもよい。金属片は、例えば、アルミニウム、銅又は鉄等の導電体である。アンテナ101aから101oは、それぞれで電磁波を受信する。受信された電磁波は、信号線102を介して部分放電判定装置103に入力される。このように複数個の金属片を並べることで、アンテナ101はより感度よく電磁波を受信することができる。また、位置特定部113は、
図4に表されるアンテナ101が配電盤10に設けられる場合、1つのアンテナ101を取り付けることで、部分放電の発生位置を特定することが可能になる。したがって、複数のアンテナ101を配電盤10に設けることなく、位置特定部113は、部分放電の発生位置を特定することが可能になる。
【0027】
図5は、実施形態のアンテナ101の取り付けの一具体例を表す図である。
図5では、アンテナ101は、配電盤10を構成する正面扉10a、上面板10b、背面板10c、底面板10d、第一側面板10e及び第二側面板10fの6面の金属板の内側に設けられる。アンテナ101は、配電盤10を構成する6面の金属板の内側に設けられた状態で電磁波を受信する。アンテナ101は、
図4に表されるように複数の金属片によって構成されるアンテナであってもよい。
図5では、アンテナ101は6面の金属板のそれぞれに1つずつ設けられているが、複数設けられてもよい。この場合、アンテナ101は、金属板の一面に、縦に並べて設けられてもよいし、横の並べて設けられてもよいし、ランダムに設けられてもよい。
図5では、アンテナ101は6面の金属板のそれぞれに設けられているが、6面の金属板のすべてに設けられていなくてもよい。例えば、アンテナ101は、上面板10bに設けられていなくてもよいし、背面板10cに設けられていなくてもよい。このように、アンテナ101は、設けられる場所及び設けられる個数に限定はない。
【0028】
アンテナ101は、薄い金属板又は金属テープとすることで、配電盤10を構成する正面扉10a、上面板10b、背面板10c、底面板10d、第一側面板10e及び第二側面板10fの6面の金属板に容易に取り付けることが可能になる。また、薄い金属板又は金属テープによって構成されたアンテナ101は、平面以外の形状で金属板に取り付けることが可能になる。平面以外の形状は、例えば、湾曲した形状であってもよいし、立体的な形状としてもよい。また、アンテナ101は、配電盤10の内側の各面に取り付けられることで、部分放電によって発生する電磁波を複数のアンテナ101で受信することが可能になる。位置特定部113は、アンテナ101毎に生成された電気信号が表す受信強度と電気信号が取得された日時の差とに基づいて、部分放電の発生位置を特定することができる。
【0029】
図6は、配電盤10に取り付けされたアンテナ101の一具体例を表す図である。
図6では、正面扉10aに取り付けられたアンテナ101を例として説明する。正面扉10aとアンテナ101との間に遮蔽材30が設けられる。遮蔽材30は、アンテナ101に伝導するノイズを遮断する。遮蔽材30は、部分放電によって発生する電磁波と同一の周波数帯域の成分を遮断する。遮蔽材30は、部分放電によって発生する電磁波の周波数帯域において抵抗値が高くなるインダクタンスを構成する素材であってもよい。なお、部分放電の周波数帯域は数十MHzから数百MHzである。遮蔽材30は、例えば、磁性シートが用いられてもよいし、板状のフェライトコアが用いられてもよい。なお、遮蔽材30は、アンテナ101の側面を囲むように設けられてもよい。遮蔽材30は、アンテナ101が正面扉10aに接しない大きさで構成される。遮蔽材30は、複数種類の素材を重ねて設けられてもよい。
【0030】
このように構成された部分放電検出装置100では、アンテナ101が電気機器の部分放電によって発生する電磁波を受信する。部分放電は、電気機器の絶縁体の絶縁性能の低下によって発生する。アンテナ101は、配電盤10との間に遮蔽材30が設けられるため、他の装置からのノイズが遮断された状態で電磁波を受信できる。このため、部分放電検出装置100は、より精度高く部分放電の有無を検出することが可能になる。また、アンテナ101は、金属片を複数個並べた構成としたり、電気機器が収納される配電盤に複数個設けられたりすることで、電磁波を複数のアンテナで受信できる。位置特定部113は、複数のアンテナで電磁波を受信した場合、アンテナごとの電気信号が表す受信強度と電気信号が取得された日時の差とから部分放電の発生位置を特定する。したがって、さらに精度よく部分放電の有無を検出することが可能になる。
【0031】
(変形例)
制御部108は、故障予測部をさらに備えるように構成されてもよい。故障予測部は、電気機器の故障予測を行う。電気機器は、絶縁劣化が進行すると、部分放電の頻度が高まる。故障予測部は、例えば、部分放電の頻度に関する閾値よりも部分放電判定部112によって検出される部分放電の頻度が高くなった場合、電気機器の故障の可能性が高まっていることを報知する警報発報指示を送信してもよい。また、電気機器は、絶縁劣化が進行すると、部分放電の信号の強度は強くなる。故障予測部は、部分放電の受信強度が、受信強度に関する閾値よりも大きくなった場合、電気機器の故障の可能性が高まっていることを報知する警報発報指示を送信してもよい。なお、部分放電の頻度に関する閾値又は信号の強度に関する閾値は、予め決定された閾値が用いられてもよい。
【0032】
部分放電判定部112は、部分放電“あり”と判定した場合、部分放電が発生していることを報知する警報発報指示を送信するように構成されてもよい。この場合、制御部108は、警報部をさらに備える。警報部は警報発報指示を受け付ける。警報部は、受け付けた警報発報指示に基づいて警報処理を行う。警報処理は、警告音を発報してもよいし、あらかじめ指定された宛先に対してメール又はSMS(Short Message Service)等の電文を送信してもよい。警報処理は予め指定された処理であればどのような処理であってもよい。また、電気機器は、複数の位置で部分放電が発生する場合がある。位置特定部113は、複数の部分放電の位置を特定する。位置特定部113によって複数の部分放電の位置が特定された場合、故障予測部は、複数の位置で部分放電が発生していることを報知する警報発報指示を送信してもよい。警報処理が行われることで、部分放電が発生した場合に、より迅速に部分放電の解消を行うことが可能になる。
【0033】
警報部は、受け付けた警報発報指示によって異なる警報処理を行ってもよい。例えば、警報部は、故障予測部から電気機器の故障の可能性が高まっていることを報知する警報発報指示を受け付けた場合、外部の装置に電文を送信するように構成されてもよい。警報部は、部分放電判定部112から部分放電が発生していることを報知する警報発報指示を受け付けた場合、警告音を発報するように構成されてもよい。警報部は、複数の位置で部分放電が発生していることを報知する警報発報指示を受け付けた場合、外部の装置に電文を送信し、かつ警告音を発報するように構成されてもよい。
【0034】
本実施形態では、部分放電検出装置100は、一台の装置であるとして説明したが、複数の装置として構成されてもよい。部分放電検出装置100は、クラウドコンピューティングシステムによって構成されてもよい。
【0035】
上記各実施形態では、電気信号取得部109、増幅部110、フィルタ部111、部分放電判定部112及び位置特定部113はソフトウェア機能部であるものとしたが、LSI又は電気回路等のハードウェア機能部であってもよい。
【0036】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、アンテナ101及び位置特定部113を持つことにより、より精度高く部分放電の有無を検出することができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
10…配電盤、11…電気機器、12…電源ケーブル、13…接地極、30…遮蔽材、100…部分放電検出装置、101…アンテナ、102…信号線、103…部分放電判定装置、104…通信部、105…入力部、106…表示部、107…信号記憶部、108…制御部、109…電気信号取得部、110…増幅部、111…フィルタ部、112…部分放電判定部、113…位置特定部