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  • 特許-車体構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018244054
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020104636
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】穴田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一夫
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】北中 忠
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-176635(JP,A)
【文献】特開2015-182627(JP,A)
【文献】実開平3-121983(JP,U)
【文献】特開2016-150702(JP,A)
【文献】特開2009-96287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントピラーインナパネルを備える車体構造であって、
前記フロントピラーインナパネルは、
ウインドシールドの左右両側に位置し、ルーフパネルの前端部に対応する上方位置まで延びるピラー本体部と、
前記ピラー本体部に一体に設けられ、前記上方位置から前記ルーフパネルの側縁に沿ってルーフサイドレールインナパネルまで延びる延設部とを備え、
前記ピラー本体部と前記延設部とは、繋ぎ目なく成形された一体物であり、
前記上方位置において前記ピラー本体部間に架け渡されるヘッダパネルと、
前記ヘッダパネルと間隔を有するように前記延設部間に架け渡されるクロスメンバとを備え、
前記フロントピラーインナパネルと前記ヘッダパネルと前記クロスメンバとで、四角形状の枠が形成されている、
車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントピラーインナパネル間に架け渡されるヘッダパネルを備える車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体構造は、図3に示すように、フロントピラーインナパネル110と、ヘッダパネル120と、ルーフサイドレールインナパネル170と、クロスメンバ130とを備える。フロントピラーインナパネル110は、ウインドシールド90の左右両側に位置し、ルーフパネル60の前端部に対応する上方位置2まで延びる。ヘッダパネル120は、上記上方位置2においてフロントピラーインナパネル110間に架け渡され、ルーフパネル60の前端部に結合されて車両幅方向に延びる。ヘッダパネル120は、ルーフパネル60の前端部に対して片持ち支持される構造が一般的である。ルーフサイドレールインナパネル170は、上記上方位置2においてフロントピラーインナパネル110に結合されると共に、ルーフパネル60の車両幅方向の両側縁にそれぞれ結合されて車両前後方向に延びる。クロスメンバ130は、ルーフサイドレールインナパネル170間に架け渡される。
【0003】
ヘッダパネル120には、代表的にはインナミラー81が取り付けられる。ヘッダパネル120は、上述したようにルーフパネル60に片持ち支持されていることから、剛性の向上が望まれる。例えば、特許文献1では、ルーフパネルとフレーム(図3に示すヘッダパネル120に相当)との間にリーンフォースメントを介在させ、リーンフォースメントをルーフパネルに結合すると共に、フレームも結合している(特許文献1の図2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-212053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、インナミラーに後方視界用モニターを付加したり、インナミラー以外にETC等の付加部品をヘッダパネルに取り付けたりすることで、ヘッダパネルへ取り付けられる部品の合計重量が増加する傾向にある。よって、ヘッダパネルの更なる剛性の向上が望まれる。例えば、ヘッダパネルの板厚を厚くしたり、剛性の高い材質を用いたり、補強部材を追加したりすることが考えられる。しかし、この場合、コストや重量が増加したり、生産性が悪化したりする。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、簡易な構成で、ヘッダパネルの剛性を向上できる車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車体構造は、
フロントピラーインナパネルを備える車体構造であって、
前記フロントピラーインナパネルは、
ウインドシールドの左右両側に位置し、ルーフパネルの前端部に対応する上方位置まで延びるピラー本体部と、
前記ピラー本体部に一体に設けられ、前記上方位置から前記ルーフパネルの側縁に沿ってルーフサイドレールインナパネルまで延びる延設部とを備え、
前記上方位置において前記ピラー本体部間に架け渡されるヘッダパネルと、
前記ヘッダパネルと間隔を有するように前記延設部間に架け渡されるクロスメンバとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車体構造では、フロントピラーインナパネルは、ピラー本体部と延設部とに繋ぎ目のない一連の部材で構成される。ヘッダパネルは、フロントピラーインナパネルの長手方向の中間部に連結され、クロスメンバは、フロントピラーインナパネルの長手方向の後方部に連結される。よって、車室を構成する車両前方の構造体を、フロントピラーインナパネルとヘッダパネルとクロスメンバとで、四角形状の枠に形成できる。従来の車体構造では、本発明のピラー本体部と延設部に相当する部材は、フロントピラーインナパネルとルーフサイドレールインナパネルといった独立した部材であり、互いに繋ぎ目を介して連結されている。つまり、本発明の車体構造では、従来の車体構造に比較して、フロントピラーインナパネルの連結箇所が少なくなっており、ヘッダパネルの剛性を効果的に向上できる。ヘッダパネルの剛性を向上できることで、ヘッダパネルに取り付けられるインナミラーのびびりを抑制したり、ルーフパネルの振動を抑制したり、こもり音を抑制したりできる。
【0009】
上記車体構造では、フロントピラーインナパネルに延設部を設け、この延設部にクロスメンバを架け渡すことで、ヘッダパネルの剛性を向上している。よって、上記車体構造は、既存の車体構造の構成部材に簡易な改変を施して利用でき、コストや重量が増加したり、生産性が悪化したりすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態の車体構造を示す概略構成図である。
図2図2は、実施形態の車体構造に付加部品を装着した状態を示す概略断面図である。
図3図3は、従来の車体構造を備える車両を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の車体構造を、主に図1及び図2を参照して説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」とは、車両の正面を「前」とし、これを基準とする方向を意味し、図中、矢印FRは車両前後方向の前側、矢印RRは後側、矢印LHは車両左右方向(車両幅方向)の左側、矢印RHは右側、矢印UPは車両上下方向の上側、矢印LWRは下側を示す。
【0012】
図2は、図1に示す実施形態の車体構造1を備える車両において、図1の(II)-(II)切断線で切断した断面図であり、ヘッダパネル20とクロスメンバ30との間に架け渡されるブラケット40にインナミラー81及び付加部品82が取り付けられた状態を示す。付加部品82は、例えば、ETC(Electronic Toll Collection System)や、マップランプ、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)である。また、インナミラー81に後方視界用モニターを付加することもできる。
【0013】
〔全体構成〕
実施形態の車体構造1は、図1に示すように、左右のフロントピラーインナパネル10と、ヘッダパネル20と、クロスメンバ30とを備える。左右のフロントピラーインナパネル10は、ウインドシールド90(図3)の左右両側に位置し、ルーフパネル60(図2図3)の前端部に対応する上方位置2まで延びるピラー本体部11を備える。ヘッダパネル20は、上方位置2においてピラー本体部11間に架け渡される。実施形態の車体構造1は、フロントピラーインナパネル10に上方位置2からルーフパネル60(図3)の側縁に沿って延びる延設部12を備え、この延設部12間にクロスメンバ30が架け渡される点を特徴の一つとする。この例の車体構造1は、ヘッダパネル20とクロスメンバ30との間に架け渡されるブラケット40を備える。ブラケット40には、図2に示すように、インナミラー81、更に付加部品82が取り付けられる。また、この例の車体構造1は、カウル50とルーフサイドレールインナパネル70とを繋ぐようにフロントピラーインナパネル10が設けられる。
【0014】
〔フロントピラーインナパネル〕
フロントピラーインナパネル10は、ウインドシールド90(図3)の左右両側に配置されるフロントピラーにおける車内側に配置される部材である。図1では、フロントピラーにおける車外側に配置されるフロントピラーアウタパネルは省略している。
【0015】
フロントピラーインナパネル10は、ピラー本体部11と延設部12とを備える。ピラー本体部11と延設部12とは、繋ぎ目なく成形された一体物である。ピラー本体部11は、ウインドシールド90(図3)の左右両側に位置し、ルーフパネル60(図2図3)の前端部に対応する上方位置2まで延びる。延設部12は、上方位置2からルーフパネル60(図3)の側縁に沿ってルーフサイドレールインナパネル70まで延びる。延設部12の車両前後方向に沿った長さは、ブラケット40の車両前後方向に沿った長さと同程度又はそれ以上であることが好ましい。延設部12間に架け渡されたクロスメンバ30とヘッダパネル20との間にブラケット40を架け渡し易いからである。延設部12は、ルーフサイドレールインナパネル70と共にルーフパネル60(図3)の車両幅方向の端部に結合される。延設部12がルーフパネル60(図3)の側縁に沿って配置されるため、ルーフサイドレールインナパネル70の前端部は、従来のルーフサイドレールインナパネル170(図3)に比較して、車両後方側に位置する。延設部12とルーフサイドレールインナパネル70との結合には、ボルト締結や溶接等が利用できる。
【0016】
〔ヘッダパネル〕
ヘッダパネル20は、上方位置2においてピラー本体部11間に架け渡される。ピラー本体部11に対するヘッダパネル20の取り付けには、ボルト締結や溶接等が利用できる。ヘッダパネル20は、ウインドシールド90(図2図3)の上側に位置するように、車両幅方向に延びる。ヘッダパネル20は、図2に示すように、車両前方側の縁部がルーフパネル60の前端部に結合され、車両後方側の縁部が開放しており、ルーフパネル60に対して片持ち支持されている。
【0017】
〔クロスメンバ〕
クロスメンバ30は、延設部12間に架け渡される。延設部12に対するクロスメンバ30の取り付けは、ボルト締結や溶接等が利用できる。クロスメンバ30は、ヘッダパネル20と車両前後方向に間隔を有するように設けられる。そのため、延設部12とヘッダパネル20とクロスメンバ30とで、四角形状の枠が形成される(図1参照)。クロスメンバ30は、ヘッダパネル20の近くで、ヘッダパネル20と略平行に配置されることが好ましい。
【0018】
〔ブラケット〕
ヘッダパネル20とクロスメンバ30との間には、ブラケット40を架け渡すことができる。ブラケット40は、ヘッダパネル20及びクロスメンバ30の車両幅方向の中央部に設けられる。ヘッダパネル20及びクロスメンバ30に対するブラケット40の取り付けには、ボルト締結や溶接等が利用できる。延設部12とヘッダパネル20とクロスメンバ30とブラケット40とで、二つの四角形状の枠が車両幅方向に並列して連結されたB字状(日字状)の枠が形成される(図1参照)。ブラケット40には、図2に示すように、インナミラー81、更に付加部品82を取り付けることができる。この例では、ブラケット40の中央部に開口部41が形成されており、この開口部41に付加部品82が嵌め込まれている。付加部品82の配線(図示せず)は、開口部41を介してルーフパネル60側に引き出される。ブラケット40は、板状部材や棒状部材が利用できる。
【0019】
〔カウル〕
カウル50は、ウインドシールド90(図3)の車両下側に位置するように、車両幅方向に延びる。このカウル50は、ピラー本体部11の下端部間に架け渡して配置することができる。この場合、フロントピラーインナパネル10とヘッダパネル20とクロスメンバ30とカウル50とで、二つの四角形状の枠が車両前後方向かつ車両上下方向に並列して連結されたB字状(日字状)の枠が形成される(図1参照)。ピラー本体部11とカウル50との結合は、ボルト締結や溶接等が利用できる。ピラー本体部11の下端部は、カウル50と結合されていなくてもよい。
【0020】
〔作用効果〕
実施形態の車体構造1では、ピラー本体部11と延設部12とに繋ぎ目のないフロントピラーインナパネル10という一つの部材に対してヘッダパネル20とクロスメンバ30とが架け渡され、フロントピラーインナパネル10(延設部12)とヘッダパネル20とクロスメンバ30とで、四角形状の枠が形成される。従来の車体構造では、図3に示すように、互いに独立した部材であるフロントピラーインナパネル110とルーフサイドレールインナパネル170に対して、フロントピラーインナパネル110にヘッダパネル120が架け渡され、ルーフサイドレールインナパネル170にクロスメンバ130が架け渡されている。よって、実施形態の車体構造1は、従来の車体構造に比較して、フロントピラーインナパネル10の連結箇所が少なくなっており、フロントピラーインナパネル10を介してヘッダパネル20の剛性を効果的に向上できる。ヘッダパネル20の剛性を向上できることで、ヘッダパネル20に取り付けられるインナミラー81のびびりを抑制したり、ルーフパネル60(図2図3)の振動を抑制したり、こもり音を抑制したりできる。
【0021】
上記車体構造1では、フロントピラーインナパネル10に延設部12を設け、この延設部12にクロスメンバ30を架け渡すことで、ヘッダパネル20の剛性を向上している。よって、上記車体構造1は、既存の車体構造の構成部材に簡易な改変を施して利用でき、コストや重量が増加したり、生産性が悪化したりすることを抑制できる。
【0022】
特に、ヘッダパネル20とクロスメンバ30との間に架け渡されるブラケット40を備える車体構造1では、フロントピラーインナパネル10(延設部12)とヘッダパネル20とクロスメンバ30とブラケット40とで、二つの四角形状の枠が車両幅方向に並列して連結されたB字状(日字状)の枠が形成される。このB字状の枠の形成によって、ヘッダパネル20の剛性をさらに向上できる。ブラケット40は、ヘッダパネル20及びクロスメンバ30に対して両端支持されている(図2参照)。このブラケット40にインナミラー81、更に付加部品82が取り付けられることで、ヘッダパネル20廻りの剛性をさらに向上できる。ブラケット40にインナミラー81等が取り付けられることで、ブラケット40を変更することで、ヘッダパネル20廻りの剛性を確保しつつ、付加部品82の有無等のバリエーションに容易に対応できる。
【0023】
また、フロントピラーインナパネル10(ピラー本体部11)の下端部間にカウル50が架け渡される車体構造1では、フロントピラーインナパネル10とヘッダパネル20とクロスメンバ30とカウル50とで、二つの四角形状の枠が車両前後方向かつ車両上下方向に並列して連結されたB字状(日字状)の枠が形成される。このB字状の枠によって、ウインドシールド90(図3)廻りの剛性を向上できる。ウインドシールド90廻りの剛性を向上できることで、こもり音を抑制し易い。
【0024】
実施形態の車体構造1では、フロントピラーインナパネル10の延設部12がルーフパネル60(図3)の側縁に沿って配置される。そのため、フロントピラーインナパネル10とルーフサイドレールインナパネル70との結合部が、ルーフパネル60(図2図3)の前端部に対応する上方位置2よりも車両後方側に位置する。よって、ピラーガーニッシュ等を設定しない商用車等において、上記結合部が運転者の視界に入ることを抑制できる。
【0025】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0026】
1 車体構造
2 上方位置
10、110 フロントピラーインナパネル
11 ピラー本体部
12 延設部
20、120 ヘッダパネル
30、130 クロスメンバ
40 ブラケット
41 開口部
50 カウル
60 ルーフパネル
70、170 ルーフサイドレールインナパネル
81 インナミラー
82 付加部品
90 ウインドシールド
図1
図2
図3