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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ケーブル保護ソケット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240716BHJP
   E04H 12/12 20060101ALI20240716BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20240716BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02G3/04 081
E04H12/12
E04H12/00 C
H02G7/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019165783
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021044952
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176512
【氏名又は名称】三谷セキサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 寿典
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3196083(JP,U)
【文献】特開2015-209933(JP,A)
【文献】特表2006-514249(JP,A)
【文献】特開2002-247736(JP,A)
【文献】特表2005-522303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
E04H 12/12
E04H 12/00
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性樹脂材料からなり、厚さt1の基部の下面に、外径D11の円筒状の貫通保護部材を連結してなり、以下の要件をすべて満たして構成したことを特徴とするコンクリートポール用のケーブル保護ソケット。
(1) 基部の外径を貫通保護部材の外径より大径に形成した。
(2) 前記基部に前記貫通保護部材の内径D12と同径の貫通孔を形成し、かつ前記基部の貫通孔の上縁に基部の上面と緩やかに連続するテーパー部を形成した。
(3) 前記貫通保護部材の外周に、円周方向の環状突起を、複数高さに設けた。
(4) 前記基部の厚さt1を、
D11×(3分の1)<t1<D11×(3分の2)
とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートポールの貫通孔にケーブルを通す場合に、そのケーブルを保護するために貫通孔に装着するケーブル保護ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製ポールでは、連結用の鋼製のフランジを付けた単位ポールを、鋼製のフランジで連結して、所望の長さのコンクリート製ポールを提供していた(特許文献1)。
また、コンクリート製ポールでは、上部に設置した機器などから地面に向けてアース線などの電気ケーブルを配線する必要があった。また、地上や地下に設置した機器からコンクリート製ポールの上端部まで電気ケーブルを配線する場合もあった。この場合、電気ケーブルは、地上付近ではできるだけコンクリート製ポール内に配置し、かつ露出する箇所では、コンクリート製ポールの長さ方向に沿って配置する必要があった。したがって、コンクリート製ポールの上部側に連結用のフランジがあった場合、これを貫通しなければならなった。したがって、鋼製のフランジの挿通切り欠きに樹脂製の保護パイプを設ける提案もあった(特許文献2)。この保護パイプでは、直胴部の上端に薄い突出部を形成し、直胴部に軸方向の全長に亘る開口部を形成し、開口部を小さくするように撓ませて、鋼製のフランジの挿通切り欠きに密着させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-101325号公報
【文献】実用新案登録第3196083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の保護パイプでは、鋼製フランジの挿通切欠に嵌挿する構造であり、鋼製フランジに貫通孔を形成してアース線を挿通するタイプでは、貫通孔に保護パイプを挿入し難かった。また、挿通切欠の径と保護パイプの直胴部の径によっては、経年変化などにより挿通切欠が開いたままになる場合もあり、挿通切欠を通して、アース線と鋼製フランジが接触する場合もあった。また、強風などの不測の事態では、挿通切り欠きからアース線が飛び出すことも考えられた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、保護ソケットの基部を作業者が摘める程度の厚さとし、貫通保護部材を円筒状とし、かつ環状突起を設けたので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの発明は、電気絶縁性樹脂材料からなり、厚さt1の基部の下面に、外径D11の円筒状の貫通保護部材を連結してなり、以下の要件をすべて満たして構成したことを特徴とするコンクリートポール用のケーブル保護ソケットである。
(1) 基部の外径を貫通保護部材の外径より大径に形成した。
(2) 前記基部に前記貫通保護部材の内径D12と同径の貫通孔を形成し、かつ前記基部の貫通孔の上縁に基部の上面と緩やかに連続するテーパー部を形成した。
(3) 前記貫通保護部材の外周に、円周方向の環状突起を、複数高さに設けた。
(4) 前記基部の厚さt1を、
D11×(3分の1)<t1<D11×(3分の2)
とした。
【0009】
前記における作業者が指で掴める程度の十分な厚さとは、例えば、2~30mm程度である。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、保護ソケットの基部を作業者が摘める程度の厚さとしたので、コンクリート製ポールの鋼製フランジのケーブル挿入孔に保護ソケットを挿入調整する作業を容易かつ簡略化できる。
また、保護ソケットに円筒状の貫通保護部材を備え、貫通保護部材より大径の基部を形成したので、鋼製フランジのケーブル挿入孔を確実に塞ぎ、アース線などの電気ケーブルが鋼製フランジに触れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明のケーブル保護ソケットで、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は縦断面図、を表す。
図2】この発明のコンクリート製ポールで、(a)は正面図、(b)はA部拡大図、を表す。
図3図2(b)で、一部を破切したB部拡大図、を表す。
図4】(a)~(c)は、この発明のコンクリート製ポールの構築手順を表す正面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づきこの発明の実施形態を説明ずる。
【0013】
1. 保護ソケット20の構成
【0014】
(1) 外径D1、厚さ(高さ)t1の円盤状の基部1の下面3に、外径D11、内径D12、長さL1の円筒状の貫通保護部材11を連設して、保護ソケット20を構成する。
【0015】
(2) 基部1は略中央に径D2(=D12)の貫通孔4を形成してあり、貫通孔4の上縁は徐々に拡大して基部1の上面2に至るテーパー部を形成してある。また、基部1の厚さ(高さ)t1は作業者が指で摘める程度の大きさで形成してあり、例えば、貫通保護部材11の外径D11に対して、2分の1程度で形成してあるが、
D11×(3分の1)<t1<D11×(3分の2)
程度で形成すれば良い。t1は短過ぎると摘みにくく、長すぎると取り扱い難いからである。
【0016】
(3) 外径D11、内径D12の円筒状の貫通保護部材11を、軸14を縦に配置して、貫通保護部材11の外周に、多少の弾性を有する環状突起13、13を上下4段に形成する。環状突起13、13は、貫通保護部材11の長さ方向の略中央横線15を挟んで、上下に2段づつ配置されている(図1)。
また、環状突起の外径D13とすると、
貫通保護部材11の外径D11<環状突起の外径D13<基部の外径D1
で形成されている。
【0017】
(4) 以上のような構造の保護ソケットを、電気絶縁性を有する樹脂材料から一体に成形して形成する。保護ソケットの大きさは、使用する電気ケーブル挿通孔37の大きさ、電気ケーブルの太さなどにより種々の大きさで構成できるが、例えば、
基部1の外径D1=14mm程度
貫通保護部材11の外径D11=9mm程度
貫通保護部材11の内径D12=基部1の貫通孔D2=7mm程度
環状突起13の外径D13=11mm程度
貫通保護部材11の長さL1=55mm程度
で形成されている(図1)。
【0018】
2.コンクリート製ポール50
【0019】
(1) コンクリート製ポール50は、上単位ポール31と下単位ポール41とを連結して、構成する(図2(a))。
【0020】
(2) 上単位ポール31はコンクリート製の中空コンクリート部32の下端に、厚さt12の鋼製フランジ34を形成してあり、上単位ポール31はコンクリート製の中空コンクリート部32の下端に、厚さt12の鋼製フランジ34を形成してある。鋼製フランジ34は、コンクリート製の中空コンクリート部32の外径より大径で、外周35付近に、鋼製フランジ34の厚さ方向で、径D0のケーブル挿通孔片(挿通部)37を形成してある(図2(b)、図3)。
また、下単位ポール41はコンクリート製の中空コンクリート部42の上端に、厚さt11の鋼製フランジ44を形成してある。鋼製フランジ44は、コンクリート製の中空コンクリート部42の外径より大径で、外周45付近に、鋼製フランジ44の厚さ方向で、径D0のケーブル挿通孔片(挿通部)47を形成してある(図2(b)、図3)。
【0021】
(3) 両鋼製フランジ34、44は外径および内径は同径で、上下に重ねて接合した状態で、組み鋼製フランジ52とする(図2(a))。組みフランジ52の状態で、各電気ケーブル挿通孔片37、47は直線状に連通して、電気ケーブル挿通孔51を構成する(図2(b))。また、組み鋼製フランジ52の厚さをt0とすると、
t0=t11+t12
となる(図3)。
【0022】
(4) 電気ケーブル挿通孔51(ケーブル挿通孔片37、47)は径D0であり(図3)、このとき、
保護ソケット20の貫通保護部材11の外径D11<D0
保護ソケット20の基部1の外径D1>D0
で形成してある。また、組み鋼製フランジ52は厚さt0であり、この時、保護ソケット20の貫通保護部材11の長さL1は、
t0=(t11+t12)<L1
で形成されている(図1(b)(d)図3)。
【0023】
3.コンクリート製ポール50への保護ソケット20の装着
【0024】
(1) コンクリート製ポール50は通常、以下のようにして構築する(図4)。
【0025】
(2) 下単位ポール41の下端部を地面55に埋設して、上方から上単位ポール31を下単位ポールの上方に位置させ、下降する(図4(a))。
また、この状態で、アース線54は、中間部が下単位ポール41の中空コンクリート部42の中空部43に位置し、アース線54の下端部は中空コンクリート部42の下横孔48aから中空コンクリート部42の外側に位置して地中内に位置してアースされている(図4(a))。また、アース線54の上端部は中空コンクリート部42の上横孔48から中空コンクリート部42の外側に位置して、中空コンクリート部42の外側で下方に垂れた状態にある(図4(a))。
【0026】
(3) 下単位ポール41の鋼製フランジ44と、上単位ポール41の鋼製フランジ34とを連結して、コンクリート製ポール50を構成する(図4(b)、図2(a))。この状態で、鋼製フランジ34、44で組み鋼製フランジ52を構成する。また、この状態で、鋼製フランジ34のケーブル挿通孔片37と鋼製フランジ34のケーブル挿通孔片37とが上下に連通して、電気ケーブル挿通孔51を形成する(図4(b)、図2(a))。
続いて、組み鋼製フランジ52の電気ケーブル挿通孔52(ケーブル挿通孔片37、47)に、上方から保護ソケット20を挿入する。この際、保護ソケット20の基部1を持って、貫通保護部材11の先端11a側から電気ケーブル挿通孔52に挿入するので、保護ソケット20を摘みやすく、基部1を摘んで保護ソケット20を押し込み易い。
また、この際、保護ソケット20の貫通保護部材11の長さL1は、
t0<L1
であるので、保護ソケット20の基部1の下面3が組み鋼製フランジ52(鋼製フランジ43)に当接した状態で、貫通保護部材11の下端11aは、組み鋼製フランジ52(鋼製フランジ44)を抜けて下方に位置する(図3図1(d))。したがって、組み鋼製フランジ52(鋼製フランジ34、44)の電気ケーブル挿通孔52(ケーブル挿通孔片37、47)の内壁全体を貫通保護部材11が覆う。
また、この際、保護ソケットの環状突起13の外径D13は、径D0の電気ケーブル挿通孔52(ケーブル挿通孔片37、47)の内壁に弾性当接するような大きさで形成されている。すなわち、
D0≦D13
となっている。
【0027】
(4) また、この際、保護ソケット20の略中央線15は、鋼製フランジ34、44の境界付近に位置しており、環状突起13、13はケーブル貫通孔片37、47にそれぞれ2つずつ均等に配置され、環状突起13、13の先端は、ケーブル貫通孔27、37の内壁に弾性当接するので、保護ソケット20は、ケーブル貫通孔片37、47の軸方向で略中心に位置する。
また、保護ソケット20を電気ケーブル挿通孔52(ケーブル挿通孔片37、47)の途中まで入れて保持して、その後に電気ケーブル挿通孔52(ケーブル挿通孔片37、47)内に押し込んだり、あるいはケーブル挿通孔52(ケーブル挿通孔片37、47)から引き抜いたりする場合に、基部1を掴んで作業がし易い。また、コンクリート製ポール50を抜いたり、立て替える場合にも同様に、基部1を掴んで作業がし易い。
【0028】
(5) 続いて、アース線54の上端を、保護ソケット20の下端11aから保護ソケット20(電気ケーブル挿通孔51)内を通して、保護ソケット20の基部1の上方に引き出す。引き出したアース線54の上端部は上単位ポール31の外周に沿って配置する(図4(c))。アース線はコンクリート製ポール50の上端部(上単位ポール31の上部)に設置する機器に接続する(図示していない)。
この際、組み鋼製フランジ52のケーブル挿通孔51をアース線54が貫通するが、ケーブル挿通孔51は、その内面の全体が保護ソケット20に覆われ、とりわけ上縁の開口降は基部1に覆われ。下端の開口縁は貫通保護部材1の下方に突出した下端11aにより、組み鋼製フランジ52にアース線54が触れることが無い。
また、保護ソケット20の基部1の下面3がケーブル挿通孔51の上端を塞ぎ、また、保護ソケット20の環状突起13、13の前後で、ケーブル挿通孔51を略水密に塞ぐことができる。したがって、通常は、鋼製フランジ34、44の内面は保護被覆(メッキなど)が施されているが、万一の経年変化などがあってもこれに対応できる。
【0029】
(6) なお、図4(b)(c)において、組み鋼製フランジ52の電気ケーブル挿通孔51に保護ソケット20を取り付け後に保護ソケット20にアース線54を挿通したが、組み鋼製フランジ52の電気ケーブル挿通孔51に下方からアース線を上方に通して、アース線54の上端から保護ソケット20の下端11aを被せて、保護ソケット20を上方から組み鋼製フランジ52の電気ケーブル挿通孔51(アース線54が挿通されている)に挿入することもできる(図示していない)。
【0030】
(7) 前記において、コンクリート製ポール50を上単位ポール31と下単位ポール41とから構成したが、上単位ポール31と下単位ポール41との間に、上下に鋼製フランジを取り付けた中間単位ポールを1つまたは2つ以上組み合わせて使用することもできる(図示していない)。この場合にも、中間単位ポールの上下の鋼製フランジにも、同様にケーブル挿通孔片を形成する。
また、前記において、アース線54を使用したが、他の電気ケーブルに対して組み鋼製フランジ52のケーブル挿通孔に保護ソケット20を適用することもできる(図示していない)。
【0031】
4.他の実施形態
【0032】
(1) 前記実施形態において、保護ソケット20で、環状突起13を4段設けたが、少なくとも略中央線15を挟んで1つずつ、合計2つ設けることが望ましい。なお、効果は弱まるが、環状突起13は少なくとも1つ形成してあれば良い(いずれも図示していない)。
【0033】
(2) 前記実施形態において、鋼製フランジ34、44にケーブル挿通孔片37、47を形成したが、ケーブル挿通孔片37、47に代えて、鋼製フランジ34、44の外周35、45側からケーブル挿通孔片37、47の位置まで、切欠を形成することもできる(図示していない)。この場合も保護ソケット20を使用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 基部
2 基部の上面
3 基部の下面
4 基部の貫通孔
11 貫通保護部材
11a 貫通保護部材の先端
12 貫通保護部材の中空部
13 貫通保護部材の環状突起
14 貫通保護部材の軸
15 貫通保護部材の略中央横線
20 保護ソケット
31 上単位ポール
32 上単位ポールの中空コンクリート部
34 上単位ポールの鋼製フランジ
37 上単位ポールの鋼製フランジのケーブル挿通孔片
41 下単位ポール
42 下単位ポールの中空コンクリート部
44 下単位ポールの鋼製フランジ
47 下単位ポールの鋼製フランジのケーブル挿通孔片
48 下単位ポールの上横孔
48a 下単位ポールの下横孔
50 コンクリート製ポール
51 ケーブル挿通孔
52 組み鋼製フランジ
54 アース線(電気ケーブル)
55 地面
図1
図2
図3
図4