IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レプリミュン リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】改変ウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240716BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240716BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240716BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/39 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/48 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/47 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/45 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/46 20060101ALN20240716BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K35/763
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/13
C07K16/18
C12N15/38
C12N15/39
C12N15/48
C12N15/34
C12N15/47
C12N15/45
C12N15/46
C12N15/62 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019537074
(86)(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 GB2018050048
(87)【国際公開番号】W WO2018127713
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】1700350.0
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【微生物の受託番号】ECACC  16121904
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518241528
【氏名又は名称】レプリミュン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コフィン,ロバート スチュアート
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537020(JP,A)
【文献】国際公開第2016/008976(WO,A1)
【文献】特表2006-528484(JP,A)
【文献】特表2015-523412(JP,A)
【文献】国際公開第2007/123737(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/128313(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/059303(WO,A1)
【文献】特表2019-501671(JP,A)
【文献】特表2019-512205(JP,A)
【文献】EXPERT OPINION ON DRUG SAFETY,2016年,Vol.16,No.2,p.265-269
【文献】Oncolytic Virotherapy,2015年,Vol.4,p.207-219
【文献】Cancer Research,2006年05月,Vol.66,Issue9,p.4835-4842
【文献】Cancer Gene Therapy,2014年,Vol.21,p.340-348
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/01
A61K 35/76
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTLA-4阻害剤をコードする腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
腫瘍溶解性HSVが、改変されたHSV1株である、受託番号ECACC16121904を有するRH018A株であり、
CTLA-4阻害剤が抗CTLA-4抗体又はその抗原結合断片であり、且つ
抗CTLA-4抗体又はその抗原結合断片が、
(i)配列番号1に示される軽鎖可変領域配列及び配列番号3に示される重鎖可変領域配列を含む、又は
(ii)配列番号11に示される軽鎖可変領域配列及び配列番号12に示される重鎖可変領域配列を含む、
前記ウイルス。
【請求項2】
断片がscFv分子を含む;断片が1以上のIgG1定常領域に連結されたscFv分子である;又は、抗体若しくは断片が、IgG重鎖に連結された軽鎖可変領域配列を含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
抗体又は断片が、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号10のヌクレオチド配列によりコードされる、請求項1又は2に記載のウイルス。
【請求項4】
抗体又は断片が、配列番号14のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号15のヌクレオチド配列によりコードされる、請求項1又は2に記載のウイルス。
【請求項5】
(a)免疫共刺激経路活性化分子又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子;及び/又は
(b)融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項6】
疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子が、CD40リガンド(CD40L)、ICOSリガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、OX40リガンド、TL1A、CD30リガンド、CD27若しくはflt3リガンドをコードする請求項5に記載のウイルス。
【請求項7】
融合誘導性タンパク質が、水疱性口内炎ウイルス(VSV)Gタンパク質、シンシチン-1、シンシチン-2、シミアンウイルス5(SV5)Fタンパク質、麻疹ウイルス(MV)Hタンパク質、MV Fタンパク質、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Fタンパク質、及びRペプチドが欠失しているテナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GALV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、Mason-Pfizerサルウイルス(MPMV)若しくはウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)由来の糖タンパク質からなる群から選択される、請求項5又は6に記載のウイルス。
【請求項8】
融合誘導性タンパク質が、テナガザル白血病ウイルス(GALV)由来の糖タンパク質であり、R膜貫通ペプチドが突然変異若しくは除去されている(GALV-R-)、請求項7に記載のウイルス。
【請求項9】
1を超える免疫共刺激経路活性化分子をコードする、請求項1~8のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項10】
HSV1が、
(a)機能的ICP34.5を発現しない、
(b)機能的ICP47を発現しない、及び/若しくは
(c)US11遺伝子を前初期遺伝子として発現する、
請求項1~9のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項11】
CTLA-4抗体又はその抗原結合断片をコードする遺伝子が、挿入、部分的欠失、若しくは完全な欠失によって、ICP34.5をコードする遺伝子座に挿入されている請求項110のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項12】
1以上の免疫刺激遺伝子、免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子及び/若しくは融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子も含むカセットに含まれている抗CTLA-4抗体又はその抗原結合断片をコードする遺伝子が、挿入、部分的欠失、若しくは完全な欠失によって、ICP34.5をコードする遺伝子座に挿入されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項13】
CTLA-4阻害剤をコードする配列、免疫共刺激経路活性化分子をコードする配列及び/又は融合誘導性タンパク質をコードする配列が、標的細胞における発現レベルを増加させるようにコドン最適化されている、請求項1~12のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項14】
3つの異種遺伝子を発現し、3つの異種遺伝子の各々が、CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターによって駆動される;並びに/又は、3つの異種遺伝子の各々が、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結される、請求項1~13のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項15】
CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターの各々によってそれぞれ駆動され;並びに/又は、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列の各々によってそれぞれ終結される、4つの異種遺伝子を発現する、請求項14に記載のウイルス。
【請求項16】
レトロウイルスLTRプロモーターがMMLVに由来する、請求項14又は15に記載のウイルス。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のウイルス及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項18】
療法によってヒト又は動物の体を治療する方法に使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載のウイルスを含む組成物。
【請求項19】
がんを治療する方法に使用するための、請求項1~16のいずれか1項に記載のウイルスを含む組成物。
【請求項20】
方法が、
(a)さらなる抗がん剤をウイルスと同時に又は別々に投与すること;
(b)さらなる抗がん剤をウイルスと同時に又は別々に投与することであって、さらなる抗がん剤が、免疫共阻害経路を標的とする薬剤、免疫共刺激経路を標的とする薬剤、放射線療法及び/又は化学療法、腫瘍において生じる特定の遺伝子突然変異を標的とする薬剤、1つ以上の腫瘍抗原又はネオ抗原に対する免疫応答を誘導することが意図された薬剤、T細胞又はNK細胞に由来する細胞生成物、STING、cGAS、TLR又は他の自然免疫応答及び/若しくは炎症経路を刺激することが意図された薬剤、場合により腫瘍溶解性ウイルスである、第2のウイルス、並びにそれらの組み合わせから選択される;
(c)さらなる抗がん剤をウイルスと同時に又は別々に投与することであって、さらなる抗がん剤が抗体である;又は
(d)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路の阻害剤及び免疫共阻害経路のさらなるアンタゴニスト、又は免疫共刺激経路のアゴニストを投与すること
を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
がんが固形腫瘍である、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
がんが、原発部位における腫瘍及び/又は元の腫瘍の部位から転移した腫瘍である、請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
がんを治療する方法において使用するための医薬の製造における、請求項1~16のいずれか1項に記載のウイルスの使用。
【請求項24】
医薬が、さらなる抗がん剤を含む、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍溶解性免疫療法剤、及びがんの治療における腫瘍溶解性免疫療法剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、高い効率で細胞に侵入する固有の能力を有する。細胞への侵入後、ウイルス遺伝子が発現され、ウイルスが複製する。これは、通常、感染した細胞の死滅、及び、死滅すると細胞が破裂するため、細胞の抗原成分の放出をもたらす。結果として、ウイルス媒介性の細胞死は、宿主細胞に由来するものとウイルス自体によってコードされるもの若しくはそれに組み込まれたものの両方を含む、宿主による、免疫応答の活性化を支援するいわゆる損傷関連分子パターン(DAMP)の認識のために増大されるこれらの細胞成分に対する免疫応答をもたらす傾向がある。
【0003】
ウイルスはまた、例えば、宿主に対する免疫原性シグナルでもあるインターフェロン応答の活性化及び炎症をもたらす、トール様受容体、及びcGAS/STINGシグナル伝達、及び病原体関連分子パターン(PAMP)の認識を通じたウイルス感染の認識に対する宿主応答の一部として、自然免疫応答の種々のメディエーターと関わる。これらの免疫応答は、腫瘍抗原に対する免疫応答が、微小転移性疾患を含むウイルスに感染していない腫瘍の治療をもたらす全身的な全体的利益を提供し、再発に対するワクチン接種を提供するように、がん患者に免疫原性の利益をもたらし得る。
【0004】
ウイルスの組み合わせた直接的(「腫瘍溶解性」)効果、及び腫瘍抗原(非自己の「ネオ抗原」を含む、すなわち個々の腫瘍における特定の突然変異遺伝子に由来する)に対する免疫応答は、「腫瘍溶解性免疫療法」と呼ばれる。
【0005】
ウイルスはまた、感染細胞中のウイルスゲノムに挿入された異種遺伝子を発現させるための送達ビヒクル(「ベクター」)として使用することができる。これらの特性は、様々なバイオテクノロジー及び医療用途にウイルスを有用なものにする。例えば、異種治療遺伝子を発現するウイルスを遺伝子治療に使用することができる。腫瘍溶解性免疫療法に関連して、送達される遺伝子は、特定の腫瘍抗原をコードする遺伝子、ウイルス複製及び細胞死後に免疫応答を誘導し若しくは放出された抗原の免疫原性を増加させることが意図された遺伝子、生成される免疫応答を形成することが意図される遺伝子、腫瘍の一般的な免疫活性化状態を増加させる遺伝子、又はウイルスの直接腫瘍溶解特性(すなわち、細胞毒性効果)を増加させる遺伝子を含み得る。重要なことに、ウイルスは、全身性抗腫瘍免疫応答を腫瘍に直接的及び選択的に開始、増大又は形成するのを助けることが意図された、コードされた分子を送達する能力を有する。これは、例えば、毒性の減少、又は同じ経路を標的とするこれらの同じ分子の全身投与又は他の分子の全身投与と比較して、正常(すなわち、非がん性)組織におけるオフターゲット効果というよりはむしろ、腫瘍(ウイルスに感染していないものを含む)に有益な効果を集中させるという利益を有し得る。
【0006】
例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)などの多数のウイルスががんの腫瘍溶解治療に有用性を有することが実証されている。がんの腫瘍溶解治療に使用するためのHSVは、もはや病原性ではないが、腫瘍細胞に侵入して死滅させ得るように無効にしなければならない。ICP34.5、ICP6、及び/又はチミジンキナーゼをコードする遺伝子の破壊を含む、HSVに対する多数の無効化突然変異は同定されており、これは、ウイルスが培養中又はインビボで腫瘍組織内で複製することを阻止しないが、正常組織における有意な複製を阻止する。ICP34.5遺伝子のみが破壊されているHSVは、インビトロで多くの腫瘍細胞型において複製し、マウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍組織において選択的に複製するが、周辺組織では複製しない。欠失されたICP34.5、又は欠失されたICP34.5及びICP6、HSVの臨床試験はまた、ヒトの腫瘍組織において安全性及び選択的複製を示している。
【0007】
上記で議論したように、HSVなどの腫瘍溶解性ウイルスはまた、がんの治療において治療遺伝子を送達するために使用され得る。ICP47についてさらに欠失され、GM-CSFの異種遺伝子をコードするこのタイプのICP34.5が欠失したウイルスはまた、ヒトにおける安全性及び有効性が示されたメラノーマにおける第3相試験を含む臨床試験において試験されている。GM-CSFは、単球が循環を逃れ、そこで増殖しマクロファージ及び樹状細胞へ成熟する組織へ移動するのを刺激することを含む複数の機能を有する炎症性サイトカインである。GM-CSFは、抗原提示細胞の増殖及び成熟にとって重要であり、その活性は、抗腫瘍免疫応答の活性化に必要である。試験データは、腫瘍の応答が、注射された腫瘍において見られ、注射されていない腫瘍においてはその程度は低いことを実証した。応答は耐久性が高い(数カ月~数年)傾向があり、応答している患者において生存利益が達成されているようであった。これらの各々は、直接腫瘍溶解性効果に加えて、がんの治療における免疫系の関与を示した。しかしながら、腫瘍溶解性ウイルスに関するこのデータ及び他のデータは、一般的に、全ての腫瘍が治療に応答するわけではなく、全ての患者が生存の利点を達成するわけではないことを示した。したがって、腫瘍溶解療法の当該技術に対する改善が明らかに必要とされている。
【0008】
近年、腫瘍溶解性免疫療法は、免疫共阻害経路遮断(すなわち、免疫共阻害経路とも呼ばれる免疫チェックポイント経路の阻害又は「拮抗作用」)と併用して相加的又は相乗的な治療効果をもたらすことができることが示されている。免疫共阻害経路遮断は、通常、自己免疫の発生を阻止するのに役立つ宿主の免疫阻害機構を遮断することを意図している。しかしながら、がん患者において、これらの機構はまた、腫瘍に誘導される任意の免疫応答の潜在的に有益な効果の誘導を阻害し又は遮断するのに役立ち得る。
【0009】
細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)、PD-1、又はPD-L1を標的とする薬剤によるこれらの経路の全身的な遮断は、メラノーマ及び肺がんを含む、多くの腫瘍タイプに有効性を示している。しかしながら、当然、その作用機序に基づいて、自己免疫の誘導によってオフターゲットの毒性が生じ得る。そうであっても、これらの薬剤は、かなりの臨床的有用性を提供するのに十分に許容できる。薬剤(主に抗体)が開発されている他の免疫共阻害経路及び関連標的には、LAG-3、TIM-3、VISTA、CSF1R、IDO、CEACAM1、CD47が挙げられる。これらの薬剤、例えばPD1、PDL1、LAG-3、TIM-3、VISTA、CSF1R、IDO、CD47、CEACAM1の最適な臨床的活性には、その作用機序(すなわち、免疫エフェクター細胞と腫瘍の接点の標的化、又は腫瘍の/における他の免疫阻害機構を含む)によって、全ての腫瘍における全身的投与又は存在を必要とし得る。幾つかの場合において、例えば幾つかの腫瘍のみにおける、又は幾つかのリンパ節におけるより局所化された存在、例えばCTLA-4を標的とする薬剤もまた、最適に有効であり得る。
【0010】
がん患者において抗腫瘍免疫応答を増加させるための代替的なアプローチは、免疫共刺激経路を標的化(活性化)することであり、すなわち免疫共阻害経路を阻害するのとは対照的である。これらの経路は、T細胞及び他の免疫細胞に活性化シグナルを送り、通常これは抗原提示細胞(APC)における関連リガンドとT細胞及び他の免疫細胞の表面の関連受容体の相互作用から生じる。リガンド/受容体に依存するこれらのシグナルは、特定のサブタイプを含むT細胞及び/又はAPC及び/又はNK細胞及び/又はB細胞の増加した活性化、特定のサブタイプを含むT細胞及び/又はAPC及び/又はNK細胞及び/又はB細胞の増加した分化及び増殖、又は制御性T細胞などのT細胞の免疫阻害活性の抑制をもたらし得る。したがって、これらの経路の活性化は、増大した抗腫瘍免疫応答をもたらすと予測されるが、これらの経路の全身的活性化、すなわち特異的又は選択的な抗腫瘍免疫応答ではなく、全体的な免疫応答の活性化は、非腫瘍組織におけるかなりのオフターゲット毒性をもたらしことが予測され得、このようなオフターゲット毒性の程度は、標的とされる特定の免疫共阻害経路に依存する。それにもかかわらず、免疫共阻害経路を標的とする薬剤(主にアゴニスト抗体、又はそれほど頻繁ではないが問題の受容体に対する可溶性リガンド)、例えばGITR、4-1-BB、OX40、CD40又はICOSを標的とする薬剤であって、全身的な使用(すなわち、静脈内送達)が意図されるものは、臨床的開発されているか、或いは臨床的開発について提案されている。
【0011】
免疫共阻害経路又は共阻害経路を標的とするこれらのアプローチの多くを成功させるためには、腫瘍に対する既存の免疫応答が必要であり、すなわち、それにより、既存の免疫応答が増強され得、又は抗腫瘍免疫応答に対する遮断が軽減され得る。このような進行中の応答を示す、炎症を起こした腫瘍微小環境の存在もまた必要である。腫瘍ネオ抗原に対する既存の免疫応答は、免疫共阻害経路遮断及び関連する薬物の活性にとって特に重要であるようである。幾らかの患者だけが、ネオ抗原及び/又は炎症を起こした腫瘍微小環境を含む、腫瘍抗原に対する進行中の免疫応答を有し得、両者はこれらの薬物の最適な活性のために必要とされる。したがって、ネオ抗原を含む腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導することができ、及び/又は炎症を起こした腫瘍微小環境を誘導することができる腫瘍溶解剤は、免疫共阻害経路遮断及び免疫増強薬剤と組み合わせて用いることが魅力的である。これは、これまでに観察されている、マウス及びヒトにおける腫瘍溶解剤及び免疫共阻害経路遮断の有望な組み合わせ抗腫瘍効果を説明するであろう。
【0012】
上記の議論は、腫瘍溶解剤、並びに腫瘍溶解剤、抗腫瘍免疫応答、及び免疫共阻害経路又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤を使用するがん治療を改善するための余地が依然として多いことを実証する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、CTLA-4の阻害剤を発現する腫瘍溶解性ウイルスを提供する。ウイルスはさらに他の免疫調節剤を含んでもよい。特に、ウイルスはGM-CSF及び/又は免疫共刺激経路を標的とする少なくとも1つの分子を含んでもよい。CTLA-4阻害剤は共抑制経路をブロックするよう作用し、すなわち、CTLA-4とB7との相互作用を妨げる。GM-CSFは、炎症性腫瘍微小環境の誘導を助け、樹状細胞などの抗原提示細胞の増殖及び成熟を刺激し、抗腫瘍免疫応答の誘導を助ける。これらの免疫応答は免疫共刺激経路の活性化、又は免疫共刺激経路活性化分子若しくは腫瘍溶解性ウイルスによっても送達される分子を使用する経路の活性化により増幅され得る。
【0014】
腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内で増殖し、腫瘍細胞の溶解及び腫瘍抗原の放出を引き起こし、局所炎症及び自然免疫応答の活性化と組み合わされ、これらの全てが抗腫瘍免疫応答の活性化、及びCTLA-4/B7相互作用の阻害剤の活性に有益となる。
【0015】
CTLA-4/B7相互作用を阻害する分子を、流入領域リンパ節への輸送が予想される場合を含め、免疫応答開始腫瘍へ直接送達することで、阻害剤による免疫増強作用を腫瘍に、つまり腫瘍内に存在する腫瘍抗原に集中させ、全身毒性を減少させて、そうでなければ免疫応答開始部位でT細胞活性化を阻害する調節性T細胞(Treg)の活性化を阻止する。腫瘍溶解性ウイルスを使用して、CTLA-4を標的とする分子、及び任意で腫瘍に対する免疫共刺激経路を標的とする分子を送達することで、抗腫瘍免疫応答での免疫効果の増強を狙い、非腫瘍抗原に対する免疫応答の増強を減少させる。したがって、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節における免疫細胞は、一般的な免疫細胞よりもウイルスが発現した分子により選択的に影響を受ける。この結果、免疫細胞刺激の効果が高まり、標的外毒性の減少も可能となる。これは、全身性免疫共抑制経路遮断及び免疫共刺激経路活性化の併用の効果を腫瘍に集中させる、つまり、そこから共阻害遮断が放出される免疫応答が、非腫瘍抗原に対する応答ではなく抗腫瘍免疫応答であるためにも重要である。
【0016】
本発明は、腫瘍溶解性ウイルスによって送達された場合に、CTLA-4の遮断及び任意に免疫共刺激経路活性化及びGM-CSF発現の作用部位が腫瘍及び/又は腫瘍流入領域リンパ節であるが、そのような活性化の結果(増幅された全身的抗腫瘍免疫応答)が全身的であるという事実を利用する。これは、腫瘍溶解性ウイルスが免疫修飾分子を送達した腫瘍だけでなく、腫瘍を全体的に標的とする。したがって、本発明の腫瘍溶解性ウイルスは、改善した腫瘍に集中する免疫応答の生成を介して、改善したがんの治療をもたらす。本発明の腫瘍溶解性ウイルスは、微小転移性病態を含む腫瘍溶解によって破壊されない腫瘍に対する免疫媒介性の効果が増大するように、改善した抗腫瘍免疫刺激効果を提供し、これは、将来の再発を防ぎ、全生存期間を改善する、これらの腫瘍のより効果的な破壊、及びより有効な長期間の抗腫瘍ワクチン接種をもたらす。
【0017】
抗腫瘍効力は、本発明の腫瘍溶解性ウイルスが単一の薬剤として使用される場合、またウイルスが他の抗がんモダリティ、例えば、化学療法、標的化された薬剤による治療、放射線、及び好ましい実施形態では免疫チェックポイント遮断薬(すなわち、免疫共阻害経路のアンタゴニスト、例えばPD1又はPD-L1に対する抗体)及び/又は免疫共刺激経路のアゴニストと組み合わせて使用される場合に改善される。
【0018】
したがって、本発明は、CTLA-4阻害剤をコードする腫瘍溶解性ウイルスを提供する。CTLA-4阻害剤は、好ましくは抗CTLA-4抗体又は抗体様分子、又はその抗原結合断片である。
【0019】
ウイルスはさらに、(i)GM-CSFをコードする遺伝子、及び/又は(ii)免疫共刺激経路活性化分子又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子を含む腫瘍溶解性ウイルスを提供する。ウイルスは、1を超える免疫共刺激経路活性化分子/遺伝子をコードし得る。
【0020】
免疫共刺激経路活性化分子は、好ましくはGITRL、4-1-BBL、OX40L、ICOSL若しくはCD40L又はそれらのいずれかの改変されたバージョンである。改変されたバージョンの例には、膜結合ではなくむしろ、分泌される共刺激経路のアゴニスト、及び/又はタンパク質の多量体が形成されるように改変されたアゴニストが含まれる。
【0021】
ウイルスは、ウイルスの改変された臨床分離株などの改変された臨床分離株であり得、臨床分離株は、2つ以上の腫瘍細胞株を、同種のウイルスの1つ以上の参照臨床分離株よりもインビトロで迅速に及び/又は低用量で死滅させる。
【0022】
ウイルスは、好ましくは、HSV1などの単純ヘルペスウイルス(HSV)である。HSVは、典型的には、機能的なICP34.5及び/若しくは機能的なICP47を発現せず、並びに/又は前初期遺伝子としてUS11遺伝子を発現する。
【0023】
本発明はまた、以下を提供する:
- 本発明のウイルス及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物、
- 療法(therapy)によってヒト又は動物の体を治療する方法において使用するための本発明のウイルス、
- がんを治療する方法において使用するための本発明のウイルスであって、方法が、場合により、さらなる抗がん剤を投与することを含む、ウイルス
- 本発明のウイルスを滅菌バイアル、アンプル又はシリンジ中に含む製造物、
- 治療有効量の本発明のウイルス又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法であって、方法が、さらなる抗がん剤を投与することを、場合により含む、方法、
- がんを治療する方法において使用するための医薬の製造における本発明のウイルスの使用であって、方法が、さらなる抗がん剤を投与することを場合により含む、使用。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1は、コドン最適化された、ヒト又はマウスIgG1のFc領域に連結された分泌scFv分子である抗マウス又は抗ヒトCTLA-4構築物を含む本発明の例示的なウイルスを構築するために使用されるウイルスの構造を示す。scFvは、15量体[G4S]3(GGGGSGGGGSGGGGS)により連結された、9D9(CTLA-4を検証するために初めて使用された最初のマウス抗体;WO2007/123737:マウスバージョン)、又はイピリムマブ(WO2014/066532;ヒトバージョン)由来の軽鎖及び重鎖可変部を含む。このウイルスはHSV1 RH018A株(臨床株18)の改変型である。ICP34.5遺伝子とICP47遺伝子はウイルスにおいて不活性化されている。US11遺伝子はICP47プロモーターの欠失によりICP47前初期遺伝子プロモーターの制御下に置かれる。発現カセットはICP34.5遺伝子座へ挿入される。ウイルス17では、発現カセットは、CMVプロモーターの制御下にあるヒトGM-CSF遺伝子及びRSVプロモーターの制御下にあるGALV遺伝子を含む。ウイルス16はマウスGM-CSFの代わりにヒトGM-CSFが含まれることを除き、ウイルス17と同じである。ウイルス25及び29は、各々が発現カセットにおいてMMLVプロモーターの制御下にあるGFP遺伝子をさらに含むことを除き、それぞれウイルス16及び17と同じである。ウイルス27及び31は、GFP遺伝子がマウス抗CTLA4及びヒト抗CTLA4と置換されていることを除き、それぞれウイルス25及び29と同じである。
図1B図1Aの続きである。
図2A図2は、本発明の例示的なウイルスを構築するために使用されるプラスミドの構造を示す。
図2B図2Aの続きである。
図2C図2Aの続きである。
図2D図2Aの続きである。
図3図3は、コドン最適化された、ヒト又はマウスIgG1のFc領域に連結された分泌scFv分子抗マウス又は抗ヒトCTLA-4構築物の構造を示す。scFvは、9D9(CTLA-4を検証するために初めて使用された最初のマウス抗体; US2011044953:マウスバージョン)由来の又はイピリムマブ(US20150283234;ヒトバージョン)由来の連結([G4S]3)軽及び重可変鎖を含む。得られるCTLA-4阻害剤の構造も示す。
図4図4は、抗マウスCTLA-4がウイルス27から発現されることを証明するウェスタンブロットである。使用したゲルは還元変性PVDF膜トリスグリシンゲルであった。抗-CTLA-4はアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG1抗体を使用して検出した。レーン1: spectra broad rangeラダー;レーン2 ウイルス27、未希釈の上澄;レーン3 ウイルス27、上澄の2倍希釈;レーン4 ウイルス27、上澄の4倍希釈;レーン5 ウイルス27、上澄の8倍希釈;レーン6 ウイルス27、上澄の16倍希釈;レーン7 ウイルス27、上澄の32倍希釈;レーン8 陰性対照ウイルス、未希釈の上澄;抗-CTLA-4(還元)の予想サイズは57kDaである。
図5図5は、抗-mCTLA-4を発現するウイルス(ウイルス27)の未注入腫瘍における優れた腫瘍制御と腫瘍縮小を、CTLA-4を発現しない点以外は同一のウイルス(ウイルス16)と比較して示す。使用したウイルスの用量は、5x104pfu(各ケースで1x106pfu/mlの50ul)で1週間に3回投与した。ウイルスのこの用量レベルは未注入腫瘍に対してはウイルス16の治療量以下であり、これによりウイルス27によりコードされた追加分子の送達の利点を明確に見ることが可能となる。
図6図6は、抗-mCTLA-4を発現するウイルス(ウイルス27)の注入腫瘍及び未注入腫瘍における優れた腫瘍制御と腫瘍縮小を、CTLA-4を発現しない点以外は同一のウイルス(ウイルス16)と比較して示す。使用したウイルスの用量は、CTLA-4を発現しない点以外は同一のウイルス(ウイルス16)と比較して、抗-mCTLA-4を発現するウイルス(ウイルス27)の右の腫瘍に対して、1週間で5x104pfuだった。各線はそれぞれ異なるマウスを表す。
図7-1】図7は、抗PD1、並びにmGM-CSF、GALVR及び抗-mCTLA-4を発現するウイルス27を使用した、両側マウスA20腫瘍の併用治療の効果を示す。上のパネルは、注入(右)及び未注入(左)腫瘍の両方に対する抗PD1単独の効果を示す。中央のパネルは、注入(右)及び未注入(左)腫瘍の両方に対するウイルス27単独の効果を示す。下のパネルは、抗PD1及びウイルス27が両方とも右側の腫瘍に注入された時に達成された優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小を示す。併用治療により抗腫瘍効果が高まることは、注入(右)及び未注入(左)腫瘍の療法において観察される。各線はそれぞれ異なるマウスを表す。
図7-2】図7-1の続きである。
図8図8は、ヒトCTLA-4を発現するノックインマウスにおけるマウスMC38腫瘍において、hGM-CSFとGALVRのみを発現するウイルス17と比較した、hGM-CSF、GALVR及び抗ヒトCTLA-4を発現するウイルス31の優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小効果を示す。ウイルス31の抗腫瘍効果は、ウイルスが単独で又は抗PD1と組み合わせて投与された場合に観察される。注入腫瘍における優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小は、抗ヒトCTLA-4を発現しない点以外は同一のウイルスと比較して、抗ヒトCTLA-4を発現するウイルス31で得られる(左パネル)。ウイルスによる治療が抗PD1治療と併用される場合、この効果はさらに高まる。一方のウイルスでの治療が抗PD1での治療と併用される場合、優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小が未注入腫瘍でも観察される(右のパネル)。この改善は、抗CTLA-4を発現しないウイルス17よりも抗CTLA-4を発現するウイルス31で顕著に高い。各線はそれぞれ異なるマウスを表す。
【0025】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、実施例において使用されるヒトCTLA-4抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列である。
配列番号2は、実施例において使用されるヒトCTLA-4抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む完全な軽鎖アミノ酸配列である。
配列番号3は、実施例において使用されるヒトCTLA-4抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列である。
配列番号4は、実施例において使用されるヒトCTLA-4抗体の重鎖CH1アミノ酸配列である。
配列番号5は、実施例において使用されるヒトCTLA-4抗体の重鎖CH2/3アミノ酸配列である。
配列番号6は、実施例において使用されるヒトCTLA-4抗体の完全な重鎖アミノ酸配列である。
配列番号7は、実施例のCTLA-4抗体中に存在するシグナルペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号8は、実施例のCTLA-4抗体において、軽鎖可変領域と重鎖可変領域との間に存在するリンカーのアミノ酸配列である。
配列番号9は、実施例のヒトscFv CTLA-4抗体のアミノ酸配列である。
配列番号10は、実施例のヒトscFv CTLA-4抗体のヌクレオチド配列である。
配列番号11は、実施例において使用されるマウスCTLA-4抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列である。
配列番号12は、実施例において使用されるマウスCTLA-4抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列である。
配列番号13は、実施例において使用されるマウスCTLA-4抗体の完全な重鎖アミノ酸配列である。
配列番号14は、実施例のマウスscFv CTLA-4抗体のアミノ酸配列である。
配列番号15は、実施例のマウスscFv CTLA-4抗体のヌクレオチド配列である。
配列番号16は、例示的なウイルスに存在する、クローニング目的でN及びC末端に制限部位を挿入した実施例のマウスscFv CTLA-4抗体のヌクレオチド配列である。制限部位は配列の最初の6つ及び最後の8つのヌクレオチドである。
配列番号17は、例示的なウイルスに存在する、クローニング目的でN及びC末端に制限部位を挿入した実施例のヒトscFv CTLA-4抗体のヌクレオチド配列である。制限部位は配列の最初の6つ及び最後の8つのヌクレオチドである。
配列番号18は、マウスGM-CSFのヌクレオチド配列である。
配列番号19は、マウスGM-CSFのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号20は、ヒトGM-CSFのヌクレオチド配列である。
配列番号21は、ヒトGM-CSFのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号22は、マウスGM-CSFのアミノ酸配列である。
配列番号23は、ヒトGM-CSFのアミノ酸配列である。
配列番号24は、GALV-R-のヌクレオチド配列である。
配列番号25は、GALV-R-のコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号26は、GALV-R-のアミノ酸配列である。
配列番号27は、CD40Lのヒト/マウスハイブリッド膜結合型バージョンのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号28は、CD40Lのヒト/マウスハイブリッド膜結合型バージョンのアミノ酸配列である。
配列番号29は、ヒトCD40Lの多量体分泌型バージョンのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号30は、ヒトCD40Lの多量体分泌型バージョンのアミノ酸配列である。
配列番号31は、マウスCD40Lの多量体分泌型バージョンのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号32は、マウスCD40Lの多量体分泌型バージョンのアミノ酸配列である。
配列番号33は、野生型ヒトCD40Lのヌクレオチド配列である。
配列番号34は、野生型ヒトCD40Lのアミノ酸配列である。
配列番号35は、野生型マウスCD40Lのヌクレオチド配列である。
配列番号36は、野生型マウスCD40Lのアミノ酸配列である。
配列番号37は、CMVプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号38は、RSVプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号39は、BGHポリAのヌクレオチド配列である。
配列番号40は、SV40後期ポリAのヌクレオチド配列である。
配列番号41は、ウサギβ-グロブリンポリAのヌクレオチド配列である。
配列番号42は、GFPのヌクレオチド配列である。
配列番号43は、MMLV由来のレトロウイルスLTRのヌクレオチド配列である。
配列番号44は、EF1aプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号45は、SV40プロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号46は、HGHポリAのヌクレオチド配列である。
【0026】
発明の詳細な説明
腫瘍溶解性ウイルス
本発明のウイルスは腫瘍溶解性である。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞に感染及び複製し、それにより腫瘍細胞を死滅させるウイルスである。したがって、本発明のウイルスは複製可能である。好ましくは、ウイルスは、腫瘍組織において選択的に複製可能である。ウイルスは、非腫瘍組織よりも腫瘍組織においてより効果的に複製する場合、腫瘍組織において選択的に複製可能である。異なる組織タイプで複製するウイルスの能力は、当該技術分野において標準的な技術を用いて決定することができる。
【0027】
本発明のウイルスは、これらの特性を有する任意のウイルス、例えばヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス若しくはレオウイルス、又はこれらのより大きな群内の任意の種若しくは株であり得る。本発明のウイルスは、野生型(すなわち、親ウイルス種から変更されていない)であってもよく、又は遺伝子破壊若しくは遺伝子付加を有してもよい。これらのうちのどちらであるかは、使用されるウイルス種に依存する。好ましくは、ウイルスはヘルペスウイルスの種であり、より好ましくはHSV1及びHSV2の株を含むHSVの株であり、最も好ましくはHSV1の株である。特に好ましい実施形態において、本発明のウイルスは、使用されるウイルス種の臨床分離株に基づく。臨床分離株は、がんの治療のために特に有利な特性を有するものに基づいて選択されている場合がある。
【0028】
ウイルスは、改変された臨床分離株であり得、ここで、臨床分離株は、同じ種のウイルスの1つ以上の参照臨床分離株よりも、インビトロで2つ以上の腫瘍細胞株をより迅速に及び/又はより低用量で死滅させる。典型的には、臨床分離株は、0.1以下の感染多重度(MOI)で、感染の48時間以内、好ましくは24時間以内に2つ以上の腫瘍細胞株を死滅させる。好ましくは、臨床分離株は、広範囲の腫瘍細胞株、例えば、以下のヒト腫瘍細胞株:U87MG(グリオーマ)、HT29(結腸直腸)、LNCaP(前立腺)、MDA-MB-231(乳房)、SK-MEL-28(メラノーマ)、Fadu(扁平上皮癌)、MCF7(乳房)、A549(肺)、MIAPACA-2(膵臓)、CAPAN-1(膵臓)、HT1080(線維肉腫)のうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又は例えば全てを死滅させる。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明のウイルスは、以下から選択される株である:
受託番号ECCAC16121904を有するRH018A株、
受託番号ECCAC16121902を有するRH004A株、
受託番号ECCAC16121907を有するRH031A株、
受託番号ECCAC16121908を有するRH040B株、
受託番号ECCAC16121903を有するRH015A株、
受託番号ECCAC16121905を有するRH021A株、
受託番号ECCAC16121906を有するRH023A株、及び
受託番号ECCAC16121909を有するRH047A株。
【0030】
より好ましくは、本発明のウイルスは、以下から選択される株である:
受託番号ECCAC16121904を有するRH018A株、
受託番号ECCAC16121902を有するRH004A株、
受託番号ECCAC16121907を有するRH031A株、
受託番号ECCAC16121908を有するRH040B株、及び
受託番号ECCAC16121903を有するRH015A株。
【0031】
最も好ましくは、本発明のウイルスは、受託番号EACC16121904を有するRH018A株である。受託株の任意の一つが、本明細書で規定される通りに改変され得る。
【0032】
本発明のHSVは、ヒト腫瘍などの腫瘍において選択的に複製することができる。典型的には、HSVは標的腫瘍において効率的に複製するが、非腫瘍組織においては効率的に複製しない。このHSVは、正常組織における複製を阻害するが、依然として腫瘍における複製を可能にする1つ以上のウイルス遺伝子における1つ以上の突然変異を含み得る。突然変異は、例えば、HSVによって、機能性ICP34.5、ICP6及び/又はチミジンキナーゼの発現を阻止する突然変異であり得る。
【0033】
1つの好ましい実施形態において、ICP34.5をコードする遺伝子は、HSVに選択的な腫瘍溶解活性を付与するように突然変異される。機能的ICP34.5の発現を妨げるICP34.5をコードする遺伝子の突然変異は、参照により本明細書に組み込まれるChouら(1990) Science 250:1262-1266、Macleanら(1991) J. Gen. Virol. 72:631-639及びLiuら(2003) Gene Therapy 10:292-303に記載されている。また、ICP6をコードする遺伝子及び/又はチミジンキナーゼをコードする遺伝子は不活性化され得、これは、このような不活性化がウイルスの感染又は腫瘍内での複製を妨げない限り、他の遺伝子と同様である。
【0034】
HSVは、腫瘍におけるHSVの複製を増強するさらなる突然変異を含有し得る。腫瘍におけるウイルス複製の結果として生じる増強は、ウイルスによる直接的な「腫瘍溶解性」腫瘍細胞死滅をもたらすだけでなく、異種(すなわち、ウイルスに挿入される遺伝子であって、本発明のウイルスの場合には、CTLA-4阻害剤、GM-CSF及び/又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子)遺伝子発現のレベルも増強させ、腫瘍細胞が死滅した場合に放出される腫瘍抗原の量を増加させる。これらの両者はまた、がんの治療のための療法の免疫原性特性を改善し得る。例えば、本発明の好ましい実施形態において、ICP47をコードする遺伝子の発現を通常調節する前初期プロモーターの調節下にUS11遺伝子を置く様式でのICP47をコードする遺伝子の欠失は、腫瘍における複製の増強をもたらす(参照により本明細書に組み込まれる、Liuら, 2003を参照されたい)。
【0035】
ウイルス複製に依存しないプロモーターの調節下に、HSV後期遺伝子であるUS11をコードする配列を置く他の突然変異もまた、本発明のウイルスに導入され得る。このような突然変異は、HSV複製が起こる前にUS11の発現を可能にし、腫瘍におけるウイルス複製を増強する。特に、このような突然変異は、機能的なICP34.5をコードする遺伝子を欠損しているHSVの複製を増強する。
【0036】
したがって、一実施形態において、本発明のHSVは、プロモーターに作動可能に連結されたUS11遺伝子を含み、プロモーターの活性はウイルス複製に依存しない。プロモーターは、哺乳動物の、好ましくはヒトの腫瘍細胞において活性である、前初期(IE)プロモーター又は非HSVプロモーターであり得る。プロモーターは、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトのゲノムに由来するプロモーターなどの真核生物プロモーターであり得る。プロモーターは、ユビキタスプロモーター(β-アクチン又はチューブリンのプロモーターなど)又は細胞特異的プロモーター、例えば腫瘍特異的プロモーターであり得る。プロモーターは、Moloneyマウス白血病ウイルスの長い末端反復(MMLV LTR)プロモーター又はヒト若しくはマウスのサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーターなどのウイルスプロモーターであり得る。HSV前初期(IE)プロモーターは当該技術分野において周知である。HSV IEプロモーターは、ICP0、ICP4、ICP22、ICP27又はICP47の発現を駆動するプロモーターであり得る。
【0037】
上記に言及されている遺伝子は、その機能不活性化がウイルスに対して腫瘍選択性の特性を提供し、任意の適切な方法によって、例えば、遺伝子及び/若しくはその遺伝子の調節配列の全部又は一部を欠失又は置換させることよって、あるいは遺伝子及び/若しくはその遺伝子の調節配列中に又はその代わりに1つ以上の核酸を挿入することによって機能的に不活性な状態とすることができる。例えば、当該技術分野において標準的である相同組換法を用いて、本発明のウイルスを作製することができる。あるいは、細菌人工染色体(BAC)ベースのアプローチを使用してもよい。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「遺伝子」は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列、すなわち遺伝子のコード配列を意味することが意図される。上記に言及されている種々の遺伝子は、遺伝子それ自体又は遺伝子に隣接する調節配列、例えばプロモーター配列を突然変異させることによって非機能的な状態にすることができる。欠失は、遺伝子の1つ以上の部分、遺伝子全体、又は遺伝子全体及び調節配列の全部又は一部を除去することができる。例えば、フレームシフトをもたらす遺伝子内のただ1つのヌクレオチドの欠失を生じさせ得る。しかしながら、より大きな欠失、例えば、全コード配列及び/又は非コード配列の少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%の欠失を生じさせ得る。1つの好ましい実施形態において、機能的に不活性な状態である遺伝子が欠失されている。例えば、遺伝子全体及び場合により隣接配列の一部をウイルスから除去することができる。遺伝子の2つ以上のコピーがウイルスゲノム中に存在する場合、遺伝子の両方のコピーは機能的に不活性な状態にされる。
【0039】
遺伝子は、他の配列を置換することによって、例えば、内因性遺伝子の全部又は一部を異種遺伝子及び場合によりプロモーター配列で置換することによって、不活性化することができる。プロモーター配列が置換されていない場合、異種遺伝子は、非機能的な状態にされた遺伝子のプロモーターによって調節されるように、挿入され得る。本発明のHSVにおいて、ICP34.5をコードする遺伝子は、異種の遺伝子、及びそれに作動可能に連結されるプロモーター配列、及び場合により他の制御エレメント、例えば、ポリアデニル化配列を、ICP34.5をコードする遺伝子座の各々に挿入することによって非機能的な状態にすることが好ましい。
【0040】
本発明のウイルスは、腫瘍においてCTLA-4阻害剤、及び場合によりGM-CSF及び/又は免疫共刺激経路活性化分子を発現させるために使用される。これは、典型的には、CTLA-4阻害剤をコードする異種遺伝子、及び場合によりGM-CSFをコードする異種遺伝子及び/又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする異種遺伝子を、各々の遺伝子がプロモーター配列の調節下にある選択的複製可能なウイルスのゲノムに挿入することによって達成される。このようなウイルスの複製が腫瘍組織において選択的に生じるため、ウイルスによるCTLA-4阻害剤、及び存在する場合、GM-CSF及び/又は免疫共刺激経路活性化分子の発現はまた、体の非腫瘍組織と比較して腫瘍組織において増強される。増強された発現は、発現が体の他の組織と比較して腫瘍においてより大きい場合に起こる。腫瘍溶解性ウイルスによって発現されたタンパク質は、腫瘍溶解性ウイルスが感染した腫瘍流入領域リンパ節に存在することも予想され、これは腫瘍由来の抗原提示細胞中又は上での発現されたタンパク質及びウイルスのトラフィッキング(trafficking)によるものも含まれる。したがって、本発明は、腫瘍溶解性ウイルス複製によって提供される抗腫瘍効果と組み合わせて、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節において選択的に、CTLA-4阻害剤、及び任意に共発現されるGM-CSF及び/又は免疫共刺激経路活性化分子を発現するという利益を提供する。
【0041】
本発明のウイルスは、CTLA-4阻害剤を含む。CTLA-4阻害剤は分子、典型的にはCTLA-4に結合し、CTLA-4によるシグナル伝達を低減若しくは遮断するペプチド又はタンパク質子である。CTLA-4シグナル伝達を低減させることにより、阻害剤は、CTLA-4による免疫刺激経路の遮断を減少させ又は除去する。
【0042】
CTLA-4阻害剤は、好ましくは、抗体又はその抗原結合断片である。
【0043】
本明細書において言及される用語「抗体」には、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はそれらの一本鎖が含まれる。抗体とは、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(カッパ)(L)鎖を含む糖タンパク質又はその抗原結合部分を指す。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)及び重鎖定常領域で構成される。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)及び軽鎖定常域で構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0044】
抗体は、典型的にはモノクローナル抗体である。抗体はキメラ抗体であってもよい。抗体は、好ましくはヒト化抗体であり、より好ましくはヒト抗体である。
【0045】
抗体の「抗原結合断片」という用語は、CTLA-4に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗原結合断片はまた、CTLA-4を阻害する能力を保持し、したがって、刺激性免疫応答のCTLA-4遮断を低減又は除去する能力を保持する。適切な断片の例には、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片及び単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。scFvなどの一本鎖抗体及びVHH及びラクダ抗体などの重鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれることが意図される。好ましい実施形態において、抗体はscFvである。適切なscFv分子の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2007/123737及びWO2014/066532に開示されている。
【0046】
抗体をコードする配列は、典型的にはN末端シグナル配列を有する抗体又は抗体断片をコードする。シグナル配列は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有し得る。例えば、このシグナル配列は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有し、配列番号10に示されるヌクレオチド配列によりコードされるscFv、及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列を有し、配列番号15に示されるヌクレオチド配列によりコードされるscFvに含まれる。
【0047】
抗体又は抗体断片において、軽鎖及び重鎖配列はアミノ酸リンカーにより連結され得る。リンカーは典型的には、約15個~約25個のアミノ酸、例えば約18個又は20個のアミノ酸を含む。グリシン及びセリン残基を含むリンカー、例えば配列番号8に示されるアミノ酸配列などの任意の適切なリンカーを使用できる。例えば、このリンカーは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有し、配列番号10に示されるヌクレオチド配列によりコードされるscFv、及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列を有し、配列番号15に示されるヌクレオチド配列によりコードされるscFvに含まれる。両者とも本発明での使用のための好ましい抗体断片である。
【0048】
類似の構造を有する他の抗体断片も好ましい。したがって、本発明のウイルスは軽鎖可変領域、リンカー、重鎖可変領域、重鎖CH1ドメイン、重鎖CH2ドメイン及び重鎖CH3ドメインを含むか、又はこれらから本質的になる抗体又は断片をコードし得る。ウイルスはさらに抗体のN末端にシグナル配列をコードし得る。
【0049】
本発明の抗体又は抗体断片は、好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4領域、より好ましくはIgG1領域であるFc領域を含み得る。抗体は、好ましくはscFvがIgG重鎖CH2及びCH3ドメインに連結されるscFv抗体である。
【0050】
好ましいCTLA-4抗体又は断片は、配列番号3に示される重鎖可変領域、及び/若しくは配列番号1に示される軽鎖可変領域、又は配列番号11において示される重鎖可変領域及び/若しくは配列番号12に示される軽鎖可変領域を含む。抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CH1ドメイン、及び/又は配列番号5に示されるCH2/CH3ドメインを含み得る。抗体は、配列番号2に示される軽鎖アミノ酸配列を含み得る。本発明の抗体は代替的にこれらの重鎖若しくは軽鎖可変領域又はCDR配列のうちの1つの変異体を含み得る。例えば、変異体は、上記アミノ酸配列のいずれかの置換、欠失、又は付加変異体であってもよい。
【0051】
変異抗体は本明細書で記載の抗体の活性を維持しながら、上記特定の配列及び断片から1、2、3、4、5、10まで、20まで、30まで、又はそれ以上のアミノ酸置換及び/又は欠失を含んでもよい。「欠失」変異体は、例えば1、2、3、4又は5個の個々のアミノ酸の欠失、又は2、3、4又は5個のアミノ酸等の小さなアミノ酸群の1つ以上の欠失を含み得る。「置換」変異体は、1つ以上アミノ酸を同数のアミノ酸で置換し保存的アミノ酸置換を行うことを含むのが好ましい。例えば、アミノ酸は、類似の特性を有する代替アミノ酸、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸又は別の脂肪族アミノ酸で置換され得る。
【0052】
本発明のウイルスは、CTLA-4阻害剤をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。ポリヌクレオチド配列は適切なプロモーターの制御下にある。ウイルスは抗体重鎖可変領域をコードする第1のポリヌクレオチド配列、及び抗体軽鎖可変領域をコードする第2のポリヌクレオチドを含み得る。第1のポリヌクレオチドは重鎖全長をコードでき、及び/又は第2のポリヌクレオチドは軽鎖全長をコードできる。第1及び第2のポリヌクレオチドは任意でIRESと共に、単一のプロモーターの制御下にあってもよく、又は2つの別個のプロモーターの制御下にあってもよい。別個のプロモーターは同一であっても異なるものであってもよい。
【0053】
第1のポリヌクレオチドは配列番号9に示される重鎖可変領域のコード配列を含んでもよく、若しくはこのコード配列から本質的になってもよく、若しくはこのコード配列からなるものであってもよく、及び/又は第2のポリヌクレオチドは配列番号10に示される重鎖可変領域のコード配列を含んでもよく、若しくはこのコード配列から本質的になってもよく、若しくはこのコード配列からなるものであってもよい。第1のポリヌクレオチドは配列番号19に示される重鎖可変領域のコード配列を含んでもよく、若しくはこのコード配列から本質的になってもよく、若しくはこのコード配列からなるものであってもよく、及び/又は第2のポリヌクレオチドは配列番号20に示される重鎖可変領域のコード配列を含んでもよく、若しくはこのコード配列から本質的になってもよく、又はこのコード配列からなるものであってもよい。
【0054】
第1及び/又は第2のポリヌクレオチド配列は、配列番号9、10、19又は20の変異体であってもよい。例えば、変異体は、これら核酸配列のいずれかの置換、欠失又は付加変異体であってもよい。変異ポリヌクレオチドは配列番号9、10、19又は20の1、2、3、4、5、10まで、20まで、30まで、40まで、50まで、75まで、又はそれ以上の核酸置換及び/又は欠失を含んでもよい。
【0055】
適切な変異体は、本明細書に開示された核酸配列のいずれか1つのポリヌクレオチドに少なくとも70%相同であってもよく、好ましくは少なくとも80又は90%、より好ましくは少なくとも95%、97%又は99%相同であってもよい。これらのレベルの相同性及び同一性は少なくともポリヌクレオチドのコード領域に関して存在するのが好ましい。相同性を測定する方法は当技術分野においてよく知られており、現在の状況では、相同性が核酸同一性に基づいて計算されることは当業者に理解されるだろう。そのような相同性は、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、例えば少なくとも40、60、100、200又はそれ以上の連続するヌクレオチドの領域にわたって存在し得る。そのような相同性は未修飾ポリヌクレオチド配列の全長にわたって存在し得る。
【0056】
ポリヌクレオチドの相同性又は同一性を測定する方法又は当技術分野において知られている。例えば、UWGCGパッケージは、相同性を計算するために使用できるBESTFITプログラムを提供する(例えば、デフォルト設定で使用)(Devereuxら(1984)Nucleic Acids Research 12、p387-395)。
【0057】
例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290-300; Altschul,S,Fら(1990)J Mol Biol 215:403-10に記載されている様に、PILEUP及びBLASTアルゴリズムを用いても、相同性を計算したり、配列を並べることができる(デフォルト設定での使用が一般的である)。
【0058】
BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Centre for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に入手可能である。このアルゴリズムでは、データベース配列内の同じ長さの文字とアライメントさせた場合の、何らかの正の値の閾値スコアTと一致するか、これを満たす検索配列内にある長さWの短い文字列を同定し、ハイスコアの配列対(HSP)をまず同定することを含む。Tは隣接文字スコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前出)。この最初の隣接文字ヒットが、それらを含むHSPの検索を開始するためのシードとして作用する。合計したアライメントスコアが増加する限り、文字ヒットを各配列に沿って両方向に伸長させる。両方向への文字列検索の伸長は、1つ以上の負のスコア残基アライメントの増加によりアライメントスコアの合計が0以下となった場合、又は、いずれかの配列の終端に到達した場合、停止する。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T及びXにより、アライメントの感度及び速度が決定される。BLASTプログラムはデフォルトで11の文字長(W)とBLOSUM62スコア行列(Henikoff及びHenikoff(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919を参照)、アラインメント50(B)、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。
【0059】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を行う。例えば、Karlin及びAltschul(1993)Proc. Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の基準の1つは最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列が偶然に類似する確率を示す。例えば、第1の配列と第2の配列を比較した際の最小合計確率が、約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、ある配列は別の配列に類似していると考えられる。
【0060】
一実施形態では、変異配列は、遺伝コードにおける重複性により配列表にある特定の配列とは異なり得る。DNAコードでは4つの主な核酸残基(A、T、C及びG)があり、これを使用して3つの文字からなるコドンを「綴り」、これが生物の遺伝子においてコードされるタンパク質のアミノ酸を表す。DNA分子に沿ったコドンの直線的配列は、これら遺伝子によってコードされるタンパク質におけるアミノ酸の直線的配列に翻訳される。20の天然アミノ酸をコードする61のコドンと「停止」シグナルを表す3つのコドンがあり、コードは縮重性が高い。したがって、ほとんどのアミノ酸は、1より多いコドンによりコードされ、実際に幾つかは、4つ以上の異なるコドンによりコードされる。したがって、本発明の変異ポリヌクレオチドは本発明の別のポリヌクレオチドと同じポリペプチド配列をコードし得るが、同じアミノ酸をコードするために異なるコドンを使用することによって異なる核酸配列を有し得る。改変していない配列を使用した場合と比較して、標的細胞においてコードされるタンパク質の発現レベルを増加させるために、コドンを最適化してもよい。
【0061】
本発明のウイルスは、GM-CSFを含むのが好ましい。GM-CSFをコードする遺伝子の配列は改変していない配列を使用した場合と比較して、標的細胞でそれぞれのタンパク質の発現レベルを増加させるために、コドン最適化され得る。
【0062】
本発明のウイルスは、1つ以上の免疫共刺激経路活性化分子及び/又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする1つ以上の遺伝子を含むのが好ましい。免疫共刺激経路活性化分子はタンパク質及び核酸分子(例えばアプタマー配列)を含む。免疫共刺激経路活性化分子の例としては、CD40リガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、OX40リガンド、ICOSリガンド、flt3リガンド、TL1A、CD30リガンド、CD70、及びこれらの分子(CD40、GITR、4-1-BB、OX40、ICOS、flt3、DR3、CD30、CD27)の各受容体を標的とする単鎖抗体を含む。
【0063】
免疫共刺激経路の活性化因子としては、突然変異体又は野生型、可溶性、分泌及び/又は膜結合リガンド、及び単鎖抗体を含むアゴニスト抗体がある。本発明のウイルスは、CD40L、ICOSL、4-1-BBL、GITRL又はOX40Lの1つ以上をコードするのが好ましい。
【0064】
本発明のウイルスは、1つ以上の免疫共刺激経路活性化分子、好ましくは1、2、3又は4つの免疫共刺激経路活性化分子、より好ましくは1又は2つの免疫共刺激経路活性化分子をコードし得る。
【0065】
免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子の配列は、改変されていない配列が使用される場合と比較して、標的細胞中のそれぞれのタンパク質の発現レベルを増加させるようにコドン最適化され得る。
【0066】
本発明のウイルスは、CTLA-4阻害剤、及びGM-CSF及び/又は免疫共刺激経路活性化分子に加えて1つ以上のさらなる異種遺伝子を含み得る。好ましい実施形態では、ウイルスは、GALVR-などの融合誘導性タンパク質をさらに含み得る。
【0067】
融合誘導性タンパク質は、本発明のウイルスに感染した細胞の、別の細胞への融合を促進することができる任意の異種タンパク質であり得る。融合誘導性タンパク質、好ましくは野生型又は改変されたウイルス性糖タンパク質(すなわち、その融合誘導特性を高めるように改変されたもの)は、それが発現される細胞の細胞間融合(合胞体(syncitia)形成)を誘導することができるタンパク質である。融合誘導性糖タンパク質の例としては、VSV-G、シンシチン-1(ヒト内因性レトロウイルス-W(HERV-W)由来)又はシンシチン-2(HERVFRDE1由来)、パラミクソウイルスSV5-F、麻疹ウイルス-H、麻疹ウイルス-F、RSV-F、レトロウイルス又はレンチウイルス、例えば、テナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GALV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、Mason-Pfizerサルウイルス(MPMV)及びウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)由来の糖タンパク質が挙げられ、これらは、R膜貫通ペプチドが除去されている(R-バージョン)。好ましい実施形態において、融合誘導性タンパク質はGALV由来であり、Rペプチドが除去されている(GALV-R-)。
【0068】
本発明のウイルスは、複数コピーの融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子、好ましくは1又は2コピーを場合により含むことができる。ウイルスは、上記に列挙した融合誘導性タンパク質のいずれかを含む、2つ以上の異なる融合誘導性タンパク質を含み得る。
【0069】
本発明のウイルスによって任意選択的に発現される融合誘導性タンパク質は、天然に存在するタンパク質と同一であってもよく、又は改変されたタンパク質であってもよい。
【0070】
融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子(融合誘導性遺伝子)は、天然に存在する核酸配列又は改変された配列を有し得る。融合誘導性遺伝子の配列は、例えば、コードされたタンパク質の融合誘導特性を高めるために、又はコドン最適化を提供し、したがって、コードされたタンパク質の発現効率を高めるために改変され得る。
【0071】
本発明はまた、少なくとも3つの異種遺伝子を発現する、ポックスウイルス又はHSV、好ましくはHSV1などのウイルスを提供し、3つの異種遺伝子の各々は、CMVプロモーター、RSVプロモーター、EF1aプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターによって駆動される。ウイルスは、例えば、4つの異種遺伝子を発現し得、4つの異種遺伝子の各々は、CMVプロモーター、RSVプロモーター、EF1aプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターによって駆動される。レトロウイルスLTRは、好ましくは、MMLV由来である。異種遺伝子は、ポリアデニル化配列によって終結され得る。ポリアデニル化配列は同一であってもよく又は異なっていてもよい。好ましくは、各々の異種遺伝子は、好ましくはBGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結される。本発明はまた、少なくとも3つの異種遺伝子を発現するポックスウイルス又はHSV、好ましくはHSV1などのウイルスを提供し、3つの異種遺伝子の各々は、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結される。ウイルスは、例えば、それぞれ、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列の各々によって終結される4つの異種遺伝子を発現し得る。
【0072】
少なくとも3つの異種遺伝子を、例えばCTLA-4阻害剤、GM-CSFをコードする遺伝子、免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子、及び融合誘導性遺伝子から選択してもよい。3つの異種遺伝子の例としては、CTLA-4阻害剤、GM-CSFをコードする遺伝子、及び免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子;CTLA-4阻害剤、GM-CSFをコードする遺伝子及び融合誘導性遺伝子;並びにCTLA-4阻害剤、免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子、及び融合誘導性遺伝子がある。4つの異種遺伝子は、例えば、CTLA-4阻害剤、GM-CSFをコードする遺伝子、免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子、及び融合誘導性遺伝子であってもよい。3つ又は4つの異種遺伝子は、例えば、免疫共刺激経路活性化分子をコードする2つ以上の遺伝子及び/又は2つ以上の融合誘導性遺伝子を含んでもよい。
【0073】
一実施形態において、3つの異種遺伝子の発現を制御するプロモーターはCMV、RSV及びMMLVプロモーターである。例えば、好ましいウイルスは、CMVプロモーター制御下のGM-CSF遺伝子、RSVプロモーター制御下のGALV遺伝子、及びMMLVプロモーター制御下のCTLA-4阻害剤を含んでもよい。
【0074】
一実施形態において、少なくとも3つの異種遺伝子を終結させるポリアデニル化配列は、SV40、BGH及びRBGポリアデニル化配列である。3つの異種遺伝子の発現を制御するのはCMV、RSV及びMMLVプロモーターである。例えば、好ましいウイルスは、BGHポリアデニル化配列により終結するGM-CSF遺伝子、SV40ポリアデニル化配列により終結するGALV遺伝子、及びRGBポリアデニル化配列により終結するCTLA-4阻害剤を含んでもよい。
【0075】
様々なプロモーター及びポリアデニル化配列の任意の組み合わせを異種遺伝子のうちのいずれかと一緒に使用してもよい。例えば、好ましいウイルスは、CMVプロモーター制御下でBGHポリアデニル化配列により終結するGM-CSF遺伝子、RSVプロモーター制御下でSV40ポリアデニル化配列により終結するGALV遺伝子、及び、MMLVプロモーター制御下でRGBポリアデニル化配列により終結するCTLA-4阻害剤を含んでも良い。
【0076】
ウイルスの産生
本発明のウイルスは、当該技術分野において周知の方法を用いて構築される。例えば、パッケージングされるウイルスゲノムをコードするプラスミド(より小さなウイルス及び単一及び複数のゲノム成分RNAウイルス用)又はBAC(ヘルペスウイルスを含むより大きなDNAウイルス用)は、適切な制御調節下で融合誘導性分子及び免疫刺激分子をコードする遺伝子を含み、標準的な分子生物学技術によって構築され、組換えウイルスを回収することができる許容細胞にトランスフェクトされ得る。
【0077】
あるいは、好ましい実施形態において、意図された挿入部位に隣接するDNA領域を含有するプラスミドを構築し、次に、ウイルスゲノムDNAとともに許容細胞に同時トランスフェクションし得、それにより、プラスミド中の標的挿入部位の隣接領域と親ウイルスの同じ領域との間で相同組換が生じる。次に、組換えウイルスは、例えば、意図された挿入部位での親ウイルスからのGFP又はlacZなどのマーカー遺伝子の挿入又は欠失によるなどの、改変に使用されるプラスミドによって挿入又は欠失された機能の喪失又は付加を介して、選択及び精製することができる。最も好ましい実施形態において、挿入部位はHSVのICP34.5遺伝子座であり、したがって、操作に使用されるプラスミドは、この挿入部位に隣接するHSV配列を含有し、その間にGM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子をコードする発現カセットがある。この場合、親ウイルスは、ICP34.5の代わりにGFPをコードするカセットを含有し得、組換えウイルスプラークはGFPの発現の消失によって選択される。最も好ましい実施形態において、HSVのUS11遺伝子はまた、IE遺伝子として発現される。これは、ICP47コード領域の欠失を介して、又は他の手段によって達成され得る。
【0078】
CTLA-4阻害剤、及び場合によりGM-CSFをコードする配列及び共刺激経路活性化分子をコードする配列、及び/又はGALVR-等の融合誘導性タンパク質をコードする配列等の追加のタンパク質コード配列は、適切な制御調節下でウイルスゲノムに挿入される。これは、種及び挿入部位に依存して、又は好ましくは異種プロモーターの調節下で、使用される本発明のウイルス種の天然プロモーターの制御調節下にあり得る。適切な異種プロモーターには、IEF2aプロモーター又はアクチンプロモーターなどの哺乳動物プロモーターが含まれる。CMV IEプロモーター、RSV LTR、MMLV LTR、他のレトロウイルスLTRプロモーター、又はSV40由来のプロモーターなどの強力なウイルスプロモーターがより好ましい。好ましくは、各々の外来遺伝子(すなわち、GM-CSF及び共刺激経路活性化分子をコードする)は、別個のプロモーター調節下にあるが、また、例えば、タンパク質コード配列間に内部リボソーム侵入部位(IRES)を挿入することによって、単一のRNA転写物から発現され得る。各々のプロモーター由来のRNAは、典型的には、ポリアデニル化配列(例えば、ウシ又はヒト成長ホルモン(BGH)ポリA配列、合成ポリアデニル化配列、ウサギベータグロビンポリアデニル化配列などの哺乳動物配列、又はSV40初期若しくは後期ポリアデニル化配列などのウイルス配列)を用いて終結される。
【0079】
ウイルス中の異種遺伝子のそれぞれは、典型的にはプロモーターの制御下である。異種遺伝子の発現を制御するプロモーターは、同じであっても異なっていてもよい。例えば、抗CTLA-4、並びにGM-CSF、融合誘導性遺伝子、及び免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子の1つ以上は、CMVプロモーター、RSVプロモーター、EF1aプロモーター、SV40プロモーター、又はレトロウイルスLTRプロモーターの制御下であってもよい。あるいは、例えば、抗CTLA-4はMMLVプロモーター等のレトロウイルスLTRプロモーターの制御下であってもよく、GM-CSFはCMVプロモーターの制御下であってもよく、及び/又はGALVR-等の融合誘導性遺伝子は、RSVプロモーターの制御下であってもよい。
【0080】
医薬組成物
本発明は、ウイルス及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。適切な担体及び希釈剤は、等張性生理食塩水、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水を含む。組成物は、製品の安定性などの特性を改善するために、糖又はタンパク質などの他の成分をさらに含み得る。あるいは、使用前に医薬として許容される担体又は希釈剤中で再構成される凍結乾燥製剤を使用し得る。
【0081】
必要に応じて、担体の選択は、しばしば組成物の送達経路の関数である。本発明の範囲内で、組成物は、任意の適切な経路及び投与手段のために製剤化され得る。医薬として許容される担体又は希釈剤は、腫瘍内投与、静脈内/動脈内投与、脳への投与又は体腔(例えば、膀胱、胸腔又は腹腔内投与)への投与に適した組成物に使用されるものである。組成物は、任意の適切な形態で、好ましくは液体として投与することができる。
【0082】
本発明はまた、本発明のウイルスを滅菌バイアル、アンプル又はシリンジ中に含む製造物を提供する。
【0083】
医療用途/治療の方法
本発明は、特にがんを治療する方法において使用するための、治療によるヒト又は動物の体の治療における使用のための本発明のウイルスを提供する。がんは、典型的には、哺乳動物、好ましくはヒトに存在する。このウイルスは、感染した腫瘍細胞を溶解によって、及び感染した腫瘍細胞を互いに融合させることによって死滅させる。本発明のウイルスはまた、がん細胞も死滅させるCTLA-4阻害剤、及び場合によりGM-CSF及び共刺激経路活性化分子の発現により増強された全身性抗腫瘍免疫応答を誘発する。
【0084】
本発明はまた、治療有効量の本発明のウイルスを、それを必要とする個体に投与することを含む、がんを治療する方法を提供する。
【0085】
本発明はさらに、がんを治療するための医薬の製造における本発明のウイルスの使用を提供する。
【0086】
本発明のウイルスは、任意の腺癌、癌腫、メラノーマ又は肉腫を含む任意の固形腫瘍の治療に特に有用である。例えば、本発明のウイルスは、頭頸部、前立腺、乳房、卵巣、肺、肝臓、子宮内膜、膀胱、胆嚢、膵臓、結腸、腎臓、胃(stomach)/胃(gastric)、食道又は子宮頚部のがん、中皮腫、メラノーマ又は他の皮膚がん、リンパ腫、神経膠腫若しくは神経系の他のがん、又は軟部肉腫などの肉腫の治療に有用である。
【0087】
本発明のウイルスは、元の腫瘍の部位から転移した腫瘍を含む悪性腫瘍を治療するために使用され得る。この実施形態において、ウイルスは、原発腫瘍又は1つ以上の二次腫瘍に投与され得る。
【0088】
本発明のウイルスは、化学療法、標的化療法、免疫療法(免疫チェックポイント遮断、すなわち免疫共阻害経路の1つ以上のアンタゴニスト及び/又は免疫共刺激経路の1つ以上のアゴニストの投与を含む)を含む他の治療剤と組み合わせて、及び/又は放射線療法と組み合わせて、及び/又はこれらの任意の組み合わせと組み合わせて投与することができる。治療剤は、好ましくは抗がん剤である。
【0089】
本発明のウイルスは、第2の腫瘍溶解性ウイルスなどの第2のウイルスと組み合わせて投与され得る。
【0090】
例えば、治療剤は、腫瘍細胞、特にネオ抗原に対する免疫応答、例えば、細胞性又は体液性の免疫応答をさらに刺激するために、免疫原(このような抗原、あるいはそれがコードされているDNA若しくはRNAとして送達される抗原の組み合わせを含む、組換え又は天然に存在する抗原を含む)を含み得る。治療剤は、サイトカイン、免疫チェックポイント経路を阻害し、若しくは免疫増強経路を刺激することが意図された薬剤、又は制御性T細胞(Tregs)若しくは骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の活性を阻害する薬剤などの免疫応答を増加又は増強することが意図された薬剤であり得る。
【0091】
治療剤は、既存のがん治療処置における使用が公知である薬剤であり得る。治療剤は、放射線療法剤又は化学療法剤であり得る。治療剤は、シクロホスファミド(cyclophosmamide)、アルキル化様薬剤、例えば、シスプラチン又はメルファラン、植物アルカロイド及びテルペノイド、例えば、ビンクリスチン又はパクリタキセル(タキソール)、代謝拮抗剤、例えば、5-フルオロウラシル、トポイソメラーゼ阻害剤タイプI又はII、例えば、カンプトテシン又はドキソルビシン、細胞傷害性抗生物質、例えば、アクチノマイシン、アントラサイクリン、例えば、エピルビシン、グルココルチコイド、例えば、トリアムシノロン、タンパク質、DNA及び/又はRNA合成の阻害剤、例えば、メトトレキセート及びダカルバキシン、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、又は任意の他の化学療法剤から選択され得る。
【0092】
治療剤は、以下のうちの1つ又は組み合わせであり得る:免疫療法剤又は免疫調節剤、例えば、TLRアゴニスト;T制御細胞をダウンレギュレートする薬剤、例えば、シクロホスファミド;又は免疫チェックポイントを遮断し又は免疫増強経路を刺激するように設計された薬剤、例えば、限定されないが、モノクローナル抗体、例えば、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、VISTA阻害剤、CSF1R阻害剤、IDO阻害剤、CEACAM1阻害剤、GITRアゴニスト、4-1-BBアゴニスト、KIR阻害剤、SLAMF7阻害剤、OX40アゴニスト、CD40アゴニスト、ICOSアゴニスト又はCD47阻害剤。好ましい実施形態において、治療剤は、CTLA-4阻害剤、例えば、抗CTLA-4抗体、PD1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体、又はPD-L1阻害剤、例えば抗PD-L1抗体である。このような阻害剤、アゴニスト及び抗体は、当該技術分野において公知である標準的な方法によって生成及び試験することができる。
【0093】
免疫療法剤はまた、二重特異性抗体、樹状細胞に基づく細胞に基づく治療、NK細胞又は操作されたT細胞、例えば、CAR-T細胞又は操作されたT細胞受容体を発現するT細胞を含み得る。免疫療法剤はまた、腫瘍において生じる特異的遺伝子突然変異を標的とする薬剤、特定の腫瘍抗原又は腫瘍抗原の組み合わせに対する免疫応答を誘発することが意図された薬剤、例えばネオ抗原、並びに/又はSTING/cGAS経路、TLR又は他の自然免疫応答及び/又は炎症性経路を活性化することが意図された薬剤、例えば腫瘍内薬剤を含む。
【0094】
例えば、本発明のウイルスは、メラノーマを治療するために、ダカルバジン、BRAF阻害剤及び/又はPD1若しくはPD-L1遮断剤と組み合わせて、乳がんを治療するためにタキソール、ドキソルビシン、ビノレルビン、シクロホスファミド及び/又はゲムシタビンと組み合わせて、結腸直腸がんを治療するために5-フルオロウラシル、並びに場合によりロイコボリン、イリノテカン及び/又はオキサリプラチンと組み合わせて、肺がんを治療するためにタキソール、カルボプラチン、ビノレルビン及び/又はゲムシタビン、PD-1若しくはPD-L1遮断剤と組み合わせて、頭頸部がんを治療するためにシスプラチン及び/又は放射線療法と組み合わせて使用され得る。
【0095】
治療剤は、インドールアミン(idoleamine)2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路の阻害剤であり得る。IDO阻害剤の例には、エプカドスタット(INCB024360)、1-メチル-トリプトファン、インドキシモド(1-メチル-D-トリプトファン)、GDC-0919又はF001287が含まれる。
【0096】
抗腫瘍免疫応答を抑制する際のIDOの作用機序はまた、腫瘍溶解性ウイルス療法後に生じる免疫応答を抑制し得る。IDO発現は、トール様受容体(TLR)活性化及びインターフェロン-γによって誘導され、その両方は腫瘍溶解性ウイルス感染に起因し得る。がん治療のための腫瘍溶解性ウイルス療法の使用の1つの実施形態は、CTLA-4阻害剤、及び場合によりGM-CSF及び/又は免疫共刺激経路活性化分子を発現するウイルスを含む腫瘍溶解性ウイルスと、IDO経路の阻害剤と、場合により、PD-1及び/若しくはPD-L1を標的とするものを含む、免疫共阻害経路の1つ以上のアンタゴニスト、並びに/又は免疫共刺激経路のさらなるアゴニストとの組み合わせを含む。
【0097】
治療剤及び/又は放射線療法が本発明のウイルスとともに使用される場合、ウイルス及び治療剤の投与並びに/又は放射線療法は、同時に行われてもよく、又は時間によって分けられてもよい。本発明の組成物は、治療剤又は放射線療法の前、同時又は後に投与され得る。がんを治療する方法は、本発明のウイルス及び/又は治療薬及び/又は放射線療法の複数回投与を含み得る。好ましい実施形態において、免疫チェックポイント遮断剤又は他の免疫増強剤との組み合わせの場合、本発明のウイルスは、その後の免疫チェックポイント遮断剤又は他の免疫増強剤の同時投与の前に1回又は複数回投与され、あるいは本発明のウイルスの事前投与なしに、免疫チェックポイント遮断剤又は他の免疫増強剤の投与と同時に投与される。
【0098】
本発明のウイルスは、任意の適切な経路によって対象に投与され得る。典型的には、本発明のウイルスは、直接腫瘍内注射によって投与される。腫瘍内注射には、表皮、皮下又は結節の腫瘍への直接注射、並びに、例えば内臓器官及び他の場所に、沈着物をより深く又はより強固に局在化させるための画像誘導化(CT、MRI又は超音波など)注射を含む。ウイルスは、体腔に、例えば、胸膜腔、膀胱に又は腹腔内投与によって投与され得る。ウイルスは、血管内、好ましくは腫瘍を供給する血管内に注射され得る。
【0099】
本発明のウイルスと組み合わせることができる治療剤は、様々な公知の経路及び技術を用いてインビボでヒト又は動物対象に投与することができる。例えば、組成物は、注射可能な溶液、懸濁液又はエマルジョンとして提供され、従来の針及び注射器を用いて又は液体噴射注射システムを用いて、非経口、皮下、経口、表皮、皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、静脈内注射を介して投与され得る。組成物は、鼻、気管内、腸、舌下、直腸又は膣などの皮膚又は粘膜組織に局所的に投与され得、又は呼吸若しくは肺投与に適した細かく分割された噴霧として提供され得る。好ましい実施形態において、組成物は、静脈内注入によって、経口的に、又は腫瘍に直接的に投与される。
【0100】
ウイルス及び/又は治療剤は、治療的に有効な用量組成物と適合する量で対象に投与され得る。本発明のウイルスの投与は、「治療」目的のためである。本明細書において使用する場合、用語「治療(therapeutic)」又は「治療(treatment)」には、その目的として以下のいずれか1つ以上を含む:任意の転移又は生じるさらなる転移の予防、症状の軽減又は排除、腫瘍若しくはがんの減少又は完全な排除、患者のがんの進行までの時間の増加、治療後の再発までの時間の増加、あるいは生存時間の増加。
【0101】
治療的処置は、ステージI、II、III又はIVのがん、好ましくはステージII、III又はIV、より好ましくはステージIII又はIVに対して、外科的介入の前又は後(すなわち、手術後の腫瘍の再発又は不完全な除去後)、好ましくは任意の外科的介入前(原発性又は再発性/転移性の疾患の切除のいずれかのため)、又は手術後若しくは疾患の不完全な外科的除去後の再発後、すなわち残留腫瘍が残っている間に与えられる。
【0102】
治療的処置は、ウイルス組成物を、腫瘍であり得る標的組織に、体腔に、又は血管に直接注射した後に行うことができる。指針として、投与されるウイルスの量は、HSVの場合、104~1010pfu、好ましくは105~109pfuの範囲である。HSVの場合、最初の低用量(例えば104~107pfu)は、HSVについて血清反応陰性である患者を血清転換するため、及び血清陽性である患者の免疫を高めるために与えられ、続いて、より高用量(例えば106~109pfu)がその後に与えられ得る。典型的には、ウイルス及び医薬として許容される適切な担体又は希釈剤から本質的になる、最大20mlの医薬組成物は、腫瘍に直接注射するために使用され得、又は最大50ml(投与前に、適切な希釈剤中へのさらなる希釈に供されてもよい)は、体腔に投与するために、又は血流に投与するために使用され得る。しかしながら、いくつかの腫瘍溶解療法用途については、腫瘍並びに投与経路及び部位に依存して、より大きい又はより小さい容積もまた使用され得る。
【0103】
記載された投与経路及び投薬量は、熟練した医師が最適な投与経路及び投薬量を容易に決定することができるため、指針としてのみ意図される。用量は、様々なパラメータに従って、特に腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、治療される患者の年齢、体重及び状態、並びに投与経路に従って決定され得る。好ましくは、ウイルスは、腫瘍又は体腔内への直接注射によって投与される。ウイルスはまた、血管内への注射によって投与され得る。最適な投与経路は、腫瘍の位置及び大きさに依存する。複数回の用量は、免疫学的又は臨床的効果を達成するために必要とされ得、これは、必要に応じて、典型的には、2日~12週間の間隔、好ましくは3日~3週間の間隔で投与される。治療されている腫瘍のタイプの応答速度及び特定の患者の応答、また、与えられ得る任意の併用療法に依存して、最大5年以上好ましくは最大1カ月~2年間の反復投与が与えられ得る。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]CTLA-4阻害剤をコードする腫瘍溶解性ウイルス。
[実施形態2]CTLA-4阻害剤がCTLA-4抗体又はその抗原結合断片である、実施形態1に記載のウイルス。
[実施形態3]断片がscFv分子を含む、実施形態2に記載のウイルス。
[実施形態4]断片が1以上のIgG1定常領域に連結されたscFv分子である、実施形態2に記載のウイルス。
[実施形態5]抗体又は断片が、IgG重鎖に連結された軽鎖可変領域を含む、実施形態2~4のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態6]抗体又は断片が、(a)配列番号1に示される軽鎖可変領域配列及び配列番号3に示される重鎖可変領域配列、又は(b)配列番号11に示される軽鎖可変領域配列及び配列番号12に示される重鎖可変領域配列を含む、実施形態2~5のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態7]抗体又は断片が、(a)配列番号9のアミノ酸配列、又は(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む、実施形態6に記載のウイルス。
[実施形態8]抗体又は断片が、(a)配列番号10のヌクレオチド配列、又は(b)配列番号15のヌクレオチド配列によりコードされる、実施形態7に記載のウイルス。
[実施形態9]GM-CSFをコードする遺伝子をさらに含む、実施形態1~8のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態10]免疫共刺激経路活性化分子又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子をさらに含む、実施形態1~9のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態11]免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子が、CD40リガンド(CD40L)、ICOSリガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、OX40リガンド、TL1A、CD30リガンド、CD27若しくはflt3リガンド又はこれらのいずれかの改変バージョンをコードする、実施形態10に記載のウイルス。
[実施形態12]免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子が、CD40リガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、OX40リガンド、ICOSリガンド、又はこれらのいずれかの改変バージョンをコードする、実施形態10又は11に記載のウイルス。
[実施形態13]融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子をさらに含む、実施形態1~12のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態14]融合誘導性タンパク質が、水疱性口内炎ウイルス(VSV)Gタンパク質、シンシチン-1、シンシチン-2、シミアンウイルス5(SV5)Fタンパク質、麻疹ウイルス(MV)Hタンパク質、MV Fタンパク質、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Fタンパク質、及びRペプチドが欠失しているテナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GALV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、Mason-Pfizerサルウイルス(MPMV)又はウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)由来の糖タンパク質からなる群から選択される、実施形態13に記載のウイルス。
[実施形態15]融合誘導性タンパク質が、テナガザル白血病ウイルス(GALV)由来の糖タンパク質であり、R膜貫通ペプチドが突然変異又は除去されている(GALV-R-)、実施形態13又は14に記載のウイルス。
[実施形態16]1つ以上の免疫共刺激経路活性化分子をコードする、実施形態1~15のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態17]ウイルスの臨床分離株に由来する、実施形態1~16のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態18]2つ以上の腫瘍細胞株を、同種のウイルスの1つ以上の参照臨床分離株よりも、インビトロで迅速に及び/又は低用量で死滅させる、ウイルスの改変された臨床分離株である、実施形態1~17のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態19]ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス及びレオウイルスからなる群から選択される、実施形態1~18のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態20]単純ヘルペスウイルス(HSV)である、実施形態1~19のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態21]HSV1である、実施形態20に記載のウイルス。
[実施形態22]HSVが、
(a)機能的ICP34.5を発現しない、
(b)機能的ICP47を発現しない、及び/又は
(c)US11遺伝子を前初期遺伝子として発現する、
実施形態21に記載のウイルス。
[実施形態23]抗CTLA-4阻害剤タンパク質をコードする遺伝子が、挿入、部分的欠失、又は完全な欠失によって、ICP34.5をコードする遺伝子座に挿入されている、実施形態20~22のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態24]抗CTLA-4阻害剤タンパク質をコードする遺伝子が、GM-CSFなどの1以上の免疫刺激遺伝子及び/又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子及び/又は融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子も含むカセットに含まれている、実施形態23に記載のウイルス。
[実施形態25]CTLA-4阻害剤をコードする配列、GM-CSFをコードする配列、免疫共刺激経路活性化分子をコードする配列及び/又は融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子が、標的細胞における発現レベルを増加させるようにコドン最適化されている、実施形態1~24のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態26]3つの異種遺伝子を発現し、3つの異種遺伝子の各々が、CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター(配列番号)及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターによって駆動される、実施形態1~25のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態27]CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターの各々によってそれぞれ駆動される4つの異種遺伝子を発現する、実施形態26に記載のウイルス。
[実施形態28]レトロウイルスLTRがMMLV(配列番号)由来である、実施形態26又は27に記載のウイルス。
[実施形態29]3つの異種遺伝子を発現し、3つの異種遺伝子の各々が、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結される、実施形態1~28のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態30]BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列の各々によってそれぞれ終結される4つの異種遺伝子を発現する、実施形態29に記載のウイルス。
[実施形態31]ポックスウイルスである、実施形態26~30のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態32]実施形態1~31のいずれかに記載のウイルス及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
[実施形態33]療法によってヒト又は動物の体を治療する方法に使用するための、実施形態1~31のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態34]がんを治療する方法に使用するための、実施形態1~31のいずれかに記載のウイルス。
[実施形態35]方法が、さらなる抗がん剤を投与することを含む、実施形態34に記載の使用のためのウイルス。
[実施形態36]さらなる抗がん剤が、免疫共阻害経路又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤、放射線療法及び/又は化学療法、腫瘍において生じる特定の遺伝子突然変異を標的とする薬剤、1つ以上の腫瘍抗原又はネオ抗原に対する免疫応答を誘導することが意図された薬剤、T細胞又はNK細胞に由来する細胞生成物、STING、cGAS、TLR又は他の自然免疫応答及び/若しくは炎症経路を刺激することが意図された薬剤、第2のウイルス、場合により腫瘍溶解性ウイルス、並びにそれらの組み合わせから選択される、実施形態35に記載の使用のためのウイルス。
[実施形態37]免疫共阻害経路を標的とする薬剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、VISTA阻害剤、CSF1R阻害剤、IDO阻害剤、KIR阻害剤、SLAMF7阻害剤、CEACAM1阻害剤若しくはCD47阻害剤であり、及び/又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤が、GITRアゴニスト、4-1-BBアゴニスト、OX40アゴニスト、CD40アゴニスト若しくはICOSアゴニストである、実施形態36に記載の使用のためのウイルス。
[実施形態38]さらなる抗がん剤が抗体である、実施形態35~37のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
[実施形態39]方法が、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路の阻害剤及び免疫共阻害経路のさらなるアンタゴニスト、又は免疫共刺激経路のさらなるアゴニストを投与することを含む、実施形態35~38のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
[実施形態40]ウイルス及びさらなる抗がん剤が別々に投与される、実施形態34~39のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
[実施形態41]ウイルス及びさらなる抗がん剤が同時に投与される、実施形態34~39のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
[実施形態42]がんが固形腫瘍である、実施形態34~41のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
[実施形態43]実施形態1~31のいずれかに記載のウイルスを滅菌バイアル、アンプル又はシリンジ中に含む製造物。
[実施形態44]治療有効量の実施形態1~31のいずれかに記載のウイルス又は実施形態32に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法。
[実施形態45]治療有効量のさらなる抗がん剤を、それを必要とする患者に投与することをさらに含む、実施形態44に記載の方法。
[実施形態46]さらなる抗がん剤が、免疫共阻害経路又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤、放射線療法及び/又は化学療法、腫瘍において生じる特定の遺伝子突然変異を標的とする薬剤、1つ以上の腫瘍抗原又はネオ抗原に対する免疫応答を誘導することが意図された薬剤、T細胞又はNK細胞に由来する細胞生成物、STING、cGAS、TLR又は他の自然免疫応答及び/若しくは炎症経路を刺激することが意図された薬剤、第2のウイルス、場合により腫瘍溶解性ウイルス、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態45に記載の方法。
[実施形態47]免疫共阻害経路を標的とする薬剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、VISTA阻害剤、CSF1R阻害剤、IDO阻害剤、KIR阻害剤、SLAMF7阻害剤、CEACAM1阻害剤若しくはCD47阻害剤であり、及び/又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤が、GITRアゴニスト、4-1-BBアゴニスト、OX40アゴニスト、CD40アゴニスト若しくはICOSアゴニストである、実施形態46に記載の方法。
[実施形態48]さらなる抗がん剤が抗体を含む、実施形態45~47のいずれかに記載の方法。
[実施形態49]ウイルス及びさらなる抗がん剤が別々に投与される、実施形態45~48のいずれかに記載の方法。
[実施形態50]ウイルス及びさらなる抗がん剤が同時に投与される、実施形態45~48のいずれかに記載の方法。
[実施形態51]がんが固形腫瘍である、実施形態44~50のいずれかに記載の方法。
[実施形態52]がんを治療する方法において使用するための医薬の製造における、実施形態1~31のいずれかに記載のウイルスの使用。
[実施形態53]方法が、さらなる抗がん剤を投与することを含む、実施形態52に記載の使用。
【0104】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例
【0105】
[実施例1]
本発明のウイルスの構築
本発明を例示するために使用したウイルス種はHSV、具体的にはHSV1である。
【0106】
使用するプラスミドの模式図を図2に示す。ウイルスの模式図を図1に示す。全ウイルスをHSV1株RH018Aを用いて構築した。ウイルスの構築に使用したプラスミドは、Genscript Incにより実施された遺伝子合成及びサブクローニングの組み合わせにより作製された。
【0107】
マウスGM-CSFとGALVと共に抗マウスCTLA4を発現するウイルスを次のように構築した。プラスミド77とウイルス16DNAとを共トランスフェクションし、GFPを発現するプラークを選抜してウイルス16にGFPを挿入し、ウイルス25を得た。その後、プラスミド119をウイルス25DNAと共トランスフェクションすることで、ウイルス25からGFPをノックアウトした。これによりウイルス27を得た。
【0108】
ヒトGM-CSFとGALVと共に抗ヒトCTLA4を発現するウイルスを次のように構築した。プラスミド78とウイルス17DNAとを共トランスフェクションし、GFPを発現するプラークを選抜してウイルス17にGFPを挿入し、ウイルス29を得た。その後、ウイルス29DNAとプラスミド122とを共トランスフェクションすることで、GPFをウイルス29からノックアウトした。これによりウイルス31を得た。
【0109】
マウスGM-CSF及びGALVと共に抗マウスCTLA-4及び共刺激リガンドを発現するウイルスを、マウスGM-CSFと抗マウスCTLA-4コード配列の間にあるSV40プロモーターによって駆動されるGFPをコードするプラスミドとウイルス27を共トランスフェクションすることで構築した。その後、GFPの代わりに、個々のマウスの共刺激リガンドの各々をコードするプラスミドで、得られたウイルスからGFPをノックアウトした。
【0110】
ヒトGM-CSFとGALVと共に抗ヒトCTLA4と共刺激リガンドを発現するウイルスを、ヒトGM-CSFと抗ヒトCTLA-4コード配列の間にあるSV40プロモーターによって駆動されるGFPをコードするプラスミドとウイルス31を共トランスフェクションすることで構築した。その後、GFPの代わりに、個々のヒト共刺激リガンドの各々をコードするプラスミドで得られたウイルスからGFPをノックアウトした。
【0111】
図4は、ウイルス27からの抗マウスCTLA-4の発現を実証するウェスタンブロットを示す。
【0112】
[実施例2]
腫瘍溶解性ウイルス由来のGALV、GM-CSF及び抗CTLA4の組み合わせ発現の効果
【0113】
本発明の有用性は以下の方法で実証される。A20細胞をBalb/cマウスの両側腹部へ投与し、A20腫瘍を直径約0.5cmまで成長させる。
【0114】
その後、マウス群の各マウスの片方の側腹部(右の腫瘍)にのみ、1週間にわたり週3回、次の処置を実施した。
溶媒50μl(1群);
マウスGM-CSF及びGALVR-のみを挿入したHSV(ウイルス16)106pfu/mlを50μl;
GALVR-、マウスGM-CSF及び抗マウスCTLA-4抗体注入HSV(ウイルス27)106pfu/mlを50μl
【0115】
その後、腫瘍成長に対する効果を最長一ヶ月間観察する。使用したウイルスの用量は、5x104pfu(各ケースで1x106pfu/mlを50ul)であり、1週間に3回投与した。このウイルスの用量レベルは未注入腫瘍に対してはウイルス16の治療量以下であり、これによりウイルス27によりコードされた追加分子の送達の利点を明確に見ることが可能となる。図5及び6は、CTLA-4を発現しないウイルス16と比較して、抗CTLA-4を発現するウイルスの未注入腫瘍における優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小を示す。
【0116】
[実施例3]
腫瘍溶解性ウイルス由来のGALV、GM-CSF及び抗CTLA4の組み合わせ発現と抗PD-1との効果
【0117】
A20細胞をBalb/cマウスの両側腹部へ投与し、A20腫瘍は直径約0.5cmまで成長させる。
【0118】
その後、マウス群(各群10個体)の各マウスの片方の側腹部にのみ1週間にわたり週3回、次の処置を実施する。
溶媒50μl;
腹腔内抗マウスPD1(Bioxcell、RMP-1-14、10mg/kgを3日毎);
GALVR-、マウスGM-CSF及び抗マウスCTLA-4抗体挿入HSV(ウイルス27)107pfu/mlを50μl;
GALVR-、マウスGM-CSF及び抗マウスCTLA-4抗体挿入HSV(ウイルス27)107pfu/mlを50μlと;腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)(3群)
【0119】
その後、腫瘍成長に対する効果を最長80日間観察する。ウイルスでの治療が抗PD1での治療と併用された場合、注入及び未注入腫瘍のどちらにおいても優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小。このデータを図7に示す。
【0120】
[実施例4]
腫瘍溶解性ウイルス由来のGALV、GM-CSF及び抗ヒトCTLA4の組み合わせ発現単独の効果と抗PD-1との組み合わせ効果
【0121】
MC38細胞を、マウスCTLA-4ではなくヒトCTLA-4を発現するよう遺伝子編集によって改変されたC57BL/6マウスの両側腹部へ投与する。これによりマウスはイピリムマブなどの抗ヒトCTLA-4抗体に感受性を示す。MC38腫瘍は直径約0.5cmまで成長させる。
【0122】
その後、マウス群(各群10個体)の各マウスの片方の側腹部にのみ、2週間にわたり週3回、次の処置を実施した。
溶媒50μl;
ウイルス17(すなわち、hGM-CSF及びGALV発現)108pfu/mlを50μl;
ウイルス31(すなわち、hGM-CSF、GALV、及び抗ヒトCTLA-4発現)108pfu/mlを50μl;
ウイルス17の108pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎);
ウイルス31の108pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)
【0123】
その後、腫瘍成長に対する効果を最長35日間観察する。抗ヒトCTLA-4を発現するウイルスを注入された腫瘍において優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小が見られ、抗PD1での併用治療でその効果はさらに高められる。いずれかのウイルスによる治療と抗PD1とを組み合わせた場合、未注入腫瘍において優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小が観察される。この改善は抗CTLA4を発現するウイルスでさらに顕著である。このデータを図8に示す。
【0124】
[実施例5]
腫瘍溶解性ウイルス由来のGALV、GM-CSF及び抗CTLA4の組み合わせ発現と抗PD-1との効果
【0125】
A20細胞をBalb/cマウスの両側腹部へ投与し、A20腫瘍を直径約0.5cmまで成長させる。
【0126】
その後、マウス群(各群10個体)の各マウスの片方の側腹部にのみ2週間にわたり週3回、次の処置を実施した。
溶媒50μl(1群);
腹腔内抗マウスPD1(Bioxcell、RMP-1-14、10mg/kgを3日毎);
マウスGM-CSF及びGALVR-のみ挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μl(3群);
GALVR-、マウスGM-CSF、及び抗マウスCTLA-4抗体挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)(3群);
マウスGM-CSF、GALVR-のみ挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)(3群);
GALVR-、マウスGM-CSF、及び抗マウスCTLA-4抗体挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)(3群)
【0127】
その後、腫瘍成長に対する効果を最長1ヶ月観察する。注入、未注入腫瘍のいずれにおいても抗CTLA-4を発現するウイルスによる優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小が見られ、抗PD1での併用治療でその効果はさらに高められ、この効果は他の群と比較して、用量-反応曲線が改善されていることなどから観察される。
【0128】
[実施例6]
腫瘍溶解性ウイルス由来のGALV、GM-CSF及び抗ヒトCTLA4の組み合わせ発現単独の効果と抗PD-1との併用効果
【0129】
MC38細胞を、マウスCTLA-4ではなくヒトCTLA-4を発現するよう遺伝子編集により改変されたC57BL/6マウスの両側腹部へ投与する。これによりマウスはイピリムマブなどの抗ヒトCTLA-4抗体に感受性を示す。MC38腫瘍は直径約0.5cmまで成長させる。
【0130】
その後、マウス群(各群10個体)の各マウスの片方の側腹部にのみ2週間にわたり週3回、次の処置を実施する。
溶媒50μl(1群);
腹腔内抗マウスPD1(Bioxcell、RMP-1-14、10mg/kgを3日毎);
マウスGM-CSF及びGALVR-のみ挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μl(3群);
GALVR-、マウスGM-CSF、及び抗マウスCTLA-4抗体挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)(3群);
マウスGM-CSF、GALVR-のみ挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)(3群);
GALVR-、マウスGM-CSF、及び抗マウスCTLA-4抗体挿入HSV105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlを50μlと腹腔内抗マウスPD1(10mg/kgを3日毎)(3群)
【0131】
その後、腫瘍成長に対する効果を最長1ヶ月観察する。注入、未注入腫瘍のいずれにおいても抗ヒトCTLA-4を発現するウイルスによる優れた腫瘍制御及び腫瘍縮小が見られ、抗PD1での併用治療でその効果はさらに高められ、この効果は他の群と比較して、用量-反応曲線が改善されていることなどから観察される。
【0132】
[実施例7]
腫瘍溶解性ウイルス由来のGALV、GM-CSF、抗CTLA4及び免疫共刺激経路活性化分子の組み合わせ発現の効果
【0133】
上述の実施例3の実験を繰り返すが、マウスには、GALV、mGM-CSF及び抗CTLA4に加え免疫共刺激経路リガンドをさらに発現するウイルスを投与する。
【0134】
より具体的には、マウス群には以下を投与する:
(1)溶媒;
(2)腹腔内抗マウスPD1;
(3)実施例2のmGM-CSF、GALVR-、及び抗-CTLA4を挿入したHSV;
(4)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスCD40Lを挿入したHSV;
(5)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウス4-1BBLを挿入したHSV;
(6)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスGITRLを挿入したHSV;
(7)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスOX40Lを挿入したHSV;
(8)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスICOSLを挿入したHSV;
(9)実施例2のmGM-CSF、GALVR-、及び抗-CTLA4を挿入したHSVと腹腔内抗PD1;
(10)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスCD40Lを挿入したHSVと腹腔内抗PD1;
(11)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウス4-1BBLを挿入したHSVと腹腔内抗PD1;
(12)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスGITRLを挿入したHSVと腹腔内抗PD1;
(13)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスOX40Lを挿入したHSVと腹腔内抗PD1;又は、
(14)mGM-CSF、GALVR-、抗-CTLA4及びマウスICOSLを挿入したHSVと腹腔内抗PD1
【0135】
優れた腫瘍制御は免疫共刺激リガンドを発現するウイルスで見られる。
【0136】
寄託情報
以下のHSV1株は、Replimune Limitedによって2016年12月19日に英国ソールズベリーのポートンダウンSP4 0JGにあるECACC, Culture Collections, Public Health Englandに寄託され、示した受託番号が割り当てられた。
RH004A-受託番号16121902
RH015A-受託番号16121903
RH018A-受託番号16121904
RH021A-受託番号16121905
RH023A-受託番号16121906
RH031A-受託番号16121907
RH040B-受託番号16121908
RH047A-受託番号16121909
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
【配列表】
0007520511000001.app