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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/463 20210101AFI20240716BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20240716BHJP
【FI】
H01M50/463
H01M50/409
H01M50/572
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019569196
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003253
(87)【国際公開番号】W WO2019151354
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2018014777
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014778
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014779
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014780
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014781
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014782
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014783
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014932
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014933
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014935
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014936
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014937
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018014938
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】上林 広和
(72)【発明者】
【氏名】山尾 翔平
(72)【発明者】
【氏名】青山 拓哉
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】渡辺 努
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-164805(JP,A)
【文献】特開2013-26214(JP,A)
【文献】特開2013-93314(JP,A)
【文献】特開平4-249140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40-50/586
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、前記電極体を収容する容器と、前記電極体及び前記容器の間に配置されるサイドスペーサとを備える蓄電素子であって、
前記サイドスペーサは、前記電極体の端部に対向して配置される背面部と、前記電極体の側面に沿った方向に延設された側面部と、前記背面部に対して前記側面部を回動可能に接続する接続部と、を有し、
前記サイドスペーサは、樹脂材料により形成されており、
前記背面部及び前記側面部のそれぞれは、前記樹脂材料の流入痕を有し、
前記接続部は、前記側面部と前記背面部との間の薄肉部である
蓄電素子。
【請求項2】
前記容器は、第一壁部と、前記第一壁部に隣接する第二壁部と、を有し、
前記背面部は、前記第一壁部に対向して配置され、前記側面部は、前記第二壁部に対向して配置され、
前記接続部は、前記第一壁部の端部または前記第二壁部の端部に対向して配置される
請求項1記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記サイドスペーサは、前記電極体の側に向けて突出する凸部を有する
請求項1または2記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記電極体は、極板及びセパレータが巻回されることで形成されており、
前記背面部は、前記電極体の巻回軸方向の端部に対向して配置されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記容器は、開口が形成された容器本体と、前記開口を塞ぐ蓋体とを有し、
前記背面部の前記蓋体側の端部には、前記蓋体に向けて突出する突出部が形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
電極体と、前記電極体を収容する容器と、前記電極体及び前記容器の間に配置されるサイドスペーサとを備える蓄電素子であって、
前記サイドスペーサは、前記電極体の端部に対向して配置される背面部と、前記電極体の側面に沿った方向に延設された側面部と、前記背面部に対して前記側面部を回動可能に接続する接続部と、を有し、
前記容器は、第一壁部と、前記第一壁部に隣接する第二壁部と、を有し、
前記背面部は、前記第一壁部に対向して配置され、前記側面部は、前記第二壁部に対向して配置され、
前記接続部は、前記第二壁部に対向して配置され
前記接続部は、前記側面部と前記背面部との間の薄肉部である
蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体を収容する容器と、電極体及び容器の間に配置されるサイドスペーサとを備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極体を収容する容器と、電極体及び容器の間に配置されるサイドスペーサとを備える蓄電素子が知られている。例えば、特許文献1には、金属製の外装缶に収納された捲回電極群と、捲回電極群の正極集電タブを含む一端部に嵌合される正極絶縁カバーと、捲回電極群の負極集電タブを含む他端部に嵌合される負極絶縁カバーとを具備する電池が開示されている。この電池において、正極絶縁カバーは、対向する第1、第2の側壁を有するU字部材と、背面部材と、正極集電タブとそれに接続された正極リードの延出部とを挟持するための挟持部を有している。特許文献1では、上記構成により、リード、電極群及び外装缶が接触することを防止した安全性の高い電池が実現される旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-92507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のサイドスペーサでは、サイドスペーサの電極体への取り付けの困難性が高まる場合がある。
【0005】
本発明は、電極体及び容器の間に配置されるサイドスペーサを備える蓄電素子であって、効率よく製造できる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体と、前記電極体を収容する容器と、前記電極体及び前記容器の間に配置されるサイドスペーサとを備える蓄電素子であって、前記サイドスペーサは、前記電極体の端部に対向して配置される背面部と、前記電極体の側面に沿った方向に延設された側面部と、前記背面部に対して前記側面部を回動可能に接続する接続部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極体及び容器の間に配置されるサイドスペーサを備える蓄電素子であって、効率よく製造できる蓄電素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電素子の容器内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る蓄電素子を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
図4図4は、実施の形態に係るスペーサを、2つの側面部を広げた状態で示す斜視図である。
図5図5は、実施の形態に係るスペーサを、2つの側面部を閉じた状態で示す斜視図である。
図6A図6Aは、実施の形態に係るスペーサの電極体への取り付け手順を説明するための第1の図である。
図6B図6Bは、実施の形態に係るスペーサの電極体への取り付け手順を説明するための第2の図である。
図6C図6Cは、実施の形態に係るスペーサの電極体への取り付け手順を説明するための第3の図である。
図7図7は、実施の形態に係るスペーサの係合部及びその周辺を示す斜視図である。
図8図8は、実施の形態に係る係合部と下部ガスケットとの構造上の関係を示す斜視図である。
図9図9は、実施の形態に係る係合部及び貫通孔の断面図である。
図10図10は、実施の形態に係るスペーサの突出部と蓋体との構造上の関係を示す斜視図である。
図11図11は、実施の形態に係るスペーサが有するカバー部の配置範囲を示す側面図である。
図12図12は、実施の形態に係るスペーサが有するカバー部の配置範囲を示す一部切り欠き斜視断面図である。
図13図13は、実施の形態の変形例1に係る蓄電素子の一部の構成要素の分解斜視図である。
図14A図14Aは、実施の形態の変形例2に係るスペーサの斜視図である。
図14B図14Bは、実施の形態の変形例2に係るスペーサの側面凸部の位置を示す側面図である。
図15図15は、実施の形態の変形例3に係るスペーサの斜視図である。
図16図16は、実施の形態の変形例4に係るスペーサを2つの側面部を広げた状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明者らは、上記特許文献1におけるサイドスペーサに関し、以下の問題が生じることを見出した。上記特許文献1における正極絶縁カバー及び負極絶縁カバーのそれぞれは、背面部材と、背面部材に固定された、第1、第2の側壁を有するU字部材とを有している。このような、電極体の端部を挟む一対の側面部を有するサイドスペーサは、一対の側面部の間に電極体の端部を差しこむようにして電極体に対して取り付けられる。この場合、サイドスペーサの側面部が電極体の端部または側面を擦ることで、極板の折れ曲がりまたは破損等の問題が生じる可能性がある。従って、このような問題を生じさせないために、電極体へのサイドスペーサの取り付け時におけるサイドスペーサの姿勢等を工夫しながら、慎重に取り付け作業を行う必要がある。例えば巻回型の電極体は、スプリングバックが生じることで厚みが増す場合があり、この場合は特にサイドスペーサの電極体への取り付けの困難性が高まる。
【0010】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体と、前記電極体を収容する容器と、前記電極体及び前記容器の間に配置されるサイドスペーサとを備える蓄電素子であって、前記サイドスペーサは、前記電極体の端部に対向して配置される背面部と、前記電極体の側面に沿った方向に延設された側面部と、前記背面部に対して前記側面部を回動可能に接続する接続部と、を有する。
【0011】
この構成によれば、サイドスペーサが背面部と側面部とを有する構成において、側面部が背面部に対して回動可能に接続されている。これにより、サイドスペーサの電極体への取り付け時において、側面部を電極体に向けて回動させることで側面部を電極体に当接させることができる。すなわち、少なくとも2つの面で、電極体と容器との絶縁、及び、電極体の移動の抑制を行うことができるサイドスペーサの、電極体の端部への取り付け作業が容易化される。このように、本態様に係る蓄電素子は、サイドスペーサを備える蓄電素子であって、効率よく製造できる蓄電素子である。
【0012】
前記容器は、第一壁部と、前記第一壁部に隣接する第二壁部と、を有し、前記背面部は、前記第一壁部に対向して配置され、前記側面部は、前記第二壁部に対向して配置され、前記接続部は、前記第一壁部の端部または前記第二壁部の端部に対向して配置されてもよい。
【0013】
この構成によれば、例えば、背面部と側面部とが突き合わされる角部分に接続部が位置するため、サイドスペーサで電極体の端部を包みやすい。
【0014】
前記サイドスペーサは、前記電極体の側に向けて突出する凸部を有してもよい。
【0015】
本態様に係るサイドスペーサは、側面部を背面部に対して開いた状態で形成できるため、複雑な形状の凸部を形成することも可能である。これにより、サイドスペーサの位置の安定化等の所定の目的に適した凸部をサイドスペーサが有することができる。つまり、電極体の移動の抑制等の機能に優れたサイドスペーサを比較的に容易に作製できる。
【0016】
前記サイドスペーサは、樹脂材料により形成されており、前記背面部及び前記側面部の少なくとも一方は、前記樹脂材料の流入痕を有してもよい。
【0017】
この構成によれば、背面部及び側面部の少なくとも一方は、他方とは別の入り口(ゲート)から金型に流入された樹脂材料で形成される。従って、金型における背面部用の空間と側面部用の空間との間における樹脂材料の移動が不要または少量でよいため、接続部用の空間(金型における隙間)を狭くできる。これにより、背面部を回動可能に支持する接続部を薄く形成することが容易である。つまり、サイドスペーサの電極体への取り付けが容易な、または、電極体の移動の抑制等の機能に優れたサイドスペーサを、比較的に容易に作製できる。
【0018】
前記電極体は、極板及びセパレータが巻回されることで形成されており、前記背面部は、前記電極体の巻回軸方向の端部に対向して配置されてもよい。
【0019】
この構成によれば、極板の端縁及びセパレータの端縁が積層された部分であって、比較的に弱い部分である電極体の端部をサイドスペーサで保護できる。サイドスペーサの電極体の端部への取り付け時に、セパレータまたは極板の端縁を、側面部がめくりあげるような事態を生じさせずに取り付けることができる。
【0020】
本発明は、このような蓄電素子として実現できるだけでなく、当該蓄電素子が備えるスペーサとしても実現できる。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明する。以下で説明する実施の形態及び変形例は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0022】
以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極及び負極、以下同様)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、一対の上部ガスケットの並び方向、一対の下部ガスケットの並び方向、一対のスペーサの並び方向、電極体の両端部(一対の活物質層非形成部)の並び方向、電極体の巻回軸方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向をY軸方向と定義する。蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、容器の短側面の長手方向、または、集電体の脚部(電極体接続部)の延設方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
【0023】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の全般的な説明]
まず、図1図3を用いて、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の容器100内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10から容器本体110、スペーサ800及び絶縁シート600を分離した状態での構成を示す斜視図であり、電極体200に集電体300を接合した後の状態を示している。図3は、実施の形態に係る蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。具体的には、図3は、図2に示した容器本体110、スペーサ800及び絶縁シート600以外の構成要素を分解して示す斜視図であり、電極体200に集電体300を接合する前の状態を示している。
【0024】
蓄電素子10は、電気を充電し、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)もしくはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車用電源、電子機器用電源、または、電力貯蔵用電源などに使用される。蓄電素子10は、ガソリン車及びディーゼル車等の車両に、エンジンの始動用バッテリーとして搭載される場合もある。蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、円柱形状、長円柱形状または直方体以外の多角柱形状等であってもよい。蓄電素子10は、ラミネート型の蓄電素子であってもよい。
【0025】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極及び負極の電極端子130と、正極及び負極の上部ガスケット140とを備えている。図2及び図3に示すように、容器100の内方には、正極及び負極の下部ガスケットと、電極体200と、正極及び負極の集電体300と、正極及び負極のスペーサ800と、絶縁シート600とが収容されている。容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択できる。
【0026】
容器100は、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の開口を閉塞する蓋体120とを有する直方体形状(角形)の容器である。容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、X軸方向両側の側面に2つの第一壁部111を有し、Y軸方向両側の側面に2つの第二壁部112を有し、Z軸マイナス方向側に第三壁部113を有している。具体的には、第一壁部111は、容器100の短側面を形成する矩形状かつ板状の短側面部である。言い換えれば、第一壁部111は、第二壁部112及び第三壁部113に隣接し、第二壁部112よりも表面積(外面の面積)が小さい壁部である。第二壁部112は、容器100の長側面を形成する矩形状かつ板状の長側面部である。言い換えれば、第二壁部112は、第一壁部111及び第三壁部113に隣接し、第一壁部111よりも表面積(外面の面積)が大きい壁部である。第三壁部113は、容器100の底面を形成する矩形状かつ板状の底壁部である。
【0027】
蓋体120は、容器100の蓋部を構成する矩形状の板状部材であり、容器本体110のZ軸プラス方向側に配置されている。つまり、蓋体120は、第三壁部113に対向し、かつ、第一壁部111及び第二壁部112に隣接する壁部である。本実施の形態では、蓋体120には、正極側及び負極側の電極端子130が配置されており、さらに、容器100内方の圧力が上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁121、及び、容器100内方に電解液を注液するための注液部122等も設けられている。
【0028】
このような構成により、容器100は、スペーサ800が取り付けられた状態の電極体200を容器本体110の内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等によって接合されることにより、内部が密封される構造となっている。容器本体110及び蓋体120の材質は特に限定されず、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属とすることができる。容器本体110及び蓋体120の材質として樹脂を用いることもできる。
【0029】
電極体200は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成された極板である。負極板は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成された極板である。上記集電箔として、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金など、適宜公知の材料を用いることもできる。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシート、または、不織布を用いることができる。
【0030】
そして、電極体200は、正極板と負極板との間にセパレータが配置され巻回されて形成されている。具体的には、電極体200は、正極板と負極板とが、セパレータを介して、巻回軸W(本実施の形態ではX軸方向に平行な仮想軸)の方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極板及び負極板は、それぞれのずらされた方向の端部に、活物質が塗工されず(活物質層が形成されず)基材層が露出した部分(活物質層非形成部)を有している。
【0031】
つまり、電極体200は、活物質層が形成された本体部である電極体本体部210と、電極体本体部210からX軸プラス方向またはX軸マイナス方向に突出する電極体端部220とを有している。これら2つの電極体端部220のうちの一方の電極体端部220に、正極板の活物質層非形成部が積層されて束ねられた正極集束部が設けられている。他方の電極体端部220に、負極板の活物質層非形成部が積層されて束ねられた負極集束部が設けられる。本実施の形態では、電極体200の断面形状として長円形状を図示しているが、円形状または楕円形状等でもよい。
【0032】
電極体200は、図3に示すように、Y軸方向の幅が狭い扁平状に形成されており、極板(正極板及び負極板)の主たる積層方向はY軸方向である。従って、本実施の形態において、電極体200における極板の積層方向、と言う場合、Y軸方向のことを意味する。
【0033】
電極端子130は、集電体300を介して、電極体200の正極板及び負極板に電気的に接続される端子(正極端子及び負極端子)である。つまり、電極端子130は、電極体200に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、電極体200に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子130は、電極体200の上方に配置された蓋体120に取り付けられている。具体的には、図3に示すように、電極端子130は、軸部131が、上部ガスケット140の貫通孔140aと、蓋体120の貫通孔120aと、下部ガスケット150の貫通孔150aと、集電体300の貫通孔310aとに挿入されて、かしめられることにより、集電体300とともに蓋体120に固定される。正極側の電極端子130は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されており、負極側の電極端子130は、銅または銅合金などで形成されている。
【0034】
集電体300は、電極体200のX軸方向両側に配置され、電極体端部220に接続される部材(正極集電体及び負極集電体)である。具体的には集電体300は、絶縁部材の一例である下部ガスケット150とともに容器100に固定された端部である固定端部310と、固定端部310から延設された一対の脚部320とを有する。正極側の集電体300の一対の脚部320は、正極側の電極体端部220に接合され、負極側の集電体300の一対の脚部320は、負極側の電極体端部220に接合される。接合の手法としては、超音波溶接またはかしめ接合等が採用される。この構成により、電極体200が、2つの集電体300によって蓋体120から吊り下げられた状態で保持(支持)され、振動や衝撃などによる揺れが抑制される。集電体300の材質は限定されない。例えば、正極側の集電体300は、電極体200の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属部材で形成されている。負極側の集電体300は、電極体200の負極基材層と同様、銅または銅合金などの金属部材で形成されている。
【0035】
スペーサ800は、電極体200と容器100との間に配置されるスペーサである。本実施の形態では、スペーサ800は、電極体200及び集電体300の側方(X軸プラス方向またはX軸マイナス方向)に配置され、Z軸方向に延設されて形成されたサイドスペーサである。
【0036】
さらに具体的には、スペーサ800は、電極体200及び集電体300と、容器本体110の第一壁部111及び第二壁部112の端部との間に配置され、かつ、第一壁部111及び第二壁部112の端部に沿って延びるように配置された、上面視(Z軸方向から見て)コ字(U字)形状のスペーサである。つまり、スペーサ800は、電極体端部220及び集電体300をY軸方向両端から挟み込むように配置されている。
【0037】
ここで、スペーサ800は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ・エーテル・サルフォン(PES)、セラミック、及びそれらの複合材料などの絶縁性の材料で形成されている。つまり、スペーサ800は、電極体200及び集電体300と容器100とを絶縁する。スペーサ800は、電極体200及び集電体300と容器100との間のスペースを埋めることにより、電極体200及び集電体300が容器100に対して振動しないように支持する。スペーサ800の構成についての詳細な説明は、後述する。
【0038】
上部ガスケット140は、容器100の蓋体120と電極端子130との間に配置され、蓋体120と電極端子130との間を絶縁し、かつ封止する部材(正極上部ガスケット及び負極上部ガスケット)である。具体的には、上部ガスケット140は、矩形状の略板状部材の中央部分に、電極端子130の軸部131が挿入される貫通孔140aが形成された形状を有している。貫通孔140aに軸部131が挿入されてかしめられることにより、上部ガスケット140が蓋体120に固定される。上部ガスケット140は、PP、PE、PPS、PET、PEEK、PFA、PTFE、PBT、PES等の樹脂等によって形成されている。
【0039】
下部ガスケット150は、容器100の蓋体120と集電体300との間に配置され、蓋体120と集電体300との間を絶縁する部材(正極下部ガスケット及び負極下部ガスケット)である。具体的には、下部ガスケット150は、矩形状の略板状部材の略中央部分に、電極端子130の軸部131が挿入される貫通孔150aが形成された形状を有している。貫通孔150aに軸部131が挿入されてかしめられることにより、下部ガスケット150が蓋体120に固定される。下部ガスケット150は、PP、PE、PPS、PET、PEEK、PFA、PTFE、PBT、PES等の樹脂等によって形成されている。
【0040】
[2.スペーサの構成]
次に、スペーサ800の構成について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、実施の形態に係るスペーサ800を、2つの側面部820を広げた状態で示す斜視図である。図5は、実施の形態に係るスペーサ800を、2つの側面部820を閉じた状態で示す斜視図である。具体的には、図5は、スペーサ800を電極体200に取り付けた場合のスペーサ800の形状を示しており、図4は、図5のスペーサ800において、背面部810の両側の側面部820を背面部810に対して90°外側に回動させた状態を示している。Y軸マイナス方向側の接続部830については、側面部820における配置位置が直線の点線で表されている。図4及び図5では、図2における2つのスペーサ800のうちのX軸プラス方向側のスペーサ800を示している。以下では、主としてこのスペーサ800の構成等を説明する。X軸マイナス方向側のスペーサ800は、X軸プラス方向側のスペーサ800と同様の構成を有している。
【0041】
これらの図に示すように、スペーサ800は、背面部810と、2つの側面部820と、2つの接続部830と、底面部840とを有している。ここで、図2図4及び図5に示すように、背面部810は、スペーサ800の背面部分を構成する部位であり、電極体端部220に対向して配置される。つまり、本実施の形態では、背面部810は、電極体200の巻回軸Wの方向の端部に対向して配置される。背面部810は、容器100の短側面を形成する第一壁部111に対向して配置される。側面部820は、スペーサ800の側面部分を構成する部位であり、電極体200の側面に沿った方向に延設されている。側面部820は、容器100の長側面を形成する第二壁部112に対向して配置される。接続部830は、側面部820を背面部810に対して回動可能に接続するヒンジ部である。底面部840は、スペーサ800の底面部分を構成する部位であり、背面部810に接続され、側面部820に隣接して配置されている。底面部840は、容器100の底壁部である第三壁部113と対向する位置に配置される。
【0042】
[2-1.背面部の構成]
背面部810は、YZ平面に平行かつZ軸方向に延びる略平板状の部位であり、電極体200の側に向けて突出する凸部を有している。具体的には、背面部810は、巻回型の電極体200における最内周に向けて突出する背面凸部812を有している。
【0043】
背面部810の、蓋体120(図3参照)側の端部には、蓋体120に向けて(Z軸プラス方向側に)突出する突出部811が形成されている。本実施の形態では、突出部811は、電極体200側(X軸マイナス方向側)にも突出するように形成されている。突出部811の詳細については図10を用いて後述する。
【0044】
[2-2.側面部の構成]
側面部820は、接続部830を介して背面部810と接続された、Z軸方向に延びる略平板状の部位である。側面部820は、図4及び図5に示すように、背面部810に対して回動可能である。本実施の形態では、側面部820は、背面部810のY軸方向の両端のそれぞれに配置されているが、これら2つの側面部820の構成は共通するため、以下では、1つの側面部820について説明する。
【0045】
本実施の形態において、側面部820は、電極体200の側に向けて突出する凸部を有している。具体的には、側面部820は、側面部820の表面から突出して形成された係合部821aを有している。係合部821aは、容器100内に配置された他の部材と係合する。本実施の形態では、係合部821aは、側面部820が閉じた状態(図5参照)において、他の部材である下部ガスケット150と係合する。係合部821aの側方には開口部825が形成されている。開口部825は、係合部821aと下部ガスケット150との係合状態の確認の際に用いられる孔である。係合部821aの詳細については、図7図9を用いて後述する。
【0046】
本実施の形態では、側面部820は、集電体300の固定端部310の側面を覆うカバー部821を有しており、上記の係合部821aは、カバー部821に設けられている。カバー部821は、背面部810から延設されている、と表現することもできる。カバー部821と集電体300の固定端部310との位置関係については、図11を用いて後述する。
【0047】
図5に示すように、側面部820が閉じられた状態では、側面部820の、底面部840側の端部である側面端部822は、底面部840に設けられた係止部841に係止される。側面部820と背面部810との間における底面部840側の端部には、底面部840から離れる方向(Z軸プラス方向)に延設された切り欠き832が形成されている。つまり、側面端部822は、底面部840に対して移動可能であり、かつ、背面部810からも拘束されないよう形成されている。
【0048】
[2-3.接続部の構成]
接続部830は、背面部810と側面部820との間においてZ軸方向に延設された部位であり、背面部810と側面部820とを回動可能に接続する部位である。本実施の形態では、接続部830は、他よりも肉厚が薄く形成されていることにより、側面部820を背面部810に対して回動可能に接続している。接続部830は、薄肉以外の構造で側面部820を背面部810に対して回動可能に接続してもよい。例えば、スペーサ800において、背面部810と側面部820との間に、Z軸方向に並ぶ複数の孔を形成することで、接続部830が実現されてもよい。
【0049】
本実施の形態では、スペーサ800において、接続部830は、第二壁部112に対向する位置に配置されているが、接続部830は、第一壁部111に対向する位置に配置されていてもよい。つまり、第一壁部111と第二壁部112との境界またはその近傍に接続部830が配置されていることで、例えば開いた状態の側面部820を閉じることによる、電極体200の端部の包みやすさ等の利便性が生じる。なお、接続部830が第一壁部111に対向する位置に配置されているスペーサについては、図16を用いて後述する。
【0050】
[2-4.底面部の構成]
底面部840は、背面部810のZ軸マイナス方向側の端部に接続されて配置され、背面部810の当該端部からX軸マイナス方向に延びる矩形状かつ平板状の部位である。
【0051】
底面部840は、Y軸方向両側に、側面部820の端部である側面端部822を係止する係止部841を有している。係止部841は、本実施の形態では、底面部840から側面部に向けて立設された爪によって実現されている。つまり、底面部840のY軸方向の両端に設けられた爪(係止部841)のそれぞれに側面端部822が係止され、移動の自由度の高い側面端部822の位置が規制される。係止部841が側面端部822を係止する手法に特に限定はない。例えば、係止部841としての溝またはスリットに、側面端部822の先端が挿入されることで、側面端部822が係止部841によって係止されてもよい。
【0052】
ここで、底面部840は、背面部810と底面部840とのなす角が、90°よりも大きくなるように配置されている。この構成によれば、スペーサ800を電極体200に配置する際に、底面部840が電極体200に干渉するのを抑制することができる。これにより、電極体200の損傷を抑制することができる。特に、スペーサ800を樹脂で形成する場合、底面部840を形成する際に、樹脂が部分同士を引っ張ることで、背面部810と底面部840とのなす角が90°よりも小さくなってしまい、底面部840が電極体200に干渉しやすい形状になる場合が多かった。このため、背面部810と底面部840とのなす角を90°よりも大きく形成することよる効果は高い。
【0053】
スペーサ800の背面部810と底面部840とのなす角が大きすぎると、スペーサ800が電極体200の下端部をしっかりと覆うことができずに、電極体200と容器100との間の絶縁性が低下するおそれがある。底面部840が下方に突出すれば、省スペース化にも影響を及ぼす。このため、スペーサ800の背面部810と底面部840とのなす角を好ましくは100°以下、より好ましくは95°以下、さらに好ましくは93°以下とすることで、電極体200と容器100との間の絶縁性が低下するのを抑制し、または、省スペース化を図ることができる。
【0054】
[2-5.スペーサの作製手法]
上記構成を有するスペーサ800は、例えば、金型を用いた樹脂成形によって作製される。そのため、スペーサ800には、樹脂または樹脂を主な素材とする材料(樹脂材料)の入り口(ゲート)の痕である流入痕が形成されている。具体的には、図4に示すように、2つの側面部820のそれぞれに、樹脂材料が流入した入口(ゲート)の痕である流入痕826が形成されている。背面部810にも流入痕816が形成されている。つまり、2つの側面部820及び1つの背面部810のそれぞれに対応して配置されたゲートから金型に樹脂材料が流し込まれることで、スペーサ800が作製される。もちろん、このことは必須ではなく、例えば1つのゲートから流し込まれた樹脂によって、スペーサ800の全体が形成されてもよい。側面部820及び背面部810の一方のみが流入痕を有してもよい。側面部820及び背面部810のそれぞれが独自のゲートからの樹脂によって形成されることで、側面部820及び背面部810の形状を複雑にできること、及び、側面部820と背面部810との間の薄肉部である接続部830の形成が容易である等のメリットが生じる。
【0055】
本実施の形態では、底面部840と背面部810との間に薄肉部はないため、背面部810に形成された流入痕816の位置から流入された樹脂材料によって底面部840が形成される。ゲートの位置及び数は、スペーサ800の形状、大きさ、または、素材となる樹脂材料の種類等に応じて適宜決定してもよい。そのため、流入痕816及び826の位置及び数は、図4に示す位置及び数には限定されない。
【0056】
[3.スペーサの取り付け手順]
次に、以上のように構成されたスペーサ800の電極体200への取り付け手順について図6A図6Cを用いて説明する。図6Aは、スペーサ800の電極体200への取り付け手順を説明するための第1の図であり、図6Bは、同取り付け手順を説明するための第2の図であり、図6Cは、同取り付け手順を説明するための第3の図である。
【0057】
電極体200の巻回軸方向の両端のそれぞれに取り付けられるスペーサ800は、いずれも同じ態様で電極体200に取り付けられるため、以下では1つのスペーサ800の取付手順について説明する。電極体200にスペーサ800を取り付ける時点では、電極体200の2つの端部(電極体端部220)のそれぞれには、電極端子130等とともに蓋体120に固定された集電体300が接合済みである。図6A図6Cでは図示が省略されているが、絶縁シート600(図2参照)が製造機械等によって保持されることで、電極体200に絶縁シート600が仮固定された状態で、スペーサ800が電極体200に取り付けられる。電極体200に対する絶縁シート600の仮固定には、例えば粘着テープが用いられてもよい。
【0058】
電極体200にスペーサ800を取り付ける場合、まず図6Aに示すように、側面部820を開いた状態で、背面凸部812が電極体端部220と対向する姿勢でスペーサ800を配置する。次に、図6Bに示すように、背面凸部812が、電極体200の最内周に挿入されるようにスペーサ800を電極体200側に移動させる。その後、側面部820を閉じる(電極体200側に回動させる)ことで、係合部821a(図4参照)が、蓋体120に固定された下部ガスケット150に係合し、かつ、側面端部822(図4参照)が、底面部840の係止部841に係止される。つまり、側面部820が閉じた状態に維持され、この状態で、スペーサ800が取り付けられた電極体200は、容器本体110(図2参照)に挿入される。側面部820が閉じた状態では、絶縁シート600の、電極体端部220側の端縁は側面部820の内側に配置されるため、電極体200の容器本体110への挿入時に、絶縁シート600の端縁が容器本体110に引っ掛かるような事態は生じない。
【0059】
[4.係合部の詳細]
次に、上記のような手順で電極体200に取り付けられるスペーサ800の、係合部821aの詳細について図7図9を用いて説明する。図7は、実施の形態に係るスペーサ800の係合部821a及びその周辺を示す斜視図である。図8は、実施の形態に係る係合部821aと下部ガスケット150との構造上の関係を示す斜視図である。図9は、実施の形態に係る係合部821a及び開口部825の断面図である。図9では、図8におけるY軸プラス方向側の係合部821aを通過するYZ平面における係合部821a及び開口部825の断面が図示されている。
【0060】
これらの図に示すように、係合部821aは爪部821bを有している。爪部821bは、係合部821aの突出方向から見た場合において、係合部821aの側方に設けられた開口部825側に突出して形成されている。本実施の形態では、図7及び図8に示すように、スペーサ800における係合部821aの下の位置に開口部825が設けられており、係合部821aは下方に突出した爪部821bを有している。
【0061】
本実施の形態では、下部ガスケット150には、係合部821aと係合する係合凹部151が形成されており、係合凹部151は、爪部821bが挿入される爪挿入部151aを有している。これにより、係合部821aが係合凹部151と係合した場合、爪部821bが爪挿入部151aに引っ掛かり、その結果、係合部821aの係合凹部151の抜け出しが抑制される。
【0062】
係合部821aは、背面部810に対して回動可能な側面部820に設けられているため、下部ガスケット150の係合凹部151の正面から(Y軸方向の側方から)、係合部821aを係合凹部151に挿入できる。
【0063】
爪部821bは、係合部821aの突出方向から見た場合において、開口部825の配置領域内に収まる大きさである。つまり、断面でいうと、図9に示すように、爪部821bの突出長さLbは、開口部825の縦幅Laよりも小さい。従って、樹脂成形によってスペーサ800を作製する場合の金型における、開口部825を形成する突起部分を用いて爪部821bを形成できる。
【0064】
開口部825は、上述のように、係合部821aと下部ガスケット150との係合状態の確認の際に用いられる孔である。図6A図6Cに示す手順で、スペーサ800を電極体200に取り付けた後に、開口部825から見える下部ガスケット150の一部を撮像する。これにより得られた撮像データを解析することで、係合部821aが、下部ガスケット150の係合凹部151と正しく係合しているか否かを判定することが可能である。
【0065】
スペーサ800の係合部821aを下部ガスケット150に係合させる場合、スペーサ800の背面部810の上端に設けられた突出部811の、下部ガスケット150側(X軸マイナス方向側)に突出した部分が、下部ガスケット150の、背面側凹部153に係合する。これにより、例えばスペーサ800の横方向(Y軸方向)の位置規制がなされ、スペーサ800の位置の安定性を高めることができる。
【0066】
[5.背面部の突出部と蓋体との関係]
次に、スペーサ800の背面部810の上端に設けられた突出部811と、蓋体120との構造上の関係を、図10を用いて説明する。
【0067】
図10は、実施の形態に係るスペーサ800の突出部811と蓋体120との構造上の関係を示す斜視図である。図10に示すように、スペーサ800の背面部810の上端部、つまり、蓋体120側の端部には、蓋体120に向けて突出する突出部811が形成されている。突出部811の上端面が蓋体120に当接することで、スペーサ800の上方向への移動が規制される。この状態では、図10に示すように、スペーサ800の側面部820の上端と蓋体120との間には、突出部811の突出長さと略同一である距離Cの隙間が存在する。従って、スペーサ800を電極体200に取り付ける際に、側面部820を閉じるように回動させる場合(図6B及び図6C参照)、側面部820の上端を蓋体120に干渉させることなく、側面部820を閉じることができる。つまり、本実施の形態においてスペーサ800が有する一対の係合部821a(図9参照)のそれぞれを、容易に下部ガスケット150に係合させることができる。
【0068】
スペーサ800を電極体200に取り付けた状態(図6C参照)では、スペーサ800の突出部811が蓋体120に当接している。従って、電極体200とともにスペーサ800を容器本体110に挿入する際に、蓋体120を容器本体110側に押すことで、スペーサ800の電極体200に対するズレを抑制しつつ、電極体200及びスペーサ800を確実に容器本体110の内部に押し込むことができる。スペーサ800の上端は、突出部811の上端よりも低い位置(Z軸マイナス方向の位置)に存在するため、蓋体120で、容器本体110の開口を塞ぐ際に、スペーサ800の上端が、容器本体110と蓋体120との間に噛み込まれるような事態の発生が抑制される。そのため、例えば、容器本体110と蓋体120との溶接を精度よく行うことができる。蓋体120とスペーサ800との接触面積が比較的に小さいため、容器本体110と蓋体120との溶接の際の熱が蓋体120からスペーサに伝導し難い。従って、例えば、溶接時の熱によりスペーサ800が損傷する可能性が低減される。
【0069】
[6.カバー部と集電体との位置関係]
次に、実施の形態に係るスペーサ800が有するカバー部821と集電体300の固定端部310との位置関係を、図11及び図12を用いて説明する。
【0070】
図11は、実施の形態に係るスペーサ800が有するカバー部821の配置範囲を示す側面図である。図11では、カバー部821の配置範囲を明確に示すために、スペーサ800を透視し、かつ、スペーサ800の外形を点線で表している。図12は、実施の形態に係るスペーサ800が有するカバー部821の配置範囲を示す一部切り欠き斜視断面図である。図12は、蓄電素子10を、図10に示すXII-XII線を通るYZ平面で切断して示している。図11及び図12ともに容器本体110の図示は省略されている。
【0071】
図10及び図11に示すように、スペーサ800が電極体200に取り付けられた状態において、スペーサ800の側面部820の一部であるカバー部821は、集電体300の固定端部310のY軸方向の側面310bを覆っている。つまり、固定端部310の上面(蓋体120側の面)は、下部ガスケット150で覆われ、かつ、固定端部310の、電極体200における極板の積層方向の側面310bは、下部ガスケット150とは別体のカバー部821で覆われている。すなわち、カバー部821によって、側面310bと容器本体110のとの接触(つまり導通)が防止される。従って、下部ガスケット150は、固定端部310の側面310bを覆う壁を有する必要がない。そのため、図11に示すように、固定端部310の横幅(Y軸方向の幅)を、下部ガスケット150の横幅と略同一にできる。言い換えると、固定端部310の平面視のサイズを比較的に大きくできる。これにより、電極端子130の先端のかしめ作業等の接合作業が行いやすくなる。
【0072】
仮に、下部ガスケット150が、固定端部310の側面310bを覆う壁を有するとした場合は、当該壁とスペーサ800のカバー部821とにより、固定端部310と容器本体110との間における絶縁の確実性が向上される。
【0073】
本実施の形態では、集電体300は、側面視(Y軸方向から見た場合)において、固定端部310と脚部320との間を斜め方向に接続する補強リブ部330を有している。補強リブ部330は、脚部320の根本部分を補強する部位であり、脚部320のX軸方向の変形(Z軸まわりの回動)を抑制する機能を有する。本実施の形態に係るカバー部821は、図11に示すように、この補強リブ部330を覆うことができるため、例えば下部ガスケット150に、補強リブ部330を覆うための比較的に高い壁を形成する必要はない。
【0074】
[7.効果の説明]
以上のように、本実施の形態に係る蓄電素子10は、電極体200と、電極体200を収容する容器100と、電極体200及び容器100の間に配置される、サイドスペーサであるスペーサ800とを備える。スペーサ800は、電極体200の端部(本実施の形態では電極体端部220)に対向して配置される背面部810と、電極体200の側面に沿った方向に延設された側面部820と、背面部810に対して側面部820を回動可能に接続する接続部830と、を有する。
【0075】
この構成によれば、サイドスペーサであるスペーサ800が背面部810と側面部820とを有する構成において、側面部820が背面部810に対して回動可能に接続されている。これにより、例えば、スペーサ800の電極体200への取り付け時において、側面部820を電極体200に向けて回動させることで、側面部820を電極体200に当接させることができる。そのため、側面部820が電極体200の極板に干渉することによる、極板の折れ曲がりまたは破損等が生じ難い。ここで、電極体端部220に接合される脚部320の長さが短い場合、電極体端部220において外側に広がりやすい部分が比較的に多くなる。このような場合であっても、本実施の形態に係るスペーサによれば、側面部820は、電極体端部220に向けて回動することで電極体端部220に側方から当接する。そのため、仮に集電体300の脚部320が、図2に示す長さよりも短くなった場合であっても、極板の折れ曲がりまたは破損等の問題は生じ難い。すなわち、本実施の形態に係る蓄電素子10では、少なくとも2つの面で、電極体200と容器100との絶縁、及び、電極体200の移動の抑制を行うことができるスペーサ800の、電極体200の端部への取り付け作業が容易化される。
【0076】
仮に、スペーサ800の電極体200への取り付け時において、電極体200が当初よりも膨らんでいた場合であっても、側面部820が回動可能であるため、無理なく電極体200の端部にスペーサ800を取り付けることができる。さらに、電極体200を容器本体110に挿入する際に、挿入方向に沿う面を形成する背面部810及び側面部820によって電極体200がガイドされるため、挿入がスムースに行える。
【0077】
このように、本態様に係る蓄電素子10は、サイドスペーサ(スペーサ800)を備える蓄電素子10であって、効率よく製造できる蓄電素子10である。
【0078】
本実施の形態に係る蓄電素子10において、容器100は、第一壁部111と、第一壁部111に隣接する第二壁部112とを有する。背面部810は、第一壁部111に対向して配置され、側面部820は、第二壁部に対向して配置され、接続部830は、第一壁部111の端部または第二壁部112の端部に対向して配置される。つまり、接続部830は、第一壁部111と第二壁部112との境界またはその近傍に配置されている。
【0079】
この構成によれば、例えば、背面部810と側面部820とが突き合わされる角部分に接続部830が位置するため、スペーサ800で電極体200の端部を包みやすい。
【0080】
より具体的には、本実施の形態では、接続部830は、第二壁部112に対向して配置されている。スペーサ800において、背面部810と側面部820との間の角部は応力がかかる部分であるため、当該角部の位置に接続部830を配置すると、接続部830が損傷しやすくなる。このため、接続部830を、第二壁部112に対向して配置する。これにより、接続部830が、当該角部ではなく当該角部よりもスペーサ800の側面820側に配置されることになるため、接続部830の損傷を抑制することができる。さらに、当該角部が背面部810側に配置されるため、背面部810の強度を強くすることができる。これらにより、スペーサ800の損傷を抑制することができる。当該角部ではなく平面部分に接続部830を形成すればよいため、接続部830を容易に形成することができ、スペーサ800を容易に製造することができる。
【0081】
本実施の形態に係る蓄電素子10において、スペーサ800は、電極体200の側に向けて突出する凸部を有する。本実施の形態では、係合部821a及び背面凸部812等が凸部として例示される。
【0082】
ここで、本実施の形態に係るスペーサ800は、側面部820を背面部810に対して開いた状態で形成できるため、複雑な形状の凸部を形成することも可能である。これにより、例えば、スペーサ800の位置の安定化等の所定の目的に適した凸部(係合部821aなど)をスペーサ800が有することができる。つまり、電極体200の移動の抑制等の機能に優れたスペーサ800を比較的に容易に作製できる。
【0083】
本実施の形態に係る蓄電素子10において、スペーサ800は、樹脂材料により形成されており、背面部810は、樹脂材料の流入痕816を有する。側面部820は、樹脂材料の流入痕826を有する。
【0084】
この構成によれば、背面部810及び側面部820は、それぞれ別のゲートから金型に流入された樹脂材料で形成される。そのため、背面部810及び側面部820のそれぞれを複雑な形状に形成できる。金型における背面部810用の空間と、側面部820用の空間との間における樹脂材料の移動が不要または少量でよいため、例えば、接続部830用の空間(金型における隙間)を狭くできる。これにより、側面部820を回動可能に支持する接続部830を薄く形成することが容易である。つまり、スペーサ800の電極体200への取り付けが容易な、または、電極体200の移動の抑制等の機能に優れたスペーサ800を、比較的に容易に作製できる。
【0085】
本実施の形態に係る蓄電素子10において、電極体200は、極板及びセパレータが巻回されることで形成されており、背面部810は、電極体200の巻回軸Wの方向の端部(つまり、電極体端部220)に対向して配置されている。
【0086】
この構成によれば、極板の端縁及びセパレータの端縁が積層された部分であって、比較的に弱い部分である電極体端部220をスペーサ800で保護できる。スペーサ800の電極体端部220への取り付け時に、セパレータまたは極板の端縁を、側面部820がめくりあげるような事態を生じさせずに取り付けることができる。
【0087】
ここで、巻回型の電極体200は、スプリングバックが生じることで厚みが増す場合ある。この場合、側面部が背面部に対して固定されているスペーサであれば、スペーサの電極体200への取り付けの困難性が生じ、その結果、スペーサまたは電極体200の損傷の可能性も生じる。この点に関し、本実施の形態に係るスペーサ800は、側面部820が背面部810に対して回動可能であるため、厚みを増した電極体200を側面部820で押さえながら、無理なく、スペーサ800を電極体200に取り付けることができる。
【0088】
[8.変形例1]
次に、実施の形態の変形例1について、図13を用いて説明する。図13は、実施の形態の変形例1に係る蓄電素子10aの一部の構成要素の分解斜視図である。具体的には、図13では、蓄電素子10aが備える構成要素のうちの、電極体400、集電体350、下部ガスケット160、及びスペーサ900が図示されている。つまり、蓄電素子10aが備える容器100、電極端子130、及び絶縁シート600等の図示は省略されている。スペーサ900は、側面部920が開いた状態で図示されている。
【0089】
図13に示すように、本変形例における集電体350は、電極体400と接続する脚部370を1つのみ有している点で、実施の形態における集電体300と異なっている。このため、電極体400は、この1つの脚部370に対応した形状の電極体端部420を有している。スペーサ900についても、1つのみの脚部370に対応した形状を有している。電極体端部420が、電極体400におけるY軸方向の中央部に寄せ集められて形成されているため、電極体端部420及び脚部370の接合部分のY軸方向の左右の隙間を埋めるように、スペーサ900は側面凸部924を有している。しかし、スペーサ900は、背面部910と、2つの側面部920と、2つの接続部930と、底面部940との部位に分かれて構成されており、この点については、実施の形態に係るスペーサ800と共通する。
【0090】
具体的には、スペーサ900は、電極体400の端部(本変形例では電極体端部420)に対向して配置される背面部910と、電極体400の側面に沿って延設された側面部920と、背面部910に対して側面部920を回動可能に接続する接続部930と、容器100の底壁部である第三壁部113に対向して配置される底面部940とを有している。背面部910は、容器100の第一壁部111に対向して配置され、側面部920は、第二壁部112に対向して配置される、とも表現できる。
【0091】
図13に示すように、スペーサ900は、他の部材と係合する係合部921aを有している。具体的には、下部ガスケット160は、一対の係合凹部161を有している。スペーサ900が有する一対の側面部920が閉じられた場合、一対の側面部920のそれぞれの係合部921aは、下部ガスケット160の係合凹部161と係合する。このとき、側面部920の、底面部940側の端部である側面端部922が、底面部940に設けられた爪である係止部941に係止される。さらに、この状態では、集電体350の固定端部360の、電極体400における極板の積層方向(Y軸方向)の端面は、側面部920が有するカバー部921によって覆われる。
【0092】
係合部921aの側方には開口部925が形成されており、係合部921aと下部ガスケット150との係合状態を、開口部925を介して確認可能である。
【0093】
側面部920と背面部910との間における底面部940側の端部には、底面部940から離れる方向(Z軸プラス方向)に延設された切り欠き932が形成されている。つまり、側面端部922は、底面部940に対して移動可能であり、かつ、背面部910からも拘束され難いように形成されている。スペーサ900は、実施の形態に係るスペーサ800と同様に、背面部910の蓋体120(図3参照)側の端部に、蓋体120に向けて突出する突出部を有していてもよい。
【0094】
以上のように、本変形例に係る蓄電素子10aによれば、実施の形態と同様の構成を有しており、その結果、同様の効果を奏することができる。
【0095】
[9.変形例2]
図14Aは、実施の形態の変形例2に係るスペーサ800aを2つの側面部820を広げた状態で示す斜視図である。図14Bは、実施の形態の変形例2に係るスペーサ800aの側面凸部814と電極体200との位置関係を示す模式図である。図14Bでは、容器100の図示は省略されている。図14Bでは、スペーサ800aの外形が点線で図示され、かつ、側面凸部814の配置領域にはハッチングが付されている。
【0096】
図14Aに示すように、本変形例に係るスペーサ800aは、実施の形態に係るスペーサ800と同じく、電極体200の端部(本変形例では電極体端部220)に対向して配置される背面部810と、電極体200の側面に沿った方向に延設された側面部820と、背面部810に対して側面部820を回動可能に接続する接続部830と、を有する。
【0097】
スペーサ800aはさらに、電極体200の側に向けて突出する凸部を有しており、この点でも実施の形態に係るスペーサ800と共通する。しかし、本変形例に係るスペーサ800aは、側面部820に、電極体200の側に向けて突出する側面凸部814を有しており、この点でスペーサ800とは異なる。
【0098】
側面凸部814は、図14Bに示すように、集電体300の脚部320よりも下方に配置される。これにより、側面凸部814は、電極体端部220の、脚部320に接合されていない部分を側方から押さえることができる。つまり、側面凸部814は、電極体200の、集電体300による移動の規制効果が効き難い箇所を押さえることができる。従って、スペーサ800aは、電極体200の移動をより確実に抑制することができる。
【0099】
巻回型の電極体200の、集電体300に接合されていない下部は、一対の脚部320により拘束されないため、スプリングバックによる膨らみが生じやすい。しかし、電極体端部220に、スペーサ800aが取り付けられることで、一対の側面部820それぞれに配置された側面凸部814によって、電極体端部220の下部が押さえられる。これにより、電極体200の下部の膨らみが抑制され、その結果、電極体200の容器本体110への挿入をスムースに行うことができる。平板状の側面部820に側面凸部814が配置されることで、側面部820のひずみが抑制され、これにより、スペーサ800aの形状の精度が向上される。このように、蓄電素子10が、本変変形例に係るスペーサ800aを備える場合であっても、蓄電素子10を効率よく製造できるという効果は奏される。
【0100】
[10.変形例3]
図15は、実施の形態の変形例3に係るスペーサ800bを2つの側面部820を広げた状態で示す斜視図である。図15に示すように、本変形例に係るスペーサ800bは、実施の形態に係るスペーサ800と同じく、電極体200の端部(本変形例では電極体端部220)に対向して配置される背面部810と、電極体200の側面に沿った方向に延設された側面部820と、背面部810に対して側面部820を回動可能に接続する接続部830と、を有する。つまり、基本構成において、本変形例に係るスペーサ800bと、実施の形態に係るスペーサ800とは共通する。しかし、スペーサ800bは、背面凸部812を有しておらず、かつ、本変形例に係る側面部820の内面は、実施の形態に係る側面部820(図4参照)とは異なり、フラットな形状である。この場合であっても、スペーサ800bは、実施の形態に係るスペーサ800と共通する基本構成を有しているため、蓄電素子10を効率よく製造できるという効果は奏される。
【0101】
[11.変形例4]
図16は、実施の形態の変形例4に係るスペーサ800cを2つの側面部820を広げた状態で示す斜視図である。図16に示すように、本変形例に係るスペーサ800cは、実施の形態に係るスペーサ800と同じく、電極体200の端部に対向して配置される背面部810と、電極体200の側面に沿った方向に延設された側面部820と、背面部810に対して側面部820を回動可能に接続する接続部830と、を有する。つまり、基本構成において、本変形例に係るスペーサ800cと、実施の形態に係るスペーサ800とは共通する。しかし、スペーサ800cでは、接続部830が、第一壁部111(図2参照)に対向する位置に配置されており、この点で実施の形態に係るスペーサ800とは異なる。
【0102】
本変形例に係るスペーサ800cは上記構成を有することで、スペーサ800cを電極体200に配置する際に、側面部820を背面部810に対して回動させて、側面部820を電極体200に対して容易に配置することができる。これにより、スペーサ800cの損傷を抑制することができる。スペーサ800cにおいて、背面部810と側面部820との間の角部は応力がかかる部分であるため、当該角部の位置に接続部830を配置すると、接続部830が損傷しやすくなる。このため、接続部830を、第一壁部111の端部に対向して配置する。これにより、接続部830が、当該角部ではなく当該角部よりもスペーサ800cの背面部810側に配置されることになるため、接続部830の損傷を抑制することができる。さらに、接続部830がスペーサ800cの背面部810側の端部に配置されるため、側面部820を背面部810に対して大きく広げてから電極体200に配置することができる。これにより、スペーサ800cを電極体200に対して容易に配置することができる。特に、背面部810の両側の側面部820を大きく広げてから電極体200を挟み込むことができるため、スペーサ800cを電極体200に対して容易に配置しつつ、電極体200を安定してしっかりと挟み込むことができる。これらにより、スペーサ800cの損傷を抑制することができる蓄電素子10を実現することができる。当該角部ではなく平面部分に接続部830を形成すればよいため、接続部830を容易に形成することができ、スペーサ800cを容易に製造することができる。
【0103】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0104】
実施の形態及びその変形例では、スペーサは、背面部が容器100の第一壁部111(短側面部)に対向して配置され、側面部が容器100の第二壁部112(長側面部)に対向して配置されるサイドスペーサであるとした。しかし、実施の形態または変形例に係るスペーサ(800、900)の構成は、背面部が電極体の端部に対向し、側面部が電極体の側面に沿った方向に延設されている各種のスペーサに適用可能である。つまり、スペーサは、背面部及び側面部が容器100のどの壁部に対向して配置されていてもよい。スペーサは、背面部が第二壁部112(長側面部)に対向して配置され、側面部が第一壁部111(短側面部)に対向して配置されていてもよい。スペーサは、背面部が容器100の第三壁部113(底壁部)に対向して配置され、側面部が第一壁部111(短側面部)または第二壁部112(長側面部)に対向して配置されてもよい。スペーサは、背面部が容器100の蓋体120に対向して配置され、側面部が第一壁部111(短側面部)または第二壁部112(長側面部)に対向して配置されてもよい。
【0105】
実施の形態及びその変形例では、スペーサは、2つの側面部を有しているとした。しかし、スペーサは、側面部を1つのみ有するとしてもよい。集電体が備える脚部の数は1または2である必要はなく、3以上であってもよい。2以上の脚部を有する集電体が、2以上の電極体に接続されてもよい。つまり、蓄電素子が備える電極体の数は2以上であってもよい。
【0106】
実施の形態では、スペーサが有する係合部が、下部ガスケットが有する係合凹部に挿入されることで、係合部が下部ガスケットと係合するとした。しかし、この係合関係は逆でもよい。つまり、下部ガスケットが、係合凸部を有し、スペーサが有する凹部または孔等である係合部に係合凸部が挿入されることで、係合部が下部ガスケットと係合してもよい。
【0107】
実施の形態及びその変形例では、電極体は、巻回軸Wが蓋体120に平行となるいわゆる縦巻きの巻回型電極体であるとした。しかし、電極体は、巻回軸が蓋体120に垂直となるいわゆる横巻きの巻回型電極体であってもよい。電極体の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層したスタック型や、極板及び/またはセパレータを蛇腹状に折り畳んだ形状(セパレータをつづら折りにして矩形の極板を挟む形態、極板とセパレータとを重ねた後につづら折りにする形態等)などであってもよい。これらの場合、例えば、電極体における、容器100の第一壁部111(短側面部)側の端部を、電極体端部と定義できる。つまり、これらの場合でも、スペーサは、背面部が容器100の第一壁部111(短側面部)に対向して配置され、側面部が容器100の第二壁部112(長側面部)に対向して配置される。上述の通り、スペーサは、背面部及び側面部が容器100のどの壁部に対向して配置されてもよい。
【0108】
実施の形態及びその変形例では、正極側及び負極側の双方が上記の構成を有しているとしたが、正極側及び負極側のいずれか一方のみが上記の構成を有していてもよい。
【0109】
実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0110】
本発明は、このような蓄電素子として実現できるだけでなく、当該蓄電素子が備えるスペーサとしても実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0112】
10、10a 蓄電素子
100 容器
110 容器本体
111 第一壁部
112 第二壁部
113 第三壁部
120 蓋体
120a、140a、150a、310a 貫通孔
130 電極端子
150、160 下部ガスケット
151、161 係合凹部
151a 爪挿入部
153 背面側凹部
200、400 電極体
220、420 電極体端部
300、350 集電体
310、360 固定端部
310b 側面
800、800a、800b、800c、900 スペーサ
810、910 背面部
811 突出部
812 背面凸部
814、924 側面凸部
816、826 流入痕
820、920 側面部
821、921 カバー部
821a、921a 係合部
821b 爪部
822、922 側面端部
825、925 開口部
830、930 接続部
832、932 切り欠き
840、940 底面部
841、941 係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16