IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナブテスコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図1
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図2
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図3
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図4
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図5
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図6
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図7
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図8
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図9
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図10
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図11
  • 特許-バレルホルダー、及び、ホイール 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】バレルホルダー、及び、ホイール
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/12 20060101AFI20240716BHJP
   B60B 19/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B60B19/12
B60B19/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020006359
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112978
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】新海 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】馬 詩樺
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一賢
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0486749(KR,Y1)
【文献】中国特許出願公開第102501726(CN,A)
【文献】特開2010-209750(JP,A)
【文献】特開2019-137390(JP,A)
【文献】特開2017-043218(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105667632(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0270850(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018106592(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/12
B60B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地回転体である複数のバレルを、ホルダー回転軸線に対して傾斜した状態で回転可能に支持する第1フランジ及び第2フランジと、
前記第1フランジと第2フランジを連結する連結筒と、
を備え、
前記第1フランジ及び前記第2フランジは、外周面に前記バレルの軸方向の端部を受容する複数のバレル受容凹部を有し、
前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、分割された二ブロックによって構成され、
各前記バレル受容凹部は、前記第1フランジまたは前記第2フランジの外周方向で、前記ホルダー回転軸線と平行な基準線に対して線対称に形成されているバレルホルダー。
【請求項2】
前記第1フランジの前記バレル受容凹部と前記第2フランジの前記バレル受容凹部とは、前記ホルダー回転軸線上の軸方向の中間点を基準点として点対称に形成されている請求項に記載のバレルホルダー。
【請求項3】
前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、前記連結筒の軸方向の略中央位置で二ブロックに分割されている請求項に記載のバレルホルダー。
【請求項4】
前記第1フランジと前記第2フランジとは、軸部が前記ホルダー回転軸線と平行に延びる締結部材によって連結され、
前記締結部材の前記軸部は、前記連結筒の外周の隣接する前記バレルの間の隙間に挿通されている請求項に記載のバレルホルダー。
【請求項5】
前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、前記連結筒の軸方向の一端部で二ブロックに分割されている請求項に記載のバレルホルダー。
【請求項6】
前記連結筒の軸方向の一端側の端面には、前記第1フランジと前記第2フランジのいずれか一方を貫通した締結部材が締結固定されている請求項に記載のバレルホルダー。
【請求項7】
前記第1フランジ及び前記第2フランジの前記バレル受容凹部は、二つの傾斜壁を有する正面視が台形状の溝によって構成され、
前記第1フランジ及び前記第2フランジの外周面のうちの、前記バレル受容凹部のいずれか一方の前記傾斜壁に、前記バレルを回転自在に支持するバレルシャフトの固定溝が形成されている請求項2~6のいずれか1項に記載のバレルホルダー。
【請求項8】
接地回転体である複数のバレルを、ホルダー回転軸線に対して傾斜した状態で回転可能に支持する第1フランジ及び第2フランジと、
前記第1フランジと第2フランジを連結する連結筒と、
を備え、
前記第1フランジ及び前記第2フランジは、外周面に前記バレルの軸方向の端部を受容する複数のバレル受容凹部を有し、
前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、分割された二ブロックによって構成され、
各前記バレル受容凹部は、前記第1フランジまたは前記第2フランジの外周方向で、前記ホルダー回転軸線と平行な基準線に対して線対称に形成され、
前記第1フランジ及び前記第2フランジの前記バレル受容凹部は、二つの傾斜壁を有する正面視が台形状の溝によって構成され、
前記第1フランジ及び前記第2フランジの外周面のうちの、前記バレル受容凹部のいずれか一方の前記傾斜壁に、前記バレルを回転自在に支持するバレルシャフトの固定溝が形成されているバレルホルダー。
【請求項9】
前記第1フランジの前記バレル受容凹部と前記第2フランジの前記バレル受容凹部とは、前記ホルダー回転軸線上の軸方向の中間点を基準点として点対称に形成されている請求項に記載のバレルホルダー。
【請求項10】
接地回転体である複数のバレルと、
請求項1~9のいずれか1項に記載のバレルホルダーと、
を備えているホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動車両用の車輪に用いられるバレルホルダー、及び、ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
移動車両用の車輪としてメカナムホイールが知られている。メカナムホイールは、樽形形状の接地回転体(床面や路面に接地する回転体)である複数のバレルと、複数のバレルを外周上に回転可能に保持するバレルホルダーと、を備え、バレルホルダーがモータ等の駆動装置によって回転駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数のバレルは、バレルホルダーのホルダー回転軸線に対して傾斜した状態でバレルホルダーの外周上に保持されている。メカナムホイールは、移動車両のほぼ四隅に配置され、四隅に配置された各ホイールが駆動装置によって独立して制御される。即ち、移動車両は、各ホイールの回転方向とトルクを個別に制御することにより、様々な方向に自由に移動することができる。なお、移動車両の左右に配置されるメカナムホイールは、バレルホルダーの外周上に保持されるバレルの傾斜方向が逆向きに設定されている。
【0004】
この種のホイールに用いられるバレルホルダーは、複数のバレルの軸方向の一端部を支持する第1フランジと、複数のバレルの軸方向の他端部を支持する第2フランジと、第1フランジと第2フランジを連結する連結筒と、を備えている。第1フランジと第2フランジは、連結筒の軸方向の端部に重ね合わされ、それぞれボルト締結によって連結軸に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5015155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のホイールで用いるバレルホルダーは、連結筒の軸方向の両側の端部に対し、第1フランジと第2フランジが個別に締結固定される構造とされている。このため、構成部品の点数が多くなるうえ、複数の締結箇所が必要となる関係で全体形状が大型化し易い。即ち、ボルト頭部の締め込み荷重を受ける座面や、ボルト軸部が締め込まれるねじ孔を多数の個所に設ける必要があるため、これらの近傍部の肉厚が厚くなり、そのことが全体形状の大型化の要因となる。
【0007】
本発明は、製造コストの削減と小型化を図ることができるバレルホルダー、及び、ホイールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係るバレルホルダーは、接地回転体である複数のバレルを、ホルダー回転軸線に対して傾斜した状態で回転可能に支持する第1フランジ及び第2フランジと、前記第1フランジと第2フランジを連結する連結筒と、を備え、前記第1フランジ及び前記第2フランジは、外周面に前記バレルの軸方向の端部を受容する複数のバレル受容凹部を有し、前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、分割された二ブロックによって構成され各前記バレル受容凹部は、前記第1フランジまたは前記第2フランジの外周方向で、前記ホルダー回転軸線と平行な基準線に対して線対称に形成されている。
【0015】
本態様に係るバレルホルダーは、第1フランジ、連結筒、及び、第2フランジが分割された二ブロックによって構成されているため、構成ブロックが少なくなるうえ、ブロック同士の締結箇所も少なくなる。
また、本態様に係るバレルホルダーは、第1フランジのバレル受容凹部と第2フランジのバレル受容凹部がフランジの外周方向でホルダー回転軸線と平行な基準線に対して線対称に形成されている。このため、同じ成形型で作成したバレルホルダーのブロックのベース素材を移動車両の左右の車輪で共用することができる。即ち、移動車両の左右の車輪ではバレルの傾斜方向が逆向きに設定されるが、バレルホルダーのブロックの共通のベース素材に、傾斜の向きを変えてバレルシャフトの固定溝を切削加工等によって形成することにより、移動車両の左右の車輪で共用することができる。したがって、左右の車輪毎にバレルホルダーのベース素材の成形型を用意する必要がないため、製品コストと併せて設備コストも削減することができる。
なお、第1フランジのバレル受容凹部と第2フランジのバレル受容凹部は、ホルダー回転軸線上の軸方向の中間点を基準点として点対称に形成することが望ましい。
【0016】
この場合、前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、前記連結筒の軸方向の略中央位置で二ブロックに分割されるようにしても良い。
【0017】
前記第1フランジと前記第2フランジとは、軸部が前記ホルダー回転軸線と平行に延びる締結部材によって連結され、前記締結部材の前記軸部は、前記連結筒の外周の隣接する前記バレルの間の隙間に挿通されるようにしても良い。
【0018】
この場合、連結筒の外周の隣接するバレルの間のデッドスペースに締結部材の軸部が挿通されるため、締結部材の軸部を連結筒の内部に挿通して配置する場合に比較して、バレルホルダーを小型化することができる。
【0019】
前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、前記連結筒の軸方向の一端部で二ブロックに分割されるようにしても良い。
【0020】
前記連結筒の軸方向の一端側の端面には、前記第1フランジと前記第2フランジのいずれか一方を貫通した締結部材が締結固定されるようにしても良い。
【0021】
この場合、軸長の短い締結部材によって二ブロックを締結固定することができる。また、締結部材の軸部は外部に露出しないため、耐環境性を高くすることができる。
【0022】
前記第1フランジ及び前記第2フランジの前記バレル受容凹部は、二つの傾斜壁を有する正面視が台形状の溝によって構成され、前記第1フランジ及び前記第2フランジの外周面のうちの、前記バレル受容凹部のいずれか一方の前記傾斜壁に、前記バレルを回転自在に支持するバレルシャフトの固定溝が形成されるようにしても良い。
【0023】
この場合、固定溝を形成するバレル受容凹部の傾斜壁を変更することにより、第1フランジと第2フランジによって保持するバレルの傾斜角度を逆向きに変更することができる。したがって、本構成を採用した場合には、バレルホルダーのブロックのベース素材を型成形した後に、バレル受容凹部の二つの傾斜壁のいずれかに固定溝を切削等によって形成することにより、左右の車輪用のバレルホルダーを容易に作り分けることができる。
【0025】
本発明の一態様に係るバレルホルダーは、接地回転体である複数のバレルを、ホルダー回転軸線に対して傾斜した状態で回転可能に支持する第1フランジ及び第2フランジと、前記第1フランジと第2フランジを連結する連結筒と、を備え、前記第1フランジ及び前記第2フランジは、外周面に前記バレルの軸方向の端部を受容する複数のバレル受容凹部を有し、前記第1フランジ、前記連結筒、及び、前記第2フランジは、分割された二ブロックによって構成され各前記バレル受容凹部は、前記第1フランジまたは前記第2フランジの外周方向で、前記ホルダー回転軸線と平行な基準線に対して線対称に形成され、前記第1フランジ及び前記第2フランジの前記バレル受容凹部は、二つの傾斜壁を有する正面視が台形状の溝によって構成され、前記第1フランジ及び前記第2フランジの外周面のうちの、前記バレル受容凹部のいずれか一方の前記傾斜壁に、前記バレルを回転自在に支持するバレルシャフトの固定溝が形成されている。
前記第1フランジの前記バレル受容凹部と前記第2フランジの前記バレル受容凹部とは、前記ホルダー回転軸線上の軸方向の中間点を基準点として点対称に形成されることが望ましい。
【0026】
本発明の一態様に係るホイールは、接地回転体である複数のバレルと、前記いずれかのバレルホルダーと、を備えている。
【発明の効果】
【0027】
上述のバレルホルダー及びホイールは、バレルホルダーの構成ブロックが少なくなるうえ、ブロック同士の締結箇所も少なくなるため、製造コストの削減と小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態のホイールの斜視図。
図2】第1実施形態のホイールの図1のII-II線に沿う断面図。
図3】第1実施形態のホイールの図2のIII-III線に沿う断面図。
図4】第1実施形態のバレルホルダーの分解斜視図。
図5】第1実施形態のバレルホルダーの側面図。
図6】第1実施形態のバレルホルダーの第1ブロックの図5のVI矢視図。
図7】第1実施形態のバレルホルダーの図6のVII-VII断面に対応する分解断面図。
図8】第2実施形態のホイールの図2と同様の断面図。
図9】第2実施形態のバレルホルダーの分解斜視図。
図10】第2実施形態のバレルホルダーの側面図。
図11】第2実施形態のバレルホルダーの図10XI矢視図
図12】第2実施形態のバレルホルダーの図10のXII-XII断面に対応する分解断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する各実施形態のホイール(メカナムホイール)は、移動車両の車輪に用いられる。また、ホイールは、駆動装置である正逆回転可能なモータの駆動力を受け、減速機によって減速されて回転する。
最初に、図1図7に示す第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、第1実施形態に係るホイール1の斜視図であり、図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。また、図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
これらの図に示すように、ホイール1は、樽形形状の接地回転体である複数のバレル2と、複数のバレルを外周上で保持するバレルホルダー3と、を備えている。なお、図1では、バレル2は一つのみが図示され、他のバレル2は、バレル2の中心軸線L2のみが示されている。
【0031】
バレル2は、軸方向に沿う図示しない軸孔を有し、軸孔にバレルシャフト4が挿通されている。バレル2は、バレルシャフト4に図示しない軸受(スラスト軸受及びラジアル軸受)を介して回転可能に支持されている。
【0032】
バレルホルダー3は、軸方向に離間して配置される第1フランジ5及び第2フランジ6と、第1フランジ5と第2フランジ6を連結する連結筒7と、を備えている。第1フランジ5と第2フランジ6は、孔あき円板状に形成され、連結筒7とともに連続した略円筒形状を形成している。略円筒形状のバレルホルダー3の内部には、駆動装置であるモータと減速機(いずれも不図示)が配置される。減速機の出力部は、例えば、第1フランジ5に連結されて、減速されたモータの回転をバレルホルダー3に伝達する。なお、バレルホルダー3がモータの回転を受けて回転する際のバレルホルダー3の回転軸線をホルダー回転軸線L1と呼ぶものとする。
【0033】
連結筒7の外径は、第1フランジ5や第2フランジ6の外径よりも小径に形成されている。各バレル2を支持するバレルシャフト4の軸方向の端部は、第1フランジ5と第2フランジ6の各外周に形成された固定溝8内にボルト締結等によって固定されている。この状態で各バレル2の軸方向中央の樽形の膨出領域は、連結筒7の外周面の径方向外側に隙間をもって配置されている。各バレル2は、ホルダー回転軸線L1と連結筒7の周方向に45°の傾斜角をもつように配置されている。
【0034】
図4は、バレルホルダー3の分解斜視図であり、図5は、バレルホルダー3の側面図である。また、図6は、図5のV矢視図であり、図7は、図6のVII-VII断面に対応する部分のバレルホルダー3の断面図である。
第1フランジ5と第2フランジ6の各外周の連結筒7側の側縁部には、各バレル2の軸方向の端部が傾斜状態で収容される複数のバレル受容凹部9が形成されている。各バレル受容凹部9は、二つの傾斜壁9a,9bを有する正面視が台形状の溝によって構成されている。バレル受容凹部9は、第1フランジ5や第2フランジ6の外周方向において、ホルダー回転軸線L1と平行な基準線S1(図5参照)に対して線対称に形成されている。したがって、二つの傾斜壁9a,9bは、基準線S1を間に挟み基準線S1に対して相反方向に同角度傾斜している。
【0035】
また、図5に示すように、第1フランジ5の外周に形成されたバレル受容凹部9と、第2フランジ6の外周に形成されたバレル受容凹部9とは、ホルダー回転軸線L1上の軸方向の中間点を基準点p1として点対称に形成されている。
【0036】
バレルシャフト4を固定するための固定溝8は、バレル受容凹部9のいずれか一方の傾斜壁9aまたは9bに形成されている。図1に示す例では、固定溝8は傾斜壁9bに形成されている。固定溝8は、バレル受容凹部9に臨む傾斜壁9bの側面と略直交する方向に延びている。バレルホルダー3に取り付けられるバレル2は、移動車両の右側の車輪に用いる場合と左側の車輪に用いる場合で、ホルダー回転軸線L1に対する傾斜方向が相反方向となる。図1に示す例のものが左車輪用のものであれば、右車輪用のものは、バレル2の傾斜方向が逆となる。したがって、この場合には固定溝8は傾斜壁9aに形成されることになる。
なお、図4中の上側のブロック(後述する第1ブロックB1)は、固定溝8を加工する前の状態が示され、固定溝8は仮想線で描かれている。また、図5では、上下のいずれのブロック(後述する第1ブロックB1及び第2ブロックB2)についても、固定溝8を加工する前の状態が示されている。この場合も、固定溝8は仮想線で描かれている。
【0037】
図4図7に示すように、バレルホルダー3の連結筒7は軸方向(ホルダー回転軸線L1に沿う方向)のほぼ中央部で二分割されている。連結筒7の一方の分割体(以下、「第1筒7A」と呼ぶ。)は、第1フランジ5の内周縁部と一体に形成されている。連結筒7の他方の分割体(以下、「第2筒7B」と呼ぶ。)は、第2フランジ6の内周縁部と一体に形成されている。したがって、バレルホルダー3の第1フランジ5、連結筒7、及び、第2フランジ6は、連結筒7の軸方向の略中央位置で分割された第1ブロックB1と第2ブロックB2によって構成されている。
【0038】
第1ブロックB1側の第1筒7Aの端面には、外周縁部が軸方向に突出した環状段部7Aaが形成されている。第2ブロックB2側の第2筒7Bの端面には、内周縁部が軸方向に突出した環状段部7Baが形成されている。第1筒7Aの環状段部7Aaと第2筒7Bの環状段部7Baは相互に嵌合可能とされている。
【0039】
ここで、第1ブロックB1に関して第1筒7Aと逆側を軸方向外側と呼ぶものとすると、第1ブロックB1のうちの第1フランジ5の軸方向外側の内周縁部には、環状凹部10Aが形成されている。そして、環状凹部10Aの周縁部には第1フランジ5を軸方向に貫通する複数のボルト挿通孔11が形成されている。ボルト挿通孔11は、第1筒7A及び第2筒7Bの外周面よりも径方向外側位置で第1フランジ5を貫通している。各ボルト挿通孔11には、連結筒7よりも軸長の長いボルト12(締結部材)の軸部12aが挿通される。各ボルト挿通孔11の軸方向外側の周縁部は、ボルト12の頭部12bが当接する座面13とされている。
【0040】
また、環状凹部10Aのボルト挿通孔11の形成部よりも内側には、図2に示すように、径方向内側に張り出す内フランジ15が一体に形成されている。内フランジ15には、バレルホルダー3内に配置された減速機の出力部が締結固定される。
【0041】
また、第2ブロックB2に関して第2筒7Bと逆側を軸方向外側と呼ぶものとすると、第2ブロックB2のうちの第2フランジ6の軸方向外側の内周縁部には、環状凹部10Bが形成されている。そして、環状凹部10Bの周縁部には、ボルト12の先端部が螺合される複数のねじ孔14が形成されている。ねじ孔14は、第1ブロックB1側のボルト挿通孔11と一対一で対応するようにボルト挿通孔11と合致する周方向位置に形成されている。ボルト12の軸部12aは、連結筒7の外周側をホルダー回転軸線L1と平行に延び、その状態で先端部がねじ孔14にねじ込まれる。これにより、第1ブロックB1と第2ブロックB2は一体化される。
【0042】
第1フランジ5のボルト挿通孔11と第2フランジ6のねじ孔14の各位置は、図3に示すように、ボルト12の軸部12aが、連結筒7の外周側において、隣接するバレル2の間の隙間dに挿通される位置とされている。
【0043】
なお、本実施形態の場合、第1ブロックと第2ブロックは、鋳造によって形成される共通のベース素材を基に、そのベース素材に切削加工等を施して形成される。また、左車輪用のものと右車輪用のものも、共通のベース素材を基にして形成される。即ち、左車輪用のものと右車輪用のもので作り分ける場合には、図5に仮想線で示すように、固定溝8(8A)を一方の傾斜壁9bに形成するか他方の傾斜壁9aに形成するかによって作り分ける。
【0044】
以上のように、本実施形態のバレルホルダー3は、第1フランジ5、連結筒7、及び、第2フランジ6が分割された二ブロック(第1ブロックB1及び第2ブロックB2)によって構成されているため、構成ブロックが少なくなるうえ、ブロック同士のボルト12による締結箇所も少なくなる。したがって、本構成を採用したバレルホルダー3及びホイール1は、バレルホルダー3の構成ブロックが少なくなるうえ、ブロック同士の締結箇所も少なくなるため、製造コストの削減と小型化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態のバレルホルダー3では、第1フランジ5、連結筒7、及び、第2フランジ6が連結筒7の軸方向の略中央位置で二ブロックに分割されている。このため、二ブロックの形状がほぼ同じになり、二つのブロックを同じ鋳造品のベース素材から加工して作成することが可能になる。したがって、本構成を採用した場合には、製品コストのさらなる低減を図ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態のバレルホルダー3では、第1フランジ5のバレル受容凹部9と第2フランジ6のバレル受容凹部9が、ホルダー回転軸線L1上の軸方向の中間点を基準点p1として点対称に形成され、かつ、各バレル受容凹部9がフランジの外周方向でホルダー回転軸線L1と平行な基準線s1に対して線対称に形成されている。このため、同じ成形型で作成したバレルホルダー3のブロックのベース素材を移動車両の左右の車輪で共用することができる。具体的には、バレルホルダー3のブロックの共通のベース素材に、傾斜の向きを変えてバレルシャフト4の固定溝8を切削加工等によって形成することにより、移動車両の左右の車輪で共用することができる。したがって、左右の車輪毎にバレルホルダー3のベース素材の成形型を用意する必要がないため、製品コストと併せて設備コストも削減することができる。
【0047】
また、本実施形態のバレルホルダー3では、第1フランジ5と第2フランジ6が、軸部12aがホルダー回転軸線L1と平行に延びるボルト12によって連結され、ボルト12の軸部12aが連結筒7の外周の隣接するバレル2の間の隙間dに挿通されている。この場合、連結筒7の外周の隣接するバレル2の間のデッドスペースにボルト12の軸部12aが挿通されるため、ボルト12の軸部12aを連結筒7の内部に挿通して配置する場合に比較して、バレルホルダー3を小型化することができる。
【0048】
さらに、本実施形態のバレルホルダー3は、各フランジのバレル受容凹部9が、二つの傾斜壁9a,9bを有する正面視が台形状の溝によって構成され、いずれか一方の傾斜壁9aまたは9bにバレルシャフト4の固定溝8が形成される構成とされている。このため、固定溝8を形成するバレル受容凹部9の傾斜壁9a,9bを変更することにより、第1フランジ5と第2フランジ6によって保持するバレル2の傾斜角度を逆向きに変更することができる。したがって、本構成を採用した場合には、バレルホルダー3のブロックのベース素材を型成形した後に、バレル受容凹部9の二つの傾斜壁9aまたは9bのいずれかに固定溝8を切削等によって形成することにより、左右の車輪用のバレルホルダー3を容易に作り分けることができる。
【0049】
つづいて、図8図12に示す第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同一部分に共通符号を付し、重複する部分の説明を一部省略するものとする。
【0050】
図8は、第2実施形態に係るホイール101の第1実施形態の図2と同様の断面図である。図9は、第2実施形態のバレルホルダー103の分解斜視図であり、図10は、バレルホルダー103の側面図である。また、図11は、バレルホルダー103の図10XI矢視図であり、図12は、バレルホルダー103の図10のXII-XII断面に対応する分解断面図である。
本実施形態のバレルホルダー103は、第1実施形態と同様に、バレル2を回転可能に支持する第1フランジ5及び第2フランジ6と、第1フランジ5と第2フランジ6を連結する連結筒7とを備え、第1フランジ5、連結筒7、及び、第2フランジ6が分割された二ブロック(第1ブロックBa1及び第2ブロックBa2)によって構成されている。ただし、本実施形態のバレルホルダー103は、第1フランジ5、連結筒7、及び、第2フランジ6が、連結筒7の軸方向の一端部で二ブロック(第1ブロックBa1及び第2ブロックBa2)に分割されている。具体的には、第1ブロックBa1は、第1フランジ5によって構成され、第2ブロックBa2は、第2フランジ6の内周縁部に連結筒7が一体化された構成とされている。
【0051】
第1フランジ5側に臨む連結筒7の一端側は、他の部位に比較して肉厚にかつ外径が大きく形成されている。連結筒7の端面には、複数のねじ穴20が円周方向に離間して形成されている。これに対し、連結筒7の端面に重ねられる第1フランジ5の内周縁部には、各ねじ穴20の位置と対応する位置にボルト挿通孔21が形成されている。各ボルト挿通孔21には、ボルト22(締結部材)の軸部22aが挿通され、軸部22aの先端側が連結筒7の対応するねじ穴20に締め込まれている。
【0052】
本実施形態のバレルホルダー103は、第1フランジ5、連結筒7、及び、第2フランジ6が分割された二ブロック(第1ブロックBa1及び第2ブロックBa2)によって構成されている。このため、第1実施形態と同様に、構成ブロック数を少なくし、ブロック同士のボルト22による締結箇所も少なくすることができる。したがって、本構成を採用したバレルホルダー103及びホイール101は、製造コストの削減と小型化を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態のバレルホルダー103では、第1フランジ5、連結筒7、及び、第2フランジ6が連結筒7の軸方向の一端部で二ブロックに分割され、第1フランジ5を貫通するボルト22の軸部22aが連結筒7の端面に締め込まれている。このため、本構成を採用した場合には、軸長の短いボルト22によって二ブロックを結合することができ、しかも、ボルト22の軸部22aが外部に露出しないことから、外部の熱の影響によってボルト22の軸部22aが大きく伸縮するのを抑制することができる等、耐環境性を高くすることができる。
【0054】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,101…ホイール
2…バレル
3,103…バレルホルダー
4…バレルシャフト
5…第1フランジ
6…第2フランジ
7…連結筒
8…固定溝
9…バレル受容凹部
9a,9b…傾斜壁
12,22…ボルト(締結部材)
12a…軸部
B1,Ba1…第1ブロック(ブロック)
B2,Ba2…第2ブロック(ブロック)
L1…ホルダー回転軸線
p1…基準点
S1…基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12