(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】2本のケーブルのケーブル端部の把持および取扱いのためのグリッパユニット、グリッパユニットを備えた装填ステーション、およびプラグハウジングを提供するための方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20240716BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H01B13/012 B
H01B7/00 301
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020006550
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2023-01-19
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503231561
【氏名又は名称】コマツクス・ホールデイング・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビタル・ゼーホルツァー
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ビュスマン
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129048(JP,A)
【文献】特開2018-170090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にツイストケーブルハーネス(13)の2つのケーブル(8、9)のケーブル端部を把持し、取り扱うための、2つのグリッパジョー(2、3)を有するグリッパユニット(1)であって、2つのグリッパジョー(2、3)の少なくとも一方、好ましくは各グリッパジョー(2、3)
が2つのジョー部材(4、4’、5、5’)を備え、ケーブル(8、9)はジョー部材(4、4’、5、5’)によって外側からクランプされるように作用を受け、グリッパユニット(1)はケーブル(8、9)の少なくとも一方を支持するように内側から作用することができる少なくとも1つの動作可能な係合部材(11)を備え、係合部材(11)を一方のグリッパジョー(2、3)のジョー部材(4、4’;5、5’)の間に配置し
、
少なくとも1つの係合部材(11)は、グリッパジョー(2、3)とは独立して移動可能であることを特徴とする、グリッパユニット(1)。
【請求項2】
2つの係合部材(11)が設けられ、該係合部材(11)を各グリッパジョー(2、3)と連携させることを特徴とする、請求項
1に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの係合部材(11)に別個の駆動装置(30)が設けられていることを特徴とする、請求項1
または2に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項4】
ジョー部材(4、4’、5、5’)はグリッパジョー(2、3)に閉鎖または開放方向に摺動可能に取り付けられ、それによって、係合部材(11)がケーブル(8、9)の間に挿入されるとき、または係合部材(11)が後退されるときに、ケーブル(8、9)の間の間隔(H)が変わり得ることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの係合部材(11)は、少なくとも1つの有効楔面(25、25’;26、26’)を有する楔部材(21、22)であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項6】
楔部材(21、22)が2つの有効楔面(25、25’;26、26’)を有し、該楔部材(21、22)の楔角(γ)が30°~90°、好ましくは45°~70°、より好ましくは約60°であることを特徴とする、請求項
5に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項7】
対向しかつ対を形成する2つのグリッパジョー(2、3)のジョー部材(4、4’、5、5’)が同じケーブル(8、9)との接触を確立するためのクランプ面(23、23’;24、24’)を備え、2つのクランプ面(23、23’;24、24’)の囲む角度(α)は、対向しかつ対を形成する楔部材(21、22)の楔面(25、25’、26、26’)の間の角度(β)よりも小さく、好ましくはジョー部材(4、4’、5、5’)の対向するクランプ面(23、23’;24、24’)の間の角度(α)が90°であり、対向する楔部材(21、22)の楔面(25、25’、26、26’)の間の角度(β)が120°であることを特徴とする、請求項
5または6に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項8】
2つの楔部材(21、22)に斜め有効楔面(23、23’)および、それぞれ真っ直ぐな楔面(32、32’)が設けられ、楔部材(21、22)がそれらの真っ直ぐな楔面(32、32’)に沿って摺動可能に移動可能であることを特徴とする、請求項
5に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項9】
グリッパユニット(1)が、対を形成し、互いに接近および離間するように移動可能な係合部材(11)を有し、係合部材(11)は楔形であり、楔形の係合部材(11)は真っ直ぐな楔面(33、33’)および斜め楔面(34、34’)を備え、係合部材(11)の真っ直ぐな楔面(33、33’)はケーブル(8、9)を支持するように働き、斜め楔面(34、34’)は、係合部材(11)が閉鎖または開放方向に前方または後方に移動する間に従属的に案内されるように、互いに動作可能に接続されることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの係合部材(11)が、低摩擦係数を有するプラスチック材料から構成される、あるいは低摩擦係数を有するプラスチック材料で被覆されていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか1項に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項11】
ジョー部材(4、4’、5、5’)が好ましくは溝状の凹部(17、17’)および突起(18、18’)を備え、互いに対向するジョー部材(4、4’、5、5’)の凹部(17、17’)および突起(18、18’)が少なくとも閉鎖位置で互いに入り込むように動作可能であり、かつ/またはグリッパユニット(1)が互いに対向し、かつ反対方向に移動可能な2つの楔部材(21、22)を備え、好ましくは溝状の凹部(27、27’)および突起(28、28’)が、楔部材(21、22)の楔先端の領域に設けられ、互いに入り込むように動作可能であることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか1項に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項12】
各楔部材(21、22)の凹部(27、27’)の溝幅(B)が、対向する突起(28、28’)の幅(b)と比較してより大きな寸法を有し、該凹部は該突起へ入り込み、それによってケーブル(8、9)のオフセットを形成するために楔部材(21、22)が長手方向(A)に互いに相対的に移動可能となることを特徴とする、請求項
11に記載のグリッパユニット(1)。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれかに記載のグリッパユニット(1)によって、組立式に作られたケーブル端部をプラグハウジング(20)へ提供するための取付ステーションであって、特にツイストケーブルハーネス(13)の2本のケーブル(8、9)のケーブル端部が把持可能であり、かつ、2本のケーブル(8、9)のケーブル端部をプラグハウジング(20)のセルへ挿入可能であることを特徴とする、取付ステーション。
【請求項14】
ツイストケーブルハーネス(13)の2本のケーブル(8、9)の組立式に作られたケーブル端部を、好ましくは請求項
13に記載の取付ステーションを用いてプラグハウジング(20)へ提供する方法であって、以下のステップ、
-ケーブルグリッパユニット(1)によりケーブル(8、9)を把持するステップであって、ケーブル(8、9)の外側がグリッパジョー(2、3)で囲まれ、ケーブル(8、9)が、該ケーブル(8、9)間に挿入される少なくとも1つの係合部材(11)によって内側から支持されるように作用を受けるステップ、
-少なくとも1つの係合部材(11)が前方または後方へ移動することによりケーブル(8、9)間の間隔(H)を調整するステップ、
-ケーブルグリッパユニット(1)によってケーブル(8、9)のケーブル端部を、該ケーブル(8、9)間の間隔(H)を維持してプラグハウジング(20)の所望のセルへ挿入するステップ、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部分に係るケーブルハーネスの2本のケーブルのケーブル端部の把持および取扱いのためのグリッパユニットに関する。さらに、本発明は、かかるグリッパユニットによる、ケーブル端部を有するプラグハウジングを提供するための組立ステーションおよび、プラグハウジングを提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車または航空機で使用されるようなケーブルハーネスは複数のケーブルからなり、これらには組立式に作られたケーブル端部にプラグハウジングが設けられている。この目的のために、組立式に作られたケーブル端部、すなわち、所定の長さに切断され、被覆を剥がされ、端子部品(例えば、圧着端子)が設けられたケーブル端部が、プラグハウジングのチャンバまたはレシーバ内に挿入される。原則として、ケーブル端部が設けられるケーブルハーネスのケーブルは個別に提供され、対応する機械装置によってプラグハウジングのチャンバ内に個別に導入される。ますます多くのケーブルハーネスが複数のケーブル、主にツイストケーブルから作られた複数のケーブル撚線から構成されるようになり、そのために、これらはフリーで、特に撚られていない、またオプションでケーブルハーネスのケーブル端部が延長された状態で用意される必要がある。ツイストケーブルは、特に良好な信号伝送品質を特徴とする。ツイストケーブルに加えて、ケーブルハーネスまたは他のマルチケーブルシステムの撚り合わされていないケーブルを使用することもでき、この場合、ケーブルは並んで配置され、グループとして組み合わされるだけである。一般に、少なくとも2本のケーブル、特にツイストケーブルから作られたケーブル撚線を提供することを可能とするためには、ケーブル端部側に、当業者にはケーブル取付ステーションとして知られる、対応する機械装置が必要である。
【0003】
ツイストケーブルを有するプラグハウジングを自動的に供給することは複雑である。処理ステーションの特に重要な要素は、ケーブルのケーブル端部を把持し、ケーブル端部をプラグハウジングへ案内して該ハウジングへ挿入するグリッパユニットである。その目的の1つは、可能な限り捩じること無くケーブル端部の長さ領域をできる限り小さく保つことである。これには、双方のケーブル両端を常に同時にプラグハウジングへ導入しなければならないことが必要となる。
【0004】
ケーブル端部を有するプラグハウジングを供給するための取付ステーションへ向けてケーブルハーネスの2本のケーブルのケーブル端部を把持して操作するための、通常、類似のグリッパユニットが、例えば欧州特許出願公開第3301769号明細書により知られるようになった。このグリッパユニットは2つの連続的に配置されたケーブルグリッパからなる。各ケーブルグリッパは、開放位置と閉鎖位置との間で移動可能な2つのグリッパジョーを備える。ツイストケーブルの個々の端部はケーブルグリッパによってそれぞれ保持される。2つのグリッパはケーブルの方向に連続的に配置される。ケーブルグリッパで保持されていない個々のケーブルの他方の端部は、ケーブルグリッパのわずかに拡張された案内チャネルを通過する。ツイストケーブルをプラグハウジングへ挿入するため、ケーブル端部の一方がケーブルの方向へ数ミリメートルだけ前方へ押し出される。2つの接点部品の先端が、それによって互いに面一ではなくなる。このことは、接点部品を連続的に対応する入口開口部に向けて、そこへ挿入させることを可能にする。ケーブルグリッパのグリッパジョーは、具体的には所定のケーブル径および2本のケーブル間の固定された間隔のために設計されている。さらに、この解決策は、ツイストワイヤハーネスのケーブルのケーブル端部が比較的長い、撚られていない、あるいは撚りから戻された長さを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、公知の方法の欠点を回避し、特に、ケーブルハーネスの2本のケーブル端部を把持して操作するための改良されたグリッパを提供することにある。グリッパユニット自体およびグリッパユニットを装備した取付ステーションは高い可変性を許容すべきものであり、かつ、広い適用範囲により特徴づけられるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題はクレーム1の特徴を有するグリッパユニットにより達成される。グリッパユニットは、長手方向かつ近位に軸平行な方向に延在する2本のケーブル、特にツイストケーブルハーネスのケーブル端部の把持および操作に用いられる。グリッパユニットは2つのグリッパジョーを備える。グリッパジョーは長手方向に対して横方向に閉鎖もしくは開放するように、およびその逆に開放位置と閉鎖位置との間で移動可能である。少なくとも1つのグリッパジョーおよび、好ましくは各グリッパジョーは2つの要素、好ましくは分離した要素として構成されたジョー部材を備え、これらは長手方向に対して互いに上に配置され、ジョー部材は閉鎖位置にあるときにはケーブルを外側からクランプするように作用することができる。グリッパユニットはさらに少なくとも1つの動作可能な係合部材を備え、この係合部材は内側から支持するようにケーブルの一方に作用することができるものであり、好ましくはジョー部材とは別個の要素として構成され、グリッパジョーの1つのジョー部材の間に配置される。ジョー部材は互いに上に位置して互いに離間するように移動することが可能であり、ケーブルハーネスの1つのケーブルにそれぞれ割り当てられることができる。これらジョー部材は一対のジョー部材からなるものとすることができる。
【0008】
特に明記しない限り、長手方向を横切る前述の閉鎖および閉鎖方向の移動は、以下でグリッパジョー、それらのジョー部材、および1つまたは複数の係合部材に対する移動について言及されるときはいつでも言及される。
【0009】
各ケーブルに作用するクランプ力、例えば外側から対応するジョー部材によってケーブルハーネスの2本のケーブル全体に作用するクランプ力は、ケーブルが、該ケーブルが互いに離間して接触およびクランプされて面する領域に保持され、対照的に、内側からの指示を提供する力の作用は、隣接したケーブルに面するケーブルの一部分、例えば、2本のケーブルの間に位置している、好ましくは撚られていない、もしくは撚りから戻されたケーブル撚線の端部の間の領域で生じる。
【0010】
本発明によるグリッパユニットは、コンパクトな設計を特徴とする。グリッパユニットの長手方向の拡張を小さく保つことができ、これにより、ケーブルの突出を少なくすることができる。ツイストワイヤハーネスのケーブルのケーブル端部の撚られていないまたは撚りから戻された長さは、かなり短くすることができる。グリッパユニットのもう1つの利点はグリッパユニットが高い可変性を有し、広く適用可能であることである。
【0011】
このグリッパユニットは特に、組立式に作られたケーブル端部を有するプラグハウジングを提供するための取付ステーションのグリッパユニットであってもよい。しかしながら、ケーブルを組み立てるための他のケーブル処理ステーションにおいて、本発明によるグリッパユニットを使用することも考えられる。グリッパユニットは、例えば、ツイストケーブルハーネスのケーブルの被覆を剥がしたケーブル端部に圧着端子を取り付ける圧着ステーションまたは保護スリーブステーションで使用することができる。
【0012】
それぞれの作動の後、ジョー部材の間に配置された係合部材は、長手方向に対して横方向に、隣接する係合部材に対して前後に移動可能である。少なくとも1つの係合部材の前進または後退は、例えば、グリッパジョーが閉鎖位置にあり、ケーブルと接触し、ケーブルを所定の位置に保持するときに可能である。
【0013】
グリッパユニットは特に、2本のケーブルからなるツイストケーブルハーネス用のダブルグリッパであってもよい。3本以上のケーブルを把持し、取り扱うために、以下に説明するグリッパユニットを使用することも考えられる。このような多重グリッパは、グリッパジョー1つあたりに1つ以上の係合部材を有することとなる。ケーブルハーネスが例えば、3本のケーブルからなる場合、2つの係合部材のグリッパジョーを設けなければならない。
【0014】
好適な実施形態では、関連するグリッパジョーに対する相対運動を可能にするための少なくとも1つの係合部材が、例えば、関連するグリッパジョーとは独立して、別個のまたは個別の駆動装置によって移動可能である。係合部材は個別に、または対向する第2の係合部材と対で動かすことができる。したがって、グリッパジョーまたはグリッパジョーのジョー部材に対する、係合部材の有利な相対運動が可能である。グリッパジョーが開放位置にあるとき、例えば、係合部材は関連するグリッパジョーに対して2つのケーブル間の所望の間隔を設定するために、開始位置から前方または後方に移動されてもよい。最終的に、グリッパジョーは開始位置から前方または後方に動かされた係合部材と共に、閉鎖位置へと導かれることができる。しかしながら、他の動作モードも考えられる。例えば、少なくとも1つの係合部材を最初にケーブルに向かって移動させることが考えられる。1つまたは複数の係合部材が内側からケーブルのうちの少なくとも1つを支持するように作用した後にのみ、グリッパジョーが閉じられる。代替的に、あるいは追加的に、係合部材は、必要に応じて、グリッパジョーが閉鎖位置を維持する間、グリッパジョーが既に閉鎖位置にあるときに、前後に移動しても良い。このようにして、ケーブルグリッパによって把持される2本のケーブル間の間隔を変更することも可能である。
【0015】
別の利点は、グリッパユニットが異なるケーブル径を有するケーブルに適用可能なことである。
【0016】
そのような可動係合部材を有する前述の実施形態はまた、各グリッパジョーのジョー部材が一体部品から作られ、例えばモノリシックに設計された構成要素によって形成される、一体型グリッパジョーを有するグリッパの変形例にも有利であり得る。2つのジョー部材を有するこの構成要素は、ハウジング内に設置することができる。次いで、係合部材は長手方向から直角にハウジング内に横方向に、好ましくは摺動可能に取り付けることができる。
【0017】
グリッパユニットが、互いに接近および離間するように移動可能な2つの係合部材を有していれば有利である。各グリッパジョーはまた、1つの係合部材を割り当てられてもよい。したがって、1つの係合部材は、1つのグリッパジョーのジョー部材の間に常に配置される。ケーブル間の間隔を増大させるために、係合部材は、互いに向かって移動され、係合部材を互いに離間するように移動させることによって、または係合部材を後退させることによって、ケーブル間隔を容易に減少させることができる。したがって、ケーブルハーネスの2つのケーブル間の所望の間隔を容易かつ正確に設定することができる。係合部材をケーブルハーネス内に移動させる(後退および前進)ための、および係合部材をケーブルハーネスから離れるように移動させる(後退移動)ための移動方向は、グリッパジョーの開閉方向と同じ方向に延在する。
【0018】
少なくとも1つの係合部材に別個の駆動装置が設けられ、それによって、係合部材をケーブルハーネスのケーブル間で移動させて、ケーブルと接し、ケーブルを離間するように押すことができるようにすると、特に好適であり得る。少なくとも開放位置と閉鎖位置との間の移動に関してグリッパジョーを操作するために、別の駆動装置または複数の追加の駆動装置を設けることができる。1つもしくは複数の係合部材を正確に制御することは、かかる1つもしくは複数の係合部材固有の駆動部によって可能となる。駆動装置は、少なくとも1つの係合部材を作動または駆動するための電動モータを含むことができる。電動モータは例えば、ステッピングモータとして設計することができ、これにより、係合部材はケーブル間の所望の間隔を設定するように、高精度で所定距離だけ並進方向へ変位させることができる。グリッパユニットは、制御装置もしくは接続された、あるいは接続可能な制御装置を有することができ、それによって電動モータを駆動する駆動部を介して、あるいはケーブル間の少なくとも1つの係合部材の前進または後退移動を作動もしくは駆動するもう1つのアクチュエータを介して制御が可能になる。
【0019】
各係合部材に駆動装置を割り当てることができる。しかしながら、両方の係合部材を移動させるための共有駆動装置も同様に有利であり得る。係合部材は、この駆動装置に接続されてもよく、それによって、係合部材の同時の反対方向の移動が保証される。それによって、2つの係合部材は対を形成する。
【0020】
ジョー部材はケーブル間の少なくとも1つの係合部材の後退および前進の間、またはケーブル間の間隔を変化させる少なくとも1つの係合部材の戻り移動の間、ケーブルの移動を補償するために、グリッパジョーに開閉方向に幾分摺動可能に取り付けられてもよい。ジョー部材とケーブルとの間の接触を維持するために、ジョー部材が、1つ以上のばねによってグリッパジョーに弾性的に取り付けられることが好適であり得る。ジョー部材がケーブルとの接触を確立するためのクランプ面を有する場合、それぞれのクランプ面はケーブルのための当接側部として機能することができ、少なくとも1つの係合部材が後退または前進させられるときに、ケーブルの拡張する動きを補償するために、ケーブルをそれに沿って移動させることができる。
【0021】
開放位置および閉鎖位置を形成するために、単一の駆動装置を用いてグリッパジョーを操作することが考えられる。したがって、グリッパユニットは、グリッパジョーの全てジョー部材が少なくとも必要な横方向の動きに関して動作可能な共有駆動部を備える。しかしながら、可変性の観点から、グリッパユニットがグリッパジョーを操作するための2つの駆動部を備え、互いに向き合い、それぞれが1つのケーブルに関連付けられたジョー部材が、それぞれの駆動部によって、閉鎖方向または開放方向に移動可能であることが好適であり得る。
【0022】
係合部材は、少なくとも1つの有効楔面を有する楔部材であってもよい。有効楔面は、ケーブルと動作可能に接続されるか、または接続され得る楔部材の楔面を示すと理解される。楔部材を閉鎖する方向に動かすとき、楔部材は、クランプ面によってケーブルと接触するようになる。楔部材が前進すると、ケーブルは横方向に、すなわち、閉鎖方向に対して横方向に押されることとなり得る。このようにして、ケーブル間の間隔を増加させるためのケーブルの横方向の移動を達成することができる。好ましくは、楔部材が両方のケーブルに力を同時に加え、それらを分離する方向へ押圧するための2つの有効楔面を有することができる。
【0023】
一実施形態では、グリッパジョーがそれらのクランプ面に対して有効楔面よりも高い摩擦係数を有することができる。
【0024】
楔部材はケーブルと接触せず、楔部材が閉鎖方向に移動するときにケーブルに作用しない楔面(無効楔面)を有することができる。この無効楔面は、前述の長手方向を横切る閉鎖方向に対応する楔部材の主移動方向と同一平面上にある真っ直ぐな楔面であってもよい。この場合斜めのコースを有する他方の楔面は、有効楔面を形成する。
【0025】
楔部材は、2つの斜め楔面を有する楔であってもよい。斜め楔面は、上述の2つの有効楔面を形成する。2つの斜め楔面を有するこのような楔部材は、「ダブル楔」という用語によっても知られている。楔部材が有する2つの楔面が対称の場合、特に好ましい。対称軸または対称面は、前述の長手方向を横切る閉鎖方向に対応する楔部材の主移動方向と同軸に延びる。
【0026】
楔部材はダブル楔を形成するように2つの有効楔面を有することができ、楔部材の楔角度は、30°~90°、好ましくは45°~70°、より好ましくは約60°である。
【0027】
一実施形態において、グリッパユニットは、互いに対向し、同じケーブルとの接触を確立するように互いに接近および離間するように移動することができるクランプ面を有する2つのジョー部材を備えることができ、2つのクランプ面は、対を形成する、互いに対向する楔部材の楔面の間の角度よりも小さい角度で囲まれる。好ましくは対向するジョー部材のクランプ面間の角度αは90°とすることができ、そして互いに離れて対向する楔部材の楔面の間の角度は120°とすることができる。これは、ケーブルが1つの楔部材および2つのジョー部材によってのみ囲まれ、これらの間にクランプされる場合であっても、ケーブルを強固に保持可能とすることを保証する。
【0028】
ジョー部材は、少なくともケーブルに面する領域において、実質的に三角形の断面形状を有しても良い。1つのグリッパジョー当たりの2つのジョー部材のクランプ面は、断面または長手方向にV字形状を有することができる。
【0029】
グリッパユニットが互いに接近および離間するように移動可能な対を形成する係合部材を有する場合、それぞれが斜めの有効楔面およびそれぞれの真っ直ぐな楔面を有する2つの楔部材が係合部材として提供されることが有利であり得る。一対の係合部材の楔部材は、係合部材が前方または後方に移動される間、それらの真っ直ぐな楔面において、閉鎖または開放方向に互いに沿って摺動可能とすることができる。この変形例は特に、損傷し易い絶縁体を有するケーブルに適している。したがって、真っ直ぐな楔面は、上述の移動(前方または後方移動)のための摺動面を形成する。真っ直ぐな楔面は、楔部材を相互依存的に案内するための平坦な設計としても良い。有効楔面は、輪郭設計としても良い。
【0030】
代替的な実施形態において、グリッパユニットが対を形成し、互いに離間するように移動することができる楔形係合部材を備えることができ、楔形係合部材はそれぞれ、該係合部材を前方または後方に移動させるために、移動方向に対して真っ直ぐな楔面および斜め楔面を有する。真っ直ぐな楔面はケーブルを支持する。係合部材の斜め楔面は、係合部材が閉鎖または開放方向に前方または後方に移動されるときに、該斜め楔面が相互依存して案内されるように、互いに動作可能に接続されることができる。この変形例は、厚い、特に軟質プラスチックケーシングがケーブルの絶縁体として使用される、損傷し易い絶縁体を有するケーブルに特に適している。
【0031】
係合部材とケーブルとの間、特に楔部材とケーブルとの間の摩擦を低減するために、係合部材または楔部材は、低い摩擦係数を有するプラスチック材料から製造されるか、またはこうしたプラスチック材料でコーティングされてもよい。良好な摺動特性は、例えば、係合部材または楔部材が、低い摩擦係数を有するPTFEのような材料から作られる場合に達成され得る。
【0032】
ジョー部材は、好ましくは溝状の凹部および凹部間の突出部を有し得る。この場合、対向するジョー部材の相補的な凹部および突出部は、少なくとも閉鎖位置において、閉鎖方向に対して好ましくは互いに対向する前側で互いに移動することができる。これに加えて、またはこれに代えて、グリッパユニットは係合部材として2つの楔部材を備えることができ、これらの楔部材は互いに対向し、反対方向に移動することができ、楔部材の楔先端の領域において、互いに対向する相補的な、好ましくは溝状の凹部と、凹部間の突出部とが設けられ、これらは、少なくとも閉鎖位置において互いに移動することができる。
【0033】
適用領域を広げるために、凹部の溝幅が、ケーブルのオフセットを作り出すために楔部材が長手方向に互いに対して移動可能となるように、凹部に入り込む各楔部材の対向する突出部の幅と比較してより大きい寸法とすることが有利となり得る。
【0034】
本発明の別の態様は、前述のグリッパユニットによって、組立式に作られたケーブル端部を有するプラグハウジングを提供するための取付ステーションに関し、それによって、ツイストケーブルハーネスの2つのケーブルのケーブル端部を把持することができ、2本のケーブルのケーブル端部をプラグハウジングのセルに挿入することができる。セルは、組立式に作られたケーブル端部が差し込まれるか、または他の方法で挿入されるプラグハウジングレシーバまたはプラグハウジングチャンバである。このようなグリッパユニットを備えた取付ステーションは、可変的かつ効率的に操作することができる。取付ステーションに取り付けられたツイストケーブルハーネスは、高品質の要件を満たす。このような取付ステーションは組立ラインの下流にあってもよいし、組立ラインの一部であってもよい。組立ラインは例えば、電気ケーブルを切断し被覆を剥離するための剥離ステーションと、剥離されたケーブル端部に圧着端子を適用するための1つ以上の圧着ステーションと、必要に応じて保護スリーブステーションとを備えてもよい。
【0035】
さらに、本発明はツイストケーブルハーネスの2本のケーブルの組立式に作られたケーブル端部をプラグハウジングに提供する方法に関し、この方法では、ピン、スリーブ、または圧着端子などの接点が、好ましくは上記で参照した取付ステーションを使用してケーブル端部に取り付けられる。本方法は、以下のステップを含む。ケーブルグリッパユニットでケーブルを把持するステップであって、ケーブルの外側がグリッパジョーによって囲まれ、ケーブルはケーブル間に挿入される少なくとも1つの係合部材によって内側から作用され、少なくとも1つの係合部材を前方または後方に移動させることによってケーブル間の間隔を調整するステップ。ケーブル間の間隔が維持されるケーブルグリッパユニットによってケーブルのケーブル端部をプラグハウジングの所望のセルに挿入するステップ。ケーブル間の間隔を調整するための少なくとも1つの係合部材の前方または後方への移動は、ケーブルの外側がグリッパジョーによって囲まれ、ケーブルが少なくとも1つの係合部材によって内側から支持されるように既に作用された後に行うことができる。しかしながら、少なくとも1つの係合部材の上述の前方または後方移動が、最初に述べたステップの前またはその間に、あるいは最初に述べたステップの間に実行される場合も有利となり得る。したがって、所望のケーブル間隔に応じて、少なくとも1つの係合部材は、例えば、閉鎖ステップ中(すなわち、グリッパジョーが閉鎖方向に移動されて、グリッパジョーの外側が閉じられる閉鎖位置を生成するとき)、わずかに前方に移動され得る。
【0036】
本発明のさらなる個々の特徴および利点は、以下の例示的な実施形態の説明および図面から得られる。図面は以下の通り。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】閉鎖位置にある2つの楔部材を有し、閉鎖した該グリッパユニットによって2本のケーブルが把持されている、本発明によるグリッパユニットの斜視図である。
【
図2a】
図1のグリッパユニットであるが、異なる角度でわずかに縮小された斜視図である。
【
図3a】
図2aのグリッパユニットにおいて、ケーブル間の間隔を増加させるために楔部材がケーブル間にさらに挿入された図である。
【
図4a】
図2aのグリッパユニットにおいて、該グリッパユニットによってより太いケーブルが把持されている図である。
【
図5a】開放位置にあるグリッパユニットの斜視図である。
【
図5b】開いたグリッパユニットと、それらの間の2本のケーブルの2つの端部の図である。
【
図6】グリッパユニットの1つの楔部材をわずかに拡大した斜視図である。
【
図7】閉鎖位置にあるグリッパユニットの2つの楔部材をわずかに拡大した図である。
【
図8a】グリッパユニットのさらなる斜視図である。
【
図8b】オフセット形成のための処理ステップ実行後のグリッパユニットの図である。
【
図9a】個々のステップにおけるオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図9b】個々のステップにおけるオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図9c】個々のステップにおけるオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図9d】個々のステップにおけるオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図10a】個々のステップにおける別のオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図10b】個々のステップにおける別のオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図10c】個々のステップにおける別のオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図10d】個々のステップにおける別のオフセット形成中のグリッパユニットの斜視図である。
【
図11a】第2の例示的な実施形態によるグリッパユニットのための2つの楔部材の斜視図である。
【
図11b】開放位置にある
図11aのグリッパユニットの楔部材の斜視図である。
【
図11c】閉鎖位置にあるグリッパユニットである。
【
図11d】ケーブル間の間隔を減少させるために楔部材を後退させた後のグリッパユニットである。
【
図12a】第3の例示的な実施形態に係るグリッパユニットの2つの係合部材の斜視図である。
【
図12b】開放位置にある
図12aの係合部材を有するグリッパユニットの斜視図である。
【
図12c】係合部材が互いに離間するように移動した閉鎖位置にあるグリッパユニットである。
【
図12d】係合部材が互いに移動した閉鎖位置にあるグリッパユニットである。
【
図12e】
図12dに示す位置と比較して係合部材がわずかに変位した閉鎖位置にあるグリッパユニットである。
【
図13】本発明によるグリッパユニットを有する取付ステーションの簡略化された側面図である。
【
図14】2本のケーブルを備えたケーブルハーネスの一方の撚られていない端部を有する2本のケーブルからなるツイストケーブルハーネスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1はツイストケーブルハーネスの2本のケーブル8、9のケーブル端部を把持し、取り扱うためのグリッパユニット1を示し、ケーブル端部は、長手方向および近位方向の軸平行方向A(ここでは図示せず、
図14を参照)に沿って延在する。したがって、単純化のために、以下では、2本のケーブル8、9を把持するグリッパユニット1に「ダブルグリッパ」という用語を使用する。
【0039】
ここに示されるダブルグリッパ1は特に、組立式に作られたケーブル端部を有するプラグハウジングを提供するために使用される。圧着端子14は、この例ではそれぞれの被覆が剥がされたケーブル端部に取り付けられている。ケーブル8、9の組立式に作られたケーブル端部は、ダブルグリッパ1によってプラグハウジング(ここでは図示せず)へ導かれ、この目的のために設けられたプラグハウジングレシーバまたはプラグハウジングチャンバに挿入される。
【0040】
図1に示されるデカルト座標系は、ダブルグリッパ1の構成要素の方向および主な動きを理解するための助けとして役立つ。ダブルグリッパ1は、2つのグリッパジョー2、3を備え、これらのグリッパジョー2、3は長手方向Aを横断し、y方向の開放位置と閉鎖位置との間で反対方向に移動可能である。長手方向Aは、ケーブル8、9の各ケーブル軸が延在する方向にも対応する。グリッパジョー2、3は2つのジョー部材4、4’、5、5’からなり、これらのジョー部材は別個の構成要素として設計され、長手方向Aに関して互いに上に配置される。
図1に示す閉鎖位置において、グリッパジョー2、3は2本のケーブル8、9を取り囲む。各ケーブル8、9は、外側からケーブルをクランプするために閉鎖位置で作用を受けている。グリッパジョー2、3は
図1では閉じられているが、開放位置を形成するためにo方向に移動可能である。
【0041】
グリッパユニット1はさらに、2つの係合部材11を備え、これらの係合部材によって、ケーブル8、9は、閉鎖位置で支持されるように内側から作用される。1つの係合部材11はそれぞれ、グリッパジョー2、3のジョー部材4、5;4’、5’の間に配置される。2本のケーブル8、9の間を貫通する係合部材11は、ジョー部材4、4’、5、5’に対して別個の構成要素として設計される。ダブルグリッパ1の1つの利点は、とりわけ、撚られていないケーブル端部の長さ領域を小さく保つことができることである。
【0042】
係合部材11は能動部材として設計され、ここに示される位置から、ケーブル8、9の間で、y方向に、またはそれらから離れるように、さらに移動可能である。係合部材をケーブルハーネス内に移動させる(後退および前進)ための、および係合部材をハーネスから離間するように移動させる(後退移動)ための移動方向は、グリッパジョー2、3の開閉方向と明らかに同じ方向である。一方の係合部材の後退および挿入並びに他方のグリッパジョーの閉鎖方向または開放方向へのグリッパジョーの移動は、
図1に示すダブルグリッパについてy方向に行われる。以下の
図2~
図10に基づいて、ダブルグリッパ1の構造および動作を詳細に説明する。
【0043】
ブルグリッパ1がケーブル8、9のケーブル端部を把持すると直ちに、必要に応じて、ダブルグリッパ1全体が、提供プロセスを完了させるための目的に応じてx、yおよび/またはz方向にその後移動することができる。2本のケーブル8、9のケーブル端部は、ダブルグリッパ1内のそれらの位置に固定されたままである。
【0044】
符号Aで示される長手方向は、図面において水平方向として示されている。対を形成し、上側ケーブル8に関連する2つのジョー部材4、4’は上側に配置され、また、対を形成し、下側ケーブル8に関連する2つのジョー部材5、5’は、下側に配置される。単純化のために、そしてより良く理解するために、ジョー部材4、4’は以下で「上側ジョー部材」と呼ばれ、そしてジョー部材5、5’は「下側ジョー部材」と呼ぶ。もちろん、ダブルグリッパ1は必要に応じて、異なる方向に配置し、位置合わせさせることもできる。長手方向Aは、例えば、垂直または任意の他の方向とすることができる。ジョー部材4、4’;5、5’は軸A周りに回転させることができる。ここに示される水平な主移動方向の代わりに、グリッパジョー2、3、それらのジョー部材4、4’;5、5’および係合部材11は、垂直方向(x軸方向)に移動させることもできる。
【0045】
ダブルグリッパ1は、以下のように2本のケーブル8、9と係合することができる。ケーブル8、9の組立式に作られた端部は、従来の方法で位置合わせされる。この場合、ダブルグリッパ1は、2つの個々のケーブル端部を収容することができる。係合部材11を有する対は、2つのケーブル8、9の間の中間に挿入され、ケーブル8、9の所望の間隔(H)に達するまでそれらを一緒に移動させる(以下の
図2bおよび
図3b参照)。上側ジョー部材4、4’および下側ジョー部材5、5’も共に動かされ、その結果、一方のケーブル端部が、1つのグリッパおよび楔部材の対によって4箇所でクランプされる。また、ダブルグリッパ1を用いて、4箇所ではなく3箇所のみで、各ケーブルを確実に固定することも可能である。この場合、上側ケーブル8は上側ジョー部材4、4’と係合部材11の一方との間でのみクランプされ、下側ケーブル9は下側ジョー部材5、5’と他方の係合部材11との間でのみクランプされる。この3点固定は、ダブルグリッパの特別な動作モードを可能にする。例えば、3点固定により、ケーブル間にオフセットを形成することが可能である。
【0046】
セル間の間隔が異なるプラグハウジングの提供を可能にするために、ケーブル8、9間の間隔は、それに応じて調整されなければならない。ダブルグリッパ1は、所望のケーブル間隔に到達するまで、適切な作動後に係合部材11が前方または後方に移動される距離を調整することを非常に容易にする。
図2および
図3は、ケーブル距離をどのように変更することができるかの例を示す。
図2は、グリッパジョー2、3が閉鎖位置にあるダブルグリッパ1を示す。
図2に示す位置では、係合部材11が、ケーブル2、3がある間隔Hで分離するまで後退させられる(
図2b)。ケーブル8、9の間の間隔Hを増加させるために、係合部材11は、ケーブル8、9の間の空間内で方向eまたはe’に後退する。したがって、ケーブル8、9は楔部材21、22として構成された係合部材11によって離間するように押され、これにより、ケーブル間隔が増加する。ケーブル8、9の上下移動を保証するために、ジョー部材4、4’;5、5’は横方向に移動される。この目的のために、ジョー部材4、4’;5、5’は、グリッパジョー2、3の閉鎖または開放方向にわずかに摺動可能に位置決めされる。
図3aおよび
図3bは、係合部材11が
図2a、
図2bに示す開始位置と比較してさらに後退したダブルグリッパ1を示す。ここで、ケーブル間隔Hは増加している。
【0047】
しかしながら、ダブルグリッパ1は、ケーブル8、9間の間隔Hを変えることを可能にするだけではない。ダブルグリッパ1はまた、異なるケーブル径を有するケーブルのケーブル端部を把持し、取り扱うのにも適している。
図4aおよび
図4bから分かるように、同じダブルグリッパ1は、かなり大きなケーブル径を有するケーブル8、9を把持することもできる。変換は必要ない。
【0048】
図2bは、同様に係合部材11が楔部材21、22として構成されていることを示している。各楔部材21、22は、両方のケーブル8、9に作用することができる2つの斜め有効楔面を有する。左楔部材21の楔面は符号25および26で示され、右楔部材22の楔面は符号25’および26’で示される。対称形状の楔部材21、22は、断面においてダブル楔として設計されている。本実施形態では、楔部材21、22の楔角度γは60°である。
【0049】
対向し、互いに接近および離間する移動が可能で、かつ、対を形成する上側ジョー部材4、4’はクランプ面23、23’を備え、これらは角度αで閉鎖する。下側ジョー部材5、5’のクランプ面24、24’が囲む角度は実質的に同じである。対向する楔面25および25’または26および26’を有する楔部材21、22の間の角度を符号βで示す。ダブルグリッパ1の完全な機能のために、角度αは角度βより小さくなければならない。本実施形態では、互いに対向する上側ジョー部材4、4’の2つのクランプ面23、23’の間の角度αは90°である。下側ジョー部材5、5’についても同様である。対向する楔面25および25’または26および26’を有する楔部材12、22間の角度βは、この場合120°である。こうした幾何学形状は、各ケーブル8、9を、これらに1つの楔部材21、22および2つのジョー部材4、4’;5、5’が、クランプまたは支持するように作用することによってのみ囲まれる場合でも、これらケーブルを確実に保持できることを保証する。ケーブルは、3箇所の側部で保持されているので、脱落することはない。
【0050】
ダブルグリッパ1の設計の構造的詳細は、
図5a、5bから得ることができる。例えば、図では上側ジョー部材4、4’および下側ジョー部材5、5’は、前側に、相補的に対向する溝状の凹部17、17’およびこれら溝の間の突起18、18’を備え、これらは互いに移動可能であることが示される。互いに対向するジョー部材4、4’;5、5’の凹部17、17’および突起18、18’は、閉鎖位置において互いに挿入される(例えば上記の
図1を参照)。対向し、反対方向に移動可能な2つの楔部材21、22は、楔先端領域で相補的な形状を有する溝状の凹部27、27’およびそれらの間の凹部28、28’を有し、これらは互いに移動可能である。
【0051】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るダブルグリッパの楔部材22を再び示している。特に
図7から明らかに分かるように、凹部27、27’の溝幅Bは、これら凹部に挿入される各楔部材21、22の対向する突起28、28’の幅bよりも寸法が大きい。これにより、ダブルグリッパによるケーブルのオフセットを達成することが可能になる。ケーブル間のオフセットを確立した後、楔部材21の一方は他方の楔部材22に対して長手方向Aに変位される。
図8bはこのようなオフセット位置にあるダブルグリッパ1を示す。下側ケーブル9は、上側ケーブル8と比較して軸線方向Aにオフセット距離Lだけ前方に移動される。
図8aは比較のために開始位置にあるダブルグリッパ1を示す。関連するジョー部材5、5’および一方の楔部材、ここでは例として楔部材22と関係している下側ケーブル9を、数ミリメートルのオフセット距離だけ長手方向Aに沿って前方に移動させた。弾性絶縁体を有するケーブルの場合、楔部材21、22の楔面25、25’;26、26’は、ケーブルのケーブル絶縁体に対するそれらの摩擦が小さくなるように設計されていれば十分である。
【0052】
損傷し易い絶縁体を有するケーブルの場合、オフセットは、修正された手順に従って形成することができる。
図9a~
図9dには、上述した改良された方式によるダブルグリッパ1によるオフセットを形成するための個々のステップが示されている。
図10a~10dは、オフセットを形成するための改良された方法の変形例に関するものである。ケーブル8、9の絶縁が損傷を受けないことを保証するために、工程は以下のように変更される。ケーブル8、9の個々の端部はそれぞれ、一対のジョー部材4、4’、5、5’および割り当てられた楔部材21、22によってのみ、3箇所でクランプされる(
図9a、
図10a)。分離グリッパグループ、すなわち、例えば、一方の側に楔部材21を有する上側ジョー部材4、4’の対と、他方の側に楔部材22を有する下側ジョー部材5、5’の対とは、グリッパグループの一部ではないそれぞれの他の楔部材22、21がそれぞれのケーブル8、9ともはや何ら接触しなくなるまで、互いにさらに離れるように移動する。これは、一方のグリッパグループ、例えば、一対の下側ジョー部材5、5’と楔部材22からなるグリッパグループを矢印uの方向に移動させることによって(
図9b)、あるいはこのグリッパグループを矢印wの方向に上方に移動させることによって(
図10b)達成することができる。その後、ケーブル方向におけるオフセット量は、一対の下側ジョー部材5、5’および楔部材22と共に前記グリッパグループによって矢印vの方向に横移動され(
図9c、
図10c)、2つのグリッパグループは再び一緒にされる(
図9d、
図10d)。2つのグリッパグループを一緒にするための移動方向は
図9dおよび
図10dに矢印で示されており、図から分かるように、矢印は
図9bおよび
図10bの方向とは反対の方向に延在する。
【0053】
図11a~
図11dは、ダブルグリッパ1の第2の例示的な実施形態に関するものである。ここで使用される楔部材21、22は、それぞれ、1つの有効楔面のみを有する。グリッパユニット1は、
図11aに示されるように対を形成し、互いに接近および離間するように移動可能な楔部材21、22を備え、これら楔部材は、それぞれ斜め有効楔面23、23’と、それぞれ真っ直ぐな楔面32、32’とを有する。楔部材21、22は、前方または後方への移動の間、それらの真っ直ぐな楔面32、32’上で互いに沿って閉鎖または開放方向に摺動可能である。斜め有効楔面23、23’は、ケーブルを所定位置に安全に保持できるような輪郭を有する。真っ直ぐな楔面32、32’は、楔部材の相互依存的な案内のために平坦に設計され、それによって、これら楔面は、前述の移動のための摺動面を形成する。ジョー部材4、4’;5、5’は、先の実施形態に関するものとほぼ同様に構成される。
図11cおよび
図11dから明らかに分かるように、ケーブル8、9はダブルグリッパ1が閉鎖するときに、3点固定でダブルグリッパ1に把持される。この実施形態によるダブルグリッパ1では、損傷し易い絶縁体を有するケーブル8、9を、中間工程なしに長手方向に直線移動させてオフセット位置に誘導させることができ、これにより処理時間が節約される。第1の実施形態を超える利点は、比較的大きなオフセット距離が可能になることである。
【0054】
図12a~
図12dは、ダブルグリッパ1の第3の例示的な実施形態に関するものである。このダブルグリッパ1は、ケーブルの特に穏やかな取り扱いを特徴とする。ダブルグリッパ1は係合部材11を備え、これら係合部材は対を形成し、互いに接近または離間するように移動可能である。各楔形係合部材11は、該係合部材を前進または後退させるために、移動方向に対して真っ直ぐな楔面33、33’および斜め楔面34、34’を備える。
図12a~
図12dでは、水平である真っ直ぐな楔面33、33’は、各ケーブル8、9を支持する役割を果たす。これは、より小さいクランプ圧で行うこともでき、これが、この実施形態が、厚く、非常に柔らかい絶縁体を有するケーブルを取り扱うのに特に適している理由である。係合部材11の斜め楔面34、34’は互いに動作可能に接続されることができ、それによって斜め楔面34、34’は閉鎖方向sまたは開放方向oへの係合部材11の前方または後方に移動する間、従属的に案内される。ジョー部材4、4’;5、5’のクランプ面および楔形係合部材11は、90°および45°の角度を有する角部を形成する。これらの角度は十分に鈍く、それぞれのケーブル8、9は、厚くて柔らかい絶縁体を有していても、ダブルグリッパから横方向に押し出すことができない。符号35で示される係合部材11の移動経路は、角度λだけ傾斜している。このダブルグリッパ1により、損傷し易いケーブルであっても、損傷を受けることなく把持し、所望の目的地まで運ぶことができる。
【0055】
図13は、上述したようなダブルグリッパ1によって、ケーブル8、9の組立式に作られたケーブル端部をプラグハウジング20に提供するための取付ステーション10を示す。ダブルグリッパ1はケーブルハーネス13の2本のケーブルの組立式に作られたケーブル端部を把持し、2本のケーブル8、9のケーブル端部をプラグハウジング20のセルに挿入する。
図13から分かるように、上側ジョー部材4、4’および下側ジョー部材5、5’並びに係合部材11は、それぞれ、y方向に必要な横方向の移動を操作及び実行するため、それぞれ自身の駆動装置を有する。符号29で示される駆動装置は上側ジョー部材4、4’に割り当てられ、符号31で示される駆動装置は下側ジョー部材5、5’に割り当てられ、符号30で示される駆動装置は係合部材に割り当てられる。制御装置(ここでは図示せず)によって送信されたコマンドを受信した後、駆動装置29、30および31が作動され、グリッパジョーの開放位置または閉鎖位置を作り出し、係合部材を前進または後退させるのに必要なダブルグリッパの構成要素(上側ジョー部材4、4’、下側ジョー部材5、5’および係合部材11)の移動が行われる。
【0056】
また、
図13からも分かるように、下側ジョー部材5、5’および関連する係合部材11はグループを形成するように組み合わされ、ジョー部材5、5’および係合部材11は共にクループ化され、長手方向A(y方向)におけるオフセット駆動部36によってオフセットを生成するように移動され得る。
【0057】
図14は、2本のケーブル8、9を有するツイストワイヤハーネス13の端部を示す。ケーブルハーネス13の撚られていない端部または撚りから戻された端部が符号iとして示されている。通常、ケーブルハーネス13の撚られていない端部iのみがダブルグリッパ1によって検出され得るので、例えば、ツイストケーブルハーネス14の高い信号伝送品質の観点から、部分iを可能な限り短く保つことが重要となり得る。