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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】起伏ゲートおよびその設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/40 20060101AFI20240716BHJP
   E02B 7/50 20060101ALI20240716BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
E02B7/40
E02B7/50
E02B7/20 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020015221
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021123845
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】仲保 京一
(72)【発明者】
【氏名】森井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 聡太
(72)【発明者】
【氏名】宮本 訓兄
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196659(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186520(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/40
E02B 7/50
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側を中心に回動して起立および倒伏する扉体を備えた起伏ゲートの設置方法であって、
前記扉体を設置する扉体設置工程と、
倒伏時に前記扉体の下面が接地する被接地面を形成する複数のパネルを、前記扉体を倒伏させて前記扉体の下面と接触させることによって前記パネルが前記扉体の下面に沿って変位可能に、互いに間隔を置いて平面状に配置するパネル配置工程と、
前記パネル配置工程の後、前記扉体を倒伏させて前記扉体の下面を前記パネルに接触させ、前記パネルを前記扉体の下面に沿って変位させるパネル変位工程と、
前記パネル変位工程の後、前記パネルを固定するパネル固定工程とを備えている
ことを特徴とする起伏ゲートの設置方法。
【請求項2】
請求項1に記載の起伏ゲートの設置方法において、
前記パネル配置工程では、前記複数のパネルを配置した後、前記パネルの周囲に液状の硬化剤を流し込んで前記パネルを浮上させ、
前記パネル固定工程では、前記硬化剤が硬化することによって前記パネルが固定される
ことを特徴とする起伏ゲートの設置方法。
【請求項3】
請求項2に記載の起伏ゲートの設置方法において、
前記パネルとパネルとの間には、前記パネル変位工程における前記パネルの変位を許容可能に構成された間隔保持部材が取り付けられている
ことを特徴とする起伏ゲートの設置方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の起伏ゲートの設置方法において、
前記パネル配置工程では、前記パネルの下方に空間が形成されるように前記パネルを嵩上げする嵩上げ部材を配置し、前記嵩上げ部材の上に前記複数のパネルを配置する
ことを特徴とする起伏ゲートの設置方法。
【請求項5】
請求項3に記載の起伏ゲートの設置方法において、
前記間隔保持部材は、前記パネルの下面よりも下方に突出して設けられ、前記パネルを嵩上げする嵩上げ部材を兼用している
ことを特徴とする起伏ゲートの設置方法。
【請求項6】
請求項1に記載の起伏ゲートの設置方法において、
前記パネル配置工程では、塑性部材を配置した後、前記塑性部材の上に前記複数のパネルを配置し、
前記パネル変位工程では、前記塑性部材が前記パネルの変位に伴って塑性変形する
ことを特徴とする起伏ゲートの設置方法。
【請求項7】
請求項6に記載の起伏ゲートの設置方法において、
前記パネル固定工程では、前記パネルの周囲に液状の硬化剤を流し込み、前記硬化剤が硬化することによって前記パネルが固定される
ことを特徴とする起伏ゲートの設置方法。
【請求項8】
基端側を中心に回動して起立および倒伏する扉体と、
互いに間隔を置いて平面状に配置され、倒伏時に前記扉体の下面が接地する被接地面を形成する複数のパネル、および、前記パネルの周囲に設けられ、前記パネルを固定する硬化剤を有し、倒伏時の前記扉体が格納される格納部内に配置された被接地部とを備え、
前記硬化剤は、前記パネルと前記格納部の底面との隙間を埋めており、
前記被接地部は、前記パネルと前記格納部の底面との間に配置され、前記パネルと前記底面との間に間隔を形成する嵩上げ部材をさらに有し、
前記嵩上げ部材は、前記パネル又は底面から離隔している
ことを特徴とする起伏ゲート。
【請求項9】
基端側を中心に回動して起立および倒伏する扉体と、
互いに間隔を置いて平面状に配置され、倒伏時に前記扉体の下面が接地する被接地面を形成する複数のパネル、および、前記パネルの周囲に設けられ、前記パネルを固定する硬化剤を有する被接地部とを備え、
前記パネルとパネルとの間には、間隔保持部材が取り付けられ、
前記間隔保持部材は、前記硬化剤の硬化前において前記硬化剤に浮いた状態の前記パネルの変位を許容可能な材料で構成されている
ことを特徴とする起伏ゲート。
【請求項10】
基端側を中心に回動して起立および倒伏する扉体と、
互いに間隔を置いて平面状に配置され、倒伏時に前記扉体の下面が接地する被接地面を形成する複数のパネル、および、前記パネルの周囲に設けられ、前記パネルを固定する硬化剤を有し、倒伏時の前記扉体が格納される格納部内に配置された被接地部とを備え、
前記被接地部は、前記格納部を複数の空間に仕切られる仕切りをさらに有し、
前記格納部の複数の空間のそれぞれに複数の前記パネルが配置されている
ことを特徴とする起伏ゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、起伏ゲートおよびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水や津波による浸水を防止するための起伏ゲート(フラップゲート)が例えば特許文献1に開示されている。この起伏ゲートは、支持部と、基端が支持部に回動自在に支持された扉体とを備えている。起伏ゲートでは、通常時は扉体が基礎地盤に接地して倒伏しており、非常時(浸水時)には扉体が回動して起立する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5580785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、倒伏時に扉体が接地する基礎地盤(被接地部)は、コンクリートで形成され、表面にある程度の凹凸が形成されるのが一般的である。一方、基礎地盤に接地する扉体の下面(接地部)も、コンクリート程ではないが、製缶誤差(歪み)がある。そうすると、倒伏時に扉体と基礎地盤との間に部分的な隙間が生じてしまい、扉体の上面に繰り返し作用する車両の輪荷重等によって扉体の耐久性が低下する。そのため、上述した隙間をできるだけ減らすために、基礎地盤の表面の凸部を削る等の作業が必要となり、非常に手間が掛かってしまう。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な施工により、倒伏時の扉体と被接地面との隙間を低減し得る起伏ゲートの設置方法および起伏ゲートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、基端側を中心に回動して起立および倒伏する扉体を備えた起伏ゲートの設置方法に係るものである。前記起伏ゲートの設置方法は、扉体設置工程と、パネル配置工程と、パネル変位工程と、パネル固定工程とを備えている。前記扉体設置工程は、前記扉体を設置する工程である。前記パネル配置工程は、倒伏時に前記扉体の下面が接地する被接地面を形成する複数のパネルを、前記扉体を倒伏させて前記扉体の下面と接触させることによって前記パネルが前記扉体の下面に沿って変位可能に、互いに間隔を置いて平面状に配置する工程である。前記パネル変位工程は、前記パネル配置工程の後、前記扉体を倒伏させて前記扉体の下面を前記パネルに接触させ、前記パネルを前記扉体の下面に沿って変位させる工程である。前記パネル固定工程は、前記パネル変位工程の後、前記パネルを固定する工程である。
【0007】
本願に開示の別の技術は、扉体と、被接地部とを備えた起伏ゲートに係るものである。前記扉体は、基端側を中心に回動して起立および倒伏を行う。前記被接地部は、互いに間隔を置いて平面状に配置され、倒伏時に前記扉体の下面が接地する被接地面を形成する複数のパネル、前記パネルの周囲に設けられ、前記パネルを固定する液状の硬化剤を有している。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示の技術によれば、簡易な施工により、倒伏時の扉体と被接地面との隙間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る起伏ゲートの倒伏時の概略構成を側面側から視て示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る設置方法の枠設置工程を示す図である。
図3図3は、実施形態1に係る設置方法の扉体設置工程を示す図である。
図4図4は、実施形態1に係る設置方法のパネル配置工程の一状態を示す図である。
図5図5は、図4を上方から視て示す平面図である。
図6図6は、実施形態1に係る設置方法のパネル配置工程の一状態を示す図である。
図7図7は、実施形態1に係る設置方法のパネル変位工程を示す図である。
図8図8は、実施形態1の変形例に係る間隔保持部材の概略構成示す図である。
図9図9は、実施形態2に係る設置方法のパネル配置工程を示す図である。
図10図10は、図9を上方から視て示す平面図である。
図11図11は、実施形態2に係る設置方法のパネル変位工程を示す図である。
図12図12は、実施形態2に係る設置方法のパネル固定工程を示す図である。
図13図13は、実施形態3に係る設置方法の枠設置工程および仕切り工程を示す図である。
図14図14は、実施形態3に係る設置方法のパネル配置工程の一状態を示す図である。
図15図15は、実施形態3に係る設置方法のパネル配置工程の一状態を示す図である。
図16図16は、実施形態3に係る設置方法のパネル変位工程を示す図である。
図17図17は、実施形態4に係る設置方法のパネル配置工程を示す図である。
図18図18は、実施形態4に係る設置方法のパネル変位工程を示す図である。
図19図19は、実施形態4に係る設置方法のパネル固定工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
本願の実施形態1について図1図7を参照しながら説明する。本実施形態の起伏ゲート1は、路面R(陸上)に設置され、洪水や津波、大雨によって水が生活空間や地下空間に浸入するのを防止するものである。起伏ゲート1は、浸入しようとする水を利用して自動的に起立動作および倒伏動作を行う浮体式起伏ゲート(浮体式のフラップゲートとも呼ばれることもある)である。
【0012】
図1に示すように、起伏ゲート1は、扉体10と、支持部16と、被接地部20とを備えている。図1では、被接地部20を概略的に示している。また、図1において水は左側から浸入するものとする。
【0013】
扉体10は、略矩形体に形成されている。扉体10は、基端12側を中心に回動して起立および倒伏する。扉体10は、基端12が支持部16に回動自在に支持されており、倒伏状態から回動して先端11側が起立する。即ち、起伏ゲート1では、図1に矢印で示すように、右回りに回動することで起立動作を行い、左回りに回動することで倒伏動作を行う。扉体10は、通常時は倒伏した状態(図1に実線で示す状態)になっており、非常時(即ち、水が浸入してきたとき)には浸入水の浮力によって倒伏状態から回動し起立した状態(図1に二点鎖線で示す状態)になるように構成されている。
【0014】
扉体10および支持部16は、格納部Sに設けられている。格納部Sは、路面Rに形成された凹部であり、倒伏時に扉体10が格納される。扉体10が格納部Sに格納された状態、即ち扉体10が倒伏した状態では、扉体10の下面14(接地部、接地面)が後述する被接地部20の被接地面23と接地する一方、扉体10の上面13が路面Rと面一(即ち、同じ高さ。以降も同様。)となる。つまり、通常時は、路面Rを通行する車両や人は扉体10の上面13を通行することになる。
【0015】
被接地部20は、格納部Sの底部に設けられ、倒伏時に扉体10が接地する部分である。図7にも示すように、被接地部20は、枠21と、パネル22と、嵩上げ部材24と、間隔保持部材25と、硬化剤26とを有している。
【0016】
枠21は、平面視で矩形状に形成されている。枠21は、平面視の大きさが扉体10の下面14の大きさと略同じである。枠21は、一部(略下半部)が二次コンクリートB2に埋設されている。つまり、枠21は、一部(略上半部)が二次コンクリートB2から露出して設けられている。二次コンクリートB2は、格納部Sの底部に位置する基礎コンクリートB1の上に打設されている。
【0017】
枠21は、扉体10の接地高さ(倒伏位置)を規定する部材であり、倒伏時に扉体10の下面14が接地する。枠21は、平面視矩形の枠であり、I(アイ)形鋼が矩形状に接続されて形成されている(図5参照)。倒伏時には、扉体10の下面14のうち、先端11、基端12および幅方向端部の下面14が枠21の上面に接地する。なお、枠21はI形鋼以外の形鋼で形成してもよい。
【0018】
パネル22は、枠21の内側に複数設けられており、倒伏時に扉体10の下面14が接地する被接地面23を形成している。パネル22は、一定の厚さを有する矩形体状に形成されている。パネル22は、例えばPUF(硬質ウレタンフォーム)パネルである。複数のパネル22は、互いに間隔を置いて平面状(水平面状)に配置されている。こうして配置された複数のパネル22の上面が被接地面23となる。なお、パネル22は、PUFパネル以外の材質のものであってもよい。
【0019】
嵩上げ部材24は、パネル22の周囲に硬化剤26を流し込む際、パネル22の下方に空間が形成されるように各パネル22を嵩上げするものであり、複数設けられている。嵩上げ部材24は、硬化剤26を流し込む際、パネル22の下に設けられる。
【0020】
間隔保持部材25は、パネル22とパネル22との間に取り付けられ、パネル22同士の間隔を保持する部材である。間隔保持部材25は、パネル22の一辺の中央に設けられている。間隔保持部材25は、後述するパネル変位工程におけるパネル22の変位を許容可能に構成されている。つまり、間隔保持部材25は、上述したパネル22の変位に追従するように構成されている。間隔保持部材25は、例えばスポンジ部材である。
【0021】
硬化剤26は、パネル変位工程による変位後のパネル22を固定するものである。硬化剤26は、枠21の内側においてパネル22の周囲に設けられている。硬化剤26は、液状態で枠21内に流し込まれ、その後硬化することによってパネル22を固定する。パネル22の比重は、硬化剤26の比重よりも小さい。硬化剤26は、流動性が高いセメント系セルフレベリング材等である。
【0022】
〈起伏ゲートの設置方法〉
上述した起伏ゲート1の設置方法は、枠設置工程と、扉体設置工程と、パネル配置工程と、パネル変位工程と、パネル固定工程とを備えている。
【0023】
先ず、枠設置工程が行われる。枠設置工程は、格納部Sの底部において扉体10が接地する領域に枠21を設置する工程である。図2に示すように、枠設置工程では、枠21が基礎コンクリートB1から所定高さの位置に設置される。
【0024】
具体的には、枠21は、基礎コンクリートB1から所定高さの位置に仮固定された後、二次コンクリートB2によって固定される。枠21は、略下半部が二次コンクリートB2に埋設され、略上半部が二次コンクリートB2から露出した状態で設置される。なお、枠21の設置方法は上述したものに限られない。
【0025】
また、枠設置工程では、支持部16の設置される部分が二次コンクリートB2で形成される。枠21内における二次コンクリートB2の高さは、支持部16が設置される二次コンクリートB2の高さよりも低い。
【0026】
枠設置工程に続いて、扉体設置工程が行われる。扉体設置工程は、扉体10および支持部16が格納部Sに設置される工程である。具体的に、図3に示すように、扉体10および支持部16は、支持部16が二次コンクリートB2に固定されることで設置される。扉体10は、基端12が支持部16に連結されている。扉体10は、下面14が枠21の上面に接触し得る状態で設置される。
【0027】
扉体設置工程に続いて、パネル配置工程が行われる。パネル配置工程は、扉体10が起立した状態で行われる。パネル配置工程は、複数のパネル22を、扉体10を倒伏させて扉体10の下面14と接触させることによってパネル22が扉体10の下面14に沿って変位可能に、互いに間隔を置いて平面状に配置する工程である。
【0028】
具体的には、図4および図5に示すように、パネル配置工程では、先ず、複数の嵩上げ部材24が所定の位置に配置される。つまり、嵩上げ部材24は、枠21内において二次コンクリートB2の上に配置される。
【0029】
続いて、複数のパネル22が嵩上げ部材24の上に配置される。このとき、複数のパネル22は、パネル22とパネル22との間に間隔保持部材25が取り付けられた状態で配置される。複数のパネル22は、互いに間隔を置いて平面状(水平面状)に配置される。こうして、パネル22が嵩上げ部材24の上に配置されることで、パネル22の下方に空間が形成される。つまり、パネル22は、嵩上げ部材24によって支持されることで、二次コンクリートB2と間隔を置いて配置される。
【0030】
嵩上げ部材24は、パネル22の4つの角部を支持している。箇所によっては、1つの嵩上げ部材24が複数の角部を支持している。例えば、異なるパネル22の4つの角部が互いに向き合う箇所では、1つの嵩上げ部材24がその4つの角部に跨って配置されている。また、異なるパネル22の2つの角部が隣り合う箇所では、1つの嵩上げ部材24がその2つの角部に跨って配置されている。
【0031】
続いてパネル配置工程では、図6に示すように、パネル22の周囲に液状の硬化剤26を流し込んでパネル22を浮上させる。つまり、硬化剤の浮力によってパネル22を浮上させる。硬化剤26は、パネル22が所定の高さに浮上するまで枠21内に流し込まれる。具体的に、パネル22は、上面(被接地面23)が枠21の上面よりも高くなる位置まで、即ち枠21の上面よりも上方に突出するまで浮上する。
【0032】
このとき、嵩上げ部材24によってパネル22の下方に空間が形成されているので、例えばパネルが二次コンクリートB2に直に配置される場合と比べて、硬化剤26による浮力がパネル22に作用しやすい。また、間隔保持部材25が設けられているので、パネル22とパネル22との間隔が保持され、そのため、パネル22が一カ所に偏在して浮上することを防止することができる。
【0033】
こうしてパネル22を浮上させることにより、パネル22は、後述するパネル変位工程で扉体10の下面14が接触することによって変位可能な状態になる。
【0034】
パネル配置工程に続いて、パネル変位工程が行われる。パネル変位工程は、扉体10を倒伏させて扉体10の下面14をパネル22に接触させ、パネル22を扉体10の下面14に沿って変位させる工程である。なお、パネル変位工程は、硬化剤26が硬化するまでに行われる。
【0035】
具体的に、図7に示すように、扉体10の下面14が枠21の上面に接触するまで扉体10を倒伏させる。このとき、パネル22は、枠21の上面よりも突出しているため、扉体10の下面14と接触し押し下げられる。そうすると、パネル22は扉体10の下面14の形状に沿って変位する。パネル22は、液状の硬化剤26に浮いた状態であるため、容易に扉体10の下面14に沿って変位する。これにより、扉体10の下面14と被接地面23(パネル22の上面)との隙間が低減される。
【0036】
例えば、下面14のうち設計値よりもプラスの誤差(歪)が発生している箇所のパネル22は、設計値よりもマイナスの誤差(歪)が発生している箇所のパネル22に比べて変位量が大きい。つまり、設計値よりもマイナスの誤差が大きい箇所ほど、パネル22と接触しない場合が生じ得る。そのため、硬化剤26の浮力によるパネル22の浮上高さ、即ちパネル22の枠21の上面からの突出量は、扉体10の下面14において設計値よりもマイナスの誤差が最も大きい箇所を考慮して設定される。
【0037】
図7に示すように、例えば枠21の上面を設計値に相当する基準面とした場合、プラスの誤差とは、下面14が枠21の上面よりも矢印(+)側に突出していることを意味し、マイナスの誤差とは、下面14が枠21の上面よりも矢印(-)側に凹んでいることを意味する。
【0038】
パネル変位工程に続いて、パネル固定工程が行われる。パネル固定工程は、パネル変位工程によって変位したパネル22を固定する工程である。つまり、パネル固定工程では、パネル22が変位した状態まま固定される。具体的には、図7に示すように、扉体10をパネル変位工程から引き続き倒伏させた状態で維持する。これにより、パネル22は変位した状態で維持される。そして、所定時間が経過し硬化剤26が硬化することによって、パネル22が固定される。
【0039】
こうして、扉体10、支持部16および被接地部20の設置が完了する。
【0040】
以上のように、上記実施形態の起伏ゲート1の設置方法は、扉体設置工程と、パネル配置工程と、パネル変位工程と、パネル固定工程とを備えている。扉体設置工程は、扉体10を設置する工程である。パネル配置工程は、倒伏時に扉体10の下面14が接地する被接地面23を形成する複数のパネル22を、扉体10を倒伏させて扉体10の下面14と接触させることによってパネル22が扉体10の下面14に沿って変位可能に、互いに間隔を置いて平面状に配置する工程である。パネル変位工程は、パネル配置工程の後、扉体10を倒伏させて扉体10の下面14をパネル22に接触させ、パネル22を扉体10の下面14に沿って変位させる工程である。パネル固定工程は、パネル変位工程の後、パネル22を固定する工程である。
【0041】
上記の構成によれば、倒伏時に扉体10が接地する被接地面23を形成する複数のパネル22が、扉体10の下面14に沿って変位可能に配置されるため、製作された扉体10の下面14の形状に沿った被接地面23を形成することができる。したがって、簡易な施工により、倒伏時の扉体10と被接地面23との隙間を低減することができる。その結果、扉体10の耐久性が向上する。
【0042】
また、例えば二次コンクリートB2が設計値よりも低い高さに打設された場合でも、パネル22が扉体10の下面14に沿って変位可能な高さにパネル22を配置することで、設計値の高さに被接地面23を形成することができる。これは、二次コンクリートB2が設計値よりも高く打設された場合でも同様である。このように、二次コンクリートB2の高さに左右されることなく、被接地面23を所定の高さに形成することができる。
【0043】
また、上記実施形態の起伏ゲート1の設置方法において、パネル配置工程では、複数のパネル22を配置した後、パネル22の周囲に液状の硬化剤26を流し込んでパネル22を浮上させ、パネル固定工程では、硬化剤26が硬化することによってパネル22が固定される。
【0044】
上記の構成によれば、パネル22を硬化剤26によって浮上させるため、簡易にパネル22を扉体10の下面14に沿って変位させることができる。また、硬化剤26が硬化することによってパネル22が固定されるので、簡易にパネル22を固定することができる。
【0045】
また、上記実施形態の起伏ゲート1の設置方法において、パネル22とパネル22との間には、パネル変位工程におけるパネル22の変位を許容可能に構成された間隔保持部材25が取り付けられている。
【0046】
上記の構成によれば、パネル22とパネル22との間隔が保持されるため、硬化剤26によってパネル22が浮上した際、パネル22が偏在して配置されることを防止することができる。そのため、扉体10の下面14の全体に対応した被接地面23を形成することができる。
【0047】
また、上記実施形態の起伏ゲート1の設置方法において、パネル配置工程では、パネル22の下方に空間が形成されるようにパネル22を嵩上げする嵩上げ部材24を配置し、嵩上げ部材24の上に複数のパネル22を配置する。
【0048】
上記の構成によれば、例えばパネルが二次コンクリートB2に直に配置される場合と比べて、硬化剤26による浮力がパネル22に作用しやすい。そのため、パネル22を速やかに浮上させることができる。上記実施形態では、硬化剤26が硬化するまでに扉体10を倒伏させてパネル22を変位させる必要があるところ、パネル22を速やかに浮上させることでパネル22を変位させるまでの時間を短縮することができる。特に、硬化するまでの時間が短い硬化剤を用いる場合や、扉体10の倒伏時間が懸かる場合には有効である。
【0049】
また、上記実施形態の起伏ゲート1は、扉体10と、被接地部20とを備えている。扉体10は、基端12側を中心に回動して起立および倒伏する。被接地部20は、互いに間隔を置いて平面状に配置され、倒伏時に扉体10の下面14が接地する被接地面23を形成する複数のパネル22、パネル22の周囲に設けられ、パネル22を固定する液状の硬化剤26を有する。
【0050】
上記の構成によれば、液状の硬化剤26によって浮上させたパネル22に、扉体10の下面14を接触させることによって、パネル22を扉体10の下面14に沿って変位させることが可能である。そのため、扉体10の下面14の形状に沿った被接地面23を形成することができ、倒伏時の扉体10と被接地面23との隙間を低減することができる。
【0051】
(実施形態1の変形例)
本変形例は、上記実施形態1の起伏ゲート1の設置方法において、間隔保持部材の構成を変更するようにしたものである。ここでは、上記実施形態1と異なる点について説明する。
【0052】
図8に示すように、本変形例の間隔保持部材27は、パネル22の下面よりも下方に突出して設けられ、パネル22を嵩上げする嵩上げ部材を兼用している。間隔保持部材27は、パネル22の下部に取り付けられている。この構成によれば、嵩上げ部材24の配置数量を削減することができる。そのため、パネル配置工程の時間を短縮することができる。
【0053】
(実施形態2)
本願の実施形態2について図9図12を参照しながら説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、パネル配置工程、パネル変位工程およびパネル固定工程の構成、並びに被接地部の構成を変更するようにしたものである。ここでは、上記実施形態1と異なる点について説明する。
【0054】
本実施形態の被接地部30は、図12に示すように、枠31と、パネル32と、塑性部材34と、硬化剤36とを有している。被接地部30は、上記実施形態1の被接地部において、嵩上げ部材および間隔保持部材が省略される一方、塑性部材34が追加されたものである。
【0055】
枠31は、上記実施形態1と同様、扉体10の接地高さ(倒伏位置)を規定する平面視矩形の枠であり、倒伏時に扉体10の下面14が接地する。パネル32は、上記実施形態1と同様、枠31の内側に複数設けられており、倒伏時に扉体10の下面14が接地する被接地面33を形成している。複数のパネル32は、互いに間隔を置いて平面状(水平面状)に配置されている。こうして配置された複数のパネル32の上面が被接地面33となる。
【0056】
塑性部材34は、枠31の内側において二次コンクリートB2の上に複数配置されている。塑性部材34は、パネル32の下に配置され、パネル32を塑性的に支持している。塑性部材34は、パネル変位工程のパネル32の変位に伴って塑性変形するように構成されている。塑性部材34は、例えば粘土が用いられる。
【0057】
硬化剤36は、パネル変位工程による変位後のパネル32を固定するものである。硬化剤36は、枠31の内側においてパネル32の周囲に設けられている。硬化剤36は、液状態で枠31内に流し込まれ、その後硬化することによってパネル32を固定する。
【0058】
本実施形態の起伏ゲート1の設置方法は、上記実施形態1と同様、枠設置工程と、扉体設置工程と、パネル配置工程と、パネル変位工程と、パネル固定工程とを備えている。
【0059】
先ず、枠設置工程および扉体設置工程が、上記実施形態1と同様に行われる。続くパネル配置工程は、上記実施形態1と同様、複数のパネル32を、扉体10を倒伏させて扉体10の下面14と接触させることによってパネル32が扉体10の下面14に沿って変位可能に、互いに間隔を置いて平面状に配置する工程である。
【0060】
具体的には、図9および図10に示すように、パネル配置工程では、先ず、複数の塑性部材34が所定の位置に配置される。つまり、塑性部材34は、枠31内において二次コンクリートB2の上に配置される。
【0061】
続いて、複数のパネル32が塑性部材34の上に配置される。複数のパネル32は、互いに間隔を置いて平面状(水平面状)に配置される。こうして、パネル32が塑性部材34によって支持される。また、パネル32は、上面(被接地面33)が枠31の上面よりも高くなるように、即ち枠31の上面よりも上方に突出するように塑性部材34で支持されている。
【0062】
塑性部材34は、パネル32の4つの角部を支持している。箇所によっては、1つの塑性部材34が複数の角部を支持している。例えば、異なるパネル32の4つの角部が互いに向き合う箇所では、1つの塑性部材34がその4つの角部に跨って配置されている。また、異なるパネル32の2つの角部が隣り合う箇所では、1つの塑性部材34がその2つの角部に跨って配置されている。
【0063】
パネル配置工程に続いて、パネル変位工程が行われる。パネル変位工程は、扉体10を倒伏させて扉体10の下面14をパネル32に接触させ、パネル32を扉体10の下面14に沿って変位させる工程である。
【0064】
具体的に、図11に示すように、扉体10の下面14が枠31の上面に接触するまで扉体10を倒伏させる。このとき、パネル32は、枠31の上面よりも突出しているため、扉体10の下面14と接触し押し下げられる。そうすると、パネル32が扉体10の下面14の形状に沿って変位し、そのパネル32の変位に伴って塑性部材34が塑性変形する。つまり、パネル32は、塑性部材34によって支持されているため、容易に扉体10の下面14に沿って変位する。これにより、扉体10の下面14と被接地面33(パネル32の上面)との隙間が低減される。
【0065】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様、パネル32の枠31の上面からの突出量は、扉体10の下面14において設計値よりもマイナスの誤差が最も大きい箇所を考慮して設定される。
【0066】
パネル変位工程に続いて、パネル固定工程が行われる。パネル固定工程は、パネル変位工程によって変位したパネル32を固定する工程である。つまり、パネル固定工程では、パネル32が変位した状態まま固定される。
【0067】
具体的には、先ず、扉体10を起立させる。続いて、図12に示すように、パネル32の周囲に液状の硬化剤36を流し込み、所定時間の後、硬化剤36が硬化することによってパネル32が固定され、パネル32は浮上しない。
【0068】
このように、本実施形態のパネル配置工程では、塑性部材34を配置し、塑性部材34の上に複数のパネル32を配置し、パネル変位工程では、塑性部材34がパネル32の変位に伴って塑性変形する。この構成によれば、パネル32が塑性部材34によって支持されるため、容易にパネル32を扉体10の下面14に沿って変位させることができる。
【0069】
また、本実施形態のパネル固定工程では、パネル32の周囲に液状の硬化剤36を流し込み、硬化剤36が硬化することによってパネル32が固定されるので、変位したパネル32を簡易に固定することができる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。
【0070】
(実施形態3)
本願の実施形態3について図13図16を参照しながら説明する。本実施形態は、上記実施形態1が被接地面を水平面状に形成したのに代えて、被接地面を傾斜面状に形成するようにしたものである。つまり、上記実施形態1の被接地部は、水平に延びる路面に形成された格納部の底部に設けられるものであり、本実施形態の被接地部は、水平に対して傾斜した路面に形成された格納部の底部に設けられるものである。ここでは、上記実施形態1と異なる点について説明する。
【0071】
図16に示すように、本実施形態の被接地部20は、枠21と、パネル22と、間隔保持部材(図示省略)と、硬化剤26と、仕切り板28と、囲い部材29とを有している。
【0072】
枠21は、上面が路面(図示省略)に合わせて傾斜するように、傾いて設けられている。枠21の上面の位置は、倒伏時の扉体10の基端12に相当する側(図16において右側、以降、枠21の一端側ともいう)にいくに従って高くなっている。二次コンクリートB2は、水平面状に打設されている。
【0073】
なお、枠21は、本実施形態とは逆方向に傾いて設けられていてもよい。即ち、枠21の上面の位置は、倒伏時の扉体10の先端11に相当する側(図16において左側、以降、枠21の他端側ともいう)にいくに従って高くなっていてもよい。
【0074】
仕切り板28は、枠21の内側に複数設けられ、枠21の内部空間を枠21の傾斜方向(図16において左右方向)に仕切っている。つまり、複数の仕切り板28は、枠21の傾斜方向に並んで設けられ、枠21内を複数の空間に仕切っている。複数の仕切り板28の高さは、互いに異なっており、枠21の一端側に近づくにつれて高くなっている。
【0075】
また、複数の仕切り板28の高さは、倒伏時の扉体10の下面14と仕切り板28とが接触しないように制限されている。具体的に、複数の仕切り板28は、枠21の一端側の上面と他端側の上面とを結んだ直線よりも下方に位置するように設けられている。
【0076】
パネル22は、仕切り板28によって仕切られた各空間に複数設けられている。各空間に設けられた複数のパネル22は、上記実施形態1と同様、被接地面23を形成しており、互いに間隔を置いて平面状に配置されている。つまり、複数のパネル22の上面は、水平に対して傾斜する傾斜面状に形成された被接地面23を構成している。
【0077】
硬化剤26は、仕切り板28によって仕切られた各空間においてパネル22の周囲に設けられている。硬化剤26は、仕切り板28によって仕切られた各空間に液状態で流し込まれ、その後硬化することによってパネル22を固定するものである。
【0078】
囲い部材29は、枠21の外側に設けられ、硬化剤26の流動領域を規制するものである。本実施形態では、囲い部材29は、枠21の一端側と二次コンクリートB2との間から流出した硬化剤26の流動領域を規制している。
【0079】
本実施形態の起伏ゲート1の設置方法は、上記実施形態1と同様、枠設置工程、扉体設置工程、パネル配置工程、パネル変位工程およびパネル固定工程を備え、さらに仕切り工程を備えている。
【0080】
先ず、枠設置工程が行われる。図13に示すように、枠設置工程では、枠21が、路面(図示省略)の傾斜に合わせて傾いた状態で設置される。枠21の他端側(図13において左側)は、一部が二次コンクリートB2に埋設されている。枠21の一端側(図13において右側)は、二次コンクリートB2と間隔を置いて設置される。なお、路面の傾斜が緩やかな場合、枠21の一端側も二次コンクリートB2に埋設され得る。
【0081】
続いて、仕切り工程が行われる。仕切り工程では、図13に示すように、複数の仕切り板28が、枠21の内側の所定位置に設置される。複数の仕切り板28は、二次コンクリートB2の上に設置される。また、仕切り工程では、囲い部材29が、枠21の外側に設置される。続いて、扉体設置工程が、上記実施形態1と同様に行われる。なお、扉体設置工程は、枠設置工程と仕切り工程との間に行うようにしてもよい。
【0082】
続くパネル配置工程では、図14に示すように、先ず、複数のパネル22が、枠21内における仕切り板28によって仕切られた各空間に配置される。本実施形態では、パネル22は、二次コンクリートB2の上に直に配置されるが、上記実施形態1と同様に嵩上げ部材の上に配置するようにしてもよい。図示しないが、パネル22とパネル22との間には、上記実施形態1と同様、間隔保持部材が取り付けられている。
【0083】
続いてパネル配置工程では、図15に示すように、仕切り板28によって仕切られた各空間においてパネル22の周囲に液状の硬化剤26を流し込んでパネル22を浮上させる。各空間におけるパネル22は、上面(被接地面23)が、枠21の一端側の上面と他端側の上面とを結んだ直線よりも高くなる位置まで浮上する。つまり、パネル22の浮上高さは空間ごとに異なる。
【0084】
続くパネル変位工程では、図16に示すように、扉体10の下面14が枠21の上面に接触するまで扉体10を倒伏させる。そうすると、パネル22は、扉体10の下面14と接触して押し下げられ、扉体10の下面14に沿って変位する。これにより、扉体10の下面14と被接地面23(パネル22の上面)との隙間が低減される。続くパネル固定工程では、硬化剤26が硬化することによって、パネル22が固定される。
【0085】
このように、被接地面23が傾斜面状に形成される形態においても、上記実施形態1と同様、簡易な施工により、倒伏時の扉体10と被接地面23との隙間を低減することができる。
【0086】
また、コンクリートで傾斜面を形成することは比較的難しいところ、上記の方法によれば、簡易に傾斜面状の被接地面23を形成することができる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。
【0087】
(実施形態4)
本願の実施形態4について図17図19を参照しながら説明する。本実施形態は、上記実施形態2が被接地面を水平面状に形成したのに代えて、被接地面を傾斜面状に形成するようにしたものである。ここでは、上記実施形態2と異なる点について説明する。
【0088】
図19に示すように、本実施形態の被接地部30は、枠31と、パネル32と、塑性部材35と、硬化剤36と、仕切り板38と、囲い部材39とを有している。
【0089】
枠31は、上記実施形態3と同様、上面が路面(図示省略)に合わせて傾斜するように、傾いて設けられている。枠31の上面の位置は、倒伏時の扉体10の基端12に相当する側(図19において右側、以降、枠31の一端側ともいう)にいくに従って高くなっている。
【0090】
なお、枠31は、本実施形態とは逆方向に傾いて設けられていてもよい。即ち、枠31の上面の位置は、倒伏時の扉体10の先端11に相当する側(図19において左側、以降、枠31の他端側ともいう)にいくに従って高くなっていてもよい。
【0091】
仕切り板38は、上記実施形態3と同様、枠31の内側に複数設けられ、枠31の内部空間を枠31の傾斜方向(図19において左右方向)に仕切っている。また、複数の仕切り板38は、上記実施形態3と同様、枠31の一端側の上面と他端側の上面とを結んだ直線よりも下方に位置するように設けられている。
【0092】
パネル32は、上記実施形態3と同様、仕切り板38によって仕切られた各空間に複数設けられている。各空間に設けられた複数のパネル32は、上記実施形態1と同様、被接地面33を形成しており、互いに間隔を置いて平面状に配置されている。つまり、複数のパネル32の上面は、水平に対して傾斜する傾斜面状に形成された被接地面33を構成している。
【0093】
塑性部材35は、仕切り板38によって仕切られた各空間において二次コンクリートB2の上に複数配置されている。塑性部材35は、上記実施形態2と同様、パネル32の下に配置され、パネル32を塑性的に支持している。
【0094】
硬化剤36は、仕切り板38によって仕切られた各空間においてパネル32の周囲に設けられている。硬化剤36は、仕切り板38によって仕切られた各空間に液状態で流し込まれ、その後硬化することによってパネル32を固定するものである。囲い部材39は、上記実施形態3と同様、枠31の一端側と二次コンクリートB2との間から流出した硬化剤36の流動領域を規制している。
【0095】
本実施形態の起伏ゲート1の設置方法は、上記実施形態1と同様、枠設置工程、扉体設置工程、パネル配置工程、パネル変位工程およびパネル固定工程を備え、さらに仕切り工程を備えている。
【0096】
先ず、枠設置工程、仕切り工程および扉体設置工程が、上記実施形態3と同様に行われる。
【0097】
続くパネル配置工程では、図17に示すように、先ず、複数の塑性部材35が、枠31内における仕切り板38によって仕切られた各空間に配置される。塑性部材35は、枠31の一端側(図17において右側)に近い空間の塑性部材35ほど高くなっている。
【0098】
続いて、仕切り板38によって仕切られた各空間において、複数のパネル32が塑性部材35の上に配置される。複数のパネル32は、互いに間隔を置いて平面状に配置される。また、各空間におけるパネル32は、上面(被接地面33)が、枠31の一端側の上面と他端側の上面とを結んだ直線よりも高くなるように、塑性部材35で支持されている。つまり、パネル32の配置高さは空間ごとに異なる。
【0099】
続くパネル変位工程では、図18に示すように、扉体10の下面14が枠31の上面に接触するまで扉体10を倒伏させる。そうすると、パネル32は、扉体10の下面14と接触して押し下げられ、扉体10の下面14に沿って変位する。このとき、塑性部材35は、パネル32の変位に伴って塑性変形する。これにより、扉体10の下面14と被接地面33(パネル32の上面)との隙間が低減される。
【0100】
続くパネル固定工程では、先ず、扉体10を起立させる。続いて、図19に示すように、仕切り板38によって仕切られた各空間においてパネル32の周囲に液状の硬化剤36を流し込み、所定時間の後、硬化剤36が硬化することによってパネル32が固定される。
【0101】
このように、被接地面33が傾斜面状に形成される形態においても、上記実施形態1と同様、簡易な施工により、倒伏時の扉体10と被接地面33との隙間を低減することができる。
【0102】
また、上記実施形態3と同様、上記の方法によれば、簡易に傾斜面状の被接地面33を形成することができる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態2と同様である。
【0103】
(その他の実施形態)
本願に開示の技術は、上記実施形態において以下のように構成するようにしてもよい。
【0104】
例えば、上記各実施形態では、扉体10の接地高さ(倒伏位置)を規定する部材として、枠21,31(枠状の部材)を設置するようにしたが、例えば扉体10の幅方向に延びる2本の部材をそれぞれ扉体10の先端11側と基端12側とに設置する等、扉体10の接地高さを規定し得るのであれば形状および大きさは問わない。その場合、流し込まれた硬化剤が流れ出ないように周囲にカバー部材を設けてもよいし、格納部S自体を枠として用いてもよい。
【0105】
また、上記実施形態1および3において、硬化剤26の粘性等によってパネル22とパネル22との間隔がある程度保持されるのであれば、間隔保持部材25を省略するようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態1および3において、嵩上げ部材24は省略するようにしてもよい。
【0107】
また、上記実施形態3および4において、仕切り板28,38の数量は、複数である必要はなく、扉体10の大きさや倒伏時の扉体10の傾斜角度によっては1枚であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本願に開示の技術は、起伏ゲートおよびその設置方法について有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 起伏ゲート
10 扉体
12 基端
14 下面
16 支持部
20 被接地部
22 パネル
23 被接地面
24 嵩上げ部材
25 間隔保持部材
26 硬化剤
27 間隔保持部材
30 被接地部
32 パネル
33 被接地面
34 塑性部材
35 塑性部材
36 硬化剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19