(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】水変色性布帛及びそれを用いた水変色性布帛セット、水変色性布帛の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20240716BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20240716BHJP
B43K 19/00 20060101ALI20240716BHJP
B43L 1/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B32B5/24 101
A63H33/22 K
B43K19/00 Z
B43L1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020050724
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】中島 明雄
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-202789(JP,A)
【文献】特開2006-346442(JP,A)
【文献】特開2010-094971(JP,A)
【文献】特開2007-212800(JP,A)
【文献】特開2006-340853(JP,A)
【文献】特開2016-055628(JP,A)
【文献】特開2008-238670(JP,A)
【文献】特開2011-167995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0314698(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H1/00-37/00
B32B1/00-43/00
B43L1/00-12/02
15/00-27/04
C08J7/04-7/06
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捺染布帛上に、透明性樹脂層を介して低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設けてなり、前記透明性樹脂層の質量Aと、前記多孔質層の質量Bの合計質量が10~100g/m
2の範囲にあり、下記式(1)を満たす水変色性布帛。
0.1≦質量B/質量A≦10.0 (1)
【請求項2】
捺染布帛上に、透明性樹脂層を介して低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設けてなり、前記捺染布帛の質量Cが30g/m
2以上であり、下記式(2)を満たす水変色性布帛。
0.1≦(
透明性樹脂層の質量A+
多孔質層の質量B)/質量C≦1.0 (2)
【請求項3】
前記透明性樹脂層の質量Aが5~90g/m
2の範囲にある請求項1又は2記載の水変色性布帛。
【請求項4】
前記透明性樹脂層が熱溶融性樹脂又は二液硬化型樹脂により形成されてなる1乃至3のいずれか一項に記載の水変色性布帛。
【請求項5】
前記捺染布帛が織布である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水変色性布帛。
【請求項6】
前記捺染布帛がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの少なくとも四色からなる像を捺染した布帛である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水変色性布帛。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の水変色性布帛と、水付着具をセットにした水変色性布帛セット。
【請求項8】
前記水付着具は、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具形態である請求項7記載の水変色性布帛セット。
【請求項9】
布帛にインクジェットインキを用いて印刷して染着した捺染布帛上に、透明性樹脂を含む印刷インキを用いて印刷して透明性樹脂層を形成し、前記透明性樹脂層上に低屈折率顔料とバインダー樹脂を含むインキを印刷して低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設ける水変色性布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水変色性布帛及びそれを用いた水変色性布帛セット、水変色性布帛の製造方法に関する。更に詳細には乾燥した状態(非吸液状態)と、水を含浸した状態(吸液状態)では異なる様相を示す水変色性布帛及びそれを用いた水変色性布帛セット、水変色性布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着色された布帛上に低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設けてなり、多孔質層が乾燥状態で白色を呈して下層を隠蔽し、吸液により多孔質層が透明化して下層の色を視認することができる水変色性布帛が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記水変色性布帛は、水の付着により色変化を楽しむことができるとしても、多孔質層を布帛上に形成する際、低屈折率顔料とバインダー樹脂が布帛に浸透して十分な隠蔽性を発現できなかったり、多孔質層が不均一に形成されて、乾燥状態で下層の色が視認されることがあった。更に、布帛に浸透した低屈折率顔料とバインダー樹脂によって繊維間の固着を生じて布帛の風合いを損なうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多孔質層が乾燥状態で下層を十分に隠蔽すると共に、明瞭な色変化を視認することのできる水変色性布帛及びそれを用いた水変色性布帛セット、水変色性布帛の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、捺染布帛上に、透明性樹脂層を介して低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設けてなり、前記透明性樹脂層の質量Aと、前記多孔質層の質量Bの合計質量が10~100g/m2の範囲にあり、下記式(1)を満たす水変色性布帛、或いは、捺染布帛上に、透明性樹脂層を介して低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設けてなり、前記捺染布帛の質量Cが30g/m2以上であり、下記式(2)を満たす水変色性布帛を要件とする。
0.1≦質量B/質量A≦10.0 (1)
0.1≦(透明性樹脂層の質量A+多孔質層の質量B)/質量C≦1.0 (2)
更には、前記透明性樹脂層が熱溶融性樹脂又は二液硬化型樹脂により形成されてなること、前記捺染布帛が織布であること、前記捺染布帛がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの少なくとも四色からなる像を捺染した布帛であること等を要件とする。
更には、前記水変色性布帛と、水付着具をセットにした水変色性布帛セット、布帛にインクジェットインキを用いて印刷して染着した捺染布帛上に、透明性樹脂を含む印刷インキを用いて印刷して透明性樹脂層を形成し、前記透明性樹脂層上に低屈折率顔料とバインダー樹脂を含むインキを印刷して低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設ける水変色性布帛の製造方法を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、多孔質層が乾燥状態で下層を十分に隠蔽すると共に、水の適用により多孔質層が透明化して下層の色を明瞭に視認することができ、玩具分野、装飾分野、デザイン分野等、多様な分野への応用性に富む水変色性布帛及びそれを用いた水変色性布帛セット、水変色性布帛の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の水変色性布帛の一実施例の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記布帛としては、織布、編布、組布、不織布等が用いられ、織布が好適に用いられる。前記布帛としては目付量が30g/m2以上、好ましくは40g/m2以上、より好ましくは50g/m2以上のものが好適に用いられ、捺染性と耐久性を満足させることができる。
前記布帛への捺染は、スクリーン捺染、ローラー捺染の他、多種少量生産と即時捺染が可能なインクジェット捺染を適用することもできる。
着色剤及びバインダー樹脂を含む捺染用インクを布帛に印刷した後、必要に応じ乾燥硬化工程を経て固着させて捺染布帛が得られる。
捺染用インクの着色剤は、顔料、染料のうち少なくとも一方を用いることができ、着色剤として無機顔料や有機顔料を用いることにより、捺染布帛の耐光性を向上させることができる。
前記有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、フタロン系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、及び金属錯体系顔料等が挙げられる。
また、前記顔料としては、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック等の着色顔料を挙げることができる。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185等が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
ブラック顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等(C.I.ピグメントブラック7)が挙げられる。
前記染料としては、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料、分散染料等が挙げられ、具体的にはC.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79、142、C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289、C.I.アシッドブルー9、45、249、C.I.アシッドブラック1、2、24、94、C.I.フードブラック1、2、C.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173、C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、227、C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202、C.I.ダイレクトブラック19、38、51、71、154、168、171、195、C.I.リアクティブレッド14、32、55、79、249、C.I.リアクティブブラック3、4、35、I.ディスパースイエロー1、3、8、9、16、33、41、42、54、60、77、116、201、231、C.I.ディスパースレッド1、4、6、11、15、17、50、55、59、60、73、83、111、C.I.ディスパースブルー3、14、19、24、26、56、60、64、72、99、108、241、354、
C.I.ディスパースバイオレット26、31が挙げられる。
前記着色剤は二種以上を併用して用いてもよい。
樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。
溶媒としては水または水と水溶性有機溶剤の混合物が挙げられ、水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,チオジエチレングリコール,ジエチレングリコールジメチルエーテル,トリエチレングリコールジメチルエーテル,ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール類が挙げられる。
更に、必要に応じて分散剤、界面活性剤、表面張力調整剤、pH調整剤、電導度調整剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、キレート化剤、消泡剤等を添加することができる。
前記捺染用インクとしてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの少なくとも四色からなる染料系インク又は顔料系インクを用いて、四色からなる鮮明且つ階調豊かな像を形成することもでき、インクジェット記録装置を用いて捺染することが好ましい。
前記捺染布帛の背面には、樹脂層を塗工により設けたり。水不浸透性シート材を貼着又は縫合することにより、布帛の背面から水が付着することを防止することを防止でき、乾燥性を満足させると共に黴の発生を防止することができる。
【0009】
前記透明性樹脂層は、捺染布帛上に設けられる。
前記透明性樹脂層は、後述する多孔質層を形成するインキを用いて多孔質層を形成する際、インキが捺染布帛に浸透することを防止して均一な多孔質層を形成でき、多孔質層が乾燥状態で下層を十分に隠蔽することができる。
また、多孔質層を形成するインキが捺染布帛に浸透しないため、布帛の質感と柔軟な風合いを維持することができる。
前記透明性樹脂層を形成する樹脂としては、アミド系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシ-アクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン樹脂、ウレタン-アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ウレア系樹脂、尿素系樹脂、尿素-メラミン系樹脂、ジアリルフタレート系樹、エステル系樹脂、アルキッド系樹脂、マレイン化ロジン、ビニルブチラール系樹脂、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、二液硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。
前記透明性樹脂層としては、熱溶融性樹脂、二液硬化型樹脂が好適に用いられる。
また、ガラス転移点(Tg)が20℃以下の樹脂を用いると捺染布帛の柔軟な風合いを維持することができるため好適である。
前記透明性樹脂層は、捺染布帛上に直接形成してもよいが、離型性を有する基材上に透明性樹脂を塗布して透明性樹脂層を設けた転写シートを捺染布帛と接合し、熱融着した後、基材を除去して透明性樹脂層を形成することもできる。
また、接着性樹脂層を介して捺染布帛と接着し、基材を除去して透明性樹脂層を形成することもできる。
【0010】
前記透明性樹脂層上に設けられる多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、乾燥状態と吸液状態で透明性が異なる層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4~1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
なお、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
また、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
前記低屈折率顔料の粒子径は特に限定されるものではないが、0.03~10.0μmのものが好適に用いられる。
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、この点を説明すると、珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別され、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
また、前記多孔質層は、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
なお、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0011】
前記多孔質層中の低屈折率顔料は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1~50g/m2であることが好ましく、より好ましくは、5~50g/m2である。1g/m2未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、また、50g/m2を越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、支持体上に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5~2質量部であり、より好ましくは、0.8~1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が損なわれ易くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、二種以上を併用することもできる。また、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
なお、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分質量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤や界面活性剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0012】
前記多孔質層は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により透明性樹脂層上に形成できる。
【0013】
また、多孔質層中には、着色剤を添加して乾燥状態における多孔質層を着色したり、多孔質層上に着色剤を含む着色像を設けて複雑な様相変化を示す構成とすることもできる。
前記着色剤としては、一般染料、一般顔料、蛍光染料、蛍光顔料、金属光沢顔料、可逆熱変色性組成物、可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、光変色性組成物、光変色性組成物を内包した光変色性マイクロカプセル顔料が挙げられ、蛍光染料、蛍光顔料等の蛍光性着色剤を用いると色変化の明瞭性に優れ、可逆熱変色性組成物、可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料等の熱変色性着色剤、光変色性着色剤、光変色性組成物、光変色性組成物を内包した光変色性マイクロカプセル顔料等の光変色性着色剤を用いると多彩な変化性を付与することができる。
前記可逆熱変色性組成物としては、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物が好適に用いられる。
前記光変色性組成物としては、スピロオキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、ジアリールエテン系化合物等のフォトクロミック化合物が好適に用いられる。
【0014】
前記のようにして得られる水変色性布帛の透明性樹脂層の質量Aは、5~90g/m2、好ましくは5~70g/m2、より好ましくは5~50g/m2の範囲にあることにより、多孔質層の隠蔽性と柔軟な風合いを満足させることができる。
質量Aが5g/m2未満では捺染布帛上に均一な透明性樹脂層を形成し難くなり、よってその上層に均一な多孔質層の形成も形成でき難いため、多孔質層が乾燥状態で下層を十分に隠蔽し難くなる。
質量Aが90g/m2を超えると、布帛の柔軟な風合いを損ない易くなる。
前記透明性樹脂層の質量Aと、前記多孔質層の質量Bの合計質量が10~100g/m2、好ましくは20~100g/m2、より好ましくは30~100g/m2の範囲にあり、下記式(1)を満たすことにより、明瞭な色変化を視認できると共に柔軟な風合いを満足させることができる。
0.1≦質量B/質量A≦10.0 (1)
合計質量が10g未満では、乾燥状態における遮蔽性が低下して乾燥状態と吸液状態との色変化が少なくなる。
合計質量が100g/m2を超えると布帛としての風合いを損ない易くなると共に、吸液状態における多孔質層の透明性が低下して捺染布帛本来の色を視認し難くなる。
式(1)について、質量B/質量Aが0.1未満では、透明性樹脂層に対する多孔質層の割合が低下して布帛として風合いを維持した状態で乾燥状態における多孔質層の遮蔽性が低下して明瞭な色変化を視認でき難くなる。
質量B/質量Aが10を超えると透明性樹脂層に対する多孔質層の割合が大きくなり、透明樹脂層による多孔質層を形成するインキの捺染布帛への浸透防止性が低下して多孔質層が不均一になり、捺染布帛を均一に隠蔽でき難くなると共に、吸液状態において多孔質層が不均一であるため、均一な色変化を視認でき難くなる。
更に、前記捺染布帛の質量Cが30g/m2以上であり、下記式(2)を満たすことにより、多孔質層の隠蔽性と明瞭な色変化と柔軟な風合いを満足させることができる。
0.1≦(質量A+質量B)/質量C≦1.0 (2)
質量Cが30g/m2未満では捺染布帛上に均一な透明樹脂層の形成が困難となり、多孔質層も不均一となって多孔質層が乾燥状態で下層を十分に隠蔽し難くなる。
(質量A+質量B)/質量Cが0.1未満では乾燥状態における多孔質層の遮蔽性が低下して乾燥状態と吸液状態との色変化が少なくなり、明瞭な色変化を視認でき難くなる。
(質量A+質量B)/質量Cが1.0を超えると布帛としての風合いを損ない易くなる。
前記水変色性布帛の製造方法としては、布帛にインクジェットインキを用いてインクジェット記録装置により印刷して染着させた後、必要により水洗、加熱乾燥した捺染布帛上に、透明性樹脂を含む印刷インキを用いて印刷し、必要により加熱乾燥して透明性樹脂層を形成し、前記透明性樹脂層上に低屈折率顔料とバインダー樹脂を含むインキを印刷し、必要により加熱乾燥して低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた多孔質層を設けて製造される。
【0015】
前記水変色性布帛の具体的な実施形態としては、例えば、ぬいぐるみ、人形、人形用ドレス等の人形用衣装、鞄等の人形用付属品、水鉄砲の標的、動物を模した模型、描画玩具具、人間と人形の手形や足形等の形跡を現すボード等の玩具類、水筆シート等の教習具類、ドレス、水着等の衣類、靴類、鞄類、家具、造花等が挙げられる。
また、各種インジケーターとして適用することもでき、例えば、配管、パイプ、水槽、タンク等の液洩れ検知、身の回り品や家具の水濡れ検知、禁水性薬品の輸送や保管場所での水濡れ検知、結露、使い捨ておむつの尿の検知、土壌中の水分検知等が挙げられる。
【0016】
前記水変色性布帛に水を付着させる手段としては、直接水中に浸漬したり、手や指を水で濡らして接触させる他、水付着具を適用することもできる。
前記水付着具としては、水鉄砲、噴霧機、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記又は塗布具、スタンプ具等が挙げられる。
前記水付着具として、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具は、筆記像を簡便に形成でき、実用性を高めることができる。
なお、前記水付着具と、水変色性布帛とを組み合わせて水変色性布帛セットを構成することもでき、教習具セット、描画玩具セットとして用いることができる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1(
図1参照)
白色の綿ブロード生地(目付量100g/cm
2の織布)上に、着色剤として反応性染料を含むイエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各非変色性インクジェット水性インキを用いてインクジェット印刷機にてカラフルな花柄をプロセス印刷し、スチーム処理にて染着させた後、水洗、加熱乾燥して捺染布帛2(110g/cm
2)を得た。
前記捺染布帛上にアクリル樹脂エマルジョン[商品名:モビニール7320、ジャパンコーテイング(株)製、固形分40%、ガラス転移温度(Tg)-20℃]50部、増粘剤5部、消泡剤1部、ブロックイソシアネート系硬化剤2部、水42部からなる無色透明な水性スクリーン印刷用インキを用いて150メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷を行い、130℃で5分間乾燥硬化させて透明性樹脂層3(重量A:20g/m
2)を設けた。
ついで、前記透明性樹脂層上に湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、DIC(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層4(重量B:40g/m
2)を形成して水変色性布帛1を得た。
【0018】
前記水変色性布帛における透明性樹脂層と多孔質層の合計質量(A+B)は60g/m2であり、多孔質層の質量/透明性樹脂層の質量は2.0であり、透明性樹脂層と多孔質層の合計質量/捺染布帛の質量は0.6であった。
前記水変色性布帛は柔軟な風合いを有しており、乾燥状態では白色を呈しており、捺染布帛に印刷された花柄は視認されないが、多孔質層上から水を付着させると、多孔質層に水が浸透して透明化し、更に、透明性樹脂層を介して捺染布帛に印刷された花柄が明瞭且つ鮮明に視認される。
水が付着した状態では前記様相を示していたが、乾燥するにつれて徐々に花柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0019】
前記水変色性布帛を裁断、縫製して人形用衣装を得た。
前記人形用衣装は、水を付着させることにより、白色の状態から花柄が視認され、乾燥するにつれて徐々に花柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0020】
実施例2
白色のポリエステルタフタ生地(目付量70g/cm2の織布、裏面全体に透明アクリル樹脂を10g/m2塗工してなる)上に、着色剤として分散染料を含むイエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の非変色性インクジェット水性インキを用いてインクジェット印刷機にて緻密な動物柄をプロセス印刷し、加熱処理にて染着させての捺染布帛(80g/cm2)を得た。
前記捺染布帛上にウレタン樹脂エマルジョン(商品名:ハイドランAP70、DIC(株)製、固形分35%、ガラス転移温度(Tg):-4℃)50部、増粘剤5部、消泡剤1部、ブロックイソシアネート系硬化剤2部、水42部からなる無色透明な水性スクリーン印刷用インキを用いて180メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷を行い、130℃で5分間乾燥硬化させて透明性樹脂層(重量A:10g/m2)を設けた。
ついで、前記透明性樹脂層上に湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、DIC(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層4(重量B:40g/m2)を形成し、水変色性布帛を得た。
【0021】
前記水変色性布帛における透明性樹脂層と多孔質層の合計質量(A+B)は50g/m2であり、多孔質層の質量/透明性樹脂層の質量は4.0であり、透明性樹脂層と多孔質層の合計質量/捺染布帛の質量は0.625であった。
前記水変色性布帛は柔軟な風合いを有しており、乾燥状態では白色を呈しており、捺染布帛に印刷された動物柄は視認できないが、多孔質層上から水を付着させると、多孔質層に水が浸透して透明化し、透明性樹脂層を介して捺染布帛に印刷された動物柄が明瞭且つ鮮明に視認される。
水が付着した状態は前記様相を示していたが、乾燥するにつれて徐々に動物柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0022】
前記水変色性布帛を裁断、縫製して傘の骨に取り付けて雨傘を得た。
前記雨傘は、水を付着することにより、白色の状態から動物柄が視認され、乾燥するにつれて徐々に動物柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0023】
実施例3
白色の綿ブロード生地(目付量:200g/cm2の織布)上に、着色剤として反応性染料を含むイエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各非変色性インクジェット水性インキを用いてインクジェット印刷機にて絵画調の花柄をプロセス印刷し、スチーム処理にて染着させた後、水洗、加熱乾燥して捺染布帛(210g/cm2)を得た。
前記捺染布帛上にアクリル樹脂エマルジョン[商品名:モビニールDM772、ジャパンコーテイング(株)製、固形分45%、ガラス転移温度(Tg)6℃]50部、増粘剤5部、消泡剤1部、微粉末シリカ5部、ブロックイソシアネート系硬化剤3部、水36部からなる無色透明な水性スクリーン印刷用インキを用いて150メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷を行い、130℃で5分間乾燥硬化させて透明性樹脂層(重量A:25g/m2)を設けた。
ついで、前記透明性樹脂層上に湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、DIC(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、水変色性布帛(重量B:45g/m2)を得た。
【0024】
前記水変色性布帛における透明性樹脂層と多孔質層の合計質量(A+B)は70g/m2であり、多孔質層の質量/透明性樹脂層の質量は1.8であり、透明性樹脂層と多孔質層の合計質量/捺染布帛の質量は0.35であった。
前記水変色性布帛は柔軟な風合いを有しており、乾燥状態では白色を呈しており、捺染布帛に印刷された花柄は視認できないが、多孔質層上から水を付着させると、多孔質層に水が浸透して透明化し、透明性樹脂層を介して捺染布帛に印刷された花柄が明瞭且つ鮮明に視認される。
水が付着した状態は前記様相を示していたが、乾燥するにつれて徐々に花柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0025】
前記水変色性布帛を裁断して枠体に貼着してキャンバス風の描画玩具を得た。
水付着具として先端部に繊維ペン体等を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンと前記描画玩具を組み合わせて描画玩具セット(水変色性布帛セット)を得た。
前記描画玩具セットは、水を収容したペンで描画玩具に描画することにより、白色の状態から花柄が視認され、乾燥するにつれて徐々に花柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0026】
実施例4
白色のポリエステルポンジー生地(目付量:100g/cm2の織布)上に、着色剤として分散染料を含むイエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各非変色性インクジェット水性インキを用いてインクジェット印刷機にて写真調のフルーツ柄をプロセス印刷し、加熱処理にて染着させ、捺染布帛(110g/cm2)を得た。
前記捺染布帛上にアクリル樹脂エマルジョン[商品名:モビニール952B、ジャパンコーテイング(株)製、固形分46%、ガラス転移温度(Tg)-38℃]50部、増粘剤5部、消泡剤1部、水44部からなる無色透明な水性スクリーン印刷用インキを用いて180メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷を行い、150℃で5分間乾燥硬化させて透明性樹脂層(重量A:15g/m2)を設けた。
ついで、前記透明性樹脂層上に湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、DIC(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層(重量B:45g/m2)を形成し、水変色性布帛を得た。
【0027】
前記水変色性布帛における透明性樹脂層と多孔質層の合計質量(A+B)は60g/m2であり、多孔質層の質量/透明性樹脂層の質量は3.0であり、透明性樹脂層と多孔質層の合計質量/捺染布帛の質量は0.75であった。
前記水変色性布帛は柔軟な風合いを有しており、乾燥状態では白色を呈しており、捺染布帛に印刷されたフルーツ柄は視認できないが、多孔質層上から水を付着させると、多孔質層に水が浸透して透明化し、透明性樹脂層を介して捺染布帛に印刷されたフルーツ柄が明瞭且つ鮮明に視認される。
水が付着した状態は前記様相を示していたが、乾燥するにつれて徐々にフルーツ柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0028】
前記水変色性布帛を裁断、縫製して描画玩具を得た。
水付着具として先端部に繊維ペン体等を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンと前記描画玩具を組み合わせて描画玩具セット(水変色性布帛セット)を得た。
前記描画玩具セットは、水を収容したペンで描画玩具に描画することにより、白色の状態からフルーツ柄が視認され、乾燥するにつれて徐々にフルーツ柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0029】
実施例5
白色のレーヨンツイル生地(目付量:150g/cm2の織布)上に、着色剤として反応性染料を含むイエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各非変色性インクジェット水性インキを用いてインクジェット印刷機にてアニメーションのキャラクターをプロセス印刷し、スチーム処理にて染着させた後、水洗、加熱乾燥して捺染布帛(160g/cm2)を得た。
前記捺染布帛上に酢酸ビニルアクリル共重合樹脂[商品名:モビニール760H、ジャパンコーテイング(株)製、固形分50%、ガラス転移温度(Tg)-17℃]50部、消泡剤1部、レベリング剤1部、粘度調整剤1部、水47部からなる水性コーティング用インキを用い、ドクターコーターにて全面にベタ印刷を行い、150℃で5分間乾燥硬化させて透明性樹脂層(重量A:40g/m2)を設けた。
ついで、前記透明性樹脂層上に湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、DIC(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層(重量B:40g/m2)を形成し、水変色性布帛を得た。
【0030】
前記水変色性布帛における透明性樹脂層と多孔質層の合計質量(A+B)は80g/m2であり、多孔質層の質量/透明性樹脂層の質量は1.0であり、透明性樹脂層と多孔質層の合計質量/捺染布帛の質量は0.53であった。
前記水変色性布帛は柔軟な風合いを有しており、乾燥状態では白色を呈しており、捺染布帛に印刷されたキャラクターは視認できないが、多孔質層上から水を付着させると、多孔質層に水が浸透して透明化し、透明性樹脂層を介して捺染布帛に印刷されたキャラクター柄が明瞭且つ鮮明に視認される。
水が付着した状態は前記様相を示していたが、乾燥するにつれて徐々にキャラクター柄は視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0031】
前記水変色性布帛を裁断、縫製して水着を得た。
前記水着は、水を付着させることにより、白色の状態からキャラクターが視認され、乾燥するにつれて徐々にキャラクターは視認されなくなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0032】
比較例1
白色の綿ブロード生地(目付量:100g/cm2の織布)上に、着色剤として反応性染料を含むイエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各非変色性インクジェット水性インキを用いてインクジェット印刷機にてカラフルな花柄をプロセス印刷し、スチーム処理にて染着させた後、水洗、加熱乾燥して捺染布帛を得た。
前記捺染布帛上に湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE-200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW-930、DIC(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層(40g/m2)を形成し、水変色性布帛を得た。
【0033】
前記水変色性布帛は乾燥状態では白色を呈しているものの、捺染布帛に印刷された花柄は多孔質層を介して視認することができる。
多孔質層上から水を付着させると、多孔質層に水が浸透して透明化し、捺染布帛に印刷された花柄が視認されるが、乾燥状態でも花柄が視覚されるため、乾燥状態と吸液状態における変化性に乏しかった。
【符号の説明】
【0034】
1 水変色性布帛
2 捺染布帛
3 透明性樹脂層
4 多孔質層