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特許7520542トルク推定装置、トルク推定方法及びトルク推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】トルク推定装置、トルク推定方法及びトルク推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240716BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20240716BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20240716BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20240716BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G01M99/00 A
F03D1/06 A
F03D7/04 Z
F03D17/00
G01L5/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020052762
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152472
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓史
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-049532(JP,A)
【文献】特開2017-025881(JP,A)
【文献】特開2018-003820(JP,A)
【文献】特開2015-036524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00 - 17/00
G01L 5/00
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車に備えられたアクチュエータの駆動部の電流値を取得する電流値取得部と、
前記風車に備えられた前記アクチュエータを被固定部に固定するボルトの歪量を取得する歪量取得部と、
前記駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記電流値と前記歪量との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部と、
前記風車の運用中に、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記電流値取得部が取得した前記電流値又は前記歪量取得部が取得した前記歪量前記対応情報とに基づいて推定し、前記駆動部が停止中である場合に、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記歪量取得部が取得した前記歪量と前記対応情報とに基づいて推定する推定部と
を備えるトルク推定装置。
【請求項2】
前記対応情報を前記電流値と前記トルクと前記駆動部の特性情報とに基づいて更新する作成部
を備える、請求項1に記載のトルク推定装置。
【請求項3】
風車に備えられたアクチュエータの駆動部の電流値を取得する電流値取得ステップと、
前記風車に備えられた前記アクチュエータを被固定部に固定するボルトの歪量を取得する歪量取得ステップと、
前記風車の運用中に、前記駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記電流値と前記歪量との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部にアクセスし、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記電流値取得ステップにおいて取得した前記電流値又は前記歪量取得ステップにおいて取得した前記歪量前記対応情報とに基づいて推定し、前記駆動部が停止中である場合に、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記歪量取得ステップにおいて取得した前記歪量と前記対応情報とに基づいて推定するステップと
を含むトルク推定方法。
【請求項4】
コンピュータに、
風車に備えられたアクチュエータの駆動部の電流値を取得する電流値取得手順と、
前記風車に備えられた前記アクチュエータを被固定部に固定するボルトの歪量を取得する歪量取得手順と、
前記風車の運用中に、前記駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記電流値と前記歪量との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部にアクセスし、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記電流値取得手順において取得した前記電流値又は前記歪量取得手順において取得した前記歪量前記対応情報とに基づいて推定し、前記駆動部が停止中である場合に、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記歪量取得手順において取得した前記歪量と前記対応情報とに基づいて推定する手順と
を実行させるためのトルク推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク推定装置トルク推定方法及びトルク推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
風車に備えられたナセルは、1台以上のヨーアクチュエータによって駆動される。これによって、ナセルは、風車のタワーに対してヨー方向(YAW)に回転する。ここで、ヨーアクチュエータの過負荷を回避することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-140777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヨーアクチュエータの過負荷が回避されるためには、トルク推定装置がヨーアクチュエータの軸のトルクを推定する必要がある。しかしながら、ヨーアクチュエータの軸のトルクを推定することができない場合があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、ヨーアクチュエータの軸のトルクを推定することが可能であるトルク推定装置トルク推定方法及びトルク推定プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、風車に備えられたアクチュエータの駆動部の電流値を取得する電流値取得部と、記駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記電流値との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部と、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記電流値取得部が取得した前記電流値と前記対応情報とに基づいて推定する推定部とを備えるトルク推定装置である。
【0007】
上記のトルク推定装置は、トルクを推定するための対応情報に基づいて、駆動部が停止中でもトルクの推定精度を向上させることが可能である。
本発明の一態様は、上記のトルク推定装置であって、前記対応情報を前記電流値と前記トルクと前記駆動部の特性情報とに基づいて更新する作成部を備える。
本発明の一態様は、風車に備えられたアクチュエータを被固定部に固定するボルトの歪量を取得する歪量取得部と、前記アクチュエータの駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記歪量との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部と、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記歪量取得部が取得した前記歪量と前記対応情報とに基づいて推定する推定部とを備えるトルク推定装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上記のトルク推定装置であって、前記推定部は前記駆動軸の停止中に測定された前記歪量と前記対応情報とに基づいて前記駆動軸の駆動中に前記トルクを推定する。
【0009】
本発明の一態様は、上記のトルク推定装置であって、前記対応情報を前記歪量と前記トルクと前記駆動部の特性情報とに基づいて更新する作成部を備える。
【0010】
本発明の一態様は、車に備えられたアクチュエータの駆動部の電流値を取得する電流値取得ステップと、記駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記電流値との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部にアクセスし、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記電流値取得ステップにおいて取得した前記電流値と前記対応情報とに基づいて推定するステップとを含むトルク推定方法である。
本発明の一態様は、風車に備えられたアクチュエータを被固定部に固定するボルトの歪量を取得する歪量取得ステップと、前記アクチュエータの駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記歪量との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部にアクセスし、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記歪量取得ステップにおいて取得した前記歪量と前記対応情報とに基づいて推定するステップとを含むトルク推定方法である。
本発明の一態様は、コンピュータに、風車に備えられたアクチュエータの駆動部の電流値を取得する電流値取得手順と、前記駆動部の駆動軸に生じるトルクと前記電流値との対応付けを示す対応情報が記憶された記憶部にアクセスし、前記駆動軸に生じた前記トルクを前記電流値取得手順において取得した前記電流値と前記対応情報とに基づいて推定する手順とを実行させるためのトルク推定プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ヨーアクチュエータの軸のトルクを推定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】風車の構成例を示す斜視図である。
図2】風車の運用中におけるトルク推定システムの構成例を示す図である。
図3】風車の運用中における電流値及び歪量の測定結果の第1例を示す図である。
図4】特性情報の例を示す図である。
図5】風車の運用中における更新前の変換テーブルの例を示す図である。
図6】風車の運用中における電流値及び歪量の測定結果の第2例を示す図である。
図7】風車の運用中における更新後の変換テーブルの例を示す図である。
図8】風車の運用中におけるトルク推定システムの動作の例を示すフローチャートである。
図9】風車の運用前におけるトルク推定システムの構成例を示す図である。
図10】風車の運用前におけるトルク及び歪量の測定結果の例を示す図である。
図11】風車の運用中における更新前の変換テーブルの例を示す図である。
図12】風車の運用中における更新後の変換テーブルの例を示す図である。
図13】風車の運用前におけるトルク推定システムの動作と、風車の運用中におけるトルク推定システムの動作との例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、風車101の構成例を示す斜視図である。風車101は、タワー102と、ナセル103と、ロータ104(主軸部)と、複数のブレード105(羽根)とを備える。タワー102は、陸上又は海上において、鉛直方向の上向きに備えられる。
【0014】
ナセル103は、タワー102の上部において回転可能に備えられる。ナセル103は、ナセル103の内部に備えられたヨーアクチュエータによって駆動される。ナセル103は、ヨーアクチュエータに駆動されることによって、タワー102の長手方向を回転軸として回転する。すなわち、ナセル103は、タワー102に対してヨー方向(YAW)に回転する。
【0015】
ロータ104は、ナセル103においてロール方向(ROLL)に回転する。複数枚(例えば、3枚)のブレード105は、ロール方向の回転軸から放射方向に延びるように、互いに等角度でロータ104に備えられる。
【0016】
図2は、風車101の運用中におけるトルク推定システム1aの構成例を示す図である。トルク推定システム1aは、制御装置2と、1台以上のヨーアクチュエータ3と、リングギア4と、N本(Nは、2以上の整数)のボルト5と、N個の歪センサ6と、電流センサ7と、トルク推定装置8とを備える。なお、トルク推定システム1aは、ヨーアクチュエータ以外のアクチュエータを備えてもよい。トルク推定システム1aは、ヨーアクチュエータ以外のアクチュエータのトルクを推定してもよい。ヨーアクチュエータ以外のアクチュエータとは、例えば、ピッチアクチュエータである。
【0017】
ヨーアクチュエータ3は、風車のナセル103に、N本のボルト5で固定される。ヨーアクチュエータ3は、駆動部30と、制動部31と、減速機32と、軸33(駆動軸)と、ピニオン34とを備える。減速機32は、減速機構としてのギアを備える。ピニオン34は、リングギア4と噛み合うように、軸33の端部に備えられる。リングギア4は、タワー102の上部に備えられる。N本のボルト5は、ヨーアクチュエータ3において円周状に配置される。歪センサ6-n(nは、1以上N以下の整数)(歪量取得部)は、ボルト5-nに備えられる。
【0018】
トルク推定装置8は、通信部80と、記憶部81と、作成部82と、推定部83と、表示部84とを備える。トルク推定装置8の各部のうちの一部又は全部は、例えば管理センタ(不図示)に備えられる。トルク推定装置8の各部のうちの一部又は全部は、風車101に備えられてもよい。トルク推定装置8の各部は、バスを経由して互いに通信可能である。通信部80と作成部82と推定部83との一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部81に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。記憶部81は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)が好ましい。記憶部81は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記録媒体を備えてもよい。通信部80と作成部82と推定部83とのうち一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のマイクロコンピュータを用いて実現されてもよい。
【0019】
トルク推定システム1aは、ヨーアクチュエータ3の軸33のトルクを推定するシステムである。トルク推定システム1aは、トルクの推定結果に基づいてヨーアクチュエータ3の過負荷を回避するための状態監視システムとして動作してもよい。
【0020】
制御装置2は、ヨーアクチュエータ3の動作を制御する装置である。制御装置2は、各ヨーアクチュエータ3の軸33のトルク値を、通信部80から取得する。制御装置2は、予め定められた一定値以上のトルク値を示す軸33を備える制動部31の電磁ブレーキを弱めてもよい。これによって、制御装置2は、予め定められた一定値以上のトルク値を示す軸33を備えるヨーアクチュエータ3の負荷を低くすることができる。制御装置2は、各駆動部30の駆動タイミングの調整と、制動部31における電磁ブレーキの断続開放との各動作によって、各ヨーアクチュエータ3の負荷を均一にすることができる。
【0021】
ヨーアクチュエータ3は、タワー102に対してヨー方向にナセル103を回転又は停止させる装置である。リングギア4は、内周に複数の内歯を備える部材でもよいし、外周に複数の外歯を備える部材でもよい。ボルト5-1~5-Nは、ヨーアクチュエータ3をナセル103に固定する部材である。風等の外部負荷に起因するモーメントに応じて、ボルト5には歪が生じる。歪センサ6は、ボルト5の長手方向の歪量を測定するデバイスである。電流センサ7(電流値取得部)は、駆動部30に供給された電流の電流値を測定するデバイスである。
【0022】
トルク推定装置8(キャリブレーション装置)は、ヨーアクチュエータ3の軸33のトルクを推定する装置である。トルク推定装置8は、例えば、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン端末又はプログラマブルロジックコントローラ(programmable logic controller : PLC)である。なお、トルク推定装置8の機能部は、クラウドコンピューティングを実行することによって、分散配置されてもよい。
【0023】
次に、ヨーアクチュエータ3の詳細を説明する。
駆動部30は、モータである。駆動部30は、駆動部30に供給された電流に応じて、軸33の長手方向を回転軸として軸33を回転させる。制動部31は、電磁ブレーキを用いて、軸33の回転速度を抑える。制動部31は、電磁ブレーキを用いて、軸33の回転の停止状態を維持してもよい。減速機32は、減速機32に備えられたギアを用いて、軸33の回転速度を定める。
【0024】
軸33は、駆動部30に駆動されることによって、減速機32によって減速された回転速度で回転する。軸33は、駆動部30に駆動されることによって、所定のトルク(軸トルク)で回転する。ピニオン34は、軸33の回転量に応じて、リングギア4の内歯と噛み合いながら回転する。これによって、ナセル103は、タワー102に対してヨー方向に回転することができる。
【0025】
次に、トルク推定装置8の詳細を説明する。
通信部80は、有線通信又は無線通信を用いて、制御装置2と歪センサ6と電流センサ7との各機能部と通信する。通信部80は、駆動部30の電流値を、電流センサ7から取得する。通信部80は、各ボルト5の歪量を、各歪センサ6から取得する。通信部80は、トルク推定装置8に対する指示信号を、外部装置(不図示)から取得してもよい。通信部80は、例えば、推定処理を終了するか否かを表す指示信号を、外部装置(不図示)から取得してもよい。
【0026】
記憶部81は、変換テーブル及び特性情報等の各データテーブルを記憶する。変換テーブルは、駆動部30の電流値とボルト5の歪量と軸33のトルクとの対応付けを表す変換テーブル(対応情報)である。特性情報は、例えば、駆動部30の仕様情報又は事前測定結果である。記憶部81は、プログラム及びパラメータを記憶してもよい。
【0027】
作成部82は、駆動部30の電流値と、ボルト5の歪量と、特性情報とに基づいて、変換テーブルを作成する。推定部83は、記憶部81にアクセス可能である。推定部83は、風車101の運用中に測定された電流値又は歪量と、変換テーブルとに基づいて、軸33のトルクを推定する。軸33が停止している(駆動中でない)場合、駆動部30に駆動電流が供給されないので、電流センサ7は、駆動部30の有効な電流値を測定することができない。そこで、推定部83は、軸33が停止している場合には、測定された歪量と変換テーブルとに基づいて、軸33のトルクを推定する。
【0028】
なお、駆動部30の電流値と、ボルト5の歪量と、特性情報との対応付けは、変換テーブル以外を用いて表されてもよい。例えば、作成部82は、駆動部30の電流値と、ボルト5の歪量と、特性情報とに基づいて、関数(対応情報)を作成してもよい。推定部83は、風車101の運用中に測定された電流値又は歪量と、関数(対応情報)とに基づいて、軸33のトルクを推定してもよい。記憶部81は、このような関数のデータを記憶してもよい。
【0029】
軸33が駆動されている(軸33が駆動中である)場合、駆動部30に駆動電流が供給されるので、電流センサ7は、駆動部30の有効な電流値を測定することができる。そこで、推定部83は、軸33が駆動されている場合には、測定された電流値と変換テーブルとに基づいて、軸33のトルクを推定する。
【0030】
なお、軸33が駆動されている場合、歪センサ6は、ボルト5の歪量を測定することができる。そこで、推定部83は、軸33が駆動されている場合、軸33の停止中又は駆動中に測定された歪量と変換テーブルとに基づいて軸33のトルクを推定してもよい。
【0031】
表示部84は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスである。表示部84は、タッチパネル等の操作デバイスを備えてもよい。表示部84は、推定部83によって推定された結果の画像を表示する。
【0032】
以下、図3から図7までの各データテーブルと、図10から図12までの各データテーブルとに示された値は、それぞれ一例である。
【0033】
図3は、風車101の運用中における電流値及び歪量の測定結果の第1例を示す図である。図3では、電流センサ7によって測定された電流値と、歪センサ6によって測定された歪量とが対応付けられている。記憶部81は、電流値及び歪量の測定結果を記憶する。
【0034】
図4は、特性情報の例を示す図である。特性情報は、駆動部30の仕様情報又は事前測定結果である。特性情報では、電流値とトルクとが対応付けられている。特性情報は、例えば、駆動部30の製造業者によって予め作成される。例えば、駆動部30の製造業者は、駆動部30の仕様を決定する際に、駆動部30の特性情報を作成してもよい。例えば、駆動部30の製造業者は、駆動部30が製造された際の検査工程において、駆動部30の電流値及びトルク(軸トルク)を測定することによって、駆動部30の特性情報を作成してもよい。記憶部81は特性情報を記憶する。
【0035】
図5は、風車101の運用中における更新前の変換テーブルの例を示す図である。作成部82は、図3に示された電流値及び歪量と、図4に示された特性情報とに基づいて、図5に示された変換テーブルを作成する。ここで、作成部82は、図3に示された電流値と図4に示された電流値とを共通する項目として、図5に示された変換テーブルを作成する。
【0036】
例えば、作成部82は、図3に示された電流値「100A」と、図4に示された電流値「100A」とを共通する項目として、変換テーブルにおいて電流値「100A」と歪量「10μST」とトルク「12kN・m」とを対応付ける。
【0037】
例えば、作成部82は、図3に示された電流値「200A」と、図4に示された電流値「200A」とを共通する項目として、変換テーブルにおいて電流値「200A」と歪量「15μST」とトルク「22kN・m」とを対応付ける。
【0038】
図6は、風車101の運用中における電流値及び歪量の測定結果の第2例を示す図である。図6に示された更新された各歪量は、図3に示された各歪量に対して大きくなるようにシフトしている。すなわち、各歪量の値がドリフトしている。更新された各歪量が大きくなる理由は、例えば、歪センサ6の出力が温度変化及び経時変化するからである。
【0039】
図7は、風車101の運用中における更新後の変換テーブルの例を示す図である。作成部82は、図6に示された更新された電流値及び歪量と、図4に示された特性情報とに基づいて、図7に示された更新後の変換テーブルを作成する。例えば、図5では電流値「100A」に歪量「10μST」が対応付けられていたが、図7では電流値「100A」に歪量「15μST」が対応付けられている。例えば、図5では電流値「200A」に歪量「15μST」が対応付けられていたが、図7では電流値「200A」に歪量「20μST」が対応付けられている。
【0040】
次に、トルク推定システム1aの動作の例を説明する。
図8は、風車101の運用中におけるトルク推定システム1aの動作の例を示すフローチャートである。記憶部81は、特性情報(例えば、図4)を、通信部80から取得する。記憶部81は特性情報を記憶する(ステップS101)。電流センサ7は、駆動部30の電流値(例えば、図3における上段)を測定する(ステップS102)。歪センサ6は、各ボルト5の歪量(例えば、図3における下段)を測定する(ステップS103)。作成部82は、電流値と歪量と特性情報とに基づいて、変換テーブル(例えば、図5)を作成する(ステップS104)。
【0041】
推定部83は、運用中に測定された電流値又は歪量と、変換テーブルとに基づいて、軸33のトルクを推定する。例えば、駆動部30が停止中である場合、推定部83は、各ボルト5の歪量と変換テーブルとに基づいて、軸33のトルクを推定する(ステップS105)。
【0042】
推定部83は、トルクの推定処理を終了するか否かを、例えば指示信号に基づいて判定する(ステップS106)。推定処理を続ける(トルクの補正を継続する)と推定部83が判定した場合(ステップS106:NO)、推定部83は、ステップS102に処理を戻す。推定処理を終了すると推定部83が判定した場合(ステップS106:YES)、トルク推定システム1aの各部は、図8に示された処理を終了する。
【0043】
以上のように、電流センサ7(電流値取得部)は、風車101に備えられたアクチュエータ(例えば、ヨーアクチュエータ3、ピッチアクチュエータ)の駆動部30に電流を印加したときに電流値を取得する。歪センサ6(歪量取得部)は、駆動部30を有するアクチュエータを風車101の被固定部に固定する各ボルトの歪量を取得する。記憶部81は、駆動部30に電流を印加したときに駆動部30の軸33(駆動軸)に生じるトルクと駆動部30の電流値とボルトの歪量との対応付けを表す対応情報を記憶する。推定部83は、電流センサ7(電流値取得部)が取得した電流値又は歪センサ6(歪量取得部)が取得した歪量と対応情報とに基づいて、軸33(出力軸、駆動軸)のトルクを推定する。作成部82は、電流値と歪量とトルクとの対応付けを表す対応情報(例えば、図5に示されたような変換テーブル、関数)を、電流値及び歪量(例えば、図3)と、特性情報(例えば、図4)とに基づいて作成又は更新する。
【0044】
電流値及びトルクの間の対応付けは、駆動部30の温度変化又は経時変化による影響を受けにくい。そこで、作成部82は、電流値及びトルクの間の対応付けが示されている特性情報と、測定された電流値及び歪量とに基づいて、対応情報(変換テーブル、関数等)を作成する。これによって、特性情報が示す電流値の範囲内で、ヨーアクチュエータ3の軸33のトルクを推定することが可能である。
【0045】
トルク推定装置8は、既設のヨーアクチュエータ3に備えることが可能である。トルク推定装置8は、推定された時系列のトルクに基づいて、ヨーアクチュエータ3の故障を予測することが可能である。トルク推定装置8は、発電の機会を風車101が失う可能性を低減することが可能である。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態では、風車101の運用前(ヨーアクチュエータ3の設置時)において、模擬された負荷が与えられた軸33のトルクとボルト5の歪量とが測定される点が、第1実施形態と相違する。第2実施形態では第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0047】
図9は、風車101の運用前におけるトルク推定システム1bの構成例を示す図である。トルク推定システム1bは、制御装置2と、1台以上のヨーアクチュエータ3と、リングギア4と、N本のボルト5と、N個の歪センサ6と、トルク推定装置8と、1以上のトルクメータ9と、負荷部10とを備える。
【0048】
負荷部10(負荷発生装置)は、風車101の運用前に、通信部80から指示された出力値のトルクを軸33に与える。この状態で、ボルト5に設置されたトルクメータ9は、軸33に与えられたトルクを測定する。軸33に与えられたトルクに応じてヨーアクチュエータ3にモーメントが生じるので、ボルト5に歪が生じる。歪センサ6は、風車101の運用前に、各ボルト5の歪量を測定する。
【0049】
図10は、風車101の運用前におけるトルク及び歪量の測定結果の例を示す図である。図10では、歪センサ6によって測定されたボルト5の歪量と、例えばボルト5に備えられたトルクメータ9によって測定された軸33のトルクとが対応付けられている。記憶部81は、トルク及び歪量の測定結果を、運用前情報として記憶する。
【0050】
負荷部10及びトルクメータ9は、風車101が運用中となる前に、作業員によって取り外される。風車101の運用中となる前には、トルク推定システム1bは、第1実施形態に示されたトルク推定システム1aと同様の構成に変更される。したがって、風車101の運用中では、トルク推定システム1aと同様の構成を備えるトルク推定システム1bが動作する。
【0051】
図11は、風車101の運用中における更新前の変換テーブルの例を示す図である。作成部82は、図3に示された電流値及び歪量と、図4に示された特性情報とに基づいて、図11に示された変換テーブルの一部を作成する。ここで、作成部82は、図3に示された電流値と図4に示された電流値とを共通する項目として、図11に示された変換テーブルの一部を作成する。
【0052】
例えば、作成部82は、図3に示された電流値「100A」と図4に示された電流値「100A」とを共通する項目として、変換テーブルにおいて電流値「100A」と歪量「10μST」とトルク「12kN・m」とを対応付ける。例えば、作成部82は、図3に示された電流値「200A」と図4に示された電流値「200A」とを共通する項目として、変換テーブルにおいて電流値「200A」と歪量「15μST」とトルク「22kN・m」とを対応付ける。
【0053】
さらに、作成部82は、図3に示された電流値及び歪量と、図10に示された運用前情報とに基づいて、図11に示された変換テーブルを完成させる。ここで、作成部82は、図3に示された歪量と図10に示された歪量とを共通する項目として、図11に示された変換テーブルを完成させる。
【0054】
例えば、作成部82は、図3に示された歪量「25μST」と、図10に示された歪量「25μST」とを共通する項目として、変換テーブルにおいて電流値「300A」と歪量「25μST」とトルク「30kN・m」とを対応付ける。例えば、作成部82は、図3に示された歪量「35μST」と、図10に示された歪量「35μST」とを共通する項目として、変換テーブルにおいて電流値「400A」と歪量「35μST」とトルク「40kN・m」とを対応付ける。
【0055】
以下では、図3に示された各歪量に対して、図6に示されているように各歪量の値がドリフトしている場合を例として説明する。各歪量の値がドリフトしている理由は、例えば、歪センサ6の出力が温度変化及び経時変化するからである。
【0056】
図12は、風車101の運用中における更新後の変換テーブルの例を示す図である。作成部82は、図6に示された更新された電流値及び歪量と、図4に示された特性情報と、図10に示された運用前情報とに基づいて、図12に示された更新後の変換テーブルを作成する。
【0057】
例えば、図11では電流値「100A」に歪量「10μST」が対応付けられていたが、図12では電流値「100A」に歪量「15μST」が対応付けられている。図11では電流値「200A」に歪量「15μST」が対応付けられていたが、図12では電流値「200A」に歪量「20μST」が対応付けられている。
【0058】
同様に例えば、図11では電流値「300A」に歪量「25μST」が対応付けられていたが、図12では電流値「300A」に歪量「35μST」が対応付けられている。図11では電流値「400A」に歪量「35μST」が対応付けられていたが、図12では電流値「400A」に歪量「40μST」が対応付けられている。
【0059】
次に、トルク推定システム1bの動作の例を説明する。
図13は、風車101の運用前(ヨーアクチュエータ3の設置時)におけるトルク推定システム1bの動作(キャリブレーション動作)と、風車101の運用中におけるトルク推定システム1aの動作との例を示すフローチャートである。
【0060】
負荷部10は、風車101の運用前に、通信部80から指示された出力値のトルクを軸33に与える。すなわち、負荷部10は、風力による負荷が模擬された負荷を、軸33に与える。この状態で、ボルト5に設置されたトルクメータ9は、軸33に与えられたトルクを測定する。歪センサ6は、風車101の運用前に、各ボルト5の歪量を測定する(ステップS201)。
【0061】
作成部82は、軸33に与えられたトルクと各ボルト5の歪量とを表す運用前情報(例えば、図10)を作成する(ステップS202)。
【0062】
風車101の運用中では、トルク推定システム1bは、第1実施形態に示されたトルク推定システム1aと同様の構成に変更される。
【0063】
記憶部81は、特性情報(例えば、図4)を通信部80から取得する。記憶部81は特性情報を記憶する(ステップS203)。電流センサ7は、駆動部30の電流値を測定する(ステップS204)。歪センサ6は、各ボルト5の歪量(例えば、図3における下段)を測定する(ステップS205)。作成部82は、電流値と歪量と特性情報と運用前情報とに基づいて、変換テーブルを作成する(ステップS206)。
【0064】
推定部83は、運用中に測定された電流値又は歪量と、変換テーブルとに基づいて、軸33のトルクを推定する。例えば、駆動部30が停止中である場合(駆動部30に電流が印加されていない場合)、推定部83は、各ボルト5の歪量と変換テーブルとに基づいて、軸33のトルクを推定する(ステップS207)。
【0065】
推定部83は、トルクの推定処理を終了するか否かを、例えば指示信号に基づいて判定する(ステップS208)。推定処理を続ける(トルクの補正を継続する)と推定部83が判定した場合(ステップS208:NO)、推定部83は、ステップS204に処理を戻す。推定処理を終了すると推定部83が判定した場合(ステップS208:YES)、トルク推定システム1aの各部は、図13に示された処理を終了する。
【0066】
以上のように、ボルト5-nは、トルクメータ9-nを備える。キャリブレーションとして、トルクメータ9は風車101の運用前にトルクを測定する。作成部82は、風車101の運用前に測定された軸33のトルクと、風車101の運用前に測定されたボルト5の歪量との対応付けを表す運用前情報(例えば、図10)を作成する。記憶部81は、運用前情報を記憶する。作成部82は、電流値と歪量とトルクとの対応付けを表す変換テーブル(例えば、図11)を、電流値と歪量と特性情報と運用前情報とに基づいて作成する。
【0067】
電流値及びトルクの間の対応付けは、駆動部30の温度変化又は経時変化による影響を受けにくい。そこで、作成部82は、電流値及びトルクの間の対応付けが示されている特性情報と、測定された電流値及び歪量とに基づいて、変換テーブルの一部(図11では、電流値「100A」の列と、「200A」の列)を作成する。これによって、特性情報が示す電流値の範囲内で、ヨーアクチュエータ3の軸33のトルクを推定することが可能である。
【0068】
さらに、風車101の運用前(ヨーアクチュエータ3の設置時)におけるキャリブレーションでは、個体バラツキ(外部要因によるバラツキ)の影響と、組付け部の剛性の影響とが反映されたトルクが測定される。そこで、作成部82は、測定された電流値及び歪量と、運用前情報とに基づいて、変換テーブルの残りの一部(図11では、電流値「300A」の列と、「400A」の列)を作成する。これによって、特性情報が得られない電流値の範囲についても、ヨーアクチュエータ3の軸33のトルクを推定することが可能である。
【0069】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1a,1b…トルク推定システム、2…制御装置、3…ヨーアクチュエータ、4…リングギア、5…ボルト、6…歪センサ、7…電流センサ、8…トルク推定装置、9…トルクメータ、10…負荷部、30…駆動部、31…制動部、32…減速機、33…軸、34…ピニオン、80…通信部、81…記憶部、82…作成部、83…推定部、84…表示部、101…風車、102…タワー、103…ナセル、104…ロータ、105…ブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13