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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240716BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/075 501
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020053500
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021152621
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 邦人
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191234(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235665(WO,A1)
【文献】特開2001-091724(JP,A)
【文献】特開2009-015309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板又はキャリアーフィルムに形成された感光性樹脂層に対してパターン状の露光を実施し、露光部を硬化させる露光工程を行い、該露光工程の後に、非露光部の感光性樹脂層を除去し、硬化物からなるスペーサーパターンを形成する現像工程を行うフォトスペーサーの製造方法であって、
該感光性樹脂層が、少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合性開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合性開始剤の総量に対して10~20質量%であり、染料も顔料も含有しない感光性樹脂組成物を含んでおり、該現像工程の後に、ポストベーク処理を実施しないことを特徴とするフォトスペーサーの製造方法。
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物における(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノール型、テトラフェノール型、フェノール-キシリレン型若しくはグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、又は、それらのハロゲン化エポキシ樹脂に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を付与し、さらにカルボン酸及び/又はその無水物を付与したものである、請求項1に記載のフォトスペーサーの製造方法
【請求項3】
前記感光性樹脂組成物における(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート又はエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートである、請求項1又は請求項2に記載のフォトスペーサーの製造方法
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の感光性樹脂組成物をキャリアーフィルムに塗工して、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層が形成された感光性フィルムを作製し、基板に該感光性樹脂層を転写することを特徴とする、フォトスペーサー製造用基板の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載のフォトスペーサー製造用基板の製造方法で製造された基板に形成された感光性樹脂層に対して、前記露光工程を行う、請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のフォトスペーサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス基板に代わって、軽量で薄く、割れにくいプラスチック基板を使った液晶表示装置が開発され始めている。しかしながら、プラスチック基板は、耐熱性が低く、熱膨張率が高いことから、歪みを引き起こす等の問題があり、ガラス基板と同様の方法で液晶表示装置を製造することが難しいとされている。
【0003】
一般的に液晶表示装置は、ITOなどの透明電極、配向膜を順に積層させた基板を対向させ、対向させた基板間に液晶を封入することによって製造される。対向させた基板の間隔を一定に保つために、スペーサーが設置される。スペーサーとしては、シリカなどのビーズスペーサー、フォトスペーサーなどが挙げられる。
【0004】
フォトスペーサーは、感光性樹脂組成物を用いて作製されるため、所望の位置に製造することができる。フォトスペーサーの作製方法としては、多官能(メタ)アクリートモノマーを含む感光性樹脂組成物をガラス基板に塗設した後、露光工程、現像工程を実施することによって、基板上に形成したスペーサーパターンに対し、未反応モノマーの架橋を促進することを目的として、200℃以上の高温でポストベーク処理を実施する方法が知られている(特許文献1~2)。
【0005】
フォトスペーサーは、配向膜形成前の基板に作製される。配向膜の作製方法としては、ポリアミック酸を含む溶剤インキでフレキソ印刷する方法が知られている(特許文献3)。しかしながら、プラスチック基板は、耐熱性が低く、熱膨張率が高いためフォトスペーサー作製時のポストベーク処理を実施することが困難とされている。そのため、フォトスペーサー作製時にポストベーク処理を実施せずに配向膜を作製すると、フォトスペーサーの耐溶剤性が低く、溶剤インキの影響でフォトスペーサーが膨潤して剥離する場合があった。また、フォトスペーサーの密着性が低く、フォトスペーサーが所望の位置から移動する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-241199号公報
【文献】特開2017-122822号公報
【文献】特開2011-150265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、耐溶剤性及び密着性に優れ、ポストベーク処理を実施しない場合であっても、剥離及び移動が起こりにくいフォトスペーサーを製造することができる感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、下記の方法によって解決される。
【0009】
少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合性開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有率が、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合性開始剤の総量に対して10~20質量%であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートを含有し、その含有率が10~20質量%であるため、露光工程のみで強固な架橋を有する硬化物を形成することができる。この硬化物は耐溶剤性及び密着性に優れ、フォトスペーサーとした場合に、現像工程後のポストベーク処理をしない場合であっても、溶剤インキを使用する配向膜作製工程で、フォトスペーサーが膨潤して剥離することが抑制でき、また、所望の位置からフォトスペーサーが移動することも抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合開始剤を含有し、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有率が、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合性開始剤の総量に対して10~20質量%である。本発明の感光性樹脂組成物は、液晶表示装置のフォトスペーサーを作製するために好適である。
【0013】
(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとしては、エポキシ樹脂にアクリル酸やメタクリル酸などを付与し、さらにカルボン酸やその無水物を付与したものを使用できる。該エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノール型、テトラフェノール型、フェノール-キシリレン型、グリシジルエーテル型あるいはそれらのハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。使用する酸無水物としては無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが使用できる。
【0014】
(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの酸価は、現像速度、感光性樹脂層の柔らかさなどに影響する。酸価(JIS K2501:2003)は、40~120mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が40mgKOH/g未満では、アルカリ現像時間が長くなる傾向があり、一方、120mgKOH/gを超えると、密着性が悪くなる場合がある。
【0015】
また、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの質量平均分子量は、3,000~15,000であることが好ましい。質量平均分子量が3,000未満では、硬化前の感光性樹脂層を被膜状態に形成することが困難になることがある。一方、15,000を超えると、現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
【0016】
(B)3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した化合物等が挙げられる。例えば、多価のアルコールに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、3官能以上の(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーを含有してもよい。3官能以上の(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーとして、1つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物、2つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物などが挙げられる。
【0018】
1つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基が1以上)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
また、2つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、多価のアルコールに2つの(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート(CO数が2~20)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~40)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(エトキシ基及びプロポキシ基の和が2~40)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0020】
(C)シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアネート等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0021】
(D)光重合開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;2-(2′-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(2′-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(2′-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(2′-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(4′-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9′-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。上記2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物において、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの含有率は、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合開始剤の総量に対して、50~85質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましく、70~85質量%がさらに好ましい。50質量%より少ないと、解像性が悪化し、微細なスペーサーパターンを形成することが困難となる場合がある。85質量%より多くなると、フォトスペーサーの耐溶剤性が低下する場合がある。
【0023】
(B)3官能以上の(メタ)アクリレートの含有率は、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合開始剤の総量に対して、10~20質量%であり、より好ましくは10~15質量%である。10質量%より少なくなると、硬化後の架橋密度が低いために、耐溶剤性が低下する。20質量%より多くなると、硬化後の体積収縮が大きくなり、フォトスペーサーの密着性が低下する。
【0024】
(C)シラン化合物の含有率は、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合開始剤の総量に対して、0.3~5質量%であることが好ましく、より好ましくは1~5質量%である。0.3質量%より少ないと、フォトスペーサーの密着性が低下する場合がある。5質量%より多くなると、現像性が悪化する場合がある。
【0025】
(D)光重合開始剤の含有率は、(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)3官能以上の(メタ)アクリレート、(C)シラン化合物及び(D)光重合開始剤の総量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5質量%であることが好ましい。0.1質量%未満では、光重合性が不十分となる場合がある。一方、10質量%を超えると、解像性が悪化する場合がある。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、上記成分(A)~(D)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、増感剤、溶剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、光減色剤、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤、撥油剤等が挙げられ、各々0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は、キャリアーフィルムに塗工して、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を形成して感光性フィルムを作製し、基板に感光性樹脂層を転写してもよい。キャリアーフィルムとしては、紫外線を透過させる透明フィルムが好ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等のフィルムが使用できる。その中でも特に、ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレートのフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、光透過性、屈折率に対して有利であり、また、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用しやすい。キャリアーフィルムの厚みは、1~100μmであることが好ましい。
【0028】
基板又はキャリアーフィルムに感光性樹脂層を形成する方法は、ロールコータ、コンマコータ(登録商標)、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等の装置を用いた塗工方法で行うことができる。感光性樹脂層の厚みは、必要となる基板の間隔によって選択される。
【0029】
必要に応じて、キャリアーフィルム上に形成した感光性樹脂層を保護フィルムで被覆してもよい。保護フィルムとは、感光性樹脂層の酸素阻害、ブロッキング等を防止するために設けられ、キャリアーフィルムとは反対側の感光性樹脂層上に設けられる。感光性樹脂層とキャリアーフィルムとの接着力よりも、感光性樹脂層と保護フィルムとの接着力の方が小さいことが好ましい。また、フィッシュアイの小さい保護フィルムが好ましい。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0030】
感光性フィルムを基板にラミネートする方法は、熱ラミネート処理等の熱圧着処理が用いられる。密着性の観点から、加熱温度は70~120℃が望ましい。70℃未満では基板への密着が悪くなる場合がある。120℃より高くなると、プラスチック基板の変形が起こる可能性がある。
【0031】
感光性樹脂層からフォトスペーサーを作製する方法を説明する。まず、露光工程において、感光性樹脂層に対してパターン状の露光を実施し、露光部を硬化させる。露光としては、具体的には、フォトマスクを用いた密着露光が挙げられる。また、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、プロキシミティ方式、プロジェクション方式や走査露光が挙げられる。走査露光としては、UVレーザ、He-Neレーザ、He-Cdレーザ、アルゴンレーザ、クリプトンイオンレーザ、ルビーレーザ、YAGレーザ、窒素レーザ、色素レーザ、エキシマレーザ等のレーザ光源を発光波長に応じてSHG波長変換した走査露光、あるいは、液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光等が挙げられる。
【0032】
露光工程後に、現像工程を実施し、フォトスペーサーとして不要な部分である非露光部の感光性樹脂層を除去し、硬化物からなるスペーサーパターンを形成する。現像液としては、例えば、無機アルカリ性化合物のアルカリ水溶液を用いることができる。無機アルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の炭酸塩や水酸化物が挙げられる。現像液の無機アルカリ性化合物の濃度は、0.1~3質量%であることが好ましく、0.1~3質量%の炭酸ナトリウム水溶液が現像液として好ましく使用できる。現像液には、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量混入することもできる。現像処理方法としては、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式が除去速度のためには最も適している。現像液の温度は15~35℃が好ましく、また、スプレー圧は0.02~0.3MPaが好ましい。
【0033】
続いて、スペーサーパターンにさらに紫外線を照射する追加露光工程を説明する。具体的には、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源として紫外線を、硬化したスペーサーパターン全面に照射し、さらに架橋させる。露光量は、100~2000mJ/cmが好ましい。
【0034】
以上の工程によって、フォトスペーサーを作製することができる。なお、本発明の感光性樹脂組成物を使用した場合、ポストベーク処理を実施しなくても、耐溶剤性及び密着性に優れたフォトスペーサーを作製することができるが、ポストベーク処理を実施しても構わない。ポストベーク処理を実施する場合には、温度は60~250℃、時間は10~90分間の条件で実施することが好ましい。
【実施例
【0035】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1~4、比較例1~5)
表1に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物の塗工液を得た。なお、表1における各成分の含有量の単位は[質量部]である。ワイヤーバーを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(キャリアーフィルム、商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に得られた塗工液を塗工し、80℃で5分間乾燥し、溶剤成分を除去し、PETフィルムの片面上に、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(6μm厚)を得た。ポリエチレンフィルム(保護フィルム、商品名:GF1、30μm厚、タマポリ社製)を感光性樹脂層面に貼り付け、感光性フィルムを作製した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1において、各成分は以下の通りである。
【0039】
(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート
(A-1)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)UXE-3024(商品名、日本化薬株式会社、濃度65質量%)
(A-2)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)ZAR-1035(商品名、日本化薬株式会社、濃度65質量%)
【0040】
(B)3官能以上の(メタ)アクリレート
(B-1)TMPT(商品名、新中村化学工業社製、トリメチロールプロパントリメタクリレート)
(B-2)ATM-35E(商品名、新中村化学工業社製、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート)
【0041】
(b)(B)以外の(メタ)アクリレート
(b-3)BPE-500(商品名、新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、2官能)
(b-4)M-90G(商品名、新中村化学工業社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、単官能)
【0042】
(C)シラン化合物
(C-1)3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
【0043】
(D)光重合開始剤
(D-1):4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
(D-2):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド
【0044】
次に、厚さ100μmの片面ITO蒸着ポリカーボネートフィルムのITO蒸着面に、上記実施例1~4、比較例1~5の感光性フィルムを、ポリエチレンフィルムを剥がした後、ラミネータを用いて熱圧着し、感光性樹脂層を形成した。続いて、5kWの超高圧水銀灯光源を搭載した露光機を用い、ピッチ150μm、20μmφのテスト用パターンを有するフォトマスクを通して、ITO蒸着面に形成された感光性樹脂層に対して密着露光を行う露光工程を実施した。コンベアー式現像機を用いて、温度25℃の0.2質量%炭酸ナトリウム水溶液(現像液)で、スプレー圧力0.2MPaの条件で、60秒間処理する現像工程を実施し、ピッチ150μm、20μmφのスペーサーパターンを得た。次に、上記露光機を使用し、露光量1000mJ/cmにて紫外線を全面に照射する追加露光工程を実施し、フォトスペーサーを作製した。一連の工程後、スペーサーパターンを確認したところ、実施例1~4並びに比較例2、3及び5では、剥離無く、フォトマスク通りのパターンを有するフォトスペーサーが作製された。一方、比較例1及び4では、フォトスペーサーの一部に剥がれが観察されたため、次の工程に進めなかった。
【0045】
次に、フォトスペーサーを形成したITO蒸着面に、溶剤インキによるフレキソ印刷法を用いて、膜厚約100nmのポリイミドからなる配向膜を形成させた。配向膜を十分に乾燥させた後、フォトスペーサーを観察したところ、実施例1~4では、フォトスペーサーの剥離及び形成された位置からのフォトスペーサーの移動は確認されなかった。一方、比較例2、3及び5は、フォトスペーサーパターンの剥離又は形成した位置からの移動が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の、感光性樹脂組成物は、液晶表示装置等のフォトスペーサー作製に使用できる。また、カラーフィルター用保護膜、タッチパネル用保護膜、タッチパネル用絶縁膜等への利用可能性がある。