(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04B 7/14 20060101AFI20240716BHJP
E04B 1/34 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
E04B7/14
E04B1/34 A
(21)【出願番号】P 2020096838
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】六車 政宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠磨
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-264499(JP,A)
【文献】特開平09-228483(JP,A)
【文献】特開2019-070291(JP,A)
【文献】特開2003-268915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/32
E04B 1/34
E04B 1/342
E04B 7/08
E04B 7/14
E04H 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体から立設され対向して複数並列に配置された支柱と、
前記支柱に架設され上方又は下方へ湾曲
して前記支柱へスラスト力を伝達する屋根部材と、
前記支柱の外側へ連結されて水平方向へ延設され、前
記スラスト力を面内方向の水平力として受ける面構造部材と、
前記支柱と離間した位置において、前記下部構造体と前記面構造部材との間に設けられ前記面構造部材へ伝達された水平力を前記下部構造体へ伝達する耐震要素と、
を有する屋根構造。
【請求項2】
前記面構造部材は、スラブ、又は梁で構成された水平架構と前記水平架構に設けられた水平ブレースであり、
前記耐震要素は、前記屋根部材の架設方向へ延設された耐震壁、又は前記屋根部材の架設方向を構面方向とする柱梁架構と前記柱梁架構に設けられた鉛直ブレースである、
請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記支柱において前記面構造部材が接合される部分の断面積が、他の部分の断面積より大きく形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記面構造部材における前記梁と前記下部構造体との間には、前記支柱と離間した位置に柱が立設され、
前記耐震要素は、前記梁、前記柱及び前記下部構造体で形成される架構の構面を補剛する、
請求項2に記載の屋根構造。
【請求項5】
前記面構造部材は、上下に2層配置されている、
請求項1~4の何れか1項に記載の屋根構造。
【請求項6】
前記面構造部材及び前記耐震要素は、前記屋根部材の一方側にのみ設けられている、
請求項1~5の何れか1項に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、剛性梁を吊り支持する柱に、方杖が連結された屋根架構が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の柱は、通常時には剛性梁から引張力が作用しないものとされている。一方、積雪時などにおいては、この柱には、剛性梁から引張力(スラスト力)が作用する。そこで、このスラスト力を処理するために、柱には方杖(バックステイ)が連結されている。このバックステイは、上端部が柱の頂部に連結され、斜め下方向に向かって延設されて、下端部が地盤等に対して連結されている。
【0005】
しかしながら、このようなバックステイは、柱の周囲の空間を斜めに横断する。このため、柱の周囲の空間を有効に利用することが難しい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、スラスト力が作用する支柱の周囲の空間を有効に利用できる屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の屋根構造は、下部構造体から立設され対向して複数並列に配置された支柱と、前記支柱に架設され上方又は下方へ湾曲して前記支柱へスラスト力を伝達する屋根部材と、前記支柱の外側へ連結されて水平方向へ延設され、前記スラスト力を面内方向の水平力として受ける面構造部材と、前記支柱と離間した位置において、前記下部構造体と前記面構造部材との間に設けられ前記面構造部材へ伝達された水平力を前記下部構造体へ伝達する耐震要素と、を有する。
【0008】
請求項1に記載の屋根構造では、上方又は下方へ湾曲した屋根部材から支柱へスラスト力が伝達される。支柱には面構造部材が連結されており、この面構造部材は、スラスト力を面内方向の水平力として受ける。この水平力は、耐震要素によって下部構造体へ伝達される。
【0009】
このように、支柱に伝達されたスラスト力は、水平方向へ延設された面構造部材と耐震要素とを介して下部構造体へ伝達される。このため、支柱には斜め方向に延設されるバックステイなどを取り付ける必要がない。これにより、スラスト力が作用する支柱の周囲の空間を有効に利用できる。例えば、支柱の周囲に、居室空間や施設空間を構築できる。
【0010】
また、スラスト力の処理機構を、面構造部材及び耐震要素と兼用してバックステイなどを省略できるため、屋根構造を簡略化できる。
【0011】
請求項2の屋根構造は、請求項1に記載の屋根構造において、前記面構造部材は、スラブ、又は梁で構成された水平架構と前記水平架構に設けられた水平ブレースであり、前記耐震要素は、前記屋根部材の架設方向へ延設された耐震壁、又は前記屋根部材の架設方向を構面方向とする柱梁架構と前記柱梁架構に設けられた鉛直ブレースである。
【0012】
請求項2に記載の屋根構造では、スラブ又は水平ブレースと、耐震壁又は鉛直ブレースとによって、スラスト力に抵抗することができる。つまり、スラスト力を処理するための特別な構成を設けることなく、建物を構成する一般的な部材によって、スラスト力を処理できる。
【0013】
請求項3の屋根構造は、請求項1又は請求項2に記載の屋根構造において、前記支柱において前記面構造部材が接合される部分の断面積が、他の部分の断面積より大きく形成されている。
【0014】
支柱において面構造部材が接合される部分は、面構造部材から反力を受ける。このため、この部分には応力が集中する。請求項3に記載の屋根構造では、この部分の断面積が、他の部分の断面積より大きく形成されている。これにより、効率的にスラスト力を処理できる。
請求項4の屋根構造は、請求項2に記載の屋根構造において、前記面構造部材における前記梁と前記下部構造体との間には、前記支柱と離間した位置に柱が立設され、前記耐震要素は、前記梁、前記柱及び前記下部構造体で形成される架構の構面を補剛する。
請求項5の屋根構造は、請求項1~4の何れか1項に記載の屋根構造において、前記面構造部材は、上下に2層配置されている。
請求項6の屋根構造は、請求項1~5の何れか1項に記載の屋根構造において、前記面構造部材及び前記耐震要素は、前記屋根部材の一方側にのみ設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、スラスト力が作用する支柱の周囲の空間を有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る屋根構造を示す立断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る屋根構造を示す平面図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る屋根構造における柱の接合部を示す部分拡大立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る屋根構造における柱の接合部の変形例を示す部分拡大立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る屋根構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<屋根構造>
図1には、本発明の実施形態に係る屋根構造の一例が示されている。この図に示すように、屋根構造は、下部構造体10の上方に構築され、支柱20(柱22及び柱24)、屋根部材30、面構造部材40及び耐震要素50を備えて形成されている。本実施形態において、下部構造体10は屋根構造の基礎を含む構造体である。本明細書においては、
図1に示された屋根構造及び下部構造体10を総称して建物と称すことがある。
【0019】
(支柱)
支柱20は、屋根部材30を支持する支持構造体である。また、支柱20は、下部構造体10から立設され互いに対向配置された一対の柱22及び柱24の総称である。なお、本明細書においては、柱22、24の対向方向を、X方向と称す場合がある。X方向は、屋根部材30の架設方向やスパン方向等と称すこともできる。
【0020】
図2に示すように、柱22及び柱24は、それぞれX方向と交わる方向に、所定の間隔を空けて複数並列配置されている。本明細書においては、このX方向と交わる方向を、Y方向と称す場合がある。X方向とY方向とは、略直交する方向である。
【0021】
柱22は、例えばH形鋼で形成された鋼製柱である。
図1に示すように、柱22の上端部(柱頭)22Aにはバックステイ26の上端部が接合されている。バックステイ26の下端部(柱脚)は、下部構造体10に埋設(根入れ)されている。バックステイ26は、X方向に沿って、かつ、柱22の外側へ向かって延設されている。
【0022】
なお、本明細書において、柱22の「外側」とは、柱22から見て柱24と反対側のことを指すものとする。同様に、及び柱24の「外側」とは柱24から見て柱22と反対側のことを指すものとする。「内側」は「外側」の反対側のことを指す。
【0023】
バックステイ26は、屋根部材30から柱22に作用するスラスト力(本実施形態においては、柱22の内側へ向かう引張力)に抵抗するための方杖である。バックステイとしては、H形鋼、丸鋼、角型鋼管、ワイヤーなど、引張力に抵抗できる各種の材料を用いることができる。
【0024】
柱24は、例えばH形鋼(所謂ビルドH形鋼)で形成された鋼製柱である。柱24は、上下方向で断面積(水平方向に沿う平面で切断した断面積)が変化して形成されている。具体的には、柱24の上端部(柱頭)24A及び下端部(柱脚)24Bは、断面積がその他の部分より小さい。また、柱24において面構造部材40が接合される部分(接合部24C)は、断面積が接合部24Cより上端部24A側の部分及び下端部24B側の部分より大きい。
【0025】
柱22及び柱24の下端部は、求められる固定度に応じた各種の固定方法によって下部構造体10に固定することができる。各種の固定方法とは、例えば露出柱脚による固定方法、埋め込み柱脚による固定方法及び根巻き柱脚による固定方法等である。
【0026】
図3(A)、(B)には柱24における接合部24Cの一例が示されている。接合部24Cでは、梁42における上フランジ及び下フランジの延長線上に、鋼製のスチフナSが配置されている。スチフナSは、柱24のウェブ及びフランジに溶接されて、柱24を補剛する補剛板材である。
【0027】
なお、柱24はH形鋼ではなく、
図4(A)、(B)に示すように、例えば角型鋼管やCFT(Concrete Filled Steel Tube)等によって形成してもよい。この場合、接合部24Cには、梁42における上フランジ及び下フランジの延長線上に、ダイアフラムDを設けることが好適である。ダイアフラムDは、通しダイアフラム、外ダイアフラム及び内ダイアフラム等とすることができる。
【0028】
(屋根部材)
図2に示すように、屋根部材30は、H形鋼の大梁32及び小梁34を備えて形成されている。
図1に示すように、大梁32は、両端が柱22及び柱24にそれぞれ接合されている。大梁32における両端以外の部分は他の構造部材によって支持されていない。
【0029】
このため大梁32は、両端を支持点として、中央部が下方へ向かって湾曲した(横から見て下方へ凹むように湾曲した)状態で配置されている。つまり大梁32は、両端が柱22及び柱24によって支持された吊り構造の部材である。
【0030】
図2に示すように、小梁34は、互いに隣り合う大梁32に架け渡された連結梁である。小梁34は、X方向に所定の間隔を空けて複数配置されている。これらの大梁32及び小梁34によって、屋根部材30が格子状の架構に形成されている。なお、大梁32及び小梁34によって囲まれる構面には、ブレースなどを配置して面内剛性を高くしてもよい。また、大梁32及び小梁34の上方には、図示しない板状の屋根材が葺かれている。
【0031】
(面構造部材)
図1に示すように、面構造部材40は、梁42及びスラブ44を備えて形成されている。また、面構造部材40は、上下に2層配置されている。梁42はH形鋼によって形成され、柱24の外側へ延設されている。梁42は、一方の端部が柱24に接合され、他方の端部が柱27に接合されている。柱27は、柱24の外側において下部構造体10から立設されたH形鋼の柱である。
【0032】
梁42には、スラブ44が架設されている。スラブ44はコンクリートを用いて形成されたスラブであり、梁42との間で互いに応力を伝達できる。この応力伝達手段としては、例えば梁42に溶接されたスタッドボルト等を用いることができる。
【0033】
なお、スラブ44としては、デッキプレート等の鋼板とコンクリートとを一体化させた合成スラブを用いることができる。また、コンクリートとしては、現場打ちコンクリートの他、部分的に又は全体的にALCパネル等のプレキャストコンクリートを用いることができる。
【0034】
梁42及びスラブ44は、柱24の延設方向(上下方向、略鉛直方向)と直交する構面、すなわち横方向(略水平方向)に沿う構面内に形成されている。
図2に示すように、スラブ44は、複数の梁42に跨って配置されている。このため、スラブ44の上方には、X方向及びY方向に拡がりを持った空間が形成される。
【0035】
なお、梁42の上方を歩行空間として利用しない場合は、必ずしもスラブ44を配置する必要はない。例えば互いに隣り合う梁42間に小梁及び水平ブレース(不図示)を架設して、スラブ44を設けない構成としてもよい。水平ブレースは、例えば梁42と小梁との接合部同士を連結するように、X方向及びY方向と交わる方向へ延設される。この場合、梁42及び小梁で形成された水平架構と、水平ブレースと、を総称して面構造部材と称す。
【0036】
また、梁を必要としない構造(フラットスラブ等)によってスラブ44を構築する場合は、梁42を省略してもよい。すなわち、本発明における面構造部材40は、略水平方向の面内に応力を伝達できるものであればよい。
【0037】
(耐震要素)
耐震要素50は、上下方向に隣り合う梁42間、又は、梁42と下部構造体10との間に配置された耐震ブレース(鉛直ブレース)である。上下方向に隣り合う梁42間、又は、梁42と下部構造体10との間には、柱28が立設されている。耐震要素50は、梁42又は下部構造体10と、柱28と、で形成される柱梁架構の構面Hを補剛して、地震力に抵抗することができる。構面Hは、屋根部材30の架設方向(X方向)に沿う構面である。
【0038】
図2に示すように、梁42及び柱28はY方向に複数配置されている。このため、構面HもY方向に複数配置されている。耐震要素50は、これらの構面Hのうち、任意の構面に配置することができる。換言すると、耐震要素50は全ての構面Hに配置する必要はない。また、耐震要素50は、耐震ブレースに代えて又は加えて、耐震壁(不図示)としてもよい。なお、この耐震壁は、鉄筋コンクリートや鋼板など各種の構造を採用することができる。すなわち、耐震壁の構造は特に限定されるものではない。
【0039】
なお、
図1においては梁42が通し梁とされ、柱28が梁42に接合された例が記載されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば柱28を通し柱として、梁42を柱28に接合してもよい。
【0040】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る屋根構造では、
図1に矢印Tで示すように、下方へ湾曲した屋根部材30から支柱20(柱22及び柱24)へスラスト力が伝達される。この支柱20のうち、柱24には面構造部材40としての梁42及びスラブ44が連結されている。この面構造部材40は、スラスト力を面内(X方向及びY方向に沿う面内)方向の水平力として受ける。この水平力は、耐震要素50によって下部構造体10へ伝達される。
【0041】
このように、柱24に伝達されたスラスト力は、面構造部材40と耐震要素50とで下部構造体10へ伝達される。このため、柱24には斜め方向に延設されるバックステイなどを取り付ける必要がない。これにより、スラスト力が作用する柱24の周囲の空間、例えばスラブ44の上方の空間を有効に利用できる。
【0042】
また、スラスト力の処理機構を、面構造部材40及び耐震要素50と兼用してバックステイなどを省略できるため、屋根構造を簡略化できる。
【0043】
また、本発明の実施形態に係る屋根構造では、面構造部材40(スラブ44又は水平ブレース)と、耐震要素50(耐震ブレース又は耐震壁)とによって、スラスト力に抵抗することができる。つまり、スラスト力を処理するための特別な構成を設けることなく、建物を構成する一般的な部材によって、スラスト力を処理できる。
【0044】
さらに、本発明の実施形態に係る屋根構造では、柱24において面構造部材40の梁42が接合される部分(接合部24C)の断面積が、他の部分の断面積より大きく形成されている。
【0045】
柱24において面構造部材40が接合される部分は、面構造部材40から反力を受ける。このため、この部分には応力が集中する。本実施形態に係る屋根構造では、この部分の断面積が、他の部分の断面積より大きく形成され、さらにスチフナS又はダイアフラムDによって補剛されている。これにより、効率的にスラスト力を処理できる。
【0046】
なお、本実施形態においては、屋根部材30における大梁32が、中央部が下方へ向かって湾曲した吊り構造の部材とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0047】
例えば大梁32は、中央部が上方へ向かって湾曲した(横から見て上方へ盛り上がるように湾曲した)アーチ構造の部材としてもよい。この場合、スラスト力は、屋根部材30から、柱22及び24へ、矢印Tで示す方向と反対方向(柱22及び24の外側)に作用する。
【0048】
このときバックステイ26は、圧縮力に抵抗できる部材で構成することが好適である。圧縮力に抵抗できる部材としては、H形鋼、角型鋼管(CFT)及びコンクリートなどを利用できる。または、引張力に抵抗できるバックステイ26を、柱22の内側へ向かって延設してもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、柱22にバックステイ26を設けているが、本発明の実施形態はこれに限らない。柱22にも面構造部材40を接合し、さらに当該面構造部材40と下部構造体10とを耐震要素50で連結してもよい。このようにすることで、柱22の周囲の空間も有効に利用できる。
【0050】
また、
図1に示された実施形態においては、柱24と柱27との間に屋根が架設されていない状態が示されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば柱24と柱27との間に屋根を架け渡してもよい。
【0051】
この場合、柱24と柱27との間に架け渡す屋根は、一例として、屋根部材30と同様に、吊り構造の屋根とすることができる。なお、柱24と柱27との間のスパンは、柱24と柱22との間のスパンより小さい。すなわち、柱24と柱27との間に架け渡す屋根の重量は、屋根部材30の重量より軽い。
【0052】
このため、柱24と柱27との間に吊り構造の屋根を架設したとしても、柱24に作用するスラスト力は、矢印Tの向きに作用する。したがって、このような構造の屋根を形成しても、面構造部材40及び耐震要素50によって、スラスト力の処理効果を発揮できる。
【0053】
なお、柱24と柱27との間に架け渡す屋根は、吊り構造とする必要はない。例えば柱24及び柱27に梁を接合したラーメン架構に屋根スラブを架け渡した屋根としてもよい。また、この梁には耐震要素50を接合できる。さらに、この屋根を、本発明における面構造部材として機能させることができる。本発明における「水平方向」とは、屋根に形成する水勾配程度の傾斜を備えている状態を含むものとする。
【符号の説明】
【0054】
10 下部構造体
20 支柱
22 柱(支柱)
24 柱(支柱)
30 屋根部材
32 大梁(屋根部材)
40 面構造部材
44 スラブ(面構造部材)
50 耐震要素