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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】測定装置、浄水システム及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20240716BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20240716BHJP
   C02F 1/48 20230101ALI20240716BHJP
【FI】
B01D21/30 A
G01N27/447 331A
C02F1/48 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020101204
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194568
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小城 和高
(72)【発明者】
【氏名】城田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】深川 臣則
(72)【発明者】
【氏名】有村 良一
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】横山 雄
(72)【発明者】
【氏名】金谷 道昭
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-125653(JP,A)
【文献】特開2008-267945(JP,A)
【文献】特開2014-054603(JP,A)
【文献】特開昭51-036189(JP,A)
【文献】特開2000-171425(JP,A)
【文献】特開平04-050758(JP,A)
【文献】特開2002-005888(JP,A)
【文献】実開平06-078858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
B01D 21/00-21/34
C02F 1/52-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記液体に電圧を印加する電極部と、
前記収容部に収容された前記液体を撮像する撮像部と、
前記撮像部により取得された撮像データに基づき前記液体に含まれる粒子の移動速度を 演算する演算部と、
前記収容部を囲繞するように設置され、前記収容部より低い熱伝導率を有する断熱部と、
前記収容部内の前記液体と前記断熱部内の気体との間の温度差が小さくなるように、前記断熱部内の気体の温度を調節する空調部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記断熱部内に不活性ガスが充填されている、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記不活性ガスは、アルゴンである、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記不活性ガスは、窒素である、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記断熱部より流通方向上流側の前記液体の温度を検出する第1検出部、
を更に備え、
前記空調部は、前記第1検出部により検出された温度と前記断熱部内の気体の温度との差が小さくなるように、前記断熱部内の気体の温度を調節する、
請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記断熱部内の気体の露点温度を検出する第2検出部と、
前記断熱部内の気体の温度が前記露点温度以下にならないように、前記断熱部内の気体の温度を調節する空調部と、
を更に備える請求項1~5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記断熱部内において所定の液体を循環させる循環流路の少なくとも一部を構成し、前記断熱部より高い熱伝導率を有する伝熱部、
を更に備える請求項1~5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記所定の液体は、前記収容部に収容される前記液体と同一の水源から流出された液体である、
請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記所定の液体は、水道水である、
請求項7に記載の測定装置。
【請求項10】
前記循環流路より流通方向上流側の前記所定の液体と、前記断熱部内の気体との温度差が閾値以上である場合に、前記所定の液体を前記循環流路へ流入させる流量制御部、
を更に備える請求項7~9のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記循環流路は、前記断熱部の内壁面に設置された前記伝熱部内に形成される空間である、
請求項7~10のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の測定装置により演算された前記移動速度に関連する情報に基づき、前記粒子を凝集させる凝集剤の前記液体への注入量に制御する注入量制御部、
を備える浄水システム。
【請求項13】
液体を収容部に収容する工程と、
前記収容部に収容された前記液体に電圧を印加する工程と、
前記収容部に収容された前記液体を撮像する工程と、
取得された撮像データに基づき前記液体に含まれる粒子の移動速度を演算する工程と、
前記収容部内の前記液体と断熱部内の気体との間の温度差が小さくなるように、前記断熱部内の気体の温度を調節する工程と、
を含み、
前記収容部は、前記収容部より低い熱伝導率を有する前記断熱部により囲繞されている、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、測定装置浄水システム及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理、材料製造、環境、医療等で液体中の粒子表面の帯電状態(表面電位又は表面電荷)の指標となるゼータ電位を算出する方法として、電気泳動により移動する粒子の移動速度を測定する測定装置が知られている。液体から粒子(不純物)を除去する浄水システム等において、粒子のゼータ電位を算出するために、電気泳動により移動する粒子の移動速度を測定する測定装置を利用するシステムが考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-203168号公報
【文献】国際公開第2014-103860号公報
【文献】特開2014-54603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電気泳動の速度測定装置において、液体とその周辺環境との間に温度差が存在すると、液体に熱対流が発生し、粒子の移動速度を正確に測定できない場合がある。
【0005】
そこで、実施形態の課題の一つは、電気泳動による粒子の移動速度を高い精度で測定可能な測定装置及び浄水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の測定装置は、収容部と、電極部と、撮像部と、演算部と、断熱部と、空調部と、を備える。収容部は、液体を収容する。電極部は、収容部に収容された液体に電圧を印加する。撮像部は、収容部に収容された液体を撮像する。演算部は、撮像部により取得された撮像データに基づき液体に含まれる粒子の移動速度を演算する。断熱部は、収容部を囲繞するように設置され、収容部より低い熱伝導率を有する。空調部は、収容部内の液体と断熱部内の気体との間の温度差が小さくなるように、断熱部内の気体の温度を調節する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態にかかる測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、熱対流による影響がない場合における電気泳動による粒子の移動の一例を示す図である。
図3図3は、熱対流による影響がある場合における電気泳動による粒子の移動方向の一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態にかかる測定装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態にかかる測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第2実施形態にかかる測定装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第3実施形態にかかる測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8図8は、第3実施形態にかかる測定装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第4実施形態にかかる測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図10図10は、第5実施形態にかかる測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、第6実施形態にかかる浄水システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示のいくつかの実施形態及び変形例を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態及び変形例の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる測定装置1の構成の一例を示すブロック図である。測定装置1は、液体に含まれる粒子が電気泳動により移動する際の粒子の移動速度を測定する装置である。電気泳動とは、粒子を含む液体に電圧を印加した際に、粒子の帯電状態に応じて粒子が移動する現象である。液体は、例えば、浄化処理の対象となる液体(河川、伏流水、湖、地下水等から取水された原水)等であり得る。
【0010】
本実施形態に係る測定装置1は、タンク11、ポンプ12、流入弁13、セル14(収容部)、正電極15A(電極部)、負電極15B(電極部)、電源16、流出弁17、撮像装置18(撮像部)、演算装置19(演算部)、断熱材20(断熱部)、水温計21(第1検出部)、室温計22、空調装置23、配水管24、及び排水管25を備える。
【0011】
タンク11は、測定対象となる液体(原水)を貯蔵している。セル14は、配水管24を介してタンク11と接続しており、タンク11から流出した液体を収容する。ポンプ12は、タンク11内の液体をセル14へ送水する圧力を発生させる。流入弁13は、配水管24の流量を調節し、セル14への液体の流入量を調節する。排水管25は、セル14内の液体を排出する。流出弁17は、排水管25の流量を調節し、セル14からの液体の排出量を調節する。
【0012】
正電極15A及び負電極15Bは、電源16からの電力供給に応じてセル14内の液体に電圧を印加する。撮像装置18は、レンズ、撮像素子、プロセッサ等を利用して構成される装置である。撮像装置18は、電圧が印加されたセル14内の液体を撮像し、液体に含まれる粒子の移動を示す撮像データを取得する。演算装置19は、プロセッサ、記憶装置、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を利用して構成されるコンピュータである。演算装置19は、撮像装置18により取得された撮像データに所定の画像処理を行い、液体に含まれる粒子の移動速度を算出する。
【0013】
このとき、タンク11に粒子を凝集させる凝集剤を注入して粒子と凝集剤とが凝集したフロックを生成し、フロックを含む液体をセル14に収容することにより、フロックの移動速度を算出することができる。凝集剤に関する条件(注入量、種類、環境等)を変化させて試験を行うことにより、凝集剤に関する条件と粒子(フロック)の移動速度との関係を示す凝集情報を生成することができる。
【0014】
断熱材20は、セル14を囲繞するように設置され、セル14より低い熱伝導率を有する。断熱材20の具体的な材質は特に限定されるべきものではないが、例えば、ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、グラスウール等であり得る。断熱材20の作用により、セル14周辺の温度が断熱材20の外側の空気の温度に影響されにくくなる。
【0015】
水温計21は、断熱材20より流通方向上流側(本実施形態では配水管24内)の液体の温度を検出する。室温計22は、断熱材20内の気体の温度を検出する。空調装置23は、水温計21により検出された水温Twと室温計22により検出された室温Trとに基づき、水温Twと室温Trとの差が小さくなるように室温Trを調節する。空調装置23の具体的構成は特に限定されるべきものではないが、例えば、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して冷暖房や除湿を行う装置、断熱材20内の気体と媒体(冷水、温水等)との間で熱交換を行う熱交換器等であってもよい。
【0016】
なお、断熱材20内の空間には、結露防止対策のため、不活性ガスが充填されてもよい。一般に、空気は露点以下になると結露するため、空気の温度が露点以下にならないように空調装置23による温度調整が必要になる。これに対し、不活性ガスは結露しないため、不活性ガスの温度調整は殆ど必要なく、これにより全性・信頼性を高めることができる。不活性ガスの種類は特に限定されるべきものではないが、例えば、アルゴン、窒素等であり得る。アルゴンガスを用いる場合、アルゴンガスの密度は空気より大きいため、アルゴンガスは断熱材20内の下部に溜まる。そのため、例えば、断熱材20の上部に蓋を設ける構造とした場合、蓋を開けても断熱材20内に空気が入り込むことが殆どない。そして、断熱材20内の下部にセル14を配置すれば、セル14周辺をアルゴンガスで覆うことができ、セル14の結露防止及び高い断熱作用を維持することができる。
【0017】
上記構成により、セル14内の液体とセル14周辺との間の温度差を小さく抑えることができ、セル14内の液体の熱対流を抑制できる。これにより、電気泳動による粒子の移動が液体の熱対流により阻害されることを抑制でき、粒子の移動速度の測定精度を向上させることができる。
【0018】
なお、上記においては、ポンプ12を利用して検査対象となる液体をセル14に送水する構成を例示したが、セル14への送水方法はこれに限定されるものではない。例えば、作業者がシリンジ等を用いてセル14内に液体を注入する構成等であってもよい。
【0019】
図2は、熱対流による影響がない場合における電気泳動による粒子の移動の一例を示す図である。図3は、熱対流による影響がある場合における電気泳動による粒子の移動方向の一例を示す図である。図2及び図3において、撮像装置18の撮像領域30が例示されている。
【0020】
セル14の両側面に設置された正電極15A及び負電極15Bに電圧が印加されると、液体に含まれる粒子は、その帯電状態に応じて移動する。図2及び図3においては、粒子表面がマイナスに帯電しており、セル14の左側に設置された正電極15Aへ向かって移動する例が示されている。
【0021】
図2に示すように、熱対流の影響がない場合、換言すれば、セル14内の液体とセル14周辺との間に温度差がほとんどない場合、粒子は水平方向に移動する。一方、図3に示すように、熱対流の影響がある場合、換言すれば、セル14内の液体とセル14周辺との間の温度差が比較的大きい場合、粒子は斜め方向に移動する。なお、図3においては、粒子が斜め上方へ向かって移動する例が示されているが、斜め下方へ向かって移動する場合もある。熱対流発生時における粒子の移動方向は、セル14内の液体の温度とセル14周辺の温度との高低関係、セル14の形状等に応じて変化する。
【0022】
図3に例示するように、粒子が斜め方向に移動する場合には、粒子の移動速度を正確に測定できない可能性が高くなる。上述したように、本実施形態によれば、セル14内の液体とセル14周辺との間の温度差を小さく抑えることができ、セル14内の液体の熱対流を抑制できるため、図2に例示するように、粒子を水平方向に移動させることができる。これにより、粒子の移動速度の測定精度を向上させることができる。
【0023】
図4は、第1実施形態にかかる測定装置1における処理の流れの一例を示すフローチャートである。粒子の移動速度の測定が開始されると、水温計21は、配水管24を流れる液体の温度である水温Twを検出し(S101)、室温計22は、断熱材20内の気体の温度である室温Trを検出する(S102)。
【0024】
水温Twと室温Trとの温度差ΔT1が閾値Tth1以上である場合(S103:Yes)、空調装置23は、温度差ΔT1が小さくなるように室温Trを調節する(S104)。すなわち、空調装置23は、室温Trが水温Twより閾値Tth1以上高ければ冷房を行い、室温Trが水温Twより閾値Tth1以上低ければ暖房を行う。
【0025】
温度差ΔT1が閾値Tth1以上でない場合(S103:No)、撮像装置18は、セル14内の液体(粒子)の撮像データを取得し(S105)、演算装置19は、撮像データに基づき粒子の移動速度を算出する(S106)。
【0026】
上記実施形態によれば、セル14内の液体とセル14周辺との間の温度差ΔT1を小さく抑えることができ、液体の熱対流を抑制できる。これにより、粒子(フロックを含む)の移動速度の測定精度を向上させることができる。
【0027】
なお、上記においては、空調装置23により断熱材20内の気体の温度(室温Tr)を調節する構成を例示したが、セル14を断熱材20で囲繞するだけでも、温度差ΔT1の増加を抑制でき、粒子の移動速度の測定精度の向上を図ることができる。
【0028】
以下に、他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態と同一又は同様の作用効果を奏する箇所については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0029】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態にかかる測定装置51の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る測定装置51は、露点計31(第2検出部)を利用する点で第1実施形態と相違する。
【0030】
露点計31は、断熱材20内の気体の露点温度Tdを検出する装置である。本実施形態に係る空調装置23は、室温計22により検出された室温Trと露点計31により検出された露点温度Tdとに基づき、室温Trが露点温度Td以下にならないように、室温Trを調節する。
【0031】
図6は、第2実施形態にかかる測定装置51における処理の流れの一例を示すフローチャートである。粒子の移動速度の測定が開始されると、室温計22は、断熱材20内の気体の温度である室温Trを検出し(S201)、露点計31は、断熱材20内の気体の露点温度Tdを検出する(S202)。
【0032】
室温Trが露点温度Td以下である場合(S203:Yes)、空調装置23は、室温Trを上昇させる(S204)。すなわち、空調装置23は、室温Trが露点温度Td以下にならないように暖房を行う。
【0033】
室温Trが露点温度Td以下でない場合(S203:No)、撮像装置18は、セル14内の液体(粒子)の撮像データを取得し(S205)、演算装置19は、撮像データに基づき粒子の移動速度を算出する(S206)。
【0034】
上記構成によれば、室温Trが露点温度Tdより高い状態で維持されるため、セル14表面の結露を防止でき、良好な撮像データを取得できる。すなわち、本実施形態によれば、断熱材20の作用によりセル14内の液体とセル14周辺との間の温度差を小さく抑えられるだけでなく、セル14表面の結露を防止することができる。これにより、粒子の移動速度の測定精度を向上させることができる。
【0035】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態にかかる測定装置61の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態にかかる測定装置61は、伝熱材41(伝熱部)、副配水管42、副流入弁43、及び循環流路45を備え、空調装置23を備えない点で第1実施形態と相違する。
【0036】
伝熱材41は、断熱材20より高い熱伝導率を有し、循環流路45の一部を構成する。伝熱材41の材質は特に限定されるべきものではないが、例えば、比較的高い熱伝導率と耐腐食性を有する金属(ステンレス等)であり得る。循環流路45は、断熱材20内において液体(本実施形態においてはタンク11内の液体)を循環させる流路である。本実施形態にかかる循環流路45は、断熱材20の内壁面に設置される伝熱材41内に形成される空間(断熱材20の内壁面と伝熱材41の外壁面との間に形成される空間)である。
【0037】
副配水管42は、タンク11と循環流路45とを連通させる。副流入弁43は、副配水管42の流量を調節し、循環流路45への液体の流入量を調節する。弁制御装置44は、水温計21により検出された水温Twと、室温計22により検出された室温Tr(伝熱材41より内側の空間に存在する気体の温度)とに基づき副流入弁43を制御する。具体的には、弁制御装置44は、水温Twと室温Trとの間の温度差が閾値以上である場合に、循環流路45に液体が流入されるように副流入弁43を制御する。
【0038】
液体が循環流路45を循環することにより、循環流路45内の液体と断熱材20内の気体との間で伝熱材41を介して熱交換が行われる。これにより、セル14内の液体とセル14周辺との間の温度差を小さくすることができ、セル14内の液体の熱対流を抑制できる。
【0039】
図8は、第3実施形態にかかる測定装置61における処理の流れの一例を示すフローチャートである。粒子の移動速度の測定が開始されると、水温計21は、配水管24を流れる液体の温度である水温Twを検出し(S301)、室温計22は、断熱材20(伝熱材41)内の気体の温度である室温Trを検出する(S302)。
【0040】
水温Twと室温Trとの温度差ΔT2が閾値Tth2以上である場合(S303:Yes)、弁制御装置44は、副流入弁43を開放し(S304)、循環流路45内に液体を流入させる。
【0041】
温度差ΔT2が閾値Tth2以上でない場合(S303:No)、弁制御装置44は、副流入弁43を閉鎖し(S305)、循環流路45内への液体の流入を停止させる。その後、撮像装置18は、セル14内の液体(粒子)の撮像データを取得し(S306)、演算装置19は、撮像データに基づき粒子の移動速度を算出する(S307)。
【0042】
上記実施形態によれば、セル14へ流入する液体の温度とセル14周辺の温度と差が閾値以上となった場合に、セル14へ流入する液体と同一の水源(本実施形態ではタンク11)から流出した液体が循環流路45を循環する。これにより、循環流路45を循環する液体の温度が伝熱材41を介してセル14周辺の気体に伝達し、セル14内の液体とセル14周辺との間の温度差を小さくすることができる。このように、本実施形態によれば、空調装置23を用いることなく、セル14内の液体の熱対流を抑制し、粒子の移動速度の測定精度を向上させることができる。
【0043】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態にかかる測定装置71の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態にかかる測定装置71は、循環流路45に水道水を循環させる点で第3実施形態と相違する。
【0044】
本実施形態にかかる循環流路45は、水道管48と接続している。本実施形態にかかる副流入弁49は、水道管48の流量を調節し、循環流路45への水道水の流入量を調節する。本実施形態にかかる弁制御装置50は、水温計21により検出された水温Twと、室温計22により検出された室温Trとに基づき副流入弁49を制御する。具体的には、弁制御装置50は、水温Twと室温Trとの温度差が閾値以上である場合に、循環流路45に水道水が流入されるように副流入弁43を制御する。
【0045】
測定対象となる液体と水道水との間の温度差が十分に小さい場合、上記のように循環流路45に水道水を循環させることにより、断熱材20内の温度をセル14内の液体の温度に近づけることができる。本実施形態によれば、第3実施形態より簡素な構成で測定精度を向上させることができる。
【0046】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態にかかる測定装置81の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態にかかる測定装置81は、循環流路45が伝熱材41により独立して構成されている点で第3実施形態と相違する。
【0047】
本実施形態にかかる循環流路45は、伝熱材41からなる管状の部材により構成され、副配水管42と接続している。弁制御装置44は、第3実施形態と同様に、水温計21により検出された水温Twと室温計22により検出された室温Trとに基づき副流入弁43を制御する。なお、第4実施形態と同様に、循環流路45に水道水を循環させる構成を採用してもよい。
【0048】
上記のように、循環流路45を伝熱材41により独立して構成することにより、循環流路45内の液体と断熱材20内の気体との熱交換を効率よく行うことができる。
【0049】
(第6実施形態)
図11は、第6実施形態にかかる浄水システム101の構成の一例を示すブロック図である。浄水システム101は、上述した測定装置1,51,61,71,81のいずれか1つにより測定された粒子の移動速度に関する情報を利用して液体を浄化するシステムである。浄水システム101は、着水井111、混和池112、凝集剤注入装置113、注入量制御装置114、フロック形成池115、沈殿池116、ろ過池117、及び測定装置1、51,61,71,81を備える。
【0050】
着水井111は、浄化処理の対象となる液体(例えば、河川、伏流水、湖、地下水等から取水された原水)を取り入れ、その水位や水量を調整する。混和池112は、着水井111から取り込んだ所定量の液体と、当該液体に含まれる粒子を凝集させる凝集剤とを混合するための水槽である。凝集剤注入装置113は、混和池112に凝集剤を注入する装置である。注入量制御装置114は、凝集剤の注入量を制御する装置である。フロック形成池115は、凝集剤が混和された液体を所定の環境下に維持して粒子と凝集剤とが凝集したフロックを形成するための水槽である。沈殿池116は、液体中に分散されたフロックを沈殿させるための水槽である。ろ過池117は、沈殿したフロックを液体からろ過するための水槽である。
【0051】
本実施形態にかかる注入量制御装置114は、上述した測定装置1,51,61,71,81から取得した粒子(フロックを含む)の移動速度に関連する情報に基づき、凝集剤の注入量を制御する。移動速度に関連する情報とは、例えば、上述した凝集情報(凝集剤に関する条件と粒子(フロック)の移動速度との関係を示す情報)等であり得る。
【0052】
本実施形態によれば、上述した測定装置により高い精度で測定された移動速度に基づき凝集剤の注入量を最適化することができ、凝集剤の過剰注入等を防ぐことができる。これにより、浄水システム101における品質向上及びコスト削減を実現することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、上述した実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1,51,61,71,81…測定装置、11…タンク、12…ポンプ、13…流入弁、14…セル(収容部)、15A…正電極(電極部)、15B…負電極(電極部)、16…電源、17…流出弁、18…撮像装置(撮像部)、19…演算装置(演算部)、20…断熱材(断熱部)、21…水温計(第1検出部)、22…室温計、23…空調装置、24…配水管、25…排水管、30…撮像領域、31…露点計(第2検出部)、41…伝熱材(伝熱部)、42…副配水管、43,49…副流入弁、44,50…弁制御装置、45…循環流路、48…水道管、101…浄水システム、111…着水井、112…混和池、113…凝集剤注入装置、114…注入量制御装置、115…フロック形成池、116…沈殿池、117…ろ過池、Td…露点温度、Tr…室温、Tw…水温
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11